(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ワイヤ形成方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
(21)【出願番号】P 2022564874
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043784
(87)【国際公開番号】W WO2022113193
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩章
(72)【発明者】
【氏名】手井 森介
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0043889(US,A1)
【文献】特開平06-177195(JP,A)
【文献】特開2011-071317(JP,A)
【文献】特開2016-066633(JP,A)
【文献】特表2015-533258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0254546(US,A1)
【文献】特開2004-247672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0110439(US,A1)
【文献】米国特許第10276545(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
積層された半導体チップまたは基板の複数の電極の上に前記電極から垂直上方にそれぞれ延びる複数のピンワイヤを備える半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
(a)ワイヤボンディングツールによって前記電極にワイヤをボンディングするボンディング工程と、
(b)前記ワイヤボンディングツールによって前記ワイヤを前記電極から前記半導体チップ又は前記基板の表面に配置された共通の押圧位置までルーピングしてルーピングワイヤを形成するルーピングワイヤ形成工程と、
(c)前記ワイヤボンディングツールで前記ワイヤの一部分を前記押圧位置に押圧する押圧工程と、
(d)前記ワイヤボンディングツールによって前記ワイヤの押圧された前記一部分を前記電極の直上に移動させる移動工程と、
(e)前記ワイヤの前記一部分で前記ワイヤをワイヤ供給から分離し、前記電極から垂直上方に延びる前記ピンワイヤとするワイヤ分離工程と、を含み、
(a)から(e)を繰り返し実行して各前記電極の上に各前記ピンワイヤを形成し、
前記共通の押圧位置と各前記電極との各距離は複数種類あり、前記ルーピングワイヤ形成工程は、前記距離の種類、及び前記積層された半導体チップの基板からの高さに応じて前記ワイヤのルーピング高さを調整して前記ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整し、各段に形成された前記ピンワイヤの高さをそろえるようにすること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ルーピングワイヤ形成工程は、前記ワイヤボンディングツールの先端を前記電極から上昇させる第1工程と、前記第1工程の後、前記押圧位置と反対方向に前記ワイヤボンディングツールの先端を移動させる第2工程と、前記第2工程の後、前記ワイヤボンディングツールの先端を再度上昇させる第3工程と、前記第3工程の後、前記ワイヤボンディングツールの先端を前記押圧位置に向かって円弧状に移動させる第4工程とを含み、
前記第1工程から前記第3工程の内の少なとも1つの工程における前記ワイヤボンディングツールの先端の移動量を調整することにより、各前記ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記押圧位置には、ダミー電極が配置され、
前記ボンディング工程の前に、前記ダミー電極にバンプを形成するバンプ形成工程を含み、
前記ボンディング工程は、前記電極にボールボンディングを行い、
前記押圧工程は、前記ダミー電極に形成された前記バンプの上に前記ワイヤの前記一部分を押圧すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記各電極は、前記半導体チップ又は前記基板の前記表面から凹んでおり、
前記バンプ形成工程は、前記バンプの上端が前記半導体チップ又は前記基板の前記表面よりも高くなるように前記電極の上に前記バンプを形成すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
積層された半導体チップまたは基板の複数の電極の上に前記電極から垂直上方にそれぞれ延びる複数のピンワイヤを備える半導体装置を製造する半導体装置の製造装置であって、
ワイヤが挿通されるワイヤボンディングツールと、
前記ワイヤボンディングツールの上方で前記ワイヤを把持するワイヤクランパと、
前記ワイヤボンディングツールと前記ワイヤクランパとをXYZ方向に移動させる移動機構と、
前記移動機構の駆動を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
(A)前記移動機構によって前記ワイヤが挿通された前記ワイヤボンディングツールの先端を前記半導体チップ又は前記基板の前記電極に押し付けて前記ワイヤを前記電極にボンディングし、
(B)前記移動機構によって前記ワイヤボンディングツールの先端を前記電極から前記半導体チップ又は前記基板の表面に配置された共通の押圧位置までルーピングし、前記電極から前記押圧位置に延びるルーピングワイヤを形成し、
(C)前記移動機構で前記ワイヤボンディングツールの先端を前記押圧位置に下降させて前記ワイヤの一部分を前記押圧位置に押圧し、
(D)前記移動機構によって前記ワイヤボンディングツールの先端を前記電極の直上に移動させて、前記ワイヤの押圧された前記一部分を前記電極の直上に移動させ、
(E)前記移動機構によって前記ワイヤクランパを閉とした状態で前記ワイヤクランパを上昇させて、前記ワイヤの前記一部分で前記ワイヤをワイヤ供給から分離し、前記電極から垂直上方に延びるピンワイヤを形成し、
(A)から(E)を繰り返し実行して各前記電極の上に各ピンワイヤを形成し、
前記共通の押圧位置と各前記電極との各距離は複数種類あり、前記ルーピングワイヤを形成する際に、前記距離の種類、及び前記積層された半導体チップの基板からの高さに応じて各前記ルーピングワイヤの長さが所定の長さとなるように、前記ワイヤボンディングツールの先端の軌跡を調整し、各段に形成された前記ピンワイヤの高さをそろえるようにすること、
を特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記制御部は、
