(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】圧電スピーカーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240415BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20240415BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20240415BHJP
H04R 31/00 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R7/04
H04R1/40 310
H04R31/00 A
(21)【出願番号】P 2019186354
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018192955
(32)【優先日】2018-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513148657
【氏名又は名称】有限会社ZenTec
(72)【発明者】
【氏名】橘 善平
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-132900(JP,A)
【文献】特開2014-233063(JP,A)
【文献】特開2015-126535(JP,A)
【文献】実開昭55-165595(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
H04R 7/04
H04R 1/40
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコアの両主面にアルミニウム箔シート表層部材を接合したサンドイッチ構造の単一で
曲げ変形を加えない平面のハニカム振動板上の中心から円形圧電素子の直径の1.2倍~2.4倍の距離を直径とする同心円上に少なくとも2個の円形圧電素子の振動中心軸を配置
し、該円形圧電素子を該円形圧電素子の表面がハニカム振動板に接することなく、樹脂ボルト及びナットでハニカム振動板に締結し、前記ハニカム振動板のサンドイッチ構造は前記ハニカムコアの両主面と前記アルミニウム箔シート表層部材の間にホットメルト接着剤を挿入して加熱接合することで、前記ハニカム振動板に応力を残留させたことを特徴とする圧電スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な騒音が混在する大型駅構内や大きな騒音が発生する工事現場、パチンコ球戯場内で、また上空を飛行するドローンから、ドローンの風切り音などの騒音に消されることなく地上で、明瞭で聴き取り易い人の音声を伝達することが出来る圧電スピーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音が大きな環境の中で、騒音に打ち勝って音声を伝えるためには、ワット(W)数の大きなスピーカーを用いて音圧を上昇させる方法や設置するスピーカーの台数を増やし音量を増やす方法、さらにスピーカーにフードを付けて指向性を高める方法などが取られている。またイコライザーにより電子的に音声の周波数を調整して、騒音の中で聴き取り易くする方法などある。
【0003】
しかしながら、一般に普及しているダイナミックタイプ(導電型)スピーカーにおいて、音圧を大きくするため、ボイスコイルに急激に大電流を流すと、スピーカーコーンに加速度による変形を生じたり、ボイスコイルを構成するマグネットや金属部品の重量による慣性のため、スピーカーコーンの反転に遅れを発生し、レスポンスの低下と共に音響が曖昧となる現象も発生する。これらの現象は音響が楽曲の場合は、滑らかで心地良い効果をもたらす利点があるが、人の音声の伝達においては、音声内容が不鮮明で、聴き取り難くなるという課題を生じる。
【0004】
その顕著な例として、防災対策のために各市町村に設置されている大型防災無線スピーカーから、遠方まで案内音声が届くようによう大音響を発しても、その音声が曖昧で聴き取り難いと言われている。また、防災無線スピーカーは、風雨や波など自然環境の騒音により防災案内音声が消されて聴き取り難くなるという課題がある。
