(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】呼気捕獲装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20240415BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N1/22 L
(21)【出願番号】P 2021190212
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2023-07-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】李 相錫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 芳晴
(72)【発明者】
【氏名】松永 忠雄
【審査官】野口 聖彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-081853(JP,A)
【文献】特開2016-011929(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079174(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174866(WO,A1)
【文献】特開昭58-183143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
A61B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を通すための流路を備える本体と、
前記本体に着脱可能であって、ガス吸着面を有
し分析に供される吸着プレートを着脱可能に保持するとともに、前記吸着プレートを前記流路内に配置する保持体と、を備え、
前記本体は、前記流路と交差する方向に前記保持体を挿脱可能な挿着口を備える、呼気捕獲装置。
【請求項2】
前記保持体は、前記流路の軸線と保持した前記吸着プレートとの交差角度が其々異なる複数の交換可能な保持体を含
み、前記複数種類の交換可能な保持体が前記挿着口に相互に取り換えて装着可能に構成されている、請求項1に記載の呼気捕獲装置。
【請求項3】
前記保持体は、前記流路の軸線と保持した前記吸着プレートとの交差角度が変更可能に構成されている、請求項1に記載の呼気捕獲装置。
【請求項4】
前記ガス吸着面の向きを固定するための位置決め機構を更に備え、前記位置決め機構は、前記保持体及び前記本体の一方に設けられたキーと、前記保持体及び前記本体の他方に設けられて前記キーが係合する複数のキー溝と、を有し、前記複数のキー溝の何れかに前記キーを係合させることにより、前記流路の軸線に対して、前記吸着プレートの交差角度を変更可能とされている、請求項3に記載の呼気捕獲装置。
【請求項5】
前記保持体は、前記流路の軸線と交差する回転軸線周りに回動可能に前記本体に装着されるとともに、ゴム製Oリングを介して前記本体と摩擦係合することにより任意の回転角度位置を保持可能に構成され、前記流路の軸線に対して、前記吸着プレートの交差角度を変更可能とされている、請求項3記載の呼気捕獲装置。
【請求項6】
前記保持体及び前記本体に、前記保持体の回転角度位置を示す表示が設けられている、請求項5に記載の呼気捕獲装置。
【請求項7】
前記保持体は、前記流路の軸線に対して、前記吸着プレートが斜めに交差するように前記吸着プレートを保持する、請求項1に記載の呼気捕獲装置。
【請求項8】
前記保持体は、前記保持体を把持するための把持部と、前記把持部に連設されて前記吸着プレートを前記流路内で支持する支持部と、前記支持部に支持された前記吸着プレートを着脱可能に保持する可動ストッパーと、を備える、請求項1に記載の呼気捕獲装置。
【請求項9】
前記可動ストッパーは、前記把持部に設けられたガイド孔に、スライド可能に挿入されるとともに、前記吸着プレートに係合する先端部を備える、請求項8に記載の呼気捕獲装置。
【請求項10】
前記可動ストッパーは、前記ガイド孔内に設けられた被係止部に係止する係止部を備え、
前記被係止部は、前記可動ストッパーが前記吸着プレートに係合する係合位置と、前記可動ストッパーが前記吸着プレートに係合しない非係合位置とに、其々設けられている、請求
