(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】高分子カプセルの水性分散体
(51)【国際特許分類】
B01J 13/14 20060101AFI20240412BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20240412BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20240412BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B01J13/14
C09D11/322
C09D11/54
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
(21)【出願番号】P 2022537602
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020085899
(87)【国際公開番号】W WO2021122411
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-17
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-102218(JP,A)
【文献】特表2003-533563(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03156463(EP,A1)
【文献】特開2005-307028(JP,A)
【文献】特開昭63-229366(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00-13/22
C09D 11/00-11/54
B41M 1/00-99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルの水性分散体であって、カプセルはコアを囲む高分子シェルを含み、
高分子シェルはポリ(ウレア)、ポリ(ウレタン)又はそれらの組み合わせを含み、コアは一般式I
【化1】
[式中、
R
1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換
アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、C(=O)R
3及びCNからなる群より選ばれ、
R
2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換
アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びC(=O)R
3からなる群より選ばれ、
R
1とR
2は5ないし8員環を形成するのに必要な原子を示すことができ、
R
3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換
アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR
4及びNR
5R
6からなる群より選ばれ、
R
4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキ
ニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5及びR
6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5とR
6は5ないし8員環を形成するのに必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR
7からなる群より選ばれ、
R
7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換
アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれる]
に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む、カプセルの水性分散体。
【請求項2】
オリゴマー又はポリマーが少なくとも15個の繰り返し単位を含む請求項
1に記載の水性分散体。
【請求項3】
分散性基が高分子シェルに共有結合している請求項1ないし請求項
2のいずれかに記載の水性分散体。
【請求項4】
分散性基がカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩及びホスホン酸又はその塩からなる群より選ばれる請求項
3に記載の水性分散体。
【請求項5】
分散性基がプロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムからなる群より選ばれる請求項
3に記載の水性分散体。
【請求項6】
顔料及び請求項1ないし請求項
4に記載の分散体を含む水性インキジェットインキ。
【請求項7】
凝集剤及び請求項
5に記載の分散体を含む水性前処理液。
【請求項8】
a)支持体上に請求項
6に記載のインキジェットインキを噴射し;そして
b)噴射されたインキの少なくとも60℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射されたインキジェットインキを乾燥する
段階を含むインキジェット記録法。
【請求項9】
a)支持体上に請求項
7に記載の水性前処理液を適用し;そして
b)任意に、適用された前処理液の少なくとも60℃の温度を得るような熱を適用することにより、適用された水性前処理液を少なくとも部分的に乾燥し、
c)適用された前処理液上にインキジェットインキを噴射し;そして
d)噴射されたインキの少なくとも60℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射されたインキジェットインキを乾燥する
段階を含むインキジェット記録法。
【請求項10】
インキジェットインキが請求項7に記載の通りである請求項
9に記載のインキジェット記録法。
【請求項11】
前処理液が、インキ噴射、バルブ噴射及び噴霧からなる群より選ばれる方法を介して適用される、請求項
9に記載のインキジェット記録法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明は印刷における、そしてさらに特定的に非吸収性(non-absorbing)支持体上で水性樹脂に基づくインキジェットインキを用いるインキジェット印刷における使用のための、オリゴマー又はポリマーを含むコアを有するカプセルの水性分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
インキジェットの工業的な用途はますます多くの技術分野に拡大されつつあり、これまで以上の要求される物理的性質を満たさねばならない。工業的な印刷法は安価な支持体に適合しなければならず、それは多くの場合にポリ(オレフィン)に基づく。ポリ(オレフィン)への接着は多くの場合に非常に困難であることは工業において既知である。
【0003】
現在まで、ポリ(オレフィン)を含む非吸収性支持体上におけるインキジェット法はUVに基づいてきた。しかしながら非吸収性支持体上においても水性テクノロジー(aqueous technology)が徐々に支持を得てきている。ポリ(オレフィン)上における水性樹脂に基づくインキの直接の接着はUV法と比較してそれよりずっと困難なままである。
【0004】
支持体のコロナ処理、フレーム処理及びポリウレタン樹脂のような樹脂を含むプライマーを用いる支持体の下塗りを含むいくつかの方法が水性インキの接着を向上させるために当該技術分野で既知である。コロナ及びフレーム処理を用いる支持体の前処理はワークフローを複雑にし、接着の問題を必ずしも解決しない。
【0005】
ポリウレタン樹脂のような樹脂を含む水性に基づくプライマー又は水性に基づくインキジェットインキはスクラッチ抵抗性、耐摩耗性及び耐薬品性(chemical resistance)のような画像耐久性を向上させるために設計されてきた。特許文献1は電気的及び立体的なコロイド安定化を与える分散基を有するポリウレタン樹脂を含む水性インキジェットインキを記載している。特許文献2は特殊なグリコールを有するポリウレタン樹脂を含むプライマー溶液を記載している。水性インキ及びプライマーはまだポリ(オレフィン)支持体への不十分な接着に悩まされている。さらに、例えばインキジェットヘッドを介して噴射されねばならない水性インキ又はプライマー中に分散又は溶解された樹脂の使用は噴射信頼性の問題を引き起こす。これはノズルプレートにおける樹脂のフィルム形成の故であり、インキジェットヘッドがしばらく使用されていない場合にノズルの閉塞を引き起こし得る。
【0006】
特許文献3に、樹脂に基づくインキの噴射信頼性を向上されるために樹脂がカプセルとして存在する水性樹脂に基づくインキジェットインキが記載されている。しかしながら、優れた結合性のそしてそれ故に耐久性の画像を達成するためにブロックイソシアナートのような反応性の化学的物質(reactive chemistry)がカプセルのコアに導入される。そのような反応物の存在は完全に反応しない場合に健康及び安全性の問題を与え得る。さらに、コアからの反応性化学物質の放出はインキの乾燥の間又はその後に熱的活性化段階を必要とする。熱的活性化段階は最高で100℃を超える温度までの印刷画像の加熱を含み、それはポリエチレン又はポリプロピレンフィルムのようなポリ(オレフィン)に基づく支持体と適合性でない。
【0007】
特許文献4は重合可能なオリゴマー又はポリマーのような重合可能な化合物を含むコアを有するカプセルを含むインキジェットインキを開示している。重合可能な化合物はUV光又はブロックイソシアナートを適用した時のみに重合する化合物である。
【0008】
従って本質的にポリ(オレフィン)への優れた接着性能を示し、且つ同時にインキジェットインキ又は噴射可能なプライマー中に導入して信頼できる噴射性能を与えることができる樹脂技術がまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2018/077624号公報
【文献】国際公開第2016/122569号公報
【文献】国際公開第2016/165956号公報
【文献】米国特許第2019/0023922号明細書
【発明の概要】
【0010】
発明の概略
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は上記の問題への解決案を提供することである。該目的は請求項1で定義されるようなカプセルの分散体を与えることにより達成された。
【0012】
本発明のさらなる目的は、請求項7で定義されるような請求項1のカプセルを含むインキジェットインキを提供することである。
【0013】
本発明の別の態様は、請求項9で定義されるような請求項1のカプセルを含むインキジェットインキを用いる印刷法を提供することである。
