(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ロースター用被覆カバー
(51)【国際特許分類】
F24C 15/14 20060101AFI20240415BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F24C15/14 F
A47J37/06 316
(21)【出願番号】P 2020033628
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 焼肉ビジネスフェア2020 東京池袋サンシャインシティ文化会館(東京都豊島区東池袋3丁目1-4)、令和2年1月22日 焼肉ビジネスフェア2020 大阪 大阪南港ATCホール A・Bホール(大阪府大阪市住之江区南港北2-1-10) 令和2年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】512143947
【氏名又は名称】株式会社モレック
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】原 友成
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262346(JP,A)
【文献】特開2016-147476(JP,A)
【文献】特開2004-049280(JP,A)
【文献】特開2015-047329(JP,A)
【文献】特開2016-093262(JP,A)
【文献】特開2002-065141(JP,A)
【文献】特開平09-178198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0262874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/00-15/36
1/00-1/16
A47J 37/00-37/12
F24B 3/00
13/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方部位に焼かれる食材が位置し下方部位に熱源が位置して当該熱源を囲繞するよう設けられた中空状のロースター用部品の内周面側に着脱自在に装着されるものであって、
上記
中空状のロースター用部品は炭つぼであり、
上面部及び底面部に開口部が形成された中空状の本体部と、
この本体部の上面部に外方へ指向するよう形成された外周片部と、
上記本体部の底面部に内方へ指向するよう形成された内周片部とから構成されることを特徴とするロースター用被覆カバー。
【請求項2】
上記本体部は上記上面部の開口部面積が上記底面部の開口部面積より大きくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1記載のロースター用被覆カバー。
【請求項3】
上記本体部の少なくとも内周面側には立体的な幾何学的な模様が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のロースター用被覆カバー。
【請求項4】
上記本体部はアルミまたはアルミ合金から成ることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のロースター用被覆カバー。
【請求項5】
上記本体部の少なくとも内周面にはシリコーン膜が形成されたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4のいずれか1項に記載のロースター用被覆カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方部位に熱源が位置し上方部位に肉や魚介類等の焼かれる食材が位置する中空状のロースター用消耗部品、所謂炭つぼと称される部品の汚れ防止を図ったロースター用被覆カバー、特に取り扱いが簡単で作業面、安全面、衛生面及び耐久面での向上を可能とするロースター用被覆カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック炭加熱、ガス加熱、木炭加熱等で肉や魚介類等を加熱調理するロースターの加熱調理のコア部分は、主にアウターケーシング、インナーケーシング、ドレインパン、熱源、炭つぼ及びトップリングとから構成されているものである。熱源を囲繞する部品、所謂炭つぼと称される部分は消耗部品であり、ロースターに着脱自在に装着されている。
【0003】
例えば、シンポ株式会社製無煙ロースター「機種名:SKRW」は、
図5(a)に示すように天板510の中央にロースター本体520が位置するようキャビネット530に収容されている。而してロースター本体520は、
