(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】インキジェット印刷用のインキセット
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20240412BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20240412BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240412BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/54
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 134
B41M5/00 132
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2022567310
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021060817
(87)【国際公開番号】W WO2021224047
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ロウウェット,ジョス
(72)【発明者】
【氏名】デコスター,ルーク
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-509148(JP,A)
【文献】国際公開第2001/008895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-54
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を有する第一の樹脂を含む有機樹脂粒子を含む水性液と、着色剤及び第一の樹脂の第一級アミン官能基と反応することができる第二の樹脂を含む水性インキジェットインキとを含む、インキジェット印刷のためのインキセット
であって、
第一の樹脂が少なくとも:(i)ビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選ばれる繰り返し単位、(ii)破線が第一の樹脂のポリマー残基への共有結合を示すオキザリルアミド架橋単位-NHCOCONH--及び(iii)一般式I又は一般式II
【化1】
[式中、
XはO又はNHを示し
nは0又は1を示し、
R
1
は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキ
ニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
但しR
1
は少なくとも6個の炭素原子を含む]
【化2】
[式中、
YはO又はNHを示し
nは0又は1を示し、
R
2
は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキ
ニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
但しR
2
は少なくとも6個の炭素原子を含む]
に従う繰り返し単位を有するカチオン性ポリマーである、
インキセット。
【請求項2】
第一の樹脂が樹脂の合計量に関して少なくとも15モル%の第一級アミンで官能基化された繰り返し単位を含む請求項1に記載のインキセット。
【請求項3】
樹脂のg当たりのNH
2のmgとして表される第一の樹脂のアミン含有率が少なくとも9
0mg/gである請求項1及び2に記載のインキセット。
【請求項4】
第一級アミンで官能基化された繰り返し単位がビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選ばれる
請求項1~3のいずれかに記載のインキセット。
【請求項5】
液が水性インキジェットインキ中の成分を凝集させることができる成分を含む
請求項1~4のいずれかに記載のインキセット。
【請求項6】
成分が多価金属塩又はカチオン性ポリマーである請求項
5に記載のインキセット。
【請求項7】
第二の樹脂がエポキシに基づく樹脂、β-ケトエステルに基づく樹脂ならびにオリゴ官能基性マレイミド及びアクリレートのような活性化された二重結合で官能基化されたポリマーからなる群より選ばれる
請求項1~6のいずれかに記載のインキセット。
【請求項8】
β-ケトエステルに基づく樹脂が高分子シェルによりカプセル封入される請求項
7に記載のインキセット。
【請求項9】
高分子シェルが高分子シェルに共有結合し且つカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩及びリン酸エステル又はその塩からなる群より選ばれる分散性基を含む請求項
8に記載のインキセット。
【請求項10】
以下の段階:
i)請求項1ないし
9に記載のインキセットを基材上に適用して画像を形成し;そしてii)少なくとも60℃の画像の温度を得るような熱を用いて、適用されたインキセットを乾燥する
を含む画像記録の方法。
【請求項11】
インキセットを、インキジェット、バルブジェット又は噴霧のような噴射法を用いて適用する、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明はインキジェット画像記録において有用な樹脂粒子含む水性液及び水性インキジェットインキを含むインキセットに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
インキジェット法は画像形成法からフローリング及び家具、エレクトロニクス、編織布印刷、皮革印刷及びグラス印刷における装飾的用途のような種々の技術分野におけるデジタルマニュファクチャリングのための工業的な生産方法に進化しつつあり、UV法に取って代わるための水に基づくインキの技術に興味が増している。印刷される機能性はしばしば過酷な条件に耐えねばならず、従って高い化学的及び機械的抵抗性を必要とする。この抵抗性を向上させるために、乾燥及び加熱するとフィルム形成を与えるラテックスを含むインキジェットインキが実用化された。これらのインキの欠点は、フィルム形成がインキジェットヘッドのノズルにおいても起こり、信頼できない噴射性能に導くことである。苛酷な条件に耐えるための他の概念には、架橋した結合剤ネットワークを有する画像を形成するための水性インキジェットインキ中に含まれる樹脂の架橋が含まれる。
【0003】
最も普及している架橋剤の1つは多官能基性第一級又は第二級アミンであり、それはそれらがエポキシに基づく樹脂のような樹脂と容易に反応するからである。好ましくは、多官能基性アミンを画像形成時にそれが反応するべき樹脂から離しておき、相互作用を避けて樹脂を含む水性インキジェットインキの保存寿命を与える。これは、樹脂を含むインキジェットインキに関して下塗り又は下塗り印刷されるべきプライマーのような反応物液中或いは樹脂を含むインキジェットインキに関して上塗り印刷(over-printed)又は上塗りされるべき上塗り印刷ワニス中に多官能基性アミンを含むことにより達成され得る。多官能基性第一級又は第二級アミンはそれを水性プライマー又は上塗り印刷ワニス中に含むために水溶性又は水分散性でなければならない。
【0004】
プライマー又は上塗り印刷ワニスのような反応物液を記録媒体上の水性インキジェットインキと同じように画像通りに適用(=印刷)することができたら、それは記録媒体上への画像通りでない適用を超える利点を有する。利点は:コスト削減に導く液体被覆の量の減少及び印刷画像のより速い乾燥である。プライマーを下塗り印刷することの別の利点は、プライマーはプライマーの上に噴射されるインキほど機械的衝撃(引っ掻き、摩耗)又は薬品(水、溶媒)に抵抗性である必要がなく、より大きい調製の自由度を与えることである。プライマー又は上塗り印刷ワニスのための最も普及している画像通りの適用法は、画像記録用と同じインキジェット装置の使用である。
【0005】
特許文献1は2種のインキを含むインキセットを開示しており、第一のインキはエポキシ化合物を含み、第二のインキはアミンに基づくポリマーを含む。
【0006】
しかしながら水溶性第一級アミン官能基化ポリマーはインキの流動学及び液の粘弾性に有意な影響を有し、それらを高速インキジェット印刷にあまり適さないものとする。
【0007】
特許文献2は、アニオン性基を有するポリマーを含む第一のインキ及びカチオン性基を含むポリマーを有する第二のインキを含み、両方のインキが互いに接触すると凝集物を形成するインキセットを開示している。
【0008】
溶媒抵抗性のような印刷画像の向上した物理的性質を与え、且つさらにインキジェットヘッドを用いて信頼できる噴射行動を示す噴射可能な印刷液がまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第2019/0249024A号明細書
【文献】米国特許第2002/0077385号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題の解決案を提供することである。前記目的は請求項1に定義される通り、第一級アミン官能基化粒子を含む水性液及び樹脂を含む水性インキジェットインキを含むインキセットの提供により達成された。
