(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】種子の水分刺激コーティングに適した超吸収剤ベースの懸濁液および懸濁液で種子をコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
A01C 1/06 20060101AFI20240415BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20240415BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240415BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240415BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240415BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240415BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240415BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240415BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240415BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240415BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20240415BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
C08K7/00
C08L33/02
C08L101/00
C09D7/65
C09D201/00
C09D7/40
C09D5/02
C09D7/61
A01P21/00
A01N25/04 102
A01N61/00 D
(21)【出願番号】P 2022506684
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 SK2019050008
(87)【国際公開番号】W WO2021021030
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】522042739
【氏名又は名称】ピー イー ダブリュー エー エス エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゲリンガー,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン,マリアン
(72)【発明者】
【氏名】ホルバート,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ,ルーカス
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-280001(JP,A)
【文献】特開平03-030603(JP,A)
【文献】特開平05-056707(JP,A)
【文献】特開昭51-124578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0219871(US,A1)
【文献】特表昭61-500150(JP,A)
【文献】国際公開第85/001736(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/06
C08K 7/00
C08L 33/02
C08L 101/00
C09D 7/65
C09D 201/00
C09D 7/40
C09D 5/02
C09D 7/61
A01P 21/00
A01N 25/04
A01N 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートとアクリルアミドとのコポリマーの形態の超吸収剤と、溶液中に分散または溶解した接着剤と、種子の流動性を改善するのに適した潤滑添加剤と、を含む、種子の水分刺激コーティングに適した超吸収剤ベースの懸濁液であって、前記懸濁液は、前記懸濁液の1~10wt.%の範囲の前記接着剤を含み、前記接着剤は、水およびエタノールならびに/または水およびイソプロパノールの溶液中に分散または溶解しており、前記懸濁液は、前記懸濁液の25~40wt.%の範囲の前記超吸収剤と、前記懸濁液の0.1~8wt.%の範囲の水ならびに前記懸濁液の40~70wt.%の範囲のエタノールおよび/またはイソプロパノールを含む前記接着剤の分散液または溶液と、さらに、前記懸濁液の0.1~15wt.%の範囲の前記潤滑添加剤と、を含み、前記懸濁液は、前記懸濁液の0.1~5wt.%の範囲の、電荷を除去するのに適した帯電防止添加剤をさらに含む、懸濁液。
【請求項2】
前記超吸収剤は、アクリル酸カリウムとアクリルアミドとのコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項3】
前記接着剤は、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、リグニンスルホン酸塩、アラビアゴム、または炭水化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の懸濁液。
【請求項4】
前記潤滑添加剤は、黒鉛、タルク、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の懸濁液。
【請求項5】
前記帯電防止添加剤は、鱗片状黒鉛であることを特徴とする、請求項1、2、3、または4に記載の懸濁液。
【請求項6】
前記種子の特性を改善するための活性物質を含むことを特徴とする先行する請求項のいずれか1項に記載の懸濁液であって、前記種子の特性を改善するための前記活性物質は、栄養素、肥料、ビタミン、微量要素および多量要素、ミネラル、接種剤、保水剤、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺生物剤、およびバイオ農薬などの農薬、生物肥料、成長調整剤、またはバイオスティミュラントを含む群から選択される、懸濁液。
