(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】水性樹脂に基づくインキジェットインキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20240412BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20240412BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240412BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/54
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 125
B41J2/01 123
(21)【出願番号】P 2022567311
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021060775
(87)【国際公開番号】W WO2021224037
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ロウウェット,ジョス
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-163794(JP,A)
【文献】特表2013-502481(JP,A)
【文献】特表2020-509148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-54
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物と、着色剤と、
ポリマー粒子とを含む水性インキジェットインキであって、前記ポリマー粒子はカプセルであり、前記カプセルはコアを囲む高分子シェルを含み、前記コアは一般式I、II又はIII
【化1】
[式中、
R
1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、COR
3及びCNからなる群より選ばれ、
R
2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びCOR
3からなる群より選ばれ、
R
1とR
2は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
R
3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR
4及びNR
5R
6からなる群より選ばれ、
R
4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5及びR
6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5とR
6は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR
7からなる群より選ばれ、
R
7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
8及びR
9は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
8とR
9は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができる]
に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含
む、水性インキジェットインキ。
【請求項2】
高分子シェルがポリ(ウレア)、(ポリ)ウレタン又はそれらの組み合わせを含む、請求項
1に記載の水性インキジェットインキ。
【請求項3】
化合物が第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基で官能基化された樹脂粒子である、
請求項1~2のいずれかに記載の水性インキジェットインキ。
【請求項4】
オリゴマー又はポリマーが少なくとも15個の繰り返し単位を含む、
請求項1~3のいずれかに記載の水性インキジェットインキ。
【請求項5】
化合物が二又は三官能基性である、請求項1ないし
2のいずれかに記載の水性インキジェットインキ。
【請求項6】
分散性基が高分子シェルに共有結合している、請求項
1ないし
5に記載の水性インキジェットインキ。
【請求項7】
分散性基がカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩及びホスホン酸又はその塩からなる群より選ばれる、請求項
6に記載の水性インキジェットインキ。
【請求項8】
着色剤が顔料である、
請求項1~7のいずれかに記載の水性インキジェットインキ。
【請求項9】
a)
請求項1~8のいずれかに記載のインキジェットインキを基材上に噴射し;そしてb)噴射されたインキの少なくとも60℃の温度を得るような熱を適用することにより、噴射されたインキジェットインキを乾燥する
段階を含む、インキジェット記録法。
【請求項10】
段階a)の前に、さらに基材上に水性予備処理液を適用する段階を含み、前記予備処理液は水性インキジェットインキ中の成分を凝集させることができる化合物を含む、請求項
9に記載のインキジェット記録法。
【請求項11】
予備処理液をインキジェット、バルブジェット及び噴霧の群から選ばれる方法を介して適用する、請求項
10に記載のインキジェット記録法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明は、オリゴマー又はポリマーを含む樹脂粒子及び第一級アミン又は第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物を含む非吸収性基材上のインキジェット印刷における使用のための水性インキジェットインキに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
インキジェットの工業的な用途はますます多くの技術分野に広がりつつあり、ますます多くの要求の厳しい物理的性質を満たさねばならない。工業的な印刷法はガラス及び金属のような広範囲の非吸収性基材と適合性でなければないが、ポリオレフィンのような温度感受性樹脂を含む合成樹脂とも適合性でなければならない。
【0003】
攻撃的な溶剤に対する耐薬品性は、画像がヘビーデューティー用途(heavy duty applications)において満たさねばならない要求の一つである。現在まで、ヘビーデューティー用途におけるインキジェット法はUVに基づいてきた。しかしながら水性法もより要求の厳しい用途において徐々に普及している。
【0004】
工業的なインキジェット用途における要求を満たすために、水性の樹脂に基づくインキが種々の方法に基づいて設計されてきた。特許文献1に開示されているラテックスに基づく方法はラテックスのフィルム形成温度の調整に基づいて温度感受性基材と適合性である。しかしながらそれらの接着性能は必ずしも最適でなく、特にそれらの耐薬品性は限られている。さらに、ラテックスに基づくインキはインキジェットヘッドのノズルにおけるフィルム形成の傾向を示し、インキジェット信頼性の問題に導く。
【0005】
特許文献2及び特許文献3に開示されているカプセル封入に基づく方法はインキジェットヘッドのノズルにおけるフィルム形成を避けるが、多くの場合に高い活性化温度を必要とし、その方法をポリオレフィンのような温度感受性基材上における印刷に適さないものとしている。温度感受性基材との適合性と組み合わされた耐薬品性の問題に取り組むために、水に基づくUV法に基づくいくつかの方法が開示された。これらの方法は乾燥と硬化の両方を必要とし、プリンターの設計を複雑にする。
【0006】
特許文献4に、第一のインキがエポキシ化合物を含み、第二のインキが第一級アミンに基づくポリマーを含む二成分インキ法(dual ink approach)が開示されている。その組み合わせは優れた接着性及びアルコール抵抗性を生ずると主張されている。しかしながらエポキシ化合物は加水分解し易く、水性に基づくインキを保存すると活性を失う危険を保持していることが既知である。分離された印刷液中で両方の反応性化合物を分離するという必要性は、オールインワンリキッド法(all in one liquid approach)に関してインキジェット記録法及び印刷装置をよりずっと複雑にする。
【0007】
従って、信頼できるインキ噴射行動を示し、温度感受性基材と適合性であり、乾燥時の耐薬品性のような優れた物理的性質を与え、保存時の加水分解の危険を保持しておらず、2つの分離された印刷液を必要としない水性の樹脂に基づく方法がまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2018077624A号パンフレット
【文献】国際公開第2015158654A号パンフレット
【文献】欧州特許第293337A号明細書
