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特許7471415液化廃プラスティックをアップグレードするための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】液化廃プラスティックをアップグレードするための方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 55/04 20060101AFI20240412BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20240412BHJP
   C10G 21/06 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C10G55/04
C10G9/36
C10G21/06
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2022531636
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020083583
(87)【国際公開番号】W WO2021105327
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】20196035
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パサネン、ユッカ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】パーシカッリオ、ビッレ
(72)【発明者】
【氏名】バポラ、リスト
(72)【発明者】
【氏名】オヤラ、アンチ
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527271(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104443(WO,A1)
【文献】特開2003-034794(JP,A)
【文献】特表2021-530596(JP,A)
【文献】国際公開第2019/197721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化廃プラスティックをアップグレードするための方法であって、
液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、
任意には、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料を製造するために前記液化廃プラスティック(LWP)材料の少なくとも一部を前処理する工程(B)、
クラッカーフィードを得るために、前記液化廃プラスティック(LWP)材料または前記前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせを、前記クラッカーフィードがスチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすように、高パラフィン材料と混合する工程(C)、ならびに、
クラッカー生成物を得るためにスチームクラッカー中の前記クラッカーフィードをスチームクラッキングする工程(D)
を含む方法であって、前記前処理工程(B)が、溶媒抽出(抽出溶媒が有機溶媒である)および水性溶媒を用いた抽出(抽出溶媒が水性溶液である)の少なくとも一つを含み、かつ、前記前処理工程(B)において水素が添加されず、および/または、水素化触媒が存在しない方法。
【請求項2】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり10ppm(wt.-ppm)以下である塩素含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり8wt.-ppm以下である塩素含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり6wt.-ppm以下である塩素含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり5wt.-ppm以下である塩素含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり4wt.-ppm以下である塩素含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり3wt.-ppm以下である塩素含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記高パラフィン材料が、少なくとも90wt.-%の5またはそれ以上の炭素原子を有する化合物を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たす前記クラッカーフィードが、18.0wt.-%以下のオレフィン含有量を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記前処理工程(B)が、
前記液化廃プラスティック材料を水性溶媒と少なくとも接触させることを含む請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性溶媒が、アルカリ性水性溶媒である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記前処理工程(B)が、150℃以上の温度で行われ、および/または、前記前処理工程(B)が、450℃以下の温度で行われる請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記前処理工程(B)が、200℃以上の温度で行われる請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記前処理工程(B)が、220℃以上の温度で行われる請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記前処理工程(B)が、240℃以上の温度で行われる請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記前処理工程(B)が、260℃以上の温度で行われる請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記前処理工程(B)が、400℃以下の温度で行われる請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記前処理工程(B)が、350℃以下の温度で行われる請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記前処理工程(B)が、300℃以下の温度で行われる請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、液化廃プラスティックの留分である請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、25℃以上の5%沸点または550℃以下の95%沸点を有する請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、30℃以上の5%沸点または500℃以下の95%沸点を有する請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、35℃以上の5%沸点または400℃以下の95%沸点を有する請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、35℃以上の5%沸点または360℃以下の95%沸点を有する請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記高パラフィン材料が、ナフサ留分、中間蒸留物留分、VGO留分、またはLPG留分、またはこれらの2つまたはそれ以上の混合物のうちの少なくとも一つである請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記高パラフィン材料が、ナフサ留分および中間蒸留物留分のうちの少なくとも一つである請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して60wt.-%より大きいパラフィン含有量を有している請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して65wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して70wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して75wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して80wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して85wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して90wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項34】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して93wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項35】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して95wt.-%以上のパラフィン含有量を有している請求項27記載の方法。
【請求項36】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、5wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、8wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、10wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、15wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、20wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、25wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項42】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、30wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、35wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、40wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、45wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項46】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、50wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する請求項36記載の方法。
