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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】カチオン性重合体ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20240412BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20240412BHJP
   C08F 26/02 20060101ALI20240412BHJP
   C08F 8/10 20060101ALI20240412BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240412BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240412BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/54
C08F26/02
C08F8/10
C08F8/00
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 134
B41J2/01 501
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022567312
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021060790
(87)【国際公開番号】W WO2021224041
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】20172947.2
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】デコスター,ルーク
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204525(JP,A)
【文献】特開2019-137760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30-54
C08F 26/02
C08F 8/10
C08F 8/00
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキサラート架橋剤と反応することができるカチオン性界面活性剤及び樹脂を含む水性有機樹脂粒子分散液であって、前記樹脂は、少なくとも以下:
(i)ビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選択される繰返し単位と
(ii)オキサリルアミド架橋単位-NHCOCONH--、式中、破線は、前記樹脂の重合体残基との共有結合を表す、と
(iii)一般式I又は一般式IIに従う繰返し単位
【化1】
式中
Xは、O又はNHを表し
nは、0又は1を表し
1は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択されるが、
ただしR1は、少なくとも6個の炭素原子を有する。
【化2】
式中
Yは、O又はNHを表し
nは、0又は1を表し
2は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択されるが
ただしR2は、少なくとも6個の炭素原子を有する、と、
を有する、前記水性有機樹脂粒子分散液
【請求項2】
X及びYはNHを表し、nは1を表し、並びにR1及びR2は少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル基を表す、請求項1に記載の水性有機樹脂粒子分散液
【請求項3】
水溶性有機溶媒と、請求項1又は2に定義されるとおりの水性有機樹脂粒子分散液と、を含む、インクジェット印刷用の噴射可能な水性液体。
【請求項4】
さらに、着色剤を含む水性インクジェット用インク中の成分を凝集させることができる成分を含む、請求項に記載の噴射可能な水性液体。
【請求項5】
さらに、着色剤を含む、請求項又は請求項に記載の噴射可能な水性液体。
【請求項6】
前記着色剤は、白色顔料である、請求項に記載の噴射可能な水性液体。
【請求項7】
さらに、ポリアクリレート及びポリウレタンからなる群より選択されるラテックスを含む、請求項に記載の噴射可能な水性液体。
【請求項8】
請求項からに定義されるとおりの噴射可能な水性液体と、並びに前記樹脂と反応することができる反応性化合物、水溶性有機溶媒、及び着色剤を含む水性インクジェット用インクと、を含む、インクジェット印刷用インクセット。
【請求項9】
前記反応性化合物は、エポキシ系樹脂、β-ケト-エステル系樹脂、及び活性化二重結合で官能化された重合体、例えば、オリゴ官能性マレイミド及びアクリレートなどからなる群より選択される第二樹脂である、請求項に記載のインクセット。
【請求項10】
前記β-ケト-エステル系樹脂は、重合体シェルによりカプセル化されている、請求項に記載のインクセット。
【請求項11】
前記重合体シェルは、前記重合体シェルと共有結合した分散基を含み、且つカルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、及びリン酸エステル又はその塩からなる群より選択される、請求項10に記載のインクセット。
【請求項12】
画像記録法であって、以下の工程:
i)請求項から11に定義されるとおりのインクセットを、基材上に噴射して、画像を形成する工程と、
ii)前記適用されたインクセットを、前記画像の温度が少なくとも60℃になるように加熱することより乾燥させる工程と、
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記インクセットは、インクジェット、バルブジェット、又は噴霧などの噴射技術により適用される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い第一級アミン官能性を持つカチオン性重合体ナノ粒子に関する。本粒子は、2-化合物(2K)熱硬化性用途及びインクジェット印刷用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
第一級アミン官能化重合体は、幅広い反応性を有し、そのため、これらは、2K熱硬化性組成物の設計において、例えば、エポキシ系樹脂、β-ケト-エステル系樹脂、及び活性化二重結合官能化重合体、例えば、オリゴ官能性マレイミド及びアクリレートなどとの組み合わせにおいて、反応性パートナーとして特に有用なものとなっている。
【0003】
インクジェット技術は、画像技術から、様々な技術分野、例えば、床材及び家具の装飾用途、エレクトロニクス、織物印刷、皮革印刷、及びガラス印刷などにおけるデジタルマニュファクチャリング用の工業生産手法へと成長しており、UV技術に置き換わる水系インク技術への関心が高まっている。印刷された機能は、厳しい条件、例えば、化学的衝撃及び機械的衝撃に耐えなければならないことが多く、古典的技術から、印刷用液体をインクジェット技術により噴射することが可能であるデジタル技術へと置き換えることができるならば、水性2K熱硬化性組成物は、優れた概念的選択肢になる。しかしながら、水溶性第一級アミン官能化重合体は、インクレオロジー及びインクの粘弾性に相当の影響を及ぼし、このため、水溶性第一級アミン官能化重合体は、高速インクジェット印刷にあまり適さない。この問題は、高第一級アミン官能化カチオン性重合体ナノ粒子の設計により解決することができる。
【0004】
第一級アミン官能化カチオン性重合体ナノ粒子は、カチオン性重合体ナノ粒子のより一般的な設計技術の一部として主に生化学用途及び生物学用途に向けて開発されており、この場合、第一級アミンは、生物学的活性分子を持つナノ粒子の官能化を可能にする。合成アプローチ及びバイオテクノロジー用途については、Ramosら(非特許文献1)による総説がなされており、総説には、乳化重合、界面活性剤不含乳化重合、シード乳化重合、並びにマイクロ及びミニ乳化重合が含まれている。これらの技術を用いた場合、限られた数の第一級アミンをナノ粒子に導入することしかできない。
【0005】
別のアプローチは、Liら(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)により開示されている。疎水性重合体鎖を第一級アミン官能化重合体、例えば、ポリ(アリルアミン)及びポリ(ビニルアミン)などにグラフトすることにより、第一級アミン官能化重合体ナノ粒子が調製される。これによりコアシェル粒子が得られるが、このコアシェル粒子は、シェルには第一級アミンを有するが、コアでは官能化されていない。反応性を最大化するためには、完全官能化ナノ粒子を設計することが有利であると思われる。
【0006】
今回、2K熱硬化性組成物において非常に高い反応性を持つ新規ナノ粒子設計が開発された。
【0007】
最も一般的な架橋剤の1種は、エポキシ系樹脂などの樹脂と容易に反応するという理由から、多官能性第一級又は第二級アミンである。好ましくは、多官能性アミンは、樹脂含有水性インクジェット用インクの貯蔵寿命に影響する相互作用を回避するため、画像形成の際に反応しなければならない樹脂とは分離させておく。これは、多官能性アミンを、樹脂含有インクジェット用インクに対して下塗りされる若しくは下塗り印刷されるプライマーなどの反応体液、又は樹脂含有インクジェット用インクに対して上塗り印刷される若しくは上塗りされる上塗りワニスに含ませることにより達成可能である。
【0008】