【0014】
本発明の他の特徴、要素、段階、特性及び利点は本発明の好ましい態様の以下の詳細な記述からもっと明らかになるであろう。本発明の特定の態様も従属請求項中に定義される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
態様の記述
A.本発明に従う水性分散体
A.1.本発明に従うオリゴマー又はポリマー
本発明の目的は、高分子シェルにより囲まれたコアを含むカプセルを含む水性分散体により実現され、ここでコアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み、
【0016】
【0017】
式中、
R1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、C(=O)R3及びCNからなる群より選ばれ、
R2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びC(=O)R3からなる群より選ばれ、
R1とR2は5ないし8員環を形成するのに必要な原子を示すことができ、
R3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR4及びNR5R6からなる群より選ばれ、
R4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R5及びR6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R5とR6は5ないし8員環を形成するのに必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR7からなる群より選ばれ、
R7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R8及びR9は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリー
ル基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R8とR9は5ないし8員環を形成するのに必要な原子を示すことができる。
【0018】
好ましい態様において、一般式Iに従う部分で官能基化された繰り返し単位を含む前記オリゴマー又はポリマーは少なくとも7個の官能基化された、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基化された繰り返し単位を含む。
【0019】
さらなる好ましい態様において、Xは酸素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R1は水素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R2は置換又は非置換アルキル基を示し、非置換がより好ましく、低級アルキル基がさらにもっと好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0020】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーは好ましくは少なくとも2000、より好ましくは4000そして最も好ましくは6000と30000の間の重量平均分子量を有する。
【0021】
本発明に従うポリマーはホモポリマー又は種々の繰り返し単位のコポリマーであることができる。
【0022】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーをエチレン性不飽和モノマーの付加重合、重縮合及び開環重合により製造することができ、付加重合が特に好ましい。最も好ましい態様において、本発明に従う樹脂の製造のためにエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合が用いられる。本発明の別の態様において、本発明に従う樹脂の分子量はRAFT剤、ATRP、ニトロキシル基法又は移動剤、好ましくはチオールを用いて制御される。
【0023】
本発明に従う樹脂の製造のための典型的なモノマーを下記に示すが、これらに制限されない。
【0024】
付加重合のためのモノマー:表1を参照されたい。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
本発明に従う付加ポリマーの製造にフリーラジカル及びカチオン重合条件が好ましい。
【0029】
開環重合のためのモノマー:表2を参照されたい。
【0030】
【0031】
【0032】
科学文献に記載されている開環重合の条件(circumstances)を用いてポリ(エーテル)、ポリ(エステル)、ポリ(カーボネート)及びポリ(アミド)又はそれらのコポリマーを製造することができる。
【0033】
重縮合のためのモノマー:表3を参照されたい。
【0034】
【0035】
【0036】
当業者に既知の条件下における官能基化ジオールと二酸又は二酸クロリドの縮合によりポリ(エステル)を製造することができる。官能基化二酸をジオールとの縮合によりポリ(エステル)に転換することができる。当業者に既知の条件下における官能基化ジオールとジイソシアナートとの縮合によりポリ(ウレタン)を製造することができる。
【0037】
A.2.本発明に従うカプセル
本発明に従うオリゴマー又はポリマーを好ましくは重合により、より好ましくは界面重合の使用によりカプセル封入して水性分散体を形成する。
【0038】
カプセルは好ましくは前処理(pre-treatment)液(又はプライマー)、オーバープリントワニス又は印刷インキ、より好ましくはインキジェットインキ中に、液/ワニス/インキの合計重量に基づいて45重量%以下、好ましくは5重量%と25重量%の間の量で、存在する。30重量%より多量では、噴射は必ずしも信頼できないことが観察された。
【0039】
インキジェットインキ又は噴射可能な前処理液のような噴射可能な水性調製物中で用いられるべきカプセルは動的レーザー回折により決定される4μm以下の平均粒度を有する。インキジェットプリントヘッドのノズル直径は通常20ないし35μmである。カプセルの平均粒度がノズルの直径の5分の1である(five times smaller)場合に信頼できるインキジェット印刷が可能である。4μm以下の平均粒度は20μmの最小ノズル直径を有するプリントヘッドによる噴射を可能にする。より好ましい態様において、カプセルの平均粒度はノズル直径の10分の1である。従って好ましくは平均粒度は0.05から2μmまで、より好ましくは0.10から1μmまでである。カプセルの平均粒度が2μmより小さい場合、優れた解像度及び時間を経ての分散安定性が得られる。
【0040】
カプセルは高分子シェルに共有結合した分散性基(dispersing group)を用いて前処理液又はインキジェットインキの水性媒体中に分散されるか或いは好ましくはカプセルの形成の間又はその後に加えられる分散剤又は界面活性剤の使用により分散される。高分子シェルに共有結合した分散性基は好ましくはカルボン酸又はその塩、スル
ホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基及びポリエチレンオキシド基からなる群より選ばれる。
【0041】
立体的な安定化を達成するために分散性基を高分子分散剤と組み合わせて用いることができる。例えば高分子シェルは共有結合したカルボン酸基を有することができ、それは高分子分散剤のアミン基と相互作用する。しかしながらより好ましい態様において、高分子分散剤は用いられず、インキジェットインキの分散安定性は静電的安定化によってのみ達成される。例えばわずかにアルカリ性の水性媒体は高分子シェルに共有結合したカルボン酸基をイオン性基に変え、その後負に帯電したカプセルは凝集する傾向を持たない。十分な分散性基が高分子シェルに共有結合している場合、カプセルはいわゆる自己分散性カプセルになる。
【0042】
これらの負に又は正に帯電したカプセル表面をインキジェット印刷の間に有利に用いることもできる。例えばカチオン性ポリマー又は多価塩であるカチオン性物質を含む前処理液のような第二の液を用い、第二の液の上に印刷される水性インキジェットインキのアニオン性安定化着色剤を沈殿させることができる。この方法の使用によりカプセルの固定の故の画質の向上が観察され得る。
【0043】
カプセルの高分子シェルのために用いられるポリマーの型に実質的な制限はない。好ましくは、高分子シェル中で用いられるポリマーは架橋されている。架橋によりより高い剛性がカプセル中に組み込まれ、インキ製造及びインキジェットプリンターの両方におけるカプセルの取り扱いのためのより広い範囲の温度及び圧力を可能にする。
【0044】
高分子シェル材料の好ましい例にはポリウレア、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミンに基づくポリマー及びそれらの混合物が含まれ、ポリウレアが特に好ましい。
【0045】
A.3.本発明に従うカプセルの製造
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの高分子シェルを用いるカプセル封入は、化学的及び物理的方法の両方を用いて調製することができる。適したカプセル封入法には複合コアセルベーション(complex coacervation)、リポソーム形成、噴霧乾燥及び重合法が含まれる。
【0046】
本発明において好ましくは重合法が用いられ、それはそれがカプセルの設計において最高の制御を可能にするからである。より好ましくは本発明のカプセルの製造に界面重合を用いる。この方法は周知であり、Zhang Y.and Rochefort D.(Journal of Microencapsulation,29(7),636-649(2012)により、及びSalitin(Encapsulation Nanotechnologies,Vikas Mittal(ed.),chapter 5,137-173(Scrivener Publishing LLC(2013)において)により報告されている。
【0047】
界面重縮合のような界面重合において、2種の反応物はエマルジョン液滴の界面で出会い、急速に反応する。
【0048】
一般に界面重合は水性連続相中における親油性相の分散又はその逆を必要とする。相のそれぞれは少なくとも1種の溶解されたモノマー(第一のシェル成分)を含み、それは他の相中に溶解された別のモノマー(第二のシェル成分)と反応することができる。重合す
ると水相及び親油性相中の両方において不溶性であるポリマーが生成する。結局、生成するポリマーは親油性相と水相の界面において沈殿する傾向を有し、これによって分散相の周りにシェルを形成し、それはさらに重合すると成長する。本発明に従うカプセルは好ましくは水性連続相中の親油性分散体から製造される。
【0049】