【0011】
本発明の別の態様は、請求項11に定義される通り、第一級アミン官能基化カチオン性ポリマーナノ粒子を含む水性液及び請求項1の水性インキジェットインキを用いる画像記録法の提供である。
【0012】
本発明の他の特徴、要素、段階、特性及び利点は本発明の好ましい態様の以下の詳細な記述からもっと明らかになるであろう。本発明の特定の態様も従属クレイム中に定義される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
態様の記述
A.インキジェット印刷用のインキセット
A.1.有機樹脂粒子を含む水性液
A.1.1.第一級アミンで官能基化された有機樹脂粒子
本発明に従うインキセットの一部を成す水性液は水及び有機樹脂粒子を含み、今後第一の樹脂と呼ばれる樹脂は第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を含むことを特徴とする。第一級アミンで官能基化された樹脂が水性液中に粒子として存在することは、粒子として存在しないこの樹脂を有する水性液に関して信頼できる噴射行動を保証する。理論に縛られるつもりはないが、樹脂粒子は水性液の粘弾性に負の影響を与えず、従ってインキジェットヘッドを用いる噴射信頼性に負の影響を与えないと思われる。
【0014】
さらなる好ましい態様において、本発明に従う第一の樹脂は第一級アミンで官能基化された少なくとも5モル%。より好ましくは少なくとも10モル%そして最も好ましくは少なくとも15モル%の繰り返し単位を含む。繰り返し単位の量が多いほど反応性が高く、形成される樹脂の及び従って画像の機械的及び化学的衝撃に対する抵抗性が高い。
【0015】
樹脂のg当たりのNH2のmgとして表されるアミンの含有量は好ましくは少なくとも50mg/g、より好ましくは少なくとも70mg/gそして最も好ましくは少なくとも90mg/gである。
【0016】
さらなる好ましい態様において、第一級アミンで官能基化された第一の樹脂は好ましくは4-アミノメチル-スチレン又はその塩、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル-メタクリルアミド又はその塩からなる群より選ばれる
モノマーの乳化重合、界面活性剤を含まない乳化重合(surfactant free
emulsion polymerization)、播種乳化重合(seeded emulsion polymerization)ならびにミクロ-及びミニ-乳化重合(micro- and mini-emulsion polymerization)により製造され、4-アミノメチル-スチレン及び2-アミノチル-メタクリレート又はそれらの塩がより好ましい。
【0017】
別の好ましい態様において、第一級アミンで官能基化された第一の樹脂はポリ(アリルアミン)及びポリ(ビニルアミン)のような第一級アミン官能基化ポリマー上に疎水性ポリマー鎖をグラフトすることにより製造される。
【0018】
好ましい態様において、前記第一級アミンで官能基化された繰り返し単位はビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選ばれる。
【0019】
特に好ましい態様において、第一の樹脂は第一級アミンで官能基化されたカチオン性有機樹脂粒子であり、前記カチオン性有機樹脂粒子は少なくとも:
a.アリルアミン及びビニルアミンからなる群より選ばれる繰り返し単位;及び
b.破線が前記第一の樹脂のポリマー残基への共有結合を示すオキザリルアミド架橋単位-NHCOCONH-;及び
c.一般式I及び/又は一般式II
【化1】
[式中、
XはO又はNHを示し
nは0又は1を示し、
R
1は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
但しR
1は少なくとも6個の炭素原子を含む]
【化2】
[式中、
YはO又はNHを示し
nは0又は1を示し、
R
2は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置
換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
但しR
2は少なくとも6個の炭素原子を含む]
に従う繰り返し単位
を含む第一の樹脂を含むことを特徴とする。
【0020】
発明に従う水性液は有機樹脂粒子を1重量%ないし30重量%の量で、より好ましくは5重量%ないし25重量%の量でそして最も好ましくは10重量%ないし20重量%の量で含む。
【0021】
有機樹脂粒子の平均粒径は約10nmから約1μmまでであることができる。好ましくは、平均粒径は約10nmから約500nmまでであることができる。平均粒径がこの範囲内であるとインキジェットヘッドのノズルの目詰まりが避けられる。より好ましくは、平均粒径は約50nmから約250nmまでであることができる。さらにもっと好ましくは、平均粒径は約160nmから約220nmまでであることができる。
【0022】
水性液をコーティング法、噴霧法又は噴射法を用いて基材上又は印刷画像上に適用することができる。好ましい噴射法はインキジェット及びバルブジェットである。
【0023】
A.1.2.水溶性有機溶媒
本発明に従うインキセットの一部を成す水性液は、溶媒としての水の他に水溶性有機溶媒も含むことができる。水溶性有機溶媒の例にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール及び2,5-ヘキサンジオールのような多価アルコール、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル及びエチレングリコールフェニルエーテルのような多価アルコールアルキルエーテルならびに2-ピロリドン及びN-メチルピロリドンのような窒素含有複素環式化合物が含まれる。
【0024】
他の好ましい水溶性有機溶媒にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn-プロピルエーテル及びエチレングリコールn-ブチルエーテルが含まれる。
【0025】
水溶性有機溶媒はインキジェットヘッドのノズルにおける水性液の急速な乾燥を妨げるため、有機化合物の溶解を助けるため及び紙のような多孔質基材中への浸透を助けるために液に加えられる。
【0026】
水性液中の水溶性有機溶媒の含有率は好ましくは70重量%未満である。含有率が70質量%(% by mass)を超えると、液は水に基づく従ってより環境に優しいその特性を失う。水溶性有機溶媒の量は好ましくは1重量%と40重量%の間、より好ましくは5重量%と40重量%の間である。
【0027】
A.1.3.界面活性剤
本発明の水性液において、プライマーとして用いられる場合には基材上へのあるいは上塗り印刷ワニスとして用いられる場合には印刷画像上への湿潤性を保証するために界面活性剤を加えることができる。加えられる界面活性剤の量は液中の活性成分として好ましくは0.1重量%ないし5重量%である。
【0028】
加えられる量が0.1質量%未満の場合、基材又は印刷画像上への湿潤性が十分でなく、画質及び基材への接着における低下を引き起こす。用いられ得る界面活性剤はそれが上記の制限を満たす限り特に制限されない。
【0029】
界面活性剤は好ましくは両性界面活性剤、非イオン性又はカチオン性界面活性剤であり、それはアニオン性界面活性剤に関してカチオン性樹脂粒子との相互作用が軽減するからである。非イオン性界面活性剤の例はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、アセチレンアルコールのエチレンオキシド付加物が分散安定性と画質の間の関連性の点で好適に用いられる。さらにフッ素に基づく界面活性剤及びケイ素に基づく界面活性剤を調製に依存して組み合わせて(又は単独で)用いることができる。
【0030】
適した非イオン性界面活性剤は好ましくはグリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤である。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤の使用はブリーディングをさらに減少させて印刷の質を向上させ、且つ印刷における乾燥性も向上させて高速印刷を可能にする。
【0031】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上である。これらは例えばAir Products(GB)からOlfine E1010のようなOlfine(登録商標)104シリーズ及びEシリーズとして又はNissin Chemical IndustryからSurfynol(登録商標)465及びSurfynol 61として入手可能である。
【0032】
