(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】フタレート系化合物の水素化方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/303 20060101AFI20240412BHJP
C07C 69/75 20060101ALI20240412BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C07C67/303
C07C69/75 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022523990
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2020014695
(87)【国際公開番号】W WO2021096103
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0146796
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キテグ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソンミン・パク
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/107770(WO,A1)
【文献】特表2018-504268(JP,A)
【文献】特表2007-504105(JP,A)
【文献】特開2001-089776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08L
C08K
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相原料に対して中和剤及び水のうち1種以上を投入して混合し、窒素雰囲気下でストリッピングを行った後、フィルタを用いて80~150℃の温度条件でフィルタリングして、フタレート系化合物を含み、HAZE値が6%以下である液相原料を製造する段階;及び
水素を含む気相原料;および
前記フタレート系化合物を含
み、HAZE値が6%以下である液相原料;を反応器に投入し、前記水素およびフタレート系化合物を水素化触媒の存在下に水素化反応させる段階を含むフタレート系化合物の水素化方法であって
、
前記中和剤は、液相原料総重量に対して1~3重量%で投入され、
前記水は、液相原料総重量に対して1~3重量%で投入され、
前記水素化反応後分離された水素化反応生成物の酸価が
0.15KOHmg/g以下である、フタレート系化合物の水素化方法。
【請求項2】
前記液相原料のHAZE値が4%以下である、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項3】
前記水素化反応生成物の酸価が0.07KOHmg/g以下である、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項4】
前記水素化反応生成物を125℃で3時間維持した後測定した加熱後の酸価が0.4KOHmg/g以下である、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項5】
前記水素化反応生成物を125℃で3時間維持した後測定した加熱後の酸価が0.25KOHmg/g以下である、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項6】
前記水素は、前記フタレート系化合物1モルに対して3~300モル比の量で投入される、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項7】
前記フタレート系化合物は、フタレート、テレフタレート、イソフタレート、これらのカルボン酸誘導体またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項8】
前記フタレート系化合物はフタレートまたはテレフタレートである、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項9】
前記気相原料は反応器の上部または下部で供給され、前記液相原料は反応器の上部で供給される、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項10】
前記水素化触媒は、活性成分としてルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【請求項11】
前記水素化触媒は担体をさらに含み、
前記活性成分は担体100重量部に対して3重量部以下の量で含まれる、 請求項
10に記載のフタレート系化合物の水素化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2019年11月15日付韓国特許出願第10-2019-0146796号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明はフタレート系化合物の水素化方法に関する。具体的には本発明はフタレート系化合物の水素化時に使用される反応原料内の不純物の含有量を減少させて水素化反応を行うことで、副生成物の生成が抑制されて触媒寿命を延長できるだけでなく、水素化反応生成物の酸価を低く維持して可塑剤としての品質を向上させ得るフタレート系化合物の水素化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フタレート(phthalate)系化合物はプラスチック、特にポリ塩化ビニル(PVC)の可塑剤として広く使用される物質である。例えば電機電子製品、医薬品、ペイント顔料、潤滑剤、バインダ、界面活性剤、接着剤、タイル、食品容器、包装材など実にその使用用途が非常に多様である。