項9に記載の呼気捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物又はヒトの呼気を捕獲する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌の診断方法の一つとして呼気分析法が知られている。呼気分析法は、呼気に含まれるバイオマーカーと呼ばれる揮発性物質の量を分析することにより、癌の診断を行う。呼気中のバイオマーカーは低濃度であるため、これを濃縮するためにMEMS技術により制作された3次元微細構造体に揮発性有機ガス分子の吸着剤が塗布された吸着プレートを用いて吸着面積を増やす技術が知られている(例えば、特許文献1等)。この吸着プレートは、シリコン基板の一方面をドライエッチングしたもの、シリコン基板上に多数のカーボンナノチューブ束を立設状に設けたもの、或いは、樹脂構造体により一方面が微細凹凸形状のプレート状に構成したもの等が知られている(例えば、非特許文献1等)。斯かる吸着プレートを用いることにより、ppbオーダーの低濃度ガスを濃縮し、ppmオーダーしか検出できないガスクロマトグラフィー等の分析装置で分析することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-11929号公報
【文献】李 相錫、“樹脂構造体を用いたがんの早期診断のための安価なマイクロ予備濃縮器の検討”、[online]、令和元年6月12日、科学研究費助成事業 研究成果報告書、[令和3年8月31日検索]、インターネット<URL: https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-16K04919/16K04919seika.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の吸着プレートは、小型化可能で吸着性能に優れているが、小型化したことにより取り扱い難く、呼気を適切に捕獲させる手段がなかった。
【0005】
そこで、本発明は、小型化した吸着プレートの取り扱い性に優れ、呼気を適切に捕獲させることができる、呼気捕獲装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る呼気捕獲装置は、呼気を通すための流路を備える本体と、前記本体に着脱可能であって、ガス吸着面を有する吸着プレートを着脱可能に保持するとともに、前記吸着プレートを前記流路内に配置する保持体と、を備え、前記本体は、前記流路と交差する方向に前記保持体を挿脱可能な挿着口を備える。
【0007】
本発明の他の態様によれば、前記保持体は、前記流路の軸線と保持した前記吸着プレートとの交差角度が其々異なる複数の交換可能な保持体を含む。
【0008】
本発明の他の態様によれば、前記保持体は、前記流路の軸線と保持した前記吸着プレートとの交差角度が変更可能に構成され得る。
【0009】
本発明の他の態様によれば、前記ガス吸着面の向きを固定するための位置決め機構を更に備え、前記位置決め機構は、前記保持体及び前記本体の一方に設けられたキーと、前記保持体及び前記本体の他方に設けられて前記キーが係合する複数のキー溝と、を有し、前記複数のキー溝の何れかに前記キーを係合させることにより、前記流路の軸線に対して、前記吸着プレートの交差角度を変更可能とされる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、前記保持体は、前記流路の軸線と交差する回転軸線周りに回動可能に前記本体に装着されるとともに、ゴム製Oリングを介して前記本体と摩擦係合することにより任意の回転角度位置を保持可能に構成され、前記流路の軸線に対して、前記吸着プレートの交差角度を変更可能とされる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、前記保持体及び前記本体に、前記保持体の回転角度位置を示す表示が設けられる。
【0012】
本発明の他の態様によれば、前記保持体は、前記流路の軸線に対して、前記吸着プレートが斜めに交差するように前記吸着プレートを保持する。
【0013】
本発明の他の態様によれば、前記本体は、前記流路と交差する方向に前記保持体を挿脱可能な挿着口を備え、前記保持体は、前記保持体を把持するための把持部と、前記把持部に連設されて前記吸着プレートを前記流路内で支持する支持部と、前記支持部に支持された前記吸着プレートを着脱可能に保持する可動ストッパーと、を備える。
【0014】
