(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】二方向および三方向繊維構造を有する物品
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20240412BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240412BHJP
D03D 3/00 20060101ALI20240412BHJP
D03D 15/242 20210101ALI20240412BHJP
F02K 9/97 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B32B5/28 Z
D03D1/00 A
D03D3/00
D03D15/242
F02K9/97
(21)【出願番号】P 2022549786
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2020019017
(87)【国際公開番号】W WO2021167612
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】エリス,ラッセル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,ジェフリー ディー.
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-060058(JP,A)
【文献】特表2008-524016(JP,A)
【文献】特開昭60-155766(JP,A)
【文献】特開平01-167276(JP,A)
【文献】米国特許第05226217(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D03D 1/00-27/18
F02K 9/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化織物の複数の層を有す
る織物構造
を備え、
前記織物構造が、
三方向繊維強化構造を有する前記織物構造の第1の部分であって、前記三方向繊維強化構造を通して前記複数の層が、マトリックス、および前記複数の層を垂直に通る複数の繊維を介して結合された、前記織物構造の第1の部分と、
前記第1の部分を除いた、二方向繊維強化構造を有する前記織物構造の第2の部分であって、前記二方向繊維強化構造を通して前記複数の層が、前記複数の層を垂直に通る繊維を介さずに、互いにマトリックスを介して結合された、前記織物構造の第2の部分と、
を備え
、
前記第1の部分が、比較的高い耐荷重性の取り付け部であり、
前記織物構造が、軸対称であり、
前記織物構造が、円錐形である、物品。
【請求項2】
前記マトリックスが、炭素マトリックスである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記取り付け部が、前
記織物構造の環状端部である、請求項
1に記載の物品。
【請求項4】
前記三方向繊維強化構造において、前記複数の層と、前記複数の層を垂直に通る繊維とが、合わせて総繊維体積を画定し、前記総繊維体積の10%から25%が、前記複数の層を垂直に通る繊維である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記複数の層が、前記第1の部分および前記第2の部分を通して連続している、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記複数の層が、炭化ケイ素繊維である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
エンジンと、
前記エンジンに取り付けられるとともに、
請求項1に記載の物品で形成された軸対称本体を有するノズルと、
を備えた乗物であって、
前記軸対称本体が、
比較的耐荷重性の高い少なくとも1つの取り付け部と、
前記少なくとも1つの取り付け部に隣接する、比較的耐荷重性の低い非取り付け部と、
を備え、
前記
軸対称本体が、前記少なくとも1つの取り付け部に三方向繊維強化構造を有し、前記非取り付け部に二方向繊維強化構造を有する、乗物。
【請求項8】
前記二方向繊維強化構造および前記三方向繊維強化構造の両方が複数の面内繊維を含み、前記三方向繊維強化構造が、前記複数の面内繊維を垂直に通る繊維をさらに含み、前記面内繊維を垂直に通る繊維が、偏向された繊維である、請求項
7に記載の乗物。
【請求項9】
前記三方向繊維強化構造において、前記複数の面内繊維と、前記複数の面内繊維を垂直に通る繊維とが、合わせて総繊維体積を画定し、前記総繊維体積の10%から25%が、前記複数の面内繊維を垂直に通る繊維である、請求項
8に記載の乗物。
【請求項10】
前記物品は、繊維強化複合材料から形成され、前記繊維強化複合材料は、前記少なくとも1つの取り付け部および前記非取り付け部を通して連続しており、前記繊維強化複合材料は、炭素マトリックス/炭素繊維複合材料、および炭素マトリックス/炭化ケイ素繊維複合材料からなる群から選択される、請求項