【0004】
しかし、いくつかのフタレート系化合物が環境汚染および人間の内分泌系障害の問題をもたらし得る物質として知られており、欧州、米国など先進国を中心に使用規制が強化されている。特にフタレート系可塑剤のうちジ(2-エチルヘキシル)フタレート(di(2-ethylhexyl) phthalate,DEHP))、ブチルベンジルフタレート(butyl benzyl phthalate,BBP)、ジ-n-ブチルフタレート(di-n-butyl phthalate,DBP)のような一部の製品は社会的にヒトのホルモン作用を妨害または混乱させる内分泌かく乱物質(endocrine disrupter)であり、環境ホルモンとして疑われており、これを規制する動きがある。
【0005】
そこで、従来の可塑剤と同等な性能を奏しながら環境ホルモン論争から自由な環境に優しい可塑剤を開発するための努力が行われているが、その一つとしてフタレートに含まれているベンゼン環を水素化した(hydrogenation)化合物を用いる方案がある。
【0006】
ベンゼン環のような芳香族化合物の水素化反応は、ルテニウムのような遷移金属を活性成分として支持体(担体)に含む触媒を用いる方法が知られている。
【0007】
しかし、前記遷移金属触媒は反応が行われるに伴って活性が急激に減少して収率低下を招く問題がある。そのため、工程の生産性および経済性向上のために前記水素化反応の問題を解決しようとする努力が続けられている。一例として、韓国登録特許第1556340号公報はフタレートを水素化触媒およびアルコールの存在下に水素と反応させる水素化方法を提示し、前記方法による場合、触媒性能および寿命が向上することを開示している。
【0008】
一方、前記水素化反応は副反応を伴い、副生成物の含有量が増加するほど製造された製品は酸性を帯び、仮に、製品の酸価が一定水準を超える場合、悪臭が発生し、純度が低下して可塑剤としての品質上問題が発生する。さらに前記副生成物は水素化触媒の活性も低下させるので、工程の生産性および経済性を向上させて製品の品質を向上させるためには前記副生成物の生成を抑制できる新たなフタレート系化合物の水素化方法が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許第1556340号公報、「フタレート系化合物の水素化方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、フタレート系化合物の水素化時に使用される液相原料内の不純物の含有量を減少させ、前記不純物の副反応によって生成される副生成物を減少させ、結果として前記副生成物による最終製品での酸価増加を抑制し、また、酸価を帯びる物質によって触媒が非活性化される速度を下げることで触媒寿命を延ばし、また、製品の酸価を低く維持することで製品の品質を向上させることができる、フタレート系化合物の水素化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、水素を含む気相原料;およびフタレート系化合物を含む液相原料;を反応器に投入し、前記水素およびフタレート系化合物を水素化触媒の存在下に反応させる段階を含むフタレート系化合物の水素化方法であって、前記液相原料のHAZE値が8%以下であり、前記反応後分離された反応生成物の酸価が0.3KOHmg/g以下である、フタレート系化合物の水素化方法を提供する。
【0012】
前記フタレート系化合物の水素化方法において、前記液相原料のHAZE値が好ましくは6%以下、または4%以下であり得る。
【0013】
また、前記反応後分離された反応生成物の酸価が0.15KOHmg/g以下、または0.07KOHmg/g以下であり得る。
【0014】
また、前記反応後分離された反応生成物の加熱後の酸価が、0.4KOHmg/g以下、または0.25KOHmg/g以下、または0.15KOHmg/g以下であり得る。
【0015】
また、前記反応器に投入される水素の量は前記フタレート系化合物1モルに対して3~300モル比、または3~30モル比であり得る。
【0016】
また、前記フタレート系化合物はフタレート、テレフタレート、イソフタレート、これらのカルボン酸誘導体、またはこれらの混合物を含み得、より具体的には前記フタレート系化合物はフタレートまたはテレフタレートであり得る。
【0017】
また、前記気相原料は反応器の上部または下部で供給され、前記液相原料は反応器の上部で供給され得る。
【0018】
また、前記水素化触媒はルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)からなる群より選ばれる1種以上の活性成分を含み得る。
【0019】
また、前記水素化触媒は担体をさらに含み得、この時、前記活性成分は担体100重量部に対して3重量部以下の量で含まれ得る。
【0020】
また、前記フタレート系化合物の水素化方法は、前記液相原料の投入前、液相原料をフィルタを用いて150℃以下の温度条件でフィルタリングする段階をさらに含み得る。
