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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ビームスポイリング
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240412BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
G01S7/02 216
H01Q3/26 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022528219
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 US2020048057
(87)【国際公開番号】W WO2021101609
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】16/686,573
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】オウダーカーク,グレッグ,ディー.
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-068378(JP,A)
【文献】特開2016-116223(JP,A)
【文献】特開2012-230098(JP,A)
【文献】特表昭60-501974(JP,A)
【文献】米国特許第08604976(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 3/00 - 3/46
H01Q 21/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポイリング関数及びステアリング関数を用いることにより、一定位相の曲面を持つビームをフェイズドアレイレーダ面から生成する、
ことを有し、
前記ビームはu空間内でスポイルされ、
前記ビームはv空間内でスポイルされ、
前記ビームは、ホライズンに従った、実空間において平坦であり且つuv空間において湾曲したパターンを持つ、
方法。
【請求項2】
前記ビームはファンビームを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビームは固定振幅を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビームは、カラム内のアレイ素子間隔、波長、前記フェイズドアレイレーダ面のカラム内の素子数、及びアレイ視野に基づいて、u空間内でスポイルされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ビームは、走査損失に対して修正される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ビームは、アレイロウ素子間隔、波長、及びロウ素子の数に基づいて、v空間内でスポイルされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反復処理なしでリアルタイムに前記ビームを制御する、ことを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フェイズドアレイレーダシステムであって、
ビームフォーマ及びビームスポイラモジュールを有し、前記ビームスポイラモジュールは、
一定位相の曲面を持つビームをフェイズドアレイレーダ面から生成する、
ように構成され、
前記ビームはu空間内でスポイルされ、
前記ビームはv空間内でスポイルされ、
前記ビームは、ホライズンに従った、実空間において平坦であり且つuv空間において湾曲したパターンを持つ、
フェイズドアレイレーダシステム。
【請求項9】
前記ビームはファンビームを有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ビームは固定振幅を持つ、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記ビームは、カラム内のアレイ素子間隔、波長、前記フェイズドアレイレーダ面のカラム内の素子数、及びアレイの視野に基づいて、u空間内でスポイルされる、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記ビームは、アレイロウ素子間隔、波長、及びロウ素子の数に基づいて、v空間内でスポイルされる、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
反復処理なしでリアルタイムに前記ビームを制御する、ことを更に含む請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
コンピュータに、請求項1に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
技術的に知られているように、フェイズドアレイアンテナは、複数の位相シフタ回路を介して送信器又は受信器のいずれか又は双方に結合された、互いに既知の距離だけ離間した複数のアンテナ素子を含む。一部のケースにおいて、位相シフタ回路は、送信器及び/又は受信器の一部と見なされる。