9に記載の乗物。
【請求項11】
前記非取り付け部が、前記取り付け部を取り囲む、請求項
10に記載の乗物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高速輸送手段の反動エンジンと共に使用されるノズルなどのスラストノズルは、比較的強力で軽量の複合材料で形成されうる。一例として、ノズルの設計形状を形成するために、マンドレルの周りに繊維層が配置される。次に、それらの繊維層は、繊維の周りをセラミックまたはカーボンマトリックスで高密度化される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本開示の一例による物品は、繊維強化織物の複数の層(plies)を有する完成した織物構造(completed fabric structure)を含む。織物構造の第1の部分は、三方向(three-directional)の繊維強化構造を有し、その構造を通して複数の層が、マトリックス、およびそれらの複数の層を垂直に通る複数の繊維を介して一緒に結合される。織物構造の第2の部分は、二方向(two-directional)の繊維強化構造を有し、その構造を通して複数の層が、それらの複数の層を垂直に通る繊維を介さずに、マトリックスを介して互いに結合される。
【0003】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、マトリックスは炭素マトリックスである。
【0004】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第1の部分は、比較的高い耐荷重性の取り付け部である。
【0005】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、完成した織物構造は、軸対称である。
【0006】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、完成した織物構造は、円錐形である。
【0007】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、取り付け部は、完成した織物構造の環状端部である。
【0008】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、三方向繊維強化構造において、複数の層と、それらの複数の層を垂直に通る繊維とが、合わせて総繊維体積を画定し、総繊維体積の10%から25%が、複数の層を垂直に通る繊維である。
【0009】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、複数の層は、第1の部分および第2の部分を通して連続している。
【0010】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、複数の層は、炭化ケイ素繊維である。
【0011】
本開示の一例による乗物は、エンジンと、エンジンに取り付けられたノズルと、を備える。ノズルは、繊維強化複合材料で形成された軸対称本体を有する。軸対称本体は、比較的耐荷重性の高い少なくとも1つの取り付け部と、少なくとも1つの取り付け部に隣接する比較的耐荷重性の低い非取り付け部と、を有する。繊維強化複合材料は、少なくとも1つの取り付け部に三方向繊維強化構造を有し、非取り付け部に二方向繊維強化構造を有する。
【0012】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、二方向繊維強化構造および三方向繊維強化構造の両方が複数の面内繊維(in-plane fibers)を含み、三方向繊維強化構造は、複数の面内繊維を垂直に通る繊維をさらに含み、面内繊維を垂直に通るZ繊維は、偏向(deflected)された繊維である。
【0013】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、三方向繊維強化構造において、複数の面内繊維と、それらの複数の面内繊維を垂直に通る繊維とが、合わせて総繊維体積を画定し、総繊維体積の10%から25%が、複数の面内繊維を垂直に通る繊維である。
【0014】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、繊維強化複合材料は、少なくとも1つの取り付け部および非取り付け部を通して連続しており、繊維強化複合材料は、炭素マトリックス/炭素繊維複合材料、および炭素マトリックス/炭化ケイ素繊維複合材料からなる群から選択される。
【0015】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、非取り付け部は、取り付け部を取り囲む。
【0016】
本開示の様々な特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は、次のように簡単に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】二方向および三方向の両方の繊維強化構造を有する多層繊維強化複合材料から形成された一例の物品を示す図である。
