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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】噴霧ユニットのためのディスク
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/10 20060101AFI20240412BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20240412BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B05B3/10 A
B05B17/00 101
A01M7/00 V
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022504678
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020070440
(87)【国際公開番号】W WO2021013789
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】19188229.9
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・フェアーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・チャールズ・チャップル
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-026160(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031692(WO,A1)
【文献】特開2012-170837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
5/00- 5/16
7/00- 9/08
17/00-17/08
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ディスク型液体噴霧器のためのディスク(10)であって、
前記ディスクの表面(20)が、前記ディスクの中心を中心として配置されると共に異なる半径を有する複数の同心リング(30)を備えており、
隣接する前記同心リングから成る対のうち第1の同心リング(40)が、液体に対して第1の付着レベルを呈するように構成された表面を有しており、隣接する前記同心リングから成る前記対のうち第2の同心リング(50)が、前記液体に対して第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有しており、前記第1の付着レベルが、前記第2の付着レベルより小さく、
前記第1の付着レベルが、疎水性表面によって付与され、
前記第2の付着レベルが、親水性表面によって付与される、
ディスク。
【請求項2】
前記ディスクの前記表面が、中央ディスク領域(60)を備えており、前記中央ディスク領域の最大半径が、複数の前記同心リングの最小半径より小さい、請求項1に記載のディスク。
【請求項3】
前記中央ディスク領域が、前記液体に対して前記第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有している、請求項2に記載のディスク。
【請求項4】
前記第1の同心リングが、前記中央ディスク領域に隣接している、請求項2又は3に記載のディスク。
【請求項5】
複数の前記同心リングが、3つ以上の同心リングとされ、前記付着レベルが、外方に進行する隣接する同心リングについて、交互に前記第1の付着レベル又は前記第2の付着レベルになる、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスク。
【請求項6】
前記ディスクの外側縁部に隣接する同心リングが、前記液体に対して第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有している、請求項1から5のいずれか一項に記載のディスク。
【請求項7】
前記第1の付着レベルが、意図的にテクスチャ加工された表面によって付与される、請求項1から6のいずれか一項に記載のディスク。
【請求項8】
前記第2の付着レベルが、意図的にテクスチャ加工された表面によって付与される、請求項1から7のいずれか一項に記載のディスク。
【請求項9】
前記ディスクの外側縁部(70)には、鋸歯(80)が設けられている、請求項1から8のいずれか一項に記載のディスク。
【請求項10】
心棒(110)と、請求項1から9のいずれか一項に記載のディスク(10)と、液体アプリケータ(120)と、を備えている噴霧ユニット(100)において、
