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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022577025
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045464
(87)【国際公開番号】W WO2022158158
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021006486
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】薄葉 恭成
(72)【発明者】
【氏名】麻山 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 優
(72)【発明者】
【氏名】細越 順一
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117171(WO,A1)
【文献】特開2005-188935(JP,A)
【文献】特開2010-078586(JP,A)
【文献】特開2005-188945(JP,A)
【文献】特開2016-164523(JP,A)
【文献】特開2016-125907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0292589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 15/00-17/22、
33/00-33/26、
19/00-19/32、
H01L 29/82、
H10N 50/00-59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流が流れるバスバと、
外部部材を前記バスバに締結するための締結部材と、
前記バスバと前記締結部材とを互いに接触した状態で保持する筐体と、
前記バスバに対向配置されて、前記バスバを流れる被測定電流により発生する磁場を検知可能な磁気センサと、
を備え、
前記バスバは、その端部側に、前記外部部材に接触する締結端子部を備え、
前記締結端子部が前記外部部材に接触する面である接続面が前記筐体から露出して設けられた電流検出装置であって、
前記締結端子部は、前記接続面とは異なる面を有して前記筐体に埋設されるアンカー部を備え、
前記接続面は、前記筐体における前記アンカー部を覆う部分よりも突出した状態で露出することを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記バスバは、前記締結端子部が設けられた端部とその反対側の端部との間に、屈曲する屈曲部を有し、
前記磁気センサは、前記バスバにおける前記屈曲部と前記締結端子部との間の位置に対向するように配置される請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記アンカー部は、前記筐体が備える樹脂系材料の成形体により埋設される請求項1または請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
被測定電流が流れるバスバと、
前記バスバに対向配置されて、前記バスバを流れる被測定電流により発生する磁界を検知可能な磁気センサと、
前記バスバと前記磁気センサとを間に挟む一対のシールド部材と、
樹脂系材料からなり、前記一対のシールド部材のうち前記バスバに近位な側に位置する第1シールド部材と一体に形成された筐体と、を備える電流検出装置であって、
前記第1シールド部材は、金属の板状体を備える基材と、樹脂系材料からなり前記基材の端面の少なくとも一部を覆う保護部と、を備え、
前記第1シールド部材は、前記バスバと対向する箇所において、前記基材が露出する露出部を備えることを特徴とする電流検出装置。
【請求項5】
前記バスバ側から前記露出部を見たときに、前記露出部は、前記バスバに重なる部分の外側において基材が露出する幅広部を有する請求項4に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記基材は、前記露出部に連なり前記基材が露出する拡張部を備え、
前記保護部は、少なくとも、前記露出部及び前記拡張部が露出するように前記基材の端面を覆う請求項4または請求項5に記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記第1シールド部材は、前記筐体の内部にインサート成形されたものであって、
前記筐体は、前記拡張部の一部を露出させる穴を有する請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項8】
被測定電流が流れる板状のバスバと、
前記バスバの板面に対向配置された磁気センサと、
前記バスバと前記磁気センサとをその積層方向の両側から挟む位置に配置された一対のシールド部材と、
樹脂系材料の成形体からなる筐体と、
を有するセンサ部を備えた電流検出装置であって、
前記一対のシールド部材のうち前記バスバに近位な側に位置する第1シールド部材は、前記筐体の内部にインサート成形されたものであって、平面視で多角形の板状体からなり、前記多角形の少なくとも2つの角部のそれぞれに切り欠き部を有し、
前記筐体は、前記切り欠き部によって形成され前記積層方向に延びる端面に部分的に接する貫通穴部を少なくとも1つ有し、
前記第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面において、前記貫通穴部の外形線と前記切り欠き部とは互いに点接触することを特徴とする電流検出装置。
【請求項9】
前記第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面において、前記積層方向のいずれの位置で切断したとしても、同じ位置で前記貫通穴部の外形線と前記切り欠き部とが互いに点接触する請求項8に記載の電流検出装置。
【請求項10】
被測定電流が流れる板状のバスバと、
前記バスバの板面に対向配置された磁気センサと、
前記バスバと前記磁気センサとをその積層方向の両側から挟む位置に配置された一対のシールド部材と、
樹脂系材料の成形体からなる筐体と、
を有するセンサ部を備えた電流検出装置であって、
前記一対のシールド部材のうち前記バスバに近位な側に位置する第1シールド部材は、前記筐体の内部にインサート成形されたものであって、平面視で多角形の板状体からなり、前記多角形の少なくとも2つの角部のそれぞれに切り欠き部を有し、
前記筐体は、前記切り欠き部によって形成され前記積層方向に延びる端面に部分的に接する貫通穴部を少なくとも1つ有し、
前記切り欠き部は前記端面を複数形成し、前記第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面において、前記貫通穴部の外形線は、前記端面の複数のそれぞれに点接触することを特徴とする電流検出装置。
【請求項11】
前記切り欠き部は少なくとも2つの前記端面を有するように形成され、
前記貫通穴部は、前記切り欠き部を形成する前記端面の2つ以上のそれぞれに部分的に接する請求項8に記載の電流検出装置。
【請求項12】
前記切り欠き部は2つの前記端面を有するように形成され、
前記貫通穴部は、前記切り欠き部を形成する2つの前記端面のそれぞれに部分的に接する請求項8に記載の電流検出装置。
【請求項13】
前記貫通穴部を前記第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面形状は円形である請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項14】
前記第1シールド部材は平面視矩形であって、一対の対角位置に前記切り欠き部を有し、前記筐体は前記切り欠き部のそれぞれに対応して前記貫通穴部を備える請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項15】
前記第1シールド部材は平面視矩形であって、二対の対角位置に前記切り欠き部を有し、
前記筐体は前記切り欠き部のそれぞれに対応して前記貫通穴部を備える請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項16】
請求項4から請求項15のいずれか1項に記載の電流検出装置と、
