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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】化粧料の充填装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 39/00 20060101AFI20240415BHJP
   B65B 3/04 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B65B39/00 Z
B65B3/04
A61K8/00
A61Q1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023028056
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2019025137の分割
【原出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2023059981
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167900
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 仁
(72)【発明者】
【氏名】糸原 晃英
(72)【発明者】
【氏名】須佐 貴之
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-001233(JP,A)
【文献】米国特許第02145240(US,A)
【文献】実開平05-084601(JP,U)
【文献】特開昭53-074981(JP,A)
【文献】特開昭63-022304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 39/00
B65B 3/00
A61K 8/00
A61Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、互いに平行な2つの内側面と、各内側面を接続する2つの壁面とを有し、化粧料を収容する収容部を備えた容器に化粧料を充填する化粧料の充填装置であって、
スラリー状の化粧料を吐出するノズルを備え、
前記ノズルは、前記容器の前記収容部に挿入することによって、前記収容部の各内側面と対向し、かつ平行となる2つの外側面を有し、
前記ノズルの各外側面の間隔は、前記収容部の各内側面の間隔よりも僅かに狭く設定され、
前記化粧料の充填装置は、前記ノズルを前記容器の前記収容部に挿入し、前記ノズルにスラリー状の化粧料を吐出させるとともに、前記収容部の各内側面および前記収容部の底面に沿って前記ノズルを移動させることによって、前記容器を移動させることなく前記容器の前記収容部に化粧料を充填することを特徴とする化粧料の充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載された化粧料の充填装置において、
前記ノズルは、
第1の化粧料を吐出する第1のノズルと、
前記第1の化粧料と異なる色の第2の化粧料を吐出する第2のノズルとを備え、
前記第1のノズルおよび前記第2のノズルは、前記ノズルの各外側面と直交する方向に沿って、前記ノズルの各外側面の間に隣り合うようにして配置されることを特徴とする化粧料の充填装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された化粧料の充填装置において、
前記ノズルを移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御することによって、前記容器を移動させることなく前記容器の前記収容部に化粧料を充填する制御手段とを備え、
前記移動手段は、
前記収容部の各内側面および前記収容部の底面に沿って前記ノズルをスライドさせるスライド移動部と、
前記収容部の底面に対して前記ノズルを昇降させる昇降移動部とを備えることを特徴とする化粧料の充填装置。
【請求項4】
請求項3に記載された化粧料の充填装置において、
前記制御手段は、
前記容器の前記収容部における一方の壁面側に前記昇降移動部にて前記ノズルを挿入させる挿入制御部と、
前記ノズルに化粧料の吐出を開始させるとともに、前記収容部の各内側面に沿って前記スライド移動部にて前記ノズルを移動させることによって、前記容器の前記収容部に化粧料を充填する充填制御部と、
前記ノズルに化粧料の吐出を停止させるとともに、前記容器の前記収容部における他方の壁面と、前記ノズルとを接触させるように前記スライド移動部にて前記ノズルを移動させることによって、化粧料を擦り切る擦り切り制御部とを備え、
前記充填制御部は、前記昇降移動部にて前記収容部の底面に対して前記ノズルを徐々に上昇させることを特徴とする化粧料の充填装置。
【請求項5】
請求項4に記載された化粧料の充填装置において、
