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特許7471571飲料用水素含有水製品の製造方法並びに飲料用水素含有水製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】飲料用水素含有水製品の製造方法並びに飲料用水素含有水製品
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/52
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019215734
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2020092701
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018222877
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233282
【氏名又は名称】株式会社シェフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 純一
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特許第6456011(JP,B1)
【文献】特開2015-113331(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有水を開封可能な容器内に充填し、そして該容器を密封する工程を含む、
飲料用水素含有水製品の製造方法であって、
機能性原料をカプセル内に充填してなる水溶性カプセルを、前記水素含有水を充填する工程の前、中、又は後に、前記開封可能な容器内に投入することを特徴とし、
前記機能性原料は、
アミノ酸類;ポリアミン;保湿性物質;ペプチド及びタンパク質並びにそれらの含有物質;ビタミン類;ビタミン様物質;抗酸化性物質;ミネラル類;糖類;糖アルコール類;合成甘味料;天然甘味料;酸味料;炭水化物;ステアリン酸及びその誘導体;野菜・果実・樹木・植物類並びに植物性エキス;キノコ類;茶類;ハーブ原料並びにハーブエキス原料;フラボノイド類;及び香料からなる群から選択される一種又は二種以上の組み合わせからなる、
飲料用水素含有水製品の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、及びゼラチンからなる群から選択される少なくとも一種を含む材料からなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
開封可能な容器内に、
該容器内に充填されそして密封された水素含有水と、
該水素含有水中に溶存する機能性原料及び水溶性カプセル材料とを含有する、
飲料用水素含有水製品である、
飲料用水素含有水製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用水素含有水製品の製造方法並びに飲料用水素含有水製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水に水素ガスを溶解させた水素含有水(単に水素水ともいう)は、高い還元性を有することから、金属の酸化や食品類の腐敗を抑制する効果があるとされ、また飲用へ転用した場合には様々な健康障害の改善を期待できるとして注目されている。
【0003】
上述の飲用向けの水素溶解水を製造する方法としては、例えばガスボンベからの水素ガスを原水に溶解させたり、或いは水の電気分解により発生した水素ガスを原水に溶解させたりする方法がある(例えば特許文献1)。ただし、単に水素ガスを原水中に供給するだけでは、室温・大気圧下では原水中に溶存している窒素ガス、酸素ガスなどが水素ガスの溶解を邪魔するため、その溶存水素濃度は水素の飽和濃度に遠く及ばない。
また例えば空気を除去した圧力容器内に水素ガスを充填し、該圧力容器内における水素ガスの圧力を2~10気圧に保ったまま、その圧力容器内に原水をシャワー状に散水して水素ガスと接触させることにより、水素ガスを効率よく溶解させる方法が提案されている(特許文献2)。
あるいは、水に高圧で水素ガスを噴射して超微細気泡(所謂“ナノバブル”“マイクロバブル”)を発生させ、これを水に溶解させる方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-254078号公報
【文献】特許第3606466号公報
【文献】特開2011-230055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、より高い溶存水素濃度を実現すべく、種々の水素含有水の製造方法が提案され、そして、主にキャップが取り付けられたストロー付包装容器などに前記方法により得られる水素含有水を充填した飲料用水素含有水製品の提案がなされている。
また近年では、水素含有水にアミノ酸などの機能性原料を配合して機能性の向上を図った水素含有水の提案もなされている。しかしこれら機能性原料の水素含有水への配合の際には、空気との接触が起こり易く、溶存水素濃度が大きく低下することが懸念される。また原料水に機能性原料を配合した後に該原料水への水素の溶解を行った場合、不純物(機能性原料)の存在により所望の溶存水素濃度を実現できない(機能性原料の配合により溶存水素濃度が下がる)、あるいは水素の溶解法によっては装置の汚染や損傷などの問題が生じる虞がある。
加えて、たとえ高濃度の溶存水素濃度を実現した水素含有水を製造できたとしても、この水素含有水を密封可能な容器に充填・密封する間、或いは密封後の容器内において、水素含有水と空気が接触すると空気が水素含有水に溶解して水素含有水中の溶存水素濃度が低下するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、製造した水素含有水を容器内に充填するのと同時に、あるいは充填の前または後に、機能性原料を充填してなる水溶性カプセルを系内に、すなわち容器内に存在させることにより、充填する水素含有
水自体の溶存水素濃度を低下させることなく、水素含有水中に機能性原料を充填してなる水溶性カプセルを存在させることができることを見出した。すなわち水溶性カプセル内に例えば水溶性の機能性原料を充填することで、水素含有水中で水溶性カプセルが溶解すると、機能性原料が水素含有水中に溶けだすこととなり、これにより、充填時の水素含有水の溶存水素濃度を低下させることなく、機能性原料の水素含有水中への配合を実現できることを見出した。そして水溶性のカプセルの形態を採用したことにより、カプセル容量にあわせた機能性原料の所望量の配合、製造装置の汚染の防止、添加したカプセル(さらには充填する機能性原料)の水素含有水への速やかな溶解を同時に実現できることを見出した。
特に本発明にあっては、機能性原料を充填してなる水溶性カプセルの形態にて、水素含有水中に投入・溶解させた態様を採用したことにより、機能性原料を単体にて添加した場合、さらには、水溶性カプセル(或いは水溶性カプセル材料)と機能性原料とを別個に添加した場合と比べて、長期保存後における溶存水素濃度を高い値に維持できることを見出した。
また本発明者は、開封可能な容器、例えばストロー付包装容器などの袋状の容器に、溶存水素濃度を高めた水素含有水と、該水素含有水中に溶存してなる機能性原料を充填した水溶性カプセルとを含有する飲料用水素含有水製品が、長期間保存後における溶存水素濃度をより高い値に維持することができることを見出した。
さらに本発明者らは、機能性原料を充填した水溶性カプセルを水素含有水に溶存させた態様とすることにより、機能性原料由来の良好な風味を引き立たせるとともに、臭みや過苦味といった好ましくない風味については抑制・緩和することができることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、水素含有水を開封可能な容器内に充填し、そして該容器を密封する工程を含む、飲料用水素含有水製品の製造方法であって、機能性原料をカプセル内に充填してなる水溶性カプセルを、前記水素含有水を充填する工程の前、中、又は後に、前記開封可能な容器内に投入することを特徴とする、飲料用水素含有水製品の製造方法に関する。
【0008】
本発明の製造方法において、前記水溶性カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、及びゼラチンからなる群から選択される少なくとも一種を含む材料からなることが好ましい。
【0009】
また本発明の製造方法において、前記機能性原料は、アミノ酸;ポリアミン;保湿性物質;ペプチド及びタンパク質並びにそれらの含有物質;ビタミン類;ビタミン様物質;抗酸化性物質;ミネラル類;糖類;糖アルコール;合成甘味料;天然甘味料;酸味料;炭水化物;ステアリン酸及びその誘導体;野菜・果実・植物類並びに植物性エキス;キノコ類;茶類;ハーブ原料並びにハーブエキス原料;フラボノイド類;及び香料からなる群から選択される一種又は二種以上の組み合わせからなることが好ましい。
また本発明の製造方法により製造された、機能性原料とともに水素含有水が充填された、飲料用水素含有水製品も本発明の対象である。
【0010】
そして、本発明は、開封可能な容器内に、該容器内に充填されそして密封された水素含有水と、該水素含有水中に溶存する機能性原料及び水溶性カプセル材料とを含有する、飲料用水素含有水製品である、飲料用水素含有水製品も対象とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の飲料用水素含有水製品の製造方法は、事前に、例えば機能性原料等を水素含有水に溶解し、機能性原料入りの水素含有水を容器内に充填する方法ではなく、水素含有水を充填する工程の前、中、又は後に、機能性原料を充填してなる水溶性のカプセルの形態にて容器内に投入する方法を採用したことを特徴とする。この方法は、従来為されてきた
機能性原料を水素含有水に直接投入し、混合する混合工程を経ることがないため、該混合工程において懸念される水素含有水と空気との接触を減じることができる。すなわち、高い溶存水素濃度にて製造した水素含有水の溶存水素濃度を低下させることなく、水素含有水中に機能性原料を充填してなる水溶性カプセルを投入し、これを水素含有水中に溶解させることができる。そして水溶性カプセル中に機能性原料を充填してなることで、水溶性カプセルの溶解とともに、カプセル中の機能性原料を水素含有水中に配合(溶解)することができる。
また、水素ガスを溶解する前の原料水に機能性原料等を溶解し、機能性原料入りの水に水素を溶解する従来の方法では、溶質としての機能性原料の存在により、機能性原料を溶解せずに水素ガスを溶解した場合と比べて溶存水素濃度の低下は避けられない。また水素ガスの溶解法によっては、機能性原料の存在による水素溶解装置の汚染や損傷などの問題が生じ得る。
本発明の製造方法によれば、こうした装置の汚染や損傷の懸念を回避でき、且つ、高い溶存水素濃度を有する水素含有水中に、機能性原料を充填してなる水溶性カプセルを投入することができる。そして水溶性カプセル中に機能性原料を充填してなることで、従来問題視された装置の汚染や損傷を回避しつつ、カプセル内の機能性原料を水素含有水に配合することができる。
さらに本発明によれば、“機能性原料を充填”した“水溶性”の“カプセル”の形態を採用したことにより、これを水素含有水に投入することにより、製品に対して一定量の機能性原料の配合を容易とし、またこれまで機能性原料を粉末形態にて投入する場合に起こり得る投入時の飛散といった製造装置の汚染を少なくできる。さらにカプセルの形態は、水素含有水との接触面(すなわち表面積)が大きいことから水素含有水への溶解が速やかに進み、投入した水溶性カプセルの溶け残りが少ない製品を製造することができる。
特に本発明にあっては、機能性原料を充填してなる水溶性カプセルの態様にて、水素含有水中にこれを投入・溶解させることにより、機能性原料を単体にて添加した場合、さらには、水溶性カプセル(或いは水溶性カプセル材料)と機能性原料とを別個に添加した場合と比べて、長期間保存後における酸化還元電位をより低い値に、長期保存後における溶存水素濃度を高い値に維持できる製品を製造することができる。
【0012】
