IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社牧野フライス製作所の特許一覧

<>
  • 特許-タッチプローブ 図1
  • 特許-タッチプローブ 図2
  • 特許-タッチプローブ 図3
  • 特許-タッチプローブ 図4
  • 特許-タッチプローブ 図5
  • 特許-タッチプローブ 図6
  • 特許-タッチプローブ 図7
  • 特許-タッチプローブ 図8
  • 特許-タッチプローブ 図9
  • 特許-タッチプローブ 図10
  • 特許-タッチプローブ 図11
  • 特許-タッチプローブ 図12
  • 特許-タッチプローブ 図13
  • 特許-タッチプローブ 図14
  • 特許-タッチプローブ 図15
  • 特許-タッチプローブ 図16
  • 特許-タッチプローブ 図17
  • 特許-タッチプローブ 図18
  • 特許-タッチプローブ 図19
  • 特許-タッチプローブ 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】タッチプローブ
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/016 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01B5/016
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023031328
(22)【出願日】2023-03-01
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 建司
(72)【発明者】
【氏名】榎本 太一
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-147673(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109975(WO,A1)
【文献】特開2021-001865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/20
G01B 5/00-5/30
7/00-7/34
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置に装着され、測定対象物に対して測定方向に相対移動させて、測定対象物に接触させて測定対象物の位置または寸法を測定するために用いられるタッチプローブにおいて、
測定装置に装着される本体部と、
前記本体部に設けられる支持軸部と、
前記支持軸部の先端に設けられる球状外形の接触子であって、切欠き部を有した接触子とを具備し、
前記接触子は、該タッチプローブを前記測定方向に移動させたときに測定対象物に接触可能に、前記切欠き部の開口部を画成する縁部によって形成された、前記測定方向に突出する当接部を含んでいることを特徴とするタッチプローブ。
【請求項2】
前記接触子は、複数の異なる測定方向に対応してそれぞれ突出する複数の当接部を含んでいる請求項1に記載のタッチプローブ。
【請求項3】
前記接触子は、同一の測定方向に突出する複数の当接部を含んでいる請求項1に記載のタッチプローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のタッチプローブと測定対象物を測定方向に相対移動させ、前記タッチプローブを前記測定対象物に接触させて前記測定対象物の位置または寸法を測定する測定装置において、
前記タッチプローブを取付可能な主軸と、
前記測定対象物を載置可能なテーブルと、
前記主軸と前記テーブルを相対移動させる送り軸と、
前記主軸と、前記テーブルと、前記送り軸を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする、測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元測定機や工作機械でワークその他の測定対象物の表面に接触させて寸法を測定するために用いられるタッチプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野では、ワークの寸法を測定するために、タッチプローブが広く一般的に用いられている。例えば、特許文献1には、球状の接触子を備えたスタイラスを有し、工作機械の主軸先端に装着するようにしたタッチプローブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-132848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触子は、タッチプローブ先端に設けられ、測定対象物の表面に接触したときに、タッチ信号を出力する。