(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】気道圧の管理のための睡眠および呼吸行動の決定および/または予測のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20240412BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20240412BHJP
A61B 5/087 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61M16/00 370Z
A61B5/16 130
A61B5/087
(21)【出願番号】P 2022551681
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 CA2021050257
(87)【国際公開番号】W WO2021168588
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-08-04
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521195076
【氏名又は名称】ノバレスプ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハナフィラムダリ,ハメド
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ドリスコル,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ハッケバード,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ローチ,デビッド セシル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,クラウス マイケル
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-502670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0257349(US,A1)
【文献】国際公開第2019/030632(WO,A1)
【文献】特表2009-515174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61B 5/16
A61B 5/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助デバイスの動作を制御するためのコントローラであって、
少なくとも1つの機械学習モデルおよび睡眠障害重症度予測器のためのソフトウェア命令およびパラメータを含むメモリユニットと、
1つ以上のセンサに電子的に結合されたプロセッサであって、前記プロセッサが、測定を実行し、
前記1つ以上のセンサによって取得されたセンサデータであって、前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータの測定値に対応するセンサデータを受信し、
前記ユーザが前記呼吸補助デバイスを使用している現在の監視期間中に、測定された空気圧データ、測定された空気流量データ、または、前記測定された空気圧データおよび前記測定された空気流量データの両方を、前記センサデータから取得し、
特徴値を取得するために、前記測定された空気圧データ、前記測定された空気流量データ、または、前記測定された空気圧データおよび前記測定された空気流量データの両方に対して、特徴抽出を行い、
予測睡眠障害重症度機械学習モデルを前記特徴値に適用し、前記睡眠障害重症度予測器を使用して、近づきつつある睡眠障害事象の重症度を予測するために前記ユーザの予測睡眠障害重症度指数を決定し、
少なくとも前記予測睡眠障害重症度指数に基づいて、前記呼吸補助デバイスの制御信号を調整する
ことによって、前記現在の監視期間の間、前記呼吸補助デバイスを制御するための前記制御信号を生成するように構成されている、プロセッサと
を含むコントローラ。
【請求項2】
前記予測睡眠障害重症度指数が、睡眠障害重症度の量を示す値またはクラスを有するように生成される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記予測睡眠障害重症度指数が、予測睡眠時無呼吸事象の長さを示すクラスを有するように生成される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記呼吸補助デバイスの前記制御信号が、前記予測睡眠障害重症度指数が低い値であるとき、第1の量だけ、および前記予測睡眠障害重症度指数が高いレベルであるとき、前記第1の量よりも高い第2の量だけ、前記呼吸補助デバイスから前記ユーザへの空気圧を増加させるように構成される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記特徴値が、1周波または多周波強制振動技術(FOT)を使用して決定される計算された気道インピーダンスからさらに決定される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記予測睡眠障害重症度機械学習モデルは、最初にベースモデルに基づいており、精度を高めるために前記ユーザのために調整された特徴で更新される、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記ユーザの現在の呼吸シグネチャを決定するために、呼吸シグネチャ機械学習モデルを前記特徴値に適用する呼吸シグネチャ分類器を実行するように構成されている、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記現在の呼吸シグネチャが、前記呼吸補助デバイスの正当なユーザのための記憶された呼吸シグネチャと一致しないとき、前記呼吸補助デバイスの動作を停止するように構成されている、請求項7に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記プロセッサが、
前記ユーザの指数信号を決定することと、
前記ユーザの睡眠段階分類指数を決定するために、睡眠段階機械学習モデルを前記特徴値に適用する睡眠段階分類器を実行することと、
前記ユーザが呼吸不全を経験しているかどうか、または呼吸不全が発生すると予測されることを、前記指数信号、前記睡眠段階分類指数、および前記予測睡眠障害重症度指数に基づいて決定することと、
前記ユーザが前記呼吸不全を経験しているとき、または前記呼吸不全が発生すると予測されるときに、前記ユーザの呼吸器の健康を改善するように、前記呼吸補助デバイスの設定を変更することと
を行うように構成されている、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記睡眠段階分類指数および前記予測睡眠障害重症度指数を、それぞれの閾値と比較することによって、前記ユーザが前記呼吸不全を経験しているかどうか、または前記呼吸不全が発生すると予測されることを決定するように構成されている、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記プロセッサが、数学的マッピング関数に従って、前記睡眠段階分類指数および前記予測睡眠障害重症度指数を組合せて組合せ指数を生成し、前記組合せ指数を閾値と比較することによって、前記ユーザが前記呼吸不全を経験しているかどうか、または前記呼吸不全が発生すると予測されることを決定するように構成されている、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記ユーザの呼吸系のベースライン加重インピーダンスと現在の加重インピーダンスとの組合せに基づいて、呼吸指数信号を使用して前記指数信号を決定するように構成されている、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項13】
前記プロセッサが、呼吸状態を表す第1の時変指数と、睡眠ポリグラフ(PSG)状態を表す第2の時変指数との組合せに基づいて、前記指数信号を決定するように構成されている、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記プロセッサが、少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を使用して、前記PSGの状態を表す前記第2の時変指数を決定するように構成されており、前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ信号が、(a)前記ユーザの呼気中のCO2、O2、および/または他のガスの測定値、(b)前記ユーザのECG信号、(c)前記ユーザのEOG信号、および/または(d)前記ユーザのEMG信号のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ信号が少なくとも2つのPSG信号を含むとき、前記少なくとも2つのPSG信号の時系列データを組み合わせて、ベースライン加重インピーダンスおよび現在の加重インピーダンスが決定され、前記組み合わせが、データストリームの対の相互相関、相互スペクトル密度、またはコヒーレンスを使用して行われる、請求項14に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記指数信号が、0.1~60秒の時間ウィンドウにわたって前記測定された空気流または気道インピーダンスの相対パワースペクトル密度から決定される、請求項13または請求項9に記載のコントローラ。
【請求項17】
FOTデータが測定され、前記予測睡眠障害重症度指数を決定するために使用される、請求項5に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記呼吸補助デバイスが、機械式人工呼吸器、CPAP、APAP、BiPAP、またはPAPデバイス、ユーザの肺をきれいにし、ユーザが咳をして分泌物を吐き出すのを補助する呼吸治療送達デバイス、手術室(OR)内の麻酔機械、集中治療室(ICU)人工呼吸器、ならびにCOPDの家庭用人工呼吸器および酸素供給器のうちいずれか1つを含む、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項19】
ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムであって、
少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助デバイスと、
使用中に前記ユーザに前記空気流を提供するために、前記呼吸補助デバイスに結合され、前記ユーザによって装着されるように構成されるエントリ要素と、
請求項1に従って定義される呼吸補助デバイスコントローラと
を含むシステム。
【請求項20】
呼吸補助デバイスによってユーザに提供される空気流を調整するための呼吸補助デバイスの作動方法であって、
前記呼吸補助デバイスが、前記ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータの測定値に対応するセンサデータを受信することと、
前記呼吸補助デバイスのプロセッサが、前記センサデータを受信し、少なくとも1つの機械学習モデルおよび睡眠障害重症度予測器のソフトウェア命令およびパラメータを実行するための前記プロセッサを使用して、測定を実行し、
前記プロセッサが、前記ユーザが前記呼吸補助デバイスを使用している現在の監視期間中に、測定された空気圧データ、測定された空気流量データ、または、前記測定された空気圧データおよび前記測定された空気流量データの両方を、前記センサデータから取得し、
前記プロセッサが、特徴値を取得するために、前記測定された空気圧データ、前記測定された空気流量データ、または、前記測定された空気圧データおよび前記測定された空気流量データの両方に対して、特徴抽出を行い、
前記プロセッサが、予測睡眠障害重症度機械学習モデルを前記特徴値に適用して、近づきつつある睡眠障害事象の重症度を予測するために前記ユーザの予測睡眠障害重症度指数を決定し、
前記プロセッサが、少なくとも前記予測睡眠障害重症度指数に基づいて、前記呼吸補助デバイスの制御信号を調整する
ことによって、前記現在の監視期間の間、前記呼吸補助デバイスを制御するための前記制御信号を生成することと
を含む呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項21】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、睡眠障害重症度の量を示す値またはクラスを有するように、前記予測睡眠障害重症度指数を生成することを含む、請求項20に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項22】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、予測睡眠時無呼吸事象の長さを示すクラスを有するように、前記予測睡眠障害重症度指数を生成することを含む、請求項20に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項23】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、前記
予測睡眠障害重症度指数が低い値であるとき、第1の量だけ、および前記睡眠障害重症度指数が高いレベルであるとき、前記第1の量よりも高い第2の量だけ、前記呼吸補助デバイスから前記ユーザへの空気圧を増加させるように、前記呼吸補助デバイスの前記制御信号を調整することを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項24】
前記特徴値が、1周波または多周波強制振動技術(FOT)を使用して決定される計算された気道インピーダンスからさらに決定される、請求項20~23のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項25】
前記予測睡眠障害重症度機械学習モデルは、最初にベースモデルに基づいており、精度を高めるために前記ユーザのために調整された特徴で更新される、請求項20~23のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項26】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、前記ユーザの現在の呼吸シグネチャを決定するために、呼吸シグネチャ機械学習モデルを前記特徴値に適用する呼吸シグネチャ分類器を実行することを含む、請求項20に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項27】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、前記現在の呼吸シグネチャが、前記呼吸補助デバイスの正当なユーザのための記憶された呼吸シグネチャと一致しないとき、前記呼吸補助デバイスの動作を停止することを含む、請求項26に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項28】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、
前記呼吸補助デバイスが、前記ユーザの指数信号を決定することと、
前記呼吸補助デバイスが、前記ユーザの睡眠段階分類指数を決定するために、睡眠段階機械学習モデルを前記特徴値に適用する睡眠段階分類器を実行することと、
前記呼吸補助デバイスが、前記ユーザが呼吸不全を経験しているかどうか、または呼吸不全が発生すると予測されることを、前記指数信号、前記睡眠段階分類指数、および前記予測睡眠障害重症度指数に基づいて決定することと、
前記呼吸補助デバイスが、前記ユーザが前記呼吸不全を経験しているとき、または前記呼吸不全が発生すると予測されるときに、前記ユーザの呼吸器の健康を改善するように、前記呼吸補助デバイスの
1つ又は複数の設定を変更することと
を含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項29】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、前記指数の各々をそれぞれの閾値と比較することによって、前記ユーザが前記呼吸不全を経験しているかどうか、または前記呼吸不全が発生すると予測されることを決定することを含む、請求項28に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項30】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、数学的マッピング関数に従って
前記睡眠段階分類指数および前記予測睡眠障害重症度指数を組み合わせ、前記組み合わせた指数を閾値と比較することによって、前記ユーザが前記呼吸不全を経験しているかどうか、または前記呼吸不全が発生すると予測されることを決定することを含む、請求項28に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項31】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、前記ユーザの呼吸系のベースライン加重インピーダンスと現在の加重インピーダンスとの組合せに基づいて、呼吸指数信号を使用して前記指数信号を決定することを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項32】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、呼吸状態を表す第1の時変指数と、睡眠ポリグラフ(PSG)状態を表す第2の時変指数との組合せに基づいて、前記指数信号を決定することを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項33】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、少なくとも1つの睡眠ポリグラフ(PSG)信号を使用して、PSG状態を表す前記第2の時変指数を決定することを含み、前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ信号が、(a)前記ユーザの呼気中のCO2、O2、および/または他のガスの測定値、(b)前記ユーザのECG信号、(c)前記ユーザのEOG信号、および/または(d)前記ユーザのEMG信号のうちの1つ以上を含む、請求項32に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの睡眠ポリグラフ信号が少なくとも2つのPSG信号を含むとき、前記少なくとも2つのPSG信号の時系列データを組み合わせて
、ベースライン加重インピーダンスおよび
現在の加重インピーダンスが決定され、前記組み合わせることが、データストリームの対の相互相関、相互スペクトル密度、またはコヒーレンスを使用して行われる、請求項33に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項35】