プライマーなどの反応体液又は上塗りワニスを、水性インクジェット用インクと同じように記録媒体に画像どおりに適用する(applied)(=印刷する)ことができたら、記録媒体への画像どおりではない適用よりも有利である。利点として以下がある:液体被覆率の量が低下し、このことが、コスト削減及び印刷画像のより速い乾燥を招く。プライマーで下塗り印刷することの別の利点は、プライマーは、機械的衝撃(引っかき、摩耗など)又は化学的衝撃(水、溶媒)に対して、画像を形成し、及びプライマー上層に噴射されるインクほどの耐性を持つ必要がなく、このため配合の自由度がより高くなる。プライマー又は上塗りワニスにとっても最も一般的な画像どおりの適用法は、インクジェット装置の使用であり、画像記録とまさに同じである。
【0009】
特許文献1は、2種類の異なるインク、すなわちエポキシ化合物を含有する第一のインクと、アミン系重合体を含有する第二のインクとを含む、インクセットを開示する。
【0010】
しかしながら、水溶性第一級アミン官能化重合体は、インクレオロジー及び液体の粘弾性に相当の影響を及ぼし、このため、水溶性第一級アミン官能性重合体は、高速インクジェット印刷にあまり適さない。
【0011】
特許文献2は、アニオン基を有する重合体を含有する第一のインクと、カチオン基を有する重合体を有する第二のインクとを含み、両インクを互いに接触させると凝集体を形成する、インクセットを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】US2019/0249024A
【文献】US2002/0077385
【非特許文献】
【0013】
【文献】Ramos et al. Chemical Reviews, 114(1), 367-428 (2014)
【文献】Li et al. Macromol. RapidCommun., 28, 2267-2271(2007)
【文献】Langmuir, 24, 11036-11042 (2008)
【文献】Polymer, 51, 3512-3519 (2010)
【発明の概要】
【0014】
上記した問題に対する本発明の目的は、請求項1で定義されるとおりの溶液として、高い第一級アミン含有量で官能化されたカチオン性重合体粒子を提供することである。
【0015】
本発明のなおさらなる目的は、請求項3で定義されるとおりのカチオン性重合体ナノ粒子を含むナノ粒子分散液を提供することである。
【0016】
本発明のなおさらなる目的は、請求項4で定義されるとおりの本発明に従って、カチオン性重合体ナノ粒子を含む噴射可能な液体を提供することである。
【0017】
本発明のなおさらなる目的は、請求項9で定義されるとおりの、本発明に従うカチオン性重合体ナノ粒子を含む液体と、前記カチオン性重合体ナノ粒子と反応することができる反応性化合物を含む少なくとも1種の水性インクジェット用インクと、を含む、インクセットを提供することである。
【0018】
本発明の別の実施形態は、請求項13で定義されるとおりのカチオン性重合体ナノ粒子を含む噴射可能な液体を用いる、画像記録方法を提供することである。
【0019】
本発明の他の特長、構成要素、工程、特性、及び利点は、本発明の好適な実施形態についての以下の詳細な説明からより明白になるだろう。本発明の具体的実施形態は、従属項でも定義される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.高い第一級アミン官能性を持つカチオン性重合体ナノ粒子
本発明の目的は、第一級アミンで官能化されたカチオン性重合体ナノ粒子により理解され、前記ナノ粒子は、樹脂を含み、この樹脂は、さらに第一樹脂と称し、少なくとも以下:
a)アリルアミン及びビニルアミンからなる群より選択される繰返し単位と
b)オキサリルアミド架橋単位-NHCOCONH--、式中、破線は、前記第一樹脂の重合体残基との共有結合を表す、と
c)一般式I及び/又は一般式IIに従う繰返し単位
【化1】
式中
Xは、O又はNHを表し
nは、0又は1を表し
は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール(alkaryl)基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択されるが、
ただしRは、少なくとも6個の炭素原子を有する。
【化2】
式中
Yは、O又はNHを表し
nは、0又は1を表し
は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択されるが、
ただしRは、少なくとも6個の炭素原子を有する、と
を含むことを特徴とする。
【0021】
好適な実施形態において、X及びYは、NHを表す。別の好適な実施形態において、nは、1を表す。なおさらに好適な実施形態において、R及びRは、独立して、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、及び置換又は無置換のアルケニル基からなる群より選択され、置換又は無置換のアルキル基がより好ましく、無置換のアルキル基が最も好ましい。さらに好適な実施形態において、R及びRは、少なくとも8個の炭素原子、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子、及び最も好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0022】
本発明によるカチオン性重合体ナノ粒の典型的な合成アプローチを以下に示す。
【0023】
第一の実施形態において、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、あるいはアリルアミンと他の単量体の共重合体又はビニルアミンと他の単量体の共重合体を、少なくとも6個の炭素原子を有する活性化カルボン酸でアシル化し、続いてアシル化重合体を水溶液に乳化させ、オキサラート系架橋剤を加えることにより官能化する。カルボン酸の活性化法は、文献で周知であり、そのような方法として、典型的なペプチドカップリング試薬、例えば、カルボジイミダゾール及びカルボジイミドなどを用いた活性化、混合若しくは対称酸無水物中でのカルボン酸の変換、及び塩化アシル中でのカルボン酸の変換が挙げられる。塩化アシル及び酸無水物が特に好適であり、塩化アシルが最も好適である。
【0024】
第二の実施形態において、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、あるいはアリルアミンと他の単量体の共重合体又はビニルアミンと他の単量体の共重合体を、少なくとも6個の炭素原子を有する、クロロギ酸エステル、反応性炭酸エステル、又は活性化アルコールを用いてアシル化し、続いてアシル化重合体を水溶液に乳化させ、オキサラート系架橋剤を加えることにより官能化する。アルコールは、典型的には、以下の式X-CO-Xに従う試薬を用いた反応により活性化することができ、式中、Xは、脱離基を表し、脱離基は、好ましくは、ハロゲン、好ましくは塩素、イミダゾール、及びN-ヒドロキシ-スクシンイミドからなる群より選択される。クロロギ酸エステルが特に好適である。
【0025】
第三の実施形態において、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、あるいはアリルアミンと他の単量体の共重合体又はビニルアミンと他の単量体の共重合体を、少なくとも6個の炭素原子を有する、イソシアナート又はブロック化イソシアナートを用いてアシル化し、続いてアシル化重合体を水溶液に乳化させ、オキサラート系架橋剤を加えることにより官能化する。前記ブロック化イソシアナートのブロック基は、好ましくは、窒素含有複素芳香族基、ケトオキシム、ラクタム、及び芳香族アルコールからなる群より選択される。イソシアナートが特に好適である。
【0026】
任意選択で、上記の実施形態に従って調製されたアシル化重合体は、前記重合体を水溶液に乳化させる前に、溶媒に溶解させることができる。溶媒は、好ましくは、沸点が100℃未満である溶媒である。典型的な溶媒は、ケトン、エステル、及びエーテル、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、及び酢酸エチルなどから選択することができる。乳化後、溶媒は、オキサラート架橋剤を加える前又は後に除去される。
【0027】
乳化中、分散剤又は界面活性剤を使用することができる。好ましくは、乳化界面活性剤が使用される。前記界面活性剤は、好ましくは、カチオン性界面活性剤であり、最も好ましくは前記オキサラート架橋剤と反応することができるカチオン性界面活性剤である。
【0028】
オキサラート架橋剤は、一般式IIIに従う化合物であり
【化3】
式中
X及びYは、独立して、ハロゲン、窒素を介してオキサラート部分とカップリングした窒素含有ヘテロ芳香族残基、脂肪族又は芳香族アルコール残基、ラクタム、芳香族、脂肪族、又は複素芳香族チオール残基、及びN-ヒドロキシ-イミド残基からなる群より選択される。
【0029】
好適な実施形態において、X及びYは、同じであり、より好ましくは、脂肪族アルコール残基を表す。最も好適な実施形態において、前記オキサラート架橋剤は、C~Cアルコールのシュウ酸エステルであり、シュウ酸エチル及びシュウ酸メチルが特に好適である。
【0030】
B.カチオン性重合体ナノ粒子の水性分散液
本発明によるカチオン性重合体ナノ粒子の水性分散液は、任意の適切な分散技術により作ることができる。好ましくは、重合体又は界面活性剤である分散剤、より好ましくは、カチオン性重合体分散剤又はカチオン性界面活性剤が、架橋剤を加える前、最中、又は後に加えられる。適切なカチオン性界面活性剤は、WO2018138054及びWO2018137993に記載されている。混合物を高速で混合し又は混合物に高剪断力を加え、有機溶媒をエバポレートした後、カチオン性重合体ナノ粒子の水性分散液が得られる。
【0031】
C.インクジェット印刷用の噴射可能な水性液体