前記ルーピングワイヤを形成する際に、前記移動機構によって前記ワイヤボンディングツールの先端を前記電極から上昇させた後、前記押圧位置と反対方向に前記ワイヤボンディングツールの先端を移動させ、その後、前記移動機構によって前記ワイヤボンディングツールの先端を再度上昇させ、その後、前記移動機構によって前記ワイヤボンディングツールの先端を前記押圧位置に向かって円弧状に移動させ、
前記ワイヤボンディングツールの先端の上昇高さと、前記ワイヤボンディングツールの先端の前記押圧位置と反対方向への移動量と、前記ワイヤボンディングツールの先端を再度上昇させる際の上昇高さの内の少なくとも1つを調整して、前記ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整すること、
を特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記ワイヤボンディングツールの先端から延出したワイヤテールをフリーエアボールに成形する放電電極を含み、
前記制御部は、前記放電電極の動作を制御し、
前記押圧位置には、ダミー電極が配置され、
前記制御部は、
前記電極に前記ワイヤをボンディングする前に、前記放電電極によって前記ワイヤボンディングツールの先端から延出した第1ワイヤテールを第1フリーエアボールに成形し、前記移動機構によって前記ワイヤボンディングツールの先端を前記ダミー電極に押し付けてバンプを形成するとともに、前記ワイヤボンディングツールの先端から第2ワイヤテールを延出させ、
前記放電電極によって延出した前記第2ワイヤテールを第2フリーエアボールに成形し、前記第2フリーエアボールを前記電極の上にボンディングすることにより前記ワイヤを前記電極にボンディングし、
前記ダミー電極に形成された前記バンプの上に前記ワイヤの前記一部分を押圧すること、
を特徴とする半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ又は基板の電極の上にワイヤを形成する方法及び形成したワイヤを備える半導体装置を製造する方法並びにその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ又は基板の電極の上に電極から垂直上方に延びるピンワイヤを形成することが求められている。このため、ボンディングツールを用いて基板のボンディング位置にワイヤをボンディングした後、基板の別の位置までワイヤを延長させ、別の位置でワイヤの一部分を押圧し、その後、ボンディングツールを移動させてワイヤが電極から垂直上方となるようにした後、ワイヤを切断してピンワイヤとする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された従来技術を用いて半導体チップの電極の上にピンワイヤを形成する場合には、半導体チップの外側の基板の上等の別の場所でワイヤの一部分を押圧する。この場合、別の場所は自由に選択できるので、別の場所の位置を調整することによりピンワイヤの高さを自由に調整することができる。
【0005】
一方、近年、半導体チップを多段に積層した半導体装置の様に、電極が密集した半導体装置が用いられている。このような半導体装置の電極に特許文献1に記載された従来技術でピンワイヤを形成しようとすると、スペースの関係から耐用荷重が小さい半導体チップの上の場所でワイヤの一部分を押圧せざるを得ず、半導体チップの損傷を招く場合があった。
【0006】
この場合、半導体チップの上のダミー電極等の耐用荷重が大きい特定の位置でワイヤの一部分を押圧することが考えられるが、各電極と押圧位置との距離を自由に選択できないので、ピンワイヤの高さの調整が難しい場合があり、ワイヤを自由に形成することができない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、ワイヤ形状の自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイヤ形成方法は、ボンディングツールによってピンワイヤを形成するワイヤ形成方法であって、ボンディングツールによってワイヤを第1ボンディング点にボンディングするボンディング工程と、ワイヤのルーピング高さを調整して第1ボンディング点から第2ボンディング点の間にルーピングワイヤを形成し、ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整するルーピングワイヤ形成工程と、ワイヤの一部を第2ボンディング点に押圧して薄肉部を形成する押圧工程と、ボンディングツールを上昇させて、薄肉部にてワイヤを切断するワイヤ分離工程と、を有すること、を特徴とする。
【0009】
これにより、ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整し、ピンワイヤ形状の自由度を向上させることができる。
【0010】
本発明のワイヤ形成方法において、前記ルーピングワイヤ形成工程は、ボンディングツールの先端を第1ボンディング点から上昇させる第1工程と、第1工程の後、第2ボンディング点と反対方向にボンディングツールの先端を移動させる第2工程と、第2工程の後、ボンディングツールの先端を再度上昇させる第3工程と、第3工程の後、ボンディングツールの先端を第2ボンディング点に向かって円弧状に移動させる第4工程とを含み、第1工程から第3工程の内の少なとも1つの工程におけるボンディングツールの先端の移動量を調整することにより、ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整してもよい。
【0011】
このように、簡便な方法でルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整し、ピンワイヤ形状の自由度を向上させることができる。
【0012】
本発明のワイヤ形成方法において、ボンディングツールによって薄肉部を第1ボンディング点の直上に移動させる移動工程を含み、前記ワイヤ分離工程は、ワイヤの薄肉部でワイヤをワイヤ供給から切断した後、第1ボンディング点から垂直上方に延びるピンワイヤとしてもよい。
【0013】
これにより、簡便な方法でピンワイヤを形成することができる。
【0014】
本発明のワイヤ形成方法において、第2ボンディング点は、ダミー電極であり、ボンディング工程の前に、ダミー電極にバンプを形成するバンプ形成工程を含み、ボンディング工程は、第1ボンディング点にボールボンディングを行い、押圧工程は、ダミー電極に形成されたバンプの上にワイヤの一部分を押圧して薄肉部を形成してもよい。
【0015】