前記指数信号が、
0.1~
60秒の時間ウィンドウにわたって前記測定された空気流または気道インピーダンスの相対パワースペクトル密度から決定される、
請求項34に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項36】
前記呼吸補助デバイスの作動方法が、ウェルチ法、高速フーリエ変換、または定数Q変換を使用して、前記
相対パワースペクトル密度を決定することを含む、請求項35に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【請求項37】
FOTデータが測定され、前記予測睡眠障害重症度指数を決定するために、および/または前記睡眠段階分類指数を決定するために使用される、
請求項28~36のいずれか一項に記載の呼吸補助デバイスの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/981,541号の利益を主張し、米国仮特許出願第62/981,541号の内容全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
異なる睡眠および/または呼吸行動を決定および/または予測することによって、呼吸デバイスを操作して呼吸デバイスのユーザに呼吸補助を提供するために使用され得る装置および方法についての様々な実施形態が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
急性または慢性呼吸器(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS))または呼吸関連疾患(例えば、睡眠時無呼吸)を患っている個人は、呼吸機能を正常レベルに維持するために補助デバイスを必要とし得る。呼吸補助を提供するには、機械式人工呼吸器、気道陽圧(PAP)デバイスまたは気道持続陽圧(CPAP)デバイスなどの補助デバイスが一般的である。しかしながら、そのような補助デバイスは、正常な呼吸機能を維持することに関して重要であるが、これらのデバイスはまた、ユーザの呼吸器系に与えられる圧力量または流量によるストレスまたは緊張の結果として、ユーザに害および苦痛をもたらす可能性がある。さらに、すべてのデバイスは、現在、呼吸困難または不快感を予測し、予防するために、反応的であり、積極的ではない。したがって、ユーザの害を識別し、最小限に抑えるための方法およびシステムが望まれている。
【0004】
様々な種類の呼吸不全に対する様々なレベルの機械的サポートが存在することが当技術分野で知られている。最も基本的な形態では、酸素の吸気濃度は、酸素の通常の大気中含有量である21%を超えるパーセンテージまで増加させることができる。これは、患者が身体の代謝に必要な酸素を満たすのを助ける。
【0005】
次に高いレベルの換気サポートは、吸入されたガス混合物の酸素含有量が患者の身体の恒常性を維持するのに十分でない場合の問題に対処する。これは、CO2の保持も問題になりつつあることを意味する。これらの種類の呼吸不全の場合、身体の代謝の最終産物としてCO2を排除するために、気道内圧を大気圧よりも積極的に上昇させることを含む、より侵襲的な換気方法が関与する。これは、しっかりと密着するマスクを必要とするので、システムに印加され得る圧力には限界がある。
【0006】
マスクによって促進される吸入酸素の増加および気道圧の上昇がもはや十分ではない場合、気管内密着チューブおよび/または気管切開を使用するいわゆる機械的換気が、換気のために人工呼吸器とともに使用される。人工呼吸器で制御されるパラメータは、患者に適用される各呼吸の量、1分あたりの呼吸数を含み、これらは、統合されると、患者の換気量が、ある時間間隔に沿って、例えば、毎分、制御されることを可能にする。加えて、典型的には、機械的換気はまた、空気中の21%から100%までの吸入酸素の割合、および呼吸サイクルの吸気対呼気比を制御する。これらの手段が、血中酸素およびCO2レベルを安全な生理学的限界内に維持するのに十分でない場合、反対側の呼気終末陽圧(PEEP)およびI/E吸気対呼気比が適用される。換気の監視に関する限り、呼気終末CO2、吸気CO2、吸気O2、呼気O2、動脈血圧/容積図の血液ガス分析、および患者における換気の吸気および呼気の容積の容積測定を含む、当技術分野で知られている様々な方法がある。
【0007】
睡眠時無呼吸において、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のための「ゴールドスタンダード」診断試験は睡眠中に呼吸、心臓、筋肉、および神経学的パラメータを監視する睡眠ポリグラフ(PSG)である。これらの様々な生理学的および神経学的パラメータの監視は、血液の酸素飽和度、換気の休止、睡眠段階の決定のためのEEG活動、および自然筋活動の決定のためのEMGの評価を可能にする。
【発明の概要】
【0008】
本明細書の教示によれば、異なる睡眠および/または呼吸行動を決定および/または予測することによって、呼吸デバイスを操作して呼吸デバイスのユーザに呼吸補助を提供するために使用され得る装置および方法についての様々な実施形態が提供される。例えば、異なる睡眠および呼吸行動は、異なる睡眠段階、呼吸シグネチャ、および予測睡眠障害重症度を含む。
【0009】
広い態様では、本明細書の教示によれば、ユーザに呼吸補助を提供する呼吸補助デバイスの動作を制御するためのコントローラが提供され、コントローラは、ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信するための入力部と、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの分類器または予測器のためのソフトウェア命令およびパラメータを含むメモリユニットと、センサデータを受信するために入力部に電子的に結合されたプロセッサであって、プロセッサが、測定を実行し、ユーザが呼吸補助デバイスを使用している現在の監視期間中に、測定された空気圧データおよび/または測定された空気流データ、ならびに任意選択で、測定されたFOTデータを取得し、特徴値を取得するために、測定されたデータに対して特徴抽出を行い、ユーザの特性を決定するために、特徴値を、少なくとも1つの分類器または予測器によって使用される少なくとも1つの機械学習モデルに適用し、ユーザの決定された特性に基づいて、制御信号を調整することによって、現在の監視期間の間、呼吸補助デバイスを制御するための制御信号を生成するように構成されている、プロセッサとを含む。
【0010】
少なくとも1つの実施形態では、プロセッサは、ユーザの現在の呼吸シグネチャを決定するために、呼吸シグネチャ機械学習モデルを特徴値に適用する呼吸シグネチャ分類器を実行するように構成されている。
【0011】
少なくとも1つの実施形態では、プロセッサは、現在の呼吸シグネチャが、呼吸補助デバイスの正当なユーザの記憶された呼吸シグネチャと一致しないとき、呼吸補助デバイスの動作を停止するように構成されている。
【0012】
少なくとも1つの実施形態では、プロセッサは、ユーザの睡眠段階分類指数を決定するために、睡眠段階機械学習モデルを特徴値に適用する睡眠段階分類器を実行するように構成されている。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、プロセッサは、決定された睡眠段階分類指数に基づいて、呼吸補助デバイスの動作を調整するように構成されている。
【0014】
少なくとも1つの実施形態では、プロセッサは、ユーザの予測睡眠障害重症度指数を決定するために、予測睡眠障害重症度機械学習モデルを特徴値に適用する予測睡眠障害重症度検出器を実行するように構成されている。
【0015】
少なくとも1つの実施形態では、プロセッサは、予測睡眠障害重症度指数に基づいて、呼吸補助デバイスの動作を調整するように構成されている。
【0016】
別の態様では、本明細書の教示によれば、ユーザに呼吸補助を提供するためのシステムが提供され、システムは、少なくとも1つの圧力インパルスまたは連続的な圧力流量を含む空気流を生成する呼吸補助デバイスと、使用中にユーザに空気流を提供するために、呼吸補助デバイスに結合され、ユーザによって装着されるエントリ要素と、本明細書に記載の実施形態のうちの1つ以上に従って定義される呼吸補助デバイスコントローラとを含む。
【0017】
別の態様では、本明細書の教示によれば、呼吸補助デバイスによってユーザに提供される空気流を調整するための方法が提供され、方法は、ユーザの空気流の少なくとも1つの空気流パラメータを測定するためのセンサデータを受信することと、プロセッサで、センサデータを受信し、プロセッサを使用して、測定を実行し、ユーザが呼吸補助デバイスを使用している現在の監視期間中に、測定された空気圧データおよび/または測定された空気流データ、ならびに任意選択で、測定されたFOTデータを取得し、特徴値を取得するために、測定されたデータに対して特徴抽出を行い、ユーザの特性を決定するために、特徴値を、分類器または予測器によって使用される機械学習モデルに適用し、ユーザの決定された特性に基づいて、制御信号を調整することによって、現在の監視期間の間、呼吸補助デバイスを制御するための制御信号を生成することとを含む。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、ユーザの現在の呼吸シグネチャを決定するために、呼吸シグネチャ機械学習モデルを特徴値に適用する呼吸シグネチャ分類器を実行することを含む。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、現在の呼吸シグネチャが、呼吸補助デバイスの正当なユーザの記憶された呼吸シグネチャと一致しないとき、呼吸補助デバイスの動作を停止することを含む。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、ユーザの睡眠段階分類指数を決定するために、睡眠段階機械学習モデルを特徴値に適用する睡眠段階分類器を実行することを含む。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、決定された睡眠段階分類指数に基づいて、呼吸補助デバイスの動作を調整することを含む。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、ユーザの予測睡眠障害重症度指数を決定するために、予測睡眠障害重症度機械学習モデルを特徴値に適用する予測睡眠障害重症度検出器を実行することを含む。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、方法は、予測睡眠障害重症度指数に基づいて、呼吸補助デバイスの動作を調整することを含む。
【0024】
本出願の他の特徴および利点は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本出願の好ましい実施形態を示しているが、本出願の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に記載される様々な実施形態をよりよく理解するために、およびこれらの様々な実施形態がどのように実施され得るかをより明確に示すために、少なくとも1つの例示的な実施形態を示し、次に説明される添付の図面を一例として参照する。図面は、本明細書に記載される教示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
【
図1】本明細書の教示による、異なる睡眠および/または呼吸行動を決定および/または予測することに基づいて、ユーザによる使用中に呼吸補助デバイスを制御または調整するための呼吸補助システムの例示的な実施形態のブロック図である。
【
図2】本明細書の教示による、異なる睡眠および/または呼吸行動を決定および/または予測することに基づいて、ユーザによる使用中に呼吸補助デバイスを制御または調整するための呼吸補助システムの別の例示的な実施形態のブロック図である。
【
図3】呼吸補助システムとともに使用され得る呼吸補助デバイスコントローラの例示的な実施形態のブロック図である。
【
図4A】本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの動作を制御するために患者呼吸シグネチャ決定を利用する睡眠シグネチャ検出方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図4B-4E】それぞれ4Hz、17Hz、43Hz、および79Hzの周波数における異なるFOTについてのリアルタイムでの空気流および空気圧の測定値ならびに抵抗およびリアクタンスの計算のプロットである。
【
図4F-4G】2つの射影ベクトルが、それぞれx軸およびy軸に沿ってプロットされた3人の異なる患者について取得された呼吸データから決定された最大の分散を有し、各患者が一意のデータクラスタ(すなわち、一意の呼吸シグネチャ)を有することを示す、それぞれ主成分分析スコアおよび射影追跡分析のプロットである。
【
図4H】18人の患者から取得されたデータについて、患者呼吸シグネチャ分類器の精度対訓練日数を示すプロットである。
【
図5】本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために患者の睡眠段階決定を利用する呼吸補助制御方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図6A】本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために睡眠障害重症度の予測を利用する呼吸補助制御方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図6B】異なるクラスの2つの睡眠時無呼吸事象の例を示す、患者について測定された流量、圧力、抵抗、およびリアクタンス信号のプロットである。
【
図6C】実際の患者が経験する例示的な閉塞性無呼吸事象の前およびその間に決定された予測信号を示す図である。
【
図6D】患者が経験する例示的な閉塞性無呼吸事象の前およびその間の
図6Cの予測信号に対応する実際の呼吸測定値を示す図である。
【
図6E】実際の患者が経験する例示的な中枢性無呼吸事象の前およびその間に決定された予測信号を示す図である。
【
図6F】患者が経験する例示的な中枢性無呼吸事象の前およびその間の
図6Eの予測信号に対応する実際の呼吸測定値を示す図である。
【
図7】本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために、呼吸不全検出と、睡眠段階分類指数および予測睡眠障害重症度指数のうちの少なくとも1つとを利用する呼吸補助制御方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図8】本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために、呼吸不全予測と、睡眠段階分類指数および予測睡眠障害重症度指数のうちの少なくとも1つとを利用する呼吸補助制御方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図9A】本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために、呼吸不全予測と、睡眠段階分類指数および予測睡眠障害重症度指数のうちの少なくとも1つとを利用する呼吸補助制御方法の別の例示的な実施形態のフローチャートである。
【
図9B】無呼吸事象の予測持続時間/強度と、実際の真の持続時間/強度との間の相関のプロットである。
【0027】
本明細書に記載される例示的な実施形態のさらなる態様および特徴は、添付の図面とともに以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書の教示による様々な実施形態が、特許請求される主題の少なくとも1つの実施形態の一例を提供するために、以下で説明される。本明細書に記載されるいかなる実施形態も、特許請求される主題を限定しない。特許請求される主題は、以下に記載されるデバイスもしくは方法のいずれか1つの特徴のすべてを有するデバイスもしくは方法、または本明細書に記載されるデバイスおよび/もしくは方法の複数もしくはすべてに共通の特徴に限定されない。任意の特許請求される主題の実施形態ではない、本明細書に記載されるデバイスまたは方法が存在し得る可能性がある。本明細書において請求されていない、本明細書に記載されている任意の主題は、別の保護手段、例えば、継続特許出願の主題であり得、出願人、発明者、または所有者は、本明細書におけるその開示によって、任意のそのような主題を放棄(abandon)、放棄(disclaim)、または公衆に提供することを意図しない。
【0029】
説明を簡単かつ明瞭にするために、適切であると見なされる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、図面間で参照番号を繰り返す場合があることを理解されたい。加えて、本明細書に記載されている実施形態の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、本明細書で説明する実施形態は、これらの特定の詳細なしで実施されてもよいことが当業者によって理解されよう。他の例では、本明細書で説明する実施形態を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素は詳細には説明されていない。また、説明は、本明細書に記載される実施形態の範囲を限定するものと見なされないものとする。
【0030】
また、本明細書で使用される「結合された」または「結合する」という用語は、これらの用語が使用される状況に応じて、いくつかの異なる意味を有する可能性があることにも留意されたい。例えば、結合されたまたは結合するという用語は、機械的、流体的、または電気的意味を有し得る。例えば、本明細書で使用されるように、結合されたまたは結合するという用語は、2つの要素またはデバイスが、互いに直接接続され得るか、または、例えば、特定の状況に応じて、電気信号、電気的接続、機械的要素、流体、もしくは流体輸送経路を介して、1つもしくは複数の中間要素もしくはデバイスを介して互いに接続され得ることを示すことができる。
【0031】
また、本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、包括的な「または」を表すことが意図されることにも留意されたい。すなわち、「Xおよび/またはY」は、例えば、XまたはYまたはその両方を意味することが意図される。さらなる例として、「X、Y、および/またはZ」は、X、Y、Z、またはそれらの任意の組合せを意味することを意図する。
【0032】
本明細書で使用される「実質的に」、「約」、および「およそ」など、程度の用語は、最終結果が大幅に変更されないような変更された用語の妥当な量の偏差を意味することに留意されたい。また、これらの程度の用語は、限定はしないが、1%、2%、5%、または10%など修正された用語の偏差が、修正された用語の意味を否定しない場合、修正された用語の偏差を含むと解釈され得る。
【0033】
