(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】流体輸送システム、方法、並びにそれを適用する流体使用装置
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20240412BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240412BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B01J4/00 104
G01N1/00 101L
B01J4/00 102
B01J4/02 A
B01J4/02 B
(21)【出願番号】P 2022518011
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2019107591
(87)【国際公開番号】W WO2021056207
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】516122667
【氏名又は名称】深▲セン▼華大智造科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】Main Building and Second Floor of No.11 Building,Beishan Industrial Zone,Yantian District,Shenzhen,Guangdong 518083,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】隋 相坤
(72)【発明者】
【氏名】▲しん▼ 楚填
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジョンモ
(72)【発明者】
【氏名】ボグダン グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】アダムス サイモン ロバート
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102426261(CN,A)
【文献】国際公開第2019/104580(WO,A1)
【文献】特表2011-524527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00- 7/02
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧駆動方式で流体貯留アセンブリから流体を吸引して、
吸引された前記流体を正圧駆動方式で流体使用システムに送り込み、
少なくとも2つの作業モジュールを備え、
前記作業モジュールのそれぞれは、前記流体貯留アセンブリから少なくとも1種類の流体を前記流体使用システムに移行し、
前記流体使用システムは1つまたは複数であり、
流体輸送システムは、前記少なくとも2つの作業モジュールのうちの異なる作業モジュールを前記流体使用システムに切り替えて接続する分配アセンブリをさらに備え、
前記作業モジュールのそれぞれは、当該作業モジュールで前記流体貯留アセンブリから吸引された流体を一時的に貯留する流体中継アセンブリを備え、
前記少なくとも2つの作業モジュールは、第1作業モジュールと第2作業モジュールとを含み、
前記第1作業モジュールが流体貯留アセンブリから流体を抜き出し、前記第1作業モジュールにおける流体中継アセンブリに一時的に貯留する所要時間をTA1とし、
前記第1作業モジュールが前記流体を前記流体中継アセンブリから前記流体使用システムに押し込む所要時間をTA2とし、
前記第2作業モジュールが流体貯留アセンブリから流体を抜き出し、前記第2作業モジュールにおける流体中継アセンブリに一時的に貯留する所要時間をTB1とし、
前記第2作業モジュールが前記流体を前記流体中継アセンブリから前記流体使用システムに押し込む所要時間をTB2とすると、
前記TB1は、前記TA1と時間軸上で少なくとも部分的に重なり、
および/または、
前記TB1は、前記TA2と時間軸上で少なくとも部分的に重なり、
前記TB1と前記TB2は時間軸上で重ならない、
ことを特徴とする流体輸送システム。
【請求項2】
前記流体貯留アセンブリから流体を吸引する圧力勾配を作り出し、
前記流体を前記流体使用システムに押し込む圧力勾配を作り出すパワーアセンブリを備えることを特徴とする請求項
1に記載の流体輸送システム。
【請求項3】
前記パワーアセンブリは、インジェクションポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギヤポンプ、クリープポンプであることを特徴とする請求項
2記載の流体輸送システム。
【請求項4】
前記流体の前記流体使用システムへの押し込む過程で、流体の移行後の空間を埋める充填液を供給する充填液貯留アセンブリを備えることを特徴とする請求項
1に記載の流体輸送システム。
【請求項5】
前記流体貯留アセンブリからから異なる流体を選択する流体選択アセンブリを備えることを特徴とする請求項
1に記載の流体輸送システム。
【請求項6】
少なくとも1つの作業モジュールを流体使用システムに接続する分配アセンブリをさらに少なくとも2つ備えることを特徴とする請求項1に記載の流体輸送システム。
【請求項7】
前記少なくとも2つの作業モジュールのうち少なくとも1つは、注射ポンプであり、及び/又は、
前記少なくとも2つの作業モジュールのうち少なくとも1つは、前記作業モジュールが前記流体貯留アセンブリから吸引された流体を一時的に貯留する流体中継アセンブリを備え、及び/又は、
前記少なくとも2つの作業モジュールのうち少なくとも1つは、前記流体貯留アセンブリから流体を吸引する圧力勾配を作り出し、前記流体を流体使用システムに押し込む圧力勾配を作り出すパワーアセンブリを含み、及び/又は、
前記少なくとも2つの作業モジュールのうち少なくとも1つは、前記流体貯留アセンブリからから異なる流体を選択する流体選択アセンブリを含み、
および/または、
前記流体輸送システムは、前記流体の前記流体使用システムへの押し込む過程で、流体の移行後の空間を埋める充填液を供給する充填液貯留アセンブリをさらに備える、
ことを特徴とする請求項
6に記載の流体輸送システム。
【請求項8】
前記TA1と前記TA2は時間軸上で重ならず、
前記TA2とTB2は時間軸上で重ならないことを特徴とする請求項
1に記載の流体輸送システム。
【請求項9】
負圧駆動方式で流体を吸引するステップ、
吸引された前記流体を正圧駆動方式で流体使用システムに送り込むステップ、を備え、負圧駆動方式で流体を吸引するステップは、
第1作業モジュールと1つの流体貯留アセンブリとの接続を確立し、前記第1作業モジュールを起動して前記流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、前記第1作業モジュールと前記流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップa)と、
第2作業モジュールと前記流体貯留アセンブリ又は他方の流体貯留アセンブリとの接続を確立し、第2作業モジュールを起動して前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第2作業モジュールと前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップb)とを含み、
流体を正圧駆動方式で送り込むステップは、
第1作業モジュールと1つの流体使用システムとの接続を確立し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むステップc)と、
前記第2作業モジュールと前記流体使用システム又は他方の流体使用システムとの接続を確立し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システム又は前記他方の流体使用システムに押し込むステップd)とを含み、
前記ステップa)の実行は、前記ステップb)および前記ステップd)の実行とは独立して行い、
前記ステップb)の実行は、前記ステップa)および前記ステップc)の実行とは独立して行い、
前記ステップc)の実行と前記ステップd)の実行とは時間軸上で重ならず、
前記ステップb)の実行と前記ステップa)の実行とは時間軸上で少なくとも部分的に重なり、及び/又は、
前記ステップb)の実行と前記ステップc)の実行とは時間軸上で少なくとも部分的に重なることを特徴とする流体輸送方法。
【請求項10】
負圧駆動方式で流体を吸引するステップは、
パワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を確立すること、および
前記パワーアセンブリを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引して前記流体中継アセンブリに一時的に貯留することを備える、
ことを特徴とする請求項
9に記載の流体輸送方法。
【請求項11】
負圧駆動方式で流体を吸引するステップは、前記パワーアセンブリと前記流体中継アセンブリと前記流体貯留アセンブリとの接続を切断することをさらに含む、ことを特徴とする請求項
10に記載の流体輸送方法。
【請求項12】
流体を正圧駆動方式で送り込むステップは、
前記パワーアセンブリと、前記流体中継アセンブリと、前記流体使用システムとの接続を確立すること、および
前記流体中継アセンブリに一時貯留された流体が前記流体使用システムへ流入するように、パワーアセンブリを起動させることをさらに含む、ことを特徴とする請求項
11に記載の流体輸送方法。
【請求項13】
ステップa)、b)、c)、d)の実行にかかる総時間をTとし、ステップa)の実行にかかる時間をTA1とし、ステップb)の実行にかかる時間をTB1とし、ステップc)の実行にかかる時間をTA2とし、ステップd)の実行にかかる時間をTB2とすると、
T<TA1+TA2+TB1+TB2となることを特徴とする請求項
9に記載の流体輸送方法。
【請求項14】
前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとがともに同一の流体使用システムに流体を輸送する場合には、
前記ステップc)は、分配アセンブリによって前記第1作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを備え、
前記ステップd)は、前記分配アセンブリ又は他方の分配アセンブリによって前記第2作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを備える
ことを特徴とする請求項
9または13に記載の流体輸送方法。
【請求項15】
前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとがそれぞれ異なる流体使用システムに流体を輸送する場合には、
前記ステップc)は、分配アセンブリによって前記第1作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを備え、
前記ステップd)は、前記他方の分配アセンブリによって前記第2作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記他方の流体使用システムに押し込むことを備える、
ことを特徴とする請求項
9または13に記載の流体輸送方法。
【請求項16】
第1作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、前記第1作業モジュールを起動して前記流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、前記第1作業モジュールと前記流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップa)と、
第2作業モジュールと前記流体貯留アセンブリ又は他方の流体貯留アセンブリとの接続を確立し、前記第2作業モジュールを起動して前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第2作業モジュールと前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップb)と、
