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特許7471666動力発生サイクルまたはヒートポンプサイクルのための流体環境における束状SMA/NTEの気体分離によるサイクル動作
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  • 特許-動力発生サイクルまたはヒートポンプサイクルのための流体環境における束状SMA/NTEの気体分離によるサイクル動作 図1
  • 特許-動力発生サイクルまたはヒートポンプサイクルのための流体環境における束状SMA/NTEの気体分離によるサイクル動作 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】動力発生サイクルまたはヒートポンプサイクルのための流体環境における束状SMA/NTEの気体分離によるサイクル動作
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
F03G7/06 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021560656
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020060491
(87)【国際公開番号】W WO2020208266
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】1905246.3
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516357166
【氏名又は名称】エクサジン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EXERGYN LIMITED
【住所又は居所原語表記】DCU Cleantech Innovation Campus,Old Finglas Road,Glasnevin,Dublin 11, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケビン オトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリー オサリバン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ピルシュ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第102017123146(DE,B3)
【文献】国際公開第2018/002183(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0120118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー回収システムあって、
コアを画定するように配設されて、入口と出口とを有する浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素、
を備え、
前記浸漬チャンバへ導入される第1流体が第1温度変化を提供して前記コアを第1状態から第2状態へ駆動し、第2流体が第2温度で導入されて前記コアを前記第2状態から前記第1状態へ駆動し、
前記第1流体と前記第2流体との間に、前記第1流体と前記第2流体の混合が起こらないように、前記浸漬チャンバへ被制御気体が導入されることを特徴とする、
システム。
【請求項2】
導入される前記被制御気体が空気である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記被制御気体が圧力をかけられて前記浸漬チャンバへ導入される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1流体および第2流体を互いから分離させる速度で前記被制御気体が前記浸漬チャンバへ投入される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記入口が圧力をかけられた前記被制御気体を入力するのに適応しており、前記第1または第2流体が前記浸漬チャンバから除去された時に前記被制御気体が前記出口から流出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記入口を制御するとともに前記第1流体と前記第2流体と前記浸漬チャンバへ流入する前記被制御気体とのうち少なくとも一つを制御するのに適応した一以上のバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記出口を制御するとともに前記第1流体と前記第2流体と前記浸漬チャンバから流出する前記被制御気体とのうち少なくとも一つを制御するのに適応した一以上のバルブを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コアに応力を印加するように構成され、前記コアの状態が変化すると熱が前記コアから放出され、前記第1流体に伝達される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いに略平行に配置されて前記コアを画定する束状のワイヤとして配設される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いの上に配置または載置されて前記コアを画定する複数のSMAプレートとして配設される、請求項1から9のいずれかのシステム。
【請求項11】
エネルギー回収方法であって、