本発明に従う且つ界面重合により生成するカプセルの典型的な高分子シェルは、典型的に第一のシェル成分としてのジ又はポリ酸クロリド及び第二のシェル成分としてのジ又はオリゴアミンから製造されるポリアミド、典型的に第一のシェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてのジ又はオリゴアミンから製造されるポリウレア、典型的に第一のシェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてのジ又はオリゴアルコールから製造されるポリウレタン、典型的に第一のシェル成分としてのジ又はオリゴスルホクロリド及び第二のシェル成分としてのジ又はオリゴアミンから製造されるポリスルホンアミド、典型的に第一のシェル成分としてのジ又はオリゴ酸クロリド及び第二のシェル成分としてのジ又はオリゴアルコールから製造されるポリエステルならびに典型的に第一のシェル成分としてのジ又はオリゴクロロホルメート及び第二のシェル成分としてのジ又はオリゴアルコールから製造されるポリカーボネートからなる群より選ばれる。シェルはこれらのポリマーの組み合わせから構成されることができる。
【0050】
さらなる態様において、ゼラチン、キトサン、アルブミン及びポリエチレンイミンのようなポリマーを第一のシェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート、ジ又はオリゴ酸クロリド、ジ又はオリゴクロロホルメート及びエポキシ樹脂と組み合わせて第二のシェル成分として用いることができる。
【0051】
特に好ましい態様において、シェルはポリウレア又はポリウレタンとのその組み合わせからなる。さらなる好ましい態様において、分散段階に水非混和性溶媒が用いられ、それはシェル形成の前又は後に溶媒ストリッピングにより除去される。特に好ましい態様において、水非混和性溶媒は常圧で100℃未満の沸点を有する。エステルは水非混和性溶媒として特に好ましい。
【0052】
水非混和性溶媒は水中で低い混和性を有する有機溶媒である。低い混和性は1対1の体積比(one over one volume ratio)で混合した場合に20℃において二相系を形成する水と溶媒の組み合わせと定義される。
【0053】
コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。これらは通常水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶媒中にそれを溶解することによりカプセル中に導入される。好ましい有機溶媒は酢酸エチルであり、それはそれが他の有機溶媒に比較して低い可燃性の危険も有するからである。
【0054】
しかしながらいくつかの場合に有機溶媒を省略することができる。例えば一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーが100mPa.s未満の粘度を有する場合、有機溶媒を省略することができる。
【0055】
カプセルの分散体の調製方法は好ましくは以下の:
a)水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶媒中の高分子シェルの形成のための第一のシェル成分及び一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの非水性溶液を調製し;
b)高分子シェルの形成のための第二のシェル成分の水溶液を調製し;
c)高せん断下で水溶液中に非水性溶液を分散させ;
d)任意に、水溶液と非水性溶液の混合物から有機溶媒をストリッピングし;そして
e)高分子シェルの形成のための第一及び第二のシェル成分の界面重合により一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの周りに高分子シェルを形成する
段階を含む。
【0056】
次いで例えば水、保湿剤、界面活性剤などの添加によりカプセル分散体をインキジェットインキ、水性前処理液又は印刷プロセスに適したいずれかの液に仕上げることができる。
【0057】
好ましい態様において、カプセルは自己分散性カプセルである。カプセルを自己分散性にするために、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩のようなアニオン性分散性基或いは第四級アンモニウム塩、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムのようなカチオン性分散性基をカプセルの高分子シェルに共有結合させて分散安定性を保証することができる。
【0058】
カプセルの高分子シェル中にアニオン性安定化基を導入するための好ましい方策は、イソシアナートと反応することができるカルボン酸官能基化反応性界面活性剤を利用する。これは少なくとも部分的に第二級又は第一級のアミンを含む両性型の界面活性剤に導く。スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩で官能基化された他の反応性界面活性剤を用いることができる。
【0059】
部分的に第二級アミンを有するが第三級アミンも含む界面活性剤の混合物であるいくつかの両性界面活性剤は商業的に入手可能である。インキジェットプリンターで、商業的に入手可能な両性界面活性剤の使用により製造されるカプセルに基づくインキジェットインキにおける法外な発泡に直面した。発泡はインキ供給において及びまたインキから空気を除去しようとするための脱ガスにおいて問題を引き起こし、かくして信頼できない噴射に導く。従って国際公開第2016/165970号公報の式(I)に従う界面活性剤が好ましくは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーのカプセル封入プロセスの間に用いられる。
【0060】
前処理液又はカチオン性に基づくインキジェットインキ(特許出願国際公開第2019/105867号公報に開示されているような)中における使用のためのカプセルの高分子シェル中へのカチオン性分散性基の導入は、カチオン性分散性基を有する界面活性剤を本発明に従うカプセルのシェルに結合させることを利用する。これは少なくとも1個の第一級又は第二級アミン基ならびにプロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムから選ばれる少なくとも1個の基を含む界面活性剤と第一のシェル成分、好ましくはシェルのイソシアナートモノマーとの反応により行われる。さらにもっと好ましい態様において、前記界面活性剤は式IVに従う界面活性剤である。
【0061】
【0062】
式中、
R1は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基及び置換又は非置換アルキニル基からなる群より選ばれ、但しR1は少なくとも8個の炭素原子を含み;
R2、R3及びR4は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換(ヘテロ)アリール基からなる群より選ばれ、
L1は8個以下の炭素原子を含む二価の連結基を示し;
Xはアンモニウム基の正の電荷を補償するための対イオンを示す。
【0063】
本発明に従うカプセルは水性媒体中に分散される。水性媒体は水からなるが、好ましくは1種以上の水溶性有機溶媒を含むことができる。
【0064】
多様な理由で1種以上の有機溶媒を加えることができる。例えば調製されるべき前処理液又はインキジェットインキ中における化合物の溶解を促進するために少量の有機溶媒を加えるのが有利であり得る。好ましくは水溶性有機溶媒はポリオール(例えばエチレングリコール、グリセリン、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)、アミン(例えばエタノールアミン及び2-(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えばメタノール、エタノール及びブタノール)、多価アルコールのアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’チオジエタノール、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、複素環式化合物(例えば2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン)ならびにアセトニトリルである。
【0065】
B.本発明の分散体を含む水性調製物
B.1.前処理液
水性前処理液は好ましくは非吸収性支持体上への水性に基づくインキを用いる印刷において用いられる。本発明に従う水性前処理液はコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散体を含む。コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。シェルは好ましくはシェルに
共有結合した分散性基をさらに含み、より好ましくは分散性基はプロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムからなる群より選ばれる基である。水性媒体は水を含むが、1種以上の水溶性有機溶媒を含むことができる。適した有機溶媒は§A.3.に記載されている。前処理液中に存在するとしたら、その場合カプセルは好ましくは前処理液の合計重量に基づいて45重量%以下、より好ましくは5重量%と25重量%の間の量で存在する。
【0066】
多価金属イオンは前処理液中で凝集剤として含まれることができる。適した例はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム及びアルミニウムのような二価又はもっと多価の金属カチオンとフルオリドイオン(F-)、クロリドイオン(Cl-)、ブロミドイオン(Br-)、サルフェートイオン(SO4
2-)、硝酸イオン(NO3
-)及びアセテートイオン(CH3COO-)のようなアニオンから形成される水溶性金属塩である。
【0067】
これらの多価金属イオンはインキジェットインキ中の顔料の表面上又はインキ中に含まれる分散されたカプセルのポリマー上のカルボキシル基に作用することによりインキを凝集させる機能を有する。結局インキの着色剤は固定され、ブリーディング及びビーディングを減少させる。従ってインキ中の顔料の表面及び/又はインキ中に含まれるなら分散されたカプセルのポリマーはアニオン性基、好ましくはカルボキシル基を有するのが好ましい。
【0068】
前処理は凝集剤として有機酸を含むこともできる。有機酸の好ましい例には酢酸、プロピオン酸及び乳酸が含まれるがこれらに限られない。
【0069】