前記第1作業モジュールと流体使用システムとの接続を確立し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むステップc)と、
前記第2作業モジュールと前記流体使用システムまたは他方の流体使用システムとの接続を確立し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムに押し込むステップd)とを備え、
ここで、
前記ステップa)の実行は、前記ステップb)および前記ステップd)の実行とは独立して行い、
前記ステップb)の実行は、前記ステップa)および前記ステップc)の実行とは独立して行い、
前記ステップc)の実行と前記ステップd) の実行とは時間軸上で重ならず、
前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとが前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を移行して前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムへ至るまでの総時間は、前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとが前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を移行して前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムへ至るまでの時間の合計よりも短いことを特徴とする流体輸送方法。
【請求項17】
ステップa)は、具体的に、前記第1作業モジュールにおけるパワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、前記パワーアセンブリを起動して前記流体貯留アセンブリから流体を吸引して前記流体中継アセンブリに一時的に貯留し、吸引終了後に、前記パワーアセンブリと前記流体中継アセンブリと前記流体貯留アセンブリとの接続を切断することを含み、及び/又は
ステップb)は、具体的に、前記第2作業モジュールにおけるパワーアセンブリと流体中継アセンブリと前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリとの接続を確立し、前記パワーアセンブリを起動して前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を吸引して前記流体中継アセンブリに一時的に貯留し、吸引終了後に、前記パワーアセンブリと前記流体中継アセンブリと前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリとの接続を切断することと、を含むことを特徴とする請求項
16に記載の流体輸送方法。
【請求項18】
ステップc)は、具体的に、前記第1作業モジュールにおける前記パワーアセンブリと、流体中継アセンブリと、前記流体使用システムとの接続を確立し、前記第1作業モジュールにおける前記パワーアセンブリを起動して、吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを含み、及び/又は
ステップd)は、具体的に、前記第2作業モジュールにおける前記パワーアセンブリと、流体中継アセンブリと、前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムとの接続を確立し、前記第2作業モジュールにおける前記パワーアセンブリを起動して、吸引された流体を前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムに押し込むこととを含むことを特徴とする請求項
17に記載の流体輸送方法。
【請求項19】
前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとがともに同一の流体使用システムに流体を輸送する場合には、
前記ステップc)は、分配アセンブリによって前記第1作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを備え、
前記ステップd)は、前記分配アセンブリ又は他方の分配アセンブリによって前記第2作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを備える
ことを特徴とする請求項
16から18のいずれか1項に記載の流体輸送方法。
【請求項20】
前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとがそれぞれ異なる流体使用システムに流体を輸送する場合には、
前記ステップc)は、分配アセンブリによって前記第1作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むことを備え、
前記ステップd)は、前記他方の分配アセンブリによって前記第2作業モジュールと前記流体使用システムとを接続し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記他方の流体使用システムに押し込むことを備える、
ことを特徴とする請求項
16から18のいずれか1項に記載の流体輸送方法。
【請求項21】
流体貯留アセンブリから第1種の流体を吸引し、時間TA1を掛けるステップと、
前記第1種の流体を流体使用システムに押し込み、時間TA2を掛けるステップと、
前記流体貯留アセンブリ又は他方の流体貯留アセンブリから第2種の流体を吸引し、時間TB1を掛けるステップと、
前記第2種の流体を前記流体使用システム又は他方の流体使用システムに押し込み、時間TB2を掛けるステップと、を備え、
ここで、前記第1種の流体と前記第2種の流体をともに同一の流体使用システムに押し込む場合には、
前記第1種の流体と前記第2種の流体は、同一の分配アセンブリまたは異なる分配アセンブリを介して同一の流体使用システムに押し込まれ、且つ、
前記第1種の流体と前記第2種の流体を異なる流体使用システムに押し込む場合には、
前記第1種の流体と前記第2種の流体は、同一の分配アセンブリを介して前記異なる流体使用システムに押し込まれ、
前記TB1は、前記TA1と時間軸上で少なくとも部分的に重なり、および/または、
前記TB1は、前記TA2と時間軸上で少なくとも部分的に重なり、
前記TB1と前記TB2は時間軸上で重ならず、前記TA1と前記TA2は時間軸上で重ならず、前記TA2とTB2は時間軸上で重ならず、
前記第1種、第2種の流体を前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから前記流体使用システム又は前記他方の流体使用システムに移行させる総時間Tは、前記TA1、TA2、TB1、およびTB2の総和より短いことを特徴とする流体輸送方法。
【請求項22】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の流体輸送システムを用いて流体の輸送を行うか、又は、請求項
9から21のいずれか1項に記載の流体輸送方法を用いて流体の輸送を行うことを特徴とする流体使用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の制御の技術分野に関し、特に、流体輸送システム、方法およびそれを適用する流体使用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物、化学、あるいは医療などの分野では、一般的な計器が、生物や化学反応のコア原理に基づき設計される。生物や化学反応に関与する物質(例えば試薬)は、物理学的には、通常に、液状又はガス状であり、流体と総称される。計器に必要な生物反応や化学反応を実現するために、計器には、通常、試料と流体の反応セルとして、いくつかの容器を使用する必要があり、且つ、反応セルに、必要に応じて順次に異なる流体を定量搬送できる流体輸送システムを設ける必要がある。
【0003】
流体輸送システムの設計時には、計器における生物反応や化学反応による輸送流体の速度、圧力、精度、正確さ、流量脈動などの多面的な要求を満たすように、適切な性能がある流体部品の開発や選択の必要があり、合理的な流動レイアウトや実行ロジックを設計する必要がある。
【0004】
流体輸送システムは、原理的には、上流から下流への圧力勾配(圧力差)を流れ方向に作り出して維持することで流体の運動を駆動する。したがって、流体の運動を駆動する時には、主に正圧駆動と負圧駆動という2つの設計構想に分けられる。正圧駆動とは、流路の上流側に安定した最高の圧力源を維持しながら、下流側に連通された流体には大気と接触する自由面があるため、流路全体の圧力が大気圧よりも高いことをいう。負圧駆動とは、流路の下流側に安定した最低の圧力源を維持しながら、上流側に連通された流体には大気と接触する自由面があるため、流路全体の圧力が大気圧よりも低いことをいう。しかしながら、正圧駆動でも負圧駆動でも、設計時には様々な条件に制約される。
【0005】
負圧駆動を採用する場合、流体が入る配管を上流に、反応セルを中央に置き、圧力勾配を作り出して維持する機器を下流に置くのが一般的である。負圧駆動は、多種類の流体を搬送して反応セルに入れる場合に対する大きな優位性があり、反応セルに流体が入る前の配管構造が比較的に簡単で、きれいに洗浄しやすく、反応セルに入る前の異なる流体の間のクロスコンタミネーションのリスクを低減する。従来、一回の微量かつ高精度な輸送を目標とする流体輸送システムを実現するために、このような設計がなされてきた。しかし、負圧駆動の欠点は、負圧システムの圧力源の圧力の限界が真空であるため、その圧力勾配の限界が標準大気圧であり、流体輸送システムの流量、つまり最大流速を制限している点である。
【0006】
正圧駆動を採用する場合、流体が入る配管を上流側に配置し、圧縮ガスを上流の流体の自由面に作用させ、下流に反応セルを置くのが一般的である。正圧駆動は急速な輸送を必要とする反応セルへの流体の進入に対して大きな優位性があり、理論的には正圧駆動の圧力源に圧力の上限が無く、標準気圧を遥かに超えることができるため、その流体輸送システムの流量は同じ配管での負圧駆動を遥かに超えることができる。従来、高速輸送を目指したフロー輸送システムでは、正圧駆動が多く採用されている。ただし、正圧駆動の欠点は、流体のクロスコンタミネーションの課題は回避できるものの、気体の圧縮性が大きいため、駆動された流体の運動の速度も精度も制御が難しいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開PCT/CN2017/113797
【発明の概要】
【0008】
従来技術の上記一部又は全部の問題、及びその他の潜在的な問題を解決するためには、流体輸送システム、流体輸送方法およびそれを適用する流体使用装置を提出する必要がある。
【0009】
第1の態様では、負圧駆動方式で流体貯留アセンブリから流体を吸引して、吸引された前記流体を正圧駆動方式で流体使用システムに送り込む流体輸送システムが提供される。
【0010】
第2の態様では、少なくとも2つの作業モジュールを備え、前記作業モジュールのそれぞれは、流体貯留アセンブリから少なくとも1種類の流体を流体使用システムに移行し、前記少なくとも2つの作業モジュールが前記流体貯留アセンブリから少なくとも2種類の流体を前記流体使用システムに移行する総時間は、前記各作業モジュールが流体貯留アセンブリから1つの流体を前記流体使用システムに移行する時間の合計よりも短いことを特徴とする流体輸送システムが提供される。
【0011】
第3の態様では、負圧駆動方式で流体を吸引するステップ、および
吸引された前記流体を正圧駆動方式で流体使用システムに送り込むステップ、を備える流体輸送方法が提供される。
【0012】
第4の態様では、さらに、第1作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、前記第1作業モジュールを起動して前記流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、前記第1作業モジュールと前記流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップa)と、
前記第2作業モジュールと前記流体貯留アセンブリ又は他方の流体貯留アセンブリとの接続を確立し、第2作業モジュールを起動して前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第2作業モジュールと前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップb)と、
