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特許7471520低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 9/18 20060101AFI20240412BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20240412BHJP
   C22B 9/187 20060101ALI20240412BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240412BHJP
   B21J 5/08 20060101ALI20240412BHJP
   B21J 5/00 20060101ALI20240412BHJP
   B21J 5/06 20060101ALI20240412BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20240412BHJP
   B21C 1/00 20060101ALI20240412BHJP
   C22C 33/04 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C22B9/18 F
C22C38/58
C22B9/187 A
C22C38/00 302Z
B21J5/08 Z
B21J5/00 A
B21J5/06 B
B21J5/06 F
C21D8/06 B
B21C1/00 M
C22C33/04 N
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023523256
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2022137667
(87)【国際公開番号】W WO2023098919
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】202111541505.5
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522275980
【氏名又は名称】大冶特殊鋼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAYE SPECIAL STEEL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.316 Huangshi Avenue Huangshi, Hubei 435001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】董暁亮
(72)【発明者】
【氏名】張秀麗
(72)【発明者】
【氏名】周立新
(72)【発明者】
【氏名】雷応華
(72)【発明者】
【氏名】王顕華
(72)【発明者】
【氏名】許広鵬
(72)【発明者】
【氏名】徐朋
(72)【発明者】
【氏名】孫国洋
(72)【発明者】
【氏名】李造宇
(72)【発明者】
【氏名】張軍
(72)【発明者】
【氏名】阮棟
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-140553(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109280778(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108342587(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 9/18
B21C 1/00
B21C 37/00
B21J 5/00
C22C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解工程と、前記溶解工程で得られた鋼塊をエレクトロスラグ炉の電極棒として特定のスラグ材で再溶解して結晶化させるエレクトロスラグ再溶解工程と、結晶化された鋼塊を特定の鍛造方式で鍛造成型を行う鍛造工程と、を順に含み、
前記溶解工程において、製鋼原料は溶解後に得られた鋼塊又は最終的に得られたステンレス鋼棒が特定の組成成分を有するように配合し、重量パ-セントにより、前記特定の組成成分は、C:0.020~0.030%、Si:0.3~0.6%、Mn:1.3~1.8%、S:0.002%以下、P:0.015%以下、Cr:19.20~19.70%、Ni:9.20~9.80%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.065~0.075%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含み、
前記特定のスラグ材は、CaF、Al、CaO及びMgOを含み、重量パ-セント含有量により、前記CaF、Al、CaO及びMgOは順に65%~68%、18%~20%、5%~10%、3%~5%であり、
前記特定の鍛造方式は、据え込み及び引き抜き鍛造と、ラジアル鍛造と、を含み、前記据え込み及び引き抜き鍛造は、パス変形量が35%未満であり、パス圧下量が50~80mmであり、パス加熱温度が1130~1150℃であり、パス変形方式は、楕円→楕円→円であり、鍛造開始温度が1000℃以上であり、最終鍛造温度が800℃以上であり、前記据え込み及び引き抜き鍛造の回数が2~3回であり、据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後にラジアル鍛造を行い、鍛造開始温度が1000~1140℃であり、最終鍛造温度が800~900℃であり、ラジアル鍛造後の鋼を空冷して、低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒を取得し、前記低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の直径が200mmであり、
前記鍛造工程において、前記据え込み及び引き抜き鍛造の前に、まずエレクトロスラグ再溶解で得られた低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼ブランクに均熱処理を行い、前記均熱処理は1~10℃/minの加熱速度で1130~1150℃まで昇温することを含む、
ことを特徴とする低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項2】
重量パ-セント含有量により、前記CaF、Al、CaO及びMgOは、順に65%、20%、10%、5%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項3】
前記溶解工程において、製鋼原料は溶解後に得られた鋼塊又は最終的に得られたステンレス鋼棒が、特定の組成成分を有するように配合し、重量パ-セントにより、前記特定の組成成分は、C:0.025%、Si:0.5%、Mn:1.45%、S:0.002%以下、P:0.015%以下、Cr:19.5%、Ni:9.7%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.07%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項4】
前記溶解工程は、溶融処理、精錬処理、真空脱ガス処理及び鋳込み成型を順に含み、前記製鋼原料は、低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼を含む、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項5】
前記エレクトロスラグ再溶解工程を行う前に、前記溶解工程で得られた鋼塊に対してまず切除処理と表面バニシ処理を行ってからエレクトロスラグ再溶解の電極棒とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項6】
前記エレクトロスラグ再溶解工程において、エレクトロスラグ再溶解の電流は11~13KAである、
ことを特徴とする請求項5に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項7】