【0002】
これまた知られているように、フェイズドアレイアンテナシステムは、送信器又は受信器とアンテナ素子のアレイとの間を通る無線周波数(RF)エネルギーの位相を(位相シフタ回路を介して)制御することによって、RFエネルギーのビームを生成し、選択された方向に沿って該ビームを方向付けるように構成される。電子走査フェイズドアレイにおいて、位相シフタ回路の位相(ひいてはビーム方向)は、複数の位相シフタセクションの各々に制御信号又は制御ワードを送ることによって設定される。制御ワードは典型的に、所望の位相シフトを表すデジタル信号であり、所望の減衰レベル及び他の制御データを有し得る。
【0003】
フェイズドアレイアンテナは、しばしば、防衛及び商用電子システムの両方で使用される。例えば、アクティブ電子走査アレイ(Active, Electronically Scanned Array;AESA)は、例えばレーダ監視及び追跡、地上及び衛星通信、移動電話、ナビゲーション、識別、及び電子対抗手段などの広範な防衛及び商用電子システムで需要がある。軍用レーダシステムは、しばしば、弾道ミサイル防衛(BMD)任務のための長距離動作(完全にフォーカシングした高感度ビームパターンを必要とする)と、ボリューム監視任務のための短距離動作(監視ボリュームをより速く走査するために空間的に広がったビームを必要とする)との両方を必要とする。そのようなシステムはまた、電子戦争(EW)及び情報収集にも使用され得る。従って、システムは、しばしば、例えば船舶、航空機、ミサイルシステム、ミサイルプラットフォーム、人工衛星、又は建物などの単一の構造物上に配備される。
【0004】
レーダシステムは、所望のパターンで信号を送信し、1つ以上のターゲットから反射された信号を受信する。一部のケースにおいて、例えばフェイズドアレイアンテナなどのアンテナによって送信及び/又は受信される広いアンテナパターンを持つことが望ましい。従来システムでは、位相のみの(phase-only,位相オンリー)重み付けパターン計算するのに、例えば所望のビーム幅、サイドローブレベル、効率などの様々なアンテナパラメータの反復的な非リアルタイムでの最適化が用いられる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、例えば同時ホライズンサーベイランスを可能にするために、ホライズン(水平線、地平線)にわたって送信及び/又は受信アンテナパターンをフォーカシングするフェイズドアレイアンテナシステム向けの方法及び装置を提供する。実施形態において、ホライズン幅アンテナパターンをフォーカシングするための位相オンリー重み付け関数を計算するために、閉じた形式の(closed-form,クローズドフォーム)処理が使用される。従来システムにおいてのようにパターンパラメータの何らかのセットを最適化しようと試みるのとは対照的に、本発明の実施形態例では、所望の視野(FOV)にわたってビームを直接的にフォーカシングすることによって、位相面が直接的に計算される。実施形態において、得られるビームがFOVにわたって略一定の利得を持つように、走査損失に対して調節を行うことができる。アンテナパターンがFOVにわたってホライズン上に留まるように、アンテナのチルト及びロールを考慮する更なる調節を行うことができる。
【0006】
広い方位角のファンビームに関して実施形態例を図示して説明するが、理解されることには、本発明の実施形態は、任意の方向の広いビームが望まれるフェイズドアレイアンテナシステムに一般的に適用可能である。例えば方位角、仰角といった1つの次元において例えば90度から120度にわたって、及び/又は回転したファンビームに対して、アンテナパターン例を提供することができる。実施形態において、アンテナパターン例は、UV空間において平坦であり且つ実空間において湾曲したパターンを提供する従来技術システムとは対照的に、望ましい実空間形状に従う。
【0007】
理解されることには、位相オンリー重み付け関数のクローズドフォーム処理は、例えば航空機、船舶及び他の車両などの移動プラットフォーム用途、並びに、静止システム、受動ホライズン走査レーダ、例えば前方配備型送信器などの独立照射用途、例えばNCR/ROCR用途などの通信システム、AAWサーチレーダ、合成開口イメージングレーダ、気象レーダシステム、ナビゲーションレーダシステム、及びこれらに類するもの向けのリアルタイム計算に好適である。
【0008】
一態様において、方法は、一定位相の曲面を持つビームをフェイズドアレイレーダ面から生成することを有する。当該方法は更に、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:ビームはファンビームを有する、ビームはu空間内でスポイルされる、ビームはv空間内でスポイルされる、ビームは固定振幅を持つ、ビームは、カラム内のアレイ素子間隔、波長、フェイズドアレイレーダ面のカラム内の素子数、及びアレイ視野に基づいて、u空間内でスポイルされる、ビームは、走査損失に対して修正される、ビームは、アレイロウ素子間隔、波長、及びロウ素子の数に基づいて、v空間内でスポイルされる、反復処理なしでリアルタイムにビームを制御する、及び/又は、ビームは、ホライズンに従った、実空間において平坦であり且つuv空間において湾曲したパターンを持つ。
