(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】分子シグネチャー及び低悪性度前立腺癌の同定のためのその使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20240415BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20240415BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240415BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240415BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240415BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240415BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z ZNA
C12Q1/6837 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
G01N37/00 102
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2020560592
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2019051870
(87)【国際公開番号】W WO2019145483
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(73)【特許権者】
【識別番号】520273049
【氏名又は名称】クトレ リシェルシェ パソロジーズ プロスタティクス
(73)【特許権者】
【識別番号】520273050
【氏名又は名称】リーグ ナショナル コントレ ル キャンサー
(73)【特許権者】
【識別番号】518390284
【氏名又は名称】アシスタンス パブリック-オピトークス ド パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】514203362
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】519437009
【氏名又は名称】ユニベルシテ デ トゥール
(73)【特許権者】
【識別番号】520273061
【氏名又は名称】セントレ ホスピタリエ レジョナル ユニバーシタイレ デ トゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クセノ,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】カモウン,オレリー
(72)【発明者】
【氏名】デ レニエ,オーレリアン
(72)【発明者】
【氏名】キャンセル-タシン,ジェラルディーン
(72)【発明者】
【氏名】フロモン-ハンカード,ガエル
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0097105(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/303002(US,A1)
【文献】国際公開第2011/082198(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
G01N 33/53
G01N 33/574
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌罹患対象における前立腺癌再発のリスクを予測するための方法であって、
a)前記対象からの前立腺癌試料を提供すること、
b)前記対象の前記試料においてTMPRSS/ERG融合状態を決定すること、
c)前記試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus
+)
:
・ 8個の次の前立腺癌マーカー:ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4、又は
・ 15個の次の前立腺癌マーカー:ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCAN、又は
・ 18個の次の前立腺癌マーカー:ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARC、又は
・ 39個の次の前立腺癌マーカー:ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCAN
の発現レベルを測定することにより前記試料の分子シグネチャーを決定すること、
d)前記分子シグネチャーを参照シグネチャーと比較することであって、前記参照シグネチャーが、
高悪性度前立腺癌と診断された少なくとも100名の対象を含む参照集団における
前記前立腺癌マーカーの発現レベルの測定由来である、比較すること、及び
e)前記参照シグネチャーとの前記分子シグネチャーの相関に基づきリスク群に前記対象を割り当てること
であって、ここで
・ ANPEP、AZGP1及びCHRNA2の発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過剰発現され、かつANTAXR1、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4の発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過小発現される場合、又は
・ ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3の発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過剰発現され、かつCOL1A1、COMP、KHDRBS3、SFRP4及びVCANの発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過小発現される場合、又は
・ ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3の発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過剰発現され、かつANTXR1、COL1A1、COL3A1、COMP、ITGBL1、KHDRBS3、SFRP4及びSPARCの発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過小発現される場合、又は
・ ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6の発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過剰発現され、かつANTXR1、ASPN、CDH11、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NOX4、SFRP2、SFRP4、SPARC、SULF1、THBS2及びVCANの発現プロファイルが前記参照シグネチャーに対し過小発現される場合、
前記対象は前立腺癌低再発リスク群に割り当てられる、割り当てること
を含み、それにより前記対象における癌再発のリスクを予測する、方法。
【請求項2】
前記試料が、前立腺生検試料、前立腺穿刺吸引試料、前立腺切除試料又は前立腺切除術後の前立腺組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、体液である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前立腺切除術及び/又は放射線による治療を受けた、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含む群から選択される
8個の前立腺癌マーカーの発現レベル、又は
ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含む群から選択される
15個の前立腺癌マーカーの発現レベル、又は
ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含む群から選択される
18個の前立腺癌マーカーの発現レベル、又は
ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含む群から選択される39個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段からなる、請求項1~
4の何れか1項に記載の方法を実行するためのキットであって、前記発現レベルを決定するための前記手段が、(i)前記前立腺癌マーカーに特異的なプローブからなるマイクロアレイ、又は(ii)前記前立腺癌マーカーに特異的なqPCRプライマーである、キット。
【請求項6】
前記前立腺癌マーカーに特異的な前記プローブが、配列番号1~39に記載の配列を有するプローブからなる群から選択される、請求項
5に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌予後診断の分野に関する。より具体的には、本発明は、対象における前立腺腺癌の予後に対する判別のための、差異的な遺伝子発現に基づくシグネチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(PCa)は、未制御及び制御されない細胞増殖及び分裂を特徴とする前立腺の癌である。PCaは、先進国の男性において診断される頻度が最大の癌の1つであり、全新規癌症例の8%前後及び男性で15%を占める。
【0003】
前立腺癌の臨床挙動は非常に変動が大きく、一部の男性では高悪性度癌であり、この疾患からの転移及び死亡をもたらし、一方で多くの他の男性では低悪性度癌であり、初期治療で治癒されるか又は安全に観察され得る。複数のリスク層別化システムが、D’Amico分類(D’Amico et al.,1998.JAMA.280(11):969-74)及びCAPRAスコア、(Cooperberg et al.,2005.J Urol.173(6):1938-42)、血中の前立腺特異的抗原(PSA)レベル(Catalona et al.,1994.J Urol.151(5):1283-90)、Gleasonスコア(Gleason & Mellinger,1974.J Urol.111(1):58-64)及びTNM分類(腫瘍サイズ、領域リンパ節の記載及び転移の有無に基づく)などの組織学的基準など、臨床及び病理学的パラメータを組み合わせて、開発されてきた。
【0004】
しかし、これらの臨床分類システムにもかかわらず、局在型PCaの管理におけるランダム化試験(Scandinavian Prostate Cancer Group Study Number 4[SPCG-4],Prostate Cancer Intervention versus Observation Trial[PIVOT]and Prostate Testing for Cancer and Treatment[PROTECT])は、PCaの20%がフォローアップ10年超の後に転移状態及び死亡に進行することを示しており、局在型ステージで診断されるPCaの大部分が過剰処置を受けていることを示唆する。
【0005】
従って、疾患の進行及び与えられる処置に対する応答を各対象に対して推定するために、予後及び予測手段の改善が依然として必要とされている。
【0006】
分子及びゲノムプロファイリングの大衆化は、PCa分子の不均一性を特徴づけ関連マーカーを発見するのに非常に役立っている。The Cancer Genome Atlas(TCGA)(Cancer Genome Atlas Research Network,2015.Cell.163(4):1011-25)により公開されている分類を含む、様々なPCaサブタイプ分類が当技術分野で提案されている。この分子タキソノミーは、PCaの74%を特異的な遺伝子融合又は突然変異により定められる7つのサブタイプの1つに分類することを可能にし、かなりの(26%)サブセットの良好な及び不良な臨床予後の両方の前立腺癌が未分類のままである。現在、PCaを分類し、治療決定を行うために設計される市販の分子的検査としては、Genomics Health,Inc.によるOncotypeDX(登録商標)Genomic Prostate Scoreアッセイ(臨床リスク因子及び17個の遺伝子の発現に基づいてスコアを提供)、Myriad Genetics,Inc.によるProlaris Test(細胞周期増殖遺伝子のシグネチャーに基づいてスコアを提供)、Proveri,Inc.によるProveri試験(15個の遺伝子の発現レベルに基づく)が挙げられる。科学コミュニティーにより提案される他のアプローチとしては、Isrhad et al.(2013.Sci Transl Med.5(202):202ra122)により開発された予後シグネチャー(19個の遺伝子の発現に基づく)及びTandefelt et al.(2013.Eur Urol.64(6):941-50)によるもの(36個の遺伝子の発現に基づく)が挙げられる。
【0007】
しかし、公開されている分子分類及び予後分子シグネチャー間の合意の欠如は、臨床ルーチン内で分子的特徴を使用することを困難にしている。さらに、現在の分子シグネチャーは、予後精度について幾分かの改善の余地がまだある。
【0008】
従って、これらの最近の進展にもかかわらず、PCa患者における低悪性度癌の同定のために使用され得る分子シグネチャーの改善が依然として必要とされている。
【0009】
ここで、発明者らは驚くべきことに、mRNA発現、DNAメチル化及びコピー数データを統合する分類が、PCaの3つのサブタイプを定めることを可能にし、3つのサブタイプ中で、一つのサブタイプが、人生を左右する根治的な手術を受けずに積極的サーベイランスにより合理的に取り扱われ得るTMPRSS2/ERG融合陽性低悪性度PCa患者と強く相関することを明らかにした。この新しい分類に基づいて、発明者らは、本明細書中で、39個の遺伝子の分子シグネチャーを提供し、それに基づき、より高いステージの疾患に発展する可能性が低いPcaを同定するための安定した日常的分子アッセイを構成する、18、15、8及び6個の遺伝子の3つの最小分子シグネチャーをさらに同定した。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、前立腺癌罹患対象における前立腺癌再発のリスクを予測するための方法に関し、この方法は、
a)対象からの試料を提供すること、
b)この試料中のTMPRSS/ERG融合状態を決定すること、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含む群から選択される少なくとも6個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することによりこの試料の分子シグネチャーを決定すること、
d)この分子シグネチャーを参照シグネチャーと比較すること、
e)参照シグネチャーとのこの分子シグネチャーの相関に基づき、対象をリスク群に割り当てること、
を含み、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する。
【0011】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含む群から選択される少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することを含む。
【0012】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、8個の次の前立腺癌マーカー:ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4の発現レベルを測定することを含む。
【0013】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含む群から選択される少なくとも8個、好ましくは少なくとも15個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することを含む。
【0014】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、15個の次の前立腺癌マーカー:ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANの発現レベルを測定することを含む。
【0015】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含む群から選択される少なくとも10個、好ましくは少なくとも18個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することを含む。
【0016】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、18個の次の前立腺癌マーカー:ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCの発現レベルを測定することを含む。
【0017】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含む群から選択される少なくとも39個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することを含む。
【0018】
一実施形態では、試料の分子シグネチャーを決定する段階(段階c)は、39個の次の前立腺癌マーカー:ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANの発現レベルを測定することを含む。
【0019】
一実施形態では、この試料は、前立腺生検試料、前立腺穿刺吸引試料、前立腺切除試料又は前立腺切除術後の前立腺組織試料である。
【0020】
一実施形態では、この試料は体液である。一実施形態では、この体液は、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水(ascetic fluid)、嚢胞液、尿、胆汁、乳頭浸出液、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、羊水、腹水、脳脊髄液、胸水、心膜液、精液、唾液、汗及び肺胞マクロファージを含む群から選択される。
【0021】
一実施形態では、対象は前立腺切除術及び/又は放射線による処置を受けた。
【0022】
一実施形態では、参照シグネチャーは、既知の前立腺癌再発状態の前立腺癌と診断された、少なくとも100名、好ましくは少なくとも250名、より好ましくは少なくとも500名の対象を含む参照集団における前立腺癌マーカーの発現レベルの測定由来である。
【0023】
一実施形態では、ANPEP、AZGP1及びCHRNA2の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過剰発現され、かつCOMP、KHDRBS3及びSFRP4の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過小発現される場合、対象は前立腺癌低再発リスク群に割り当てられる。
【0024】
一実施形態では、ANPEP、AZGP1及びCHRNA2の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過剰発現され、かつANTAXR1、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過小発現される場合、対象は前立腺癌低再発リスク群に割り当てられる。
【0025】
一実施形態では、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過剰発現され、かつCOL1A1、COMP、KHDRBS3、SFRP4及びVCANの発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過小発現される場合、対象は前立腺癌低再発リスク群に割り当てられる。
【0026】