コアを画定するように配設されて、入口と出口とを有する浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素を配設するステップと、
前記浸漬チャンバへ第1流体を導入し、第1温度変化を提供して前記コアを第1状態から第2状態へ駆動するステップと、
第2流体を第2温度で導入して前記コアを前記第2状態から前記第1状態へ駆動するステップと、
前記第1流体と前記第2流体との混合が起こらないように前記第1流体と前記第2流体との間で前記浸漬チャンバへ被制御気体を導入するステップと、
を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー回収の分野に、特にそのための形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材料(NTE)の使用に関する。本開示は、空調システムなど、暖房システムおよび/または冷房システムのためのヒートポンプにも関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に摂氏100度未満と考えられる低位熱は、工業プロセス、動力生成、そして輸送の用途において重大な排出エネルギー流に当たる。このような排出流の回収および再利用が望ましい。この目的で提案されている技術の一例は、熱電発電機(TEG)である。残念なことに、TEGは比較的高価である。このようなエネルギーを回収するために提案されている非常に実験的な別のアプローチは、形状記憶合金の使用である。
【0003】
形状記憶合金(SMA)は、最初に冷間鍛造された形状を「覚えている」合金であって、いったん変形すると加熱時に前の変形形状に戻る。この材料は、油圧、空気、そしてモータに基づくシステムなど、従来のアクチュエータの代用となる軽量の固体である。
【0004】
主要な三タイプの形状記憶合金は、銅・亜鉛・アルミニウム・ニッケル、銅・アルミニウム・ニッケル、ニッケル・チタン(NiTi)合金であるが、例えば亜鉛、銅、金、鉄を合金にすることによってもSMAが製作されうる。
【0005】
このような材料記憶は、熱回収プロセスでの使用のため、特に熱からエネルギーを運動として回収するSMAエンジンを構成することにより、1970年代初頭から採用および提案されている。エネルギー回収装置に関連する最近の出版物は、本発明の譲受人に譲渡された特許文献1を含む。SMAまたはNTE材料の収縮を効率的に機械力に変換することが望ましい。特許文献2および特許文献3に開示されているように、これは簡単な作業ではなく、概して複雑で重大なエネルギーロスを伴う。
【0006】
ヒートポンプ(「HP」)技術は、暖房、換気、および空調(「HVAC」)の用途で商業的に広く受け入れられている。エネルギー節約と排出物削減を行い、一般的には建物または自動車の用途等での冷暖房システムのために設置される。特許文献1のエネルギー回収装置を使用する時にはヒートポンプシステムには成績係数(CoP)の大きな上昇が見られることが分かっている。このようなヒートポンプシステムは、本発明の譲受人に譲渡された特許文献4に記載されている。
【0007】
開示されているシステムについての問題は、動力発生のための各コアの反応時間を考慮していないのでコアの加熱および冷却の間のサイクル時間が長時間を要して結果的に動作が非効率になることである。また、サイクルは、流体制御バルブの開放および閉鎖の遅延時間ゆえに一部が重複する温水および冷水の相を特徴とする。こうして順サイクル(熱‐動力サイクル)と逆サイクル(ヒートポンプ/冷凍サイクル)の両方に有害な作用を与えうる高温または低温流体の混合を発生させうる。結果的に作用流体のエネルギーの多くが加熱または冷却のサイクルの間で浪費される。
【0008】
特許文献5は、一方の流体流が放射性であるので高温および低温の作用流体の流れを分離して混濁を回避するのに使用されるSMAアクチュエータを開示している。SMAアクチュエータの唯一の機能は流体の循環を制御することであり、流体のエネルギーはシステムの別のところ、例えば蒸気タービンで使用される。特許文献5は、エネルギー回収装置および/またはヒートポンプシステムにおけるシステムおよび方法の全く異なる機能を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2013/087490号パンフレット
【文献】独国公開特許第3014560号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/034750号明細書
【文献】国際特許出願第EP2019/062300号
【文献】中国実用新案第206719508号明細書(ノースイースタン大学)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ、エネルギー回収装置および/またはヒートポンプシステムにおける改良システムおよび方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、添付の請求項に提示されるように、
コアを画定するように配設されてて浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素、
を備え、
チャンバへ導入される第1流体が第1温度変化を提供してコアを第1状態から第2状態へ駆動し、第2流体が第2温度で導入されてコアを第2状態から第1状態へ駆動し、
第1流体と第2流体との混合が起こらないように、気体が第1流体と第2流体との間でチャンバへ導入されることを特徴とする、
エネルギー回収またはヒートポンプシステムが提供される。
【0012】