前記エレクトロスラグ再溶解工程において、前記電極棒の1~10wt%を、結晶化後の鋼塊の補縮に用い、
前記エレクトロスラグ再溶解で得られた鋼塊を離型して室温まで冷却し、低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼ブランクを取得する、
ことを特徴とする請求項6に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項8】
前記エレクトロスラグ再溶解工程において、前記電極棒の1~8wt%を、結晶化後の鋼塊の補縮に用いる、
ことを特徴とする請求項7に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項9】
前記鍛造工程において、据え込み及び引き抜き鍛造の前にまずエレクトロスラグ再溶解で得られた低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼ブランクに均熱処理を行い、前記均熱処理の保温時間が3~5hである、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項10】
前記鍛造工程において、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造の時間は5~20minである、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項11】
前記鍛造工程において、前記据え込み及び引き抜き鍛造の条件は、前記特定の鍛造方式を採用して据え込み及び引き抜き鍛造を行い、鍛造開始温度が1050~1100℃であり、最終鍛造温度が800~900℃であり、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造の時間が5~15minであり、
パス変形量が30~32%であり、パス圧下量が65~75mmであり、パス加熱温度が1130~1150℃であること、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項12】
前記鍛造工程の据え込み及び引き抜き鍛造において、前記特定の鍛造方式は、パス変形量が31%であり、パス圧下量が70mmであり、パス加熱温度が1140℃であることと、4500tプレス機内で2回の据え込み及び引き抜き鍛造を行い、且つ2回目の据え込み及び引き抜き鍛造の変形量は1回目の変形量より大きいことと、を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項13】
前記鍛造工程の据え込み及び引き抜き鍛造において、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に、次の据え込み及び引き抜き鍛造に必要な鍛造開始温度に達するように、炉戻し再焼成を行い、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に炉戻し再焼成加熱する条件は、温度が1130~1150℃であり、時間が90~120minであることを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項14】
前記鍛造工程において、前記ラジアル鍛造の時間は5~20minである、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項15】
前記ラジアル鍛造の条件は、鍛造開始温度が1000~1100℃であり、最終鍛造温度が800~900℃であり、時間が10~20minであり、前記ラジアル鍛造が1600tのラジアル鍛造機で行われることと、を含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【請求項16】
前記低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒は、350℃高温引張強度が410MPa以上であり、350℃高温降伏強度が140MPa以上であり、室温引張強度が560MPa以上であり、室温降伏強度が260MPa以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の製造方法に関し、具体的には、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の工業化の急速な発展に伴い、金属材料に対する要求もますます高くなり、特に原子力発電、ボイラ-、軍需産業などの一部の特殊な環境は、常に、耐食性、耐高低温、高強度を必要とする金属材料に関する。現在、通常の鋼材では、オーステナイト系ステンレス鋼のみがその使用要件を満たすことができるが、このようなオーステナイト系ステンレス鋼は成分及び性能指標に対する要求がより厳しい。
【0003】
現在、国際及び国内で汎用されているこの種類のオーステナイト系ステンレス鋼の実施標準は、フランス加圧水型原子炉原子力島用機械設備設計及び建設規則協会が作成したRCCM M3306であり、該標準において鋼材におけるC:0.035%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%以下、S:0.015%以下、P:0.030%以下、Cr:18.50~20.00%、Ni:9.00~10.00%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.080%以下、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下が要求される。該材料の耐食性を確保するため、標準では炭素及び窒素元素の含有量を制限しており、即ち、Cが0.035%以下であり、Nが0.08%以下である。同時に、該標準はこの種類のオーステナイト系ステンレス鋼の性能として、350℃高温引張強度が394MPa以上であり、350℃高温降伏強度が125MPa以上であり、室温引張強度が520MPa以上であり、室温降伏強度が210MPa以上であることを要求する。
【0004】
しかしながら、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼に対して、その強度を向上させる主な強化元素は炭素及び窒素元素であり、炭素及び窒素元素の含有量が高い場合、鋼の強度が高くなり、逆も同様である。しかし、炭素及び窒素元素の含有量が高い場合、鋼の耐食性が低下する。国家標準GB/T1220-2007において、この同類の低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼材において、窒素元素が0.10~0.16%であることを要求している。したがって、この種類のステンレス鋼は、RCCM M3306標準における同類鋼の高強度を容易に達成できるが、窒素含有量が高いため、この標準に要求する耐食性を満たすことが困難である。
【0005】
しかし、国家標準GB/T1220-2007における窒素元素の含有量を低減すると、この種類の鋼は、RCCM M3306標準における同類鋼の高強度を達成することが困難である。したがって、RCCM M3306標準における鋼の化学成分要求に比べて、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼の製造難度が増加する。
【0006】
現在、中国国内企業は製造過程において製造されたこの種類のオーステナイト系ステンレス鋼の強度が標準的な要求を満たさない状況が常に現れ、製造過程において成型率が低く、それによりこの鋼は依然としてフランスから輸入する必要がある。
【0007】
したがって、より安定性能を有する低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼を製造することができる製造方法を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、現行技術に存在する問題を克服する低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供することであり、このような方法で製造されたステンレス鋼棒の力学的性能はRCCM M3306標準におけるオーステナイト系ステンレス鋼棒の力学的性能要求を満たすことができ、技術障壁を突破し、海外からのこの種類のステンレス鋼棒の輸入に頼らずに、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の自主製造を達成することができる。
