(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】液体燃料ロケット用のバルブタイミングシステム
(51)【国際特許分類】
F02K 9/58 20060101AFI20240412BHJP
B64G 1/40 20060101ALI20240412BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240412BHJP
B64G 1/22 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F02K9/58
B64G1/40 100
F16K31/06 310Z
B64G1/22
(21)【出願番号】P 2022528216
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 US2019065420
(87)【国際公開番号】W WO2021118536
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】コーディ,ラリー
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-228893(JP,A)
【文献】実開昭60-164181(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1130300(EP,A1)
【文献】特開2001-207913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0265477(US,A1)
【文献】特開平5-170194(JP,A)
【文献】特開昭55-160181(JP,A)
【文献】特表2016-524673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167574(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0236140(US,A1)
【文献】Richard L. Huftalen, J. Morgan Parker, Andrea L. Platt, George A. Yankura,“MINIMUM IMPULSE THRUSTER VALVE DESIGN AND DEVELOPMENT”,米国,American Institute of Aeronautics, Inc.,2003年07月20日,pp.1-10,39th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference and Exhibit 20-23 Jul 2003 Huntsville, Alabama
【文献】Ronald A. Spores, Robert Masse, Scott Kimbrel,“GPIM AF-M315E Propulsion System”,米国,American Institute of Aeronautics and Astronautics,2013年07月15日,pp.1-10,49th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit 15-17 July 2013, San Jose, California
【文献】J. Morgan Parker, Michael J. Wilson,“THE MINIMUM IMPULSE THRUSTER”,米国,NASA,2005年12月05日,53rd JANNAF Propulsion Meeting 5-8 Dec 2005, Monterey, California
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/56, 9/80,
B64G 1/22,
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電流センサ入力部と、
少なくとも1つの電圧センサ入力部と、
プロセッサが前記少なくとも1つの電流センサ入力部および前記少なくとも1つの電圧センサ入力部に接続される、前記プロセッサおよびメモリと、
を備えた
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラであって、こ
のコントローラは、単一のバルブ作動の電流プロファイルおよび電圧プロファイルに基づいて
前記液体燃料ロケットエンジンバルブの
完全に閉じられたバルブ時間および最初のバルブ開時間を決定するように構成され、前
記コントローラは、前記
完全に閉じられたバルブ時間および前記最初のバルブ開時間に基づいてバルブ制御を調整して、前記少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを構成するように構成される、
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のバルブコントローラ。
【請求項2】
前記実際の最小インパルスビットは、少なくとも1つの外部要因と相互に関連付けられ、前
記コントローラは、前記バルブ制御を調整して、
前記少なくとも1つの外部要因に関連する前記少なくとも1つの実際の最小インパルスビッ
トを構成するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項3】