【0005】
イコライザーを取り付けて、電子的に中高音域の周波数を強化する方法により、聴き取り易さは多少改善できるが、上記に述べたように、ダイナミックスピーカーのコーン振動板のレスポンスが遅いことや音の減衰時間が長いという根本的な課題があるため、騒音に打ち勝って聴き取り易くする効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、様々な雑音が混在する大型駅構内や大きな騒音を発生する屋外の工事現場、また玉の流れや衝突により大きな騒音が発生するパチンコホールなどにおいて、人の案内音声が聴こえ難いという課題、またTVドラマなどの視聴において、背景の音楽や効果音が大きいため、特に加齢により高音域が聴こえ難くなった視聴者が、セリフ内容が聴き取れず、番組を十分に楽しむことが出来ないという課題も解決できる。
【0008】
また近年、災害対策において、上空から広域にわたって防災警報案内音声を伝えるために、ドローンにダイナミックタイプスピーカーを搭載する方法が検討されているが、飛行するドローンのプロペラの風切り音やモーター音の影響を受けて、警報音声が地上の人々に対して明確に伝わらないという課題も本圧電スピーカーにより解消出来る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は(1)「ハニカムコアの両主面にシート表層部材を接合したサンドイッチ構造のハニカム振動板の中心部に圧電素子の振動中心軸を配置、及び/又はハニカム振動板上の中心から圧電素子の直径の1.2倍~2.4倍の距離を直径とする同心円上の、圧電素子の振動中心軸を配する位置に、少なくとも2個の円形圧電素子の振動中心軸を配置することを特徴とする圧電スピーカー。」
【0010】
ならびに(2)「前記振動板がハニカム構造を有し、ハニカムコアとアルミ箔シートの中間にホットメルト接着シートを挿入し、加熱プレス成型により接合し、冷却時のハニカムコアとアルミ箔シートとの熱収縮率の差により、ハニカム振動板に応力を残留させたことを特徴とする請求項1に記載の圧電スピーカー。」により構成される。
【発明の効果】
【0011】
圧電スピーカーは、薄くて軽量の振動板上に圧電素子を取り付け、その面振動により振動板を共振させ、音響を発する装置である。本発明は、振動板の曲げ剛性や密度などの物理特性とともに、振動板に取り付ける圧電素子の振動中心軸の取り付け位置と圧電素子の個数を調節することにより、中高音域の周波数の個々のピーク波形の数やそのピーク高さを増大させて、騒音の持つ周波数波形を上回る複数のピーク波形を発生させるとともに、人の言葉の音声の中で子音が多く存在する中高音を強化して、人の言葉の音声内容を明瞭にする。また圧電素子が持つ応答性の良さも加わり、騒音の中でも聴き取り易い効果を与える。また、さらに、ハニカムコアの両主面に表層部材を接合したサンドイッチ構造の振動板上に、セラミック圧電素子を取り付ける構造の圧電スピーカーにおいて、クラフト紙やアラミドシートで成型したハニカムコアとアルミ箔など金属箔または強度の優れたガラスエポキシシートなどの表層部材の中間にシート接着剤を挿入後、加熱プレス機によりハニカムコアに貼り付け、冷却時に発生するハニカムコアと金属箔シートとの熱収縮率差による引っ張り応力が内蔵した振動板を用いることにより、更に高い音圧を発生し、中高音域で構成された音声は、減衰が少なく遠方まで到達できる。この振動板の残留応力の効果も加わり、様々な種類の騒音が混在する環境において、本発明の圧電スピーカーが、明瞭で聴き取り易い顕著な特徴を発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】ハニカム振動板の内部応力の有無による周波数特性比較
【
図6】圧電素子の数と取り付け位置を変えたときの周波数特性(1)正方形振動板
【
図7】圧電素子の数と取り付け位置を変えたときの周波数特性(2)円形振動板
【
図8】圧電素子の数と取り付け位置を変えたときの周波数特性(3)長方形振動板
【
図9】圧電素子の数と取り付け位置を変えたときの周波数特性(4)請求項外の配置
【
図10】スピーカーからの距離による音声聴き取り評価
【
図11】ダイナミックタイプ拡声器と圧電スピーカーの周波数特性比較
