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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】着脱ボディ式のトラック
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/48 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
B60P1/48 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099826
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193012
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520204250
【氏名又は名称】ボディーショップサコダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】迫田 芳正
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201213(JP,A)
【文献】特開平11-246002(JP,A)
【文献】特開2002-347763(JP,A)
【文献】実開昭57-109940(JP,U)
【文献】登録実用新案第3167279(JP,U)
【文献】登録実用新案第3203572(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと、
キャビンの下部から後方に延びるシャシーと、
シャシーの上側に積載されるボディと、
シャシーに設けられた可動アームと
を備え、
可動アームの先端部に設けられた係止部をボディの前部に設けられた被係止部に係止させた状態で可動アームを駆動することによって、シャシーに対してボディを積み降ろしできるようにした着脱ボディ式のトラックであって、
ボディの後部底面に車輪が水平旋回可能な状態で設けられるとともに、
可動アームの係止部が、円柱状を為し、その先端部に拡径部が設けられたピンとされ
ボディの被係止部が、その左右方向中央部が前方に突出するように平面視V字状に折り曲げられたバーとされた
ことを特徴とする着脱ボディ式のトラック。
【請求項2】
ボディの前部底面に、高さ調節可能な脚が設けられた請求項記載の着脱ボディ式のトラック。
【請求項3】
可動アームにおける係止部を含む先端部周辺が、可動アームにおける他の部分から取り外し可能な着脱アタッチメントとされた請求項1又は2記載の着脱ボディ式のトラック。
【請求項4】
ボディが、仮設施設として利用可能なものとされた請求項1~いずれか記載の着脱ボディ式のトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーに設けられた可動アームを駆動することによって、シャシーに対してボディを積み降ろしできる構造の着脱ボディ式のトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビンと、キャビンの下部から後方に延びるシャシーと、シャシーの上側に積載されるボディと、シャシーに設けられた可動アームとを備えた着脱ボディ式の貨物自動車(トラック)が既に知られている(例えば、特許文献1の図8を参照。)。着脱ボディ式のトラックでは、可動アームの先端部に設けられたフックをボディの前部に設けられたフックバーに係止させた状態で可動アームを駆動することによって、シャシーに対してボディを積み降ろしできるようになっている。
【0003】
着脱ボディ式のトラックにおける可動アームは、それを製造するメーカーによって、「アームロール」(新明和工業株式会社の登録商標)や「フックロール」(株式会社極東開発工業の登録商標)と呼ばれることもある。このような可動アームを備えた着脱ボディ式のトラックは、主に、廃棄物等を運搬する用途で用いられている。この種のトラックにおいて、上記のボディは、「コンテナ」と呼ばれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-255740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の着脱ボディ式のトラックにおいて、シャシーからボディを降ろす作業は、トラックを所定の場所に止めた後、可動アームを駆動させることによって行われる。しかし、一般的な着脱ボディ式のトラックにおいて、可動アームは、左右方向(トラックの幅方向)に平行な水平軸回りにしか回動できない構造(上下方向にしか回動できない構造)となっている。加えて、可動アームのフックは、ボディのフックバーに対して上下方向にしか回動できない状態で係止される。このため、一般的な着脱ボディ式のトラックでは、ボディを降ろす場所を前後方向(トラックの長さ方向)には調節できても、左右方向には調節することができなかった。加えて、降ろしたボディの向きを調節することもできなかった。