前処理液はさらに凝集剤として樹脂を含むことができる。樹脂の例にはデンプン;カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース系材料;ポリウレタン、多糖類;ゼラチン及びカゼインのようなタンパク質;タンニン及びリグニンのような水溶性の天然に存在するポリマー;ならびにポリビニルアルコールを含むポリマー、ポリエチレンオキシドを含むポリマー、アクリル酸モノマーから生成するポリマー及び無水マレイン酸モノマーから生成するポリマーのような合成水溶性ポリマーが含まれるがこれらに限られない。他の適した樹脂は欧州特許第2362014号明細書[0027-0030]に記載されているアクリル系ポリマーである。好ましくは、樹脂はカチオン性樹脂、より好ましくはカチオン性帯電ポリウレタンである。樹脂含有率は前処理液の合計質量に対して好ましくは20重量%以下である。
【0070】
前処理液は保湿剤も含むことができる。保湿剤は好ましくは前処理液をインキジェット又はバルブジェットのような噴射法を用いて適用しなければならない場合にこの液中に導入される。保湿剤はノズルの閉塞を予防する。予防は前処理液、特に液中の水の蒸発速度を遅くするその能力の故である。保湿剤は好ましくは水より高い沸点を有する有機溶媒である。適した保湿剤にはトリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエレチングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含むグリコールならびにそれらの混合物及び誘導体が含まれる。好ましい保湿剤はグリセロールである。
【0071】
保湿剤は好ましくは液の合計重量に基づいて0.1ないし20重量%の量で液調製物に加えられる。
【0072】
前処理液は界面活性剤を含むことができる。いずれの既知の界面活性剤も用いられ得るが、好ましくはグリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤が用いられる。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤の使用はブリーディングをさらに減少させて印刷の質を向上させ、且つ印刷における乾燥性も向上させて高速印刷を可能にする。
【0073】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上である。これらは例えばAir Products(GB)からOlfine E1 010のようなOlfine(登録商標)104シリーズ及びEシリーズとして又はNissin Chemical IndustryからSurfynol(登録商標)465及びSurfinol 61として入手可能である。
【0074】
前処理液は顔料も含むことができる。暗色又は透明支持体上の印刷のために特に有用なのは白色顔料を含む前処理液である。水性前処理液インキのために好ましい顔料は二酸化チタンである。本発明において有用な二酸化チタン(TiO2)顔料はルチル又はアナターゼ結晶形にあることができる。TiO2の製造方法は“The Pigment Handbook”,Vol.1,2nd Ed.,John Wiley & Sons,NY(1988)に非常に詳細に記載されており、その関連する開示は引用することにより完全に示されているごとくにすべての目的のために本明細書の内容となる。
【0075】
二酸化チタン粒子は前処理液の所望の末端使用用途に依存して約1ミクロン以下の多様な平均粒度を有することができる。高い隠蔽を要求する用途又は装飾的印刷用途のために、二酸化チタン粒子は好ましくは約1ミクロン未満の平均寸法を有する。好ましくは、粒子は約50から約950nmまで、より好ましくは約75から約750nmまでそしてさらにもっと好ましくは約100から約500nmまでの平均寸法を有する。
【0076】
いくらかの透明度を有する白色を要求する用途のために、好ましい顔料(pigment preference)は「ナノ」二酸化チタンである。「ナノ」二酸化チタン粒子は典型的に約10から約200nmまで、好ましくは約20から約150nmまでそしてより好ましくは約35から約75nmまでの範囲の平均寸法を有する。ナノ二酸化チタンを含むインキは向上した彩度及び透明度を与えることができ、一方でまだ光フェード(light fade)への優れた抵抗性及び適切な色相角(hue angle)を保持している。コーティングされていないナノ等級の酸化チタンの商業的に入手可能な例はP-25であり、Degussa(Parsippany N.J.)から入手可能である。
【0077】
さらに、多重の(multiple)粒度を用いて不透明性及びUV保護のような独特の利点を実現することができる。顔料の及びナノ等級のTiO2の両方を加えることにより、これらの多重の寸法を達成することができる。
【0078】
二酸化チタンは好ましくは濃厚スラリ組成物(slurry concentrate
composition)を介して前処理調製物中に導入される。スラリ組成物中に存在する二酸化チタンの量は好ましくは合計スラリ重量に基づいて約15重量%から約80重量%までである。
【0079】
二酸化チタン顔料は1種以上の金属酸化物表面コーティングを帯びていることもできる。当業者に既知の方法を用いてこれらのコーティングを適用することができる。金属酸化物コーティングの例には中でもシリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアが含まれる。これらのコーティングは二酸化チタンの光反応性の低下を含む向上した性質を与えることができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアの金属酸化物コーティングはTiO2顔料の正に帯電した表面を生じ、従って本発明のカチオン性安定化カプセルとの組み合わせにおいて特に有用であり、それは顔料の追加の表面処理が必要でないからである。
【0080】
そのようなコーティングされた二酸化チタンの市販の例にはR700(アルミナコーティングされている、E.I.DuPont deNemours,Wilmington
Delから入手可能)、RDI-S(アルミナコーティングされている、Kemira
Industrial Chemicals,Helsinki,Finlandから入手可能)、R706(DuPont,Wilmington Del.から入手可能)及びW-6042(Tayco Corporation,Osaka Japanからのシリカアルミナ処理されたナノ等級二酸化チタン)が含まれる。
【0081】
前処理液は少なくとも1種のpH調整剤を含むことができる。適したpH調整剤には有機アミン、NaOH、KOH、NEt3、NH3、HCl、HNO3及びH2SO4が含まれる。好ましい態様において、前処理液は7より低いpHを有する。7以下のpHは特にカプセルの分散性基がアミンである場合にカプセルの静電的安定化に有利に影響することができる。
【0082】
B.2.水性インキジェットインキ
本発明に従う水性インキジェットインキは少なくともa)水性媒体;及びb)コアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散体を含む。コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。シェルは好ましくはシェルに共有結合した分散性基をさらに含み、より好ましくは分散性基はカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩からなる群より選ばれる基である。
【0083】
カプセルは好ましくはインキジェットインキの合計重量に基づいて30重量%以下、好ましくは5重量%と25重量%の間の量でインキジェットインキ中に存在する。30重量%より多量で、噴射は必ずしもそれ程信頼可能でないことが観察された。
【0084】
好ましい態様において、本発明に従うインキジェットインキはインキジェットインキセットの一部、より好ましくは複数の本発明に従うインキジェットインキを含む多色インキジェットインキセットの一部である。インキジェットインキセットは好ましくは少なくともシアンインキジェットインキ、マゼンタインキジェットインキ、イエローインキジェットインキ及びブラックインキジェットインキを含む。そのようなCMYK-インキジェットインキセットをレッド、グリーン、ブルー、バイオレット及び/又はオレンジのような追加のインキを用いて拡張し、画像の色域をさらに拡大することもできる。インキジェットインキセットを高密度(full density)インキジェットインキと軽密度(light density)インキジェットインキの組み合わせにより拡張することもできる。暗色及び明色インキならびに/或いはブラック及びグレーインキの組み合わせは粒状性の低下により画質を向上させる。
【0085】
好ましい態様において、インキジェットインキセットはホワイトインキジェットインキも含む。これは特に透明支持体上により鮮明な色を得ることを可能にし、ここで画像を透明支持体を介して見る場合にホワイトインキジェットインキをプライマーとして又はカラ
ーインキジェットインキの上に適用することができる。
【0086】
インキジェットインキの粘度は25℃及び90s-1のせん断速度において好ましくは25mPa.s未満、より好ましくは25℃及び90s-1のせん断速度において2mPa.sと15mPa.sの間である。
【0087】
インキジェットインキの表面張力は好ましくは25℃において約18mN/mないし70mN/mの範囲内、より好ましくは25℃において約20mN/mないし40mN/mの範囲内である。
【0088】
インキジェットインキは支持体上における優れた広がり特性(spreading characteristics)を得るために少なくとも1種の界面活性剤を含むこともできる。
【0089】
B.2.1.溶媒
インキの水性媒体は水を含むが、好ましくは1種以上の水溶性有機溶媒を含むことができる。インキ中に導入され得る適した溶媒は§A.3に記載されている。
【0090】
B.2.2.顔料
インキの顔料はブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであるとができる。カラー顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,3rd edition.Wiley-VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されたものから選ばれ得る。
【0091】
適した顔料は国際公開第2008/074548号公報の[0128]段落ないし[0138]段落に開示されている。
【0092】
顔料粒子は高分子分散剤又は界面活性剤を用いて水性媒体中に分散される。自己分散性顔料を用いることもできる。アニオン性分散性基を有するカプセルと組み合わされる場合、顔料のための分散剤として好ましくはアニオン性界面活性剤を用いることができる。カチオン性分散性基を有するカプセルと組み合わされる場合、顔料のための分散剤として好ましくはカチオン性界面活性剤を用いることができる。後者はインキジェットインキ中に含まれてい得るカプセルの分散性基との高分子分散剤の相互作用を妨げ(下記を参照されたい)、それは顔料の分散安定性がカプセルのために用いられると同じ静電的安定化の方法により達成されるからである。
