(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ケーブル切断防止のための統計的画像処理に基づく異常検出
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240412BHJP
G01V 8/16 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01V8/16
(21)【出願番号】P 2022578599
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021047623
(87)【国際公開番号】W WO2022046951
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-03
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユハン
(72)【発明者】
【氏名】サレミ、 ミラド
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
(72)【発明者】
【氏名】青野 義明
(72)【発明者】
【氏名】シア、 ティエジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルブロック、 グレン
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537721(JP,A)
【文献】国際公開第2019/014721(WO,A1)
【文献】特開2001-221684(JP,A)
【文献】特開2000-182158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0078949(US,A1)
【文献】特開2007-232515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01V 8/16
G01V 8/24
G01B 11/00-11/30
G08B 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバのインフラストラクチャに対する異常な活動および脅威評価を決定する方法であって、
前記インフラストラクチャの一部である光ファイバケーブルと光通信する分散型光ファイバセンシング(DFOS)/分散型音響センシング(DAS)のシステムを提供し、
前記DFOS/DASを動作させて、前記光ファイバケーブルの長さに沿ったベースラインの振動レベルを決定し、前記光ファイバケーブルの前記長さに沿った特定の位置に関連する前記ベースラインの振動レベルを記憶し、
前記DFOS/DASを連続的に動作させ、前記光ファイバケーブルの前記長さに沿った1つ以上の位置で検出された振動事象が、それらの1つ以上の位置での記憶された前記ベースラインの振動レベルに対して所定の閾値(カットオフポイント)を超えた場合に警報を発生させることを含
み、
前記警報の発生手順は、正常状態のバックグラウンド、位置固有の誤警報率レベルおよびユーザ指定の誤警報率レベルを入力とし、前記光ファイバケーブルの前記長さに対する位置固有の所定の閾値を決定することを含む、方法。
【請求項2】
前記光ファイバケーブルの前記長さに沿った1つの位置における前記所定の閾値は、前記光ファイバケーブルに沿った別の位置における前記所定の閾値とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
橋梁構造物に近接する位置についての前記所定の閾値は、橋梁構造物に近接していない他の位置についての所定の閾値よりも高い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記警報の発生手順は、DFOSのウォーターフォールプロットのストリームを入力とし、前記ウォーターフォールプロットに対して画像二値化を実行し、二値化プロットに対して空間的・時間的フィルタリングを実行し、フィルタリングされたプロットにスコアを付けて、前記
警報を生成するかどうかを決定する、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウォーターフォールプロットは、スライディングタイムウィンドウに基づくスナップショットとして提供される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
異常スコアメトリックが、各時間ウィンドウ内の各光ファイバケーブル点における白色画素の総数として決定される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記光ファイバケーブルの前記長さの全ての光ファイバケーブル位置に対して、前記ウォーターフォールプロットに位置固有のカットオフポイントを適用することをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記誤警報率は、以下の関係
【数1】
に従って一定レベル以下に設定され、ここで、x
iは位置iで観測された強度であり、τ
iは位置iにおけるカットオフポイントであり、αはあらかじめ指定された誤警報レベルであり、H
0は目標信号が存在しないときの強度の分布(ベースライン)である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