【0006】
この点、廃棄物等を運搬するトラックであれば、降ろしたボディの場所や向きを調節できないことによる不利益はそれほど生じない。というのも、そのような用途のトラックでは、ボディ(コンテナ)は大まかな場所に大まかな向きで降ろせば良いということが殆どであることに加えて、シャシーから降ろされたボディ(コンテナ)は、その場所に長期間置いたままの状態とされることが少ない。このため、ボディ(コンテナ)を降ろした場所や向きが問題となることは少ないからである。
【0007】
ところが、ボディの用途によっては、それを降ろす場所や向きが問題となることがある。例えば、本出願人は、ボディを、仮設事務所や、仮設店舗や、仮設家屋や、仮設ホテルや、仮設トイレ等の仮設施設として利用できるようにすることを考えているところ、これらの仮設施設は、シャシーから降ろされた後、一定期間、その場所に置かれることになる。加えて、これらの仮設施設は、それを設置する場所や向きがズレていると、その仮設施設を利用しにくくなる等の不具合が生じ得る。このため、この種のボディ(仮設施設)では、それを降ろす場所や向きが重要となってくる。
【0008】
しかし、上述した一般的な着脱ボディ式のトラックを用いて、この種のボディ(仮設施設)を決められた場所に正しい向きで設置しようとすると、トラックを正確な場所に正確な向きで止めた後にボディ(仮設施設)を降ろす作業を行うようにするか、大まかな場所にボディ(仮設施設)を降ろした後にクレーン等を用いてボディ(仮設施設)の場所や向きを調節する必要がある。そのような工程には、非常に手間を要する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ボディを降ろす場所や向きの調節を容易に行うことができる着脱ボディ式のトラックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
キャビンと、
キャビンの下部から後方に延びるシャシーと、
シャシーの上側に積載されるボディと、
シャシーに設けられた可動アームと
を備え、
可動アームの先端部に設けられた係止部をボディの前部に設けられた被係止部に係止させた状態で可動アームを駆動することによって、シャシーに対してボディを積み降ろしできるようにした着脱ボディ式のトラックであって、
ボディの後部底面に車輪が設けられるとともに、
可動アームの係止部が、円柱状を為すピンとされたことを特徴とする着脱ボディ式のトラック
を提供することによって解決される。
【0011】
このように、可動アームの係止部をピンとすることによって、それが係止されるボディの被係止部は、可動アームの係止部(ピン)を中心として、左右方向に旋回(水平旋回)しやすい状態となる。加えて、ボディの後部底面には車輪が設けられている。このため、地面に降ろしたボディの前側のみを可動アームで僅かに持ち上げた状態(ボディの後部底面の車輪のみが着地した状態)で、トラックを前進又は後退させながらハンドルを切り返すと、シャシーに対してボディが左右方向に旋回(水平旋回)するようになる。したがって、現場で、実際のボディの様子を見ながら、ボディを設置する場所や向きを調節することが可能になる。加えて、クレーン等の重機も不要である。よって、ボディを降ろす場所や向きの調節を容易に行うことが可能になる。
【0012】
本発明の着脱ボディ式のトラックにおいては、可動アームの係止部を形成するピンの先端部に、拡径部を設けることが好ましい。これにより、ボディの積み降ろしをする際に、可動アームの係止部(ピン)がボディの被係止部から抜けないように、係止部(ピン)を被係止部にしっかりと係止させることが可能になる。このため、ボディの積み降ろし作業の安全性を高めることが可能になる。
【0013】
本発明の着脱ボディ式のトラックにおいては、ボディの被係止部を、その左右方向中央部が前方に突出するように平面視V字状に折り曲げられたバーとすることも好ましい。これにより、可動アームの係止部(ピン)をボディの被係止部(バー)に係止した際に、係止部(ピン)が被係止部(バー)の左右方向中央部に自然と案内されるようになる。このため、可動アームに対してボディが水平旋回する際の旋回中心がズレないようにすることが可能になる。したがって、シャシーに対してボディがスムーズに水平旋回しやすくなり、ボディを設置する場所や向きの調節をさらに行いやすくなる。
【0014】