さらに、本明細書における端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また、そのすべての数および端数は、例えば、限定はしないが、1%、2%、5%、または10%など、最終結果が有意に変化しない場合、参照されるある量の数までの変動を意味する「約」という用語によって修正されると推定されることも理解されたい。
【0034】
本明細書の教示によって説明されるデバイス、システム、または方法の例示的な実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せとして実装され得る。例えば、本明細書に記載の実施形態は、少なくとも部分的に、1つ以上のコンピュータプログラムを使用して、少なくとも1つの処理要素および少なくとも1つの記憶要素(すなわち、少なくとも1つの揮発性メモリ要素および少なくとも1つの不揮発性メモリ要素)を含む1つ以上のプログラマブルデバイス上で実行することによって実装され得る。ハードウェアは、1つのセンサ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ボタン、キー、スライダ、またはそれらの任意の組合せを含む1つ以上の入力デバイス、ならびにハードウェアの実装形態に応じて、制御信号を送信するための出力ポート、ディスプレイ、スピーカ、プリンタ、またはそれらの任意の組合せを含む1つ以上の出力デバイスを含み得る。
【0035】
オブジェクト指向プログラミングなど、高レベルプロシージャ言語で書かれたソフトウェアを介して実装され得る、本明細書に記載される実施形態のうちの少なくとも一部を実装するために使用されるいくつかの要素があり得ることにも留意されたい。したがって、プログラムコードは、C++、C#、JavaScript、Python、または任意の他の適切なプログラミング言語で記述されてもよく、オブジェクト指向プログラミングの当業者に知られているように、モジュールまたはクラスを含んでいてもよい。代替的に、または追加として、ソフトウェアを介して実装されるこれらの要素のうちのいくつかは、必要に応じて、アセンブリ言語、機械語、またはファームウェアで記述されてもよい。どちらの場合でも、言語は、コンパイル型言語またはインタープリタ型言語でもよい。
【0036】
これらのソフトウェアプログラムの少なくともいくつかは、限定はしないが、本明細書で説明する実施形態のうちの少なくとも1つの機能を実装するために必要なプロセッサ、オペレーティングシステム、ならびに関連するハードウェアおよびソフトウェアを有するデバイスによって可読である、ROM、磁気ディスク、光ディスク、USBキーなどのコンピュータ可読媒体上に記憶され得る。ソフトウェアプログラムコードは、デバイスによって読み取られると、本明細書に記載の方法の少なくとも1つを実行するために、新しい特定のあらかじめ定義された方法(例えば、特定用途向けコンピュータ)で動作するようにデバイスを構成する。
【0037】
本明細書に記載の実施形態のデバイス、システム、および方法に関連付けられたプログラムの少なくともいくつかは、1つ以上の処理ユニットのための、プログラムコードなどのコンピュータ使用可能命令を担持するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品中に分散することが可能であり得る。媒体は、限定はしないが、1つ以上のディスケット、コンパクトディスク、テープ、チップ、ならびに磁気および電子記憶装置などの非一時的な形態を含む様々な形態で提供され得る。代替の実施形態では、媒体は、限定はしないが、有線送信、衛星送信、インターネット送信(例えば、ダウンロード)、媒体、デジタル信号およびアナログ信号など、本質的に一時的であり得る。コンピュータ使用可能命令はまた、コンパイルされたコードおよびコンパイルされていないコードを含む、様々なフォーマットであり得る。
【0038】
「ユーザ」という用語は、呼吸補助デバイスを使用している人を包含することに留意されたい。いくつかの場合には、ユーザは、自宅または非医療環境で呼吸補助デバイスを使用している個人であってもよい。他の場合には、ユーザは、例えば、診療所または病院などの医療環境において呼吸補助デバイスを使用している患者であってもよい。
【0039】
強制振動技術(FOT)としても知られるオシロメトリは、ユーザが正常に呼吸している間に気道圧力に変動を重畳し、結果として生じる圧力および流量を測定して、ユーザの呼吸器系の機械的特性を決定することによって、呼吸診断の分野内で実行され得る。例えば、測定された圧力および流量は、次いで、ユーザの呼吸器系の機械インピーダンスを決定するために使用され得る。この機械インピーダンスは、周波数領域における流量に対する振動圧力の比であり、周波数の関数として複素数量(実数成分および虚数成分を有する)として表すことができる。より具体的には、機械インピーダンスの実数部を呼吸器系抵抗(Rrs)とみなし、虚数部を呼吸器系リアクタンス(Xrs)とみなすことができる。FOTは、1~5HzのFOT周波数を使用して、閉塞性無呼吸事象と中枢性無呼吸事象とを区別する方法として、現代のCPAP機械において一般に使用される。
【0040】
呼吸器系の複素機械インピーダンスが記載されるとき、一般に、対象となる周波数範囲にわたって平均Rrsおよび平均Xrs挙動を提示することが一般的である。これらの平均値は、通常、複数の有限の重複する時間ウィンドウから取得された測定された圧力値および流量値に対してフーリエ変換を実行することなどによって、周波数領域法を使用して推定されたインピーダンス値を平均することから、または短期間の重複する期間を効果的に検査することもできる再帰的時間領域法から計算された時間経過にわたって平均することから計算することができる。
【0041】
しかしながら、本発明者らは、呼吸中にRrsおよびXrsに生じる時間的変動が、個人の呼吸およびその呼吸器系に関連する情報を含み得ることを以前に決定した。RrsおよびXrsの時間的変動は、それぞれRvarおよびXvarと表すことができ、短時間フーリエ変換(STFT)またはウェーブレット変換などの周波数領域技術を使用して決定することができる。吸気と呼気との間のXvarの振幅の変動は呼吸器の健康の徴候を含むことが確立されているが、本発明者らは、FOTを使用してRvarおよびXvarを判定しているとき、ならびにRvarおよびXvarが経時的に変化しているとき、RvarとXvarとの間に連鎖が存在することを以前決定した。
【0042】
例えば、喘息患者では抵抗の変動が増加し、COPD患者ではリアクタンスの変動が増加することが知られている。しかしながら、本発明者らは、COPD患者に対するリアクタンスのこれらの変動の一部が抵抗の変動に漏れ込むことを以前発見し、本発明者らはまた、これらの両方がより正確な診断および監視のために考慮され得ることを以前発見した。本発明者らはまた、リアクタンスの変動が抵抗の変動に漏れるのと同じ状況が喘息患者で起こり、より効果的な治療のために、リアクタンスと抵抗の両方が、診断および意思決定に含まれる必要があることを以前に見出した。
【0043】
したがって、RrsおよびXrsを別々に監視する従来の技術は、個人の肺の健康に関する必須情報を欠いている可能性がある。しかしながら、本発明者らによって以前に決定されたように、RvarおよびXvarが監視され得、RvarとXvarとの間の連鎖が、RvarおよびXvarが決定される人が特定の呼吸シグネチャを有するとき、その人が何らかの睡眠段階にあるとき、その人が呼吸不全を経験しているとき、呼吸事象が起ころうとしているときのその人の睡眠障害重症度を予測するとき、またはその任意の組合せなど、いくつかの状況を決定するために使用され得る状況が存在する。これは、この分野の他者によって以前に決定されていない。
【0044】
呼吸不全は、呼吸閉塞または小気道など、人または動物の呼吸器系の負の変化をもたらし得るすべての疾患および状態を包含すると理解され得る。いくつかの場合には、呼吸不全は、OSAもしくは喘息発作の間などに起こる一時的な呼吸事象であり得るか、または肺癌、嚢胞性線維症もしくは慢性閉塞性肺疾患などの慢性呼吸状態によるものであり得る。
【0045】
本明細書の教示によれば、患者の呼吸シグネチャの決定、患者の睡眠段階分類の決定、患者の睡眠障害重症度の予測、またはそれらの任意の組合せなど、異なる呼吸行動および睡眠行動をインテリジェントに監視、分析、および決定および/または予測するための様々な実施形態が提供される。この方法は、機械学習および他の高度な計算技術を使用して、正確な教師あり分類および予測モデルを構築することを伴う。これらのモデルのいくつかは、(a)空気圧および空気流のみ、(b)FOT測定気道インピーダンスのみ、(c)EEGなどのプレチスモグラフィ、または(d)(a)、(b)、および(c)のうちの2つ以上の組合せのいずれかの測定を採用する。
【0046】
本発明者らは、RvarとXvarとの間のリンクまたは関係を使用して、呼吸不全がいつ発生しているかを検出し、そのような場合に、個人が再びより正常に呼吸するのを助けるために是正措置を講じるために使用される呼吸指数を決定することができることを以前に決定した。アクションは、限定はしないが、ユーザの血液中の低酸素化または低炭酸ガス血症を回避するためにユーザの気道を開いた状態に維持するために適用される様々な技術を含み得る。例えば、COPD患者の場合、XvarおよびRvarの組合せが呼吸不全を示すとき、呼吸補助デバイスは、その吸気圧および呼気圧を調整するように制御され得る。加えて、呼吸補助デバイスは、患者に提供されるガスの混合物を変更するように制御されてもよく(例えば、COPDにおいて、患者に提供される酸素の濃度の変化があり得る)、その特定の疾患を軽減するのにも役立つ。指数は、RvarとXvarとの組合せであってもよい。
【0047】
しかしながら、本明細書の教示によれば、呼吸指数を、呼吸補助デバイスの有効性を向上させるために、睡眠段階分類指数および/または予測睡眠障害重症度指数と組み合わせることができる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では、組合せは、すでに発生している呼吸事象を補償するために、より高い信頼度で是正措置を実行するために、別々の指数を対応する閾値レベルと比較することに基づいてもよい。
【0049】
あるいは、少なくとも1つの実施形態では、これらの指数を組み合わせて、より高い信頼度で是正措置を実行するかどうかを決定するために使用することができる組合せ指数を生成することができる。従来、これは行われたことがなく、有利には、これを使用して、より短い期間に個人の呼吸器の健康状態を改善することができる。
【0050】
RvarとXvarとの間のリンクまたは関係は、物理的要素を使用して作られたベンチトップ肺シミュレータを使用して決定することができ、その例は、2018年11月9日金曜日に提出された「BENCHTOP Within-breath Dynamic LUNG SIMULATOR」と題する米国仮特許出願第62/758,394号、および2019年11月8日金曜日に出願された「BENCHTOP Within-breath Dynamic LUNG SIMULATOR」と題する米国非仮特許出願第16/678,153号に記載され、2020年5月14日に米国特許出願公開番号U20200152089A1として公開され、これらの各々の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明者らはまた、RvarとXvarとの間のリンクまたは関係を、特定の生理学的および/または神経学的パラメータの測定とともに使用して、呼吸不全がいつ起こるかを予測するために使用することができる呼吸指数を決定することができ、そのような場合、個人が予測された呼吸不全を経験する可能性を低減するか、または少なくとも呼吸不全の強度を低減するための是正措置を講じることができることを以前に決定した。例えば、RvarおよびXvarの変化、したがってZvarの変化、ならびにそれらの加重バージョンRvar,w、Xvar,w、およびZvar,wは、呼吸不全がいつ起こるかを予測するために、生理学的測定値(例えば、CO2)および/または神経学的測定値(例えば、EEG)と相関し得る。この場合、是正措置は、個人が呼吸不全を経験し始めた後にのみ是正措置がとられるので、本質的に反応的である前述の呼吸検出技術とは対照的に、呼吸不全を回避するために積極的である。しかしながら、本明細書の教示によれば、呼吸指数を、呼吸補助デバイスの有効性を向上させるために、睡眠段階分類指数および/または予測睡眠障害重症度指数と組み合わせることができる。少なくとも1つの実施形態では、組合せは、すでに発生している呼吸事象を補償するために、より高い信頼度で積極的な是正措置を実行するために、別々の指数を対応する閾値レベルと比較することに基づいてもよい。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、これらの指数を組み合わせて、より高い信頼度で積極的な是正措置を実行するかどうかを決定するために使用することができる組合せ指数を生成することができる。従来、予測に基づく積極的な是正措置は行われておらず、有利には、個人の呼吸器の健康状態が悪化せず、かつ/または許容限度内にとどまるように、これが使用され得る。
【0052】
是正措置を実施することを組み込む前述の態様のいずれかにおいて、一般に数字である、決定される指数に応じて、呼吸補助デバイスの動作パラメータは、次いで、呼吸補助デバイスのユーザが呼吸不全を経験しないか、または少なくとも最小限の呼吸不全を経験することを確実にするように調整され得る。したがって、これらの指数のうちの少なくとも1つを使用して、呼吸補助デバイスの動作を制御するために使用されるフィードバック制御信号を生成することができる。これらの指数は、呼吸指数信号と総称され得る多くの数が生成される所与の期間について決定され得る。呼吸指数信号は、所与の期間にわたって呼吸補助デバイスを制御するために使用され得る。
【0053】
したがって、一態様では、本明細書の教示は、ユーザの呼吸シグネチャのリアルタイム決定、ユーザの睡眠段階の分類、および/または予測される睡眠障害重症度の分類を提供し、次いで、それを使用して、呼吸補助デバイスの動作を調整すること、ならびにユーザの呼吸を監視するために、および/またはユーザの呼吸障害を診断するために使用され得るデータをユーザレポートにおいて提供することのうちの少なくとも1つを実行するために使用され得る。例えば、ユーザが夜に眠ったときに収集されたデータについてレポートを決定することができ、例えば、ユーザまたは医療専門家が、自身の呼吸および睡眠の健康に関するデータをレビューすることができるように、朝などに、レビューのためにレポートをユーザまたは医療専門家に提供することができる。
【0054】
別の態様によれば、本教示は、呼吸指数の決定および呼吸指数と規範値との比較に基づいて、呼吸不全を検出するため、または少なくとも1つの他の生理学的信号が測定されたときの呼吸不全を予測するための肺力学のリアルタイム評価を提供し、これは、少なくともいくつかの場合、閾値によって表され得、また、より高い信頼度で是正措置または積極的な修正措置をとるかどうかを決定するために呼吸指数の分析に睡眠段階分類指数および/または予測睡眠障害重症度指数を組み込むこともできる。呼吸指数、睡眠段階分類指数、および予測睡眠障害重症度指数は、連続的に決定され、呼吸不全を低減、軽減、または回避するために、呼吸補助デバイスの設定を連続的に管理するために使用され得る。
【0055】
以前は、呼吸不全が起こりそうな前に、自動化された方法で呼吸補助デバイスのユーザの呼吸不全を予測することは不可能であった。したがって、呼吸補助デバイスは、従来、呼吸補助デバイスの動作パラメータを設定し、次いで、時々調整する医療従事者によって手動で制御されていた。これは、ユーザが呼吸不全を経験し始めた場合、呼吸補助デバイスの動作を調整するために応答時間が重要であるいくつかの状況において致命的であり得るユーザが遭遇する呼吸不全の影響または量を低減するように呼吸補助デバイスを自動的に調整することが従来は不可能であったので、有害であった。さらに、そのような従来の技術は、差し迫った呼吸不全の予測さえもできない。
【0056】
最近では、従来のFOT/オシロメトリを含む他の技術が、呼吸補助デバイスのパラメータを自動的に調整するために使用されている。しかしながら、従来のFOTは、平均化を使用し、したがって、任意の検出が起こり得る前に、複数秒の遅延が存在する。これはまた、重大な呼吸不全が差し迫っているか、または発生しているとき、ユーザの健康に有害である。さらに、空気流または酸素レベルを感知するだけのような技術を利用する呼吸補助デバイスの自動調整は、いくつかの状況において、完全な呼吸器系の健全性の十分な情報を提供しないことがある。
【0057】
本明細書の教示に従って、呼吸補助デバイスのユーザの呼吸、睡眠段階、および予測睡眠障害重症度指数のうちの1つ以上を決定し、ユーザが呼吸不全を経験していないある範囲内にユーザの呼吸器の健康を維持するように呼吸補助デバイスを制御するための制御信号を生成する技術は、使用が自発的である呼吸補助デバイスの使用の採用率を増加させることになると考えられる(すなわち、睡眠時無呼吸デバイスに関しても同様)。この方法はまた、信頼性を高めて、呼吸不全を比較的迅速に検出または予測することができ、また、ユーザが遭遇する呼吸不全のレベル/量を低減するために、または呼吸不全が起こらないようにするために、呼吸補助デバイスを迅速に制御するために、反応的または積極的なステップをとることができるので、ユーザが遭遇するまたは間近に遭遇する任意の呼吸不全に対する呼吸補助デバイスの適応速度の増加などの技術的利点も提供する。これは、呼吸不全の増加が、ユーザにとって、致命的ではないにしても、重大な結果をもたらし得るいくつかの場合に、重大であり得る。
【0058】
次に
図1を参照すると、呼吸シグネチャを決定すること、睡眠段階分類を実行すること、および睡眠障害重症度を予測することのうちの少なくとも1つを実行するための呼吸補助システム100のブロック図が示されている。少なくとも1つの実施形態では、呼吸補助システム100はまた、本明細書の教示の少なくとも1つの実施形態に従って、呼吸不全の検出および/または予測に基づいて、強制振動技術を使用して呼吸補助デバイスを制御または調整するために使用され得る。システム100は、空気輸送経路104および108、ならびに、例えば喉頭チューブ、呼吸マスク、または気管内チューブ109(以下、まとめて「エントリ要素」と呼ぶ)を介してユーザ110に提供される空気流を生成する呼吸補助デバイス102を含む。空気流は、空気の少なくとも1つの圧力パルス、連続した空気流、または空気の圧力パルスと連続した空気流との重ね合わせとすることができる。空気流は、呼吸補助デバイス102上の対応する入力制御を介して呼吸補助デバイス102の空気圧および流量のうちの少なくとも一方を調整することによって制御可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、呼吸補助デバイス102は、ユーザに呼吸サポートを提供するための機械式人工呼吸器であってもよい。他の実施形態では、呼吸補助デバイス102は、ユーザに呼吸サポートを提供するためのCPAP、APAP、BiPAP、またはPAPデバイスであってもよい。他の実施形態では、呼吸補助デバイス102は、限定はしないが、ユーザの肺をきれいにし、ユーザが咳をして分泌物を吐き出すのを補助する呼吸治療送達デバイスなどの呼吸治療送達デバイスであってもよい。他の事例では、呼吸補助デバイス102は、OR内の麻酔機械、ICU人工呼吸器、COPDの家庭用人工呼吸器および酸素供給器、ならびに呼吸器疾患を有するユーザに呼吸補助を提供する任意の他の機械であり得る。したがって、一般に、呼吸不全の検出および/または予測、ならびに呼吸不全を低減、除去、または先制するために取られる積極的または反応的アクションのための本明細書に記載される教示は、侵襲的(チューブ付き)および非侵襲的(チューブなし)換気を含むすべてのタイプの換気とともに使用され得る。