異常スコアが、画像からの異常画素の総数として決定される、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光ファイバ通信ネットワークおよび分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法、および構造に関する。より具体的には、本開示は、光ファイバの損傷を、そのような損傷が生じる前に防止するためにDFOS技術を有利に利用することができるシステム、方法、および構造に関する。
【背景技術】
【0002】
グローバルネットワーキングサービスプロバイダは、インターネットを含む通信帯域幅に対する増え続ける飽くなき需要を提供するために、地球上のほぼ全域に及ぶ大規模な光ファイバネットワークのインフラストラクチャを必然的に導入している。容易に理解され、認識されるように、光ファイバネットワークのインフラストラクチャの損傷(ファイバ切断を含む)は、現代社会に甚大な混乱をもたらす。したがって、そのようなインフラストラクチャの運用を脅かす光ファイバネットワークのインフラストラクチャに近接する活動(activity)を検出する能力を提供するシステム、方法、および構造は、あらゆる損傷および結果として生じる影響を防ぐことができるので、当技術分野にとって重要かつ最も歓迎される追加要素である。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野における進歩は、光ファイバネットワークのインフラストラクチャに対する損傷を、そのような損傷が生じる前に有利に検出/通知/防止することができる画像処理に基づく工事(construction)または他の活動の異常検出を提供する分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法、および構造に向けられた本開示の態様によってなされる。
【0004】
従来技術とは大きく異なり、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、画像二値化および空間的・時間的フィルタリングを含む、DFOSのウォーターフォール画像に対する2つの主要な動作を含む統計的画像処理に基づくそのような異常検出を提供する。
【0005】
有利なことに、本発明の画像二値化は、指定された誤警報率のレベルに基づいてデータから導出される位置固有のカットオフポイントを決定し、ウォーターフォール画像を白黒画像に変換し、ストレージおよび処理コストを削減しながら不要な部分を有利に除去するように動作する。
【0006】
本発明の空間的・時間的フィルタリングは、様々な種類のバックグラウンドノイズを除去することによって、誤警報を低減するように動作する。さらなる利点として、使用されるフィルタテンプレートは、対象事象の空間的・時間的パターンに合わせてカスタマイズが可能である。
【0007】
本発明の独創的な技術は、新しいアルゴリズム適応二値化とフィルタテンプレートを含む、知識ベースとデータ駆動のハイブリッド技術である。適応二値化技術では、グローバルな強度閾値を設定して光ファイバケーブル全体に適用する代わりに、最初に、各光ファイバケーブル点で正常な床振動の強度レベルを調査し、次いで、それ自体のカットオフポイントを導出し、信号が存在しない場合は、指定されたレベルを下回る誤警報率を保証する。これらのカットオフポイントは、人間の介入を必要とせずに、日/夜/週末/平日および気象条件に適応することができる。このフィルタテンプレートでは、工事信号(construction signal)の統計的特性は不明であり、モデル化が困難であるが、様々な地盤と気象条件下での衝突頻度(hitting frequency)、時間的持続時間、空間的影響範囲などの事前知識が存在する。本発明の技術によれば、空間的・時間的パターンは、人間の目には、通常の交通や環境ノイズによって引き起こされる他の振動とは視覚的に異なる。このような人間の知識を異常検出システムに取り込むことで、誤警報率をさらに低減し、検出率を向上させることができる。このような知見に基づき、異なるカーネルサイズのメディアンフィルタを適用し、複数のフィルタのカスケードを設計し、および減算演算子(subtraction operators)を使用することにより、異なる目標信号パターンに対して空間的・時間的フィルタの異なるアーキテクチャを開発した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のより完全な理解は、添付の図面を参照することによって実現され得る。
【0009】
【
図1】当技術分野で一般的に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムおよび動作の概略図である。
【0010】
【
図2】本開示の態様による全体的な方法を示すフロー図である。
【0011】
【
図3】本開示の態様による、光ファイバネットワーク上に重ねられた例示的なDFOSセンサネットワークを示す概略ブロック図と、正常状態と工事活動に対するセンシング信号強度を示すプロットである。
【0012】
【
図4】本開示の態様による、詳細なウォーターフォール異常検出方法を示すフロー図である。
【0013】
【
図5】本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P1を示す概略図である。
【0014】
【