【請求項7】
前記懸濁液の0.1~10wt.%の範囲の、前記種子の特性を改善するための前記活性物質を含むことを特徴とする、請求項6に記載の懸濁液。
【請求項8】
コーティングされた種子は
、トウモロコシ、コムギ
、オオムギ、エンバク、ライムギ、イネ、ヒマワリ種子、ナタネ、サトウダイコン、ダイズ、綿、ソルガム、ヒヨコマメ、果実、野菜、芝
、マメ、エンドウ、レンズマメ、ピーナッツであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の懸濁液。
【請求項9】
請求項1~8に記載の懸濁液で種子をコーティングする方法であって、超吸収剤と、水およびエタノールならびに/または水およびイソプロパノールの溶液中の接着剤と、潤滑添加剤と、帯電防止添加剤とを含む前記懸濁液を、種子ドレッシング装置中の前記種子に5~20秒間
適用し、続いて、コーティングされた種子を前記種子ドレッシング装置から1~10秒間放出し、前記コーティングされた種子を乾燥させることを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記懸濁液は、前記種子の重量に対して0.1~15wt.%の量で
適用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁液は、栄養素、肥料、ビタミン、微量要素および多量要素、ミネラル、接種剤、保水剤、農薬、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、殺生物剤、バイオ農薬、生物肥料、成長調整剤、またはバイオスティミュラントを含む群からの少なくとも1つの活性物質で前処理された前記種子に
適用されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液の
適用の直前に、活性成分を前記種子に
適用することを含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法であって、前記活性成分は、栄養素、肥料、ビタミン、微量要素および多量要素、ミネラル、接種剤、保水剤、農薬、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、殺生物剤、バイオ農薬、生物肥料、成長調整剤、またはバイオスティミュラントを含む群から選択される、方法。
【請求項13】
前記懸濁液は、栄養素、肥料、ビタミン、微量要素および多量要素、ミネラル、接種剤、保水剤、農薬、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、殺生物剤、バイオ農薬、生物肥料、成長調整剤、またはバイオスティミュラントを含む群から選択される活性物質を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に種子の水分刺激(hydrostimulatory)コーティングに適した超吸収剤ベースの懸濁液および懸濁液で種子をコーティングする方法。主な使用は農業および園芸においてである。超吸収剤(SAP=超吸収性ポリマー)は、それぞれ、水の非存在下での発芽を増加させ、結果として作物の収量を増加させるか、または灌漑の頻度を低減し、土壌からの水分蒸発を低減するために、土壌中の水を結合する活性成分とともに種子をコーティングするのに使用される。SAPと組み合わせて使用される成分は、種子間の流動性を改善(摩擦および摩耗を低減)し、種播き機部品の摩損を低減することになる。懸濁液は、活性成分の担体および深さ安定剤として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
農業生産は、とりわけ種子の品質に依存する。種子が良くなる(高い発芽能力、病虫害抵抗性、栄養素および水などの個々の土壌成分を効率的に使用する能力を有する)ほど、高い収量の可能性が増す。発芽中、種子内でいくつかの代謝プロセスが起こる。発芽時間は、種子品質、環境因子(温度、水の存在)などに依存する。しかしながら、目標は、不利な気候条件下でも、最適な発芽および規定の植物成長を達成することである。
【0003】
近年、発芽時の土壌水分の不足の問題が表面化している。これまで、水分の非存在下での種子発芽の問題は、適切な経済条件下で安定した生産を達成するのを助けるために、急速かつ最適な発芽を確実にするように設計された様々な水和技術によって解決された。この理由で、種子は、植え付けの前に様々な技術によって処理された。
【0004】
種子発芽を改善するためにこれまで使用されてきた技術の例は、いわゆる「プライミング」(浸透)である。この技術は、W. Heydeckerらによって1974年に開発され、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、ポリプロピオン酸ナトリウムなど)の水溶液または塩水溶液を使用した、種子への水供給の浸透圧制御を含む(W. Heydecker, J. Higgins and R. L. Gulliver, 1973, Nature (London) 246 p.42-44; W. Heydecker, 1974, Univ. Nottingham Sch. Agr. Rep. 1973/1974:50-67; Zuo Weineng et al., 1987, Chinese Science Bulletin 32: 1438)。
【0005】
別の技術は、「ドラムプライミング」である。この技術は、H.R.Rowsによって1987年に開発され、他の媒体を使用することなく、回転するドラム内で種子に噴霧して、水の重量を直接制御することからなる(GB 2192781 B)。
【0006】
A.G.Taylorらによって1988年に開発された「ソリッドマトリクスプライミング」技術は、粉末材料(Agro-Lig)を媒体として使用して、種子の水供給を制御する(AG Taylor, DS Klein and TH Whitlow, 1988, Scientia Horticulturae 37 (1988) 1-11 ; US 4912874 A; EP 0309551 B1 ; WO 88/07318 A1)。