接触子は、一般的に球形形状を有しているので、その直径よりも狭い部位、つまり測定の為の接触に関係しない干渉が発生する部位に対しては、接触子の所定位置を正確に接触させることが非常に困難であるか、あるいは、不可能であることがある。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、ワークの測定すべき表面が狭い場合でも測定可能にしたタッチプローブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明によれば、測定装置に装着され、測定対象物に対して測定方向に相対移動させて、測定対象物に接触させて測定対象物の位置または寸法を測定するために用いられるタッチプローブにおいて、測定装置に装着される本体部と、前記本体部に設けられる支持軸部と、前記支持軸部の先端に設けられる球状外形の接触子であって、切欠き部を有した接触子とを具備し、前記接触子は、該タッチプローブを前記測定方向に移動させたときに測定対象物に接触可能に、前記切欠き部の開口部を画成する縁部によって形成された、前記測定方向に突出する当接部を含んでいるタッチプローブが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるタッチプローブにおいては、測定対象物に接触する当接部が、接触子に切欠き部によって形成されるので、測定に際して、当接部以外の接触子の部位が、測定対象物に干渉することなく、当接部がワークの測定箇所に接触することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好ましい実施形態によるタッチプローブの略示側面図である。
図2図1とは上下を入れ換えて示すタッチプローブの接触子の拡大図である。
図3】第1の実施形態による接触子の側面図である。
図4図3の接触子を中心軸線周りに90度回転させて示す、接触子の側面図である。
図5】先端方向から見た第1の実施形態による接触子の正面図である。
図6】工具ホルダに装着した状態で示す図1のタッチプローブの斜視図である。
図7】タッチプローブを装着してワークの位置または寸法を測定する測定装置の略示ブロック図である。
図8】従来のタッチプローブによる測定対象物の寸法測定を説明するための略図である。
図9】第1の実施形態によるタッチプローブによる測定を説明するための略図である。
図10】第1の実施形態によるタッチプローブによる測定の他の例を説明するための略図である。
図11】第1の実施形態によるタッチプローブによる測定の更に他の例を説明するための略図である。
図12】第2の実施形態による接触子の側面図である。
図13】中心軸線周りに90度回転させて示す、図12の接触子の側面図である。
図14】先端方向から見た第2の実施形態による接触子の正面図である。
図15】第3の実施形態による接触子の略示側面図である。
図16】第4の実施形態による接触子の略示側面図である。
図17】第5の実施形態による接触子の略示側面図である。
図18】第1の実施形態によるタッチプローブを用いて複数個所を測定する例を説明するための略図である。
図19】第6の実施形態による接触子の斜視図である。
図20】第6の実施形態によるタッチプローブによる測定の例を説明するための略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
なお、本開示では、球形の接触子20の中心Cを原点にして、直交する3軸A1、A2、A3を定義する。3軸のうちの1つ、本実施形態では、軸A1はタッチプローブ10の中心軸線Otに一致する。また、本開示では、接触子20の中心Cを通過し軸A2に垂直な平面を平面P1とし、中心Cを通過し軸A1に垂直な平面をP2とする。そして、中心Cを通過し平面Pおよび平面Pのいずれにも垂直な平面をPとする。
平面P1は軸A1、A3を含む平面であり、平面P2は軸A2、A3を含む平面であり、平面Pは軸A、Aを含む平面である。
【0010】
第1の実施形態によるタッチプローブ10は、中心軸線Otに沿って先端方向に先細りになる円錐台状の本体12を有している。本体12の後端または基端には円柱状の取付部12aが形成されており、本体12の先端または遠位端には、中心軸線Otに沿って延びる支持軸14が結合されている。支持軸14の先端には、切欠き部22を有した球形の接触子20が設けられている。
【0011】