前記第1作業モジュールと流体使用システムとの接続を確立し、前記第1作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムに押し込むステップc)と、
前記第2作業モジュールと前記流体使用システムまたは他方の流体使用システムとの接続を確立し、前記第2作業モジュールを起動して吸引された流体を前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムに押し込むステップd)とを備え、
ここで、前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとが前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を移行して前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムへ至るまでの総時間は、前記第1作業モジュールと前記第2作業モジュールとが前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから流体を移行して前記流体使用システムまたは前記他方の流体使用システムへ至るまでの時間の合計よりも短いことを特徴とする流体輸送方法が提供される。
【0013】
第5の態様では、さらに、一流体貯留アセンブリから第1種の流体を吸引し、時間TA1を掛けるステップと、
前記第1種の流体を流体使用システムに押し込み、時間TA2を掛けるステップと、
前記流体貯留アセンブリ又は他方の流体貯留アセンブリから第2種の流体を吸引し、時間TB1を掛けるステップと、
前記第2種の流体を前記流体使用システム又は他方の流体使用システムに押し込み、時間TB2を掛けるステップと、を備え、ここで、前記第1種、第2種の流体を前記流体貯留アセンブリ又は前記他方の流体貯留アセンブリから前記流体使用システム又は前記他方の流体使用システムに移行させる総時間Tは、前記TA1、TA2、TB1、およびTB2の総和より短いことを特徴とする流体輸送方法が提供される。
【0014】
第6の態様では、さらに、上記いずれかの流体輸送システムを用いて流体の輸送を行うか、又は、上記いずれかの流体輸送方法を用いて流体の輸送を行う流体使用装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態による流体輸送システム、方法及び装置によれば、負圧駆動方式による流体の吸引及び正圧方式による吸引された流体を流体使用システムに送り込むことで、流体貯留アセンブリから流体を取り出す際の定量の精度を保証しつつ、流体使用システムへの流体の迅速な輸送を保証することができる。
【0016】
本発明の実施形態による流体輸送システム及び方法は、少なくとも2つの作業モジュールを同時に採用してもよく、第1作業モジュールと第2作業モジュールとは、1つの流体貯留アセンブリから少なくとも2種類の流体を抜き出して1つの流体使用システムに送り込み、第1作業モジュールと第2作業モジュールとが流体貯留アセンブリから2種類の流体を抜き出して流体使用システムに送り込むまでの総時間をTとし、第1作業モジュールが流体貯留アセンブリから1方の流体を抜き出して流体使用システムに送り込むまでの所要時間をTAとし、第2作業モジュールが流体貯留アセンブリから他方の流体を抜き出して流体使用システムに送り込むまでの所要時間をTBとし、TをTAとTBの合計よりも小さくすることで、流体輸送の合計時間をより短くすることができる。なお、複数の作業モジュールを設けて、流体を群に分けて輸送し、流体のクロスコンタミネーションを最大限に回避している。正圧輸送時に残る配管空間を充填液で充填することは、圧縮気体を用いるよりも輸送流体の定量的な精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施例に係る発明をより明確に説明するために、以下に、本発明の実施例において必要な図面を簡単に紹介する。以下の説明における図面はいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を伴わずに、これらの図面からも他の図面が得られることは明らかである。
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1における流体輸送システムのブロック概略図である。
【
図5】
図1に示すシステムの異なる作業時間を示す図である。
【
図6】
図1に示すシステムの具体的な実施例1を示す図である。
【
図7】
図1に示すシステムの具体的な実施例2を示す図である。
【
図8】
図1に示すシステムの具体的な実施例3を示す図である。
【
図9】
図1に示すシステムの具体的な実施例4を示す図である。
【
図10】
図1に示すシステムの具体的な実施例5を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態2における流体輸送方法のフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態3における流体輸送方法のフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態4における流体輸送方法のフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態5における流体使用装置のプロック図を示す。
【
図15】本発明の実施形態6における流体使用装置のプロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態をさらに説明する。
本発明の実施例における技術的解決手段は、本発明の実施形態における図面を参照して以下に明確かつ完全に説明される。なお、記載された各実施形態は、本発明の実施形態の一部に過ぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。創造的な努力なしに本発明の実施形態に基づいて当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本発明の範囲内である。
【0020】
なお、ある要素がもう1つの要素に「固定された」、「取り付された」と称される場合、それは直接に前記もう1つの要素に存在してもよいし、他の要素を介して前記もう1つの要素に固定されてもよい。ある要素がもう1つの要素に「設けられる」と考えられる場合、それは前記もう1つの要素に直接に設けられてもよいし、他の要素を介して前記もう1つの要素に設けられてもよい。本明細書で使用される用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連する項目すべての及び任意の組み合わせを含む。
【0021】
図1を参照して、本発明の実施の形態において、作業モジュール2と、補助モジュール3と、分配アセンブリ4とを含む流体輸送システムの概略図である。上記作業モジュール2は、流体輸送システム1における流体の輸送を駆動する機能ユニットであり、1つ又は複数であってよく、作業モジュール2のそれぞれは、流体選択アセンブリ21、流体中継アセンブリ22及びパワーアセンブリ23を備えている。上記補助モジュール3は、流体輸送システム1において作業モジュール2による流体の輸送に寄与する全てのアセンブリの集合である。上記補助モジュール3は、貯留アセンブリを備えており、本実施形態では、流体貯留アセンブリ31、廃棄物貯留アセンブリ32、及び充填液貯留アセンブリ33の異なる種類の3種類の貯留アセンブリ30を備えている。各作業モジュール2は、補助モジュール3の上記3種類の貯留アセンブリ30に接続されているが、上記3種類の貯留アセンブリ30のそれぞれの数は1つであっても複数であってもよく、異なる実施形態では、各貯留アセンブリ30は、一部の作業モジュール2によって単独で使用されてもよいし、すべての作業モジュール2によって共通で使用されてもよい。分配アセンブリ4は、流体輸送システム1において、異なる作業モジュール2を切り替えて流体使用システム5に流体を輸送するものであり、上記流体輸送システム1が1つの作業モジュール2のみで流体使用システム5に流体を輸送する場合には、分配アセンブリ4を設けずに、作業モジュール2を流体使用システム5に直接接続してもよい。流体輸送システム1がN個(N≧2)の作業モジュールを有して流体使用システム5に流体を輸送する場合には、分配モジュール4を設けて、異なる作業モジュール2を流体使用システム5に連通させる。
【0022】
図1に示すように、流体使用システム5とは、流体を使用するシステムであり、通常、反応セルと関連する補助部材や配管とを含んでおり、流体輸送システム1が流体を輸送する先である。流体使用システム5に入った流体は、当該システム5内で何らかの目的のために使用された後、廃棄物(例えば、廃液)として流体輸送システム1の補助モジュール3の廃棄物貯留システム32に排出されて貯留される。流体使用システム5は流体輸送システム1に属さないので、内部の流体輸送や代替は、本願では詳しく説明しない。
【0023】
以下、本実施形態における流体輸送システム1の各アセンブリについて詳述する。
パワーアセンブリ23は、流体輸送システム1内の圧力勾配(圧力差)を作り出して維持し、流体輸送システム1内で流体を駆動させる。本実施形態では、パワーアセンブリ23は、少なくとも3種類の流体ポートを有し、流体中継モジュール22に接続される第1種ポート231の数は、パワーアセンブリ23が接続される流体中継モジュール22の数によって決定され、充填液貯留アセンブリ33に接続される第2種ポート232の数は、パワーアセンブリ23が接続する全ての充填液貯留アセンブリ33の経路数によって決定され、廃棄物貯留アセンブリ32に接続される第3種ポート233の数は、パワーアセンブリ23が接続される全ての廃棄物貯留アセンブリ32の経路数によって決定される。本実施形態において、パワーアセンブリ23は、流体がパワーアセンブリ23から流体中継モジュール22へ流れる方向を正方向とし、流体が流体中継アセンブリ22からパワーアセンブリ23へ流れる方向を逆方向という正逆両方向に流体の運動を駆動可能である。パワーアセンブリ23は、流体を駆動して正方向に流動させると、流体中継アセンブリ22と充填液貯留アセンブリ33とを連通させて、充填液貯留アセンブリ33に貯留された充填液が流体の流動後の空間を埋めるようにする。パワーアセンブリ23は、流体を駆動して逆方向に流動させると、流体中継アセンブリ22と廃棄物貯留アセンブリ32とを連通させて、余剰の流体を廃棄物として廃棄物貯留アセンブリ32に流入させる。本実施形態において、パワーアセンブリ23は、流体の運動を駆動するための各種類のポンプ、例えば、インジェクションポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギヤポンプ、クリープポンプ等であってもよい。
【0024】
この流体中継アセンブリ22は、輸送方向を変える必要がある流体を貯留する。流体中継アセンブリ22は、本実施形態において、少なくとも2つのポートを備えるべきであり、一方のポート221は流体選択アセンブリ21に接続され、他方のポート222はパワーアセンブリ23に接続されている。本実施形態では、流体中継アセンブリ22は、パワーアセンブリ23が正逆両方向に流体を駆動するのをサポートしつつ、流れ方向を変える流体の一時貯留をサポートするので、流体中継アセンブリ22の2つのポート221、222のいずれか一方のポートから流体を進入させ、他方のポートから流体を流出させることができる。流体中継アセンブリ22は、オンデマンドで設計された特定の仕様を有する容器や配管であってもよいし、注射ポンプの作業に用いられる注射器であってもよい。
【0025】
