(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ドレン構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
E04D13/04 A
E04D13/04 E
(21)【出願番号】P 2020092421
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592179137
【氏名又は名称】株式会社アルテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧瀬 伸一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3020108(JP,U)
【文献】特開2015-055140(JP,A)
【文献】特開2010-116716(JP,A)
【文献】特開2011-220081(JP,A)
【文献】米国特許第06165357(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を覆う通水構造のドレンキャップと、該ドレンキャップ下端の内側から外側へ張り出し且つ前記排水口の内部に窄めて挿入されてから自身の弾性力により復元して前記排水口の内部周囲に圧接する複数本のばね部材と、該各ばね部材に掛止して前記排水口からの抜脱を阻止するよう前記排水口の外縁部の複数箇所に設けられたアンカーとを備え、前記各ばね部材が長手方向に延在するスリットを有し、該スリットの幅内に収まる幅で且つ下方向きに鉤形を成すように前記各アンカーが形成されたドレン構造であって、前記各ばね部材が弾性線材によりワイヤーフレーム状に形作られ且つその間隙部分が前記スリットを成すように構成され、前記各ばね部材の先端部が前記ドレンキャップ下端の外側へ展開した状態で下方向きに曲がる曲折部を成して
おり、前記排水口の外縁部における各アンカー直下には、前記排水口の内側に向け下り傾斜を成す環状の棚部が形成され、該棚部上に前記各ばね部材を起立させてドレンキャップを浮上支持し得るように構成されていることを特徴するドレン構造。
【請求項2】
各アンカーの先端部が排水口の周方向一方に向け曲げられてガイド部を成し、前記排水口の周方向一方にドレンキャップを回転させるだけで各ばね部材が捻れて前記各アンカーから外れるように構成されていることを特徴する請求項
1に記載のドレン構造。
【請求項3】
ドレンキャップ下端の内側における周方向複数箇所に各ばね部材の上端部が個別に装着され、該各ばね部材が内側に一旦向かってから反転部を介し外側に折り返すように形成されていることを特徴する請求項
1又は2に記載のドレン構造。
【請求項4】
各ばね部材が排水口から抜脱した状態で略水平に展開し得るように構成されていることを特徴する請求項
3に記載のドレン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレン構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等の建築物の屋上や各階のベランダには、雨水を排水する排水口(ドレン)が設けられているのが一般的であり、この種の排水口には、雨水に随伴される落ち葉、小枝、紙、又は、ビニール等といった固形物の侵入防止や、排水口が剥き出しになることによる危険性の回避、美観の保持等といった観点からドレンキャップが取り付けられている。
【0003】
この種のドレンキャップを用いた従来のドレン構造の一例は
図14に示す通りであり、ここに図示しているドレン構造1の場合には、建築物の屋上やバルコニー等を構成するコンクリート躯体2に、その表面に溜まる雨水を排出するための排水管3が鉛直方向に埋設され、該排水管3の上端部に、雨水を呼び込む排水口4を形成するドレン本体5が嵌着されている。
【0004】
ここで、前記コンクリート躯体2の表面には、防水シート6が被覆されるようになっているが、この防水シート6は、前記ドレン本体5上端の鍔部7と中空円盤形の防水層押え8とで挟み付けるように固定されており、この防水層押え8は、前記ドレン本体5上端の鍔部7に対しネジ止めされるようになっている。
【0005】