他の適した界面活性剤はEvonik IndustriesからのTego Twin 4000、Evonik IndustriesからのTegowet 270、BASFからのHydropalat WE3220のようなシロキサンに基づく界面活性剤、MomentiveからのSilwet HS312のようなシランに基づく界面活性剤ならびにNeochem GMBHからのThetawet FS8150、DupontからのCapstone FS3100、MerckからのTivida FL8150のようなフルオロ(fluor)含有界面活性剤及びDynolからの界面活性剤、Air ProductsからのEnvirogem & Surfynolシリーズである。
【0033】
カチオン性界面活性剤の例にはジヒドロキシエチルステアリルアミン、2-ヘプタデセニルヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド及びステアラミドメチルピリジウムクロリドのようなテトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンズアルコニウム塩、アルキルピリジウム塩及びイミダゾリウム塩が含まれる。
【0034】
A.1.4.添加物
特に液がプライマー液又は定着液(fixer liquid)であり、着色水性インキジェットインキの噴射前に基材上にコーティング又は印刷される場合、有機樹脂粒子と一緒に多価金属イオン又はカチオン性ポリマーが液中に含まれることができる。多価金属イオン又はカチオン性ポリマーは水性インキジェットインキがプライマー上に噴射されるとその中の着色剤を凝集させることができる。これらの多価金属イオン又はカチオン性ポリマーはインキ中に含まれる顔料又は分散されたポリマーの表面上のカルボキシル基のようなアニオン性基に作用することによりインキを凝集させる機能を有する。結局インキは基材の表面上に固定されたままとなり、発色性を向上させる。従ってインキ中の顔料の表面及び/又はインキ中に含まれる分散されたカプセルのポリマーはカルボキシル基、スルホネート基及びホスホネート基からなる群より選ばれるアニオン性基、最も好ましくはカルボキシル基を有するのが好ましい。
【0035】
適した水溶性金属塩の例はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム及びアルミニウムのような二価又はもっと多価の金属カチオンとフルオリドイオン(F-)、クロリドイオン(Cl-)、ブロミドイオン(Br-)、サルフェートイオン(SO4
2-)、硝酸イオン(NO3
-)及びアセテートイオン(CH3COO-)のようなアニオンから形成される。
【0036】
適したカチオン性ポリマーの例にはポリアミン、第四級化ポリアミン及びポリグアニジンが含まれる。他のカチオン性ポリマーにはポリ(N,N,-ジメチル-2-ヒドロキシプロピレンアンモニウムクロリド)、ポリ(4-ビニル-1-メチル-ピリジニウロブロミド)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、第4級化ビニルイミダゾールとポリクオタニウムのコポリマーが含まれる。本発明のプライマー中で好適に用いられ得るポリアミンの例にはポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
プライマー液は顔料のような着色剤も含むことができる。暗色の編織布、褐色の段ボール又は着色された皮革のような着色された基材上の印刷のために特に有用なのはホワイト顔料を含むプライマー液である。水性処理液インキ(aqueous treatment liquid ink)のために好ましい顔料は二酸化チタンである。本発明において有用な二酸化チタン(TiO2)顔料はルチル又はアナターゼ結晶形にあることができる。TiO2の製造方法は“The Pigment Handbook”,Vol.1,2nd Ed.,John Wiley & Sons,NY(1988)に非常に詳細に記載されており、その関連する開示は引用することにより完全に示されているごとくにすべての目的のために本明細書の内容となる。
【0038】
二酸化チタン粒子は処理液の所望の末端使用用途に依存して約1ミクロン以下の多様な平均粒度を有することができる。高い隠蔽を要求する用途又は装飾的印刷用途のために、二酸化チタン粒子は好ましくは約1ミクロン未満の平均寸法を有する。好ましくは、粒子は約50nmから約950nmまで、より好ましくは約75nmから約750nmまでそしてさらにもっと好ましくは約100nmから約500nmまでの平均寸法を有する。
【0039】
さらに、多重の粒度(multiple particle sizes)を用いて不透明性及びUV保護のような独特の利点を実現することができる。顔料の及びナノ等級のTiO2の両方を加えることにより、これらの多重の寸法を達成することができる。
【0040】
二酸化チタン顔料は1種以上の金属酸化物表面コーティングを帯びていることもできる。当業者に既知の方法を用いてこれらのコーティングを適用することができる。金属酸化
物コーティングの例には中でもシリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアが含まれる。これらのコーティングは二酸化チタンの光反応性の低下を含む向上した性質を与えることができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアの金属酸化物コーティングはTiO2顔料の正に帯電した表面を生じ、従って顔料の追加の表面処理は必要でない故に本発明のカチオン的に安定化された樹脂粒子との組み合わせにおいて特に有用である。
【0041】
そのようなコーティングされた二酸化チタンの市販の例にはR700(アルミナコーティングされている、E.I.DuPont deNemours,Wilmington
Del.から入手可能)、RDI-S(アルミナコーティングされている、Kemira Industrial Chemicals,Helsinki,Finlandから入手可能)、R706(DuPont,Wilmington Del.から入手可能)及びW-6042(Tayco Corporation,Osaka Japanからのシリカアルミナ処理されたナノ等級二酸化チタン)が含まれる。他の適したホワイト顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0116]中の表2により示されている。ホワイト顔料は好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0042】
水性液が印刷画像上に適用される上塗り印刷ワニス又は後処理液である場合、液は追加の樹脂又は結合剤を含むことができる。結合剤は液の少なくとも10重量パーセントないし約30重量パーセントで存在することができる。結合剤はラテックスであることができる。1つの例において、ラテックスはアクリルポリマー又はコポリマー、酢酸ビニルポリマー又はコポリマー、ポリエステルポリマー又はコポリマー、塩化ビニリデンポリマー又はコポリマー、ブタジエンポリマー又はコポリマー、スチレン-ブタジエンポリマー又はコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンポリマー又はコポリマー、ポリウレタン及びそれらの混合物からなる群より選ばれることができる。好ましくは、本発明のカチオン性有機樹脂粒子と適合性であるためにラテックスはカチオン電荷を有する。
【0043】
液は保湿剤も含むことができる。保湿剤は好ましくは液をインキジェット又はバルブジェットのような噴射法を用いて適用しなければならない場合に導入される。保湿剤はノズルの閉塞を予防する。予防は水性液、特に液中の水の蒸発速度を遅くするその能力の故である。保湿剤は好ましくは水より高い沸点を有する有機溶媒である。適した保湿剤にはトリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエレチングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含むグリコールならびにそれらの混合物及び誘導体が含まれる。好ましい保湿剤はグリセロールである。
【0044】
本発明に従うインキセットの一部としての水性液は画像の形成における水性インキジェットインキとしても機能することができ、インキセットの水性インキジェットインキと反応するその能力の故に共反応性インキジェットインキとも呼ばれる。その場合、液は着色剤、好ましくは顔料を含む。より好ましくは第一級アミン官能基を有する樹脂粒子との相互作用を最小にするために、カチオン性分散性基を有する顔料又は分散剤を用いるべきである。適した分散剤の例は国際公開第2018138054号パンフレット及び国際公開第2018137993号パンフレットに開示されており、両方の参照文献の記載事項は
引用することにより本明細書の内容となる。本発明の噴射可能な液中に導入されるべき適した顔料は§A.2.3に記載されている。
【0045】
保湿剤は好ましくは液の合計重量に基づいて0.1ないし20重量%の量で液調製物に加えられる。
【0046】
A.2.水性インキジェットインキ
A.2.1.第一級アミン官能基と反応することができる第二の樹脂