【
図2】例示的な三方向繊維強化構造を示す図である。
【
図3】例示的な二方向繊維強化構造を示す図である。
【
図4】互いに隣接する二方向繊維強化構造と三方向繊維強化構造との間の連続する繊維層を示す図である。
【
図5】二方向および三方向の両方の繊維強化構造を有する、多層繊維強化複合材料で形成されたノズルを有する乗物の一例を示す図である。
【
図6】二方向および三方向の両方の繊維強化構造を有する、多層繊維強化複合材料から形成された別の例の物品を示す図である。
【
図7】乗物本体の構成部品である一例の物品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
高温の最終使用環境にさらされる物品は、炭素/炭素または炭素/炭化ケイ素複合材料などの繊維強化複合材料で形成することができる。物品の形状は、繊維シートまたは繊維テープをマンドレルに巻き付けるか、金型に重ねてから製造し、炭素マトリックスで高密度化することができる。これにより、多層の二次元(two-dimensional)繊維強化構造が形成される。あるいは、物品は、三次元(three-dimensional)繊維強化織物から製造され、次いで炭素マトリックスで緻密化されて、多層三次元繊維強化構造を形成することができる。三次元繊維強化構造は強度を高めることができるが、二次元繊維強化構造よりも製造コストが高くなる。逆に、二次元の繊維強化構造は製造コストが低くなるが、概ね強度が低くなる。
図1は一例の物品20を概略的に示す。本明細書でさらに詳細に説明するように、物品20は、三次元繊維強化部分と二次元繊維強化部分の両方を有する多層繊維強化複合材料22から形成される。
【0019】
図1を参照すると、物品20は、多層繊維強化複合材料22から形成される本体24を含む。この例では、本体24は中心軸Aに関して軸対称である。示される例では、本体24は円錐形であり、概ね第1の軸方向端部24aと、第2の軸方向端部24bと、第1の端部24aから第2の端部24bに発散する中間部24cと、を含む。本体24の内部領域は中空である。円錐形が示されているが、本体24は、代わりに、円筒形、または輪郭のある、または部分的に輪郭のある形状を有してもよいことを理解されたい。
【0020】
本体24は、少なくとも2つの特徴的な部分、すなわち、第1の部分26と、第1の部分26を除いた第2の部分28と、を含む。この例では、部分26は、比較的負荷の重い取り付け部であり、部分28は、比較的負荷の軽い非取り付け部である。部分26は、結合コンポーネント30がボルト締め、クランプ締結などによって取り付けられる本体24の領域である。これに関して、部分26は、構成要素30が本体24を取り付けて支持するリップ、フランジ、インセット、アウトセット、ボスなどであってもよいが、これらに限定されない。本体24の荷重が取り付け部で支持されるので、部分26は重く負荷が掛かり、したがって、負荷の軽い非取り付け部28よりも実質的に高い機械的応力を受ける。しかしながら、部分26/28は、取り付け領域または非取り付け領域に限定されず、部分26/28は、動作構造要件および温度に基づいて構成され得ることが理解されるべきである。理解されるように、単一の取り付け部26が示されるが、物品20のさらなる例は、1つ、2つ、3つ、または3つを超える追加の取り付け部26を含む。
【0021】
部分28は負荷が軽いため、部分28は部分26ほど強くする必要はない。逆に、部分26は比較的負荷が大きいため、部分26は部分28よりも高い強度を必要とする。さらに、部分26/28は負荷レベルに関連付ける必要はなく、代わりに動作構造要件および温度に基づいてもよい。これに関して、切断図に示すように、多層繊維強化複合材料22は、部分26に三方向繊維強化構造32を有し、部分28に二方向繊維強化構造34を有する。
【0022】
図2は、(繊維間に位置する)マトリックス33内に配置された三方向繊維強化構造32の例の断面図を示す。構造32は、面内繊維強化織物38(以下、「繊維38」)からなる複数の繊維層または層36a/36b/36cから形成される。面内繊維38は、一般に、それぞれの繊維層36a/36b/36cのXY平面にある。各繊維層36a/36b/36cは、それ自体が異なる繊維構造を有してもよい。一例の構造は、一方向繊維構造(すべての繊維がX方向またはY方向に配向されている)であるが、以下で後述するように、三方向繊維構造32への変換が可能である限り、二次元織物構造および織布構造などの、これらに限定されないその他の構成を、追加的または代替的に使用することができる。繊維38は、炭素繊維またはセラミック繊維(例えば、炭化ケイ素繊維)などの高強度繊維である。
【0023】