前記ディスクが、前記ディスクの中心を中心として配置された前記心棒の周りをスピンするように構成されており、
前記液体アプリケータが、前記ディスクの表面に液体を塗布するように構成されている、噴霧ユニット(100)。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項1から9のいずれか一項に記載のディスク(10)を備えている噴霧車両(200)。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項10に記載の噴霧ユニット(100)を備えている噴霧車両(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧ユニット用ディスク、そのようなディスクを有する噴霧ユニット、少なくとも1つのディスクを有する車両、及びそのような噴霧ユニットを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の一般的な背景は、作物への除草剤及び殺虫剤の塗布である。噴霧液は霧化されなければならない。これは、通常、油圧ノズルを用いて行われる。より洗練された手法は、スピンディスクを使用することである。除草剤/農薬を噴霧する車両がドローン又は無人航空機(UAV)である場合、重量が追加され、かつエネルギー要件を有するため、専用の噴霧技術を慎重に考慮する必要がある。そのようなスピンディスクは、ドローン用途のための効果的な霧化システムである可能性を有する。これは、それらが液滴を生成するために一般的に低いエネルギー要件を有し、他の構成要素はバッテリ駆動式ドローンと互換性があることが理由である。
【0003】
一般に、回転ディスク型噴霧器は、液滴形成の3つの方式を有し、
1.ディスクが部分的に装填される場合、滴は、図5aに示されるように、ディスクの縁部において、典型的にはディスクの周辺部に通常設定される歯又は鋸歯において個別に形成される、
2.ディスクが容量近くまで装填される場合、帯が形成され、そこから滴がそれらのサテライトと共に形成され、図5bに示されるように、滴サイズの二峰性(又はより広い)分布をもたらすことになる、
3.ディスクが過度に装填される場合、図5cに示されるように、液体はシート状にディスクから離れ、霧化は油圧ノズルの霧化により近く、液サイズの分布は広く、液滴形成の2つのこれ以前の方式より小さい液滴の割合が増加する。
【0004】
理想的には、製品は、上記1で考察した第1の霧化プロセスのみを使用して適用されるべきである。これにより、滴サイズの制御が保証され、微細な液滴の形成及び/又は液滴サイズの広い分布が最小限に抑えられる。しかしながら、ディスクの直径、回転速度又は毎分回転数(RPM)、及び配合物の表面張力はすべて、霧化プロセスに影響を及ぼす傾向があるため、これを達成することは容易ではない。したがって、必要な液滴サイズが、必要な塗布速度に対して達成できない可能性があり、液滴サイズの分布が広すぎる、塗布速度が正しくない、及びドローンを介した持続的な動作には高すぎるエネルギー要件での塗布のうちの1つ又は複数につながる。液滴サイズの分布が広すぎ、塗布速度が正しくないという問題は、地上の噴霧器にも等しく当てはまることに留意されたい。
【0005】
これらの問題の1つ又は複数に対処する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】Bico等著、Wetting of textured surfaces,Colloids and Surfaces A 206(2002)41-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肥料、除草剤及び殺虫剤などの殺虫剤を含有するものなどの液体の噴霧のための改善された手段を有することが有利であろう。
【0008】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、この場合、さらなる実施形態は、従属請求項に組み込まれている。本発明の以下に記載される態様及び例はまた、噴霧ユニットにも適用され、車両は1つ又は複数の噴霧ユニットを有することに留意されたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、回転ディスク型液体噴霧器用のディスクが提供される。ディスクの表面は、ディスクの中心を中心とする異なる半径を有する複数の同心リングを備える。同心リングの隣接する対の第1の同心リングは、液体に対して第1の付着レベルを呈するように構成された表面を有し、隣接する同心リング対の第2の同心リングは、液体に対して第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有する。第1の付着レベルは、第2の付着レベルより低い。