外部部材を前記バスバに締結するための締結部材と、を備え、
前記筐体は、前記バスバと前記締結部材とを互いに接触した状態で保持し、
前記バスバは、その端部側に、前記外部部材に接触する締結端子部を備え、
前記締結端子部が前記外部部材に接触する接続面が前記筐体から露出して設けられ、
前記締結端子部は、前記接続面とは異なる面を有して前記筐体に埋設されるアンカー部を備える電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバに被測定電流が流れることによって生じる磁界に基づいて被測定電流を測定する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流検出装置の測定精度を高める観点から、磁気センサ及びシールドとバスバとの位置関係を高精度で管理することが求められている。バスバ及びシールドが樹脂でできた筐体と一体に成形され、筐体の内部に磁気センサが配置されてなる電流検出装置として、例えば特許文献1に記載のバスバモジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-1168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバスバモジュールでは、筐体を成形の際に、流動する樹脂の影響でバスバが設計位置からずれたり、樹脂が適切に充填されなかったり(ショートモールド)、曲げ加工されたバスバがスプリングバックで変形したりすることがある。このような不具合は、バスバ、磁気センサ、及び、シールドが所定の位置関係からずれてしまう原因となり、測定精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、バスバ及びシールドと一体型の筐体を備えた電流検出装置であって、測定精度が低下しにくい電流検出装置を提供することを目的とする。
【0006】
電流検出装置において、バスバに対向した位置に磁気センサが配置された構成が用いられる。また、バスバは端部に外部端子が締結される貫通孔を備えた締結面を有し、締結面は筐体と重なる位置に配置され、締結面の裏面は筐体に埋設されたナットに接触させている。外部端子及び締結面に設けられた貫通孔にボルトを挿入し、ナットに螺合することでバスバと外部端子とが締結される。
【0007】
電流検出装置は、バスバの締結面の一部に凹部を有し、凹部が筐体の樹脂に埋設されたオーバーハング部を備え、バスバの締結面はオーバーハング部を構成する樹脂よりも突出している。オーバーハング部を設けることで、スプリングバックによりバスバがナットに対して浮き上がるのを防ぐことができる。バスバが浮き上がると、外部端子を締結面にボルトで締結した際に、浮き上がった分だけバスバが押さえつけられ、その影響によりバスバと磁気センサとの位置関係がずれることがある。よって、オーバーハング部は測定精度の低下を抑える有効な手段である。
【0008】
しかし、オーバーハング部の樹脂の面と締結面とを同じ高さの面とした場合には、バスバと一体に筐体を成形する際に、成形条件のばらつきなどにより、筐体を形成する樹脂が流動してバスバの締結面まで及んでしまうことが起こりえる。樹脂が締結面に及んで締結面の一部を覆うと、外部端子を締結面に締結した際に、外部端子とバスバとの電気的な接続が損なわれる。
【0009】
そこで本発明のさらなる目的は、バスバの締結面の凹部が筐体の樹脂に埋設されたオーバーハング部を備えた構成において、締結面での電気的な接触安定性を高めることができ、測定精度が低下しにくい電流検出装置を提供することにある。
【0010】
従来の電流検出装置において、シールドを筐体にインサート成形する際に、位置決めピンでシールドを金型内に固定する。そのため、成形後の筐体の位置決めピンが配置されていた箇所には穴状の位置決めピン跡ができ、穴の内部にシールドの一部が露出する。この位置決めピンに接する部分としてシールドの側面を用いると、この側面が穴の中に露出する。シールドは板材をプレス加工で外形抜きすることで作られる。すなわち、シールドの側面は破断面(切断面)であり、表面処理はされていない。したがって、穴の内部にシールドの側面が露出していると、側面から腐食する恐れがあった。腐食が発生すると、シールドの磁気特性に影響を与え、測定精度の低下が懸念される。
【0011】
そこで本発明のさらなる目的は、シールドを筐体にインサート成形する構成の電流検出装置において、シールドの側面である破断面を露出させない構成とすることによって腐食の発生を抑え、シールドの測定精度を確保することができる電流検出装置を提供することにある。
【0012】
また、シールドを筐体にインサート成形する構成において、金属材料からなるシールドと、樹脂系材料からなる筐体と、では熱膨張係数が異なる。金属材料と樹脂系材料とでは金属材料の方が熱膨張係数が大きいため、熱が加わるとシールドの方がより大きく膨張しやすい。そのため、シールドの大きな膨張によって、シールドに接する筐体の成型樹脂材料でできた部分(成型樹脂部)は、成型樹脂部の膨張量以上にシールドが膨張する方向へと引っ張られるため、成型樹脂部には応力が加わる。この成型樹脂部とシールドの積層方向に筐体を切断した断面を見ると、シールドの中央付近はシールドと成形樹脂部とが層をなしているため、熱膨張係数の違いが大きく影響し成型樹脂部には大きな応力が加わる。インサート成形時にシールドを位置決めするための位置決めピンを用いた場合、成形後に位置決めピンのあった跡が露出穴部となり、この露出穴部から延びるようにウェルドライン(成形において位置決めピンの両側を回り込むように流れてきた成形材料が合流する部分等に形成されるV字溝状のライン)ができやすい。ウェルドラインの部分は脆弱なところが多いため、熱膨張係数の違いの影響によって成形樹脂部に大きな応力が加わった場合、上記ウェルドラインに沿ってクラックが発生するおそれがあった。
【0013】
そこで本発明は、シールドを筐体にインサート成形する構成の電流検出装置において、露出穴部から延びるようにウェルドラインができたとしても、このウェルドラインに沿ってクラックが発生することを抑制することができる電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の電流検出装置は、被測定電流が流れるバスバと、外部部材をバスバに締結するための締結部材と、バスバと締結部材とを互いに接触した状態で保持する筐体と、バスバに対向配置されて、バスバを流れる被測定電流により発生する磁場を検知可能な磁気センサと、を備え、バスバは、その端部側に、外部部材に接触する締結端子部を備え、締結端子部が外部部材に接触する面である接続面が筐体から露出して設けられた電流検出装置であって、締結端子部は、接続面とは異なる面を有して筐体に埋設されるアンカー部を備えることを特徴としている。
これにより、アンカー部によりバスバが筐体に対して浮き上がるのを防止することができる。浮き上がりを防止することで、バスバと磁気センサとの位置関係がずれるのを防止し、よい検出精度が保持される。また電気的接続が安定する。
【0015】
本発明の第1の態様の電流検出装置において、接続面は、筐体におけるアンカー部を覆う部分よりも突出した状態で露出することを特徴とすることが好ましい。 これにより、筐体及びバスバをインサート成形する際に、筐体におけるアンカー部を覆う部分から染み出た樹脂の薄膜が締結端子部と外部部材との間に介在しにくくなるため、締結端子部と外部部材との電気的接続が安定的に確保される。
【0016】
本発明の第1の態様の電流検出装置において、バスバは、締結端子部を備える端部とその反対側の端部との間に、屈曲する屈曲部を有し、磁気センサは、バスバにおける屈曲部と締結端子部との間の位置に対向するように配置されることが好ましい。
これにより、外部部材との接続端子は、アンカー部により保持されているため、屈曲部を設けた影響でバスバにスプリングバックの力が働いたとしても接続端子の浮き上がりは発生しにくい。したがって、バスバと磁気センサとの位置関係がずれにくくなり、測定精度の向上に資する。
【0017】
本発明の第1の態様の電流検出装置において、アンカー部は、筐体が備える樹脂系材料の成形体により埋設されることが好ましい。
これにより、バスバを筐体に圧入してアンカー部を形成する場合などに比べて、インサート成形により容易に形成でき、また、削れ滓なども出にくくなる。樹脂系材料としては、単体の合成樹脂、複数の合成樹脂を混合したもの、充填剤等を混合したものを含む。
【0018】