発明の利点は、SMA/NTEエンジンからの高効率の動力発生あるいはSMA/NTEヒートポンプ内での高いCoPが達成されることである。流体の混合を介したエネルギー損失を回避することにより、動力発生サイクルがより高速で作動して同量のワイヤがより多くの動力を発生できることを意味するか、混合を起こしうる同じ動力を生じるのに使用されるNTEストランドの数が少なくなる。
【0013】
同様にヒートポンプ内では、SMA/NTEコアの加熱または冷却と、ヒートポンプサイクルにより冷却または加熱される流体の分離においても、流体の分離が有益でありうる。
【0014】
本発明は、気体プラグを使用して高温および低温の流体や液体の流れを分離して混合を防止するとともにエネルギー効率を最大化することが認識されるだろう。本発明の状況において、SMAは(アクチュエータでなく)熱交換器である、つまり回路の他のところでは熱が使用されない。本発明は具体的には、熱力学サイクルすなわち排熱回収とヒートポンプ/冷凍サイクルとを分離することに関する。
【0015】
一実施形態において、導入される気体は空気である。
【0016】
一実施形態において、気体は圧力をかけられてチャンバへ導入される。
【0017】
一実施形態では、気体がチャンバへ投入されて第1流体と第2流体とを互いから分離させる。
【0018】
一実施形態において、浸漬チャンバは入口と出口とを備える。
【0019】
一実施形態において、入口は圧力をかけられた気体を投入するのに適応しており、第1または第2流体がチャンバから除去された時に出口から気体が流出する。
【0020】
一実施形態において、一以上のバルブは、入口を制御するとともに第1流体と第2流体とチャンバへ流入する気体とのうち少なくとも一つを制御するのに適応している。
【0021】
一実施形態において、一以上のバルブは、出口を制御するとともに第1流体と第2流体とチャンバから流出する気体とのうち少なくとも一つを制御するのに適応している。
【0022】
一実施形態では、複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いと略平行に配置されてコアを画定する束状のワイヤとして配設される。
【0023】
一実施形態では、複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いの上に配置または載置されてコアを画定する複数のSMAプレートとして配設される。
【0024】
別の実施形態では、
コアを画定するように配設されて浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素を配設するステップと、
チャンバへ第1流体を導入し、第1温度変化を提供してコアを第1状態から第2状態へ駆動するステップと、
第2温度の第2流体を導入してコアを第2状態から第1状態へ駆動するステップと、
第1流体および第2流体の混合が起こらないように、第1流体と第2流体との間でチャンバへ気体を導入するステップと、
を包含するエネルギー回収方法が提供される。
【0025】
さらなる実施形態では、
コアを画定するように配設されて浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素と、
コアへ張力または応力を印加してコアを駆動するように構成されるモジュールと、
を備えて、
チャンバへ導入される第1流体が温度変化を提供してコアの状態を変化させ、
コアへの張力の印加と第1流体の適用との間にチャンバへ気体が導入される、
ヒートポンプシステムが提供される。
【0026】
気体投入に加えて、本発明は任意の温度を有する単一の流体源とともに作用することが認識されるだろう。プロセスの低温段階のための気体源であるヒートポンプは空気で機能し、高温段階は熱を供給する水でありうる。この実施形態の一例は、温水加熱式の加熱システムおよび方法における一以上のラジエータであるだろう。
【0027】
一実施形態では、
コアを画定するように配設されて浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素、
を備えて、
チャンバへ導入される第1流体が第1温度変化を提供してコアを第1状態から第2状態へ駆動し、第2流体が第2温度で導入されてコアを第2状態から第1状態へ駆動し、状態の間でのコアの駆動がエネルギーを発生させ、
被制御気体が第1流体と第2流体との間でチャンバへ導入されることを特徴とする、
エネルギー回収システムまたはヒートポンプシステムが提供される。
【0028】
別の実施形態において、エネルギー回収およびヒートポンプ作動方法は、
コアを画定するように配設されて浸漬チャンバに収容される複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素を配設するステップと、
チャンバへ第1流体を導入し、第1温度変化を提供してコアを第1状態から第2状態へ駆動するステップと、
コアを第2状態から第1状態へ戻すことのできる時間にわたってチャンバへ気体を導入して第1流体をチャンバから除去するステップと、
チャンバへ第1流体を導入してコアを第1状態から第2状態へ駆動するステップと、
を包含する。
【0029】
さらなる実施形態では、コアが状態を変化させる時に熱がコアから放出されて第1流体に伝達されるように、コアへ応力を印加するステップが提供される。
【0030】
一実施形態では、添付の請求項1から15のいずれかに規定のエネルギー回収システムおよび/または方法が提供される。
【0031】
一実施形態では、添付の請求項1から15のいずれかに規定のヒートポンプシステムおよび/または方法が提供される。
【0032】
一実施形態では、添付の請求項1から15のいずれかに規定の冷房/冷凍/空調システムおよび/または方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付図を参照すると、単なる例として挙げられる以下の実施形態の説明から本発明がより明白に理解されるだろう。