本発明の着脱ボディ式のトラックにおいては、ボディの後部底面に設けた車輪を、ボディに対して水平旋回可能な状態で設けることも好ましい。トラックを前進又は後退させながらハンドルを切り返した際に、シャシーに対してボディが水平旋回することについては、既に述べた通りであるところ、ボディの車輪を水平旋回できるようにすることによって、トラックの回転半径を小さくする(トラックが小回りしやすくする)ことができる。このため、狭い現場でも、ボディの設置場所や向きを容易に調節することが可能になる。
【0015】
本発明の着脱ボディ式のトラックにおいては、ボディの前部底面に、高さ調節可能な脚を設けることも好ましい。後述するように、シャシーから降ろして設置したボディを仮設施設として利用する場合には、降ろした後のボディを水平に設置することが要求されるところ、ボディの脚を高さ調節可能なものとすることによって、ボディを設置する地面が傾斜していたり起伏を有していたりした場合であっても、ボディを水平に設置することが可能になる。
【0016】
本発明の着脱ボディ式のトラックにおいては、可動アームにおける係止部を含む先端部周辺を、可動アームにおける他の部分から取り外し可能な着脱アタッチメントとすることも好ましい。既に述べたように、一般的な着脱ボディ式のトラックでは、可動アームの係止部がフックとなっているのに対し、本発明の着脱ボディ式のトラックでは、可動アームの係止部がピンとなっている。この点、可動アームの先端部を着脱アタッチメントとするとともに、例えば、ピン状の係止部を備えた着脱アタッチメントと、フック状の係止部を備えた着脱アタッチメントとを用意すれば、本発明の着脱ボディ式のトラックを、一般的な着脱ボディ式のトラックとして利用することも可能になる。
【0017】
本発明の着脱ボディ式のトラックにおいては、ボディを、仮設施設として利用可能なものとすることも好ましい。仮設施設としては、仮設事務所や、仮設店舗や、仮設家屋や、仮設ホテルや、仮設トイレ等が例示される。この種の仮設施設は、正しい場所に正しい向きで設置することの要求が強い。このため、ボディをこれらの仮設施設として利用する場合には、本発明の着脱ボディ式のトラックに係る構成を採用する意義が高まるからである。
【0018】
ところで、一般的な施設(建築物)は、仮設のものであっても、設置面積が10mを超えるものであれば、基礎を施工してその施設(建築物)を地面に固定させる必要がある。加えて、その施設(建築物)には、固定資産税もかかるようになる。この点、本発明の着脱ボディ式のトラックにおけるボディは、建築物ではなく、車両の一部である。このため、そのボディを仮設施設として利用する場合でも、上記のような制約がなくなるという利点がある。したがって、低コストで気軽に利用できる施設を提供することも可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によって、ボディを降ろす場所や向きの調節を容易に行うことができる着脱ボディ式のトラックを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る着脱ボディ式のトラックを側方から見た図であって、シャシーにボディが積まれた状態を示した図である。
図2】本発明に係る着脱ボディ式のトラックを側方から見た図であって、シャシーからボディを降ろしている途中の状態を示した図である。
図3】本発明に係る着脱ボディ式のトラックを側方から見た図であって、シャシーからボディを降ろし終えた状態を示した図である。
図4】本発明に係る着脱ボディ式のトラックにおけるボディと可動アームの先端部付近とを示した斜視図である。
図5】本発明に係る着脱ボディ式のトラックを上方から見た図であって、シャシーに対してボディを水平旋回させている様子を示した図である。
図6】本発明に係る着脱ボディ式のトラックにおけるボディの被係止部を、(a)上方から見た状態と、(b)側方から見た状態とをそれぞれ示した図である。
図7】本発明に係る着脱ボディ式のトラックにおけるボディを鉛直平面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の着脱ボディ式のトラックの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで一例であり、本発明の着脱ボディ式のトラックの技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の着脱ボディ式のトラックには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0022】