そして本発明の飲料用水素含有水製品は、水素含有水中に溶存する機能性原料及び水溶性カプセル材料とを含有すること、すなわち、機能性原料がカプセル内に充填された水溶性カプセルを水素含有水に溶存させてなる製品であることにより、機能性原料のみを水素含有水に溶存させた製品や、水溶性カプセル或いはそのカプセル材料と機能性原料とを別個に溶解させた製品と比べて、長期間保存後における酸化還元電位をより低い値に、溶存水素濃度をより高い値に維持することができる。
さらに本発明の飲料用水素含有水製品は、機能性原料がカプセル内に充填された水溶性カプセルを水素含有水に溶存させた態様であることにより、機能性原料由来の良好な風味を保持しまた引き立たせつつ、一方、臭みや過度の苦味といった好ましくない風味を抑制・緩和することができ、すなわち風味改善とマスキングの双方の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の製造方法により製造された飲料用水素含有水製品の一形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す飲料用水素含有水製品におけるストローの上端口部周辺Aの拡大図である。
図3図3は、本発明の製造方法により製造された飲料用水素含有水製品に用いるスパウト付ストローを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述したように、これまでにも種々の水素含有水の製造方法が検討されているものの、たとえ高濃度の溶存水素濃度が実現できたとしても、水素含有水の充填・密封・保管中に、水素含有水と空気が接触して水素含有水中の溶存水素濃度が低下するという問題が生じていた。
一方で、近年、健康志向の高まりや消費者の多様な嗜好に応じるべく、機能性原料等を配合した各種飲料が注目され、水素含有水においてもこうした種々の機能性原料を配合した製品への要求が高まりつつある。
しかし、機能性原料の水素含有水への配合の際には空気との接触が起こり易く、溶存水素濃度が大きく低下することが懸念されるとともに、原料水に機能性原料を配合した後に該原料水への水素の溶解を行った場合、不純物(機能性原料)の存在により所望の溶存水素濃度を実現できない(機能性原料の配合により溶存水素濃度が下がる)、あるいは水素の溶解法によっては装置の汚染や損傷などの問題が生じる虞がある。
特に中空糸膜を用いて水素ガスを原料水に溶解させる膜溶解法を選択した場合、先に原料水に機能性原料を配合し、膜溶解法を実施すると、機能性原料により膜の目詰まりが生じ得、膜の劣化による品質の低下や、品質確保のための膜の交換頻度が増えることによる費用の増大も問題となる。さらに中空糸膜の孔などに、機能性原料が洗浄しきれずに残存すると、細菌の増殖リスクが高まることになる。
また、機能性原料には少なからず風味が存在していることから、別種の機能性原料の配合を検討した場合、そして特に機能性原料を配合しない水素含有水の製造に切替を検討した場合には、先に使用した機能性原料に由来する風味等を製造装置や配管内から完全に除去することが必要になる。しかし製造装置等において確実に風味を除去できたと確信するには、相当な労力を必要とする。これは如何なる水素含有水の製法を選択した場合においても付随する問題であり、機能性原料を配合する水素含有水と、原料を配合しない水素含有水と設備を併用することは簡単ではない。特に、嗜好性を高めようとして、甘味料、酸味料、果汁、香料を水素含有水に配合する際、製造品目の切り替えに係る製造装置等からの風味の除去には、相当な困難を伴うことになる。
【0015】
このように、溶存水素濃度を高い値に維持するとともに、機能性原料の配合も実現してなる飲料用水素含有水製品の提供という課題に対し、本発明者らは、容器内に充填した水素含有水中に、機能性原料を充填した水溶性カプセルを溶存させる態様を採用することで、水素含有水の溶存水素濃度の低下を極力抑制することを図ったものである。
すなわち、水素含有水を容器内に充填する前に、あるいは充填中に、さらには充填後に、容器内に機能性原料を充填した水溶性カプセルを投入するという方法により、機能性原料等の配合時に空気と接触することによる水素含有水の溶存水素濃度の低下を極力抑えること図ったものである。また、従来、機能性原料の配合により生じ得た製造装置の汚染や装置の損傷の発生、それによる品質低下や費用の増大、細菌増殖リスクの増加といった問題を生じることなく、機能性原料を充填した水溶性カプセルを水素含有水に投入し、これにより、水溶性カプセル及び機能性原料の水素含有水への溶解を実現したものである。加えて、容器内に機能性原料を投入することで、水素含有水を充填装置に送る配管内や充填機や室内の汚染を防止でき、機能性原料を配合しない水素含有水の製造との兼用も可能になる。
そしてカプセル内に機能性原料を充填した態様にて水素含有水に添加・溶存させたことにより、機能性原料を単体にて添加・溶存させた場合、さらには、水溶性カプセルあるいは水溶性カプセル材料と機能性原料とを別個に添加・溶存させた場合と比べて、長期間保存後における酸化還元電位をより低い値に、長期保存後における溶存水素濃度を高い値に維持できる製品を実現したものである。
またこれらの課題の解決を図った結果、すなわち、本発明の飲料用水素含有水製品において機能性原料がカプセル内に充填された水溶性カプセルを水素含有水に溶存させた態様を採用したことにより、機能性原料由来の良好な風味を引き立たせるとともに、臭みや苦味といった好ましくない風味を抑制することを実現したものである。
【0016】
なおこれまで出願人は種々の実験を実施してきた中で、機能性原料の種類によっては、本発明により、すなわち、水溶性カプセルに機能性原料を充填し、これを水素含有水に投入・溶解した態様によって、香りや味が抑制され、香りや味が感じにくくなる(より無味・無臭に近づく)製品も存在することを確認している。
近年、水だけでなくお茶やジュース等に水素を溶解させた飲料や、グルコサミンや抗酸化物質を配合した水素水など、機能性原料の添加によって栄養的な付加価値や風味の向上を図った水素水・水素含有飲料飲料が上市されている。しかしこうした配合成分は、成分特有の、さらには飲用の妨げにもなるような独特の風味を有するものもあり、香料や調味料(甘味料、酸味料など)を加えて風味の調整がなされることも少なくない。
水素水はその抗酸化効果に着目が集まり、健康飲料としての認識が広まる一方、(茶成分や機能性原料等を含まない)水素水は無味無臭・無色透明であることから、言わば“ミネラルウォーター”のような飲料として消費者に捉えられてきた側面も有する。
そのため、上述の“ミネラルウォーター”としての嗜好を有する消費者の一部には、こうした香料や調味料が添加され、風味の調整が為された水素水は敬遠される傾向にある。水素水に無味無臭とされる成分を配合した場合であっても、成分無添加の水素水とは、味・匂いに少なからず違いが生じる。こうした違和感を低減するあるいは無くすような知見や手段はこれまで開示されておらず、そもそも栄養上の付加価値や風味の改善を図るべく各種成分を添加した水素水飲料において、無添加の水素水との僅かな違和感が飲用の妨げになる可能性について、一切着目はされてこなかった。
こうした中、本発明者らは、機能性原料を充填した水溶性カプセルを水素含有水に添加するという態様により、機能性原料の種類によって、成分無添加の水素含有水と風味がほとんど変わらない(違和感を生じない風味)製品となることを見出している。
【0017】
以下、本発明の飲料用水素含有水製品及び飲料用水素含有水製品の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
<飲料用水素含有水製品>
本発明の飲料用水素含有水製品は、開封可能な容器(単に“容器”とも称する)内に、該容器内に充填されそして密封された水素含有水と、該水素含有水中に溶存する機能性原料及び水溶性カプセル材料から構成される。
本発明において、前記水素含有水中に溶存する機能性原料及び水溶性カプセル材料は、機能性原料がカプセル内に充填された水溶性カプセルを水素含有水に溶存させたものである態様とすることができる。
なお本発明者らは、水溶性カプセルと機能性原料を別個に(カプセル内に充填せずに)水素含有水に溶存させた態様や、水溶性カプセルの原料(例えば後述するプルラン等)と機能性原料とを水素含有水に溶存させた態様についても検討を為し、これらの態様であっても種々の製造条件等によって前述の効果を得られ得ることを確認している。
【0019】
[水溶性カプセル]
上記水溶性カプセルは、特に限定されず、本発明では、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、及びゼラチン(豚ゼラチン、魚ゼラチン)からなる群から選択される少なくとも一種を含む材料からなる水溶性カプセルを採用することが好ましい。これらHPMC等は、通常、水溶性カプセルを構成する主たる成分として、例えばこれらを80質量%以上の割合にて、使用されている。
これら水溶性カプセルは、カプセル材料(HPMC、プルラン、ゼラチン(豚ゼラチン、魚ゼラチン))によって溶解挙動や風味等に特徴があるため、組み合わせる機能性原料の種類や、製造方法の選択等を考慮し、採用するカプセルを選択すればよい。例えば、ゼリー飲料のように常温で小量であってもゲル状物質を必要とする場合などには、豚もしくは魚ゼラチンを選択の候補とすることが考えられる。後述する殺菌工程が不要となる製法
を選択し得る場合、製品の保管時や飲用時に高温環境下に晒されないことが予想される場合などには、プルランやHPMCを選択の候補とすることが考えられる。また、ゲル化は考慮せず、殺菌工程を経て製造され、一般的な飲用を想定するのであれば、プルランを選択の候補とすることが考えられる。なお、本発明者らは、種々の水溶性カプセルを用いて試験を実施し、カプセルの種類によって溶存水素濃度の長期安定性に大きな差を生じないことを確認している。
【0020】
なお、従来より、機能性原料等の配合において、これらは種々の形状を採用し得、例えば粉末状や、あるいは塊状、例えばフレーク状、粒状、板状、球状、楕円体状、あるいは中空の球状・楕円体状などの種々の形状が想定される。
但し、実際の製造工程では、機能性原料等を始めとする各種配合物の飲料製品(例えば飲料用水素含有水製品)に対して一定量の投入(配合)を実現すること、投入のし易さ、投入中の飛散や水素含有水の充填中に想定される各種配合物の溢れ出し、そして溢れ出した機能性原料等による装置の汚染等を考慮する必要がある。このため、溶解性の高さに優れるとみられる粉末状であるよりは、品質安定性や操作性の観点からは、ある程度塊状の形態を為していることが好ましいと言える。
一方で、充填後の加熱殺菌工程により機能性原料等を飲料(例えば水素含有水)への溶解を促進させるべく、機能性原料等を始めとする配合物の飲料(例えば水素含有水)との接触面(すなわち表面積)は大きいことが好ましく、例えばフレーク状や、中空の球状又は楕円体状といった形状が好ましいといえる。
【0021】
これらを考慮し、本発明にあっては、機能性原料を水溶性の薄層容器に充填すること、すなわち、薄層かつ中空の構成を有する形状を形成してなる水溶性カプセル(空カプセル)の形状の採用に至った。すなわち、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、及びゼラチンからなる群から選択される少なくとも一種を主原料とし、例えばこれらを80質量%以上にて含む、水溶性カプセルの形態とし、これに後述する機能性原料を充填し、容器内に投入、水素含有水に溶存させた態様とすることを見出した。
【0022】
上記水溶性カプセルの形状と為すために、該水溶性カプセルは、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、ゼラチン以外の食品又は食品添加物を含みて構成されていてよい。この場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン又はゼラチン等の主成分と、その他の食品又は食品添加物の総質量(すなわち水溶性カプセルを構成する全成分の合計質量)に対して、その他の食品又は食品添加物の総量は例えば最大で20質量%未満(0~20質量%未満)の割合にて使用することができる
前記食品又は食品添加物としては、例えば水、塩化カリウム、離型剤(植物油、レシチン等)、表面処理剤(タルク、ステアリン酸カルシウム等)、増粘多糖類(カラギーナン、ジェランガム等)などをはじめ、公知のものを使用でき、これらは水溶性であることが好ましい。