流体選択アセンブリ21は、流体選択アセンブリ22に接続された異なるアセンブリを相互に連通させて、流体を輸送する経路の選択を可能にする。本実施形態では、各流体選択アセンブリ21は、異なるアセンブリに接続される3種類のポートを有し、流体中継アセンブリ22に接続された第1種ポート211の数は、接続された流体中継アセンブリ22の数によって決定され、分配アセンブリ4に接続された第2種ポート212の数は、流体選択アセンブリ21が分配アセンブリ4に接続するべき経路の数によって決定され、その経路の数は一般的に1数であり、第3種ポート213は、流体貯留アセンブリ31における流体を貯留する容器に接続されている。各流体選択アセンブリ21の第3種ポート213は、流体を貯留する1つの容器にしか対応できず、流体を貯留する同一の容器は、同一の流体選択アセンブリ21上の異なる第3種ポート213に同時に接続されてもよいし、異なる流体選択アセンブリ21の第3類ポート213に同時に接続されてもよい。流体貯留アセンブリ31の流体を貯留する1つの容器と一流体選択アセンブリ21の第3種ポート213とを接続すれば、容器内の流体を使用する必要があるときに、容器内の流体を流体使用システム5に輸送するために、流体使用システム5に連通する経路が確立される。流体選択アセンブリ21は、作業時に、必要に応じて、1つの第1種ポート211と1つの第3種ポート213とを連通させたり、1つの第1種ポート211と1つの第2種ポート212とを連通させたりすることができる。本実施形態において、流体選択アセンブリ21は、様々なタイプの電磁弁、ロータリー弁などの選択弁、または複数の電磁弁および/または選択弁によりオンデマンドからなる集合、あるいは注射ポンプに配置された異なるポートを切り替えるための電磁弁または選択弁のヘッドであってもよい。
【0026】
分配アセンブリ4は、分配アセンブリ4に接続された異なるアセンブリを相互に連通して、流体輸送システム1内の流体を輸送する経路の選択を実現する。本実施形態では、分配アセンブリ4は、必要に応じて異なる作業モジュール2と流体使用システム5とをそれぞれ連通するため、異なるアセンブリに接続される2種類のポートを有し、第1種ポート411は流体選択アセンブリ21に接続されており、第1種ポート411の数は分配アセンブリ4に接続される流体選択アセンブリ21の全経路の数によって決定され、第2種ポート412は流体使用システム5に接続されており、第2種ポート412の数は流体使用システム5が分配アセンブリ4に接続するべき経路の数に依存する。分配アセンブリ4は、必要に応じて、作業中に1つの第1種ポート411と1つの第2種ポート412とを連通することができる。本実施形態において、分配アセンブリ4は、種々のタイプの電磁弁、選択弁、又は複数の電磁弁及び/又は選択弁のオンデマンドからなる集合であってもよい。
【0027】
流体貯留アセンブリ31は、流体使用システム5に輸送する必要がある流体を貯留するものである。流体貯留アセンブリ31の数は単数であっても複数であってもよく、流体貯留アセンブリ31ごとに流体使用システム5の要求に応じて輸送される必要がある流体の一部又は全部を貯留し、全ての流体貯留アセンブリ31が流体使用システム5の要求に応じて流体使用システム5に輸送される必要がある流体の全部を貯留している。各流体貯留アセンブリ31は、流体を収容する1つまたは複数の容器を含み、流体を収容する各容器は1種類の流体を収容し、少なくとも1つの流体選択アセンブリ21に対して少なくとも1つの配管を介して接続されていてもよい。流体貯留アセンブリ31は、異なるサイズや材質の容器を含んでもよく、また、必要に応じて、流体を抜き取るための流体針や配管、流体針の昇降を制御する機構、及び貯留の条件を満たすための温度制御手段等の関連部材を含んでもよい。
【0028】
充填液貯留アセンブリ33は、充填液を貯留するものである。本実施形態では、充填液貯留アセンブリ33の数は1つ又は複数であってもよく、充填液貯留アセンブリ33のそれぞれは、1つ又は複数のパワーアセンブリ23に必要な充填液を供給してもよく、パワーアセンブリ23のそれぞれは、充填液を供給するために少なくとも1つの充填液貯留アセンブリ33を必要とする。パワーアセンブリ23には、充填液を1種類又は複数種類用いることができる。充填液貯留アセンブリ33のそれぞれは、充填液を貯留する1又は複数の容器を備え、充填液を貯留する容器ごとに1種類の充填液を貯留し、当該容器は、少なくとも1つの配管を介して少なくとも1つのパワーアセンブリ23に接続されていてもよい。充填液は正圧流体系に必要な特殊流体であり、正圧流体には、流体を押し動かす必要から、作業モジュール2が分配アセンブリ4を介して流体使用システム5に流体を押し出す際に、流体輸送システム1に充填液が入る必要があり、流体輸送後に残る空間を埋めて、作業モジュール2の流体システムを流体で満たした状態を維持して、圧力勾配を維持する。充填液は、作業モジュール2が輸送する流体と化学反応することはできない。本実施形態では、充填液貯留アセンブリ33は、異なるサイズや材質の容器を含んでもよく、また、必要に応じて、充填液を抜き取るための流体針や配管、流体針の昇降を制御する機構、及び貯留の条件を満たすための温度制御手段等の関連部材を含んでもよい。
【0029】
廃棄物貯留アセンブリ32は、流体輸送システム1及び/又は流体使用システム5から排出される廃棄物を貯留する。本実施形態において、廃棄物貯留アセンブリ32は、1つ又は複数であってよく、廃棄物貯留アセンブリ32毎に、1つ又は複数のパワーアセンブリ23から、及び/又は、流体使用システム5から排出された廃棄物を貯留してよい。廃棄物貯留アセンブリ32は、廃棄物を貯留する1つ又は複数の容器を備え、廃棄物貯留容器のそれぞれは、少なくとも1つの配管を介して、流体使用システム5又はパワーアセンブリ23に接続可能である。本実施形態において、廃棄物貯留アセンブリ32は、サイズや材質の異なる容器を含んでよく、また、必要に応じて、液位を検出するためのセンサ、臭気を濾過するためのフィルター、及びその容器を移行するためのカート等の関連部材を含んでもよい。
【0030】
以上が、流体輸送システム1の機能ブロックおよび構成要素についての詳細な説明および紹介である。次に、流体輸送システム1の作業ロジックについて説明する。
【0031】
流体輸送システム1では、各作業モジュール2は同一の方式で流体を輸送しており、補助モジュール3の連携によって、流体貯留アセンブリ31からある流体使用システム5に、ある流体が輸送される。流体輸送システム1における作業モジュール2の数は1つでも複数でよいため、異なる数の作業モジュール2を用いて流体輸送を行う場合、流体輸送システム1の作業ロジックは、異なる数の作業モジュール2が連携して作業を行うロジックであり、作業モジュール2の数に応じて個別に検討する必要がある。
【0032】
図1に示すように、各作業モジュールが流体を輸送する具体的な処理は、
図1の矢印を付した接続線で表される2つのステップ、すなわち、ステップ1およびステップ2に分解されることができる。
【0033】
ステップ1は、負圧駆動方式により流体貯留アセンブリ31から流体中継アセンブリ22へ流体を搬送する過程を表す矢印付きの点線で示している。ステップ1の実行時には、まず、作業モジュール2の流体選択アセンブリ21を用いて、必要な流体を作業モジュール2の流体中継アセンブリ22に連通するとともに、作業モジュール2のパワーアセンブリ23が廃棄物貯留アセンブリ32に連通して、流体貯留アセンブリ31から、流体選択アセンブリ21、流体中継アセンブリ22、パワーアセンブリ23、廃棄物貯留アセンブリ32をこの順に経由する通路を形成する。その後、パワーアセンブリ23が起動され、この通路に圧力勾配を作り出し、流体貯留モジュール31から流体を流出させ、流体選択アセンブリ21を経て流体中継アセンブリ22に入る。前記通路に沿って流体が搬送されるとともに、前記通路から排出された流体は、廃棄物としてパワーアセンブリ23によって廃棄物貯留アセンブリ32に排出されて貯留される。
【0034】
ステップ2は、流体中継アセンブリ22から流体を正圧駆動により流体使用システム5に輸送する過程を表す矢印付きの実線で示している。ステップ2の実行時には、まず、流体の輸送が必要な作業モジュール2の流体選択アセンブリ21を、分配アセンブリ4によって流体使用システム5に連通するとともに、この作業モジュール2のパワーアセンブリ23を充填液貯留アセンブリ33に連通させ、充填液貯留アセンブリ33から、パワーアセンブリ23、流体中継アセンブリ22、流体選択アセンブリ21、分配アセンブリ4、流体使用システム5を順に経由する通路を形成する。その後、パワーアセンブリ23は、この通路に圧力勾配を作り出し、流体中継アセンブリ22から流体を流出させ、流体選択アセンブリ21と分配アセンブリ4を順に経て流体使用システム5に入る。前記通路に沿って流体が搬送されつつ、充填液貯留アセンブリ33に貯留された充填液がパワーアセンブリ23によって流体中継アセンブリ22に入り、前記通路における流体排出後に残された空間を埋める。
【0035】
強調すべきは、いずれの1つの作業モジュール2も流体を搬送するたびにステップ1とステップ2を順次実行しなければならないことである。流体輸送システム1において、1つの作業モジュール2のみが流体を輸送する場合、当該作業モジュール2は、流体を輸送するたびにステップ1とステップ2を順次実行する必要がある。流体輸送システム1に複数の作業モジュール2が同時に流体を輸送するのであれば、それらの間で相互に制約する関係を考慮しなければならず、主に以下の2点を考慮する必要がある。
【0036】
1点目は、作業モジュール2毎にステップ1を実行する場合、その作業モジュール内の部品を呼び出して動作するだけでよいので、他の作業モジュール2がステップ1を実行してもステップ2を実行しても、他の作業モジュール2の影響や制約を受けることがない。
【0037】
2点目は、いずれかの作業モジュール2がステップ2を実行する場合、その作業モジュール2内のアセンブリを呼び出すだけでなく、分配アセンブリ4から流体使用システム5への経路を他の作業モジュール2と共用する必要があるので、ステップ2は一度に1つの作業モジュール2しか実行できず、ステップ1を実行する必要がある他の作業モジュール2は続行できるが、ステップ2を実行する必要がある他の作業モジュール2は待機する必要がある。
【0038】
上述した作業モジュール2の作業ロジックによれば、本実施形態における流体輸送システム1の作業ロジックは、作業モジュール2の数の違いに応じて最適化し、総作業時間を減少させることが可能であり、具体的には以下のように解析する。
【0039】
流体輸送システム1に作業モジュール2が1つしかない場合、流体輸送システム1の作業ロジックは、上述した単一の作業モジュール2の作業方式であり、流体を輸送するたびにステップ1を先に実行し、ステップ2を次に実行する。流体Aと流体Bを順次に輸送する総時間の合計を
図2に示すと、TA1は流体Aを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TA2は流体Aを輸送する場合にステップ2が実行される時間であり、TB1は流体Bを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TB2は流体Bを輸送する場合にステップ2が実行される時間である。このため、総実行時間tは、
t=TA1+TA2+TB1+TB2である。
【0040】
流体輸送システム1に2つの作業モジュール2のみが存在すると、流体輸送システム1の作業ロジックにはある程度の柔軟性が得られ、以下の2つの場合を考えればよい。
a):同一の作業モジュール2である第1作業モジュール2a又は第2作業モジュール2a’を用いて流体A及び流体Bを順次輸送する。
b):異なる作業モジュール2である第1作業モジュール2a及び第2作業モジュール2a’を用いて流体A及び流体Bを順次輸送する。
【0041】
ケースa)では、第1作業モジュール2aを用いて流体Aと流体Bを順次輸送し、その際、第2作業モジュール2bは、その過程で、待機、又は後続の流体に対するステップ1を実行してもよい。流体Aと流体Bを順次に輸送する総時間の合計を
図3に示す。TA1は流体Aを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TA2は流体Aを輸送する場合にステップ2が実行される時間であり、TB1は流体Bを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TB2は流体Bを輸送する場合にステップ2が実行される時間である。このため、総実行時間tは、
t=TA1+TA2+TB1+TB2である。
【0042】
ケースb)では、第1作業モジュール2aと第2作業モジュール2a’は、それぞれ流体A及び流体Bを順次輸送していき、このとき流体A及び流体Bを輸送するステップ1は、第1作業モジュール2a及び第2作業モジュール2a’により、それぞれ同時に開始してもよい。
【0043】
流体Aを輸送するステップ1とステップ2の合計時間が流体Bを輸送するステップ1の時間より長い場合、流体Aと流体Bとの順次輸送を行った合計時間は、