一実施形態では、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過剰発現され、かつANTXR1、COL1A1、COL3A1、COMP、ITGBL1、KHDRBS3、SFRP4及びSPARCの発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過小発現される場合、対象は前立腺癌低再発リスク群に割り当てられる。
【0027】
一実施形態では、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6の発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過剰発現され、かつANTXR1、ASPN、CDH11、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NOX4、SFRP2、SFRP4、SPARC、SULF1、THBS2及びVCANの発現プロファイルが、高悪性度前立腺癌と診断された対象の集団の参照シグネチャーを基準にして過小発現される場合、対象は前立腺癌低再発リスク群に割り当てられる。
【0028】
一実施形態では、対象からの試料の分子シグネチャーが低悪性度前立腺癌と以前診断されている対象の集団の参照シグネチャーに対して最大相関を有する場合、上記対象は低再発リスク群に割り当てられる。
【0029】
本発明はさらに、低悪性度前立腺癌罹患対象を処置するための方法に関し、この方法は、
a)本発明による前立腺癌罹患対象における前立腺癌再発のリスクを予測するための方法に従い、前立腺癌罹患対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階、
b)この対象が低リスク群に割り当てられた場合、この対象を積極的サーベイランス下に置く段階
を含む。
【0030】
本発明はさらに、本発明による前立腺癌罹患対象における前立腺癌再発のリスクを予測するための方法を実行するためのキットに関し、このキットは、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含む群から選択される6個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段からなる。
【0031】
一実施形態では、本キットは、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含む群から選択される、7個、好ましくは8個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段からなる。
【0032】
一実施形態では、本キットは、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含む群から選択される、8個、好ましくは15個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段からなる。
【0033】
一実施形態では、本キットは、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含む群から選択される、10個、好ましくは18個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段からなる。
【0034】
一実施形態では、本キットは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含む群から選択される39個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段からなる。
【0035】
一実施形態では、発現レベルを決定するための手段は、上記前立腺癌マーカーに特異的なプローブからなるマイクロアレイである。一実施形態では、上記前立腺癌マーカーに特異的な上記プローブは、表1及び/又は表2に列挙されるプローブを含む群から選択される。
【0036】
一実施形態では、発現レベルを決定するための上記手段は、上記前立腺癌マーカーに特異的なqPCRプライマーからなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、CITコホートにおいて試料を分析するため、従って3個のmRNAサブタイプ(S1、S2及びS3)及び2個のメチル化サブタイプを同定するために使用されるワークフローの例示である。前立腺癌の分子分類を確立するために、195検体の試料のマルチオミックスコホート(局所型前立腺腺癌の試料130検体及び隣接する正常組織の試料65検体)を分析した。発明者らは最初に、各試料における腫瘍細胞のパーセンテージを評価するために、腫瘍及び正常試料からの一連のDNAメチル化アレイを使用した。分子データのコンセンサス分類を確立するために、腫瘍細胞50%超を含有する腫瘍試料のみを使用した。コンセンサスクラスタリングをmRNAデータ及びDNAメチル化データで個別に行い、各分子層の得られたクラスを、トランスクリプトーム層をほぼ完全に要約する3つの分子サブタイプにまとめた。
【
図2】
図2は、TCGAコホートにおいてCITサブタイプの検証を例示する一連のグラフである。(A)mRNA発現(左パネル)及びDNAメチル化データ(右パネル)を使用する、TCGAデータ及びCITサブタイプからの教師なし分類結果の比較。教師なしクラスタリングを、ConsensusClusterPlus R Packageにより行った。4つ(resp.2)の教師なしTCGA mRNA(resp.DNAメチル化)サブタイプ及び3つ(resp.2)のCIT mRNA(resp.DNAメチル化)サブタイプの間で類似性を、各サブタイプセントロイドを計算しペアワイズピアソン相関を測定することによって評価した。(B)TCGAmRNAサブタイプとDNAメチル化サブタイプの間の対応関係。
【
図3】
図3は、S1(左パネル)、S2(中央のパネル)及びS3(右パネル)サブタイプのコピー数プロファイルを示す一連のグラフである。サブタイプによりグループ化される490検体の腫瘍試料のコピー数プロファイルを、分析した。GISTIC2を使用して、各サブタイプにおいて顕著に得られたか又は失われた領域を同定し、有意なゲノム事象により標的とされる推定候補遺伝子の名称を、図表で報告した。
【
図4】
図4は、CIT及びTCGAコホートを使用する腫瘍サブタイプの臨床及び分子的特徴を示す一連のグラフである。ISUP群をサブタイプ内に分布させた。CIT及びTCGAコホートからの496検体の試料を、S1、S2又はS3サブタイプの1つに割り当てた。円グラフは、各サブタイプ内のISUP群の割合を示す。
【
図5】
図5は、CITサブタイプと公開されたTCGAサブタイプの間の関連を示す一連のヒストグラムである。mRNAに基づく予測因子を使用してTCGA試料に対しCITサブタイプを割り当て、それらの分布を2015年に公開されたTCGAサブタイプと相対的に比較した。S1及びS2腫瘍は、TMPRSS2/ERG融合陽性(ERG、ETV1、ETV4又はFLI1サブタイプ)としてほぼ独占的に分類され、一方でSPOP又はFOXA1突然変異を保有する腫瘍は全てS3サブタイプに割り当てられる(左パネル)。S1及びS3サブタイプはTCGAトランスクリプトーム分類のクラス1及び2と非常に一致し、一方でTCGAクラス3はS2サブタイプにおいて主に表される(中央のパネル)。DNAメチル化プロファイルに関しては、発明者らは、片側でDNAクラス2及び4と一致するS3(M2)腫瘍と、両方ともクラス1及び3に該当するS1/S2(M1)腫瘍との間で二分されることを確認する(右パネル)。
【
図6】
図6は、患者予後と分子サブタイプの関連を示す一連のグラフである。生化学的再発(BCR)がない生存のメタ解析を、予後とのCITサブタイプの関連を試験するために使用した5つのコホートにおいて評価した。各コホートにおけるS1、S2又はS3サブタイプを予測するために使用した腫瘍試料に関連する臨床的特徴を、この図で報告する。TMPRSS2/ERG融合状態を、Setlur et al.,(2008.J Natl Cancer Inst.100(11):815-25)からのトランスクリプトームシグネチャーに従い割り当てた。カプラン・マイヤープロットは、分子サブタイプにより層別化される、BCRがない患者の生存の変遷を示す。記載される5つのコホートからの入手可能な臨床フォローアップデータがある726名の患者からのデータをプールし、BCRなしの生存を推定するカプラン・マイヤー曲線を作成した。発明者らは、ログランク検定を使用して、S1、S2及びS3サブタイプ(左パネル)又はS1及びS3サブタイプに対して相対的にS2(右パネル)を比較する場合の患者の生存分布間の差の有意性を評価した。
【
図7】
図7は、CIT及びTCGAコホートにおける生化学的再発がない患者生存を示す一連の4つのグラフである。
【
図8】
図8は、CITサブタイプ又はTCGAにおけるオリジナル分類システム、Taylor及びRoss-Adamsコホートを使用した、予後との関連を示す一連の6個のグラフである。
【
図9】
図9は、他の既知の分子アプローチと相対的に、S2サブ分類の予知力を示す図表である。S2サブタイプの予後的意義を、Prolaris-like又はOncotypeDX-likeスコアの離散化により定められる低リスク群と、及びIrshad又はProveri計算法の再現を通じて同定される低リスクサブタイプと比較した。Prolaris-like及びOncotypeDX-likeスコアを使用して低リスク群を定義するために、各スコアに対して最適カットオフ値を計算して、生化学的再発があった患者を生化学的に再発しなかった患者から区別した。低リスク患者サブ分類を次に、Prolaris-likeスコアが8を下回るか又はOncotypeDX-likeスコアが30を下回る腫瘍試料を同定することにより達成した。低リスク群の5つの定義に対するハザード比は、708検体の腫瘍試料からのISUP群(1-2対3-4)、腫瘍ステージ(T2対T3-T4)及びPSAレベル(4ng/mLを下回るか又は上回る)を含む多変量コックスモデルにおける生化学的再発の相対的リスクを指す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
本発明において、次の用語は次の意味を有する:
「積極的サーベイランス」及び「経過観察」は、本明細書中で使用される場合、症状が出現するか又は変化するまで処置を行わずに対象の状態を入念に監視することを意味する。例えば、前立腺癌において、経過観察は通常、早期ステージの疾患において、又は低悪性度前立腺癌と診断された症例において、他の医学的問題がある高齢男性において使用される。
【0039】
「生化学的再発(BCR)」は、本明細書中で使用される場合、手術又は放射線での処置後のPCa患者における前立腺特異的抗原(PSA)の血中レベルの上昇を指し、試料中に前立腺癌細胞が存在することを示す。従って、「無生化学的再発期間(bRFI)」という用語は、手術から前立腺癌の最初の生化学的再発までの時間(月又は年単位)を意味するために使用される。臨床的再発、不完全なフォローアップによる損失、他の原発癌又は生化学的再発前の死亡は、打ち切り事象とみなされる。
【0040】
「臨床的再発」は、本明細書中で使用される場合、手術又は放射線での処置後のPCa患者の試料中の臨床的に評価された(例えば画像検査又は生検による)前立腺癌細胞の存在を指す。従って、「無臨床的再発期間(cRFI)」という用語は本明細書中で、手術から前立腺癌の最初の臨床的再発又は前立腺癌の臨床的再発による死亡までの時間(月又は年単位)として使用される。不完全なフォローアップによる損失、他の原発癌又は臨床的再発前の死亡は、打ち切り事象とみなされ;これらが起こった際、知られる唯一の情報は、打ち切り時までにこの対象において臨床的再発が起こっていないことである。生化学的再発は、cRFIを計算する目的のため無視される。
【0041】
「発現」は、本明細書中で使用される場合、遺伝子マーカー、RNAマーカー又はタンパク質マーカーの何れであれ、マーカーの発現を指す。マーカーの発現は、例えば免疫組織化学、マルチプレックス法(Luminex)、ウエスタンブロット、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチELISA、蛍光連結免疫吸着アッセイ(FLISA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)などにより、タンパク質レベルで決定され得る。或いは、マーカーの発現は、例えばRT-PCR、RT-qPCR(qPCRは定量的PCRを表す)、ハイブリッド形成技術、例えばノーザンブロット、マイクロアレイの使用及びRT-PCRにより得られるアンプリコンのハイブリッド形成を含むが限定されないそれらの組み合わせ、配列決定、例えば次世代DNA配列決定(NGS)又はRNA-seq(「全トランスクリプトームショットガンシーケンシング」としても知られる)などにより、mRNAレベルで決定され得る。
【0042】
「マーカー」は、本明細書中で使用される場合、ある遺伝子及び/又はアレルの発現レベルと相関する全ての遺伝子連結物質を広く指す。例として含まれるのは、遺伝子それ自身、そのmRNA(その遺伝子の転写産物)、ペプチド(その翻訳産物)及びタンパク質(その遺伝子の発現の最終産物)である。一実施形態では、各マーカーは、遺伝子の全て又は一部として同定可能であり、従って「遺伝子マーカー」と呼ばれる。一実施形態では、各マーカーは、RNAの全て又は一部として同定可能であり、従って「RNAマーカー」と呼ばれる。一実施形態では、各マーカーは、ペプチド又はタンパク質の全て又は一部として同定可能であり、従って「タンパク質マーカー」と呼ばれる。
【0043】
「転移」は、本明細書中で使用される場合、癌細胞がある臓器又は組織から別の非隣接臓器又は組織へと移動する過程を指す。前立腺における癌細胞は、対象の組織及び臓器に広がり得、逆に他の臓器又は組織からの癌細胞が前立腺に浸潤又は転移し得る。前立腺からの癌細胞は、身体の何らかの他の臓器又は組織に浸潤又は転移し得る。前立腺癌細胞は、脊椎細胞(例えば脊柱)に浸潤し、及び/又は肺、肝臓、及び/又は脳に転移し、これらの組織及び臓器において癌を広げることが多い。
【0044】
「マイクロアレイ」、「アレイ」又は「チップ」は、本明細書中で使用される場合、交換可能であり、基質上、好ましくは固体基質上、の2次元(2D)アレイを指し、この上に特異的な核酸及び/又はタンパク質結合配列の複数のプローブ分子が秩序正しく個別の場所に固定されており、従って顕微鏡レベルのアレイを形成している。特異的な核酸及び/又はタンパク質結合配列は、1つ以上の異なるタイプのリンカー分子を通じてチップの基質に結合され得る。好ましい実施形態では、マイクロアレイは、本明細書中で使用される場合、特異的な核酸結合配列を含む。一実施形態では、マイクロアレイは、ハイスループットスクリーニングを使用して大量の生体物質をアッセイするために使用される。マイクロアレイの例としては、DNAマイクロアレイ、MMChips(microRNA集団のサーベイランスのため)、タンパク質マイクロアレイ、ペプチドマイクロアレイ(タンパク質-タンパク質相互作用の詳細な分析又は最適化のため)、組織マイクロアレイ、トランスフェクションマイクロアレイ、化学化合物マイクロアレイ、抗体マイクロアレイ、グリカンアレイ、表現型マイクロアレイ、逆相タンパク質マイクロアレイ、溶解物又は血清のマイクロアレイ及びインターフェロメトリー反射イメージングセンサー(IRIS)が挙げられるが限定されない。「DNAチップ」又は「バイオチップ」としても一般的に知られる「DNAマイクロアレイ」としては、cDNAマイクロアレイ、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、BACマイクロアレイ及びSNPマイクロアレイが挙げられるが限定されない。一実施形態では、DNAマイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルを同時に測定するために、又はゲノムの複数の領域の遺伝子型を決定するために使用される。一実施形態では、DNAマイクロアレイを使用して、遺伝子発現レベル、比較ゲノムハイブリッド形成、一塩基多型(SNP)検出、オルタナティブスプライシング検出、融合遺伝子、ゲノムティリング(genome tilling)などを評価する。
【0045】
「予後」は、疾患の自然経過中の、新生物疾患の再発及び転移性の広がりを含む癌が寄与する死亡又は癌進行の可能性又は、具体的な処置によるか否かに関わりない有益な転帰の可能性を指し、有益な応答は、全生存期間、長期生存(即ち診断、手術又は他の処置後少なくとも3、好ましくは少なくとも5、8又は10年間にわたる生存)、無再発生存及び無遠隔再発生存を含むが限定されない、患者状態の何らかの目安における改善を意味する。従って、「良好な予後」又は「好ましい予後」とは、本明細書中で使用される場合、再発のない長期生存などの有益な臨床転帰を指し;「予後不良」又は「好ましくない予後」は、癌再発などの好ましくない臨床転帰を指す。
【0046】
「前立腺癌」は、本明細書中で使用される場合、前立腺、男性生殖系の管状胞状外分泌腺における癌を指す。前立腺癌を発症するリスクを上昇させる要因としては、加齢、前立腺癌の家族歴及び人種が挙げられるが限定されない。世界保健機構は、前立腺癌症例の約99%が50歳を超える男性で起こっていると推定している。前立腺癌は、罹患細胞タイプに依存して2つの群に分類され得る。前立腺腺癌は、前立腺癌の第一及び主要な群である。これは前立腺癌の95%前後を占め、前立腺管の腺房から発生する。これらは、前側及び中央の前立腺(30%)よりも後側/周辺部の前立腺において一般的に(70%)生じる。症例の5%前後で広がりが顕著に少ない、前立腺癌の第2の群は、前立腺肉腫である。前立腺癌のこの稀で不均一な群は、前立腺におけるか又はその周辺の間葉系細胞から生じる。前立腺肉腫としては、前立腺の横紋筋肉腫、前立腺の平滑筋肉腫、前立腺の肉腫様癌腫、前立腺の悪性線維性組織球腫、葉状腫瘍(前立腺の葉状嚢胞肉腫とも呼ばれる)及び前立腺の未分化間質性肉腫が挙げられるが限定されない。前立腺癌は様々な臨床挙動を有し得る。本明細書中で使用される場合、「低悪性度前立腺癌」という用語は、より高いステージの疾患に発展しそうにない前立腺癌を定義するために使用される。このような前立腺癌は、本明細書中で「低再発リスク前立腺癌」、「無生化学的再発前立腺癌」又は「非再発前立腺癌」とも呼ばれる。本明細書中で使用される場合、「高悪性度前立腺癌」という用語は、より高いステージの疾患に発展すると思われる前立腺癌を定義するために使用される。このような前立腺癌は、「高再発リスク前立腺癌」、「生化学的再発性前立腺癌」又は「再発性前立腺癌」とも呼ばれる。
【0047】
「前立腺癌試料」は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の癌細胞又は1つ以上の癌細胞の断片を含有する前立腺組織試料を指す。当業者は、外科的切除、生検又は体液など、癌組織を得るために使用される方法に依存して、このような試料が、他の生体構成要素、例えば組織学的に正常に見える細胞(例えば前立腺癌に隣接)をさらに含み得ることを認識する。
【0048】
「再発」は、本明細書中で使用される場合、癌の局所的な又は遠隔での再発(即ち転移)を指す。例えば、前立腺癌は、前立腺の隣の組織において又は精嚢において局所的に再発し得る。この癌は、骨盤又はこの領域外のリンパ節における周囲のリンパ節にも影響を与え得る。前立腺癌は、骨盤筋、骨又は他の臓器など、前立腺の隣の組織にも広がり得る。再発は、例えば画像検査若しくは生検により検出される臨床的再発又は例えば持続的フォローアップ前立腺特異的抗原(PSA)レベル>0.4ng/mL又はPSAレベル上昇の結果としての救援療法の開始により検出される生化学的再発により判定され得る。
【0049】
「参照集団」、「コホート」、「コホート試験」は、本明細書中で使用される場合、交換可能であり、共通の要因、影響又は状態がある対象の群を指す。
【0050】
「リスク分類」は、本明細書中で使用される場合、対象が特定の臨床転帰を経験するリスクレベル(又は可能性)による対象の群分けを意味する。対象はリスク群に分類され得るか、又は本開示の方法に基づき、例えば高、中若しくは低リスクなど、リスクレベルで分類され得る。「リスク群」は、特定の臨床転帰に対する同様のリスクレベルがある対象又は個体の群である。
【0051】
