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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20240415BHJP
   F04D 29/057 20060101ALI20240415BHJP
   F04D 29/054 20060101ALI20240415BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F04D29/42 J
F04D29/057 Z
F04D29/054
F04D29/42 M
F04D25/16
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124573
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2020573417の分割
【原出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2022166087
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0072743
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520510911
【氏名又は名称】クラスター エル・エヌ・ジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cluster LNG Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】33, Wahyeon-ro, Irun-myeon, Geoje-Si, Gyeongsangnam-do 53329, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハン イ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-320967(JP,A)
【文献】特表2004-532371(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1845833(KR,B1)
【文献】特開2016-173098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/057
F04D 29/054
F04D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガス圧縮機であって、
圧縮機ハウジングと、
前記圧縮機ハウジング内に配置され、かつ、回転して可燃性ガスを圧縮するように構成されたインペラと、
ーターハウジングと
前記モーターハウジング内に配置され、かつ、前記圧縮機ハウジング内に配置された前記インペラを駆動させるように構成されたモーターと、
前記圧縮機ハウジングと前記モーターハウジングとの間に配置された隔壁と、
前記モーターと前記インペラとを連結し、かつ、前記モーターの回転駆動力を前記インペラに伝達するように構成された回転軸と、
前記回転軸を支持するように構成された第1ベアリングと、
前記回転軸を支持するように構成された第2ベアリングと、
備え、
前記第1ベアリングと前記第2ベアリングとは、前記モーターハウジング内に配置され、前記モーターは、前記第1ベアリングと前記第2ベアリングとの間に挟まれており、
前記第1ベアリングは、前記隔壁から間隔を空けられており、前記隔壁と前記モーターとの間に配置されており、前記第1ベアリングは、前記回転軸を浮上させるように構成されており、
前記圧縮機ハウジング及び前記モーターハウジングは一体に形成され、かつ、前記隔壁によって隔てられており、
前記隔壁と前記回転軸との間に漏出隙間があり、
前記圧縮機ハウジングは、前記隔壁と前記回転軸との間の前記漏出隙間を介して、前記モーターハウジングと流体連通しており、前記漏出隙間は、前記可燃性ガスが、前記隔壁と前記回転軸との間の前記漏出隙間を通って、前記圧縮機ハウジングから前記モーターハウジングに漏れ出すことを可能にし、それにより、前記モーターハウジング内に受容された前記可燃性ガスが、前記モーターハウジング内の圧力を大気圧よりも高くし、外部の酸素が、前記モーターハウジング内に流入することを防ぐ、
可燃性ガス圧縮機。
【請求項2】
前記モーターは高速周波数インバーターによって駆動され、前記インペラは別の増速ギアを介することなく前記モーターに直接連結されている、請求項1に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項3】
