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特許7471452モータ騒音制御方法、装置、コンピュータデバイス及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】モータ騒音制御方法、装置、コンピュータデバイス及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20240412BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H02P29/00
B60L15/20 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022566125
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2020115556
(87)【国際公開番号】W WO2022056717
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522422182
【氏名又は名称】寧波吉利汽車研究開発有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO GEELY AUTOMOBILE RESEARCH AND DEVELOPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 818 Binhai 2nd Road, Hangzhou Bay New District, Ningbo Zhejiang 315336, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】何 睦
(72)【発明者】
【氏名】湯 暁林
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲とん▼航
(72)【発明者】
【氏名】熊 銀斌
(72)【発明者】
【氏名】劉 泓清
(72)【発明者】
【氏名】彭 龍
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-054132(JP,A)
【文献】特開2010-221896(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125222(WO,A1)
【文献】特開2010-114978(JP,A)
【文献】特開2016-112918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K6/20-6/547
B60L1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
B60W10/00
10/02
10/06
10/08
10/10
10/18
10/26
10/28
10/30-20/50
H02P4/00
25/08-25/098
29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ騒音制御方法であって、
車両の現在の走行モードと、前記車両の現在の走行モードにおける前記車両全体の要求トルクとを決定するステップと、
前記車両の現在の走行モードにおける電気駆動騒音分配行列を取得するステップであって、前記電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間の対応関係を含むステップと、
前記電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するステップであって、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しいステップと、を含み、
所定の走行モードにおける各モータに対応するテスト騒音を取得するステップと、
前記テスト騒音が所定の騒音より大きい目標モータを取得するステップと、
前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とするステップと、
前記目標モータ騒音に基づいて、前記目標モータ騒音に対応する目標モータ回転速度および目標モータトルクを取得し、電気駆動騒音分配行列を作成するステップと、により、
前記所定の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成し、
前記所定の走行モードは、定速走行モード、加速走行モードまたは減速走行モードを含むことを特徴とするモータ騒音制御方法。
【請求項2】
前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とした後、前記方法は、
所定の順位付けルールに従って前記目標モータ騒音を順位付けするステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のモータ騒音制御方法。
【請求項3】
前記所定の順位付けルールに従って前記目標モータ騒音を順位付けするステップは、
前記目標モータ騒音を小さい順に順位付けするステップ、または
前記目標モータ騒音を大きい順に順位付けするステップを含むことを特徴とする請求項2に記載のモータ騒音制御方法。
【請求項4】
前記電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するステップは、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するステップ、または、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のモータ騒音制御方法。