このように、耐用荷重が大きいダミー電極の上にバンプを形成し、この上でワイヤの一部分の押圧を行うので、半導体チップの損傷を効果的に抑制することができる。また、第1ボンディング点へのボンディングをボールボンディングとすることにより、半導体チップの第1ボンディング点の近傍の損傷を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体チップまたは基板の複数の電極の上に電極から垂直上方にそれぞれ延びる複数のピンワイヤを備える半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、(a)ワイヤボンディングツールによって電極にワイヤをボンディングするボンディング工程と、(b)ワイヤボンディングツールによってワイヤを電極から半導体チップ又は基板の表面に配置された共通の押圧位置までルーピングしてルーピングワイヤを形成するルーピングワイヤ形成工程と、(c)ワイヤボンディングツールでワイヤの一部分を押圧位置に押圧する押圧工程と、(d)ワイヤボンディングツールによってワイヤの押圧された一部分を電極の直上に移動させる移動工程と、(e)ワイヤの一部分でワイヤをワイヤ供給から分離し、電極から垂直上方に延びるピンワイヤとするワイヤ分離工程と、を含み、(a)から(e)を繰り返し実行して各電極の上に各ピンワイヤを形成し、ルーピングワイヤ形成工程は、ワイヤのルーピング高さを調整してルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整すること、を特徴とする。
【0017】
このように、複数の電極に対して共通の押圧位置でワイヤの一部を押圧する場合でも、ワイヤのルーピング高さを調整してルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整し、これにより、ピンワイヤの高さを自由に調整することができる。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法において、ルーピングワイヤ形成工程は、ワイヤボンディングツールの先端を電極から上昇させる第1工程と、第1工程の後、押圧位置と反対方向にワイヤボンディングツールの先端を移動させる第2工程と、第2工程の後、ワイヤボンディングツールの先端を再度上昇させる第3工程と、第3工程の後、ワイヤボンディングツールの先端を押圧位置に向かって円弧状に移動させる第4工程とを含み、第1工程から第3工程の内の少なとも1つの工程におけるワイヤボンディングツールの先端の移動量を調整することにより、各ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整してもよい。
【0019】
これにより、簡便な方法でルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整することができ、簡便にピンワイヤの高さを調整できる。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法において、押圧位置には、ダミー電極が配置され、ボンディング工程の前に、ダミー電極にバンプを形成するバンプ形成工程を含み、ボンディング工程は、電極にボールボンディングを行い、押圧工程は、ダミー電極に形成されたバンプの上にワイヤの一部分を押圧してもよい。
【0021】
このように、耐用荷重が大きい共通のダミー電極の上にバンプを形成し、この上でワイヤの一部分の押圧を行うので、半導体チップの損傷を効果的に抑制することができる。また、半導体チップの電極へのボンディングをボールボンディングとすることにより、電極の近傍の損傷を効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法において、各電極は、半導体チップ又は基板の表面から凹んでおり、バンプ形成工程は、バンプの上端が半導体チップ又は基板の表面よりも高くなるように電極の上にバンプを形成してもよい。
【0023】
このように、バンプの上端が半導体チップ又は基板の表面よりも高くなるようにバンプを形成し、そのバンプの上にワイヤの一部分を押圧するので、ワイヤを押圧する際にワイヤが半導体チップ又は基板の表面に当たって半導体チップ又は基板を損傷させることを抑制できる。
【0024】
本発明の半導体装置の製造装置は、半導体チップまたは基板の複数の電極の上に電極から垂直上方にそれぞれ延びる複数のピンワイヤを備える半導体装置を製造する半導体装置の製造装置であって、ワイヤが挿通されるワイヤボンディングツールと、ワイヤボンディングツールの上方でワイヤを把持するワイヤクランパと、ワイヤボンディングツールとワイヤクランパとをXYZ方向に移動させる移動機構と、移動機構の駆動を制御する制御部と、を含み、制御部は、(A)移動機構によってワイヤが挿通されたワイヤボンディングツールの先端を半導体チップ又は基板の電極に押し付けてワイヤを電極にボンディングし、(B)移動機構によってワイヤボンディングツールの先端を電極から半導体チップ又は基板の表面に配置された共通の押圧位置までルーピングし、電極から押圧位置に延びるルーピングワイヤを形成し、(C)移動機構でワイヤボンディングツールの先端を押圧位置に下降させてワイヤの一部分を押圧位置に押圧し、(D)移動機構によってワイヤボンディングツールの先端を電極の直上に移動させて、ワイヤの押圧された一部分を電極の直上に移動させ、(E)移動機構によってワイヤクランパを閉とした状態でワイヤクランパを上昇させて、ワイヤの一部分でワイヤをワイヤ供給から分離し、電極から垂直上方に延びるピンワイヤを形成し、(A)から(E)を繰り返し実行して各電極の上に各ピンワイヤを形成し、ルーピングワイヤを形成する際に、各ルーピングワイヤの長さが所定の長さとなるように、ワイヤボンディングツールの先端の軌跡を調整すること、を特徴とする。
【0025】
本発明の半導体装置の製造装置において、制御部は、ルーピングワイヤを形成する際に、移動機構によってワイヤボンディングツールの先端を電極から上昇させた後、押圧位置と反対方向にワイヤボンディングツールの先端を移動させ、その後、移動機構によってワイヤボンディングツールの先端を再度上昇させ、その後、移動機構によってワイヤボンディングツールの先端を押圧位置に向かって円弧状に移動させ、ワイヤボンディングツールの先端の上昇高さと、ワイヤボンディングツールの先端の押圧位置と反対方向への移動量と、ワイヤボンディングツールの先端を再度上昇させる際の上昇高さの内の少なくとも1つを調整して、ルーピングワイヤの長さを所定の長さに調整してもよい。
【0026】
本発明の半導体装置の製造装置において、ワイヤボンディングツールの先端から延出したワイヤテールをフリーエアボールに成形する放電電極を含み、制御部は、放電電極の動作を制御し、押圧位置には、ダミー電極が配置され、制御部は、電極にワイヤをボンディングする前に、放電電極によってワイヤボンディングツールの先端から延出した第1ワイヤテールを第1フリーエアボールに成形し、移動機構によってワイヤボンディングツールの先端をダミー電極に押し付けてバンプを形成するとともに、ワイヤボンディングツールの先端から第2ワイヤテールを延出させ、放電電極によって延出した第2ワイヤテールを第2フリーエアボールに成形し、第2フリーエアボールを電極の上にボンディングすることによりワイヤを電極にボンディングし、ダミー電極に形成されたバンプの上にワイヤの一部分を押圧してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、ワイヤ形状の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態のワイヤボンディング装置の構成を示す立面図である。