【請求項47】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、50wt.-%~25wt.-%の範囲のn-パラフィン含有量を有する請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、45wt.-%~30wt.-%の範囲のn-パラフィン含有量を有する請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して、0.01wt.-%~15.00wt.-%の範囲のナフテン含有量を有する請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料の総計の重量に対して、0.01wt.-%~5.00wt.-%の範囲のナフテン含有量を有する請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記高パラフィン材料が、再生可能な材料である請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか1項に記載の方法により得られる前記クラッカー生成物を化学品および/またはポリマーを製造するために使用する方法。
【請求項53】
前記化学品および/またはポリマーがポリプロピレンおよび/またはポリエチレンである請求項52記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスティック原材料、特には液化廃プラスティックから価値の高い成分を製造するための方法に関する。特には、本発明は、スチームクラッキングプロセスにおけるコーフィードとして高パラフィン材料を使用して、廃棄物から、化学工業のための原料を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より価値の高い(純粋な)物質を得るための液化廃プラスティック(LWP)の精製および液化廃プラスティック(LWP)のより価値の高い材料、例えば化学工業において原料として(例えばモノマーとして)使用され得る低分子オレフィンなどへの変換は、数年にわたり研究されてきている。
【0003】
LWPは、典型的には、廃プラスティックの水熱液化(hydrothermal liquefaction、HTL)または熱分解によって製造される。廃プラスティックの供給源に依存して、LWPは様々なレベルの不純物を含む。典型的な不純物成分は、塩素、窒素、硫黄、および酸素であり、そのうち腐食性塩素が精製/石油化学プロセスにおいて特に問題となる。これらの不純物はまた、廃プラスティックの最も大きなスケールの潜在的な供給源として認識されているポストコンシューマー廃プラスティック(リサイクルされたコンシューマープラスティック)においても一般的である。さらに、熱分解プロセスによって製造されるLWPは、通常、顕著な量のオレフィンおよび芳香族化合物を含んでおり、これは、例えば高温での重合(またはコーキング)などの下流プロセスにおいて問題を引き起こし得る。
【0004】
LWPが通常の精製プロセス(例えば分画および任意には水素化処理などを含む)に単に付される、または、典型的な石油化学変換プロセス(例えばクラッキングプロセスなど)に送られるにかかわらず、LWP材料は、例えばリアクターの腐食または触媒毒などの施設の劣化を防ぐためにこれらのプロセスのための不純物レベルと合致される必要がある。
【0005】
精製に加えて、LWPのプラスティックへ(またはモノマーへ)と戻す化学的リサイクルは、非常に興味深い選択肢である。この選択肢は、昨年時、石油化学工業において非常に大きな関心をひいた。この関心は、さらに、共に廃プラスティックのリサイクルのための野心的な目標を設定した新規の廃棄物指令およびEUプラスティック戦略によってさらに押し上げられた。
【0006】
したがって、化学的リサイクルは、将来、廃プラスティックをプラスティックおよび化学品へと戻すようにリサイクルするための重要な方法となるであろう。廃プラスティックを液化することおよびクラッカー(例えば接触クラッカー、水素添加分解、またはスチームクラッカーなど)のためのフィードストックとしてそれを使用することもまた、現存するインフラストラクチャーによりプラスティックをリサイクルする有望な方法である。しかしながら、クラッカーフィードストックとしてのLWPの可能性は、その品質に依存しており、そしてこれゆえ、LWPを精製するための方法および/またはクラッキング手順を改変するための方法が、LWPの様々な不純物内容物を処理するために提案されてきた。
【0007】
特許文献1は、例えばハイドロワックス、水素化処理真空ガスオイル、廃プラスティック由来の熱分解オイル、軽油、またはスラックワックスなどの主にパラフィン系である炭化水素フィードの前処理を含むスチームクラッキングプロセスを開示している。前処理は、例えば多環芳香族化合物および樹脂などの汚染成分を減少させるように溶媒抽出を使用して行われる。
【0008】
特許文献2は、熱分解工程、水素化処理工程、最終精製(polishing)工程、およびスチームクラッキング工程をこの順番で含む、廃プラスティックをアップグレードするためのプロセスを開示している。クラッキング工程は、例えばナフサまたはディーゼルなどの従来のフィードへのコーフィードとして液化廃プラスティックを使用する従来のクラッキング手順に統合され得る。
【0009】
非特許文献1は、水素化処理装置の前の熱交換機の汚染を防止するために、廃プラスティックからの石油留分および軽質の熱分解オイルのブレンドを水素化処理することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2018/10443号
【文献】米国特許出願公開第2016/0264874号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Kawanishi, T., Shiratori, N., Wakao, H., Sugiyama, E., Ibe, H., Shioya, M., & Abe, T., “Upgrading of Light Thermal Cracking Oil Derived from Waste Plastics in Oil Refinery. Feedstock recycling of plastics.” Universitatsverlag Karlsruhe, Karlsruhe (2005), p. 43-50
【発明の概要】
【0012】
上記の先行技術のアプローチは、複雑な精製手順を実行するものであり、そのうち、抽出の技法は、顕著な量の汚染された抽出物材料をもたらし得、または、従来の石油化学プロセスにおける化石留分とLWPとの混合物を採用し得る。少ない量の廃棄生成物だけを生成しながら、多量のLWPをリサイクルすることを可能にし、かつ、複雑な装置を必要としない、より持続可能なプロセスの必要性が依然として存在する。
【0013】
本発明は、上述の課題に照らしてなされたものであり、LWPをアップグレードするための改良されたプロセス、特には、少ない量の廃棄生成物だけを生成しながら多量のLWPをリサイクルすることを可能にし、かつ、複雑な装置を必要としない、より持続可能なプロセスを提供することが本発明の目的である。
【0014】
この課題は、請求項1に記載の方法によって解決され、それは、液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料を製造するために、液化廃プラスティック(LWP)材料の少なくとも一部を前処理する任意的な工程(B)、クラッカーフィードを得るために、液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれら両方の組み合わせを、クラッカーフィードがスチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすように、高パラフィン材料と混合する工程(C)、ならびに、クラッカー生成物を得るためにスチームクラッカー中のクラッカーフィードをスチームクラッキングする工程(D)を含む。
【0015】
本発明の方法は、LWP材料および/または前処理されたLWP材料をスチームクラッキングに付す際にコーフィードとして高パラフィンを適用することによって得られる相乗効果を使用する。
【0016】
特には、本発明の発明者らは、驚くべきことに、LWP材料および/または前処理されたLWP材料が、スチームクラッカーとしての不純物の要件を満たすように高パラフィンフィードを用いて希釈され得、同時に高価値な生成物(特にはプロピレンおよびエチレン)の収率が増大されることを発見した。
【0017】
スチームクラッカーには典型的には、塩素含有量に関する厳格な仕様があり、およびいくつかの他の不純物/成分、例えばN、S、O、オレフィンおよび芳香族化合物などのレベルもまた制御されているが、本発明においては、その不純物に係る堅牢性に起因してスチームクラッキングが行われる。本発明の発明者らは、従来の手段を用いて前処理されたLWP材料でさえも、必要とされる不純物の条件に常には達しておらず、およびしたがって、さらなる精製が必要であろうことを発見した。したがって、LWP材料および/または前処理されたLWP材料の他のフィードストックとの混合が必要である。従来技術は、コーフィードとして通常の石油化学製品粒を適用している一方で、本発明の発明者らは、高パラフィンフィードの、液化廃プラスティック(LWP)材料および/または前処理されたLWP材料との組み合わせが、単一の各フィード単体と比較して優れているフィード組成物を提供することを発見した。
【0018】
換言すると、本発明は、より好ましくない生成物分布を予期しながら少量のLWPの共処理のための方法を達成するだけでなく、実際のところ、混合比から予期され得るよりも改良された生成物分布を有するプロセスを提供する。
【0019】
簡潔にいうと、本発明は、一またはそれ以上の以下の項目に関連する。
【0020】
1.液化廃プラスティックをアップグレードするための方法であって、
液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、
任意には、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料を製造するために該液化廃プラスティック(LWP)材料の少なくとも一部を前処理する工程(B)、
クラッカーフィードを得るために、該液化廃プラスティック(LWP)材料または該前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせを、該クラッカーフィードがスチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすように、高パラフィン材料と混合する工程(C)、ならびに、クラッカー生成物を得るためにスチームクラッカー中のクラッカーフィードをスチームクラッキングする工程(D)
を含む方法。
【0021】
2.該スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、重量あたり10ppm(wt.-ppm)以下の塩素含有量を有する項目1に記載の方法。
【0022】
3.該スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、8wt.-ppm以下、6wt.-ppm以下、5wt.-ppm以下、4wt.-ppm以下、または3wt.-ppm以下である塩素含有量を有する項目1または2に記載の方法。
【0023】
4.該高パラフィン材料が、少なくとも90wt.-%の5またはそれ以上の炭素原子を有する化合物を含む項目1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