カチオン性重合体ナノ粒子の分散液は、インクジェット印刷用の噴射可能な水性液体、例えば、前処理液、水性インクジェット用インク、又は上塗りワニスなどに、使用することができる。
【0032】
本発明に従って得られる水性液体は、カチオン性重合体ナノ粒子を、1重量%~30重量%の量で、より好ましくは5重量%~25重量%の量で、及び最も好ましくは10重量%~20重量%の量で、含有する可能性がある。カチオン性重合体ナノ粒子の平均粒径は、約10nm~約1μmである可能性がある。好ましくは、平均粒径は、約10nm~約500nmである可能性がある。より好ましくは、平均粒径は、約50nm~約250nmである可能性がある。さらにより好ましくは、平均粒径は、約160nm~約220nmである可能性がある。噴射信頼性の問題を回避するため、カチオン性重合体ナノ粒子の平均粒径は、1μm未満でなければならない。
【0033】
水性液体は、塗装技術、噴霧技術、又は噴射技術により、基材上に又は印刷された画像上に適用することができる。好適な噴射技術としては、インクジェットおよバルブジェットがある。その場合、水性液体は、噴射可能な水性液体となる。
【0034】
C.1.水溶性有機溶媒
本発明によるカチオン性重合体ナノ粒子を含む噴射可能な水性液体は、溶媒としての水の他に、水溶性有機溶媒も含有する可能性がある。水溶性有機溶媒の例として、多価アルコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、及び2,5-ヘキサンジオールなど、多価アルコールアルキルエーテル、例えば、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールn-ヘキシルエーテル、及びエチレングリコールフェニルエーテルなど、並びに窒素含有複素環化合物、例えば、2-ピロリドン及びN-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0035】
他の好適な水溶性有機溶媒として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn-プロピルエーテル、及びエチレングリコールn-ブチルエーテルが挙げられる。
【0036】
水性液体中の水溶性有機溶媒の含有量は、好ましくは、70重量%未満である。含有量が70質量%を超えた場合、この液体は、水に基づくすなわちより環境に優しいその特性(green character)を失う。水溶性有機溶媒の量は、好ましくは1~40重量%、より好ましくは5~40重量%である。
【0037】
水溶性有機溶媒は、カチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体に加えられることで、インクジェットヘッドのノズルで液体が迅速に乾燥することを防ぎ、及びさらにはこの液体に追加化合物を溶解させる助けとなる。
【0038】
C.2.界面活性剤
本発明の噴射可能な水性液体において、プライマーとして使用される場合は基材上での、又は上塗りワニスとして使用される場合は印刷された画像上での、湿潤性を確保する目的で、界面活性が添加される可能性がある。添加される界面活性剤の量は、液体中の活性成分として好ましくは0.1重量%~5重量%である。
【0039】
添加量が0.1質量%より少ない場合、基材又は印刷された画像上での湿潤性は、不十分であり、画像品質及び基材への付着に劣化をもたらす。使用可能である界面活性剤は、それが上記限度を満たす限りにおいて、特に限定されない。
【0040】
界面活性剤は、好ましくは、両性界面活性剤、非イオン性又はカチオン性界面活性剤である。なぜなら、アニオン性界面活性剤に関しては、カチオン性樹脂粒子との相互作用が低下するからである。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロック重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びアセチレンアルコールのエチレンオキシド付加物が、分散安定性と画像品質の関係性の観点から、好ましくは使用される。また、フッ素系界面活性剤及びケイ素系界面活性剤が、配合に応じて、組み合わせて(又は単独で)使用可能である。
【0041】
適切な非イオン性界面活性剤は、好ましくは、グリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤である。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤の使用は、さらに、ブリーディングを減少させて印刷品質を改善
し、そしてまた印刷における乾燥特性を改善して高速印刷を可能にする。
【0042】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は、好ましくは、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物,2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール、及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選択される1種又は複数のものである。これらは、例えば、Air Products(GB)からOlfine(登録商標)104シリーズ及びEシリーズ、例えばOlfine E1010などとして、又はNissin Chemical IndustryからSurfynol(登録商標)465及びSurfynol61として入手可能である。
【0043】
他の適切な界面活性剤は、シロキサン系界面活性剤、例えば、Evonik Industries製Tego Twin 4000、Evonik industries製Tegowet 270、BASF製Hydropalat WE3220など、シラン系界面活性剤、例えばMomentive製Silwet HS312など、及びフルオロ含有界面活性剤、例えば:Neochem GMBH製Thetawet FS8150、Dupont製Capstone FS3100、Merck製Tivida FL2500及びDynol製界面活性剤、Air products製Envirogem
& Surfynolシリーズなどがある。
【0044】
カチオン性界面活性剤の例として、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、及びイミダゾリウム塩、例えば、ジヒドキシエチルステアリルアミン、2-ヘプタデセニルヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、及びステアラミドメチルピリジウムクロリドが挙げられる。
【0045】
C.3.添加剤
本発明のカチオン性重合体ナノ粒子と一緒に、多価金属イオン又は第二のカチオン性重合体を、水性液体に含有させることができ、特に、液体が前処理液又はフィクサー液であり、有色水性インクジェット用インクを噴射する前に基材上に塗装される(coated)又は印刷される場合に、そうである。多価金属イオン又は第二のカチオン性重合体は、プライマー上に噴射された場合、水性インクジェット用インク中の着色剤の凝集を引き起こすことができる。これら多価金属イオン又はカチオン性重合体は、アニオン基、例えば、インクに含有される顔料又は分散した重合体の表面のカルボキシル基などに作用することにより、インクを凝集させる機能を有する。結果として、インクは、基材表面に固定されたままで、発色特性が改善される。したがって、インク中の顔料の表面及び/又はインクに含有されるカプセルの分散した重合体の表面は、カルボキシル基、スルホナート基、及びホスホナート基の群から選択されるアニオン基、特に好ましくはカルボキシル基を有することが好適である。
【0046】
二価以上の金属カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、及びアルミニウムなど、並びにアニオン、例えば、フッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、硫酸塩イオン(SO 2-)、硝酸塩イオン(NO )、及びアセタートイオン(CHCOO)から形成される水溶性金属塩の適切な例。
【0047】
カチオン性重合体の適切な例として、ポリアミン、第四級化ポリアミン、及びポリグアニジンが挙げられる。他のカチオン性重合体として、ポリ(N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピレンアンモニウムクロリド)、ポリ(4-ビニル-1-メチル-ピリジニウ
ムブロミド)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、第四級化ビニルイミダゾールとポリクオタニウムの共重合体が挙げられる。この本発明のプライマーに好ましく使用可能であるポリアミンの例として、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
水性液体は、顔料などの着色剤も含有する可能性がある。噴射可能な水性液体が水性インクジェット用インクとして作用する場合、この液体は、染料、分散染料、又は顔料などの着色剤を含有する可能性がある。好ましくは、着色剤は顔料である。なぜなら、顔料は、光退色に対してより強い耐性を持つ画像をもたらすからである。本発明のカチオン性重合体ナノ粒子を含む安定な水性インクジェット用インクを得る目的で、着色剤も、好ましくは、カチオン性電荷を有していなくてはならない。より好ましくは、顔料は、カチオン性分散剤、例えば、カチオン性界面活性剤又はカチオン性重合体などで分散されることになる。適切な分散剤の例は、WO2018138054及びWO2018137993に開示されており、これらは両方とも参照として援用される。本発明の噴射可能な液体に組み込まれる適切な顔料は、セクションD.3に記載する。