【
図2】
図1に示すワイヤボンディング装置に取付けられるキャピラリの断面図である。
【
図3】半導体チップの電極配置を示す平面図である。
【
図4】ダミー電極の上にバンプを形成する際のキャピラリの先端の移動を示す説明図である。
【
図5A】
図1に示すワイヤボンディング装置を用いてバンプを形成する際のフリーエアボールの成形工程を示す図である。
【
図5B】
図1に示すワイヤボンディング装置を用いてバンプを形成する際のボールボンディングを行って圧着ボールを形成した状態を示す図である。
【
図5C】
図5Bに示す状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
【
図5D】
図5Cに示す状態からキャピラリをリバース側に横移動させた状態を示す図である。
【
図5E】
図5Dに示す状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
【
図5F】
図5Eに示す状態からキャピラリをフォワード側に横移動させ、リバース側のフェイス部をボールネックの直上に位置させた状態を示す図である。
【
図5G】キャピラリのリバース側のフェイス部でボールネックの上にワイヤの側面を押し付けて押し潰し部を形成した状態を示す図である。
【
図5H】
図5Gの状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
【
図5I】
図5Hに示す状態からキャピラリをリバース側に横移動させ、フォワード側のフェイス部を押し潰し部の直上に位置させた状態を示す図である。
【
図5J】キャピラリのフォワード側のフェイス部で押し潰し部の上にワイヤの側面を押し付けてバンプを形成した状態を示す図である。
【
図5K】
図5Jの状態からワイヤクランパとキャピラリとを上昇させ、キャピラリの先端からワイヤテールを延出させた後、ワイヤクランパを閉とした状態でクランパとキャピラリとを更に上昇させてワイヤテールをバンプから分離した状態を示す図である。
【
図6】バンプが形成された後の半導体チップの電極を示す平面図である。
【
図7】A電極とダミー電極との間に形成されたルーピングワイヤを示す平面図である。
【
図8】A電極の上にピンワイヤを形成する際のキャピラリの先端の移動を示す説明図である。
【
図9A】A電極の上にボールボンディングを行って圧着ボールを形成した状態を示す図である。
【
図9B】
図9Aに示す状態からキャピラリを上昇させた状態を示す図である。
【
図9C】
図9Bに示す状態からキャピラリをリバース方向に横移動させた状態を示す図である。
【
図9D】
図9Cに示す状態からキャピラリを再度上昇させた状態を示す図である。
【
図9E】ダミー電極の上にワイヤの一部分を押圧した状態を示す図である。
【
図9F】
図9Eに示す状態からキャピラリの先端をA電極の直上に移動させた状態を示す図である。
【
図9G】キャピラリの先端からワイヤテールを延出させた後、ワイヤ供給と分離してピンワイヤを形成した状態を示す図である。
【
図10】A電極の上にピンワイヤを形成した状態を示す平面図である。
【
図11】A電極~E電極とダミー電極との間に形成される各ルーピングワイヤを重ねて表示した平面図である
【
図12】A電極~E電極の上に形成された各ピンワイヤを示す平面図である。
【
図13】A電極、B電極、C電極とダミー電極との間に形成される各ルーピングワイヤの側面図を重ね合わせて表示した図である。
【
図14】ルーピングワイヤの長さが一定となるボンディング点間の距離と、ルーピング高さとの関係を示すグラフである。
【
図15】複数の半導体チップを積層した半導体装置の各層の電極にピンワイヤを形成した場合の電極とダミー電極とルーピングワイヤの形状とを示す図である。
【
図16】複数の半導体チップを積層した半導体装置の各層の電極にピンワイヤを形成した場合の電極とダミー電極とルーピングワイヤの形状とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら実施形態のワイヤボンディング装置100について説明する。ワイヤボンディング装置100は、半導体チップ34の電極35の上にピンワイヤ55を形成して半導体装置を製造する半導体装置の製造装置である。
【0030】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置100は、ベース10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、Z方向モータ13と、ボンディングアーム14と、超音波ホーン15と、ワイヤボンディングツールであるキャピラリ20と、ワイヤクランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19と、制御部60とを備えている。なお、以下の説明では、ボンディングアーム14又は超音波ホーン15の延びる方向をX方向、水平面でX方向と直角方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0031】
XYテーブル11は、ベース10の上に取付けられて上側に搭載されるものをXY方向に移動させる。
【0032】
ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に取付けられてXYテーブル11によってXY方向に移動する。ボンディングヘッド12の中には、Z方向モータ13とZ方向モータ13によって駆動されるボンディングアーム14とが格納されている。Z方向モータ13は、固定子13bを備えている。ボンディングアーム14は、根元部14aがZ方向モータ13の固定子13bに対向し、Z方向モータ13のシャフト13aの周りに回転自在に取付けられる回転子となっている。
【0033】
ボンディングアーム14のX方向の先端には超音波ホーン15が取付けられており、超音波ホーン15の先端にはキャピラリ20が取付けられている。超音波ホーン15は、図示しない超音波振動子の振動により先端に取付けられたキャピラリ20を超音波加振する。キャピラリ20は後で
図2を参照して説明するように内部に上下方向に貫通する貫通孔21が設けられており、貫通孔21にはワイヤ16が挿通されている。ワイヤ16は、図示しないワイヤスプール等のワイヤ供給から供給されている。
【0034】
また、超音波ホーン15の先端の上側には、ワイヤクランパ17が設けられている。ワイヤクランパ17は開閉してワイヤ16の把持、開放を行う。
【0035】
ボンディングステージ19の上側には放電電極18が設けられている。放電電極18は、ベース10に設けられた図示しないフレームに取付けられても良い。放電電極18は、キャピラリ20に挿通してキャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16との間で放電を行い、ワイヤ16を溶融させてフリーエアボール40を形成する。