前記充填制御部は、前記一方の壁面側における前記ノズルの移動速度を前記他方の壁面側における前記ノズルの移動速度よりも遅く設定することを特徴とする化粧料の充填装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載された化粧料の充填装置において、
前記移動手段は、
前記ノズルの各外側面と直交する方向を回動軸として前記ノズルを回動させる回動移動部を備え、
前記充填制御部は、前記一方の壁面側における化粧料の吐出方向を前記一方の壁面側の隅に向けるように、前記回動移動部にて前記ノズルを回動させ、前記他方の壁面側における化粧料の吐出方向を前記他方の壁面側の隅に向けるように、前記回動移動部にて前記ノズルを回動させることを特徴とする化粧料の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底面と、互いに平行な2つの内側面と、各内側面を接続する2つの壁面とを有し、化粧料を収容する収容部を備えた容器に化粧料を充填する化粧料の充填装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された発明では、多色化粧料の充填装置は、化粧料を収容する収容部を有する化粧皿(容器)を金型の内部に収容し、複数の注出管を一体化した注出ノズルを金型の上面との距離を一定とするように金型の上面に沿ってスライドさせることによって、化粧皿の収容部に複数の注出管から吐出された複数色の化粧料を充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-1233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、注出ノズルは、金型の上面との距離を一定とするように金型の上面に沿ってスライドさせているので、複数の注出管から吐出された複数色の化粧料は、金型や、化粧皿の上端面に付着して汚してしまうことになり、化粧皿等に付着した化粧料を取り除く工程などが生じ、製造効率を低下させ、さらには量産において化粧料を損失させるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、容器に汚れを付着させることなく、製造効率の低下や化粧料の損失を抑制することができる化粧料の充填装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化粧料の充填装置は、底面と、互いに平行な2つの内側面と、各内側面を接続する2つの壁面とを有し、化粧料を収容する収容部を備えた容器に化粧料を充填する化粧料の充填装置であって、スラリー状の化粧料を吐出するノズルを備え、ノズルは、容器の収容部に挿入することによって、収容部の各内側面と対向し、かつ平行となる2つの外側面を有し、ノズルの各外側面の間隔は、収容部の各内側面の間隔よりも僅かに狭く設定され、化粧料の充填装置は、ノズルを容器の収容部に挿入し、ノズルにスラリー状の化粧料を吐出させるとともに、収容部の各内側面および収容部の底面に沿ってノズルを移動させることによって、容器を移動させることなく容器の収容部に化粧料を充填することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、化粧料の充填装置は、ノズルを容器の収容部に挿入し、ノズルにスラリー状の化粧料を吐出させるとともに、収容部の各内側面および収容部の底面に沿ってノズルを移動させることによって、容器を移動させることなく容器の収容部に化粧料を充填するので、容器に汚れを付着させることなく、製造効率の低下や化粧料の損失を抑制することができる。また、ノズルの各外側面の間隔は、収容部の各内側面の間隔よりも僅かに狭く設定されているので、例えば、ノズルを作業者の手作業にて移動させて容器の収容部に化粧料を充填する場合には、ノズルの各外側面および収容部の各内側面は、収容部の各内側面に沿ってノズルを移動させる際のガイドの役割を果たすことができ、作業者は、化粧料の充填装置を使用して容器の収容部に化粧料を容易に充填することができる。
【0008】
本発明では、ノズルは、第1の化粧料を吐出する第1のノズルと、第1の化粧料と異なる色の第2の化粧料を吐出する第2のノズルとを備え、第1のノズルおよび第2のノズルは、ノズルの各外側面と直交する方向に沿って、ノズルの各外側面の間に隣り合うようにして配置されることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、第1のノズルおよび第2のノズルは、ノズルの各外側面と直交する方向に沿って、ノズルの各外側面の間に隣り合うようにして配置されているので、容器の収容部にストライプ状の化粧料を容易に充填することができる。
【0010】