5.該高パラフィン材料が、20℃~200℃の範囲の初留点(IBP)を有する項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
6.該スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、18.0wt.-%以下のオレフィン含有量を有する項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
7.該スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードが、16wt.-%以下、14wt.-%以下、12wt.-%以下、10wt.-%以下、8wt.-%以下、6wt.-%以下、5wt.-%以下、4wt.-%以下、3.5wt.-%以下、3.0wt.-%以下、2.5wt.-%以下、または2.0wt.-%以下であるオレフィン含有量を有する項目1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
8.該方法が、前処置工程(B)を含む項目1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
9.該前処理工程(B)が、溶媒抽出(抽出溶媒が有機溶媒)および水性溶媒を用いた抽出(抽出溶媒が水性溶液)の少なくとも一つを含む項目1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
10.該前処理工程(B)において使用される抽出溶媒の量(Ex)と該前処理工程(B)に導入された液化廃プラスティック材料の量(LW)のあいだの質量比、Ex:LWが、1:10~9:1の範囲内にある項目9に記載の方法。
【0030】
11.該前処理工程(B)が、液化廃プラスティック材料を水性溶媒と接触させることを含む項目1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
12.該水性溶媒が、アルカリ性水性溶媒である項目9または11に記載の方法。
【0032】
13.該前処理工程(B)が、150℃以上の温度で行われる項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
14.該前処理工程(B)が、200℃以上、好ましくは220℃以上、240℃以上、または260℃以上の温度で行われる項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
15.該前処理工程(B)が、450℃以下、好ましくは400℃以下、350℃以下、または300℃以下の温度で行われる項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
16.該前処理工程(B)が、200℃~350℃、好ましくは240℃~320℃、または260℃~300℃の範囲の温度で行われる項目1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
17.該前処理工程(B)において水素が添加されず、および/または、水素化触媒が存在しない項目1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
18.該前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN2)および液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN1)のあいだの比、BN2/BN1、が、0.90以上、好ましくは0.95以上である項目1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
19.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、1wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である項目1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
20.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、100wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である項目1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
21.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、300wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である項目1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
22.前処理工程された液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、400wt.-ppm以下、好ましくは300wt.-ppm以下である項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
23.前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、200wt.-ppm以下、100wt.-ppm以下、またはより好ましくは50wt.-ppm以下である項目1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
24.前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、前処理前の液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量の最大で50wt.-ppm、より好ましくは最大で40wt.-ppm、最大で30wt.-ppm、または最大で20wt.-ppmである項目1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
25.該工程(C)において使用される液化廃プラスティック(LWP)材料、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料、またはそれらの組み合わせが、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たさない項目1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
26.該工程(C)において使用される液化廃プラスティック(LWP)材料、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料、またはそれらの組み合わせの塩素含有量が、10wt.-ppmより高く、および/または、該工程(C)において使用される液化廃プラスティック(LWP)材料、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料、またはそれらの組み合わせのオレフィン含有量が、18wt.-%より高い項目1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
27.該工程(A)で提供される該液化廃プラスティック(LWP)材料が、液化廃プラスティックの留分である項目1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
28.該工程(A)で提供される該液化廃プラスティック(LWP)材料が、25℃以上の5%沸点または550℃以下の95%沸点、好ましくは30℃以上の5%沸点または500℃以下の95%沸点、より好ましくは35℃以上の5%沸点または400℃以下の95%沸点、さらにより好ましくは35℃以上の5%沸点または360℃以下の95%沸点を有する項目1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
29.該高パラフィン材料が、ナフサ留分、中間蒸留物留分、VGO留分、またはLPG留分、またはこれらの2つまたはそれ以上の混合物のうちの少なくとも一つであり、好ましくはナフサ留分および中間蒸留物留分のうちの少なくとも一つである項目1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
30.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料の総計の重量に対して60wt.-%より大きいパラフィン含有量を有している項目1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
31.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料の総計の重量に対して65wt.-%以上、好ましくは70wt.-%以上、75wt.-%以上、80wt.-%以上、85wt.-%以上、90wt.-%以上のパラフィン含有量を有している項目1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
32.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料の総計の重量に対して93wt.-%以上、または95wt.-%以上のパラフィン含有量を有する項目1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
33.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、5wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する項目1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
34.該高パラフィン材料が、前記高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、8wt.-%以上、好ましくは10wt.-%以上、15wt.-%以上、20wt.-%以上、25wt.-%以上、30wt.-%以上、35wt.-%以上、40wt.-%以上、45wt.-%以上、50wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する項目1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
35.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、45wt.-%~70wt.-%、好ましくは50wt.-%~65wt.-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する項目1~3436~42のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
36.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、50wt.-%~25wt.-%、好ましくは45wt.-%~30wt.-%の範囲のn-パラフィン含有量を有する項目1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
37.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料の総計の重量に対して、0.01wt.-%~15.00wt.-%、好ましくは0.01wt.-%~5.00wt.-%の範囲のナフテン含有量を有する項目1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