前記外部要因は、エンジン圧力およびバッテリ電圧の少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項4】
前
記コントローラは、前記バルブの最初の作動での前記少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを決定するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項5】
前
記コントローラは、前記
液体燃料ロケットエンジンバルブの更新された最小インパルスビットを周期的に決定するようにさらに構成されることを特徴とする請求項1に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項6】
前
記コントローラは、前記
液体燃料ロケットエンジンバルブの最も直近に決定および更新された最小インパルスビットに基づいてバルブ制御を調整するようにさらに構成されることを特徴とする請求項5に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項7】
前記最小インパルスビットは、
前記最初のバルブ開時間に部分的に基づいており、該最初のバルブ開時間は、前記電流プロファイルの増加における低下部となるように決定されることを特徴とする請求項1に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項8】
前記最小インパルスビットは、
前記完全に閉じられたバルブ時間に部分的に基づいており、前記完全に閉じられたバルブ時間は、電圧スパイクと、前
記コントローラによってゼロにされたバルブ制御電流との間の時間となるように決定されることを特徴とする請求項1に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項9】
前記最小インパルスビットは、
前記最初のバルブ開時間に部分的に基づいており、前記最初のバルブ開時間は、前記電流プロファイルにおける低下部となるように決定されることを特徴とする請求項8に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電流センサ入力部および前記少なくとも1つの電圧センサ入力部の各々は、バルブ制御信号ラインに接続されており、該バルブ制御信号ラインを検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項11】
前記バルブ制御信号ラインは、
前記液体燃料ロケットエンジンバルブに制御可能に接続されることを特徴とする請求項10に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項12】
前記液体燃料ロケットエンジンバルブは、燃料容器から燃焼器への液体燃料の流れを少なくとも部分的に制御することを特徴とする請求項11に記載の
液体燃料ロケットエンジンバルブ用のコントローラ。
【請求項13】
液体燃料ロケットエンジンバルブの最小インパルスビットを決定する方法であって、
バルブ制御信号の電流プロファイルおよび電圧プロファイルを監視し、
電流増加における低下部の開始となるように最初のバルブ開時間を決定し、前記バルブ制御信号の電圧スパイクとなるようにバルブ完全閉時間を決定し、
前記最初のバルブ開時間から前記バルブ完全閉時間までの時間の長さとなるように前記
液体燃料ロケットエンジンバルブの前記最小インパルスビットを決定することを含む、方法。
【請求項14】
前記
液体燃料ロケットエンジンバルブの前記最小インパルスビットを少なくとも1つの外部環境要因と相互に関連づけることをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの外部環境要因は、エンジン圧力およびバッテリ電圧の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法を周期的に繰り返し、各繰り返しにおいて前記決定された最小インパルスビットを更新することをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
燃焼器と、
燃料ラインおよび第1バルブによって前記燃焼器に接続された液体燃料容器と、
酸化剤ラインおよび第2バルブによって前記燃焼器に接続された酸化剤容器と、
前記第1バルブにバルブ制御電流を出力するように構成され、少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを構成するように構成され
る、前記第1バルブ
用のコントローラであって、前記第1バルブの単一の作動の電流プロファイルおよび電圧プロファイルに基づいて
前記第1バルブの
完全に閉じられたバルブ時間および最初のバルブ開時間を決定するように構成され、前記完全に閉じられたバルブ時間および前記最初のバルブ開時間に基づいて前記少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを
構成するように構成されるバルブコントローラと、
を備えた液体燃料ロケットエンジン。
【請求項18】