「試料」は、本明細書中で使用される場合、当業者にとって公知の適切な方法を介して対象から得られる何らかの生体物質を指す。試料は、臨床的に許容可能な方式で、例えば細胞、核酸(DNA及びRNAなど)及び/又はタンパク質が保存される方法で回収され得る。「試料」は、身体組織及び/又は体液を含み得る。体液の例としては、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水(ascetic fluid)、嚢胞液、尿、胆汁、乳頭浸出液、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、羊水、腹水、脳脊髄液、胸水、心膜液、精液、唾液、汗及び肺胞マクロファージが挙げられるが限定されない。本発明の一実施形態では、「試料」は、腺組織由来の細胞集団を含み得、例えば試料は対象の前立腺由来であり得る。一実施形態では、細胞は、必要に応じて、得られた身体組織及び/又は体液から精製され得、次に「試料」として使用され得る。
【0052】
「シグネチャー」又は「分子シグネチャー」は、交換可能に使用され、その組み合わせた発現レベルが生物学的条件又は特定の予後又は処置に対する対象の特定の応答を示す、マーカーの群を指す。一実施形態では、シグネチャーは、少なくとも2個のマーカー群を指す。一実施形態では、シグネチャーは、少なくとも3、4、5、6又は7個のマーカー群を指す。一実施形態では、シグネチャーは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15又は16個のマーカーの群を指す。一実施形態では、シグネチャーは、少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個のマーカーの群を指す。一実施形態では、シグネチャーは、少なくとも34、35、36、37、38又は39個のマーカーの群を指す。
【0053】
「対象」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、患者、即ち医療サービスの受容者である。好ましくは、対象は癌患者であり、即ち対象は以前に癌と診断されている。
【0054】
「手術」は、本明細書中で使用される場合、骨盤リンパ液腺摘出、根治前立腺切除術、前立腺の経尿道的切除(TURP)、切除術、切開及び腫瘍生検/除去を含む癌組織の除去のために行われる手術的方法に当てられる。本発明によるマーカーの発現レベルを決定するために使用される前立腺試料は、これらの方法の何れかから得られたものであり得る。
【0055】
「治療」としては、本明細書中で使用される場合、放射線、ホルモン療法、冷凍療法、化学療法、生物学的療法及び高密度焦点式超音波療法が挙げられる。
【0056】
「TMPRSS2/ERG融合」は、本明細書中で使用される場合、前立腺癌との意義ある関連を有することが示されている、アンドロゲン推進5’-TMPRSS2遺伝子へのERG癌遺伝子の融合を指す(Tomlins et al.,2005.Science.310(5748):644-8;Narod et al.,2008.Br J Cancer.99(6):847-51)。本明細書中で使用される場合、陽性TMPRSS/ERG融合状態(「Fus+」とも呼ばれる)は、組織試料中でTMPRSS/ERG融合が存在することを示し、一方で陰性TMPRSS/ERG融合状態(「Fus-」とも呼ばれる)は、組織試料中にTMPRSS/ERG融合が存在しないことを示す。
【0057】
詳細な説明
本発明は前立腺癌の分子シグネチャーに関し、この分子シグネチャーは、低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌の間で発現レベルが異なるマーカーを含む。言い換えると、本発明は、前立腺癌の分子シグネチャーに関し、この分子シグネチャーはマーカーの発現レベルにより定められ、これは低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌の間で異なる。
【0058】
一実施形態では、本発明の分子シグネチャーは、低悪性度前立腺癌に特異的である。一実施形態では、本発明の分子シグネチャーは高悪性度前立腺癌に特異的である。
【0059】
一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、少なくとも1個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、1個のマーカーを含むか又はそれからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、少なくとも2個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、2個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、少なくとも3、4、5又は6個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、3、4、5又は6個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、少なくとも7又は8個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、7又は8個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14又は15個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、8、9、10、11、12、13、14又は15個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17又は18個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、前立腺癌の分子シグネチャーは、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、少なくとも34、35、36、37、38又は39個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、34、35、36、37、38又は39個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、少なくとも34、35、36、37、38、39又は40個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、34、35、36、37、38、39又は40個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、少なくとも39個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、39個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、40個のマーカーを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは少なくとも40個のマーカーを含む。
【0060】
本願は従って、発現レベルが低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌の間で異なる1個又はいくつかのマーカーにも関する。低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌の間で発現が異なるマーカーを、本明細書中で以後、「前立腺癌マーカー」と呼ぶ。
【0061】
前立腺癌マーカーを決定するための方法は熟練者から周知であり、再発転帰が知られる対象からの試料中のトランスクリプトーム(発現がマーカーの転写に関連する実施形態において)又はプロテオーム(発現がマーカーの翻訳に関連する実施形態において)を比較することを含むが限定されない。
【0062】
本発明の一実施形態では、t-検定により、偽陽性率(FDR)補正後のp-値が0.05より低く、好ましくは0.01より低い場合、マーカーは、低悪性度前立腺癌及び高悪性度前立腺癌の状態において異なって発現されると考えられる。
【0063】
一実施形態では、前立腺癌マーカーは、CD38及びCOMPを含むか又はそれらからなる2つの前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の2つの前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、CD38及びCOMPを含むか又はそれらからなる一連の2つの前立腺癌マーカーにも関する。
【0064】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる6個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の6個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる一連の6個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0065】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる7個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の7個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる一連の7個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0066】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含むか又はそれらからなる8個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の8個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含むか又はそれらからなる一連の8個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0067】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる15個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の15個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる一連の15個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0068】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる16個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の16個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる一連の16個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0069】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6を含むか又はそれらからなる16個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の16個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6を含むか又はそれらからなる一連の16個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0070】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含むか又はそれらからなる18個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の18個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含むか又はそれらからなる一連の18個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0071】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる33個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の33個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる一連の33個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0072】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる39個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の39個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる一連の39個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0073】
別の実施形態では、前立腺癌マーカーは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2、TMPRSS/ERG及びVCANを含むか又はそれらからなる40個の前立腺癌マーカーの一覧から選択される。このように本発明は一連の40個の前立腺癌マーカーにも関する。従って、本発明は、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2、TMPRSS/ERG及びVCANを含むか又はそれらからなる一連の40個の前立腺癌マーカーにも関する。
【0074】
本明細書中で使用される場合、「ACADL」は、Entrez遺伝子番号33のアシル-CoAデヒドロゲナーゼ長鎖をコードする遺伝子を指す。
【0075】
本明細書中で使用される場合、「AFF3」は、Entrez遺伝子番号3899のAF4/FMR2ファミリーメンバー3をコードする遺伝子を指す。
【0076】
本明細書中で使用される場合、「ANO7」は、Entrez遺伝子番号50636のアノクタミン7をコードする遺伝子を指す。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「ANPEP」は、Entrez遺伝子番号290のアラニルアミノペプチダーゼをコードする遺伝子を指す。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「ANTXR1」は、Entrez遺伝子番号84168の炭疽毒素受容体1をコードする遺伝子を指す。
【0079】
本明細書中で使用される場合、「ASPN」は、Entrez遺伝子番号54829のアスポリンをコードする遺伝子を指す。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「AZGP1」は、Entrez遺伝子番号563のα-2-糖タンパク質1をコードする遺伝子を指す。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「CD38」は、Entrez遺伝子番号952のCD38をコードする遺伝子を指す。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「CDH11」は、Entrez遺伝子番号1009のカドヘリン11をコードする遺伝子を指す。
【0083】
本明細書中で使用される場合、「CHRNA2」は、Entrez遺伝子番号1135のコリン作動性受容体ニコチン性α2サブユニットをコードする遺伝子を指す。
【0084】
本明細書中で使用される場合、「COL1A1」は、Entrez遺伝子番号1277のI型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子を指す。
【0085】
本明細書中で使用される場合、「COL1A2」は、Entrez遺伝子番号1278のI型コラーゲンα2鎖をコードする遺伝子を指す。
【0086】
本明細書中で使用される場合、「COL3A1」は、Entrez遺伝子番号1281のIII型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子を指す。
【0087】
本明細書中で使用される場合、「COL8A1」は、Entrez遺伝子番号1295のVIII型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子を指す。
【0088】
本明細書中で使用される場合、「COL10A1」は、Entrez遺伝子番号1300のX型コラーゲンα1鎖をコードする遺伝子を指す。
【0089】
本明細書中で使用される場合、「COMP」は、Entrez遺伝子番号1311の軟骨オリゴマー基質タンパク質をコードする遺伝子を指す。
【0090】
本明細書中で使用される場合、「CPXM2」は、Entrez遺伝子番号119587のカルボキシペプチダーゼX、M14ファミリーメンバー2をコードする遺伝子を指す。
【0091】
本明細書中で使用される場合、「CXCL14」は、Entrez遺伝子番号9547のC-X-Cモチーフケモカインリガンド14をコードする遺伝子を指す。
【0092】
本明細書中で使用される場合、「FAM3B」は、Entrez遺伝子番号54097の配列類似性3を伴うファミリーのメンバーB(family with sequence similarity 3 member B)をコードする遺伝子を指す。
【0093】
本明細書中で使用される場合、「FMOD」は、Entrez遺伝子番号2331のフィブロモジュリンをコードする遺伝子を指す。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「FRZB」は、Entrez遺伝子番号2487のフリズルド(frizzled)関連タンパク質をコードする遺伝子を指す。
【0095】
本明細書中で使用される場合、「GPT2」は、Entrez遺伝子番号84706のグルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ2をコードする遺伝子を指す。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「HGD」は、Entrez遺伝子番号3081のホモゲンチジン酸1,2-ジオキシゲナーゼをコードする遺伝子を指す。
【0097】
本明細書中で使用される場合、「ITGBL1」は、Entrez遺伝子番号9358のインテグリンサブユニットβ様1(integrin subunit β like 1)をコードする遺伝子を指す。
【0098】
本明細書中で使用される場合、「KHDRBS3」は、Entrez遺伝子番号10656のシグナル伝達関連3(signal transduction associated 3)を含有するKH RNA結合ドメインをコードする遺伝子を指す。
【0099】
本明細書中で使用される場合、「MGP」は、Entrez遺伝子番号4256のマトリクスGlaタンパク質をコードする遺伝子を指す。
【0100】
本明細書中で使用される場合、「MS4A6A」は、Entrez遺伝子番号64231の膜貫通4-ドメインA6Aをコードする遺伝子を指す。
【0101】
本明細書中で使用される場合、「NCAPD3」は、Entrez遺伝子番号23310の非SMCコンデンシンII複合体サブユニットD3をコードする遺伝子を指す。
【0102】
本明細書中で使用される場合、「NOX4」は、Entrez遺伝子番号50507のNADPHオキシダーゼ4をコードする遺伝子を指す。
【0103】
本明細書中で使用される場合、「REPS2」は、Entrez遺伝子番号9185の2を含有するRALBP1関連Epsドメインをコードする遺伝子を指す。
【0104】
本明細書中で使用される場合、「SFRP2」は、Entrez遺伝子番号6423の分泌型フリズルド(frizzled)関連タンパク質2をコードする遺伝子を指す。
【0105】
本明細書中で使用される場合、「SFRP4」は、Entrez遺伝子番号6424の分泌型フリズルド(frizzled)関連タンパク質4をコードする遺伝子を指す。
【0106】
本明細書中で使用される場合、「SLC15A2」は、Entrez遺伝子番号6565の溶質担体ファミリー15メンバー2をコードする遺伝子を指す。
【0107】
本明細書中で使用される場合、「SLC22A3」は、Entrez遺伝子番号6581の溶質キャリアファミリー22メンバー3をコードする遺伝子を指す。
【0108】
本明細書中で使用される場合、「SPARC」は、Entrez遺伝子番号6678の酸性でありシステインに富む分泌型タンパク質をコードする遺伝子を指す。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「STXBP6」は、Entrez遺伝子番号29091のシンタキシン結合タンパク質6をコードする遺伝子を指す。