【0021】
また、前記フタレート系化合物の水素化方法は、前記フィルタリング前に、前記液相原料に対して中和剤および水のうち1種以上を投入して混合する段階をさらに含み得る。
【0022】
また、前記フタレート系化合物の水素化方法は、前記フィルタリング前に、前記液相原料をストリッピングする段階をさらに含み得る。
【0023】
本発明はまた、前記フタレート系化合物の水素化方法によって製造された、水素化されたフタレート系化合物を提供する。
【0024】
前記水素化されたフタレート系化合物は、水素化されたフタレートまたは水素化されたテレフタレートであり得る。
【0025】
延いては、本発明はまた、前記水素化されたフタレート系化合物を含む可塑剤を提供する。
【0026】
さらに、本発明はまた、前記可塑剤;およびエチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリブタジエン、シリコン、熱可塑性エラストマーおよびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上の樹脂;を含む樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のフタレート系化合物の水素化方法によれば、副生成物の生成が抑制されるので、触媒活性が向上して寿命が延び、そのため商業工程の効率性および経済性を高めることができる。また、本発明によって製造された水素化反応生成物は純度が高くて酸価が低いので、可塑剤としての品質に優れるため、多様な製品への活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の水素化方法に使用される水素化反応装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有し得るため、特定の実施例を例示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。本発明を説明するにあたり関連する公知技術に係る具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合はその詳細な説明を省略する。
【0030】
また、以下で使用される第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と名付けられてもよい。
【0031】
単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0032】
以下、図面を参照して本発明のフタレート系化合物の水素化方法を詳細に説明する。
【0033】
発明の一実施形態によれば、水素を含む気相原料;およびフタレート系化合物を含む液相原料;を反応器に投入し、前記水素およびフタレート系化合物を水素化触媒の存在下に反応させる段階を含むフタレート系化合物の水素化方法であって、
前記液相原料のHAZEが8%以下であり、
前記反応後分離された反応生成物の酸価が0.3KOHmg/g以下である、フタレート系化合物の水素化方法が提供される。
【0034】
本発明ではフタレート系化合物の水素化時に使用される液相原料において、液相原料内に含まれた不純物の存在および含有量がHAZEで分析されることを確認し、液相原料のHAZEを一定水準以下に制御して水素化反応を行うことで、前記不純物の副反応によって生成される副生成物を減少させ、結果として前記副生成物による最終製品での酸価増加を抑制することができる。また、酸価を帯びる物質によって触媒が非活性化される速度を下げることで触媒寿命を延ばすことができる。また、本発明の水素化方法によれば、水素化反応生成物の酸価が一定水準以下に製造されるので、可塑剤としての品質を向上させることができる。
【0035】
本発明の水素化方法の反応対象物はベンゼン-ジカルボン酸エステルまたはそのカルボン酸誘導体を含むフタレート系化合物である。前記フタレート系化合物は水素化反応(hydrogenation)によりフタレート系化合物内のベンゼン環に水素が添加され、そこに相応するシクロヘキサンジカルボキシレートに転換される。
【0036】
前記フタレート系化合物(phthalate based compound)は、具体的にはフタレート(phthalates)、テレフタレート(terephthalates)、イソフタレート(isophthalates)およびこれらのカルボン酸誘導体のうち選択される1種以上であり得る。前記カルボン酸誘導体はカルボン酸、酸無水物または酸塩化物などを含む。
【0037】
より具体的には、前記フタレート系化合物は下記化学式1で表される化合物であり得る:
【化1】
【0038】
前記化学式1において、R1およびR1’はそれぞれ独立して同一または相異なり、水素;または炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基である。
【0039】
また、前記フタレート系化合物は、フタル酸無水物のエステルであるフタレートであり得、前記化学式1において、R1およびR1’がそれぞれ独立して水素;または炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基であるが、R1およびR1’の少なくとも一つは炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基である化合物であり得る。