切欠き部22は、基端側内面22aと、先端側内面22bにより形成され、かつ、軸A1(中心軸線Ot)および軸Aを含む平面P1に関して対称に形成されている。特に、基端側内面22aは、接触子20の外表面から内側方向に、タッチプローブ10の先端から離れる方向に傾斜している。また、基端側内面22aは、平面または曲面とすることができる。接触子20は切欠き部22により形成される突出部である当接部24を有している。当接部24は、切欠き部22の内面において、軸A1方向に測定対象物に対面可能な範囲で軸A1に垂直な平面Pから軸A1方向に最も遠い位置にある部位である。図3および図4に示す当接部24は、切欠き部の開口部を画成する縁部上に形成されているとも表現できる。当接部24は、切欠き部の内面において、測定方向に測定対象物に対面する部分と、接触子の外表面との間の交線上に形成されているとも表現できる。
【0012】
本実施形態では、切欠き部22の開口部は、基端側縁部26と先端側縁部28とによって画成されている。基端側縁部26および先端側縁部28は、軸A3の方向に見た側面視において、タッチプローブ10の先端方向に膨出する円弧状に形成されている。基端側縁部26の円弧中心Cは、軸A1上に位置する。先端側縁部28の円弧中心Cは、軸A1上に位置する。本実施形態では、先端側縁部28の中心C2は、接触子20の中心Cに一致している。当接部24は、基端側縁部26において、軸A1方向に測定対象物に対面可能な範囲で軸A1に垂直な平面Pから軸A1方向に最も遠い位置にある部位である。
【0013】
本実施形態では、図5に示すように、基端側内面22aにおいて斜線で示す範囲が、軸A1方向に測定対象物に対面可能な部分である。また、基端側内面22aは、接触子20の外表面から内側方向に、タッチプローブ10の先端から離れる方向に傾斜しているので、基端側内面22aにおいて測定対象物に対面可能な部分と接触子20の外表面との間の交線上の、平面P2から軸A1方向に最も遠い部位が当接部24となる。なお、本実施形態では、当接部24は、基端側縁部26と平面P1との交点となっている。基端側内面22aにおいて測定対象物に対面可能な部分に軸A1方向に突出する突起部を設けて、基端側縁部26とは一致しない部分に当接部24を形成してもよい。
【0014】
なお、軸A1は、必ずしも中心軸線Otと一致している必要はない。この場合、支持軸14は、軸A1に対して傾斜して連結されたり、あるいは、支持軸14が直角形状であったりしてもよい。
【0015】
取付部12aは、例えば、図6に示すような工具ホルダ200の装着孔(図示せず)内に装着できる。図6において、工具ホルダ200は、3次元測定機(図示せず)や工作機械(図示せず)のような測定装置の主軸の先端に形成されたテーパ穴(図示せず)に挿入されるテーパシャンク202、主軸の端面に当接する当接面208を有したフランジ204、フランジ204の外周面に形成された周溝206および回転位相を識別するための凹部としてのVノッチ210を有している。また、工具ホルダ200は、接触子が測定対象物に接触したことを検出する検出部(図示せず)、検出部が接触を検出した時にタッチ信号を出力・送信する送信部(図示せず)を有している。
【0016】
こうして、タッチプローブ10は、工具ホルダ200を用いることによって、自動交換装置(図示せず)により3次元測定機や工作機械の主軸先端に装着することができる。タッチプローブ10は、工具ホルダを用いることなく、3次元測定機や工作機械の主軸先端にオペレータが手操作で直接装着するようにしてもよい。
【0017】
工具ホルダ200は、一例として、HSK規格に準拠した2面拘束形の工具ホルダ200が図示されているが、本発明において、工具ホルダは、7/24テーパのシャンク形状を有した工具ホルダや、1/10テーパの中空シャンク形状を有した工具ホルダであってもよい。
【0018】
図7を参照すると、測定装置の一例が図示されている。測定装置100は、例えば、3次元測定機や工作機械とすることができる。測定装置100は、基台となるベッド102、主軸104を中心軸線Os周りに回転可能に支持する主軸頭106、主軸104に対面するようにベッド102上に設けられ、ワークWを載置、固定するテーブル108、主軸頭106とテーブル108とをX、Y、Zの直交3軸方向に相対移動させる送り装置110、送り装置110を制御するNC装置112および測定装置100の制御装置114を備えている。NC装置112は、送り装置110のX軸モータMx、Y軸モータMyおよびZ軸モータMzを制御する。測定装置100が工作機械の場合には、NC装置112は、更に、主軸104の駆動モータMsを制御するようにできる。
【0019】