【0060】
呼吸補助デバイスコントローラ106は、空気輸送経路104(流路104とも呼ばれ得る)を介して呼吸補助デバイス102に結合され、呼吸補助デバイス102から空気流を受け取り、空気輸送経路108およびエントリ要素109を介してユーザ110に空気流を送達する。本開示における「空気」という用語は、一般に、システム100を通るガスおよび他の浮遊粒子の流れを示すために使用されることに留意されたい。例えば、機械式人工呼吸器の出力は、空気以外の気体および/または蒸気、例えば、限定はしないが、典型的には蒸気であるが、気体であってもよい麻酔薬を含み得る。PAPデバイスでは、水蒸気を空気と組み合わせることができる。呼吸補助デバイス102のいくつかの実施形態では、気体薬剤(すなわち、ステロイド、酸素、窒素など)が空気流に加えられ、呼吸器の健康および/または測定された快適性レベルに基づいて、換気下で患者に提供され得る。例えば、薬剤は、ユーザのCPAP体験を改善するために毎日使用され得る適切な量のステロイドを含み得る。空気流は、エントリ要素109を介してユーザ110に送達され得る。本実施形態では、エントリ要素109は、代替マスクとして、ユーザ110の鼻および口の上、鼻のすぐ上、またはユーザ110の鼻孔に隣接するか、またはその内側に装着されるマスクであってもよい。他の実施形態では、エントリ要素109は、挿管または気管切開術によって気管内に挿入される気管内チューブであってもよい。
【0061】
呼吸デバイス102が機械式人工呼吸器である実施形態では、空気輸送経路104(流路とも呼ばれ得る)だけではなく、実際には2つの空気経路(図示せず)があり、経路のうちの一方が吸気に使用され、これらの経路のうちの他方が呼気に使用される。
図1に示す経路は、呼吸補助デバイス102がPAPデバイスである場合に適用される。したがって、呼吸補助デバイス102は、空気が空気輸送経路104から空気輸送経路108に流れることを可能にする少なくとも1つの経路を提供することが理解され得る。呼吸補助デバイスコントローラ106が、呼吸補助デバイス102からユーザ110への空気流経路と少なくとも部分的にまたは完全に「インライン」で組み込まれる実施形態があり得ることがさらに理解され得る。
【0062】
本例の実施形態では、呼吸補助デバイスコントローラ106は、ユーザ110に送達されている空気流の様々なパラメータを測定するための1つ以上のセンサ(図示せず)を備える。例えば、センサは、ユーザ110によって装着されたマスクに取り付けることができ、これは、センサから取得されたセンサデータのための理想的なSNRをもたらし得る。あるいは、例えば超音波センサなどのセンサは、チューブ経路内に取り付けることができる。いずれの場合も、これらのセンサは、吸気と呼気の両方に関連付けられた空気流パラメータを測定するために使用することができる。しかしながら、PAP機械の場合、そのようなセンサは、チューブ108が吸気流を運ぶだけなので、マスクの近くに配置されるが、機械式人工呼吸器では、センサは、マスクまたは気管内チューブに取り付けることができ、あるいは、吸気経路および呼気経路のために使用されるチューブに沿った任意の場所に配置することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、呼吸補助デバイスコントローラ106は、これらのセンサを含まなくてもよく、代わりに、呼吸補助デバイス102が空気流パラメータを測定するためのセンサを備えている場合もあるので、呼吸補助デバイス102からこれらのパラメータを読み取ってもよい。呼吸補助デバイスコントローラ106は、ユーザ110に提供される空気流のための空気圧の変化を提供するために、強制振動信号を提供するためのデバイスをさらに備え得る。いくつかの実施形態では、空気圧と空気流の両方を測定するためのセンサが存在する。他の実施形態では、2つ以上のセンサが呼吸補助デバイスコントローラ106とともに使用され得るように、専用センサが、空気流または空気圧を測定するために使用され得る。例えば、いくつかのセンサ技術は、レーザを使用して動きを検出するか、または超音波を使用して、1つのセンサを使用して圧力と流量の両方を検出することができる(測定された流量は、測定された圧力を既知の抵抗で割ることから決定することができるため)。
【0064】
空気量、空気圧、および空気流量などの測定された空気流パラメータは、呼吸補助デバイスコントローラ106によって、呼吸補助デバイス102の動作を調整するためのフィードバックとして使用され得る制御信号112を生成するために使用され得る。例えば、呼吸補助デバイスコントローラ106は、生成される制御信号が、方法300(
図4A参照)に従ってユーザの呼吸シグネチャを決定すること、方法350(
図5参照)などにおいてユーザの睡眠段階を決定すること、および/または方法400(
図6A参照)などにおける予測睡眠障害重症度を決定することに基づき得る、制御方法を採用することができる。他の実施形態では、例えば、いつ呼吸不全が発生するかの検出を実行し、次いで、方法450(
図7参照)などにおいて、睡眠段階分類指数および/または予測睡眠障害重症度指数を使用して、制御信号を生成して、ユーザがもはや呼吸不全を経験しないように、是正措置を提供する方法があり得る。
【0065】
あるいは、いくつかの実施形態では、呼吸補助コントローラ106は、方法500(
図8参照)もしくは方法600(
図9A参照)などの睡眠段階分類指数および/または予測睡眠障害重症度指数を組み込む制御方法を採用して、例えば、呼吸不全がいつ起こるかを予測し(例えば、約数ミリ秒から約5分までなど、次の数分まで)、次いで、ユーザが予測された呼吸不全を経験しないように、積極的アクションを提供するために制御信号を生成することができる。そのような実施形態では、追加の測定信号を使用して、予測方法を実施することができる。例えば、追加の測定信号は、睡眠ポリグラフ(PSG)中に取得され、以後PSG信号と呼ばれる生理学的、または、および/または神経学的信号のうちの1つ以上であり得る。PSG信号は、少なくとも1つの生理学的信号(限定はしないが、眼球運動(EOG)、筋肉活動または骨格筋活性化(EMG)、および心臓信号(ECG)など)、および/または少なくとも1つの神経学的信号(限定はしないが、EEGなど)を含み得る。そのような信号を測定するためのセンサは、
図1に示されていないが、そのようなセンサは、当業者に知られており、システム100に追加することができる。
【0066】
検出と予測の実施形態の両方において、制御信号112は、呼吸不全事象の重症度を防止または低減するために、呼吸補助デバイス102の調整可能なパラメータのうちの1つ、2つ、数個、またはすべてを調整するために使用され得る。例えば、調整され得るパラメータは、空気流の流量、空気流の体積、空気流の圧力、空気流の特定の変化の頻度(空気流の流量、体積、圧力、および振幅の変化など)、空気流の振幅、および/または呼吸補助デバイス102によって生成され得る空気流の位相を含む。
【0067】
次に
図2を参照すると、本明細書の教示による呼吸不全の検出および/または予測に基づいて、ユーザ210による使用中に呼吸補助デバイス202を制御または調整するために、呼吸シグネチャ、睡眠段階分類指数、および/または予測睡眠障害重症度指数を決定し、これらの項目のうちの1つ以上を潜在的に使用するための呼吸補助システム200の例示的な実施形態のブロック図が示されている。
図1の要素に対応する
図2の要素は、同様に番号が付けられている。呼吸補助システム100の構成と同様に、呼吸補助デバイス202は、空気輸送経路204および204’ならびに呼吸チューブ208を介してユーザ210に提供される空気流を生成し、空気流は、いくつかの条件下で呼吸補助デバイス202の動作を修正するために呼吸補助デバイスコントローラ206によって監視される。
図1と同様に、空気流は、エントリ要素209を介してユーザ210に送達され得る。この例示的な実施形態では、エントリ要素209は、ユーザ210の鼻(すなわち、鼻孔)および任意選択でユーザの口と流体的に結合するために装着されるマスクであってもよい。他の実施形態では、エントリ要素209は、挿管または気管切開術によって気管内に挿入される気管内チューブであってもよい。
【0068】
図2は、使用され得る様々なシステム構成要素に関する追加の詳細を提供する。いくつかの実施形態では、呼吸補助デバイス202は、呼吸サポートを提供するための機械式人工呼吸器であってもよい。他の実施形態では、呼吸補助デバイス202は、呼吸サポートを提供するためのPAPデバイスであってもよい。呼吸補助デバイス102について説明したように、呼吸補助デバイス202には他のオプションが利用可能である。
【0069】
本実施形態では、呼吸補助デバイス202は、機械式人工呼吸器であり、呼吸補助デバイス202を出て戻る空気流のための空気流経路をそれぞれ提供するための吸気チューブ204および呼気チューブ204’を含む。吸気チューブ204および呼気チューブ204’は、チューブコネクタ214を使用して、1つの空気流経路で呼吸補助デバイスコントローラ206に接続され得る。次いで、空気流は、呼吸補助デバイスコントローラ206の別の空気流経路を通ってユーザ210に流れ得る。吸気チューブ204からの空気流は、所望の周波数および強度で空気の振動を生成するモータまたはアクチュエータ(以下、両方の場合を指して「アクチュエータ」と呼ぶ)216によって生成される強制振動からの摂動を受け得る。アクチュエータ216は、例えば、ラウドスピーカ、電磁石、圧電デバイス、ピストン、およびモータのうちの1つとすることができる。アクチュエータの選択は、デバイス206の物理的サイズなどの設計仕様、ならびに部品表(BOM)に課される制限に依存し得る。いくつかの実施形態では、アクチュエータ216は、呼吸補助デバイス202に含まれ、呼吸補助デバイスコントローラ206には含まれない場合があることに留意されたい。あるいは、いくつかの実施形態では、呼吸補助デバイス202と呼吸補助デバイスコントローラ206の両方は、別個のアクチュエータを含むことができる。
【0070】
振動圧力信号は、FOT測定中に空気圧および空気流測定を実行するのに実用的な任意の周波数であり得る振動周波数を有する。例えば、周波数は、限定はしないが、約0.001Hz~約100MHzの範囲、またはさらには1THzまでの範囲を含むことができる。いくつかの実施形態において、周波数範囲は、約5Hz、10Hz、または20Hzのより低い周波数から、約100MHzまたは1THzのより高い周波数までである。いくつかの実施形態では、周波数範囲は、約40Hzから、約100MHzまたは1THzのより上の周波数までである。いくつかの実施形態では、周波数は、約37Hzまたは約79Hzであり、これらの周波数の高調波は、FOT測定中に互いに干渉しない。いくつかの実施形態では、異なる高調波を有する多周波数信号を使用することができる。例えば、発振信号は、各々がいくつかの周波数成分を有する矩形波または三角波であってもよい。多周波信号は、インピーダンスが異なる周波数で計算される場合など、いくつかの状況で有用である。振動圧力信号は、ユーザ210の修正されたおよび/または自発的な呼吸に重畳される。
【0071】
いくつかの実施形態では、生成された振動圧力信号はまた、所望の圧力を送達するように制御され得る。いくつかの場合には、約0.01cmH2O~約2cm H2Oのピークツーピーク値を超えない圧力(すなわち、生成された振動信号の振幅)を生成することが好ましい場合がある。いくつかの他の場合では、圧力は、振動の周波数に基づいて、または流量センサおよび/または圧力センサの感度および精度に基づいて選択され得る。いくつかの場合には、振動の振幅(すなわち、圧力)は、逆周波数傾向(1/f)に従い得る。例えば、約6、11、および19Hzの周波数が使用される場合、約6Hzでの圧力の振幅は、約11Hzでの圧力の振幅よりも高い。同様に、約11Hzでの圧力の振幅は、約19Hzでの圧力の振幅よりも高い。
【0072】
吸気チューブ204および呼気チューブ204’は、呼吸チューブ208に接続されたチューブ継手218を使用して、接合部においてユーザ210に到達する前に結合されてもよい。チューブ継手218に続いて、組合せ空気流を感知して、空気流量および空気圧などの空気流パラメータを決定することができる。この例示的な実施形態では、流量変換器220および圧力変換器221を備える感知システムが使用される。流量変換器220が流量変換器または空気流変換器と呼ばれることもあることに留意されたい。変換器220および221に使用されるセンサタイプは、例えば、限定はしないが、超音波変換器、空気圧変換器、または圧電変換器を含む、任意の適切な変換器デバイスであり得る。いくつかの実施形態では、空気流パラメータは、センサとして使用される呼吸気流計にわたる圧力降下を記録することによって測定し、計算することができる。
【0073】
フロー変換器220および圧力変換器221の出力は、さらに処理され、分析される前に事前調整され得る。例えば、変換器220および221からの出力信号は、適切な増幅器224によって増幅されて、所望の信号振幅を取得することができる。例えば、いくつかの実施形態では、増幅器224は、対象となる周波数に焦点を合わせるのを助けるために信号ノイズを低減するために使用され得るロックイン増幅器であり得る。測定された信号ごとに別個の増幅器を使用することができ、またはデュアルチャネル増幅器を使用することができることに留意されたい。
【0074】
次いで、増幅された信号は、無関係な周波数領域情報を除去するためにフィルタリングされ得る。本実施形態では、アクチュエータ216によって生成される発振の周波数に対応する調整された中心周波数を有するバンドパスフィルタ226を使用することができる。いくつかの実施形態では、通過帯域は、単一の周波数がFOTのために使用されるときにノッチフィルタが使用され得るように、十分に狭くされ得る。バンドパスフィルタ226は、狭い通過帯域を有するが、好ましくは、変調された呼吸情報を含む測定信号内の任意のサイドローブを含むのに十分な大きさである。
【0075】
信号が増幅され、フィルタリングされた後、信号は、限定はしないが、以下のようなユーザの1つ以上の側面、すなわち、(1)呼吸シグネチャ、(2)睡眠段階分類および/または睡眠段階分類指数、および/または(3)睡眠障害重症度の予測および/または予測睡眠障害重症度指数を決定するために、さらなる処理および分析のためにプロセッサ228によって受信される。少なくとも1つの実施形態では、呼吸指数を生成することもできる。次いで、プロセッサ228は、決定されたこれらの側面のうちの少なくとも1つに基づいて制御信号212を生成することができ、制御信号212は、以下でより詳細に説明するように、その動作を調整するために呼吸補助デバイス202に提供される。
【0076】
いくつかの実施形態では、プロセッサ228は、プログラマブルマイクロコントローラまたはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのプログラマブルデバイスであり得る。他の実施形態では、プロセッサ228は、Arduinoプラットフォーム、またはRaspberry Piプラットフォームなどのシングルボードコンピュータシステムプラットフォームの一部であってもよい。さらに他の実施形態では、有意なデータが処理を必要とするときに使用される2つ以上のプロセッサが存在し得る。さらに他の実施形態では、信号フィルタリングは、別個のフィルタリングデバイス226が必要でないように、デジタル信号処理(DSP)技術を使用することなどによって、プロセッサ228を使用して実行されてもよい。
【0077】
制御信号212は、当業者に知られている任意の方法を使用して呼吸補助デバイス202に提供することができる。例えば、制御信号212は、有線接続を介して提供することができる。しかしながら、他の実装形態では、制御信号は、呼吸補助デバイス202にワイヤレスに通信され得、その場合、システム200は、送信機またはトランシーバ(WiFiまたはBluetoothトランシーバなど)を含み得る。
【0078】
測定された空気流パラメータ、指数、および/または制御信号212はまた、呼吸補助デバイスコントローラ206上に提供される任意選択のディスプレイ230上に示され得る。ディスプレイ146は、限定はしないが、タブレットデバイスまたはスマートフォンのためのものなどLCDディスプレイであってもよい。
【0079】
システム200はまた、RAM、ROM、1つ以上のハードドライブ、1つ以上のフラッシュドライブ、またはディスクドライブなど何らかの他の適切なデータ記憶要素を含むことができるメモリユニット229を含む。メモリユニット229は、オペレーティングシステム229a、デバイス制御モジュール229b、睡眠段階分類器229d、呼吸シグネチャ分類器229c、および/または睡眠障害重症度予測器229eのうちの1つ以上、機械学習モデル229f、入出力(I/O)モジュール229g、および1つ以上のデータファイル229hのためのプログラム命令を記憶する。当業者に知られているように、他のソフトウェア命令が含まれてもよい。
【0080】
デバイス制御モジュール229bは、実行されると、システム200のための様々な機能、プロセス、および方法を実装するために特定の方法で動作するようにプロセッサ228を構成するソフトウェア命令を備える。例えば、デバイス制御モジュール229bは、センサ220~223からの様々なデータを感知し、感知されたデータを使用して様々な計算を実行し、次いで、呼吸シグネチャ分類器229c、睡眠段階分類器229d、睡眠障害重症度予測器229e、および機械学習モデル229fのうちの1つ以上を実行して、以下を実行するために、制御信号がそこから生成され得る1つ以上の指数を決定するためのプログラム命令を含むことができる。(1)呼吸補助デバイス202を制御すること、および/または(2)ユーザの呼吸および/または睡眠特性に関するあるデータを生成することであり、これは、次いで、レポートに含まれ、および/または分析されて、ユーザをいくつかの条件について監視および/または診断することができる。
【0081】
呼吸シグネチャ分類器229cは、センサ220~222のうちの1つ以上によって感知される、いくつかの場合には、機械学習モデルまたは分析手法を使用することに基づいて、特定のユーザ210についての感知データから決定される呼吸データを使用して、呼吸シグネチャを決定するために使用される。呼吸シグネチャ分類器229cは、
図4Aの方法300に関してより詳細に説明される。
【0082】