そして、前記排水口4が通水構造のドレンキャップ9により覆われており、該ドレンキャップ9は、図示の如きドーム形を成し且つ雨水を通すための複数の開口10を備え、その内部中央に心棒部9aを備え且つ該心棒部9aに二枚の板ばね材から成るばね部材11がビスで固定されている。尚、このばね部材11は、長さが排水口4の径よりも十分に長くなっており、二枚のばね部材11が十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定されている。
【0006】
図15は前記ドレンキャップ9を排水口4に取り付ける様子を示すもので、前記ドレンキャップ9を取り付ける際は、作業員が二枚のばね部材11を撓ませて該各ばね部材11の下端部を排水口4の直径よりも窄めて排水口4の内部にばね部材11を挿入するようしており、その挿入後に作業員の手がばね部材11から放されると、該ばね部材11の下端部が自身の弾性力により広がって前記排水口4直下の排水管3内側に圧接し、これによりドレンキャップ9が固定される。
【0007】
ただし、斯かる従来のドレンキャップ9にあっては、十文字に交差させた二枚のばね部材11を排水口4の径よりも小さく窄ませて排水口4に挿入するようにしていたため、該排水口4の開口面積のうちの多くの領域が、前記各ばね部材11の十文字の交差部分により塞がれてしまい、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かることで排水口4の詰まりが起こり易いという課題があった。
【0008】
そこで、下記の如き特許文献1が本発明と同じ出願人により提案されており、この特許文献1にあっては、
図16に示す如く、ドレンキャップ9の下部内周の複数箇所に個別にばね部材11を装備し、該各ばね部材11により排水口4(
図14参照)の開口面積を極力狭めないようにしたドレンキャップ9となっている。尚、
図16に示すドレンキャップ9において、前述の
図14及び
図15と機能的に変わらない構成要件については、説明の便宜上から同じ符号を付すことで説明を割愛している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これら従来のドレンキャップ9にあっては、四方に張り出すばね部材11を排水口4の径よりも小さく窄ませて排水口4に挿入する必要があることから取り付け性に難がある上、台風等の強風に煽られることでドレンキャップ9が排水口4から抜き出されて吹き飛ばされてしまう懸念もあった。
【0011】
このような事態を防ぐには、ばね部材11の弾性力を強化して保持性を高めることが考えられるが、ばね部材11の弾性力を強化すればするほど取り付け性は悪くなり、取り外し時にも勢いよくばね部材11が開いて作業員の手に当たる危険性が増すといった新たな問題を招きかねない。
【0012】
しかも、いくらばね部材11の弾性力を強化するといっても、ばね部材11が排水口4直下の排水管3内側に当接することによる摩擦力に頼った固定方式では、強風対策としてはやや脆弱であり、より確実なドレンキャップ9の抜け止めの対策を図ることが望まれている。
【0013】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりも取り付け性が良好で且つ強風により吹き飛ばされる心配の無いドレン構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、排水口を覆う通水構造のドレンキャップと、該ドレンキャップ下端の内側から外側へ張り出し且つ前記排水口の内部に窄めて挿入されてから自身の弾性力により復元して前記排水口の内部周囲に圧接する複数本のばね部材と、該各ばね部材に掛止して前記排水口からの抜脱を阻止するよう前記排水口の外縁部の複数箇所に設けられたアンカーとを備え、前記各ばね部材が長手方向に延在するスリットを有し、該スリットの幅内に収まる幅で且つ下方向きに鉤形を成すように前記各アンカーが形成されたドレン構造であって、前記各ばね部材が弾性線材によりワイヤーフレーム状に形作られ且つその間隙部分が前記スリットを成すように構成され、前記各ばね部材の先端部が前記ドレンキャップ下端の外側へ展開した状態で下方向きに曲がる曲折部を成しており、前記排水口の外縁部における各アンカー直下には、前記排水口の内側に向け下り傾斜を成す環状の棚部が形成され、該棚部上に前記各ばね部材を起立させてドレンキャップを浮上支持し得るように構成されていることを特徴するものである。