図6】本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P2を示す概略図である。
【0015】
【
図7】本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P3を示す概略図である。
【0016】
【
図8】本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P4を示す概略図である。
【0017】
【
図9(A)】本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の試験例を示す一連のプロットである。
【
図9(B)】本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の試験例を示す一連のプロットである。
【0018】
【
図10(A)】本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の第2の試験例を示す一連のプロットである。
【
図10(B)】本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の第2の試験例を示す一連のプロットである。
【0019】
【
図11(A)】本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の第3の試験例を示す一連のプロットである。
【
図11(B)】本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の第3の試験例を示す一連のプロットである。
【0020】
【
図12】本開示の態様による異常検出システムの例示的な表示を示す模式図である。
【0021】
【
図13】本開示の態様による、入力感知から出力警告までの例示的な光ファイバケーブル安全保護システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0023】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0024】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0025】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0026】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0027】
いくつかの追加の背景として、また、当技術分野で一般に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である
図1を参照して、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、インタロゲータに順に接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所で環境条件(温度、振動、伸縮レベルなど)を検出するために重要かつ広く使用されている技術であることをはじめに指摘する。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、その後受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。そのように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号であってもよい。一般性を失うことなく、以下の説明は反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0028】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータ(および付随する分析構造/機能)を含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って伝達される。
【0029】
ファイバの長さに沿った位置で、信号のごく一部が反射され、インタロゲータに戻される。反射信号は、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化など、インタロゲータが検出するために使用する情報を搬送する。
【0030】
反射信号は、電気ドメインに変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは、信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを判断し、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0031】
図2は、本開示の態様による全体的な方法を示すフロー図である。このフロー図に示されるように、例示的な方法は、分散型音響センシングシステムの一部である配備された光ファイバリンクの、例えば、正常条件下での道路交通からのベースライン振動レベルを含む正常な特性を測定することによってステップ1を開始する。
【0032】
ステップ2で、測定データがファイバケーブル位置情報データストアに保存され、グローバル誤警報レベルに基づいて位置固有のカットオフポイントが決定される。
【0033】
ステップ3で、測定されたファイバケーブル位置情報は、地理的地図に統合される。
【0034】