【0009】
本発明の発明者は鋭意研究により、鋼を特定の組成成分の範囲内に制御した後、鋼塊をエレクトロスラグ再溶解の電極棒として用いて再溶解して結晶化させ、再溶解工程は特定のスラグ材で行い、鋼内部の化学成分の均一な分布及び鋼の高い清浄度をよく制御することができ、その後、この鋼塊から特定の鍛造方式で鍛造成型を行い、化学成分及び組織が均一に分布し、清浄度が高く、且つ適格な強度を有する鋼材を取得することを見つけた。これにより、本発明は、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
溶解工程と、前記溶解工程で得られた鋼塊をエレクトロスラグ炉の電極棒とし、特定のスラグ材で再溶解して結晶化させるエレクトロスラグ再溶解工程と、結晶化された鋼塊を特定の鍛造方式で鍛造成型を行う鍛造工程と、を順に含み、
前記特定のスラグ材は、CaF、Al、CaO及びMgOを含み、重量パ-セント含有量により、前記CaF、Al、CaO及びMgOは順に65%~70%、15%~20%、5%~10%、2%~5%であり、
前記特定の鍛造方式は、据え込み及び引き抜き鍛造(upsetting and stretching)と、ラジアル鍛造(radial forging)と、を含み、前記据え込み及び引き抜き鍛造は、パス変形量が35%未満(例えば、28%、30%、32%、33%、34%)であり、パス圧下量が50~80mm(例えば、55mm、60mm、70mm、75mm)であり、パス加熱温度が1130~1150℃(例えば、1135℃、1140℃、1145℃)であり、パス変形方式は、楕円→楕円→円であることを含む。パス加熱温度とは、パス毎に変形が終了した後に炉戻し加熱する温度である。
【0011】
本発明において、前記据え込み及び引き抜き鍛造は、据え込み及び引き抜きを含み、鋼塊鍛造が延伸する時に一般的には、まず楕円が徐々に小さくなり、最終的に円形になる。圧下量はプレス機の単回圧下高さであり、変形量は鋼材が変化する前後の面積である。
【0012】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、好ましくは、重量パ-セント含有量により、前記CaF、Al、CaO及びMgOが順に65%~68%、18%~20%、5%~10%、3%~5%であり、より好ましくは、CaF、Al、CaO及びMgOが順に65%、20%、10%、5%である。
【0013】
通常のステンレス鋼鍛造工程において、一般的に、パス変形量が40~60%であることを選択し、その目的は鋼材の製造効率を向上させるためであり、パス加熱温度は一般的に、1160~1180℃であり、パスの変形方式は方形→楕円→円である。
【0014】
本発明では、通常のステンレス鋼鍛造工程に対して、パス変形量が35%未満であることを選択することは、鋼塊が鍛造過程で鋳造組織が均一に変化することを確保するためである。パス圧下量が50~80mmであることを採用することは、鋼塊が鍛造過程で均一に変形することを確保するためであり、圧下量が大きすぎることによる部分的な組織の乱れを回避する。パス加熱温度が1130~1150℃(例えば、1135℃、1140℃、1145℃)であることを採用することは、材料が微細分散した組織を取得することを確保するためである。また、本発明は楕円→楕円→円のパス変形方式を採用し、その目的は鋼材に方形のエッジが発生することにより、エッジの温度低下が速すぎるため鋼材組織の異常をもたらすことを回避することである。
【0015】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、製鋼原料は溶解後に得られた鋼塊又は最終的に得られたステンレス鋼棒が特定の組成成分を有するように配合し、重量パ-セントにより、前記特定の組成成分は、C:0.020~0.030%、Si:0.3~0.6%、Mn:1.3~1.8%、S:0.002%以下、P:0.015%以下、Cr:19.20~19.70%、Ni:9.20~9.80%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.065~0.075%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含む。
【0016】
好ましくは、重量パ-セントにより、前記特定の組成成分は、C:0.025%、Si:0.5%、Mn:1.45%、S:0.002%以下、P:0.015%以下、Cr:19.5%、Ni:9.7%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.07%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含む。
【0017】
本発明において、C含有量が0.020~0.030%であることに基づいて、合理的に設計されたCr、Ni及びNの含有量を採用することにより、この種類の元素が鋼においてより多くの炭化物、金属間化合物及び析出相を形成することを確保し、それは鋼において鋼の強度を効果的に向上させることができる。
【0018】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記製鋼原料は、低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼を含む。本発明において、前記低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼等は、本分野の通常の304系鋼を溶製するための様々な金属を採用することができる。
【0019】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記溶解工程は溶融処理、精錬処理、真空脱ガス処理及び鋳込み成型を順に含む。
【0020】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記エレクトロスラグ再溶解工程を行う前に、前記溶解工程で得られた鋼塊に対してまず切除処理と表面バニシ処理を行ってからエレクトロスラグ再溶解の電極棒とし、前記切除処理は補縮不良の一部を切除するために用いられる。前記表面バニシ処理は、表面品質が良好な電極棒を取得するために用いられる。切除処理及び表面バニシ処理により、再溶解後の鋼塊の化学的成分が均一であり且つ表面品質が良好であることを確保することができ、それにより表面品質がより高く、清浄度が高く、組織が均一で強度が高い鋼材を取得し得る。
【0021】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記エレクトロスラグ再溶解工程において、エレクトロスラグ再溶解の電流は11~13KA(例えば、11.5KA、12.0KA、12.5KA)である。
【0022】
本発明において、エレクトロスラグ再溶解工程において、電流が大きすぎると母電極が急速に融解し、さらに金属溶融池が深くなり、結晶化後に得られた鋼塊の芯部に深刻な偏析組織及び低い清浄度が現れる。電流が小さすぎると母電極の融解が遅く、さらに金属溶融池が浅くなり、結晶化後に得られた鋼塊エッジに深刻な偏析組織及び低い清浄度が現れる。
【0023】
本発明において、エレクトロスラグ再溶解工程において、重量パ-セントで順に65%~70%、15%~20%、5%~10%、2%~5%であり、好ましくは、65%CaF、20%Al、10%CaO、5%MgOの混合スラグ材(特定スラグ材)を再溶解して結晶化させ、鋼材の清浄度を効果的に向上させることができる。ここで、CaFはスラグ材の融点、粘度及び表面張力を低下させ、スラグの流動性を向上させることができ、鋼における非金属介在物を効果的に除去することができる。Alはスラグの導電率を低下させることができ、省エネルギーと消費低減の作用を達成することができるが、過剰に添加するとスラグの粘度を向上させる。CaOはスラグの塩基度を向上させることができ、効果的な脱硫能力は溶鋼をより清浄にする。MgOはスラグ表面にスラグ膜を形成させることができ、外部に溶鋼の二次酸化を防止することができ、内部に熱量の損失を減少させることができるが、過剰に添加するとスラグの粘度を向上させる。したがって、上記四種類の物質で構成された四元スラグ系を採用すると、清浄度の高い鋼材を取得することができ、エネルギーの消費も低減することもできる。