38.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、50wt.-%~100wt.-%、好ましくは65wt.-%~100wt.-%、75wt.-%~100wt.-%、または85wt.-%~100wt.-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する項目1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
39.該高パラフィン材料が、該高パラフィン材料の総計のパラフィン含有量を100%としてそれに対して、93wt.-%以上、または95wt.-%以上のパラフィン含有量を有し、および、該高パラフィン材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt.-%としてそれに対して、65wt.-%~100wt.-%、75wt.-%~100wt.-%、好ましくは85wt.-%~100wt.-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する項目1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
40.該高パラフィン材料が、再生可能な材料である項目1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
41.LWPおよび高パラフィン材料の合計量(LWPt+高パラフィン材料)を100重量部とした場合に、液化廃プラスティック(LWP)材料および工程(C)に利用される前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の総計の量と、工程(C)における高パラフィン材料との混合比(LWPt:高パラフィン材料)が、0.5:99.5~90:10重量部である項目1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
42.該混合比が、1:99~80:20重量部、好ましくは5:95~75:25重量部の範囲である項目41に記載の方法。
【0062】
43.該液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)が、好ましくは廃プラスティックの熱分解例えば熱分解または水熱液化または類似のプロセス工程によって、廃プラスティックを液化する工程を含む項目1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
44.該液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)が、ソートされた廃プラスティックを提供するために廃プラスティックをソートする工程を含み、該ソートが好ましくは、(廃プラスティック中の塩素含有廃プラスティックの初めの量に対して)少なくとも50wt.-%、より好ましくは少なくとも55wt.-%、少なくとも60wt.-%、少なくとも65wt.-%、少なくとも70wt.-%、少なくとも75wt.-%、少なくとも80wt.-%、または少なくとも85wt.-%の、例えばポリビニルクロライド、PVCなどの塩素含有廃プラスティックを除去する項目1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
45.液化されソートされた廃プラスティック(LSWP)材料を提供するために、ソートされた廃プラスティックを液化する工程をさらに含む項目44に記載の方法。
【0065】
46.該工程(B)が、少なくとも(ソートされていない)LWP材料を前処理することを含む項目1~45のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
47.該工程(C)が、LWP材料として液化されソートされた廃プラスティック(LSWP)材料を利用し、および/または、前処理されたLWP材料として前処理された(好ましくはソートされていない)LWP材料を利用し、液化されソートされた廃プラスティック(LSWP)材料は、ソートされた廃プラスティック(LSWP)材料を液化する(および任意には分画する)ことによって得られ得る材料である項目1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
48.該ソートされた廃プラスティック中の塩素含有廃プラスティックの量が、5wt.-%以下、好ましくは3wt.-%以下、2wt.-%以下、または1wt.-%以下である項目47に記載の方法。
【0068】
49.該ソートされた廃プラスティック中のPVCの量が、5wt.-%以下、好ましくは3wt.-%以下、2wt.-%以下、または1wt.-%以下である項目47または48に記載の方法。
【0069】
50.項目1~49のいずれか1つに記載の方法によって得られる炭化水素の混合物。
【0070】
51.例えばポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなどの化学品および/またはポリマーを製造するための、項目50に記載の炭化水素の混合物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、実施例1、2および3のスチームクラッキングにおいて得られるエチレン(1A)、プロピレン(1B)、およびメタン(1C)の収率を比較するグラフである。
図2図2は、実施例1、5および6のスチームクラッキングにおいて得られるエチレン(1A)、プロピレン(1B)、およびメタン(1C)の収率を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、液化プラスティックをアップグレードするための方法に関する。本方法は、液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)を含む。液化廃プラスティック材料を提供するモードは、特に制限される訳ではない。すなわち、液化廃プラスティック材料は、本発明のプロセスの一部として製造されてもよく、また、購入されてもまたは任意の他の方法によって調達されてもよい。
【0073】
本発明の方法はさらに、任意には、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料を製造するために、液化廃プラスティック(LWP)材料の少なくとも一部を前処理する工程(B)を含む。すなわち、工程(B)は、任意的であり、一方、工程(A)、(C)および(D)は必須である。前処理工程(B)は、LWP材料が高割合の汚染を含んでいる場合に特に適切である。この場合、前処理工程は、LWP材料中の汚染物質のうちの少なくとも一つの量(含有量)を低下させるためのものである。特には、Cl、N、およびSの汚染物質のうちの少なくとも一つの含有量、より好ましくは少なくともCl汚染物質の含有量が低下されることが好ましい。
【0074】
汚染物質は、LWP材料中に任意の形状で存在し得、例えば、元素の形状(溶解された、または分散された)、または通常は、有機または無機(通常は有機)化合物としての形状で存在し得る。
【0075】
本発明の方法は、クラッカーフィードを得るために、工程(C)で適用される液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせの、高パラフィン材料との混合の工程(C)を含む。換言すると、工程(C)は前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料または工程(B)において前処理されていない(すなわち、工程(B)が省略されている)LWP材料のどちらかを使用し得る。工程(C)は、前処理されたLWP材料および前処理されていないLWP材料の混合物を用いてもよい。
【0076】
混合物(LWP材料と前処理されたLWP材料との組み合わせ)を使用する場合、工程(A)で提供された液化廃プラスティックの少なくとも10wt.-%が、工程(B)において前処理されていることが好ましく、好ましくは少なくとも25wt.-%、少なくとも50wt.-%、少なくとも75wt.-%、または少なくとも90wt.-%の液化廃プラスティックが前処理されていることが好ましい。
【0077】
さらに、工程(C)は、(前処理されていない)液化されソートされた廃プラスティック(liquefied sorted waste plastics、LSWP)を用いてもよく、これは、ソートされた廃プラスティックを液化することによって(および任意には、例えば分画などによって精製することによって)得られる材料である。ソートされた廃プラスティックは、ソートされていない廃プラスティックと比較して、低下した塩素含有量を有するプラスティックを含む材料である。ソートされた廃プラスティック中の塩素含有廃プラスティックの含有量(量)は、好ましくは5wt.-%以下、さらに好ましくは3wt.-%以下、2wt.-%以下、または1wt.-%以下である。ソートされた廃プラスティック中のPVCの量は、好ましくは5wt.-%以下、より好ましくは3wt.-%以下、2wt.-%以下、または1wt.-%以下である。この点に関して、塩素含有廃プラスティック(またはPVC)の量(または含有量)は、塩素を含むプラスティック(またはPVC)のピース(物理的に単離されたパーツ)の量(質量)に関連する。
【0078】
混合工程(C)は、クラッカーフィードが、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすような様式で行われる。換言すると、工程(C)は、ブレンド(すなわちクラッカーフィード)がこれらの要件を満たすことになる量で、高パラフィン材料を添加する工程を含む。好ましくは、ブレンドは、スチームクラッカーに導入される前に、バッチ式ミキサーまたは連続プロセスにおける混合手段またはそれらの両方を用いて十分に攪拌される。
【0079】
好ましくは、工程(C)は、工程(C)に適用される液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせの塩素濃度およびオレフィン濃度のうちの少なくとも一つを測定するサブ工程(C1)、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすために、添加されることが必要な高パラフィン材料の量を決定(算出)するサブ工程(C2)、および、高パラフィン材料の少なくとも決定された(算出された)量を添加するサブ工程(C3)を含む。
【0080】
サブ工程(C1)、(C2)および(C3)は、連続式またはバッチ形式で行われ得る。サブ工程(C1)、(C2)および(C3)のうちの一つまたは二つが、連続式で行われ、そして、他の一つまたは他の二つがバッチ式で行われてもよい。操作のモード(連続式またはバッチ式)が、サブ工程(C1)および(C2)で同じであることが好ましい。連続式添加の場合、サブ工程(C2)および(C3)は、好ましくは、(任意には少なくとも部分的に前処理された)LWP材料のフローレート(前処理されたLWP材料および前処理されていないLWP材料の総計のフローレート)に対するフローレートとして高パラフィン材料の「量」を提供する。
【0081】
本発明の方法は、クラッカー生成物を得るためにスチームクラッカー中でクラッカーフィードをスチームクラッキングする工程(D)をさらに含む。本発明においてスチームクラッキングを行うことは重要であり(例えば水素化分解または接触分解などとは異なり)、これは、クラッカー生成物の生成物分布が、(任意には少なくとも部分的に前処理された)LWP材料と高パラフィン材料フィードとのブレンドを適用した場合に最も好ましくなるためである。