【文献】米国特許第20190249024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概略
本発明の目的は上記の問題への解決案を提供することである。前記目的は請求項1に定義される通り、第一級又は第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物及び粒子の分散系を含むインキジェットインキの提供により達成された。
【0010】
本発明の別の態様は、請求項10に定義される通り、請求項1のインキジェットインキを用いる印刷法を提供することである。
【0011】
本発明の他の特徴、要素、段階、特性及び利点は続く本発明の好ましい態様の詳細な記述からより明らかになるであろう。本発明の特定の態様も従属クレイムにおいて定義される。
【0012】
態様の記述
A.本発明に従う水性インキジェットインキ
本発明に従う水性インキジェットインキは第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物、着色剤及び一般式I、II又はIII(以下を参照されたい)に従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子を含む。理論に縛られるものではないが、一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子と第一級アミン及び第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物の間で架橋反応が起こると思われる。このオリゴマー又はポリマーの架橋は噴射された画像の溶剤抵抗性の向上に導く。
【0013】
A.1.一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子
本発明の目的は、一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子により実現され、
【化1】
式中、
R
1は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、COR
3及びCNからなる群より選ばれ、
R
2は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基及びCOR
3からなる群より選ばれ、
R
1とR
2は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
R
3は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基、OR
4及びNR
5R
6からなる群より選ばれ、
R
4は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5及びR
6は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
5とR
6は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができ、
XはO及びNR
7からなる群より選ばれ、
R
7は水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
8及びR
9は独立して水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群より選ばれ、
R
8とR
9は5ないし8員環を形成するために必要な原子を示すことができる。
【0014】
好ましい態様において、一般式Iに従う部分で官能基化された繰り返し単位を含む前記オリゴマー又はポリマーは少なくとも7個の官能基化された、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基化された繰り返し単位を含む。
【0015】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーは好ましくは少なくとも2000、より好ましくは4000そして最も好ましくは6000と30000の間の重量平均分子量を有する。
【0016】
本発明に従うポリマーはホモポリマー又は種々の繰り返し単位のコポリマーであることができる。
【0017】
本発明に従うオリゴマー又はポリマーをエチレン性不飽和モノマーの付加重合、重縮合及び開環重合により製造することができ、付加重合が特に好ましい。最も好ましい態様において、本発明に従う樹脂の製造のためにエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合が用いられる。本発明の別の態様において、本発明に従う樹脂の分子量はRAFT剤、ATRP、ニトロキシル基法又は移動剤、好ましくはチオールを用いて制御される。
【0018】
さらなる好ましい態様において、Xは酸素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R1は水素を示す。さらにもっと好ましい態様において、R2は置換又は非置換アルキル基を示し、非置換がより好ましく、低級アルキル基がさらにもっと好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0019】
本発明に従う樹脂の製造のための典型的なモノマーを下記に示すが、これらに制限されない。
付加重合のためのモノマー:
表1を参照されたい。
【表1-1】
【表1-2】
【0020】
本発明に従う付加ポリマーの製造にフリーラジカル及びカチオン重合条件が好ましい。
【0021】
開環重合のためのモノマー:
表2を参照されたい。
【表2】
【0022】
科学文献に記載されている開環重合環境を用いてポリ(エーテル)、ポリ(エステル)、ポリ(カーボネート)及びポリ(アミド)又はそれらのコポリマーを製造することができる。
【0023】
重縮合のためのモノマー:
表3を参照されたい。
【表3】
【0024】
当業者に既知の条件下における官能基化ジオールと二酸又は二酸クロリドの縮合によりポリ(エステル)を製造することができる。官能基化二酸をジオールとの縮合によりポリ
(エステル)に転換することができる。当業者に既知の条件下における官能基化ジオールとジイソシアナートとの縮合によりポリ(ウレタン)を製造することができる。
【0025】
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子は、好ましくはインキジェットインキの水性ビヒクル中に分散される。粒子は好ましくは分散剤又は界面活性剤の使用によりインキジェットインキの水性媒体中に分散される。
【0026】
インキジェットインキ、噴射可能な予備処理液又は噴射可能なオーバーコート調製物(オーバープリントワニス)のような噴射可能な水性調製物中で用いられるべき粒子は、動的レーザー回折により決定される4μm以下の平均粒度を有する。インキジェットプリントヘッドのノズル直径は通常20ないし35μmである。従って好ましくは平均粒度は0.05から2μmまで、より好ましくは0.10から1μmまでである。粒子の平均粒度が2μmより小さい場合、優れた解像度及び時間を経ての分散安定性が得られる。
【0027】
粒子は好ましくは水性インキジェットインキ中に存在するが、予備処理液(若しくはプライマー)又はオーバープリントワニス中に存在することもできる。インキジェットインキ中の粒子の量は液/ワニス/インキの合計重量に基づいて45重量%以下、好ましくは5と25重量%の間の量である。30重量%より多いと噴射が必ずしも非常に信頼され得るわけではないことが観察された。
【0028】
好ましい態様において、本発明に従うオリゴマー又はポリマーを好ましくは重合により、より好ましくは界面重合の使用によりカプセル封入して水性分散系を形成する。カプセル封入はオリゴマー又はポリマーと第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物の間における高分子バリヤー、すなわちカプセルの高分子シェルの形成の故に水性インキジェットの保存安定性を向上させる。
【0029】
さらに特定的に、水性インキジェットインキの保存時の一般式Iに従う官能基の部分的な加水分解が妨げられる。従ってインキジェットインキの保存時に、反応性及び従って印刷画像の溶剤抵抗性及び耐水性に向かう得られる向上は低下しない。
【0030】
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーのカプセル封入は、カプセル封入しない場合より信頼できる樹脂を含むインキジェットインキの噴射行動を生ずることも観察された。
【0031】
カプセルは好ましくはインキジェットインキ中に存在するが、予備処理液(若しくはプライマー)又はオーバープリントワニス中に存在することもできる。好ましくは、カプセルは液/ワニス/インキの合計重量に基づいて45重量%以下、好ましくは5と25重量%の間の量で存在することができる。30重量%より多いと噴射が必ずしも非常に信頼され得るわけではないことが観察された。