【0010】
このようにして、回転ディスク型液体噴霧器又は液体噴霧ユニット用のディスクが提供され、この場合、液滴スペクトルの制御は、液体がディスクの表面を通過する際にディスクの表面とどのように相互作用するかを変更することによって提供される。これは、回転速度及び/又はスピンディスクに塗布される液体の流量を通してもたらされる通常の制御とは異なる、ディスク上又はディスクの周辺部のいずれかで液体が分解する方法を制御する能力をもたらす。
【0011】
この表面構造は、表面を横切る液体のより大きな液滴及びより小さな液滴への分解をもたらし、またこの場合、より大きな液滴は、より小さな液滴より速く移動する。次いで、より大きな液滴は、より小さな液滴と合体する傾向があり、より均一な液滴スペクトルをもたらす。
【0012】
さらに、液体は波状にディスクの縁部に到達し、ディスクの縁部への増大した装填につながり、結果としてより大きな液滴放出サイズをもたらし、それは空気の移動によって引き起こされるドリフトの影響を受けにくく、また植物及び/又は植物上の昆虫/害虫への有効成分の伝達のために適切なサイズであり得る。
【0013】
したがって、必要な流量に対して必要な液滴サイズを提供することができ、また追加として、必要な液滴サイズを中心とする液滴サイズ分布をより狭くすることができる。
【0014】
このようにして、土地の単位面積当たりの植物当たりの有効成分の正確な塗布を、塗布に適したサイズにされた、及び/又は空気の移動によって引き起こされる液滴のドリフトを緩和するのに適したサイズにされた液滴サイズで提供することができる。
【0015】
一例では、ディスクの表面は中央ディスク領域を含み、この場合、中央ディスク領域の最大半径は複数の同心リングの最小半径より小さい。
【0016】
一例では、中央ディスク領域は、液体に対する第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有する。
【0017】
このようにして、これは噴霧される液体への運動量の伝達を最大化するのに役立つことが分かった。
【0018】
一例では、第1の同心リングは、中央ディスク領域に隣接している。
【0019】
一例では、複数の同心リングは、3つ以上の同心リングを含む。付着レベルは、外方に進行する隣接する同心リングの第1の付着レベルと第2の付着レベルとの間で交互になる。
【0020】
一例では、ディスクの外側縁部に隣接する同心リングは、液体に対する第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有する。
【0021】
一例では、第1の付着レベルは、疎水性表面によって提供される。
【0022】
一例では、第2の付着レベルは、親水性表面によって提供される。
【0023】
一例では、第1の付着レベルは、意図的にテクスチャ加工された表面によって提供される。
【0024】
一例では、第2の付着レベルは、意図的にテクスチャ加工された表面によって提供される。
【0025】
一例では、ディスクの外側縁部は鋸歯を備える。
【0026】
第2の態様では、心棒と、第1の態様によるディスクと、液体アプリケータとを備える噴霧ユニットが提供される。
【0027】
ディスクは、ディスクの中心を中心として心棒の周りをスピンするように構成される。液体アプリケータは、ディスクの表面に液体を塗布するように構成される。
【0028】
第3の態様では、第1の態様による少なくとも1つのディスクを備える噴霧車両が提供される。
【0029】
第4の態様では、第2の態様による少なくとも1つの噴霧ユニットを備える噴霧車両が提供される。
【0030】
有利には、上記の態様のいずれかによって提供される利点は、他の態様のすべてに等しく適用され、逆もまた同様である。
【0031】
上記の態様及び例は、以下に記載される実施形態から明らかになり、以下に記載される実施形態を参照して説明される。
【0032】
例示の実施形態を、以下の図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】回転ディスク型液体噴霧器のための新たに開発されたディスクの一例の概略構成を示す図である。
図2】新たに開発された噴霧ユニットの一例の概略構成を示す。
図3】少なくとも1つの新たに開発されたディスクを備えた噴霧車両の一例の概略構成を示す。
図4】少なくとも1つの新たに開発された噴霧ユニットを備えた噴霧車両の一例の概略構成を示す。
図5a】1つ以上の既存のディスクの実施形態の例示的な噴霧液滴分布を示す。
図5b】1つ以上の既存のディスクの実施形態の例示的な噴霧液滴分布を示す。