【0110】
本明細書中で使用される場合、「SULF1」は、Entrez遺伝子番号23213のスルファターゼ1をコードする遺伝子を指す。
【0111】
本明細書中で使用される場合、「THBS2」は、Entrez遺伝子番号7058のトロンボスポンジン2をコードする遺伝子を指す。
【0112】
本明細書中で使用される場合、「VCAN」は、Entrez遺伝子番号1462のバーシカンをコードする遺伝子を指す。
【0113】
本明細書中で使用される場合、「TMPRSS/ERG」は、ERG癌遺伝子(Entrez遺伝子番号2078)のアンドロゲン駆動型TMPRSS2遺伝子(Entrez遺伝子番号7113)の融合物を指す。
【0114】
一実施形態では、本発明による分子シグネチャーは、CD38及びCOMPを含むか又はそれらからなる群から選択される、少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個のマーカーを含むか又はそれらからなる。
【0115】
一実施形態では、シグネチャーは、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5又は6個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0116】
一実施形態では、シグネチャーは、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6又は7個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0117】
一実施形態では、シグネチャーは、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7又は8個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0118】
一実施形態では、シグネチャーは、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0119】
一実施形態では、シグネチャーは、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0120】
一実施形態では、シグネチャーは、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0121】
一実施形態では、シグネチャーは、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0122】
一実施形態では、シグネチャーは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0123】
一実施形態では、シグネチャーは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0124】
一実施形態では、シグネチャーは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2、TMPRSS/ERG及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40個の前立腺癌マーカーを含むか又はそれらからなる。
【0125】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、CD38及びCOMPを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-COMPは過小発現され、
-CD38は過剰発現される。
【0126】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5又は6個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-COMP、KHDRBS3及びSFRP4は過小発現され、
-ANPEP、AZGP1及びCHRNA2は過剰発現される。
【0127】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6又は7個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ASPN、COL10A1、COMP、CXCL14及びSFRP4は過小発現され、
-CD38及びNCAPD3は過剰発現される。
【0128】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7又は8個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4は過小発現され、
-ANPEP、AZGP1及びCHRNA2は過剰発現される。
【0129】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-COL1A1、COMP、KHDRBS3、SFRP4及びVCANは過小発現され、
-ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3は過剰発現される。
【0130】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ASPN、COL10A1、COMP、CXCL14、KHDRBS3、SFRP2、SFRP4及びVCANは過小発現され、
-AFF3、AZGP1、CD38、CHRNA2、FMOD、NCAPD3、SLC15A2及びSLC22A3は過剰発現される。
【0131】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、COL1A2、COL3A1、FRZB、KHDRBS3及びMS4A6Aは過小発現され、
-AFF3、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6は過剰発現される。
【0132】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、COL1A1、COL3A1、COMP、ITGBL1、KHDRBS3、SFRP4及びSPARCは過小発現され、
-ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3は過剰発現される。
【0133】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ASPN、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、KHDRBS3、MGP、NOX4、SFRP2、SFRP4、SULF1、THBS2及びVCANは過小発現され、
-ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3は過剰発現される。
【0134】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、低悪性度前立腺癌を示し、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、ASPN、CDH11、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NOX4、SFRP2、SFRP4、SPARC、SULF1、THBS2及びVCANは過小発現され、
-ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6は過剰発現される。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明によるシグネチャーは、TMPRSS/ERG融合陽性の低悪性度前立腺癌を示す。好ましい実施形態では、本発明によるシグネチャーはTMPRSS/ERG融合陰性の低悪性度前立腺癌を示さない。
【0136】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、CD38及びCOMPを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-COMPは過剰発現され、
-CD38は過小発現される。
【0137】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5又は6個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-COMP、KHDRBS3及びSFRP4は過剰発現され、
-ANPEP、AZGP1及びCHRNA2は過小発現される。
【0138】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6又は7個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ASPN、COL10A1、COMP、CXCL14及びSFRP4は過剰発現され、
-CD38及びNCAPD3は過小発現される。
【0139】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7又は8個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4は過剰発現され、
-ANPEP、AZGP1及びCHRNA2は過小発現される。
【0140】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-COL1A1、COMP、KHDRBS3、SFRP4及びVCANは過剰発現され、
-ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3は過小発現される。
【0141】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ASPN、COL10A1、COMP、CXCL14、KHDRBS3、SFRP2、SFRP4及びVCANは過剰発現され、
-AFF3、AZGP1、CD38、CHRNA2、FMOD、NCAPD3、SLC15A2及びSLC22A3は過小発現される。
【0142】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、COL1A2、COL3A1、FRZB、KHDRBS3及びMS4A6Aは過剰発現され、
-AFF3、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6は過小発現される。
【0143】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、COL1A1、COL3A1、COMP、ITGBL1、KHDRBS3、SFRP4及びSPARCは過剰発現され、
-ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3は過小発現される。
【0144】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ASPN、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、KHDRBS3、MGP、NOX4、SFRP2、SFRP4、SULF1、THBS2及びVCANは過剰発現され、
-ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3は過小発現される。
【0145】
一実施形態では、本発明によるシグネチャーは、高悪性度前立腺癌を示し、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーの発現レベルにより特徴づけられ:
-ANTXR1、ASPN、CDH11、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NOX4、SFRP2、SFRP4、SPARC、SULF1、THBS2及びVCANは過剰発現され、
-ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6は過小発現される。
【0146】
好ましい実施形態では、本発明によるシグネチャーは、TMPRSS/ERG融合陽性(Fus+)高悪性度前立腺癌を示す。好ましい実施形態では、本発明によるシグネチャーはTMPRSS/ERG融合陰性(Fus-)高悪性度前立腺癌を示さない。
【0147】
本発明の分子シグネチャーを、TMPRSS/ERG融合陽性(Fus+)前立腺癌の症例において2つの別個の疾患特異的な状況、即ち低悪性度及び高悪性度、が存在することが示された後で、コンピュータにより実行されるアルゴリズムに基づくアプローチにより同定した。目前にあるこの知識を用い、コンピュータにより実行されるアルゴリズムに基づくアプローチを使用して既存の発現データでこのようなシグネチャーを同定できることが推測された。このようなアプローチを本願の実施例セクションで記載する。
【0148】
一実施形態では、本発明の前立腺癌マーカーの発現レベルは、前立腺癌マーカーのそれらの転写レベル(即ちmRNAの発現)又はそれらの翻訳レベル(即ちタンパク質の発現)に対応する。
【0149】
一実施形態では、前立腺癌マーカーの発現レベルは、タンパク質レベルで、即ち翻訳レベルで評価される。試料中のタンパク質レベルを決定するための方法は当技術分野で周知である。このような方法の例としては、免疫組織化学、マルチプレックス法(Luminex)、ウエスタンブロット、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチELISA、蛍光連結免疫吸着アッセイ(FLISA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)などが挙げられるが限定されない。
【0150】
一実施形態では、前立腺癌マーカーの発現レベルは、RNAレベルで、即ち転写レベルで評価される。マーカーの転写レベルを評価するための方法は先行技術において周知である。このような方法の例としては、RT-PCR、RT-qPCR、ノーザンブロット、例えばマイクロアレイの使用などのハイブリッド形成技術及び、RT-PCRにより得られるアンプリコンのハイブリッド形成、配列決定、例えば次世代DNA配列決定(NGS)又はRNA-seq(「ホールトランスクリプトームショットガン配列決定」としても知られる)などを含むが限定されないそれらの組み合わせが挙げられるが限定されない。
【0151】
一実施形態では、特異的な試料中のある種の前立腺癌マーカーが過剰発現されるか又は過小発現されるかに関する決定は、参照シグネチャーとの比較において行われる。この参照シグネチャーは、ソフトウェアにおいて実行され得るか、又は全例の中央値若しくは測定全体にわたる他の算術平均が確立され得るかの何れかである。
【0152】
一実施形態では、参照シグネチャーは、同様の年齢範囲の対象、同じ又は同様の人種グループ、同様の癌の病歴の対象などを含むが限定されない集団実験由来のシグネチャーと関連し得る。
【0153】
一実施形態では、参照シグネチャーは、1つ以上の実質的に健常な対象由来の対照試料での本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルの測定由来である。本明細書中で使用される場合、「実質的に健常な対象」は、前立腺癌を有するか若しくは罹患しているものとして以前に診断されたことがないか、又は同定されたことがない。
【0154】
一実施形態では、参照シグネチャーは、同じ対象の健常組織又は試料由来の参照試料における、本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルの測定由来であり、一方で、比較される分子シグネチャーは、対象の体内で疑いがある細胞塊から採取される(即ち疑われる腫瘍由来の)試料中で測定される。
【0155】
一実施形態では、参照シグネチャーは、例えば1か月前、好ましくは6か月前、より好ましくは1年以上前に測定された発現プロファイルなど、同じ対象由来の参照試料中の本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルの以前の測定由来である。
【0156】
好ましい実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団における本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルの測定由来である。
【0157】
一実施形態では、参照集団は、実質的に健常な対象、好ましくは少なくとも50名、より好ましくは少なくとも100名、より好ましくは少なくとも200名及びさらにより好ましくは少なくとも500名の実質的に健常な対象を含む。
【0158】
好ましい実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは前立腺癌と診断された、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、より好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0159】
さらなる好ましい実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは前立腺癌と診断され、転帰が知られる、即ち前立腺癌再発状態が知られる、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、より好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0160】
さらなる好ましい実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは低悪性度前立腺癌と診断された、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、より好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0161】
さらなる好ましい実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは高悪性度前立腺癌と診断された、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、より好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0162】
参照集団からの多数の試料を暗示することにより、それぞれ各遺伝子に対する中央値及び/又は平均発現レベルを計算することが想定される。これらの結果に関して、過剰発現されるか又は過小発現されるものとして個々の遺伝子発現値を監視し得る。一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団で測定される本発明のシグネチャーの前立腺癌マーカーの平均発現レベルに対応する。一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団中で測定される本発明のシグネチャーの前立腺癌マーカーの中央値発現レベルに対応する。
【0163】
一実施形態では、参照シグネチャーを、統計学的及び構造分類のアルゴリズム及び他の方法を使用して構築する。参照集団からの試料を使用して、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーにおける平均プロファイルを計算する。これらの平均プロファイルを、(1)低リスクPCa、(2)高リスクPCa及び(3)正常隣接組織、の3つの参照群について計算し、以後「群セントロイド」と呼ぶ。一実施形態では、セントロイドをセンタリングする。一実施形態では、セントロイドを前立腺癌マーカーにより調整する。一実施形態では、セントロイドをセンタリングし、前立腺癌マーカーにより調整する。セントロイド分類に基づく遺伝子発現プロファイリングからの癌クラス予測は、当業者から周知の技術である。例えばTibshirani et al.,2002.Proc Natl Acad Sci USA.99(10):6567-72;Dabney,2005.Bioinformatics.21(22):4148-54;及びShen et al.,2009.J Biomed Inform.42(1):59-65を参照し得る。
【0164】
一実施形態では、新しい対象を、上記対象からの試料のプロファイルがそれぞれ低リスク、高リスク又は未定義セントロイドと最大の相関がある場合、低リスク、高リスク又は未定義に割り当てる。