睡眠段階分類器229dは、センサ220~222のうちの1つ以上によって感知され、いくつかの場合には、機械学習モデルを使用することに基づいて、特定のユーザ210について感知されたデータから決定される呼吸データをユーザ210が使用している睡眠段階を決定するために使用される。また、睡眠段階分類指数は、決定される睡眠段階分類に基づいて定義され得る。睡眠段階分類器229dは、
図5の方法350に関してより詳細に説明される。
【0083】
睡眠障害重症度予測器229eは、センサ220~222のうちの1つ以上によって感知され、いくつかの場合には、機械学習モデルを使用することに基づいて、特定の210ユーザについて感知されたデータから決定される呼吸データを使用して、近づきつつある睡眠障害事象の重症度を予測するために使用される。また、予測睡眠障害重症度指数は、予測睡眠障害重症度に基づいて定義され得る。睡眠障害重症度予測器229eは、
図6Aの方法400に関してより詳細に説明される。
【0084】
機械学習モデル229fは、異なる睡眠または呼吸関連現象を分類または予測するために使用される異なるタイプのモデルを含む。機械学習モデル229fは、ランダムフォレスト分類器、ロジスティック線形分類器、K近傍法アルゴリズム、特徴ベース非類似空間分類器(Feature-Based Dissimilarity Space Classifier:FDSC)、ニューラルネットワーク、およびサポートベクトルマシンのうちの1つ以上など、異なる機械学習方法を使用することに基づき得る。代替実施形態では、ディープラーニングまたは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が使用され得る。計算時間を短縮するために、機械学習モデルとしてランダムフォレスト分類器を使用することが好ましい場合がある。
【0085】
高い予測力を有するいくつかの入力特徴が機械学習モデルに提供される。例えば、入力特徴は、測定された空気流のパワースペクトル密度(PSD)を含むことができる(例えば、空気流および空気流量は同義である)。PSDは、サンプリングされたセンサデータのスペクトル範囲全体にわたって測定され得る。あるいは、PSDの情報の大部分を含む約0.01Hz~約20Hzの間など、より特定の周波数範囲にわたるPSDが測定され得る場合があり得る。他の潜在的な入力特徴は、測定された空気圧のPSD、FOTを使用した測定された抵抗およびリアクタンスのPSD、ならびに所与のPSDについて、PSD中のピークの数、およびある周波数での電力のうちの1つ以上を含み得る。他の場合には、所与の測定または決定された信号についての入力特徴は、信号についての質量分位点の指数、信号に沿った窓付き線形最小二乗回帰係数、信号の絶対エネルギー(例えば、信号の二乗振幅の合計)、信号の最小および/または最大振幅、信号の標準偏差、歪度、および/または尖度、信号におけるピークの数、信号の自己相関および信号のFFT係数の絶対値のうちの1つ以上であり得る。信号は、測定された空気流、測定された空気圧、FOT法から取得されたリアクタンス、FOT法から取得された抵抗、またはFOT法から取得されたインピーダンスであってもよい。実際の入力特徴は、機械学習モデルの特定のタイプ(すなわち、呼吸シグネチャ、睡眠分類、または予測睡眠障害重症度)に依存する。
【0086】
機械学習モデルは、様々な方法で訓練することができる。例えば、患者から取得されたデータは、(
図2について本明細書に記載されるように)前処理され、訓練セット、試験セット、および検証試験に分割された。例えば、訓練セット、試験セット、および検証試験は、それぞれ70%、15%、および15%の割合でデータの量を使用することを含み得る。訓練データは、所望のパラメータを正確に予測するように機械学習モデルを訓練するために使用される。機械学習モデルは、いくつかの初期パラメータで初期化され、次いで、最も高い精度を提供した機械学習モデルパラメータおよび入力特徴を決定するために、訓練セットを使用して訓練された。次いで、機械学習モデルを試験データセットで試験し、精度を記録した。次いで、機械学習モデルのパラメータを調整して、試験データセットに対する機械学習モデルの精度を最大化した。次いで、機械学習モデルを検証データセットで試験し、精度を記録した。
【0087】
本明細書に記載の機械学習モデルを開発し、試験し、検証するために使用されたデータは、ハリファックスのQEII健康科学センターで実施された承認された研究において、33人の患者から取得された。患者は女性47%、男性53%で、年齢の中央値は55.5歳であり、CPAP使用の夜の中央値は135晩であった。試験データは、閉塞性、中枢性および低呼吸性睡眠時無呼吸を含む様々なカテゴリの数千の睡眠時無呼吸を含んだ。データは、テスト、訓練、および検証データセットに分割された。閉塞性睡眠時無呼吸事象は、データ(強度用)、ベースライン(正常呼吸)、および無呼吸前期間(強度予測用)から抽出された。また、異なるEEG決定睡眠段階に基づいてデータを取得した。データは、4Hz、17Hz、43Hz、および79Hzを含む異なる周波数でFOT法を実施しながら、測定された空気流の圧力、測定された空気流量、ならびに測定された圧力および空気流量を使用して決定された抵抗およびリアクタンスを含む。データは、PSG測定も含んでいる。
【0088】
入出力モジュール229gは、センサによって取得された入力データを受信し、入力データを前処理し、および/または出力データ(またはデバイス制御モジュール229bによって行われる処理からの制御信号212などの信号)を生成し、次いで、対応するハードウェアに送信される。入力/出力モジュール229gは、例えば、プロセッサ228のうちの1つ以上とセンサ220~223のうちの1つ以上とディスプレイ230との間でデータ(または信号)を通信するために、デバイス制御モジュール229bと連動して動作し得る。入出力モジュール229gの機能は、例えば、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアの組合せを使用して実装され得る。
【0089】
データファイル229hは、任意の一時的データ(例えば、呼吸補助デバイス202が使用された後に必要とされないデータ、またはユーザデータ(例えば、ユーザID)、呼吸補助デバイス202のための設定、ならびに変数および較正データを含む前処理または他の処理設定などの永続的データ(例えば、後で使用するために保存されたデータ)を記憶し得る。データファイル229hはまた、呼吸補助デバイス202の使用中に識別データ、呼吸生理学的データ、および記録されたユーザデータなどの、呼吸補助デバイス202を使用する各ユーザの様々なユーザデータを含み得る。
【0090】
少なくとも1つの実施形態では、呼吸補助デバイスコントローラ206は、ユーザ210に提供される空気流の圧力および流量を監視して、ユーザの呼吸シグネチャを決定すること、睡眠段階分類を実行すること、および/または呼吸補助デバイス202の動作の一定の調整を含む様々な方法で使用され得る睡眠障害重症度を予測することを可能にするように、連続的に動作するように構成され得る。そうすることによって、ユーザ210が経験する任意の呼吸不全を最小限に抑えるか、または回避するために、リアルタイムまたはほぼリアルタイムの適応調整が行われることが可能になり得る。他の実施形態では、呼吸補助デバイスコントローラ206は、代替的に、例えば、30秒ごとまたは60秒ごとなどの設定された時間間隔で、断続的に動作するように制御され得る。そのような動作条件は、呼吸補助デバイスコントローラ206が、呼吸補助デバイス202の動作寿命を延ばすのに役立つようにバッテリ動作される場合に好ましい可能性がある。
【0091】
ユーザ210が間近に呼吸不全を経験するときを予測するためにシステム200が使用される実施形態では、感知システムはまた、ガスセンサ222と、PSGセンサ223と総称されるPSGにおいて使用される1つ以上のセンサとを含む、少なくとも2つの追加のセンサを含み得る。ガスセンサ222は、CO2ガスセンサとすることができる。PSGセンサ223は、少なくとも1つの生理学的信号および/または少なくとも1つの神経学的信号を取得するために使用される1つ以上のセンサを含むことができる。例えば、生理学的信号は、ECG、EOG、およびEMG信号のうちの1つ以上を含み、神経学的信号は、EEGおよび末梢神経生理学的検査(PNE)信号のうちの1つ以上を含む。これらの信号は、当業者に知られているように、ユーザ210上のいくつかの位置に配置された既知の電極を使用して測定することができる。CO2信号はまた、取得することができる生理学的測定値である。PSG信号はまた、増幅器224およびバンドパスフィルタ226の異なるチャネルによって知られているように前処理され、これらの信号がさらなる分析のためにプロセッサ228に送信される前に、これらの特定の信号の雑音を低減することができる。PSG信号の増幅およびフィルタリングのための設定は、当業者に知られている。呼吸不全のみを検出し、反応的アクションをとる実施形態では、ガスセンサ222およびPSGセンサ223は、システム200に含まれない。
【0092】
図3は、デバイスが呼吸補助デバイス202と物理的に「インライン」で使用されることを可能にするように、空気流を監視し、呼吸補助デバイス202を制御するために必要とされる様々な構成要素が単一のデバイス内に取り付けられる、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250の例示的な実施形態を示す。したがって、呼吸補助デバイスコントローラ250は、インラインデバイスと呼ぶことができる。
図3に示された参照番号は、概して、
図2および
図3に類似する構成要素について前述したものに対応する。
【0093】
さらに、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250が、ユーザ210が呼吸不全を経験するときの予測に使用される実施形態では、コントローラ250は、ガスセンサ222も含み、PSGセンサ223に結合され得る。いくつかの実施形態では、PSGセンサ223によって測定された信号は、例えば、ワイヤレス通信無線機または短距離通信モジュール、例えばBlueToothモジュールなど(両方とも図示せず)を含む一体型呼吸補助デバイスコントローラ250にワイヤレスで送信することができる。したがって、呼吸不全のみを検出し、反応的アクションをとる実施形態では、ガスセンサ222およびPSGセンサ223は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250に含まれない場合がある。
【0094】
呼吸補助デバイスコントローラ250は、第1の端部252aおよび第2の端部252bを有するハウジング252を有する。端部252bは、チューブコネクタ214を介して吸気チューブ204および呼気チューブ204’に取り付けることができる。端部252aは、チューブ継手218’を使用して呼吸チューブ208に取り付けられ、ユーザ210に換気を提供することができる。吸気チューブ204と呼気チューブ204’とを接合する接合部(すなわち、チューブコネクタ214)は、デバイス250の内部にあり、チューブ継手218もデバイス250の内部にあることに留意されたい。したがって、いくつかの実施形態では、呼吸補助デバイスコントローラ206は、呼吸チューブ208を吸気チューブ204および呼気チューブ204’に嵌合、接続、または接合するための強化チューブアダプタとみなすことができる。しかしながら、この場合、呼気が大気に排気されるので、呼吸補助デバイスコントローラ250がCPAP機械とともに使用されるとき、呼気チューブ204’は存在しないことに留意されたい。
【0095】
次に
図4Aを参照すると、圧力および空気流測定値を取得し、その測定値を使用して、ユーザ/患者の呼吸シグネチャ決定を決定して、ユーザの呼吸不全の重症度を停止または低減するために呼吸補助デバイスの動作を制御することができる、睡眠シグネチャ検出方法300の例示的な実施形態を示すフローチャートが示されている。特に、方法300は、機械学習を使用して、その人固有の呼吸パターンおよび呼吸機構に基づいて人を識別する。これは、気道圧、空気流の測定、および/またはFOTを使用した気道インピーダンスの測定に基づき得る。説明を容易にするために、呼吸補助システム200に示される要素は、方法300の様々なステップを説明する際に使用されるものとする。例えば、方法300は、呼吸補助システム200のプロセッサ228によって実装され得る。しかしながら、この技術は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250または別の適用可能なデバイス上で使用され得ることを理解されたい。
【0096】
方法300は、呼吸補助デバイス202が起動され、ユーザ210に空気流を供給しているときに開始され得る。行為302で開始し、プロセッサ228は、所望の周波数範囲内の1つ以上の発振周波数を有する振動圧力信号を生成するようにアクチュエータ216(例えば、モータ)を動作させてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、所望の周波数範囲は、約0.01Hzから約1THzの間の任意の周波数であり得る。前述のように、発振は単一周波数発振であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、振動圧力信号は、いくつかの振動周波数を含むことができる(すなわち、振動が正弦波ではない場合)。行為302は、先に説明したように、連続的または周期的に行うことができる。
【0097】
行為304において、流量変換器220および圧力変換器221などの呼吸補助デバイスコントローラ206に結合されたセンサは、それぞれ、ユーザ210に送信される(摂動を含む)空気流の流量および圧力を測定する。検出された信号は、増幅器224によって増幅され、この場合、アクチュエータ216によって生成された発振の周波数に対応する中心周波数を有するバンドパスフィルタ226によってフィルタリングされ得る。また、前述のように、いくつかの実施形態では、通過帯域は、単一の周波数がFOT測定で使用されるときにノッチフィルタが代わりに使用され得るように、十分に狭くされ得る。
【0098】
信号が増幅およびフィルタリングを適用することによって処理された後、処理された信号は、さらなる処理および分析のためにプロセッサ228によって受信される。行為306において、プロセッサ228は、測定された信号を使用して、経時的なユーザの呼吸器系の空気流の体積V(t)および機械インピーダンスを決定することができる。体積V(t)は、測定される流量信号に既知のバイアスまたは一定の体積を加えた積分として決定されてもよい。機械インピーダンスを決定するために、プロセッサ228は、処理された流量および圧力信号に窓関数を適用して、周期性を強制し(すなわち、周波数領域における漏れを低減し)、その後、各ウィンドウにおけるこれらの信号のフーリエ変換を(例えば、高速フーリエ変換FFTを介して)実行するのを助けることができる。いくつかの実施形態では、信号は、アクチュエータ216によって生成される6Hzの単一周波数の正弦波振動に対して1/6秒などの短い期間にわたって窓掛けすることができる。不確実性原理の下では、より短い期間は、時間分解能の利得を伴う周波数分解能の損失につながり得る。一般に、有用なウィンドウ化期間は、振動圧力信号で使用される最大振動周波数の逆数に対応して、あまりに多くの周波数分解能の損失をもたらさない短いウィンドウを提供することができる。他の実施形態では、ウィンドウは、例えば4秒など、より長くてもよい。信号は、バンドパスフィルタリングのために、また、ウィンドウ化持続時間が短いために、十分に静止していると仮定することができることを理解することができる。いくつかの実施形態では、ハニング型またはハミング型ウィンドウを使用して、周波数領域における漏れを低減するためにウィンドウエッジ付近の信号振幅を低減することによって、周期性を強制するのをさらに助けることができる。他の実施形態では、ウィンドウは、重複ウィンドウとすることができる(例えば、隣接するウィンドウ間で約50%の最大重複を有する)。他の実施形態では、他のタイプのウィンドウが使用に適している場合がある。例えば、いくつかの場合には、長方形のウィンドウを使用することが可能であり得る。
【0099】
依然として行為306において、窓関数が適用された後、各時間ウィンドウにおける圧力および流量のフーリエ変換が、その時間ウィンドウにおける平均機械インピーダンスZ
rsの推定値を取得するために使用され得る。より具体的には、機械インピーダンスは、各ウィンドウにおける圧力信号と流量信号とのフーリエ変換間の比として表すことができる。
【数1】
式中、P(ω)は、測定された圧力信号のFFTであり、Q(ω)は、角周波数ω=2πfにおける測定された流量信号のFFTであり、ここで、fは、FOTに使用される発振周波数である。式1は、ユーザ210の気道開口部で測定された圧力および流量を使用することによって、インピーダンスを決定するために適用され得る。
【0100】
機械インピーダンスZrsは、主に、ユーザ210の胸腔内および胸腔外気道、肺組織および胸壁の空気流抵抗に大きく起因し得る、呼吸抵抗(Rrs)に対応する実数部、ならびにユーザ210の肺および胸壁の弾性特性、ならびに振動する空気の慣性から生じ得るリアクタンス(Xrs)に対応する虚数部を有する複素数量であり得る。したがって、インピーダンスは、式(2)に示すように、実数部と虚数部との和として記述することができる。
Zrs(ω)=Rrs(ω)+jXrs(ω) (2)
パラメータRrs(ω)およびXrs(ω)は、様々な呼吸器系特性を識別するために、様々な呼吸モデルを測定データに適合させることによって特徴付けることができる。例えば、一般的に使用されるモデルは、単一コンパートメントモデルであり、Rrs(ω)は、Xrs(ω)=ωlrs-Ers/ωであるように、周波数ωに対して一定であると仮定され得、式中、Ersおよびlrsは、呼吸器系のエラスタンスおよびイナータンスをそれぞれ表す、理想化された集中要素とすることができる。したがって、呼吸器系特性の例には、リアクタンス/エラスタンスおよびイナータンスも含まれる。
【0101】
各時間ウィンドウにおける抵抗およびリアクタンスの決定は、選択された発振周波数に関して、時間に対して連続した関数Rvar(t)およびXvar(t)をもたらすことにも留意されたい。FOT発振信号に複数の周波数が使用される場合、抵抗およびリアクタンスは、周波数ごとに別々に上記の方法で計算され得る。分析のために考慮される周波数ごとに、Rvar(t)およびXvar(t)の別々の時間経過挙動を開発することができる。あるいは、振動周波数に対するXvarの平均値をプロットすることによって、異なる周波数についてのXvarの平均値を調べることができる。Rvarについても同じことがなされ得る。各周波数を別々に順次フィルタリングするように構成され得る単一のバンドパスフィルタが存在し得ること、またはフィルタリング(例えば、櫛形フィルタ)を実行するために同時に使用される発振周波数のセットからの固有の周波数で各々が同調される複数のバンドパスフィルタが存在し得ることに留意されよう。前述のように、体積V(t)は、流量信号の積分として決定されてもよい。
【0102】