なお本発明において、水溶性カプセル材料とは、上記の主原料(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ゼラチン)と、上記の食品又は食品添加物が含まれる。
【0023】
上記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、ゼラチンを主原料とする各種カプセルとしては、たとえばカプスゲル・ジャパン(株)製、クオリカプス(株)製の市販のカプセル(空カプセル)を採用することができる。
水溶性カプセルは、例えば水素含有水200mLに対して、重量換算にて5mg~200mgの割合で、例えば10mg~200mg、20mg~200mg、30mg~200mg、35mg~100mg、40mg~90mg、40mg~80mgにて、あるいは100mg~200mg、100mg~190mg、100mg~180mg、100
mg~150mgにて、存在してなることが好ましい。
【0024】
水溶性カプセル、好適にはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、プルラン、及びゼラチンからなる群から選択される少なくとも一種を含む水溶性カプセルは、常温(20℃±5℃)程度の温度で時間の経過とともに水素含有水に溶解し得るが、水素含有水の充填後、該包装容器を密封し、後述する加熱殺菌工程を経ることで、製品の殺菌と同時に水素含有水への前記水溶性カプセルの溶解がさらに促進され得る。なお、水溶性カプセルは、高温(例えば85℃で30分間程度の加熱(殺菌))下において、水素含有水とゲルを形成する場合があるが、その後常温にて保管することにより、該ゲルは溶解して液状(水溶性カプセルが溶解した水素含有水)となる。
【0025】
[機能性原料]
上記機能性原料は特に限定されず、従来の飲料等において使用されてきた各種の原料を用いることができる。例えば、アミノ酸;ポリアミン;保湿性物質;ペプチド及びタンパク質並びにそれらの含有物質;ビタミン類;ビタミン様物質;抗酸化性物質;ミネラル類;糖類;糖アルコール;合成甘味料;天然甘味料;酸味料;炭水化物;ステアリン酸及びその誘導体;野菜・果実・植物類並びに植物性エキス;キノコ類;茶類;ハーブ原料並びにハーブエキス原料;フラボノイド類;香料等が挙げられ、これらは一種を単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお上記の分類は本開示における便宜上のものであって、これら分類に限定されるものではない。
【0026】
以下、機能性原料の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
・アミノ酸類:アラニン、トリプトファン、リシン、メチオニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスジチン、テアニン、シトルリン等
・ポリアミン:プトレシン、スペルミン、スペルミジン等
・保湿性物質:グルコサミン(アミノ糖)、セラミド(スフィンゴ脂質)、ヒアルロン酸(ムコ多糖)等
・ペプチド及びタンパク質並びにそれらの含有物質:ペプチド、エラスチン、エラスチンペプチド(例えば、カツオエラスチン)、シルクペプチド(例えば、エディブルシルク)、コラーゲン(タンパク質)、ツバメ巣(例えば、コロカリア(登録商標)なども含む)等
・ビタミン類:ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12、パントテン酸、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンCナトリウム(アスコルビン酸ナトリウム)、並びにこれらの誘導体等
・ビタミン様物質:ヘスペリジン、L-カルニチン、L-カルニチン酒石酸塩、L-カルニチンフマル酸等
・抗酸化性物質:ピロロキノリンキノン(PQQ)(補酵素)、低分子ポリフェノール(例えばオリゴノール(登録商標))、ポリフェノール、コエンザイムQ10
・ミネラル類:マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄等
・糖類:グルコース(ブドウ糖)、リボース、フルクトース(果糖)、アラビノース等の単糖類;スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、トレハロース等の二糖類;オリゴ糖等
・糖アルコール類:エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等
・合成甘味料:アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等
・天然甘味料:ステビア、メープルシロップ、蜂蜜、果糖等
・酸味料:酢酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸等
・炭水化物:デキストリン、難消化デキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、セルロース、並びにこれらの誘導体等
・ステアリン酸及びその誘導体:ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等・野菜・果実・樹木・植物類(根、茎、葉、花、種子等の植物の器官、樹皮等の組織、実等の構造など)(粉末、液状物、果汁、抽出エキス、果汁エキスなどを含む)並びに植物性エキス:トマト、ホウレンソウ、レッドスピナッチ、長命草(ボタンボウフウ)、ヒハツ、サクラ、オリーブ、バラ、ブドウ、リンゴ、オレンジ、マンゴー、キャッツクロー、マカ、カムカム、ブナ(オーク)、ヒマワリ、ベルガモット、甘草、青汁原料、大麦若葉、小麦若葉、ケール、クワ、桑の実、明日葉、スーパーフード、スピルリナ、マカ、クコ、クコの実、カカオ、チアシード、ココナッツ、アサイー、ブロッコリー、ブロッコリースーパースプラウト、麻、麻の実等、並びにこれらの種子、新芽(スプラウト)、エキス等
・キノコ類:チャーガ(カバノアナタケ)、アガリクス、まいたけ、ハナビラタケ、ヤマブシタケ等並びにこれらのエキス等
・茶類(粉末、液状物、抽出エキスなどを含む):茶、煎茶、ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶、玄米茶、どくだみ茶等、並びにこれらエキス等
・ハーブ原料並びにハーブエキス原料:カミツレ、カモミール、ボダイジュ、レモングラス、レモンバーム、ローズバッツ、ローズマリー、ドクダミ、パロアッス、サンザシ、セイヨウサンザシ等
・フラボノイド類:ルチン、カテキン、ケルセチン等
・香料等。
【0027】
機能性原料は、その溶解性や、風味等の機能を考慮して、その配合量を適宜決定でき、例えば水素含有水1Lあたり1mg乃至10gにて配合することができる。
機能性原料は、水溶性カプセルの大きさに応じてその配合量を変更でき、すなわち機能性原料を大量に配合することを意図した場合には、複数の水溶性カプセルに所望量の機能性原料を分割して充填すればよい。
【0028】
なお、機能性原料には、原料工場での加工特性や加工しやすさを考慮し、デンプン、蜂蜜、デキストリン・微粒二酸化ケイ素・ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム・結晶セルロース等の賦形剤や、溶解性や分散性を高めることを目的として、乳化剤が配合されていることがあり、これらも水溶性カプセルに一緒に充填され、水素含有水に溶存されていてもよい。
また上記の賦形剤等は、機能性原料を水溶性カプセルに充填する際、別途水溶性カプセルに充填されてもよい。
したがって本発明の飲料用水素含有水製品において、上記賦形剤や乳化剤が水素含有水に含有されていてもよい。
なお上記の賦形剤や乳化剤の配合量(1カプセルあたりの含有率)は特に限定されず、カプセル容量、機能性原料の種類、機能性原料の配合量等によって適宜調整され得る。
例えば微粒二酸化ケイ素の場合、例えば、カプセルに充填する機能性原料の合計量に対して0.05質量%~2.0質量%程度とすることができる。なおデキストリンも一緒に配合する場合、この時の“機能性原料の合計量”にはデキストリンの配合量もカウントすることができる。
【0029】
本発明によれば、上述したように充填時の水素含有水の溶存水素濃度を低下させることなく、機能性原料の水素含有水中への配合を実現する。
また機能性原料を充填してなる水溶性カプセルの態様にて、機能性原料を水素含有水に配合したことにより、得られた水素含有水製品において、機能性原料を単体にて配合した場合、さらには、水溶性カプセル或いは水溶性カプセル材料と機能性原料とを別個に配当した場合と比べても、長期間保存後における酸化還元電位をより低い値に、長期保存後における溶存水素濃度を高い値に維持できる製品となる。
さらに、上記の態様を採用したことにより、機能性原料由来の良好な風味を保持しまた
引き立たせつつ、一方、臭みや過度の苦味といった望ましくないとされる風味については抑制・緩和することができ、風味改善とマスキングの双方の効果を実現した製品となる。
さらに機能性原料の種類によっては、機能性原料を添加したことによる溶存水素濃度の低下を抑制することにも繋がり得、酸化還元電位及び溶存水素濃度の増加を抑制できる。
【0030】
なお、前述したように、機能性原料を充填した水溶性カプセルを水素含有水に添加するという態様により、機能性原料の種類によっては、香りや味が抑制され、香りや味が感じにくくなり、成分無添加の水素含有水と風味がほとんど変わらない(違和感を生じない風味)製品となることを見出している。
また、本発明の態様により、機能性原料の組み合わせによっては、機能性原料を1種添加した場合と比べて、風味が向上したり、美味しさが増したりするなどの効果も確認している。
一方、水溶性カプセルに香料を充填し、これを水素含有水に溶存させた場合には、香料によっては特有の化学的な匂いが軽減され、自然な匂いに近づくなど、香りの質が向上する効果を確認している。
甘味料については、甘味が高まり配合量を抑えられる効果、逆に甘味が程よく抑えられる効果、飲食物全体の美味しさが向上する効果など、甘味料の種類によって様々な効果が得られることを確認している。
また酸味料についても、酸味の強弱への効果、マスキング効果、苦みの低減効果、飲食物全体の美味しさが向上する効果など、酸味料の種類によって様々な効果が得られることを確認している。
このように、本発明にあっては、機能性原料を充填した水溶性カプセルを水素含有水に添加するという態様により、機能性原料の種類によって原料が有する風味が強められる場合と反対に弱められる場合があるため、製品開発のコンセプトや目的、消費者の嗜好等によって、機能性原料を適宜選択し実験することで、風味の強弱を確認すればよい。
【0031】
<飲料用水素含有水製品の製造方法>
本発明は、水素含有水を開封可能な容器(単に“容器”とも称する)内に充填し、そして該容器を密封する工程を含む、飲料用水素含有水製品の製造方法であって、機能性原料をカプセル内に充填してなる水溶性カプセルを、前記水素含有水を充填する工程の前、中、又は後に、前記開封可能な容器内に投入することを特徴とする、飲料用水素含有水製品の製造方法を対象とする。
水溶性カプセル並びに機能性原料としては、<飲料用水素含有水製品>にて記載のものを挙げることができる。
【0032】
[水素含有水の製造方法]
本発明の飲料用水素含有水製品の製造に使用する水素含有水の種類、すなわちその製造方法は特に限定されず、例えば、ガスボンベから供給される水素ガスを原水に溶解させたバブリング法、空気を除去した圧力容器内に水素ガスを充填し、該圧力容器内における水素ガスの圧力を例えば2~10気圧に保ったまま、その圧力容器内に原水をシャワー状に散水して水素ガスと接触させることにより水素ガスを原水に溶解させる加圧法、水の電気分解により発生した水素ガスを溶解させる電解法、或いは中空糸膜を用いた膜溶解法など、種々の方法によって得たものを用いることができる。
中でも、原料となる水から中空糸膜を通じて残存ガスを脱気し、次いで得られた脱気水及び加圧された水素ガスをガス透過膜モジュールに導入して水素ガスを脱気水に溶解させる膜溶解法を用いて製造した水素含有水が、溶存水素濃度をより効率的に高めることができるため好ましい(例えば本発明者らが為した先の特許出願:特許第4551964号明細書)。そして前述の方法により製造した水素含有水を容器内に充填すること、とりわけ加圧充填することにより、効率的に高めた溶存水素濃度を高い値に維持することにつながるため好ましい(例えば本発明者らが為した先の特許出願:特許第6052948号明細