ステップ4で、工事作業がファイバの近くで(ファイバに近接して)行われているとき、ファイバセンシング異常検出システムによって警報がトリガされ、異常スコアが地図上に表示され、ユーザまたは他のシステムに表示または出力される。
【0035】
ステップ5で、警報が所定の異常スコアでトリガされると、技術者が事象をチェックするために割り当てられる。ステップ6で、技術者は地理的地図に基づいてその場所を訪れ、無許可か、ケーブルに近すぎるかを判断して工事作業Iを停止することができる。最後に、ステップ7で、技術者は事象をチェックし、生成された可能性があるトラブルチケットを閉じることができる。
【0036】
図3は、本開示の態様による、光ファイバネットワーク上に重ねられた例示的なDFOSセンサネットワークを示す概略ブロック図と、正常状態と工事活動に対するセンシング信号強度を示すプロットである。この概略図に例示的に示されるように、光センシングシステム(DFOS)および異常検出器は、中央局/制御室に配置されており、そこから、(現場に)配備される光ファイバケーブルの経路全体を動作させ/監視することができる。DFOSシステムは、ファイバの長さに沿ったセンシング機能を提供するために、当該配置されたフィールド光ファイバ(センシングファイバ)と光学的に接続され/通信する。
【0037】
有利なことに、当業者には容易に理解されるように、配置されたセンシング光ファイバは、ダークファイバまたはライブの電気通信トラフィックを搬送する可動中のファイバとすることができる。図中の挿入グラフは、配置された現場の光ファイバをセンサとして使用してDFOSによって決定された信号強度地図の例を示す。当業者であれば、主に道路交通および環境ノイズを含む正常状態の間、信号強度が近接する工事活動に関連する信号強度のいずれよりも低いことを理解し、認識するのであろう。
【0038】
図4は、本開示の態様によるウォーターフォール異常検出方法の詳細を示すフロー図である。この図で使用されるように、「I」は入力を示し、手順を示し、「O」は出力を示す。これらについては、以下で詳細に説明する。
【0039】
動作上、本発明のシステムは、入力として以下を受け取る。
【0040】
I-1:正常シナリオ統計
【0041】
本発明のDFOSシステムによる一定期間の現場状態監視の後、センシング信号強度統計が、道路交通からの信号とケーブル経路全体(工事作業なし)のバックグラウンドノイズを含むシステムベースラインとして得られる。
【0042】
I-2:ユーザ指定の誤警報レベル
【0043】
本発明のシステムのユーザは、目標信号の強度と警報の欠落に対するユーザの許容度とに基づいて、誤警報レベルの上限を調整することができる。したがって、正常状態の統計に基づいて、センシング光ファイバに沿ったすべての位置について個々のカットオフポイントが生成される。
【0044】
I-3:DFOSウォーターフォールストリーム
【0045】
スライド時間ウィンドウに基づくDFOSセンサ光ファイバからのウォーターフォールデータのスナップショット。
【0046】
I-4:フィルタテンプレート
【0047】
有利なことに、異なる「テンプレート」のフィルタアーキテクチャが異なる目標信号のために設計される。したがって、ユーザは、最も頻繁に発生する脅威の事象のためにそれらをプラグインするか、またはそれらのうちの複数を並行して使用することができる。
【0048】
I-5:警報閾値
【0049】
異常スコアは、各時間ウィンドウ内の各光ファイバケーブル点における白色画素の総数であると判断される。異常スコアに複数の閾値を設定して、脅威レベル(高、中、低)を割り当てることができる。最終的な警報の決定は、ウォーターフォールを連続的に監視し、複数の時間フレームにわたって累積異常スコアを決定することで行うことができる。異常スコアが閾値よりも高い場合、警報がトリガされ、適切な人またはシステムに通知できるように地図上に表示される。
【0050】
動作上、本発明のシステムおよび方法は、以下の例示的な手順を含むことができる。
【0051】
P-1:正常時の位置固有のカットアウト点
【0052】
図5は、本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P1を示す概略図である。具体的には、この図は、ベースラインとして正常状態での手順P-1(工事なし)を示す。DFOSシステムから一定期間(すなわち、数時間、数日、またはその他のユーザ定義の期間)データを受信した後、道路交通パターン、橋梁の振動パターン、および周囲環境からの定常ノイズ(stationary noise)を含む信号強度を表示することができる。誤警報率を一定レベル以下に抑えることで、図に示すように経路全体のケーブル位置毎にカットオフポイントを設定することができる。橋梁の近傍では、より大きな振動信号が生成されるため、カットオフポイントが高くなっていることが分かる。
【0053】
P-2:画像二値化
【0054】
図6は、本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P2を示す概略図である。動作上、工事がウォーターフォールプロットの輪郭領域に位置する異常状態が検出される。そのZスコアを算出して信号を正規化することによって、表示されるように、画像の二値化によって初期二値決定を得ることができる。さらに、初期異常スコアは、各位置(列)の総画素数をカウントすることによって達成することができる。光ファイバケーブル点の各々について、強度の上位[x]パーセントを示す画素は稀であると見なされ、「初期異常」としてフラグが立てられることに留意されたい。ここで、[x]パーセントは、ユーザによって定義された誤警報レベルに対応する。