依然として行為306において、式(1)に従って決定されるインピーダンスは、例えば、約1、約2、約5、または約10秒などの初期期間(tB)にわたって繰り返し実行され、ユーザの正常で健康な機能する呼吸器系を示す、ユーザの呼吸器系のインピーダンスZref,w(t)のベースラインを取得する。これは、異なる方法で行うことができ、ベースライン加重インピーダンスZref,w(t)を決定する方法の一例は、式(2)に従って加重測度を取得することである。
Zref,w(t)=[(Rref(t)*wR)2+(Xref(t)*wx)2]1/2 (2)
式中、Zref,w(t)は、例えば、約10秒などの監視期間にわたるベースライン加重インピーダンスであるが、約5秒、20秒、および60秒などの他の期間を使用することができる。より長い期間が使用されるとき、平均化は、ノイズを低減するために使用され得る。例えば、ベースライン測定値を決定するためにデータを収集するために使用される時間が約60秒である場合、平均化は、10秒の監視期間のためのベースライン読取値を得るために6回行われ得る。ベースライン加重インピーダンス値は、ユーザが最初に呼吸補助デバイス202を使用し始めた初期監視期間中に決定される。ユーザごとにベースライン読取値を決定する利点は、パーソナライゼーションの側面である。例えば、同じ身体サイズ(例えば、身長および体重)および同じ性別を有する2人の患者は、2つの異なる呼吸パターンを依然として有し得、したがって、異なるベースライン加重インピーダンス値を有する。
【0103】
パラメータwRおよびwXは、それぞれ、監視時間間隔中に決定された抵抗およびリアクタンスに適用される重みである。重みwRおよびwXは、例えば喘息などの呼吸状態を有する場合、特定のユーザに基づいて決定することができる。重みを実装することができる1つの方法は、異なる疾患(すなわち、呼吸状態)、および各疾患(すなわち、各呼吸状態)の重症度の異なるレベルの重みのテーブルを有することである。重みは、文献研究から決定することができ、次いで、特定のユーザがその呼吸状態を有するとき、所与の呼吸状態に対する特定の重みが特定のユーザに使用される。代替的に、重みは、ユーザに対して初期評価を実行することによって、ユーザごとに決定され得る。
【0104】
重みパラメータについてのこの初期評価は、特定のユーザにとって抵抗またはリアクタンスのどちらがより重要であるかを決定するために行われ得、次いで、その決定に基づいて重みが関連付けられ得る。例えば、平均Xおよび平均Rの測定値から、ユーザは、限定はしないが、喘息、COPD、CFまたはいびきなど、特定の呼吸状態を有するものとして分類され得る(例えば、いびきは、差し迫った気道閉鎖の警告であり得るので、呼吸不全として検出され得る)。呼吸状態カテゴリに基づいて、同じ呼吸状態を有する集団についてのデータに基づいて、データベースまたはルックアップテーブルを使用して、ユーザについてのRおよびXの相対的重さが決定される。一例として、Rrefは、喘息を有すると分類されるユーザにおいてXrefよりも高く加重され、一方、Xrefは、COPDを有すると分類されるユーザにおいてRrefよりも高く加重されてもよい。したがって、ユーザが特定の呼吸状態を有するかどうか、およびその特定の呼吸状態についてのある重症度レベルに応じて、抵抗に適用される重みに対して、リアクタンスに、より大きいまたはより小さい重みを適用することができる。
【0105】
代替実施形態では、ベースライン加重インピーダンス値は、初期ベースライン加重インピーダンスが決定された後、規則的な間隔で再決定され得る。例えば、ベースライン加重インピーダンスは、おおよそ5分、10分、30分、60分以上ごとに決定することができる。修正され、最新のベースライン加重インピーダンス値を決定するために使用される周波数は、ユーザが何らかのタイプの慢性呼吸状態を患っているかどうかに基づいて決定され得る。例えば、患者が重度の睡眠時無呼吸を患っている場合、睡眠の最初の5分間は、夜の残りの時間の良好な基準であり得る。しかしながら、患者がCOPDまたは重度の喘息を患っている場合、患者が眠る前に、より短く、より規則的に、例えば約5分ごとに重さが決定され得る。これは、疾患の性質、ならびに喘息およびCOPDが小気道疾患であるという事実に起因するが、睡眠時無呼吸は上気道疾患である。
【0106】
ユーザ210が慢性呼吸状態を患っている場合、ユーザが何らかの治療を受け、呼吸器系が正常に動作している直後に、ベースライン加重インピーダンス値がユーザ210について決定され得ることに留意されたい。治療には、エアパッファからの吸入薬、他の薬物の服用、または気道の拡張を助けるために他のデバイスから治療を受けること、およびおそらく肺からの粘液を緩め、排出することが含まれ得る。あるいは、ベースライン加重インピーダンス値は、体重(+/-10%以内)、身長(+/-10%以内)、および性別などの、ユーザと同等の生理学的特性を有する健康な集団の標準呼吸パターンに基づいて、そのユーザ210について予想される標準呼吸パターンを使用することから取得され得る。あるいは、ベースライン加重インピーダンス値は、標準的な呼吸パターンを使用し、ユーザ210が治療を受けた後にいくつかの測定を行うことによって取得されてもよい。
【0107】
次いで、方法300は、行為310に進み、特徴抽出が実行される。この時点で、呼吸シグネチャ分類器229cは、呼吸シグネチャ機械学習モデルのための入力特徴の値を取得することができる。これらの入力特徴値は、測定されたおよび/または計算されたパラメータから取得することができる。例えば、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、測定された空気圧および/または測定された空気流量から決定され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、1周波または多周波FOTを使用して決定される計算された気道インピーダンスから決定され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、(1)測定された空気圧、(2)測定された空気流量、および/または(3)1周波または多周波FOTを使用して決定された計算された気道インピーダンスから決定されてもよい。1周波または多周波FOTを使用するとき、異なる発振周波数でのFOT測定から生じる抵抗(R)およびリアクタンス(X)を使用して分類することができる。振動周波数は、約0.01Hz~約100MHzの間のいずれかであり得、異なる周波数で測定されたRおよびXを一緒に使用して、患者の呼吸シグネチャを分類することができる。インピーダンス、リアクタンス、および/または抵抗が特徴抽出において使用されない場合、FOT法の実行は必要としない場合があり、行為302が実行される必要はなく、患者がいかなる摂動信号も提供されずに単に呼吸している間に、空気圧および空気流量が測定され得ることに留意されたい。これは、方法350および400のために実行される行為310にも適用することができる。
【0108】
例えば、次に
図4B~
図4Eを参照すると、代表的な患者からの、それぞれ4Hz、17Hz、43Hzおよび79Hzの周波数における異なるFOTについてのリアルタイムでの空気流および空気圧の測定値ならびに抵抗およびリアクタンスの計算のプロットが示されている。測定されたデータは、患者が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)および中枢性睡眠時無呼吸(CSA)を有した事象を示す。
図4Bでは、OSA事象の間、4HzでのFOT決定Rは増加するが、CSA事象の間、4HzでのFOT決定Rは増加しないことがわかる。
図4Cでは、OSAの間、17HzでのFOT決定Rは増加するが、CSA事象の間、17HzでのFOT決定Rは増加しないことがわかる。しかしながら、17HzでのFOT決定リアクタンスXは、OSAの間、減少し、CSAの間、増加する。
図4Dでは、OSAの間、43HzでのFOT決定リアクタンスXは、OSAの間、減少し、CSAの間、増加することがわかる。
図4Eでは、OSAの間、79HzでのFOT決定リアクタンスRは、OSAの間、平均のままであり、CSAの間、増加することがわかる。
【0109】
これらの測定値または計算値から入力特徴値を取得するために使用され得る特徴は、機械学習モデル229fが論じられたときに前述された特徴のうちの少なくとも1つであり得る。好ましくは、入力特徴は、使用される実施形態に応じて、測定された空気圧のPSD、PSD、または測定された空気流量、および/または計算された気道インピーダンスのPSDであり得る。
【0110】
行為312において、呼吸シグネチャを決定するために、抽出された入力特徴値に呼吸シグネチャ機械学習モデルが適用される。例示的な一実施形態では、呼吸シグネチャ機械学習モデルは、200の木を有するランダムフォレスト分類器であってもよく、使用された入力特徴は、FOTベースラインデータを取得する間に測定された空気流量のPSDであった。例えば、呼吸シグネチャ機械学習モデルは、少なくとも1つの実施形態では、呼吸補助デバイスを使用する前夜の患者の呼吸パターン特徴を区別するために異なる木が使用されるランダムフォレストモデルを使用することができ、これが同じ患者であるかどうかを90%よりも高い精度で分類する。例えば、少なくとも1つの他の例示的な実施形態では、特定の特徴は、他の患者よりも高い重みを有することが見出され得、したがって、モデルは、その患者に一意の特定の患者についてさらに訓練される。少なくとも1つの代替実施形態では、ディープラーニングモデルも使用することができる。
【0111】
試験は、合計15サンプルについて、3人の患者(円、菱形、および三角形のマーカーによって示される)の各々について、長さが60秒(200Hzのサンプリングレートを有する)であったベースライン空気流データ(例えば、正常呼吸)の5つの異なるサンプルを含むデータセット上で、行為312で説明される機械学習モデルおよび入力特徴値を使用して、患者ベースラインFOTフローデータのPSDの間に検出可能な差があるかどうかを決定するために行われた。各サンプルを、その最大値が1に等しくなるように正規化し、PSDを、ウェルチ法を使用して各サンプルについて計算した。サンプルを行として、PSDを列として含むデータマトリックスを形成するために、サンプルを垂直に積み重ねた。慣例に従って、このデータ行列は、PCAおよびPPAが以下で説明するように適用される前に、列平均中心に置かれた。
【0112】
次に、
図4Fおよび
図4Gを参照すると、ステップ312について説明した呼吸シグネチャ機械学習モデルの出力に適用されたときに、主成分分析(PCA)および射影追跡分析(PPA)をそれぞれ適用することから取得された最初の2つのスコアを使用した試験結果の分析を示している。PCAは特異値分解を使用して実装され、PPAは準電力アルゴリズムを使用して実装された。PCA分析は、データの分散を使用して高次元データを探査するが、PPAは尖度を最適化することによって興味深い予測を検索する。両方の
図4Fおよび
図4Gは、試験された異なる患者に対応する別個のクラスタを示す。ここで、モデルがまったく訓練されておらず、オーバーフィッティングがないので、試験結果は教師なしであり、この場合、サンプル間の自然な関係を示していることに留意することが重要である。PCAは、異なる患者の呼吸が異なるクラスタに分類され得るかどうかを決定するための探索的方法として使用され、図中の結果は、これを明確に示す。より大きいデータセットおよび教師あり学習モデルを使用して、呼吸の監視(例えば、測定された圧力および空気流量)および計算された気道インピーダンスに基づいて患者をより正確に区別することができる。
【0113】
次に
図4Hを参照すると、患者呼吸シグネチャ分類器の精度対この分類器が訓練された訓練日数のプロットが示されている。データは、18人の患者から1日当たり400~900のベースラインサンプルを採取することによって取得された。患者呼吸シグネチャ分類器の入力特徴は、測定された空気流量および/または圧力であった。この分類器は、睡眠障害重症度の予測の予測のために使用された機械学習モデルに使用されたものと同じトポロジーを使用するCNNに基づくが、行われた訓練に基づいて使用されたパラメータ値が異なる。
【0114】
行為314において、方法300は、呼吸シグネチャ分類を実行することを伴う。例えば、所与の呼吸補助デバイスについて、そのデバイスを使用するように指定されたユーザが存在し得る。このユーザの呼吸シグネチャは、メモリユニット229に記憶することができる。ユーザが呼吸補助デバイスを使用し始めると、現在の患者の呼吸シグネチャは、上述のように決定され得る。行為316において、次いで、現在の患者呼吸シグネチャを記憶された患者呼吸シグネチャと比較して、適切なユーザが呼吸補助デバイスを使用しているかどうかを決定することができる。
【0115】
行為316において、現在の患者呼吸シグネチャが、記憶された患者呼吸シグネチャと同じであると決定された場合、方法300は、行為318に進むことができ、呼吸補助デバイスを通常通り使用することができる。しかしながら、行為316において、現在の患者呼吸シグネチャが、記憶された患者呼吸シグネチャと同じではないと決定された場合、方法300は、行為320に進むことができ、呼吸補助デバイスのプロセッサは、呼吸補助デバイスをシャットダウンするための制御信号212のための値を発し得、任意選択で、アラームを鳴らし得るか、または任意選択で、呼吸補助デバイスの現在のユーザが意図された患者ではないという報告を送信し得る。
【0116】
次に
図5を参照すると、本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために患者の睡眠段階の決定を利用する呼吸補助制御方法350の例示的な実施形態のフローチャートが示されている。特に、方法350は、機械学習を使用して、対象者の呼吸の測定値(例えば、圧力および流量)および/またはFOTを使用した気道インピーダンスの測定値に基づいて、睡眠段階を正確に決定する。例えば、方法350は、覚醒、睡眠段階1~4、およびREM(急速眼球運動)睡眠などの様々な睡眠段階を決定するために使用され得る。睡眠段階分類を実行するために、標準EEG(脳波記録法)測定を使用して睡眠段階モデルが開発され、次いで、これらの結果は、睡眠段階機械学習モデルを決定するために、FOTを使用して、実際に測定された空気圧、空気流量、および気道インピーダンス測定値に相関される。例えば、異なる睡眠段階で変化する呼吸速度以外に、本発明者らは、睡眠段階を決定するために使用することができる空気流、圧力、RおよびXに他の隠れた特徴があると決定した。説明を容易にするために、呼吸補助システム200に示される要素は、方法350の様々なステップを説明する際に使用されるものとする。例えば、方法350は、呼吸補助システム200のプロセッサ228によって実装され得る。しかしながら、この技術は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250または別の適用可能なデバイス上で使用され得ることを理解されたい。
【0117】
方法350は、行為302および304を含む方法300と共通する多くの行為を有する。ベースライン参照インピーダンス値を使用する必要はないので、ここでは行為306は必要でないが、行為308は、可変参照インピーダンスをリアルタイムで決定するために実行されることに留意されたい。
【0118】
行為308において、方法350が呼吸補助デバイス202によって実施されている間に、加重インピーダンスZvar,w(t)の連続監視が実行される。特に、行為308において、現在の監視期間の現在の加重インピーダンスZvar,w(t)が、式(3)に従って決定される。
Zvar,w(t)=[(Rvar(t)*wR)2+(Xvar(t)*wx)2]1/2 (3)
式(3)は、同じ重みが適用されるという点で式(2)と似ているが、これは現在の期間のRvar(t)およびXvar(t)に対して行われる。重みwRおよびwXは、無呼吸の予測に対する呼吸シグネチャの決定において異なり得ることに留意されたい。
【0119】
しかしながら、行為401において方法350のために実行される特徴値抽出は、方法350の睡眠段階分類機械学習モデルによって異なる測定値および異なる特徴が使用され得るので、方法300において実行されるものとは異なり得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、測定された空気圧および測定された空気流量のうちの少なくとも1つから決定され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、1周波または多周波FOTを使用して決定される計算された気道インピーダンスから決定され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、EEGデータなど他のPSGデータから決定されてもよい。例えば、EEG信号は、データを異なる睡眠段階(すなわち、クラス)にラベル付けするために使用され得、次いで、測定された空気圧、空気流量、およびFOTからのリアクタンスおよび抵抗が、分類のために使用され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、(1)(a)測定された空気圧および/または(b)測定された空気流量、(2)1周波または多周波FOTを使用して決定された計算された気道インピーダンスを使用すること、および(3)上記で説明したEEGデータなど他のPSGデータを使用すること、の組合せから決定されてもよい。1周波または多周波FOTを使用するとき、異なる発振周波数でのFOT測定から生じる抵抗(R)およびリアクタンス(X)を使用して分類することができる。振動周波数は、約0.01Hz~約100MHzの間のいずれかであり得、異なる周波数で測定されたRおよびXを一緒に使用して、患者の呼吸シグネチャを分類することができる。
【0120】
行為352において、方法300は、睡眠段階機械学習モデルを適用して、覚醒、睡眠段階1~4、およびREM(急速眼球運動)睡眠であり得る患者の現在の睡眠段階を決定することを伴う。睡眠段階機械学習モデルは、ランダムフォレスト、ロジスティック線形モデル、K近傍法アルゴリズム、特徴ベース非類似空間分類器(FDSC)、CNNまたは回帰型ニューラルネットワーク(RNN)を含むニューラルネットワーク、サポートベクトルマシンまたはディープラーニングを使用して実装され得る。行為354において、睡眠段階機械学習モデルの出力は、0を段階覚醒に割り当て、1を睡眠段階1に割り当て、2を睡眠段階2に割り当て、3を睡眠段階3に割り当て、4を睡眠段階4に割り当て、5をREM段階に割り当てることによって、0から5まで変化する睡眠段階分類指数(Kss)を決定するために使用される。
【0121】
次いで、睡眠段階分類指数が決定された後に、様々なアクションが実行され得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、行為356aにおいて、睡眠段階分類結果は、測定された呼吸データとともに記憶されて、患者の睡眠段階に基づいて呼吸障害が呼吸にどのように影響し得るかを監視することができる。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、行為356bにおいて、睡眠段階分類結果を、測定された呼吸データとともに使用して、呼吸障害を診断することができる。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、行為356cにおいて、睡眠段階分類結果は、呼吸補助デバイスの患者またはユーザのためのレポートに記録され得る。