【0007】
最後に、別の既知の技術が、「マトリコンディショニング」(matriconditioning)として知られている。A.A.Khanらによって1990年に開発された技術は、水溶性多孔質材料(Micro-Cel E、Zonolite)を使用して、種子への水の供給を制御する(A.A Khan, H. Miura, J. Prusinski, I. Ilyas Matri-conditioning of seeds to improve emergence Proceedings National Symposium on Stand Establishment of Horticultural Crops, Minneapolis, MN Apr.4-6,1990)。
【0008】
これらの技術は、播種前に種子を湿らせる。しなしながら、それらは、いくつかの欠点も有する。
【0009】
プライミング技術は、商業レベルの多くの量に適さない。ドラムプライミング技術は単純であるが、問題は、水の量を制御する精密機械制御にあり、技術にもある。
【0010】
この技術は、単純な、ゆっくり回転する装置で種子を処理し得るが、問題は、処理後の種子の分離にある。
【0011】
これらの手順に加えて、超吸収剤-水を結合し、その後、植物に水を徐々に放出する物質の使用に関する最近の研究がある。2つの技術が開発された:
-第1のものは、土壌への播種に超吸収剤を使用することであり、ポリマーは、種子とともに播種場所に加えられ、これは、SAPが基材(地面)全体に接着するプロセスに基づく
-第2の方法は、超吸収剤を種子表面に塗布し、次いでそれを播くことである
【0012】
この技術に関する特許文献としては、US 2004077498 A1、US 2008236037 A1、US 2010093535 A1、US 9169164 B2、US 9212245 B2、US 9238774 B2、US 2012258811 A1、US 2014298872 A1、およびUS 2012277099 A1が挙げられる。
【0013】
最初に、物質が、ゆっくり回転するドラム、ディスペンサのシステムを使用して種子に塗布され、オーブンで乾燥された(ドラムプライミング)。主な欠点は、使用される物質の量のより高い要求、それらの不均等な分配、およびプロセスの時間であった。
【0014】
超吸収剤(SAP)が粉末形態で種子に塗布される方法を、先行技術に見出すことが可能である。様々な変形とともに、これらは、接着剤が種子に塗布され、次いで(粉末)SAPが加えられる(粉末化される)方法(CN 106471952 A)、またはSAPの濡れた表面に接着する能力が利用される方法(US 2012277099 A1)であって、SAPは、水をその構造中に非常に素早くかつ効率的に吸収することができ、それにより、種子表面があらかじめ濡れていた場合、それ自体が種子表面に付着する方法である。いずれの場合も、SAPは、粉末形態で注入される。いずれの場合も、SAPを分配する前に、種子が、接着剤、またはある量の水を含み、種子表面を好適に湿った状態にする物質のいずれかで、コーティングされることが必要である。したがって、いずれの場合も、前処理は、SAP粉末を分配する前に必要とされる1つの追加操作である。
【0015】
これらの場合のいずれも、いくつかの欠点を提示する。これらの欠点の大部分は、SAPの粉末形態に起因する。SAP粉末を注入することにより、均質な種子被覆を達成することは、不可能である。被覆の不均質性は、1つの種子内に存在するが、種子を互いに比較する場合にも、またはバッチ間でも存在する。さらなる欠点は、粉末SAPの場合、SAP粒子が種子表面に十分に強く接着せず、貯蔵および播種活動中に剥がれ落ちることである。この欠陥は、SAP消費量を増加させ、ドレッシングプロセスの有効性を低下させる。SAP粒子はまた、吸引装置によって吸い込まれるため、ドレッシングプロセス中に種子表面と接触しないSAPの消費量を増加させる。
【0016】
上記方法によって表面に接着したSAP粒子は、種子の流動性の低下をもたらし、種子の閉塞が、種播き装置内、または種子が篩分けにより移動する他の操作において起こり得る。同時に、このように固定されたSAP粒子は、大気中の水分に非常に敏感であり、これはSAPがくっつき、したがって種子が互いに結合することを引き起こし、貯蔵、輸送、および播種の問題を引き起こす。
【0017】
著しい欠点は、上記方法では、SAP注入は単独で、SAP粒子を表面に付着させるための種子前処理操作が先行して行われなければならないことである。そのような制限は、前処理に必要な時間に対する効率のさらなる低下をもたらす。
【0018】
前処理プロセスはまた、表面上へのSAP付着の異なる質、および付着するSAPの量に影響し、多過ぎるSAPもしくはSAPが種子に付着する場合、悪影響を及ぼし得、または少な過ぎるSAPが種子に付着する場合、影響を及ぼさない。付着するSAPの異なる量は、異なる出芽ダイナミクスおよびその後の植物の発育をもたらし得、全収量を低減し得る。
【0019】
健康保護の観点から、述べられた方法は、非常に小さいSAP粒子が大気中に入るため、合併症をもたらし、したがって労働条件を悪化させる。SAP粒子は、SAPを計量して種子ドレッシング装置に入れる時、処理された種子の排出時、および処理された種子の次の処理時に、大気中に放出され得る。
【0020】
技術的な欠点は、種子ドレッシング装置の限られた使用である。優先事項として、種子ドレッシング装置は、自動液体分配装置を備えるが、この可能性は、SAP粉末分配には使用することができない。粉末材料の注入のために、種子ドレッシング装置は、粉末材料用の注入装置を追加される必要があり、これは追加のコストを発生させる。粉末注入設備が利用できない種子ドレッシング装置でのSAP粉末の塗布は、不可能である。述べられた方法(複数可)では、SAPの塗布に続いて、単体化(singulating)物質(Ss)の注入がさらに必要であり、これもまた粉末形態であり、さらなる粉末材料注入装置、したがって追加のコストが必要である。
【0021】