図1~3は、本発明に係る着脱ボディ式のトラックを側方から見た図である。本発明の着脱ボディ式のトラックは、図1~3に示すように、運転席を有するキャビン10と、キャビン10の下部から後方に延びるシャシー20と、シャシー20の上側に積載されるボディ30と、シャシー20に設けられた可動アーム40とを備えている。ボディ30は、廃棄物を運搬するコンテナ等であってもよいが、本実施形態のトラックにおいて、ボディ30は、後掲する図4に示すように、仮設施設(仮設事務所や、仮設店舗や、仮設家屋や、仮設ホテルや、仮設トイレ等)として利用できるものとしている。
【0023】
このトラックは、可動アーム40の先端部に設けられた係止部αをボディ30の前部に設けられた被係止部αに係止させた状態で可動アーム40を駆動し、その可動アーム40を鉛直面に沿って上下方向に回動(上下回動)させることによって、シャシー20に対してボディ30を積み降ろしできるものとなっている。図1は、シャシー20にボディ30が積まれた状態を、図2は、シャシー20からボディ30を降ろしている途中の状態を、図3は、シャシー20からボディ30を降ろし終えた状態を、それぞれ示している。
【0024】
可動アーム40は、図2に示すように、第一アーム41と第二アーム42とで構成されており、側面視L字状を為すものとなっている。第一アーム41の基端側は、図示省略の軸受によって、シャシー20に対して上下回動可能な状態で軸支されている。上記の係止部αは、第二アーム42の先端(第一アーム41に接続された端部(基端)とは逆側の端部)に設けられている。第一アーム41の中途部分には、油圧シリンダ43のピストンロッドの先端部が連結されている。
【0025】
このため、図1に示す状態(シャシー20にボディ30が積まれた状態)にあっては、可動アーム40の第一部分41が、ボディ30の下側で略水平に寝た状態(第二部分42が略鉛直に立った状態)となっているものの、油圧シリンダ43を駆動して伸長させると、図2に示すように、第一アーム41が上方回動(後方回動)して起き上がった後、図3に示すように、第一アーム42が後方に傾斜した状態となるようになっている。以下においては、可動アーム40のこのような動作を「降ろし動作」と呼ぶことがある。可動アーム40のこの降ろし動作によって、ボディ30の前部が持ち上げられながら後方に押されることで、ボディ30がシャシー20から降ろされる。
【0026】
また逆に、図3に示す状態から油圧シリンダ43を駆動して収縮させると、図2に示すように、第一アーム41が上方回動(前方回動)して起き上がった後、図1に示すように、第一アーム41が略水平に寝た状態となるようになっている。以下においては、可動アーム40のこのような動作を「積み動作」と呼ぶことがある。可動アーム40のこの積み動作によって、ボディ30の前部が持ち上げられて前方に引っ張られることで、ボディ30がシャシー20に積まれる。
【0027】
本実施形態のトラックにおいては、シャシー20の後部上面に、ローラ21を左右一対に設けている。このため、積み降ろしされるボディ30の底部をローラ21で円滑に案内することが可能となっている。
【0028】
ボディ30の後部底面には、車輪31を設けており、ボディ30の前部底面には、脚32を設けている。本実施形態のトラックにおいては、車輪31及び脚32を、それぞれ、左右一対に設けている。このため、ボディ30を地面に設置する際には、図2に示すように、ボディ30の後部の車輪31が地面に当たった状態になったときから、図3に示すように、ボディ30の前部の脚が地面に当たった状態になるまでの間、ボディ50が地面に対して滑らかに後方に動き、ボディ30をスムーズに降ろすことができるようになっている。
【0029】
また逆に、ボディ30を回収する際には、図3に示す状態(ボディ30が地面に設置された状態)から図2に示す状態(ボディ30の後部の車輪31が地面から浮き始める状態)となるまでの間、ボディ50が地面に対して滑らかに前方に動き、ボディ30をシャシー20にスムーズに積むことができるようになっている。加えて、脚32によって、地面に降ろして設置したボディ30を水平に保つことができるようになっている。本実施形態のトラックにおいて、脚32は、高さ調節可能なものとしている。このため、地面が傾斜している場合や、地面に起伏がある場合でも、脚32の高さを調節することで、ボディ30を水平に設置することができる。
【0030】
図4は、本発明に係る着脱ボディ式のトラックにおけるボディ30と可動アーム40の先端部付近とを示した斜視図である。既に述べたように、一般的な着脱ボディ式のトラックにおいては、可動アーム40の係止部αがフックになっているところ、本発明の着脱ボディ式のトラックでは、図4に示すように、可動アーム40の係止部αが円柱状を為すピンとなっている。このため、可動アーム40の係止部α(ピン)をボディ30の被係止部αに係止させた状態としても、被係止部αが、係止部α(ピン)を中心として、左右方向に旋回(水平旋回)しやすい構造となっている。換言すると、係止部αを中心とした被係止部αの滑らかな水平旋回が許容された状態となっている。