【0122】
あるいは、少なくとも1つの実施形態では、行為356dにおいて、睡眠段階分類指数は、呼吸不全の介入/予防に組み込まれ得る。例えば、睡眠段階分類指数(Kss)は、方法450、500、または600のうちの1つにおいて使用することができる。別の例として、患者がREM睡眠段階にあると決定された場合、OSA事象は最悪であり、呼吸不全を予測する予測アルゴリズム(例えば、方法500または600)の信頼度が増加し、介入がより確信を持って適用され得る(例えば、無呼吸事象が発生するのを防ぐために呼吸補助デバイスによって提供される圧力の増加)。あるいは、患者が睡眠段階1であり、呼吸不全の予測が発生したと判定された場合、睡眠段階1では睡眠時無呼吸のような呼吸不全事象が発生する可能性は低いので、これは偽陽性である可能性が高い。
【0123】
いくつかの実施形態では、行為356a~356dのいずれか1つ、2つ、または3つは任意選択であり得ることに留意されたい。
【0124】
次に
図6Aを参照すると、本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために睡眠障害重症度の予測を利用する呼吸補助制御方法400の例示的な実施形態のフローチャートが示されている。特に、方法400は、機械学習を使用して、対象者の呼吸の測定値(例えば、圧力および流量)および/またはFOTを使用した気道インピーダンスの測定値に基づいて、睡眠障害重症度を予測する。
【0125】
例えば、方法400は、機械学習を使用して、対象者の呼吸の測定値(例えば、圧力および流量)および/またはFOTを使用した気道インピーダンスの測定値に基づいて、気道閉塞事象の重症度のリアルタイム予測モデルを構築することができる。決定された気道インピーダンス(FOTを使用する)は、閉塞性と中枢性の睡眠時無呼吸事象の区別を改善するために使用され得る。閉塞性無呼吸は、気道の閉塞によるものであり、圧力の上昇によって、気道の閉塞を防止または除去することができる。中枢性無呼吸は、呼吸しようとする試みがなく、気道閉塞がない場合である。気道陽圧(PAP)機械において使用されるとき、閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸とを区別する睡眠障害重症度機械学習モデルの予測能力は、閉塞に介入し、それを除去するように呼吸補助デバイス202を制御するために制御信号が生成されるか、またはPAP設定がそのまま維持されるべきかを決定するために使用され得る。さらに、気道インピーダンスのパワースペクトル密度計算は、予測睡眠障害重症度機械学習モデルの精度を改善するために使用され得る。
【0126】
説明を容易にするために、呼吸補助システム200に示される要素は、方法350の様々なステップを説明する際に使用されるものとする。例えば、方法400は、呼吸補助システム200のプロセッサ228によって実装され得る。しかしながら、この技術は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250または別の適用可能なデバイス上で使用され得ることを理解されたい。
【0127】
方法400は、行為302、304、および308を含む方法350と共通する多くの行為を有する。方法350と同様に、ベースライン参照インピーダンス値を使用する必要はないので、ここでは方法400の行為306は必要でないが、行為308は、可変参照インピーダンスをリアルタイムで決定するために実行されることに留意されたい。
【0128】
しかしながら、行為401において方法400のために実行される特徴値抽出は、方法400の予測睡眠障害重症度機械学習モデルによって異なる測定値および異なる特徴が使用され得るので、方法300または方法350において実行されるものとは異なり得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、測定された空気圧および/または測定された空気流量から決定され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、1周波または多周波FOTを使用して決定される計算された気道インピーダンスから決定され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、入力特徴値は、以下の組合せ、(1)(a)測定された空気圧および/または(b)測定された空気流量、ならびに(2)1周波または多周波FOTを使用して決定された計算された気道インピーダンス、から決定されてもよい。1周波または多周波FOTを使用するとき、異なる発振周波数でのFOT測定から生じる抵抗(R)およびリアクタンス(X)を使用して分類することができる。振動周波数は、約0.01Hz~約100MHzの間のいずれかであり得、異なる周波数で測定されたRおよびXを一緒に使用して、患者の呼吸シグネチャを分類することができる。
【0129】
行為402において、方法400は、予測睡眠障害重症度機械学習モデルを適用して、閉塞性睡眠時無呼吸または中枢性睡眠時無呼吸などの近づきつつある睡眠障害事象の重症度を予測することを伴う。これは、これらの事象の持続時間の区別を含む。少なくとも1つの実施形態では、予測睡眠障害重症度機械学習モデルの精度は、ベースモデルを取得し、患者ごとの個別化を追加することによって改善され得る。例えば、ベースモデルは、一般集団について訓練されたモデルであってもよい。他の場所では、ベースモデルは、健康な呼吸であるベース呼吸であってもよい。特定の患者が、呼吸シグネチャ分類のために機械学習モデルを使用する呼吸補助デバイスを使用し始めると、一般化モデルに基づいて、例えば90%の精度を有する呼吸シグネチャが形成され得る。しかしながら、患者がこのデバイスを使用し続けるにつれて、呼吸シグネチャ分類機械学習モデルは、患者のために使用される特徴を学習し、調整し、その特定の患者の呼吸シグネチャ分類の精度を100%に近づける。これは、予測、重症度および睡眠段階にも同様に適用される。これらの追加は、特定の患者からの数晩のデータを測定しながら行われ得る。
【0130】
行為404において、予測睡眠障害重症度機械学習モデルの出力を使用して、0から1まで変化する、またはクラス#として示され得る予測睡眠障害重症度指数(Ksd)を決定する。例えば、0から1まで変化する指数について、睡眠障害重症度機械学習モデルは、N個の異なるクラスの睡眠障害重症度のうちの1つを出力することができ、クラス1は最も低い重症度を有し、クラスNは最も高い重症度を有し、Nは整数である。予測睡眠障害重症度指数は、次いで、予測睡眠障害重症度機械学習モデルによって提供されるクラス番号をNで割ることによって決定することができる。あるいは、予測睡眠障害重症度指数は、クラス#自体であってもよい。
【0131】
次いで、予測睡眠障害重症度指数が決定された後に、様々なアクションが実行され得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、行為406aにおいて、予測睡眠障害重症度指数は、呼吸補助デバイス202の患者またはユーザのためのレポートに記録され得る。あるいは、少なくとも1つの実施形態では、行為406bにおいて、予測睡眠障害重症度指数は、呼吸補助デバイス202の動作を調整するために、呼吸不全の介入/予防に組み込まれ得る。例えば、予測睡眠障害重症度指数(Ksd)は、方法450、500、または600のうちの1つにおいて使用することができる。例えば、方法500または600のうちの1つは、睡眠時無呼吸が間近に発生することを予測することができ、予測睡眠障害重症度指数は、睡眠時無呼吸事象が発生するのを防止するために圧力をどれだけ増加させるかを決定するために使用することができる。したがって、睡眠障害重症度指数が低い値(例えば、重症度クラス1)である場合、PAP圧力は、0.5cm H2Oだけ上昇させる必要があり得る。しかしながら、睡眠障害重症度指数がわずかに高いレベル(例えば、重症度クラス2)にある場合、PAP圧力は、例えば、1cm H2Oだけ圧力を上昇させるなど、より大きい量だけ上昇されなければならない。
【0132】
あるいは、予測睡眠障害重症度指数を決定する別の方法は、予測された無呼吸事象の長さに基づく。例えば、睡眠時無呼吸の場合、睡眠時無呼吸の予測睡眠障害重症度指数は、以下のような方法で分類することができる。クラス1:睡眠時無呼吸は5秒未満持続、クラス2:睡眠時無呼吸は5~10秒間持続、クラス3:睡眠時無呼吸は約10~15秒間持続、クラス4:睡眠時無呼吸事象は15秒より長く持続する。例えば、次に
図6Bを参照すると、第1の睡眠時無呼吸事象(SAE-1)がクラス2であり、第2の無呼吸事象(SAE-2)がクラス4である異なるクラスの2つの睡眠時無呼吸事象の例を示す、患者について測定された流量、圧力、抵抗、およびリアクタンス信号のプロットが示されている。
【0133】
別の例として、他の呼吸器疾患のための他の呼吸不全の場合、予測される睡眠障害重症度指数の強度の定義は変わり得る。例えば、COPDでは、予測睡眠障害重症度指数は、呼気流量がどれくらい速くプラトーに達するかから決定され得る、呼気流量制限(EFL)がどれくらい深刻かを表すことができる。これはまた、FOT法を使用して、測定されたRおよびXから抽出され得る。
【0134】
次に
図6Cを参照すると、実際の患者が経験する例示的な閉塞性無呼吸事象の前およびその間に決定された予測信号が示されている。予測される正常呼吸の確率を表す曲線420は、最初は1に近く、一方、閉塞性無呼吸の確率を表す曲線422は、ゼロに近い。ある時点(この場合、0.5の確率)で、これら2つの確率の曲線が交差し、閉塞性無呼吸が予測される。
【0135】
次に
図6Dを参照すると、患者が経験する例示的な閉塞性無呼吸事象の前およびその間の
図6Cの予測信号に対応する実際の呼吸測定値が示されている。
図6Cの確率の曲線に対応する背景色を使用して、患者の呼吸の流量が示される。したがって、背景色420cは正常呼吸を表し、背景色422cは閉塞性無呼吸事象に関連付けられた呼吸を表す。背景色が青色(420c)からオレンジ色(422c)に変化する非常に早い時期に、これは、閉塞性無呼吸の確率が増加したことを反映することがわかる。また、この特定の患者が使用していた通常の市販のCPAP機械において、閉塞性無呼吸事象の予測が本明細書の教示に従って記載される技術を使用して行われた20~30秒後に、閉塞性無呼吸が424t(検出)とタグ付けされたことが示される。
【0136】
次に
図6Eを参照すると、実際の患者が経験する例示的な中枢性無呼吸事象の前およびその間に決定された予測信号が示されている。予測される正常呼吸(青色)の確率を表す曲線430は、最初は1に近く、一方、中枢性無呼吸(緑色)の確率を表す曲線432は、ゼロに近い。ある時点(この場合、0.5の確率)で、これらの2つの確率は交差し、中枢性無呼吸が予測される。
【0137】
次に
図6Fを参照すると、患者が経験する例示的な中枢性無呼吸事象の前およびその間の
図6Eの予測信号に対応する実際の呼吸測定値が示されている。
図6Eの確率の曲線に対応する背景色により、患者の呼吸の流量が示される。したがって、背景色430cは正常呼吸を表し、背景色432cは中枢性無呼吸事象に関連付けられた呼吸を表す。背景色が青色(430c)から緑色(432c)に変化する非常に早い時期に、中枢性無呼吸の確率が増加したことを反映していることがわかる。また、この特定の患者が使用していた従来の市販のCPAP機械において、閉塞性無呼吸事象の予測が本明細書の教示に従って記載される技術を使用して行われた30~40秒後に、中枢性無呼吸が434t(検出)とタグ付けされたことが示される。
【0138】
次に
図7を参照すると、本明細書の教示による、呼吸補助デバイスの設定を調整するために、呼吸不全検出と、睡眠段階分類指数および予測睡眠障害重症度指数のうちの少なくとも1つとを利用する呼吸補助制御方法450の例示的な実施形態が示されている。説明を容易にするために、呼吸補助システム200に示される要素は、方法450の様々なステップを説明する際に使用されるものとする。例えば、方法450は、呼吸補助システム200のプロセッサ228によって実装され得る。しかしながら、この技術は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250または別の適用可能なデバイス上で使用され得ることを理解されたい。
【0139】
方法450は、先に説明した行為302~308を組み込む。行為452において、方法450は、ベースライン加重インピーダンスZ
ref,w(t)と現在の加重インピーダンスZ
var,w(t)との組合せに基づいて、時変呼吸指数K(t)(すなわち、呼吸指数信号)の値を決定する。例えば、時変呼吸指数K(t)は、ベースライン加重インピーダンスZ
ref,w(t)に対する現在の加重インピーダンスZ
var,w(t)の偏差に基づいて決定することができ、その一例を式4に示す。
【数2】
したがって、呼吸指数信号K(t)は1に正規化される。指数K(t)の値を決定するための上記の方法は、一例として提供され、代替実施形態では、指数K(t)は、他の方法を使用して決定され得ることに留意されたい。例えば、指数K(t)は、Z
ref,w(t)に対するZ
var,w(t)の正規化された合計標準偏差を使用して決定され得る。あるいは、他の統計的方法を適用して、Z
ref,w(t)に対するZ
var,w(t)の変化を決定/追跡することができる。
【0140】
行為452はまた、経時的な睡眠段階分類指数(すなわち、Kss(t))および/または経時的な予測睡眠障害重症度指数(すなわち、Ksd(t))を決定することを含む。次いで、方法450は、これらの指数を組み合わせる。この組合せは、各指数をそれぞれの閾値と比較することによって行うことができ、それは、実験データまたは集団データに基づいて、これらのそれぞれの指数を使用して呼吸不全状態を検出するために定義された閾値の表から取得することができ、Kss(t)および/またはKsd(t)を含むことによって、信頼性の高い結果を取得するために、全体的な閾値比較確認を考え出す。
【0141】
各指数信号K(t)、Kss(t)、およびKsd(t)は、時間依存性を有するが、実際には、各時点が、ウィンドウサイズおよびウィンドウの重複に依存する特定の監視期間に対応する、離散的な時点の値であることに留意されたい。
【0142】
例えば、K(t)を閾値Thと比較することができ、合格がある場合、Kss(t)をその睡眠段階閾値と比較することができ、および/またはKsd(t)をそれ自体の睡眠障害重症度閾値と比較して、K(t)とその閾値との比較が有効な合格であったことを確認することができる。あるいは、3つすべての指数を、数学的マッピング関数に従って組み合わせ、次いで、同じ数学的マッピングを実行しながら、実験データまたは集団データに基づいて各呼吸不全状態を検出するために定義された閾値の表に基づいて決定された指数と比較することができる。例えば、数学的マッピングは、K,ss(t)=K(t)*Kss(t)またはK,sd(t)=K(t)*Ksd(t)またはK,ss,sd(t)=K(t)*Kss(t)*Ksd(t)であり得る。あるいは、乗算を介して結合する代わりに、組合せは、一例として、K,ss(t)=K(t)/(K(t)+Kss(t))+Kss(t)/(K(t)+Kss(t))などの重み付き和を通して、またはK,ss(t)=(K(t)+Kss(t))/2などの平均によって行うことができる。あるいは、別の数学的マッピング関数が使用されてもよい。
【0143】
したがって、組合せ指数は、呼吸不全を検出する(または方法500または600におけるように予測する)ために使用され、治療を調整する(すなわち、ユーザのニーズに応じて呼吸補助デバイスの設定を調整する)ために使用され得る。例えば、組合せ指数と1つ以上の閾値との比較が合格を示す場合、これは、ユーザ210が呼吸不全を経験していないこと、またはユーザの呼吸器の健康に有意な変化がないことを示す。この場合、方法450は行為456に進み、呼吸補助デバイス202の現在の設定が維持される。
【0144】
しかしながら、組合せ指数についての比較が、呼吸不全が発生している、または呼吸不全が発生すると予測されることを示す場合、ユーザ210は、呼吸不全を経験している可能性があるか、または現在の監視期間中に呼吸器の健康に何らかの他の有意な変化があった可能性がある。この場合、方法450は、行為458に進み、ユーザの呼吸器の健康が改善され、ユーザが以前に経験していた呼吸不全をもはや経験しないように、呼吸補助デバイス202の設定が変更される。調整は、様々な方法で行うことができる。呼吸補助デバイス202の動作を調整する実際の方法は、ユーザのベースラインの呼吸器の健康に依存し得る。調整の量は、予測睡眠障害重症度指数の値に基づいてもよい。調整の量はまた、ルックアップテーブル内でアクセスされ得る調整係数を作成するために使用される実際のユーザデータに対する実験データから取得された試験結果に基づいて決定され得る。さらに、患者から取得された以前のデータ(例えば、ユーザの以前のPAP機械から収集されたデータ)を使用して、パラメータを調整することができる。
【0145】
方法450が行為456または458を実行した後、方法450は行為460に進み、方法450が動作を継続すべきかどうかが決定される。行為460における状態が真である場合、方法450は行為462に進み、終了する。行為460における状態が真でない場合、方法450は、行為304に進み、センサ値を取得し続け、現在の加重インピーダンスを監視し、指数値を生成し、それらを1つ以上の閾値と比較して、ユーザ210が呼吸不全をいつ経験しているか、または間近に経験すると予測されるかを決定し、そうである場合、呼吸補助デバイス202の動作を更新して、呼吸不全を低減または停止する。
【0146】
次に
図8を参照すると、圧力および空気流測定値ならびに少なくとも1つの他の生理学的測定値を取得し、測定値を使用して、ユーザに対して呼吸不全がいつ発生しているかを予測するために使用することができ、また、睡眠段階分類指数および/または予測睡眠障害重症度指標も組み込んで、予測された呼吸不全が発生するのを防止するように呼吸補助デバイス202の動作を制御するための積極的アクションをとる、呼吸補助制御方法500の例示的な実施形態を示すフローチャートが示されている。
図7の説明と同様に、説明を容易にするために、呼吸補助システム200に示される要素は、予測を行うための方法500の様々なステップを説明する際に使用されるものとする。例えば、方法500は、呼吸補助システム200のプロセッサ228によって実装され得る。しかしながら、この技術は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250または別の適用可能なデバイス上で使用され得ることを理解されたい。
【0147】