【0093】
自己分散性顔料は、塩形成基又はカプセルのための分散性基として用いられている基とと同じ基のようなアニオン性親水性基がその表面上に共有結合している顔料であり、それは界面活性剤又は樹脂を用いずに顔料が水性媒体中に分散するのを可能にする。適した商業的に入手可能な自己分散性カラー顔料は例えばCABOTからのCAB-O-JETTMインキジェット着色剤である。
【0094】
インキジェットインキ中の顔料粒子はインキジェット印刷装置を介する、特に吐出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大色濃度のため及び沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0095】
平均顔料粒度は好ましくは0.050μmと1μmの間、より好ましくは0.070μmと0.300μmの間そして特に好ましくは0.080μmと0.200μmの間であ
る。最も好ましくは平均顔料粒度数(numeric average pigment
particle size)は0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒度は、動的光散乱の原理に基づくBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。インキは酢酸エチルを用いて0.002重量%の顔料濃度に希釈される。BI90plusの測定設定は:23℃において5回の測定、90oの角度、635nmの波長及びグラフィックス=補正関数である。
【0096】
しかしながらホワイト顔料インキジェットインキの場合、ホワイト顔料の平均粒径数は§B.1に記載したと同じである。
【0097】
適したホワイト顔料は国際公開第2008/074548号公報の[0116]中の表2に示されている。ホワイト顔料は好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は国際公開第2008/074548号公報の[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0098】
衣類における特殊な効果のための蛍光顔料及び編織布上に銀色及び金色の豪華な外観を印刷するための金属性顔料のような特殊な着色剤を用いることもできる。
【0099】
顔料のための適した高分子分散剤は2種のモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5種又はそれより多種のモノマーさえ含むことができる。高分子分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは以下のポリマー組成を有する:
●ランダム重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABBAABABに重合した);
●交互重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABABABABに重合した);
●勾配(gradient)(テーパード(tapered))重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがAAABAABBABBBに重合した);
●それぞれのブロックのブロック長(2、3、4、5個又はそれより多くさえ)が高分子分散剤の分散能力に重要であるブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBがAAAAABBBBBBに重合した);
●グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合した高分子側鎖を有する高分子主鎖から成る);ならびに
●これらのポリマーの混合形態、例えばブロック様勾配コポリマー(blocky gradient copolymer)。
【0100】
適した分散剤はBYK CHEMIEから入手可能なDISPERBYKTM分散剤、JOHNSON POLYMERSから入手可能なJONCRYLTM分散剤及びLubrisolから入手可能なSOLSPERSETM分散剤である。非高分子ならびにいくつかの高分子分散剤の詳細なリストはMC CUTCHEON,Functional Materals,North American Edition.Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishin
Co.,1990.p.110-129により開示されている。
【0101】
高分子分散剤は好ましくは500と30000の間、より好ましくは1500と10000の間の数平均分子量Mnを有する。
【0102】
高分子分散剤は好ましくは100,000未満、より好ましくは50,000未満そし
て最も好ましくは30,000未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0103】
顔料は好ましくはそれぞれインキジェットインキの合計重量に基づいて0.01ないし20重量%の範囲内、より好ましくは0.05ないし10重量%の範囲内そして最も好ましくは0.1ないし5重量%の範囲内で存在する。ホワイトインキジェットインキの場合、ホワイト顔料は好ましくはインキジェットインキの3重量%ないし40重量%そしてより好ましくは5重量%ないし35重量%の量で存在する。3重量%未満の量は十分な被覆力を達成することができない。
【0104】
B.2.3.樹脂
本発明に従うインキジェットインキ組成物はさらに樹脂を含むことができる。樹脂は多くの場合に支持体への顔料の優れた接着をさらに達成するためにインキジェットインキ調製物に加えられる。樹脂はポリマーであり、適した樹脂はアクリルに基づく樹脂、ウレタン修飾ポリエステル樹脂又はポリエチレンワックスであることができる。
【0105】
ポリウレタン樹脂を分散体としてインキ調製物中に導入することができ、それらは例えば脂肪族ポリウレタン分散体、芳香族ポリウレタン分散体、アニオン性ポリウレタン分散体、非イオン性ポリウレタン分散体、脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散体、脂肪族アクリル修飾ポリウレタン分散体、芳香族ポリエステルポリウレタン分散体、芳香族ポリカーボネートポリウレタン分散体、芳香族アクリル修飾ポリウレタン分散体又は上記の2種以上の組み合わせからなる群より選ばれることができる。
【0106】
本発明のインキ中で分散体として用いるのに好ましいウレタン樹脂は、ウレタン結合を含む構造単位を含むポリエステル樹脂である。そのような樹脂の中で水溶性又は水分散性ウレタン修飾ポリエステル樹脂が好ましい。ウレタン修飾ポリエステル樹脂はヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)に由来する少なくとも1個の構造単位及び有機ポリイソシアナートに由来する少なくとも1個の構造単位を含むのが好ましい。
【0107】
さらにヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂は、少なくとも1種の多塩基酸成分と少なくとも1種の多価アルコール成分の間のエステル化反応又はエステル交換反応により生成する樹脂である。
【0108】
本発明のインキ中に含まれることができる好ましいポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、アニオン性基を含むポリオール及びポリイソシアナートを反応させることにより得ることができるポリウレタン樹脂である。特に好ましいポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、アニオン性基を含むポリオール及びポリイソシアナートを反応させることにより得ることができるポリウレタン樹脂であり、且つここでポリエステルポリオールは芳香族ポリカルボン酸及びポリオールを反応させることにより得られる。適したポリウレタン樹脂の例及びそれらの製造は非公開特許出願欧州特許第16196224.6号に開示されている。
【0109】
適したポリウレタン分散体のいくつかの例は、例えばNEOREZ R-989、NEOREZ R-2005及びNEOREZ R-4000(DSM NeoResins);BAYHYDROL UH 2606、BAYHYDROL UH XP 2719、BAYHYDROL UH XP 2648及びBAYHYDROL UA XP 2631(Bayer Material Science);DAOTAN VTW 1262/35WA、DAOTAN VTW 1265/36WA、DAOTAN VTW
1267/36WA、DAOTAN VTW 6421/42WA、DAOTAN V
TW 6462/36WA(Cytec Engineered Materials Inc.,Anaheim CA);及びSANCURE 2715、SANCURE 20041、SANCURE 2725(Lubrizol Corporation)あるいは上記の2種以上の組み合わせである。
【0110】
アクリルに基づく樹脂にはアクリルモノマーのポリマー、メタクリルモノマーのポリマー及び上記のモノマーと他のモノマーのコポリマーが含まれる。これらの樹脂は約30nmないし約300nmの平均直径を有する粒子の懸濁液として存在する。アクリルラテックスポリマーはアクリルモノマー又はメタクリルモノマー残基から生成する。アクリルラテックスポリマーのモノマーの例には例えばアクリレートエステル、アクリルアミド及びアクリル酸のようなアクリルモノマーならびに例えばメタクリレートエステル、メタクリルアミド及びメタクリル酸のようなメタクリルモノマーが例として含まれる。アクリルラテックスポリマーはホモポリマーであるか或いはアクリルモノマーと例えばスチレン、スチレンブタジエン、p-クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン及びジビニルナフタレンを含むがこれらに限られないビニル芳香族モノマーのような別のモノマーのコポリマーであることができる。
【0111】
適したアクリルラテックスポリマー懸濁液のいくつかの例は、例えばJONCRYL 537及びJONCRYL 538(BASF Corporation,Port ArthurTX);CARBOSET GA-2111、CARBOSET CR-728、CARBOSET CR-785、CARBOSET CR-761、CARBOSET CR-763、CARBOSET CR-765、CARBOSET CR-715及びCARBOSET GA-4028(Lubrizol Corporation);NEOCRYL A-1110、NEOCRYL A-1131、NEOCRYL A-2091、NEOCRYL A-1127、NEOCRYL XK-96及びNEOCRYL XK-14(DSM);ならびにBAYHYDROL AH XP 2754、BAYHYDROL AH XP 2741、BAYHYDROL A 2427及びBAYHYDROL A2651(Bayer)或いは上記の2種以上の組み合わせである。