【0024】
本発明において、選択されたスラグ材及び電流が適切でなければ、スラグ巻及びスラグ巻き込み、溶鋼の清浄度が低く、鋼材偏析が深刻で、鋼塊の表面品質が悪いなどの欠陥が発生する。本発明は、質量比含有量により、CaF、Al、CaO、MgOが順に65%~70%、15%~20%、5%~10%、2%~5%であり、好ましくは、65%、20%、10%、5%の特定のスラグ材配合比率及び11~13KAであり、好ましくは、11KAの再溶解電流であり、電極棒が安定して溶融することを確保することができ、さらに清浄度が高く、組織及び成分の均一な表面が良好な鋼塊を取得することができる。
【0025】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、表面品質の高い鋼を取得するために、前記エレクトロスラグ再溶解工程において、前記電極棒は1~10wt%であり、好ましくは1~8wt%(例えば、2wt%、3wt%、5wt%、6wt%、7wt%)であり、結晶化された鋼塊の補縮に用いる。即ち、溶鋼を結晶器に滴下して結晶化させる時、溶鋼の表面張力の作用により、鋼塊表面に収縮孔が存在させ、本発明は、鋼塊で形成された大きな収縮孔により、後から鍛造後に得られた鋼の表面品質を悪化させてその加工可塑性の品質に影響を与えることを回避するために、好ましくは、結晶後期に、1~10wt%電極棒、より好ましくは、1~8wt%の電極棒を結晶化後に形成された鋼塊表面上の収縮孔を埋めるために用いられる。
【0026】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記エレクトロスラグ再溶解で得られた鋼塊を離型して室温まで冷却し、低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼ブランクを取得する。
【0027】
本発明の技術方案を採用して製造られた低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼ブランクは、その化学成分が均一に分布し、清浄度が高く、偏析欠陥がなく、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造に用いることができるが、該低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法は特別な要求を満たす必要がある。
【0028】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程において、据え込み及び引き抜き鍛造の前にまずエレクトロスラグ再溶解で得られた低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼ブランクに均熱処理を行い、前記均熱処理は1~10℃/min(例えば、2℃/min、3℃/min、5℃/min、7℃/min、8℃/min、9℃/min)の加熱速度で1130~1150℃(例えば、1135℃、1140℃、1145℃)まで昇温し、そして該温度で3~5h(例えば、3.5h、4.0h、4.5h)保温することを含む。
【0029】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程において、前記据え込み及び引き抜き鍛造の条件は、前記特定の鍛造方式を採用して据え込み及び引き抜き鍛造を行い、鍛造開始温度が1000℃以上(例えば、1050℃、1100℃、1110℃、1120℃)であり、最終鍛造温度が800℃以上(例えば、850℃、900℃、950℃、1000℃)であり、前記据え込み及び引き抜き鍛造の回数が1~3回(例えば2回)であり、好ましくは2~3回であり、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造の時間は、5~20min(例えば、8min、10min、12min、15min、17min、19min)であることを含む。
【0030】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程において、前記据え込み及び引き抜き鍛造の条件は、前記特定の鍛造方式で据え込み及び引き抜き鍛造を行い、鍛造開始温度が1050~1100℃(例えば、1060℃、1070℃、1080℃、1090℃)であり、最終鍛造温度が800~900℃(例えば、820℃、850℃、870℃、890℃)であり、好ましくは、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造の時間が5~15min(例えば、7min、9min、10min、12min、14min)であることを含む。
【0031】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程の据え込み及び引き抜き鍛造において、前記特定の鍛造方式は、パス変形量が30~32%(例えば、30.5%、31%、31.5%)であり、パス圧下量が65~75mm(例えば、67mm、70mm、72mm、74mm)であり、パス加熱温度が1130~1150℃(例えば、1135℃、1140℃、1145℃)であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であることを含む。
【0032】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程の据え込み及び引き抜き鍛造において、前記特定の鍛造方式は、パス変形量が31%であり、パス圧下量が70mmであり、パス加熱温度が1140℃であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であることを含む。
【0033】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程の据え込み及び引き抜き鍛造において、4500tプレス機内で2回の据え込みと2回の引き延ばし(即ち、2回の据え込み及び引き抜き鍛造)を行い、且つ2回目の据え込み及び引き抜き鍛造の変形量が1回目の変形量よりも大きく、このようにして1回目の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に炉戻し過程による組織が粗大であるという問題を解決することができ、それにより得られた鋼材がより高い結晶粒度を有することができる。
【0034】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程の据え込み及び引き抜き鍛造において、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造(据え込み及び引き抜き)が終了する度に、次の据え込み及び引き抜き鍛造に必要な鍛造開始温度に達するように炉戻し再焼成を行って、好ましくは、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に炉戻し再焼成加熱(即ちパス加熱)する条件は、温度が1130~1150℃(例えば、1135℃、1140℃、1145℃)であり、時間が90~120min(例えば、95min、100min、110min、115min)であることを含む。
【0035】
最終回の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に、再び上記炉戻し再焼成加熱条件を採用して加熱し、次のラジアル鍛造に準備することができる。
【0036】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、前記鍛造工程において、据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後にラジアル鍛造を行う。前記ラジアル鍛造の条件は、鍛造開始温度が1000~1140℃(例えば、1020℃、1040℃、1050℃、1070℃、1090℃、1115℃、1125℃、1130℃、1135℃)であり、最終鍛造温度が800~900℃(例えば、820℃、850℃、870℃、890℃)であり、時間が5~20min(例えば、8min、10min、12min、15min、17min、19min)であることを含む。