【0032】
インキジェットインキ、噴射可能な予備処理液又は噴射可能なオーバープリントワニスのような噴射可能な水性調製物中で用いられるべきカプセルは、上記で説明したと同じ理由で、動的レーザー回折により決定される4μm以下の平均粒度を有する。従って好ましくは平均粒度は0.05から2μmまで、より好ましくは0.10から1μmまでである。カプセルの平均粒度が2μmより小さい場合、優れた解像度及び時間を経ての分散安定性が得られる。
【0033】
カプセルは高分子シェルに共有結合した分散性基(dispersing group)を用いてインキジェットインキの水性媒体中に分散されるか或いは好ましくはカプセル
の形成の間又はその後に加えられる分散剤又は界面活性剤の使用により分散される。高分子シェルに共有結合した分散性基は好ましくはカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基及びポリエチレンオキシド基からなる群より選ばれる。
【0034】
立体的な安定化を達成するために分散性基を高分子分散剤と組み合わせて用いることができる。例えば高分子シェルは共有結合したカルボン酸基を有することができ、それは高分子分散剤のアミン基と相互作用する。しかしながらより好ましい態様において、高分子分散剤は用いられず、インキジェットインキの分散安定性は静電的安定化によってのみ達成される。例えばわずかにアルカリ性の水性媒体は高分子シェルに共有結合したカルボン酸基をイオン性基に変え、その後負に帯電したカプセルは凝集する傾向を持たない。十分な分散性基が高分子シェルに共有結合している場合、カプセルはいわゆる自己分散性カプセルになる。
【0035】
これらの負に又は正に帯電したカプセル表面をインキジェット印刷の間に有利に用いることもできる。例えばカチオン的に分散されたカプセルを含む予備処理液のような第二の液を用い、第二の液の上に印刷される水性インキジェットインキのアニオン的安定化着色剤を沈殿させることができる。この方法の使用により着色剤の固定の故の画質の向上が観察され得る。
【0036】
カプセルの高分子シェルのために用いられるポリマーの型に実質的な制限はない。好ましくは、高分子シェル中で用いられるポリマーは好適に架橋されている。架橋によってより高い剛性がカプセル中に組み込まれ、インキ製造及びインキジェットプリンターの両方におけるカプセルの取り扱いのためのより広い範囲の温度及び圧力を可能にする。
【0037】
高分子シェル材料の好ましい例にはポリウレア、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミンに基づくポリマー及びそれらの混合物が含まれ、ポリウレアが特に好ましい。
【0038】
A.2.本発明に従うカプセルの製造
一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの高分子シェルを用いるカプセル封入を化学的及び物理的方法の両方を用いて製造することができる。適したカプセル封入法には複合コアセルベーション(complex coacervation)、リポソーム形成、噴霧乾燥及び重合法が含まれる。
【0039】
本発明において好ましくは重合法が用いられ、それはそれがカプセルの設計において最高の制御を可能にするからである。より好ましくは本発明のカプセルの製造に界面重合を用いる。この方法は周知であり、Zhang Y.and Rochefort D.(Journal of Microencapsulation,29(7),636-649(2012))により、及びSalitin(Encapsulation Nanotechnologies,Vikas Mittal(ed.),chapter
5,137-173(Scrivener Publishing LLC(2013)において)により総説されている。
【0040】
界面重縮合のような界面重合において、2種の反応物はエマルション滴(emulsion droplets)の界面で出会い、急速に反応する。
【0041】
一般に界面重合は水性連続相中における親油性相の分散又はその逆を必要とする。相のそれぞれは少なくとも1種の溶解されたモノマー(第一のシェル成分)を含み、それは他
の相中に溶解された別のモノマー(第二のシェル成分)と反応することができる。重合すると水相及び親油性相中の両方中において不溶性であるポリマーが生成する。結局、生成するポリマーは親油性相と水相の界面において沈殿する傾向を有し、これによって分散相の周りにシェルを形成し、それはさらに重合すると成長する。本発明に従うカプセルは好ましくは水性連続相中の親油性分散系から製造される。
【0042】
本発明に従う且つ界面重合により生成するカプセルの典型的な高分子シェルは、典型的に第一のシェル成分としてジ又はポリ酸クロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリアミド、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリウレア、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴイソシアナート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリウレタン、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴスルホクロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアミンから製造されるポリスルホンアミド、典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴ酸クロリド及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリエステルならびに典型的に第一のシェル成分としてジ又はオリゴクロロホルメート及び第二のシェル成分としてジ又はオリゴアルコールから製造されるポリカーボネートからなる群より選ばれる。シェルはこれらのポリマーの組み合わせから構成されることができる。
【0043】
さらなる態様において、第一のシェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート、ジ又はオリゴ酸クロリド、ジ又はオリゴクロロホルメート及びエポキシ樹脂と組み合わせてゼラチン、キトサン、アルブミン及びポリエチレンイミンのようなポリマーを第二のシェル成分として用いることができる。
【0044】
特に好ましい態様において、シェルはポリウレア又はポリウレタンとのその組み合わせからなる。さらなる好ましい態様において、分散段階に水非混和性溶剤が用いられ、それはシェル形成の前又は後に溶剤ストリッピングにより除去される。特に好ましい態様において、水非混和性溶剤は常圧で100℃未満の沸点を有する。エステルは水非混和性溶剤として特に好ましい。
【0045】
水非混和性溶剤は水中で低い混和性を有する有機溶剤である。低い混和性は1対1の体積比(one over one volume ratio)で混合した場合に20℃において二相系を形成する水と溶剤の組み合わせと定義される。
【0046】
コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。これらは通常水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶剤中にそれを溶解することによりカプセル中に導入される。好ましい有機溶剤は酢酸エチルであり、それはそれが有する可燃性の危険が他の有機溶剤と比較して低いからでもある。
【0047】
しかしながらいくつかの場合に有機溶剤を省略することができる。例えば一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーが100mPa.s未満の粘度を有する場合、有機溶剤を省略することができる。
【0048】
カプセルの分散系の調製方法は好ましくは以下の:
a)水との低い混和性を有し且つ水より低い沸点を有する有機溶剤中の高分子シェルの形成のための第一のシェル成分及び一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの非水性溶液を調製し;
b)高分子シェルの形成のための第二のシェル成分の水溶液を調製し;
c)高せん断下で水溶液中に非水性溶液を分散させ;
d)任意的に水溶液と非水性溶液の混合物から有機溶剤をストリッピングし;そして
e)高分子シェルの形成のための第一及び第二のシェル成分の界面重合により一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーの周りに高分子シェルを形成する
段階を含む。
【0049】
次いで例えば着色剤、水、保湿剤、界面活性剤などの添加によりカプセル分散系をインキジェットインキ、水性予備処理液又は印刷法において適したいずれかの液体に仕上げることができる。
【0050】