【0165】
本発明は、本発明の分子シグネチャーを使用する、前立腺癌罹患対象における前立腺癌再発のリスクを予測するための方法にも関する。
【0166】
本発明は、本発明の分子シグネチャーを使用する、前立腺癌罹患対象において低悪性度前立腺癌と高悪性度前立腺癌とを判別するための方法にも関する。
【0167】
本発明は、本発明の分子シグネチャーを使用する、対象における前立腺癌の進行について予後診断するための方法にも関する。
【0168】
本発明は、本発明の分子シグネチャーを使用する、前立腺癌罹患対象において低悪性度前立腺癌を診断するための方法にも関する。
【0169】
本発明は、本発明の分子シグネチャーを使用する、前立腺癌罹患対象における個別の処置のコースを決定するための方法にも関する。
【0170】
一実施形態では、本発明の方法は、対象の試料中で本発明による分子シグネチャーを決定する段階を含む。
【0171】
「試料」という用語は、本明細書中で使用される場合一般に、マーカー、好ましくは本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルについて試験され得る何らかの試料を指す。
【0172】
一実施形態では、本発明の方法は、対象からの試料を提供する段階を含む。
【0173】
一実施形態では、試料は身体組織試料である。身体組織の例としては、前立腺、筋肉、神経、脳、心臓、肺、肝臓、膵臓、脾臓、胸腺、食道、胃、腸、腎臓、精巣、卵巣、毛髪、皮膚、骨、乳房、子宮、膀胱及び脊髄が挙げられるが限定されない。
【0174】
一実施形態では、試料は前立腺組織試料である。従って、この実施形態によれば、本発明の方法は、対象からの前立腺組織試料を提供する段階を含む。
【0175】
一実施形態では、試料は、生検試料、好ましくは前立腺生検試料、より好ましくは前立腺癌生検試料である。一実施形態では、試料は、穿刺吸引試料、好ましくは前立腺穿刺吸引試料、より好ましくは前立腺癌穿刺吸引試料である。一実施形態では、試料は、切除試料、好ましくは前立腺切除試料、より好ましくは前立腺癌切除試料である。本明細書中で使用される場合、「前立腺切除術」という用語は、前立腺の全て又は一部の除去を定義するために使用される。従って一実施形態では、試料は前立腺切除術後の前立腺組織試料である。
【0176】
一実施形態では、試料は体液である。体液の例としては、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水(ascetic fluid)、嚢胞液、尿、胆汁、乳頭浸出液、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、羊水、腹水、脳脊髄液、胸水、心膜液、精液、唾液、汗及び肺胞マクロファージが挙げられるが限定されない。
【0177】
一実施形態では、試料は対象から以前に採取されており、即ち本発明の方法は、対象から試料を回収する段階を含まない。結果的に、この実施形態によれば、本発明の方法は非侵襲的方法である。
【0178】
一実施形態では、本発明の方法は、対象からの上記試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階を含む。
【0179】
当業者は、試料中のTMPRSS/ERG融合状態を決定するための手段及び方法に慣れている。これらは、rt-PCR、qPCR又はハイスループット配列決定(Mertz et al.,2007.Neoplasia.9(3):200-206;Maher et al.,2009.Nature.458(7234):97-101)の使用を含む。より最近、免疫組織化学試験(Chaux et al.,2011.Am J Surg Pathol.35(7):1014-20)及び尿に基づく検査(Koo et al.,2016.Sci Rep.6:30722)を含むが限定されない、迅速で費用効果が高いTMPRSS/ERG状態の決定のために診断検査が開発された。
【0180】
一実施形態では、本発明の方法は、対象からの上記試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階を含む。
【0181】
一実施形態では、対象からの試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階は、試料のTMPRSS/ERG融合状態が陽性(Fus+)を示した場合にのみ行われる。
【0182】
一実施形態では、分子シグネチャーを決定する段階は、試料からトータルRNAを抽出するサブ段階を含む。
【0183】
一実施形態では、分子シグネチャーを決定する段階は、試料から抽出されるトータルRNAを逆転写し、それによりトータルcDNAを得るサブ段階を含む。
【0184】
一実施形態では、分子シグネチャーを決定する段階は、PCRにより、好ましくはqPCRにより、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカー、例えば本明細書中上記のような8、15、18又は39個の前立腺癌マーカーに対応するcDNAを増幅するサブ段階を含む。
【0185】
一実施形態では、分子シグネチャーを決定する段階は、本発明による、少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカー、例えば本明細書中上記のような8、15、18又は39個の前立腺癌マーカーなど、の発現レベルを測定するサブ段階を含む。
【0186】
一実施形態では、少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーの発現レベルを、DNAマイクロアレイを使用して測定し、本発明の分子シグネチャーの前立腺癌マーカーのそれぞれの発現レベルが同時に測定されるようにする。
【0187】
一実施形態では、少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーの発現レベルは、RNAseqを使用して測定される。
【0188】
一実施形態では、少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカーの発現レベルは、CodeSetを使用して測定される。マーカーのある種のパネル(例えば本明細書中で開示される前立腺癌マーカーに対する)に対するCustom CodeSetsは商業的に明示可能である。これらは、nCounter(登録商標)Custom CodeSets(NanoString)(Malkov et al.,2009.BMC Res Notes.2:80;Kulkarni,2011.Curr Protoc Mol Biol.Chapter 25:Unit25B.10)を含むが限定されない。
【0189】
一実施形態では、本発明の方法は、対象の試料から決定される分子シグネチャーを参照シグネチャーと比較する段階を含む。
【0190】
参照シグネチャーは、ソフトウェアおいて実行され得るか、又は全例の中央値若しくは測定全体にわたる他の算術平均が確立され得るかの何れかである。
【0191】
一実施形態では、参照シグネチャーは、同様の年齢範囲の対象、同じ又は同様の人種グループ、同様の癌の病歴の対象などを含むが限定されない集団実験由来のシグネチャーに関する。
【0192】
一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団における、本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルの測定由来である。
【0193】
一実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは前立腺癌と診断された、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、さらにより好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0194】
好ましい実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは前立腺癌と診断され、転帰が知られている、即ち前立腺癌再発状態が知られている、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、さらにより好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0195】
さらなる好ましい実施形態では、参照集団は、前立腺癌と診断された対象、好ましくは低悪性度前立腺癌と診断された、少なくとも100名、より好ましくは少なくとも250名、さらにより好ましくは少なくとも500名の対象を含む。
【0196】
参照集団からの多数の試料を包含することにより、それぞれ各前立腺癌マーカーに対する中央値及び/又は平均発現レベルを計算することが想定される。これらの結果に関して、個々の前立腺癌マーカー発現値を、上方制御(若しくは過剰発現)されるか又は下方制御(若しくは過小発現)されるものとして監視し得る。一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団で測定される本発明のシグネチャーの前立腺癌マーカーの平均発現レベルに対応する。一実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団中で測定される本発明のシグネチャーの前立腺癌マーカーの中央値発現レベルに対応する。
【0197】
一実施形態では、参照シグネチャーは、統計学的及び構造分類のアルゴリズム及び他の方法を使用して構築される。好ましい実施形態では、参照シグネチャーは、参照集団からの試料中の、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39個の前立腺癌マーカー(例えば本明細書中上記のような8、15、18又は39個の前立腺癌マーカー)における平均プロファイルの計算に対応する。これらの平均プロファイルを(1)低リスクPCa、(2)高リスクPCa及び(3)正常隣接組織、の3つの参照群に対して計算し、「群セントロイド」と呼ぶ。セントロイドをセンタリングし、及び/又は前立腺癌マーカーにより調整し得る。
【0198】
一実施形態では、前立腺癌マーカーは、参照シグネチャーと比較したときに両発現レベルが少なくとも1.15、好ましくは少なくとも1.55、より好ましくは少なくとも25及びさらにより好ましくは少なくとも5倍異なる場合、対象からの試料中で異なって発現される(即ち過剰発現又は過小発現)ものとみなされる。
【0199】
一実施形態では、本発明の方法は、参照シグネチャーとの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当てる段階を含む。
【0200】
一実施形態では、対象は低再発リスク群に割り当てられ得る。本明細書中で使用される場合、「低再発リスク群」又は「低リスク群」という用語は、前立腺癌が疾患のより高いステージに進展しないと思われる対象の群を指し、即ちこれらの対象は低再発リスク前立腺癌(低悪性度前立腺癌、無生化学的再発の前立腺癌又は非再発前立腺癌とも呼ばれる)と診断される。
【0201】
一実施形態では、「低再発リスク」は、2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に対象において前立腺癌の遠隔転移がないと予想されることを意味する。一実施形態では、「低再発リスク」は、2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に対象において前立腺癌の生化学的再発がないと予想されることを意味する。一実施形態では、「低再発リスク」は、2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に対象において前立腺癌の再発がないと予想されることを意味する。
【0202】
一実施形態では、対象は高再発リスク群に割り当てられ得る。本明細書中で使用される場合、「高再発リスク群」又は「高リスク群」という用語は、前立腺癌が疾患のより高いステージの疾患に進展すると思われる対象の群を指し、即ちこれらの対象は高再発リスク前立腺癌(高悪性度前立腺癌、生化学的に再発する前立腺癌又は再発前立腺癌とも呼ばれる)と診断される。
【0203】
一実施形態では、「高再発リスク」は、2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に対象において前立腺癌の遠隔転移があると予想されることを意味する。一実施形態では、高再発リスクは、2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に対象において前立腺癌の生化学的再発があると予想されることを意味する。一実施形態では、高再発リスクは、2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に対象において前立腺癌の再発があると予想されることを意味する。
【0204】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-COMPから選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-CD38から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0205】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-COMP、KHDRBS3及びSFRP4から選択される少なくとも1、2、好ましくは3個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-ANPEP、AZGP1及びCHRNA2から選択される少なくとも1、2、好ましくは3個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0206】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-ASPN、COL10A1、COMP、CXCL14及びSFRP4から選択される少なくとも1、2、3、4、好ましくは5個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-CD38及びNCAPD3から選択される、少なくとも1、好ましくは2個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0207】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-ANTXR1、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4から選択される少なくとも1、2、3、4、好ましくは5個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
ANPEP、AZGP1及びCHRNA2から選択される少なくとも1、2、好ましくは3個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0208】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-COL1A1、COMP、KHDRBS3、SFRP4及びVCANから選択される少なくとも1、2、3、4、好ましくは5個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、好ましくは10個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0209】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-ASPN、COL10A1、COMP、CXCL14、KHDRBS3、SFRP2、SFRP4及びVCANから選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、好ましくは8個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-AFF3、AZGP1、CD38、CHRNA2、FMOD、NCAPD3、SLC15A2及びSLC22A3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、好ましくは8個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0210】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-ANTXR1、COL1A2、COL3A1、FRZB、KHDRBS3及びMS4A6Aから選択される少なくとも1、2、3、4、5、好ましくは6個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-AFF3、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、好ましくは10個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0211】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-ANTXR1、COL1A1、COL3A1、COMP、ITGBL1、KHDRBS3、SFRP4及びSPARCから選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、好ましくは8個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、FMOD、GPT2、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、好ましくは10個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0212】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
-ASPN、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、KHDRBS3、MGP、NOX4、SFRP2、SFRP4、SULF1、THBS2及びVCANから選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17個、好ましくは18個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
-ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2及びSLC22A3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、好ましくは15個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0213】
一実施形態では、対象は、参照シグネチャーに対して、
ANTXR1、ASPN、CDH11、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FRZB、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NOX4、SFRP2、SFRP4、SPARC、SULF1、THBS2及びVCANから選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、好ましくは23個の前立腺癌マーカーが過小発現され、
ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、AZGP1、CD38、CHRNA2、FAM3B、FMOD、GPT2、HGD、NCAPD3、REPS2、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、好ましくは16個の前立腺癌マーカーが過剰発現される場合、
低再発リスク群に割り当てられる、即ち低悪性度前立腺癌と診断される。
【0214】
一実施形態では、参照シグネチャーは、低悪性度前立腺癌と診断された対象を含む参照集団由来である。一実施形態では、参照シグネチャーは、高悪性度前立腺癌と診断された対象を含む参照集団由来である。
【0215】
一実施形態では、対象は、上記対象からの試料の分子シグネチャーがそれぞれ低リスク、高リスク又は未定義セントロイドと最大相関を有する場合、低再発リスク、高再発リスク又は非定義群に割り当てられる。