【0082】
例えば収集されたコンシューマープラスティックの熱分解生成物などのLWP材料は、スチームクラッキングにおいて、または、下流プロセスにおいて有害となるであろう多量かつ様々な量の汚染物質を含む。このような汚染物質としては、様々なものがあるが、例えば、ハロゲン化されたプラスティック(例えばPVCおよびPTFE)由来であるハロゲン(主に塩素)、ゴムポリマー(例えば保守終了タイヤなど)の架橋剤由来である硫黄、および複合材料および添加物(例えば金属または金属化合物によってコーティングされているフィルム、保守終了タイヤ、またはプラスティック加工助剤など)由来の金属(例えばSi、Al)汚染物質などが挙げられる。これらの汚染物質は、元素の形状で、イオン形状で、または、有機または無機化合物の一部として、存在し得る。
【0083】
これらの不純物/汚染物質は、従来のスチームクラッキング法においてコーキングを生じさせ得、および、(望ましくない)副反応を同様にもたらし得、これゆえ、より価値の低い生成物へとまたは廃棄されなければならない生成物(すなわち廃棄物)へと生成物分布をシフトさせ得る。同様に、これらの不純物は、腐食性を有する、または分解作用を有し得るため、スチームクラッキング装置の稼働寿命を短くさせる。この点において、塩素(および塩化化合物)が、スチームクラッキング装置において腐食を引き起こす高い傾向をもつ不純物の一つである。
【0084】
さらに、LWP材料の製造プロセスは、通常、少なくとも一種類の熱分解、例えば熱分解または水熱液化または類似のプロセス工程などを含む。結果として得られるLWPがオレフィンの高い含有量を有しているということはこれらのプロセスに固有のものである。
【0085】
本発明において、オレフィン(n-オレフィン、イソ-オレフィン、ジオレフィン、より高次のオレフィン、およびオレフィン系ナフテン)、パラフィン(n-パラフィンおよび/またはi-パラフィン)、ナフテン(オレフィン系ナフテンを除く)、および芳香族化合物の含有量は、PIONA法を用いて水素炎イオン化検出器(FID)と組み合わされたガスクロマトグラフィー(GC)によって(GC-FID)測定され得る。PIONA法は、ガソリン範囲の生成物、すなわち約25~180℃の範囲で沸騰する生成物に対して適切である。より高温の沸点をもつ炭化水素、すなわち約180~440℃の範囲の生成物の含有量(パラフィン、イソ-パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物)は、FID検出器と組み合わされた包括的なガスクロマトグラフィー(GC×GC-FID)によって測定され得る。広範な沸点範囲である場合、両方の方法が組み合わされて使用されてもよい。
【0086】
本発明において、イソパラフィンの含有量は、総計のパラフィンの量に対して決定される。F、Cl、およびBrの含有量は、ASTM-D7359-18にしたがって測定され得る。ヨウ素(I)および硫黄(S)の含有量は、XFS(蛍光X線分析)によって測定され得る。窒素(N)含有量は、ASTM-D5762にしたがって測定され得る。リン、硫黄および酸素の含有量は、既知の方法を使用して、例えばPについて(ASTM D5185)、Sについて(ASTM D6667M)およびOについて(ASTM D7423)などによって測定され得る。金属原子の含有量は、ASTM D5185規格にもとづいて、ICP発光分光分析法(ICP-AES)を使用して測定され得る。シリコン(Si)の含有量は、蛍光X線(XRF)分析を用いて、または、ASTM D5185に基づいてICP-AESを用いて測定され得る。炭素(C)、水素(H)および他の含有量は、例えばASTM D5291などを用いて元素分析により測定され得る。
【0087】
本発明において、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、好ましくは、重量あたり10ppm(wt.-ppm)以下の塩素含有量を有する。塩素不純物は、スチームクラッカー装置にとって非常に有害であり、したがって、厳密に制御されるべきである。より好ましくは、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、8wt.-ppm以下、6wt.-ppm以下、5wt.-ppm以下、4wt.-ppm以下、または3wt.-ppm以下である塩素含有量を有する。
【0088】
他で言及されない限り、フィード成分および不純物の含有量は、100%である全体としてのフィードに対して与えられる。
【0089】
好ましくは、高パラフィン材料は、少なくとも90wt.-%の5またはそれ以上の炭素原子を有する化合物(C5-プラス材料)を含む。換言すると、少なくとも90wt.-%の高パラフィン材料が、5以上の炭素原子を有する化合物からなりたっていることが好ましい。特には、高パラフィン材料は、あまり多くのC4-マイナス材料(4以下の炭素原子を有する化合物)を有するべきでなく、これは、これらの化合物は、揮発性であり、それゆえ、特に材料を混合工程において、取扱いが困難であるためである。さらに、C5-プラス材料は、生成物分布においてより顕著な効果をもつ。高パラフィン材料が、少なくとも90wt.-%の、5~40の範囲の炭素数(炭素原子の数)を有する化合物を含んでいることが特に好ましい。
【0090】
高パラフィン材料は、好ましくは、20℃~300℃の範囲の5%沸点(ASTM D86に基づく)を有する。換言すると、高パラフィン材料は、通常の(例えば化石)燃料留分の沸騰開始点に匹敵する沸騰開始点(5%沸点)を有し得る。
【0091】
スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、好ましくは、18.0wt.-%以下のオレフィン含有量を有する。オレフィンは、スチームクラッカーにおいてコーキングまたはファウリングを引き起こす傾向があり、したがって、それらの含有量は、比較的低いレベルに制御されるべきである。したがって、より好ましくは、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、16wt.-%以下、14wt.-%以下、12wt.-%以下、10wt.-%以下、8wt.-%以下、6wt.-%以下、5wt.-%以下、4wt.-%以下、3.5wt.-%以下、3.0wt.-%以下、2.5wt.-%以下、または2.0wt.-%以下であるオレフィン含有量を有する。
【0092】
あまり多くの高オレフィンコーフィードの添加を必要とすることなく、スチームクラッカーの要件を満たすために、方法においては、好ましくは、前処理工程(B)がプロセス工程として含まれる。本発明の意味における前処理工程(B)とは、単なる分離または分画工程ではない。換言すると、前処理工程(B)がたとえ分離工程(例えばろ過、遠心分離、沈降など)およびエバポレーション工程(例えばエバポレーション、蒸留、分画など)を含んでいても、前処理工程(B)は、これらの工程の一または複数から構成されるわけではない。
【0093】
本発明において、前処理工程(B)は、好ましくは、少なくとも一つの非反応性抽出(例えば溶媒抽出)および反応性抽出(LWP材料が抽出工程のあいだに化学的に改変される)を含む。好ましくは、非反応性抽出および/または反応性抽出は、液-液抽出である。
【0094】
特には、前処理工程(B)は、好ましくは、液化廃プラスティック材料(または少なくともその一部)を、少なくとも抽出溶媒、例えば溶媒抽出の場合有機溶媒、または、反応性抽出溶媒(例えばアルカリ性水溶液)と、および任意にはさらなる材料と、接触させる(混合する)ことを含み、続いて、必要な場合、液化廃プラスティック材料および抽出溶媒とあいだで液-液分離が行われ、そしてその後、前処理された(精製された)廃プラスティック材料を得るために、抽出溶媒の除去が行われる。相分離(液-液分離のあいだの)は、例えば物理的方法(例えば遠心分離など)または化学的方法(例えば、分離助剤、例えば抽出溶媒以外の溶媒または前に使用された抽出溶媒の追加の量などの添加など)を用いることなどによって誘導される相分離、または例えば重力による相分離など非誘導型の相分離であってもよい。
【0095】
溶媒抽出が行われる場合、溶媒は、極性有機溶媒である。有機溶媒は、プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒であり得、好ましくは非プロトン性溶媒である。
【0096】
好ましくは、前処理工程(B)において使用される抽出溶媒の量(Ex)と前処理工程(B)に導入された液化廃プラスティック材料の量(LW)のあいだの質量比、Ex:LWは、1:10~9:1の範囲内にある。これは、Ex+LWに対するExの含有量が、9.09~90wt.-%であることを意味している。したがって、良好な不純物除去効率が達成され得る。比は、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:5~2:1、または1:5~1.5:1である。
【0097】
前処理工程(B)は、好ましくは、(少なくとも一部の)液化廃プラスティック材料を水性溶媒と接触させることを含む。
【0098】
本発明の文脈において、用語「接触させる(contacting)」は、物理的な接触を含み、そして、バッチ式で、例えばブレンドまたは混合を用いて、または、継続的に、例えば並流もしくは逆流のフローを用いて、または、それらの両方を用いて行われ得る。取扱いの容易さから、並流フローが好ましい。
【0099】
水性溶媒は、少なくとも50wt.-%の水、好ましくは少なくとも70wt.-%の水、より好ましくは少なくとも85wt.-%の水、または、少なくとも90wt.-%の水を含み、および、水と混合されるかまたは水中に溶解されるさらなる成分を含んでいてもよい。
【0100】
好ましくは、水性溶媒は、アルカリ性水性溶媒である。本発明の発明者らは、汚染された材料を、アルカリ性水性溶媒と接触させることによって、水性溶媒が、反応性抽出の溶媒として作用でき、それゆえ汚染物質(有機化合物を含む)が水溶性の汚染物質(および水溶性または水に不溶性である他の生成物)に変換されること、およびこれらはしがたって水を用いて一緒に抽出され得ることを発見した。
【0101】
アルカリ性水性溶媒は、水および水に溶解されたアルカリ性物質(塩基性物質)を含む。アルカリ性物質は、好ましくは、金属水酸化物であるかそれを含み、より好ましくは、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物であるかそれらを含む。好ましくは、アルカリ性物質は、少なくともアルカリ金属イオンを含み、より好ましくは、Na+およびK+のうちの少なくとも一つを含む。アルカリ性水性溶媒のpHは7より大きく、好ましくは、8より大きく、およびさらに好ましくは、9より大きい。アルカリ性水性溶媒は、好ましくは、少なくとも0.3wt.-%の、より好ましくは少なくとも0.5wt.-%、少なくとも1.0wt.-%、少なくとも1.5wt.-%の金属水酸化物を含む。アルカリ性水性溶媒が、少なくとも0.5wt.-%、好ましくは1.0wt.-%、または少なくとも1.5wt.-%のアルカリ金属水酸化物を含んでいることが特に好ましい。
【0102】