【0037】
さらに好ましくは、前記ラジアル鍛造の条件は、鍛造開始温度が1000~1100℃(例えば、1005℃、1010℃、1020℃、1040℃、1050℃、1070℃、1080℃、1090℃)であり、最終鍛造温度が800~900℃(例えば、820℃、850℃、870℃、890℃)であり、時間が10~20min(例えば、12min、15min、17min、18min)であることを含む。
【0038】
より好ましくは、前記ラジアル鍛造は1600tのラジアル鍛造機で行われ、且つ1回の鍛造成型を行い、ラジアル鍛造後の鋼を空冷して、低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒を取得する。
【0039】
本発明の方法を採用すると、直径が200mm以上の低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒を製造することができる。
【0040】
上記製造方法において、好ましい技術方案として、得られた低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の350℃高温引張強度が410MPa以上であり、350℃高温降伏強度が140MPa以上であり、室温引張強度が560MPa以上であり、室温降伏強度が260MPa以上であり、且つ化学成分及び高低倍の組織が均一であり、鋼材の清浄度が高い。
【0041】
本発明において、互いに矛盾しない条件で、上記技術的特徴は自由に組み合わせて新たな技術方案を形成することができる。
【0042】
現行技術に比べて、本発明の有益な技術的効果は以下のとおりである。
1、本発明の技術方案を採用すれば、鋼内部の化学成分の均一な分布及び鋼の高い清浄度をよく制御することができる。
2、本発明の技術方案を採用すれば、化学成分及び組織が均一に分布し、清浄度が高く、強度が高い低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼を取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施例を参照して、本発明の具体的な実施態様における技術方案を詳細に説明する。ここで説明された具体的な実施態様は単に本発明を説明し解釈するために用いられ、本発明を限定するものではないと理解すべきである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的労働をしない前提で得られた全ての他の実施態様は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0044】
本発明は、製鋼原料をアーク炉、炉外精錬炉及び真空酸素吹き脱炭炉に入れて溶解を行い、前記溶解は溶融処理、精錬処理、第1回の試料調製処理、酸素吹き脱炭処理、脱気処理及び窒素吹き処理、第2回の試料調製処理及び鋳込み成型を順に含み、前記製鋼原料は最終的に得られた鋼塊が特定の組成成分を有するように配合し、前記特定の組成成分が重量パ-セントで、C:0.020~0.030%、Si:0.3~0.6%、Mn:1.3~1.8%、S:0.002%以下、P:0.015%以下、Cr:19.20~19.70%、Ni:9.20~9.80%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.065~0.075%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含む溶解工程と、
前記溶解工程で得られた鋼塊に対してまず切除処理と表面バニシ処理を行ってからエレクトロスラグ再溶解の電極棒とし、特定のスラグ材で再溶解して結晶化させ、次に結晶化された鋼塊を冷却し、前記特定のスラグ材がCaF、Al、CaO及びMgOを含み、重量パ-セント含有量により、前記CaF、Al、CaO及びMgOが順に65%~70%、15%~20%、8%~10%、2%~5%であり、最終的な配合比率の和が100%であることを確保するエレクトロスラグ再溶解工程と、
結晶化された鋼塊を冷却し、前記鍛造工程において、結晶化された鋼塊を特定の鍛造方式で鍛造形成を行い、前記特定の鍛造方式は据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造を含み、前記据え込み及び引き抜き鍛造は据え込み及び引き抜きを含み、そのうち前記据え込み及び引き抜き鍛造は、パス変形量が35%未満(例えば、28%、30%、32%、33%、34%)であり、パス圧下量が50~80mm(例えば、55mm、60mm、70mm、75mm)であり、パス加熱温度が1130~1150℃(例えば、1135℃、1140℃、1145℃)であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であることを含み、パス加熱温度とは、パス毎に変形が終了した後に炉戻し加熱する温度である鍛造工程と、を含む、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。
【0045】
本発明において、前記溶解工程は、本分野の通常の実施態様を採用することができる。
【0046】
本発明により、好ましい実施態様として、前記製鋼原料は低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼などを含み、前記低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼などは本分野の通常の304系鋼を溶製するための様々な金属であり、例えば、前記金属ニッケルは1#Niなどである。
【0047】
本発明により、好ましい実施態様として、重量パ-セントにより、前記特定の組成成分は、C:0.025%、Si:0.5%、Mn:1.45%、S:0.002%以下、P:0.015%以下、Cr:19.5%、Ni:9.7%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.07%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含む。
【0048】
前記製鋼原料の配合材料は、上記組成に応じて材料を配合することができるが、より良質な鋼塊を取得するために、好ましくは、前記溶解処理工程において、前記製鋼原料における一部の低炭素クロム鉄及び窒化クロム鉄を予備して2回目の調製処理の添加材料とする。
【0049】
本発明により、好ましい実施態様として、溶融処理とは製鋼原料をアーク炉、例えば真空アーク炉内に添加した後、電極加熱、酸素吹き、スラグ添加により前記製鋼原料を溶融混合する過程を指す。好ましくは、前記溶融処理の出鋼条件は、C:0.60%以下、T:1630℃以上を含む。
【0050】
本発明により、好ましい実施態様として、精錬処理とは、電気炉で溶融した溶鋼を炉外精錬炉に注ぎ、電極加熱、スラグ添加処理によりアーク炉溶鋼を還元処理し、好ましくは、Si-C粉末を5~10kg/tで添加して脱酸し、10分間より長く給電してスラグを焼却する。スラグを適切に調整し(即ち、スラグを白色に調整する)、それをサンプリングして全分析し、サンプルを戻して成分を調整する。好ましくは、出鋼条件は、Tが1650℃以上であり、出炉成分がC:0.80%以下、Si:0.30%以下、S:0.015%以下である。
【0051】
本発明により、好ましい実施態様として、真空酸素吹き脱炭炉で真空吹き酸素脱炭処理、脱気処理及び窒素吹き処理を行うことは、炉外精錬炉の溶鋼を真空吹酸処理して鋼における炭素含有量を除去し、次に真空でスラグ材及び脱酸素剤を添加して真空脱ガス処理を行うことにより、鋼における吹酸脱炭した後に残された酸化物を除去し、脱酸が完了した後に炉底窒素吹き処理を行い、鋼における窒素含有量を増加させ、最後に化学成分に基づいて予め残された低炭素クロム鉄及び窒化クロム鉄を添加する。好ましくは、溶鋼が真空酸素吹き脱炭炉に入る前に炉外精錬スラグを除去し、真空脱ガス処理のスラグ材の配合比率は、石灰:400kg/炉、蛍石:50~100kg/炉、予め溶解アルミニウムカルシウム複合スラグ:200~300kg/炉であり、脱酸素剤はA1粒、Ca-Si又はFe-Siであり、好ましくは、スラグ材に伴って脱酸素剤A1粒(1~3kg/t)、Ca-Si又はFe-Si(5~8kg/t)を添加し、真空脱ガス処理の真空度が100Pa以下であり、保持時間が10min以上である。