【請求項5】
前記所定の分配ルールは所定のトルク比を含み、ただし、前記トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比であることを特徴とする請求項4に記載のモータ騒音制御方法。
【請求項6】
モータ騒音制御装置であって、
車両の現在の走行モードと、前記車両の現在の走行モードにおける前記車両全体の要求トルクとを決定するための決定モジュールと、
前記車両の現在の走行モードにおける電気駆動騒音分配行列を取得するための取得モジュールであって、前記電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間の対応関係を含む取得モジュールと、
前記電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するための分配モジュールであって、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しい分配モジュールと、を備え
所定の走行モードにおける各モータに対応するテスト騒音を取得するステップと、
前記テスト騒音が所定の騒音より大きい目標モータを取得するステップと、
前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とするステップと、
前記目標モータ騒音に基づいて、前記目標モータ騒音に対応する目標モータ回転速度および目標モータトルクを取得し、電気駆動騒音分配行列を作成するステップと、により、
前記所定の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成し、
前記所定の走行モードは、定速走行モード、加速走行モードまたは減速走行モードを含むことを特徴とするモータ騒音制御装置。
【請求項7】
コンピュータデバイスであって、
プロセッサとメモリとを備え、前記メモリの中には、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットが格納され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセットまたは命令セットが前記プロセッサによってロード、実行されることにより、請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ騒音制御方法を実施することを特徴とするコンピュータデバイス。
【請求項8】
コンピュータ記憶媒体であって、
少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットが格納され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセットまたは命令セットがコンピュータプロセッサによってロード、実行されることにより、請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ騒音制御方法が実施されることを特徴とするコンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音低減技術分野に関し、特に、モータ騒音制御方法、装置、コンピュータデバイス、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車が走っている時、特に加速時やエネルギー回収時に、ギア鳴きやモータ鳴きが発生することは明らかであり、従来の解決手段としては、通常、構造を最適化することにより騒音を低減している。例えばモータの電磁力の変更、ギアの歯形修正、サウンドパッケージの取り付け、車両全体の防振強化などによって車内の鳴きを低減する。
【0003】
しかし、上記の方法では、駆動機構の機械的な構造を変更する必要があり、コストがかかる上に、騒音低減効果が薄れるという問題がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、駆動機構の物理的な構造を変更することなく、車両の騒音低減を実現することである。
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本明細書は、モータ騒音制御方法を提供し、具体的に、前記方法は、
車両の現在の走行モードと、前記車両の現在の走行モードにおける前記車両全体の要求トルクとを決定するステップと、
前記車両の現在の走行モードにおける電気駆動騒音分配行列を取得するステップであって、前記電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間の対応関係を含むステップと、
前記電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するステップであって、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しいステップと、を含む。
【0006】
さらに、前記車両の現在の走行モードを決定する前に、前記方法はさらに、
所定の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成するステップを含み、ただし、前記車両の走行モードは、定速走行モード、加速走行モードまたは減速走行モードを含む。
【0007】
いくつかの実施可能な方法において、所定の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成するステップは、
所定の走行モードにおける各モータに対応するテスト騒音を取得するステップと、
前記テスト騒音が所定の騒音より大きい目標モータを取得するステップと、
前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とするステップと、