【0040】
前記フタレートの具体的な例としてはジブチルフタレート(DBP;dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(DHP;dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(DOP;dioctyl phthalate)、ジ-n-オクチルフタレート(DnOP;di-n-octyl phthalate)、ジイソノニルフタレート(diisononyl phthalate)、またはジイソデシルフタレート(DIDP;diisodecyl phthalate)などが挙げられるが、これに制限されるものではない。これらの化合物は単独でまたは混合して使用できる。
【0041】
また、前記フタレート系化合物は下記化学式2で表される化合物であり得る:
【化2】
【0042】
前記化学式2において、R2およびR2’はそれぞれ独立して同一または相異なり、水素;または炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基である。
【0043】
また、前記フタレート系化合物はテレフタル酸のエステルであるテレフタレートであり得、前記化学式2において、R2およびR2’がそれぞれ独立して水素;または炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基であるが、R2およびR2’の少なくとも一つが炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基である化合物であり得る。
【0044】
前記テレフタレートの具体的な例としてはジブチルテレフタレート(DBTP;dibutyl terephthalate)、ジオクチルテレフタレート(DOTP;dioctyl terephthalate)、ジイソノニルテレフタレート(DINTP;diisononyl terephthalate)、またはジイソデシルテレフタレート(DIDTP;diisodecyl terephthalate)があるが、これに制限されるものではない。これらの化合物は単独でまたは混合して使用できる。
【0045】
また、前記フタレート系化合物は下記化学式3で表される化合物であり得る:
【化3】
【0046】
前記化学式3において、R3およびR3’はそれぞれ独立して同一または相異なり、水素;または炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基である。
【0047】
また、前記フタレート系化合物はイソフタル酸のエステルとしてイソフタレートであり得、前記化学式3において、R3およびR3’がそれぞれ独立して水素;または炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基であるが、R3およびR3’の少なくとも一つが炭素数1~20、具体的には炭素数4~20、より具体的には炭素数5~20、または炭素数5~10の直鎖または分枝鎖アルキル基である化合物であり得る。
【0048】
前記イソフタレートの具体的な例としてはジブチルイソフタレート(DBIP;dibutyl isophthalalate)、ジオクチルイソフタレート(DOIP;dioctyl isophthalate)、ジイソノニルイソフタレート(DINIP;diisononyl isophthalate)、またはジイソデシルイソフタレート(DIDIP;diisodecyl isophthalate)などが挙げられるが、これに制限されるものではない。これらの化合物は単独でまたは混合して使用できる。
【0049】
上記のフタレート系化合物の中でもフタレートまたはテレフタレートを使用でき、より具体的にはジオクチルテレフタレート(dioctyl terephthalate,DOTP)を使用できる。
【0050】
また、前記フタレート系化合物の純度は、約99%以上、好ましくは約99.5%以上、より好ましくは約98%以上であり得るが、これに限定されるものではなく、商業的に利用可能なすべての品質および純度のフタレート系化合物を使用できる。
【0051】
上記のフタレート系化合物に対する水素化工程は、液相または気相で行われるが、本発明では、前記フタレート系化合物は液相原料に水素は気相原料に含まれて水素化触媒が充填された反応器内に投入される。
【0052】
具体的には、発明の一実施形態による水素化反応において、反応器に投入される、フタレート系化合物を含む液相原料のHAZE値は8%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下である。
【0053】
一般に、光が透過する材料の内部または表面での拡散物質によって光が分散されるが、このとき広い角度で分散する現象をHAZE(ヘイズ)といい、HAZE値は肉眼で見ることができる現象を数値化したものである。本発明における液相原料のHAZE値は液相原料内に存在する塩またはその他成分の影響を受け、これらの含有量が増加するに伴って液相原料のHAZE値もまた増加する。前記塩はTPA-NaあるいはMOTP-Naを意味するが、これに限定するものではない。
【0054】