本発明の第2の態様の電流検出装置は、被測定電流が流れるバスバと、バスバに対向配置されて、バスバを流れる被測定電流により発生する磁界を検知可能な磁気センサと、バスバと磁気センサとを間に挟む一対のシールド部材と、樹脂系材料からなり、一対のシールド部材のうちバスバに近位な側に位置する第1シールド部材と一体に形成された筐体と、を備える電流検出装置であって、第1シールド部材は、金属の板状体を備える基材と、樹脂系材料からなり基材の端面の少なくとも一部を覆う保護部と、を備えることを特徴としている。
これにより、第1シールド部材は保護部により基材の端面が覆われるため、第1シールド部材が筐体と一体成形される際に、保護部がある位置に支持ピンを当接させて金型内での第1シールド部材の位置決めを行うことで、筐体の、支持ピンがあった箇所にできた穴の内面に第1シールド部材が露出することがあっても、基材が露出しない。それゆえ、露出した基材が腐食して電流センサの動作に悪影響を及ぼす事態が生じにくくなる。
【0019】
本発明の第2の態様の電流検出装置において、第1シールド部材は、バスバと対向する箇所において、基材が露出する露出部を備えることが好ましい。
これにより、露出部を有することにより、保護部の厚み分だけ第1シールド部材とバスバとの間の隙間を大きくすることができ、第1シールド部材を筐体内にインサート成形する際に、この隙間に樹脂系材料をスムーズに流し込み適切に配置することができ、電流検出機能を安定化させることができる。
【0020】
本発明の第2の態様の電流検出装置において、バスバ側から露出部を見たときに、露出部は、バスバに重なる部分の外側において基材が露出する幅広部を有することが好ましい。
幅広部を有することで、よりスムーズにバスバとシールド部材との隙間に樹脂系材料を供給することが容易となる。
【0021】
本発明の第2の態様の電流検出装置において、基材は、露出部に連なり基材が露出する拡張部を備え、保護部は、少なくとも、露出部及び拡張部が露出するように基材の端面を覆うことが好ましい。
拡張部を設けることにより、幅広部と同様に樹脂系材料の供給容易化に資する。
【0022】
本発明の第2の態様の電流検出装置において、第1シールド部材は、筐体の内部にインサート成形されたものであって、筐体は、拡張部の一部を露出させる穴を有することが好ましい。
インサート成形時に拡張部に接するように第1シールド部材の位置決めピンを配置することにより、位置決めピンがバスバとシールド部材との隙間に樹脂系材料を供給する際の妨げにならなくするとともに、金型内での第1シールド部材の配置精度を高めることが可能となる。この配置精度が高まることにより、電流の測定精度を高めることができる。
【0023】
本発明の第3の態様の電流検出装置は、被測定電流が流れる板状のバスバと、バスバの板面に対向配置された磁気センサと、バスバと磁気センサとをその積層方向の両側から挟む位置に配置された一対のシールド部材と、樹脂系材料の成形体からなる筐体と、を有するセンサ部を備えた電流検出装置であって、一対のシールド部材のうちバスバに近位な側に位置する第1シールド部材は、筐体の内部にインサート成形されたものであって、平面視で多角形の板状体からなり、上記多角形の少なくとも2つの角部のそれぞれに切り欠き部を有し、筐体は、切り欠き部によって形成され積層方向に延びる端面に部分的に接する貫通穴部を少なくとも1つ有していることを特徴としている。
これにより、インサート成形時の第1シールド部材の支持ピンと第1シールド部材との接触面積を少なくすることができるため、第1シールド部材が金属板を備え、金属板の端面が電流センサの穴の内面で露出する場合であっても、端面の露出面積が小さいため、端面が腐食して電流センサの動作に悪影響を及ぼす事態が生じにくくなる。
【0024】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面において、貫通穴部の外形線と切り欠き部とは互いに点接触していることが好ましい。
点接触で接触させることにより、端面の露出を少なくすることができる。
【0025】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面において、積層方向のいずれの位置で切断したとしても、同じ位置で貫通穴部の外形線と切り欠き部とが互いに点接触することが好ましい。
これにより、積層方向において線接触するため、端面の露出を少なくすることができる。
【0026】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、切り欠き部は端面を複数形成し、第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面において、貫通穴部の外形線は、端面の複数のそれぞれに点接触することが好ましい。
端面を複数とすることにより、切り欠き部が2カ所であってもインサート成形において第1シールド部材を金型内で安定的に支持することが可能となり、端面の露出を少なくすることができる。
【0027】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、切り欠き部は少なくとも2つの端面を有するように形成され、貫通穴部は、切り欠き部を形成する端面の2つ以上のそれぞれに部分的に接することが好ましい。
端面を複数とすることにより、切り欠き部が2カ所であってもインサート成形において第1シールド部材を金型内で安定的に支持することが可能となり、端面の露出を少なくすることができる。
【0028】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、切り欠き部は2つの端面を有するように形成され、貫通穴部は、切り欠き部を形成する2つの端面のそれぞれに部分的に接することが好ましい。
端面を2つとすることにより、切り欠き部が2カ所であってもインサート成形において第1シールド部材を金型内で安定的に支持することが可能となり、端面の露出を少なくすることができる。
【0029】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、貫通穴部を第1シールド部材の板面に平行な面で切断したときの断面形状は円形であることが好ましい。
貫通穴が円形である場合には、支持ピンは円柱となるため、インサート成形の際の支持ピンと第1シールド部材との接触状態が安定しやすい。それゆえ、電流センサにおける第1シールド部材の配置精度高くなり、電流の測定精度が高まりやすい。
【0030】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、第1シールド部材は平面視矩形であって、一対の対角位置に切り欠き部を有し、筐体は切り欠き部のそれぞれに対応して貫通穴部を備えることが好ましい。
これにより第1シールド部材の寸法管理が容易となり、電流の測定精度が高まりやすくなる。
【0031】
本発明の第3の態様の電流検出装置において、第1シールド部材は平面視矩形であって、二対の対角位置に切り欠き部を有し、筐体は切り欠き部のそれぞれに対応して貫通穴部を備えることが好ましい。
これにより、第1シールド部材の配置精度を高めることが容易となり、電流の測定精度が高まりやすくなる。
【0032】
本発明の第4の態様の電流検出装置は、被測定電流が流れる板状のバスバと、バスバの板面に対向して配置された磁気センサと、バスバと磁気センサとをその積層方向の両側から挟む位置に配置された一対のシールド部材と、樹脂系材料の成形体からなる筐体と、を有するセンサ部を備えた電流検出装置であって、一対のシールド部材のうちバスバに近位な側に位置する第1シールド部材は、筐体の内部にインサート成形された板状体であって、筐体は、第1シールド部材の板面に平行な第1方向に沿ってセンサ部が複数並べて配置され、筐体は第1シールド部材の板面が露出する露出穴部を有し、露出穴部は、第1方向に直交するとともに第1シールド部材の板面に平行な第2方向において、第1シールド部材の端部に位置する板面を露出させるように形成されていることを特徴としている。
これにより、熱応力によりウェルドラインに沿ってクラックが入る不具合は発生しにくくなり、また、シールド部材の端部付近のすぐ近くにあるシールド部材が無く成型樹脂部だけでできた領域では、シールド部材がある領域に比べて樹脂系材料の流動が良いため、シールド部材の端部付近に位置決めピンを配置したとしても、その周囲に十分に樹脂系材料が充填されるため、強度の弱いウェルドラインができにくくなる。また、インサート成形の際に第1シールド部材とバスバとの隙間を第1方向に沿って樹脂系材料が流れるとき、その流動を妨げたり分断したりするものがなく、隙間に樹脂系材料が適切に配置されやすい。