【0216】
一実施形態では、対象は、そのセントロイドがピアソン相関距離において分子シグネチャーに最も近い群が、試料に対してその群であると予測される場合、低再発リスク、高再発リスク又は非定義群に割り当てられる。
【0217】
一実施形態では、本発明の分子シグネチャー又は方法は、生化学的な無再発生存対象として対象を分類するためのものであり得、生化学的な無再発生存は、前立腺癌が進展しないこと、例えば2年、好ましくは3、5、8又は10年以内に遠隔転移を誘導しないことを意味する。
【0218】
一実施形態では、本発明のシグネチャー又は方法は、前立腺癌の遠隔再発の可能性を評価するためのものであり得る。一実施形態では、「遠隔再発」という用語は、2年以内、好ましくは3、5、8年以内、より好ましくは10年以内の再発を指す。一実施形態では、「再発」という用語は、前立腺内又は身体の他所の何れかでの癌の再出現を指し得る。
【0219】
一実施形態では、本発明のシグネチャー又は方法は、対象の全生存期間を予測するためのものであり得、全生存期間は、2年、好ましくは3、5、8年、より好ましくは10年での生存を指す。
【0220】
一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それにより対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階、
を含む。
【0221】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、CD38及びCOMPを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づきリスク群に前記対象を割り当て、それにより対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0222】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、より好ましくは6個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、より好ましくは6個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0223】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、より好ましくは7個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、より好ましくは7個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0224】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、より好ましくは8個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、より好ましくは8個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0225】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、より好ましくは15個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、より好ましくは15個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0226】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、より好ましくは16個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、より好ましくは16個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0227】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、より好ましくは16個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、より好ましくは16個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0228】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、より好ましくは18個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、より好ましくは18個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0229】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、より好ましくは33個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、より好ましくは33個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づきリスク群に対象を割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0230】
一実施形態では、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、より好ましくは39個の前立腺癌マーカーの発現を評価する。一実施形態では、本発明の方法は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANを含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、より好ましくは39個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定することにより、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階
を含む。
【0231】
一実施形態では、対象はヒトである。
【0232】
一実施形態では、対象は小児である。一実施形態では、対象は成人である。
【0233】
一実施形態では、対象は40歳を超える。一実施形態では、対象は50歳を超える。一実施形態では、対象は60歳を超える。一実施形態では、対象は70歳を超える。一実施形態では、対象は80歳を超える。
【0234】
一実施形態では、対象は0~20歳である。一実施形態では、対象は20~40歳である。一実施形態では、対象は40~50歳である。一実施形態では、対象は50~55歳である。一実施形態では、対象は55~60歳である。一実施形態では、対象は60~65歳である。一実施形態では、対象は65~70歳である。一実施形態では、対象は70~75歳である。一実施形態では、対象は75~80歳である。一実施形態では、対象は80~85歳である。一実施形態では、対象は85~90歳である。
【0235】
一実施形態では、対象は前立腺癌と診断される。別の実施形態では、対象は前立腺癌のリスクがある。リスクの例としては、前立腺癌の家族歴、前立腺癌に対する遺伝的素因、環境リスク、例えば発癌性化学物質又は他のタイプの発癌性物質への曝露、食事、臨床的要因、例えばホルモン脱制御など、又は別の癌誘発性疾患の存在などが挙げられるが限定されない。
【0236】
一実施形態では、対象は前立腺癌患者である。一実施形態では、対象は前立腺腺癌の患者である。一実施形態では、対象は前立腺肉腫の患者である。
【0237】
一実施形態では、対象は、以前に抗癌処置を受けた。一実施形態では、対象は抗癌処置を全く受けなかった。抗癌処置の例としては、腫瘍を除去するための手術、全罹患臓器を除去するための手術(本発明では、前立腺全体の除去のための手術は「前立腺切除術」と呼ばれる)、化学療法及び/又は放射線療法が挙げられるが限定されない。
【0238】
一実施形態では、対象は前立腺癌に対して以前処置を受けた。一実施形態では、対象は、この前立腺癌に関して実質的に健康であるものとみなされ、即ち処置が功を奏したとみなされる。
【0239】
一実施形態では、対象はFus+として以前に診断され、即ち、対象は陽性TMPRSS/ERG融合状態を有し、TMPRSS/ERG融合が上記対象からの試料中に存在することを示す。
【0240】
一実施形態では、対象はFus-として以前に診断され、即ち対象は陰性TMPRSS/ERG融合状態を有し、TMPRSS/ERG融合が上記対象からの試料中にないことを示す。
【0241】
熟練者は、RT-PCR、qPCR、ハイスループット配列決定(Mertz et al.,2007.Neoplasia.9(3):200-206;Maher et al.,2009.Nature.458(7234):97-101)、免疫組織化学試験(Chaux et al.,2011.Am J Surg Pathol.35(7):1014-20)及び尿に基づく検査(Koo et al.,2016.Sci Rep.6:30722)を含むが限定されない、対象においてTMPRSS/ERG融合状態を診断するための多くの方法があることを認識する。
【0242】
一実施形態では、本発明のシグネチャーは、TMPRSS/ERG融合マーカーをさらに含む。一実施形態では、本発明の方法は、対象のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階をさらに含む。
【0243】
本発明は、
a)対象からの試料を提供する段階、
b)この試料中のTMPRSS/ERG融合状態を決定する段階、
c)この試料がTMPRSS/ERG融合について陽性である場合(Fus+)、この試料の本発明による分子シグネチャーを決定する段階、
d)この分子シグネチャーを参照集団から得られる参照シグネチャーと比較する段階、
e)参照シグネチャーとこの分子シグネチャーの相関に基づき対象をリスク群に割り当て、それによりこの対象における前立腺癌再発のリスクを予測する段階、
f)段階e)で対象が低リスク群に割り当てられた場合、この対象を積極的サーベイランス下に置く段階
を含む、低悪性度前立腺癌罹患対象を処置するための方法にも関する。
【0244】
本発明は、少なくとも1個の前立腺癌マーカーの発現レベルを測定するための、本発明による試料の分子シグネチャーを決定するための、及び/又は本発明の方法を実行するための、キットにも関する。
【0245】
一実施形態では、本キットは、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段を含むか又はそれからなる。
【0246】
一実施形態では、発現プロファイルをタンパク質レベルで測定し、本発明のキットは、総タンパク質抽出のための手段ならびに本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーを検出するための抗体を含むか又はそれからなる。
【0247】
別の実施形態では、発現プロファイルをRNAレベルで測定し、本発明のキットは、トータルRNA抽出のための手段、トータルRNAの逆転写のための手段及び、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに対応するRNAの発現レベルを定量するための手段を含むか又はそれらからなる。
【0248】
一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段は、上記前立腺癌マーカーに特異的な、PCRプライマー、好ましくはqPCRプライマーである。一実施形態では、少なくとも1個の前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための上記手段は、本明細書中上記のqPCRプライマーにより得られるqPCRアンプリコンを検出するためのプローブを含む。
【0249】
一実施形態では、本発明による前立腺癌マーカーに対応するRNAの発現レベルを定量するための上記手段は、PCR、好ましくはqPCRである。
【0250】
一実施形態では、本発明のキットは、参照遺伝子を増幅するためのプライマーも含み得る。参照遺伝子は、様々な組織及び/又は条件間で一定レベルで発現される遺伝子である。参照遺伝子の例としては、β-アクチン、リボソームタンパク質コードする遺伝子などが挙げられるが限定されない。
【0251】
一実施形態では、本発明のキットは、トータルRNA抽出のための手段、トータルRNAの逆転写のための手段及び本明細書中上記のように定量的PCRを実施するための試薬も含み得る(例えばプライマー、緩衝液、酵素など)。一実施形態では、本発明のキットは参照試料も含み得る。
【0252】
本発明の一実施形態では、本発明のキットは、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーを検出するためにqPCRアンプリコンとハイブリッド形成させ得るDNAプローブを含む。
【0253】
一実施形態では、本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段は、本明細書中上記のような少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなるマイクロアレイである。
【0254】
一実施形態では、本発明の前立腺癌マーカーに対応するRNAの発現レベルを定量するための上記手段はマイクロアレイである。従って、本発明は、本発明の少なくとも1つの前立腺癌マーカのRNA発現プロファイルを測定するための、本発明による分子シグネチャーを決定するための、及び/又は本発明の方法を実行するためのマイクロアレイにも関する。
【0255】
一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、DNAプローブを含むか又はそれらからなり、これは、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに対応する逆転写RNAとハイブリッド形成させ得る。
【0256】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0257】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくはCD38及びCOMPから選択される少なくとも2個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0258】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、より好ましくは6個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0259】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ASPN、CD38、COL10A1、COMP、CXCL14、NCAPD3及びSFRP4から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、より好ましくは7個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0260】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3、MS4A6A及びSFRP4から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、より好ましくは8個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0261】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ACADL、ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COMP、FMOD、GPT2、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANから選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、より好ましくは15個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0262】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、AFF3、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL10A1、COMP、CXCL14、FMOD、KHDRBS3、NCAPD3、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びVCANから選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、より好ましくは16個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0263】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、AFF3、ANTXR1、CHRNA2、COL1A2、COL3A1、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MS4A6A、NCAPD3、SLC15A2、SLC22A3及びSTXBP6から選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、より好ましくは16個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0264】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ACADL、ANPEP、ANTXR1、AZGP1、CHRNA2、COL1A1、COL3A1、COMP、FMOD、GPT2、ITGBL1、KHDRBS3、NCAPD3、REPS2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3及びSPARCから選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、より好ましくは18個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0265】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ASPN、AZGP1、CD38、CHRNA2、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COL10A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、KHDRBS3、MGP、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SULF1、THBS2及びVCANから選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、より好ましくは33個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0266】
本発明の一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、ACADL、AFF3、ANO7、ANPEP、ANTXR1、ASPN、AZGP1、CD38、CDH11、CHRNA2、COL10A1、COL1A1、COL1A2、COL3A1、COL8A1、COMP、CPXM2、CXCL14、FAM3B、FMOD、FRZB、GPT2、HGD、ITGBL1、KHDRBS3、MGP、MS4A6A、NCAPD3、NOX4、REPS2、SFRP2、SFRP4、SLC15A2、SLC22A3、SPARC、STXBP6、SULF1、THBS2及びVCANから選択される少なくとも1個の前立腺癌マーカー、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、より好ましくは39個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブを含むか又はそれらからなる。
【0267】
一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブは市販されており、当業者により容易に購入され得る。
【0268】