前記液相原料のHAZE値が8%を超えると、液相原料内の中和した塩などが存在するが、このような不純物は触媒に被毒されたり水素化反応によって酸価を有する物質が生成される恐れがある。具体的には反応器内で反応物内に存在する塩成分が水素と反応して酸価を帯びる物質が生成され、これによって製品の酸価が増加するだけでなく、触媒の活性も低下させ得る。そのため本発明では反応物内不純物の含有量を一定水準以下に制御することによって、触媒寿命を最大に向上させることができ、製品の酸価が低く制御されることができる。
【0055】
本発明において、液相原料のHAZE値はBYK社製のhaze-gard plus機器のようなHAZE測定装置によって測定される。具体的にはPath lengthが50mmであるHunter LabのGlass Cellに約100mlのサンプルを満たした後、下記のような条件の分析機器を用いて、Haze値を2~3回繰り返し測定し、その平均値で示す:
<分析機器の条件>
Measuring Range:Haze 0-100%
Display resolution:0.01 unit in range 0.00-9.99,
0.1 unit in range 10.0-99.9
Repeatability: ±0.1 unit
Reproducibility: ±0.4 unit
【0056】
一方、本発明において、水素化反応のために反応器内に投入される液相原料のHAZE値を制御する方法は特に制限されない。具体的には液相原料をフィルタ(Filter)を用いて所定の温度範囲でフィルタリングする方法などにより液相原料のHAZE値を上記した範囲に制御することができる。
【0057】
前記フィルタリング時の温度は150℃以下、好ましくは120℃以下であり得る。上記した温度範囲の条件で行うとき液相原料内に存在する塩およびその他成分がフィルタによりフィルタリングされ、液相原料のHAZE値が上記した範囲を満たし得る。仮に温度が150℃を超える場合は、上記した塩およびその他成分が、DOTPのようなフタレート系化合物と共にフィルタを通過するため液相原料のHAZE値の減少効果を得ることはできない。一方、フィルタリング時の温度の最低値は特に限定されるものではないが、フィルタリング効率などを考慮すると80℃以上、または90℃以上であり得る。
【0058】
また、前記フィルタリング時の圧力は1bar超過、または1.2bar以上、または1.5bar以上、または2bar以上であり、4bar以下、または3.5bar以下、または3bar以下であり得る。上記の温度および圧力条件を同時に満たす時フィルタリング効率がさらに増加し、結果として液相原料のHAZE値をさらに減少させることができる。
【0059】
また、上記の液相原料のHAZE値の実現のために、前記フィルタリングに先立ち液相原料に対して中和剤および水のうち1種以上を追加で投入することができる。
【0060】
通常フタレート系化合物またはそれを含む液相原料内には、フタレート系化合物の合成過程で発生する不純物、具体的な例としてはメチル(2-エチルヘキシル)テレフタレート(MOTP)で代表されるジエステル系化合物、モノエステル系化合物、未反応テレフタル酸(TPA)、そして合成触媒などが存在する。この中でジエステル系化合物、モノエステル系化合物および未反応テレフタル酸の場合は大部分酸性の性質を有するので、液相原料に対して中和剤を投入する場合、中和剤が上記した化合物と反応してTPA-NaあるいはMOTP-Naのような塩形態で沈殿する。また、フタレート系化合物の合成時テトライソプロピルチタネート(tetra isopropyl titanate)のような合成触媒を使用するが、液相原料内に残留する合成触媒は水によって加水分解されてチタンジオキシド(titanium dioxide,TiO2)のような固体状の無機酸化物形態で沈殿する。そのため以後のフィルタリングにより沈殿した不純物を除去することで、液相原料内の不純物除去効果をより増進させることができる。
【0061】
前記中和剤としては具体的にはNaOH、KOH、Na2CO3などの無機塩基が使用でき、これら中和剤は1種単独でまたは2種以上の混合物で使用できる。
【0062】
また、上記の中和剤は液相原料総重量に対して0.1~5重量%、または0.5~3重量%の量で投入され得、上記した含有量の範囲で投入される場合より優れた不純物除去効果を示すことができる。
【0063】
また、前記水は液相原料総重量に対して0.1~5重量%、または0.5~3重量%の量で投入され得、上記した含有量の範囲で投入される場合、より優れた不純物除去効果を示すことができる。
【0064】
また、前記不純物除去効率を上げて、液相原料のHAZE値を低くするために、前記フィルタリング前、具体的には中和剤または水の投入前や、または投入後のフィルタリング前に液相原料をストリッピングする工程が選択的にさらに行われ得る。
【0065】
前記ストリッピング工程によって、液相原料内に存在するアルコールなどの揮発性物質を除去することができ、これにより最終製品において残留アルコールによる悪臭発生などの問題を防止することができる。
【0066】
前記ストリッピング工程は液相原料を使用することを除いては通常のストリッピング方法により行われ得る。一例として、前記ストリッピング工程はスチームを用いたり、またはストリッピング工程中にフタレート系化合物が酸化されることを防止するために窒素、アルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われ得る。
【0067】