前記目標モータ騒音に基づいて、前記目標モータ騒音に対応する目標モータ回転速度および目標モータトルクを取得し、電気駆動騒音分配行列を作成するステップと、を含む。
【0008】
さらに、前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とした後、前記方法は、さらに、
所定の順位付けルールに従って前記目標モータ騒音を順位付けするステップを含む。
【0009】
いくつかの実施可能な方法において、所定の順位付けルールに従って前記目標モータ騒音を順位付けするステップは、
前記目標モータ騒音を小さい順に順位付けするステップ、または
前記目標モータ騒音を大きい順に順位付けするステップを含む。
【0010】
他のいくつかの実施可能な方法において、前記電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するステップは、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するステップ、または、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するステップを含む。
【0011】
他のいくつかの実施可能な方法において、前記いずれかの目標モータの回転速度が対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するステップは、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配するステップを含み、ただし、前記トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比である。
【0012】
前記いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するステップは、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配するステップを含み、ただし、前記トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比である。
【0013】
さらに、本明細書は、モータ騒音制御装置を提供し、前記装置は、
車両の現在の走行モードと、前記車両の現在の走行モードにおける前記車両全体の要求トルクとを決定するための決定モジュールと、
現在の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を取得するための取得モジュールであって、前記電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間の対応関係を含む取得モジュールと、
前記電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するための分配モジュールであって、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しい分配モジュールと、を備える。
【0014】
さらに、前記装置は、
前記車両の現在の走行モードを決定する前に、所定の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成するための作成モジュールを備え、ただし、前記車両の走行モードは、定速走行モード、加速走行モードまたは減速走行モードを含む。
【0015】
さらに、前記作成モジュールは、具体的に、
所定の走行モードにおける各モータに対応するテスト騒音を取得し、
前記テスト騒音が所定の騒音より大きい目標モータを取得し、
前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とし、
前記目標モータ騒音に基づいて、前記目標モータ騒音に対応する目標モータ回転速度および目標モータトルクを取得し、電気駆動騒音分配行列を作成するために用いられる。
【0016】
さらに、前記装置は、
前記目標モータのテスト騒音を、前記目標モータの目標モータ騒音とした後、所定の順位付けルールに従って前記目標モータ騒音を順位付けするための順位付けモジュールを備える。
【0017】
さらに、前記順位付けモジュールは、具体的に、
前記目標モータ騒音を小さい順に順位付けし、または
前記目標モータ騒音を大きい順に順位付けするために用いられる。
【0018】
さらに、前記分配モジュールは、具体的に、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配し、または、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するために用いられる。
【0019】
さらに、前記分配モジュールはさらに、具体的に、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配するために用いられ、ただし、前記トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比であり、または、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配するために用いられ、ただし、前記トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比である。
【0020】
さらに、本明細書は、コンピュータデバイスを提供し、前記コンピュータデバイスは、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットが格納され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセットまたは命令セットがコンピュータプロセッサによってロード、実行されることにより、上述のモータ騒音制御方法を実施する。