本発明のインキセットの一部を成す水性インキジェットインキは水、着色剤及び第一級アミン官能基と反応することができる第二の樹脂を含む。好ましくは、第二の樹脂と第一級アミン官能基の間の反応は室温に関して高められた温度、従って好ましくは60℃より高い、より好ましくは80℃より高い温度で起こる。好ましくは、樹脂はエポキシに基づく樹脂、β-ケトエステルに基づく樹脂ならびにオリゴ官能基性(oligofunctional)マレイミド及びアクリレートのような活性化された二重結合で官能基化されたポリマーの群から選ばれる。温度が60℃未満の場合、反応は起こらないか又は不完全であり、従って第二の樹脂の架橋は起こらず、形成される画像の機械的又は化学的抵抗性の不十分な向上に導く。
【0047】
エポキシに基づく樹脂の例にはポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル及びソルビトールポリグリシジルエーテルが含まれ得る。さらに特定的な例にはDinacol EX-821、Dinacol EX-841、Dinacol EX-421、Dinacol EX-614B(すべてNagase ChemteX corporationにより供給される)が含まれ得る。
【0048】
β-ケトエステルに基づく樹脂及び類似の樹脂の例は一般式III、IV又はV
【化3】
[式中、
R
1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、C(=O)R
3及びCNからなる群より選ばれ、
R
2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びC(=O)R
3からなる群より選ばれ、
R
1とR
2は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
R
3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR
4及びNR
5R
6からなる群より選ばれ、
R
4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5及びR
6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5とR
6は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR
7からなる群より選ばれ、
R
7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
8及びR
9は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
8とR
9は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができる]
に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0049】
好ましい態様において、一般式IIIに従う部分で官能基化された繰り返し単位を含む前記オリゴマー又はポリマーは少なくとも7個の官能基化された、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基化された繰り返し単位を含む。
【0050】
さらに好ましい態様において、Xは酸素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R1は水素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R2は置換又は非置換アルキル基を示し、非置換がより好ましく、低級アルキル基がさらにもっと好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0051】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーは好ましくは少なくとも2000、より好ましくは4000そして最も好ましくは6000と30000の間の重量平均分子量を有する。
【0052】
本発明に従うポリマーはホモポリマー又は種々の繰り返し単位のコポリマーであることができる。
【0053】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーをエチレン性不飽和モノマーの付加重合、重縮合及び開環重合により製造することができ、付加重合が特に好ましい。最も好ましい態様において、本発明に従う樹脂の製造のためにエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合が用いられる。本発明の別の態様において、本発明に従う樹脂の分子量はRAFT剤、ATRP、ニトロキシル基法又は移動剤、好ましくはチオールを用いて制御される。
【0054】
本発明に従う樹脂の製造のための典型的なモノマーは未公開特許出願欧州特許第19217051.2号明細書の表1、2及び3に示されており、前記特許の記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。
【0055】
好ましくは、一般式III、IV又はVに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するβ-ケトエステルに基づく樹脂及び類似の樹脂は重合により、より好ましくは界面重合の使用によりカプセル封入される。樹脂のカプセル封入はインキジェットヘッドを用いる噴射に関してインキジェットインキをより信頼できるものとする。
【0056】
カプセルは好ましくはインキの合計重量に基づいて45重量%以下、好ましくは5重量%と25重量%の間の量で水性インキジェットインキ中に存在する。30重量%より多いと噴射が必ずしも非常に信頼できるわけではないことが観察された。
【0057】
インキジェットインキ中で用いられるべきカプセルは動的レーザー回折により決定される4μm以下の平均粒度を有する。インキジェットプリントヘッドのノズル直径は通常20ないし35μmである。カプセルの平均粒度がノズル直径の5分の1以下(five times smaller than the nozzle diameter)である場合、信頼できるインキジェット印刷が可能である。4μm以下の平均粒度は20μmの最小のノズル直径を有するプリントヘッドによる噴射を可能にする。より好ましい態様において、カプセルの平均粒度はノズル直径の10分の1以下である。従って好ましくは平均粒度は0.05μmから2μmまで、より好ましくは0.10μmから1μmまでである。カプセルの平均粒度が2μmより小さい場合、優れた解像度及び時間を経ての分散安定性が得られる。
【0058】
カプセルは高分子シェルに共有結合した分散性基(dispersing group)を用いてインキジェットインキの水性媒体中に分散されるか或いは好ましくはカプセルの形成の間又はその後に加えられる分散剤又は界面活性剤の使用により分散される。高分子シェルに共有結合した分散性基は好ましくはカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩からなる群より選ばれる。
【0059】
立体的な安定化を達成するために分散性基を高分子分散剤と組み合わせて用いることができる。例えば高分子シェルは共有結合したカルボン酸基を有することができ、それは高分子分散剤のアミン基と相互作用する。しかしながらより好ましい態様において、高分子分散剤は用いられず、インキジェットインキの分散安定性は静電的安定化によってのみ達成される。例えばわずかにアルカリ性の水性媒体は高分子シェルに共有結合したカルボン酸基をイオン性基に変え、その後負に帯電したカプセルは凝集する傾向を持たない。十分な分散性基が高分子シェルに共有結合している場合、カプセルはいわゆる自己分散性カプセルになる。
【0060】
これらの負に帯電したカプセル表面をインキジェット印刷の間に有利に用いることもできる。例えばカチオン性ポリマー又は多価塩であるカチオン性物質を含む予備処理液としての水性液を用い、予備処理液の上に印刷される水性インキジェットインキのアニオン的安定化着色剤及びアニオン的安定化カプセルを沈殿させることができる。この方法の使用によりカプセルの固定の故の画質の向上が観察され得る。
【0061】
カプセルの高分子シェルのために用いられるポリマーの型に実質的な制限はない。好ましくは、高分子シェル中で用いられるポリマーは架橋されている。架橋によってより高い剛性がカプセル中に組み込まれ、インキ製造及びインキジェットプリンターの両方におけるカプセルの取り扱いのためのより広い範囲の温度及び圧力を可能にする。
【0062】
高分子シェル材料の好ましい例にはポリウレア、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミンに基づくポリマー及びそれらの混合物が含まれ、ポリウレアが特に好ましい。
【0063】
高分子シェルと一緒の一般式III、IV又はVに従う官能基を含む、少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを、化学的及び物理的方法の両方を用いてカプセル封入することができる。適したカプセル封入法にはコンプレックスコアセルベーション(complex coacervation)、リポソーム形成、噴霧乾燥及び重合法が含まれる。