ただし、ストリッピング工程時スチームを用いて、ストリッピング工程温度が250℃を超える場合、ストリッピング過程で逆反応が発生してMOTPあるいはTPAなどが生成され得る。これらの化合物は液相原料のヘイズあるいは酸価をさらに増加させる。ヘイズあるいは酸価が増加した液相原料は中和を行っても、中和過程で液相原料内の塩類が増加し得、そのため水添反応器に供給される液相原料内のヘイズも増加し得る。その結果、水添触媒の寿命を短縮させるだけでなく、水添された製品の酸価をさらに増加させ得る。このようなストリッピング工程時スチームによる逆反応速度は温度が高いほど増加する。そのため、前記ストリッピング工程、特にスチームを用いてストリッピング工程を行う場合、250℃以下、または120~250℃の温度で行われることが好ましく、また-1.0~-0.5bargの相手圧力下で行われることが好ましい。
【0068】
一方、窒素雰囲気下でストリッピングを行う場合は温度と関係なく逆反応が発生しないために、MOTPなどの生成および中和剤による塩含有量増加の恐れがない。そのため窒素雰囲気下でストリッピングを行うことがより好ましい。
【0069】
一方、発明の一実施形態によるフタレート系化合物の水素化方法において、前記水素化反応のために投入される気相原料としての前記水素は、液相原料内のフタレート系化合物1モルに対して3モル以上、または4モル以上、または7モル以上であり、かつ300モル以下、または100モル以下、または50モル以下、または30モルを以下の量で投入され得る。水素の量がフタレート系化合物1モルに対して3モルを未満で少なすぎると反応性が低下する恐れがあり、300モルを超えて過度に多いと反応器およびバックエンド気相工程設備および計装などの大きさが過度に大きくなり、設備コストが増加し得る。このような観点から、前記水素の量は上述した範囲が好ましい。
【0070】
また、前記水素化反応は水素化触媒の存在下に行われる。
【0071】
前記水素化触媒は活性成分として遷移金属を含み得、好ましくはルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)および白金(Pt)からなる群より選ばれる1種以上を含み得る。
【0072】
このような水素化触媒は担体に担持させて使用でき、この時、担体としては当業界に知られている担体が制限なく使用できる。具体的にはジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)などのような1種以上の担体が使用できる。
【0073】
前記水素化触媒が担体に担持された場合、水素化触媒の活性成分の量は担体100重量部に対して3重量部以下であることが好ましく、2重量部以下、または1重量部以下であり、かつ0.1重量部以上、または0.3重量部以上であり得る。仮に、水素化触媒の量が担体100重量部に対して3重量部を超えると、触媒表面で反応が急激に進行され、この過程で副反応も増加して副生成物量が急増する問題が発生し得、0.1重量部未満であれば触媒量が不足して水素化反応の収率が落ち得るので前記範囲が好ましい。
【0074】
本発明で水素化反応条件は特に制限されるものではないが、一例として反応圧力は50bar以上、または100bar以上、または110bar以上であり、かつ220bar以下、または200bar以下、または180bar以下であり得る。仮に、反応圧力が50bar未満であれば反応がよく起きないので、過度な量の触媒が消耗し、滞留時間が過度に長くなり副生成物の増加および酸価が増加するなどの様々な問題があり得、220barを超えると、工程運転時過度な電力などのエネルギを必要とし、また、反応器などの設備製作コストが大きく増加する問題があり得るので、前記範囲が好ましい。
【0075】
また、反応温度は100℃以上、または120℃以上、または130℃以上であり、かつ300℃以下、または250℃以下、または200℃以下であり得る。仮に、反応温度が100℃未満の場合、反応速度が過度に遅くて反応が円滑でない問題があり得、300℃を超えると副生成物が急激に増加して製品の酸価を大きく増加させ得る。また、触媒寿命にも影響を及ぼし得るので、前記範囲が好ましい。
【0076】
このような水素化反応によって、前記フタレート系化合物での芳香族環が水素化され、それに相応するシクロヘキサンジカルボキシレート化合物に転換される。
【0077】
反応が終了した後には生成された液相の水素化反応生成物と、未反応の気相の原料を分離する。前記分離された気相の原料は水素化工程で再循環され得る。また、回収した水素化反応生成物は減圧および冷却過程を経て最終的に分離することができる。
【0078】
上記の水素化方法により製造および分離された水素化反応生成物、すなわち水素化されたフタレート系化合物は、0.3KOHmg/g以下、または0.15KOHmg/g以下、または0.07KOHmg/g以下の酸価を有する。前記水素化反応生成物の酸価が低いほど製品品質に優れるため、その下限に制限はないが、一例として0.01KOHmg/g以上、または0.03KOHmg/g以上であり得る。この時、上記で提示した酸価の範囲は加熱酸価を意味しない。前記酸価(acid value)とは試料1g中に含有されている酸を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)の重量(mg)であって、0.1Nアルコール性KOH溶液で試料溶液を滴定して求めることができる。
【0079】