制御装置114は、CPU(中央演算素子)、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)のようなメモリ装置、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)のような記憶デバイス、出入力ポート、および、これらを相互接続する双方向バスを含むコンピュータおよび関連するソフトウェアから構成することができる。制御装置114は、NC装置112の一部としてソフトウェア的に構成してもよい。
【0020】
制御装置114は、NC装置112に対して測定プログラムを提供するとともに、該測定プログラムを実行するように指示するようにできる。また、測定装置100が、タッチプローブ交換装置(図示せず)を備えている場合、制御装置114が、該タッチプローブ交換装置を制御するようにできる。測定装置100が工作機械の場合、タッチプローブ交換装置は、工具交換装置によって構成することができる。
【0021】
図7では、タッチプローブ10は、工具ホルダ200を介して主軸104の先端部に形成された装着孔(図示せず)に装着されているが、取付部12aを装着孔に取付て、直接主軸104に装着するようにしてもよい。タッチプローブ10が主軸104に装着されると、タッチプローブ10の中心軸線Otが、主軸104の中心軸線Osに一致する。
【0022】
また、タッチプローブ10は、接触子20が、ワークWのような測定対象物に接触したときに、検出部と送信部によって接触を検出し、タッチ信号を出力・送信できる。図7では、タッチ信号は、無線または有線通信装置(図示せず)により、制御装置114に送信される。制御装置114は、タッチ信号を受信したとき、つまりタッチプローブ10が測定対象物であるワークWに接触したときの、主軸または/およびテーブルの相対的な位置関係を示すX、Y、Z座標情報をNC装置112から受け取り、該座標値に基づいて、測定対象物の位置または寸法を取得できる。
【0023】
以下、本実施形態の作用を説明する。
図8に示すように、肩部Shおよび頂面Sを有するワークWについて、肩部Shから頂面Sの高さδHを測定する場合、肩部Shの幅δが、接触子Ctの直径Dよりも大きければ、従来の球形の接触子Ctを有したタッチプローブを用いることができる。この場合、ワークWの頂面Stと肩部Shに接触子Ctの先端を接触させ、そのときの中心軸線Ot方向の座標値、測定装置100ではZ座標値の差分を演算することによって、高さδHが演算される。
【0024】
然しながら、図9に示すように、肩部Shの幅δが接触子の直径よりも小さい(狭い)場合、従来の球形のタッチプローブでは、ワークWの測定すべき部位に接触させるべき接触子が、頂面St又は頂面Stの外縁から鉛直方向に延在する壁面に干渉してしまい、肩部Shに接触することができないので、高さδHを測定することができない。
【0025】
これに対して本実施形態のタッチプローブ10は、接触子20は切欠き部22を形成する内面のうち、測定のためにタッチプローブ10を移動させる方向(測定方向)である軸A1方向に、測定対象物であるワークWに対面する基端側内面22aに当接部24が設けられているので、測定に際して、当接部24をワークWの所望の測定対象部、図9では肩部Shに接触させるように、かつ、接触子20の他の部位を含むタッチプローブ10にワークWや治具との意図しない接触・干渉が発生しないように、タッチプローブ10を測定方向である軸A1の方向に移動させることが可能となる。つまり、本実施形態によるタッチプローブ10は、接触子20に切欠き部22が設けられているので、測定に際して、当接部24以外の接触子20の部位がワークWに干渉することなく、当接部24がワークWの肩部Shに接触することができる。なお、図9に示す実施例では、ワークWは図上側の第1の部位と、第1の部位より大きな形状を有する図下側の第2の部位で構成されており、第1の部位と第2の部位の境界部分に、形状の差分として肩部Shが存在する。
【0026】
また、図10に示すように、ワークWの突出部Wpに面取り部Bvが設けられている場合には、接触子20の球状外形で最も測定方向先端側に位置する先端21をワークWの測定対象部に接触させることによって、軸A1方向のワークWの頂面Stの座標を求めることができる。つまり、ワークWとタッチプローブの各々の形状と、ワークWとタッチプローブの相対的な位置関係に応じて、接触子のどの部位をワークWの測定対象部に接触させて測定をおこなうのか、選択することができる。この選択はオペレータによる判断に基づいておこなわれてもよい。または、制御装置114がワークWとタッチプローブのモデル情報を記憶する記憶部と、測定指示を受けた測定対象部の座標に応じて、ワークWのモデル情報とタッチプローブのモデル情報から、ワークWとタッチプローブの干渉の発生の有無を確認した上で、先端と当接部のどちらで測定すべきか判断する判断部とを備える構成において、接触子のどの部位をワークWの測定対象部に接触させて測定をおこなうのか、制御装置114が自動で選択することもできる。