前記バルブ制御電流の電流プロファイルを検出するように構成された少なくとも1つの電流センサと、前記バルブ制御電流の電圧プロファイルを検出するように構成された少なくとも1つの電圧センサとをさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の液体燃料ロケットエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、バルブの制御に関し、より詳細には、液体燃料ロケットの最小インパルスビット期間を減少させるバルブタイミングおよび制御に関する。
【背景技術】
【0002】
液体燃料ロケットおよび他の同様のシステムは、バルブおよびバルブの制御を利用して、燃焼器への燃料の流れを制御し、これにより、燃焼器によって生成される推力を制御する。バルブの作動中に、バルブが開いたまま維持される最も小さい期間が最小インパルスビット(MIB)と呼ばれ、この最小インパルスビットは、バルブを介して流体流れに適用され得る制御の粒度、および従って、液体燃料ロケットエンジンの推力制御の粒度を要求する。
【0003】
任意の所与のバルブの最小インパルスビット時間は、バルブの開応答および閉応答のばらつきに起因して変化し得る。このばらつきは、バルブの経年変化、バルブの摩耗、バルブが作動している環境条件等を含む任意の数の要因に基づくものである。ばらつきを補償し、予測可能な一貫した制御を提供するために、離散的なバルブの作動が、一般に、バルブの実際の最小インパルスビットよりも僅かに長く実施される。
また、液体燃料ロケットのバルブの最小インパルスビット期間を含む先行技術文献の一例として、最小インパルススラスタの最小インパルスビット期間を示す非特許文献1であるJ.Morgan Parker et al.THE MINIMUM IMPULSE THRUSTERが挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一例では、バルブコントローラは、少なくとも1つの電流センサ入力部と、少なくとも1つの電圧センサ入力部と、プロセッサが少なくとも1つの電流センサ入力部および少なくとも1つの電圧センサ入力部に接続される、プロセッサおよびメモリと、を備え、バルブコントローラは、単一のバルブ作動の電流プロファイルおよび電圧プロファイルに基づいてバルブの少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを決定するように構成され、バルブコントローラは、バルブ制御を調整して、少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを構成するように構成される。
【0005】
上述のバルブコントローラの他の例では、実際の最小インパルスビットは、少なくとも1つの外部要因と相互に関連付けられ、バルブコントローラは、バルブ制御を調整して、少なくとも1つの実際の最小インパルスビットおよび少なくとも1つの外部要因を構成するように構成される。
【0006】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、外部要因は、エンジン圧力およびバッテリ電圧の少なくとも1つである。
【0007】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、バルブコントローラは、バルブの最初の作動での少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを決定するように構成される。
【0008】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、バルブコントローラは、バルブの更新された最小インパルスビットを周期的に決定するようにさらに構成される。
【0009】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、バルブコントローラは、バルブの最も直近に決定および更新された最小インパルスビットに基づいてバルブ制御を調整するようにさらに構成される。
【0010】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、最小インパルスビットは、最初のバルブ開時間に部分的に基づいており、該最初のバルブ開時間は、電流プロファイルの増加における低下部となるように決定される。
【0011】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、最小インパルスビットは、完全に閉じられたバルブ時間に部分的に基づいており、完全に閉じられたバルブ時間は、電圧スパイクと、バルブコントローラによってゼロにされたバルブ制御電流との間の時間となるように決定される。
【0012】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、最小インパルスビットは、最初のバルブ開時間に部分的に基づいており、最初のバルブ開時間は、電流プロファイルにおける低下部となるように決定される。
【0013】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、少なくとも1つの電流センサ入力部および少なくとも1つの電圧センサ入力部の各々は、バルブ制御信号ラインに接続されており、該バルブ制御信号ラインを検出するように構成される。
【0014】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、バルブ制御信号ラインは、液体燃料ロケットエンジンバルブに制御可能に接続される。