【0021】
さらに、本明細書は、コンピュータ記憶媒体を提供し、前記コンピュータ記憶媒体は、プロセッサとメモリとを備え、前記メモリの中には、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットが格納され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセットまたは命令セットが前記プロセッサによってロード、実行されることにより、上述のモータ騒音制御方法が実施される。
【0022】
上述の技術的解決手段を用いることにより、本明細書に記載されたモータ騒音制御方法、装置、コンピュータ装置および記憶媒体は、以下の有益な効果を奏する。
【0023】
本発明は、駆動機構の物理的な構造を変更せず、騒音が大きいモータ回転速度を避けるようにトルクを調整することによって、モータ騒音の低減を実現し、その結果、車内の騒音を低減し、騒音低減効果は明らかで、実施は簡単で実現可能であり、車両全体の他の性能に与える影響は小さい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本明細書の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明で使用する添付図面について簡単に説明するが、これらは明らかに本明細書の実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的努力を払わずにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本明細書の1つの実施例に係るモータ騒音制御方法のフローチャートである。
図2】本明細書の1つの実施例に係るモータ騒音伝達経路の模式図である。
図3】本明細書の1つの実施例に係る第1モータのモータ騒音の模式図である。
図4】本明細書の1つの実施例に係る第2モータのモータ騒音の模式図である。
図5】本明細書の他の実施例に係るモータ騒音制御方法のフローチャートである。
図6】本明細書の1つの実施例に係るモータ駆動音分配行列の作成方法のフローチャートである。
図7】本明細書に係るモータ騒音制御装置の構造ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
当業者が本明細書の解決手段をより良く理解できるように、以下は、本明細書の実施例における図面を参照して、本明細書の実施例における技術的解決手段を明確にかつ完全に説明する。説明される実施例は本明細書の実施例の一部に過ぎず、その全てではないことが明らかである。本明細書の実施例に基づき、当業者が創造的な労力を費やさずに得られた他のすべての実施例は、本明細書の保護範囲に含まれるものとする。
【0026】
以下の「1つの実施例」または「実施例」は、本明細書の少なくとも1つの実施形態に含まれ得る特定の特徴、構造または特性を意味する。本明細書の説明において、理解すべきことは、本明細書の明細書及び特許請求の範囲および上記添付図面における「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」などの用語は、特定の順序を意味しておらず、異なる対象を区別するために使用されているものである。また、「含む」、「備える」という用語およびその変形は、非排他的な包含を意図している。例えば、一連のステップまたはユニットを含むプロセス、方法、システム、製品またはデバイスは、記載されたステップまたはユニットに限定されるものではなく、記載されていないステップまたはユニットも選択的に含み、または、それらのプロセス、方法、システム、製品またはデバイスに固有の他のステップまたはユニットも選択的に含む。
【0027】
上記技術的課題を解決するために、本明細書では、モータ騒音制御方法を提供する。具体的に、図1に示すように、図1は、本明細書の1つの実施例に示すモータ騒音制御方法のフローチャートを示し、具体的に、前記方法は以下を含む。
【0028】
S102、車両の現在の走行モードと、車両の現在の走行モードにおける前記車両全体の要求トルクとを決定する。
【0029】
具体的に、車両の走行モードは、定速走行モード、加速走行モードまたは減速走行モードを含み得る。
【0030】
1つの実施可能な方法では、車両の現在の走行モードは、ペダルの踏み込み状況に基づいて決定され得る。ペダルは、ブレーキペダルとアクセルペダルとを含み、アクセルペダルの踏み込みからブレーキペダルの踏み込みに変更する場合、またはアクセルペダルの踏み込み力を減少させる場合には、車両が減速走行モードであると決定され、ブレーキペダルの踏み込みからアクセルペダルの踏み込みに変更する場合、またはアクセルペダルの踏み込み力を増加させる場合には、車両が加速走行モードであると決定され、アクセルペダルの踏み込み力を変更せずに運転している場合には、車両が定速走行モードであると決定され得る。
【0031】
理解すべきことは、上述した車両の現在の走行モードを決定する方法は例示に過ぎず、他の実施可能な方法では、車両の現在の走行モードは、所定の時間内に車両の速度(車速)の変化率に基づいて決定されてもよい。理解すべきことは、所定の時間は実際の要求に応じて設定してもよく、車速の変化率は正であっても負であってもよく、変化率を所定の変化率と比較してもよい。変化率が正であり、且つ、所定の変化率の範囲内にある場合、または、変化率が負であり、且つ、所定の変化率の範囲内にある場合は、車両の現在の走行モードが定速走行モードであると考えられ、変化率が正であり、且つ、所定の変化率の範囲内にない場合、車両が加速走行モードであると考えられ、変化率が負であり、且つ、所定の変化率の範囲内にない場合、車両が減速走行モードであると考えられる。さらに、車両の現在の走行モードは、他の手段に基づいて決定されてもよく、ここでは限定しない。