【0064】
本発明において好ましくは重合法が用いられ、それはそれがカプセルの設計において最高の制御を可能にするからである。より好ましくは本発明のカプセルの製造に界面重合を用いる。この方法は周知であり、Zhang Y.and Rochefort D.(Journal of Microencapsulation,29(7),636-649(2012))により、及びSalitin(Encapsulation Nanotechnologies,Vikas Mittal(ed.),chapter
5,137-173(Scrivener Publishing LLC(2013))において)により総説されている(reviewed)。
【0065】
界面重縮合のような界面重合において、2種の反応物はエマルション滴(emulsion droplets)の界面で出会い、急速に反応する。
【0066】
一般に界面重合は水性連続相中における親油性相の分散又はその逆を必要とする。相のそれぞれは少なくとも1種の溶解されたモノマー(第一のシェル成分)を含み、それは他の相中に溶解された別のモノマー(第二のシェル成分)と反応することができる。重合すると水相及び親油性相の両方において不溶性であるポリマーが生成する。結局、生成するポリマーは親油性相と水相の界面において沈殿する傾向を有し、これによって分散相の周りにシェルを形成し、それはさらに重合すると成長する。本発明に従うカプセルは好ましくは水性連続相中の親油性分散系から製造される。
【0067】
本発明に従う且つ界面重合により生成するカプセルの典型的な高分子シェルは、典型的に第一のシェル成分としてジ又はポリ酸クロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリアミド、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリウレア、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリウレタン、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴスルホクロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリスルホンアミド、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴ酸クロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリエステルならびに典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴクロロホルメート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリカーボネートからなる群より選ばれる。シェルはこれらのポリマーの組み合わせから構成されることができる。
【0068】
さらなる態様において、第一のシェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート、ジ又はオリゴ酸クロリド、ジ又はオリゴクロロホルメート及びエポキシ樹脂と組み合わせてゼラチン、キトサン、アルブミン及びポリエチレンイミンのようなポリマーを第二のシェル成分として用いることができる。
【0069】
特に好ましい態様において、シェルはポリウレア又はポリウレタンとのその組み合わせからなる。さらなる好ましい態様において、分散段階に水非混和性溶媒が用いられ、それ
はシェル形成の前又は後に溶媒ストリッピングにより除去される。特に好ましい態様において、水非混和性溶媒は常圧で100℃未満の沸点を有する。エステルは水非混和性溶媒として特に好ましい。
【0070】
水非混和性溶媒は水中で低い混和性を有する有機溶媒である。低い混和性は1対1の体積比(one over one volume ratio)で混合した場合に20℃において二相系を形成する水と溶媒の組み合わせと定義される。
【0071】
コアは一般式III、IV又はVに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。これらは通常水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶媒中にそれを溶解することによりカプセル中に導入される。好ましい有機溶媒は酢酸エチルであり、それはそれが他の有機溶媒と比較して低い可燃性の危険も有するからである。
【0072】
しかしながらいくつかの場合に有機溶媒を省略することができる。例えば一般式III、IV又はVに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーが100mPa.s未満の粘度を有する場合、有機溶媒を省略することができる。
【0073】
カプセルの分散系の調製方法は好ましくは以下の:
a)水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶媒中の高分子シェルの形成のための第一のシェル成分及び一般式III、IV又はVに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの非水性溶液を調製し;
b)高分子シェルの形成のための第二のシェル成分の水溶液を調製し;
c)高せん断下で水溶液中に非水性溶液を分散させ;
d)任意的に水溶液と非水性溶液の混合物から有機溶媒をストリッピングし;そして
e)高分子シェルの形成のための第一及び第二のシェル成分の界面重合により一般式III、IV又はVに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの周りに高分子シェルを形成する
段階を含む。
【0074】
次いで例えば水、保湿剤、界面活性剤などの添加によりカプセル分散系を水性インキジェットインキに仕上げることができる。
【0075】
好ましい態様において、カプセルは自己分散性カプセルである。カプセルを自己分散性にするために、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩のようなアニオン性分散性基をカプセルの高分子シェルに共有結合させて分散安定性を保証することができる。
【0076】
カプセルの高分子シェル中にアニオン性安定化基を導入するための好ましい方策は、イソシアナートと反応することができるカルボン酸官能基化反応性界面活性剤を利用する。これは少なくとも部分的に第二級又は第一級のアミンを含む両性型の界面活性剤に導く。スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩で官能基化された他の反応性界面活性剤を用いることができる。
【0077】
部分的に第二級アミンを有するが第三級アミンも含む界面活性剤の混合物であるいくつかの両性界面活性剤は商業的に入手可能である。インキジェットプリンターで、商業的に入手可能な両性界面活性剤の使用により製造されるカプセルに基づくインキジェットインキにおける法外な発泡に直面した。発泡はインキ供給において及びまたインキから空気を除去しようとするための脱ガスにおいて問題を引き起こし、かくして信頼できない噴射に
導く。従って好ましくは国際公開第2016/165970号パンフレットの式(I)に従う界面活性剤が一般式III、IV又はVに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーのカプセル封入プロセスの間に用いられる。
【0078】
本発明の別の態様において、第一級アミン官能基と反応することができる前記第二の樹脂はマイケル受容体で官能基化されている。好ましい態様において、前記マイケル受容体はアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド及びビニルスルホンからなる群より選ばれ、アクリレート、メタクリレート及びマレイミドがより好ましく、アクリレート及びマレイミドが最も好ましい。特に好ましいアクリレート官能基化樹脂は重縮合又は開環重合により製造される。ポリウレタン及びポリエステルは特に好ましいアクリレート化樹脂であり、典型的に重縮合により製造され、好ましくは重縮合反応においてそれぞれ二官能基性イソシアナート及び酸クロリドと一緒にヒドロキシ官能基化アクリレートを用いる。
【0079】
アクリレート化ポリウレタンは最も好ましく、木材コーティング((Wade et al.,JCT Coating Tech,2(14),42-46(2005))、家具コーティング(Irle et al.,Rad Tech Europe 05,conference proceedings,1,375-380(2005))及び着色コーティング(Tielemans et al.,Polymer Paint
colour Journal.199,4538,31-33(2009))のようなコーティングの技術分野において周知である。前記方法は最近Tennebroek et al.(Polym.Int.,68,832-842(2019))により総説された。