連続種子ドレッシング装置での方法の使用はまた、非常に問題があるか、または不可能でさえある。
【0022】
国際特許出願WO 2005059023 A1は、超吸収剤、好ましくは水溶液中に分散または溶解した接着剤、および生理活性成長刺激添加剤を含む、種子のコーティングに適した超吸収剤ベースの懸濁液を開示する。超吸収剤は、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸、またはアクリルアミド(グラフト)とのグラフトデンプンコポリマー(コポリマー骨格)である。懸濁液は、水溶液中の種子に適用され、堆積プロセス中の超吸収剤による水の早期吸収、個々の処理された種子の結合および凝集、ならびに種播き装置の目詰まりを引き起こす。
【0023】
国際特許出願WO 0166668 A2は、0.3wt.%の量のポリアクリル酸ナトリウム超吸収剤、1.2wt.%の量の肥料(活性成分)、23.5wt.%の量のポリエチレングリコール1450、および75wt.%の量のエタノールを含む、種子コーティングに適した組成物を開示する。この組成物は、Pickseed(商標)の芝種子の表面に塗布された。種子コーティングに適した別の開示組成物は、4.4wt.%の量のポリアクリル酸ナトリウム超吸収剤、15.6wt.%の量の肥料(活性成分)、30wt.%の量のポリエチレングリコール1450、および50wt.%の量のエタノールを含む。この組成物は、3.3:1(種子:組成物)の比率で、イネ種子の表面に塗布された。ポリエチレングリコールは、具体的には潤滑剤、および他のポリマーとのより良好な相互の相溶性を提供する成分として、組成物中に使用されるが、接着剤または膜形成剤としてではない。欠点はまた、ポリアクリル酸のナトリウム塩の使用であり、これは、ナトリウムカチオンの添加により土壌を塩類化する。
【0024】
Chen,Junwuらの論文(Swelling behaviours of polyacrylate superabsorbent in the mixtures of water and hydrophilic solvents)は、水および親水性溶媒(例えば、20%、40%、および60%のメタノールまたはエタノール)の混合物中でのポリアクリレート超吸収剤(ポリアクリル酸ナトリウム)の挙動を記載する。超吸収剤による水吸収の平衡が、10分および48時間で決定され、著者らは、極性の低い溶媒(メタノール、エタノール)の添加が、特に短い時間スケールで、超吸収剤の吸収能力を大きく低下させると結論づけた。論文は、ポリアクリル酸ナトリウムのみを詳述しているが、そのコポリマー、または他の対イオンを有するポリアクリレートを詳述していない。
【0025】
You,Ying-Caiらの論文(Synthesis and swelling behaviour of crosslinked copolymers of neutralized maleic anhydride with other monomers)は、架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミドを有する、無水マレイン酸/アクリルアミドコポリマーおよび無水マレイン酸/アクリルアミド/メタクリル酸ヒドロキシエチルコポリマーを記載する。論文は、アルコール(メタノール、エタノール、グリコール、グリセロール)および水の溶液中でのこれらのコポリマーの吸収能力を、非イオン性官能基(OH、CONH2)およびイオン性官能基(COOK)の相乗作用にも基づいて論じる。過剰のイオン性官能基は、コポリマーの親水性および吸収能力を高めるが、過剰の非イオン性基は、吸収能力を低下させる。明白な傾向は、水溶液中のアルコール濃度(20%、40%、および60%)の上昇に伴う上記コポリマーの吸収能力の低下であり、エタノールは、試験された全てのアルコールで最も大きい吸収能力の低下を示す。1つのモノマー単位内の2つのカルボキシル基のため、無水マレイン酸の欠点は、土壌中に存在する多価イオン(2+、3+)(主にCa2+、Mg2+、Al3+)に対するより高い感受性、1つのポリマー鎖内のより強力な分子内相互作用、異なるポリマー鎖間のより強い凝集、および強力過ぎる(不可逆的でさえある)1価イオン(Na+、K+)の固定である。
【0026】
国際特許出願WO 2013158284 A1は、活性物質(農薬など)の層とともに種子に適用される潤滑剤成分を用いて、播種時の粉塵を低減する方法を記載する。潤滑剤成分は、合成ワックス、植物および/または動物由来のワックス(例えば、ポリプロピレンワックス)を含み、種子の粉塵が、タルクまたは黒鉛を含むものより少ないことを特徴とする。潤滑剤成分は、吸収能力を高めるか、またはこの層での水の吸収を確実にさえすることになる超吸収剤を含まない。
【0027】
国際特許出願WO 2007103076 A1は、輸送および播種時のコーティングされた種子の流動性も改善しながら、生理活性成分(例えば、殺虫剤、殺菌剤)の結合を改善するための、種子コーティング組成物を開示する。組成物は、接着剤(例えば、ポリ酢酸ビニルまたはポリアクリレート)、ワックス(例えば、天然、鉱物、または合成ワックス)、顔料(例えば、二酸化チタンでコーティングされたマイカ)、および安定剤(懸濁化剤、保水剤、殺生物剤)を含む。組成物は、水溶液中の種子に湿式適用され、ポリアクリレートの場合(ここでは接着剤として機能するが)、土壌への播種前に水の早期吸収を引き起こし得る。
【0028】
米国特許出願US 2015267063 A1は、帯電防止または導電性添加剤、例えば、炭素の同素変態(例えば、黒鉛)または導電性ポリマーを含む、種子コーティング組成物を開示する。
【0029】
Blackらの論文は、種子の流動性を改善するための黒鉛およびタルクの使用を開示する。
【0030】