【0015】
而して、このように構成した場合、各ばね部材を下方向きに窄めた状態で該各ばね部材の先端部を各アンカーの鉤形の曲がり部分を目がけて下ろすと、前記各ばね部材の先端部が曲折部として内側に曲がっていることで該曲折部のスリットに前記各アンカーの鉤形の曲がり部分が円滑に差し込まれ、そのまま前記各ばね部材を下降させ続けることで該各ばね部材の先端部が前記各アンカーの先端部を乗り越えて該各アンカーが前記各ばね部材のスリットを通り抜けた係合状態となる。
【0016】
即ち、各ばね部材を各アンカーの内側となる位置まで窄めてから戻して該各アンカーをスリットに通して係合させるような手間をかけなくても、下方向きに窄めた各ばね部材を各アンカーの鉤形の曲がり部分を目がけて下ろすだけで、この曲がり部分を無理なく前記各ばね部材の曲折部のスリットに差し込むことが可能となり、その状態から更に前記各ばね部材を下ろし続けるだけで、該各ばね部材のスリットに対し前記各アンカーを簡便に係合させることが可能となる。
【0017】
次いで、ドレンキャップを押し下げると、該ドレンキャップが各アンカーと各スリットとの係合状態を維持したまま下降し、前記ドレンキャップが排水口に被さって着座する一方、各ばね部材が自身の弾性力により復元して前記排水口の内部周囲に圧接し、これにより前記ドレンキャップが前記排水口の内部周囲に固定される。
【0018】
一方、ドレンキャップを引き上げると、該ドレンキャップが前記各アンカーと前記各スリットとの係合状態を維持したまま上昇し、排水口の各アンカーが相対的に前記各スリットの下端部に到達した時点で、下方向きに鉤形を成す各アンカーが前記各スリットの下端部に掛止され、前記ドレンキャップの更なる引き上げが阻止される。
【0019】
依って、台風等の強風に煽られてドレンキャップが排水口から抜き出されてしまったとしても、各ばね部材のスリット長に相当する抜き出しが成されたところで各アンカーが各スリットの下端部に掛止して更なる抜き出しが阻止され、前記ドレンキャップが吹き飛ばされてしまうような事態は確実に回避される。
【0020】
この結果、強風により吹き飛ばされてしまわないようばね部材の弾性力を過度に強化しなくても済んで従来よりも取り付け性が良好なものとなり、また、排水口の清掃等のためにドレンキャップを引き上げても各アンカーと各スリットとの係合状態が維持されることでばね部材が勢いよく開くことがなく、該ばね部材が作業員の手に当たる危険性もなくなる。
【0021】
即ち、ドレンキャップの引き上げ時にばね部材が勢いよく開く心配がなければ、前記ドレンキャップを無造作に引き上げても支障が無くなるので、該ドレンキャップを排水口から取り外す作業が極めて容易になる。
【0022】
しかも、上方に引き上げたドレンキャップは、各アンカーが各スリットの下端部に掛止した位置でばね部材が排水口の外縁部に圧接することで該排水口から浮上した状態に支持されるので、前記ドレンキャップを完全に取り外してしまわないまま排水口の清掃等を極めて簡便に行うことが可能となる。
【0023】
この際、排水口の外縁部における各アンカー直下に、前記排水口の内側に向け下り傾斜を成す環状の棚部が形成され、該棚部上に前記各ばね部材を起立させてドレンキャップを浮上支持し得るように構成されているので、棚部上に各ばね部材を起立させることで、より安定したドレンキャップの浮上支持が可能となる。
【0024】
また、ドレンキャップを浮上支持させた状態から押し下げると、棚部の下り傾斜と各ばね部材の先端部の曲がりにより該各ばね部材が互いに近接するように窄まり、ドレンキャップを再び排水口に被せて着座させることが可能となる。
【0025】
更に、本発明にあっては、各アンカーの先端部が排水口の周方向一方に向け曲げられてガイド部を成し、前記排水口の周方向一方にドレンキャップを回転させるだけで各ばね部材が捻れて前記各アンカーから外れるように構成されていると良く、このようにすれば、ドレンキャップを回転させるだけで前記各ばね部材を前記各アンカーから簡便に外すことが可能となる。
【0026】
即ち、前記排水口の周方向一方にドレンキャップを回転させると、各ばね部材同士が互いに束ねられるように絞られ、該各ばね部材の先端部側が前記排水口の半径方向内側へ引き込まれつつ前記ドレンキャップの回転方向に引かれることになり、そのまま各アンカーのガイド部に案内されつつ摺動して前記各アンカーから外れる。