図4Aと
図4Bに示されており、TA1は流体Aを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TA2は流体Aを輸送する場合にステップ2が実行される時間であり、TB1は流体Bを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TB2は流体Bを輸送する場合にステップ2が実行される時間である。したがって、TA1+TA2>TB1を満たしていれば、TA1>TB1であっても、TA1<TB1であっても、総実行時間tは、
t=TA1+TA2+TB2である。
【0044】
流体Aを輸送するステップ1とステップ2の合計時間が流体Bを輸送するステップ1の時間より短い場合、流体Aと流体Bとの輸送を行った合計時間は、
図5に示されており、TA1は流体Aを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TA2は流体Aを輸送する場合にステップ2が実行される時間であり、TB1は流体Bを輸送する場合にステップ1が実行される時間であり、TB2は流体Bを輸送する場合にステップ2が実行される時間である。したがって、TA1+TA2<TB1が満たされていれば、総実行時間tは、
t=TB1+TB2となる。
【0045】
説明すべきは、本発明における作業モジュールごとの設置と機能は同じであるため、作業モジュール2aと作業モジュール2a’とは、2つの作業モジュールが異なる流体輸送を実行する際の区別を表すだけであり、それらの間の設置や機能上の区別を表すものではない。
【0046】
図2~
図5では、作業モジュール2の増加につれて、作業ロジックの最適化に伴い、流体Aと流体Bを順次輸送する総時間の削減を行うプロセスを示している。流体輸送システム1の作業モジュール2の数が増えるにつれて、且つ、各作業モジュール2で輸送可能な流体の種類が増えていくと、異なる作業モジュール2がそれぞれ行う複数種類の流体を順次輸送する総時間は、単一の作業モジュール2が行う上記流体を順次輸送する総時間よりも常に短く、異なる作業モジュール2が毎回異なる種類の流体を輸送する方式が好ましい。
【0047】
流体輸送システム1が2つ以上の作業モジュール2を有する場合、各作業モジュール2が輸送可能な流体の種類が多いほど、2種類以上の流体を連続的に輸送する際に得られる柔軟性が高くなり、総実行時間が短くなり、理論上の複数の流体を順次輸送する総時間は、流体を種類ごとにステップ2のみを実行する時間の合計に限りなく近づく。しかし、実際に使用する場合、柔軟性の問題だけでなく、例えば、クロスコンタミネーション、流体の使用量など多くの要因が考えられ、これらの要因は、流体輸送システム1の作業モジュール2の数量の設置、または作業モジュール2毎に異種の流体を接続する取捨選択に影響し、一方、異なる設計要件による制約や、異なる輸送流体の順序要件が、流体輸送システム1に異なる最適作業時間を生じさせることになる。
【0048】
したがって、流体輸送システム1の作業ロジックは、
流体輸送システム1に作業モジュール2が1つしかない場合、流体輸送システム1の作業ロジックは、上述した単一の作業モジュール2の作業方式であり、流体を輸送するたびにステップ1を先に実行し、ステップ2を次に実行すること、
本システムに2つ以上の作業モジュール2がある場合、以下の原則に従えば、複数の流体を輸送する際の作業ロジックを柔軟に編成し、総実行時間を最短にすることができ、
異なる作業モジュール2を優先的に使用して異なる種類の流体を輸送し、
作業モジュール2のそれぞれは、各種類の流体を輸送するステップ2を実行する前に、該流体の輸送を完了するステップ1を実行できる限り保証し、
各作業モジュール2は、各種類の流体の輸送を完了するステップ2の直後に、次の流体を輸送するステップ1の実行を開始すること、にまとめることができる。
【0049】
本実施形態による流体輸送システム1は、従来技術と比較して以下の利点を有する。
【0050】
1.作業モジュール2は、流体の負圧駆動と正圧駆動を同時に利用して輸送する。作業モジュール2の流体輸送の過程を、ステップ1とステップ2に分解してもよく、ステップ1は、負圧駆動で、流体貯留アセンブリ31から流体中継アセンブリ22に流体を輸送することで、流体貯留アセンブリ31から流体を取り出す際の定量的な精度を保証し、ステップ2は、正圧駆動で、流体中継アセンブリ22から流体使用システム5に流体を輸送するため、同じ配管条件で負圧駆動よりも高速な流体の輸送が可能となり、流体輸送システム1が、単に流体の負圧輸送を用いた流体輸送システムよりも速度の優位性を持たせることができる。
【0051】
2.充填液補助作業モジュール2を導入して流体の正圧輸送を行う。充填液は、作業モジュール2がステップ2を実行する際に用いられ、流体を正圧で輸送しながら配管の空間を充填するために用いられる。充填液が液状であるため、その圧縮性を無視することができるので、流体輸送システム1の作業モジュール2は、圧縮ガスを用いて流体を正圧で輸送する流体輸送システムに比べて、流体の輸送の定量的な精度が高い。また、充填液は、安全でコストの低い流体、洗浄液又は純水を選ぶことができ、また、流体の輸送後に配管を洗い流す役割も果たし、前後両流体のクロスコンタミネーションを避けることができる。
【0052】
3.作業モジュール2を複数設置することで、流体の輸送の総時間をより短縮することができる。複数の作業モジュール2は、流体の輸送の作業ロジックをシリアルロジックからパラレルロジックに変化させることができ、複数の作業モジュール2を同時に作業させることが可能となり、輸送流体の総時間を最適化する。例えば、一方の作業モジュール2がステップ2を実行する際に、他方の作業モジュール2がステップ1を実行させ、他方の作業モジュール2にステップ1を実行させる時間を総時間から省いて、流体輸送システム1の作業の総時間をより短くする。
【0053】
4.作業モジュール2を複数設置することで、流体を群に分けることができ、流体のクロスコンタミネーションを最大限に回避することが可能となる。流体輸送システム2に複数の作業モジュール2が存在すると、異なる作業モジュール2は、輸送できる流体の種類を柔軟に設定することで、複数の異なる流体を群に分けて、分配アセンブリ4から流体使用システム5までの間の配管のみを流体群毎に共用し、流体のクロスコンタミネーションの確率を最も低くすることが可能となる。
【0054】
以下、流体輸送システム1について、具体的な実施例を用いてさらに説明する。
【0055】
<実施例1:流体輸送システム1が、1つの作業モジュールを有している>
図6に示すように、流体輸送システム1は、1つの作業モジュール2と補助モジュール3と、を備える。作業モジュール2は、流体選択アセンブリ21と、流体中継アセンブリ22と、パワーアセンブリ23とを備え、補助モジュール3は、流体貯留アセンブリ31と、廃棄物貯留アセンブリ32と、充填液貯留アセンブリ33とを備える。本実施例では、パワーアセンブリ23に注射ポンプ203、流体選択アセンブリ21に選択弁201、流体中継アセンブリ22に選択弁201と注射ポンプ203との間の流体中継配管202、流体貯留アセンブリ31に流体タンク301、廃棄物貯留アセンブリ32に廃棄物桶302、充填液貯留アセンブリ33に充填液桶303をそれぞれ採用している。
【0056】
本実施形態において、パワーアセンブリ23は、注射ポンプ203である。注射ポンプ203には、少なくとも2つの分配式ポート2031、2032が設けられており、分配式ポート2031は、1つの配管を介して選択弁201の共通ポート2011に接続され、分配式ポート2032は、少なくとも1つの配管を介して充填液桶303に接続され、また、分配式ポート2033を必要に応じて設置し、分配式ポート2033を介して1つ又は複数の配管を用いて廃棄物桶302を接続するようにしてもよく、他の実施例では、分配式ポート2033及び廃棄物桶302の接続を省略してもよい。注射ポンプ203の分配ポート2031、2032のそれぞれは、注射ポンプ203内の注射2034を個別に連通可能とする必要がある。
図6には、3つの分配式ポート2031、2032、2033を有する注射ポンプ203が示されており、必要に応じてより多くの分配式ポートを有する注射ポンプ203が用いられ、注射ポンプ203のこれらの分配式ポートには、選択弁201の共通ポート2011と、この注射ポンプ203により使用される全ての充填液桶303と、この注射ポンプ203により使用される全ての廃棄物桶302とが必要に応じて接続される。
【0057】
本実施例においては、流体選択アセンブリ21が選択弁201である。選択弁201は、1つの共通ポート2011と、複数の位置ポート2012とを有する。選択弁201の共通ポート2011は、配管を介して注射ポンプ203の分配式ポート2031に接続されており、選択弁201と注射ポンプ203との間の配管が流体中継配管202である。選択弁201の位置ポート2012は、流体タンク301の流体を収容する全ての容器及び大気が、それぞれ配管により接続されている。大気に連通する位置ポート2012は、予備的に用いられてもよいし、流体間の隔離ガスとして大気から定量の空気を吸い込んでもよいし、具体的には、出願番号PCT/CN2017/113797号のPCT特許出願による開示内容を参照されたい。
図6に示す選択弁201は6位置7ポート選択弁である。選択弁201は、流体タンク301の4種類の流体に接続された4つの位置ポート2012、流体使用システム5に接続された1つの位置ポート2012、大気に連通された1つの位置ポート2012を含む6つの位置ポート2012を有している。流体容器の数の違いに応じて異なる数の位置ポート2012を有する選択弁201を用いることができ、流体容器の数がNの場合には少なくともN+2の位置ポート2012を有する選択弁201が必要となる。
【0058】
本実施形態では、流体中継アセンブリ22として、選択弁201と注射ポンプ203との間の流体中継配管202を用いている。流体中継配管202は、流体の貯留及び通過可能な配管であり、一端が注射ポンプ203のポート2031に接続され、他端が選択弁201の共通ポート2011に接続されている。流体中継配管202の内体積は、注射ポンプ203が流体を1回輸送する最大体積を決定し、注射ポンプ203の注射器2034の内体積が流体中継配管202の内体積よりも大きい必要がある。
図6には流体中継配管202の一区間が示されており、注射ポンプ203による1回の輸送の最大流量の違いに応じて、異なる実施例では、異なる内体積の流体中継配管202を選択することができる。
本実施例は、流体貯留アセンブリ31として、流体タンク301を用いている。流体タンク301は、流体を収容する容器を複数含み、それぞれの容器は、配管を介して選択弁201の異なる位置ポート2012に接続される。
図6では、4つの容器R1~R4を有する流体タンク301が1つ示されており、容器R1~R4ごとに選択弁201の位置ポート2012に配管で接続されている。他の実施形態では、流体量の違いによっては、異なる数の容器を有する流体タンク301を用いてもよい。
本実施例では、充填液貯留アセンブリ33として充填液桶303を用いている。充填液桶303は、少なくとも1つの配管を介して注射ポンプ203の分配式ポート2032に接続されている。
図6は、注射ポンプ203に1つの充填液桶303を用いた場合を示している。
【0059】
本実施例では、廃棄物貯留アセンブリ32として廃棄物桶302を用いている。廃棄物桶302は、配管を介して流体使用システム5に接続され、流体使用システム5から排出される廃棄物を集め、更に、1つ又は複数の配管を介して注射ポンプ203の分配式ポート2033に接続され、注射ポンプ203から排出される廃棄物を集める。
図6は、注射ポンプ203と流体使用システム5とが1つの廃棄物桶302を共用している場合を示す。実情の違いにより、他の実施例では、注射ポンプ203及び流体使用システム5を、それぞれ1つ又は複数の廃棄物桶302を単独で用いたり、流体使用システム5を、1つ又は複数の廃棄物桶302を単独で用いたりして、注射ポンプ203に廃棄物桶302を用いないようにしてもよい。
【0060】
<実施例2:流体輸送システム1が、1つの作業モジュールを有している>