【0033】
本発明の第4の態様の電流検出装置において、第1方向はバスバの延設方向に直交することが好ましい。
これにより、第1方向を筐体の長手方向に設定しやすくなる。
【0034】
本発明の第4の態様の電流検出装置において、第1シールド部材は、その平面視長方形の長辺が、第1方向に沿って配置され、露出穴部は、長辺に沿って、1つ又は2つ以上配置されていることが好ましい。
これにより、インサート成形の際に第1シールド部材を位置決めピンにより支持しやすくなる。
【0035】
本発明の第4の態様の電流検出装置において、筐体は、第1シールド部材がインサート成形されたケースと、一対のシールド部材の他方である第2シールド部材を保持するカバーと、を備え、磁気センサを実装した基板がケースに対して固定されることが好ましい。
これにより、一対のシールド板を位置決めしやすくなり、検出精度の安定した装置を製造できる。
【0036】
本発明の電流検出装置は、上記第2、第3、及び、第4の態様のいずれか1つの電流検出装置と、外部部材をバスバに締結するための締結部材と、を備え、筐体は、バスバと締結部材とを互いに接触した状態で保持し、を備え、バスバは、その端部側に、外部部材に接触する締結端子部を備え、締結端子部が外部部材に接触する接続面が筐体から露出して設けられ、締結端子部は、接続面とは異なる面を有して筐体に埋設されるアンカー部を備えることを特徴としている。
これにより、第2、第3、又は、第4の態様の電流検出装置において、アンカー部によりバスバが筐体に対して浮き上がるのを防止することができる。浮き上がりを防止することで、バスバと磁気センサとの位置関係がずれるのを防止し、よい検出精度を保持し、電気的接続を安定させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、測定精度が低下しにくいバスバ及びシールドと一体型の筐体を備えた電流検出装置の測定精度の低下を抑制することができる。また、バスバの締結面の凹部が筐体の樹脂に埋設されたオーバーハング部を備えた構成において、締結面での電気的な接触安定性を高めることができ、測定精度が低下しにくい電流検出装置を提供することができる。さらに、シールドを筐体にインサート成形する構成の電流検出装置において、シールドの側面である断面の露出を小さく抑えた構成とすることによって腐食の発生を抑え、シールドの測定精度を確保することができる電流検出装置を提供することができる。また、シールド部材を筐体にインサート成形する構成の電流検出装置において、露出穴部から延びるようにウェルドラインができたとしても、このウェルドラインに沿ってクラックが発生することを抑制することができる電流検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】(a)、(b)は本発明の第1実施形態にかかる電流検出装置の構成を示す斜視図である。
図2】(a)は図1(a)のA-A’線における断面図、(b)は、図2(a)の一部拡大図である。
図3図1(a)のB-B’線における断面図である。
図4】(a)、(b)は第1実施形態におけるバスバと、これに対応する第1シールド部材との関係を示す図である。
図5】(a)は、第1実施形態における第1シールド部材の構成を示す斜視図、(b)は(a)の第1シールド部材が備える基材の構成を示す斜視図である。
図6図1(a)のC-C’線における断面図である。
図7】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、第1実施形態の変形例における締結端子部とアンカー部の構成を示す図である。
図8】(a)は、第2実施形態におけるケースの構成を示す底面図、(b)は(a)のケースに内包されたシールド部材の構成を示す底面図である。
図9図8(b)の左側のシールド部材を拡大して示す底面図である。
図10図8(a)に示すケースの熱応力分布を示す図である。
図11】(a)、(b)、(c)、(d)は、第2実施形態の変形例におけるシールド部材の基材の切り欠き部と位置決めピンの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る電流検出装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。各図には、基準座標としてX-Y-Z座標が示されている。以下の説明において、Z1-Z2方向を上下方向、X1-X2方向を左右方向、Y1-Y2方向を前後方向と称する。X1-X2方向とY1-Y2方向は互いに垂直であり、これらを含むX-Y平面はZ1-Z2方向に垂直である。また、上側(Z1側)から下側(Z2側)を見た状態を平面視と言うことがある。
【0040】
<第1実施形態>
図1(a)、(b)はそれぞれ、第1実施形態にかかる電流検出装置10の構成を示す斜視図であって、(a)は上側(Z1側)から見た図、(b)は下側(Z2側)から見た図である。図2(a)は図1(a)のA-A’線における断面図、(b)は、図2(a)の一部拡大図である。図3は、図1(a)のB-B’線における断面図であって、外部部材Mをバスバ21に電気的に接続するためのボルト34も表示している。図4(a)、(b)はそれぞれ、第1実施形態におけるバスバ21と、これに対応する第1シールド部材61との関係を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。図5(a)は、第1実施形態における第1シールド部材61の構成を示す斜視図、(b)は(a)の第1シールド部材61が備える基材161の構成を示す斜視図である。図6は、図1(a)のC-C’線における断面図である。
【0041】
図1(a)、(b)又は図2(a)に示すように、第1実施形態の電流検出装置10は、被測定電流が流れるバスバ21、22、23と、バスバ21、22、23の一部を内包して保持する筐体40と、板状のバスバ21、22、23の板面に対してそれぞれ対向配置される磁気センサ51、52、53と、バスバ21、22、23と磁気センサ51、52、53とをそれぞれ挟む3つの対のシールド部材(第1シールド部材61、62、63、第2シールド部材71、72、73)と、を備える。すなわち、対のシールド部材を構成する第1シールド部材と第2シールド部材との間には、それぞれ、バスバ及び磁気センサが配置されている。バスバ21、22、23は、左右方向(X1-X2方向)において等間隔で配置され、バスバ21、22、23にそれぞれ対向する、磁気センサ51、52、53も等間隔で配置される。なお、バスバ21、22、23の、左右方向(X1-X2方向)における配置が等間隔でなくてもよい。
【0042】
上記シールド部材は、バスバ21、22、23に近位な側にそれぞれ位置する第1シールド部材61、62、63と、バスバ21、22、23よりも磁気センサ51、52、53に近位な側にそれぞれ位置する第2シールド部材71、72、73と、からなる。第1シールド部材61、62、63は、図2(a)の左側から右側(X1側からX2側)へ向かって第1シールド部材61、62、63の順番に配置されている。また、第2シールド部材71、72、73も第1シールドと同様に図2(a)の左側から右側(X1側からX2側)へ向かって第2シールド部材71、72、73の順番に配置されている。第1シールド部材61と第2シールド部材71とは第1の対をなし、その間に磁気センサ51及びバスバ21を挟んで配置されている。同様に、第1シールド部材62と第2シールド部材72とは第2の対をなし、その間に磁気センサ52及びバスバ22を挟んで配置される。また、第1シールド部材63と第2シールド部材73とは第3の対をなし、その間に磁気センサ53及びバスバ23を挟んで配置される。
【0043】
第1の対をなす2つのシールド部材61、71と、これらが挟む、磁気センサ51及びバスバ21とで、第1のセンサ部が構成される。また、第2の対をなす2つのシールド部材62、72と、これらが挟む、磁気センサ52及びバスバ22とで、第2のセンサ部が構成される。同様に、第3の対をなす2つのシールド部材63、73と、これらが挟む、磁気センサ53及びバスバ23とで、第3のセンサ部が構成される。
【0044】