【0015】
任意の上述のバルブコントローラの他の例では、液体燃料ロケットエンジンバルブは、燃料容器から燃焼器への液体燃料の流れを少なくとも部分的に制御する。
【0016】
バルブの最小インパルスビットを決定する1つの例示的な方法は、バルブ制御信号の電流プロファイルおよび電圧プロファイルを監視し、電流増加における低下部の開始となるように最初のバルブ開時間を決定し、バルブ制御信号の電圧スパイクとなるようにバルブ完全閉時間を決定し、最初のバルブ開時間からバルブ完全閉時間までの時間の長さとなるようにバルブの最小インパルスビットを決定することを含む。
【0017】
上記方法の他の例は、バルブの最小インパルスビットを少なくとも1つの外部環境要因と相互に関連づけることを含む。
【0018】
任意の上記方法の他の例では、少なくとも1つの外部環境要因は、エンジン圧力およびバッテリ電圧の少なくとも1つを有する。
【0019】
任意の上記方法の他の例は、方法を周期的に繰り返し、各繰り返しにおいて、決定された最小インパルスビットを更新することを含む。
【0020】
一例に従う液体燃料ロケットエンジンは、燃焼器と、燃料ラインおよび第1バルブによって燃焼器に接続された液体燃料容器と、酸化剤ラインおよび第2バルブによって燃焼器に接続された酸化剤容器と、第1バルブにバルブ制御電流を出力するように構成され、少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを構成するように構成されたバルブコントローラであって、第1バルブの単一の作動の電流プロファイルおよび電圧プロファイルに基づいてバルブの少なくとも1つの実際の最小インパルスビットを決定する指示を格納するバルブコントローラと、を備える。
【0021】
上述の液体燃料ロケットエンジンの他の例は、バルブ制御電流の電流プロファイルを検出するように構成された少なくとも1つの電流センサと、バルブ制御電流の電圧プロファイルを検出するように構成された少なくとも1つの電圧センサとを備える。
【0022】
本発明のこれらおよび他の特徴部は、以下の明細書および図面から最も良く理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】大いに概略化した例示的な液体燃料ロケットエンジンの図である。
【
図2】
図1の液体燃料ロケットエンジンでの使用のための例示的なバルブ制御システムの概略図である。
【
図3】
図2のバルブ制御システムのバルブタイミングチャートを概略的に示す図である。
【
図4】特定のバルブの最小インパルスビットを決定するために、実験的なタイミングデータを用いてバルブを作動させるプロセスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、大いに概略化した例示的な液体燃料ロケットエンジン10を概略的に示している。本開示に関連しないエンジン10のシステムおよび制御は、説明の目的のために省略および/または簡素化され、本明細書に記載される概念を実施する実用的な液体燃料ロケットエンジンは、実用的な例を実施するのに必要とされ得る任意の数の付加的な構成およびシステムを有することができる。液体燃料ロケットエンジン10は、液体燃料容器20、酸化剤容器30および燃焼器40を備える。液体燃料容器20は、燃料ライン22を介して燃焼器40に接続されており、流体バルブ24が、燃焼器40への液体燃料の流れを制御する。同様に、酸化剤容器30は、流体ライン32を介して燃焼器40に接続されており、該燃焼器40への酸化剤の流れは、流体バルブ34によって制御される。バルブ24,34の各々は、コントローラ50によって制御される。
【0025】
燃焼器40内では、液体燃料および酸化剤は、混合され、点火されて、残りの燃焼生成物はノズル42を通して放出され、これにより、推力が生成される。生成された推力の大きさは、燃焼器40へ噴射される液体燃料の量によって制御される。摩耗および環境条件のような種々の条件、およびバルブ毎の製造のばらつきに起因して、バルブ24の最小インパルスビットは、ばらつきを含み得るものであり、許容ウインドウ内に入り得る。可能である最も離散的な制御を提供するために、ばらつきを最小化することが望ましい。
【0026】
図1の参照を継続して、
図2は、電気的に制御されるバルブ110を有したバルブ構成100を示しており、バルブ110は、該バルブ110が開いているときにバルブ110を通して流体120を通過させ、バルブ110が閉じているときに流体120を通過させない。バルブ110は、電流信号130によって制御される。電流信号130は、コントローラ140の電流ドライバ142の部分から発生する。電圧センサ132および電流センサ134は、バルブ110に入力される電流信号130の電圧および電流(のそれぞれ)を監視するように構成されている。各センサ132,134のセンサ出力は、コントローラ140内のプロセッサ144に供給される。
【0027】
バルブ110の作動中に、制御信号130は、初めにバルブ110を開くように高電流レベルに指令され、そして、バルブ110を介して流体を流す十分な時間の間、開位置にバルブ110を維持するように、より小さい「維持」レベルに落とされる。予め定義された期間後に、電流信号130はゼロにされ、バルブ110は閉じられる。最初に開いて完全に閉じられるまでの合計の期間は、最小インパルスビットである。
【0028】
図1および
図2の参照を継続して、