【0036】
ボンディングステージ19は、上面に半導体チップ34が実装された基板30を吸着固定するとともに、図示しないヒータによって基板30と半導体チップ34とを加熱する。
【0037】
ボンディングヘッド12のZ方向モータ13の固定子13bの電磁力によって回転子を構成するボンディングアーム14の根元部14aが
図1中の矢印71に示す様に回転すると、超音波ホーン15の先端に取付けられたキャピラリ20は矢印72に示す様にZ方向に移動する。また、ボンディングステージ19はXYテーブル11によってXY方向に移動する。従って、キャピラリ20は、XYテーブル11とZ方向モータ13によってXYZ方向に移動する。また、ワイヤクランパ17は、キャピラリ20と共にXYZ方向に移動する。従って、XYテーブル11とZ方向モータ13とはキャピラリ20とワイヤクランパ17とをXYZ方向に移動させる移動機構11aを構成する。
【0038】
XYテーブル11と、Z方向モータ13と、ワイヤクランパ17と、放電電極18と、ボンディングステージ19とは制御部60に接続されており、制御部60の指令に基づいて動作する。制御部60は、XYテーブル11とZ方向モータ13とで構成される移動機構11aにより、キャピラリ20のXYZ方向の位置を調整するとともに、ワイヤクランパ17の開閉、放電電極18の駆動、ボンディングステージ19の加熱制御を行う。
【0039】
制御部60は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU61と、動作プログラムや動作データ等を格納するメモリ62とを含むコンピュータである。
【0040】
次に
図2を参照しながらキャピラリ20の構造についして説明する。
図2は、キャピラリ20の先端部の一例を示す図である。キャピラリ20には、中心線24の方向に貫通する貫通孔21が形成されている。この貫通孔21の中にはワイヤ16が挿通される。したがって、貫通孔21の内径d1は、ワイヤ16の外径d2よりも大きい(d1>d2)。貫通孔21の下端は、円錐状に広がっている。この円錐状に広がるテーパー部は、チャンファー部22と呼ばれる。また、この円錐状の空間のうち最大の直径(すなわち最下端の直径)は、チャンファー径d3と呼ばれる。
【0041】
キャピラリ20の下端面は、
図1に示すフリーエアボール40を押圧するフェイス部23となる。このフェイス部23は、フラットな水平面でもよいし、外側に近づくにつれ上方にすすむような傾斜面でもよい。フェイス部23の幅、すなわち、チャンファー部22とキャピラリ20の下端の外周との距離を、「フェイス幅W」と呼ぶ。フェイス幅Wは、チャンファー径d3とキャピラリ20の外周径d4により、W=(d4-d3)/2で計算される。また、以下の説明では、キャピラリ20の下端の中心線24の上の点をキャピラリ20の先端25という。
【0042】
図2中に一点鎖線で示す様に、キャピラリ20の先端25を高さh1の点aまで下降させて
図1に示すフリーエアボール40を電極35の上に押圧すると、フリーエアボール40はフェイス部23で押圧されて扁平化して直径d5で厚みhbの扁平円柱状の圧着ボール41が形成される。また、フリーエアボール40を形成する金属の一部は、チャンファー部22から貫通孔21に入り込み、圧着ボール41の上側に接続されるボールネック42が形成される。
【0043】
図3に示すように、半導体チップ34の表面には、複数の電極35と、複数の電極に共通のダミー電極37とが配置されている。
図3では、A電極35a~E電極35eまでの5つの電極35と、A電極35a~E電極35eに対して共通の1つのダミー電極37とを示す。尚、電極35の数は5つ以上でもよいし、ダミー電極37の数も複数であってもよい。また、以下の説明では、半導体チップ34の5つの電極を区別する場合には、A電極35a~E電極35eといい、区別しない場合には、電極35という。
【0044】
複数の電極35は、半導体チップ34の内部に形成された回路と接続されており、ワイヤ16を接続する際の押圧荷重に耐える機械的構造を有している。ダミー電極37は、各電極35と同様の機械的構造を有しており、ボンディングの際の押圧荷重に耐えることはできるが、半導体チップ34の内部の回路とは接続されていない。尚、電極35、ダミー電極37の表面は、共に、半導体チップ34の表面から凹んでいる(
図5A~5K、
図9A~9G参照)。
【0045】
ワイヤボンディング装置100は、以下に説明するように、A電極35a~E電極35eとダミー電極37との間にそれぞれルーピングワイヤ50a~50eを形成した後、ルーピングワイヤ50a~50eをA電極35a~E電極35eに対して垂直となるように起立させて、A電極35a~E電極35eの上にそれぞれピンワイヤ55a~55eを形成する。
【0046】
A電極35a~E電極35eの表面には、ピンワイヤ55a~55eの形成における第1ボンディング点P1a~P1eが位置し、ダミー電極37の表面には、第2ボンディング点P2が位置する。以下、ワイヤボンディング装置100を用いてピンワイヤ55a~55eを形成するワイヤ形成方法について説明する。
【0047】
最初に、
図4~
図6を参照しながらダミー電極37の上にバンプ45を形成するバンプ形成工程について説明する。
【0048】
以下の説明では、第1ボンディング点P1aの位置するA電極35aからみて第2ボンディング点P2の位置するダミー電極37に近づく方向を「フォワード方向」と呼び、ダミー電極37から離れる方向、或いは、A電極35aから見てダミー電極37と反対方向を「リバース方向」と呼ぶ。各図中に示す「F」の符号はフォワード方法を示し、「R」の符号は、リバース方向を示す。また、
図4に示す矢印81~90は、
図5A~
図5K中に示す矢印81~90に対応する。
【0049】
制御部60のプロセッサであるCPU61は、まず、ワイヤクランパ17を開放して、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の先端25を放電電極18の近傍に移動させる。そして、CPU61は、放電電極18とキャピラリ20の先端25から延出したワイヤテールとの間で放電を発生させ、
図5Aに示すように、キャピラリ20の先端25から延出したワイヤ16をフリーエアボール40に成形する。
【0050】
そして、CPU61は、
図4、
図5Aに示す様に、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の中心線24のXY座標をダミー電極37の上の第2ボンディング点P2の中心線38のXY座標に合わせる。そして、CPU61は、
図4、
図5Bに示す矢印81の様にキャピラリ20の先端25を第2ボンディング点P2に向かって点aまで下降させ、
図5Bに示す様に、キャピラリ20のフェイス部23でフリーエアボール40を電極35の上に押圧するボールボンディングを行う。