好ましい態様において、カプセルは自己分散性カプセルである。カプセルを自己分散性にするために、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩のようなアニオン性分散性基或いは第四級アンモニウム塩、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムのようなカチオン性分散性基をカプセルの高分子シェルに共有結合させて分散安定性を保証することができる。
【0051】
カプセルの高分子シェル中にアニオン性安定化基を導入するための好ましい方策は、イソシアナートと反応することができるカルボン酸官能基化反応性界面活性剤を利用する。これは少なくとも部分的に第二級又は第一級のアミンを含む両性型の界面活性剤に導く。スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩或いはホスホン酸又はその塩で官能基化された他の反応性界面活性剤を用いることができる。
【0052】
部分的に第二級アミンを有するが第三級アミンも含む界面活性剤の混合物であるいくつかの両性界面活性剤は商業的に入手可能である。インキジェットプリンターで、商業的に入手可能な両性界面活性剤の使用により製造されるカプセルに基づくインキジェットインキにおいて法外な発泡に直面した。発泡はインキ供給において及びまたインキから空気を除去しようとするための脱ガスにおいて問題を引き起こし、かくして信頼できない噴射に導く。従って好ましくは国際公開第2016/165970号パンフレットの式(I)に従う界面活性剤が一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーのカプセル封入プロセスの間に用いられる。
【0053】
予備処理液又はカチオン性に基づくインキジェットインキ(特許出願国際公開第2019/105867号パンフレットに開示されているような)における使用のためのカプセルの高分子シェル中へのカチオン性分散性基の導入は、本発明に従うカプセルのシェルへのカチオン性分散性基を有する界面活性剤の結合を利用する。これは、少なくとも1個の第一級又は第二級アミン基ならびにプロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムから選ばれる少なくとも1個の基を含む界面活性剤と第一のシェル成分、好ましくはシェルのイソシアナートモノマーの反応により行われる。さらにもっと好ましい態様において、前記界面活性剤は式IVに従う界面活性剤である。
【化2】
式中、
R
1は置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基及び置換又は非置換アルキニル基からなる群より選ばれ、但しR
1は少なくとも8個の炭素原子を含み;
R
2、R
3及びR
4は独立して置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換アルカリール基及び置換又は非置換(ヘテロ)アリール基からなる群より選ばれ、
L
1は8個以下の炭素原子を含む二価連結基を示し;
Xはアンモニウム基の正の電荷を補償するための対イオンを示す。
【0054】
本発明に従うカプセルは水性媒体中に分散される。水性媒体は水からなるが、好ましくは1種以上の水溶性有機溶剤を含むことができる。
【0055】
多様な理由で1種以上の有機溶剤を加えることができる。例えば調製されるべき予備処理液又はインキジェットインキ中における化合物の溶解を向上させるため又は多孔質基材中へのインキ浸透を向上させるため又はインキジェットヘッドのノズルにおけるインキの乾燥速度を遅くするために少量の有機溶剤を加えるのが有利であり得る。好ましくは水溶性有機溶剤はポリオール(例えばエチレングリコール、グリセリン、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)、アミン(例えばエタノールアミン及び2-(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えばメタノール、エタノール及びブタノール)、多価アルコールのアルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’チオジエタノール、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、複素環式化合物(例えば2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン)ならびにアセトニトリルである。
【0056】
A.3.少なくとも2個のアミン基で官能基化された化合物
本発明に従うインキは第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも官能基で官能基化された少なくとも1種の化合物をさらに含み、第一級アミンがより好ましい。
【0057】
より好ましい態様において、前記アミノ官能基化化合物は二ないし八、より好ましくは二ないし五の官能基性そして最も好ましくは二又は三官能基性を有する。官能基性が低いほどポリマー粒子との凝集の危険がより低い。二又は三官能基性はもっと高い官能基性を有する化合物より市場でより入手可能である。
【0058】
典型的なアミン官能基化インキ添加物を表4に示すがこれらに限られない。
【表4-1】
【表4-2】
【0059】
より好ましい態様において、水性インキジェットインキ又は噴射可能な予備処理液は第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基で官能基化された少なくとも1種の樹脂粒子を含み、第一級アミンがより好ましい。
【0060】
ポリマーは水性インキジェットインキ中に溶解され得るか又は分散された又は乳化されたポリマー粒子として存在することができる。プライマーとしての流体の設計において有用な典型的なポリマーはポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルアミン-コ-ビニルホルムアミド)、キトサン、4-アミノメチル-スチレン又はその塩、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル-メタクリルアミド又はその塩のホモポリ-又はコポリマー、ポリ(リシン)又はそのコポリマーなどからなる群より選ばれる。
【0061】
好ましい態様において、水性インキジェットインキは第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個そして最も好ましくは少なくとも15個の官能基で官能基化された少なくとも1種の樹脂粒子を含み、第一級アミンがより好ましい。水性インキジェットインキ中で官能基化された化合物の代わりに官能基化された樹脂粒子を用いることは、向上した流動学的行動の利点を有し、向上した噴射信頼性及びインキジェットインキのコロイド安定性に導く。
【0062】
アミノ官能基化樹脂粒子はアミノ官能基化ポリマーの誘導体化(derivatisation)、及び続く前記誘導体の水性環境中における分散及び任意的に続く粒子の架橋により製造され得る。好ましい出発ポリマーはビニルアミン又はアリルアミンのホモ又はコポリマーである。典型的な例にはポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルアミン-コ-ビニルホルムアミド)、キトサン、4-アミノメチル-スチレン又はその塩、2-アミノエチル-アクリレート又はその塩、2-アミノエチル-メタクリレート又はその塩、3-アミノプロピル-アクリルアミド又はその塩、3-アミノプロピル-メタクリルアミド又はその塩のホモポリ-又ははコポリマー、ポリ(リシン)又はそのコポリマーなどが含まれる。出発ポリマーの重量平均分子量は好ましくは少なくとも7000、より好ましくは少なくとも15000そして最も好ましくは少なくとも25000である。
【0063】
他の合成戦略にはアゼリジンを用いるカルボン酸官能基化アクリルポリマーの誘導体化及び続く乳化及び任意的に続く架橋、任意的に保護されたアミノ官能基化モノマーの乳化又はミニ乳化重合及び任意的に続く脱保護、4-クロロメチル-スチレンのような反応性モノマーを含む反応性ラテックスの後誘導体化ならびにアミノ官能基化アルコキシシランに基づくゾルゲルベースの(sol gel based)重縮合を含む。
【0064】
好ましい態様において、前記アミノ官能基化樹脂粒子は架橋されている。さらなる好ましい態様において、ポリマー樹脂粒子中の繰り返し単位の少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも10モル%そして最も好ましくは少なくとも20モル%が第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる官能基で官能基化されている。
【0065】
アミンは塩酸、メタンスルホン酸、p.-トルエンスルホン酸、リン酸、硫酸ならびに酢酸、クエン酸及び乳酸のようなカルボン酸のような酸を用いて少なくとも部分的に中和されることができる。