【0009】
他の一態様において、フェイズドアレイレーダシステムは、ビームフォーマ及びビームスポイラモジュールを有し、ビームスポイラモジュールは、一定位相の曲面を持つビームをフェイズドアレイレーダの面から生成する、ように構成されている。当該システムは更に、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:ビームはファンビームを有する、ビームはu空間内でスポイルされる、ビームはv空間内でスポイルされる、ビームは固定振幅を持つ、ビームは、カラム内のアレイ素子間隔、波長、フェイズドアレイレーダ面のカラム内の素子数、及びアレイの視野に基づいて、u空間内でスポイルされる、ビームは、アレイロウ素子間隔、波長、及びロウ素子の数に基づいて、v空間内でスポイルされる、反復処理なしでリアルタイムにビームを制御する、及び/又は、ビームは、ホライズンに従った、実空間において平坦であり且つuv空間において湾曲したパターンを持つ。
【0010】
他の一態様において、物品は、命令を格納した非一時的コンピュータ読み取り可能媒体を有し、該命令は、フェイズドアレイレーダに、当該フェイズドアレイレーダの面から、一定位相の曲面を持つビームを生成させる。当該物品は更に、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:ビームはファンビームを有する、ビームはu空間内でスポイルされる、ビームはv空間内でスポイルされる、ビームは固定振幅を持つ、ビームは、カラム内のアレイ素子間隔、波長、フェイズドアレイレーダ面のカラム内の素子数、及びアレイの視野に基づいて、u空間内でスポイルされる、ビームは、アレイロウ素子間隔、波長、及びロウ素子の数に基づいて、v空間内でスポイルされる、反復処理なしでリアルタイムにビームを制御する、及び/又は、ビームは、ホライズンに従った、実空間において平坦であり且つuv空間において湾曲したパターンを持つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
この発明の前述の特徴並びに発明それ自体は、以下の図面の説明からいっそう十分に理解され得る。
図1】一定位相の曲線を持つスポイルドビームをアレイ面から生成するためのフェイズドアレイシステム例の概略表現である。
図2】一定位相の平面を持つビームを生成する従来のフェイズドアレイレーダの概略表現である。
図3】一定位相の曲線を持つスポイルドビームをアレイ面から生成するフェイズドアレイレーダ面の概略表現である。
図4】u及びvビームスポイリングを生成するのに用いることができるレーダパラメータを示している。
図5】一定位相の曲面を持つスポイルドビームをアレイ面から送信する及び/又は受信するのに好適であり得る三面フェイズドアレイレーダ例である。
図6】方位角及び仰角の概略表現である。
図7A】水平ファンビームの上面図を示している。
図7B図7Aの水平ファンビームの側面図を示している。
図8A】ラジアンに対する正規化されたアレイ素子カラム位置についてのスポイルドビーム及びアンスポイルドビームのプロットである。
図8B】ラジアン/素子に対する正規化されたアレイ素子カラム位置についてのスポイルドビーム及びアンスポイルドビームのプロットである。
図8C】dBに対する度でのスポイルドビーム及びアンスポイルドビームのプロットである。
図9A】uvにおいてスポイルされない主ビームのプロットを示している。
図9B】uにおいてスポイルされる主ビームのプロットを示している。
図9C】u及びvにおいてスポイルされる主ビームのプロットを示している。
図9D】u及びvにおいてスポイルされるステアリングされた主ビームのプロットを示している。
図10A】m行及びn列のアレイ素子についての受信器振幅重み付けを示している。
図10B】m行及びn列のアレイ素子についての位相スポイリングを示している。
図11A】u及びvにおけるスポイルド受信ビームをdBに対する正弦で示しているす;
図11B図11Aのスポイルド受信ビームをu及びv空間で示している。
図12A】u及びvにおけるスポイルド送信ビームをdBに対する正弦で示しているす;
図12B図12Aのスポイルド受信ビームをu及びv空間で示している。
図13】一定位相の曲面を持つスポイルドビームを生成するための一連のステップ例を示している。
図14】ここに記載される処理の少なくとも一部を実行することができるコンピュータ例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態例に従ったビームスポイリングを有するフェイズドアレイレーダシステム100の一例を示している。フェイズドアレイレーダシステム100は、一連の受信素子又は送信/受信素子102を含む。実施形態において、システム100は、位相シフタ104によって位相及び振幅において制御されるアレイ素子102にエネルギー供給して、1つ以上のビーム106を作り出すことができる。ビームフォーマ108が位相シフタ104への信号を制御することができる。図示したビーム106は、アンテナのブロードサイドBに対して角度θを有している。(1つ以上の)ビーム106は、アンテナ素子からの信号が結合して所与の方向を持つ平面波を作り出すときに形成される。ビーム106の方向は位相を制御することによって選択される。より十分に後述するように、ビームフォーマ108に結合されたビームスポイラモジュール110が、送信/受信ビームを所望のようにスポイルすることができる。