【0051】
キャピラリ20がフリーエアボール40を電極35の上に押圧すると、先に
図2を参照して説明したように、フェイス部23とチャンファー部22とは、フリーエアボール40を圧着ボール41とボールネック42とに成形する。
【0052】
次には、CPU61は、
図4、
図5Cに示すように、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、
図4、
図5Cに示す矢印82の様にキャピラリ20の先端25を点bまで上昇させる。次に、CPU61は、
図4、
図5Dに示す矢印83の様にキャピラリ20の先端25を点cまでリバース方向に向かって横方向に移動させる。そして、CPU61は、
図4、
図5Eに示す矢印84の様に、キャピラリ20の先端25を点dまで上昇させる。その後、CPU61は、
図4、
図5F中に示す矢印85の様に、キャピラリ20のリバース側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心が第2ボンディング点P2の中心線38のXY座標となる位置までキャピラリ20をフォワード側に横移動させる。
【0053】
矢印82~85に示すように、キャピラリ20の先端25を上昇させた後リバース方向へ横移動させ、その後、再度、キャピラリ20を上昇させた後フォワード方向に移動させることにより、
図5Fに示すように、ボールネック42の上側のワイヤ16がボールネック42の上でリバース方向とフォワード方向とに折り返されたような形状になる。
【0054】
そして、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、
図4、
図5Gに示す矢印86の様にキャピラリ20の先端25を点fまで下降させて、ボールネック42の上でリバース方向とフォワード方向とに折り返されたワイヤ16の側面をボールネック42の上に押圧して押し潰し、押し潰し部43を形成する。
【0055】
その後、CPU61は、
図4、
図5Hに示す矢印87の様にキャピラリ20の先端25を点gまで上昇させた後、
図4、
図5Iに示す矢印88の様にキャピラリ20のフォワード側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心が第2ボンディング点P2の中心線38のXY座標となる位置までキャピラリ20をリバース側に横移動させる。
【0056】
このようなキャピラリ20の上昇とリバース方向への横移動により、
図5Hに示す押し潰し部43のフォワード側から上方向に立ち上がったワイヤ16は、押し潰し部43の上側に折り重ねられる。
【0057】
そして、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、
図4、
図5Jに示す矢印89に示すように、キャピラリ20の先端25を点iまで下降させ、押し潰し部43の上にワイヤ16の側面を押圧して二回目の押し潰し部44を形成する。この際、押し潰し部44とキャピラリ20の貫通孔21の中に入っているワイヤ16とは、細い接続部46でつながっている。
【0058】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、
図5Kに示す矢印90のようにキャピラリ20を上昇させてキャピラリ20の先端25からワイヤテール47を延出させる。その後、CPU61は、ワイヤクランパ17を閉としてワイヤクランパ17とキャピラリ20とを更に上昇させることによりワイヤ供給に接続されているワイヤテール47の下端と接続部46とを切断する。これにより、
図5K、
図6に示すように、ダミー電極37の上にバンプ45が形成される。
図5Kに示すように、バンプ45の上端は半導体チップ34表面よりも高くなっている。
【0059】
次に、
図7~
図12を参照してA電極35aの上にピンワイヤ55aの形成を行う方法について説明する。ピンワイヤ55aを形成するには、
図7に示すように、A電極35aとダミー電極37との間にルーピングワイヤ50aを形成した後、ルーピングワイヤ50aをA電極35aに対して垂直となるように起立させて、A電極35aの上にピンワイヤ55aを形成する。
図7に示すように、A電極35aの上の第1ボンディング点P1aとダミー電極37の上の第2ボンディング点P2との距離は、Laである。最初に
図7に示すルーピングワイヤ50aの形成について説明する。尚、
図8に示す矢印91~96は、
図9A~
図9G中に示す矢印91~96に対応する。
【0060】
制御部60のCPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の先端25を放電電極18の近傍に移動させる。そして、
図5Kに示すバンプ45を形成した際にキャピラリ20の先端25から延出させたワイヤテール47と放電電極18との間に放電を発生させ、ワイヤテール47を
図5Aに示すようなフリーエアボール40に成形する。
【0061】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の中心線24のXY座標をA電極35aの上の第1ボンディング点P1aの中心線36aのXY座標に合わせる。そして、CPU61は、
図8、
図9Aに示す矢印91の様に、キャピラリ20の先端25を点pまで降下させてA電極35aの上にフリーエアボール40を押し付けてボールボンディングを行い圧着ボール51を形成する(ボンディング工程)。
【0062】
次に、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、ルーピングワイヤ形成工程を実行する。最初にCPU61は、キャピラリ20の先端25を
図8、
図9Bに示す矢印92の様に点qまでΔh1だけ上昇させる(第1工程)。その後、CPU61は、
図8、
図9Cに示す矢印93の様に、キャピラリ20の先端25をリバース方向に向かってΔx1だけ横移動させる(第2工程)。その後、CPU61は、キャピラリ20の先端25を
図8、
図9Dに示すように、再度点sまでΔh2だけ上昇させる(第3工程)。
【0063】
その後、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の先端25をダミー電極37の上に形成したバンプ45の上に向かって
図8、
図9Eに示す矢印96の様に円弧状にフォワード側に移動させる。この際、CPU61は、キャピラリ20のリバース側のフェイス部23のフェイス幅方向の中心が第2ボンディング点P2の中心線38のXY座標位置となるようにキャピラリ20の先端25を円弧状に移動させる(第4工程)。
【0064】
その後、CPU61は、XYテーブル11およびZ方向モータ13を駆動制御して、キャピラリ20の先端25を
図8、