第2圧縮機ハウジングと、当該第2圧縮機ハウジング内に配置された第2インペラとを更に備え、前記インペラと前記圧縮機ハウジングとは、前記モーターハウジングの2つの側のうちの一方の側に配置されており、前記第2インペラと前記第2圧縮機ハウジングとは、前記モーターハウジングの2つの側のうちの他方の側に配置されている、請求項に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機ハウジングと前記第2圧縮機ハウジングとが互いに接続されていることにより、前記インペラを通過しながら圧縮された前記可燃性ガスは、中間冷却器によって冷却され、その後、前記第2インペラに供給され、その結果、前記可燃性ガスは、前記第2インペラによって更に圧縮される、請求項3に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項5】
前記モーターハウジングと前記圧縮機ハウジングとの間の前記隔壁、断熱部材を備えている、請求項に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項6】
前記モーターハウジングの内部圧力を検出するように構成された圧力センサを更に備えている、請求項1に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項7】
前記モーターハウジングは、外部から前記モーターハウジングに不活性ガスを供給する供給孔と、内部の気体を排出するベント孔とを備えている、請求項1に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項8】
前記モーターハウジングの内部が、前記可燃性ガスで満たされている、請求項1に記載の可燃性ガス圧縮機。
【請求項9】
前記第1ベアリングは、潤滑油を使用しない無給油方式のベアリングである、請求項1に記載の可燃性ガス圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGを推進エンジンの燃料として使用するLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機に関するものである。より詳細には、圧縮機ハウジングとモーターハウジングが一体で構成される、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNGを輸送するLNG輸送船は、伝統的にLNGを燃料として使用した。しかし、最近では、LNG輸送船以外にも、オイルと比べて相対的に安価であり環境汚染防止の観点から、排気ガスの規制などを満たすために有利であるLNGを主燃料として使用するLNG推進船舶が多く建造されている。
【0003】
LNG推進船舶が燃料で使用するために船舶内に積載するLNG量は、LNG自体を輸送するLNG輸送船に比べて1/50ないし1/10程度であり、LNG貯蔵タンクから発生する蒸発ガス(ボイルオフガス、Boil-Off Gas;BOG)の量も当該貯蔵タンクの容量に比例し、LNG輸送船に比べて非常に少ない。
【0004】
しかし、BOGの発生量が相対的に少ないLNG推進船舶の場合にも、LNG輸送船と同様に、蒸発ガスを効率的に処理しなければ貯蔵タンクの圧力が上昇し、非常に危険な状態に到達する。また、LNG推進船舶は、LNG自体を輸送することが主な目的ではなく、単にLNGを燃料として使用し、船員たちもLNGを専門に扱う専門家ではないため、LNG関連システムと装置を単純化する必要がある。
【0005】
LNGを主エンジン(例えば、推進エンジン)の燃料として使用する船舶は、LNG貯蔵タンクで発生するBOGの量が主エンジンで必要とされる量よりも非常に少なく、また、燃料の加圧に必要な動力を減らすために、LNGポンプとLNG気化器からなる燃料供給装置を主に使用する。そして、LNG貯蔵タンクからBOGを排出しない限り、貯蔵タンクの内部圧力は続けて上昇することになる。
【0006】
貯蔵タンクの内部圧力を管理する方法の中で、高圧力で耐えられるLNG貯蔵タンクを準備し、前記タンクの自然圧で発電機などの補助エンジンに燃料を送って、タンク内の圧力が所定水準以上まで上昇させない方法がある。しかし、この方法は、LNG貯蔵タンクの圧力を保持することが困難であり、高価で高圧のLNG貯蔵タンクの設置が必要となって経済的な負担もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの問題を解決するため、LNG推進船舶にBOG圧縮機をさらに設置する方法を活用することができる。ここで使用するBOG圧縮機は、小容量であるが、極低温と低流量に伴う様々な技術的問題を抱えている。一般的に、流量の少ない圧縮機では遠心圧縮機(centrifugal compressor)の適用が難しい。これは、少ない流量とそれに伴う小さなインペラ寸法により、高速運転が行われるためである。前述した理由などでLNG推進船舶のBOG圧縮機はスクリュー圧縮機や往復動圧縮機を使用する傾向がある。
【0008】
スクリュー圧縮機は多量の潤滑油を使用する特性によって、LNG製品の品質のために圧縮機の出口で複雑な潤滑油除去装置を設置しなければならない。また、スクリュー圧縮機は、低温のBOGを直ちに処理することができないため、スクリュー圧縮機の入口で圧縮機保護用のヒーターを設置しなければならない。このように、スクリュー圧縮機を使用するためには、圧縮機の他に様々な装置が追加されてシステムの信頼性が下がるだけではなく、比較的高温で動作するので圧縮機の効率も低下することになる。
【0009】