書)。
【0033】
本発明の製造方法は、前述の通り、水素含有水を開封可能な容器内に充填し、そして該容器を密封する工程を含み、また、機能性原料をカプセル内に充填してなる水溶性カプセルを、前記水素含有水を充填する工程の前、中、又は後に、前記開封可能な容器内に投入することを含む限り、特にその方法や手順、そして製造装置について限定されることはない。
例えば本発明の飲料用水素含有水製品の製造方法として、上記の膜溶解法を用いて水素含有水を製造し、これを容器に充填して製品とする、以下の(A)乃至(E)を経る方法を好適に採用し得る。この場合、“水素含有水を開封可能な容器内に充填し、そして該容器を密封する工程”は下記(C)及び(D)工程に該当する。
(A)脱気装置において、供給された原料の浄化水を中空糸膜を通じて脱気し、得られた脱気水を水素溶解装置に送る脱気工程と、
(B)前記水素溶解装置において、供給された脱気水に加圧水素ガスを中空糸膜を通じて溶解し、得られた水素含有水を充填装置に送る水素溶解工程と、
(C)前記充填装置において、供給された水素含有水を(例:ストロー付包装)容器にその注入口より充填する充填工程と、
(D)水素含有水が充填された(ストロー付包装)容器の注入口を密封装置にて密封する密封工程と、
(E)前記密封された容器を加熱処理する殺菌工程。
【0034】
中でも好適な態様において、前記(C)工程における水素含有水を充填する工程が、加圧充填にてなされることが好ましく、そして効率的な加圧充填を実現するべく、下記の構成を更に備えてなることが好ましい。
すなわち、前記脱気工程(A)において脱気装置に供給される浄化水から前記充填工程(C)において容器に注入される水素含有水までの水流路には、圧力ポンプの運転によって所定の圧力(後述する水流路に加える圧力に関する記載を参照)が負荷され、これにより、圧力が負荷された水素含有水が前記充填装置に供給されることが望ましい。
要するに、好適な態様において、上記脱気装置(a)に供給される浄化水から、充填装置(c)にて容器に注入される水素含有水までの水流路及び各装置[脱気装置(a)、水素溶解装置(b)、充填装置(c)]に、所定の圧力を付加できる圧力ポンプとを少なくとも備える製造装置にて製造することが望ましい。
また好適な態様において、前記充填工程(C)において、水素溶解工程(B)で得られた水素含有水を容器内に加圧充填するべく、
1)軸弁が前記充填装置の充填口を閉じ、そして、前記水素溶解工程(B)からの圧力が負荷された水素含有水が該充填口に接する空洞内に供給された状態とする準備段階と、
2)そして前記容器の注入口を該充填口と接続し、続いて前記軸弁に設けられた気体路を通じて気体減圧手段により、前記容器の内部の気体を除去する脱気段階と、
3)その後、前記気体路を閉じ、そして前記軸弁が前記充填口を開き、圧力が負荷された水素含有水を前記容器内に直接注入する注入段階と、
4)次いで前記軸弁が前記充填口を閉じた後、前記気体路を開き、気体加圧手段により前記気体路を通じて加圧空気を前記空洞内に導入することにより、充填装置内に残る水素含有水を前記容器内に排出する排出段階とを含み、そして、
5)前記注入口と前記充填口との接続を解いたとき、直ちに前記密封工程(D)に移行する工程を備えてなる装置を使用することが好適である。
以下、(A)乃至(E)工程及び各工程に使用する装置を説明する。
【0035】
<脱気工程(A)及び脱気装置(a)>
本工程は、供給された原料の浄化水を脱気し、得られた脱気水を(B)水素溶解工程における(b)水素溶解装置に送る工程である。
本工程で使用される脱気装置(a)は、供給された原料の浄化水を中空糸膜を通じて脱気する装置である。
前記脱気装置(a)は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガス等の溶存気体の脱気を行うことができれば特に制限されず、例えば真空脱気装置や、中空糸膜モジュールを備えた脱気装置を用いることができるが、微量に溶存する気体を効率よく脱気することができるため、中空糸膜モジュールを備えた脱気装置を用いることが好ましい。
【0036】
該中空糸膜モジュールは、通常数多くの中空糸膜を束状にそして膜間に適当なスペースを設けて配置されてなり、そして中空糸膜によって水室と気体室とに区画され、水室に前記浄化水を通過させ、気体室を減圧することにより、水室に流れる溶存気体を脱気する。
また、中空糸膜モジュールは、2つ以上並列使用してもよく、特に2つ以上の中空糸膜モジュールを直列して使用することにより、微量に溶存する気体をより効率よく脱気することができる。
【0037】
また好適な態様において、前述したとおり、本発明で使用し得る製造装置では、脱気装置に浄化水を供給する水流路に圧力が負荷されることが想定されるため、本装置で用いる中空糸膜には高い耐圧性能が求められるが、中空糸膜はそのような耐圧性能があれば、その種類は特に制限は無く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリジメチルシロキサン(シリコーンゴムの形態も含む)、ポリカーボネート-ポリジメチルシロキサンブロック共重合体、ポリビニルフェノール-ポリジメチルシロキサン-ポリスルホンブロック共重合体、ポリ(4-メチルペンテン-1-)、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキシド)、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子膜を用いることができる。
なお、本製造方法では、好適な態様において、浄化水を脱気装置に供給する水流路に高い圧力が負荷されることが想定されるため、本装置で用いる中空糸膜は、水流路に低い圧力が負荷されている従来技術に比べて、中空糸膜の消耗が早くなるおそれがあるので、より耐圧性に優れたグレードのものを採用するのが望ましい。
【0038】
なお、脱気効率を高めるために浄化水の脱気を加温下で実施してもよく、その場合には、その後の水素溶解の効率を上げるために、脱気後に水素溶解装置に送る際により低温に、少なくとも室温(25℃前後)以下にまで冷却することが求められる。
【0039】
なお、本脱気装置(a)で使用する浄化水は、例えば浄化装置において原料となる水をろ過して得ることができる。
原料となる水は、飲用に適した水源から供給されたものであれば特に制限は無く、水道水(水道事業の用に供する水道、専用水道若しくは簡易専用水道により供給される水)や地下水、井戸水、湧水等を挙げることができ、また、純水(イオン交換水)等を使用してもよい。
【0040】
前記浄化装置は、通常、活性炭ろ過装置と膜ろ過装置を備えてなる。
前記活性炭ろ過装置により原料となる水のカビ臭、トリハロメタンの除去や、脱塩素処理などを行う。また安全フィルタろ過装置によって、浮遊物(活性炭などを含む)や、大腸菌などの細菌、クリプトスポリジウムなどの病原性原虫などを除去することも可能である。
膜ろ過装置に使用可能な膜としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノフィルター膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)が挙げられるが、操作性や、飲用とした場合に味の決め手となるミネラル成分の残存性を考慮すると、MF膜を用いることがもっとも望ましい。NF膜やRO膜を用いたとき、ナトリウムイオンやカリウムイオン等の原水に溶存するミネラル成分が除去されやすくなるため、飲用に適した水とするにはこれらミネラル成分の残存率を調整するとか、あるいは新たに添加するなどの必要が後工程で
生じる場合がある。しかも、その場合、操作が煩雑になり好ましくない。
なお、NF膜などの1μm以下程度孔径を有する膜を使用した膜ろ過装置を用いる場合には、細菌類を除去できる可能性があり、この場合、膜ろ過後の各工程における水流路(配管)を清潔に保ち、また、水素含有水を充填する容器内を殺菌することができ、食品衛生上の問題が解決できれば、充填密封後の(E)加熱処理を行う殺菌工程を行わずとも、水素含有水製品を製造できる可能性がある。この場合、後述する殺菌工程における加熱処理によって形成される水素ガス雰囲気は、製品製造後の時間の経過とともに、徐々に飽和濃度を超える水素が気化することにより、形成される。
【0041】
<水素溶解工程(B)及び水素溶解装置(b)>
本工程は、前記(a)脱気装置にて得られ、(b)水素溶解装置に供給された脱気水に加圧水素ガスを溶解し、得られた水素含有水を充填装置(c)に送る工程である。
本工程で使用される水素溶解装置(b)は、前記工程の脱気装置(a)より供給された脱気水に加圧水素ガスを中空糸膜を通じて溶解させる装置である。
前記水素溶解装置(b)としては、単位時間、単位スペース当りの水素ガス溶解量が大きく、水素ガスの溶解効率を高めることが容易であることから、中空糸膜モジュールを備えた水素溶解装置を用いる。
【0042】
前記中空糸膜モジュールは、通常数多くの中空糸膜を束状にそして膜間に適当なスペースを設けて配置されてなり、そして中空糸膜によって水室と気体室とに区画され、水室に前記脱気水を通過させ、気体室に水素ガスを供給することにより、水室に流れる脱気水に水素ガスを溶解させる。
また、中空糸膜モジュールは、2つ以上を併用してもよい。
好適な態様において、本発明で使用し得る製造装置では、脱気水を水素溶解装置に供給する水流路に圧力が負荷されることが想定されるため、本装置で用いる中空糸膜には高い耐圧性能が求められるが、中空糸膜はそのような高い耐圧性能があれば、その種類は特に制限は無く、本装置で使用する中空糸膜としては、前述の脱気装置に使用する中空糸膜として挙げた高分子膜を用いることができる。
【0043】
水素ガスの供給方法には特に制限は無く、例えば市販の高純度水素ガスボンベや水の電気分解などで得られる水素ガスに圧力をかけて中空糸膜モジュールの気体室に供給する。ここで水素ガスに負荷させる圧力としては、例えば0.1MPa乃至0.5MPa、つまり大気圧(約0.1MPa)に対して更に加える圧力として0.1MPa乃至0.5MPaである。水素ガスに圧力を負荷させることにより、溶存水素濃度をより高めることができる。
【0044】
なお好適な態様において、本発明で使用し得る製造装置では、脱気水を水素溶解装置(b)に供給する水流路に高い圧力が負荷されることが想定される。このため、水流路に低い圧力が負荷されている従来技術に比べて、本装置で用いる中空糸膜は中空糸膜の消耗が早くなるおそれがあるので、該中空糸膜は、より耐圧性に優れたグレードのものを採用するのが望ましい。
【0045】
前述したとおり、好適な態様において、本発明で採用し得る製造装置(製造工程)では、前記脱気装置(a)に供給される浄化水から後述する充填装置(c)において容器に注入される水素含有水までの水流路に、圧力を負荷することができる圧力ポンプを備えていることが好適である。圧力ポンプを備えることにより、従来に比して相当に高い圧力が負荷された、溶存水素濃度が高い水素含有水を、水流路を通じて充填装置まで給送することができる。
前記圧力ポンプは、水流路(配管)に圧力を負荷することができるものであれば特に制限されず、公知の圧力ポンプを使用することができる。
【0046】
また、上記の好適な態様における製造方法において、水流路に付加(負荷)された圧力を維持するべく、前記圧力ポンプにより圧力が負荷された後の水流路(すなわち、前記脱気装置(a)へ向かう水流路)と、前記圧力ポンプにより圧力が負荷される前の水流路とを連通するループ流路が設けてなることが好ましい。
前記ループ流路にはリリーフ弁が接続され得る。該リリーフ弁は、圧力ポンプにより圧力が負荷された後の水流路における水圧が、一定の基準圧力を超えたときには、該ループ流路を開くように機能し、該水圧が一定の基準より低い間は該ループ流路を閉じるように機能する。すなわち、該リリーフ弁の開閉によって圧力ポンプとループ流路との間の水循環を随時行うことにより、前記水圧を基準圧力以下に維持する役割を担う。