また、前記水素化反応生成物の加熱後の酸価は0.4KOHmg/g以下、0.25KOHmg/g以下、または0.15KOHmg/g以下であり得る。前記加熱後の酸価が低いほど製品品質に優れるため、その下限に制限はないが、一例として0.01KOHmg/g以上、0.05KOHmg/g以上、または0.1KOHmg/g以上であり得る。
【0080】
この時、前記水素化反応生成物の加熱後の酸価は、本発明での水素化方法により製造および分離された水素化反応生成物を、125℃で3時間維持した後に前記酸価測定と同様の方法により滴定および計算して得た値である。
【0081】
液相原料のHAZE値を調節して反応に投入する本発明の水素化方法によれば、水素化反応の他に副反応が抑制されて酸性を帯びる副生成物の生成量が減るので、水素化反応生成物が上記のように低い酸価を示し、そのため高純度および高品質の製品を得ることができる。
【0082】
図1は本発明の水素化方法に用いられる水素化反応装置を概略的に例示した図である。
【0083】
図1を参照すると、前記水素化反応装置は熱交換器a,b、反応器cおよび気相-液相分離器dなどからなる。
【0084】
前記熱交換器a,bは気相原料1および液相原料3を反応器cに投入する前に昇温させる役割をするものであり、必要に応じて省略できる。
【0085】
昇温した気相原料2および液相原料4は内部に水素化触媒が充填された管形態の反応器cに投入され、水素化反応が行われる。前記反応器は反応熱を制御するために制熱用外部ジャケットをさらに含み得る。この時、前記昇温した気相原料2は反応器の上部または下部で供給され得、また昇温した液相原料4は反応器の上部で供給され得る。
【0086】
前記反応器cから出てきた反応混合物5は気相-液相分離器dに伝達され、ここで液相の反応生成物7と気相の未反応物6が分離される。分離された反応生成物7は回収されて追加の精製作業を経ることができ、気相の未反応物6は排出またはリサイクルのために循環する。
【0087】
ただし、前記
図1で各装置の位置は変更可能であり、必要に応じて
図1に示していない他の装置を含むこともできるので、本発明の水素化方法が
図1に示す装置および工程順序に限定されるものではない。
【0088】
上述した本発明の水素化方法によれば、水素化反応生成物の酸価を低く制御でき、触媒活性が向上して寿命が延びるため、生成物の品質を向上させて商業工程の経済性を高めることができる。
【0089】
そのため、上記の方法で製造された水素化反応生成物、すなわち水素化されたフタレート系化合物は可塑剤として有用に使用できる。具体的には、前記フタレート系化合物を含む可塑剤は安定剤、塗料、インク、液相発泡剤(Masterbatch類)、接着剤などの製品に使用できる。この時、前記フタレート系化合物は先立って説明した内容と同様であり、より具体的にはフタレートまたはテレフタレートであり得る。
【0090】
また、本発明により製造される水素化されたフタレート系化合物は純度に優れ、酸価が低いので、可塑剤としての品質に優れる。したがって、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリブタジエン、シリコン、熱可塑性エラストマーまたはこれらの共重合体より選択された樹脂の可塑剤として好適に使用できる。
【0091】
このように可塑剤として本発明によって製造されたフタレート系化合物を含み、前記のような樹脂を含む樹脂組成物は、多様な製品に使用できる。一例として、食品包装用フィルム(例えば、ラップ)、工業用フィルム、コンパウンド、デコシート、デコタイル、軟質シート、硬質シート、電線およびケーブル、壁紙、発泡マット、レザー、床材、ターポリン、手袋、シーラント、冷蔵庫などのガスケット、ホース、医療機器、ジオグリッド、メッシュターポリン、玩具用品、文具用品、絶縁テープ、衣類コーティング剤、衣類または文具用などに用いられるPVCラベル、瓶栓ライナ、工業用またはその他用途の栓、擬似餌、電子機器内部品(例えば、sleeve)、自動車内装材、接着剤、コーティング剤などの製造に使用できるが、これに制限されるものではない。
【0092】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎなく、発明の権利範囲はこれによって定まるものではない。
【0093】
<液相原料準備>
製造例1
ジオクチルテレフタレート(dioctyl terephthalate,DOTP)に対して、中和剤として濃度15重量%のNaOH水溶液を液相原料総重量に対してNaOH 1重量%に該当する量で投入し、そして水を液相原料総重量に対して1重量%の量で投入した後、窒素ストリッピングを行って、フィルタ(filter)運転条件2barおよび90~100℃でフィルタリングを行って液相原料を製造した。
【0094】
製造例2
ジオクチルテレフタレート(DOTP)に対して、中和剤として濃度15重量%のNaOH水溶液を液相原料総重量に対してNaOH 1重量%に該当する量で投入し、そして水を液相原料総重量に対して1重量%の量で投入した後、窒素ストリッピングを行って、フィルタ運転条件2barおよび100~120℃でフィルタリングを行って液相原料を製造した。
【0095】
製造例3
ジオクチルテレフタレート(DOTP)に対して、中和剤として濃度15重量%のNaOH水溶液を液相原料総重量に対してNaOH 1重量%に該当する量で投入し、そして水を液相原料総重量に対して1重量%の量で投入した後、窒素ストリッピングを行って、フィルタ運転条件2barおよび160~170℃でフィルタリングを行って液相原料を製造した。