図7に示すように、本実施形態では、流体輸送システム1は、1つの作業モジュール2と、1つの補助モジュール3とから構成されている。作業モジュール2は、流体選択アセンブリ21と、流体中継アセンブリ22と、パワーアセンブリ23とを備え、補助モジュール3は、流体貯留アセンブリ31と、廃棄物貯留アセンブリ32と、充填液貯留アセンブリ33とを備える。本実施例においては、パワーアセンブリ23は注射ポンプ203であり、流体選択アセンブリ21は選択弁201aと電磁弁201bの組合せであり、流体中継アセンブリ22は電磁弁201bと注射ポンプ203の間の流体中継配管202であり、流体貯留アセンブリ31は流体タンク301であり、廃棄物貯留アセンブリ32は廃棄物桶302であり、充填液貯留アセンブリ33は充填液桶303である。
【0061】
本実施例では、パワーアセンブリ23として注射ポンプ203を用いている。注射ポンプ203には、少なくとも2つの分配式ポート2031、2032が設けられており、分配式ポート2031は、1つの配管を介して選択弁201aの共通ポート2011aに接続され、分配式ポート2032は、少なくとも1つの配管を介して充填液桶303に接続され、また、分配式ポート2033を必要に応じて設置し、分配式ポート2033を介して1つ又は複数の配管を用いて廃棄物桶302に接続するようにしてもよく、他の実施例では、分配式ポート2033及び廃棄物桶302の接続を省略してもよい。注射ポンプ203の分配ポート2031、2032毎に注射ポンプ203内の注射器2034を個別に連通する必要がある。
図7には、3つの分配式ポート2031、2032、2033を有する注射ポンプ203が示されており、必要に応じてより多くの分配式ポートを有する注射ポンプ203が用いられ、注射ポンプ203のこれらの分配式ポートには、選択弁201aの共通ポート2011aと、この注射ポンプ203により使用される全ての充填液桶303と、この注射ポンプ203により使用される全ての廃棄物桶302とが必要に応じて接続される。
【0062】
本実施例においては、流体選択アセンブリ21として、電磁弁201bを選択弁201aに合わせて用いる。電磁弁201bは、1つの共通ポート2011bと、2つの位置ポート2012bとを有している。電磁弁201bの共通ポート2011bは、注射ポンプ203の分配式ポート2031に配管を介して接続されており、電磁弁201bと注射ポンプ203との間の配管が流体中継配管202である。電磁弁201bの位置ポート2012bは、選択弁201aの共通ポート2011aと流体使用システム5とをそれぞれ配管により接続している。選択弁201aは、1つの共通ポート2011aと、複数の位置ポート2012aとを有している。選択弁201aの共通ポート2011aは、電磁弁201bの位置ポート2012bに配管を介して接続され、選択弁201aの位置ポート2012bは、流体タンク301の流体を収容する全ての容器および大気にそれぞれ配管を介して接続される。大気に連通する位置ポート2012bは、予備的に用いられてもよいし、流体間の隔離ガスとして大気から定量の空気を吸い込んでもよいし、具体的には、出願番号PCT/CN2017/113797号のPCT特許出願による開示内容を参照されたい。
図7に示す電磁弁201bは2位置3ポート電磁弁であり、示された選択弁201aは6位置7ポート電磁弁である。電磁弁201bは、2つの位置ポート2012bを有し、一方の位置ポート2012bは常開ポート、他方の位置ポート2012bは常閉ポートであり、それぞれ選択弁201aの共通ポート2011aと流体使用システム5とを接続している。選択弁201aは、流体タンク301内の4種類の流体を接続する4つの位置ポート2012a、および大気に連通する2つの位置ポート2012aを含む6つの位置ポート2012aを有している。他の実施例では、流体容器の数の違いに応じて異なる数の位置ポート2012aを有する選択弁201aを用いることができ、流体容器の数がNの場合には少なくともN+1の位置ポート2012aを有する選択弁201aが必要となる。
【0063】
本実施例では、流体中継アセンブリ22として、電磁弁201bの共通ポート2011bと注射ポンプ203との間の流体中継配管202を用いている。流体中継配管202は、流体の貯留及び通過可能な配管であり、一端が注射ポンプ203の分配式ポート2031に接続され、他端が電磁弁201bの共通ポート2011bに接続されている。流体中継配管202の内体積は、注射ポンプ203が流体を1回輸送する最大体積を決定し、注射ポンプ203の注射器2034の内体積が流体中継配管202の内体積よりも大きい必要がある。
図7には流体中継配管202の一区間が示されており、注射ポンプ203による1回の輸送の最大流量の違いに応じて、異なる実施例では、異なる内体積の流体中継配管202を選択することができる。
【0064】
本実施例では、流体貯留アセンブリ31として、流体タンク301を用いている。流体タンク301は、流体を収容する容器を複数含み、それぞれの容器は、配管を介して選択弁201aの異なる位置ポート2012aに接続される。
図7では、4つの容器R1~R4を有する流体タンク301が1つ示されており、容器R1~R4ごとに選択弁201aの位置ポート2012aに配管で接続されている。他の実施形態では、流体量の違いによっては、異なる数の貯留容器を有する流体タンク301を用いてもよい。
【0065】
本実施例では、充填液貯留アセンブリ33として充填液桶303を用いている。充填液桶303は、少なくとも1つの配管を介して注射ポンプ203の分配式ポート2032に接続されている。
図7は、注射ポンプ203に1つの充填液桶303を用いた場合を示している。
【0066】
本実施例では、廃棄物貯留アセンブリ32として廃棄物桶302を用いている。廃棄物桶302は、配管を介して流体使用システム5に接続され、流体使用システム5から排出される廃棄物を集め、更に、1つ又は複数の配管を介して注射ポンプ203の分配式ポート2033に接続され、注射ポンプ203から排出される廃棄物を集める。
図7は、注射ポンプ203と流体使用システム5とが1つの廃棄物桶302を共用している場合を示す。実情の違いに応じて、他の実施例では、注射ポンプ203及び流体使用システム5を、それぞれ1つ又は複数の廃棄物桶302を単独で用いたり、流体使用システムを、1つ又は複数の廃棄物桶を単独で用いたりして、注射ポンプに廃棄物桶を用いないようにしてもよい。
【0067】
<実施例3:流体輸送システム1が、1つの作業モジュールを有している>
図8に示すように、本実施例では、流体輸送システム1は、1つの作業モジュール2と、1つの補助モジュール3とから構成されている。作業モジュール2は、流体選択アセンブリ21と、流体中継アセンブリ22と、パワーアセンブリ23とを備え、補助モジュール3は、流体貯留アセンブリ31と、廃棄物貯留アセンブリ32と、充填液貯留アセンブリ33とを備えている。本実施例においては、パワーアセンブリ23が注射ポンプ203であり、流体選択アセンブリ21に選択弁201aと三方継手201cと逆止弁201dの組合せ、流体中継アセンブリ22に三方継手201cと注射ポンプ203との間の流体中継配管202、流体貯留アセンブリ31に流体タンク301、充填液貯留アセンブリ33に充填液桶303をそれぞれ採用している。
【0068】
本実施例では、パワーアセンブリ23として、注射ポンプ203を用いている。注射ポンプ203には、少なくとも2つの分配式ポート2031、2032が設けられており、分配式ポート2031は、1つの配管を介して選択弁201aの共通ポート2011aに接続され、分配式ポート2032は、少なくとも1つの配管を介して充填液桶303に接続され、また、分配式ポート2033を必要に応じて設け、分配式ポート2033を介して1つ又は複数の配管を用いて廃棄物桶302を接続するようにしてもよく、他の実施例では、分配式ポート2033及び廃棄物桶302の接続を省略してもよい。注射ポンプ203の分配式ポート2031、2032毎に注射ポンプ203内の注射器2034を個別に連通する必要がある。
図8には、3つの分配式ポート2031、2032、2033を有する注射ポンプ203が示されており、必要に応じてより多くの分配式ポートを有する注射ポンプ203が用いられ、注射ポンプ203のこれらの分配式ポートには、選択弁201aの共通ポート2011aと、この注射ポンプ203により使用される全ての充填液桶303と、この注射ポンプ203により使用される全ての廃棄物桶302とが必要に応じて接続される。
本実施例においては、流体選択アセンブリ21として、三方継手201cと逆止弁201dを選択弁201aに合わせて用いる。三方継手201cは、三つのポート2011c、2012c、2013cを有し、そのうちの一つのポート2011cは、三方継手201cから流体使用系5への通過方向を許容する逆止弁201dを介して流体使用システム5に接続され、他方のポート2012cは、選択弁201aの共通ポート2011aから三方継手201cへの通過方向を許容する一方向弁201dを介して選択弁201aの共通ポート2011aに接続され、他方のポート2013cは、注射ポンプ203のポート2031に配管を介して接続されており、三方継手201cと注射ポンプ203との間のこの配管が流体中継配管202である。選択弁201aは、1つの共通ポート2011aと、複数の位置ポート2012aとを有している。選択弁201aの共通ポート2011aは逆止弁201dの入口に配管を介して接続され、選択弁201aの位置ポート2012aは、流体タンク301の流体を収容する全ての容器および大気にそれぞれ配管を介して接続される。大気に連通する位置ポート2012aは、予備的に用いられてもよいし、流体間の隔離ガスとして大気から定量の空気を吸い込んでもよいし、具体的には、出願番号PCT/CN2017/113797号のPCT特許出願による開示内容を参照されたい。
図8は、流体選択アセンブリ21として、1つの三方継手201cと、2つの逆止弁201dとを選択弁201aに合わせて用いる。選択弁201aは、流体タンク301内の4種類の流体を接続する4つの位置ポート2012a、および大気に連通する2つの位置ポート2012aを含む6つの位置ポート2012aを有している。他の実施例では、流体容器の数の違いに応じて異なる数の位置ポート2012aを有する選択弁201aを用いることができ、流体容器の数がNの場合には少なくともN+1の位置ポート2012aを有する選択弁201aが必要となる。
【0069】
本実施形態では、流体中継アセンブリ22として、三方継手201cと注射ポンプ203との間の流体中継配管202を用いている。流体中継配管202は、流体の貯留及び通過可能な配管であり、一端が注射ポンプ203のポート2031に接続され、他端が三方継手201cの一方のポート2013cに接続される必要がある。流体中継配管202の内体積は、注射ポンプ203が流体を1回輸送する最大体積を決定し、注射ポンプ203の注射器2034の内体積が流体中継配管202の内体積よりも大きい必要がある。
図8には流体中継配管202の一区間が示されており、注射ポンプ203による1回の輸送の最大流量の違いに応じて、異なる実施例では、異なる内体積の流体中継配管202を選択することができる。
【0070】
本実施例では、流体貯留アセンブリ31として、流体タンク301を用いている。流体タンク301は、流体を収容する容器を複数含み、それぞれの容器は、配管を介して選択弁201aの異なる位置ポート2012aに接続される。
図8では、4つの容器R1~R4を有する流体タンク301が1つ示されており、容器R1~R4ごとに選択弁201aの位置ポート2012aに配管で接続されている。他の実施形態では、流体量の違いによっては、異なる数の貯留容器を有する流体タンク301を用いてもよい。
【0071】
本実施例では、充填液貯留アセンブリ33として充填液桶303を用いている。この充填液タンク303は、少なくとも一つの配管を介して注射ポンプ203のポート2032に接続されている。
図7は、注射ポンプ203に1つの充填液桶303を用いた場合を示している。
【0072】
本実施例では、廃棄物貯留アセンブリ32として廃棄物桶302を用いている。当該廃棄物桶302は、配管を介して流体使用システム5に接続され、流体使用システム5から排出される廃棄物を集め、更に、1つ又は複数の配管を介して注射ポンプ203のポート2033に接続され、注射ポンプ203から排出される廃棄物を集める。
図7は、流体使用システム5と注射ポンプ203とは、1つの廃棄物桶302を共用する場合を示している。実情の違いにより、他の実施例では、注射ポンプ203及び流体使用システム5を、それぞれ1つ又は複数の廃棄物桶302を単独で用いたり、流体使用システムを、1つ又は複数の廃棄物桶を単独で用いたりして、注射ポンプに廃棄物桶を用いないようにしてもよい。
