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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】シートの配置方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 41/00 20060101AFI20240412BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240412BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240412BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B65H41/00 C
B65H37/04 A
C09J7/38
C09J201/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022557508
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038363
(87)【国際公開番号】W WO2022085614
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020176126
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小野 毅
(72)【発明者】
【氏名】草間 博幸
(72)【発明者】
【氏名】奈良 知幸
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222366(JP,A)
【文献】特開2006-321644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 41/00
B65H 37/04
C09J 7/38
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性を有するシートを配置する方法であって、
第1基材上に載置された前記シートと、前記第1基材との間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すとともに、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出すことにより、前記移動板の表面上に、前記移載ベルトを介して、前記シートを掬い上げる掬上工程と、
前記移載ベルトを前記移動板の主面側から裏面側に繰り戻すことにより、前記移動板の表面上に掬い上げた前記シートを、前記移動板の裏面上に、前記移載ベルトを介して、保持する裏回工程と、
前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出すことにより、前記移動板の裏面上に保持した前記シートを、第2基材上に配置する配置工程と、を有する、
シートの配置方法。
【請求項2】
前記配置工程において、移動板を送り戻すとともに、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出す、
請求項1に記載のシートの配置方法。
【請求項3】
厚さ方向に10Nの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
請求項1又は2に記載のシートの配置方法。
【請求項4】
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項5】
前記シートのボールタックテスターに拠る粘着性が、0~300mm以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項6】
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布であり、
前記移載ベルトの厚みが、0.012~0.15mmである、
請求項1~5のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
【請求項7】
移動板と、
前記移動板をスライド移動するとともに該スライド移動の速度を調整する移動機構と、
前記移動板の移動方向に周設された移載ベルトと、
前記移動板の移動とは独立して、移載ベルトを、前記移動板の裏面側から主面側に繰り出し、かつ、前記移動板の主面側から裏面側に繰り戻すことのできる、繰出機構と、を備える、
シートの配置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柔軟性や難掴持性を有する被移載物を移載するための方法として、移載ベルトを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の方法では、支持板材上に移載ベルトを設け、支持板材を進退移動させることで、移載ベルトと被移載物との間で摩擦を生じさせることなく、被移載物を移載ベルト上に掬い上げることができる。また、掬い上げた被移載物は、支持板材を進退移動させることで、任意の場所に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-222153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法は、主に、ハンバーグ半製品、パン生地、果物などの食品をターゲットとするものである。このような特許文献1に記載の方法では、移載ベルト上に掬い上げた状態のまま、被移載物を他の場所に移載することはできるが、移載ベルトと被移載物の接触面以外の面を、他の場所に接触させて移載することは容易ではない。しかしながら、工業上は、例えばシート状の被移載物の移載ベルトと接触していない面を、他の場所に接触させて移載すること(以下、「裏回り」ともいう)が求められる場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、裏回りを可能とするシートの配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
粘着性を有するシートを配置する方法であって、