【0032】
さらに、車両の要求トルクは、現在の車速とアクセルペダル開度とに基づいてルックアップテーブルで算出され、ここでのルックアップテーブルで計算することは当該分野の常識であり、ここでは詳しく説明しない。例えば、ルックアップテーブルで計算することにより、車両が減速走行モードであるとき、車両全体の要求トルクは、-500Nmであることを知る。ただし、負の符号は加速度の方向のみを表し、すなわち車両が減速走行モードであることを表す。
【0033】
S104、現在の走行モードにおける車両の電気駆動騒音分配行列を取得する。
【0034】
具体的に、電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間の対応関係を含む。
【0035】
当然ながら、車両のモータは2つ以上であってもよい。電気駆動騒音分配行列では、各モータの目標モータ騒音、目標モータ回転速度、および目標モータトルクが1対1で対応する。モータの回転速度は、車両のシフトポジションを調節することによって決定、変更されることができる。
【0036】
S106、電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配する。
【0037】
具体的に、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しい。
【0038】
1つの実施可能な方法において、ステップS106は、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配することに基づいて実施されてもよく、
又は、別の実施可能な方法では、ステップS106は、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配することに基づいて実施されてもよい。
【0039】
いくつかの実施可能な方法において、いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配することは、具体的に、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配することを含み、ただし、トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比であり、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配することは、
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配することを含み、ただし、トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比である。
【0040】
理解すべきことは、各モータのトルク比は0から1まで変化することが可能である。
【0041】
以下、具体的な例で説明する。
本実施例において、車両は、第1モータと第2モータの2つのモータを含んでもよく、第1モータは前輪の回転を駆動するために用いられ、第2モータは後輪の回転を駆動するために用いられ、車両の総騒音は、第1モータの騒音と第2モータの騒音の和に由来し、異なる運転動作において、異なる回転速度とトルクに対応する。
【0042】
本明細書において、現在の車両の走行モードは減速走行モードであることを例として説明する。当該減速走行モードにおいて、車両全体の要求トルクは-500Nmである。負の符号が加速度の方向のみを表し、すなわち車両が減速走行モードであること、及び車両のシフトポジションが3速であることは、理解できる。
【0043】
当該3速のシフトポジションで、車両の減速走行モードにおいて、第1モータと第2モータの騒音伝達経路は図2に示すようになる。
【0044】
第1モータのモータ騒音は、構造経路および空気経路を介して車内に伝達され、構造経路において、第1モータのモータ騒音は、フロントサスペンション、フロントサブフレーム及び/又はボディを介して車内に伝達され、フロントサブフレームはボディに剛結されており、遮音性能が比較的低い。空気経路において、第1モータのモータ騒音は、ダッシュパネルを介して車内に伝達される。
【0045】
さらに、第2モータのモータ騒音も、構造経路および空気経路を介して車内に伝達され、構造経路において、第2モータのモータ騒音は、リアサスペンション、リアサブフレーム及び/又はボディによって車両に伝達され、リアサブフレームはボディに可撓性接続されており、防振性能が比較的高い。空気経路において、第2モータのモータ騒音はリアボディとサウンドパッケージ(車両のNVH性能に関わる各吸音、遮音、制振、シーリング部品の総称で、例えば、ダッシュパネルインシュレータ、カーペット、ヘッドライナー、ホールプラグなど)を介して車内に伝達される。その結果、第1モータと第2モータのモータ騒音は、車内への伝達経路が異なるため、それに対する遮音性能も異なる。
【0046】
さらに、減速走行モードのシミュレーションを行うことで、異なるモータ回転速度に対応するモータ騒音を取得してもよく、好ましくは、当該モータ騒音は24次のワイン(whine)ノイズであってもよい。具体的には、第1モータのモータ騒音図を図3に、第2モータのモータ騒音図を図4に示す。図3図4の横実線は標準モータ騒音であり、この標準モータ騒音を下回るモータ騒音は運転者や同乗者の運転体験や乗車体験には影響がないと考えて無視してもよく、この標準モータ騒音を上回るモータ騒音は運転者や同乗者の運転体験や乗車体験には影響があると考えてもよく、低減する必要があり、目標モータ回転速度、目標モータ騒音として表記する。