図1】周知のエネルギー回収システムを図示する。
図2】チャンバに収容されたコアの周囲で温度の異なる二つの流体を混合する先行技術を図示する。
図3】第1および第2流体がチャンバへ導入される時の温度勾配を示すタイミング図を図示する。
図4】本発明の一実施形態による、チャンバに収容されたコアの周囲での温度の異なる二つの流体の混合を図示する。
図5】第1および第2流体がチャンバへ導入される時の温度勾配を示すタイミング図を図示し、混合サイクルの間に気体が導入される時が示されている。
図6】本発明の一実施形態による高圧(HP)サイクルに使用するための単一のSMAまたはNTEコアを図示する。
図7】本発明の一実施形態による低圧(LP)サイクルに使用するための単一のSMAまたはNTEコアを図示する。
図8】エネルギー回収のためのエンジンとして、またヒートポンプとして、本発明がどのように作用するかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、低位熱から動力を発生するのに形状記憶合金(SMA)または負熱膨張材料(NTE)を使用できる開発中の熱回収システムに関する。
【0035】
参照番号1で記されるSMAエンジンを採用するエネルギー回収装置を提示する図1を参照して、エネルギー回収装置についての例示的な周知の実施形態が記載される。SMAエンジン1はSMA駆動コアを備える。SMA駆動コアは、固定である第1点で挟持されるか他の形で固着されるSMA材料から成る。反対端部では、ドライブ機構2にSMA材料が挟持されるか他の形で固着される。ゆえに、第1点は係止されているが、ドライブ機構3を引っ張ると第2点は自由に移動する。浸漬チャンバ4はSMAエンジンを収容するのに適応しており、流体が逐次充填されてSMAエンジンの加熱および/または冷却を可能にするのに適応している。したがって、SMAコアに熱が印加されるとコアは自由に収縮する。SMAコアがSMA材料による複数の平行ワイヤ、リボン、またはシートを備えると適切である。代替的に、複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いの上に配置または載置されてコアを画定する複数のSMAプレートとして配設されてもよい。本発明の状況において、「ワイヤ」の語が使用され、コアとして作用できる適切な長さのSMAまたはNTE材料を意味するという広い解釈が与えられるべきであることが認識されるだろう。
【0036】
一般的に、このようなコアについては4%程度の撓みが普通である。したがって、長さ1mのSMA材料が採用される時には、ほぼ4cmの線形移動が利用可能であると予想されうる。付与される力は、使用されるワイヤの質量に依存することが認識されるだろう。このようなエネルギー回収装置は、本発明の譲受人に譲渡されて参照により全て援用される国際公開第2013/087490号に記載されている。
【0037】
このような用途について、熱源に露出された際のこの種の材料の収縮が捕捉されて有用な機械的作用に変換される。このようなエンジンの作用要素に有用な材料はニッケル・チタン合金(NiTi)であることが証明されている。この合金はよく知られた形状記憶合金であり、多様な産業にわたって数多くの使途を有する。本発明の状況では適切ないかなるSMAまたはNTE材料も使用されうることが認識されるだろう。
【0038】
ピストンおよびトランスミッション機構を介し、作用コア内に複数のワイヤ(または束)として用意される合金の収縮および膨張を通して、力が発生される。したがって、特定構成の要件および必要なSMA材料の質量に応じて、複数のSMAワイヤが共に採用され、互いに略平行に離間して単一のコアを形成する。
【0039】
一実施形態では、高温および低温の流体流に露出された時にコアが反応する。動力発生効率の向上を試みる時には、反応時間が最も重要である。温水および冷水の相は、流体制御バルブの開放および閉鎖での遅延時間ゆえに一部が重複する。こうして、順サイクル(熱‐動力のサイクル)または逆サイクル(ヒートポンプ/冷凍サイクル)の両方に有害な作用を与えうる混合が発生しうる。
【0040】
エネルギー回収の実施形態
作動時に、チャンバへ導入される第1流体は第1温度変化を提供してコアを第1状態から第2状態へ駆動し、第2流体は第2温度で導入されてコアを第2状態から第1状態へ駆動する。複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素は、互いの上に配置または載置されてコアを画定する複数のSMAプレートとして配設されうる。代替的に、複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いに略平行に配置されてコアを画定する束状のワイヤとして配設される。
【0041】
気体が導入され、第1流体と第2流体との間でチャンバへ投入または送入される。本発明は、システムへ投入されて高温および低温の流体流を分離する気体のパルスを効果的に利用する。
【0042】
気体が圧力をかけられて投入されてチャンバの流体を「流し出し」、そして異なる条件または温度の流体がチャンバに補充される。投入される気体の量と投入される速度とは、バルブにより制御されうる。気体が投入される時間の長さは、SMAまたはNTE材料の駆動時間に応じて選択されうる。混合を無くすと、システムのコアにおけるSMAまたはNTE材料への、あるいはSMAまたはNTE材料からの熱伝達が最大化されることが保証される。これは、システムからの高温および低温の出力が分離されてシステム出力で最大の温度変化が達成されることを保証するSMA/NTEヒートポンプサイクルにも有益である。
【0043】