第1基材上に載置された前記シートと、前記第1基材との間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すとともに、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出すことにより、前記移動板の表面上に、前記移載ベルトを介して、前記シートを掬い上げる掬上工程と、
前記移載ベルトを前記移動板の主面側から裏面側に繰り戻すことにより、前記移動板の表面上に掬い上げた前記シートを、前記移動板の裏面上に、前記移載ベルトを介して、保持する裏回工程と、
前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出すことにより、前記移動板の裏面上に保持した前記シートを、第2基材上に配置する配置工程と、を有する、
シートの配置方法。
〔2〕
前記配置工程において、移動板を送り戻すとともに、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出す、
〔1〕に記載のシートの配置方法。
〔3〕
厚さ方向に10Nの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
〔1〕又は2に記載のシートの配置方法。
〔4〕
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔5〕
前記シートのボールタックテスターに拠る粘着性が、0~300mm以下である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔6〕
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布であり、
前記移載ベルトの厚みが、0.012~0.15mmである、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のシートの配置方法。
〔7〕
移動板と、
前記移動板をスライド移動するとともに該スライド移動の速度を調整する移動機構と、
前記移動板の移動方向に周設された移載ベルトと、
前記移動板の移動とは独立して、移載ベルトを、前記移動板の裏面側から主面側に繰り出し、かつ、前記移動板の主面側から裏面側に繰り戻すことのできる、繰出機構と、を備える、
シートの配置装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、裏回りを可能とするシートの配置方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】掬上工程を示す概略図である。
図2】移動板22の他の態様を示す概略断面図である。
図3】裏回工程を示す概略図である。
図4】配置工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0010】
〔シートの配置方法〕
本実施形態のシートの配置方法は、粘着性を有するシートを配置する方法であって、第1基材上に載置された前記シートと、前記第1基材との間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すとともに、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出すことにより、前記移動板の表面上に、前記移載ベルトを介して、前記シートを掬い上げる掬上工程と、前記移載ベルトを前記移動板の主面側から裏面側に繰り戻すことにより、前記移動板の表面上に掬い上げた前記シートを、前記移動板の裏面上に、前記移載ベルトを介して、保持する裏回工程と、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から主面側に繰り出すことにより、前記移動板の裏面上に保持した前記シートを、第2基材上に配置する配置工程と、を有する。
【0011】
〔粘着性を有するシート〕
本実施形態の配置方法において好適に用いられる粘着性を有するシート(粘着シート11)は、柔軟性や粘性を有することが好ましい。このような粘着シート11は、柔らかく変形しやすいうえに、様々なものに対してくっつきやすく、特に移載が困難であるため、本発明が特に有用である。特に、本発明の配置方法を用いることにより、移載時の粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる。
【0012】
(シート物性)
粘着シート11のアスカーC硬度は、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である。また、粘着シート11のアスカーC硬度は、好ましくは5以上である。アスカーC硬度が上記範囲内である粘着シート11は、比較的に柔らかいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。
【0013】
粘着シート11の表面の粘着力は、好ましくは0.2N以上であり、より好ましくは0.3~10Nであり、さらに好ましくは0.3~8Nである。表面の粘着力が上記範囲内である粘着シート11は、粘着シートが第1基材や移載ベルトに密着しやすいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある箇所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。また、粘着力が0.2N以上であることにより、後述する裏回り工程で粘着シートがより保持されやすくなる傾向にある。
【0014】
粘着シート11のボールタックテスターに拠る粘着性は、好ましくは0~300mmであり、より好ましくは0~200mmであり、さらに好ましくは0~100mmである。ボールタックテスターに拠る粘着性が上記範囲内である粘着シート11は、粘着シートが第1基材や移載ベルトに密着しやすいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある箇所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。また、ボールタックテスターに拠る粘着性が300mm以下であることにより、後述する裏回り工程で粘着シートがより保持されやすくなる傾向にある。
【0015】
厚さ方向に10Nの荷重をかけた場合の粘着シート11の圧縮率は、好ましくは5~80%であり、より好ましくは5~60であり、さらに好ましくは15~60%である。圧縮率が上記範囲内である粘着シート11は、比較的に柔らかいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。