【0047】
異なるモータ回転速度でのモータ騒音を取得した後、表1のような目標モータ騒音、目標モータ回転速度、目標モータトルクを含む電気駆動騒音分配行列を作り、各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間は1対1で対応し、目標モータ回転速度と目標モータトルクは現在のモータの運転動作点を表している。
【表1】
【0048】
図3図4及び表1より、第1モータのモータ回転速度が1300rpm、2300rpm、及び3200rpmの時、または、第1モータのモータトルクが600Nm、1000Nm、1500Nmの時、モータ騒音が比較的顕著であり、第2モータのモータ回転速度が1600rpm、4000rpm及び4300rpmの時、または、第2モータのモータトルクが800Nm、2000Nm、2500Nmの時、モータ騒音が比較的顕著であり、低減する必要がある。したがって、この電気駆動騒音分配行列に基づいて、当該車両が減速走行モードである場合、第1モータの回転速度が1300rpm、2300rpmまたは3200rpmに達したとき、あるいは第1モータのモータトルクが600Nm、1000Nmまたは1500Nmに達したときに、第1モータと第2モータのトルクを再分配してもよく、車両全体の要求トルクを一定にした上で、第1モータのトルク比を小さくし、第2モータのトルク比を大きくし、例えば、第1モータのトルク比を元の7/10から3/10に減少させ、第2モータのトルク比を元の3/10から7/10に増加させる。または、第2モータの回転速度が1600rpm、4000rpmまたは4300rpmに達したとき、あるいは第2モータのモータトルクが800Nm、2000Nmまたは2500Nmに達したときに、第1モータと第2モータのトルクを再分配して、車両全体の要求トルクを一定にした上で、第1モータのトルク比を大きくし、第2モータのトルク比を小さくし、例えば、第1モータのトルク比を元の1/10から7/10に増加させ、第2モータのトルク比を元の9/10から3/10に減少させる。
【0049】
理解すべきことは、第1モータのトルク比と第2モータのトルク比は、いずれも0~1の範囲で変化することが可能であり、上記のトルク比はただ1つの好ましい解決手段に過ぎず、ここでは限定しない。
【0050】
理解すべきことは、本明細書における第1モータと第2モータのトルク分配制御方法によって、車両全体の要求トルクを低減することなく、異なるモータのトルクの比率のみを低減することで、運転動作によって車両全体の要求トルク供給が変化せず、車両全体の動力性能に影響を与えず、モータ駆動の全体効率への影響が比較的小さい。
【0051】
理解すべきことは、上記に列挙したモータの数は2つであることは、例示的な説明に過ぎず、本明細書のモータ騒音制御方法は、複数のモータを有する車両にも適用可能であり、その原理は同じなので、ここでは説明を省略する。
【0052】
他のいくつかの実施可能な方法において、本明細書は、さらに、図5に示すような、騒音制御方法の別の実施可能な方法を提供する。前記方法は以下を含む。
【0053】
S202、車両の現在の走行モードと、車両の現在の走行モードにおける車両全体の要求トルクとを決定する。
【0054】
理解すべきことは、車両の現在の走行モードを決定する前に、前記方法はさらに以下を含む。
【0055】
S200、所定のモードにおける車両の電気駆動騒音分配行列を作成する。
【0056】
理解すべきことは、当該所定のモードは、車両の速度シミュレーションテストを行い、異なる速度での各モータのテスト騒音を取得する際にシミュレーションした車両走行モードであり、テスト騒音とシミュレーションしたテスト速度とに基づいて電気駆動騒音分配行列を取得するために用いられる。すなわち、ここでの所定のモードとは、定速走行モード、加速走行モード、減速走行モードを含む車両の走行モードのことであると理解してもよい。
【0057】
具体的には、図6に示すように、ステップS200において、所定のモードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成することは具体的に以下を含む。
【0058】
S301、所定の走行モードにおける各モータに対応するテスト騒音を取得する。
【0059】
S303、テスト騒音が所定の騒音より大きい目標モータを取得する。
【0060】
S305、目標モータのテスト騒音を、目標モータの目標モータ騒音とする。
【0061】
S307、目標モータ騒音に基づいて、目標モータ騒音に対応する目標モータ回転速度および目標モータトルクを取得し、電気駆動騒音分配行列を作成する。
【0062】
さらに、他の実施可能な方法において、目標モータのテスト騒音を、目標モータの目標モータ騒音とした後、所定の順位付けルールに従って目標モータ騒音を順位付けしてもよく、例えば、目標モータ騒音を小さい順に順位付けするか、または、目標モータ騒音を大きい順に順位付けする。
【0063】
理解すべきことは、モータ騒音を順位付けすることで、モータ騒音の順番に基づいて各モータを明確に順位付けすることができ、それにより各モータが占めるトルク比を迅速に特定することが可能となり、トルク調整効率を向上させる。
【0064】
S204、車両の現在の走行モードにおける電気駆動騒音分配行列を取得し、電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度との間の対応関係を含む。
【0065】
S206、電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配し、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しい。
【0066】