前処理工程(B)は、好ましくは、特に反応性抽出が適用される場合(すなわち、この場合、反応性抽出は特定の温度で行われ、他のまたは追加の前処理工程が異なる温度で行われてもよい)、例えば、前処理工程がアルカリ性水溶液を用いて行われる場合など、150℃以上の温度で行われる。高温は、反応性抽出の反応を促進し、そしてそれゆえ、より迅速かつより効率的な前処理をもたらす。前処理工程(B)は、前処理リアクター中の材料が液体のまま維持されていることを確実にするために、高圧で行われてもよい。有用な(絶対)圧力は、1bar以上、10bar以上、40bar以上、または60bar以上である。機器のコストを合理的な限度内に抑えるために、圧力は400barを超えるべきではなく、および、好ましくは200bar以下、150bar以下、または100bar以下である。前処理リアクターは、連続流リアクターであってもよく、また、バッチリアクターであってもよく、またはその両方であってもよく、そして、プロセスの他の工程において使用されるリアクターのうちの一つと同じであってもよいが、異なるリアクターまたは同じリアクターの異なるセクションであることが好ましい。
【0103】
高温が適用される場合、前処理工程(B)は、200℃以上、好ましくは220℃以上、240℃以上、または260℃以上の温度で行われ得る。通常、前処理の温度の上限は、過度の分解を避けるために、600℃である。しかしながら、前処理工程(B)が、450℃以下、好ましくは400℃以下、350℃以下、または300℃以下で行われることが好ましい。
【0104】
特には、前処理工程(B)は、200℃~350℃、好ましくは240℃~320℃、または260℃~300℃の範囲の温度で行われ得る。
【0105】
本発明において、前処理工程(B)において水素が添加されないこと、および/または、水素化触媒が存在しないことが好ましい。すなわち、前処理工程は、好ましくは、水素化処理、例えば塩素の場合HClとして、またはオレフィンの飽和を生じることなどによって不純物が除去される水素化処理工程を含まないか、または本質的にそのような工程から構成されない。好ましくは、前処理工程において、水素および水素化処理触媒の少なくとも一つが存在せず(少なくとも同時に)、より好ましくは両方が存在しない。
【0106】
すなわち、水素化処理、特には水素化は好ましいものであり得るが、このような方法は、化石供給源からおよび/または顕著な量のエネルギーにより通常製造される水素ガスの顕著な消費のため持続可能性に乏しい。
【0107】
より好ましくは、水素ガス(溶解された水素ガスを含む)が前処理工程(B)のあいだに存在しないことが好ましい。
【0108】
本発明において、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN2)および液化廃プラスティック(LWP)材料(前処理において利用される部分)の臭素数(BN1)のあいだの比、BN2/BN1、は0.90以上、好ましくは0.95以上である。本発明において、臭素数は、ASTM D1159-07(2017)にしたがって測定され得る。
【0109】
前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN2)は、前処理工程(B)の直後の臭素数を意味する。液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN1)は、前処理工程(B)の直前の臭素数を意味する。換言すると、本実施形態において、前処理は、オレフィンの量を顕著には低下させない。これは同様に、前処理工程は、実質的にオレフィンの飽和を実質的にもたらしていないことを意味している。すなわち、オレフィンはスチームクラッカーにとって有害であり得るが、本発明は、高パラフィンフィードを適用し、そしてそれゆえ、飽和化処理(例えば水素化)の適用を必要とすることなく、オレフィン条件を満たし得る。通常、オレフィン含有量は、前処理のよっては増加せず(不純物成分の除去に起因するマイナー効果を除き)そしてそれゆえ、比の上限は1.2であり得、および好ましくは1.1または1.0であり得る。
【0110】
前処理工程(B)の前の液化廃プラスティック(LWP)材料(前処理工程に適用される部分)の塩素含有量は、好ましくは1wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である。すなわち、本発明の方法は、塩素不純物の広範な濃度範囲を有するLWP材料を処理するために適切である。
【0111】
好ましくは、前処理工程(B)の前の液化廃プラスティック(LWP)材料(前処理工程に適用される部分)の塩素含有量は、好ましくは1wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である。換言すると、本発明は、スチームクラッカーが許容する以上に顕著に高い塩素含有量を有する材料に特に適している。前処理工程(B)の前の液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量は、200wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲内、または300wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲内であり得る。
【0112】
好ましくは、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量は、400wt.-ppm以下、好ましくは、300wt.-ppm以下、200wt.-ppm以下、100wt.-ppm以下、またはより好ましくは50wt.-ppm以下である。前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量は、前処理の前の液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量の最大50wt.-%であることがさらに好ましい(すなわち、前処理の手段によって、塩素含有量は、少なくとも50wt.-%、より好ましくは、少なくとも60wt.-%。さらにより好ましくは、少なくとも70wt.-%、または少なくとも80wt.-%減少される)。
【0113】
一方、高い精製度は顕著な努力を必要とするため、工程(C)に適用される液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせの塩素含有量は、4wt.-ppmより多く、および/または、工程(C)に適用される液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせのオレフィン含有量は、10wt.-%より多い。さらに好ましくは、工程(C)に適用される液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせの塩素含有量は、6wt.-ppmより多く、8wt.-ppmより多く、または10wt.-ppmより多い。さらに、工程(C)に適用される液化廃プラスティック(LWP)材料または前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料またはそれらの組み合わせの塩素含有量は、14wt.-%より多く、または18wt.-%より多い。
【0114】
工程(A)において提供される液化廃プラスティック(LWP)材料は、液化廃プラスティックの留分であってもよい、工程(A)は、液化廃プラスティックを分画するサブ工程(A2)を含んでいてもよいが、液化廃プラスティックの留分は、同様に購入されたり、他の手段によって提供されてもよい。
【0115】
工程(A)は、サブ工程(A2)を一緒にまたはそれだけのどちらかで、廃プラスティックを液化するサブ工程(A1)をさらに含み得る。液化は、例えば高速熱分解、水素化熱分解、および熱水液化を含む熱分解などの既知の方法によって行われ得る。
【0116】
工程(A)において提供される液化廃プラスティック(LWP)材料は好ましくは、25℃以上の5%沸点または550℃以下の95%沸点を有する。LWP材料の5%および95%沸点は、ASTM D2887-16にしたがって測定され得る。
【0117】
高パラフィン材料は、好ましくは、ナフサ留分、中間蒸留物留分、VGO留分、またはLPG留分、またはこれらの2つまたはそれ以上の混合物のうちの少なくとも一つ、好ましくは、ナフサ留分および中間蒸留物留分のうちの少なくとも一つである。
【0118】
好ましくは、これらの留分のただ一つが、高パラフィン材料として適用される。本発明の文脈において、ナフサ留分は、好ましくは25℃以上の沸騰開始点、および、200℃以下の沸騰終了点(ASTM D86)を有し、中間蒸留物は、好ましくは、180℃以上の沸騰開始点および360℃以下の沸騰終了点(ASTM D86)を有し、VGO留分は、好ましくは、360℃以上の沸騰開始点(ASTM D2887-16)を有し、ならびに、LPG留分は、好ましくは、25℃以下の沸騰終了点(ASTM D86)を有する。
【0119】
本発明において、高パラフィン材料が60wt.-%以上のパラフィン含有量を有することが好ましいが、これは、本発明の有益な効果がそれゆえにより明確になるであろうためである。本発明の文脈において、パラフィン含有量は、n-パラフィンおよびi-パラフィンの総計の含有量を意味し、そして、全体としての高パラフィン材料に対して決定される。より好ましくは、高パラフィン材料は、65wt.-%以上、70wt.-%以上、75wt.-%以上、80wt.-%以上、85wt.-%以上、90wt.-%以上、93wt.-%以上、または95wt.-%以上のパラフィン含有量を有する。
【0120】
i-パラフィン(イソパラフィン)を含む高パラフィン材料を適用する場合、さらに良好な結果さえも達成され得る。高パラフィン材料が、5wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有することが好ましい。本発明において、i-パラフィン含有量は、高パラフィン材料の総計のパラフィン含有量を100%としてそれに対して決定される。より好ましくは、高パラフィン材料は、8wt.-%以上、10wt.-%以上、好ましくは15wt.-%以上、20wt.-%以上、25wt.-%以上、30wt.-%以上、35wt.-%以上、40wt.-%以上、45wt.-%以上、50wt.-%以上のi-パラフィン含有量を有する。
【0121】
一実施形態において、高パラフィン材料は、45wt.-%~70wt.-%、好ましくは50wt.-%~65wt.-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する。
【0122】
別の実施形態において、高パラフィン材料は、95wt.-%以上のパラフィン含有量、および、80wt.-%~100wt.-%、好ましくは85wt.-%~99wt.-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する。
【0123】
高パラフィン材料は、好ましくは、50wt.-%~25wt.-%。好ましくは45wt.-%~30wt.-%の範囲のn-パラフィン含有量を有する。本発明において、n-パラフィンの含有量は、高パラフィン材料の総計のパラフィン含有量を100%としてそれに対して決定される。高パラフィン材料は、好ましくは、0.01wt.-%~15.00wt.-%、好ましくは0.01wt.-%~5.00wt.-%の範囲のナフテン含有量を有する。ナフテン含有量は、全体としての高パラフィン材料に対して決定される。
【0124】
持続可能性の観点から、高パラフィン材料が再生可能な材料であることが特に好ましい。
【0125】
本発明の文脈における再生可能とは、95wt.-%以上の再生可能成分含有量(バイオ材料、より具体的にはバイオ材料由来の炭素、すなわちバイオ炭素の含有量)を意味する。バイオ炭素(バイオ材料)の含有量は、ASTM D 6866-18にしたがって決定され得る。
【0126】
特には、トリグリセリドおよび/または脂肪酸の水素化処理、および任意には異性化、再生可能な材料留分を得るためのその後の分画によって得られる再生可能な材料が本発明においては好ましい。このような材料は、本発明の方法の生成物分布をさらに改良することが発見された良好に規定されたおよび非常に均一な炭素数分布を提供し得る。