本発明の他の態様によれば、前記可動ストッパーは、前記把持部に設けられたガイド孔に、スライド可能に挿入されるとともに、前記吸着プレートに係合する先端部を備える。
【0015】
本発明の他の態様によれば、前記可動ストッパーは、前記ガイド孔内に設けられた被係止部に係止する係止部を備え、前記被係止部は、前記可動ストッパーが前記吸着プレートに係合する係合位置と、前記可動ストッパーが前記吸着プレートに係合しない非係合位置とに、其々設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸着プレートを保持体に着脱自在に保持させ、吸着プレートを保持させた保持部を本体の挿着口に着脱可能に挿着することにより、吸着プレートを流路内に配置できるので、吸着プレートを保持体に保持させれば、保持体を本体に装着することにより、吸着プレートを呼気が流れる流路に配置することができ、呼気を適切に捕獲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る呼気捕獲装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図5】
図1の呼気捕獲装置の構成要素である本体を示す正面図である。
【
図10】
図1の呼気捕獲装置の構成要素である保持体を示す平面図である。
【
図14】
図1の呼気捕獲装置の構成要素である可動ストッパーを示す平面図である。
【
図19】本発明の一実施形態による呼気捕獲装置によって捕獲されたガスの分析結果を示すグラフである。
【
図20】本発明の他の実施形態による呼気捕獲装置によって捕獲されたガスの分析結果を示すグラフである。
【
図21】本発明の更に他の実施形態による呼気捕獲装置によって捕獲されたガスの分析結果を示すグラフである。
【
図22】本発明に係る呼気捕獲装置の他の実施形態を示す正面図である。
【
図23】
図6の本体の変更態様を示す平面図である。
【
図24】
図6の本体の更に他の変更態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る呼気捕獲装置の実施形態について、以下に
図1~
図14を参照して説明する。なお、全図及び全実施例を通じて同一又は類似の構成要素に同符号を付した。
【0019】
図1に示すように、呼気捕獲装置1は、呼気を通すための流路2を備える本体3と、ガス吸着面Psを有する吸着プレートP(
図4、13参照)を着脱可能に保持するとともに本体3に着脱可能な保持体4と、を備える。
【0020】
吸着プレートPは、ガス吸着面Psを備え、例えば、MEMS技術によりシリコン基板の一方面をドライエッチングして3次元微細構造としたもの、シリコン基板上に多数のカーボンナノチューブが立設状に設けて3次元微細構造としたもの、或いは、樹脂構造体により一方面が微細凹凸形状のプレート状に構成したもの等の公知のものを使用することができる。ガス吸着面には、揮発性有機ガス分子の吸着材(多孔質ポリマー吸着剤TENAX-TA等)が塗布される。その他の吸着プレートPとして、薄板に吸着剤を塗布しただけのものも使用し得る。本実施形態では、MEMS製作技術を用いてシリコン基板をエッチングし、バイオマーカーとなる呼気からの揮発性有機ガスの吸着材であるTENAX-TAをエッチング面に塗布し、その吸着材を塗布した面が露出した、直径1cm程度の薄い円盤状の吸着プレートを用いている(
図4参照)。
【0021】
本体3は、
図6及び
図7に示すように、流路2の軸線X方向と交差する方向(Z軸方向)に保持体4を挿脱可能な挿着口3aを備えている。挿着口3aの内周面には、保持体4の外周面に突接された位置決め用キー4a(
図3、
図11)が嵌るキー溝3b1が設けられている。位置決め用キー4aがキー溝3b1に嵌合することにより、吸着プレートPのガス吸着面Psが流路2を通る呼気の流れを受ける方向を向くように配置される。
【0022】
図10~
図16を参照して、保持体4は、保持体4を把持するための把持部4bと、把持部4bに連設されて吸着プレートPを支持する支持部4cと、支持部4cに吸着プレートPを着脱可能に固定する可動ストッパー4dと、を備える。
【0023】
把持部4bは、指で摘まんで持てるような寸法形状に形成されている。把持部4bは、図示例では円柱状であるが、角柱状或いはその他の形状でもよい。
【0024】
支持部4cは、吸着プレートPの周縁部の一部が嵌る溝状である。支持部4cは、
図12及び