往復動圧縮機の場合も、潤滑油システムを追加設置する必要がある。また、往復動圧縮機は、回転速度(RPM)が低いため、遠心圧縮機に比べて容積が非常に大きくて重い欠点もある。
【0010】
このような理由から、スクリュー圧縮機や往復動圧縮機に比べて、遠心圧縮機は容積や信頼性の面で優秀であるが、LNG推進船舶で適用するには低流量の問題で技術的に非常に難しい。BOG処理量の多い従来のLNG輸送船では、高流量の遠心型BOG圧縮機が使用された。この場合、所定の圧縮比を得るためには、20,000RPM以上の圧縮機インペラの回転速度が必要であるが、一般的に最大速度が3,600RPM程度の電動モーターの特性上、増速ギア(step-up gear)ボックスを設置しなければならない。
【0011】
比較的に容量の少ないLNG推進船舶用のBOG圧縮機では、増速ギアとこれに伴う潤滑油システムが全装置の単純化と価格の側面で非常に不利になる。遠心圧縮機で流量が少ない場合には、もっと高い回転数が要求され、大容量の遠心圧縮機よりも技術的に難しいという問題があった。
【0012】
また、従来の遠心型、スクリュー型、往復動圧縮機は全て駆動部である電気モーターと圧縮機インペラ、スクリュー、シリンダーが別々の部分で構成され、これらを連結する連結部では可燃性ガスの流出を避けられなかった。これを解決するため、複数の場所でガスシール装置を使用する必要がある。当該シール装置は、それ自体が高価であり、窒素などの不活性ガスを継続的に注入しなければならず、また、このシール装置から漏出される少量のガスを外部に排出する別のシステムを設置しなければならない。それにもかかわらず、可燃性ガスの漏出を根本的に防止することができないという安全上の問題がある。電気モーターの場合にも、ガスが流出される場所で設置されるため、防爆形電気モーターを使用する必要があり、これによって費用も大幅に増加する。
【0013】
前述した技術的、価格的な問題のためLNG推進船舶では、現在まで不完全なBOG圧縮機を使用する状況であった。
【0014】
本発明は、前述した問題点を解決するためのものであり、LNGを推進エンジンの燃料として使用するLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機において、圧縮機のハウジングとモーターハウジングを一体で形成することにより、可燃性ガス、すなわち蒸発ガスの流出と外気の流入を根本的に防止する、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機を提供する。
【0015】
また、本発明は、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機において、蒸発ガスを入口のヒーターで加熱する必要がなく、極低温状態で圧縮できる遠心型圧縮方式を採用することにより、圧縮効率が向上するLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機において、圧縮された蒸発ガスの品質に影響を与える潤滑油の漏れを防止するために無給油方式のベアリングを使用し、高周波数インバーターによりモーターの回転数を高めて、増速ギアがなくても要求されるインペラの回転数を得ることができる、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため本発明の一実施形態では、LNGを推進エンジンの燃料として使用するLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機において、内部でインペラが回転可能に設置される圧縮機ハウジング;前記インペラを駆動させるモーターが内部で設置されるモーターハウジング;前記モーターの回転駆動力を前記インペラに伝達する回転軸を回転可能に支持するベアリング;を備え、前記圧縮機ハウジング及び前記モーターハウジングは一体で構成される、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機が提供される。
【0018】
前記モーターは、高速周波数インバーターによって駆動され、前記インペラは別の増速ギアを介せず前記モーターに直接連結される。
【0019】
前記ベアリングは、潤滑油を使用しない無給油方式のベアリングである。
【0020】
前記インペラ及び前記圧縮機ハウジングは、前記モーターハウジングを中心に両側でそれぞれ一つずつ設置される。
【0021】
前記インペラは、前記モーターハウジングの一側に配置された第1インペラと前記モーターハウジングの他側に配置された第2インペラを備え、前記第1インペラを通過しながら加圧された蒸発ガスは、中間冷却器で冷却された後、前記第2インペラに供給されて追加加圧される。
【0022】
前記回転軸は、前記モーターハウジングと前記圧縮機ハウジングとの間の隔壁を貫通して前記圧縮機ハウジングの内部まで延長され、前記圧縮機ハウジングの内部と前記モーターハウジングの内部は前記回転軸と前記隔壁との間の隙間を介して互いに連通し、蒸発ガスは前記圧縮機ハウジングの内部から前記モーターハウジングの内部まで流動することができる。
【0023】