【0049】
有色基材、例えば、暗色織物、褐色段ボール紙、又は有色皮革などへの印刷に特に有用であるのは、白色顔料を含有する前処理液である。水性前処理液に好適な顔料は、二酸化チタンである。本発明で有用な二酸化チタン(TIO)顔料は、ルチル結晶形又はアナターゼ結晶形をしている可能性がある。TiOの作製法は、“The Pigment
Handbook”, Vol.I, 2nd Ed., John Wiley &
Sons, NY (1988)にさらに詳細に記載されており、この中の関連する開示は、完全に明記されているかのごとく、あらゆる目的において本明細書中参照として援用される。
【0050】
二酸化チタン粒子は、処理液体の所望の最終用途に応じて、約1ミクロン以下の幅広い平均粒径を有することができる。高度隠蔽が厳しく要求される用途又は装飾印刷用途の場合、二酸化チタン粒子は、好ましくは、平均寸法が約Iμm未満である。好ましくは、粒子は、平均寸法が約50~約950nm、より好ましくは約75~約750nm、さらにより好ましくは約100~約500nmである。
【0051】
また、複数粒径で独特の利点、例えば、不透明さ及びUV保護などが認められる可能性がある。これら複数粒径は、顔料としてのTIO及びナノ規模のTIO両方を加えることにより達成可能である。
【0052】
二酸化チタン顔料は、1つ又は複数の金属酸化物表面被膜も有する可能性がある。こうした被膜は、当業者に既知である技術を用いて適用される可能性がある。金属酸化物被膜の例として、とりわけ、シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア、及びジルコニアが挙げられる。こうした被膜は、二酸化チタンの光反応性の低下をはじめとする特性の改善をもたらすことができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア、及びジルコニアの金属酸化物被膜は、TiO顔料に正電荷を帯びた表面をもたらし、したがって、本発明のカチオン性重合体ナノ粒子と組み合わせるのに特に有用である。なぜなら、顔料の表面をさらに処理する必要がないからである。
【0053】
そのような被覆二酸化チタンの市販例として、R700(アルミナ被覆されたもの、E.I. DuPontde Nemours, Wilmington Del.から入手可能)、RDI-S(アルミナ被覆されたもの、Kemira Industrial
Chemicals, Helsinki, Finlandから入手可能)、R706(DuPont, Wilmington Del.から入手可能)、及びW-6042(シリカアルミナ処理したナノ規模の二酸化チタン、Tayco Corporati
on, Osaka Japan製)が挙げられる。他の適切な白色顔料は、WO2008/074548の[0116]の表2で得られる。白色顔料は、好ましくは、屈折率が1.60超である顔料である。白色顔料は、単独で又は組み合わせて使用される可能性がある。好ましくは、二酸化チタンは、屈折率が1.60超である顔料として使用される。適切な二酸化チタン顔料は、WO2008/074548の[0117]及び[0118]に開示されるものである。
【0054】
水性液体が、印刷された画像上に適用される上塗りワニス又は後処理液体である場合、液体は、ラテックスを含む可能性がある。ラテックスは、液体中に少なくとも10重量パーセント~約30重量パーセントで存在する可能性があり、さらに、機械的衝撃(摩耗、引っかき)及び有機溶媒又は水による化学的衝撃に対する印刷された画像の耐性を上昇させる可能性がある。1つの例において、ラテックスは、アクリル重合体若しくは共重合体、ビニルアセテート重合体若しくは共重合体、ポリエステル重合体若しくは共重合体、ビニリデンクロリド重合体若しくは共重合体、ブタジエン重合体若しくは共重合体、スチレン-ブタジエン重合体若しくは共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン重合体若しくは共重合体、ポリウレタン、及びそれらの混合物からなる群より選択される場合がある。好ましくは、ラテックスは、本発明のカチオン性有機樹脂粒子と適合性である目的で、カチオン電荷を有する。
【0055】
液体は、保湿剤(humectant)も含有する可能性がある。保湿剤は、水性噴射可能液体が噴射技術、例えば、インクジェット又はバルブジェットにより適用されなければならない場合に、好ましくは、組み込まれる。保湿剤は、ノズルの閉塞を防ぐ。この防止は、保湿剤が、噴射可能水性液体、特に液体中の水の蒸発速度を遅くする能力によるものである。保湿剤は、好ましくは、水より高い沸点を有する有機溶媒である。適切な保湿剤として、トリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセロール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素及びジアルキルチオ尿素、ジオール、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールなど;グリコール、例えば、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど、並びにそれらの混合物及び誘導物が挙げられる。好適な保湿剤は、グリセロールである。
【0056】
保湿剤は、好ましくは、液体の合計重量に基づいて、0.1~20重量%の量で液体に加えられる。
【0057】
D.水性インクジェット用インク。
本発明の利点を達成する目的で、カチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体は、画像形成中に、カチオン性重合体ナノ粒子の第一樹脂と反応することができる反応性化合物を含む水性インクジェット用インクと混合しなければならない。本発明によるインクセットは、こうして得られる。
【0058】
D.1.カチオン性重合体ナノ粒子の第一樹脂と反応することができる反応性化合物。
本発明のインクセットの一部を構成する水性インクジェット用インクは、カチオン性重合体ナノ粒子の第一樹脂と反応することができる反応性化合物を含み、より好ましくは、反応性化合物は、本発明のカチオン性重合体粒子の第一級アミン官能基と反応することができる第二樹脂である。好ましくは、第二樹脂と第一級アミン官能基の間の反応は、室温を基準として高温で、したがって好ましくは60℃超、より好ましくは80℃超で起こる。温度が60℃より低い場合、反応は不完全であるか、又は起こらず、したがって、印刷された画像の溶媒耐性の改善は観察されない。
【0059】
好ましくは、第二樹脂は、エポキシ系樹脂、β-ケト-エステル系樹脂、及び活性化二重結合で官能化された重合体、例えば、オリゴ官能性マレイミド及びアクリレートなどからなる群より選択される。
【0060】
エポキシ系樹脂の例として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、及びソルビトールポリグリシジルエーテルを挙げることができる。より具体的な例として、Dinacol EX-821、Dinacol EX-841、Dinacol EX-421、Dinacol EX-614B(全て、供給元はNagase ChemteX corporationである)を挙げることができる。
【0061】
β-ケト-エステル系樹脂及び類似樹脂の例は、一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有する樹脂であり
【化4】
式中
は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、C(=O)R、及びCNからなる群より選択され、
は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、及びC(=O)Rからなる群より選択され、
及びRは、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表す場合があり、
は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は
無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基、OR、及びNRからなる群より選択され、
は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され、
及びRは、独立して、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され、
及びRは、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表す場合があり、
Xは、O及びNRからなる群より選択され、
は、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
及びRは、独立して、水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換のアルカリール基、及び置換又は無置換のアリール若しくはヘテロアリール基からなる群より選択され
及びRは、五員~八員環を形成するのに必要な原子を表す場合がある。
【0062】
好適な実施形態において、一般式IVに従う部分で官能化された繰返し単位を含む前記オリゴマー又は重合体は、少なくとも7つの官能化された、より好ましくは少なくとも10の、最も好ましくは少なくとも15の官能化された繰返し単位を含む。
【0063】
さらに好適な実施形態において、Xは、酸素を表す。さらになお好適な実施形態において、Rは、水素を表す。さらになお好適な実施形態において、Rは、置換又は無置換のアルキル基を表し、無置換がより好適であり、低級アルキル基がさらにより好適であり、メチル基が最も好適である。