図9Eに示す点tまで下降させてキャピラリ20のリバース側のフェイス部23でワイヤ16の側面の一部分53aをバンプ45の上に押圧して薄肉部を形成する(押圧工程)。従って、バンプ45或いは、第2ボンディング点P2のXY座標位置に位置する点t1は押圧位置となる。この際、CPU61は、ワイヤ16の側面がバンプ45の上面に接続されないように、押圧荷重を調整する。
【0065】
また、バンプ45の上端は半導体チップ34の表面よりも高くなっているのでもキャピラリ20のよってワイヤ16をルーピングする際、或いはワイヤ16の側面をバンプ45の上に押圧する際に、ワイヤ16の下側の面が半導体チップ34の表面に接することがない。このため、ルーピング工程、押圧工程において、ワイヤ16により半導体チップ34を損傷させることを抑制できる。
【0066】
図9Eに示すように、押圧工程が終了すると、A電極35aの上の第1ボンディング点P1aからダミー電極37の上の第2ボンディング点P2の中心線38の線状のXY座標位置でバンプ45の上面に位置する点t1までループ状に延びるルーピングワイヤ50aが形成される。ルーピングワイヤ50aは、A電極35aにボンディングされている圧着ボール51aと、ループ部52aと、押圧されて薄肉部となった一部分53aとを含む。ルーピングワイヤ50aのループ部52aのA電極35aの表面からの高さは、Ha、ルーピングワイヤ50aの第1ボンディング点P1aから点t1までのループ部52aに沿った長さは、M0となっている。また、
図9Eに示すように、ワイヤ16は一部分53aからキャピラリ20の貫通孔21の中に延びている。
【0067】
次に、CPU61は、
図8、
図9Fに示す矢印96の様に、キャピラリ20の先端25をリバース側に向かって円弧状に移動させる(移動工程)。これにより、押圧工程で押圧したワイヤ16の一部分53が第1ボンディング点P1aの直上に来るようにルーピングワイヤ50aを起立させる。そして、CPU61は、
図8、
図9Gに示すように、キャピラリ20を上昇させてキャピラリ20の下端にワイヤテール57を延出させる。その後、CPU61は、ワイヤクランパ17を閉としてキャピラリ20とワイヤクランパ17とを上昇させて、一部分53でワイヤ供給に接続されているワイヤテール57を分離し、A電極35aの上で垂直上方に延びるピンワイヤ55aを形成する(ワイヤ分離工程)。
【0068】
以上のような方法で、
図10に示すようにA電極35aの上にピンワイヤ55aを形成した後、ダミー電極37の上には、バンプ45が残った状態となっている。
【0069】
次に、制御部60のCPU61は、同様の工程によって
図11、
図12に示すように、B電極35b~E電極35eとダミー電極37のバンプ45との間にルーピングワイヤ50b~50eを形成した後、ルーピングワイヤ50b~50eを起立させてピンワイヤ55b~55eを形成する。
【0070】
この際、B電極35bの上の第1ボンディング点P1bとダミー電極37の上の第2ボンディング点P2との距離は、A電極35aの上の第1ボンディング点P1aとダミー電極37の上の第2ボンディング点P2との距離Laよりも短いLbとなっている。また、同様に、C電極35cの上の第1ボンディング点P1cとダミー電極37の上の第2ボンディング点P2との距離Lcは、距離Lbよりも短いくなっている。
【0071】
ここで、B電極35b、C電極35cの上にA電極35aの上に形成したピンワイヤ55aと同一の高さのピンワイヤ55b,55cを形成する場合、ピンワイヤ55b,55cの高さとなるルーピングワイヤ50b,50cのループ部52b,52cに沿った長さがルーピングワイヤ50aのループ部52aの長さM0と同一の長さとなるようにルーピングワイヤ50b,50cの形状を調整する
ことが必要となる。
【0072】
そこで、CPU61は、
図13、
図14に示すように、ルーピングワイヤ50b,50cのルーピング高さHb,Hcをルーピングワイヤ50aのルーピング高さHaよりも高くすることにより、ルーピングワイヤ50b,50cのループ部52b,52cに沿った長さがルーピングワイヤ50aのループ部52aの長さM0と同一の長さとなるようにしている。
【0073】
具体的には、CPU61は、
図8に示す第1工程中のキャピラリ20の高さ方向の移動量Δh1と、第2工程中のキャピラリ20のリバース方向への移動量Δx1と、第3工程中のキャピラリ20の再上昇の際の移動量Δh2のいずれか1つ又は複数の移動量を調整することにより、ルーピングワイヤ50b,50cのループ部52b,52cに沿った長さがルーピングワイヤ50aのループ部52aの長さM0と同一の長さとなるように調整する。尚、移動量のみでなくキャピラリ20の先端25の移動軌跡を調整してルーピングワイヤ50a~50cの長さを調整するようにしてもよい。
【0074】
以上、B電極35b、C電極35cの上にA電極35aの上に形成したピンワイヤ55aと同一の高さのピンワイヤ55b,55cを形成する場合について説明したが、D電極35dの上にA電極35aの上に形成したピンワイヤ55aと同一の高さのピンワイヤ55dを形成する場合は、B電極35bの上にピンワイヤ55bを形成する場合と同様である。また、E電極35eの上にA電極35aの上に形成したピンワイヤ55aと同一の高さのピンワイヤ55eを形成する場合は、A電極35aの上にピンワイヤ55aを形成する場合と同様である。
【0075】
以上説明したように、実施形態のワイヤボンディング装置100は、ワイヤ16のルーピング高さHを調整することによりルーピングワイヤ50a~55eのループ部52a~52eに沿った長さMを所定の長さに調整するので、ワイヤ16の押圧を行う押圧位置を半導体チップ34の上のダミー電極37等の耐用荷重が大きい特定の位置とした場合でも容易にピンワイヤ55a~55eの高さを調整することができる。これにより、半導体チップ34の損傷を抑制しつつピンワイヤ55a~55eの形状の自由度を向上させることができる。
【0076】
また、実施形態のワイヤボンディング装置100は、耐用荷重が大きいダミー電極37の上にバンプ45を形成し、この上でワイヤ16の一部分53a~53eの押圧を行うので、半導体チップ34の損傷を効果的に抑制することができる。また、A電極35a~E電極35eのボンディングをボールボンディングとすることにより、半導体チップ34のA電極35a~E電極35eの近傍の損傷を効果的に抑制することができる。
【0077】
尚、以上の説明では、ダミー電極37の上にバンプ45を形成し、この上でワイヤ16の一部分53a~53eの押圧を行うこととして説明したが、これに限らず、半導体チップ34の表面の耐用荷重が大きい位置でワイヤ16の一部分53a~53eの押圧を行う場合には、バンプ45を形成せずに半導体チップ34の表面でワイヤ16を押圧するようにしてもよい。
【0078】
また、A電極35a~E電極35eの耐用強度が高い場合には、A電極35a~E電極35eボンディングをボールボンディングとせずに、例えば、ステッチボンディング等によって行うようにしてもよい。
【0079】
次に、