前記モーターハウジングと前記圧縮機ハウジングとの間の隔壁には、断熱部材を設置することができる。また、前記回転軸が前記隔壁及び前記断熱部材を貫通する部分には、気密機能と加熱機能を兼ねる気密および加熱部材が設置され、前記断熱部材と前記気密および加熱部材によって前記モーターの温度低下を緩和する。
【0024】
前記蒸発ガス圧縮機は、前記モーターハウジングの内部圧力を検出する圧力センサをさらに含むことができる。
【0025】
前記モーターハウジングには、外部から前記モーターハウジングの内部に気体を供給する供給孔と、内部気体を排出するベント孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、LNGを推進エンジンの燃料として使用するLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機において、圧縮機のハウジングとモーターハウジングを一体で形成することにより、可燃性ガス、すなわち蒸発ガスの流出と外部空気の流入を根本的に防止する、LNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機が提供される。
【0027】
本発明のLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機では、LNG推進船舶やLNG輸送船のLNG貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを遠心型圧縮方式で効率的に圧縮し、ガスを燃料とするエンジンに供給するため、蒸発ガスの損失を防止することとLNG貯蔵タンクの圧力を安全な範囲で保持することができる。
【0028】
本発明のLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機では、装置全体の容積が小さく、かつ低価格でありながらも極低温の蒸発ガスを別の加熱装置を使用する必要がなく直接圧縮することが可能であり、増速ギア、潤滑装置、ガスシール装置、モーター防爆構造を省略することができる。また、圧縮機ハウジングとモーターハウジングを一体で形成することにより、単純な構造だけで潤滑油やガスの漏出問題を根本的に解決し、安全性と維持管理の面でも有利である。
【0029】
また、本発明のLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機では、圧縮された蒸発ガスの品質に影響を与える潤滑油漏れを防止するために無給油方式のベアリングを使用し、高周波数インバーターによりモーターの回転数を高めることで、増速ギアがなくても要求されるインペラの回転数を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る蒸発ガス圧縮機が設けられたLNG推進船舶の燃料供給システムの概念図である。
図2】本発明の一実施例に係るLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機の概略的な側面図である。
図3】本発明の変更実施例に係るLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施例に係るLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機を図面を参照して詳しく説明する。
【0032】
LNG推進船舶において蒸発ガスの効率的活用は経済的な側面だけでなく、環境的な側面でも非常に重要な考慮事項である。もし、LNG推進船舶で発生する蒸発ガス(BOG)が上手く処理されないと、貯蔵タンクを保護するために蒸発ガスを大気中に排出しなければならない。メタンガスが主成分であるBOGは二酸化炭素よりも約23倍の地球温暖化指数を有し、LNG推進船舶からその排出を厳しく制限する必要がある。
【0033】
LNG推進船舶の蒸発ガスを処理するためにはスクリュー圧縮機や往復動圧縮機を使用することもあるが、これらの圧縮機は極低温の蒸発ガスを直接処理することが不可能であるか、潤滑油によるLNG製品の汚染問題を回避することができなかった。遠心圧縮機は少容量の場合、システムの適用自体が難しく、増速ギア、ガスシール装置、価格上昇の問題などがある。
【0034】
本発明では、LNGを推進エンジンの燃料として使用するLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機において、圧縮機のハウジングとモーターハウジングを一体で形成することにより、可燃性ガス、すなわち蒸発ガスの流出と外部空気の流入を根本的に防止することができる、遠心型圧縮方式の蒸発ガス圧縮機が提供される。
【0035】
図1には、本発明による蒸発ガス圧縮機が設けられたLNG推進船舶の燃料供給システムを概略的に示す概念図が示されている。図1で示すように、LNG推進船舶の燃料供給システムは、燃料としてのLNGと蒸発ガス(すなわち、LNGから蒸発して発生した天然ガス)を貯蔵する貯蔵タンク(2)、前記貯蔵タンク(2)で貯蔵されたLNGと蒸発ガスの供給を受けて燃料として使用する主エンジン(8)と補助エンジン(9)を備える。
【0036】