【0052】
本発明により、好ましい実施態様として、鋳込み成型とは、真空脱ガス処理により得られた化学成分に合格した溶鋼を電極に鋳込み、好ましくは、鋳込み前に炉底へアルゴンガスを20分間吹き付け、アルゴンガスで鋳込みを保護して、鋳込み温度が1530~1550℃である。
【0053】
本発明により、好ましい実施態様として、本発明の組成を有する鋼塊、特に上記製造方法で製造された鋼塊を、エレクトロスラグ再溶解の電極棒として再溶解して結晶化させる。
【0054】
本発明において、表面品質がより高く、清浄度が高く、組織が均一で強度が高い鋼材を取得するために、再溶解後の鋼塊の化学成分が均一で表面品質が良好であることを確保する必要があり、好ましくは、電極棒とする鋼塊をまず切除処理と表面バニシ処理を行う。前記切除処理は補縮不良の部分を切除するために用いられ、前記表面バニシ処理は表面品質が良好な電極棒を取得するために用いられる。
【0055】
本発明により、好ましい実施態様として、前記エレクトロスラグ再溶解工程において、前記鋳込み成型で得られた鋼塊をエレクトロスラグ炉の電極棒とし、通電する場合、電極棒はスラグ材において溶鋼に溶解し、溶融した溶鋼はスラグ材を介して結晶器に滴下して結晶化させる。好ましくは、重量パ-セント含有量により、前記特定のスラグ材の配合比率は、CaF:65%、Al:20%、CaO:10%、MgO:5%であり、エレクトロスラグ再溶解の電流は11KAである。
【0056】
本発明によれば、表面品質の高い鋼を取得するために、好ましくは、前記電極棒の1~10重量%(より好ましくは1~8重量%)を結晶化された鋼塊の補縮に用い、即ち、溶鋼を結晶器内に滴下して結晶化させる時、溶鋼の表面張力の作用により、鋼塊表面に収縮孔が存在し、本発明は鋼塊で形成された大きな収縮孔により後から鍛造後に得られた鋼の表面品質を悪化させて、その加工可塑性の品質に影響を与えることを回避するために、好ましくは、結晶後期に、1~10重量%(より好ましくは1~8重量%)の電極棒を結晶化後に形成された鋼塊表面上の収縮孔を埋めるために用いられる。
【0057】
本発明の製造方法で得られた低炭素窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼は、その化学成分が均一に分布し、清浄度が高く、偏析欠陥がなく、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造に用いることができる。
【0058】
上記製造方法において、好ましい実施態様として、前記鍛造工程において、前記特定の鍛造方式は、均熱処理後の鋼塊に据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造を行う。前記均熱処理とは、エレクトロスラグ再溶解工程で得られた鋼塊を冷却した後にさらに加熱処理を行い、前記均熱処理は、1~10℃/minの加熱速度で1130~1150℃まで昇温し、その後に3~5h保温することを含み、前記据え込み及び引き抜き鍛造が据え込み及び引き抜きを含む。
【0059】
上記製造方法において、好ましい実施態様として、前記鍛造工程において、前記据え込み及び引き抜き鍛造の条件は、鍛造開始温度が1000℃以上であり、最終鍛造温度が800℃以上であり、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造の時間が5~20minであり、パス変形量が30~32%であり、パス圧下量が65~75mmであり、パス加熱温度が1130~1150℃であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であることを含む。
【0060】
好ましくは、前記据え込み及び引き抜き鍛造の条件は、鍛造開始温度が1050~1100℃であり、最終鍛造温度が800~900℃であり、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造の時間が5~15minであり、前記据え込み及び引き抜き鍛造の回数が1~3回であってもよく、好ましくは2~3回であり、より好ましくは、4500tのプレス機内で2回の据え込みと2回の引き抜き鍛造を行い、且つ2回目の据え込み及び引き抜き鍛造の変形量が1回目の変形量よりも大きく、このようにして1回目の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に炉戻し過程による組織が粗大であるという問題を解決することができ、それにより得られた鋼材がより高い結晶粒度を有することができる。
【0061】
そのうち、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造(据え込み及び引き抜きを含む)が終了する度に炉戻し再焼成を行って据え込み及び引き抜き鍛造に必要な鍛造開始温度に達し、好ましくは、毎回の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後に炉戻し再焼成する条件は、温度が1130~1150℃であり、時間が90~120minであり、最終回の据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後の炉戻し条件を含むことは、上記炉戻し条件を採用することができ、パス変形量が31%であり、パス圧下量が70mmであり、パス加熱温度が1140℃であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であること含む。
【0062】
上記製造方法において、好ましい実施態様として、前記鍛造工程において、据え込み及び引き抜き鍛造が終了した後にラジアル鍛造を行い、ラジアル鍛造の鍛造開始温度は、即ち炉戻し加熱後の鋼の温度である。好ましくは、前記ラジアル鍛造の条件は、鍛造開始温度が1120~1140℃であり、最終鍛造温度が800~900℃であり、時間が5~20minであることを含む。さらに好ましくは、前記ラジアル鍛造の条件は、鍛造開始温度が1000~1100℃であり、最終鍛造温度が800~900℃であり、時間が10~20minであることを含み、さらに好ましくは、前記ラジアル鍛造は、1600tのラジアル鍛造機で行われ、且つ1つの鍛造成型を行い、ラジアル鍛造後の鋼を空冷する。
【0063】
本発明の方法を採用することにより、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼を製造することにより直径が200mm以上の鋼棒を製造することができ、得られた低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼の350℃高温引張強度が410MPa以上であり、350℃高温降伏強度が140MPa以上であり、室温引張強度が560MPa以上であり、室温降伏強度が260MPa以上であり、且つ化学成分及び高低倍の組織が均一であり、鋼材の清浄度が高い。
【0064】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0065】
実施例において、引張強度Rm、降伏強度Rp0.2、破断後の伸び率A及び断面収縮率Zは、RCCM M1000に記載の方法により測定する。
実施例1:
【0066】
本実施例は、溶解工程と、エレクトロスラグ再溶解工程と、鍛造工程と、を順に含む、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。具体的には、以下のようになる。
溶解工程:
(1)配合材料:
低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼を、製造しようとする鋼塊がC:0.026%、Si:0.54%、Mn:1.45%、S:0.002%以下、P:0.017%、Cr:19.7%、Ni:9.7%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.072%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含有するように配合し、そのうち、低炭素クロム鉄及び窒化クロム鉄はそれぞれその重量の1/3を予め残す。
(2)溶融処理:
材料を配合した後に得られた製鋼原料をアーク炉に入れて溶融処理を行い、まず電極を合金材料に挿入し材料へ給電して電化させ、同時に炉底に酸素ガンを挿入して酸素を吹き付けて溶解を補助し、且つ該製鋼原料の表面に白灰を添加し、電極加熱、酸素吹き、スラグ添加により前記製鋼原料を溶融混合する。電気炉の出鋼の場合、Cが0.56wt%であり、出鋼温度が1690℃である。
(3)精錬処理:
電気炉で溶融した溶鋼を炉外精錬炉に注ぎ入れ、15kgのSi-C粉末を添加して400kgのスラグを合成し、15分間給電してスラグを焼却し、停電した後に、それをサンプリングして全分析し、サンプルを戻して成分を調整する(即ち、第1回のサンプル調製処理)。出鋼条件Tは、1670℃であり、出炉成分は、C:0.40%、Si:0.25%、S:0.005%である。
(4)酸素吹き脱炭処理、脱気処理及び窒素吹き処理、第2回のサンプル調整処理及び鋳込み成型:
精錬処理して出鋼した溶鋼を真空酸素吹き脱炭炉に入れて真空下で酸素吹き処理を行い、酸素を吹き込んだ後に、鋼における炭素含有量が0.005%になるまでサンプリングし、次に溶鋼に400kgの白灰、80kgの蛍石を入れて200kgのスラグを合成し、スラグ材に伴って20kgの脱酸素剤A1粒、20kgのCa-Siを添加して脱気処理を行い、真空度が67Paであり、保持時間が15minである。
【0067】
脱気が終了した後に溶鋼に窒素ガスを吹き付け、次に予め残された低炭素クロム鉄及び金属マンガンを添加し、金属材料を融解した後に溶鋼にアルゴンガスを20min吹き付け、さらにアルゴンガスで保護してそれを直径が410mmの電極金型に2.5トン鋳込む。鋳込み前に炉底にアルゴンガスを20分間吹き付け、次にアルゴンガスで鋳込みを保護して、鋳込み温度は1530~1550℃であり、鋳込み後に400kgの残留物を残す。
【0068】
切除処理及び表面バニシ処理:
溶解工程で得られた鋼塊の充填部分を切除し、且つその表面をバニシする。
【0069】
エレクトロスラグ再溶解工程:
表面がバニシされた鋼塊をエレクトロスラグ炉の電極棒として再溶解を行い、再溶解過程においてスラグ材の重量は130kgであり、スラグ材の配合比率は、CaF:Al:CaO:MgOが65%:20%:10%:5%であり、再溶解の電流が11KAであり、再溶解電圧が45Vであり、溶融した溶鋼は直径が510mm(Φ510mm)の結晶器内に滴下して結晶化させ、電極棒が360kg残った場合、それを結晶器における鋼塊の補縮材料として鋼塊の収縮孔に対して補縮処理を行う。
【0070】
溶解が完了した後に鋼塊を離型して室温まで冷却してΦ510mm鋼塊を取得する。
【0071】
鍛造工程:
特定の鍛造方式で鍛造を行い、均熱処理及び鍛造を含み、前記鍛造は据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造を含み、そのうち、特定の鍛造方式は、パス変形量が31%であり、パス圧下量が70mmであり、パス加熱温度が1140℃であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であることを含む。具体的には、以下のようになる。
均熱処理:
該空冷後の2.5トン(Φ510mm)鋼塊を均熱し、均熱の条件は、まず2.3℃/minの昇温速度でそれを1150℃まで加熱し、その後4h保温する。
【0072】
据え込み及び引き抜き鍛造(据え込み及び引き抜きを含む)及びラジアル鍛造:
均熱処理後の鋼塊を4500tのプレス機に入れて1回目の据え込み及び引き抜き鍛造を8min行い、最終鍛造温度が850℃であり、直径が530mmであり、圧下量が70mmであり、変形方式がΦ540mm楕円→Φ535mm楕円→Φ530mm円(ここでの楕円が製造過程でさらに荒円と呼ばれ、不規則な円であり、直径が長径及び短径の平均値である)である。さらに炉戻して1140℃に加熱して90min加熱し、4500tのプレス機に入れて2回目の据え込み及び引き抜き鍛造を10min行い、最終鍛造温度が850℃であり、直径が510mmであり、圧下量が70mmであり、変形方式がΦ520mm楕円→Φ515mm楕円→Φ510mm円である。さらに炉戻して1140℃に加熱して90min加熱し、4500tのプレス機に入れて1回目の引き抜きを15min行い、直径が420mmであり、圧下量が70mmであり、変形量が31%であり、変形方式がΦ430mm楕円→Φ425mm楕円→Φ420mm円である。さらに炉戻して1140℃に加熱して90min加熱し、4500tのプレス機に入れて2回目の引き抜きを15min行い、直径が350mmであり、圧下量が70mmであり、変形量が31%であり、変形方式がΦ360mm楕円→Φ355mm楕円→Φ350mm円である。さらに炉戻して1140℃に加熱して90min加熱し、次に1600tのラジアル鍛造機で1回の鍛造を20min行い、最終鍛造温度が850℃であり、鍛造後の直径が200mmであり、次に室温まで空冷して直径が200mmである00Cr19Ni10N鋼棒を取得し、その350℃の高温引張強度、350℃の高温降伏強度、室温引張強度、室温降伏強度がいずれもRCCM M3306標準の要求に達し、且つ化学成分及び高低倍の組織が均一であり、鋼材の清浄度が高く、具体的には、表1及び表2に示すとおりである。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
実施例2
【0075】
本実施例は、溶解工程、エレクトロスラグ再溶解工程及び鍛造工程を順に含む、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。そのうち、溶解工程における配合材料ステップは以下の実施態様を採用する以外に、溶解工程の他のステップ及びエレクトロスラグ再溶解と鍛造工程は、いずれも実施例1における実施態様を採用する。
【0076】
溶解工程:
(1)配合材料:低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼を、製造しようとする鋼塊がC:0.026%、Si:0.54%、Mn:1.45%、S:0.002%以下、P:0.017%以下、Cr:19.2%、Ni:9.2%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.072%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下になるように配合し、そのうち、低炭素クロム鉄及び窒化クロム鉄はそれぞれその重量の1/3を予め残す。
【0077】
上記配合材料を用いて溶解、エレクトロスラグ再溶解及び鍛造を行い、最終的に鍛造で直径が200mmであり、次に室温まで空冷して直径が200mmの00Cr19Ni10N鋼棒を取得し、その350℃の高温引張強度、350℃の高温降伏強度、室温引張強度、室温降伏強度はいずれもRCCM M3306標準の要求に達せず、具体的には、表3及び表4に示すとおりである。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
実施例3
【0080】
本実施例は、溶解工程、エレクトロスラグ再溶解工程及び鍛造工程を順に含む、低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。そのうち、溶解工程及びエレクトロスラグ再溶解工程は、実施例2と同じ実施態様を採用し、鍛造工程は以下の実施態様を採用する。
鍛造工程:
特定の鍛造方式で鍛造を行い、均熱処理及び鍛造を含み、前記鍛造は、据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造を含み、そのうち、特定の鍛造方式は、パス変形量が31%であり、パス圧下量が65mmであり、パス加熱温度が1140℃であり、パス変形方式が楕円→楕円→円であることを含む。ここで、圧下量はプレス機の単回圧下高さであり、変形量は鋼材が変化する前後の面積である。具体的には、以下のようになる。