【0013】
図2は、一定位相の平面を有するリニアな位相面を用いた、従来のビームステアリングを有するフェイズドアレイレーダ200を示している。アレイ素子からの信号の位相を制御することによって、1つ以上のビームをステアリングすることができる。
【0014】
図3は、本発明の実施形態に従った、一定位相の曲面102での、アレイの面100にわたるビームステアリングを示している。u-v空間において、実施形態では、位相オンリースポイリング関数を、φ(m,n)=φ(n)+φ(m)+φsteer(n,m)として定義することができ、ただし、より十分に後述するように、φ(n)はuスポイリング関数を定義し、φ(m)はvスポイリング関数を定義し、φsteer(n,m)はuvステアリング関数を指す。
【0015】
以下にて、ここで使用され得る用語を定義し、そのうちの一部は図4に示されており、Bはブロードサイドを指し示す。図5は、本発明の実施形態例に好適であり得る三面フェイズドアレイレーダの一例を示している:
(m,n) - 位相スポイリング関数の実施形態例
φ(n) - スポイリング関数のUオンリー項
φ(m) - スポイリング関数のVオンリー項(Vスポイリングなしの場合は不要)
φsteer(n,m) - 主ビームのUVステアリング項
m,M - アレイ素子ロウインデックス、M行
n,N - アレイ素子カラムインデックス、N列
φ(u,v) - u,vへのステアリングのためのアンスポイルド位相関数
λ - 波長
Δx,Δy - ロウ、カラム素子間隔
max - スポイルドビームの所望のU範囲
θfov - 方位角視野(FOV)に対する設計
w(n) - 走査損失及びアンテナ効果を補償するための位相重み関数
k - 上の重み関数の指数であり、チューニング値(典型的に0.1-0.25)
steer(n) - カラムステアリング角度、FOV全体にわたる平滑関数
steer(n) - 所望の仰角(El)までの各カラムのステアリング角度
max - スポイルドビームの所望のV範囲(Vスポイリングが用いられる場合)
El - スポイルドビームの所望の仰角
Elant - アンテナ仰角
ant - アンテナチルト角
【0016】
図6は、仰角el及び方位角azを定義するベクトルrの極座標表現の一例を示している。uv空間においては、u=cos(el)sin(az)、及びv=sin(el)である。本発明の実施形態例は、uv空間で示されて説明される。理解されることには、他の実施形態は他の好適な表現を使用してもよい。
【0017】
図7Aは、更に後述されるような、実施形態例に従って生成されることが可能なファンビームの一例の上面図を示し、図7Bは側面図を示している。一般に、ファンビームは、1つの次元で他の次元よりも大きいビームを指す。実施形態は、ホライズンを走査するための水平方向のファンビームを持つ実施形態を示す。図7Bにて見てとれるように、当該ファンビームは、アレイ面のブロードサイドBからある角度を持つ。理解されることには、ファンビームは、水平方向、垂直方向、及びそれらの間の任意の方向を含め、任意の所望の方向を持つことができる。
【0018】
実施形態において、ビームは、所望の特性を持つようにスポイルされる。“スポイリング”とは、アレイ素子の位相を調節することによってビームの形状変化に影響を与えるために、フェイズドアレイアンテナの受信又は送信ビームを“スポイルする”(又は最適な構成から変更する)ための技術及びシステムを指す。実施形態において、送信ビームをデフォーカシングする又はスポイルするように、各素子について位相のみが調節される。そして、このスポイリングが、さもなければ(通常は)高度にフォーカシングされる狭い送信ビームからの複数の走査を必要とすることになる領域にわたる照射を提供する、より広い、調整されたビームの送信を可能にする。実施形態例において、従来技術の最適サーチ技術に対して大幅に低減された計算複雑性と引き換えにアンテナパターン効率を幾分犠牲にし得るクローズドフォームソリューションが提供される。
【0019】
デジタルビームフォーミング(DBF)技術は、送信ビームスポイリングを使用するレーダ用途のための受信ビームを提供するために、素子(又は素子のサブアレイ/サブアパーチャ)レベルで用いられ得る。このような用途では、受信ビーム(1つ又は複数)は、(1つ以上の)ターゲットからの戻り信号を受信するために、時間と空間の両方で同期される。そして、受信ビームにおけるデジタルビームフォーミングを用いて、受信ビームの数及び合成カバレッジを、スポイルされたパターンにマッチングさせることができる。
【0020】
実施形態は、例えば同時ホライズンサーベイランスを可能にするために、ホライズン全体にわたってフェイズドアレイアンテナパターンをフォーカシングするためのビームパターン重み付けを提供する。従来のシステムは、所与のボリュームにわたる複数のビームを連続的に形成し得るのに対し、フェイズドアレイシステムの実施形態は、ホライズンにわたる例えばファンビームなどのビームを形成する。実施形態例において、重み付けパターンは、アレイ素子出力振幅が固定されている場合に受信及び送信に適用可能な位相オンリーである。実施形態において、重み付けパターンは、UV空間におけるホライズンの見かけの曲率に対処し、独立したU及びVの重み付けをサポートする。Vにおけるスポイリング及び/又はサイドローブ重み付けを提供することができる。実施形態において、ビームスポイリングは反復プロセスを必要とせず、その結果、プラットフォームの動きに対処するためにリアルタイム再計算を行うことができる。