本発明では、ノズルを移動させる移動手段と、移動手段を制御することによって、容器を移動させることなく容器の収容部に化粧料を充填する制御手段とを備え、移動手段は、収容部の各内側面および収容部の底面に沿ってノズルをスライドさせるスライド移動部と、収容部の底面に対してノズルを昇降させる昇降移動部とを備えることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、化粧料の充填装置は、ノズルを移動させる移動手段と、移動手段を制御することによって、容器を移動させることなく容器の収容部に化粧料を充填する制御手段とを備えているので、ノズルを作業者の手作業にて移動させて容器の収容部に化粧料を充填する場合と比較して安定して高い品質の製品を製造することができる。
【0012】
本発明では、制御手段は、容器の収容部における一方の壁面側に昇降移動部にてノズルを挿入させる挿入制御部と、ノズルに化粧料の吐出を開始させるとともに、収容部の各内側面に沿ってスライド移動部にてノズルを移動させることによって、容器の収容部に化粧料を充填する充填制御部と、ノズルに化粧料の吐出を停止させるとともに、容器の収容部における他方の壁面と、ノズルとを接触させるようにスライド移動部にてノズルを移動させることによって、化粧料を擦り切る擦り切り制御部とを備え、充填制御部は、昇降移動部にて収容部の底面に対してノズルを徐々に上昇させることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、制御手段は、挿入制御部と、充填制御部と、擦り切り制御部とを備え、充填制御部は、昇降移動部にて収容部の底面に対してノズルを徐々に上昇させるので、化粧料の充填開始から充填完了までのノズルの動きを滑らかにすることができる。したがって、化粧料の充填装置は、容器に充填された化粧料の外観を美しく仕上げることができる。
【0014】
本発明では、充填制御部は、一方の壁面側におけるノズルの移動速度を他方の壁面側におけるノズルの移動速度よりも遅く設定することが好ましい。
【0015】
ここで、容器の底面と、ノズルとの距離を近くすると、ノズルから吐出された化粧料は、容器の収容部に充填された化粧料に大きな負荷をかけることになり、容器の底面と、ノズルとの距離を遠くすると、ノズルから吐出された化粧料は、容器の底面と、ノズルとの距離を近くした場合と比較して、容器の収容部に充填された化粧料に小さな負荷をかけることになる。
本発明によれば、容器の収容部における一方の壁面側では、容器の底面と、ノズルとの距離は近くなるので、容器の収容部に充填された化粧料に大きな負荷をかけることになる。しかしながら、充填制御部は、一方の壁面側におけるノズルの移動速度を他方の壁面側におけるノズルの移動速度よりも遅く設定するので、容器の収容部に充填された化粧料にかかる負荷のバランスを取ることができる。したがって、化粧料の充填装置は、容器に充填された化粧料の外観を美しく仕上げることができる。
【0016】
本発明では、移動手段は、ノズルの各外側面と直交する方向を回動軸としてノズルを回動させる回動移動部を備え、充填制御部は、一方の壁面側における化粧料の吐出方向を一方の壁面側の隅に向けるように、回動移動部にてノズルを回動させ、他方の壁面側における化粧料の吐出方向を他方の壁面側の隅に向けるように、回動移動部にてノズルを回動させることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、充填制御部は、一方の壁面側における化粧料の吐出方向を一方の壁面側の隅に向けるように、回動移動部にてノズルを回動させ、他方の壁面側における化粧料の吐出方向を他方の壁面側の隅に向けるように、回動移動部にてノズルを回動させるので、容器の収容部の隅に確実に化粧料を充填することができる。したがって、化粧料の充填装置は、容器に充填された化粧料の外観を美しく仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る化粧料の充填装置を示す斜視図
図2】化粧皿を示す拡大斜視図
図3】ノズルを示す拡大図
図4】化粧皿およびノズルの関係を示す図
図5】化粧料の充填装置の機能を示すブロック図
図6】化粧皿の収容部にノズルを挿入している状態を示す図
図7】化粧料の充填を開始した状態を示す図
図8】化粧皿の収容部に化粧料を充填している状態を示す図
図9】化粧料を擦り切っている状態を示す図
図10】化粧皿の収容部からノズルを離間させている状態を示す図
図11】化粧皿の収容部に化粧料を充填している状態の詳細工程を示す図
図12】本発明の第2実施形態に係る化粧料の充填装置を示す斜視図
図13】化粧料の充填装置の機能を示すブロック図
図14】化粧皿の収容部に化粧料を充填している状態の詳細工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る化粧料の充填装置を示す斜視図である。
化粧料の充填装置1は、図1に示すように、スラリー状の化粧料C(化粧料C1~C3)を収容する収容部91を備えた容器としての化粧皿9に化粧料Cを充填する。この化粧料の充填装置1は、化粧皿9を載置する搬送路21を有し、この搬送路21を所定方向(図中矢印D方向)に沿って移動させることによって、化粧皿9を搬送する搬送手段2と、スラリー状の化粧料Cを吐出することによって、搬送路21に載置された化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填するノズル3と、ノズル3を移動させる移動手段4とを備えている。