【0016】
粘着シート11の厚みは、好ましくは0.1~6mmであり、より好ましくは0.3~5mmである。厚みが上記範囲内である粘着シート11は、比較的に薄いものであるため、掬い上げ難く、また、薄いために変形もしやすいため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。
【0017】
(シート組成)
本実施形態の配置方法に用いる粘着シート11としては、特に制限されないが、例えば、樹脂と充填剤とを含む放熱シートが挙げられる。以下、放熱シートの組成について例示するが、本実施形態で用い得る粘着シート11は、下記放熱シートに限られるものではない。
【0018】
放熱シートは、一例として、シリコーン樹脂及び無機充填剤を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
【0019】
シリコーン樹脂を用いることにより、高柔軟性及び高熱伝導性の熱伝導性シートを得ることができる。シリコーン樹脂は、過酸化物架橋、縮合反応架橋、付加反応架橋、及び紫外線架橋等によって硬化反応を生じさせるものが好ましく、このなかでも付加反応架橋を生じさせるものがより好ましく、さらには、一液反応型又は二液付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。
【0020】
二液付加反応型シリコーン樹脂の例としては、特に制限されないが、例えば、末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンを含む第1液と、末端又は側鎖に2個以上のH-Si基を有するオルガノポリシロキサンを含む第2液とを含むものが挙げられる。これら二液付加反応型シリコーン樹脂は、互いに反応し硬化することにより、シリコーンゴムを形成することができる。
【0021】
無機充填剤は、放熱フィラーとして使用することができる。このような無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、金属アルミニウム及び黒鉛等が挙げられる。これら無機充填剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
無機充填剤の含有量は、粘着シート11の体積100体積%に対して、好ましくは35~85体積%であり、より好ましくは40~85体積%である。無機充填剤の含有量が多いほど熱伝導性がより向上する傾向にある。また、無機充填剤の含有量が少ないほど粘着シート11が適度な流動性を有し、圧縮して用いる放熱シートに好適に用いることができる。
【0023】
なお、粘着シート11は、任意の切れ目を有していてもよい。そのような切れ目の深さは、粘着シート11の厚さ100%に対して、好ましくは2%~90%であり、より好ましくは30%~80%であり、さらに好ましくは40%~70%である。このような切れ目を有することにより、配置されたシートを厚み方向に圧縮したときに、圧縮方向の力をシートの水平方向に逃がすことができる。そのため、粘着シート11を圧縮する際の荷重を低減することができ、また、圧縮の際に空気が入りにくい構造となる。なお、切れ目に関してはWO2018/190233を参照することができる。
【0024】
〔掬上工程〕
次に、本実施形態の粘着シート11の配置方法では、第1基材S1(移載元)上に載置された粘着シート11を掬い上げる掬上工程を行う。掬上工程では、第1基材S1と粘着シート11との間に、移載ベルト21が周設された移動板22を送り出すとともに、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から主面22a側に繰り出すことにより、移動板22上に、移載ベルト21を介して、粘着シート11を掬い上げる。
【0025】
図1に、配置装置20を用いた掬上工程の概略図を示す。配置装置20は、移載ベルト21と、移載ベルト21が周設された移動板22と、移動板22をスライド移動するとともにそのスライド移動の速度を調整可能な移動機構23と、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から主面22a側、又は、主面22a側から裏面22b側に繰り出す繰出機構25と、を備える。
【0026】
移載ベルト21は、移動板22の主面22a側から裏面22b側へ、移動板22を囲うように周設される。移載ベルト21は、例えば、両端が繰出機構25の第1ロール25a及び第2ロール25bに接続されている。移動板22を前方にスライドF3させる際に、繰出機構25の第1ロール25aが移載ベルト21の巻き取り(F51)を行い、第2ロール25bが移載ベルト21の送り出し(F52)を行うことで、移載ベルト21が移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出される(図1(b)のF4)。
【0027】
図1に記載の例では、第1ロール25a及び第2ロール25bを用いた繰出機構25を例示したが、繰出機構25は、移動板22の移動とは独立して、移載ベルト21を移動板22の周囲に沿って移動可能なものであれば特に制限されない。
【0028】
掬上工程においては、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出しながら移動板22の先端を第1基材S1と粘着シート11との間に徐々に進入させる。この進入により粘着シート11が図1(b)のように移載ベルト21の先端で掬われて移載ベルト21上にのり上げる。移動板22をさらにスライドさせて、移載ベルト21を繰り出すことにより粘着シート11が移載ベルト21上に完全に掬い上げられる。この掬い上げの際に粘着シート11と移載ベルト21との間に、粘着シート11を変形させるような摩擦が生じないため、粘着シート11は、変形、型崩れすることなく第1基材S1の上にあったままの形状が保持されて移載ベルト21上に掬い上げられる。
【0029】
なお、掬い上げ工程においては、移動機構23は、速度を変化させることなく、一定の速度で、移動板22をスライド移動させることが好ましい。また同様に、掬い上げ工程においては、繰出機構25は速度を変化させることなく、一定の速度で、移載ベルト21を繰り出すことが好ましい。これにより、掬い上げの際に生じ得る粘着シート11の変形や寸法精度の悪化がより抑制される傾向にある。
【0030】