筐体40は、非磁性で絶縁性を有する樹脂系材料の成形により形成され、ケース45と、ケース45の上部を覆うカバー44とを備える。図2(a)、(b)と図3に示すように、カバー44には、第2シールド部材71、72、73がインサート成形されて保持され、ケース45には、第1シールド部材61、62、63がインサート成形されて保持されている。
【0045】
ケース45には、バスバ21、22、23に対して、磁気センサ51、52、53がそれぞれ対向するように、磁気センサ51、52、53が実装された基板50が固定される。これにより、磁気センサ51、52、53のそれぞれに対向するバスバ21、22、23を流れる被測定電流により発生する磁場が、磁気センサ51、52、53のそれぞれによって検知可能となる。
【0046】
ここで、バスバ21、22、23は互いに同一の形状を有する。図2(b)、図3図4(a)、(b)、図6では、バスバ21を例にとって説明するが、ほかのバスバ22、23も同様の構成を有する。なお、バスバ21、22、23は互いに異なる形状をしていてもよい。
【0047】
図3に示すように、バスバ21は、板状の金属部材を板厚の方向に折り曲げ加工した構成を有し、折り曲げ加工によって形成された屈曲部21fから、上下方向(Z1-Z2方向)に沿って立設部21uが延びるとともに、前後方向(Y1-Y2方向)に沿って延伸部21v(オーバーハング部)が延びている。
【0048】
延伸部21vの前側(Y1側)の端部には締結端子部21aが設けられている。締結端子部21aにおいては、厚み方向(Z1-Z2方向)にバスバ21を貫通する貫通穴部21hが形成されている。貫通穴部21hは、その軸方向に直交する断面形状が円形である。ここで、屈曲部21fは、バスバ21において、締結端子部21aが設けられた端部と、バスバ21の長手方向において反対側の端部(立設部21uの上側端部)との間に設けられている。
【0049】
ここで、磁気センサ51は、バスバ21の屈曲部21fと締結端子部21aとの間の位置に対向するように配置されている。この配置により、屈曲部21fでスプリングバックが生じたとしても、延伸部21vが筐体40に埋設されることで保持されているため、磁気センサ51との位置関係が維持されるため検出精度は確保され、かつ、締結端子部21aと締結部材31との電気的接続も安定的に維持される。
【0050】
延伸部21vには、バスバ21をケース45に固定したときに、第1シールド部材61に対応する位置に、左右方向の幅を短くした狭小部21gが設けられている。
【0051】
図1(a)に示すように、ほかのバスバ22、23にも締結端子部22a、23aがそれぞれ設けられ、上記貫通穴部21hと同様に貫通穴部22h、23hが設けられている。貫通穴部22h、23hについても、その軸方向に直交する断面形状は円形である。
【0052】
図1(a)、(b)に示すように、ケース45においては、前方向へ板状に延出する3つの突出部41、42、43が設けられている。突出部41、42、43は、左右方向において、バスバ21、22、23に対応するように等間隔で設けられている。突出部41、42、43の上部には、バスバ21、22、23のそれぞれの締結端子部21a、22a、23aがそれぞれ固定されている。突出部41、42、43には、外部部材Mをバスバ21、22、23に電気的に接続するためのボルト34をバスバ21、22、23にそれぞれ締結するための締結部材31、32、33が設けられている(図3参照)。
【0053】
図3に示すように、締結部材31は、突出部41内に設けられたナットであり、ボルト34に対応したねじが形成された内面31hを有する。締結部材31は、突出部41を上下方向に貫通し、中心軸が上下方向に沿うように形成されている。さらに、締結部材31は、内面31hの中心軸と、突出部41に固定したバスバ21の締結端子部21aの貫通穴部21hの中心軸と、がX-Y面において一致するように設けられ、これによって、貫通穴部21hと31hとが互いに連通して上下に延びる穴部が形成される。貫通穴部21hからボルト34を挿入し、ボルト34が締結端子部21aの表面である接続面21b(締結面)に接触するまで31hに螺合すると、バスバ21の締結端子部21aと締結部材31とが互いに接触した状態となるように締結される。
【0054】
図4(a)、(b)に示すように、バスバ21の締結端子部21aにはアンカー部21eが形成されている。アンカー部21eは、平面視において締結部材31に対応する範囲において、前方の端面と側方の2つの端面とにおいて、上面側と下面側との間に段差が形成されている。より具体的には、前方の端面では、下面側の下段部21dに対して、上面側を後方向にシフトさせた上段部21cが形成され、側方の端面では、下面側で、ほかの延伸部21vと同じ左右方向幅を有する下段部21dに対して、上面側を左右方向内側へシフトさせた上段部21cが形成されている。上面の端部をプレス加工などすることで、上面よりも一段低い面が形成される。したがって、平面視において、上段部21cは下段部21dよりも内側で小さな面積を有して形成されている。
【0055】
上段部21cの表面は、締結端子部21aの接続面21bと共通しており、下段部21dの表面は接続面21bとは上下方向にずれた異なる面となっている。
【0056】
図6に示すように、締結端子部21aは接続面21bが、筐体40の表面41aよりも上方へ突出した状態で、筐体40のケース45に埋設されている。また、アンカー部21eは、段差(下段部21d)の上面が筐体40のケース45に埋設されている。別言すると、アンカー部21eは、下段部21dの全体と、上段部21cの一部がケース45に覆われており、上段部21cの上部がケース45の表面41aから上方に突出した状態で露出している。なお、バスバ21はインサート成形によって、樹脂系材料の成形体である筐体40と一体に形成される。このため、アンカー部21eを覆う構造が容易に形成できるとともに、接続面21bと筐体40の表面41aとの境目に段差があることで樹脂かぶりを防止でき、外部部品との電気的接続を確実に実現することができる。また、アンカー部21eの下段部21d全体が筐体40に埋設される構成とすることで、バスバ21にスプリングバックが発生した場合にも、締結部材31に対するバスバ21の浮き上がりを防止することができる。浮き上がりを防止することで、磁気センサ51に対するバスバ21の位置の変動を抑えることができ、安定した計測精度を得られる。これに対して、仮に接続面21bと筐体40の表面41aとが連続した平面となるようにした場合、成形条件のばらつきにより、筐体40の樹脂系材料が接続面21bの部分に染み出して表面を覆う樹脂かぶりが発生することがある。樹脂系材料は絶縁性を備えているため、樹脂かぶりが発生すると、外部部品とバスバ21とを接続した場合に、電気的な導通が取れなくなる。
【0057】
アンカー部21eをこのように配置・固定したことにより、電流検出装置10のサイズを小さくし、バスバ21のサイズや、隣り合うバスバ22、23との間隔を小さくした場合においても、バスバ21の締結端子部21aが筐体40に確実に保持されるため、締結端子部21aが変形しづらくなって締結端子部21aと締結部材31との位置関係が維持され、かつ、磁気センサ51に対するバスバ21の位置が変動することがなく、精度の高い検出を行うことができる。
【0058】
図1(a)に示すように、カバー44は、厚み方向(上下方向)に貫通する穴部44aを有する。穴部44aは、平面視において、カバー44内に設けられた第2シールド部材71、72、73のそれぞれにおける拡張部(後述)の一部を露出させるように、第2シールド部材71、72、73のそれぞれに対して4つずつ、前後及び左右対称とされている。
【0059】
図1(b)に示すように、ケース45は、厚み方向(上下方向)に貫通する穴部45aを有する。穴部45aは、下側(Z2側)から見た状態において、ケース45内に設けられた第1シールド部材61、62、63のそれぞれにおける拡張部、例えば第1シールド部材61における拡張部161cの一部を露出させるように、第1シールド部材61、62、63のそれぞれに対して4つずつ、前後及び左右対称とされている。なお、第1シールド部材61、62、63のそれぞれに対して、穴部45aは、前述の構成とは異なる、個数及び配置位置を有してもよい。
【0060】
カバー44の穴部44aは、インサート成形時における、第2シールド部材71、72、73の位置決めのための位置決めピンを抜いたことによって形成され、ケース45の穴部45aは、第1シールド部材61、62、63の位置決めのための位置決めピンを抜いた後に形成される。このように位置決めピンを用いた成形を行うことによって、金型内での第1シールド部材61、62、63及び第2シールド部材71、72、73の配置精度を高めることが可能となり、これにより、電流の測定精度を高めることができる。