図5c】1つ以上の既存のディスクの実施形態の例示的な噴霧液滴分布を示す。
図6】噴霧ユニット用に新たに開発されたディスクの概略的な実施例を示す。
図7】噴霧ユニット用に新たに開発されたディスクの概略的な実施例を示す。
図8】例示的な既存のディスクの噴霧液滴分布の一例を示す。
図9】噴霧ユニット用に新たに開発されたディスクの一例の概略構成を示す。
図10】噴霧ユニット用に新たに開発されたディスクの表面を横切る液滴の移動の概略例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、回転ディスク型液体噴霧器用のディスク10の一例を示す。ディスクの表面20は、ディスクの中心を中心とする異なる半径を有する複数の同心リング30を備える。同心リングの隣接する対の第1の同心リング40は、液体に対して第1の付着レベルを呈するように構成された表面を有し、同心リングの隣接する対の第2の同心リング50は、液体に対して第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有する。第1の付着レベルは、第2の付着レベルより低い。
【0035】
このようにして、回転ディスク型液体噴霧器又は液体噴霧ユニット用のディスクが提供され、この場合、液滴スペクトルの制御は、液体がディスクの表面を通過する際にディスクの表面とどのように相互作用するかを変更することによって提供される。これは、回転速度及び/又はスピンディスクに適用される液体の流量によってもたらされる通常の制御とは異なる、ディスク上又はディスクの周辺部のいずれかで液体が分解する方法を制御する能力をもたらす。
【0036】
この表面構造は、表面を横切る液体のより大きな液滴及びより小さな液滴への分解をもたらし、またこの場合、より大きな液滴は、より小さな液滴より速く移動する。次いで、より大きな液滴は、より小さな液滴と合体する傾向があり、より均一な液滴スペクトルをもたらす。
【0037】
さらに、液体は波状にディスクの縁部に到達し、ディスクの縁部への装填を増大させ、必要な液滴放出サイズが大きくなる結果になる。
【0038】
したがって、必要な流量に対して必要な液滴サイズを提供することができ、また追加として、必要な液滴サイズを中心とする液滴サイズ分布をより狭くすることもできる。
【0039】
このようにして、土地の単位面積当たりの植物当たりの有効成分の正確な塗布を、塗布に適したサイズにされた、及び/又は空気の移動によって引き起こされる液滴のドリフトを緩和するのに適したサイズにされた液滴サイズで提供することができる。
【0040】
一例では、同心リングの隣接する対の第1の同心リング40は、隣接する同心リング対の第2の同心リング50と境を接している。
【0041】
一例によれば、ディスクの表面は、心棒を中心とする中央ディスク領域60を備える。中央ディスク領域の最大半径は、それ自体が心棒を中心とする複数の同心リングの最小半径より小さい。
【0042】
一例では、中央ディスク領域は、液体に対して第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有する。
【0043】
このようにして、これは噴霧される液体への運動量の伝達を最大化するのに役立つことが分かった。
【0044】
一例によれば、第1の同心リングは、中央ディスク領域に隣接している。
【0045】
一例では、第1の同心リングは、中央ディスク領域と境を接している。
【0046】
一例によれば、複数の同心リングは、3つ以上の同心リングを含む。付着レベルは、外方に進行する隣接する同心リングの第1の付着レベルと第2の付着レベルとの間で交互になる。
【0047】
一例では、隣接する同心リングは互いと境を接している。
【0048】
一例によれば、ディスクの外側縁部に隣接する同心リングは、液体に対して第2の付着レベルを呈するように構成された表面を有する。
【0049】
一例では、外側縁部に隣接する同心リングは外側縁部と境を接している。
【0050】
一例によれば、第1の付着レベルは、疎水性表面によって提供される。
【0051】
一例によれば、第2の付着レベルは、親水性表面によって提供される。
【0052】
一例によれば、第1の付着レベルは、意図的にテクスチャ加工された表面によって提供される。
【0053】
一例によれば、第2の付着レベルは、意図的にテクスチャ加工された表面によって提供される。
【0054】
一例によれば、ディスクの外側縁部70は鋸歯80を備える。
【0055】
図2は、噴霧ユニット100の一例を示す。噴霧ユニットは、図1に関して説明したように、心棒110と、ディスク10とを備える。噴霧ユニットはまた、液体アプリケータ120を備える。ディスクは、ディスクの中心を中心として心棒の周りをスピンするように構成される。液体アプリケータは、ディスクの表面に液体を塗布するように構成される。