浸漬チャンバは入口と出口とを備える。入口は圧力をかけられた気体を入力するのに適応しており、第1または第2流体がチャンバから除去された時には気体が出口から流出する。一以上のバルブは、入口を制御するとともに第1流体と第2流体とチャンバへ流入する気体とのうち少なくとも一つを制御するのに適応している。一以上のバルブは、出口を制御するとともに第1流体と第2流体とチャンバから流出する気体とのうち少なくとも一つを制御するのに適応している。
【0044】
バルブの制御を通して印加される気体パルスは、(高速の熱伝達によっても促進される)サイクル時間の短縮を促進するのに充分なほど急速であるべきである。言い換えると、チャンバへ投入される気体の速度および体積は、第1および第2流体の混合が行われないことを保証するように制御されうる。これは、エンジンからの動力発生の増加、またはヒートポンプでの加熱/冷却力の上昇、またはヒートポンプでの出力流体温度変化の増加を招く。また気体は適切なサイズの排出口などを介してシステムから除去されうる。
【0045】
例えば、一般的なエンジンサイクル中には、温水が10秒間にわたってコアに適用され、入口から迂回されるか停止され、それから1秒の気体パルスが続く。そして冷水が10秒間にわたってコアへ導入されて、入口から迂回されるか停止され、それから1秒の気体パルスが続く。ヒートポンプ用途についても同様に、流れの温度を最高にして混合を最小にするために水の温度と相関させて気体パルスが流出物に印加されうる。
【0046】
ヒートポンプの実施形態
別の実施形態において、複数のワイヤまたはプレートを備えるヒートポンプシステムは互いに対して配置されてコアを画定し、浸漬チャンバに収容される。複数の形状記憶合金(SMA)または負熱膨張(NTE)要素が、互いの上に配置または載置されてコアを画定する複数のSMAプレートとして配設されうる。このようなヒートポンプの例は、Exergyn Limitedに譲渡されて参照により本明細書に充分に援用される未公開の国際特許出願第EP2019/052300号に充分に記載されている。
【0047】
図6は、本発明の一実施形態による高圧(HP)サイクルを使用するための単一のSMAまたはNTEコアを図示している。図6は、コアの状態変化により冷水がチャンバへ流入して温水が流出するヒートポンプシステムを示す。事実上、単一のコアのみを使用する効果的なヒートポンプとしてシステムが使用されうる。
【0048】
図7は、本発明の一実施形態による低圧(LP)サイクルを使用するための単一のSMAまたはNTEコアを図示している。この実施形態において、図7は冷却システムを示し、図6と逆の作用を行う。コアが熱を吸収するサイクルを可能にするため、油圧チャンバの低圧がコアチャンバのSMAまたはNTEコアに伝達される。システムが逆に作動して、入力温度よりも低い温度の第2流体を出力するのに出口が適応している冷却システムに本発明が適用されうることが認識されるだろう。図6および7の実施形態が単一のシステムとなるように組み合わされてもよい。
【0049】
モジュール、例えば油圧システムは、コアに応力を印加するか、コアに圧縮、ねじり、または張力を付与するように構成される。印加される応力および時間の量はモジュールにより変動しうる。材料がオーステナイトからマルテンサイト状態に移行する際に、発熱反応が起こってコアから熱が放出される。放出される熱が流体に伝達されて流体を加熱するように、第1流体がチャンバへ導入される。そして加熱された流体が、適宜、排出および使用される。
【0050】
逆に気体パルスが印加されると第1流体をチャンバから除去する。発熱反応が起こるようにモジュールがコアへの応力を開放し、材料がオーステナイトへ戻る際に気体パルスの後で適用される第2流体からコアが熱を吸収する。
【0051】
第2流体からコアへ熱が伝達される際に第2流体が冷却される。そして冷却された流体が別々に排出されて、適宜、例えば冷媒として、または空調システムで使用される。図6および7の実施形態に関して、コアが状態を変化させるのに充分な時間および期間にわたって、伝達される気体パルスにより単一の流体がサイクルを受けうることが認識されるだろう。第1流体と同じ流体または同じ供給源からの流体がチャンバへ導入されて、サイクルを再開する。
【0052】
図8を参照すると、一方のサイクルが他方のサイクルの逆である二つのサイクルで本発明が単一の構成要素に適用されうることが認識されるだろう。SMA要素は両方のケースで同じ設計でありうる。両方のケースで、高温段階と低温段階とが設けられ、エネルギー効率を向上させるため各段階での流体間の混合が回避される。SMAは異なる構造で異なる態様で、例えば上述のように張力状態の束状ワイヤまたは圧縮状態のプレート載置体として作動しうる。言い換えると、記載される本SMA要素はエンジンとヒートポンプの両方に使用されうる。
・エンジンサイクル―SMA要素に熱が印加されて、電気の発生に使用されうる変形(線形動作)を起こす。
・ヒートポンプサイクル―SMA要素の変形が熱出力(加熱または冷却)を伝達する。
【0053】
本明細書において、“comprise(備える),comprises(備える),comprised(備えた),comprising(備える)”の語またはその何らかの変形と、“include(含む),includes(含む),included(含んだ),including(含む)”の語とその何らかの変形とは全体として互換性を持つと考えられ、可能な限り最も広い解釈とその反対も全て与えられるべきである。
【0054】
本発明は上に記載された実施形態に限定されず、構成と詳細の両方において変化しうる。
【符号の説明】
【0055】
1 SMAエンジン
2 ドライブ機構
3 ドライブ機構
4 浸漬チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8