【0061】
第1シールド部材61、62、63、及び、第2シールド部材71、72、73は、互いに同一の形状を有する。図5(a)、(b)では、第1シールド部材61を例に挙げて説明するが、ほかの第1シールド部材62、63、及び、第2シールド部材71、72、73も同様の構成を有する。
【0062】
図5(a)に示すように、第1シールド部材61は、基材161と保護部261とを備える。図2(b)に示すように、第2シールド部材71は、第1シールド部材61と同様に、基材171と保護部271とを備える。
【0063】
図5(b)に示すように、基材161は、同一形状の金属製の板状体を複数枚重ねた構成を有し、平面視矩形の4つの角部を矩形状に切り欠いて切り欠き部161tとしている。図5(a)に示すように、保護部261は、樹脂系材料からなり、基材161の端面161sのうち、切り欠き部161tの端面及びその近傍の端面を覆うように配置される。保護部261は、基材161の端面161sに連なる上面と底面の一部も覆っており、上下方向の厚みは、基材161よりも大きくなっている。ここで、基材161を平面視矩形の形状としたことにより、寸法管理が容易となり、電流の測定精度を高めることができる。また、基材161の角部を矩形状に切り欠くことにより、切り欠き工程の管理が容易となるとともに、位置決めピンとの点接触を容易に実現できるため、端面の露出を抑えつつ高精度の位置決めを実現できる。
【0064】
図5(a)に示すように、平面視において、X1-X2方向における基材161の中央部は保護部261に覆われておらず、露出部161aとされている。図4(a)、(b)に示すように、第1シールド部材61においては、露出部161aがバスバ21の延伸部21vに対して対向する。
【0065】
図4(b)と図5(a)に示すように、露出部161aの前後方向の略中央部分には、左右方向(X1-X2方向)にそれぞれ広がる幅広部161bが連なっている。この幅広部161bは、対向するバスバ21よりも左右方向の幅が広く形成されており、平面視においてバスバ21に覆われずに露出している。すなわち、バスバ21側から露出部161aを見たときに、幅広部161bは、バスバ21に重なる部分の外側において基材161を露出させるように形成されている。
【0066】
図4(b)と図5(a)に示すように、露出部161aの左右方向の略中央部分には、前後方向(Y1-Y2方向)にそれぞれ延びる拡張部161cが連なっている。この拡張部161cは、バスバ21に対向している。
【0067】
第1シールド部材61は保護部261により基材161の端面161sの一部である切り欠き部161tが覆われるため、第1シールド部材61が筐体40と一体成形(インサート成形)される際に、保護部261がある位置に、第1シールド部材61の位置を規定するための支持ピンを当接させることで、成形後の筐体40において支持ピンがあった箇所にできた穴の内面に、第1シールド部材61が露出することがあっても、基材161が露出することがなくなる。したがって、露出した基材161が腐食して電流検出装置10の動作に悪影響を及ぼす事態が生じにくくなる。なお、基材161の周囲に保護部261を射出成形で形成する際に、金型内の所定の位置に基材161を保持するための指示ピンが当接していた箇所では、保護部261から基材161の端面(破断面)が露出している。しかしながら、第1シールド部材61が筐体40にインサート成形されることで、基材161の端面(破断面)が露出していた部分は筐体40の樹脂系材料により覆われる。したがって、露出した基材161が腐食して電流検出装置10の動作に悪影響を及ぼす事態が生じにくくなる。
【0068】
また、バスバ21と対向する位置に、保護部261よりも厚みの小さな露出部161aを配置しているため、第1シールド部材61とバスバ21との間の隙間S(図2(b)参照)を大きくとることができ。このため、この隙間Sに、インサート成形のための樹脂系材料を流入させやすくなるため、樹脂系材料を所定の厚みでまんべんなく、適切に配置することができる。これにより、電流検出機能を安定化することができる。さらに、第1シールド部材61では、バスバ21に覆われない幅広部161bと、基材161の端部まで広がる拡張部161cと、を設けているため、第1シールド部材61とバスバ21との間の隙間Sへの樹脂系材料の供給をさらに安定的に行うことができる。
【0069】
以下に第1実施形態の変形例について説明する。
図7(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、第1実施形態の変形例における締結端子部101a、111a、121a、131a、141aと、アンカー部101e、111e、121e、131e、141eの構成を示す図であって、(a)は変形例1の締結端子部101aとアンカー部101eを示す断面図、(b)は変形例2の締結端子部111aとアンカー部111eを示す斜視図、(c)は変形例3の締結端子部121aとアンカー部121eを示す斜視図、(d)は変形例4の締結端子部131aとアンカー部131eを示す斜視図、(e)は変形例5の締結端子部141aとアンカー部141eを示す斜視図である。図7(a)は、前後方向(Y1-Y2方向)に直交する断面である。なお、図7(b)~(e)においては、バスバを厚み方向に貫通する貫通孔の図示を省略している。
【0070】
上記第1実施形態のアンカー部21eは、図4(a)、(b)と図6に示すように、上段部21cと下段部21dの表面はそれぞれX-Y面の方向に延びており、上段部21cの側面は上下方向に沿って延びている。
【0071】
これに対して、図7(a)に示す締結端子部101aでは、バスバを厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔101hが設けられるとともに、上段部101cと下段部101dとによってアンカー部101eが構成され、上段部101cの側面が、下段部101d側へ近づくほど外側へ広がるテーパー形状を有している。このアンカー部101eにおいては、第1実施形態のアンカー部21eと同様に、上段部101cの表面である接続面101bが、筐体40の表面41aよりも上方へ突出した状態で、筐体40のケース45に埋設され、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
図7(b)に示す締結端子部111aでは、バスバの表面である接続面111bが平面視四角形をなしており、接続面111bの4つの辺のうちの前方の辺及び左右の辺から延びる側面であるアンカー部111eは、下側へ向かうほど外側へ広がるテーパー面となっている。このアンカー部111eにおいては、下側の範囲が筐体40内に埋設され、接続面111bが、筐体40の表面41aよりも上方へ突出した状態で、筐体40のケース45に埋設される。
【0073】
図7(c)に示す締結端子部121aでは、バスバの表面である接続面121bが平面視略四角形をなしており、左右の辺に連なる側面121cの上部の一部がつぶし加工によって凹部121dとされている。凹部121dと凹部121dが設けられた2つの側面121cがアンカー部121eを構成する。このアンカー部121eにおいては、凹部121dの下側の一部を含む、側面121cの下側の領域が筐体40内に埋設され、接続面121bが、筐体40の表面41aよりも上方へ突出した状態で、筐体40のケース45に埋設される。
【0074】
図7(d)に示す締結端子部131aでは、バスバの表面である接続面131bが平面視略四角形をなしており、前側の辺に連なる側面131cの上部の一部がつぶし加工によって凹部131dとされている。凹部131dと凹部131dが設けられた側面131cがアンカー部131eを構成する。このアンカー部131eにおいては、凹部131dの下側の一部を含む、側面131cの下側の領域が筐体40内に埋設され、接続面121bが、筐体40の表面41aよりも上方へ突出した状態で、筐体40のケース45に埋設される。
【0075】
図7(e)に示す締結端子部141aでは、第1実施形態の締結端子部21aの側方の端面と同様に、側方の2つの端面において、上面側と下面側との間に段差が形成されており、下面側の下段部141dに対して、上面側を左右方向内側へシフトさせた上段部141cが形成されており、上段部141cと下段部141dによってアンカー部141eが形成されている。このアンカー部141eにおいては、上段部141cの表面である接続面141bが、筐体40の表面41aよりも上方へ突出した状態で、筐体40のケース45に埋設されている。