【0112】
本発明に従うインキジェットインキ中の樹脂の濃度は、もし含まれるなら、少なくとも1(重量)%且つ好ましくは30(重量)%未満、より好ましくは20(重量)%未満である。
【0113】
B.2.4.添加物
水性インキジェットインキはさらに界面活性剤、保湿剤及び増粘剤を添加物として含むことができる。これらの適した添加物は§B.1に記載されている。
【0114】
C.インキジェット印刷法
好ましいインキジェット記録法において、方法は:
a)支持体、好ましくは非多孔質支持体上に水性インキジェットインキを噴射し、インキはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散体を含み、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み;そして
b)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射されたインキジェットインキを乾燥する
段階を含む。本発明に従うインキジェットインキの噴射の前に支持体上に前処理又はプライマーを適用することができる。
【0115】
別の好ましいインキジェット記録法において、方法は:a)支持体、好ましくは非多孔
質支持体上に水性前処理液を適用し、前処理液はコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散体を含み、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み、高分子シェルは好ましくはプロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムよりなる群から選ばれる分散性基を含み;b)任意に、適用された前処理液の少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより、適用された水性前処理液を少なくとも部分的に乾燥し;c)適用された前処理液上に水性インキジェットインキを噴射する段階を含み、インキは好ましくは顔料のような着色剤を含み且つさらに好ましくは樹脂も含む。より好ましくは、インキはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散体を含むことができ、コアは一般式I、II、IIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み、d)噴射されたインキジェットを乾燥する。段階b)が行われないか又は前処理液の乾燥が完了しない場合、噴射されたインキの温度が少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃となるような熱を適用することにより段階d)における乾燥を行わなければならない。
【0116】
インキジェット記録法における支持体は例えば編織布、紙、革及びボール紙支持体のような多孔質であることができるが、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)のようなポリエステル又はポリイミドのような非吸収性支持体である。
【0117】
支持体は普通紙、樹脂がコーティングされた紙、例えばポリエチレン又はポリプロピレンがコーティングされた紙のような紙支持体であることもできる。紙の型に実質的な制限はなく、それには新聞紙、雑誌用紙、オフィス用紙、壁紙が含まれるが、ホワイトライニングチップボード、段ボール及び包装紙のような、通常はボードと呼ばれる比較的高い坪量の紙も含まれる。
【0118】
支持体は透明、半透明又は不透明であることができる。好ましい不透明支持体にはAgfa-GevaertからのSynapsTM銘柄ようないわゆる合成紙が含まれ、それは1.10g/cm3以上の密度を有する不透明ポリエチレンテレフタレートシートである。
【0119】
別の好ましいインキジェット記録法において、インキ噴射、バルブ噴射及び噴霧からなる群より選ばれる方法を介して前処理液を適用する。さらに特定的に、これらのインキ噴射及びバルブ噴射の方法は、好ましくは画像を得るために上にインキジェットインキが印刷されるであろう表面上に本発明に従う前処理液を画像通りに適用することを可能にする。前処理液を適用するこれらの最後の手段は、必要な前処理液の量が支持体の下塗りの他の適用方法を用いるより実質的に少ないという利点を有する。
【0120】
本発明に従う前処理液又はインキジェットインキを乾燥するための加熱方法の例にはヒートプレス(heat press)、大気圧蒸気処理(atmospheric steaming)、高圧蒸気処理、THERMOFIXが含まれるがこれらに限られない。加熱プロセスのためにいずれの熱源も用いることができ;例えば赤外線源が用いられる。
【0121】
乾燥段階を大気において(at the air)行うことができるが、加熱段階は熱源の使用により行われなければならない;例には強制空気加熱、NIR-及びCIR線を含むIR-線のような放射線加熱、伝導加熱(conduction heating)、高周波乾燥及びマイクロ波乾燥のための装置が含まれる。乾燥段階は支持体の変形を避けるために好ましくは150℃未満、より好ましくは100℃未満の温度が得られるよう
なものである。
【0122】
インキジェットインキ又は前処理液の噴射のためのインキジェット印刷系のために好ましいインキジェットヘッドは圧電インキジェットヘッドである。圧電インキジェット噴射は圧電セラミック変換器に電圧が適用される場合のその動きに基づく。電圧の適用はプリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変え、空隙を形成し、それが次いでインキ又は液で満たされる。電圧が再び取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、インキジェットヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら本発明に従うインキ又は前処理液の噴射は圧電インキジェット印刷に縛られない。他のインキジェットプリントヘッドを用いることができ、連続型、サーマルプリントヘッド型、MEM-ジェット型ヘッド及びバルブジェット型のような種々の型が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0123】
実施例
材料
すべての化合物は、他にことわらなければTCI Europeにより供給される。
●Desmodur N75 BAはBayer AGにより供給される三官能基性イソシアナートである。
●Lakeland ACP70はLakeland Laboratories LTDにより供給される両性イオン性界面活性剤である。
●Alkanol XCはDupontにより供給されるアニオン性界面活性剤である。●Cab-o-Jet 465MはCabotにより供給されるマゼンタ顔料分散体である。
●Cab-O-Jet 450CはCabotにより供給されるされるシアン顔料分散体である。
●Surfinol 104HはNissin Chemical Industryにより供給される界面活性剤である。
●Diamond D75 MはDiamond Dispersionsにより供給されるマゼンタ分散体である。
●MNDAはAldrichにより供給されるメチルジエタノールアミンである。
●Diamond D75YはDiamond Dispersionsにより供給されるイエロー分散体である。
●Diamond D75KはDiamond Dispersionsにより供給されるブラック分散体である。
●MA-1はメタクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチルである。
●MA-2は3-オキソブタン酸2-プロペ-2-エノイルオキシエチルであり、Christopherson C.et al.,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,56(22),2539-2546(2018)に従って製造された。
●MA-4は3-オキソブタン酸(4-ビニルフェニル)メチルであり、以下の通りに製造される:
最初に以下の通りに4-ヒドロキシメチル-スチレンを製造した:0.4gの水酸化ナトリウム、32.23gのテトラブチルアンモニウムブロミド及び2.2gのBHTを400mlの水に加えた。混合物を室温で10分間撹拌した;15.62gの4-クロロメチル-スチレンを加え、混合物を90℃に40分間加熱した。反応混合物を室温に冷まし、100mlの酢酸エチルを用いて3回抽出した。プールされた有機画分を硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。粗4-ヒドロキシメチル-スチレンをProchrom LC80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、固定相としてKromasil Si 60Å 10μmを用い、溶離剤として塩化メチレンから塩化メチレン/酢酸エチル 80/20への勾配溶離を用いて精製した。5.76g(収率:
43%)の4-ヒドロキシメチル-スチレンが単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上のTLC分析:溶離剤 塩化メチレン/酢酸エチル 90/10:Rf=0.45)。次に3-オキソブタン酸(4-ビニルフェニル)メチルを以下の通りに製造した:11gの4-ヒドロキシメチル-スチレン、19.45gのアセト酢酸tert.ブチル及び25mgのTEMPOを150mlのトルエン中に溶解した。蒸留によりtert.ブタノール及びトルエンの混合物を除去しながら反応混合物を加熱還流した。蒸留を90分間続けた。反応混合物を室温に冷まし、減圧下で溶媒を除去した。粗3-オキソブタン酸(4-ビニルフェニル)メチルをProchrom LC80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、固定相としてKromasil Si 60Å 10μm及び溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル 70/30を用いて精製した。12g(収率:67%)の3-オキソブタン酸(4-ビニルフェニル)メチルが単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上のTLC分析:溶離剤 ヘキサン/酢酸エチル 70/30:Rf=0.4)。
●MA-5は3-オキソブタン酸2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エチルであり、以下の通りに製造された:
最初に2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エタノールを以下の通りに製造した:400mlのテトラヒドロフランを1.19kgのエチレングリコールに加えた。混合物を室温で撹拌し、3.98gの4-tert.ブチルカテコールを加え、続いて鉱油中の水素化ナトリウムの60重量%分散液の35gを1時間かけて分けて加えた。添加の間に温度は45℃に上昇した。混合物を室温で2時間撹拌した。100mlのテトラヒドロフラン中の74.19gの4-クロロメチル-スチレンの溶液を加え、反応を45℃で48時間続けさせた。混合物を500mlの水に加え、300mlの塩化メチレンで3回抽出した。プールされた有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。粗2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エタノールをGraceresolve RS80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、塩化メチレンから塩化メチレン/酢酸エチル 80/20への勾配溶離を用いて精製した。64g(収率:74%)の2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エタノールが単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上のTLC分析:溶離剤 塩化メチレン/酢酸エチル 90/10:Rf=0.27)。
【0124】
次に、3-オキソブタン酸2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エチルを以下の通りに製造した:17.8gの2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エタノール、15.82gのアセト酢酸tert.ブチル及び31mgのTEMPOを150mlのトルエン中に溶解した。混合物を加熱還流し、tert.ブタノールとトルエンの混合物を蒸留により除去した。半時間内に20mlの混合物を除去した。半時間後、追加の7.9gのアセト酢酸tert.ブチルを加え、蒸留を半時間続けた。反応混合物を室温に冷まし、減圧下で溶媒を除去した。粗3-オキソブタン酸2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エチルをProchrom LC80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、固定相としてKromasil Si 60Å 10μm及び溶離剤として塩化メチレン/酢酸エチル 70/30を用いて精製した。19.6g(収率:75%)の3-オキソブタン酸2-[(4-ビニルフェニル)メトキシ]エチルが単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上のTLC分析:溶離剤 ヘキサン/酢酸エチル 70/30:Rf=0.3)。
●MA-6は3-オキソブタン酸4-プロペ-2-エノイルオキシブチルであり、以下の通りに製造される:79.1gのアセト酢酸tert.ブチル、86.5gのアクリル酸4-ヒドロキシブチル及び5.5gのBHTを300mlのトルエン中に溶解した。混合物を加熱還流した。還流するとトルエンとtert-ブタノールの混合物が蒸留により除去された。70gのトルエン/tert-ブタノール混合物が30分かけた蒸留により除去された。混合物を室温に冷ました。減圧下で溶媒を除去し、3-オキソブタン酸4-プロペ-2-エノイルオキシブチルをGraceresolve RS80カラム上の調製
的カラムクロマトグラフィーにより、溶離剤としてn-ヘキサン/塩化メチレンを用いて精製した。46.1gの3-オキソブタン酸4-プロペ-2-エノイルオキシブチルが単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上で溶離剤としてn-ヘキサン/酢酸エチルを用いるTLC分析:Rf=0.3)。
●MA-7は3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン酸エチルであり、以下の通りに製造される:溶液を0℃に冷却しながら3.45gのナトリウム及び0.49gの4-tert.ブチルカテコールを250mlのエタノールに加えた。混合物を室温で45分間撹拌した。22.8gの4-クロロメチルスチレンを反応混合物に加え、続いて25mlのエタノールを加えた。39.04gのアセト酢酸エチルを反応混合物に加え、続いて25mlのエタノールを加えた。反応混合物を3時間還流させた。反応混合物を室温に冷まし、800mlの水中に注いだ。混合物を150mlのメチルtert.ブチルエーテルで3回抽出した。プールされた有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。粗3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン酸エチルをProchrom LC80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、固定相としてKromasil Si 60Å 10μm及び溶離剤として塩化メチレン/ヘキサン 96/4を用いて精製した。16.6g(収率:45%)の3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタン酸エチルが単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上のTLC分析:溶離剤 塩化メチレン:Rf=0.3)。
●MA-14はN,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタナミドであり、以下の通りに製造される:200mlのエタノールを0℃に冷却した。0.33gの4-tert.ブチル-カテコールを加え、続いてパラフィン中のナトリウムの25重量%分散液の9.2g(0.1モル)を分けて加えた。混合物を25℃で30分間撹拌した。25mlのエタノール中の15.2gの4-クロロメチル-スチレン及び25mlのエタノール中の31.4gのN,N-ジエチル-3-オキソ-ブタナミドを加え、反応を還流において6時間続けさせた。反応混合物を室温に冷まし、混合物を400mlの水中に注いだ。混合物を400mlのメチル-t.ブチル-エーテルで抽出した。沈殿する残留物をろ過により除去し、有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下で溶媒を蒸発させ、N,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタナミドをProchrom LC80カラム上の調製的カラムクロマトグラフィーにより、塩化メチレンから塩化メチレン/酢酸エチル 95/5の勾配溶離を用いて精製した。2.2gのN,N-ジエチル-3-オキソ-2-[(4-ビニルフェニル)メチル]ブタナミド(収率:8%)が単離された(Merckにより供給されるTLC シリカゲル 60 F254上で溶離剤としてヘキサン/酢酸エチルを用いるTLC分析::Rf:0.5)。
【実施例1】
【0125】
本発明の樹脂INVRES-1の合成:
10g(46.6ミリモル)のメタクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチルを30mlの酢酸エチル中に溶解した。0.472g(2.33ミリモル)のドデシルメルカプタンを加え、混合物を窒素でパージした。134mg(0.7ミリモル)の2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]を加え、混合物を6時間還流させた。混合物を室温に冷ました。酢酸エチル中の本発明の樹脂INVRES-1の溶液を本発明のカプセルINVCAP-1の合成において直接用いた。
【0126】
GPC用い、ポリ(スチレン)標準に対してINVRES-1の分子量を決定した。INVRES-1は10500の数平均分子量Mn及び15400の重量平均分子量Mwを有した。
【0127】
本発明のカプセルINVCAP-1の製造:
13.2gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-1の溶液の37gに加えた。1.2gのLakeland ACP 70を加え、溶液を室温で1時間撹拌した。
【0128】
この溶液をUltra Turraxを用い、16000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら44gの水中の3.36gのLakeland ACP 70、1.17gのリシン及び1.5gのトリエタノールアミンの溶液に加えた。52gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を88gに調整した。分散体を65℃で16時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0129】
ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いてすべてのカプセル分散体の平均粒度を測定した。INVCAP-1の平均粒度は183nmであった。
【0130】
本発明のインキINV-1
表4に従う成分を混合することにより本発明のインキINV-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【0131】
【0132】
比較用インキCOMP-1
最高水準のポリ(ウレタン)に基づくインキは国際公開第2018077624号公報に開示されている。国際公開第2018077624号公報に基づき、表5に従う成分を混合することにより比較用インキCOMP-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【0133】
【0134】
PU-1は国際公開第2018077624号公報に開示されている通りに製造された。
【0135】
本発明の組成物INV-1及び比較用の組成物COMP-1を10ミクロンのワイアバーを用いてポリプロピレン上にコーティングし、オーブン中で80℃において15分間乾燥した。
【0136】
ISO2409:1992(E)に従ってクロスカットテストにより各試料の接着を評価した。カット間に1mmの空間を有するBRAIVE INSTRUMENTSからのBraive No.1536 Cross Cut Testerを用い、且つTesatapeTM 4104 PVCテープと組み合わせて600gの重り(weight)を用いる塗装(国際標準 1992-08-15)。表6に記載される基準に従って評価を行い、ここでクロスカット内及びクロスカット外の接着の両方を評価した。