図3は、時間(t)に対する単一の例示的な最小インパルスビットの電流(i)プロファイル210および電圧(v)プロファイル220を示している。電流プロファイル210および電圧プロファイル220は、t=0(点201)で始まり、コントローラは、点202への安定的な電流増加の形態で制御開信号を開始する。電流プロファイルの点202では、バルブが開き始め、電流低下203が生じる。コントローラが開電流を出力し始めることと、バルブが開き始めることとの間の時間の長さは、開可変時間213と呼ばれる。最小インパルスビット(MIB)は、バルブ24,34が完全に開かれる時間(点205)から、バルブ24,34が完全に閉じられる時間(点209)までの期間である。
【0029】
破線204は、バルブが開かなかった場合の連続した電流の増加を示している。電流の低下は点205で終わり、該点205では、バルブの「完全に開いた」位置を示している。そして、電流プロファイルは、開バルブ制御信号の最大電流206へと増加し続け、予め定義された期間保持される。予め定義された期間の後に、コントローラは、(点206での)開制御レベルから、点207での維持制御レベルへと制御電流を低下させる。バルブが点208(t=1)で閉じるべきかをコントローラが判断するまで、維持制御電流は、安定的に保持される。閉じるという判断がなされると、コントローラは、電流を0アンペアにして、バルブを閉じる。バルブは、点209(t=2)で完全に閉じる。
【0030】
制御電流がゼロまで到達した後のいくらかのディレイまでバルブが完全に閉じないので、コントローラは、電圧センサ信号および電流センサ信号を監視する。バルブがt=2で完全に閉じるときに、電圧スパイク221が生じる。バルブが閉じるように指令された後でかつバルブが完全に閉じられる前の付加的な時間211は最小ビット時間に影響を与え、最小ビット時間内のばらつきの原因であり、閉可変時間211と呼ばれる。
【0031】
電圧および電流を監視することにより、コントローラは、バルブが閉じるように制御されるときからバルブが実際に閉じるときまでの時間を決定することができ、バルブの最小ビット時間は、コントローラが可変時間211,213に加えてバルブを開いた期間となるように決定される。
【0032】
現存のシステムは、時間どおりに、予め設定されたコントローラを使用し、可変時間は、最小インパルスビットのばらつきを生じさせる。
図1~
図3を継続して参照して、
図4は、所与のバルブ110についての正確な最小インパルスビット長さを決定する例示的な方法300を概略的に示している。最初に、バルブ110は、「バルブを初期化する」ステップ310において、第1の開/閉サイクルを備えて組み立てられ、取り付けられ、および提供される。開/閉サイクル中に、コントローラは、(
図3に示される)電流プロファイル210および電圧プロファイル220を格納する。
【0033】
コントローラのメモリに格納されると、電流プロファイル210および電圧プロファイル220は、「可変パラメータを決定する」ステップ320において、可変パラメータを決定するように分析される。一例では、可変パラメータは、閉可変時間211および開可変時間213である。決定されると、可変時間は、コントローラのメモリに格納され、コントローラは、「最小インパルスビットを決定する」ステップ330において、最小インパルスビット時間を決定する。
【0034】
最小インパルスビットは、バルブが開き始めるときからバルブが完全に閉じられるときまでの時間の長さであり、点201での最初の指令オンから点208での指令オフ時間に、可変閉時間211を加算して、可変オン時間213を減算したものである。決定されると、最小インパルスビットは、「MIBを格納する」ステップ340において格納され、制御シーケンスが、特定のバルブの実際の最小インパルスビットを構成するように調整される。
【0035】
ある例では、上記のプロセスによって生成された最小インパルスビットは、特定のバルブの全ての条件の下で正確となるように推定され、液体燃料ロケットエンジンの動作の全体にわたって利用され得る。付加的な制御容量が利用可能である他の例では、最小インパルスビットは、最も直近に決定された最小インパルスビットを利用する後続のバルブ作動を用いて、液体燃料エンジンの動作の全体にわたって再び計算され得る。
【0036】
別の例では、最小インパルスビットは、複数の条件、例えばエンジン圧力、バッテリ電圧等の下で決定され得る。この例では、決定された最小インパルスビットは、コントローラにおいて、最小インパルスビットが決定されたときに存在した環境または他の条件と相互に関連づけられる。バルブ110の後続の作動は、バルブの現在検出された条件に対応する最小インパルスビットを利用し、より少ないばらつきを有したより正確なタイミングを提供することができる。
【0037】
液体燃料ロケットエンジンの最小インパルスビットについて上述したが、本明細書で説明したバルブタイミングシステムが任意の流体バルブ制御システムに適用され得るものであり、液体燃料ロケットエンジンの用途に限定されないことが理解される。
【0038】
任意の上述の概念を、単独で、もしくは、任意または全ての他の上述の概念と組み合わせて用い得ることがさらに理解される。本発明の実施例が開示されたが、当業者は、特定の修正が本発明の範囲内に含まれ得ることを理解するであろう。この理由のために、以下の特許請求の範囲が、本発明の真の範囲および内容を決定するように検討されるべきである。