【0027】
尚、前記各ばね部材は弾性線材によりワイヤーフレーム状に形作られているだけなので、全方位に向けて簡単に捻れたり撓んだりすることが可能で、前記ガイド部の曲がりに無理なく追従させることが可能である。
【0028】
また、本発明にあっては、ドレンキャップ下端の内側における周方向複数箇所に各ばね部材の上端部が個別に装着され、該各ばね部材が内側に一旦向かってから反転部を介し外側に折り返すように形成されていることが好ましく、このようにすれば、従来の二枚のばね部材を十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定する構造と比較して、排水口の開口面積を塞いでしまう割合が大幅に少なくなって詰まり難くなる。
【0029】
更に、本発明においては、各ばね部材が排水口から抜脱した状態で略水平に展開し得るように構成されていると良く、このようにすれば、非使用時のドレンキャップを保管するにあたり、複数のドレンキャップを嵩張らないように重ねて保管しておくことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のドレン構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0031】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、従来よりも取り付け性が良好で且つ強風により吹き飛ばされる心配の無いドレン構造を実現することができ、しかも、上方に引き上げたドレンキャップを排水口から浮上した状態に支持することもできるので、前記ドレンキャップを完全に取り外してしまわないまま排水口の清掃等を極めて簡便に行うことができる。
【0032】
(II)本発明の請求項1に記載の発明によれば、各ばね部材を棚部上に起立させてドレンキャップを浮上支持させることができるので、より安定したドレンキャップの浮上支持を実現することができると共に、ドレンキャップを浮上支持させた状態から押し下げるだけで簡便にドレンキャップを排水口に着座させた状態に復帰させることもできる。
【0033】
(III)本発明の請求項2に記載の発明によれば、ドレンキャップを回転させるだけで各ばね部材を各アンカーから簡便に外すことができ、該各アンカーへの係合形式を採用しながらも簡便な取り外しを実現することができる。
【0034】
(IV)本発明の請求項3に記載の発明によれば、従来の二枚のばね部材を十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定する構造と比較して、排水口の開口面積を塞いでしまう割合を大幅に少なくして詰まり難くすることができる。
【0035】
(V)本発明の請求項4に記載の発明によれば、各ばね部材を排水口から抜脱した状態で略水平に展開させておくことができるので、非使用時のドレンキャップを保管するにあたり、複数のドレンキャップを嵩張らないように重ねて保管しておくことができ、複数のドレンキャップを収容効率良く保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第一実施例を一部を切り欠いて示す斜視図である。
【
図2】
図1のドレンキャップを排水口から抜脱した状態の斜視図である。
【
図4】
図1のばね部材をアンカーに係合させる直前の状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1のばね部材をアンカーに係合させた直後の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図1のドレンキャップを最大に引き上げた状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1のばね部材を棚部上に起立させた状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の第二実施例を一部を切り欠いて示す斜視図である。
【
図10】
図8のドレンキャップを排水口から抜脱した状態の斜視図である。
【
図11】本発明の第三実施例を一部を切り欠いて示す斜視図である。
【
図13】