【0127】
特には、再生可能なディーゼル(トリグリセリドの水素化処理、その後の異性化および分画によって得られるディーゼル留分)は、いくつかの理由により、非常に高い可能性をもったLWPのための混合成分である。第一に、LWPおよび再生可能なディーゼルは、両方のフィードストックがいくつかの持続可能な開発目標を満たし得るため、補完的である。第二に、再生可能なディーゼルは、市場に低い不純物、オレフィンまたは芳香族化合物レベルを有する卓越した混合フィードストックである。したがって、再生可能なディーゼルは、不純物レベルを低下させるため、および、LWPの性能を高めるため、そしてそれゆえ、それをとりわけナフサクラッカーのためのより適切なフィードストックとするために使用され得る。
【0128】
本発明のスチームクラッキングプロセスは、従来技術において既知の通常の条件下で行われ得る。本発明の中心は、スチームクラッカーフィード材料であるため、スチームクラッキングプロセスそれ自体は、完全に詳細には記載されないが、適切なバリエーションについては従来技術が参照され得るであろう。
【0129】
一般的には、スチームクラッキングプロセスは、高温で、好ましくは650~1000℃の範囲で、より好ましくは、750~850℃の範囲で行われる。スチームは、クラッキングゾーンの前に炭化水素フィードと混合され、これは、クラッキング反応を不純物およびコークス前駆体に対してより堅牢なものとする。クラッキングは、通常、酸素の非存在下で起こる。クラッキング条件における滞留時間は非常に短く、典型的にはミリ秒のオーダーである。クラッカーからは、クラッカー流出物が得られ、これは芳香族化合物、オレフィン、水素、水、一酸化炭素および他の炭化水素化合物を含み得る。得られる具体的な生成物は、フィードの組成、炭化水素-スチームの比、およびクラッキング温度および炉内滞留時間に依存する。スチームクラッカーからの分解された生成物(「クラッカー生成物(cracker products)」または「分解生成物(cracking products)」とも称される)は、次いで、分解された生成物の温度を迅速に低下させるために、一またはそれ以上熱交換機(しばしばTLEとも称される)を通過させられる。TLEは好ましくは、400~550℃の範囲の温度まで分解された生成物を冷却する。
【0130】
本発明において、用語「分解生成物(cracking products)」(または「分解生成物(cracked products)」または「クラッカー生成物(cracker products)」)は、スチームクラッキング工程(steam cracking step)(以下では、熱分解工程(thermal cracking step)とも称される)の直後に得られる生成物、またはそれらの誘導体を意味しており、すなわち、本明細書で使用される「分解生成物」とは、炭化水素の混合物中の炭化水素種およびそれらの誘導体を意味する。「スチームクラッキング工程の直後に得られる(obtained directly after the steam cracking step)」とは、任意的な分離および/または精製工程を含むと解釈され得る。本明細書中で使用されるように、用語「分解生成物」はまた、スチームクラッキング工程それ自体の直後に得られる炭化水素混合物を意味し得る。
【0131】
本発明は、本発明による方法によって得られ得る炭化水素の混合物を提供する。炭化水素の混合物は、さらなる精製なしに熱分解後に直接得られる混合物に対応する。
【0132】
本発明は、化学品および/またはポリマーを製造するための炭化水素の混合物の使用をさらに提供する。化学品および/またはポリマーを製造するための炭化水素の混合物の使用は、炭化水素の混合物から少なくとも一つの炭化水素化合物を分離するための分離工程を含んでいてもよい。
【0133】
本明細書中に記載される分解生成物は、本発明を用いて得られ得る分解生成物の例である。ある実施形態の分解生成物は、以下で記載される分解生成物の一またはそれ以上を含み得る。
【0134】
好ましい実施形態において、分解生成物は、水素、メタン、エタン、エテン、プロパン、プロペン、プロパンジエン、ブタンおよびブチレン、例えばブテン、イソブテン、およびブタジエンなど、C5+炭化水素、例えば芳香族化合物、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、および、C5~C18パラフィンまたはオレフィン、およびそれらの誘導体のうちの一またはそれ以上を含む。
【0135】
このような誘導体は、例えば、メタン誘導体、エテン誘導体、プロペン誘導体、ベンゼン誘導体、トルエン誘導体、およびキシレン誘導体、およびそれらの誘導体である。
【0136】
メタン誘導体としては、例えば、アンモニア、メタノール、ホスゲン、水素、オキシケミカル、およびそれらの誘導体、例えばメタノール誘導体などが挙げられる。メタノール誘導体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ポリメチル、ホルムアルデヒド、フェノール樹脂、ポリウレタン、メチル-tert-ブチルエーテル、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0137】
エテン誘導体としては、例えば、エチレンオキサイド、二塩化エチレン、アセトアルデヒド、エチルベンゼン、α-オレフィン、およびポリエチレン、およびそれらの誘導体、例えばエチレンオキサイド誘導体、エチルベンゼン誘導体、およびアセトアルデヒド誘導体などが挙げられる。エチレンオキサイド誘導体としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エチレングリコールエーテルアセテート、ポリエステル、エタノールアミン、エチルカーボネートおよびそれらの誘導体などが挙げられる。エチルベンゼン誘導体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、ポリスチレン、不飽和ポリエステル、スチレン-ブタジエンゴム、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アセトアルデヒド誘導体としては、例えば、酢酸、酢酸ビニルモノマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、およびそれらの誘導体などが挙げられる。エチルアルコール誘導体としては、例えば、エチルアミン、酢酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸エラストマー、合成ゴム、およびそれらの誘導体等が挙げられる。さらに、エテン誘導体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどの高分子、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0138】
プロペン誘導体としては、例えば、イソプロパノール、アクリロニトリル、ポリプロピレン、プロピレンオキサイド、アクリル酸、塩化アリル、オキソアルコール、クメン、アセトン、アクロレイン、ヒドロキノン、イソプロピルフェノール、4-ヘチルペンテン-1、アルキレート、ブチルアルデヒド、エチレン-プロピレンエラストマー、およびそれらの誘導体等が挙げられる。プロピレンオキサイド誘導体としては、例えば、プロピレンカーボネート、アリルアルコール、イソプロパノールアミン、プロピレングリコール、グリコールエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレンアミン、1,4-ブタンジオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。塩化アリル誘導体としては、例えば、エピクロルヒドリン、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。イソプロパノール誘導体としては、例えば、アセトン、酢酸イソプロピル、イソホロン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ポリメチル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ブチルアルデヒド誘導体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、イソブタノール、イソブチルアセテート、n-ブタノール、n-ブチルアセテート、エチルヘキサノール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、および高吸水性樹脂などの吸水性ポリマー、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0139】
ブチレン誘導体としては、例えば、アルキレート、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ポリエチレンコポリマー、ポリブテン、バレルアルデヒド、1,2-ブチレンオキシド、プロピレン、オクテン、sec-ブチルアルコール、ブチレンゴム、メタクリル酸メチル、イソブチレン、ポリイソブチレン、例えばp-tert-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、および2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどの置換フェノール、ポリオール、およびそれの誘導体などが挙げられる。その他のブタジエン誘導体は、スチレンブチレンゴム、ポリブタジエン、ニトリル、ポリクロロプレン、アジポニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-ブタジエンコポリマーラテックス、スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンゴムなどであり得る。
【0140】
ベンゼン誘導体としては、例えば、エチルベンゼン、スチレン、クメン、フェノール、シクロヘキサン、ニトロベンゼン、アルキルベンゼン、無水マレイン酸、クロロベンゼン、ベンゼンスルホン酸、ビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレンブロックコポリマー、ビスフェノールA、ポリカーボネート、メチルジフェニルジイソシアネート、およびそれの誘導体などが挙げられる。シクロヘキサン誘導体としては、例えば、アジピン酸、カプロラクタム、およびそれの誘導体などが挙げられる。ニトロベンゼン誘導体としては、例えば、アニリン、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリイソシアネート、およびポリウレタンなどが挙げられる。アルキルベンゼン誘導体としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンなどが挙げられる。クロロベンゼン誘導体としては、例えば、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ニトロベンゼンなどが挙げられる。フェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールA、フェノール形アルデヒド樹脂、シクロヘキサノン-シクロヘキセノール混合物(KA-オイル)、カプロラクタム、ポリアミド、p-ノニルフェノールおよびp-デドシルフェノールなどのアルキルフェノール、オルソ-キシレノール、アリールホスフェート、o-クレゾール、およびシクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0141】