【0080】
マレイミド官能基化樹脂は国際公開第2016113760号パンフレット(Council of scientific and industrial research)に開示されている通りに重縮合により製造され得る。マレイミド官能基化樹脂の製造のための付加重合はGrawe and Bufkin(Journal of Coating Technology,53(676),45-55(1981))により開示されている。マレイミド官能基化樹脂の製造において保護マレイミド及びポリマー後誘導体化(polymer post derivatisation)を用いる方策はHall et al.(Polym.Int.60,1149-1157(2011))に開示されている。
【0081】
マイケル受容体官能基化樹脂は水溶性又は水分散性であることができ、水分散性がより好ましく、アクリレート官能基化ポリウレタンラテックスが最も好ましい。
【0082】
A.2.2.溶媒
本発明に従うインキセットの一部を成すインキの水性媒体は水を含むが、好ましくは1種以上の水溶性有機溶媒を含むことができる。インキ中に導入され得る適した溶媒は好ましくはポリオール(例えばエチレングリコール、グリセリン、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)、アミン(例えばエタノールアミン及び2-(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えばメタノール、エタノール及びブタノール)、多価アルコールのアルキルエーテル(例えばジエチレング
リコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’チオジエタノール、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、複素環式化合物(例えば2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン)ならびにアセトニトリルである。
【0083】
A.2.3.顔料
本発明に従うインキセットの一部を成す水性インキは着色剤を含む。着色剤は水溶性染料、分散染料であることができる。好ましくは着色剤は顔料であり、それはブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであることができる。カラー顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,3rd edition.Wiley-VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されたものから選ばれ得る。
【0084】
適した顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0128]節ないし[0138]節に開示されている。
【0085】
顔料粒子は高分子分散剤又は界面活性剤を用いて水性媒体中に分散される。自己分散性顔料を用いることもできる。アニオン性分散性基を有するカプセルと組み合わされる場合、顔料のための分散剤として好ましくはアニオン性分散剤を用いることができる。後者はインキジェットインキ中に含まれ得るカプセルの分散性基との高分子分散剤の相互作用を妨げ、それは顔料の分散安定性がカプセルのために用いられると同じ静電的安定化の方法により達成されるからである。
【0086】
自己分散性顔料は、塩形成基又はカプセルのための分散性基として用いられている基と同じ基のようなアニオン性親水性基がその表面上に共有結合している顔料であり、それは界面活性剤又は樹脂を用いずに顔料が水性媒体中に分散するのを可能にする。適した商業的に入手可能な自己分散性カラー顔料は例えばCABOTからのCAB-O-JETTMインキジェット着色剤である。
【0087】
インキジェットインキ中の顔料粒子はインキジェット印刷装置を介する、特に吐出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大色濃度のため及び沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0088】
平均顔料粒度は好ましくは0.050μmと1μmの間、より好ましくは0.070μmと0.300μmの間そして特に好ましくは0.080μmと0.200μmの間である。最も好ましくは数平均顔料粒度(numeric average pigment
particle size)は0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒度は、動的光散乱の原理に基づくBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。試料は純水を用いて0.002重量%の顔料濃度に希釈される。BI90plusの測定設定は:23℃において5回の測定、90oの角度、635nmの波長及びグラフィックス=コレクション関数(graphics=correction function)である。
【0089】
しかしながら、ホワイト顔料インキジェットインキに関し、ホワイト顔料の数平均粒径は§A.1.4.に記載されたと同じである。
【0090】
適したホワイト顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0116]中の表2により示されている。ホワイト顔料は好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0091】
衣類における特殊な効果のための蛍光顔料及び編織布上に銀色及び金色の豪華な外観を印刷するための金属性顔料のような特殊な着色剤を用いることもできる。
【0092】
顔料のための適した高分子分散剤は2種のモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5種又はそれより多種のモノマーさえ含むことができる。高分子分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは以下のポリマー組成を有する:
●ランダム重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABBAABABに重合した);
●交互重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABABABABに重合した);
●勾配(gradient)(テーパード(tapered))重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがAAABAABBABBBに重合した);
●それぞれのブロックのブロック長(2、3、4、5個又はそれより多くさえ)が高分子分散剤の分散能力に重要であるブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBがAAAAABBBBBBに重合した);
●グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合した高分子側鎖を有する高分子主鎖から成る);ならびに
●これらのポリマーの混合形態、例えばブロック様勾配コポリマー。
【0093】
適した分散剤はBYK CHEMIEから入手可能なDISPERBYKTM分散剤、JOHNSON POLYMERSから入手可能なJONCRYLTM分散剤及びLubrisolから入手可能なSOLSPERSETM分散剤である。非高分子ならびにいくつかの高分子分散剤の詳細なリストはMC CUTCHEON,Functional Materals,North American Edition.Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990.p.110-129により開示されている。
【0094】
高分子分散剤は好ましくは500と30000の間、より好ましくは1500と10000の間の数平均分子量Mnを有する。
【0095】
高分子分散剤は好ましくは100,000未満、より好ましくは50,000未満そして最も好ましくは30,000未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0096】
顔料は好ましくはそれぞれインキジェットインキの合計重量に基づいて0.01ないし20重量%の範囲内、より好ましくは0.05ないし10重量%の範囲内そして最も好ましくは0.1ないし5重量%の範囲内で存在する。ホワイトインキジェットインキの場合、ホワイト顔料は好ましくはインキジェットインキの3重量%ないし40重量%そしてより好ましくは5重量%ないし35重量%の量で存在する。3重量%未満の量は十分な被覆力を達成することができない。
【0097】
B.画像記録法
本発明に従うインキセットを用いるインキジェット画像記録法の態様において、前記方