【0066】
A.4.着色剤
本発明に従う水性インキジェットインキ中の着色剤は分散染料、酸性染料、反応染料のような染料であることができ、顔料又はそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、本発明に従うインキジェットインキ中の着色剤は顔料である。
【0067】
インキの顔料はブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであるとができる。カラー顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,3rd edition.Wiley-VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されたものから選ばれ得る。
【0068】
適した顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0128]節ないし[0138]節に開示されている。
【0069】
顔料粒子は高分子分散剤又は界面活性剤を用いて水性媒体中に分散される。自己分散性顔料を用いることもできる。本発明に従い且つアニオン性分散性基を有する粒子又はカプセルと組み合わされる場合、顔料のための分散剤として好ましくはアニオン性界面活性剤を用いることができる。カチオン性分散性基を有する本発明に従う粒子及びカプセルと組み合わされる場合、顔料のための分散剤として好ましくはカチオン性界面活性剤を用いることができる。後者はインキジェットインキ中に含まれる粒子又はカプセルの分散性基との高分子分散剤の相互作用を妨げ、それは顔料の分散安定性がカプセルのために用いられると同じ静電的安定化の方法により達成されるからである。
【0070】
自己分散性顔料は、塩形成基又はカプセルのための分散性基として用いられている基とと同じ基のようなアニオン性親水性基がその表面上に共有結合している顔料であり、それは界面活性剤又は樹脂を用いずに顔料が水性媒体中に分散するのを可能にする。適した商業的に入手可能な自己分散性カラー顔料は、例えばCABOTからのCAB-O-JETTMインキジェット着色剤である。
【0071】
インキジェットインキ中の顔料粒子はインキジェット印刷装置を介する、特に吐出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大色濃度のため及び沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0072】
平均顔料粒度は好ましくは0.050μmと1μmの間、より好ましくは0.070μmと0.300μmの間そして特に好ましくは0.080μmと0.200μmの間である。最も好ましくは数平均(numeric average)顔料粒度は0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒度は、動的光散乱の原理に基づくBrookhaven
Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。試料は水を用いて0.002重量%の顔料濃度に希釈される。BI90plusの測定設定は:23℃において5回の測定、90oの角度、635nmの波長及びグラフィックス=コレクション関数(graphics=correction function)である。
【0073】
適したホワイト顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0116]中の表2により示されている。ホワイト顔料は好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で又は組み合わせて用いることができる。好ましくは1.60より高い屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0074】
衣類における特殊な効果のための蛍光顔料及び編織布上に銀色及び金色の豪華な外観を印刷するための金属性顔料のような特殊な着色剤を用いることもできる。
【0075】
顔料のための適した高分子分散剤は2種のモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5種又はそれより多種のモノマーさえ含むことができる。高分子分散剤の性質は、モノマーの性質及びポリマー中におけるそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは以下のポリマー組成を有する:
●ランダム重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABBAABABに重合した);
●交互重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがABABABABに重合した);
●勾配(gradient)(テーパード(tapered))重合したモノマー(例えばモノマーA及びBがAAABAABBABBBに重合した);
●それぞれのブロックのブロック長(2、3、4、5個又はそれより多くさえ)が高分子分散剤の分散能力に重要であるブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBがAAAAABBBBBBに重合した);
●グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合した高分子側鎖を有する高分子主鎖から成る);ならびに
●これらのポリマーの混合形態、例えばブロック様勾配コポリマー。
【0076】
適した分散剤はBYK CHEMIEから入手可能なDISPERBYKTM分散剤、JOHNSON POLYMERSから入手可能なJONCRYLTM分散剤及びLubrisolから入手可能なSOLSPERSETM分散剤である。非高分子ならびにいくつかの高分子分散剤の詳細なリストはMC CUTCHEON,Functional Materials,North American Edition.Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990.p.110-129により開示されている。
【0077】
高分子分散剤は好ましくは500と30000の間、より好ましくは1500と10000の間の数平均分子量Mnを有する。
【0078】
高分子分散剤は好ましくは100,000未満、より好ましくは50,000未満そして最も好ましくは30,000未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0079】
顔料は好ましくはそれぞれインキジェットインキの合計重量に基づいて0.01ないし20重量%の範囲内、より好ましくは0.05ないし10重量%の範囲内そして最も好ましくは0.1ないし5重量%の範囲内で存在する。ホワイトインキジェットインキの場合、ホワイト顔料は好ましくはインキジェットインキの3重量%ないし40重量%そしてより好ましくは5重量%ないし35重量%の量で存在する。3重量%未満の量は十分な被覆力を達成することができない。
【0080】
A.5.添加物
本発明に従う水性インキジェットインキは水を含むが、1種以上の水溶性有機溶剤を含むことができる。適した有機溶剤は§A.2.に記載されている。
【0081】
本発明に従う水性インキジェットインキは保湿剤も含むことができる。保湿剤はノズルの閉塞を予防する。予防はインキジェットインキ、特にインキ中の水の蒸発速度を遅くするその能力の故である。保湿剤は好ましくは水より高い沸点を有する有機溶剤である。適した保湿剤にはトリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエレチングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含むグリコールならびにそれらの混合物及び誘導体が含まれる。好ましい保湿剤はグリセロールである。
【0082】
保湿剤は好ましくは液の合計重量に基づいて0.1ないし20重量%の量でインキジェットインキに加えられる。
【0083】
本発明に従う水性インキジェットインキは界面活性剤を含むことができる。いずれの既知の界面活性剤も用いられ得るが、好ましくはグリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤が用いられる。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤の使用はブリーディングをさらに減少させて印刷の質を向上させ、且つ印刷における乾燥性も向上させて高速印刷を可能にする。
【0084】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上である。これらは例えばAir Products(GB)からOlfine E1010のようなOlfine(登録商標)104シリーズ及びEシリーズとして又はNissin Chemical IndustryからSurfynol(登録商標)465及びSurfinol 61として入手可能である。