図15を参照して実施形態のワイヤボンディング装置100によって、複数の半導体チップ341~344を積層した半導体装置340の各層の電極351~354に上端高さZ1の揃ったピンワイヤ551~554を形成する場合について説明する。
【0080】
各層の半導体チップ341~344にはそれぞれダミー電極371~374が配置されている。まず、
図15中の矢印981~984に示すように各電極351~354と各ダミー電極371~374の上に形成した各バンプ451~454との間に各ルーピングワイヤ501~504を形成する。そして、
図15中の矢印991~994に示すように形成した各ルーピングワイヤ501~504を起立させて各ピンワイヤ551~554を形成する。尚、バンプ451~454の形成、ルーピングワイヤ501~504の形成、ルーピングワイヤ501~504の起立、ワイヤ供給との分離の詳細動作については、先に説明した方法と同様なので詳細な説明は省略する。
【0081】
図15に示すように、半導体装置340は、基板30の上に半導体チップ341~344を4層に積層したものである。このため、各層の半導体チップ341~344の各電極351~354の高さは全て異なっている。
図15に示すように1層目の半導体チップ341の電極351の高さは一番低く、2層目~4層目の各半導体チップ342~344の各電極の高さは順次階段状に高くなっている。
図15に示す様に、各電極351~354の上に形成する各ピンワイヤ551~554の上端高さZ1を揃えるためには、第1層目の半導体チップ341の電極351上に形成するピンワイヤ551の高さを高くし、第2層目~第4層目の各半導体チップ342~344の各電極352~354の上に形成する各ピンワイヤ552~554の高さを順次低くしていく必要がある。
【0082】
そこで、
図15の矢印981に示すように第1層目のピンワイヤ551を形成する際には電極351とバンプ471との間に形成するルーピングワイヤ501のルーピング高さH1を高くして、ルーピングワイヤ501の長さを長くし、矢印991の様にルーピングワイヤ501を起立させて高いピンワイヤ551を形成する。
【0083】
また、第2層目~第4層目の各ピンワイヤ552~554を形成する際には、ピンワイヤ552~554の高さに合わせてルーピングワイヤ502から504のルーピング高さH2~H4を順次低くして各ルーピングワイヤ502~504を起立させて各ピンワイヤ552~554の高さが順次低くなるようにする。
【0084】
このように、ルーピングワイヤ501~504のルーピング高さH1~H4を調整することにより、複数種類の高さのピンワイヤ551~554を自由に形成することができる。
【0085】
以上、説明したように、実施形態のワイヤボンディング装置100は、様々な高さのピンワイヤ551~554を自由に形成することができる。
【0086】
尚、
図15では、複数の半導体チップ341~344を積層した半導体装置340の各層の電極351~354に上端高さZ1の揃ったピンワイヤ551~554を形成する場合について説明したが、これに限らず、例えば、各層毎にピンワイヤ551~554の高さを異ならせた構成とすることも可能である。
【0087】
次に、
図16を参照して、複数の半導体チップ341~342を積層した半導体装置340aの各層の電極351~352に上端高さZ1の揃ったピンワイヤ551a~552aを形成する別の方法について説明する。尚、バンプ452の形成、ルーピングワイヤ501a~502a形成、ルーピングワイヤ501a~502aの起立、ワイヤ供給との分離の詳細動作については、先に説明した方法と同様なので詳細な説明は省略する。
【0088】
この例では、
図16に示すように、2層目の半導体チップ342の上にのみダミー電極372を配置し、1層目と2層目の各層の各ピンワイヤ551a~552aを形成する際に、各層の電極351~352と2層目のダミー電極372の上に形成したバンプ452との間でルーピングワイヤ50a1~502aを形成し、これを起立させて各ピンワイヤ551a~552aを形成する。
【0089】
1層目の半導体チップ341の電極351とバンプ452との間に
図16中に示す矢印981aの様にルーピングワイヤ501aを形成する。ルーピングワイヤ501aのルーピング高さはH1aである。そして、ルーピングワイヤ501aを
図16中に示す矢印991aの様に起立させてピンワイヤ551aを形成する。
【0090】
また、2層目の半導体チップ342の電極352とバンプ452との間に
図16中に示す矢印982aの様にルーピングワイヤ502aを形成する。そして、
図16中の矢印992aに示すように、ルーピングワイヤ502aを起立させてピンワイヤ552aを形成する。
【0091】
1層目の電極351とバンプ452との距離L1は、2層目の電極352とバンプ452との距離L2よりも長いので、ルーピングワイヤ501aのルーピング高さH1aは、ルーピングワイヤ502aのルーピング高さH2aよりも低くなっている。
【0092】
このように、各電極351~352とバンプ452との各距離L1,L2に応じてルーピング高さHを調整することにより、ピンワイヤ551~552の上端高さZ1を揃えることができる。また、各ルーピングワイヤ501~502の各ルーピング高さH1~H2を調整することにより、各ピンワイヤ551~552の高さを自由に調整することができる。
【0093】
更に、この方法の場合、ダミー電極372の数を少なくすることができ、簡便な方法で各ピンワイヤ551~552を形成することができる。
【0094】
以上、ワイヤボンディング装置100によって半導体チップ34、341~344の電極35、35a~35e、351~354の上にピンワイヤ55、55a~55e、551~552、551a,552aを形成する方法について説明したが、ワイヤボンディング装置100は、基板30の上に配置された電極の上にピンワイヤ55を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 ベース、11 XYテーブル、11a 移動機構、12 ボンディングヘッド、13 Z方向モータ、13a シャフト、13b 固定子、14 ボンディングアーム、14a 根元部、15 超音波ホーン、16 ワイヤ、17 ワイヤクランパ、18 放電電極、19 ボンディングステージ、20 キャピラリ、21 貫通孔、22 チャンファー部、23 フェイス部、24、36a、38 中心線、25 先端、30 基板、34、341~344 半導体チップ、35、35a~35e、351~354 電極、37,371~374 ダミー電極、40 フリーエアボール、41、51、51a 圧着ボール、42 ボールネック、43、44 押し潰し部、45、451~454 バンプ、46 接続部、47、57 ワイヤテール、50a~50e、501~505、501a~502a ルーピングワイヤ、52,52a~52e ループ部、53、53a~53e 一部分、55、55a~55e、551~552、551a,552a ピンワイヤ、60 制御部、61 CPU、62 メモリ、100 ワイヤボンディング装置。