主エンジン(8)は、船舶が航海するための推進力を提供する推進エンジンであり、補助エンジン(9)は、船舶内で必要とされる電力を供給する発電エンジンであり得る。
【0037】
貯蔵タンク(2)で貯蔵されたLNGは、LNGポンプ(4)によって加圧され、LNG気化器(5)によって加熱された後、主エンジン(8)と補助エンジン(9)の少なくとも一つに燃料として供給される。貯蔵タンク(2)内でLNGから発生する蒸発ガスは、本発明に係る蒸発ガス圧縮機(10)によって圧縮された後、主エンジン(8)と補助エンジン(9)の少なくとも一つに燃料として供給される。
【0038】
LNGポンプ(4)及びLNG気化器(5)によって加圧及び加熱されたLNGは、主に主エンジン(8)の燃料として供給され、蒸発ガス圧縮機(10)によって加圧された蒸発ガスは主に補助エンジン(9)の燃料として供給される。
【0039】
蒸発ガスの発生量が補助エンジン(9)における燃料の必要量より少ない場合、主エンジン(8)に供給される燃料ガス(すなわち、加圧及び加熱されたLNG)の一部は、補助エンジン(9)に燃料として供給される。この際、補助エンジン(9)で要求される燃料ガスの圧力が主エンジン(8)において要求される燃料ガスの圧力より低い場合には、燃料ガスがジュール・トムソン(JT)バルブなど減圧手段(図示せず)によって減圧された後で補助エンジン(9)に供給される。
【0040】
一方、蒸発ガス圧縮機(10)によって加圧された蒸発ガスの圧力が主エンジン(8)で要求される燃料ガスの圧力値を満たし、蒸発ガスの発生量が補助エンジン(9)での燃料必要量より多い場合には、補助エンジン(9)に供給される燃料ガス(すなわち、加圧された蒸発ガス)の一部が主エンジン(8)に供給される。
【0041】
図1に示されたLNG推進船舶の燃料供給システムは、本発明に係る蒸発ガス圧縮機(10)が設けられた燃料供給システムの一実施例を示すものであり、本発明に係る蒸発ガス圧縮機(10)は、図1に示されたシステム以外の燃料供給システムにも設けられて使用することができる。また、本発明に係る蒸発ガス圧縮機(10)は、蒸発ガスをエンジンに燃料として供給する燃料供給システムでのみ使用できるのではなく、蒸発ガスを加圧する必要がある全てのシステムにも設けられて使用することができる。また、本発明に係る蒸発ガス圧縮機(10)は、圧縮する物質が蒸発ガス、すなわち天然ガスに限定されることではなく、LPGと蒸発ガスやオイルから揮発したガスなどをはじめ、爆発可能性があるすべての種類の可燃性ガスを圧縮するために使用することができる。
【0042】
図2には、本発明の一実施形態に係るLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機の概略的な側面図が示されている。
【0043】
図2で示すように、本発明の一実施形態に係る蒸発ガス圧縮機(10)は、内部でインペラ(30a、30b)が回転可能に設置される圧縮機ハウジング(24a、24b)と、インペラ(30a、30b)を駆動させるモーター(14)、電気モーターなどのモーターが内部で設置されるモーターハウジング(12)を備える。インペラ(30a、30b)と圧縮機ハウジング(24a、24b)は、モーターハウジング(12)を中心に両側でそれぞれ一つずつ設置され、図2でモーターハウジング(12)の左側に配置されたものを第1インペラ(30a)及び第1圧縮機ハウジング(24a)とし、モーターハウジング(12)の右側に配置されたものを第2インペラ(30b)及び第2圧縮機ハウジング(24b)とする。
【0044】
本実施形態において、モーターハウジング(12)と、第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)は一体で製作される。ここで、「モーターハウジングと圧縮機ハウジングが一体で製作される(あるいは、一体で構成される)」という表現は、外形的にモーターハウジング(12)と圧縮機ハウジング(24a、24b)が一つに連結されていることを意味すると同時に、圧縮機ハウジング(24a、24b)から漏出された蒸発ガスがモーターハウジング(12)の内部まで流入可能な状態でモーターハウジング(12)と圧縮機ハウジング(24a、24b)が互いに隣接していることを意味する。
【0045】
図2では、モーターハウジング(12)を中心に両側でインペラ(30a、30b)と圧縮機ハウジング(24a、24b)がそれぞれ一つずつ設置された蒸発ガス圧縮機(10)が例示されているが、本発明は、モーターハウジングの一方の側面のみにインペラ及び圧縮機ハウジングが設置されるように変更することができる。
【0046】
図2で示すように、モーターハウジング(12)を中心に両側でインペラ(30a、30b)と圧縮機ハウジング(24a、24b)がそれぞれ一つずつ設置された場合、モーター(14)の回転駆動力は第1回転軸(16a)によって第1インペラ(30a)に伝達され、第2回転軸(16b)によって第2インペラ(30b)に伝達される。この時、第1回転軸(16a)と第2回転軸(16b)は同軸であり得る。
【0047】