【0027】
判断部はさらに、干渉の発生の有無を確認した結果、先端と当接部のどちらでも測定できないと判断した場合、アラームを発することもできる。判断部はさらに、測定対象部が先端でも当接部でも測定可能な形状であれば、優先的に先端で測定するよう判断できる判断基準を記憶する判断基準記憶部を有していてもよい。当接部は、切欠き部によって構成されることからエッジ形状となるので、仮に、先端と当接部が同じ送り速度で測定対象部に接触した場合、先端よりも当接部の接触において接触痕が発生しやすくなる。よって、先端と当接部のどちらでも測定可能な形状であれば、接触痕の発生のしやすさと測定時間の短縮の面から、先端で測定するのが好ましいといえる。
【0028】
更に、本実施形態によるタッチプローブ10は、図11に示すように、ワークWが大径部H1と、小径部H2とを有した穴を有している場合に、大径部H1と小径部Hの境界部分に形成される肩部Shの位置やワークW表面からの深さδHを測定するためにも用いることができる。
【0029】
既述の実施形態では、接触子20は1つの測定方向に突出する1つの当接部24を有していたが、本発明は、これに限定されず、複数の異なる測定方向に対応してそれぞれ突出する複数の当接部を有していてもよい。
図12図14を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図12図14では、図3図5の実施形態と同様の構成要素には同じ参照符号が付されており、以下では重複する説明を省略する。
【0030】
第2の実施形態では、先端側内面22bは、平面Pと概ね平行な平面より形成されている。また、先端側内面22bには副切欠き部32が形成されている。副切欠き部32は、軸A3と平行な方向に接触子外方に膨出する内面を有しており、これにより、先端側縁部28上に第2の当接部30が形成される。第2の当接部30は、先端側内面22bにおいて、軸A3を測定方向として、接触子中心Cを通過し測定方向である軸A3に垂直な平面P3から最も遠い位置にある部位である。なお、第2の当接部30が測定対象部に点接触するよう、副切欠き部32を構成してもよい。なお、切欠き部22と副切欠き部32は、軸A1周りの異なる位相に、複数設けられてもよい。
【0031】
また、既述の実施形態では、切欠き部22は、軸A方向から接触子を見たとき、鋭角の中心角を有する切欠きであったが、本発明はこれに限定されず、切欠き部は鈍角の中心角を有していてもよい。
図15において、軸A方向から接触子40を見たとき、切欠き部42は鈍角の中心角θを有している。切欠き部42により当接部44が形成される。当接部44は、接触子40の中心Cを通過し、測定方向を規定する軸A1に垂直な平面P2から最も遠い位置にある、接触子40の外表面上の部位である。
【0032】
図16に示す接触子50の切欠き部52も同様に鈍角の中心角θを有している。切欠き部52により当接部54が形成される。当接部54は、接触子50の中心Cを通過し、測定方向を規定する軸A3に垂直な平面P3から最も遠い位置にある、接触子50の外表面上の部位である。
【0033】
更に、図12図14に示した第2の実施形態では、切欠き部22の先端側内面22bは平面P3に概ね平行に形成され、該先端側内面22bに副切欠き部32を設けることによって、第2の当接部30が形成されているが、本発明は、これに限定されず、図17に示すように、切欠き部62の基端側内面68aおよび先端側内面68bを、それぞれ、軸A1に垂直な平面P2および軸A3に垂直な平面P3に対して傾斜させることにより、切欠き部62により形成される突出部に、第1と第2の当接部64、66が形成される。
【0034】
当接部および第2の当接部は、ワークWに接触する領域にR面取りやホーニング加工を施してもよい。
【0035】