スロバキア実用新案出願SK 50110-2016 U1およびスロバキア特許出願SK 50069-2016 A3は、超吸収剤(ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、またはデンプンコポリマー)、ならびに水およびエタノールの混合物中の接着剤溶液、ならびに好ましくは潤滑剤および生理活性物質を含む、物質の組み合わせ(コーティング組成物)を開示する。超吸収剤が存在し、乾燥状態で別々に種子に塗布され、これは、粉塵の多さ、種子表面の摩耗、および超吸収剤層の不均等な表面を増加させ得る。水-エタノール混合物は、添加剤を溶解するように適合され(接着剤溶液の30~50重量%)、エタノール(接着剤溶液の20~40重量%)および水(接着剤溶液の10~50重量%)の上記量は、堆積中に超吸収剤による水の早期吸収を引き起こし得る。さらに、2つのステップでの、この組み合わせを用いた種子コーティングの方法が記載され、まず、接着剤溶液が種子に塗布され、次のステップでのみ、超吸収剤は乾燥状態である。
【発明の概要】
【0031】
発明の目的は、播かれた種子のごく近傍での水分保持、特に乾燥条件での植物のより多くの発芽および出芽、さらには成長を確実にする、種子の水分刺激コーティングに適した、環境ニュートラルな組成物を提供することである。さらに、組成物は、管理しやすく、厳しい農業規格、工業規格、および安全基準を満たすことに関して、先行技術より効率的な方法で種子に適用可能であり、コーティングされた種子の改善された機械的特性(流動性、粉塵の多さ、接着性)を有するべきである。
【0032】
先行技術の上述の欠点は、超吸収剤と、水およびエタノールならびに/または水およびイソプロパノールの溶液中に分散または溶解した接着剤と、種子の流動性を改善するのに適した潤滑添加剤と、電荷除去に適した帯電防止添加剤とを含む、種子の水分刺激コーティングに適した超吸収剤ベースの本懸濁液によって改善される。
【0033】
アクリレートとアクリルアミドとのコポリマーである超吸収剤は、懸濁液の25~40wt.%の範囲で含まれる。好ましくは、超吸収剤は、アクリル酸カリウムとアクリルアミドとのコポリマーであり、アクリル酸カリウムは、モノマーのアクリル酸の部分または完全中和の結果であり得る。個々のモノマーは、交互、統計、ブロック、またはグラフトコポリマー構造を形成し得、互いに、例えば25:75~75:25(アクリレート:アクリルアミド)の範囲、例えば、25:75、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、または75:25の割合であり得る。種子発芽中、超吸収剤は、徐々に分解し、アクリルアミド鎖は、アンモニアに分解され、これは、アクリル酸カリウム塩とともに、重要な生体元素および栄養素を含む種子を提供する。ナトリウム塩が使用される場合、望ましくない土壌塩類化が起こり、これは先行技術の欠点の1つである。
【0034】
懸濁液は、SAPおよび賦形剤を固定する働きをする接着剤をさらに含む。接着剤成分は、膜形成成分としても働く。接着剤として、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、リグニンスルホン酸塩、アラビアゴム、または糖類が使用され得る。好ましくは、接着剤はポリ酢酸ビニルであるが、これは、緻密な可撓性のポリマーのため、種子表面を包囲する薄くかつ連続した膜を形成することができ、それにより超吸収剤を空気中の湿気に曝露しないからである。加えて、ポリ酢酸ビニルは、種子上で所望のレベルの生分解性を有する。接着剤層の速過ぎる生分解は、播種前に起こり得るが、遅過ぎる生分解は、最適な植物成長を可能としないであろう。接着剤は、水およびエタノールならびに/または水およびイソプロパノールの溶液中に分散または溶解し、接着剤溶液は、懸濁液の0.1~8wt.%の範囲の水、懸濁液の40~70wt.%の範囲のエタノールまたはイソプロパノール、ならびに懸濁液の1~10wt.%の範囲の接着剤を含む。
【0035】
別の成分は、潤滑添加剤-流動性を改善する助剤である。潤滑剤は、黒鉛、タルク、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの混合物であり得る。好ましくは、潤滑剤は、黒鉛および/またはタルクである。懸濁液は、懸濁液の0.1~15wt.%の範囲の潤滑添加剤を含む。
【0036】
懸濁液は、電荷を除去するために、懸濁液の0.1~5wt.%の範囲の帯電防止添加剤も含む。好ましくは、帯電防止添加剤は、鱗片状黒鉛である。
【0037】
懸濁液は、種子の特性を改善する活性物質も含み得、活性物質は、懸濁液の0.1~10wt.%の範囲の、肥料、ビタミン、微量要素、多量要素などの栄養素、保水剤、湿潤剤、殺虫剤、殺菌剤、および除草剤などの農薬、または成長調整剤、またはバイオスティミュラントであり得る。
【0038】
本懸濁液を有する種子は、未処理の種子と比較して多くの作物の発芽および出芽、土壌水分および必要な栄養素の種子への直接結合、ならびにその後の不足時におけるそれらの放出を達成する。結果として、より高いヘクタール収量、より高いバイオマス生産、植物の病虫害抵抗性、および若い植物のより高い生存率をもたらす。結果として、使用される原料(SAPまたは肥料)の効率ももたらす。本発明は、種子の水分刺激コーティングに適した超吸収剤ベースの懸濁製剤、およびこの懸濁液で種子をコーティングする方法の開発を包含する。
【0039】
具体的には、本発明は、種子をコーティングするのに必要な時間を調整し、必要な成分の量を低減し、成分のより均等な分配を確実にする。
【0040】
種子をコーティングするために超吸収剤を使用することは、より高い収量を達成するための、より多くの発芽およびそれに続く若い植物(green matter)の成長を確実にする可能性を与える。しかしながら、超吸収剤は、その有効性を最大化するために、種子表面に非常に均質に塗布されなければならない。種子コーティングへの超吸収剤の適用は、半乾燥および乾燥地域での植え付けに最も望ましい。
【0041】
先行技術の欠点の大部分を取り除く本発明の主な技術革新は、SAPが分散される担体としての液体連続相、ならびに懸濁液を構成する他の成分の使用である。担体機能を有する液体連続相は、エタノールおよび/またはイソプロパノールに基づき、担体機能および連続液体媒体に加えて、懸濁液の揮発性成分が蒸発するまで、水を吸収するSAPの能力を一時的に遮断するタスクを有する。
【0042】