【0137】
【0138】
結果を表7にまとめる。
【0139】
【0140】
表7から、本発明に従う樹脂技術が最高水準のポリ(ウレタン)技術を上回ることが明らかになる。
【0141】
本発明のインキINV-1の噴射性を標準的なDimatixTM 10 plプリントヘッド上で試験した。22℃において5kHzの発射周波数(firing frequency)、25Vの発射電圧(firing voltage)及び標準的な波形を用いてインキを噴射した。すべてのノズルは特別なパージングの必要なく噴射した。
【実施例2】
【0142】
この実施例は、保存された場合の本発明に従う樹脂に基づく水性インキの安定性を示す。
【0143】
本発明のカプセルINVCAP-2の製造:
8.8gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-1の溶液の37gに加えた。1.2gのLakeland ACP 70を加え、溶液を室温で1時間撹拌した。
【0144】
この溶液をUltra Turraxを用い、16000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら44gの水中の3.36gのLakeland ACP 70、1.17gのリシン及び1.5gのトリエタノールアミンの溶液に加えた。52gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を88gに調整した。分散体を65℃で16時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0145】
平均粒度は170nmであった。
【0146】
インキ安定性の評価:
表8に従う成分を混合することにより本発明のインキINV-2ないしINV-5を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【0147】
【0148】
本発明のインキINV-2ないしINV-5を60℃で14日間熟成させた。各インキの粘度上昇を監視した。すべてのインキ試料のインキ上昇は出発点と比較して10%未満であり、本発明に従うインキの優れた保存安定性を証明した。
【実施例3】
【0149】
この実施例は広範囲のカプセル封入されたβ-ケト-エステルに基づくポリマーを用いて優れた物理的性質を得ることができることを示す。
【0150】
本発明に従うβ-ケト-エステルポリマーの合成
以下の反応スキームに従って本発明に従うβ-ケト-エステルポリマーを製造した:
【0151】
【0152】
表9に示される通りに混合物を調製することにより、種々のポリマーを得た。
【0153】
【0154】
表9に記載される混合物を窒素でフラッシングし、他にことわらなければ16時間加熱還流した。完全な転換までTLC分析を用いてモノマー転換率を追跡した。反応混合物を室温に冷まし、ポリマーを単離せずに酢酸エチル溶液をカプセル封入のために用いた。
【0155】
INVRES-3:重合を16時間の代わりに60時間続けさせた。60時間後、1gの酢酸エチル中の追加の0.146gのWAKO V59を加え、混合物をさらに7時間還流させた。2gの酢酸エチル中の追加の0.146gのWAKO V59を加え、還流において重合を追加の16時間続けさせた。TLC-分析に基づき、転換はほとんど完全であることが証明された。
【0156】
INVRES-4:16時間後、2gの酢酸エチル中の追加の0.396gのWAKO V59を加え、還流において重合を追加の24時間続けさせた。TLC分析に基づき、転換はほとんど完全であることが証明された。
【0157】
INVRES-6:16時間後、2gの酢酸エチル中の追加の0.4gのWAKO V59を加え、還流において重合を追加の24時間続けさせた。TLC分析に基づき、転換はほとんど完全であることが証明された。
【0158】
INVRES-7:INVRES-7は以下の反応に従って製造された:
【0159】
【0160】
1.63gのMA-14を4.47gの酢酸エチル中に溶解した。反応混合物を窒素でパージした。62mgの1-ドデシルメルカプタンを加え、続いて0.5gの酢酸エチル中の23mgのWAKO V59を加えた。混合物を64時間還流させた。64時間後、0.5gの酢酸エチル中の追加の23mgのWAKO V59を加え、還流において重合を7時間続けさせた。0.5gの酢酸エチル中の追加の30mgのWAKO V59を加え、還流において重合を追加の16時間続けさせた。TLC分析に基づいて転換は完全であることが証明された。
【0161】
GPCを用い、ポリスチレン標準に対してINVRES-2ないしINVRES-7の分子量を測定し、それを表10に示す。
【0162】
【0163】
本発明のカプセルINVCAP-3ないしINVCAP-8の製造
INVCAP-3:
9.26gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-2の溶液の60.4gに加えた。
【0164】
この溶液をUltra Turraxを用い、17000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら80gの水中の3.07gのLakeland ACP 70、0.79gの
リシン及び1.1gのトリエチルアミンの溶液に加えた。80gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を110gに調整した。分散体を60℃で24時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0165】
平均粒度は200nmであった。
【0166】
INVCAP-4:
5.15gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-3の溶液の33.6gに加えた。
【0167】
この溶液をUltra Turraxを用い、17000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら39.3gの水中の1.72gのLakeland ACP 70、0.44gのリシン及び0.61gのトリエチルアミンの溶液に加えた。80gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を100gに調整した。分散体を60℃で24時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0168】
平均粒度は195nmであった。
【0169】
INVCAP-5:
9.55gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-4の溶液の62.28gに加えた。
【0170】
この溶液をUltra Turraxを用い、17000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら72.7gの水中の3.18gのLakeland ACP 70、0.82gのリシン及び1.14gのトリエチルアミンの溶液に加えた。80gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を100gに調整した。分散体を60℃で24時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0171】
平均粒度は200nmであった。
【0172】
INVCAP-6:
10.5gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-5の溶液の68.5gに加えた。
【0173】
この溶液をUltra Turraxを用い、17000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら80gの水中の3.5gのLakeland ACP 70、0.9gのリシン及び1.25gのトリエチルアミンの溶液に加えた。80gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を110gに調整した。分散体を60℃で24時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0174】
平均粒度は180nmであった。
【0175】
INVCAP-7:
9.55gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-6の溶液の62.28gに加えた。
【0176】
この溶液をUltra Turraxを用い、17000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら72.73gの水中の3.18gのLakeland ACP 70、0.82gのリシン及び1.14gのトリエチルアミンの溶液に加えた。80gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を100gに調整した。分散体を60℃で24時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0177】
平均粒度は215nmであった。
【0178】
INVCAP-8:
0.888gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-7の溶液の5.79gに加えた。
【0179】
この溶液を6.760gの水中の0.296gのLakeland ACP 70、0.076gのリシン及び0.106gのトリエチルアミンの溶液に加え、続いて全出力で1分間パルスなしで超音波(SONICS VIBRA CELL)を用いて水溶液中で酢酸エチル溶液を乳化させた。10gの水を加え、500ミリバールから120ミリバールに徐々に真空を増しながら減圧下で60℃において溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより、分散体の重量を9.4gに調整した。分散体を60℃で24時間撹拌した。分散体を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散体をろ過した。
【0180】
平均粒度は150nmであった。
【0181】
本発明のインキINV-6ないしINV-11:
表11に従う成分を混合することにより、本発明のインキINV-6ないしINV-11を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【0182】
【0183】
本発明のインキINV-6ないしINV-11を実施例1における通りにポリプロピレンシート上における接着に関して評価した。結果を表12にまとめる。
【0184】
【0185】
表12から、広範囲のカプセル封入されたβ-ケト-エステル官能基化ポリマーがポリ(プロピレン)への優れた接着を与えることが明らかになる。