【
図12】圧電スピーカー装置を搭載した音声伝達用ドローン
【
図13】ドローン単独音と圧電スピーカー音(圧電素子3ヶ)を加えた複合音声特性
【
図14】高度100mからの圧電スピーカーの到達音声測定
【
図15】ダイナミックスピーカーと圧電スピーカーの両方から出力できるTV受像機
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための形態を図面と表を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の圧電スピーカーの全体図である。円形のセラミック圧電素子1の振動中心軸が樹脂ボルトおよびナット2によりハニカム振動板3に固定され、振動板に圧電素子の面振動と曲げ振動を伝え、音声を発生させる。振動板の外周部は上部防振材5および下部防振材4に挟まれ、案内部材7によりスピーカー筐体10に取り付けられる。スピーカー筐体の前面は保護スクリーン6、また後面は音抜き穴9を設けたカバー8が取り付けられた構造となっている。
【0015】
図2は本考案のハニカム振動板の構造を示す。ハニカム構造体はハニカムコア3(b)の両面に、シート表層部材として薄膜のアルミニウムなどの金属箔3(a)を貼り付けたサンドイッチ構造である。このアルミ箔ハニカム構造体は、アルミ箔とハニカム構造体の間に、ホットメルト接着シートを挿入、130度程度に加熱して、クラフト紙で出来たハニカムコアの両面に、均一な張力を保った状態でバランスを保ってプレス圧縮接着する。このハニカム構造体は常温に冷却されると、アルミ箔とハニカムコア間で熱収縮率の差による引張り応力が発生し、内部応力が残留された、うねりや曲がりのない均一に伸長した面を持ったハニカム振動板が製作できる。なお金属箔シート以外にガラス繊維やカーボン繊維強化のエポキシ樹脂シートなども使用できる。
【0016】
振動板に内部応力を残留させる方法として、従来、振動板に機械的に曲げ応力を加えて、曲面形状にする方法が提案されている。しかしながら、曲面に曲げるための圧力機構必要であること、また曲がった振動板は長期間の時間経過で、永久ひずみにより内部応力が緩和され、音響性能が変化することがある。本発明では、振動板を曲げずに、平面の状態で、応力を残留させた平面のハニカム振動板を製造する方法を考案した。
【0017】
図3は、アルミ箔を常温で接着して応力を内蔵していないアルミ箔ハニカム振動板と、熱接着により応力を内蔵させたアルミ箔ハニカム振動板を有するスピーカーの周波数特性グラフを比較したものである。振動板に内部応力が存在する振動板は、内部応力が無い場合と比較して、音域全体にわたり、音圧が高くなる。
【0018】
図4は アルミ箔(46μm)とガラスエポキシシート(50μm)を表層部材として使用し、いずれの表層部材も貼り付けプレス工程で加熱して、冷却時に応力が内蔵した振動板を有するスピーカー振動板とした。周波数特性グラフを比較すると、いずれも高い音圧ピークを発生させるが、アルミ箔を使った振動板を有するスピーカーは金属膜の特徴が加わり、高音域のピークが高く、中高音が出やすい特性を発揮する。
【0019】
本考案において最も強調すべき技術は、振動板に取り付ける圧電素子の個数ならびに圧電素子の振動中心軸の位置を調節することにより、振動板から発生する中高音周波数帯域のピーク数とピーク高さを増減させることが可能となることである。
【0020】
セラミックス圧電素子(ドライバー)は一般に、直径40mm~50mmの円形タイプのものが多い。本発明では、直径50mmのバイモルフ構造の圧電素子を使用した。円形の圧電セラミックスを金属製電極板の両面に配した構造であり、電圧が加わると直径50mmの圧電素子は圧電セラミックスの伸縮により金属電極板と共に曲げ振動を起し、振動中心軸は樹脂ボルトを介して、ハニカム振動板に上下の面振動を伝達し、ハニカム振動板は共振して音を発生する。
【0021】
図5はハニカム振動板に圧電素子の数と取り付け位置を変えた4種のパターンを示す。▲1▼は振動板の中心部に1個、▲2▼は直径50mm圧電素子の1.2倍の直径60mmの円周上に2個、▲3▼は同じく60mmの円周上に3個、▲4▼は圧電素子を中心に1個と圧電素子の直径の2.4倍の120mmの円周上に2個配置したパターンである。以下に正方形と円形、さらに長方形の振動板に圧電素子の振動中心軸の配置したときの周波数特性グラフを説明する。