掬い上げ工程における、移動板22の送り出し速度は、好ましくは5~50m/minであり、より好ましくは10~40m/minであり、さらに好ましくは15~30m/minである。掬い上げ工程における、移動板22の送り出し速度が上記範囲内であることにより、移動板22が粘着シート11と第1基材との間に侵入する際に生じる、粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0031】
なお、本実施形態においては、掬い上げられる粘着シート11が配されている移載元の基材を第1基材、粘着シート11が配置される移載先の基材を第2基材と呼称する。したがって、第1基材と第2基材は、本実施形態の配置方法において、シートの移載先か移載元かを区別するための呼称であり、実際には、同一の基材であっても異なる基材であってもよい。
【0032】
(移載ベルト)
移載ベルト21としては、特に制限されないが、例えば、繊維から構成される織布及び不織布や、膜状の成形体であるフィルムが挙げられる。また、織布、不織布、フィルムを構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル;テフロン(登録商標)等のフッ素;ナイロン、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン・アラミドなどのポリアミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニル;ポリアクリロニトリル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン;ポリエーテルエステル;ポリウレタンが挙げられる。また、任意の織布、不織布、フィルムに対して、剥離性の良好な膜をコーティングしたものを用いることもできる。
【0033】
粘着シート11の形状を損なわず掬上工程と配置工程を行い、また後述する保持工程においては、裏回りした際に粘着シート11を十分に保持できる構成を有することが好ましい。このような観点から、移載ベルト21はポリエステルを含むフィルムや、ポリエステル系繊維を含む織布であることが好ましく、ポリエステルを含むフィルムがより好ましい。
【0034】
移載ベルト21の厚みは、好ましくは0.012~0.15mmであり、より好ましくは0.03~0.15mmであり、さらに好ましくは0.05~0.15mmである。
【0035】
移載ベルト21の表面粗さは、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.03μm~500μmであり、さらに好ましくは0.1μm~50μmである。また、移載ベルト21の表面粗さは、第1基材S1の表面粗さ以上であることが好ましい。フィルムの場合の表面粗さが小さく、織布等の場合の表面粗さが大きくなる。移載ベルト21の表面粗さが上記範囲内であることにより、移載ベルト21と第1基材S1に対する粘着シート11の密着性を調整することができ、保持工程において裏回りした際に粘着シート11を十分に保持でき、移載の際には粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0036】
また、移載ベルト21の表面粗さを粘着テープの剥離強度として表現することもできる。例えば、移載ベルト21の表面に日東電工社31Bテープ25μm25mm幅を2kg圧着ローラーで貼付けて、20時間経過後に300mm/minで180°剥離強度を測定した場合、その剥離強度は0.01N/25mm以下であることが好ましい。なお、上記剥離強度は、平滑面であるほど高くなる傾向にある。
【0037】
移載ベルト21の水の接触角は、好ましくは40°以上であり、より好ましくは40~150°であり、さらに好ましくは90~130°である。また、移載ベルト21の水の接触角は、第1基材S1の水の接触角以上であることが好ましい。移載ベルト21の水の接触角が上記範囲内であることにより、移載ベルト21と第1基材S1に対する粘着シート11の密着性を調整することができ、移載の際に粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0038】
(移動板)
移動板22としては、特に制限されないが、例えば、ステンレス製、樹脂製の板が挙げられる。移動板22は、図1に示すように平板状のものであってもよいし、図2に示すように送り出される先端に、傾斜部22cを有するものであってもよい。移動板22が平板状の場合には、移動板22の先端が第1基材S1にぶつかったところから(掬上工程前(a))、移動板22の先端を第1基材S1に沿って滑らせるようにして掬上工程を行うことができる(掬上工程中(b))。
【0039】
一方、移動板22が傾斜部22cを有する場合には、移動板22の先端辺22eと第1基材S1のぶつかりを気にすることなく、掬上工程を行うことができる(図2(a)参照)。これにより、長尺な移動板の上に複数の粘着シート11をスライド方向F3に乗せる必要があるような場合であっても、第1基材S1に移動板22がぶつかることを回避でき、移動板22のスライド範囲が制限されることなく、掬上工程を行うことができる。
【0040】
傾斜部22cの平行板22dに対する角度θは、好ましくは15~45°であり、より好ましくは20~40°である。傾斜部22cの角度が上記範囲内であることにより、掬上工程や配置工程における粘着シート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0041】
移動板22の厚みは、好ましくは0.5~3.0mmであり、より好ましくは1.0~2.0mmである。移動板22の厚みが上記範囲内であることにより、粘着シート11の下に入り込みやすくなり、掬上工程や配置工程における粘着シート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。また、裏面22b側から主面22a側、又は、主面22a側から裏面22b側に、粘着シート11を裏回りさせた場合に、先端で移載ベルト21から粘着シート11が剥離することがより抑制される傾向にある。
【0042】