【0085】
本発明に従うインキジェットインキ組成物はさらに追加の樹脂を含むことができる。この樹脂は多くの場合に基材への顔料の優れた接着をさらに達成するためにインキジェットインキ調製物に加えられる。樹脂はポリマーであり、適した樹脂はアクリルに基づく樹脂、ウレタン修飾ポリエステル樹脂又はポリエチレンワックスであることができる。
【0086】
ポリウレタン樹脂をインキ調製物中に分散系として導入することができ、それらは例えば脂肪族ポリウレタン分散系、芳香族ポリウレタン分散系、アニオン性ポリウレタン分散系、非イオン性ポリウレタン分散系、脂肪族ポリエステルポリウレタン分散系、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散系、脂肪族アクリル修飾ポリウレタン分散系、芳香族ポ
リエステルポリウレタン分散系、芳香族ポリカーボネートポリウレタン分散系、芳香族アクリル修飾ポリウレタン分散系又は上記の2種以上の組み合わせからなる群より選ばれることができる。
【0087】
本発明のインキ中で分散系として用いられるべき好ましいウレタン樹脂は、ウレタン結合を含む構造単位を含むポリエステル樹脂である。そのような樹脂の中で水溶性又は水分散性ウレタン修飾ポリエステル樹脂が好ましい。ウレタン修飾ポリエステル樹脂がヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)から誘導される少なくとも1個の構造単位及び有機ポリイソシアナートから誘導される少なくとも1個の構造単位を含むのが好ましい。
【0088】
さらに、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂は少なくとも1種の多塩基性酸成分と少なくとも1種の多価アルコール成分の間のエステル化反応又はエステル交換反応により生成する樹脂である。
【0089】
本発明のインキ中に含まれ得る好ましいポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、アニオン性基を含むポリオール及びポリイソシアナートを反応させることにより得ることができるポリウレタン樹脂である。特に好ましいポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、アニオン性基を含むポリオール及びポリイソシアナートを反応させることにより得ることができるポリウレタン樹脂であり、且つここでポリエステルポリオールは芳香族ポリカルボン酸及びポリオールを反応させることにより得られる。適したポリウレタン樹脂及びその製造の例は未公開特許出願欧州特許第16196224.6号明細書に開示されている。
【0090】
適したポリウレタン分散系のいくつかの例は、例えばNEOREZ R-989、NEOREZ R-2005及びNEOREZ R-4000(DSM NeoResins);BAYHYDROL UH 2606、BAYHYDROL UH XP 2719、BAYHYDROL UH XP 2648及びBAYHYDROL UA XP 2631(Bayer Material Science);DAOTAN VTW 1262/35WA、DAOTAN VTW 1265/36WA、DAOTAN VTW
1267/36WA、DAOTAN VTW 6421/42WA、DAOTAN VTW 6462/36WA(Cytec Engineered Materials Inc.,Anaheim CA);及びSANCURE 2715、SANCURE 20041、SANCURE 2725(Lubrizol Corporation)あるいは上記の2種以上の組み合わせである。
【0091】
アクリルに基づく樹脂にはアクリルモノマーのポリマー、メタクリルモノマーのポリマー及び上記のモノマーと他のモノマーのコポリマーが含まれる。これらの樹脂は約30nmないし約300nmの平均直径を有する粒子の懸濁液として存在する。アクリルラテックスポリマーはアクリルモノマー又はメタクリルモノマー残基から生成する。アクリルラテックスポリマーのモノマーの例には例えばアクリレートエステル、アクリルアミド及びアクリル酸のようなアクリルモノマーならびに例えばメタクリレートエステル、メタクリルアミド及びメタクリル酸のようなメタクリルモノマーが例として含まれる。アクリルラテックスポリマーはホモポリマーであるか或いはアクリルモノマーと例えばスチレン、スチレンブタジエン、p-クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン及びジビニルナフタレンを含むがこれらに限られないビニル芳香族モノマーのような別のモノマーのコポリマーであることができる。
【0092】
適したアクリルラテックスポリマー懸濁液のいくつかの例は、例えばJONCRYL 537及びJONCRYL 538(BASF Corporation,Port A
rthurTX);CARBOSET GA-2111、CARBOSET CR-728、CARBOSET CR-785、CARBOSET CR-761、CARBOSET CR-763、CARBOSET CR-765、CARBOSET CR-715及びCARBOSET GA-4028(Lubrizol Corporation);NEOCRYL A-1110、NEOCRYL A-1131、NEOCRYL A-2091、NEOCRYL A-1127、NEOCRYL XK-96及びNEOCRYL XK-14(DSM);ならびにBAYHYDROL AH XP 2754、BAYHYDROL AH XP 2741、BAYHYDROL A 2427及びBAYHYDROL A2651(Bayer)或いは上記の2種以上の組み合わせである。
【0093】
本発明に従うインキジェットインキ中の樹脂の濃度は少なくとも1(重量)%且つ好ましくは30(重量)%未満、より好ましくは20(重量)%未満である。
【0094】
好ましい態様において、本発明に従うインキジェットインキはインキジェットインキセットの一部、より好ましくは複数の本発明に従うインキジェットインキを含む多色インキジェットインキセットの一部である。インキジェットインキセットは好ましくは少なくともシアンインキジェットインキ、マゼンタインキジェットインキ、イエローインキジェットインキ及びブラックインキジェットインキを含む。そのようなCMYK-インキジェットインキセットをレッド、グリーン、ブルー、バイオレット及び/又はオレンジのような追加のインキを用いて拡張し、画像の色域をさらに拡大することもできる。インキジェットインキセットを全密度(full density)インキジェットインキと軽密度(light density)インキジェットインキの組み合わせにより拡張することもできる。暗色及び明色インキならびに/或いはブラック及びグレーインキの組み合わせは粒状性の低下により画質を向上させる。
【0095】
好ましい態様において、インキジェットインキセットはホワイトインキジェットインキも含む。これは特に透明基材上により鮮明な色を得ることを可能にし、ここで画像を透明基材を介して見る場合にホワイトインキジェットインキをプライマーとして又はカラーインキジェットインキの上に適用することができる。
【0096】
本発明に従うインキジェットインキの粘度は25℃及び90s-1のせん断速度において好ましくは25mPa.s未満、より好ましくは25℃及び90s-1のせん断速度において2mPa.sと15mPa.sの間である。
【0097】
本発明に従うインキジェットインキの表面張力は好ましくは25℃において約18mN/mないし約70mN/mの範囲内、より好ましくは25℃において約20mN/mないし約40mN/mの範囲内である。
【0098】
B.インキジェット印刷法
好ましいインキジェット記録法において、前記方法は:a)基材、好ましくは非多孔質基材上に本発明に従う水性インキジェットインキを噴射し、インキは着色剤、第一級アミン又は第二級アミンであり、第一級アミンがより好ましい少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物、一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子の分散系を含み、より好ましくはインキはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散系を含み、コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み;そしてb)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射されたインキジェットインキを乾燥する段階を含む。得られる温度が60℃未満の場合、一般式I、II又はII