方法500は、呼吸補助デバイス202が起動され、ユーザ210に空気流を供給しているときに、方法450と同様の方法で開始する。行為502は、FOTを実行するための行為302と同じであり、行為504は、行為304と同様であり、流量変換器220および圧力変換器221などのセンサを使用して、ユーザ210に送信される空気流(摂動を含む)の流量および圧力をそれぞれ測定し、これらの測定された信号は、行為304で取得されたものと同様の方法で前処理される。しかしながら、行為504は、行為504が、XXによって示される少なくとも1つのPSG信号を取得することも含むという点で、行為304とは異なる。PSG信号XXは、(a)ユーザの呼気中のCO2、O2および/または他の何らかのガス、(b)ユーザのECG(すなわち、脳活動)、(c)ユーザのEOG(すなわち、眼球運動)、および/または(d)ユーザのEMG(すなわち、骨格筋活動)を含む。これらの信号は、前述のように測定することができる。現在、PSG信号は、呼吸不全を予測するために、呼吸の圧力および流量の測定に加えて使用されている。これは、呼吸不全を検出するために、呼吸の圧力および流れの測定のみが使用された
図7の方法450とは対照的である。
【0148】
信号が増幅およびフィルタリングを適用することによって処理された後、処理された信号は、さらなる処理および分析のためにプロセッサ228によって受信される。行為506において、プロセッサ228は、分析されるデータの様々な時間ウィンドウについての抵抗Rrs(t)およびリアクタンスXrs(t)だけでなく、平均機械インピーダンスZrsの推定値を取得するためにデータを分析するためにウィンドウおよび周波数変換を使用することに関して方法450の行為406について説明したように、空気流の体積V(t)およびユーザの呼吸器系の機械インピーダンスを経時的に決定することができる。行為506はまた、行為306について説明したのと同様の方法で分析されるデータの様々な時間ウィンドウにおける、それぞれ、抵抗およびリアクタンスについての重みパラメータwRおよびwX、ベースライン加重インピーダンスZref,w(t)、および現在の加重インピーダンスZvar,w(t)を決定する。しかしながら、行為506は、行為506が、追加の生理学的および/または神経学的信号XXについてベースライン加重PSG信号XXref,w(t)および現在の加重PSG信号XXvar,w(t)を決定することも含むという点で、行為306と異なる。少なくとも2つのPSG信号を使用してベースライン加重PSG信号XXref,w(t)および現在の加重PSG信号XXvar,w(t)が決定されるとき、これらのPSG信号は、何らかの方法で結合される。例えば、時系列データには複数のストリームがあるので、相互相関、クロススペクトル密度、またはデータストリームのペアのコヒーレンスは、データストリームのペア間の関係を示すので、より豊富な分析モードを提供して決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、圧力データと流量データとの間のコヒーレンスは、0と1との間の値をもたらし得、これは、さらなる分析のために使用され得る時系列データとして使用され得る。
【0149】
次いで、方法500は、行為508に進み、方法500が呼吸補助デバイス202によって実施されている間に、方法が行為520で終了するまで、現在の加重インピーダンスZvar,w(t)および現在の加重PSG信号XXvar,w(t)の連続監視が実行される。現在の加重インピーダンスZvar,w(t)は、式(3)に従って取得され得る。現在の加重PSG信号XXvar,w(t)は、現在の時間ウィンドウからのデータを使用して計算が行われることを除いて、XXref,w(t)と同じ式を使用して取得される。
【0150】
行為508はまた、呼吸状態を表す第1の時変指数K
1(t)(すなわち、第1の指数信号)、およびPSG状態を表す第2の時変指数K
2(t)(すなわち、第2の指数信号)についての値を決定することを含む。例えば、第1の指数K
1(t)は、式(5)に従って、ベースライン加重インピーダンスに対する現在の加重インピーダンスの偏差を追跡することができる。第2の指数K
2(t)は、式(6)に従って、ベースライン加重PSG信号に対する現在の加重PSG信号の偏差を追跡することができる。
【数3】
【数4】
式(5)および(6)は、例として提供され、指数K
1(t)およびK
2(t)を決定する他の技術があり得る。式(5)および(6)に基づいて、K
1(t)およびK
2(t)は、1以下の大きさを有するように正規化される。他の実施形態では、指数信号K
1(t)およびK
2(t)を決定するために、式(5)および(6)の代わりに他の式を使用することができる。行為508はまた、行為452について説明したように、Kss(t)およびKsd(t)を決定することも含む。
【0151】
次いで、方法500は、行為510に進み、第1および第2の指数信号K1(t)およびK2(t)を組み合わせて、呼吸指数信号K12(t)を作成する。指数信号K12(t)は、様々なインピーダンス測定値の加重の影響と別のPSG測定値との組合せである。例えば、K1は、測定されたインピーダンスであり得、K2は、EEGから測定され得、K12(t)を作成するときに両方とも考慮される。この組合せは、式(7a)または式(7b)に従って行うことができる。
K1,2(t)=K1(t)*K2(t) (7a)
K1,2(t)=K1(t)/(K1(t)+K2(t))+K2(t)/(K1(t)+K2(t)) (7b)
あるいは、K1(t)とK2(t)のK1,2(t)への組合せは、別の技術を使用して行うことができる。呼吸指数K1,2(t)が呼吸不全の予測に使用され、呼吸指数K(t)が呼吸不全の検出に使用されるという点で、呼吸指数K1,2(t)は、呼吸指数K(t)とは異なる。行為510はまた、行為452において方法450について説明した技術を使用して、K1,2(t)ならびにKss(t)および/またはKsd(t)と1つ以上の閾値の組合せ比較を実行することを伴い、合格または不合格が決定され、次いで、次の行為を決定するために行為512において検討される。
【0152】
行為512において合格がある場合、これは、ユーザ210が、差し迫った将来(例えば、次の数十秒から1分程度)に呼吸不全を発症する可能性が低いことを示す。この場合、方法500は行為514に進み、呼吸補助デバイス202の現在の設定が維持される。
【0153】
しかしながら、行為512において失敗がある場合、これは、ユーザ210が、差し迫った将来(例えば、次の数十秒から1分程度)に呼吸不全を発症する可能性が高いと予測される。この場合、方法500は、行為516に進み、ユーザ210が予測される呼吸不全を経験する可能性を低減するために、呼吸補助デバイス202の設定が変更される。調整は、様々な方法で行うことができる。例えば、調整量は、予測睡眠障害重症度指数の値に基づいてもよく、調整量は、先に説明したように、実験データを使用して決定することができる。
【0154】
方法500が行為514または516を実行した後、方法500は行為518に進み、方法500の動作が終了したかどうかが決定される。行為518における状態が真である場合、方法500は行為520に進み、終了する。行為518における条件が真でない場合、方法500は、行為504に進み、引き続きセンサ値を取得し、現在の加重インピーダンスおよび現在の加重PSGを監視し、2つの指数値K1(t)およびK2(t)を生成し、それらを呼吸指数信号K1,2(t)に結合し、Kss(t)および/またはKsd(t)を生成し、K1,2(t)およびKss(t)および/またはKsd(t)との組み合せられた比較を行い、ユーザ210が呼吸不全を間近に経験する可能性が高いときを予測し、予測された呼吸不全を回避するために呼吸補助デバイス202の動作を更新する。
【0155】
重みパラメータ(wrおよびwX)は、ユーザの呼吸器系の反応性/弾性部分のうち、それ自体が弾性部分から離れているか、または逸脱しており、代わりに抵抗性部分に影響を及ぼしている特定の部分を反映することができる(例えば、抵抗およびエラスタンス自体が呼吸とともに正弦波的に変化しているという事実など、他の要因が関与することがあるため、正弦波エラスタンスおよび正弦波体積の乗算が、エラスタンスの一部の位相を変化させて、空気流と同相になり、したがって、より抵抗性になり得る)。この逸脱の結果は、限定はしないが、特定の肺領域の減少、ユーザの肺の不均一性の増加、および/またはユーザの肺内の液体の存在を含む様々な要因に起因して、気道の閉塞または呼吸器系への深い苦痛のいずれかとして物理的に現れることがあるので、ユーザ210に苦痛を引き起こす可能性がある。したがって、決定されたパラメータは、(a)呼吸不全を最小限に抑えるための呼吸補助デバイス202の調整、呼吸器疾患の存在の診断または識別、および/または(b)例えば、COPD患者の呼吸または排痰を助けるために、生成された空気流の圧力、流量、および/または水分などの呼吸補助デバイス202の動作パラメータを調整することに関して、治療結果を得るために呼吸補助デバイス202を動作させること、を実行するために使用することができる。
【0156】
次に
図9Aを参照すると、圧力および空気流測定値を取得し、測定値を睡眠段階分類指数Kss(t)および/または予測睡眠障害重症度指数Ksd(t)とともに使用して、ユーザ210に対して呼吸不全がいつ発生しているかを予測し、予測された呼吸不全が発生するのを防止するために呼吸補助デバイス202の動作を制御するための積極的アクションをとるために使用することができる呼吸補助制御方法600の別の例示的な実施形態を示すフローチャートが示されている。それぞれ
図7および8の方法450および500の説明と同様に、説明を容易にするために、呼吸補助システム200に示される要素は、方法600の様々なステップを説明する際に使用されるものとする。方法600は、プロセッサ228によって実行され得ることを理解されたい。しかしながら、この技術は、一体型呼吸補助デバイスコントローラ250または別の適用可能なデバイス上で使用され得ることを理解されたい。
【0157】
方法600は、呼吸補助デバイス202が起動され、ユーザ210に空気流を供給しているときに、方法450および500と同様の方法で開始する。行為602は、FOTを実行するための行為452および502と同じであるが、呼吸不全を予測するために使用されている生理学的パラメータが、測定されるためにFOT技術を必要としないとき、行為602は任意であり得ることに留意されたい。例えば、方法600とともに使用され得る生理学的測定値は、流量、圧力、および/または一回換気量であり得、その場合、FOT法は必要とされず、行為602は、スキップされ得る。あるいは、方法600とともに使用され得る生理学的測定値は、抵抗、リアクタンス、および/またはインピーダンスであってもよく、その場合、行為602のFOT法が実行される。
【0158】
行為604は、呼吸不全予測を実行するために使用されている生理学的パラメータに応じて、圧力信号と流量信号の両方ではなく、圧力信号および流量信号の一方のみを受信することを含み得るという点で、行為304と比較してわずかに異なり得る。例えば、呼吸不全を予測するために圧力が使用されている場合、圧力信号のみが測定され、受信される。あるいは、抵抗、リアクタンスおよび/またはインピーダンスなどの生理学的パラメータが呼吸不全を予測するために使用されている場合、行為604において、流量信号と圧力信号の両方が測定され、受信される。これらの場合の各々において、信号は、前述のように測定することができる。
【0159】
信号が、前述のように、必要に応じて増幅およびフィルタリングを適用することによって処理された後、処理された信号は、さらなる処理および分析のためにプロセッサ228によって受信される。行為606において、プロセッサ228は、呼吸不全の発生前の約1秒、約2秒、約5秒、または約10秒などのある期間(tB)の間、生理学的パラメータ(PhC)のベースライン値を決定する。これは、ユーザ210に対して睡眠検査を実行し、各時間セグメントが呼吸事象の発生前のベースライン期間を含む生理学的パラメータを決定するための複数の時間セグメントデータを収集し、生理学的パラメータの特性についてのベースライン特性値を決定し、次いで実際の使用中に、特性についての現在の特性値を決定し、現在の特性値をベースライン特性値と比較して、呼吸不全が差し迫っている可能性が高いことを予測できるほど大きい変化があるかどうかを決定することによって決定され得る。
【0160】
本発明者らは、行為606で行われた決定が、全体の平均年齢が53歳の8人の男性および2人の女性を含む重度の睡眠時無呼吸を患う10人の患者についてのCPAPメモリカードからのデータを使用する第1の検査、およびすべて男性であり、重度の睡眠時無呼吸を患い、全体の平均年齢が51歳の7人の入院患者からのデータを使用する第2の検査を含む患者から取得された睡眠研究データに基づいて、差し迫った呼吸不全を予測するために使用され得ることを以前に決定した。第2の検査群については、すべてのデータが一晩記録され、第2の検査群の患者の睡眠時無呼吸事象の数は、CPAPメモリカードから取得されたデータの睡眠時無呼吸事象の数よりも少なかったが、第2の検査群のデータは、一晩の試験中に継続的に行われたFOT試験のFOTデータを含んでいた。すべてのデータは睡眠時無呼吸事象を有していたが、この知見は他のタイプの呼吸不全にも適用可能であると考えられる。これは、一般に、異なるタイプの呼吸状態で呼吸が健康であったときに記録された信号と比較して、呼吸不全が発生する前に記録された信号におけるスペクトル密度特性に有意差があることが見出されたからである。例えば、これは、睡眠時無呼吸を有する患者、ならびに空気流データとインピーダンスデータの両方において上昇していたCOPDに関連付けられた呼気流量制限などの他の呼吸状態を有する他の患者についての空気流データおよびインピーダンスデータにおいて見出された。
【0161】
上記の例のすべてにおいて、相対パワー密度は、約0.1~約60秒の時間ウィンドウにわたる特定のデータについて決定される。より長い時間ウィンドウは、データのノイズがより多い場合に有用である。次いで、行為608において、相対パワースペクトル密度に基づいて、時変指数K3(t)が決定され、次いで、行為609において、Ksd(t)および/またはKss(t)と組み合わせられて、方法450の行為452について前述したように、組合せ比較を実行し、次いで、行為610において、合格または不合格の結果について、組合せ比較をチェックすることができる。組合せ比較が、差し迫った呼吸不全事象が存在する可能性が低いことを示す場合、方法600は、行為612に進み、呼吸補助デバイス202の動作パラメータが同じままにされる。そうではなく、比較が、差し迫った呼吸不全事象が存在する可能性があることを示す場合、方法600は、行為614に進み、呼吸補助デバイス202の動作パラメータが、呼吸不全が発生する可能性を回避または低減するように調整される(前述のように)。調整の量は、前述のように、予測睡眠障害重症度指数の値に基づいてもよい。
【0162】
パワースペクトル密度が決定される行為608において、これは様々な方法で行うことができることに留意されたい。例えば、ウェルチ法を使用して、記録された信号のパワースペクトル密度を分解することができる。上述のように、呼吸不全から遠い時点および呼吸不全事象の直前の時点のパワースペクトル密度を比較すると、一部の周波数成分のパワーは、呼吸不全事象が起こる約30秒前に一貫して減少する。
【0163】
別の例示的な実施形態では、高速フーリエ変換を使用して、パワースペクトル密度値を取得することができる。あるいは、定数Q変換が使用されてもよく、記録されたデータのパワーが1/fスケーリング則に従ってほぼ先細りになり、したがって、絶対パワーがより高い周波数でかなり低くなり、パワーの相対的変化が非常に変動するので、有利であり得る。定数Q変換のような周波数が対数であるパラメータ化を使用することは、電力が対数的に離間されるので(FFT法によるように、直線的に離間される代わりに)、より安定した電力推定値を提供することができる。
【0164】
次に
図9Bを参照すると、無呼吸事象の予測持続時間/強度と、実際の真の持続時間/強度との間の相関のプロットが示されている。データは、25人の患者から4290夜の期間にわたって取得された。使用された機械学習モデルは、1000個の決定木の集合からなるランダムフォレストモデルであり、各決定木は、21,772個の訓練サンプルのランダムブートストラップ上で訓練された(サンプルは、決定木ごとに21,772回置き換えて採取された)。使用され得る入力特徴は、機械学習モデル229fの説明におけるものと同様であり得る。予測無呼吸持続時間の平均二乗誤差を最小にするようにモデルを訓練した。5088の閉塞性無呼吸例を含む931夜の保持データを使用して検証を行い、平均絶対誤差2.72sが取得された。無呼吸持続時間の分散の約31.2%は、以下の式を使用することによって説明することができる。
explained_variance=1-Var(y-y_predicted)/Var(y) (8)
説明された変動は、数学的モデルが変動を説明する割合を測定する。
図9Bの直線は、モデルの出力と真の値との間の相関を示すための最良適合線である。
【0165】
本明細書で説明される様々な検出および予測方法では、各監視期間のXX、Rvar、Xvar、XXvar、およびPhC信号に基づいて他の加重測度を使用することができ、Zvar,w、Zref,w、XXvar,w、XXref,w、およびPhCが例として与えられることに留意されたい。したがって、ベースライン加重インピーダンスおよび現在の加重インピーダンスの測定値は、より一般的には、対応する監視期間にわたってXvarおよびRvarを使用して各々決定される、ベースライン加重呼吸状態値および現在の加重呼吸状態値と呼ばれ得る。
【0166】
本発明者らによって以前に証明されたように、別の態様では、呼吸補助デバイスコントローラ206を利用する、本明細書で説明される呼吸補助デバイスコントローラおよび/またはシステムの実施形態のうちの少なくとも1つは、単一の周波数で動作することによってさらに簡略化され得る。既知の単一周波FOT機械は、一般に呼吸に近い周波数(例えば、4~5Hz)で動作するが、本明細書に記載される様々な実施形態は、より小さい、より軽いアクチュエータ216の使用を可能にする、より高い周波数で動作することができ、それは、呼吸補助デバイスコントローラが、より低い電力消費、より正確な信号処理、およびより小さいフットプリントを有することを可能にし、したがって、それは、インライン方式で既存の呼吸補助デバイスとともにより容易に使用され得る。これは、より高い周波数が、より高い信号対雑音比(SNR)につながる呼吸雑音によってあまり汚染されないからである。その結果、ユーザ210に送信される空気圧摂動の振動の必要な振幅は、より小さくなり、より小さく、より軽く、おそらくより安価なアクチュエータによって提供され得る。さらに、振動のより高い周波数を使用することはまた、ユーザ(例えば、患者)が、提供される空気流の振動を感知することから受ける不快感を低減する。
【0167】
本出願人の教示は、例示の目的で様々な実施形態と併せているが、本明細書に記載される実施形態が例であることを意図しているため、本出願人の教示は、そのような実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、本明細書に記載され図示された出願人の教示は、本明細書に記載された実施形態から逸脱することなく、様々な代替、修正、および均等物を包含し、その一般的な範囲は、添付の特許請求の範囲に定義される。