移動板22の送り出される先端辺22eの先端の角Rは、好ましくは0.25~2.0mmであり、より好ましくは0.5~1.0mmである。先端辺22eの先端の角Rが上記範囲内であることにより、粘着シート11の下に入り込みやすくなり、掬上工程や配置工程における粘着シート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。また、裏面22b側から主面22a側、又は、主面22a側から裏面22b側に、粘着シート11を裏回りさせた場合に、先端で移載ベルト21から粘着シート11が剥離することがより抑制される傾向にある。
【0043】
(繰出機構)
図1に記載の例では、第1ロール25a及び第2ロール25bを用いた繰出機構25を例示したが、繰出機構25は、移動板22の移動とは独立して、移載ベルト21を移動板22の周囲に沿って移動可能なものであれば、その構成は特に制限されない。例えば、移載ベルト21の巻き取り等を行う第1ロール25a及び第2ロール25bに代えて、第1ロール25a及び第2ロール25bの位置がそれぞれスライド方向F3へ前後するようにしてもよい。
【0044】
さらに、繰出機構25には、移載ベルト21の張力を調整する張力調整部25cが設けられていてもよい。例えば、張力調整部25cとしては、第1ロール25a及び第2ロール25bの回転数を制御し、移載ベルト21に張力を付与するものであってもよい。これにより、移載ベルト21は徐々に延性変形したり、それによりたわみが生じることを抑制したりすることができる。たわみが一定以上蓄積すると、掬上工程や配置工程において粘着シート11が変形や寸法精度の悪化を招来しやすくなるが、張力調整部25cを設けることにより、移載ベルトを張り替える等の調整をすることなく、掬上工程や配置工程を連続して行うことができる。
【0045】
〔裏回工程〕
次に、移載ベルト21を移動板22の主面22a側から裏面22b側に繰り戻すことにより、移動板22の表面上に掬い上げた粘着シート11を、移動板22の裏面22b上に、移載ベルト21を介して、保持する裏回工程を行う。
【0046】
図3に、裏回工程を表す概略図を示す。裏回工程においては、移載ベルト21を移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に繰り戻す(方向F6)。この際、粘着シート11は、移載ベルト21の移動に伴い、移動板22の主面22a側から裏面22b側へと移動し、その状態で保持される(裏回り)。裏回工程は、粘着シート11が第1基材S1及び第2基材S2と接触しない状態で行うことが好ましい。
【0047】
裏回工程においては、繰出機構25により移載ベルト21の繰り戻しを行うことができる。より具体的には、繰出機構25の第1ロール25aが移載ベルト21の送り出し(F71)を行い、第2ロール25bが移載ベルト21の巻き戻し(F72)を行うことで、移載ベルト21が移動板22の主面22a側から裏面22b側に繰り戻される(図3のF6)。
【0048】
この際、移載ベルト21の繰り戻しには移動板22のスライドを伴っても伴わなくてもよいが、後述する配置工程において移動板22を送り戻す場合には、裏回工程においては、移動板22のスライド、特には送り戻しを伴わないことが好ましい。
【0049】
〔配置工程〕
最後に、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から主面22a側に繰り出すことにより、移動板22の裏面22b上に保持した粘着シート11を、第2基材S2上に配置する配置工程を行う。
【0050】
図4に、配置工程を表す概略図を示す。配置工程においては、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から主面22a側に繰り出す。この際、はじめに、移動板22の裏面22b側で保持された粘着シート11の面11aは、第2基材S2と接触する(図4(a))。そして、さらに移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から主面22a側に繰り出すことで、粘着シート11の面11aと第2基材S2との接触面積が増加するとともに、粘着シート11の面11bと移載ベルト21との接触面積が減少する(図4(b))。最終的には、移載ベルト21から粘着シート11が離れることで、第2基材S2への粘着シート11の配置が完了する(図4(c))。
【0051】
これにより、面11aで第1基材S1上に接していた粘着シート11を、面11bで第1基材S2上に接する状態(裏回りした状態)で載置することができる。
【0052】
配置工程においては、繰出機構25により移載ベルト21の繰り出しを行うことができる。より具体的には、繰出機構25の第1ロール25aが移載ベルト21の巻き戻し(F91)を行い、第2ロール25bが移載ベルト21の送り出し(F92)を行うことで、移載ベルト21が移動板22の裏面22b側から主面22a側に繰り出される(図4のF8)。
【0053】
この際、移載ベルト21の繰り出しには移動板22のスライドを伴っても伴わなくてもよい。移動板22のスライドを伴わない場合には、配置装置20自体を後方(方向F11)へ引くことで、移載ベルト21からの粘着シート11の剥離をスムーズに行うことができる。一方、移動板22のスライド(方向F10)を伴うことにより、配置装置20自体を後方に引くことなく、移載ベルト21からの粘着シート11の剥離を行うことができる。
【0054】
〔配置装置〕
本実施形態のシートの配置装置20は、移動板22と、移動板22をスライド移動するとともに該スライド移動の速度を調整する移動機構23と、移動板22の移動方向に周設された移載ベルト21と、移載ベルト21を、移動板22の裏面22b側から主面22a側に繰り出し、かつ、移動板22の主面22a側から裏面22b側に繰り戻すことのできる、繰出機構25と、を備えるものである。
【0055】
本実施形態のシートの配置装置20の詳細な構成については、上記配置方法において記載したものと同様とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の配置方法は、被移載物を裏回りさせて配置することが要求される生産プロセスに用い得る方法として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0057】
11…粘着シート、11a,11b…シートの面、20…配置装置、21…移載ベルト、22…移動板、22a…主面、22b…裏面、22c…傾斜部、22d…平行板、22e…先端辺、23…移動機構、25…繰出機構、25a…第1ロール、25b…第2ロール、25c…張力調整部、S1…第1基材、S2…第2基材
図1
図2
図3
図4