【0076】
第1実施形態においては、基材161を平面視矩形の平面形状としたが、平面形状は、矩形以外の多角形形状とすることもできる。この構成においても角部に切り欠き部を設け、切り欠き部の端面に位置決めピンを点接触させることで、精度良くシールド部材を配置した状態でインサート成形を行うことができる。
【0077】
第1実施形態においては、基材161の4つの角部、すなわち二対の対角位置に、切り欠き部161tを設けたが、これに代えて一対の対角位置、又は、3つの角部に切り欠き部を設ける構成であってもよい。また、基材161の平面形状を矩形以外の多角形形状とする場合にも、その基材の位置合わせを正確に行うことが可能であれば、切り欠き部の数は2つ以上のいくつであってもよい。
【0078】
<第2実施形態>
図8(a)は、第2実施形態におけるケース340の構成を示す底面図、(b)は(a)のケース340に内包されたシールド部材の基材361、362、363の構成を示す底面図である。図9は、図8(b)のシールド部材の基材361を拡大して示す底面図である。図10は、図8(a)に示すケース340の熱応力分布を示す図である。図8(b)と図9においては、水平方向の位置決めのための支持ピン301、302、303と、鉛直方向の位置決めピン311、312、313と、を同時に示している。
【0079】
図8(a)に示す、筐体としてのケース340は、第1実施形態のケース45(筐体40)と同様に、インサート成形によってシールド部材の基材361、362、363を内包した構成を有しており、以下に説明するケース340の構成、製造工程、作用等は、第1実施形態のケース45及びカバー44にも適用可能である。これにより、第1実施形態と同様に、バスバと磁気センサとを積層方向から挟む位置に配置した一対のシールド部材、すなわち、カバー44内のシールド部材とケース45内のシールド部材とによりセンサ部を、ケース340の長手方向である第1方向D1に沿って3つ並べて構成することができる。このように構成したとき、バスバの延設方向は、第1実施形態と同様であって、第1方向D1に直交する方向である。なお、センサ部の数が、2つ、又は、4つ以上であっても、第2実施形態の構成、作用、効果を得ることができる。
【0080】
図8(b)に示すシールド部材の基材361、362、363は、図5(b)に示す第1実施形態の基材161と同様に、同一形状の金属製の板状体を複数枚重ねた構成を有し、平面視四角形の4つの角部を矩形状に切り欠いて切り欠き部361tとされている。したがって、切り欠き部361tは第1方向D1に沿って延びる端面361t1と、第1方向D1に直交する第2方向D2(ケース340の幅方向)に沿って延びる端面361t2と、を有する(図9参照)。
【0081】
ケース340におけるシールド部材の基材361、362、363のインサート成形においては、第1方向D1と第2方向D2を含む面の面内方向(図8(a)、(b)の紙面の方向であって、ケース340の底面を水平方向に沿って配置したときの水平方向)の位置決めのために、円柱状の支持ピン301、302、303が用いられる。具体的には、図8(b)の左側のシールド部材の基材361については、4つの切り欠き部361tがそれぞれ有する2つの端面361t1、361t2に対して、4つの支持ピン301がそれぞれ当接される。切り欠き部361tの2つの端面361t1、361t2は、第1方向D1と第2方向D2とに沿ってそれぞれ延びているため、円柱状の支持ピン301は、平面視においては、一方の端面361t1の点P1と他方の端面361t2の点P2とにおいて点接触する。この点接触は、基材361の板面に平行な面で切断したときの断面においても同じであり、積層方向のいずれの位置においても、同じ位置で点接触する。そして、第1方向D1と第2方向D2に直交する、シールド部材の基材361の厚み方向においては、切り欠き部361tの端面361t1、361t2のそれぞれに対して、上記点P1、P2を上下方向(厚み方向)に延ばした線に対して線接触する。中央の基材362及び右側の基材363についても、支持ピン302、303が4つずつ配置され、平面視において、切り欠き部362t、363tの2つの端面に対してそれぞれ点接触し、かつ、基材362、363の厚み方向においては線接触する。
【0082】
図8(a)に示すケース340のインサート成形においては、第1方向D1に沿って、紙面左側から右側へ、樹脂系材料からなる成形材料が供給される。
【0083】
図8(a)に示すように、ケース340には、インサート成形の支持ピン301、302、303が配置されていた位置に、底面まで貫通する中空円筒状の貫通穴部341a、342a、343aが形成されている。貫通穴部341a、342a、343aは、その軸方向に直交する断面形状が円形である。
【0084】
貫通穴部341a、342a、343aは、支持ピン301、302、303に対応する位置に、対応する外形線を有する形状で形成されている。このため、シールド部材の基材361、362、363の板面に平行な面で切断したときの断面において、支持ピン301、302、303と同様に、上記外形線は、シールド部材の基材361、362、363のそれぞれの切り欠き部361t、362t、363tにおいて、2つの端面に対してそれぞれ点接触し、かつ、シールド部材の基材361、362、363の厚み方向においては線接触する。これにより、インサート成形時のシールド部材の基材361、362、363と支持ピン301、302、303との接触面積を少なくすることができるため、金属製の基材361、362、363の端面が貫通穴部341a、342a、343aの内面で露出することがあっても、基材361、362、363の切り欠き部361t、362t、363tの端面の露出面積を小さくできるため、切り欠き部361t、362t、363tの端面が腐食して電流検出装置の動作に悪影響を及ぼす事態が生じにくくなる。なお、インサート成形時に金型内に樹脂系材料を充填させる射出圧が、適正な範囲内において高めの状態で加工した場合には、基材361、362、363と支持ピン301、302、303との間に入り込み、本来、成形加工後に基材361、362、363が線状に露出する箇所が樹脂系材料で覆われることがある。それが原因の不具合が無い場合には、切り欠き部361t、362t、363tの端面がより腐食しにくくなるので露出する箇所が樹脂系材料で覆われていても問題はない。
【0085】
また、基材361、362、363のそれぞれにおいて、4つの切り欠き部361t、362t、363tを設けたことにより、インサート成形において基材361、362、363を安定して支持することが可能となるため、基材361、362、363の端面の露出を少なくすることができる。
【0086】
ケース340におけるシールド部材のインサート成形において、第1方向D1と第2方向D2に垂直な方向(図8(a)、(b)の紙面に垂直な方向であって、ケース340の底面を水平方向に沿って配置したときの鉛直方向)の位置決めのために、円柱状の位置決めピン311、312、313が用いられる。
【0087】
図8(b)に示すように、基材361、362、363は、それぞれ、平面視長方形の長辺361a、362a、363aが、第1方向D1に沿って配置されている。左側の基材361については、その表面361bの第2方向D2における両端部に対して、2つずつの円柱状の位置決めピン311がそれぞれ当接される。位置決めピン311は、第1方向D1及び第2方向D2において互いに対称になるように配置されている。中央のシールド部材の基材362及び右側のシールド部材の基材363についても、左側の基材361に対する位置決めピン311と同様に、位置決めピン312、313が4つずつ配置されている。このように、位置決めピンを配置することにより、成形材料が第1方向D1に沿って供給されるときに、第2方向D2中央の供給経路の中心ラインに位置決めピンがないため、成形材料の流動を妨げたり分断することがなくなることから、シールド部材とバスバとの隙間、すなわち図2(b)の隙間Sと同様の隙間、にも成形材料が流入しやすくなる。
【0088】