【0056】
図3は、噴霧車両200の一例を示す。噴霧車両は、図1に関して説明した少なくとも1つのディスク10を備える。
【0057】
一例では、車両はドローン又はUAVである。
【0058】
一例では、車両は陸上車両である。
【0059】
図4は、噴霧車両300の一例を示す。噴霧車両は、図2に関して説明したような少なくとも1つの噴霧ユニット100を備える。
【0060】
一例では、車両はドローン又はUAVである。
【0061】
一例では、車両は陸上車両である。
【0062】
一例では、車両300は車両200と同じである。しかしながら、状況によっては、製造業者は、液体アプリケータ120を持たない車両200を製造する場合がある。例えば、状況によっては、液体アプリケータをその後車両に取り付ける場合がある。したがって、車両を車両200として製造することができ、次いで液体アプリケータを追加すると車両300になることができる。
【0063】
ここで、噴霧ユニット用のディスク、そのようなディスクを有する噴霧ユニット、少なくとも1つのディスクを有する車両、そのような噴霧ユニットを有する車両が、特定の実施形態に関してより詳細に説明され、この場合、図6図10を参照しており、この場合、ブーム噴霧器、UAV、無人地上車両(UGV)、ロボットプラットフォーム及びバックパック噴霧器に適用可能であり得る。
【0064】
図6は、噴霧ユニット用に新たに開発されたディスクの一例を示す。新しいディスクは、液体がディスク上の異なる場所において異なる方法でディスクと相互作用するように、事実上、霧化プロセスに別の次元を追加すること、すなわちディスクの付着特性を変更することによって、改善された液滴霧化を実現する。これは、液体がディスク上で分解する方法を変更する(部分装填)、及び/又は液体が霧化点に提示される方法を変更する(ディスクの最大装填に近い)。これは、例えば、低いスリップを伴う高付着性と高いスリップを伴う低付着性との間で交互になる表面の同心リングの使用によって達成される。これは以下で詳細に説明されるが、簡単に言えば、ディスクの中央部分は、噴霧液への運動量の伝達を最大にするために高付着性の領域を含む。この領域はまた、ディスクの装填におけるいかなる変動も平滑化し、ある意味では装填量の混合及び平均化をする。ディスクの外側部分は、高付着性と低付着性とを交互に繰り返す一連の同心リングを含む。ディスクへの装填が比較的低いと仮定すると、図6に描かれるように、その後噴霧液の帯が液滴に分解すると、液滴は、それらのサイズに応じて分離を開始し、その結果、より大きな液滴はより速く移動し、生成されたいずれかのより小さな液滴と合体することになる。より均一な液滴スペクトルが得られ、液滴は、サイズの広がりが小さい状態で、より均一なサイズを有する。しかしながら、図7に示されるように、高付着性の最も外側のリングを有するディスクのほぼ最適な装填の場合、ディスクの縁部に提示される液体は波状に到達することになる。したがって、ディスクの縁部へのより高い装填を得ることができ、その結果、液滴サイズの変動がより小さい状態でより大きな液滴が得られる。
【0065】
ディスク表面の付着特性は二次元で変更することができる、又はディスクの表面積を増加させるために構造体が構築される場合もある。今日では、これは通常、ディスク内の溝を使用して、又はディスクを円錐に変えることによって行われる。しかしながら、リングの代わりに、又はリングを増強して、櫛形構造が表面にわたって構築される場合がある。今日及び3D印刷の時代には、異なるプラスチック及び/又は表面構造のディスクを印刷することは簡単なことである。二次元(2D)では、表面粗さがマイクロスケール又はナノスケール(典型的には0.1mm~10nm)で存在する、滑らかで微細テクスチャ加工された表面について、利用することができる2つのレジームが存在する。両方の場合において、表面の化学的性質を変化させることによって表面を疎水性と親水性との間で変えることができる。滑らかな表面の場合、噴霧液(フィルム、帯又は液滴のいずれかとして)の表面付着性は、このように変化させることができる。水性液体の場合、親水性表面はより低いスリップを伴う高い付着性を有するが、疎水性表面はより高いスリップを伴うより低い付着性を有する(油の場合はその逆)。しかしながら、滑らかな表面の場合、(狭い接触角範囲によって見られるように)到達できる付着性の範囲は高くない。この範囲の付着性(及び接触角)は、微細テクスチャ加工された表面に対して著しく拡大されており、その結果、霧化プロセスのより大きな制御が可能になる(さらなる詳細は、非特許文献1に提示されている)。
【0066】