【0022】
図6は正方形(225mm×225mm)の振動板上に上記4種のパターンの圧電素子配置したときのスピーカー出力音声の周波数特性グラフを示したものである。
▲1▼は圧電素子1個を振動板の中心に取り付けたスピーカーの写真と特性グラフを示す。▲2▼は直径60mmの円周上に2個配置した写真と特性グラフである。▲3▼は直径60mmの円周上に3個配置した写真と特性グラフである。▲4▼は振動板の中心部に1個と直径60mmの円周上に2個の計3個を配置した写真と特性グラフである。これらの周波数特性グラフをみると、▲2▼、▲3▼ならびに▲4▼の周波数特性グラフは、▲1▼と比較して、中高音域においてピーク波形数が多く、かつそのピーク高さが高いことを示している。これは、振動板に取り付ける圧電素子の数を増やし、かつ取り付け位置を選択することにより、ハニカム振動板上に中高音周波数の共振が増加するためと考えられる。
【0023】
図7は円形(直径300mm)の振動板上の圧電素子の数量と振動中心軸の配置を変えた5種のスピーカーの写真と周波数特性グラフを示したものである。
【0024】
図8は長方形(180mm×260mm)の振動板上の圧電素子の数量と振動中心軸の配置のパターンを変えた5種のスピーカーの写真と周波数特性グラフを示したものである。
【0025】
図7および
図8においても
図6と同様に▲2▼、▲3▼、▲4▼ならびに▲5▼の周波数特性グラフは、▲1▼と比較して、音域全体においてピーク数が多く、かつ中高音域でそのピーク高さが高いことを示している。
図6~
図8の結果から以下のことが判明した。
【0026】
振動板上の中心から圧電素子の直径の1.2倍~2.4倍の距離を直径の同心円上に2個以上の圧電素子の振動中心軸を配置、又は中心部に1個と更に上記同心円上に計2個以上の圧電素子を配置した圧電スピーカーは、人の声の周波数を構成している中高音域の波形のピーク高さとそのピーク数が増加することを示している。さらにこれらの中高音域周波数帯でのピーク波形に見られる現象はスピーカーの振動板の形状、すなわち正方形、長方形、円形などの形状や大きさにかかわらず、同様に発生することを示した。
【0027】
図9は請求項1の「・・・ハニカム振動板の中心部に圧電素子の振動中心軸を配置、及び/又はハニカム振動板上の中心から圧電素子の直径の1.2倍~2.4倍の距離を直径とする同心円上の、圧電素子の振動中心軸を配する位置に、少なくとも2個の円形圧電素子の振動中心軸を配置することを特徴とする圧電スピーカー」の範囲外に配置を行った場合の周波数特性グラフを検証したものである。▲1▼は圧電素子を中心部に1個、直径120mmの円周外に1個配置したとき、▲2▼は圧電素子を直径120mmの円周の外に3個配置したとき、▲3▼は中心部に1個、直径120mmの円周の外に2個配置したときのそれぞれの周波数特性グラフを示したものである。いずれも中高音帯域においてピーク波形の高さが低く、明瞭な聴き取り易い音声を発生しなかった。
【0028】
図10は室内騒音が90dBの環境のパチンコホールの中で、スピーカーからの人の案内音声の聞き取り評価を行う様子を示したものである。
【0029】
【表1】
表1はダイナミックタイプスピーカーと圧電素子を中央部に1個を配置した圧電スピーカーならびに直径60mm~120mm同心円内の正三角形頂点に3個を配置した圧電スピーカーから、距離2mと6mの位置で、聴き取り易さの比較を示す。検証の結果、ダイナミックタイプスピーカーに比べて、本考案の圧電スピーカーは、騒音の中でも聴き取り易さが優れていることが判明した。
【0030】
図11は、静寂で広い室内環境において、ダイナミックタイプスピーカーと圧電スピーカーからの音声の周波数特性を比較したグラフである。ダイナミックタイプスピーカーよりも本考案の圧電スピーカーは中高音域において、音圧のピーク波形が多くかつ高いことを示している。
【0031】
図12は音声伝達用ドローンを示す。ドローン機体は本体制御部12とプロペラ13およびモーター14で構成され、圧電スピーカー11は下向きに取り付けられる。この圧電スピーカーは、圧電素子3個を直径60mmの円周上に配置した構造である。