図11のドレンキャップを排水口から抜脱した状態の斜視図である。
【
図15】
図14のドレンキャップを取り付ける様子を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0038】
図1~
図7は本発明のドレン構造の第一実施例を示すもので、この第一実施例においても、建築物の屋上やバルコニー等を構成するコンクリート躯体2に、その表面に溜まる雨水を排出するための排水管3が鉛直方向に埋設され、該排水管3の上端部に、雨水を呼び込む排水口4を形成するドレン本体5が嵌着されているが、ここに図示する例の場合には、ドレン本体5の中に、上端に防水層押え12aを鍔状に備えた補助管12が嵌挿されるようになっており、該補助管12上端の防水層押え12aと前記ドレン本体5上端の鍔部7とで防水シート(説明の便宜上から図示せず:
図14及び
図15における防水シート6を参照)を挟み付け、この状態にしたまま前記ドレン本体5上端の鍔部7に対し前記防水層押え12aがネジ止めされるようになっている。
【0039】
更に、前記排水口4を覆う通水構造のドレンキャップ9と、該ドレンキャップ9の内側から下方に張り出し且つ前記排水口4の内部に窄めて挿入されてから自身の弾性力により広がって前記排水口4の内部周囲(補助管12の筒部分やその下の排水管3における内周面)に圧接するばね部材13と、該ばね部材13に掛止して前記排水口4からの抜脱を阻止するよう前記排水口4の外縁部に設けられたアンカー14とが備えられており、ここに図示している例では、前記各アンカー14が前記排水口4の外縁部を成す前記補助管12の上端内周に設けられている。
【0040】
即ち、前記各ばね部材13は長手方向に延在するスリット15を有し、該スリット15の幅内に収まる幅で且つ下方向きに鉤形を成すように前記各アンカー14が形成されており、より具体的には、前記各ばね部材13が弾性線材によりワイヤーフレーム状に形作られ且つその間隙部分が前記スリット15を成すように構成されていて、前記各ばね部材13の先端部が前記ドレンキャップ9下端の外側へ展開した状態で下方向きに曲がる曲折部13aを成すようにしてある(
図2参照)。
【0041】
他方、前記各アンカー14の先端部は排水口4の周方向一方に向け曲げられてガイド部14aを成しており、前記排水口4の周方向一方にドレンキャップ9を回転させるだけで各ばね部材13が捻れて前記各アンカー14から外れるように構成されている。尚、前記各ばね部材13は弾性線材によりワイヤーフレーム状に形作られているだけなので、全方位に向けて簡単に捻れたり撓んだりすることが可能で、前記ガイド部14aの曲がりに無理なく追従させることが可能である。
【0042】
ここで、前記ドレンキャップ9は、
図14及び
図15で説明した従来例の場合と同様に、ドーム形を成し且つ雨水を通すための複数の開口10を備えている一方、その下端内側における周方向複数箇所にリブ9bを備えており、該各リブ9b下面に対し前記各ばね部材13の基端部13b(
図3参照)が装着され、これら各ばね部材13が内側に一旦向かってからP字状の反転部13cを介し外側に折り返すように形成されているが、例えば、
図2に示す如く、前記各ばね部材13は、排水口4から抜脱した状態で略水平に展開し得るように構成しておくと良い。
【0043】
更に、この第一実施例にあっては、前記排水口4の外縁部における各アンカー14直下に、前記排水口4の内側に向け下り傾斜を成す環状の棚部16が形成されており、該棚部16上に前記各ばね部材13を起立させてドレンキャップ9を浮上支持し得るようにもしてある。
【0044】
而して、このようにドレン構造17を構成した場合に、
図4に示す如く、各ばね部材13を下方向きに窄めた状態で該各ばね部材13の先端部を各アンカー14の鉤形の曲がり部分を目がけて下ろすと、前記各ばね部材13の先端部が曲折部13aとして内側に曲がっていることで該曲折部13aのスリット15に前記各アンカー14の鉤形の曲がり部分が円滑に差し込まれ、そのまま前記各ばね部材13を下降させ続けることで該各ばね部材13の先端部が前記各アンカー14の先端部を乗り越えて該各アンカー14が前記各ばね部材13のスリット15を通り抜けた係合状態となる(
図5参照)。
【0045】