【0031】
このため、ボディ30の後部の車輪31が着地しながらも、ボディ30の前部の脚32が地面から僅かに浮いた状態(図3に示す状態から、ボディ30の前部のみを僅かに持ち上げた状態)として、トラックを前進又は後退させながらハンドルを切り返すと、図5の矢印Aに示すように、シャシー20に対してボディ30が左右方向に旋回(水平旋回)するようになる。図5は、本発明に係る着脱ボディ式のトラックを上方から見た図であって、シャシー20に対してボディ30を水平旋回させている様子を示した図である。
【0032】
このように、シャシー20に対してボディ30を水平旋回できるようにすることによって、現場で、実際のボディ30の様子を見ながら、ボディ30を設置する場所や向きを調節することが可能になる。ボディ30の設置作業は、トラックのみで完結するため、クレーン等の重機が不要である。よって、ボディ30を降ろす場所や向きの調節を容易に行うことができる。
【0033】
本実施形態のトラックのように、ボディ30が、仮設事務所や、仮設店舗や、仮設家屋や、仮設ホテルや、仮設トイレ等の仮設施設として利用されるものである場合には、ボディ30は、決められた場所に決められた向きで正確に設置しなければならないことも多いところ、そのような場合でも容易に対応することができる。
【0034】
また、本実施形態のトラックでは、ボディ30の後部底面の車輪31を、図5の矢印Aに示すように、ボディ30に対して水平旋回可能な状態で設けている。このため、上述したように、ボディ30を降ろす場所や向きを調節する際(トラックを前進又は後退させながらハンドルを切り返す際)に、トラックが小さい半径で曲がりやすくなっている。換言すると、トラックが小回りしやすくなっている。このため、ボディ30を設置する現場が狭い場合であっても、ボディ30を取り回しやすく、ボディ30の設置場所や向きを容易に調節することが可能となっている。
【0035】
加えて、本実施形態の着脱ボディ式のトラックにおいては、図6(a)に示すように、ボディ30の被係止部αを、その左右方向中央部が前方に突出するように平面視V字状に折り曲げられたバーとしている。この被係止部α(バー)は、図6(b)に示すように、水平面に対して前後方向に傾斜させており、被係止部α(バー)の左右方向中央部(前端部)が、被係止部α(バー)の左右方向両端部(後端部)よりも高くなるようにしている。図6は、本発明に係る着脱ボディ式のトラックにおけるボディ30の被係止部αを、(a)上方から見た状態と、(b)側方から見た状態とをそれぞれ示した図である。
【0036】
このため、可動アーム40の係止部α(ピン)をボディ30の被係止部α(バー)に係止した際に、係止部α(ピン)が被係止部α(バー)の左右方向中央部(前端部)に自然と案内されるようになっている。したがって、シャシー20に対してボディ30が水平旋回する際に、その旋回中心がズレにくくなっている。よって、シャシー20に対してボディ30がよりスムーズに水平旋回しやすくなっている。
【0037】
被係止部α(バー)の折り曲げ角度θ(図6(a))は、90°以上とすることが好ましい。被係止部α(バー)の折り曲げ角度θが90°よりも小さいと、被係止部αに係止部αを係止させにくくなるおそれがあるからである。被係止部α(バー)の折り曲げ角度θは、100°以上とすることがより好ましい。ただし、被係止部α(バー)の折り曲げ角度θが大きくなりすぎる(180°に近づきすぎる)と、可動アーム40の係止部α(ピン)をボディ30の被係止部α(バー)に係止した際に、係止部α(ピン)が被係止部α(バー)の左右方向中央部(前端部)にスムーズに案内されにくくなるおそれがある。このため、被係止部α(バー)の折り曲げ角度θは、170°以下とすることが好ましい。被係止部α(バー)の折り曲げ角度θは、160°以下とすることがより好ましく、150°以下とすることがさらに好ましい。
【0038】
また、被係止部αの傾斜角度φ(図6(b))は、10°以上とすることが好ましい。被係止部αの傾斜角度φが10°よりも小さいと、被係止部αを前後方向に傾斜させる意義が低下するからである。被係止部αの傾斜角度φは、20°以上とすることがより好ましく、30°以上とすることがさらに好ましい。ただし、被係止部αの傾斜角度φを大きくしすぎると、被係止部αに係止部αを係止させにくくなるおそれがある。このため、被係止部αの傾斜角度φは、80°以下とすることが好ましい。被係止部αの傾斜角度φは、70°以下とすることがより好ましく、60°以下とすることがさらに好ましい。