【0055】
P-3:メディアフィルタによる誤警報制御
【0056】
図7は、本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P3を示す概略図である。カーネルサイズをカスタマイズしたメディアンフィルタを有利に使用することによって、一部のノイズ(例えば、道路交通ノイズ、橋梁ノイズ、および環境ノイズ)を、空間的・時間的フィルタリングによって低減することができる。図から、メディアンフィルタによる選別/フィルタリングの後に、異常事象とわずかな交通ノイズのみが残ることが分かる。
【0057】
P-4: 異常スコアの計算
【0058】
図8は、本開示の態様による、
図4のフロー図の動作P4を示す概略図である。この
図8は、異常スコアを示す。光ファイバケーブル点ごとに、異常スコアは、以前に決定された「異常」画素の総数として計算される。したがって、残りの交通ノイズは、場所が永続的ではないので、工事事象よりも低いスコアを受信する。異常スコアを経時的に監視したり、累積異常スコアを計算したりすることには利点がある。ケーブルに沿って工事機械が移動するような非脅威事象は、異常スコアによって示される異常位置も時間的に変化するため、誤警報が発生しない。
【0059】
図9(A)および
図9(B)は、本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の試験例を示す一連のプロットである。
【0060】
図10(A)および
図10(B)は、本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の第2の試験例を示す一連のプロットである。
【0061】
図11(A)および
図11(B)は、本開示の態様による、光ファイバケーブルに衝突する掘削機の第3の試験例を示す一連のプロットである。
【0062】
これらの図は、本開示の態様による正しい位置識別を用いて異常事象を発見できることを示す例として、異なる工事事象(例えば、掘削機の掘削および/または光ファイバセンサケーブルまたは他の物体への衝突)が異なる場所および時間に発生することを示す。
【0063】
最後に、本発明のシステムは、以下の例示的な出力を有利に生成することができる。
【0064】
O-1:表示
【0065】
図12は、本開示の態様による異常検出システムの例示的な表示を示す模式図であり、ケーブル経路情報と、異常スコアを含む検出された異常信号とを含み、キャリアに視覚化結果を提供する表示画像を示す。異常スコアに基づいて、技術者は現場活動のチェックの判断を行うことができる。
【0066】
実験
【0067】
ここで、本発明のシステムおよび方法を評価し、光ファイバケーブルの整合性および/または動作を脅かす活動を予測/防止する上でのそれらの有効性を実証するための実験的な取り組みを紹介する。
【0068】
これまで示し、説明したように、本発明者らの光ファイバセンシング技術は、埋設された光ファイバケーブルから数十メートル以内の振動信号を有利にセンシングすることができる。このような振動の多くは、交通などの正常な活動によって引き起こされる。それにもかかわらず、本開示の態様によれば、感知された振動パターンが既知の正常な活動のいずれにも一致せず、そのような振動の発生源の位置が光ファイバケーブルに近接する保護領域内にあると予測/決定された場合に、重大な警告メッセージがトリガされる可能性がある。したがって、本開示の態様は、例示的なケーブル安全保護システムにおける異常活動検出モジュールと脅威評価モジュールの両方を説明する。有利なことに、追加の位置特定モジュール/方法を使用して、光ファイバケーブルの長さに沿って事象の位置、すなわち、自称のGPS座標をピンポイントで特定し、地理情報システム(GIS)の表示/レポートの一部としてそのような位置を提示することができる。
【0069】
図13は、本開示の態様による、入力感知から出力警告までの例示的な光ファイバケーブル安全保護システム動作を示すフロー図である。その図から分かるように、本発明のシステムおよび方法は、前述の動作、すなわち、入力、異常活動検出、脅威評価、事象位置特定、および出力を含む。
【0070】
この図を参照すると、最初に、顕著性(saliency)検出器が、DFOS動作から生じる空間的・時間的データから個々の強い振動点を検出/決定することに留意する。バックグラウンドノイズの変動に対応するために、四分位範囲(IQR)ベースのメトリックを採用し、振動が第3四分位数を1.5倍以上上回ると、顕著点として決定される。
【0071】
第2に、顕著点群の原因が、それらの空間的・時間的パターンに基づいて一括して決定される。線形の勾配をもたらす正常な交通とは異なり、掘削機および圧延機の動作は、それぞれリップルパターンおよびストリップパターンを発生する可能性がある。このようなパターンは、予めフットプリントが指定されたメディアンフィルタを使用して認識することができる。
【0072】
第3に、異常活動の証拠は、フィルタリングされた点がローカルウィンドウ内の異常閾値を超える割合を計算することによって評価することができる。この手順により、誤警報の数をさらに減らすことができる。
【0073】