なお、図1では、搬送路21の移動方向を+X軸方向とし、鉛直上方向を+Z軸方向とし、X,Z軸と直交する右手直交座標系の軸を+Y軸方向とする。以下の図面においても同様である。
【0020】
ここで、スラリー状の化粧料Cとは、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウなどの固形粉末化粧料の化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコールなどの揮発性溶剤とを混合した流動物である。
【0021】
図2は、化粧皿を示す拡大斜視図である。
化粧皿9は、図2に示すように、化粧料Cを収容する収容部91と、化粧ブラシや、パフなどの化粧用具を収納する複数の収納部92とを備え、プラスチック成形にて形成されている。
収容部91は、底面93と、互いに平行な2つの内側面94A,94Bと、各内側面94A,94Bを接続する2つの壁面95A,95Bとを有している。
【0022】
図3は、ノズルを示す拡大図である。具体的には、図3(A)は、化粧料Cを吐出する吐出口30A~30C側からノズル3を見た図であり、図3(B)は、図3(A)のノズル3を紙面右側から見た図である。
ノズル3は、図3に示すように、略矩形板状に形成された金属製のノズル本体31と、ノズル本体31に取り付けられるとともに、ノズル本体31に化粧料Cを送出する複数の送出管32A~32Cと、ノズル本体31における複数の送出管32A~32Cを取り付けられた側の端面に固定された金属製のカバー33とを備えている。
【0023】
ノズル本体31は、ノズル3の吐出口30A~30C側からカバー33側に向かって貫通して形成されるとともに、図3(A)の左右方向に隣り合うようにして形成された断面矩形状の3つの貫通穴34A~34Cと、複数の送出管32A~32Cを取り付ける送出管取付部35と、ノズル3の吐出口30A~30C側の端部を加工して形成されたノズル先端部36を備えている。
ノズル先端部36は、図3(A)の左右方向の両側に位置する面を加工して形成された2つの外側面37A,37Bと、貫通穴34A~34Cの貫通方向に対して傾斜するように加工して形成された傾斜面38と、図3(A)の下方側に位置する面を加工して形成された下面39とを有している。
ここで、傾斜面38は、ノズル先端部36の上面を下面39に対して突出させる角度で傾斜するように加工して形成されている。
【0024】
送出管32Aは、貫通穴34Aと連通するように送出管取付部35に取り付けられている。この送出管32Aは、化粧料C1を貫通穴34Aに送出する。
送出管32Bは、貫通穴34Bと連通するように送出管取付部35に取り付けられている。この送出管32Bは、化粧料C1と異なる色の化粧料C2を貫通穴34Bに送出する。
送出管32Cは、貫通穴34Cと連通するように送出管取付部35に取り付けられている。この送出管32Cは、化粧料C1および化粧料C2と異なる色の化粧料C3を貫通穴34Cに送出する。
【0025】
ここで、異なる色の化粧料とは、人間の視覚に基づいて、両者の違いを区別できる化粧料を言うものとし、明度、彩度、および色相の異なる化粧料はもとより、パール等を加えたものと、そうでないものといったように同一色であっても光沢感の異なる化粧料などを含むものとする。
【0026】
そして、カバー33は、貫通穴34A~34Cの一方の開口を閉塞する。これによって、貫通穴34A~34Cの他方の開口は、吐出口30A~30Cとして機能する。
したがって、送出管32Aにて貫通穴34Aに送出された化粧料C1は、ノズル先端部36の傾斜面38に形成された吐出口30Aを介して吐出されることになる。送出管32Bにて貫通穴34Bに送出された化粧料C2は、ノズル先端部36の傾斜面38に形成された吐出口30Bを介して吐出されることになる。送出管32Cにて貫通穴34Cに送出された化粧料C3は、ノズル先端部36の傾斜面38に形成された吐出口30Cを介して吐出されることになる。
【0027】
このように、本実施形態では、ノズル3は、第1の化粧料(例えば化粧料C1)を吐出する第1のノズル(例えば貫通穴34A)と、第1の化粧料と異なる色の第2の化粧料(例えば化粧料C2)を吐出する第2のノズル(例えば貫通穴34B)とを備えている。また、本実施形態では、第1のノズルおよび第2のノズルは、ノズル3の各外側面37A,37Bと直交する方向(図3(A)左右方向)に沿って、ノズル3の各外側面37A,37Bの間に隣り合うようにして配置されている。
【0028】
図4は、化粧皿およびノズルの関係を示す図である。具体的には、図4(A)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の上面側から見た図であり、図4(B)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図である。なお、図4では、化粧皿9は、断面図にて示している。以下の図面においても同様である。