第1回転軸(16a)及び第2回転軸(16b)は、それぞれ、ベアリング(18)によって回転可能に支持されることができる。本実施形態において、ベアリング(18)は潤滑油を利用しない無給油方式のベアリングである。無給油方式のベアリングを利用すると、蒸発ガスの汚染問題を解決し、潤滑油供給システムが省略されて、圧縮機の全体構成が簡単になる。無給油方式のベアリングには、例えば、ガスまたは電磁力を利用して回転軸を浮上させる方式のベアリングがある。
【0048】
第1回転軸(16a)は、モーターハウジング(12)と第1圧縮機ハウジング(24a)との間の隔壁を貫通して第1圧縮機ハウジング(24a)の内部まで延長され、第1インペラ(30a)と結合してモーター(14)が駆動されることにより第1インペラ(30a)を回転させる。同様に、第2回転軸(16b)は、モーターハウジング(12)と第2圧縮機ハウジング(24b)との間の隔壁を貫通して第2圧縮機ハウジング(24b)の内部まで延長され、第2インペラ(30b)と結合してモーター(14)が駆動されることにより第2インペラ(30b)を回転させる。
【0049】
モーターハウジング(12)と、第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)との間の隔壁には、断熱部材(20)がそれぞれ設置され、断熱部材(20)によって極低温の蒸発ガスが持つ冷熱がモーターハウジング(12)の内部まで伝達されることを防止する。第1および第2回転軸(16a、16b)が隔壁と断熱部材(20)を貫通する部分には、気密機能と加熱機能を兼ねる気密および加熱部材(22)が設けられる。断熱部材(20)と気密および加熱部材(22)により、モーター(14)の温度が低下しすぎることを防止し、冷熱がモーター(14)などのデバイスに悪影響を及ぼすことを防止する。
【0050】
気密および加熱部材(22)によって第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)の内部を流動する蒸発ガスが加熱されることを防止するため、断熱部材(20)は気密および加熱部材(22)と第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)との間に配置されることが好ましい。
【0051】
第1圧縮機ハウジング(24a)には、第1インペラ(30a)まで蒸発ガスが供給されるように、第1流入口(26a)が軸方向で延長形成され、第1インペラ(30a)によって加圧された蒸発ガスが排出されるように、第1流出口(28a)は、図2で軸方向の垂直方向に延長形成される。同様に、第2圧縮機ハウジング(24b)には、第2インペラ(30b)まで蒸発ガスが供給されるように、第2流入口(26b)が軸方向に延長形成され、第2インペラ(30b)によって加圧された蒸発ガスが排出されるように、第2流出口(28b)は、図2で軸方向の垂直方向に延長形成される。
【0052】
モーターハウジング(12)には圧力センサ(32)が設置され、モーターハウジング(12)の内部圧力を検出する。また、モーターハウジング(12)には、図示しなかった温度センサを1つ以上設置することができる。温度センサはモーターハウジングだけでなく、圧縮機ハウジングなどの温度検出が要求される複数の場所に設置することができる。
【0053】
モーターハウジング(12)には、外部からモーターハウジング(12)の内部に気体を供給する供給孔(34)と内部気体を排出するベント孔(36)を形成することができる。供給孔(34)は、例えば、蒸発ガス圧縮機の維持補修、組立と分解する時、窒素などの不活性ガスをモーターハウジング(12)の内部に供給する時に使用する。
【0054】
第1及び第2流入口(26a、26b)と、第1及び第2流出口(28a、28b)には、配管の連結を容易にするため、フランジ(図示せず)を設置することができる。
【0055】
続いて、前述したように構成される本実施形態における蒸発ガス圧縮機の作用と効果について説明する。
【0056】
本実施形態に係る蒸発ガス圧縮機(10)は、極低温状態の蒸発ガスが第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)に直接流入されても断熱部材(20)によって極低温が遮断され、高速で回転する電気モーター(14)の動作に影響を与えない。また、第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)がモーターハウジング(12)と連結される場所に、追加で別の気密機能を兼ねたヒーター、すなわち気密および加熱部材(22)が設置されて電気モーター部分を保護する。また、電気モーター(14)の可動によって発生する熱は、モーターハウジング(12)に設置されるジャケット型の冷却システム(図示せず)を介して外部に排出する。
【0057】
高速回転数が要求される第1及び第2インペラ(30a、30b)は、別の増速ギアを介することなくモーター(14)に直接連結される。前記モーター(14)、すなわち高速電気モーターは、モーターハウジング(12)の外部に設置する高速周波数インバーター(図示せず)によって駆動される。
【0058】