切欠き部の形状は、限定されない。例えば、図3図4に示す切欠き部22は測定方向を規定する軸A側方向における接触子20先端側から開口されているが、切欠き部22が軸Aに垂直かつ接触子20の中心を通る平面Pに達しないようにしてもよい。平面Pと交わる球状外形が接触子20の全周において確保されるので、例えば平面Pと垂直な位置関係にある穴内径や壁面といった従来の球状外形で測定可能な形状も合わせて、本発明のタッチプローブで測定できる。また、図3および図4に示す当接部24が、軸A3方向においてさらに接触子外周側に位置できるよう考慮して切欠き部22の形状を決定すれば、軸A3方向における当接部24と接触子外周と平面P2が交わる部位との距離が小さくなるので、さらに幅の狭い測定対象部も測定できる。また、当接部または第2の当接部は、接触子の球状外形切欠き部の開口部を画成する縁部上に形成されてもよいし、縁部上ではない切欠き部内面に形成されてもよい。また、図3および図4に示す当接部24のように、先端21と一致しない部分に切欠き部を設けることで、先端21を確保し、当接部だけでなく球状外形による測定を合わせておこなうことができる。接触子とワークとの干渉を回避しつつ、当接部がワークに接触して測定可能なように切欠き部の形状が構成されていれば本発明の効果が得られるのであって、その範囲であればさまざまな切欠き部の形状を採用できる。
【0036】
タッチプローブ位相調整部によって、当接部または第2の当接部の位相を調整してもよい。例えば図18に示すように、平面であるワークWの肩部Shにおいて、複数の測定対象部を測定できる。測定装置はタッチプローブ位相調整部を備え、当接部の位相、つまりタッチプローブを軸A1方向に見たときに当接部がどの位相にあるかを調整できる。測定装置は、タッチプローブ位相調整部と送り装置により、複数の測定対象部のそれぞれの位置において干渉が無いように測定することができる。たとえば、図18における測定位置MPと測定位置MPにおける測定が指示された場合には、タッチプローブ位相調整部によってタッチプローブ10を回転させ、測定位置MPと測定位置MPの間でタッチプローブ10の位相を180°変更すればよい。測定装置が工作機械であるとき、タッチプローブ位相調整部は、図7に示す主軸104の駆動モータMsを制御しながら主軸位相を管理できる機能であるCs軸機能として、制御装置114に備えられていてもよい。タッチプローブ位相調整部の前提として、タッチプローブとホルダとの取付関係、主軸とホルダとの装着関係、タッチプローブ位相調整部におけるゼロ点の管理が必要となる。タッチプローブ位相調整部は、オペレータによって手動調整する構成でもよいし、制御装置が測定対象物のモデル情報から測定対象部の形状を自動認識し、測定対象部ごとに適切な位相に自動調整する構成であってもよい。
【0037】
接触子は、同一の測定方向に突出する複数の当接部を含んでいてもよい。前述のタッチプローブ位相調整部が無くとも、複数の測定対象部を測定できる。図19には、同一の測定方向MD1に突出する当接部84および当接部85を備える接触子80が示されている。接触子80によれば、図20に示すように、測定位置MP1を当接部84によって測定できるし、ワークW中心を挟んで測定位置MP1の逆側に位置する測定位置MP2を当接部85によって測定できる。このとき、測定装置は送り装置によってタッチプローブを移動させるが、タッチプローブ位相調整をおこなう必要は無い。なお、図19では、2つの当接部が等配される接触子を示したが、これに限定されるものではない。たとえば4つの当接部が等配されていてもよいし、または等配でなくともよい。切欠き部の形状は、要求される当接部の数、配置、形状に応じて、自由に設定できる。
【符号の説明】
【0038】
10 タッチプローブ
12 本体
12a 取付部
14 支持軸
20 接触子
21 先端
22 切欠き部
22a 基端側内面
22b 先端側内面
24 当接部
26 基端側縁部
28 先端側縁部
30 第2の当接部
32 副切欠き部
40 接触子
42 切欠き部
44 当接部
50 接触子
52 切欠き部
54 当接部
60 接触子
62 切欠き部
64 当接部
66 第2の当接部
68a 基端側内面
68b 先端側内面
80 接触子
82 切欠き部
83 切欠き部
84 当接部
85 当接部
100 測定装置
102 ベッド
104 主軸
106 主軸頭
108 テーブル
112 NC装置
114 制御装置
200 工具ホルダ
202 テーパシャンク
204 フランジ
206 周溝
208 当接面
210 Vノッチ
【要約】
【課題】ワークの測定すべき表面が狭い場合でも測定可能にしたタッチプローブを提供すること。
【解決手段】測定装置100に装着され、測定対象物Wに対して測定方向A、A、Aに相対移動させ、測定対象物に接触させて測定対象物の寸法を測定するために用いられるタッチプローブ10が、測定装置に装着される本体部12と、本体部に設けられる支持軸14と、支持軸部の先端に設けられる球状外形の接触子20とを具備し、接触子20は、切欠き部22によって形成された、測定方向に突出する当接部24を含んでいる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20