【0021】
実施形態において、スポイリング関数は:
【数1】
として定義され、ここで、uは、φ(n)として定義されるスポイリング関数であり、vは、φ(m)として定義されるスポイリング関数であり、uvステアリング関数は、φsteer(n,m)として定義される。上で定義したように、nはアレイ素子カラムインデックスを指し、mはロウインデックスを指す。
【0022】
uスポイリング関数は:
【数2】
として定義されることができ、ここで、Umax=sin(θFOV)-2λ/ΔNである。
【0023】
実施形態において、ビームは、重みwを用いて走査損失などに対して修正されることができ:
【数3】
ここで、
【数4】
である。
【0024】
実施形態において、上述のように、kは、およそ0.1と0.25との間とし得るものであるチューニング値を提供する指数とすることができる。
【0025】
実施形態において、
【数5】
と定義することができる。
【0026】
図8Aは、uスポイリングのためのスポイルドビーム800及びアンスポイルドビーム802についての、ラジアンに対する正規化カラム(n)位置のグラフである。図8Bは、スポイルドビーム810及びアンスポイルドビーム812についての、ラジアン/素子に対する正規化カラム位置を示している。図8Cは、スポイルドビーム820及びアンスポイルドビーム822についての、dBに対する度を示している。理解されることには、スポイルドビーム820はアンスポイルドビームよりも平坦であり、平坦である方が‘より良好’である。何故なら、一定位相の曲面にわたって利得がよりいっそう均一であるためである。
【0027】
vスポイリング関数は、
【数6】
として定義されることができる。
【0028】
実施形態において、vにおける総ビーム幅は比較的小さいとし得るので、走査損失、オーバーラップビームフォーマ効果、及びこれらに類するものに対する修正は行われない。一部の実施形態において、u又はvのスポイリングは行われない。
【0029】
UVステアリング関数は、
【数7】
として定義されることができる。
【0030】
アンテナチルト角Tant=0、且つステア仰角El=0である場合、
【数8】
であり、アンテナチルト角Tant=0である場合、
【数9】
である。
【0031】
steerの関数としてのVsteerの完全な列挙では:
【数10】
であり、ここで、
【数11】
である。
【0032】
図9Aは、uvにおいてスポイルされない主ビームMBのプロットを示している。見てとれるように、主ビームMBの中心は(0,0)のuv位置にある。ホライズンHは主ビームの下に見える。図9Bは、uスポイルドビームMBUを生成するために、uにおいてスポイル(φ(n))される主ビームのプロットを示している。見てとれるように、ビームは、u視野にわたって均一な利得を提供するようにuにおいてスポイル(φ(m))されている。図9Cは、uvスポイルドビームMBUVを生成するためにu及びvにおいてスポイル(φ(n)+φ(m))される主ビームのプロットを示している。図9Dは、ホライズンHを走査するためのステアリングされたUVスポイルドビームMBUVSを生成するために、u及びvにおいてスポイル(φ(m,n)=φ(n)+φ(m)+φsteer(n,m))されるステアリング主ビームを示している。
【0033】
一実施形態において、フェイズドアレイに関するパラメータ例は、Δ/λ=0.5、M=48、N=48、Elant=15°、Tiltant=-4.3°、FOV=+/-45°を含み、方位角方向における所望のビーム幅は約90度であり、仰角方向におけるビーム幅はホライズンの上4度であり、仰角方向で30dBのTaylor重み付けを用いる。
【0034】
上のパラメータ例について、図10Aは、水平ファンビームに対応するm行及びn列にわたる受信器振幅重み付けのグラフ表現である。図10Bは、m行及びn列にわたる位相スポイリングを示している。
【0035】
図11Aは、水平ファンビームに対応するuにおけるスポイルド受信ビーム1100及びvにおけるスポイルド受信ビーム1102を示している。見てとれるように、20dBの利得がある。図11Bは、ホライズンに対応し得る曲率1104を含んだ、uv空間におけるファンビームを示している。理解されることには、ホライズンは実空間では平坦であり、uv座標では湾曲する。図12A及び図12Bは、湾曲を含むスポイルド送信ビームの同様の表現を示している。
【0036】
図13は、実施形態例に従ったビームスポイリングを提供するための一連のステップの例を示している。ステップ1300にて、所望のビーム形状が受信され、ステップ1302にて、主ビームが所望の方向にステアリングされる。例えば、フェイズドアレイレーダの素子の位相を制御することによって、ファンビームを所与の方位角及び仰角にステアリングすることができる。上述のように、ビームは、一定の位相の曲面を持ち得る。ステップ1304にて、uにおけるスポイリング関数が選択され、オプションのステップ1306にて、vにおけるスポイリング関数が選択されて、スポイルドビームを生成する。ステップ1308にて、選択された形状及びスポイリング特性を持つ送信又は受信ビームが送信又は受信される。