次のステップは、脅威評価である。発生源とケーブルの間の垂直方向の距離が短い場合(所定の距離未満)、フラグが立てられた異常事象は、光ファイバケーブルに対する脅威が高いと見なされる。
【0074】
周波数に依存する減衰メカニズムによれば、通常、低周波数の波は、高周波数の波よりも遠くまで浸透する。このメカニズムを、種々の伝搬媒体の下での光ファイバセンシングシステムのコンテキストで検討する。続いて、光ファイバケーブルの保護半径が決定される。
【0075】
動作上、ソースに依存しない分類器は、周波数ドメインで訓練され、目標が保護範囲内にあるか、または保護範囲外にあるかを予測する。この情報は、介入に関する意思決定に役立ち、保護範囲の内側/外側に位置する事象/目標がそれぞれ光ファイバケーブルに対する高/低の脅威と見なされる。
【0076】
現地試験の設定と結果
【0077】
このシステムの実現可能性は、現地試験で実証された。4kmの空中ケーブルと17kmの地中ケーブルを含む全長21kmの地下鉄網のルートである。光ファイバセンシングシステムは、リモート端末に配置され、ケーブル内に配置されたファイバの1つのストランドに接続される。ファイバは、既知のタイプの1728ファイバケーブルの内部にある。
【0078】
この試験では、地中ケーブルの多くは48~60インチの深さに埋設されている。この試験で採用された光ファイバセンシング技術は、分散型音響センシング(DAS)であり、光パルス列を光ファイバケーブル内に発射し、レイリー後方散乱を利用してファイバに沿って動的歪みを測定する。DASシステムは、オンチップ高速処理と共に短い光パルスを採用し、2KHzサンプリングレートで1mの同等のセンサ分解能を実現する。
【0079】
試作システムは、掘削機と圧延機の2つの現場工事シナリオ/動作において異常活動を検出した。掘削機のパターンが発見され、有利なことに、異なる種類の機械から発生する複数の事象の同時検出が可能である。同様に、圧延機の活動も発見された。
【0080】
これらの工事事象を検出した後(および場合によっては、それらが異常であると判定した後)、次に、事象が光ファイバケーブルにとってリスクが高いか低いかを判定した。次のステップは、事象がケーブルにとって脅威が大きいかリスクが低いかを知ることである。
【0081】
脅威評価を行うために、周波数に依存する減衰メカニズムを調査して、実験室環境と現場環境の両方でケーブルの保護ゾーンを決定した。1台のバイブレータを信号源として用いて、機械のエンジンノイズをシミュレートした。信号源は、ケーブルから3~30フィートの位置に3フィート間隔で設置した。ファイバケーブル上の複数のセンシング点からの最新の振動信号を収集した。公知のウェルチ法により推定された平均電力スペクトル密度(PSD)を決定した。
【0082】
解析のために、ウィンドウ処理された信号は、振動源からケーブルまでのグラウンドトゥルース距離に基づいて、3~12フィート(「+」、高脅威)と15~30フィート(「-」、低リスク)の2群に分けた。バイブレータは60Hzで動作していたため、動作中に120Hzと180Hzの高調波信号が誘導された。その結果、草とアスファルト舗装の両方の表面条件において、25Hz以下の周波数減衰は有意でないことが分かった。それを超えると、高周波数は距離とともに急速に減衰する。
【0083】
また、ソース信号の変動性を高めるために、削岩機を用いて舗装破壊振動をシミュレートした。1)連続振動を伴うバイブレータ、2)間欠振動のバイブレータ、および3)間欠振動のジャッキハンマの3つの振動モードを発生させた。この現場での結果は、実験室のテストベッドと同様の周波数減衰特性を示し、2つのグループを12フィートで分離することは、両方の調査におけるすべての振動モードにわたって一貫して維持されている。
【0084】
したがって、保護範囲内または保護範囲外の事象を正確に分類できるように、識別周波数成分を自動的に決定するように訓練された教師あり学習モデルを提供した。この観測に基づいて、線形サポートベクターマシン(SVM)分類器は、3つのモードすべての信号の1206セグメントで共同で訓練され、(重複しない)ホールドアウトセグメントを用いて各モードで個別に試験された。その結果、高い検出率(リコール)と低い誤警報率(I精度)を示した。有利なことに、訓練された分類器は、時間ドメインで異なる特性を示すが、3つの異なる種類の信号源のすべてに一般化する。
【0085】
この時点で、いくつかの特定の例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。特に、ライブネットワーク、運用中の電気通信光ファイバネットワークに関する光ファイバケーブル保護のための異常活動検出と脅威評価の実証に成功した。光ファイバセンシングと機械学習技術を活用することで、光ファイバケーブルの経路に沿った任意の点で異常事象を発見し、ピンポイントで特定することができる。さらに、保護システムは、事象から光ファイバケーブルまでの距離に基づいて脅威レベルの評価を提供すると同時に、周波数依存の減衰メカニズムに基づいて光ファイバケーブルの周囲の保護ゾーンを定義する。保護ゾーン内の事象が発見されると、重大な警告アラートをオペレータまたはシステムに即座に送信することができる。実地試験の結果、提案したシステムが、電気通信サービスプロバイダが光ファイバケーブル付近の脅威となる工事をリアルタイムで特定し、光ファイバケーブルの損傷を防ぐのに役立つことが分かった。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。