図13に示すように、本例において2か所に分散して設けられているが、1か所のみ、或いは3か所以上に分散して設けることもできる。支持部4cは、溝状に限らず、鈎状或いはその他の支持形状とすることもできる。
【0025】
可動ストッパー4dは、把持部4bに設けられたガイド孔4b1に、スライド可能に挿入さている。可動ストッパー4dは、ガイド孔4b1の内面に設けた被係止部4b2、4b3に係止する係止部4d1を備える。係止部4d1は、
図14~
図16を参照して、可撓部4d2に設けた突部によって構成されている。可撓部4d2は、可動ストッパー4dにスリット4d2を設けて薄肉状とすることにより可撓性を有する。係止部4d1を構成する突部は、半円球状とされている。被係止部4b2、4b3は、係止部4d1が嵌る凹部によって構成されている。可動ストッパー4dをガイド孔4b1に差し込むと、可撓部4d2が弾性変形してスリット4d2の内側に撓み、係止部4d1を構成する突部が被係止部4b2又は4b3を構成する凹部の位置に来ると、撓んでいた可撓部4d2が弾性復帰して係止部4d1の突部が被係止部4b2又は4b3の凹部に嵌り、係止部4d1が被係止部4b2又は4b3に係止する。
【0026】
可動ストッパー4dの先端部は、吸着プレートPの周縁部の一部に係合する係合部4eを備える。係合部4eは、図示例の如く段部によって構成することができる。可動ストッパー4dの後端部4fは、保持体4の把持部4bから突出し、指で摘まんで持てるようになっており、可動ストッパー4dのスライド操作に供される。
【0027】
被係止部4b2は、可動ストッパー4dが吸着プレートPに係合する係合位置に設けられ、被係止部4b3は、可動ストッパー4dが吸着プレートPに係合しない非係合位置に設けられている。吸着プレートPは薄くて破損しやすいため、適切な係合位置で係止部4d1が被係止部4b1に係止することにより、吸着プレートに過大な負荷がかかることを防ぎ、吸着プレートPの破損を防ぐことができる。
【0028】
吸着プレートPは、支持部4cと可動ストッパー4dとに挟まれることにより保持体4に保持される。可動ストッパー4dをスライドさせるだけで、吸着プレートPの着脱を容易に行うことができる。吸着プレートPは、ピンセット等で掴んで保持部にセットすることができる。
【0029】
図12及び
図13において、符号4jは可動ストッパー4dが嵌るガイド溝であり、符号4kは、吸着プレートPを摘まむピンセットの先が入るスペースを提供するための凹部を示す。
【0030】
上記のように、吸着プレートPを保持体4に着脱自在に保持させ、吸着プレートPを保持させた保持部4を本体3の挿着口3aに着脱可能に挿着することにより、吸着プレートPを流路2内に配置できるので、吸着プレートPを保持体4に保持させれば、保持体4を本体3に装着することにより、吸着プレートPを呼気が流れる流路2内に配置することができ、呼気を適切に捕獲することができ、小さくて扱いにくい吸着プレートPの装着、交換が容易に行える。
【0031】
保持体4は、把持部4bと位置決め用キー4aとの間に鍔部4gを備える。鍔部4gは、本体3の挿着口3aの周縁に当接する。鍔部4gは、保持体4を挿着口3aに差し込んだ時に、把持部4bを本体2の外部に配置するとともに、吸着プレートPが流路2内の所定位置に配置されるように、位置決めとして機能する。保持体4は、周溝4hにゴム製のOリング4i(
図3)が装着され、挿着口3aに気密的に嵌入される。
【0032】
保持体4を本体3に挿着すると、流路2は保持体4によって部分的に遮られるが、呼気が流路2を通り抜ける空隙は残される。従って、流路2の一方側開口から流入した呼気は、流路2の他方側開口から流出することができる。呼気は、流路2の途中で保持体4に保持されている吸着プレートPに接触し、ガス吸着面Psに呼気中の揮発性有機ガスが吸着される。
【0033】
流路2の流路断面積は、
図3及び
図7に示すように、吸着プレートPが配置される位置が広く、呼気の出口側が絞られて狭く構成されている。流路2の出口側を絞ることにより、流路2に流入した呼気を吸着プレートPの周囲に滞留させることができる。
【0034】