【0032】
図13は音声伝達ドローンを地上5mの高さでホバリング(空中停止)しているドローンから発する、モーター回転とプロペラの風切り音によるドローン単独音と、このドローンに搭載した本発明の圧電スピーカーから案内音声を流したときの複合音声の周波数特性を示したものである。グラフにおいてドローン単独音の波形上に、圧電スピーカーの案内音声の波形が、中間音域と高音域で突出している。5m~10mの低空では、ドローン単独音による騒音が伝わってくるため、スピーカーからの案内音声が明瞭に伝達されるという状況ではなかった。
【0033】
しかし、この音声伝達ドローンの飛行高度を上昇させて行くに従って、モーター音やプロペラの風切り音は、全方位に放射されるために、次第に減衰して行くのに対して、圧電スピーカーからの下向き音声は、圧電スピーカーの指向性が優れていること、ならびに平面振動板の特徴である音声の距離減衰が少ないという特性が加わり、100mの高度を飛行するドローン搭載圧電スピーカーからの案内音声は、ドローンの飛行音に打ち勝って、地上に到達し、その音声内容が明確に聴き取れることが実証テストで確認出来た。
【0034】
図14は100m上空のドローンからの案内音声の聴き取り具合を、地上の測定者が位置を変えて測定する模様を示した図である。
【0035】
【表2】
表2は、高度100mのドローンから、地上に到達する音声の到達状況と聴き取り聞き取り具合を評価した結果を示した表である。この表から、3個の圧電素子を直径60mmの円周上に配置した圧電スピーカーならびに1個を中心部に、2個を直径60mmの同心円上に配置した圧電スピーカーからの音声は、スピーカーの指向角度30度の範囲内で、地上に到達し、強く、明確に聴き取れることが判明した。
【0036】
この実証テストで使用した圧電スピーカーは、筐体寸法が190mm正方形×30mm厚みの平面圧電スピーカーであり、アルミ箔表層材は46μ、ハニカムの厚みは2.5mmでコアサイズが3.2mmのペーパーハニカムを使用した。アンプは、4Wのデジタル圧電アンプを使用し、スピーカー端子電圧は45Vであった。このスピーカー端子電圧を50V以上に大きくすると、音圧がさらに増大して、150m以上の高度で飛行するドローンから、音声明瞭な音声が到達することが判った。
【0037】
図15はTV受像機の内臓のダイナミックスピーカーに圧電スピーカーを追加した回路を示す。ダイナミックスピーカー15と圧電スピーカー16には、それぞれ独立に音量調節調節出力回路17及び18が並列に備えられ、音量調整器19と20により、それぞれの音量を調節することにより、ニュースのアナウンサーの音声やドラマでおいての俳優のセリフが明瞭となり、聴き取り易くなることが確認できた。この理由は、ダイナミックスピーカーのフラットでマイルドな音声に加えて、圧電スピーカーの特徴である、振動板の振動減衰が短いことによる声音の歯切の良さと、中高音域の音圧ピークが大きいため音声の子音部分が明瞭となったためと考えられる。特に加齢により、音声の聴き取り能力が低下してきた高齢者にとって、TVドラマの人の声音が、音楽などの大きな背景音や効果音に負けずに、明瞭に聴こえ、TV視聴が楽しめる効果をもたらすことが確認できた。
【産業上の利用の可能性】
【0038】
以上のように本発明の圧電スピーカーは、様々な騒音の中で、騒音に打ち勝ち、人の音声を明確に伝える手段として、駅構内の案内放送、激しい騒音の中での工事現場やパチンコホール内での音声伝達、また飛行するドローンからの地上への防災警報の伝達、更に家庭内のTV放送など様々な分野において利用が可能であると共に、シンプルで低コストのスピーカーを提供するものである。
【符号の説明】
【0039】
1 セラミック圧電素子
2 樹脂ボルトとナット
3 ハニカム振動板
3(a)アルミ箔
3(b)ペーパーハニカム
4 下部防振材
5 上部防振材
6 保護スクリーン
7 押さえ部材
8 カバー
9 音抜き穴
10 スピーカー筐体
11 スピーカー装置
12 ドローン本体制御部
13 プロペラ
14 モーター
15 ダイナミックスピーカー
16 圧電スピーカー
17 ダイナミックスピーカー用音声調整出力回路
18 圧電スピーカー用音声調整出力回路
19 ダイナミックスピーカー用音量調整器
20 圧電スピーカー用音量調整器