Iに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子と第一級アミン又は第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物の間の架橋反応が起こらないか又は不十分である。結局、噴射され且つ乾燥したインキの溶剤抵抗性の向上は起こらない。
【0099】
別の好ましいインキジェット記録法において、前記方法は:a)基材、好ましくは非多孔質基材上に水性予備処理液を適用し、b)基材、好ましくは非多孔質基材上に本発明に従う水性インキジェットインキを噴射し、インキは着色剤、第一級アミン又は第二級アミンであり、第一級アミンがより好ましい少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物、一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子の分散系を含み、より好ましくはインキはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散系を含み、コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含み;そしてc)噴射されたインキの少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃の温度を得るような熱を適用することにより噴射されたインキジェットインキを乾燥する段階を含む。
【0100】
予備処理液は好ましくは有機酸、樹脂、多価金属イオン又はカチオン性界面活性剤のような凝集剤のような水性インキジェットインキ中の成分を凝集させることができる化合物を含む。多価金属イオンの適した例はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム及びアルミニウムのような二価又はもっと多価の金属カチオンとフルオリドイオン(F-)、クロリドイオン(Cl-)、ブロミドイオン(Br-)、サルフェートイオン(SO4
2-)、硝酸イオン(NO3
-)及びアセテートイオン(CH3COO-)のようなアニオンから形成される水溶性金属塩である。
【0101】
これらの多価金属イオンはインキジェットインキ中の顔料の表面上又はインキ中に含まれる分散されたカプセルのポリマー上のカルボキシル基に作用することにより着色剤、さらに特定的に顔料を凝集させる機能を有する。結局インキの着色剤は固定され、ブリーディング及びビーディングを減少させる。従ってインキ中の顔料の表面及び/又はインキ中に含まれるなら分散されたカプセルのポリマーはアニオン性基、好ましくはカルボキシル基を有するのが好ましい。
【0102】
有機酸の好ましい例には酢酸、プロピオン酸及び乳酸が含まれるがこれらに限られない。
【0103】
樹脂の好ましい例にはデンプン;カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース系材料;ポリウレタン、多糖類;ゼラチン及びカゼインのようなタンパク質;タンニン及びリグニンのような水溶性の天然に存在するポリマー;ならびにポリビニルアルコールを含むポリマー、ポリエチレンオキシドを含むポリマー、アクリル酸モノマーから生成するポリマー及び無水マレイン酸モノマーから生成するポリマーのような合成水溶性ポリマーが含まれるがこれらに限られない。他の適した樹脂は欧州特許第2362014号明細書[0027-0030]に記載されているアクリル系ポリマーである。好ましくは、樹脂はカチオン性樹脂、より好ましくはカチオン性帯電ポリウレタンである。樹脂含有率は予備処理液の合計質量(100質量%)に対して好ましくは20重量%以下である。
【0104】
水性予備処理液も第一級アミン又は第二級アミンであり、第一級アミンがより好ましい少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物、一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子或いはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散系を含むことができる。コアは一
般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。シェルはさらに好ましくはシェルに共有結合した分散性基を含み、より好ましくは分散性基はプロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムの群から選ばれる基である。予備処理液はさらに第一級アミン又は第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物も含むことができ、第一級アミンがより好ましい。
【0105】
より好ましい態様において、前記アミノ官能基化化合物は二ないし八、より好ましくは二ないし五の官能基性そして最も好ましくは二又は三官能基性を有する。
【0106】
予備処理液の水性媒体は水を含むが1種以上の水溶性有機溶剤を含むことができる。適した有機溶剤は§A.2に記載されている。カプセルは、予備処理液中に存在する場合、好ましくは予備処理液の合計重量に基づいて45重量%以下、より好ましくは5重量%と25重量%の間の量で存在する。
【0107】
予備処理液も保湿剤を含むことができる。予備処理液がインキジェット又はバルブジェットのような噴射法を用いて適用されねばならない場合、好ましくは保湿剤を予備処理液中に導入する。保湿剤はノズルの閉塞を予防する。
【0108】
予備処理液も顔料を含むことができる。暗色又は透明の基材上における印刷のために特に有用なのはホワイト顔料を含む予備処理液である。水性予備処理液インキのために好ましい顔料は二酸化チタンである。本発明において有用な二酸化チタン(TiO2)顔料はルチル又はアナターゼ結晶形にあることができる。TiO2の製造方法は“The Pigment Handbook”,Vol.1,2nd Ed.,John Wiley
& Sons,NY(1988)に非常に詳細に記載されており、その関連する開示は引用することにより完全に示されているごとくにすべての目的のために本明細書の内容となる。
【0109】
二酸化チタン粒子は予備処理液の所望の末端使用用途に依存して約1ミクロン以下の多様な平均粒度を有することができる。高い隠蔽を要求する用途又は装飾的印刷用途のために、二酸化チタン粒子は好ましくは約1ミクロン未満の平均寸法を有する。好ましくは、粒子は約50nmから約950nmまで、より好ましくは約75nmから約750nmまでそしてさらにもっと好ましくは約100nmから約500nmまでの平均寸法を有する。
【0110】
いくらかの透明度を有する白色を要求する用途のために、好ましい顔料(pigment preference)は「ナノ」二酸化チタンである。「ナノ」二酸化チタン粒子は典型的に約10nmから約200nmまで、好ましくは約20nmから約150nmまでそしてより好ましくは約35nmから約75nmまでの範囲の平均寸法を有する。ナノ二酸化チタンを含むインキは向上した彩度及び透明度を与えることができ、一方でまだ光退色への優れた抵抗性及び適切な色相角(hue angle)を保持している。コーティングされていないナノ等級の酸化チタンの商業的に入手可能な例はP-25であり、Degussa(Parsippany N.J.)から入手可能である。
【0111】
二酸化チタン顔料は1種以上の金属酸化物表面コーティングを帯びていることもできる。当業者に既知の方法を用いてこれらのコーティングを適用することができる。金属酸化物コーティングの例には中でもシリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアが含まれる。これらのコーティングは二酸化チタンの光反応性の低下を含む向上した性質を与えることができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアの金属酸化
物コーティングはTiO2顔料の正に帯電した表面を生じ、従って本発明のカチオン的に安定化されたカプセルとの組み合わせにおいて特に有用であり、それは顔料の追加の表面処理が必要でないからである。
【0112】
そのようなコーティングされた二酸化チタンの市販の例にはR700(アルミナコーティングされている、E.I.DuPont deNemours,Wilmington
Del.から入手可能)、RDI-S(アルミナコーティングされている、Kemira Industrial Chemicals,Helsinki,Finlandから入手可能)、R706(DuPont,Wilmington Del.から入手可能)及びW-6042(Tayco Corporation,Osaka Japanからのシリカアルミナ処理されたナノ等級二酸化チタン)が含まれる。
【0113】