図5(b)に示すように、アウターケーシング521、フィルタセット522、インナーケーシング523、ドレインパン524、ドレインカバー525、バーナボディ526、バーナヘッド527、炭つぼ528及びトップリング529とから構成されている。ここで、消耗部品としては、バーナボディ526、バーナヘッド527及び炭つぼ528が該当する。
【0004】
炭つぼは、繰返しの加熱調理による使用により食材の油分やカス或いはタレ、熱源の炭や灰等が付着して汚れるものである。汚れたままの状態で使用し続けると、加熱調理の機能低下を引き起こすだけではなく、火災等を引き起こす虞があった。従って、定期的に例えば焼き肉店にあっては閉店後に炭つぼを取り外して湯洗いで油分や食材等の焦げの付着物をしっかりと洗い落とし綺麗にして装着し直す、或いは新たな炭つぼと交換する必要があった。
【0005】
ここで、炭つぼの取り外し・交換作業は、例えば焼き肉店に於いては営業時間帯や閉店直後に行われることもある。この場合、炭つぼが高温状態で作業が行われることもあり、作業者や来店客が火傷等を負うリスクがあることは否めないものである。また、炭つぼの洗浄作業、即ち付着した油分や食材等の焦げとりの洗浄作業は、例えば表面に加工処理されたホーロー等が剥がれないよう慎重かつ丁寧に行う必要があり、時間と労力を要するものであった。さらに、炭つぼの取り外し・交換作業及び洗浄作業は確実性が要求されるので、誰もが容易に行えるものではなく、ある程度の熟練者のみが対応可能なものである。
【0006】
なお、炭つぼは定期的に洗浄を行ったとしても、熱や洗浄、経年劣化によりその耐久性には限りはあり、所詮消耗部品としての域を出ない一部品である。
【0007】
下記特許文献1には、吸気口を設けたガスコンロの汁受皿に敷設するものであって、バーナー露出用の円形孔の周囲に汁受溝部を設けるとともに当該汁受溝部の外方に水平フランジ部を設けたガスコンロ用マットが開示されている。このものは、マットを平面角形に形成し、その四隅の水平フランジ部の外周縁から汁受皿の汁受溝部にわたって延びる空気取り入れ用の切欠きを形成したことを特徴としている。そして、汁受皿に吸気口を設けたガスコンロに使用する場合に、煮こぼれ汁がガスコンロの汁受皿に流出することを防止でき、汁受皿に設けた吸気口の形成部位が異なる種々の機種に対してもそのまま使用して吸気口からのバーナーへの空気の流通を妨げることがなく、バーナーに確実に空気を供給でき燃焼効率を高めることができ、しかも、汁受皿上に敷設した状態でずれることもなく確実に敷設でき、周縁が損傷することも防止できて使い勝手のよいものにしている。
【0008】
下記特許文献2には、ガスコンロのトッププレートのバーナー周辺部を覆い、トッププレートと五徳との間に敷設されるガスコンロ用マットが開示されている。このマットは、中央にバーナーに対応した開口部を有し、金属箔により形成されたリング状の枠体により構成され、この枠体の外周縁部及び内周縁部を縁巻きにより上面側に突出して設けられている。これにより、平面状に仕上げられたトッププレート上にバーナーが設けられたガスコンロに於いて、個々のバーナー周辺部での使用に適し、バーナー周辺部の汚れの防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-201474号公報
【文献】特開2016-40513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたものは、吸気口を設けたガスコンロの汁受皿に敷設するガスコンロ用マットであって、バーナー露出用の円形孔の周囲に汁受溝部を設けるとともに当該汁受溝部の外方に水平フランジ部を設けたに過ぎない。従って、ロースターの熱源を囲繞する部位への適用、転用、応用、即ち炭つぼの汚れ対策への適用、転用、応用は極めて難しいものである。
【0011】
特許文献2に開示されたものは、平面状に仕上げられたトッププレート上にバーナーが設けられたガスコンロに関し、個々のバーナー周辺部での使用に適し、バーナー周辺部の汚れの防止を図っているものである。従って、ロースターの熱源を囲繞する部位への適用、転用、応用、即ち炭つぼの汚れ対策への適用、転用、応用は極めて難しいものである。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、下方部位に熱源が位置し上方部位に肉や魚介類等の焼かれる食材が位置する中空状のロースター用消耗部品の汚れ防止を図るとともに、取り扱いが簡単なロースター用被覆カバーを提供することを目的とする。