前記基準圧力としては、前記中空糸膜の消耗や各装置の耐圧性能などの観点から、例えば0.1MPa乃至0.5MPa、好適には0.15MPa乃至0.5MPaが適用され、好ましくは、例えば0.15MPa乃至0.4MPaであり、例えば0.15MPa乃至0.3MPaであり、例えば0.2MPa乃至0.4MPaである。すなわち、水流路には、大気圧(約0.1MPa)に対して更に加える圧力(負荷圧力)として、0.1MPa乃至0.5MPaの圧力、例えば0.15MPa乃至0.5MPaの圧力が負荷される。
【0047】
本発明で使用し得る製造装置には、好適な態様において、後述する充填装置(c)より前の水流路に、例えば前記水素溶解装置(b)と充填装置(c)との間の水流路に、オリフィスを備えてなることが好ましい。前記オリフィスは、該充填装置(c)に供給されることとなる、前記圧力ポンプにより基準圧力が負荷された水素含有水の流量を、一定の基準流量以下に制限する役割を担う。水素含有水の容器への注入開始とともに水流路における水圧は低下するが、オリフィスがない場合と比べて、オリフィスを設けることにより圧力の低下量を抑えることができ、充填装置への水素含有水の安定的な供給につながる。このようにオリフィスは水素含有水の容器への充填を円滑且つ安全に行う役割をも担う。
【0048】
<充填工程(C)及び充填装置(c)>
本工程は、前記(b)水素溶解装置にて得られ、(c)充填装置に供給された水素含有水を容器に充填する工程である。
本工程で使用される充填装置は、前記工程の水素溶解装置により供給された水素含有水を前述の容器に、その注入口(例えば上端口部)より充填する装置である。
本工程は、好適には加圧充填によって実施され、該加圧充填を効率的に実施するべく、充填装置(c)は以下の構成を有してなることが好ましい。
【0049】
すなわち、好適な態様において、本充填装置(c)は、装置本体内に、充填口に接する空洞を有し、且つ、軸弁をその先端部が該充填口に臨むように往復動可能に備えてなることが好ましい。また前記空洞は水素溶解装置(b)からの水流路と連通しており、そして該軸弁の往復動により、前記充填口と接続された容器の注入口を水素溶解装置(b)からの水流路と連通し、そしてその連通を遮断することができる弁機構のものとなっていることが好ましい。
またこのとき、装置本体内の前記空洞は、軸弁内部の又は軸弁外面に沿う気体路を経て、気体減圧手段及び気体加圧手段と接続される。前記気体路は前記軸弁の往復動により開閉される構造、すなわち、該軸弁の往復動により、該気体路と該空洞が連通する/連通を遮断する構造となっていることが好ましい。
上記軸弁は、一定の周期で往復動するように設定され、これにより、前記充填口は一定の周期で繰り返し開閉されることとなる。なおこの軸弁の一定の周期での往復動に連動して、上記気体路も一定の周期で繰り返し開閉される。
そして、上記充填口が開いている間、水素含有水の容器への注入が為され、充填装置における水素含有水の充填量は、軸弁の往復動の周期(充填口の開閉)と、オリフィスによ
る基準流量の設定(オリフィス径)により、設定することができる。
【0050】
なお前述したように、本発明の製造方法にあっては、水素含有水を容器内に充填するのと同時に、あるいは充填の前後に、機能性原料が充填された水溶性カプセルを、前記開封可能な容器内に投入することを特徴とする。
水溶性カプセルの容器内への投入は、後述するストロー付包装容器又はスパウト付包装容器の場合にはその注入口から、また(スパウト付ストローやスパウトのない)袋状容器体からなる包装容器、あるいは、金属缶(ボトル缶やイージーオープン缶)の場合にはその上部開口部から、実施すればよい。
【0051】
<密封工程(D)及び密封装置(d)>
本工程は、前記(c)充填装置にて水素含有水が充填された容器の注入口を(d)密封装置にて密封する工程である。
そして本工程で使用される密封装置は、水素含有水の充填が完了した(ストロー付包装)容器の注入口を密封する装置である。
本装置は、充填装置から送られた(ストロー付包装)容器の注入口を直ちに密封することができるものであれば特に制限されず、公知の密封装置を使用することができる。
【0052】
<殺菌工程(E)及び加熱殺菌装置(e)>
本工程は、前記(D)密封工程が終了した後、密封が完了した水素含有水入り容器を適宜加熱殺菌装置に送り、加熱殺菌する工程である。本工程を経て最終製品である飲料用水素含有水製品が完成する。
加熱殺菌装置としては、例えば、加熱蒸気殺菌装置を使用することができ、殺菌時の加熱温度及び加熱時間は、F値(一定温度で一定数の特定細菌胞子、または細菌を死滅させるのに要する加熱温度(分))や製品品質を勘案して適宜決定することが望ましい。例えば、加熱温度及び加熱時間は65~98℃、1分間乃至3時間であり、例えば75~93℃、2分間~120分間、また80~90℃、5分間~90分間、あるいは82~88℃、8分間~60分間、もしくは83~86℃、10分間~50分間、そして例えば85℃で30分間という加熱温度及び加熱時間が採用される。
なお、加熱殺菌された最終製品である飲料用水素含有水製品は、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)に定める規格を満たすものであり、例えば[D.各条][清涼飲料水][1.清涼飲料水の成分規格][(1)一般規格]に定めるように大腸菌群が陰性であることを満たすものである。また、消費者により安心感をもって飲料用水素含有水製品を受け入れてもらい易いという観点から、殺菌に関する製品規格として一般細菌を指標とする場合もある。例えば水道法第4条の規定に基づく「水質基準に関する省令」で規定する水質基準において、項目[一般細菌]は、基準[1mLの検水で形成される集落数が100以下]となっており、本発明の飲料用水素含有水製品も当該基準を満たすものである。
【0053】
なお飲料用の水素含有水製品は、食品衛生上の観点から、水素含有水を保存容器に充填・密封した後、上記の殺菌のための加熱処理を経る必要がある。飽和水素濃度は温度上昇とともに低下するため、この加熱処理によって容器内部の水素含有水の温度が上昇するに伴い、水素含有水に溶存していた水素が溶存状態を保てず、飽和水素濃度以上の水素は強制的に気化することとなる。例えばストロー付包装容器を用いた場合、通常、容器の上部となるキャップやストロー上部の吸口部(スパウト)の周辺に気化した水素が溜まり、水素ガス雰囲気を形成することとなる。
気化した水素(ガス)は、加熱処理後に製品を冷却すると、冷却温度時の飽和水素濃度に応じて、加熱処理後に生成した容器内部の水素ガスが水素含有水に再溶解する。従来汎用のストロー付包装容器に、水素含有水を常圧充填した従来の飲料用水素含有水製品にあっては、上記加熱殺菌後常温に冷却された段階で、水素ガスの再溶解により、水素ガス雰
囲気は実質消失する。
【0054】
本発明の製造方法の好適な態様において、水素含有水を容器内に加圧充填することにより、充填時の水素含有水の溶存水素濃度は、充填時の水素含有水の温度における水素の水への飽和濃度(飽和水素濃度)よりも遥かに高いものとなっている。このため、加熱処理(殺菌工程)により気化した水素ガスは、製品冷却後の水素含有水への再溶解を経た後においても溶解しきれず、加熱処理後常温に冷却された段階でも上記の水素ガスの雰囲気が容器内に存在し続けることとなる。容器内に水素がガス雰囲気で多少なりとも残存していれば(製品の封を開けた際に水素センサ等に反応する)、水素含有水の水素濃度は高く保たれる要因にもなり得るため、水素ガス雰囲気が残存することは水素含有水の性質上、非常に重要である。
すなわち、加圧充填により製造された飲料用水素含有水製品は、開封可能な容器と、該容器内に加圧充填されそして密封された水素含有水と、該水素含有水中に溶存した水溶性カプセル材料と、該水素含有水中に溶存した水溶性カプセル内に充填されていた機能性原料と、該容器内の水素含有水の水面より上方の空間に該加圧充填後の加熱処理により生成された水素ガスを含むガス雰囲気とから構成されることとなる。そして前記ガス雰囲気は例えば30日経過後において、好ましくは少なくとも90日経過後においても存在し、さらに好ましくは180日経過後も存在してなる。該ガス雰囲気は、該雰囲気全体圧に対して水素ガス分圧が90%以上の雰囲気となっている形態であることが特に好ましい。
そしてこの水素ガスを含むガス雰囲気の存在により、溶存水素濃度の低下につながる種々の気体、すなわち、容器内に残存する気体や水素含有水中に混入する気体の存在があったとしても、本発明において加圧充填を採用して製造された飲料水素含有水製品は、既存技術により製造した製品や常圧充填した製品と比較して高い溶存水素濃度、低い酸化還元電位値を保つことができる。
なお前述したとおり、本発明の製造方法では、機能性原料がカプセル内に充填された水溶性カプセルを容器内に充填するのと同時あるいは充填の前後に投入することで、従来の機能性原料等の水素含有水への混合時に起こる空気との接触よる水素含有水の溶存水素濃度の低下を抑制するといった効果を実現したものであるが、上記の加圧充填を組み合わせることで、さらに、長期間保管後においても、高い溶存水素濃度、低い酸化還元電位値を維持することができる。
【0055】
以上の通り、本発明の製造方法により得られる飲料用水素含有水製品は、例えば製造後90日経過後においても、従来製品と比べて高い溶存水素濃度、低い酸化還元電位、低い溶存酸素濃度を有する水素含有水を実現できる。
これまで、たとえば保存容器として汎用のストロー付包装容器を使用して水素含有水製品を製造た場合、該ストロー付包装容器における上端口部(即ち吸口部:スパウト)やキャップの気密性を完全に保つことは難しく、僅かながら容器内部の空間と外部の空間とが連通している。このため、時間の経過と共に、ごく僅かであっても容器外部からの空気が容器内部に徐々に流入することは避けられず、そして水素含有水と空気とが接することによって起こる溶存水素濃度の低下は避けられない。
このように、水素含有水を、例えば汎用のストロー付包装容器に充填・密封した従来の水素含有水製品は、製造から期間が経過するにつれて水素含有水の溶存水素濃度が低下してしまうという問題が生じていた。ストローのない袋状容器体であれば、ストローやキャップ周辺からの空気流入の問題については避けられるものの、一方で該袋状容器体から直接飲用することは困難と言え、コップ等の別の容器に移し替える際、大気と接触することによって溶存水素濃度の大幅な低下が起きるなど、別の問題が生じ得る。いずれにしても、製造後から長期間(例えば3~6ヶ月程度の期間以上)経過した場合においても、溶存水素濃度をできるだけ高い値に維持し、酸化還元電位を低く保てる(マイナス値を維持する)水素含有水製品が求められていた。
【0056】
本発明によれば、例えば製造後180日以上経過後においても、例えばpH7.0の水素含有水において、酸化還元電位がおよそ-600mV以下、溶存水素濃度が1.0ppm以上、また例えば、製造後90日経過後において、溶存酸素濃度が1.0ppm以下、さらには、製造後180日経過後においても、溶存酸素濃度が1.3ppm以下といった、高品質に維持された水素含有水を提供することができる。
例えば本発明の製造方法によれば、製造された飲料用水素含有水製品において、充填されてなる水素含有水の酸化還元電位が、製造後、常温保存下で少なくとも90日経過後において、{[-59×(90日経過後の該飲料用水素含有水製品中の水素含有水のpH値)]-180}mV以下の製品、すなわち、90日経過後に、当該飲料用水素含有水製品中の充填された水素含有水のpHが7.0の場合には、該水素含有水の酸化還元電位が-593mV以下である製品を製造することができる。また、同時に、90日経過後において該製品を上下に軽く振ると、容器の内壁に該水素含有水が当たる音が発生し、ガス雰囲気の存在が確認される製品を製造することができる。
ここで、本発明で規定する酸化還元電位(ORP)の値は、3.3mol/L塩化銀電極を基準として測定したときの値(vs.Ag/AgCl(3.3N))を指し、標準:水素電極(SHE)に対する3.3mol/L塩化銀電極(Ag/AgCl(3.3N))の電位は25℃で+0.206V(vs.SHE)である。
【0057】
本発明の製造方法によれば、前記容器内に充填された水素含有水中に、種々の成分を配合可能となる。特に本発明では、機能性原料をカプセル内に充填した水溶性カプセルを、前述の水素含有水を充填する工程の前、中、又は後に、容器内に投入することを特徴とする。
【0058】