【0064】
本発明によるオリゴマー又は重合体は、好ましくは、重量平均分子量が少なくとも2000であり、より好ましくは4000であり、最も好ましくは6000~30000である。
【0065】
本発明による重合体は、同種重合体であるか又は異なる繰返し単位の共重合体であることが、可能である。
【0066】
本発明によるオリゴマー又は重合体は、エチレン不飽和単量体の付加重合、重縮合、及び開環重合により調製することができ、付加重合が特に好適である。最も好適な実施形態において、エチレン不飽和単量体のフリーラジカル重合を用いて、本発明による樹脂を調製する。本発明の別の実施形態において、本発明による樹脂の分子量は、RAFT剤、ATRP、ニトロキシルラジカル技術、又は移動剤、好ましくはチオールを用いて制御される。
【0067】
本発明による樹脂を調製するための典型的な単量体は、非公開特許出願EP19217051.2の表1、2、及び3に与えられており、EP19217051.2は、本明細書により参照として援用される。
【0068】
好ましくは、一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するβ-ケト-エステル系樹脂及び類似樹脂は、重合により、より好ましくは界面重
合を用いることにより、カプセル化される。
【0069】
カプセル化は、水性インクジェット用インク中のオリゴマー又は重合体とその他の化合物との間に、重合体バリア、すなわちカプセルの重合体シェルを形成することにより、水性インクジェットの貯蔵安定性を高める。特に、水性インクジェット用インクの貯蔵に際して、一般式Iに従う官能基の部分加水分解が予防される。印刷された画像の反応性、ひいては溶媒及び水耐性について得られる改善は、従って、インクジェット用インクの貯蔵に際して、低下しない。
【0070】
一般式I、II、又はIIIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するオリゴマー又は重合体のカプセル化は、この樹脂を含むインクジェット用インクの噴射挙動に、カプセル化しなかった場合よりも高い信頼性をもたらすことも観察された。
【0071】
カプセルは、水性インクジェット用インク中、好ましくは、インクの合計重量に基づいて、45重量%以下、好ましくは5~25重量%の量で存在する。30重量%を超えると、噴射は常に高く信頼できるとは限らないことが観察された。
【0072】
インクジェット用インクで使用されるカプセルは、動的レーザー回折法により特定した場合に平均粒径が4μm以下である。インクジェットプリントヘッドのノズル径は、通常、20~35μmである。カプセルの平均粒径がノズル系より5分の1小さいならば、信頼できるインクジェット印刷が可能である。4μm以下の平均粒径は、20μmという最小のノズル径を有するプリントヘッドによる噴射を可能にする。より好適な実施形態において、カプセルの平均粒径は、ノズル系より10分の1小さい。したがって、好ましくは、平均粒径は、0.05~2μm、より好ましくは0.10~1μmである。カプセルの平均粒径が2μm、より小さい場合、優れた解像度及び経時的な分散安定性が得られる。
【0073】
カプセルは、重合体シェルに共有結合した分散基を用いて、インクジェット用インクの水性媒体に分散している、あるいは分散剤又は界面活性剤を用いて分散しており、分散剤又は界面活性剤は、好ましくはカプセルの形成中又は形成後に添加されている。重合体シェルに共有結合した分散基は、好ましくは、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、からなる群より選択される。
【0074】
分散基は、立体的安定化を達成する目的で、重合体分散剤と組み合わせて使用することができる。例えば、重合体シェルは、重合体分散剤のアミン基と相互作用するカルボン酸基を共有結合で有する場合がある。しかしながら、より好適な実施形態において、重合体分散剤は使用されず、インクジェット用インクの分散安定性は、静電気的安定化のみより達成される。例えば、弱アルカリ性水性媒体は、重合体シェルに共有結合したカルボン酸基をイオン基にするだろう。そうなると、負に荷電したカプセルは、凝集する傾向を持たない。十分な分散基が重合体シェルに共有結合していれば、カプセルは、いわゆる自己分散カプセルになる。
【0075】
カプセルの重合体シェルに使用される重合体の種類には、現実の制限は存在しない。好ましくは、重合体シェルに使用される重合体は、架橋している。架橋により、カプセルにはより高い剛直性がもたらされ、これにより、インク作成中及びインクジェットプリンター中の両方においてカプセルを扱う温度及び圧をより広範囲にすることが可能になる。
【0076】
重合体シェル材料の好適な例として、ポリ尿素、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミン系重合体、及びそれらの混合物が挙げられ、ポリ尿素が特に好適である。
【0077】
重合体シェルを備えた一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つを有するオリゴマー又は重合体は、化学的方法及び物理的方法の両方を用いてカプセル化されていることが可能である。適切なカプセル化手法として、複合コアセルベーション法、リポソーム形成法、噴霧乾燥法、及び重合法が挙げられる。
【0078】
本発明では、重合法がカプセルの設計に最も高い制御を可能にすることから、好ましくは、重合法が使用される。より好ましくは、本発明のカプセルを調製するのに界面重合が用いられる。この技術は周知であり、Zhang Y.及びRochefort D.(Journal of Microencapsulation, 29(7), 636-649(2012)により、並びにSalitin(Encapsulation Nanotechnologies, Vikas Mittal (ed.), chapter 5, 137-173 (Scrivener Publishing LLC(2013)において)により、総説がなされている。
【0079】
界面重合、例えば、界面重縮合などでは、2種の反応体は、エマルション液滴の界面で遭遇し、迅速に反応する。
【0080】
一般に、界面重合は、水性の連続相中に親油性相が分散していること、又はその逆を必要とする。これらの相は、それぞれ、他方の相に溶解した別の単量体(第二のシェル成分)と反応することができる少なくとも1種の溶解した単量体(第一のシェル成分)を含有する。重合に際して、水性相及び親油性相のどちらにも不溶性である重合体が形成される。結果として、形成された重合体は、疎水性相と水相の界面で析出する傾向を有し、これにより分散した相の周囲にシェルを形成し、シェルは、さらに重合することで成長する。本発明によるインクジェット用インクの一部を構成するカプセルは、好ましくは、水性の連続相中の疎水性分散液から調製される。
【0081】
界面重合により形成される、カプセルの典型的な重合体シェルは、ポリアミド(典型的には、第一シェル成分としてのジ又はポリ酸クロリド及び第二シェル成分としてのジ又はオリゴアミンから調製される)、ポリ尿素(典型的には、第一シェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート及び第二シェル成分としてのジ又はオリゴアミンから調製される)、ポリウレタン(典型的には、第一シェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート及び第二シェル成分としてのジ又はオリゴアルコールから調製される)、ポリスルホンアミド(典型的には、第一シェル成分としてのジ又はオリゴスルホクロリド及び第二シェル成分としてのジ又はオリゴアミンから調製される)、ポリエステル(典型的には、第一シェル成分としてのジ又はオリゴ酸クロリド及び第二シェル成分としてのジ又はオリゴアルコールから調製される)、並びにポリカーボネート(典型的には、第一シェル成分としてのジ又はオリゴクロロホルマート及び第二シェル成分としてのジ又はオリゴアルコールから調製される)、からなる群より選択される。シェルは、これら重合体の組み合わせで構成することも可能である。
【0082】
さらなる実施形態において、第二シェル成分として重合体、例えば、ゼラチン、キトサン、アルブミン、及びポリエチレンイミンなどを、第一シェル成分としてのジ又はオリゴイソシアナート、ジ又はオリゴ酸クロリド、ジ又はオリゴクロロホルマート、及びエポキシ樹脂と組み合わせて使用することができる。
【0083】
特に好適な実施形態において、シェルは、ポリ尿素又はポリ尿素とポリウレタンの組み合わせで構成される。さらに好適な実施形態において、非水混和性溶媒が分散工程で使用され、この溶媒は、シェル形成の前又は後に、溶媒ストリッピングにより除去される。特に好適な実施形態において、非水混和性溶媒は、標準圧での沸点が100℃より低い。非水混和性溶媒としてエステルが特に好適である。
【0084】
水非混和性溶媒とは、水への混和性が低い有機溶媒である。混和性が低いとは、どの水溶媒の組み合わせであるかを問わず、1対1の体積比で混合した場合に、20℃で2相を形成するものとして定義される。
【0085】
コアは、一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するオリゴマー又は重合体を、含有する。これらは、通常、水との混和性が低くかつ水より低い沸点を有する有機溶媒に溶解させることにより、カプセルに組み込まれる。好適な有機溶媒は、酢酸エチルである。なぜなら、酢酸エチルは、他の有機溶媒に比べて引火性ハザードも低いからである。
【0086】