また、本発明は、簡単な構造で作業面、安全面及び衛生面に優れ、並びに当該消耗品の耐久性の面での向上を可能とするロースター用被覆カバーを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、安価で経済性に優れ且つ実用的なロースター用被覆カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために以下の通りの構成とすることを特徴とする。
【0014】
(1) 上方部位に焼かれる食材が位置し下方部位に熱源が位置して当該熱源を囲繞するよう設けられた中空状のロースター用部品の内周面側に着脱自在に装着されるものであって、上面部及び底面部に開口部が形成された中空状の本体部と、この本体部の上面部に外方へ指向するよう形成された外周片部と、上記本体部の底面部に内方へ指向するよう形成された内周片部とから構成したことを特徴とする。
【0015】
(2) 上記(1)の構成にあって、上記本体部は上記上面部の開口部面積が上記底面部の開口部面積より大きくなるよう形成されていることを特徴とする。
【0016】
(3) 上記(1)または(2)の構成にあって、上記本体部の少なくとも内周面側には立体的な幾何学的な模様が形成されているよう構成したことを特徴とする
【0017】
(4) 上記(1)、(2)または(3)の構成にあって、上記本体部はアルミまたはアルミ合金から成るよう構成したことを特徴とする。
【0018】
(5) 上記(1)、(2)、(3)または(4)のいずれかの構成にあって、上記本体部の少なくとも内周面にはシリコーン膜が形成されるよう構成したことを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、中空状のロースター用部品が汚れることがないので、衛生面での向上を図れるとともに、当該部品の取り外し・交換作業を著しく低減できるものである。しかも、当該部品の洗浄作業も著しく低減できるので、耐久性の向上にも寄与できるものである。
【0020】
また、上記構成によれば、当該部品への着脱作業のみで汚れ防止を図れるので、誰でも容易且つ安全に行えて取り扱い性に優れるものである。加えて、上記被覆カバーは、安価に製造・提供できるので、経済性にも優れるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ロースター用消耗部品の汚れ防止を図るとともに取り扱いが簡単なロースター用被覆カバーを提供できるものである。また、簡単な構造で作業面、安全面及び衛生面で優れ、並びに当該消耗品の耐久性の面での向上を図れるものである。
しかも、本発明は簡単な構造で実現でき、安価で経済性に優れ且つ実用的な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係わるロースター用被覆カバーを上面部側からみた全体の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態に係わり、同被覆カバーを側面側からの断面の概略構成を模式的に示す図である。
【
図3】同実施形態に係わり、同被覆カバーを底面部側からみた立体的な幾何学的な模様を省略した概略構成を模式的に示す図である。
【
図4】同実施形態に係わり、同被覆カバーを炭つぼに装着した状態を側面側から模式的に示す図である。
【
図5】従来の無煙ロースターを示す図であり、(a)は無煙ロースターが組み込まれた加熱調理用テーブルであり、(b)はロースター本体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態につき、図を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係わるロースター用被覆カバー100(以下、「被覆カバー100」と称す。)は、セラミック炭加熱、ガス加熱、木炭加熱等で肉や魚介類等を加熱調理するロースターのコア部分、即ち主にアウターケーシング、インナーケーシング、ドレインパン、熱源、炭つぼ200及びトップリングとから構成されている部分に於いて、熱源を囲繞する部品である炭つぼ200に着脱自在に装着されるものである。なお、炭つぼ200は、上方部位に焼かれる食材が位置し下方部位に熱源が位置して当該熱源を囲繞するよう設けられ、表面にホーロー加工が施された中空状のステンレス製鋳物で、上部から下部にかけて窄むような形状、例えば円錐台を逆さにしたような形状若しくは富士山を逆さまにしたような形状を呈している。
【0025】
被覆カバー100は、炭つぼ200の内周面に着脱自在に装着されるアルミ素材で形成されており、炭つぼ200に近似する形状を呈している。そして、その直径は例えば標準的なものとして280mm程度、厚みを50μ程度としている。ここで、被覆カバーの大きさは、他のサイズや異なる形状の炭つぼに合うよう適宜変更しても良いことは勿論である。また、被覆カバー100はアルミに限らずアルミ合金や他の金属で形成されても良いことは勿論である。