三方向繊維強化構造32はさらに、層36a/36b/36cの面内繊維38に垂直に配向されるとともに、それらの面内繊維を通って延在するZ方向繊維40を含む。マトリックス33と共にZ方向繊維40は、層36a/36b/36cを一緒に結合し、約10°の円錐内の面内繊維38に対してほぼ垂直である。Z方向繊維40は、製造中の処理操作において交差するように配向される。処理操作の例としては、ニードリング、縫製、またはタフティング(tufting)を含む。一例では、Z方向繊維40は、最初は面内にあり、その後、再配向されるように処理操作で偏向(deflected)された繊維である。上に示したように、第2の部分28は第1の部分26を除く。「除く(exclusive)」という用語は、Z方向繊維40のグループのZ方向繊維40のすべてを包含する空間領域を参照するものである。例えば、Z方向繊維40はパターンで提供されてもよい。パターンは、そのパターンの一部であるZ方向繊維40のすべての関連を示している。一例として、長方形の4つの角として等間隔に配置された4つのZ方向繊維40は同じグループの一部であり、長方形パターンの輪郭またはプロファイルは部分28の範囲を構成する。理解されるように、部分28は、隣接するZ方向繊維40の間の局所領域をパターンで包含し、したがって、それらの局所領域は、部分26ではなく部分28の一部である。
【0024】
図3は、(繊維間に位置する)マトリックス33内に配置された二方向繊維強化構造34の一例の断面図を示している。構造34もまた、面内繊維38からなる層36a/36b/36cから形成される。すなわち、層36a/36b/36cは、部分26/28に亘って連続している。二方向繊維強化構造34の層36a/36b/36cは、マトリックス33によって結合されるが、二方向繊維強化構造34は、Z方向繊維を含まない、すなわち、二方向繊維強化構造34を垂直に通る繊維は無い。
図4に示すように、多層繊維強化複合材料22は、層36a/36b/36cが部分26と部分28との間で終端することなく延在するという点で、部分26/28に亘って連続している。
【0025】
面内繊維38は、XY平面において良好な強度を提供する。しかし、Z方向に補強がない場合、最終圧密物品20の二方向繊維強化構造34は、繊維層36a/36b/36cの界面に沿って比較的低い剪断強度を有し、Z方向に比較的低い引張強度を有する。しかしながら、比較的軽負荷の非取り付け部28では高い強度は必要とされないので、二方向繊維強化構造34は最小限の構造要件を提供することができる。
【0026】
三次元繊維構造32のZ方向繊維40は、最終圧密物品20の繊維層36a/36b/36cの界面に沿って比較的高いせん断強度を提供し、Z方向に比較的高い引張強度を提供する。 このように、三次元繊維構造32は、比較的負荷が大きい取り付け部26で使用される。これにより、物品20は、三次元繊維構造32の局部的な強度と、高強度を必要としない部分全体にわたる二次元繊維構造34の比較的低いコストと、を得るために、三次元繊維構造32と二次元繊維構造34との組み合わせを提供する。
【0027】
物品20は、その物品20の所望の形状を生み出すために、繊維層組立プロセスで製造され得る。このようなプロセスは、多層二次元構造の製造のための公知の技術を使用し得る。一例として、軸対称物品の場合、繊維強化層は、繊維テープをマンドレルにらせん状に巻くか、繊維強化シートをマンドレルに配置するか、または繊維強化シートをマンドレルの周りにインボリュート方式で配置することによって組み立てることができる。平らなまたは成形されたパネルなどの非中空物品の場合、繊維テープまたはシートは、物品の形状に対応する型枠内でのレイアッププロセスによって組み立てることができる。
【0028】
繊維シートの所望の厚さへのビルドアップが完了すると、繊維強化シートのすべてが二方向強化構造である。その後、部分26に対応する領域の二方向繊維強化構造は、三方向繊維強化構造に変換される。変換のプロセスには、概ねよく理解されるプロセスであるニードリング、縫製、またはタフティングを含み得る。ニードリングは比較的速く、低コストである。ニードリングでは、Z方向に沿って複数のとげ(barbs)のある針が繊維層に押し込まれる。とげは、途中で繊維の一部をキャッチする。針が通過し続けると、引っかかった繊維が引っ張られ、それによってそれらの繊維が偏向され(deflected)、Z方向に再配向される。三方向繊維構造32および二方向繊維構造34のすべての繊維は、追加のZ方向繊維が作成されない、完成した織物構造を構成する。すなわち、完成した織物構造は、最終物品20となる繊維構造を有する。
【0029】
物品20の場合、ニードリングまたは他の変換プロセスは、領域26のみで実施されて、最初の二方向繊維強化構造を三方向繊維強化構造に変換する。理解されるように、Z方向繊維40のニードル位置間の間隔と、ニードル位置におけるZ方向繊維40の体積分率は、Z方向繊維40の全体の体積を増加または減少させるために調整され、それにより強度を調整する。物品20の一例では、面内繊維38とZ方向繊維40とが一緒になって総繊維体積を画定し、典型的には、総繊維体積の10%から25%がZ方向繊維40である。
【0030】