トルエン誘導体としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエンジイソシアネート、安息香酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0142】
キシレン誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物などの芳香族ジカルボン酸および無水物、およびフタル酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエステルポリオールなどのポリエステルを挙げることができる。フタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、およびPVC可塑剤などが挙げられる。イソフタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート共重合体、およびポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0143】
本発明による方法を用いて得られる、または得られ得る炭化水素は、従来の石油化学、および高分子工業の原料として特に好適である。具体的には、本発明から得られる炭化水素の混合物は、従来の原料、すなわち純化石原料の熱(スチーム)クラッキングから得られる生成物分布に類似し、さらにはそれを上回るほど好ましい生成物分布を示す。したがって、これらの炭化水素は、生産プロセスの大幅な変更を必要とすることなく、既知の付加価値連鎖に加えることができる。
【0144】
本発明の分解生成物は、広範な用途に使用することができる。そのような用途としては、例えば、家電製品、複合材料、自動車、包装、医療機器、農薬、冷媒、履物、紙、コーティング剤、接着剤、インク、医薬品、電気および電子機器、スポーツ用品、使い捨て品、塗料、繊維、高吸収剤、建築および建設、燃料、洗剤、家具、スポーツウェア、溶媒、可塑剤、および界面活性剤などが挙げられる。
【実施例
【0145】
LWP留分、再生可能な炭化水素留分、化石ナフサ、および、LWP留分の再生可能な炭化水素または化石ナフサとのブレンドを用いて、コイル出口温度(COT)条件を変えながらスチームクラッキングが行われた。すべての実験において、炭化水素に対する水の比(gH20/HC)は0.5であった。炭化水素に対する水の比は、水留分を0.075kg/hの速度で供給し、炭化水素留分を0.15kg/hの速度で供給することにより調整された。すべての実験において、コイル出口圧力(COP)は1.7bar(a)であった。硫黄含有量(HC含有量と関連する)は、すべての実験において、二硫化ジメチル(DMDS)によって250ppmに調整された。
【0146】
分析方法の説明
再生可能な炭化水素組成物およびLWPディーゼルの組成物である組成物が、包括的ガスクロマトグラフィー(GC×GC-FID)により分析された。再生可能な炭化水素およびLWPディーゼルの組成物のサンプルが、いかなる前処理もせずに、そのまま分析された。3-クロロチオフェンが、内部標準としてサンプルに添加された。この方法は、C6~C28である炭化水素に適切である。n-パラフィンおよびその他の複数の化合物/化合物のグループが、包括的ガスクロマトグラフ質量分析法(GC×GC-MS)およびC6~C28の範囲の既知のn-パラフィンの混合物を用いて同定された。2次元クロマトグラムが、Zoex GC Imageソフトウェアを用いることによって、パラフィン(=炭素数に基づくイソパラフィンおよびn-パラフィン)、ナフテン、および芳香族化合物のグループに分けられた。化合物のグループは、内部標準校正(パラフィンとしてn-デカンおよび/またはn-ペンタデカン、ナフテンとしてヘキシルシクロヘキサンおよび/またはデカリン、および、芳香族化合物としてトルエンおよび/または1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)を使用することによって定量された。個々の化合物の定量限界は、0.1wt.-%であった。N-パラフィンの結果は、GC-FID法を用いて測定された。GC×GCの設定が表1に示されている。
【0147】
【表1】
【0148】
再生可能な炭化水素組成物のi-パラフィンおよびn-パラフィン含有量が、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析された。再生可能な異性体パラフィン組成物のサンプルが、分析前にジクロロメタン中に希釈された(1:10 v/v)。この方法は、C6~C36の炭化水素に適切である。n-パラフィンが、質量分析計およびC6~C36の範囲の既知のn-パラフィンの混合物を用いて同定された。クロマトグラムは、n-パラフィンピークの直前と直後のクロマトグラムのベースラインにグループをインテグレートすることにより、パラフィンのグループが分けられた(イソパラフィン/n-パラフィン)。溶媒のピークは除かれている。化合物または化合物のグループは、全炭化水素に対する相対応答係数1.0を用いた正規化により定量化された。個々の化合物の定量限界は、0.01wt.-%であった。GCの設定が表2に示されている。
【0149】
【表2】
【0150】
実施例において、および比較例において使用さあれたLWPガソリンのPiONA(パラフィン、イソパラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物)組成物が、水素炎イオン化検出器と組み合わされたガスクロマトグラフィー(GC-FID)によって測定された。
【0151】
実施例1(参照)
245~295℃の5%~95%沸点範囲(ASTM D 86)、99wt.-%であるパラフィン含有量、および93wt.-%であるi-パラフィン含有量(総計のパラフィンに対して)を有する再生可能な炭化水素留分(サンプル「RD」)が、820℃および840℃である温度(コイル出口温度;COT)でスチームクラッキングに付された。
【0152】
エチレン、プロピレンおよびメタンの収率が、GC-FIDにより分析され、そして、結果が図1A~1Cに示されている。
【0153】
実施例2(参照)
LWP材料のガソリン留分(「LWP-ガソリン」)が、前処理され、次いで、スチームクラッキングに付された。
【0154】
LWPガソリンは、590wt.-ppmである塩素含有量および61wt.-%であるオレフィン(n-オレフィン、イソオレフィン、ジオレフィンおよびオレフィン系ナフテンを含む)含有量、および85~174℃である5%~95%沸点範囲を有していた。さらなる不純物は、N(500wt.-ppm)、Br(210wt.-ppm)およびS(89wt.-ppm)である。
【0155】
前処理が、300部のLWPガソリンおよび200部の2wt.-%の水性NaOHを用いて、撹拌バッチリアクター内で行われた。リアクターは、常圧、常温で密閉され、およびその後240℃まで加熱され、この温度で30分間保持され、およびその後、リアクターを再び冷却させた。水相が、有機相からおおまかにデカントされ、次いで有機相の遠心分離(20℃、4300rpm、30分)が行われ、そして分離された有機相が回収された。
【0156】
前処理された材料は、N(25wt.-ppm;95%低下)、Cl(36wt.-ppm;94%低下)、Br(7wt.-ppm;97%低下)およびS(80wt.-ppm。10%低下)である顕著に低下した不純物レベルを示していた。
【0157】
前処理されたLWPガソリンは、Cl含有量およびオレフィン含有量に関してスチームクラッカー要件に完全には合致しなかったが、(840℃の代わりに850℃を用いる以外)実施例1と同じ条件下でスチームクラッキングに付され、そして、生成物が分析された。
【0158】
結果が図1A~1Cに示されており、エチレンおよびプロピレンの両方の収率がRDサンプルの場合と比較して顕著に低かったことを示している。
【0159】
実施例3
実施例2の前処理されたLWPガソリンの25wt部が、実施例1のRDサンプルの75wt部と混合され、したがって、塩素含有量(ブレンド中9wt.-ppm)およびオレフィン含有量(ブレンド中16.5wt.-ppm)についてスチームクラッカー要件を満たすフレンドが形成された。
【0160】
ブレンドが、実施例2と同じ条件下でスチームクラッキングに付され、そして、生成物が分析された。
【0161】
結果が図1A~1Cに示されており、ブレンドがエチレンおよびプロピレン収率について、産業的に重要である850℃のCOTにおいてほぼ低下しておらず、したがって、混合比率から予期されることよりはるかに大きな改良を提供している。したがって、高パラフィン材料の添加は、ブレンドのオレフィン含有量はスチームクラッカーによって許容され得る上限にあるものの、顕著な改良を提供している。
【0162】
実施例4
実施例2の前処理されていないLWPガソリンの1w部が、実施例1のRDサンプルの99w部と混合され、したがって、塩素含有量(ブレンド中5.9wt.-ppm)およびオレフィン含有量(ブレンド中0.66wt.-%)についてスチームクラッカー要件を満たすフレンドが形成された。
【0163】
ブレンドが、実施例3と同じ条件下でスチームクラッキングに付され、そして、生成物が分析された。
【0164】
結果(示さず)は、ブレンドの生成物分布がRDサンプル単独のものと事実上同じであることを示している。
【0165】
実施例5(参照)
LWP材料のディーゼル留分(LWP ディーゼル)が、前処理され、そして、スチームクラッキングに付された。
【0166】
LWPディーゼルは、590wt.-ppmである塩素含有量および58wt.-%であるオレフィン(n-オレフィン、イソオレフィン、ジオレフィンおよびオレフィン系ナフテンを含む)含有量、および172~342℃である5%~95%沸点範囲を有していた。さらなる不純物は、N(810wt.-ppm)、Br(325wt.-ppm)およびS(695wt.-ppm)である。
【0167】
前処理が、室温(21℃)で、ガラス製分液漏斗を使用して、98wt.-%のNMP(N-メチル-2-ピロリドン)および2wt.-%の水の混合溶媒を(溶媒:LWPディーゼル)が3:1の混合比で用いて、溶媒抽出によって行われた。分離後、NMP相が除去され、そして、溶媒抽出が、同じ条件下でさらに2回繰り返され、その後LWPディーゼルが水で洗浄され(水2部、LWPディーゼル1部)、そして水が分離された。
【0168】
前処理された材料は、N(24wt.-ppm;97%低下)、Cl(40wt.-ppm;93%低下)、Br(14wt.-ppm;96%低下)、およびS(35wt.-ppm;95%低下)の低下された不純物レベルを示したが、オレフィン含有量は、実質同じ(63wt.-%)であった。
【0169】
前処理されたLWPディーゼルは、Cl含有量およびオレフィン含有量に関してスチームクラッカー要件に完全には合致しなかったが、(840℃の代わりに850℃を用いる以外)実施例1と同じ条件下でスチームクラッキングに付され、そして、生成物が分析された。
【0170】
結果が図2A~2Cに示されている。
【0171】
実施例6
実施例5の前処理されたLWPディーゼルの25w部が、実施例1のRDサンプルの75w部と混合され、したがって、塩素含有量(ブレンド中10wt.-ppm)およびオレフィン含有量(ブレンド中16wt.-%)についてスチームクラッカー要件を満たすフレンドが形成された。
【0172】
ブレンドが、実施例5と同じ条件下でスチームクラッキングに付され、そして、生成物が分析された。
【0173】
結果が図2A~2Cに示されている。実施例1(RDのみ)の結果が、参照として図2A~2Cにも示されている。結果は、ブレンドがRDサンプルとほぼ同じ(部分的には向上している)エチレンおよびプロピレン収率を提供していることを示している。
図1
図2