法は:a)第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を含む第一の樹脂である有機樹脂粒子を含む水性液を基材上に適用する段階を含む。適用は好ましくはインキジェット、バルブジェット又は噴霧のような噴射法により行われる。そして;b)適用された液を任意的に少なくとも部分的に乾燥し、そして;c)適用された液上に水性インキジェットインキを噴射して画像を形成し、インキは着色剤及び第一級アミン官能基と反応することができる第二の樹脂を含む。より好ましくは第二の樹脂はエポキシに基づく樹脂、β-ケトエステルに基づく樹脂ならびにオリゴ官能基性マレイミド及びアクリレートのような活性化された二重結合で官能基化されたポリマーからなる群より選ばれる;そしてd)形成画像の温度が少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度となるように熱を適用することにより噴射されたインキジェットを乾燥する。
【0098】
別の好ましいインキジェット記録法において、前記方法は:a)第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を含む第一の樹脂である有機樹脂粒子を含む水性液ならびに着色剤及び第一級アミン官能基と反応することができる第二の樹脂を含む水性インキジェットインキを含むインキセットを基材上に、好ましくは非多孔質基材上にインキ噴射することにより画像を形成する段階を含む。より好ましくは第二の樹脂はエポキシに基づく樹脂、β-ケトエステルに基づく樹脂ならびにオリゴ官能基性マレイミド及びアクリレートのような活性化された二重結合で官能基化されたポリマーからなる群より選ばれ、そしてb)形成画像の温度が少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度となるように熱を適用することにより噴射されたインキセットを乾燥する。画像の形成はインキセットの水性液及び水性インキジェットインキを逐次的又は同時に噴射することにより行われ得る。
【0099】
本発明に従うインキセットを用いるインキジェット記録法の別の態様において、前記方法は:a)着色剤及び第一級アミン官能基と反応することができる第二の樹脂を含む水性インキジェットインキを基材上に噴射して画像を形成する段階を含む。基材は、インキセットの水性インキジェットインキ中の成分を凝集させることができる成分を含む定着又はプライマー液で処理されていることができる。そのような化合物の例は凝集剤又はカチオン性化合物である。プライマー液は第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を含む第一の樹脂である有機樹脂粒子を含む水性液であることができる。より好ましくは第二の樹脂はエポキシに基づく樹脂、β-ケトエステルに基づく樹脂ならびにオリゴ官能基性マレイミド及びアクリレートのような活性化された二重結合で官能基化されたポリマーからなる群より選ばれ、そして;b)噴射されたインキを任意的に少なくとも部分的に乾燥し、そして;c)噴射された水性インキジェットインキ上に第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を含む第一の樹脂である有機樹脂粒子を含む水性液を適用する。適用は好ましくはインキジェット、バルブジェット又は噴霧のような噴射法により行われる、そして;d)形成画像の温度が少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度となるように熱を適用することにより噴射された水性インキジェットインキを乾燥する。
【0100】
インキジェット記録法における基材は例えば編織布、紙、皮革及びボール紙基材のような多孔質であることができるが、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)のようなポリエステル又はポリイミドのような非吸収性基材である。
【0101】
基材は普通紙又は樹脂がコーティングされた紙、例えばポリエチレン又はポリプロピレンがコーティングされた紙のような紙基材であることもできる。紙の型に実質的な制限はなく、それには新聞紙、雑誌用紙、オフィス用紙、壁紙が含まれるが、ホワイトライニングチップボード、段ボール及び包装紙のような通常ボードと呼ばれる比較的高い坪量(g
rammage)の紙も含まれる。
【0102】
基材は透明、半透明又は不透明であることができる。好ましい不透明基材にはAgfa-GevaertからのSynapsTM銘柄ようないわゆる合成紙が含まれ、それは1.10g/cm3以上の密度を有する不透明ポリエチレンテレフタレートシートである。
【0103】
水及び第一級アミンで官能基化された少なくとも1個の繰り返し単位を含む第一の樹脂である有機樹脂粒子を含む液は好ましくはインキジェット、バルブジェット及び噴霧からなる群より選ばれる方法を介して適用される。さらに特定的に、これらのインキジェット及びバルブジェットの方法は、好ましくは画像を得るためにインキジェットインキが印刷されるであろう表面上に本発明に従う液が画像通りに適用されることを可能にする。この方法は下塗り印刷とも呼ばれる。これは必要な液の量が基材の下塗りの他の適用法を用いるより有意に少なく、乾燥しなければならない液がより少なく、且つ乾燥されたプライマーの層が薬品との相互作用及び機械的衝撃に対してインキジェットインキの適用により得られる層より堅牢でなくても良いという利点を有する。
【0104】
適用される本発明に従うインキセットの乾燥のための加熱法の例にはヒートプレス、大気圧蒸熱(atmospheric steaming)、高圧蒸熱、THERMOFIXが含まれるがこれらに限られない。加熱法のためにいずれの熱源も用いることができ;例えば赤外線源が用いられる。
【0105】
乾燥段階を大気において行うことができるが、加熱段階は熱源の使用により行われなければならない;例には強制空気加熱、NIR-及びCIR線を含むIR-線のような放射線加熱、伝導加熱(conduction heating)、高周波乾燥及びマイクロ波乾燥のための装置が含まれる。乾燥段階は好ましくは150℃未満、より好ましくは100℃未満の温度が得られるようなものである。
【0106】
本発明に従うインキセットの噴射用のインキジェット印刷系のために好ましいインキジェットヘッドは圧電インキジェットヘッドである。圧電インキジェット噴射は圧電セラミック変換器に電圧が適用される場合のその動きに基づく。電圧の適用はプリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変え、空隙を形成し、それが次いでインキ又は液で満たされる。電圧が再び取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、インキジェットヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら本発明のインキセットの噴射は圧電インキジェット印刷に縛られない。他のインキジェットプリントヘッドを用いることができ、連続型、サーマルプリントヘッド型、MEM-ジェット型ヘッド及びバルブジェット型のような種々の型が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0107】
実施例
材料
すべての化合物は、他にことわらなければTCI Europeにより供給される。
●Desmodur N75 BAはBayer AGにより供給される三官能基性イソシアナートである。
●Lakeland ACP70はLakeland Laboratories LTDにより供給される双性イオン性界面活性剤である。
●Surfinol 104HはNissin Chemical Industryにより供給される界面活性剤である。
●CATSURF-1、以下の通りに合成されるカチオン性界面活性剤:29gの(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(水中の75重量%として供給される)を150gのイソプロパノール中に溶解した。26.9gのオクタデシルアミ
ン及び15gのトリエチルアミンを加え、混合物を80℃に24時間加熱した。減圧下で溶媒を除去した。
●Alkanol XCはDupontにより供給されるアニオン性界面活性剤である。●Cab-o-Jet 465MはCabotにより供給されるマゼンタ顔料分散系である。
●Cab-O-Jet 450CはCabotにより供給されるされるシアン顔料分散系である。
●MNDAはAldrichにより供給されるメチルジエタノールアミンである。
●Sub-1:Antalisにより供給されるポリ(プロピレン)(Priplak)●Sub-2:Agfa-Gevaert NVにより与えられるSynaps(SUV311)
●Sub-3:Lexanにより供給されるポリカーボネート(Lexan PC 9030 Clear)
●Sub-4:Lerobelにより供給されるフロートガラス(Sn-接触側)
●Sub-5:Dejond(Wilrijk,Belgium)により供給されるステンレススチール316L
●Sub-6:Metamarkにより供給されるPVC(MD5-100)
●Sub-7:粗面化され且つ陽極酸化された平板アルミニウム印刷板基材