懸濁液の液体連続相は、種子の表面全体を均等に濡らすことを可能とし、したがって、SAP塗布の均質性の問題を解決する。液体連続相のないSAP粉塵粒子と異なり、全ての不均等な部分およびしわに効率的に入り込むことができ、一方、SAPでの表面被覆は、種子表面のあらゆる点で均一である。また、バッチ内および異なるバッチ間の個々の種子を比較すると、コーティングの均質性が存在する。
【0043】
SAPでの均等な種子被覆を確実にすることに加えて、SAPの塗布率の信頼できる制御は、それぞれ懸濁液中のSAP濃度を変動させるか、または懸濁液中のSAP粒子の大きさを変化させることによって確保される。これは、最適量のSAPが種子に塗布されることを常に確実にし、種子ユニットの全ての種子の均一な発芽および出芽ダイナミクス、したがって、最終的にバランスの取れた背丈をもたらす。バランスの取れた背丈は、より高い収量への道である。
【0044】
本発明の重要な態様は、懸濁液の25~40wt.%の超吸収剤含有量である。種子表面上の超吸収剤の量が多過ぎると、種子の窒息、種子のごく近傍での高い水分取り込みをもたらし、それにより、十分な酸素のアクセスおよび発芽した種子の代謝物の除去を妨げる。また、超吸収剤は、接着剤で十分に覆われていない場合があり、超吸収剤は、したがって曝露されたままになり、より高い吸湿性、空気中の湿気の吸収、凝集、および個々の種子と粉塵との結合をもたらす。粘着性の種子を、問題なく技術的に加工、輸送、または篩過することはできない。加えて、上昇した粉塵レベルは、要求される粉塵基準を満たさない。逆に、種子表面上の超吸収剤の量が少な過ぎると、特に乾燥地域では、水分不足、少ない種子発芽および植物出芽をもたらす。種子表面上の少ない超吸収剤組成物は、当該技術分野で知られており、上述の欠点を有する。種子上に堆積された不均質なまたは変動する量の超吸収剤は、不均等な植物成長をもたらす。
【0045】
本発明は、種子をあらかじめ濡らすか、またはその上に接着剤層を塗布する必要がないため、種子処理プロセスを単純化するが、懸濁液に組み込まれた接着剤成分(例えば、PVAc)のため、乾燥種子はまた、前処理なしで直接処理され得る。したがって、種子処理に必要な時間は節約され、この方法の適用は拡大する。同時に、接着剤成分は、処理された種子の表面を滑らかにする膜形成成分としても機能する。したがって、SAP付着は安定し、同時にSAP粒子は、SAP粒子を著しく突出させることなくコーティングの一体部分になり、種子表面への不安定なSAP付着の問題を排除し、処理された種子は詰まらないため、種子の流動性の問題も排除する。
【0046】
種子処理後、SAP粒子は、膜形成成分(例えば、PVAc)によって空気中の湿気から保護され、それにより、空気中の湿気に対するSAPの高い感受性の問題、ならびにその後の処理された種子の互いへの結合および集塊形成を排除する。
【0047】
本発明の重要な態様は、懸濁液の0.1~8wt.%の範囲の水、懸濁液の40~70wt.%の範囲のエタノールおよび/またはイソプロパノール、ならびに懸濁液の1~10wt.%の範囲の接着剤を含む、接着剤の分散液または溶液の含有量である。接着剤の量が多過ぎると、種子は、接着剤層を突き破るのにスターター栄養素およびエネルギーを使い過ぎて、さらなる成長のために十分に残らず、植物の死をもたらすため、種子発芽を妨げる。水濃度が高過ぎ、エタノール濃度が低過ぎる場合、水は超吸収剤によって吸収され、凝集体が形成され、個々の種子同士がくっつき、これは種子加工の技術的な障害である。エタノール濃度が高過ぎると、発芽中に起こる生物学的プロセスのため種子に悪影響を及ぼし、作業安全条件のコストを増加させる。
【0048】
懸濁液の他の成分、すなわち、タルクおよび鱗片状黒鉛も、種子の流動性に有益な効果をもたらす。それらはまた、特に懸濁液の揮発性成分の蒸発後に、種子の相互結合および集塊形成に対抗する。加えて、黒鉛は、その導電性のため、種子に蓄積される電荷を低減し、電荷は、種子ドレッシング装置でのコーティングプロセス中に種子の摩擦から生じるが、部分的には輸送中、または種子の移植の場合にもそれぞれ生じる。種子の電荷の低減は、種子の集塊形成を低減する。
【0049】
本発明の重要な態様は、懸濁液の0.1~15wt.%の範囲の潤滑剤の含有量、および懸濁液の0.1~5wt.%の範囲の帯電防止添加剤の含有量である。潤滑添加剤の量が多過ぎると、種子表面上の不完全な膜、およびより多くの粉塵をもたらす。同様に、帯電防止添加剤の量が多過ぎると、より多くの粉塵をもたらす。逆に、潤滑添加剤および帯電防止添加剤の量が少な過ぎると、個々の種子からの凝集体の形成、許容されない流動性、および凝集体への種子の凝集を促進する電荷の形成をもたらす。
【0050】
さらに、個々の成分の含有量は、実際の条件(異なる気候条件の農場、田畑)および統計的に関連する量での長期試験(最低3年周期)の結果であることに留意することが重要である。本懸濁液中の成分の記載された含有量は、最適な種子生理学と最適な加工(懸濁液調製、貯蔵、種子への懸濁液塗布、種子乾燥、流動性)との妥協である。
【0051】
懸濁液の形態でのSAP注入は、SAP注入のために液体注入設備を使用することが不可能であった現行の方法と対照的に、種子ドレッシング装置の十分な活用を可能とする。懸濁液の形態でのSAP注入は、種子処理プロセスを加速させ、したがって、追加の粉末注入装置を必要とせずに、液体注入装置を備える任意の種子ドレッシング装置の使用を可能とする。
【0052】
懸濁液の形態でのSAPの分配は、連続種子ドレッシング装置の使用も可能とする。
【0053】
懸濁液の液体連続相はまた、好ましくは懸濁液の0.1~10wt.%の量で、揮発性成分の蒸発後に形成される種子膜の一部となる活性物質(栄養素、肥料、ビタミン、微量要素、多量要素、ミネラル、接種剤、保水剤、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺生物剤、およびバイオ農薬などの農薬、生物肥料、成長調整剤、またはバイオスティミュラントなど)の担体として使用され得、固定剤としても使用され得る。種子を(地中の)基材に固定する機能は、種子の周りに形成されたゲルを貫通して、種子と直接接触している基材の毛細管に進入するものである。結果として生じる基材への種子の結合は、種子が根によって土壌から外へ押し出されるのを防ぎ、根の成長の減速をもたらす。固定は、種子が、地中から外へ、または表面に向かって押し出されるのも防ぐ。種子の固定は、深さ方向への根のより速い成長をもたらし、したがって、より速い水源へのアクセスを提供する。この深さ方向の安定化の別の利益は、種子がより均等に出芽することであり、これは、より均等な作物を確実にする。背丈の均一性は、より高い収量をもたらす。