上記水溶性カプセル(機能性原料を充填してなる水溶性カプセル)の水素含有水への配合は種々の方法が考えられ得、例えば前述の種々の方法で水素含有水を得た後、得られた水素含有水に、水溶性カプセルを投入・混合する方が考えられ、このように水素含有水に水溶性カプセルを予め混合・溶解した後、これを包装容器内に(加圧)充填する方法が採り得る。ただこの方法では、水素含有水に水溶性カプセルを投入・混合・溶解する工程において、該混合操作の過程で水素含有水と空気との接触が増加することで、溶存水素濃度が低下することが懸念される。また、原料水(浄化水)に水溶性カプセルを溶解し、その後、ここに水素を溶解させる方法も考えられるが、この方法では所望の溶存水素濃度を実現できない、あるいは、不純物(水溶性カプセル)の存在により、水素溶解装置を始めとする製造装置の汚染や破損が起こる虞がある。
そのため本発明の方法にあっては、水素含有水を容器内に充填するのと同時に、あるいは充填の前後に、機能性原料を充填してなる水溶性カプセルを系内に存在させる手段を採用する。中でも、前記水溶性カプセルを、前記水素含有水を充填する工程の前又は該工程中に投入することが好ましい。例えば、前記容器に予め水溶性カプセルを投入し、ここに水素含有水を充填する方法が採用され得る。
これら水溶性カプセルは、水素含有水を容器内に充填する前、中、又は後に容器内に投入することとなるが、水素含有水の充填後・該容器を密封する前に、該カプセルが水圧などにより容器から溢れ出ないように、予め処理を施しても(例えば該カプセルに微細な孔を開けておくなども考えられる)よい。
【0059】
[開封可能な容器]
本発明で使用する上記開封可能な容器としては、袋状の容器の形態、例えば可撓性を有する袋状容器体とスパウト付ストローと封止キャップとを備えてなるストロー付包装容器や、可撓性を有する袋状容器体とスパウトと封止キャップとを備えてなるスパウト付包装容器や、あるいは、ストローやスパウトのない袋状容器体が採用し得る。またボトル缶(リシール缶)やイージーオープン缶(プルタブ缶、プルトップ缶)などの金属缶であってもよい。
以下、開封可能な容器の種々の形態につき、詳述する。
【0060】
[袋状の容器:ストロー付包装容器]
本発明で使用する袋状容器の一形態であるストロー付包装容器としては、金属層(例えば金属箔)と合成樹脂層とを含む積層フィルム(金属ラミネートフィルムとも称する)からなる可撓性を有する袋状容器体内に、スパウト付ストローのストロー下部を差し込み、該容器体にその上縁部での熱溶着によりスパウト付ストローを固着し、該スパウト付ストローの上端口部に封止キャップを螺着してなる袋状容器、所謂「アルミパウチ」の形態の容器を使用することができる。
【0061】
図1に、本発明の製造方法にて製造された飲料用水素含有水製品の一形態の例を示す。図1に示す飲料用水素含有水製品1は、袋状の容器としてストロー付包装容器を採用した形態であり、容器体3とスパウト付ストロー4と封止キャップ5から構成されるストロー付包装容器2に水素含有水6が充填され、その後、該スパウト付ストロー4の上端口部42Aをキャップ5で封止された形態にある(なお水素含有水6中に溶解してなる水溶性カプセルの存在については図示を省略する)。
図2に、図1に示す飲料用水素含有水製品1のスパウト付ストロー4の上端口部42Aの周辺Aの拡大図を示す。すなわち、前記飲料用水素含有水製品において、加熱処理後常温に冷却された段階において容器内にガス雰囲気が存在する場合、後述するスパウト付ストローを透明あるいは半透明なものとすると、ストローの外側からガス雰囲気7の存在が確認でき(図2(a)参照:水素含有水6、ガス雰囲気7)、あるいは、前記飲料用水素含有水製品を上下に軽く揺らすと、容器内で水素含有水6が移動する様子、すなわちガス雰囲気7が移動する様子を、前記ストローの外側から目視にて確認できる(図2(b)参照:水素含有水6、ガス雰囲気7)。また該ガス雰囲気が存在する場合には、該製品を上下に軽く振ると、容器の内壁に該水素含有水が当たる音(例えば、チャプチャプ、カシャカシャなどの擬音)が発生し、この音によりガス雰囲気の存在が確認できる。
なお、このガス雰囲気の存在は、ガス検知器を用いても確認できる。例えば、飲料用水素含有水製品のキャップ近くに水素ガス検知器を設置した後、該製品のキャップを回して開封すると、水素ガス雰囲気が存在する場合には、キャップを開封した瞬間、或いは、容器を押すことにより、容器内部に存在するガス雰囲気が外に放出されて、ガス検知器が作動する。一方、ガス雰囲気が容器内に存在しない場合には、開封後においても検知器は作動しない。
【0062】
[スパウト付ストロー]
本発明で使用するストロー付包装容器に使用するスパウト付ストローの一形態の例を図3に斜視図(外観)にて示す。
図3に示すように、スパウト付ストロー4は、内容物の導入口を為すストロー部41、内容物の充填口且つ吸引口となる口部42が備えられ、上端口部42Aより後述する充填装置によって水素含有水が充填される。該口部42の下部外周には、後述する封止キャップが着脱自在に螺着できるようにするための雄ネジ部43が形成され、さらにその下方には、封止キャップを係合させるための突起部48が形成されている。さらにその下方には、充填装置に送り込まれる際、容器の供給時にガイドレールに嵌合させるためのフランジ47が形成されている。なお、図3には示されていないが、スパウト付ストロー4の上端口部42Aを封止する封止キャップの内周には、口部42の雄ネジ部43に螺合する雌ネジ部が形成されている。また、口部42の先端には、内容物を充填した後に、上端口部42Aを封止するためのシール材を設けてもよく、これにより加圧加熱殺菌しても口部42から内容物である水素含有水が漏れ出るのを防ぐことができる。前記シール材は合成樹脂フィルムと金属箔とをラミネートしたフィルム等により形成され、口部42の上端口部42Aにヒートシールなどの手段により溶着され得る。
そしてフランジ47の下方には、容器体3に熱溶着させるための熱溶着部44が設けら
れている。またストロー部41の上方には、孔46が設けられ、これにより内容物である水素含有水を容易に吸い出すことができる。そして、孔46形成部分の強度補強並びに、スパウト付ストロー4を容器体3に安定して配置するための耳部45が上記熱溶着部44に連続して下方に伸びるように形成されている。
【0063】
本発明で使用するスパウト付ストローは、例えば低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料を用いて形成され得る。
【0064】
また本発明で使用するスパウト付ストローとして、スパウト付ストロー自体のガス遮断性を高めたスパウト付ストローを用いてもよい。
ガス遮断性を高めたスパウト付ストローとしては、前記スパウト付ストローにおいて、少なくとも前記容器体に熱溶着される部分より上方のストロー上部において、水素ガスの透過を遮るガス遮断材を、ストロー内周壁の表面上又は内部に、実質全域に亘って配備したものなどを挙げることができる。またガス遮断材をストローの孔を塞ぐようにスパウトあるいはストロー内部に配備し、後述する封止キャップ開封時の回転力を利用したり、袋状容器体を外側から圧力を加えたことによる内部の水素含有水の圧力にて、該配備したガス遮断材に孔を開け、飲用に供することができるように、ガス遮断材を配備してもよい。
上記ガス遮断材としては、水素や酸素等の気体を透過しないものであれば特に限定されないが、アルミニウム、鉄、銅、鈴等の金属箔(金属フィルム)や、ポリ塩化ビニリデン等のフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム等にポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルム、或いはこれらポリオレフィンフィルム等にアルミニウム、カーボン、シリカ等を蒸着を施したフィルムが挙げられる。中でもガスバリア性、コスト面及びフィルムの操作性の観点から、好ましくはアルミニウムフィルム(アルミニウム箔)が挙げられる。この他にもEVOH等の多層フィルムを用いることにより、ガス遮断性を向上させることもできる。
【0065】
[封止キャップ]
上記封止キャップとしては、前述のスパウト付ストローの上端口部に螺着され、該ストローの上端口部を密封できる形状であれば特に限定されない。通常、該封止キャップの内周には、前記スパウト付ストロー4の口部の雄ネジ部43に螺合する雌ネジ部が形成され、また前記スパウト付ストローの突起部48と係合できるバンドが設けられる。
封止キャップは、上記スパウト付ストローと同様に、封止キャップ自体のガス遮断性を高めたものを用いてもよい。その場合、例えば封止キャップの頂部の内壁に、前記スパウト付ストローの上端口部を封止できる水素ガス遮断性のインナーシール材を設けることができる。
前記インナーシール材は、合成樹脂フィルムや、金属箔(フィルム)、またこれらを相互にラミネートした積層フィルムにより形成され得る。そして前記合成樹脂フィルムとしては、スパウト付ストローで挙げた樹脂材料を用いたフィルム、また、前記ガス遮断材として挙げた各種フィルム、さらに金属箔としては前記ガス遮断材として挙げた金属箔を好適に用いることができる。
【0066】
[容器体]
上記容器体としては、金属層と合成樹脂層とを含む積層フィルム(金属ラミネートフィルム)製の容器体、例えばアルミラミネートフィルム(アルミ層と合成樹脂層とを含む積層フィルム)製の容器体、所謂パウチ容器が、気密性が高く水素の流出を防ぐことができるために好ましく用いられる。パウチ容器の形状としては、既に市販されているガゼットタイプ(まち付き)、スタンドタイプ(まち無し)等、各種のタイプのものを使用できる。
【0067】
上記容器の製品容量は特に限定されないが、例えば100mL乃至2,000mL、特に150mL乃至550mL、具体的には150mL、180mL、200mL、220mL、250mL、280mL、300mL、330mL、350mL、400mL、450mL、500mL、550mL程度の容量の容器を好適に使用できる。なお本明細書において「製品容量」とは、製品が流通・販売される際の規格容量(適正充填量、表示内容量とも称する)であり、通常、容器に充填できる最大容量より数%~15%程度少ないものとなっている。
なお、キャップや吸水口(スパウト)の大きさ(口径)は製品容量に関わらずほぼ一定となっている。そのため、加熱処理に起因して生じ、キャップやスパウト周辺に溜まっている水素ガスと、容器内の水素含有水との接触面積は、低容量(150mLや200mLなど)の製品と比べて、500mLや550mLといった大容量の製品容量の場合には小さいものとなる。従ってこうした大容量製品にあっては、製品内の水素ガスの水素含有水への再溶解が、低容量の製品と比べてゆっくりと起こる。このため、大容量製品にあっては、本発明の飲料用水素含有水製品のみならず、常圧充填された従来の飲料用水素含有水製品においても、長期間、水素ガス雰囲気が残存することとなる。大容量製品は低容量製品と比べ、長い期間、溶存水素濃度を高い状態で保つことできるため、長期保管性に優れるとして注目されている。しかしながら、従来の飲料用水素含有水製品では、こうした大容量製品にあっても、通常、3ヶ月程度で水素ガス雰囲気は実質消失し、本発明の飲料用水素含有水製品のように、容器の内部に水素含有水とガス雰囲気が共存し続けている状態を保つことは困難である。
【0068】
[袋状の容器:スパウト付包装容器]
本発明では、開封可能な容器としての袋状容器の一形態として、スパウト付包装容器を用いることもできる。本容器は、金属層と合成樹脂層とを含む積層フィルム(金属ラミネートフィルム)からなる可撓性を有する袋状容器体に、その上縁部での熱溶着によりスパウトを固着し、該スパウトの上端口部に封止キャップを螺着してなる袋状容器である。本容器は、すなわち、前記ストロー付包装容器において、袋状容器内にストローが存在せず、スパウト(吸口)のみ設けられた形態である。
本包装容器における袋状容器体は、すなわち、上記[袋状の容器:ストロー付包装容器]の[容器体]を使用でき、その形状、容量も前記[容器体]の記載のものを挙げることができる。
また本包装容器に使用するスパウトは、上記[袋状の容器:ストロー付包装容器]の[スパウト付ストロー]にて挙げた各種樹脂材料を用いて形成され得る。またスパウト自体のガス遮断性を高めたスパウトを用いることもでき、上記[スパウト付ストロー]にてあげたガス遮断材を用いて、前記容器体に熱溶着される部分より上方のスパウトにおいて、前記ガス遮断材を、スパウト内周壁の表面上又は内部に、実質全域に亘って配備してもよい。またガス遮断材をスパウトの下部にスパウトの孔を塞ぐように貼着し、封止キャップ開封時の回転力を利用したり、袋状容器体を外側から圧力を加えたことによる内部の水素含有水の圧力にて、該貼着したガス遮断材に孔を開け、飲用に供することができるように、ガス遮断材を配備してもよい。