図8(a)に示すように、ケース340には、インサート成形の位置決めピン311、312、313が配置されていた位置に、基材361、362、363の積層方向の端部の板面である表面361b、362b、363bをそれぞれ露出させるように、底面まで貫通する中空円筒状の露出穴部341b、342b、343bが形成されている。露出穴部341b、342b、343bは、その軸方向に直交する断面形状が円形である。
【0089】
図10においては、熱応力の強度が大きい領域は白色で表示され、熱応力の強度が小さくなるにつれて、白の濃度が低下して、グレーから黒へと徐々に色の濃度が変化し、熱応力の強度が最も低い領域は黒色で表示される。図10から分かるように、金属製の基材361、362、363に対応する領域は、熱応力の強度が大きく、白色で表示されている。一方、基材361、362、363が配置されておらず、樹脂系材料のみで構成されている領域は、黒色で表示されていることから、熱応力の強度が小さいことが分かる。ここで、基材361、362、363に対応する領域のうち、露出穴部341b、342b、343bが形成されている箇所は、中心部に比べると貫通孔が配置された周辺において黒色の度合いが高く表示されており、熱応力の強度が小さいことが分かる。したがって、露出穴部341b、342b、343bから成形材料の流動方向の下流へ向かって延びるウェルドラインができたとしても、熱応力の強度が小さいことから、ウェルドラインに沿ってクラックが発生しにくくなる。
【0090】
金属製の基材361、362、363と、樹脂系材料からなるケース340(筐体)と、では熱膨張係数が異なる。そのため、ケース340に熱が加わると、ケース340よりも基材361、362、363の方がより大きく膨張する。このため、ケース340において、基材361、362、363が内包されていない領域、すなわち、成型樹脂材料でできた領域には応力が加わり難い。ケース340を基材361、362、363の積層方向(厚み方向)に沿って切断した断面を見たとき、基材361、362、363の中央付近では、基材361、362、363の上下に成形樹脂部が層をなしているため、熱膨張係数の違いが大きく影響し、成型樹脂部には大きな応力が加わる。
【0091】
また、平面視において、基材361、362、363の端部の周辺領域、例えば、基材361、362、363の間の領域は、成型樹脂部だけで構成されるため、熱膨張係数の違いの影響が緩和される。このため、基材361、362、363の中央部に比べて成型樹脂部に加わる応力は小さくなる。そのため、露出穴部341b、342b、343bから、成形材料の供給方向である第1方向D1に沿って延びるようにウェルドラインができていたとしても、熱応力によってウェルドラインに沿ってクラックが入る不具合は発生しにくくなると考えられる。
【0092】
さらに、平面視における、基材361、362、363の端部の周辺領域では、基材361、362、363を内包する領域に比べて、基材361、362、363が配置されていないため、成形のための樹脂系材料が流動しやすい。そのため、基材361、362、363の第2方向D2における両端部に位置決めピン311、312、313を配置したとしても、その周囲に十分に樹脂系材料が充填されるため、ウェルドラインが生じにくくなる。
【0093】
以下に第2実施形態の変形例について説明する。
第2実施形態においては、基材361、362、363を平面視矩形の形状としたが、平面形状は、矩形以外の多角形形状とすることもできる。この構成においても角部に切り欠き部を設け、切り欠き部の端面に貫通穴部341a、342a、343aを部分的に接触させることで、高精度の位置決めを可能としつつ、端面の露出を小さく抑えることが可能となる。
【0094】
第2実施形態においては、露出穴部341b、342b、342cを、基材361、362、363の長辺361a、362a、363aのそれぞれに沿って、2つずつ配置していたが、その数は1つ、又は、3つ以上であってもよい。
【0095】
図11(a)、(b)、(c)、(d)は、第2実施形態の変形例(変形例6、7)におけるシールド部材の基材461、561のそれぞれの、切り欠き部461t、561tと位置決めピン401、501との関係を示す図である。図10(a)は変形例6における基材461の切り欠き部461tと位置決めピン401との関係を示す平面図、(b)は(a)のD-D’線における断面図、(c)は変形例7における基材561の切り欠き部561tと位置決めピン501との関係を示す平面図、(d)は(c)のE-E’線における断面図である。
【0096】
図11(a)、(b)に示す変形例6では、第2実施形態の基材361、362、363と同様に平面視矩形の基材461の角部に、矩形状に切り欠いた切り欠き部461tが設けられている。この切り欠き部461tは、図11(b)に示すように、先端に向かうほど薄くなるくさび形状の端面を2つ有し、くさび形状の先端は、2つの端面ごとに、稜線部461t1、461t2を形成している。
【0097】
このような構成の切り欠き部461tに対して、円柱形状の位置決めピン401は、稜線部461t1、461t2に対してそれぞれ線接触する。基材461をインサート成形した後においては、第2実施形態と同様に、位置決めピン401に対応する位置に貫通穴部が形成されるが、この貫通穴部の外形線は、切り欠き部461tに点接触することとなるため、切り欠き部461tの露出を稜線部461t1、461t2に抑えることができる。
【0098】
図11(c)、(d)に示す変形例7においても、第2実施形態の基材361、362、363と同様に平面視矩形の基材561の角部に、矩形状に切り欠いた切り欠き部561tが設けられている。この切り欠き部461tは、第1方向D1に沿って延びる端面561t1と、第2方向D2に沿って延びる端面561t2と、を備える。
【0099】
変形例7では、円錐台状の位置決めピン501を用い、この位置決めピン501の中心軸が、基材561の厚み方向(図11(d)の上下方向)に沿うように配置する。この配置においては、位置決めピン501に対応する位置に形成される貫通穴部の外形線は、一方の端面561t1に対しては、第1方向D1に沿った一つの線上で点接触し、他方の端面561t2に対しては、第2方向D2に沿った一つの線上で点接触する。これにより、切り欠き部561tの露出をこの部分に抑えることができる。
なお、第2実施形態の説明において、支持ピン301、302、303は円柱状であると説明した。実際には、成形完了後に支持ピン301、302、303を成型樹脂部から引き抜く必要があるため、抜けやすくするために、微小ではあるが先端に向かうにしたがって径が細くなるように加工されている。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 電流検出装置
21、22、23 バスバ
21a、22a、23a 締結端子部
21b 接続面
21c 上段部
21d 下段部
21e アンカー部
21f 屈曲部
21g 狭小部
21h、22h、23h 貫通穴部
21u 立設部
21v 延伸部
31、32、33 締結部材
31h 内面
34 ボルト
40 筐体
41、42、43 突出部
41a 表面
44 カバー
44a 穴部
45 ケース
45a 穴部
50 基板
51、52、53 磁気センサ
61、62、63 第1シールド部材
71、72、73 第2シールド部材
101a、111a、121a、131a、141a 締結端子部
101b、111b、121b、131b、141b 接続面
101c、141c 上段部
101d、141d 下段部
101e、111e、121e、131e、141e アンカー部
101h 貫通孔
121c、131c 側面
121d、131d 凹部
161、171 基材
161a 露出部
161b 幅広部
161c 拡張部
161s 端面
161t 切り欠き部
261、271 保護部
301、302、303 支持ピン
311、312、313 位置決めピン
340 ケース
341a、342a、343a 貫通穴部
341b、342b、343b 露出穴部
361、362、363 基材
361a、362a、363a 長辺
361b、362b、363b 表面
361t、362t、363t 切り欠き部
361t1、361t2 端面
401、501 位置決めピン
461、561 基材
461t、561t 切り欠き部
461t1、461t2 稜線部
561t1、561t2 端面
D1 第1方向
D2 第2方向
M 外部部材
P1、P2 点接触する点
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11