ニードリングまたは他の変換プロセスは、マトリックス33の緻密化に関して、製造プロセスの進行の異なる時点で実施することもできる。例えば、幾つかのプロセスでは、物品20の所望の形状に最初に組み立てられる繊維強化層は、フェノール樹脂などの樹脂で予め含浸される。次に、組み立てられた予備含浸繊維強化層は、比較的低い温度と圧力で硬化される。次に、この構造を高温で熱分解して揮発性物質を追い出し、樹脂を炭化する。最も一般的には、これに追加の樹脂を含浸させ、硬化させ、熱分解する1回または複数回のサイクルが続いて、炭素マトリックスを追加し、高い密度を達成させる。一例では、ニードリングは、最初の硬化の前に行われる。別の例では、ニードリングは、最初の熱分解の後に行われる。後者の点は、樹脂/炭素構造が幾分堅固であり、加熱装置とニードリングまたは他の処理装置との間を移動するときに損傷することなく構造を無傷に維持するのを容易にするという点で有用である。
【0031】
代替的に、乾燥繊維強化層を使用して、繊維層を所望の厚さおよび形状に構築することができる。特に乾燥炭素繊維強化層の場合、繊維は、最初は完全な炭素であるか、織物ベンダーから「受け取ったまま」の状態の部分的な炭素である可能性がある。部分的に炭化された織物は、酸化前の繊維と呼ばれることもあり、通常、部分的にカーボンに変換されたPANベースの材料である。部分的に炭化された繊維層は、一般に、完全に炭化された繊維層よりも柔軟性があり、取り扱いが容易になる場合がある。繊維層を所望の厚さおよび形状に構築するために、完全炭化または部分炭化織物の乾燥層が使用される一例では、層がマンドレルまたは型枠に適用されるときに、ニードリングまたは他の変換プロセスが実施される。構造は自立していない可能性があり、そのため、損傷なしに他の処理装置に移動するのが難しい場合がある。完全炭化されたまたは部分炭化された織物または樹脂が硬化または非硬化のいずれであっても、Z方向繊維40のすべてが生成されると、三方向繊維構造32および二方向繊維構造34の繊維は、実質的に、完成した織物構造内にある。
【0032】
理解されるように、ポリマーの熱分解による緻密化の代替手段、例えば蒸気浸透を使用することができるが、これに限定されない。さらに、最初の繊維層を変更して、ニードリングを容易にすることができる。例えば、繊維層は、繊維が事前に破断されている延伸破断層(stretch-broken layers)などの不連続繊維を含むことができ、針の力を低減し、繊維の捕捉および再配向を容易にする。更なる変更には、連続繊維層と不連続繊維層を交互に配置することが含まれるが、これに限定されない。
【0033】
図5は、物品20の実施例を示す。この例では、物品20は、人を宇宙空間に運ぶための高速輸送手段などの乗物60の一部である。乗物60は、結合コンポーネント30を介して物品20に取り付けられたエンジン62を含み、物品20は、ここでは円錐形または輪郭のあるスラストノズルの形態である。付加的または代替的に、物品20は、ノズルの下流端に取り付けられるノズル延長部の形態であってもよい。エンジン62は、1つまたは複数の推進薬と、設計に応じて、燃焼室、ポンプ、噴射器、およびその他の既知の構成要素を含むことができる。
【0034】
図6は、物品120の別の例を示す。物品120は、軸方向端部の取り付け部26の代わりに、またはそれに加えて、第1の端部24aから第2の端部24bへと拡散する中間部分24cに取り付け部126があることを除いて、物品20と同じである。この例では、部分126は、非取り付け部128によって取り囲まれた「島」である。上記のように、取り付け部126は三次元繊維構造32から形成され、非取り付け部128は二次元繊維構造34から形成される。ここで、取り付け部126は、支持アームなどの結合コンポーネント130に取り付けられる。支持アームは、(ノズルの実現のために)物品120の偏向を調整するためのアクチュエータとして機能する固定アームまたは可動アームであってもよい。
【0035】
図7は、物品220の別の例を示す。物品220は、乗物本体の構成要素であり、パネルタイプの形状の一例である。この例では、第2の部分228は実質的に平坦であり、第1の部分226は角部である。第2の部分226は、上述のように、二方向繊維強化構造を有する。第1の部分226は、上述したように三方向繊維強化構造を有する。この例では、2つの対向する第2の部分228が対向する側面を形成し、その間に別の第2の部分228があるように、角部は90°の角である。第1の部分226の三方向繊維強化構造は、より高い負荷を受ける可能性がある角部に、比較的高い強度を提供する。平坦な第2の部分228は、比較的低い負荷を受けることができ、したがって、二方向繊維強化構造を有する。
【0036】
図示の例には特徴の組み合わせが示されているが、本開示の様々な実施形態の利点を実現するためにそれらの全てを組み合わせる必要はない。言い換えれば、本開示の一実施形態に従って設計されたシステムは、必ずしも、図面のいずれか1つに示される特徴の全て、または図面に概略的に示される部分の全てを含むとは限らない。さらに、1つの例示的な実施形態の選択された特徴は、他の例示的な実施形態の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0037】
前述の説明は、本質的に限定ではなく例示的なものである。開示された例に対する変形および修正が、必ずしも本開示から逸脱するものではないことが当業者に明らかとなるであろう。本開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。