【0054】
本懸濁液に有用な活性剤の例としては、栄養素、肥料、ビタミン、微量要素、多量要素、ミネラル、接種剤、保水剤、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺生物剤、およびバイオ農薬などの農薬、生物肥料、成長調整剤、またはバイオスティミュラントが挙げられるが、これらに限定されない。栄養素、微量要素、多量要素、およびミネラルは、植物の成長および生活に必要な栄養素を提供する物質であり、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、ホウ素、銅、鉄、塩素、マンガン、モリブデン、および亜鉛を含む群から選択され得る。肥料は、植物の栄養素であり、窒素、リン、およびカリウム肥料、それらの組み合わせ、ならびに有機肥料を含む群から選択され得る。生物肥料は、肥料のサブセットであり、リゾビウム(Rhizobium)属、アゾトバクテリウム属(Azotobacterium)、アゾスピリルム(Azospirillum)属、ラン藻類、またはリン溶解細菌の微生物が挙げられ得る。ビタミンとしては、ビタミンB、ビタミンC、およびビタミンEが挙げられ得る。接種剤は、成長促進微生物であり、リゾビウム(Rhizobium)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、および例えばグロムス門(Glomeromycota)の属の菌根菌を含む群から選択され得る。保水剤は、表面を濡らし、土壌中にいわゆる伝導ゾーンを形成する物質であり、例えば、界面活性剤、親水性鎖などが挙げられる。
【0055】
農薬および殺虫剤は、栽培植物を害する昆虫または他の生物を死滅させることを意図する物質であり、有機リン系農薬、カルバメート系農薬(例えば、チラム)、有機塩素系殺虫剤、ピレスロイド系農薬、および微生物農薬を含む群から選択され得る。バイオ農薬は、農薬のサブセットであり、微生物バイオ農薬、例えば、バチルス(Bacillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、アゾスピリルム(Azospirillum)属、グロムス(Glomus)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属、リゾビウム(Rhizobium)属、およびエンテロバクター(Enterobacter)属の微生物、またはこれらの微生物によって産生される代謝物、例えば、シデロフォア、バシリバクチン(bacillibactin)、抗生物質、酵素、植物ホルモン、リポペプチド、抗菌性ポリケチド、および殺菌性代謝物が挙げられ得る。殺菌剤は、殺真菌剤および殺カビ剤であり、ジメトモルフ、マンコゼブ、トリシクラゾール、カルベンダジム、ヘキサコナゾール、メタラキシル、ベノミル、ジフェノコナゾール、プロピコナゾール、キタジン(kitazine)、テブコナゾール、塩化三水酸化銅(I)、水酸化銅(I)、トリデモルフ、およびプロピネブを含む群から選択され得る。除草剤は、不要な草木および雑草を死滅させることを意図する物質であり、フェノキシ酸、安息香酸、ジニトロアニリン、ビピリジリウム塩、置換尿素、およびヒ素化合物を含む群から選択され得る。
【0056】
成長調整剤としては、促進剤および成長抑制剤、例えば、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン(促進剤)、またはアブシジン酸(抑制剤)が挙げられる。バイオスティミュラントは、養分効率、非生物的ストレス耐性、および/または作物の品質特性を高める物質であり、生物肥料、成長調整剤、接種剤、フルボ酸、フミン酸、フミン、タンパク質加水分解物、ベタイン(例えば、グリシンベタイン)、ポリアミン、海草抽出物、およびキトサンが挙げられ得る。
【0057】
本懸濁液の個々の成分の上記含有量の別の極めて重要な態様は、結果として生じる懸濁液の粘度であり、種子ドレッシング装置で種子表面を濡らすことに影響する。好適に選択された粘度は、コーティングまたは種子処理に使用される現行の装置の利用を可能とする。粘度が高過ぎる場合、装置のポンプおよび分配ディスクを使用することはできず、同時に、種子表面は、十分かつ均質に濡れず、したがってコーティングされないであろう。したがって、粘度は、種子表面上に保持される量にも影響する。
【0058】
種子として、トウモロコシ、コムギ、および他の穀物種子、例えば、オオムギ、エンバク、ライムギ、イネ、ヒマワリ種子、ナタネ、サトウダイコン、ダイズ、綿、ソルガム、果実、野菜、芝、および他の小粒種子、例えば、マメ、エンドウ、レンズマメ、ピーナッツ、またはイネが、使用され得る。懸濁液は、例えば、キュウリ、トマトなどの、野菜および果実の種子にも塗布され得る。
【0059】
本発明の目的は、乾燥および半乾燥地域でのSAPによる種子発芽の増加を達成し、種子上へのSAP堆積効率を高め、種子のSAP均一性を高め、コーティングプロセス中およびコーティングプロセス後の種子の集塊形成を抑制するために、種子の輸送および種子の適用における流動性を改善し、活性物質の担体としてSAPを使用し、種子の深さ安定剤としてSAPを使用することである。
【0060】
発明による超吸収剤ベースの懸濁液で種子をコーティングする方法は、超吸収剤と、水およびエタノールならびに/または水およびイソプロパノールの溶液中の接着剤と、潤滑添加剤と、帯電防止添加剤とを含む懸濁液を、種子ドレッシング装置中の種子に5~20秒間注入し、次いで、コーティングされた種子を種子ドレッシング装置から1~10秒間放出することを含む。懸濁液は、種子の重量および種類に関連して、0.1~15wt.%、好ましくは1~10wt.%、例えば、1~5wt.%または1~2.5wt.%の量で注入される。注入される懸濁液の量はまた、種子自体の品質、具体的にはその純度または粉塵の多さにそれぞれ依存する。粉塵が多くなるにつれて、懸濁液の注入は、全ての作物で増加する。同時に、粉塵による凝集体形成のリスクは高まる。