しかしながら、場合によっては、有機溶媒は省略される可能性がある。例えば、一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するオリゴマー又は重合体が、100mPa.s未満の粘度を有する場合、有機溶媒を省略することができる。
【0087】
カプセルの分散液の調製法は、好ましくは、以下の工程を含む:
a)重合体シェル形成用の第一シェル成分及び一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するオリゴマー又は重合体を、水との混和性が低くかつ水より低い沸点を有する有機溶媒に溶解させた、非水性溶液を調製する工程;
b)重合体シェル形成用の第二シェル成分の水溶液を調製する工程;
c)高剪断下で、非水性溶液を水溶液に分散させる工程;
d)任意選択で、水溶液と非水性溶液の混合物から有機溶媒をストリッピングする工程;並びに
e)重合体シェル形成用の第一シェル成分と第二シェル成分の界面重合により、一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するオリゴマー又は重合体の周囲に重合体シェルを調製する工程。
【0088】
次いで、例えば、水、保湿剤、界面活性剤などを添加することにより、カプセル分散液からインクジェット用インクを完成させることができる。
【0089】
好適な実施形態において、カプセルは、自己分散カプセルである。カプセルを自己分散性にする目的で、アニオン性分散基、例えば、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、あるいはホスホン酸又はその塩などを、カプセルの重合体シェルに共有結合させて、分散安定性を確保する場合がある。
【0090】
アニオン性安定化基をカプセルの重合体シェルに組み込む好適な戦略は、イソシアナートと反応することができるカルボン酸官能化反応性界面活性剤を利用する。これにより、少なくとも部分的に第二級又は第一級アミンを有する両性型の界面活性剤が得られる。スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、あるいはホスホン酸又はその塩で官能化された他の反応性界面活性剤も、使用可能である。
【0091】
両性界面活性剤は、部分的に第二級アミンを有するが第三級アミンも有する界面活性剤の混合物であるものが、数種類、市販されている。市販されている両性界面活性剤を用いて作られたカプセルに基づくインクジェット用インクでは、インクジェットプリンターにおいて禁止の泡形成に遭遇する。発泡は、インク供給に問題を引き起こすとともに、インクから空気を除去しようとする脱気においても問題を引き起こしたので、そのため信頼できない噴射をもたらした。したがって、WO2016/165970の式(I)に従う界面活性剤が、好ましくは、一般式IV、V、又はVIに従う官能基を含む繰返し単位を少なくとも3つ有するオリゴマー又は重合体のカプセル化プロセス中に使用される。
【0092】
本発明の別の実施形態において、第一級アミン官能基と反応することができる前記第二樹脂は、マイケルアクセプターを用いて官能化される。好適な実施形態において、前記マイケルアクセプターは、アクリレート、メタクリラート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、及びビニルスルホンからなる群より選択され、アクリレート、メタクリラート、及びマレイミドがより好適であり、アクリレート及びマレイミドが最も好適である。特に好適であるアクリレート官能化樹脂は、重縮合又は開環重合により調製される。ポリウレタン及びポリエステルは、特に好適なアクリル化樹脂であり、これらは、典型的には、重縮合により、好ましくはヒドロキシル官能化アクリレートを用いて、それぞれ二官能性イソシアナート及び酸クロリドとの重縮合反応により、調製される。
【0093】
アクリル化ポリウレタンが最も好適であり、塗装分野、例えば、木材塗装((Wade
et al., JCT Coating Tech, 2(14), 42-46 (2005))、家具塗装(Irle et al., RadTech Europe
05, conference proceedings, 1, 375-380 (2005)、及び有色素塗装(Tielemans et al., Polymer
Paint Colour Journal, 199, 4538, 31-33 (2009))などで周知である。この技術については、Tennebroekら(Polym. Int., 68, 832-842 (2019))による総説が最近なされている。
【0094】
マレイミド官能化樹脂は、WO2016113760(Council of scientific and industrial research)に開示されるとおりの重縮合により調製することができる。マレイミド官能化樹脂を調製するための付加重合は、Grawe及びBufkin(Jornal of Coating Technology, 53 (676), 45-55 (1981))により開示されている。マレイミド官能化樹脂の調製における保護マレイミド及び重合体後誘導体化を利用する戦略は、Hallら((Polym. Int. 60, 1149-1157 (2011))に開示されている。
【0095】
マイケルアクセプター官能化樹脂は、水溶性又は水分散性であることが可能であり、水分散性であることがより好適であり、アクリレート官能化ポリウレタンラテックスが最も好適である。
【0096】
D.2.溶媒
本発明によるインクセットの一部を構成するインクの水性媒体は、水を含有するが、好ましくは、1種又は複数の水溶性有機溶媒を含む可能性がある。こうした溶媒は、水性インクジェット用インクがインクジェットヘッドのノズルで急速に乾燥することを防ぎ、ある種の化合物が水性インクジェット用インクに溶解するのを補助し、及び多孔性基材にインクが浸透するのを補助するために添加される。インクに組み込み可能である適切な溶媒としては、好ましくはポリオール(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プラパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)、アミン(例えば、エタノールアミン、及び2-(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びブタノール)、多価アルコールのアルキルエ
ーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’チオジエタノール、アミド(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、複素環(例えば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン)、並びにアセトニトリルがある。
【0097】
D.3.顔料
本発明によるインクセットの一部を構成する水性インクは、着色剤を含む。着色剤は、水溶性染料、分散性染料の可能性がある。好ましくは、着色剤は顔料であり、これは、黒色、白色、シアン、マゼンタ、黄色、赤色、橙色、紫色、青色、茶色、それらの混合物などである。有色顔料は、HERBST, Willy, et al.Industrial Organic Pigments, Production, Properties, Applications. 3rd edition. Wiley-VCH, 2004. ISBN 3527305769に開示されるものから選択される場合がある。
【0098】
適切な顔料は、WO 2008/074548の段落[0128]~[0138]に記載されている。
【0099】
顔料粒子は、重合体分散剤又は界面活性剤により水性媒体に分散される。自己分散性顔料も、使用される可能性がある。アニオン性分散基を持つカプセルと組み合わされる場合、顔料用分散剤として、アニオン性界面活性剤が、好ましくは、使用される可能性がある。後者は、重合体分散剤と、インクジェット用インクに含まれている可能性のあるカプセルの分散基との相互作用を防ぐ。なぜなら、顔料の分散安定性は、カプセルに利用されているものと同じ静電的安定化の技術により達成されるからである。
【0100】
自己分散性顔料とは、自身の表面に共有結合したアニオン性親水性基を持つ顔料であり、このアニオン性親水性基は、例えば、塩形成基又はカプセルの分散基として使用されるものと同じ基などであって、顔料が、界面活性剤又は樹脂を使用することなく水性媒体に分散することを可能にするものである。適切な市販されている自己分散性有色顔料は、例えば、CABOT製の、CAB-O-JET(商標)インクジェット着色剤である。
【0101】
インクジェット用インクの顔料粒子は、インクがインクジェット印刷装置を通じて、特に排出ノズルにおいて、自由流動することを許容するのに十分ほど小さくなければならない。最大着色強度のため及び沈降を遅らせるため小さい粒子を使用することもまた望ましい。
【0102】
平均顔料粒径は、好ましくは0.050~1μm、より好ましくは0.070~0.300μm、及び特に好ましくは0.080~0.200μmである。最も好ましくは、数的平均顔料粒径は、0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒径は、Brookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて、動的光散乱の原理に基づき特定される。インクを水で希釈して、顔料濃度を0.002重量%にする。BI90plusの測定設定は、以下のとおりである:23℃で5回測定、角度90°、波長635nm、及びグラフィックス=コレクション関数(graphics = correction function)。