即ち、各ばね部材13を各アンカー14の内側となる位置まで窄めてから戻して該各アンカー14をスリット15に通して係合させるような手間をかけなくても、下方向きに窄めた各ばね部材13を各アンカー14の鉤形の曲がり部分を目がけて下ろすだけで、この曲がり部分を無理なく前記各ばね部材13の曲折部13aのスリット15に差し込むことが可能となり、その状態から更に前記各ばね部材13を下ろし続けるだけで、該各ばね部材13のスリット15に対し前記各アンカー14を簡便に係合させることが可能となる。
【0046】
ここで、各ばね部材13の先端部が前記各アンカー14の先端部を乗り越えるにあたり(
図4参照)、該各アンカー14の先端部が排水口4の周方向一方に向け曲げられてガイド部14aを成しているため、該ガイド部14aにより前記各ばね部材13の先端部が捻れるような力を受けるが、前述した通り、前記各ばね部材13は弾性線材によりワイヤーフレーム状に形作られているだけなので、全方位に簡単に捻れたり撓んだりして前記ガイド部14aの曲がりに無理なく追従することができる。
【0047】
次いで、ドレンキャップ9を押し下げると、該ドレンキャップ9が各アンカー14と各スリット15との係合状態を維持したまま下降し、
図1に示すように、前記ドレンキャップ9が排水口4に被さって着座する一方、各ばね部材13が自身の弾性力により復元して前記排水口4の内部周囲(補助管12の筒部分やその下の排水管3における内周面)に圧接し、これにより前記ドレンキャップ9が前記排水口4の内部周囲に固定される。
【0048】
一方、
図6に示すように、ドレンキャップ9を引き上げると、該ドレンキャップ9が前記各アンカー14と前記各スリット15との係合状態を維持したまま上昇し、排水口4の各アンカー14が相対的に前記各スリット15の下端部に到達した時点で、下方向きに鉤形を成す各アンカー14が前記各スリット15の下端部に掛止され、前記ドレンキャップ9の更なる引き上げが阻止される。
【0049】
依って、台風等の強風に煽られてドレンキャップ9が排水口4から抜き出されてしまったとしても、各ばね部材13のスリット15長に相当する抜き出しが成されたところで各アンカー14が各スリット15の下端部に掛止して更なる抜き出しが阻止され、前記ドレンキャップ9が吹き飛ばされてしまうような事態は確実に回避される。
【0050】
この結果、強風により吹き飛ばされてしまわないようばね部材13の弾性力を過度に強化しなくても済んで従来よりも取り付け性が良好なものとなり、また、排水口4の清掃等のためにドレンキャップ9を引き上げても各アンカー14と各スリット15との係合状態が維持されることでばね部材13が勢いよく開くことがなく、該ばね部材13が作業員の手に当たる危険性もなくなる。
【0051】
即ち、ドレンキャップ9の引き上げ時にばね部材13が勢いよく開く心配がなければ、前記ドレンキャップ9を無造作に引き上げても支障が無くなるので、該ドレンキャップ9を排水口4から取り外す作業が極めて容易になる。
【0052】
しかも、上方に引き上げたドレンキャップ9は、各アンカー14が各スリット15の下端部に掛止した位置でばね部材13が排水口4の外縁部に圧接することで該排水口4から浮上した状態に支持されるので、前記ドレンキャップ9を完全に取り外してしまわないまま排水口4の清掃等を極めて簡便に行うことが可能となる。
【0053】
この際、第一実施例のように、各アンカー14直下に環状の棚部16が形成されていれば、
図7に示す如く、前記棚部16上に各ばね部材13を起立させることで、より安定したドレンキャップ9の浮上支持が可能となり、更には、ドレンキャップ9を浮上支持させた状態から押し下げると、棚部16の下り傾斜と各ばね部材13の先端部の曲がりにより該各ばね部材13が互いに近接するように窄まり、ドレンキャップ9を再び排水口4に被せて着座させることが可能となる。
【0054】
更に、第一実施例のように、各アンカー14の先端部が排水口4の周方向一方に向け曲げられてガイド部14aを成し、前記排水口4の周方向一方にドレンキャップ9を回転させるだけで各ばね部材13が捻れて前記各アンカー14から外れるように構成されていれば、ドレンキャップ9を回転させるだけで前記各ばね部材13を前記ガイド部14aの曲がりに無理なく追従させて前記各アンカー14から簡便に外すことが可能となる。
【0055】