蒸発ガスなどの可燃性ガスを用いる一般的な従来の圧縮機では、電気モーターと圧縮機の部分が分離されているため、回転軸の部分に複数のガスシール装置を設置しなければならない。前記ガスシール装置は不活性ガスを連続的に供給する必要があるだけでなく、ガスシール装置から漏洩したガスを外部に排出する装置を追設する必要がある。それにもかかわらず、ガスの完璧な遮断が難しいため安全上に問題がある。
【0059】
しかし、本実施形態では、圧縮機と電気モーターの部分、すなわち、第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)とモーターハウジング(12)が一体で構成され、第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)とモーターハウジング(12)の内部は外部から完璧に遮断されて、可燃性ガスの漏出を根本的に防止する。
【0060】
本実施形態では、無潤滑タイプのベアリングシステムを採用した第1及び第2ベアリング(18)を使用し、別の潤滑油供給装置が必要でなく、蒸発ガスが潤滑油から汚染されることを根本的に防止する。蒸発ガスの潤滑油による汚染は、極低温を特徴とするLNG輸送船舶やLNG推進船舶に設置されている様々な装置や貯蔵タンクで、潤滑油の凝結による多くの問題を引き起こす。
【0061】
一般的な可燃性ガス圧縮機は、インペラ部分と電気機器であるモーター部分が分離され、モーターの方は特殊な防爆モーターを使用する。しかし、本実施形態では、気密および加熱部材(22)が設置されているが、BOGなどのガスを完全に遮断しないため、蒸発ガスが第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)とモーターハウジング(12)との間を移動する。そのため、モーター(14)などの電気装置は可燃性ガスが満たされた状態で稼働される。
【0062】
可燃性ガスが使用される場所では、この可燃性ガスによる爆発の防止が非常に重要である。このため、特殊な防爆形の電気装置が一般的に使用される。しかし、本実施形態では、電気モーター(14)が設置された部分、すなわち、モーターハウジング(12)の内部にわざと可燃性ガスを入れて酸素の供給を遮断し、爆発の危険性を根本的に除去する。燃焼や爆発が起きるためには可燃性物質、酸素、着火源の3つの要素が必要であるが、本実施形態では、モーターハウジング(12)の内部へ酸素供給の可能性を排除し、既存の防爆装置よりも安全な状態を維持することができる。
【0063】
モーターハウジング(12)の内部は常に大気圧よりも高い圧力を維持することにより、いかなる場合であっても、酸素の含まれた外気がモーターハウジング(12)の内部に流入されることを防止する。前述したように、蒸発ガスは第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)の内部からモーターハウジング(12)に向かって流入されることができる。第1及び第2圧縮機ハウジング(24a、24b)の内部では第1および第2インペラ(30a、30b)によって蒸発ガスが加圧されているので、モーターハウジング(12)の内部に流入された蒸発ガスは大気圧より高圧に加圧された状態である。そのため、モーター(14)が設置されたモーターハウジング(12)の内部圧力は大気圧よりも高圧を保持する。
【0064】
モーターハウジング(12)の内部圧力を測定するため、モーターハウジング(12)あるいは同圧力を有する他の部分に圧力センサ(32)を設置し、もしモーターハウジング(12)の内部圧力が大気圧よりも低くなった場合には、自動的にモーター(14)の作動を停止することができる。
【0065】
図3には、本発明の変更実施例に係るLNG推進船舶用の蒸発ガス圧縮機の概略的な側面図が示されている。
【0066】
図3に示された変更実施例に係る蒸発ガス圧縮機(10)は、第1インペラ(30a)によって加圧された蒸発ガスを第2インペラ(30b)によって追加加圧するように配管が構成されること以外は、図2に図示された蒸発ガス圧縮機(10)と類似であり、同一または類似の構成要素には同じ部材番号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0067】
図3の蒸発ガス圧縮機(10)は、二段圧縮機で構成され得る。この場合には、圧縮機の1段出力部、すなわち第1インペラ(30a)によって加圧された後で第1流出口(28a)から排出される蒸発ガスを、中間冷却器(Inter-Cooler)(40)で熱交換して温度を下げた後、圧縮機の2段入力部、すなわち第2流入口(26b)を介して第2インペラ(30b)で追加加圧する。また、1段出力部のガス温度が低い場合には、中間冷却器を経由せず直接2段入力部に供給する。このために、中間冷却器(40)を迂回するバイパスライン(42)を設置する。
【0068】
前述した通り、本発明の詳細な説明で具体的な実施例について説明したが、本発明の技術的思想を超えない範囲内で様々な変更が可能であることは当然である。したがって、本発明の範囲は、説明された実施例に限定して定めるのではなく、後述する特許請求の範囲と特許請求の範囲と均等なものによって定めなければならない。
図1
図2
図3