【0061】
種子をコーティングする方法の好ましい実施形態では、懸濁液は、上述のような活性物質を含む。
【0062】
発明は、図面によりさらに支持される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本懸濁液でコーティングされていない種子(左)およびコーティングされた種子(右)の発芽したトウモロコシ植物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
例示的実施形態
本発明の実装を、実施例を用いて説明する。好ましい実施形態には、保護の範囲を限定する効果はない。出願の文章および特許請求の範囲中で使用される単数形および複数形の用語は、同じ意味で使用される(例えば、接着剤(adhesive)-接着剤(adhesives))。
【0065】
実施例1
以下の表1は、ダイズ、ソルガム、サトウダイコン、トウモロコシ、コムギ、およびナタネの水分刺激コーティングに適した本懸濁液の例示的組成を示す。重量%は、結果として生じる懸濁液100重量%に対して与えられる。
【表1】
【0066】
実施例2
本懸濁液で種子をコーティングする方法は、アクリル酸カリウムとアクリルアミドとのコポリマーと、水およびエタノールの溶液中のポリ酢酸ビニルと、タルクと、鱗片状黒鉛とを含む懸濁液を、種子ドレッシング装置中のコムギ種子に10秒間注入し、続いて、コーティングされたコムギ種子を種子ドレッシング装置から3秒間放出することを含む。懸濁液でコーティングされた種子は、次いで乾燥される。結果として、他の種子にくっつかない均等にコーティングされたコムギ種子となる。
【0067】
実施例3
本懸濁液で種子をコーティングする方法は、アクリル酸カリウムとアクリルアミドとのコポリマーと、水およびエタノールの溶液中のポリ酢酸ビニルと、ポリプロピレンと、鱗片状黒鉛とを含む懸濁液を、種子ドレッシング設備中の、農薬(活性剤)であらかじめコーティングされたトウモロコシ種子に16秒間注入し、続いて、コーティングされたトウモロコシ種子を種子ドレッシング装置から6秒間放出することを含む。懸濁液でコーティングされた種子は、次いで乾燥される。結果として、他の種子にくっつかない均等にコーティングされたトウモロコシ種子となる。加えて、農薬層は、本懸濁液の層によって保護され、個々の種子の粉塵の多さおよび摩耗を低減する。
【0068】
実施例4
本懸濁液で種子をコーティングする方法は、農薬(活性成分)を種子ドレッシング装置中のナタネに注入し、その直後に、アクリル酸カリウムとアクリルアミドとのコポリマーと、水およびエタノールの溶液中のポリビニルピロリドンと、タルクと、鱗片状黒鉛とを含む懸濁液を、種子ドレッシング装置中のナタネに5秒間注入し、続いて、コーティングされたナタネを種子ドレッシング装置から2秒間放出することを含む。懸濁液でコーティングされた種子は、次いで乾燥される。結果として、他の種子にくっつかない、均一に農薬処理およびコーティングされたナタネとなる。農薬(活性物質)および本懸濁液の注入はまた、種子ドレッシング装置から種子を放出する必要のない1つのステップに短縮される。
【0069】
実施例5
本懸濁液で種子をコーティングする方法は、アクリル酸カリウムとアクリルアミドとのコポリマーと、水およびエタノールの溶液中のポリ酢酸ビニルと、タルクと、鱗片状黒鉛と、バイオスティミュラント(活性剤)とを含む懸濁液を、種子ドレッシング装置中のダイズ種子に15秒間注入し、続いて、コーティングされたダイズ種子を種子ドレッシング装置から9秒間放出することを含む。懸濁液でコーティングされた種子は、次いで乾燥される。結果として、他の種子にくっつかない、均等にバイオスティミュラント処理およびコーティングされたダイズ種子となる。
【0070】
実施例6
異なる気候条件にさらされるチェコ共和国の3つの異なる試験場での、本懸濁液による水分刺激コーティングを有するナタネと水分刺激コーティングのないナタネとの比較(A-Chlumec nad Cidlinou、B-Opava、C-Luzany u Pfestic)は、表2を参照されたい。平均を上回る乾燥条件が試験場Bで記録され、これは、対照と比較して最も高い収量(19%)に反映された。
【表2】
【0071】
実施例7
対照のコーティングされていない種子と比較した、本懸濁液でコーティングされたコムギ種子の発芽および成長パラメータの平均値は、表3を参照されたい。本懸濁液は、全ての測定されたパラメータに良い効果をもたらした。本懸濁液でコーティングされた種子は、より良好な発芽、発芽した植物におけるより少ない異常および病変、ならびにより多くの地上部および地下部バイオマスを達成した。
【表3】
【0072】
実施例8
図1は、本懸濁液でコーティングされていない種子(左)およびコーティングされた種子(右)の発芽したトウモロコシ植物を示す。コーティングされた種子から発芽した植物は、コーティングされていない植物と比較して、多くの量のバイオマス、良好に発育した根系および葉の部分を有する。
【0073】
実施例9
Heubach試験を用いて、定められた機械的応力条件下での、処理された種子の周りの自由流動粉塵および摩耗粒子の量を決定する。欧州種子処理保証(European Seed Treatment Assurance(ESTA))によって推奨される値は、0.5g粒子/700,000種子である。本懸濁液でコーティングされたナタネの場合、0.1783g粒子/700,000種子の値に達し、これは推奨限度未満である。種子の粉塵および摩耗が少ないことは、(特に、例えば農薬処理の場合の)作業安全性、およびコーティングプロセス全体の効率、すなわち種子上に残っているコーティングの量の観点から特に評価される。
【0074】
産業上の利用可能性
本発明は、発芽を改善し、背丈のバランスを改善し、根への水のアクセスを加速させ、基材中の種子の位置を安定させ、収量を増加させるための、農作物および園芸作物の種子のコーティングに適用可能である。その中に含まれる栄養素および物質の結合とそれに続く徐放を目的とした、粒状および細粒状(microgranular)肥料のコーティングにも適用可能である。