【0073】
<実施例4:流体輸送システム1は、2つの作業モジュールを有している>
図9に示すように、本実施形態では、流体輸送システム1は、2つの作業モジュール2、補助モジュール3、および分配アセンブリ4から構成されている。各作業モジュール2は、流体選択アセンブリ、流体中継アセンブリ、およびパワーアセンブリを備え、補助モジュール3は、流体貯留アセンブリ31、廃棄物貯留アセンブリ32、充填液貯留アセンブリ33を備える。本実施例では、パワーアセンブリ21に注射ポンプ、流体選択アセンブリに選択弁、流体中継アセンブリに選択と注射ポンプとの間の流体中継配管、流体貯留モジュール31に流体タンクを採用し、本実施例においては、流体タンク301aと流体タンク301a’を備え、廃棄物貯留アセンブリ32に廃棄物桶302、充填液貯留アセンブリ33に充填液桶303、分配アセンブリ4に三方継手41及び逆止弁42の組合せ、を採用している。
【0074】
本実施例では、説明の便宜上、2つの作業モジュール2をそれぞれ第1作業モジュール2a及び第2作業モジュール2a’と呼び、第1作業モジュール2a内のパワーアセンブリを第1パワーアセンブリ23a、流体選択アセンブリを第1流体選択アセンブリ21a、流体中継アセンブリを第1流体中継アセンブリ22a、注射ポンプを第1注射ポンプ203a、選択弁を第1選択弁201a、流体中継配管を第1流体中継配管202aと呼び、第2作業モジュール2a’内のパワーアセンブリを第2パワーアセンブリ23a’、流体選択アセンブリを第2流体選択アセンブリ21a’、流体中継アセンブリを第2流体中継アセンブリ22a’、注射ポンプを第2注射ポンプ203a’、選択弁を第2選択弁201a’、流体中継配管を第2流体中継配管202a’という。
【0075】
本実施形態では、第1作業モジュール2aが流体室301aに接続され、第2作業モジュール2a’が流体タンク301a’に接続され、第1作業モジュール2aおよび第2作業モジュール2a’が充填液桶303と廃棄物桶302とを共用し、第1作業モジュール2aおよび第2作業モジュール2a’が分配アセンブリ4を介して流体使用システム5に接続されている。なお、第1作業モジュール2aと流体タンク301a、充填液桶303、廃棄物桶302との接続、及びその内部の各部品間の接続及び運転方式は前述の実施例と同様であり、第2作業モジュール2a’と流体タンク301a’、充填液桶303、廃棄物桶302との接続、及びその内部の各部品間の接続及び運転方式は前述の実施例と同様であるため、ここではその説明を省略する。以下、本実施例が前述した実施例と異なる点についてのみ説明する。
【0076】
本実施例では、充填液桶303は、第1注射ポンプ203aと第2注射ポンプ203a’とのポートにそれぞれ少なくとも1つの配管を介して接続されている。別の実施例では、実情に応じて、第1注射ポンプ203aと第2注射ポンプ203a’とを1つ又は複数の充填液タンク303をそれぞれ単独で使用してもよい。
【0077】
本実施形態において、廃棄物桶302は、配管を介して流体使用システム5に接続され、流体使用システム5から排出された廃棄物を集めると共に、1つ又は複数の配管を介して第1注射ポンプ203a及び第2注射ポンプ203a’のポートに接続され、第1注射ポンプ203a及び第2注射ポンプ203a’から排出された廃棄物を集める。本実施形態の流体使用システム5と第1注射ポンプ203a、第2注射ポンプ203a’とは、1つの廃棄物桶302を共用している。他の実施形態では、実状によっては、流体使用システム5に1つ又は複数の廃棄物桶302を単独で使用し、一方、第1注射ポンプ203aと第2注射ポンプ203a’とについては廃棄物桶302を使用しなくてもよく、又は、流体使用システム5と第1注射ポンプ203a、第2注射ポンプ203a’とは、それぞれ1つ又は複数の廃棄物桶302を単独で使用してもよい。
【0078】
本実施形態では、分配アセンブリ4として三方継手41と逆止弁42とからなる三方構造を1つ用いている。三方継手41は、3つのポート411、412、413を有し、ポート411は、流体使用システム5に配管を介して接続され、ポート412、413は、第1選択弁201a又は第2選択弁201a’の共通ポートに、一つの逆止弁42を介してそれぞれ接続されており、逆止弁42のそれぞれは、対応する第1選択弁201a又は第2選択弁201a’の共通ポートから三方継手41への通過方向を許容する。
図9は、2つの逆止弁42と1つの三方継手41との接続形態を示している。他の実施形態では、実状によっては、この三方構造に代えて、1つの2ポート3ポートの電磁弁を用いてもよく、当該電磁弁は、流体使用システム5に配管を介して接続される1つの共通ポートと、第1選択弁201aと第2選択弁201a’との共通ポートをそれぞれ接続する2つの位置ポートとを有する。
【0079】
<実施例5、流体輸送システム1は、6つの作業モジュールを有する>
図10に示すように、本実施形態では、流体輸送システム1は、6つの作業モジュール2と、補助モジュール3と、分配アセンブリ4とから構成されている。作業モジュール2のそれぞれは、流体選択アセンブリと、流体中継アセンブリと、パワーアセンブリとを含む。補助モジュール3は、流体貯留アセンブリ31と、廃棄物貯留アセンブリ32と、充填液貯留アセンブリ33とを備える。流体貯留アセンブリ31は、6つの容器R1~R6を備える流体タンク301を採用し、廃棄物貯留アセンブリ32は、廃棄物桶302を採用し、充填液貯留アセンブリ33は、充填液桶303を採用し、分配アセンブリ4は、選択弁43を採用する。各作業モジュール2は、同時に、注射ポンプ20を、該作業モジュール2のパワーアセンブリ、流体中継モジュール、及び、流体分配モジュールとして使用し、具体的には、注射ポンプ20自体をパワーアセンブリとし、注射ポンプ20の注射器2034を流体中継アセンブリとし、注射ポンプ20の弁ヘッドを流体分配モジュールとしたので、1つの注射ポンプ20のみで1つの完全な作業モジュール2の機能を実現することができる。注射ポンプ20には、少なくとも3つの分配式ポート2031、2032及び2033が設けられ、ポート2031は選択弁43の位置ポート432に1つの配管を介して接続され、ポート2032は充填液桶303に少なくとも1つの配管を介して接続され、ポート2033は流体タンク301の流体を貯留する容器R1~R6のいずれか1つに少なくとも1つの配管を介して接続され、本実施例では注射ポンプ20は廃棄物桶302に接続されていなかったが、他の実施例では必要に応じて注射ポンプ20にポート(図示せず)を設けて廃棄物桶302に接続されていてもよい。注射ポンプ20内の注射器2034は流体中継アセンブリとし、当該注射器2034の内体積が注射ポンプ20の単回輸送の流体の最大体積を決定する。
図10は、3つの分配式ポート2031、2032および2033を有する注射ポンプを6個示しており、必要に応じて、他の実施例では、より多くの分配式ポートがある注射ポンプ20を使用してもよく、注射ポンプ20は、これらのポートを介して、選択弁43の位置ポートと、注射ポンプ20が使用している全ての充填液桶303と、注射ポンプ20が使用している流体タンク301の流体を貯留する容器R1~R6のうちの1つと、注射ポンプ20が使用している全ての廃棄物桶302とを接続してもよい。
【0080】
本実施例では、流体貯留アセンブリ31として、流体タンク301を用いている。流体タンク301は、流体を収容する容器を複数含み、各容器は、配管を介して注射ポンプ20の分配式ポート2033に接続されるが、そのうち、いずれかの容器は、同一の注射ポンプ20の異なる分配式ポート2033に接続されてもよいし、異なる注射ポンプ20の分配式ポート2033に接続されてもよい。
図10は、6つの容器R1~R6を有する1つの流体タンク301を示しており、流体タンク301の容器R1~R6のそれぞれは、1つの注射ポンプ20における1つの分配式ポート2033に配管を介して接続されている。他の実施形態では、流体量によっては、異なる数の貯留容器を有する流体タンク301を用いてもよく、流体タンク301ごとに備える流体を収容する容器の数が異なっていてもよい。
【0081】
本実施例では、充填液貯留アセンブリ33として充填液桶303を用いている。充填液桶303は、それぞれ少なくとも一本の配管を介して注射ポンプ20の分配式ポート2032に接続されている。
図10は、6つの注射ポンプ20が1つの充填液桶303を共用する場合を示している。他の実施例では、実状によっては、注射ポンプ20毎に1つ又は複数の充填液タンク303を単独で使用してもよい。
【0082】
本実施例では、廃棄物貯留アセンブリ32として廃棄物桶302を用いている。廃棄物桶302は、配管を介して試薬使用システム5に接続され、試薬使用システム5から排出された廃液を集めており、他の実施例では、1つまたは複数の配管を介して注射ポンプ20の分配式ポートに接続され、注射ポンプ20から排出された廃液を集めることもできる。
図10は、試薬使用システム5が1つの廃棄物桶302を使用し、注射ポンプ20の全てが廃棄物桶302を使用しない場合を示している。他の実施例では、実状によっては、試薬使用システム5と全ての注射ポンプ20とを1つの廃棄物桶302を共用したり、1つ又は複数の廃液タンク302をそれぞれ単独で使用したりしてもよい。
【0083】
本実施例では、分配アセンブリ4として選択弁43が用いられている。選択弁43は、1つの共通ポート431と、複数の位置ポート432とを有する。選択弁43の共通ポート431は、配管を介して流体使用システム5に接続されている。選択弁43の位置ポート432は、それぞれ配管を介して注射ポンプ20毎の分配ポート2031に接続されている。
図10に示すように、本実施例では、選択弁43は1つの6位置7ポート選択弁となっている。選択弁43は、位置ポート432を6個有し、位置ポート432ごとに、1つの注射ポンプ20の1つの分配式ポート2031が接続される。他の実施形態では、注射ポンプ20の数に応じて、位置ポート432の数が異なる選択弁43を用いてもよく、注射ポンプ20の数がNの場合には、選択弁43は位置ポート432の数が少なくともNである必要がある。
【0084】
図11を参照して、本発明の実施形態2は、負圧駆動方式により流体を吸引するステップS111と、吸引された流体を正圧駆動方式で流体使用システムに送り込むステップS112と、を含む流体輸送方法をさらに提供する。
【0085】
ここで、ステップS111は、パワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を確立することと、パワーアセンブリを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引して流体中継アセンブリに一時的に貯留し、パワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を切断することとを更に含んでもよい。
【0086】
ここで、ステップS112は、パワーアセンブリと、流体中継アセンブリと、流体使用システムとの接続を確立し、流体中継アセンブリに一時貯留された流体が前記流体使用システムへ流入するように、パワーアセンブリを起動させることをさらに含んでもよい。
【0087】
ここで、ステップS111は、第1作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、第1作業モジュールを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第1作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップa)と、第2作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、第2作業モジュールを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第2作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップb)とをさらに含んでもよい。ここで、上記ステップa)とステップb)は並列に実行されてもよい。
【0088】
ここで、ステップS112は、第1作業モジュールと流体使用システムとの接続を確立し、第1作業モジュールを起動して吸引された流体を流体使用システムに押し込むステップc)と、第2作業モジュールと流体使用システムとの接続を確立し、第2作業モジュールを起動して吸引された流体を流体使用システムに押し込むステップd)と、をさらに含んでもよい。