少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブの例としては、Human Gene 2.1ST Array(Affymetrix)からのプローブが挙げられる。一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なHuman Gene 2.1ST Array(Affymetrix)からのプローブを表1で列挙する。
【0269】
少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブのさらなる例としては、Human Exon 1.0ST Array(Affymetrix)からのプローブが挙げられる。一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なHuman Exon 1.0ST Array(Affymetrix)からのプローブを表1で列挙する。
【0270】
少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブのさらなる例としては、HTA-2_0 Array(Affymetrix)からのプローブが挙げられる。一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なHTA-2_0 Array(Affymetrix)からのプローブを表1で列挙する。
【表1】
表1:Human Gene 2.1ST Array(Affymetrix)、Human Exon 1.0ST Array(Affymetrix)及びHTA-2_0 Array(Affymetrix)からの本発明による前立腺癌マーカーに特異的なプローブの転写物クラスターID。プローブ配列は、affymetrix.comにおいてNetAffx(商標)Analysis Centerで入手可能である。
【0271】
少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブのさらなる例としては、HumanHT-12 v4 Array(Illumina)からのプローブが挙げられる。一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なHumanHT-12 v4アレイ(Illumina)からのプローブを表2で列挙する。
【表2】
表2:HumanHT-12 v4 Array(Illumina)からの本発明による前立腺癌マーカーに特異的なプローブのプローブID、配列及び配列番号。プローブ配列はillumina.comで入手可能である。
【0272】
一実施形態では、本発明による少なくとも1個の前立腺癌マーカーに特異的なプローブは、表1及び/又は表2のプローブを含むか又はそれらからなる群から選択される。
【0273】
一実施形態では、本発明のマイクロアレイは、クオリティーコントロール遺伝子のためのプローブも含み得る。クオリティーコントロール遺伝子発現は、マイクロアレイの品質及び/又はマイクロアレイに適用されるcDNAの品質を検証することを可能にする。
【0274】
本発明の一実施形態では、本発明のキットは、トータルRNA抽出のための手段、トータルRNAの逆転写のための手段及び本発明のマイクロアレイ並びに緩衝液及びその使用のための材料も含み得る。一実施形態では、本発明のキットは参照試料も含む。
【0275】
一実施形態では、本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段は、配列決定手段であり、好ましくはハイスループット配列決定技術を使用して、より好ましくはRNA-Seq技術を使用して、トータルRNA、好ましくはmRNA,又は対象からの試料のトータルcDNAの配列決定を可能になす。
【0276】
試料のcDNAの総配列決定のための手段の例としては、ポリ(T)オリゴ、ポリ(T)磁気ビーズ、リボソームRNA除去のためのプローブ、逆転写酵素、エマルジョンPCR緩衝液及び試薬、ブリッジ増幅緩衝液及び試薬、リガーゼなどが挙げられるが限定されない。
【0277】
一実施形態では、本発明による前立腺癌マーカーの発現レベルを決定するための手段は、上記前立腺癌マーカーのためのCodeSetである。マーカーのある一定のパネルのためのカスタムCodeSetが市販されている。これらとしては、nCounter(登録商標)Custom CodeSets(NanoString)が挙げられるが限定されない。
【0278】
実施例
本発明を次の実施例によりさらに例示する。
【0279】
実施例1:mRNA発現及びDNAメチル化の分析は、3個の別個の前立腺腺癌分子サブタイプを明らかにする
材料及び方法
CITコホートに含まれる患者及び試料
CIT(Cartes d’Identite des Tumeurs(登録商標))後ろ向きコホート試験は、CHU Poitiers、CHU Pointe a Pitre/abymes、GH Pitie-Salpetriere,CHU Brest,CHU Lille及びTenon病院からのローカライズされたPCaを有する130名の患者を含んだ。全患者が、その地域のResearch Ethics Boardガイドラインと整合性がある書面のインフォームドコンセントを提出した。試験プロトコール(CeRePP-PROGENE)はCPP Ile-de-France IV Institutional Review Board(IRB00003835)により承認された。
【0280】
全部で195検体の試料:130検体の腫瘍及び65検体の正常隣接試料がCITコホートに含まれた。専門の泌尿器病理学者が全ての腫瘍検体を中央審査した。患者PSAレベルが0.2ng/mLを上回って上昇し、続いて根治的前立腺切除術の後にさらに上昇した場合、生化学的再発を報告した。試料の詳細を表3に与える。
【表3】
表3:S1、S2及びS3腫瘍サブタイプの臨床特徴(CIT+TCGAコホート)
【0281】
手順
CIT試料を、mRNA発現アレイ(E-MTAB-6128)、DNAメチル化アレイ(E-MTAB-6131)及びSNPアレイ(E-MTAB-6126)において、分析した。プロファイリングプロトコールを下記で詳述する。
【0282】
Broad GDAC Firehose(doi:10.7908/C11G0KM9)からCancer Genome Atlas(TCGA)データをダウンロードした。
【0283】
発明者らは、イン・シリコ法を使用して、Illumina Human Methylation 450アレイで解析した各試料中の腫瘍細胞の割合を推定した。前立腺腺癌腫瘍の分子サブグループを同定するために、発明者らは、コンセンサスクラスタリング法を使用して、mRNA発現データ及びDNAメチル化データの分類を行った。
【0284】
発明者らのサブタイプの妥当性を評価するために、発明者らは、TCGA mRNA及びメチル化データにおいて同じアプローチを使用し得られたCIT及びTCGAサブタイプの平均プロファイル間のピアソン相関を計算した。
【0285】
mRNAに基づく予測変数(以下で詳述)を確立して、4つの独立した公開データセットにおいて腫瘍サブタイプを予測し、それらと予後との関連を測定した。
【0286】
DNA及びmRNA抽出及び調製
DNA及びトータルRNAを、QiagenからのAllPrep DNA/RNA Kitの改変プロトコールを使用して179検体の凍結試料から同時に抽出した。2つの段階を改変した:RNA精製の最初の段階中に1.5体積のエタノール100%をRNAフロースルーに添加し、RW1緩衝液の代わりにRWT緩衝液でカラムを洗浄した。他の段階は全て、製造者のプロトコールに準じて行った。
【0287】
フェノール/クロロホルム標準プロトコール及びQiagenからのmiRNeasy Mini Kitを使用して、16検体の残りの凍結試料からDNA及びRNAを抽出した。RNA抽出プロトコールの溶解段階において、QIAzol溶解緩衝液をTrizol緩衝液+10%チオシアン酸グアニジンで置き換えた。
【0288】
DNA及びRNAのクオリティーコントロールを、CITプログラムプロトコール(http://cit.ligue-cancer.net)に従い行った。
【0289】
mRNA発現プロファイリング
mRNA発現プロファイリングを、IGBMCマイクロアレイ及び配列決定プラットフォームにより行った。101検体の腫瘍試料及び40検体の隣接正常試料のプロファイルを、Affymetrixの推奨に従い、Affymetrix GeneChip Human Gene 1.0 STアレイにおいて調べた。発明者らは、Bioconductor affyパッケージからのRMA(ロバスト・マルチアレイ・アベレージ(Robust Multi-array Average))法を使用して、プローブセットシグナル強度を計算しデータを正規化した。
【0290】
DNAメチル化アレイ処理
発明者らは、Illumina Infinium HumanMethylation450 Beadchipsを使用して、130検体の腫瘍試料及び65検体の隣接正常試料においてDNAメチル化を調べた。ハイブリッド形成を、製造者の推奨に従い、Integragen SA(Evry,France)により行った。Illumina GenomeStudioソフトウェアを使用して、各メチル化遺伝子座に対しベータ値を計算し、p-値を検出した。発明者らのコホートは白人患者及びアフリカ起源を共有するフランス系カリブ人からの患者の両方を含んだので、発明者らは、Chen et al.(2013.Epigenetics.8(2):203-9)からのCpGアノテーションを使用して、さらなる分析のためにアフリカ系とヨーロッパ系集団の間の多型部位を排除した。
【0291】
SNPアレイ処理
Illumina HumanOmniExpress-12v1アレイを使用して、130検体の腫瘍試料からのDNAコピー数を分析した。ハイブリッド形成を、製造者の推奨に従い、Integragen SA(Evry,France)により行った。Illumina BeadStudioソフトウェアを使用して、生蛍光シグナルを正規化しlogR比(LRR)及びBアレル頻度(BAF)を得た。
【0292】
発明者らは、tQN正規化手順(Staaf et al.,2008.BMC Bioinformatics.9:409)を使用して、Illuminaアッセイで使用した2つの色素間のバイアスを補正した。ゲノムプロファイルを、サーキュラー・バイナリ・セグメンテーション(circular binary segmentation)アルゴリズム(Venkatraman & Olshen、2007.Bioinformatics.23(6):657-63)を使用してセグメント化し、LRR及びBAFの平滑値をこのように割り当てた。各セグメントのアレル特異的な数を、GAP(Genome Alteration Print)法(Popova et al.,2009.Genome Biol.10(11):R128)に従い決定した。得られたセグメント化ファイルを、各サブタイプ内でGISTIC2.0アルゴリズムを適用する前に、TCGAセグメント化ファイルとともにプールした。
【0293】
DNAメチル化データからの腫瘍含量の推定
発明者らは、Zhan et al.(2015.Bioinformatics.31(21):3401-5)により開発されたPythonツール「InfiniumPurity」を使用して、Illumina HumanMethylation450アレイにおいてプロファイルされた各試料中の腫瘍細胞の割合の推定を得た。発明者らは、CITコホートにおいて腫瘍試料と純粋な正常試料を比較する場合の低メチル化及び高メチル化CpG位置の参照用のセットを同定するために、それらの刊行物に記載のワークフローに従った。発明者らは、腫瘍試料中の最小分散に対し0.005、及び腫瘍対正常試料比較での最大Wilcoxon p-値に対し1x10-24にそれぞれ設定したカットオフセットを使用して、CpGを選択した。CIT及びTCGAコホートからのメチル化プロファイルがある全試料の腫瘍含量を次に、参照CpGの発明者らの選択を使用してInfiniumPurityツールを稼働させることにより推定した。
【0294】
mRNA及びDNAメチル化データのコンセンサスクラスタリング
全てのコンセンサスクラスタリング分析を、Bioconductor ConsensusClusterPlus Rパッケージを使用して行った。mRNAデータ(resp.DNAメチル化データ)分類のために、発明者らは、中央値絶対偏差>0.3(resp.0.2)であるプローブセットを選択して、Kクラスターへのコンセンサス分配を決定した(2~8で変動するKに対する)。コンセンサスクラスタリング計算を、距離メトリックに対するピアソンの非類似度、ウォードのリンケージ法及び1000(DNAメチル化データに対して500)の階層的クラスタリングのリサンプリング反復を使用して行った。残りのパラメータについては初期設定値を維持した。クラスターの最適数を決定するために、発明者らは、コンセンサスマトリクスの累積分布関数(CGF)を使用し、以前に記載のように、関数の形状及びCDF曲線下の面積の両方を考慮した(Wilkerson & Hayes,2010.Bioinformatics.26(12):1572-3)。
【0295】
結果
発明者らは、以後CITコホートと呼ぶ、一連の130検体の初代前立腺腺癌試料及び65検体の隣接正常前立腺試料を試験した。これらの試料を全て、DNAメチル化及びSNPアレイの両方においてプロファイリングし、それらのうち101検体をmRNAアレイでもプロファイリングした。正常な細胞の混入からのバイアスを回避し、従って前立腺腫瘍の「純粋な」分子サブタイプを定義するために、発明者らは最初に、それらのDNAメチル化プロファイルを通じて推定される50%を超える腫瘍細胞を含有する63試料に発明者らの分析を限定した(
図1)。mRNA発現及びDNAメチル化データのコンセンサス階層クラスタリングは顕著に一致し、2つの安定なメチル化サブグループ(M1及びM2)を明らかにし、これらは別個のトランスクリプトームプロファイル(S1、S2、S3)を有する3つの安定なサブグループにさらに細かく分類され得る。
【0296】
発明者らは、TCGA前立腺腺癌(PRAD)コホートからの公開データにおいて同じアプローチを使用して、この分類システムをさらに検証した。発明者らは、腫瘍細胞が50%超である試料のみを使用して、mRNA及びDNAメチル化データのデノボ分類を行った。得られた4つのmRNAクラスのうち3つは、CIT mRNAサブタイプと良好な相関があり(ピアソンの相関は0.36~0.70の範囲である;
図2A)、それにより、TCGAコホートにおいて発明者らの3つのサブタイプの存在を示唆する。
【0297】
同様に、この2つのDNAメチル化サブタイプは、TCGAコホートがCIT DNAメチル化サブタイプと高い相関があったことを明らかにした(ピアソンの相関=0.92;
図2A)。
【0298】
さらに、まさにCITシリーズで観察されるように、発明者らは、3つの相関するTCGAmRNAサブタイプと2つのDNAメチル化サブタイプ(Fisher検定p-値<10
-53)の間の有意な関連を発見し、それにより、発明者らのデータから明らかにされる分類システムを補強する(
図2B)。
【0299】
実施例2:S1、S2及びS3サブタイプの包括的分子特徴評価
材料及び方法
サブタイプ特異的なトランスクリプトーム変化及び差異的DNAメチル化の同定
【0300】
発明者らは、Bioconductor limma package(Richie et al.,2015.Nucleic Acid Res.43(7):e47)を使用して、CIT及びTCGAデータセット中のサブタイプ間で異なって発現される遺伝子を検索した。各データセットについて4つの比較を行った:
-S1腫瘍/非S1腫瘍、
-S2腫瘍/非S2腫瘍、
-S3腫瘍/非S3腫瘍及び
-S1腫瘍/S2腫瘍。
【0301】
遺伝子セットエンリッチメント分析に対して、発明者らは、各比較において、遺伝子セットメンバーと上位400の最も異なって発現される遺伝子(上位200の上方制御される遺伝子及び上位200の下方制御される遺伝子)の間で超幾何分布検定を行った(補正p-値<0.05、各比較に対してその倍数変化に従い、遺伝子を整理した)。遺伝子セットメンバーリストをMSigDB、GO及びSMDデータベースからオンライン検索した。関心のある具体的な刊行物に基づき、さらなる遺伝子リストをこの主セットに付加した(著者名が対応する遺伝子セット名に含まれる)。発明者らは、StoufferのZ-スコア法を使用して、CIT及びTCGAデータセットにおいて得られたエンリッチメントp-値を組み合わせかつStouffer p-値<0.05が付随する遺伝子セットをさらに考慮した。
【0302】
単一試料GSEAを、Bioconductor GSVAパッケージ(Hanzelmann et al.,2013.BMC Bioinformatics.14:7)を使用して、CIT及びTCGAコホートの両方で各遺伝子セットに対し行った。得られたマトリクスを調整し、グラフ表示のためにプールするために、遺伝子セットによってセンタリングした。
【0303】
limmaパッケージも使用して、CIT及びTCGAデータセットの両方において、2つのメチル化サブタイプM1及びM2間で異なってメチル化されるCpGについて検索した。発明者らは、StoufferのZ-スコア法を使用して、得られるp-値を組み合わせかつStoufferのp-値<0.05を有するCpG位置を選択した。
【0304】
S1、S2及びS3サブタイプのトランスクリプトーム予測因子
発明者らは、腫瘍サブタイプS1、S2、S3及び正常に見える試料(腫瘍含有量が少なすぎて腫瘍物質として分類されない腫瘍試料)のmRNAに基づく予測因子を確立するために、腫瘍含有量が50%を超えると推定されるCIT腫瘍試料並びに腫瘍含有量が20%未満であると推定される正常試料を選択した。これらの慎重に選択した試料を使用して、発明者らは、さらに分析した独立データセット全てに共通であった遺伝子間でこれらの4つのトランスクリプトーム群のそれぞれの上位のより特異的な遺伝子を選択した。
【0305】
Limmaを使用して、異なって発現される遺伝子を同定し、AUCの尺度を、それらの予知力に従い遺伝子を選別するために各遺伝子及び各群について計算した。全部で847個の遺伝子特性を選択し、各群の平均プロファイルを、遺伝子によりデータをセンタリングした後これらの特性について計算した。得られた平均プロファイル(又はセントロイド)を使用して、4つの独立した公開データセット:TCGAコホート由来の497検体の腫瘍試料からのRNA-seqデータ(2015.Cell.163(4):1011-25)、Taylor et al.,(2010.Cancer Cell.18(1):11-22)からの131検体の腫瘍試料からのAffymetrixエクソンアレイデータ、Ross-Adams et al.,(2015.EBioMedicine.2(9):1133-44)からの219検体の腫瘍試料からのIllumina発現データ及びFraseret al.,(2017.Nature.541(7637):359-364)からの56検体の腫瘍試料からのAffymetrixヒトトランスクリプトームアレイデータ、において腫瘍サブタイプを予測した。
【0306】
各データセットについて、mRNAデータを最初に、セントロイドとの各試料プロファイルのピアソンの相関を計算する前に遺伝子により調整した。試料を次に、セントロイドがそのプロファイルとより相関した群に割り当てた。下記の補足的な逆重畳積分法を次いで使用して、細胞充実性が低い試料に対する予測を精密にした。
【0307】
低細胞充実性試料にサブタイプを再割り当てするための逆重畳積分法
CITコホートについて、発明者らは、それらのサブタイプについてのメタ遺伝子平均プロファイルでmRNAプロファイルがピアソン相関>0.4を有した腫瘍細胞の少なくとも50%を含む試料を、各サブタイプを代表する「コア」腫瘍試料として定めた。これらの試料を、正常試料とともに次に使用して、クアドプログ(quadprog)パッケージを使用して各腫瘍試料にフィットさせた、線形モデルを確立した。各腫瘍試料Tiを次に、
Ti=w1,iS1+w2,iS2+w3,iS3+wN,iN+εi,
(式中、{w1,i,w2,i,w3,i,wN,i}は、S1、S2、S3サブタイプ及びN(正常組織)と関連する腫瘍Tiの重量であり、εiは残差である)としてモデル化した。
【0308】
これらの重量は、各腫瘍試料がモデルにおいて考慮される4つの集団の混合物であるという仮定下で、腫瘍試料により含有される各細胞集団の割合を推定する。次に、発明者らは、最大重量により試料を再び割り当てた。サブタイプにまだ割り当てられていなかった、及びそのトップ重量が正常ではなかった試料のみをS1、S2又はS3サブタイプの1つに再び割り当てた。