流路2の一方側(呼気入口側)は、挿管チューブ等の管(図示せず。)を差し込んで接続することができる第1管接続部2aとなっている。流路2の他方側は、ホースジョイント3cで構成された第2管接続部2bが設けられ、麻酔チューブの接続等に用いられ得る。被験体(動物又はヒト)から挿管チューブを通じて呼気捕獲装置1の流路2に呼気が送られ、保持体4に保持された吸着プレートPに呼気中の揮発性有機ガスが吸着される。流路2の一方側から流入する呼気は、流路2の他方側へ排出される。その後、保持体4を本体3から抜脱し、可動ストッパー4dをスライドさせ、保持体4の支持部4cから吸着プレートPを取り外す。取り外した吸着プレートPは図外の加熱装置によって高温(例えば300℃)で加熱され、吸着していた揮発性有機ガスは、蒸発させられて、ガスクロマトグラフィーで成分分析される。
【0035】
図3及び
図4に示す保持体4は、流路2の軸線Xと吸着プレートPとの交差角度θが90°である。交差角度θは、軸線Xと吸着プレートPとのなす角の最小値を意味する。一方、
図17に示す保持体4Aは、流路2の軸線Xに対して、吸着プレートPが交差角度75°で斜めに交差するように吸着プレートPを保持する。
図18に示す保持体4Bは、流路2の軸線Xに対して、吸着プレートPが交差角度15°で斜めに交差するように吸着プレートPを保持する。可動ストッパー4dは、溝状の支持部4cに嵌めた吸着プレートPが抜け落ちないように吸着プレートPの周縁部に係合する。保持体4と保持体4Aは、相互に取り換えて本体3に装着できる。
【0036】
保持体4、保持体4A、保持体4Bを相互に取り換えて、捕獲された呼気中の揮発性有機ガス分子をガスクロマトグラフィーで分析した結果を
図19~
図21に示す。
図19のグラフは交差角度θが90°の場合、
図20のグラフは交差角度が75°の場合、
図21は交差角度が15°の場合を其々示している。交差角度90°の場合(
図19)は揮発性有機ガス分子の捕獲量が大きく、交差角度θが75°の場合(
図20)は揮発性有機ガス分子の捕獲種が多く、交差角度が15°の場合(
図21)は揮発性有機ガス分子の捕獲量、捕獲種が共に少ないことを示している。このことは、呼気が吸着プレートPに当たる方向によって、揮発性有機ガス分子の捕獲量と捕獲種が異なることを意味する。
【0037】
交差角度θは、分析したい分子の量及び種類に応じて、5°~90°の範囲内で適宜設定した角度を採用することができる。
【0038】
本体3は、
図22に示すように、挿着口3a(
図6)を複数設け、交差角度θが異なる複数の保持体4、4Aを同時に装着することもできる。
図22では、保持体が2つの例を示しているが、保持体が3個以上装着できるように構成することもできる。
【0039】
図23は、本発明に係る呼気捕獲装置の他の実施形態の本体3を示している。
図23に示すように、本体3の挿着口3aに、複数のキー溝3b1、3b2が設けられている。その他の構成は、
図1~
図16に示した呼気捕獲装置と同様である。キー溝3b1、3b2は、所定角度間隔で形成されている。複数のキー溝3b1、3b2の何れかに保持体4のキー4a(
図3,
図11参照)を係合させることにより、流路2の軸線Xに対して、
図23に仮想線で示されるように、保持された吸着プレートPの交差角度θを変更可能とされている。斯かる構成によれば、上記したような交差角度θが異なる保持体4Aを別途用意する必要がない。キー溝を保持体4に設けて、キーを本体3に設けることもできる。
【0040】
図24~
図27は、本発明に係る呼気捕獲装置の更に他の実施形態を示している。
図24~
図27に示す呼気捕獲装置1は、
図24に示すように本体3の挿着口3aに上記実施形態のキー溝を備えておらず、
図25に示すように保持体4に上記実施形態のキーを備えていない。保持体4及び本体3には、保持体4の回転角度位置を示す表示5m、5nが設けられている。その他の構成は
図1~
図16に示す呼気捕獲装置1と同様である。図示例において、表示5mは基準位置の目印であり、表示5nは角度目盛である。斯かる構成によれば、保持体4は、流路2の軸線Xと交差する回転軸線Yの周りに回動可能に本体3に装着される。それにより、流路2の軸線Xに対して、保持された吸着プレートPの交差角度θを変更可能とされている。また、保持体4は、ゴム製Oリング4iを介して本体3と摩擦係合することにより任意の回転角度位置で保持できる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 呼気捕獲装置
2 流路
3 本体
3a 挿着口
3b1、3b2 キー溝
4、4A 保持体
4a キー
4b 把持部
4b1 ガイド孔
4b2 被係止部
4b3 被係止部
4c 支持部
4d 可動ストッパー
4d1 係止部
4i ゴム製Oリング
5m、5n 表示
P 吸着プレート
Ps ガス吸着面
X 軸線
θ 交差角度