理解すべきことは、本実施例において、説明されていない点については、上記実施例の説明を参照してもよい。
【0067】
さらに、本明細書は、モータ騒音制御装置を提供し、図7に示すように、当該装置は、
車両の現在の走行モードと、車両の現在の走行モードにおける前記車両全体の要求トルクとを決定するための決定モジュールと、
車両の現在の走行モードにおける電気駆動騒音分配行列を取得するための取得モジュールであって、電気駆動騒音分配行列は、現在の走行モードにおける各モータの目標モータ騒音と、目標モータ回転速度と、目標モータトルクとの間の対応関係を含む取得モジュールと、
電気駆動騒音分配行列に従って各モータのトルクを分配するための分配モジュールであって、各モータのトルクの合計が車両全体の要求トルクに等しい分配モジュールと、を備える。
【0068】
さらに、当該装置は、
車両の現在の走行モードを決定する前に、所定の走行モードにおける前記車両の電気駆動騒音分配行列を作成するための作成モジュールを備え、ただし、前記車両の走行モードは、定速走行モード、加速走行モードまたは減速走行モードを含む。
【0069】
さらに、作成モジュールは、具体的に、
所定の走行モードにおける各モータに対応するテスト騒音を取得し、
テスト騒音が所定の騒音より大きい目標モータを取得し、
目標モータのテスト騒音を、目標モータの目標モータ騒音とし、
目標モータ騒音に基づいて、目標モータ騒音に対応する目標モータ回転速度および目標モータトルクを取得し、電気駆動騒音分配行列を作成するために用いられる。
【0070】
さらに、当該装置は、目標モータのテスト騒音を、目標モータの目標モータ騒音とした後、所定の順位付けルールに従って前記目標モータ騒音を順位付けするための順位付けモジュールを備える。
【0071】
さらに、順位付けモジュールは、具体的に、
目標モータ騒音を小さい順に順位付けし、または、
目標モータ騒音を大きい順に順位付けするために用いられる。
【0072】
さらに、分配モジュールは、具体的に、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配し、
または、いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定の分配ルールに従って、各モータのトルクを分配するために用いられる。
【0073】
さらに、分配モジュールはさらに、具体的に、
いずれかの目標モータの回転速度がその対応する目標モータ回転速度に達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配するために用いられ、ただし、トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比であり、または
いずれかの目標モータのトルクがその対応する目標モータトルクに達すると、所定のトルク比に従って各モータのトルクを分配するために用いられ、ただし、トルク比は、車両全体の要求トルクに対する各モータのトルクの比である。
【0074】
さらに、本明細書は、コンピュータデバイスを提供し、当該コンピュータデバイスは、プロセッサとメモリとを備え、メモリの中には、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットが格納され、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットがプロセッサによってロード、実行されることにより、上述のモータ騒音制御方法を実施する。
【0075】
さらに、本明細書は、コンピュータ記憶媒体を提供し、当該コンピュータ記憶媒体は、なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットが格納され、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセットまたは命令セットがコンピュータプロセッサによってロード、実行されることにより、上述のモータ騒音制御方法が実施される。
【0076】
本明細書は、駆動機構の物理的な構造を変更せず、騒音が大きいモータ回転速度を避けるようにトルクを調整することによって、モータ騒音の低減を実現し、その結果、車内の騒音を低減し、騒音低減効果は明らかで、実施は簡単で実現可能であり、車両全体の他の性能に与える影響は小さい。
【0077】
注意を払うべきことは、上述した装置及び端末の実施例に含まれるモジュール及びユニットは、機能論理に従って分割されているが、対応する機能を実現できるのであれば、上述した分割に限定されない。さらに、モジュールやユニットの具体的な名称は、互いに区別するためのものであって、本明細書の保護範囲を限定するものではない。
【0078】
本願で提供されるいくつかの実施例において、開示される装置および方法は、他の方法で実施されてもよいことを理解されたい。例えば、上述した端末の実施例は、単に例示的なものであり、例えば、論理的な機能分割に過ぎないモジュールまたはユニットの分割は、実際に実施する際には別の方法で分割することができ、例えば、複数のユニットまたはコンポーネントを組み合わせたり、別のシステムに統合したり、一部の機能を無視したり、実施しなかったりすることが可能である。また、示された、または議論された相互結合、直接結合または通信接続は、何らかのインターフェース、モジュールまたはユニットを介した間接的な結合または通信接続であってもよく、電気的、機械的またはその他の形態であってもよい。
【0079】
上述したのは本明細書の好ましい実施例に過ぎず、本明細書を限定するためのものではない。本明細書の趣旨と原理から逸脱することなく修正、同等な置換、改善などを行った場合に、いずれも本明細書の保護範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7