さらに本包装容器に使用する封止キャップは、上記[袋状の容器:ストロー付包装容器]の[封止キャップ]を使用できる。
【0069】
本発明において、特にストロー付包装容器あるいはスパウト付包装容器を用いた場合には、これらに使用される袋状容器体が可撓性を有することから、一旦開封しても、ストロー付包装容器(又はスパウト付包装容器)の容器体を両側から押して、内部の空気を放出するとともに水素含有水を溢れさせながらキャップをはめることで、容器体内の空気の残留を極力抑えて、簡単にリキャップ(リシール)することができる。このため、飲み残しがあり、これを保存する(複数回に分けて飲用する)場合においても、後述する袋状容器
体ののみからなる形態や、金属缶と比べて、水素含有水の溶存水素濃度の低下を低く抑えることができる。
【0070】
[袋状の容器:袋状容器体からなる包装容器]
本発明にあっては、開封可能な容器としての袋状の容器として、ストローやスパウトのない袋状容器体を用いることもできる。本容器は、金属層と合成樹脂層とを含む積層フィルム(金属ラミネートフィルム)からなる可撓性を有する袋状容器体のみとしたもの(上述のスパウト付ストローやスパウトを挿入せずとしたものであり、封止キャップを有していない形態)であり、この場合、後述する水素含有水の充填工程の後に、該容器体の上縁部を熱溶着により密封し製品となる。
本包装容器における袋状容器体は、すなわち、上記[袋状の容器:ストロー付包装容器]の[容器体]を使用でき、その形状、容量も前記[容器体]の記載のものを挙げることができる。
なお、袋状容器体からなる包装容器(ストローのない容器)を使用した場合、一旦開封するとリシールすることが困難であるため、一度に飲み切ることが可能な容量を検討するとよい。
【0071】
[金属缶:ボトル缶・イージーオープン缶]
本発明では、上記ストロー付包装容器等の袋状の容器以外にも、アルミ製やスチール製のイージーオープン缶(プルタブ缶、プルトップ缶)やボトル缶(リシール缶)などの金属缶を採用し得、それらの容量は前記[容器体]の記載のものを挙げることができる。
ただし、これら金属缶に充填された製品のうち、イージーオープン缶(プルタブ缶、プルトップ缶)はリキャップが不可能であることから、一旦開封すると水素含有水と空気が接触し続け、時間とともに水素含有水の溶存水素濃度が低下するため、溶存水素濃度の低下が少しでも抑えられるよう、一度に飲み切ることが望ましい。またボトル缶(リシール缶)の場合には、飲みきれない際に再度キャップをすることができるものの、缶内に流入した空気を抜きながらリキャップすることはできないため、結局水素含有水の溶存水素濃度が低下することとなる。従ってこれら金属缶の態様では、一度に飲みきることができる製品容量を検討し、例えば100mLから200mL程度の製品容量とすることで、飲み残しがなく、溶存水素濃度を保ったまま飲用に供する製品とすることができる。
【0072】
なお、製品容量が増加するほど、例えば製品容量が550mLなどの大容量製品では、一度に飲み切ることが難しいため、複数回に分けての飲用が想定される。前述したとおり、前記ストロー付包装容器やスパウト付包装容器を用いた製品では、一旦開封しても容器体を両側から押して内部の空気の放出とともに水素含有水を溢れさせながらキャップをはめることで容器体内の空気の残留を極力抑えることができる。しかし、たとえ飲用毎(開封毎)に内部の水素含有水を溢れさせながらキャップをはめたとしても、容器体内の空気の残留をゼロにすることは難しく、キャップの開封の度に溶存水素濃度が低下する現象は避けられない。
前述したように、大容量の水素含有水製品は長期保管性に優れるというメリットがあるが、一旦開封するとそのメリットは失われることとなり、複数回の開封・リキャップを繰り返した場合においても溶存水素濃度の低下が小さい製品が望まれている。
この要望に対し、本発明は、水素含有水を容器内に充填する前、中、又は後に、機能性原料が充填してなる水溶性カプセルを該容器内に投入することで、好適な態様ではさらに加圧充填を組み合わせることで、保存期間中における水素含有水の溶存水素濃度が、従来製品(特に機能性原料の配合を図った製品)よりも高く且つ長く保たれた製品を提供することが可能である。そのため、複数回のキャップの開閉を行う事態が想定された場合にその後においても、溶存水素濃度を比較的高い濃度で保つことが可能である。
このように、本発明の製造方法は、高い溶存水素濃度を維持したまま数回に分けて飲用することもできる飲料用水素含有水製品を製造できる点においても、消費者に対して訴求
力の高い製品を提供できる製造方法となっている。
【0073】
これまで述べたように、本発明の製造方法によれば、前記水溶性カプセル内に機能性原料を充填し、これを前記の製造方法において用いることにより、充填時の水素含有水の溶存水素濃度を低下させることなく、機能性原料の水素含有水中への配合が実現される。
すなわち本発明では、機能性原料を前述の水溶性カプセル(空カプセル)に予め充填し、該機能性原料がカプセル内に充填された水溶性カプセルを、容器内に充填するのと同時あるいは充填の前後に投入することで、機能性原料の水素含有水への配合を実現する。そして本発明の製造方法により製造された、機能性原料を充填してなる水溶性カプセルとともに水素含有水が充填された飲料用水素含有水製品もまた、本発明の対象である。
【実施例
【0074】
本発明の望ましい実施形態をさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0075】
<飲料用水素含有水製品の製造(1)>
例1及び例2に係る飲料用水素含有水製品を、それぞれ以下の手順にて製造した。
本例では、本発明者らが先の特許出願(特許第4551964号明細書、特願2014-092648、特許第6052948号明細書等)において開示した方法に倣い、飲料用水素含有水製品を製造した。
具体的には、(1)浄化装置において、原料となる水をろ過及び浄化し、得られた浄化水を脱気装置に送る浄化工程と、(2)前記脱気装置において、供給された浄化水を、中空糸膜を通じて脱気し、得られた脱気水を水素溶解装置に送る脱気工程と、(3)前記水素溶解装置において、供給された脱気水に中空糸膜を通じて加圧水素ガスを溶解し、得られた水素含有水を充填装置に送る水素溶解工程と、(4)前記充填装置において供給された水素含有水をストロー付包装容器にその開口部(注入口)より充填する充填工程と、(5)水素含有水が充填されたストロー付包装容器の開口部を封止キャップにて密封する密封工程と、(6)水素含有水が充填・密封された製品を加熱処理(85℃で30分間)する工程、を経て、飲料用水素含有水製品を製造した。
上記(4)充填工程は、加圧充填(負荷圧力:0.2MPa乃至0.3MPa)にて実施し、同一条件となるように調整した。
また充填工程において水素含有水を充填するストロー付包装容器には、予め、以下のカプセル等を投入し、ここに水素含有水を加圧充填した。
例1:機能性原料1(100mg)を充填した水溶性カプセルを投入
例2:水溶性カプセル(空カプセル)と機能性原料1(100mg)を別個に投入
また、(6)加熱処理する工程を経た後、確認サンプルとして飲料用水素含有水製品を開封し、水溶性カプセル、機能性原料が完全に溶解していることを確認した。
【0076】
なお、例1及び例2に使用した水溶性カプセル等は以下の通りである。
・水溶性カプセル(プルラン):
商品名「Plantcaps(登録商標)」、サイズ2号、プルラン含有率85.5%、カプセル重量:63mg(プルラン含有量:54mg)、カプスゲル・ジャパン(株)・機能性原料1:
アスコルビン酸ナトリウム、商品名「L-アスコルビン酸ナトリウム」扶桑化学工業(株)
【0077】
なお本発明者らは、特許第6052948号明細書、図1に示す装置において、量産製造を安定維持することが可能な最大能力条件にて、水素含有水の製造、及び水素含有水の加圧充填を実施し作製した製品試料(予め機能性原料を充填した水溶性カプセル1個を投入したストロー付包装容器に水素含有水を加圧充填)において、下記表1に示す充填時の
溶存水素濃度を実現できることを確認している(サンプル数:計10)。なお、量産製造を安定維持することが可能な最大能力条件にての製造であるため、溶存水素濃度に多少のばらつきが生じているものの、能力条件を抑えることで充填時濃度のばらつきを抑え、濃度を安定化(一定化)させた製造が実現できることを確認している。
【表1】
【0078】
<飲料用水素含有水製品の評価(1)>
上記例1及び例2の各飲料用水素含有水製品について、製造後7日、90日、180日、360日経過後(室温(25℃±5℃にて保管))の溶存水素濃度、pH及び、3.3mol/L塩化銀電極を基準として測定した酸化還元電位(vs.Ag/AgCl(3.3N))を測定した(各測定日ごとに5個の製品試料を測定、平均値として測定結果を算出)。また参考例として、機能性原料及び水溶性カプセルを配合していない飲料用水素含有水製品(水素含有水のみ)に関して、同様の評価を実施した。
溶存水素濃度の測定は、Unisense社製の溶存センサー(マルチメータと溶存水素センサーの組合せ)にて実施し、センサー校正時の温度(水温)並びに測定温度(水温)が20℃±2℃となるように、ストロー付包装容器への充填時の温度を調整した。
なお、測定条件を揃えるべく、実測したpH値とORP値により以下の式を用いて、pH補正後のORP値を得た。これは、pH値によってORP値が見かけ上低い/あるいは高い値にて測定される点を補正したものである。
pH補正後のORP値:ORP実測値-(-59×実測pH)
また90日経過後に測定した製品のpH値に基づき、参考ORP値を算出し、実測の酸化還元電位と比較した。
参考ORP値:{[-59×(90日経過後の該飲料用水素含有水製品中の水素含有水のpH値)]-170}
得られた結果を表2に示す。
【0079】
なお得られた例1及び例2、また参考例の飲料用水素含有水製品を、製造から7日、90日、180日、360日経過後(室温(25℃±5℃)にて保管)までのそれぞれにおいて軽く振った(音を確認するために保管していた専用の検体を使用)ところ、いずれの場合においても音が確認された。これは容器に充填された水素含有水の水面より上方の空間に、ガス雰囲気が存在することを裏づけるものである。
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示すように、例1の飲料用水素含有水製品は、例2の飲料用水素含有水製品と比べて、酸化還元電位を低い値に維持し、そして溶存水素濃度を高い値に維持することができるものであった。
【0082】
<飲料用水素含有水製品の製造(2)>
上記<飲料用水素含有水製品の製造(1)>の手順において、水溶性カプセル等の投入を以下のとおりとした以外は、上記の手順に倣い、例3-1及び例3-2、並びに例4-1及び例4-2の飲料用水素含有水を製造した。
充填工程において水素含有水を充填するストロー付包装容器には、予め、以下の水溶性カプセル等を投入し、ここに水素含有水を加圧充填した。
例3-1:機能性原料1(100mg)を充填した水溶性カプセルを投入
例3-2:水溶性カプセル(空カプセル)と機能性原料1(100mg)を別個に投入
例4-1:機能性原料2(100mg)を充填した水溶性カプセルを投入
例4-2:水溶性カプセル(空カプセル)と機能性原料2(100mg)を別個に投入
【0083】
なお、例3-1及び例3-2、並びに例4-1及び例4-2に使用した水溶性カプセル等は以下の通りである。
・水溶性カプセル(プルラン):
商品名「Plantcaps(登録商標)」、サイズ2号、プルラン含有率85.5%、カプセル重量:63mg(プルラン含有量:54mg)、カプスゲル・ジャパン(株)・機能性原料1:
アスコルビン酸ナトリウム、商品名「L-アスコルビン酸ナトリウム」、扶桑化学工業(株)
・機能性原料2:
マンゴーパウダー、商品名「マンゴーパウダー」、井村屋フーズ(株)
【0084】
<飲料用水素含有水製品の評価(2):官能評価(1)>
例3-1及び例3-2、並びに例4-1及び例4-2の飲料用水素含有水製品について、官能評価を実施した。