【0039】
被係止部α(バー)に係止させる係止部α(ピン)は、単純な円柱状に形成してもよい。しかし、その場合には、上記の降ろし動作や積み操作を行うときに、可動アーム40の先端部が下がることがあると、被係止部α(バー)から係止部α(ピン)が下側に抜け、係止部α(ピン)と被係止部α(バー)との係止が外れるおそれがある。このため、本実施形態のトラックでは、図4に示すように、係止部αを形成するピンの先端部に、拡径部αを設けている。このため、被係止部α(バー)に対して係止部α(ピン)が下側に沈み込もうとしても、拡径部αが被係止部α(バー)に引っ掛かり、係止部α(ピン)と被係止部α(バー)との係止が外れないようになっている。
【0040】
第二アーム42における係止部α(ピン)が設けられた部分(図4の第二アーム42の先端側部分42a)は、第二アーム42における他の部分(図4の第二アーム42の基端側部分42b)に対して完全に一体化されたものであってもよい。しかし、ボディ30が廃棄物を運搬するコンテナである場合等、ボディ30を設置する場所や向きを細かく調節する必要のない場合(シャシー20から降ろされるボディ30が後方に真っすぐにしか移動しない方が好ましい場合)もある。このような場合に係止部αがピンになっていると、シャシー20から降ろされているボディ30の向きがちょっとしたことで変わり、煩わしい。
【0041】
この点、本実施形態のトラックでは、第二アーム42の先端側部分42aを、第二アーム42の基端側部分42bから取り外して交換できる着脱アタッチメントとしている。このため、係止部αとしてピン以外の形態のもの(例えば水平旋回を許容しないフック)を備えた先端側部分42a(着脱アタッチメント)を別に用意しておけば、第二アーム42の基端側部分42bに取り付ける着脱アタッチメントを別のものに切り替えることによって、係止部αをピンからフックへ切り替えることができるようになっている。したがって、ボディ30の種類等に応じて、係止部αの形態を変更することができる。
【0042】
また、ボディ30の後部底面の車輪31は、図4の矢印Aの方向に水平旋回できる状態(非ロック状態)と水平旋回できない状態(ロック状態)とを切り替えることができるものとすることが好ましい。これにより、ボディ30の矢印Aの方向の水平旋回を許容しない係止部α(フック等)を使用するときに、車輪31をロック状態として、シャシー20から降ろされているボディ30の向きが意図せず変わりにくくすることができる。
【0043】
図7は、本発明に係る着脱ボディ式のトラックにおけるボディ30を鉛直平面で切断した状態を示した断面図である。本実施形態のトラックにおいて、ボディ30の内部は、図7に示すように、人が活動できる部屋となっている。ボディ30には、窓やドア等(図4を参照。)も設けられている。この部屋には、照明51や空調機52等の電気機器が設けられている。また、電気コンセント53も設けられている。このため、ボディ30は、仮設事務所や、仮設店舗や、仮設家屋や、仮設ホテルや、仮設トイレ等の仮設施設として快適に利用できるものとなっている。
【0044】
上記のこれらの電気機器51,52や、電気コンセント53には、商用電源から電力を供給するようにしてもよい。しかし、ボディ30は、山や河川敷等に設置されることも想定され、必ずしも商用電源をとることができる場所に設置されるとは限らない。このため、本実施形態のトラックでは、ボディ30に設けた発電手段54から、電力を供給するようにしている。発電手段54としては、太陽光発電装置や風力発電装置等が例示される。ボディ30には、バッテリー55も取り付けており、夜間等でも電力を利用できるようにしている。ボディ30が提供する仮設施設は、電力会社からの送電網を利用せずとも自家発電によって電力をまかなうことのできる「オフグリッド」タイプのものとなっている。また、ボディ30が提供する仮設施設は、法令上、建築物には該当せず、車両の一部として扱われる。このため、基礎等を施工することなく簡易的に設置することができることに加えて、固定資産税もかからないものとなっている。
【符号の説明】
【0045】
10 キャビン
20 シャシー
21 ローラ
30 ボディ
31 車輪
32 脚
40 可動アーム
41 第一アーム
42 第二アーム
42a 第二アームの先端側部分
42b 第二アームの基端側部分
43 油圧シリンダ
51 照明
52 空調機
53 電気コンセント
54 太陽光発電装置(発電手段)
55 バッテリー
ボディが水平旋回する方向
ボディの後部底面の車輪が水平旋回する方向
α 係止部
α 被係止部
α 拡径部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7