【0103】
しかしながら、白色顔料インクジェット用インクの場合、白色顔料の数的平均顔料粒径は、セクションA.1.4に記載したものと同じである。
【0104】
適切な白色顔料は、WO 2008/074548の[0116]の表2で与えられる。白色顔料は、好ましくは、屈折率1.60超を持つ顔料である。白色顔料は、単独で又は組み合わせて使用される可能性がある。好ましくは、二酸化チタンが、屈折率1.60超を持つ顔料として使用される。適切な二酸化チタン顔料は、WO 2008/074548の[0117]及び[0118]に開示されるものである。
【0105】
また、特殊な着色剤も使用される可能性があり、例えば、衣服に特殊効果を持たせるための蛍光顔料、及び織物に銀色及び金色の高級な様相を印刷するための金属顔料などがある。
【0106】
顔料に適切な重合体分散剤は、2種の単量体の共重合体であるが、共重合体は、3種、4種、5種、又はそれより多種の単量体を含む可能性もある。重合体分散剤の性質は、単量体の性質及びそれらの重合体中での分布両方に左右される。共重合体分散剤は、好ましくは、以下の重合体組成を有する:
・統計的に重合した単量体(例えば、単量体A及び単量体Bは、重合してABBAABABになる);
・交互重合した単量体(例えば、単量体A及び単量体Bは、重合してABABABABになる);
・勾配(先細り)重合した単量体(例えば、単量体A及び単量体Bは、重合してAAABAABBABBBになる);
・ブロック共重合体(例えば、単量体A及び単量体Bは、重合してAAAAABBBBBBになる)、ブロックそれぞれのブロック長(2、3、4、5、又はそれより多い)は、重合体分散剤の分散能力に重要である;
・グラフト共重合体(グラフト共重合体は、重合体骨格とこの骨格に付加した重合体側鎖からなる);及び
・これらの重合体の混合型、例えば、ブロックが勾配する共重合体。
【0107】
適切な分散剤は、BYK CHEMIEから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤、JOHNSON POLYMERSから入手可能なJONCRYL(商標)分散剤、及びLubrisolから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤である。非重合体分散剤並びに一部の重合体分散剤の詳細な一覧は、MC CUTCHEON. Functional Materials, North American Edition. Glen Rock, N.J.: Manufacturing Confectioner Publishing Co., 1990. p.110-129に開示されている。
【0108】
重合体分散剤は、好ましくは、数平均分子量Mnが500~30000、より好ましくは1500~10000である。
【0109】
重合体分散剤は、好ましくは、重量平均分子量Mwが100,000未満、より好ましくは50,000未満、最も好ましくは30,000未満である。
【0110】
顔料は、好ましくは0.01~20%の範囲、より好ましくは0.05~10重量%の範囲、最も好ましくは0.1~5重量%の範囲で存在し、数値はそれぞれインクジェット用インクの合計重量に基づく。白色インクジェット用インクの場合、白色顔料は、好ましくはインクジェット用インクの3%~40重量%、より好ましくは5%~35%の量で存在する。3重量%未満の量では、十分な被覆力を発揮できない。
E.画像記録法
【0111】
本発明によるインクジェット画像記録法の実施形態は、本発明によるインクセットの使用である。インクセットは、本発明によるカチオン性重合体ナノ粒子を含む噴射可能な水性液体と、カチオン性重合体粒子の第一樹脂と反応することができる反応性化合物を含む水性インクと、を含み、好ましくはこの化合物は、エポキシ系樹脂、β-ケト-エステル系樹脂、及び活性化二重結合で官能化された重合体、例えばオリゴ官能性マレイミド及びアクリレートなどからなる群より選択される第二樹脂である。本方法は、以下の工程を含む:a)基材に、本発明のインクセットを、好ましくは、インクジェット技術により適用して、画像を形成する工程と、b)形成された画像の温度が、少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃になるように熱を加えることにより、適用したインクセットを乾燥させる工程。
【0112】
本発明によるインクセットを使用する本発明によるインクジェット画像記録法の別の実施形態において、本方法は、以下の工程を含む:a)カチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体を、基材に適用する工程。適用は、好ましくは、噴射技術、例えば、インクジェット、バルブジェット、又は噴霧により行われる、と、b)任意選択で、適用された水性液体を少なくとも部分的に乾燥させる工程と、c)水性インクジェット用インクを噴射して、画像を形成させる工程、このインクは、着色剤と、適用された水性液体上のカチオン性重合体ナノ粒子の樹脂の第一級アミン官能基と反応することができる反応性化合物と、を含む。より好ましくは、反応性化合物は、エポキシ系樹脂、β-ケト-エステル系樹脂、及び活性化二重結合で官能化された重合体、例えばオリゴ官能性マレイミド及びアクリレートなどからなる群より選択される第二樹脂である、と、d)形成された画像の温度が、少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃になるように熱を加えることにより、噴射したインクセットを乾燥させる工程。
【0113】
本発明によるインクセットを使用するインクジェット画像記録法の別の実施形態において、本方法は、以下の工程を含む:a)水性インクジェット用インクを基材に噴射して、画像を形成させる工程、このインクは、着色剤と、カチオン性重合体ナノ粒子の樹脂の第一級アミン官能基と反応することができる反応性化合物と、を含む。基材は、インクセットの水性インクジェット用インク中の成分を凝集させることができる成分を含むフィクサー又はプライマー液で処理されたものである場合がある。そのような化合物の例としては、凝集剤又はカチオン性化合物がある。基材は、本発明のカチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体で処理されたものである場合がある。より好ましくは、反応性化合物は、エポキシ系樹脂、β-ケト-エステル系樹脂、及び活性化二重結合で官能化された重合体、例えばオリゴ官能性マレイミド及びアクリレートなどからなる群より選択される第二樹脂である、と、b)任意選択で、噴射された水性インクジェット用インクを少なくとも部分的に乾燥させる工程と、c)本発明のカチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体を適用する工程。適用は、好ましくは、噴射技術、例えば、インクジェット、バルブジェット、又は噴霧により行われる、と、d)形成された画像の温度が、少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃になるように熱を加えることにより、適用したインクセットを乾燥させる工程。
【0114】
インクジェット記録法の別の実施形態において、本方法は、以下の工程を含む:a)噴射可能な液体、これは、着色剤及び本発明のカチオン性重合体ナノ粒子を含むインクである、と、カチオン性重合体ナノ粒子の樹脂の第一級アミンと反応することができる反応性化合物及び着色剤を含む水性インクジェット用インクと、を含むインクセットを基材に噴射して、画像を形成する工程と、b)形成された画像の温度が、少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃になるように熱を加えることにより、適用したインクセットを乾燥させる工程。工程(a)における両インクの噴射は、順次又は同時に行うことができる。
【0115】
インクジェット記録法の基材は、多孔質、例えば、織物、紙、皮革、及び段ボール紙基材などが可能であるが、好ましくは、非吸収性基材、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)などのポリエステル、又はポリイミドなどである。
【0116】
基材は、紙基材、例えば、普通紙又は樹脂コート紙など、例えばポリエチレン若しくはポリプロピレンコート紙などである可能性もある。紙の種類に現実の制限は存在せず、紙には、新聞紙、雑誌用紙、事務用紙、壁紙が含まれるが、坪量の高い紙も含まれ、そのような紙は通常は、ボード紙と称し、例えば、裏白チップボール、コルゲートボード、及び梱包ボードなどがある。
【0117】
基材は、透明、半透明、又は不透明である可能性がある。好適な不透明基材として、Agfa-Gevaert製のSynaps(商標)グレードのような、いわゆる、合成紙が挙げられ、Synaps(商標)グレードは、密度1.10g/cm以上を有する不透明ポリエチレンテレフタレートシートである。
【0118】
カチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体は、好ましくは、インクジェット法、バルブジェット法、及び噴霧法の群から選択される技術を介して適用される。より詳細には、インクジェット法及びバルブジェット法のこれらの技術は、本発明による水性液体が、好ましくは、インクジェット用インクを印刷して画像を得ることになる基材の表面上に、画像どおりに適用されることを可能にする。このプロセスは、下塗り印刷とも呼ばれる。これは、必要な水性液体の量が、基材をプライミングする他の適用法よりも実質的に少なく、乾燥させなければならない水性液体が少なくなり、並びに乾燥したプライマーの層がインクジェット用インクの適用により得られる層よりも、化学物質及び機械的衝撃との相互作用に対して頑丈でなくてもよいという利点を有する。