官能評価は以下の評価項目と評価基準を用いて行った。官能評価結果は、10名のパネラーに委託して行い、機能性原料1(例3-1及び例3-2)及び機能性原料2(例4-1及び例4-2)のそれぞれについて、表3に示す項目に該当する例の番号を選択し(採点:1)、合計数を算出した。
得られた結果を表4及び表5に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
表4及び表5に示すように、機能性原料1(アスコルビン酸ナトリウム)を配合した例3-1の製品は、例3-2の製品と比べて苦味が抑制された製品に、機能性原料2(マンゴーパウダー)を配合した例4-1の製品は、例4-2の製品と比べては酸味が少なく香りや味、そして美味しさが増した製品となった。
【0089】
<飲料用水素含有水製品の製造(3)>
上記<飲料用水素含有水製品の製造(1)>の手順において、水溶性カプセル等の投入を以下のとおりとした以外は、上記の手順に倣い、例5-1及び例5-2、例6-1及び例6-2、例7-1及び例7-2、例8-1及び例8-2、並びに、例9-1及び例9-2の飲料用水素含有水を製造した。
充填工程において水素含有水を充填するストロー付包装容器には、予め、以下の水溶性カプセル等を投入し、ここに水素含有水を加圧充填した。
例5-1~例9-1:機能性原料3~7(100mg)を充填した水溶性カプセルを投入
例5-2~例9-2:水溶性カプセル(空カプセル)と機能性原料3~7(100mg)を別個に投入
【0090】
なお、例5-1~例9-1、例5-2~例9-2に使用した水溶性カプセル等は以下の通りである。
・水溶性カプセル(プルラン):
商品名「Plantcaps(登録商標)」、サイズ2号、プルラン含有率85.5%、カプセル重量:63mg(プルラン含有量:54mg)、カプスゲル・ジャパン(株)・機能性原料3:
グレープフルーツ香料、商品名「ドライコートングレープフルーツ KC-1646」、高田香料(株)
・機能性原料4:
ブラックティー香料、商品名「ブラックティーコートン AA75975」、小川香料(株)
・機能性原料5:
クエン酸、商品名「クエン酸扶桑MS」、扶桑化学工業(株)
・機能性原料6:
クエン酸ナトリウム、商品名「精製クエン酸ナトリウムM」、扶桑化学工業(株)
・機能性原料7:
ステビア、商品名「ステビアファインR-J2」、日本製紙クレシア(株)
【0091】
<飲料用水素含有水製品の評価(3):官能評価(2)>
例5-1及び例5-2、例6-1及び例6-2、例7-1及び例7-2、例8-1及び例8-2、並びに、例9-1及び例9-2の飲料用水素含有水製品について、官能評価を実施した。
官能評価は以下の評価項目と評価基準を用いて行った。官能評価結果は、10名のパネラーに委託して行い、機能性原料3(例5-1及び例5-2)、機能性原料4(例6-1及び例6-2)、機能性原料5(例7-1及び例7-2)、機能性原料6(例8-1及び例8-2)、並びに、機能性原料7(例9-1及び例9-2)のそれぞれについて、表6に示す項目に該当する例の番号を選択し(採点:1)、合計数を算出した。
得られた結果を表7~表11に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
【表10】
【0097】
【表11】
【0098】
表7乃至表11に示すように、機能性原料3(グレープフルーツ香料)を配合した例5-1の製品は、例5-2の製品と比べて香りや美味しさが増した製品に、機能性原料4(ブラックティー香料)を配合した例6-1の製品は、例6-2の製品と比べて苦味が少なく香りや美味しさが増した製品となった。
また機能性原料5(クエン酸)を配合した例7-1の製品は、例7-2の製品と比べて爽やかな酸味が増すとともに刺激的な鋭い酸味は少ない製品に、機能性原料6(クエン酸ナトリウム)を配合した例8-1の製品は、例8-2の製品と比べて苦味の少なく製品となった。
そして機能性原料7(ステビア)を配合した例9-1の製品は、例9-2の製品と比べてまろやかな甘味が増し、後味の苦味が少ない製品となった。
【0099】
<飲料用水素含有水製品の製造(4)>
上記<飲料用水素含有水製品の製造(1)>の手順において、水溶性カプセル等の投入を以下の通りとした以外は、上記の手順に倣い、例11~例37の飲料用水素含有水製品を製造した。
充填工程において水素含有水を充填するストロー付包装容器には、予め、以下の水溶性カプセルを投入し、ここに水素含有水を加圧充填した。
本例で使用した(予め容器に投入した)水溶性カプセルは以下の通りである:表12に記載の機能性原料8~23について、表13に記載の配合量(mg)にて下記水溶性カプセルに充填し、さらにデキストリン(マックス1000、松谷化学工業(株))と微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学(株))を加えて合計250mgとなるように充填量を調整し、投入用の水溶性カプセルとした。
なお、例11~例37に使用した水溶性カプセル等は以下の通りである。
・水溶性カプセル(プルラン):
商品名「Plantcaps(登録商標)」、サイズ2号、プルラン含有率85.5%、カプセル重量:63mg(プルラン含有量:54mg)、カプスゲル・ジャパン(株)
【0100】
<飲料用水素含有水製品の評価(4)>
例11~例37の各飲料用水素含有水製品について、製造後7日、90日、180日、360日経過後(室温(25℃±5℃にて保管))の溶存水素濃度、pH及び、3.3mol/L塩化銀電極を基準として測定した酸化還元電位(vs.Ag/AgCl(3.3N))を測定した(各測定日ごとに5個の製品試料を測定、平均値として測定結果を算出)。
溶存水素濃度の測定は、Unisense社製の溶存センサー(マルチメータと溶存水素センサーの組合せ)にて実施し、センサー校正時の温度(水温)並びに測定温度(水温)が20℃±2℃となるように、ストロー付包装容器への充填時の温度を調整した。
なお、測定条件を揃えるべく、実測したpH値とORP値により以下の式を用いて、pH補正後のORP値を得た。これは、pH値によってORP値が見かけ上低い/あるいは高い値にて測定される点を補正したものである。
pH補正後のORP値:ORP実測値-(-59×実測pH)
さらに、上記pH補正後のORP値に基づき、製造後7日経過後の製品に対する90日、180日、360日経過後の製品のORP値の変化率を求めた。
得られた結果を表14~表18に示す。なお表18には、前述の参考例(機能性原料及び水溶性カプセルを配合していない飲料用水素含有水製品(水素含有水のみ))のデータを再掲した。また参考例2として、デキストリン(249mg)と微粒二酸化ケイ素(1mg)のみ(合計250mg)を充填した水溶性カプセル製造し、同様に試験した。
【0101】
なお得られた例11~例37の飲料用水素含有水製品を、製造から7日、90日、180日、360日経過後(室温(25℃±5℃)にて保管)までのそれぞれにおいて軽く振った(音を確認するために保管していた専用の検体を使用)ところ、いずれの場合においても音が確認された。これは容器に充填された水素含有水の水面より上方の空間に、ガス雰囲気が存在することを裏づけるものである。
【0102】
【表12】
【0103】
【表13】
【0104】
【表14】
【0105】
【表15】
【0106】
【表16】
【0107】
【表17】
【0108】
【表18】
【0109】
表14~表18に示すように、例11~例37の飲料用水素含有水製品は、酸化還元電位を低い値に維持し、そして溶存水素濃度を高い値に維持することができるものであった。特に機能性原料10のニコチン酸アミドを配合した例15、例16、例32~例35では、酸化還元電位を低い値に維持することができるという結果が得られた。
【0110】
<飲料用水素含有水製品の製造(5)>
上記<飲料用水素含有水製品の製造(1)>の手順において、水溶性カプセル等の投入を以下の通りとした以外は、上記の手順に倣い、例38~例41の飲料用水素含有水製品を製造した。
充填工程において水素含有水を充填するストロー付包装容器には、予め、以下の水溶性カプセルをそれぞれ3個ずつ投入し、ここに水素含有水を加圧充填した。
本例で使用した(予め容器に投入した)水溶性カプセルは以下の通りである:表12に記載の機能性原料8~15、19~21、及びデキストリン並びに微粒化二酸化ケイ素について、表19に記載の配合量(mg)にて下記水溶性カプセルに充填し、投入用の水溶性カプセルとした。
なお、例38~例41に使用した水溶性カプセル等は以下の通りである。
・水溶性カプセル(プルラン):
商品名「Plantcaps(登録商標)」、サイズ2号、プルラン含有率85.5%、カプセル重量:63mg(プルラン含有量:54mg)、カプスゲル・ジャパン(株)
【0111】
【表19】
【0112】
<飲料用水素含有水製品の評価(5)>
例38~例41の各飲料用水素含有水製品について、製造後7日、90日、180日、360日経過後(室温(25℃±5℃にて保管))の溶存水素濃度、pH及び、3.3m
ol/L塩化銀電極を基準として測定した酸化還元電位(vs.Ag/AgCl(3.3N))を測定した(各測定日ごとに5個の製品試料を測定、平均値として測定結果を算出)。
溶存水素濃度の測定は、Unisense社製の溶存センサー(マルチメータと溶存水素センサーの組合せ)にて実施し、センサー校正時の温度(水温)並びに測定温度(水温)が20℃±2℃となるように、ストロー付包装容器への充填時の温度を調整した。
なお、測定条件を揃えるべく、実測したpH値とORP値により以下の式を用いて、pH補正後のORP値を得た。これは、pH値によってORP値が見かけ上低い/あるいは高い値にて測定される点を補正したものである。
pH補正後のORP値:ORP実測値-(-59×実測pH)
さらに、上記pH補正後のORP値に基づき、製造後7日経過後の製品に対する90日、180日、360日経過後の製品のORP値の変化率を求めた。
得られた結果を表20に示す。
なお得られた例38~例41の飲料用水素含有水製品を、製造から7日、90日、180日、360日経過後(室温(25℃±5℃)にて保管)までのそれぞれにおいて軽く振った(音を確認するために保管していた専用の検体を使用)ところ、いずれの場合においても音が確認された。これは容器に充填された水素含有水の水面より上方の空間に、ガス雰囲気が存在することを裏づけるものである。
【0113】
【表20】
【0114】
なお掲載した例においては原料となる水として水道水を用いて水素含有水及び飲料用水素含有水製品を製造しているが、純水(イオン交換水)を用いて実施した場合においても、ORP値、酸化還元電位及び溶存水素濃度の変化並びに官能評価とも、同様の結果(効果)が得られることを確認した。
また掲載した例の製品を含め、機能性原料の配合量の増減、複数種の機能性原料の組み合わせの変更など、様々な処方によって、酸化還元電位の時間変化は異なるものであり、より長期間の高い溶存水素濃度を実現することができるものである。
【0115】
前述したように、これまで出願人は種々の実験を実施してきた中で、本発明によって機能性原料由来の香りや味が抑制され、より無味・無臭に近づく製品も存在することを確認している。
水素含有水自体は無味無臭であり、ミネラルウォーターのように水分補給をしながら健康維持を目指せることも、水素含有水が市場に定着した大きな要因の一つである。そのため、水素含有水に機能性原料が配合され、より健康維持に役立つ商品になりつつも、香りや味は抑えられていた方が好ましいと考える消費者も少なからず存在する。
このような要望(香りや味が抑制されている)がある場合には、また前述したように水溶性カプセルはその種類によって溶解挙動や風味等に特徴があることを考慮して適宜実験
を行い、市場からの要望が高い機能性原料の中から、香りと味が低減される原料(そして水溶性カプセル)を選択すればよい。
さらに言えば、原料の組合せや溶存水素濃度の増減等によって、甘味・酸味・苦味・渋み・辛み・香りなどの官能評価は変化する可能性があり、目指す方向性を定めた後、適宜実験によって確認するとよい。
【符号の説明】
【0116】
1・・・飲料用水素含有水製品
2・・・ストロー付包装容器
3・・・容器体
4・・・スパウト付ストロー
41 ストロー部
42 口部
42A 上端口部
43 雄ネジ部
44 熱溶着部
45 耳部
46 孔
47 フランジ
48 突起部
4A ストロー上部
5・・・封止キャップ
6・・・水素含有水
7・・・ガス雰囲気
図1
図2
図3