【0096】
製造例4
ジオクチルテレフタレート(DOTP)に対して、中和剤として濃度15重量%のNaOH水溶液を液相原料総重量に対してNaOH 0.5重量%に該当する量で投入し、そして水を液相原料総重量に対して0.5重量%の量で投入した後、窒素ストリッピングを行って、フィルタ運転条件2barおよび160~170℃でフィルタリングを行って液相原料を製造した。
【0097】
実験例1
前記製造例1~4で準備した液相原料のHaze値を測定した。
詳細には、Path lengthが50mmであるHunter LabのGlass Cellに、前記製造例1~4で準備した液相原料をそれぞれ約100ml満たした後、HAZE測定機器としてBYK社製のhaze-gard plus機器を用いてヘイズ(HAZE)値を2~3回繰り返し測定し、下記表1にその平均値で示した。
<分析機器条件>
Measuring Range:Haze 0-100%
Display resolution:0.01 unit in range 0.00-9.99,
0.1 unit in range 10.0-99.9
Repeatability: ±0.1 unit
Reproducibility: ±0.4 unit
【0098】
【0099】
<フタレート系化合物の水素化方法>
実施例1
前記製造例1で準備した液相原料、および気相原料として水素をそれぞれ
図1に提示されたような反応器内に注入し、反応圧力110bar、反応温度150℃で水素化反応を行った。
【0100】
この時、液相原料の質量流量は9.6kg/hrであり、水素は水素/DOTPのモル比が10モル比になるように投入した。また、水素とDOTPの体積流量比は5:1であり、水素の投入時の温度は140℃、圧力は150barであり、DOTPの投入時の温度は140℃、圧力は150barであった。
【0101】
前記反応器は単一管形態で、管内の触媒が満たされている部分の長さは合計3.0mであり、制熱用外部ジャケットなしで水素化反応を行った。
【0102】
この時、前記反応器に使用された触媒はルテニウム(Ru)担持触媒(シリカ担体100重量部に対してルテニウム含有量0.5重量部)であり、前記反応器としてはシリンダー型の直径3mm、高さ3mmのサイズを用いた。
【0103】
実施例2
前記製造例2で準備した液相原料を使用することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行って水素化反応を行った。
【0104】
比較例1
前記製造例3で準備した液相原料を使用することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行って水素化反応を行った。
【0105】
比較例2
前記製造例4で準備した液相原料を使用することを除いては、前記実施例1と同様の方法で行って水素化反応を行った。
【0106】
実験例2
前記実施例1、2および比較例1、2の水素化反応に対して、初期転換率および運転時間48時間基準転換率、水素化反応生成物の酸価、水素化反応生成物の加熱後の酸価、および触媒寿命を評価した。
【0107】
(1)初期転換率:
反応初期に投入されたDOTPの量と、最終的に製造されたDEHCH(di(2-ethylhexyl)cyclohexan-1,4-dicarboxylate)の量から下記数式1により初期転換率を計算した。
[数式1]
初期転換率=[(最終的に製造されたDEHCHの量)/(反応初期に投入されたDOTPの量)]×100
【0108】
(2)水添反応器の運転時間48時間基準転換率:
反応初期に投入されたDOTPの量と、水添反応器の運転時間48時間後に製造されたDEHCHの量から、下記数式2により運転時間48時間基準転換率を計算した。
[数式2]
水添反応器の運転時間48時間基準転換率=[(水添反応器の運転時間48時間後に製造されたDEHCHの量)/(反応初期に投入されたDOTPの量)]×100
【0109】
(3)水素化反応生成物の酸価
反応混合物から未反応の気相原料を分離して得た水素化反応生成物をKOH試薬で滴定した後、下記数式3により計算した。
【数1】
(前記数式3において、αは滴定試薬(KOH)消費量、βは1.00、δは投入された試料(水素化反応生成物)量である。)
【0110】
(4)加熱後水素化反応生成物の酸価:
上記のように反応混合物から分離された水素化反応生成物を125℃で3時間維持した後に前記水素化反応生成物の酸価測定と同様の方法により滴定および計算した。
【0111】
(5)触媒寿命:
前記(1)および(2)で計算した初期転換率(X0)と水添反応器の運転時間48時間(2日)基準転換率(X1)値を用いて下記数式4により触媒寿命を計算した。
[数式4]
触媒寿命=(X0-X1)/X0
【0112】
【0113】
前記表1を参照すると、本発明による水素化方法で行われた実施例1および2の場合、低いHAZE値を有する液相原料の使用により、比較例1および2と比較して、転換率の減少が小さく、最終生成物での酸価および加熱後の酸価も大きく減少し、触媒寿命もまた改善された結果を示した。
【符号の説明】
【0114】
a,b 熱交換器
c 反応器
d 気相-液相分離器
1 気相原料
2 昇温した気相原料
3 液相原料
4 昇温した液相原料
5 反応混合物
6 気相の未反応物
7 液相の反応生成物