即ち、前記排水口4の周方向一方にドレンキャップ9を回転させると、各ばね部材13同士が互いに束ねられるように絞られ、該各ばね部材13の先端部側が前記排水口4の半径方向内側へ引き込まれつつ前記ドレンキャップ9の回転方向に引かれることになり、そのまま各アンカー14のガイド部14aに案内されつつ摺動して前記各アンカー14から外れる。
【0056】
また、第一実施例にあっては、ドレンキャップ9下端の内側における周方向複数箇所に各ばね部材13の上端部が個別に装着され、該各ばね部材13が内側に一旦向かってからP字状の反転部13cを介し外側に折り返すように形成されているので、従来の二枚のばね部材13を十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定する構造と比較して、排水口4の開口面積を塞いでしまう割合が大幅に少なくなって詰まり難くなる。
【0057】
更に、第一実施例においては、各ばね部材13が排水口4から抜脱した状態で略水平に展開し得るように構成されているので、非使用時のドレンキャップ9を保管するにあたり、複数のドレンキャップ9を嵩張らないように重ねて保管しておくことが可能となる。
【0058】
従って、上記第一実施例によれば、従来よりも取り付け性が良好で且つ強風により吹き飛ばされる心配の無いドレン構造17を実現することができ、しかも、上方に引き上げたドレンキャップ9を排水口4から浮上した状態に支持することもできるので、前記ドレンキャップ9を完全に取り外してしまわないまま排水口4の清掃等を極めて簡便に行うことができる。
【0059】
特に第一実施例の場合は、各ばね部材13を棚部16上に起立させてドレンキャップ9を浮上支持させることができるので、より安定したドレンキャップ9の浮上支持を実現することができると共に、ドレンキャップ9を浮上支持させた状態から押し下げるだけで簡便にドレンキャップ9を排水口4に着座させた状態に復帰させることもできる。
【0060】
また、各アンカー14の先端部が排水口4の周方向一方に向け曲げられてガイド部14aを成すようにしているので、ドレンキャップ9を回転させるだけで各ばね部材13を各アンカー14から簡便に外すことができ、該各アンカー14への係合形式を採用しながらも簡便な取り外しを実現することができる。
【0061】
しかも、従来の二枚のばね部材13を十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定する構造と比較して、排水口4の開口面積を塞いでしまう割合を大幅に少なくして詰まり難くすることができる。
【0062】
また、各ばね部材13を排水口4から抜脱した状態で略水平に展開させておくことができるので、非使用時のドレンキャップ9を保管するにあたり、複数のドレンキャップ9を嵩張らないように重ねて保管しておくことができ、複数のドレンキャップ9を収容効率良く保管することができる。
【0063】
更に、
図8~
図10は本発明の第二実施例を示すもので、この第二実施例においては、先に説明した第一実施例におけるP字状の反転部13cに換えて、弾性線材を一周分巻き回して追加したコイル状の反転部13cが採用されており、このようにすれば、ばね部材13における弾性力の強化と耐久性の向上が図られる。
【0064】
また、
図11~
図13は本発明の第三実施例を示すもので、この第三実施例においては、先に説明した第一実施例におけるP字状の反転部13cに換えて、シンプルなU字状の反転部13cが採用されており、このようにすれば、ばね部材13を弾性線材から加工する手間が省かれて制作コストの低減化が図られる。
【0065】
尚、本発明のドレン構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、ばね部材の枚数や形状及びその取り付け形式については必ずしも図示例通りにしなくても良いこと、また、アンカーの設置数や形状についても必ずしも図示例通りにしなくて良く、例えば、アンカーにおける鉤形の曲がり部分やガイド部については、図示例よりも滑らかな曲率のカーブを連続的に繋げたような形状として形成しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
4 排水口
9 ドレンキャップ
13 ばね部材
13a 曲折部
13c 反転部
14 アンカー
14a ガイド部
15 スリット
16 棚部
17 ドレン構造