均熱処理:
該空冷後の2.5トン(Φ510mm)鋼塊を均熱し、均熱の条件は、まず2.3℃/minの昇温速度でそれを1150℃まで加熱し、その後4h保温する。
【0081】
据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造:
均熱処理後の鋼塊を4500tのプレス機に入れて1回目の据え込み及び引き抜き鍛造を15min行い、最終鍛造温度が800℃であり、直径が530mmであり、圧下量が65mmであり、変形方式がΦ540mm楕円→Φ535mm楕円→Φ530mm円である。次に炉戻して1130℃に加熱して90min加熱し、さらに4500tのプレス機に入れて2回目の据え込み及び引き抜き鍛造を15min行い、最終鍛造温度が800℃であり、直径が510mmであり、圧下量が65mmであり、変形方式がΦ520mm楕円→Φ515mm楕円→Φ510mm円である。さらに炉戻して1130℃に加熱して90min加熱し、さらに4500tのプレス機に入れて1回目の引き抜きを15min行い、直径が420mmであり、圧下量が65mmであり、変形量が31%であり、変形方式がΦ430mm楕円→Φ425mm楕円→Φ420mm円である。さらに炉戻して1130℃に加熱して90min加熱し、さらに4500tのプレス機に入れて2回目の引き抜きを15min行い、直径が350mmであり、圧下量が65mmであり、変形量が31%であり、変形方式がΦ360mm楕円→Φ355mm楕円→Φ350mm円である。さらに炉戻して1140℃に加熱して90min加熱し、次に1600tのラジアル鍛造機で1回の鍛造を20min行い、最終鍛造温度が850℃であり、鍛造後の直径が200mmであり、次に室温まで空冷して直径が200mmの00Cr19Ni10N鋼棒を取得する。
【0082】
【表5】
【0083】
該00Cr19Ni10N鋼棒の350℃高温引張強度、350℃高温降伏強度、室温引張強度、室温降伏強度はいずれもRCCM M3306標準の要求に達し、且つ化学成分及び高低倍の組織が均一であり、鋼材の清浄度が高く、具体的には、表5及び表6に示すとおりである。
【0084】
【表6】
比較例1
【0085】
本比較例は、溶解工程、エレクトロスラグ再溶解工程及び鍛造工程を順に含む、通常のエレクトロスラグ工程で製造された低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。そのうち、溶解工程及び鍛造工程は、実施例1における溶解工程及び鍛造工程と同じ実施態様を採用し、エレクトロスラグ再溶解工程は以下の実施態様を採用する。
エレクトロスラグ再溶解工程:
表面にバニシされた鋼塊をエレクトロスラグ炉の電極棒として再溶解を行い、再溶解過程においてスラグ材の重量が130kgであり、スラグ材の配合比率は、CaF:Alが70%:30%であり、再溶解の電流は12KAであり、再溶解電圧は、45Vであり、溶融した溶鋼は直径が510mmである結晶器内に滴下して結晶化させ、電極棒が360kg残った場合、それを結晶器における鋼塊の補縮材料として鋼塊の収縮孔に対して補縮処理を行う。
【0086】
溶解が完了した後に鋼塊を離型して室温まで冷却する。
【0087】
次に、エレクトロスラグ再溶解工程で得られた鋼塊は、鍛造工程を経て直径が200mmであり、次に室温まで空冷して直径が200mmの00Cr19Ni10N鋼棒を取得し、その350℃の高温引張強度、350℃の高温降伏強度、室温引張強度、室温降伏強度はいずれもRCCM M3306標準の要求に達せず、鋼材の清浄度が低く、低倍の組織が不均一であり、具体的には、表7及び表8に示すとおりである。
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
比較例2
【0090】
本比較例は、溶解工程、エレクトロスラグ再溶解工程及び鍛造工程を順に含む、通常の鍛造工程で製造された低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。そのうち、溶解工程及びエレクトロスラグ再溶解工程は、実施例1と同じ実施態様を採用し、鍛造工程は以下の実施態様を採用する。
鍛造工程:
特定の鍛造方式で鍛造を行い、均熱処理及び鍛造を含み、前記鍛造は、据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造を含み、そのうち、特定の鍛造方式は、パス変形量が50%であり、パス圧下量が120mmであり、パス加熱温度が1170℃であり、パス変形方式が方形→楕円→円であることを含む。具体的には、以下のようになる。
均熱処理:
該空冷後の2.5トン(Φ510mm)鋼塊を均熱し、均熱の条件は、まず2.3℃/minの昇温速度でそれを1170℃まで加熱し、その後4h保温する。
【0091】
据え込み及び引き抜き鍛造及びラジアル鍛造:
均熱処理後の鋼塊を4500tのプレス機に入れて1回目の据え込み及び引き抜き鍛造を8min行い、最終鍛造温度が850℃であり、直径が530mmであり、圧下量が120mmであり、変形方式が530mm方形-Φ535mm楕円→Φ530mm円である。次に炉戻して1170℃に90min加熱し、さらに4500tのプレス機に入れて2回目の据え込み及び引き抜き鍛造を10min行い、最終鍛造温度が750℃であり、直径が450mmであり、圧下量が120mmであり、変形方式が440mm方形ビレット-Φ455mm楕円→Φ450mm円である。さらに炉戻して1170℃に90min加熱し、さらに4500tのプレス機に入れて1回の引き抜きを15min行い、直径が300mmであり、圧下量が120mmであり、変形量が55%であり、変形方式が310mm方形ビレット-Φ305mm楕円→Φ300mm円である。さらに炉戻して1170℃に90min加熱し、次に1600tのラジアル鍛造機に1回の鍛造を20min行い、最終鍛造温度が850℃であり、鍛造後の直径が200mmであり、次に室温まで空冷して直径が200mmの00Cr19Ni10N鋼棒を取得し、その350℃の高温引張強度、350℃の高温降伏強度、室温引張強度、室温降伏強度がいずれもRCCM M3306標準の要求に達せず、且つ高低倍の組織が不均一であり、具体的には、表9及び表10に示すとおりである。
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
比較例3
【0094】
本比較例は、溶解工程、エレクトロスラグ再溶解工程及び鍛造工程を順に含む、通常の化学成分の制御範囲で製造された低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼棒の製造方法を提供する。そのうち、溶解工程における配合材料ステップは、以下の実施態様を採用する以外に、溶解工程の他のステップ、エレクトロスラグ再溶解工程及び鍛造工程はいずれも実施例1における実施態様を採用する。具体的には、以下のようになる。
溶解工程:
(1)配合材料:低炭素クロム鉄、金属ニッケル、電解マンガン、ケイ素鉄、窒化クロム鉄、廃鋼を、製造しようとする鋼塊がC:0.026%、Si:0.54%、Mn:1.45%、S:0.002%以下、P:0.017%以下、Cr:18.8%、Ni:9.3%、Cu:1.00%以下、Co:0.06%以下、N:0.05%、B:0.0018%以下、Nb+Ta:0.15%以下を含有するように配合し、そのうち、低炭素クロム鉄及び窒化クロム鉄はそれぞれその重量の1/3を予め残す。
【0095】
上記配合材料を用いて溶解、エレクトロスラグ再溶解及び鍛造を行い、最終的に鍛造で直径が200mmであり、次に室温まで空冷して直径が200mmの00Cr19Ni10N鋼棒を取得し、その350℃の高温引張強度、350℃の高温降伏強度、室温引張強度、室温降伏強度はいずれもRCCM M3306標準の要求に達せず、具体的には、表11及び表12に示すとおりである。
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】
上記の分析により、本発明の実施態様を採用によれば、化学成分及び組織が均一に分布し、清浄度が高く、強度が高い低炭素高強度窒素含有のオーステナイト系ステンレス鋼を取得することができる。