【0309】
4つの公開コホートについて、発明者らは、それらのサブタイプについてのメタ遺伝子平均プロファイルでmRNAプロファイルがピアソン相関>0.4を有した試料を、各サブタイプを代表する「コア」腫瘍試料として定義した。上記のアプローチを、各公開データセットに同様に適用して、最初の予測結果後に試料を再割り当てした。
【0310】
結果
発明者らは、CIT及びTCGAコホート両方からのプールデータを使用して、臨床データ、ならびにmRNA、コピー数及び突然変異データ(データは示さず)を使用してS1、S2及びS3サブタイプの特徴をさらに調べた。S1、S2及びS3ラベルを、「材料及び方法」セクションに記載のトランスクリプトーム予測因子を使用してTCGA試料に割り当てた。mRNA及びコピー数データの分析は、TMPRSS2/ERG融合(Fus+)とのサブタイプの強い関連を明らかにした。S1及びS2サブタイプは、Setlur et al.,(2008.J Natl Cancer Inst.100(11):815-25)において定義されるようにトランスクリプトーム融合シグネチャーを強く発現し、両サブタイプでTMPRSS2ゲノム遺伝子座の典型的な欠損が見られた。一方で、S3腫瘍は、融合(Fus-)のトランスクリプトームのマークもゲノムマークも示さなかった。
【0311】
Fus
+分子パターンを共有しながら、S1及びS2サブタイプは、別個の臨床及びゲノム特性を示した。S1試料の85%がISUP群3以上に入り、ゲノム遺伝子座の多数の顕著な欠損を特徴とした(
図3)。このサブグループはPTEN(67%)の高頻度の欠失と特に関連した。TP53遺伝子での突然変異はS1腫瘍で頻繁に見られ(22%)、このサブタイプと顕著に関連していた(Fisher p-値<10-4)。S1腫瘍とは異なり、S2腫瘍は、低Gleasonスコア(ISUP群1の32.4%)で多く、ゲノム獲得及び欠損が少ししかなかった(
図4)。しかし、RYBPゲノム遺伝子座(3p13)は、S1(24%)と比較して、S2腫瘍においてより高い頻度で欠損し(38%)(Fisher p-値=0.04)、遺伝子TMPRSS2内の稀な突然変異はS2腫瘍でのみ見られた(5%、Fisher p-値=0.003)。それらのゲノムプロファイルの相違と一致して、S1腫瘍トランスクリプトームプロファイルは、S2腫瘍と比較してp53及びPTEN経路の明らかな不活性化並びにより高い増殖シグナル及びアンドロゲン応答の低下を示した。
【0312】
S3サブタイプはTMPRSS2/ERG融合陰性状態(Fus-)と完全に重複した。発明者らの分析は、既に報告されているFus-腫瘍とSPOP(28%)及びFOXA1突然変異(15%)の関連並びに染色体アーム2q、5q及び6qの高頻度の欠損を確認した(Barbieri et al.,2012.Nat Genet.44(6):685-9)。CHD1欠損はS3腫瘍の37%で見られた。ZNF292の欠損がS3腫瘍の60%で観察され、従って、これらの腫瘍において最も頻繁に欠失が起こる遺伝子座としてランキングされた。染色体アーム2qに関して、発明者らは、S3腫瘍の31%においてSPOPLを包含する欠失ピークを明らかにした。最後に、発明者らは、S3腫瘍が、KDM6A(Fisher p値=0.01)及びBRAF(Fisher p-値=0.02)の突然変異とも有意に関連があったことを見出し、これらは両者とも癌におけるエピジェネティック修飾と関連する。
【0313】
発明者らは3クラスのCIT系を、2015年にTCGAにより公開された分類結果(Cancer Genome Atlas Research Network,2015.Cell.163(4):1011-25)と比較し、それが公開されたサブタイプ及びコンセンサスクラスとかなり一致することを見出した(
図5)。
【0314】
実施例3:S2サブタイプは、4つの個別のコホートで根治前立腺切除術後の生化学的再発が起こらないことと強く関連する
材料及び方法
統計学的分析
分子サブタイプと他のカテゴリーの可変要素との間の関連性の強さを全て、Fisher直接検定又はカイ二乗検定で評価した。連続変数との関連性を、Kruskal-Wallis検定又はANOVAの何れかを使用して評価した。無再発生存分析を、生化学的再発(BCR)を再発事象とみなして5つの独立コホートからの患者において行った。発明者らは、腫瘍がS1、S2及びS3サブタイプの1つに割り当てられた患者を選択し、臨床データが欠損している患者を除外した。発明者らは、一変量及び多変量Coxモデルを、分子サブタイプ分類及び臨床リスク因子に基づいて確立し、各コホートにおいて層別化した(個別のベースラインハザード関数を各層に対してフィットさせた)。発明者らは、カプラン・マイヤー曲線を構築し、ログランク検定を使用して患者群を比較した。全ての統計学的又はバイオインフォマティクス分析を、Rソフトウェア環境のバージョン3.3.2を使用して行った。
【0315】
結果
発明者らは、S2腫瘍を有する患者内で、CITコホートにおいて生化学的再発(BCR)がなかったこと及びTCGAコホートで再発したのは1例のみであったことが特筆すべきことであることを見出した。この関連性の有意性を評価するために、発明者らは、利用可能なmRNA及び臨床データがある3つのさらなるコホートにおいて、S1、S2及びS3サブタイプを予測し(Taylor et al.,Ross-Adams et al.,及びFraser et al.,上記で引用)、原発前立腺腺癌の821名の患者のプールコホートにおいて無BCR生存分析を行った(
図6)。
【0316】
各コホートにおけるサブタイプ臨床特性及びERG融合との関連性は、CIT探索コホートで観察される特性と一致した。5つのコホートからの患者のプール分析は、CITサブタイプと無BCR生存の強く有意な関連を明らかにし(ログランク検定p-値<10
-9)、特にS2サブタイプについては無BCR生存と強く関連していた(ログランク検定p-値<10
-8)。CITサブタイプは、TCGA、Taylor及びRoss-Adamsにより公開された分類系の何れよりも無BCR生存を予測した(
図7)。
【0317】
ISUPクラス、腫瘍ステージ及びPSAを含む多変量分析は、S2サブタイプが独立した予後因子であったことを確認した(尤度検定p-値=1.11x10
-4、表4)。これだけ見ると、S2対非S2サブタイプ分類アプローチは、BCRがないことに関して、95.83%の陽性適中率を達成し、これは分析した全ての有意な予測因子の中で最良のスコアであった。
【表4】
表4:Coxの回帰モデルを使用する多変量無再発生存分析。含まれる因子に対して完全アノテーションがある708検体の試料において回帰分析を行い、コホートに対して層別化した。各予測因子について、発明者らは、生化学的再発と関連するハザード比(HR)並びに対応する信頼区間及び尤度検定p-値を報告した。発明者らは、使用した各因子と関連するFisher直接確率検定p-値及び陽性適中率(PPV)も計算して、生化学的再発がないことを予測した。
【0318】
実施例4:S2サブタイプ分類は、低悪性度前立腺腺癌の疑いに対する有望な予測ツールである
材料及び方法
他の予後分子アプローチに対するS2サブタイプ分類の比較
発明者らは、Prolaris(登録商標)Test,OncotypeDX(登録商標)Genomic Prostate Score,Irshad et al.,予後群及びProveri Inc予後バイオマーカーに対するS2サブタイプ分類の予後診断力を比較した。
【0319】
Prolaris検査について、発明者らは、Cuzick et al.,(2011.J Clin Oncol.29(32):4273-8)からの刊行物で挙げられる31個の遺伝子を使用して、実験に含まれる5つのデータセットのそれぞれに対する腫瘍試料にわたる連続スコアを計算した。ある種のデータセットについて、発明者らは、31個の遺伝子のそれぞれと対応する殆どの変異プローブセットを維持し、次いで調整し、得られるmRNAマトリクスを遺伝子によりセンタリングした。主成分分析(PCA)を、変数として遺伝子を使用して、マトリクス上で行い、第1の成分での各試料の投射(データからの変数の最大の割合を捕捉する成分)を、Prolaris-likeスコアとして定義した。
【0320】
OncotypeDXスコアの場合、発明者らは、Knezevic et al.,(2013.BMC Genomics.14:690)からの17個の遺伝子を使用し、刊行物に記載される分析的計算をアレイシグナルに置き換えて、独立に各データセット上で試料スコアを計算した。ある種のデータセットについて、発明者らは、17個の遺伝子のそれぞれに対応する殆どの変異プローブセットを維持し、次いで調整し、遺伝子によりデータをセンタリングした。発明者らは、Cpの代わりにmRNAシグナルを使用し、調整段階を得られたデータ範囲に対して次のように適応させ、5つのコホートを集合させた後でのみ実施した:100xGPSu-100x(max(GPSu)-1)。この調整段階後に、発明者らは、0~100の範囲のスコアを得た。
【0321】
コンピュータProlaris及びOncotypeDXスコアを使用して低侵襲性症例の予後群を定めるために、発明者らは、対応する無BCR生存データに基づいて各コホートにおける最適カットオフを決定した後に両スコアを離散化させた。
【0322】
Irshad et al.,(2013.Sci Transl Med.5(202):202ra122)に記載のようにリスク群を決定するために、発明者らは、各データセットを独立にとる、刊行物に記載のアプローチを使用した。ある種のデータセットについて、発明者らは、遺伝子FGFR1、PMP22及びCDKN1Aのそれぞれに対して、殆どの変異プローブセットを選択し、これらの3個の遺伝子からのデータにおいてk-平均クラスタリングを行った。発明者らは、kmeans++初期化とともにR flexclustパッケージからのkcca関数を使用した。再発事象が最小数のクラスターを次に、「低リスク群」と定めた。
【0323】
Proveri Inc予後バイオマーカーでの予測の場合、発明者らは、Jia et al.(2012.PLoS One.7(8):e41371)に記載のイン・シリコアプローチを使用した。発明者らは、刊行物で言及されるように、15個の遺伝子におけるR pamrパッケージ及びデータセットGSE8218の18名の患者(9名の低リスク及び9名の高リスク)からのデータを使用して、予測因子を確立した。いくつかのプローブセットでの3個の遺伝子について、発明者らは、殆どの変異プローブセットを維持した。データを分位正規化し、次に調整し、予測因子を確立する前にセンタリングした。発明者らは、この予測因子及びpamr.予測関数を使用して、同じ正規化段階が行われたら(分位正規化、センタリング及び調整)各データセットで低リスク及び高リスク群を定め、殆どの変異プローブセットを各遺伝子に対して選択した。
【0324】
結果
発明者らは、BCRと関連する2つの集団mRNAベース予後ツール:Prolaris(登録商標)Test及びOncotypeDX(登録商標)Genomic Prostate Scoreを含む、4つの分子アプローチによりS2サブタイプの予知力を比較した。これらのツールは、進行する可能性がない患者から高悪性度腫瘍がある患者をより良好に同定するために、臨床家により使用される。発明者らは、Cuzick及びKnezevicからの公開データを使用して、Prolaris-like及びOncotypeDX-likeスコアを821検体の試料に割り当て、S2サブタイプ分類とこれらのスコアの予知力を比較した。
【0325】
予想されるように、発明者らは、S2サブタイプが、S1及びS3サブタイプと比較して、より低いProlaris-like及びOncotypeDX-likeスコアと有意に関連したことを観察した(p-値<10-15;
図8)。両スコアを次に離散化して、低侵襲性症例の予後群を定めた。含まれた2つの他のアプローチは、Proveri Inc予後バイオマーカー及びIrshadらの分子シグネチャーに基づく予想であり、これは、非進展疾患がある患者を同定するために正確に設計された。両予測的アプローチに対して、発明者らは、腫瘍試料を低リスク及び高リスク群に分けるために、刊行物に記載された同じ方法を使用した。最終的に、発明者らは、各アプローチで定められる低リスク予後群に関連するハザード比及び対応する信頼区間を計算し、それらをS2サブタイプ分類と比較した。もう一度、S2サブタイプ分類は最良に機能して、4つの他のアプローチで定義される何らかの低リスク群よりも小さいBCR-関連ハザード比で、BCRがないPCaを同定した(
図9)。
【0326】
実施例5:S2サブタイプは、39個のトランスクリプトームマーカーの一覧で正確に同定され得る
材料及び方法
39種類の遺伝子シグネチャー判別力の評価
発明者らは、Rパッケージpamrを使用して、表5で与えられる39種類の遺伝子の一覧に基づく予測因子を確立した。5つのコホート(CIT、TCGA、Taylor、Ross-Adams及びFraser)のそれぞれについて、発明者らは、S1及びS2試料のプールの3分の2において予測因子をトレーニングし、それを使用してS1及びS2試料の残りの3分の1を予測した。発明者らは、S1腫瘍に割り当てられた実際のS1腫瘍のパーセンテージとして特異度を定め、S2腫瘍に割り当てられた実際のS2腫瘍のパーセンテージとして感度を定めた。
【表5】
表5:S1とS2サブタイプの間で特徴的な39個の遺伝子の一覧。差異的発現及び判別力分析を、5つのコホート(CIT、TCGA、Taylor、Ross-Adams、Fraser)において行い、39個の遺伝子を、各コホート結果からのまとめの統計に基づいて選択した。発明者らは、5つのコホートの試料について各遺伝子とS2サブタイプの推定%の相関を計算し、ここで中央値ピアソン相関を報告する。これらの遺伝子が腫瘍により又はその微小環境により発現されたか否かを同定するために、発明者らは、Jia et al.により言及されるデータを使用して、利用可能な場合は、データセット(148検体の試料)で推定される間質、良性前立腺肥大症(BPH)及び萎縮腺の割合と各バイオマーカープロファイルを相関させた。
【0327】
結果
発明者らは、S2腫瘍を及び従ってPCaの非進展症例を正確に同定するために臨床的に使用され得る、一連の代替バイオマーカーを同定することを目的とした。TMPRSS2/ERG融合陽性(Fus+)腫瘍は、免疫組織化学(Chaux et al.,2011.Am J Surg Pathol.35(7):1014-20)又はさらに単純な尿に基づく検査(Koo et al.,2016.Sci Rep.6:30722)の何れかで検出でき、両方法は非常に高い特異性を達成する。従って、発明者らは、臨床家がS1腫瘍からS2腫瘍を区分けすることを可能にし得るバイオマーカーに焦点を当てた。発明者らは、以前に記載された5つのコホートにおいて差異的発現分析を行い、5つのコホートのうち少なくとも4つにおいてS1とS2腫瘍の間で顕著に脱制御された遺伝子を選択した。16個の(resp.23個の)遺伝子は、S1試料と比較して、S2において顕著に上方制御される(resp.下方制御される)ことが分かった(表5)。
【0328】
発明者らは、単純線形分類指標を確立することによりこれらの39個の遺伝子の予知力もチェックし、93%の特異度及び91%の感度を達成した(表6)。
【表6】
表6:39個の遺伝子のセットを使用してS1腫瘍からS2を判別する可能性。
【0329】
実施例6:S2サブタイプは、18、15又は8個のトランスクリプトームマーカーのサブセットで正確に同定され得る
実施例5の5つのコホート(CIT、TCGA、Taylor、Ross-Adams及びFraser)において3つのアルゴリズムに基づくアプローチを使用して、発明者らは、TMPRSS2/ERG融合陽性S2腫瘍を正確に同定するために臨床的に使用され得るバイオマーカーの最小セットを同定することを目的とした。実施例5と同じ「材料及び方法」を使用して、次の最小セットの判別力を評価した。
【0330】
18個の遺伝子を含む第一のセットを同定した。この「18遺伝子シグネチャー」は、次の判別遺伝子を含む:
【表7】
【0331】
単純線形分類指標を確立することによって、これらの18個の遺伝子の予知力を評価し、次の値を達成した:
-93%正確度*、
-感度90%、
-特異度94%、
-陽性適中率92%(真陽性)及び
-陰性適中率93%(真陰性)。
*正確度は、結果の総数の間での真の結果(真陽性及び真陰性の両方)の割合として計算される。
【0332】
15種類の遺伝子を含む第2のセットを同定した。この「15遺伝子シグネチャー」は次の判別遺伝子を含む:
【表8】
【0333】
単純線形分類指標を確立することによって、これらの15個の遺伝子の予知力を評価し、次の値を達成した:
-92%正確度、
-感度90%、
-特異度93%、
-陽性適中率(真陽性)91%及び
-陰性適中率(真陰性)93%。
【0334】
8個の遺伝子を含む第3のセットを同定した。この「8遺伝子シグネチャー」は、次の判別遺伝子を含む:
【表9】
【0335】
単純線形分類指標を確立することによって、これらの8種類の遺伝子の予知力を評価し、次の値を達成した:
-90%正確度、
-感度87%、
-特異度91%、
-陽性適中率(真陽性)88%及び
-陰性適中率(真陰性)91%。
【0336】
結論
この研究は、mRNA発現、DNAメチル化及びコピー数データを統合する前立腺腺癌の包括的な分子分類を提案する。前立腺原発腫瘍内の正常細胞の高い浸潤を考慮に入れて、発明者らは、ゲノム、トランスクリプトーム及びエピジェネティックレベルでの別個の特性を示す、前立腺腫瘍S1、S2及びS3の3つの分子サブタイプを定め得た。発明者らは、発明者らの分類が最新のTCGA分類と一致するだけでなく、TCGA試験で欠如していた強い予後診断力も含有することを示した。ここで、発明者らは、新しいマルチオミックスコホート及び4つの別個の主要なPCaコホートを含む腫瘍の大きな試料において分子分類及び予後の推測をうまく組み合わせた。
【0337】
発明者らの研究は、Fus+サブタイプS1及びS2間の分子的な差が、臨床レベルで重要な意義を有することを示し、従って患者の医療ケアを適応させるための臨床診断ルーチンにおいて分子試験を使用する重要性を強調する。前立腺癌患者の過剰処置は残念ながら医学的に認識される事実である。医学的研究は、PCaの少なくとも20%が無進展の疾患であり、患者は即時根治処置がなくても前立腺癌とともに生存し得ることを認める。発明者らの研究は、S2腫瘍がある患者(ここでは、患者の22%)が、根治手術を受けるのではなく積極的サーベイランスで合理的に対処され得る推定上の低悪性度症例に対応し得ることを示唆する。
【0338】
発明者らは、S2サブタイプ分類が、低悪性度疾患の患者を同定するための価値あるツールであり、以前公開された分類及び分子シグネチャーの予後診断力よりも優れていることを示した。その結果として、発明者らは、新しい分子試験の開発のための、S2サブタイプに対する39個の代替マーカーの一覧を提案する。このリストは、5つの異なる技術:Affymetrix HuGene、Affymetrix HumanExon、Affymetrix HTA、Illumina HT12及びIllumina RNA-seq、を通じてmRNA発現が測定された前立腺癌試料の5つの独立コホートの分析に由来する。従って、発明者らは、この遺伝子リストが、バイオマーカーの以前のセットが良好に臨床移行できない部分的な原因である、共通の過剰適合の問題を防ぐことを想定する。
【0339】
従って、5つの個別のコホートを通じて同定された有意に予後に関連するこの39個のmRNAマーカーセットは、疾患のより高いステージに進展しないと思われるS2腫瘍を同定するための日常的な分子アッセイを開発するための、強固な基礎を構成する。
【0340】
この39個のmRNAマーカーのセットから、発明者らは、39個のマーカーの完全セットと同じであるか又は同等の予知力を達成するために容易に使用し得る、代替バイオマーカーの最小セットを同定することを目的とした。その点で、発明者らは、本明細書中で開示される39個のうちそれぞれ18、15及び8個のmRNAマーカーを含むバイオマーカーの3つの最小セットを同定した。これらの最小18遺伝子、15遺伝子及び8遺伝子シグネチャーは、それぞれ93%、92%及び90%の正確度に到達すると評価された。最後に、6個のmRNAマーカー(ANPEP、AZGP1、CHRNA2、COMP、KHDRBS3及びSFRP4)は、39遺伝子、18遺伝子、15遺伝子及び8遺伝子シグネチャーにより共有されることが分かり、疾患のより高いステージに進展しないと思われるS2腫瘍の同定におけるそれらの主導的役割を示唆する。
【配列表】