微細テクスチャ加工された表面の利点の一例は、本明細書で説明するようにディスク上の同心リングである。滑らかな表面では、高付着性及び低付着性の同心リングからの効果が小さくなり、霧化プロセスに対する効果が弱くなる。微細テクスチャ加工された表面では、同心リングからの効果は、高付着性の領域及び低付着性の領域に対してより大きくなり、霧化プロセスに対する効果が向上する結果になる。
【0067】
図8は、既存のディスクの一例からの噴霧液滴分布の一例を示す図である。ここで、上記で考察したように、均一な表面を有するディスクにより、液滴は、帯の破壊を通して形成される。これには、大きい方の液滴より小さいサイズを有するサテライト液滴が形成されるという欠点がある。これらの小さな液滴は、空気の移動による望ましくないドリフトの影響をより受けやすい。
【0068】
図9は、噴霧ユニット用に新たに開発されたディスクの一例を示す。ここで、サテライト液滴の形成は、低いスリップを伴う高付着性と高いスリップを伴う低付着性とを交互に繰り返す表面の同心リングの使用によって緩和される。ディスクの中央部分は、噴霧される液体への運動量の伝達を最大にするために、高付着性の領域を有する。ディスクの外側部分は、高付着性と低付着性とを交互に繰り返す一連の同心リングを有する。噴霧液の帯が液滴に分解すると、より大きな液滴は、異なるサイズの液滴に対するリング間のスリップの違いにより、異なる速度でより小さな液滴まで移動する。その結果、より大きな液滴は、より小さな液滴に追いつき、それと合体し、サイズの分布がより小さい状態でより均一な液滴サイズをもたらし、噴霧液滴は、ドリフトの影響を受けにくい、設定された大きなサイズを中心としている。
【0069】
上記で考察したように、表面付着性は、親水性領域及び疎水性領域の使用によって変えることができる。代替的又は追加的に、表面付着性は、マイクロスケール構造又はナノスケール構造の使用によって変えることができる。
【0070】
図10は、新たに開発されたディスクが回転するとき、及び液体が塗布されるとき、ディスクを横切る液滴の移動の一例を示す。示されるように、高付着性を有するより小さい液滴は、より大きい液滴と比較してより低い相対速度を獲得し、より大きい液滴がより小さい液滴を捕捉することにつながる。さらに、求心力に起因して、液体がディスクの中心から外側に移動するにつれて液体の速度に変化がある。これが液体の分解を引き起こし、液体の分解は、半径方向距離、半径方向速度、及び膜厚対表面張力の関数であり、内側の高付着領域に隣接する低付着性の同心リングを有することによって、液滴の分解を制御するのに役立つ。また、ディスクの外側縁部に外側同心リングを有することにより、鋸歯状の縁部を介して霧化するための準備が整ったディスクの最適な装填が提供される。
【0071】
本発明の実施形態は、異なる主題を参照して説明されることに留意されたい。特に、幾つかの実施形態は、方法タイプの特許請求の範囲を参照して説明されるのに対して、他の実施形態は、装置タイプの特許請求の範囲を参照して説明される。しかしながら、当業者は、特にそうでないことが指摘されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間の任意の組み合わせもまた、本出願と共に開示されるように考えられることを上記及び以下の説明から推測するであろう。しかしながら、すべての特徴を組み合わせて、特徴の単純な合計以上の相乗効果をもたらすことができる。
【0072】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されているが、そのような例示及び説明は、例証又は例示であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、及び従属請求項の研究から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され達成され得る。
【0073】
特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除せず、また不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に再引用された幾つかの項目の機能を果たす場合がある。特定の手段が相互に異なる従属請求項において再引用されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0074】
10 ディスク
20 ディスクの表面
30 同心リング
40 第1の同心リング
50 第2の同心リング
60 中央ディスク領域
70 外側縁部
80 鋸歯
100 噴霧ユニット
110 心棒
120 液体アプリケータ
200 噴霧車両
300 噴霧車両
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7
図8
図9
図10