【0119】
本発明による適用されたインクセットを乾燥させる加熱プロセスの例として、熱プレス、大気圧蒸熱、高圧蒸熱、THERMOFIXが挙げられるが、これらに限定されない。任意の熱源を、加熱プロセスに使用することができ、例えば、赤外線源が使用される。
【0120】
乾燥工程は、空気中で行うことができるが、加熱工程は、熱源を使用して行うしかない。より詳細には、熱源の例として、強制空気加熱、輻射加熱、例えば、NIR輻射及びCIR輻射をはじめとするIR輻射など、伝導加熱、高周波乾燥、及びマイクロ波乾燥用の装置が挙げられる。乾燥工程は、温度が、好ましくは、150℃未満、より好ましくは100℃未満になるようなものである。
【0121】
本発明のインクセットを噴射するインクジェット印刷システムに好適なインクジェットヘッドは、圧電インクジェットヘッドである。圧電インクジェットの噴射は、圧電セラミックトランスデューサーに電圧が印加された時のその動きに基づいている。電圧の印加は、印刷ヘッドの圧電セラミックトランスデューサーの形を変化させて空隙を作り出し、次いでこの空隙にインク又は液体が充填される。電圧が再び解除されると、セラミックはその元来の形へと拡大して、インクジェットヘッドからインクの滴を押し出す。しかしながら、本発明によるインクセットの噴射は、圧電インクジェット印刷に制限されない。他のインクジェットプリントヘッドも使用可能であり、そのようなインクジェットプリントヘッドとして、各種のもの、例えば、連続型、熱印刷プリントヘッド型、MEMジェット型ヘッド、及びバルブジェット型などが挙げられる。
【実施例
【0122】
材料
全ての化合物は、特に記載がない限り、TCI Europeが供給元である。
・Desmodur N75 BAは、BayerAGが供給する三官能性イソシアナートである。
・Lakeland ACP70は、Lakeland Laboratories LTDが供給する双性イオン性界面活性剤である。
・Surfinol 104Hは、NissinChemicalIndustryが供給する界面活性剤である。
・CATSURF-1は、以下のとおり合成されるカチオン性界面活性剤である:(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド29g(75重量%水溶液として供給)を、イソプロパノール150gに溶解させた。オクタデシルアミン26.9g及びトリエチルアミン15gを加え、混合物を、24時間80℃に加熱した。溶媒を減圧除去した
・アルカノール XCは、Dupontが供給するアニオン性界面活性剤である。
・Cab-o-Jet465Mは、Cabotが供給するマゼンタ顔料分散液である
・Cab-O-Jet450Cは、Cabotが供給するシアン顔料分散液である
・MNDAは、メチルジエタノールアミンである、供給元Aldrich
・基材1:ポリ(プロピレン)(Priplak)、供給元Antalis
・基材2:Synaps(SUV311)、提供元Agfa-GevaertNV
・基材3:ポリカーボネート(Lexan PC 9030 Clear)、供給元Lexan
・基材4:フロートガラス(スズ面-接触側)、供給元Danny Lauryssens Glas、製造元Lerobel
・基材5:ステンレス鋼R316L、供給元Dejond(Wilrijk、Belgium)
・基材6:PVC(MD5-100)、供給元Metamark
・基材7:粗面化及び陽極酸化したリソグラフ印刷用アルミニウム板基材
【実施例1】
【0123】
この実施例は、β-ケト-エステル系樹脂を含む水性インクと、及び上塗りワニスとして作用し本発明のカチオン性重合体ナノ粒子を含む水性液体と、を含む、インクセットを使用することによる、溶媒耐性の上昇を説明する。
【0124】
本発明の第二樹脂INVRES-1の合成:
2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリラート10gを、酢酸エチル30mlに溶解させた。ドデシルメルカプタン0.472gを加え、混合物を窒素でパージした。2,2’-アゾビス[2-メチルブチロニトリル]134mgを加え、混合物を6時間還流させた。混合物を室温に放冷した。本発明樹脂INVRES-1の酢酸エチル溶液を、カプセルINVCAP-1の合成に直接用いた。INVRES-1の分子量は、GPCを用いてポリ(スチレン)標準を基準に特定した。INVRES-1は、数的平均分子量Mnが10500であり重量平均分子量Mwが15400であった。
【0125】
β-ケト-エステル系樹脂INVCAP-1を含むカプセルの調製:
Desmodur N75 BA、13.2gを、上記のINVRES-1の酢酸エチル溶液37gに加えた。Lakeland ACP 70、1.2gを、溶液に加え、室温で1時間撹拌した。この溶液を、Lakeland ACP 70、3.36g、リシン1.17g、及びトリエタノールアミン1.5gを水44gに溶解させた溶液に加え、加えながら、5分間、Ultra Turraxで、回転速度16000rpmで撹拌した。水52gを加え、溶媒を60℃で減圧エバポレートし、エバポレートする間、真空を500mbarから120mbarへと徐々に上昇さえた。120mbarで水をエバポレートすることにより、分散液の重量を88gに調整した。分散液を、65℃で16時間
撹拌した。分散液を室温に放冷し、分散液を1.6μmフィルターで濾過した。全てのカプセル分散液の平均粒は、ゼータサイザー(商標)Nano-S(Malvern Instruments, Goffin Meyvis)を用いて測定した。INVCAP-1の平均粒径は、183nmであった。
【0126】
本発明の水性インクジェット用インクINV-1
表1に従って成分を混合することにより、発明インクINV-1を調製した。全ての重量パーセンテージは、インクジェット用インクの合計重量を基準とした。
【表1】
【0127】
本発明のカチオン性重合体粒子分散液を含む水性液体:アミン-1
カチオン性重合体粒子分散液は、ビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選択される少なくとも1種の繰返し単位と、オキサリルアミド架橋部分と、ビニルアミン及びアリルアミンからなる群より選択される少なくとも1種の官能基とを有し、さらに一般式I又は一般式IIに従う繰返し単位を少なくとも1種含む第一樹脂、を含む有機樹脂粒子の分散液であり、これを以下のとおり調製した:
【0128】
20重量%ポリ(アリルアミン)(Mw:60000)含有水50gとアセトン200gの混合物に、室温で3分間かけて、イソシアン酸オクタデシル7gをアセトン40gに溶解させた溶液を加えた。Ultra Turraxを用いて15000RPMで3分間、混合物を撹拌した。混合物を20分間還流させた。混合物を室温に放冷し、Ultra
Turraxを用いて15000RPMで3分間、撹拌した。
【0129】
シュウ酸エチル2gをアセトン20gに溶解させた溶液を、CATSURF-1をメタノール4gに溶解させた溶液と混合した。この混合物を、室温で10分間撹拌し、上記の重合体溶液に3分間かけて加え、続いてUltra Turraxを用いて15000RPMで撹拌した。混合物を室温で30分間撹拌した。水50gを加えた。溶媒及び水を減圧エバポレートして、分散液の重量を80gに調整した。Proxel K、0.3gを、殺生物剤として加えた。
【0130】
ゼータサイザー(商標)Nano-S(Malvern Instruments, Goffin Meyvis)を用いて平均粒径を測定した。平均粒径は、71nmであった。
【0131】
比較インクINKCOMP-1
最新のポリ(ウレタン)系インクは、WO2018077624Aに開示されている。WO2018077624に基づき、表2に従って成分を混合することにより、比較イン
クCOMP-1を配合した。全ての重量パーセンテージは、インクジェット用インクの合計重量を基準とした。
【表2】
【0132】
PU-1は、WO2018077624に開示される、PU-9のとおりに調製した。
【0133】
本発明のインクセットにより形成された画像の付着性及び耐薬品性試験
4ミクロンワイヤバーを用いて、発明インクINV1及び比較インクCOMP-1を、一連の基材に塗装し、80℃で15分間乾燥させた。
【0134】
4ミクロンワイヤバーを用いて、発明実施例に、水性液体アミン-1を含有するカチオン性重合体ナノ粒子を上塗りし、80℃で15分間乾燥させた。したがって、アミン-1は、上塗りワニスとして機能する。各試料の付着性を、ISO2409:1992(E)に従ってクロスカット試験により評価した。塗料(国際規格1992-08-15)は、BRAIVE INSTRUMENTS製のBraive No.1536クロスカットテスターを用い、カットの間隔を1mmとし、重量600gを使用し、Tesatape(商標)4104 PVCテープを併用する。評価は、表3に記載の基準に従って行い、クロスカットでの及びクロスカット外側での付着両方を評価した。
【表3】
【0135】
水、イソプロパノール、及びメチルエチルケトンをそれぞれ用いて、塗装をQ-tipで40回拭くことにより、耐水性及び溶媒耐性を評価した。結果を表4にまとめる。
【0136】
スコア0は、Q-tipで拭いた場合の損傷が極めて甚大であることを意味し、一方でスコア2は、拭いた際の損傷がほとんど又はまったくないことを意味する。スコア1は、拭いた際の損傷が視認できることを意味する。
【表4】
【0137】
表4から、本発明によるインクセットを使用することによる架橋アプローチは、ポリ(ウレタン)系樹脂インクとの比較において、様々な基材での耐薬品性に顕著により高い自由度をもたらし、一方で優れた付着性能を維持することが明らかである。