【0026】
さて、被覆カバー100は、上面部120a及び底面部120bが開放状態の開口部を有する中空状の本体部120と、この本体部120の上面部120aにて外方へ指向するよう一体的に形成された外周片部140と、本体部120の底面部120bにて内方へ指向するよう一体的に形成された内周片部160とから構成されている。ここで、本体部120の上面部120aは、その開放面積(SU)が底面部120bの開放面積(SB)より大きくなるよう形成されている。
【0027】
また、被覆カバー100の本体部120の内周面120c側には、幾何学的な模様、例えば格子状の模様や凸状または凹状の立体的な線状模様が形成されている。而して、幾何学的な模様が形成された内周面120cの部位と反対側の外周面120dの部位には、内周面側の立体的な凹凸とは逆になった同様な立体的な幾何学的な模様が形成されることになる。
【0028】
なお、被覆カバー100の本体部120の内周面120cには何等コーティング処理を施してはないが、シリコーン膜(不図示)のコーティング処理を施しても良いことは勿論である。また、シリコーンに限らず他のコーティング処理でも良い。
【0029】
上記構成につき、その作用を以下に述べる。
【0030】
被覆カバー100を炭つぼ200に装着するには、被覆カバー100の上面部120aを上方にして底面部120bを下方に位置させた状態で、炭つぼ200の上方から下方に向けて被覆カバー100を炭つぼ200の内側に位置するよう装着させる。
【0031】
すると、被覆カバー100の外周片部140が炭つぼ200の上部を覆うような状態になり、また内周片部160が炭つぼ200の下部にて載置固定される状態となる。而して、被覆カバー100の外周面120dと炭つぼ200の内周面が面接触の密着状態となり、炭つぼ200の内周面と上部が被覆カバー100により被覆されることになる。なお、被覆カバー100の立体的な幾何学的な模様が形成されている部分については、炭つぼ200の内周面との間で当該模様に沿った僅かな空隙が形成されることになる。
【0032】
斯様な状態で食材が加熱調理されて食材からの油分やカス、タレ等が落下してきたとしても、また、熱源の炭や灰等が飛散したとしても、それらは被覆カバー100の内周面120cに付着するだけで、炭つぼ200の内周面に直接的に付着することはない。
【0033】
装着された被覆カバー100を炭つぼ200から取り外すには、例えば外周片部140を把持して上方へ引き上げれば炭つぼ200から容易に離間できる。ここで、被覆カバー100の外周面120dと炭つぼ200の内周面が完全な密着状態ではなく、立体的な幾何学的な模様と炭つぼ200の内周面とで形成された空隙により、取り外しが円滑に行えるものである。
【0034】
上記実施形態によれば、炭つぼ200に着脱自在に被覆カバー100を装着可能としたので、従来のように炭つぼ200が加熱調理による食材の油分やカス或いはタレ、熱源の炭や灰等が付着することがなくなり汚れを防止でき、衛生面での向上を図れるものである。しかも、被覆カバー100の着脱作業は熟練性を要すことなく誰でも安全且つ容易に行えるので、取り扱い性に優れ作業効率の向上を図れるものである。
【0035】
また、上記実施形態によれば、炭つぼ200の取り外し・交換作業を著しく低減できるとともに、炭つぼ200の洗浄作業も著しく低減できるので、従来のように例えばホーロー加工された表面を傷めてしまう虞も著しく低減でき、耐久性の向上にも寄与できるものである。加えて、被覆カバー100は、炭つぼ200に比べて極めて安価に製造・提供できるので、経済的且つ実用的なものである。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない限り種々の変形が可能なことは勿論である。
【0037】
例えば、墨つぼの形状がずん胴タイプのものであれば、ずん胴の被覆カバーとしてもよいし、直方体状や立方体状であれば被覆カバーもその形状に合致するように形成しても良いことは勿論である。
【0038】
また、被覆カバーが装着される部品は、墨つぼに限らず、上方部位に焼かれる食材が位置し下方部位に熱源が位置して当該熱源を囲繞するよう設けられた中空状のロースター用部品であれば、適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
100 …ロースター用被覆カバー
120 …本体部
120a …上面部
120b …底面部
120c …内周面
120d …外周面
140 …外周片部
160 …内周片部
200 …炭つぼ