本発明の別の好ましい態様において、噴射された水性インキジェットインキの上に適用されるべきオーバープリントワニスも、第一級アミン又は第二級アミンであり、第一級アミンがより好ましい少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物ならびに一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む粒子或いはコアを囲む高分子シェルで構成されるカプセルの分散系を含むことができる。コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含む。オーバープリントワニスを適したコーティング法によりコーティングすることができるか、或いはグラビア印刷、フレキソグラフィー印刷、オフセット印刷又はインキジェット印刷のような印刷法を用いて印刷することができる。
【0114】
インキジェット記録法における基材は例えば編織布、紙、革及びボール紙基材のような多孔質であることができるが、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)のようなポリエステル又はポリイミドのような非吸収性基材である。
【0115】
基材は普通紙、樹脂がコーティングされた紙、例えばポリエチレン又はポリプロピレンがコーティングされた紙のような紙基材であることもできる。紙の型に実質的な制限はなく、それには新聞紙、雑誌用紙、オフィス用紙、壁紙が含まれるが、ホワイトライニングチップボード、段ボール及び包装紙のような通常ボードと呼ばれる比較的高い坪量(grammage)の紙も含まれる。
【0116】
基材は透明、半透明又は不透明であることができる。好ましい不透明基材にはAgfa-GevaertからのSynapsTM銘柄ようないわゆる合成紙が含まれ、それは1.10g/cm3以上の密度を有する不透明ポリエチレンテレフタレートシートである。
【0117】
別の好ましいインキジェット記録法において、予備処理液はインキジェット、バルブジェット及び噴霧の群から選ばれる方法を介して適用される。さらに特定的に、これららのインキジェット及びバルブジェットの方法は、好ましくは画像を得るためにインキジェットインキが上に印刷されるであろう表面上に本発明に従う予備処理液を画像通りに適用することを可能にする。これらの最後の予備処理液の適用手段は、必要な予備処理液の量が基材の下塗りの他の適用方法より実質的に少ないという利点を有する。
【0118】
第一級アミン又は第二級アミンである少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物ならびに一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子、より好ましくはコアを囲む高分子シェルを含み、コアは一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り
返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むカプセルを含む予備処理液、インキジェットインキ又はオーバープリントワニスの乾燥のための加熱法の例にはヒートプレス、大気圧蒸熱、高圧蒸熱、THERMOFIXが含まれるがこれらに限られない。加熱法のためにいずれの熱源も用いることができ;例えば赤外線源が用いられる。
【0119】
乾燥段階を大気において行うことができるが、噴射されるインキ、予備処理液又はオーバープリントワニスの少なくとも60℃、より好ましくは80℃の温度を達成するための加熱段階は、熱源の使用により行われなければならない。適した熱源の例には強制空気加熱、NIR-及びCIR線を含むIR-線のような放射線加熱、伝導加熱(conduction heating)、高周波乾燥及びマイクロ波乾燥のための装置が含まれる。
【0120】
インキジェットインキ及び任意的にプライマー又は予備処理液又はオーバープリントワニスの噴射用のインキジェット印刷系のために好ましいインキジェットヘッドは圧電インキジェットヘッドである。圧電インキジェット噴射は圧電セラミック変換器に電圧が適用される場合のその動きに基づく。電圧の適用はプリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変え、空隙を形成し、それが次いでインキ又は液で満たされる。電圧が再び取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、インキジェットヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら本発明に従うインキ又は予備処理液の噴射は圧電インキジェット印刷に縛られない。他のインキジェットプリントヘッドを用いることができ、連続型、サーマルプリントヘッド型、MEM-ジェット型ヘッド及びバルブジェット型のような種々の型が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0121】
実施例
材料
すべての化合物は、他にことわらなければTCI Europeにより供給される。
●Desmodur N75 BAはBayer AGにより供給される三官能基性イソシアナートである。
●Lakeland ACP70はLakeland Laboratories LTDにより供給される両性イオン性界面活性剤である。
●Alkanol XCはDupontにより供給されるアニオン性界面活性剤である。●Cab-o-Jet 465MはCabotにより供給されるマゼンタ顔料分散系である。
●Amino-1はTCIにより供給される二官能基性アミンである。
【実施例1】
【0122】
本発明の樹脂INVRES-1の合成
10gの2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートを30mlの酢酸エチル中に溶解した。0.472gのドデシルメルカプタンを加え、混合物を窒素でパージした。134mgの2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]を加え、混合物を6時間還流させた。混合物を室温に冷ました。酢酸エチル中の本発明の樹脂INVRES-1の溶液を本発明のカプセルINVCAP-1の合成において直接用いた。
【0123】
GPCを用い、INVRES-1の分子量をポリ(スチレン)標準に対して決定した。INVRES-1は10500の数平均分子量Mn及び15400の重量平均分子量Mwを有した。
【0124】
本発明のカプセルINVCAP-1の製造:
13.2gのDesmodur N75 BAを上記の酢酸エチル中のINVRES-1の溶液の37gに加えた。1.2gのLakeland ACP 70を加え、溶液を
室温で1時間撹拌した。
【0125】
この溶液をUltra Turraxを用いて16000rpmの回転速度で5分間撹拌しながら44gの水中の3.36gのLakeland ACP 70、1.17gのリシン及び1.5gのトリエタノールアミンの溶液に加えた。52gの水を加え、60℃において真空度を500ミリバールから120ミリバールに徐々に増しながら減圧下で溶媒を蒸発させた。120ミリバールで水を蒸発させることにより分散系の重量を88gに調整した。分散系を65℃で16時間撹拌した。分散系を室温に冷まし、1.6μmのフィルター上で分散系をろ過した。
【0126】
ZetasizerTM Nano-S(Malvern Instruments,Goffin Meyvis)を用いて平均粒度を測定した。平均粒度は183nmであった。
【0127】
比較用のインキCOMP-1及び本発明のインキINV-1の調製
表5に従う成分を混合することにより本発明のインキINV-1及び比較用のインキCOMP-1を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表5】
【0128】
本発明の組成物INV-1及び比較用組成物COMP-1をガラス上にコーティングし、80℃で15分間乾燥した。溶剤としてイソプロパノール及びメチルエチルケトンを用い、コーティングの上をQ-チップで40回拭うことにより、溶剤抵抗性を試験した。
【0129】
比較用組成物COMP-1のコーティングは明らかに損傷を受けたが、本発明の組成物INV-1のコーティングは両溶剤に対して完全に抵抗性であり、80℃におけるコーティングの架橋を証明した。
【実施例2】
【0130】
実施例2は本発明に従うインキの保存安定性が実用のために十分であることを示す。
表6に従う成分を混合することにより本発明のインキINV-2を調製した。すべての重量パーセンテージはインキジェットインキの合計重量に基づく。
【表6】
【0131】
本発明のインキINV-2を60℃で14日間保存し、粘度における変化を監視した。出発粘度は7.5mPasであった。時間を経て(upon aging)粘度変化は最初の値の10%未満であり、第一級アミン及び第二級アミンからなる群より選ばれる少なくとも2個の官能基で官能基化された化合物、着色剤ならびに一般式I、II又はIIIに従う官能基を含む少なくとも3個の繰り返し単位を有するオリゴマー又はポリマーを含むポリマー粒子の組み合わせが実用のために十分に安定であることを示した。