【0089】
但し、上記ステップb)の実行と上記ステップa)の実行とは時間軸上で少なくとも部分的に重なり、及び/又は、上記ステップb)の実行と上記ステップc)の実行とは時間軸上で少なくとも部分的に重なる。
【0090】
ただし、ステップa)、b)、c)、d)の実行にかかる総時間をTとし、ステップa)の実行にかかる時間をTA1とし、ステップb)の実行にかかる時間をTB1とし、ステップc)の実行にかかる時間をTA2とし、ステップd)の実行にかかる時間をTB2とすると、T<TA1+TA2+TB1+TB2である。
【0091】
図12を参照して、本発明の実施形態3によれば、あるステップの実行手順を変えてもよく、あるステップを並列に実行してもよい流体輸送方法が、さらに提供される。上記流体輸送方法は、
第1作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、第1作業モジュールを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第1作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップS121と、
第1作業モジュールと流体使用システムとの接続を確立し、第1作業モジュールを起動して吸引された流体を流体使用システムに押し込むステップS122と、
第2作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、第2作業モジュールを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引し、吸引終了後に、第2作業モジュールと流体貯留アセンブリとの接続を切断するステップS123と、
第2作業モジュールと流体使用システムとの接続を確立し、第2作業モジュールを起動して吸引された流体を流体使用システムに押し込むステップS124と、を備える。
【0092】
第1作業モジュールと第2作業モジュールとが流体貯留アセンブリから流体を移行して流体使用システムへ至るまでの時間の合計は、第1作業モジュールと第2作業モジュールとが流体貯留アセンブリから流体を移行して流体使用システムへ至るまでの時間の合計よりも短い。
【0093】
ここで、ステップS121とステップS122の実行は時間軸上で重ならず、ステップS123とステップS124の実行は時間軸上で重ならず、ステップS122とステップS124の実行は時間軸上で重ならず、ステップS123とステップS121の実行は時間軸上で少なくとも部分的に重なり、および/または、ステップS123とステップS122の実行は時間軸上で少なくとも部分的に重なる。ここで、時間軸は一種類の時系列を表す。この時間軸により、イベント発生の手順、及びイベント発生の重畳時間帯を定義することができる。
【0094】
ここで、ステップS121において、第1作業モジュールは、流体貯留アセンブリから負圧駆動により流体を吸引し、及び/又は、ステップS123において、第2作業モジュールは、流体貯留アセンブリから負圧駆動により流体を吸引する。
【0095】
ここで、ステップS122において、第1作業モジュールは、正圧駆動により上記流体を流体使用システムに押し込み、および/または、ステップS124において、第2作業モジュールは、正圧駆動により流体を流体使用システムに押し込む。
【0096】
ここで、ステップS121は、具体的に、第1作業モジュールにおけるパワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、パワーアセンブリを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引して流体中継アセンブリに一時的に貯留し、吸引終了後に、パワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を切断することを含み、及び/又はステップS123は、具体的に、第2作業モジュールにおけるパワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を確立し、パワーアセンブリを起動して流体貯留アセンブリから流体を吸引して流体中継アセンブリに一時的に貯留し、吸引終了後に、パワーアセンブリと流体中継アセンブリと流体貯留アセンブリとの接続を切断することと、を含む。
【0097】
ここで、ステップS122は、具体的に、第1作業モジュールにおけるパワーアセンブリと、流体中継アセンブリと、流体使用システムとの接続を確立し、第1作業モジュールにおけるパワーアセンブリを起動して、吸引された流体を流体使用システムに押し込むことを含み、及び/又はステップS124は、具体的に、第2作業モジュールにおけるパワーアセンブリと、流体中継アセンブリと、流体使用システムとの接続を確立し、第2作業モジュールにおけるパワーアセンブリを起動して、吸引された流体を流体使用システムに押し込むこととを含む。
【0098】
図13を参照して、本発明の実施形態4は、あるステップの実行手順を変えてもよく、あるステップを並列に実行してもよい流体輸送方法が、さらに提供される。上記流体輸送方法は、
流体貯留アセンブリから第1種の流体を吸引し、時間TA1を掛けるステップS131と、
前記第1種の流体を流体使用システムに押し込み、時間TA2を掛けるステップS132と、
前記流体貯留アセンブリから第2種の流体を吸引し、時間TB1を掛けるステップS133と、
前記第2種の流体を前記流体使用システムに押し込んで時間TB2を掛けるステップS134と、を備え、
ここで、前記第1種、第2種の流体を流体貯留アセンブリから流体使用システムに移行させる総時間Tは、前記TA1、TA2、TB1、およびTB2の総和より短い。
ここで、前記TB1は、前記TA1と時間軸上で少なくとも部分的に重なり、および/または、前記TB1は、前記TA2と時間軸上で少なくとも部分的に重なる。前記TB1とTB2は時間軸上で重ならず、前記TA1とTA2は時間軸上で重ならず、前記TB1とTB2は時間軸上で重ならない。
【0099】
ここで、前記第1種の流体と第2種の流体とを、パワーアセンブリが負圧駆動を用いて前記流体貯留アセンブリから吸引し、および/または、前記パワーアセンブリが正圧駆動を用いて前記流体使用システムに押し込む。
【0100】
ここで、前記第1種の流体と前記第2種の流体とは、同一流体または異種流体であってよく、前記パワーアセンブリが吸引する前記第1種の流体の量と前記第2種の流体の量とは、同一または異なる。
【0101】
以上説明したように、本発明の実施形態による流体輸送システム及び方法によれば、負圧駆動方式による流体の吸引及び正圧方式による吸引された流体を流体使用システムに送り込むことで、流体貯留アセンブリから流体を取り出す際の定量の精度を保証しつつ、流体使用システムへの流体の迅速な輸送を保証することができる。
【0102】
以上説明したように、本発明の実施形態による流体輸送システム及び方法は、少なくとも2つの作業モジュールを同時に採用してもよく、第1作業モジュールと第2作業モジュールとは、1つの流体貯留アセンブリから少なくとも2種類の流体を抜き出して1つの流体使用システムに送り込み、第1作業モジュールと第2作業モジュールとが流体貯留アセンブリから2種類の流体を抜き出して流体使用システムに送り込むまでの総時間をTとし、第1作業モジュールが流体貯留アセンブリから1方の流体を抜き出して流体使用システムに送り込むまでの所要時間をTAとし、第2作業モジュールが流体貯留アセンブリから他方の流体を抜き出して流体使用システムに送り込むまでの所要時間をTBとし、TをTAとTBの合計よりも小さくすることで、流体輸送の合計時間をより短くすることができる。なお、複数の作業モジュールを設けて、流体を群に分けて輸送し、流体のクロスコンタミネーションを最大限に回避している。正圧輸送時に残る配管空間を充填液で充填することは、圧縮気体を用いるよりも輸送流体の定量的な精度が高い。
【0103】
以上の実施形態及び実施例は、いずれも、1つ又は複数の作業モジュールが、1つの分配アセンブリを介して1つの流体使用システムに流体を搬送する場合であって、作業モジュールと分配アセンブリとの間は、多対1のマッピング関係であり、分配アセンブリと流体使用システムとの間は、1対1のマッピング関係である。他の実施形態では、M(M>1)個の流体使用システムに対応して、L(L>1)個の分配アセンブリとN(N>1)個の作業モジュール(N>1)との複雑な状況は、さらに、複雑なマッピング関係を有していてもよく、例えば、複数の作業モジュールが1つの分配アセンブリに対応し、さらに、1つの分配アセンブリは複数の流体使用システムに対応し、または、複数の作業モジュールが複数の分配アセンブリに対応し、さらに、複数の分配アセンブリは、1つの流体使用システムに対応してもよい。いずれにしても、複数の作業モジュールが、1つの分配アセンブリに対応するもの又は1つの流体使用システムに対応する場合には、その複数の作業モジュールが輸送する流体は、順次、流体使用システムに搬送される必要があるので、作業モジュールがステップ2を実行する。流体使用システムへの流体の輸送は、順次、実行される必要があるが、作業モジュールごとに流体を流体中継アセンブリに吸入するステップ1を実行することは、他の1つ又は複数の作業モジュールのステップ1及び/又はステップ2と同時に行うことができるので、複数の作業モジュールが流体を流体使用システムに輸送する時間を節約することができる。
【0104】
図14及び
図15を参照して、本発明の実施形態5及び6では、さらに、流体輸送システム、または流体使用装置6および7を提供し、流体使用装置6は、少なくとも1つの流体輸送システム61を用いて流体を輸送し、流体輸送システム61は、本発明の上記実施形態及び実施例で提供される流体輸送システム、又は本発明の構想と範囲を逸脱することのない拡張システムであってもよく、前記流体使用装置7は、少なくとも1つの流体輸送方法71を用いて流体を輸送し、流体輸送方法71は、本発明の上記実施形態で提供される流体輸送方法又は本発明の精神と範囲を逸脱することのない拡張方法であってもよく、前記流体使用装置6及び7は、遺伝子シーケンサ、液体クロマトグラフ、生化学分析装置、医療機器等の各種流体を使用する装置や機器であってもよい。
【0105】
上記の各実施形態は、ただ本発明の技術的解決策を説明するためのものであり、限定することを意図するものではなく、好ましい実施形態を参照して、本発明について詳細に説明しているが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の技術的解決策を修正または同等に置換できることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0106】
1、61 流体輸送システム
3 補助モジュール
2 作業モジュール
4 分配アセンブリ
21 流体選択アセンブリ
22 流体中継モジュール
23 パワーアセンブリ
30 貯留アセンブリ
31 流体貯留アセンブリ
32 廃棄物貯留アセンブリ
33 充填液貯留アセンブリ
5 流体使用システム
231、221、211、411 第1種ポート
232、222、212、412 第2種ポート
233、213 第3種ポート
203、20 注射ポンプ
201、 201a 選択弁
202 流体中継配管
301、301a、301a’ 流体タンク
302 廃棄物桶
303 充填液桶
201b 電磁弁
2031、2032、2033 分配式ポート
2011、2011a、2011b、431 共通ポート
2012、2012b、432 位置ポート
R1~R4 容器
201c、41 三方継手
201d、42 逆止弁
2034 注射器
2011c、2012c、2013c、411、412、413 ポート
2a 第1作業モジュール
2a’ 第2作業モジュール
23a 第1パワーアセンブリ
21a 第1流体選択アセンブリ
22a 第1流体中継アセンブリ
203a 第1注射ポンプ
201a 第1選択弁
202a 第1流体中継配管
23a’ 第2パワーアセンブリ
21a’ 第2流体選択アセンブリ
22a’ 第2流体中継アセンブリ
203a´第2注射ポンプ
201a’ 第2選択弁
202a’ 第2流体中継配管
S111~S112 ステップ
S121~S124 ステップ
S131~S134 ステップ
6、7 流体使用装置
71 流体輸送方法