【実施例1】
【0108】
この実施例はβ-ケトエステルに基づく樹脂を含む水性インキジェットインキ及び本発明に従うアミン官能基化樹脂を含む上塗り印刷ワニスを含むインキセットの使用による溶媒抵抗性における向上を示す。
【0109】
本発明の第二の樹脂INVRES-1の合成:
10gの2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートを30mlの酢酸エチル中に溶解した。0.472gのドデシルメルカプタンを加え、混合物を窒素でパージした。134mgの2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]を加え、混合物を6時間還流させた。混合物を室温に冷ました。酢酸エチル中の本発明の樹脂INVRES-1の溶液を本発明のカプセルINVCAP-1の合成において直接用いた。GPCを用い、INVRES-1の分子量をポリ(スチレン)標準に対して決定した。INVRES-1は10500の数平均分子量Mn及び15400の重量平均分子量Mwを有した。
【0110】
β-ケトエステルに基づく樹脂を含むカプセルINVCAP-1の製造:
13.2gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-1の溶液の37gに加えた。1.2gのLakeland ACP 70を加え、溶液を室温で1時間撹拌した。この溶液をUltra Turraxを用いて16000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら44gの水中の3.36gのLakeland ACP
70、1.17gのリシン及び1.5gのトリエタノールアミンの溶液に加えた。52gの水を加え、60℃において真空度を500ミリバールから120ミリバールに徐々に増しながら減圧下で溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより分散系の重量を88gに調整した。分散系を65℃で16時間撹拌した。分散系を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散系をろ過した。ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いてすべてのカプセル分散系の平均粒度を測定した。INVCAP-1の平均粒度は183nmであった。
【0111】
本発明の水性インキINV-1
表1に従う成分を混合することにより本発明のインキINV-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表1】
【0112】
第一級アミン官能基化コロイドAMINE-1を有する水性液
第一級アミン官能基化ポリマー分散系AMINE-1を下記に記載する通りに調製した。
【0113】
40gのアセトン中の7gのオクタデシルイソシアナートの溶液を水中の50gの20重量%ポリ(アリルアミン)(Mw:60000)と200gのアセトンの混合物に室温で3分間かけて加えた。Ultra Turraxを用いて15000RPMで混合物を3分間撹拌した。混合物を20分間還流させた。混合物を室温に冷まし、Ultra Turraxを用いて15000RPMで3分間撹拌した。
【0114】
20gのアセトン中の2gのシュウ酸エチルの溶液を4gのメタノール中のCATSURF-1の溶液と混合した。この混合物を室温で10分間撹拌し、上記のポリマー溶液に3分間かけて加え、続いてUltra Turraxを用いて15000RPMで撹拌した。混合物を室温で30分間撹拌した。50gの水を加えた。溶媒及び水を減圧下で蒸発させ、分散系の重量を80gに調整した。0.3gのProxel Kを殺生物剤(biocide)として加えた。
【0115】
ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いて平均粒度を測定した。平均粒度は71nmであった。
【0116】
比較用インキINKCOMP-1
最高水準のポリ(ウレタン)に基づくインキは国際公開第2018077624号パンフレットに開示されている。国際公開第2018077624号パンフレットに基づき、表2に従う成分を混合することにより比較用のインキCOMP-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表2】
【0117】
PU-1は国際公開第2018077624号パンフレットに開示されているPU-9と同様に製造された。
【0118】
本発明のインキセットを用いて形成される画像の接着及び化学的抵抗性試験
4ミクロンのワイアバーを用いて本発明のインキINV1及び比較用のインキINKCOMP-1を一系列の基材上にコーティングし、80℃で15分間乾燥した。
【0119】
4ミクロンのワイアバーを用い、本発明の実施例に第一級アミン官能基化コロイドAMINE-1を上塗りし、80℃で15分間乾燥した。従ってAMINE-1は上塗り印刷ワニスとして機能する。各試料の接着をISO2409:1992(E).Paints(国際標準 1992-08-15)に従うクロスカットテストにより、カット間に1mmの空間を有するBRAIVE INSTRUMENTSからのBraive No.1536 Cross Cut Testerを用い、且つTesatape
TM 4104
PVCテープと組み合わせて600gの重りを用いて評価した。表3に記載される基準に従って評価を行い、ここでクロスカット内及びクロスカット外の接着の両方を評価した。
【表3】
【0120】
それぞれ水、イソプロパノール及びメチルエチルケトンを用い、コーティングの上をQ-チップで40回拭うことにより、耐水性及び溶媒抵抗性を評価した。結果を表4にまとめる。
【0121】
0の得点はQ-チップで拭った時の非常に重大な損傷を意味し、一方2の得点は拭った時に損傷がほとんど又は全くないことを意味する。1の得点は拭った時の可視の損傷を意味する。
【表4】
【0122】
表4から、本発明に従うインキセットの使用による架橋法は、ポリ(ウレタン)に基づく樹脂インキと比較して種々の基材上における化学的抵抗性において有意により大きい自由度を与えながら優れた接着性能を保持していることが明らかになる。
【実施例2】
【0123】
この実施例は、β-ケトエステルに基づく樹脂を含む水性インキジェットインキと組み合わされた噴射可能な反応性樹脂としてのゾル-ゲルに基づく第一級アミン官能基化コロイドの可能性を示す。
【0124】
第一級アミン官能基化樹脂粒子AMINE-2
5gのジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド及び30gの3-アミノプロピル-トリメトキシシランの混合物を、Ultra Turraxを用いて18000rpmで5分間撹拌しながら100gの水に加えた。50mlの水を加え、65℃において減圧下で2時間かけて混合物を蒸発させ、反応の間に生成するメタノールを除去した。混合物をさらに蒸発させて25重量%の分散系を得た。
【0125】
ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いて平均粒度を測定した。約17nmに主ピーク及び約140nmに第二極大を有する二重粒度分布が得られた。
【0126】
第一級アミン官能基化樹脂粒子を含む水性液:INKAMINE-2
表5に従う成分を混合することによりINKAMINE-2を調製した。すべての重量
パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表5】
【0127】
ポリプロピレン基材上における本発明に従うインキセットの噴射
本発明のインキINV-1をポリエステル綿混合繊維編織布上に標準的なDimatixTM 10 plプリントヘッドが備えられたDimatixTM DMP2831系を用いて印刷した。22℃において5kHzの発射(firing)周波数、25Vの発射電圧及び標準的な波形を用いてインキを噴射した。インキ層に標準的なDimatixTM 10 plプリントヘッドが備えられたDimatixTM DMP2831系を用いてINKAMINE-2を2回上塗り印刷した。22℃において5kHzの発射周波数、25Vの発射電圧及び標準的な波形を用いてインキを噴射した。参照試料に本発明のインキINV-1のみを印刷した。試料を80℃で15分間乾燥した。
【0128】
編織布上のベタ領域(solid areas)の印刷及び乾燥の後、Crockmeter SDL ATLAS M238AAを用いてISO105-X12に従って乾燥及び湿潤摩擦染色堅牢度試験(dry and wet crock fastness
test)を行った。白いラビング布(rubbing cloth)の着色をCielab色彩空間に従うΔEとして与えた。ΔE値が低いほど摩擦染色堅牢度は高い。
【0129】
【0130】
表6から、本発明に従い且つβ-ケトエステルを含むカプセルを含む水性インキ及び第一級アミン官能基化樹脂粒子を含む水性液を含むインキセットが参照の水性インキに関して明白に向上した湿潤摩擦染色堅牢度の値を与える画像に導くことが明らかになる。