【0037】
図14は、例えば図1、3、7、13及びここに含まれる方程式の処理など、ここに記載される処理の少なくとも一部を実行することができる例示的なコンピュータ1400を示している。例えば、コンピュータ1400は、ここに記載されるように、ビームを整形し、u及び/又はv空間においてビームをスポイリングするための、アレイアンテナ素子向けの信号を生成する処理を実行することができる。コンピュータ1400は、プロセッサ1402、揮発性メモリ1404、不揮発性メモリ1406(例えば、ハードディスク)、出力装置1407、及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)1408(例えば、マウス、キーボード、ディスプレイ)を含む。不揮発性メモリ1406は、コンピュータ命令1412、オペレーティングシステム1416、及びデータ1418を格納する。一例において、コンピュータ命令1412は、揮発性メモリ1404からプロセッサ1402によって実行される。一実施形態において、物品1420が、非一時的なコンピュータ読み取り可能な命令を有する。
【0038】
処理は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせで実装され得る。処理は、プロセッサ、記憶媒体若しくはプロセッサによって読み取り可能な他の製造物品(揮発性及び不揮発性のメモリ、及び/又は記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力装置、及び1つ以上の出力装置を各々が含む複数のプログラマブルコンピュータ/マシン上で実行されるコンピュータプログラムにて実装され得る。入力装置を使用して入力されたデータにプログラムコードが適用されて、処理を実行し、出力情報を生成する。
【0039】
システムは、データ処理装置(例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のコンピュータ)による実行のため、又はその動作を制御するために、少なくとも部分的にコンピュータプログラムプロダクト(例えば、機械読み取り可能記憶装置内)を介して処理を実行することができる。そのような各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、ハイレベルの手続型又はオブジェクト指向のプログラミング言語で実装され得る。しかしながら、プログラムはアセンブリ言語又は機械語で実装されてもよい。言語は、コンパイルされた又はインタープリットされた言語であってもよく、それは、スタンドアローンプログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン、又は他のユニットとして、を含む任意の形態で展開され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように、あるいは、一箇所の、又は複数箇所に分散されて通信ネットワークによって相互接続された、複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。コンピュータプログラムは、汎用又は特殊目的のプログラム可能なコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置(例えば、CD-ROM、ハードディスク、又は磁気ディスケット)に格納されることができ、該コンピュータによって記憶媒体又は記憶装置が読み取られるときに該コンピュータを構成して動作させる。処理はまた、コンピュータプログラムで構成された機械読み取り可能記憶媒体として実装されることができ、実行時に、該コンピュータプログラム内の命令がコンピュータを動作させる。
【0040】
処理は、1つ以上のコンピュータプログラムを実行してシステムの機能を果たす1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実行され得る。システムの全部又は一部が、特殊目的のロジック回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)及び/又はASIC(特定用途向け集積回路))として実装されてもよい。
【0041】
本発明の例示的な実施形態を説明したが、当業者にもはや明らかになることには、それらの概念を組み込んだ他の実施形態も使用され得る。ここに含まれる実施形態は、開示された実施形態に限定されるべきでなく、むしろ、添付の特請求項の精神及び範囲によってのみ限定されるべきである。ここで引用される全ての刊行物及び参考文献は、それらの全体にてここに明示的に援用される。
【0042】
ここに記載した複数の異なる実施形態の要素を組み合わせて、具体的には上述していない他の実施形態を形成してもよい。単一の実施形態の文脈で説明されたものである様々な要素がまた、別々に又は何らかの好適なサブコンビネーションで提供されてもよい。ここでは具体的に記載されていない他の実施形態も、以下の請求項の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14