【0029】
化粧料の充填装置1は、図4に示すように、ノズル3を化粧皿9の収容部91に挿入し、ノズル3にスラリー状の化粧料C1~C3を吐出させるとともに、収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3を移動させることによって、化粧皿9の収容部91に化粧料C1~C3を充填する。
【0030】
このように、ノズル3は、化粧皿9の収容部91に挿入することによって、収容部91の各内側面94A,94Bと対向し、かつ平行となる2つの外側面37A,37Bを有している。
また、ノズル3の各外側面37A,37Bの間隔は、化粧皿9の収容部91の各内側面94A,94Bの間隔よりも僅かに狭く設定されている。
【0031】
移動手段4は、図1に示すように、搬送路21の-Y軸方向側に設置された略直方体状のベース41と、ベース41の上面(+Z軸方向側の面)に取り付けられたX軸スライダ42Xと、X軸スライダ42Xの上面(+Z軸方向側の面)に取り付けられたY軸スライダ42Yと、Y軸スライダ42Yの側面(+X軸方向側の面)に取り付けられたZ軸スライダ42Zとを備えている。
X軸スライダ42Xは、X軸方向に沿ってスライド自在となるようにベース41に取り付けられている。Y軸スライダ42Yは、Y軸方向に沿ってスライド自在となるようにX軸スライダ42Xに取り付けられている。Z軸スライダ42Zは、Z軸方向に沿ってスライド自在となるようにY軸スライダ42Yに取り付けられている。
【0032】
Z軸スライダ42Zは、Z軸スライダ42Zに基端部を固定されるとともに、搬送路21に載置された化粧皿9の鉛直上方位置まで延在するアーム43と、X軸方向を軸方向とし、アーム43の先端部に取り付けられる軸体44と、軸体44に回動自在に取り付けられた回動部材45と、軸体44に対して回動部材45を固定するボルト46とを備えている。
【0033】
回動部材45は、ノズル3を挿入する断面矩形状の貫通穴45Aと、ボルト46を挿入するボルト穴(図示略)を有し、軸体44に固定される固定部45Bとを有する。この貫通穴45Aは、ノズル3のノズル本体31を挿入することができ、ノズル本体31の送出管取付部35を挿入することができない大きさに設定されている。したがって、回動部材45の貫通穴45Aに対してノズル本体31をノズル先端部36側から挿入することによって、送出管取付部35は、ストッパとして機能し、回動部材45にノズル3を取り付けることができる。
【0034】
このように、本実施形態では、Y軸スライダ42Yは、化粧皿9の収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3をスライドさせるスライド移動部として機能する。また、本実施形態では、Z軸スライダ42Zは、化粧皿9の収容部91の底面93に対してノズル3を昇降させる昇降移動部として機能する。
【0035】
図5は、化粧料の充填装置の機能を示すブロック図である。
化粧料の充填装置1は、前述した搬送手段2、ノズル3、および移動手段4を備える他、図5に示すように、化粧料Cの吐出圧力や、充填のタイミングや、充填時間の調整をすることができ、ノズル3に化粧料Cの吐出を開始または停止させる駆動手段5と、搬送手段2、移動手段4、および駆動手段5を制御することによって、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する制御手段6とを備えている。
【0036】
制御手段6は、挿入制御部61と、充填制御部62と、擦り切り制御部63とを備えている。
挿入制御部61は、化粧皿9の収容部91における一方の壁面95A側に移動手段4にてノズル3を挿入させる。
充填制御部62は、駆動手段5を制御してノズル3に化粧料C(化粧料C1~C3)の吐出を開始させるとともに、収容部91の各内側面94A,94Bに沿って移動手段4にてノズル3を移動させることによって、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する。
擦り切り制御部63は、駆動手段5を制御してノズル3に化粧料の吐出を停止させるとともに、化粧皿9の収容部91における他方の壁面95Bと、ノズル3とを接触させるように移動手段4にてノズル3を移動させることによって、化粧料Cを擦り切る。
【0037】
以下、化粧料の充填装置1にて化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する工程について、図6図10を参照して説明する。
制御手段6は、搬送手段2を制御することによって、搬送路21に載置された化粧皿9を所定の位置まで搬送する(図1参照)。
【0038】
図6は、化粧皿の収容部にノズルを挿入している状態を示す図である。具体的には、図6(A)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図であり、図6(B)は、化粧皿9およびノズル3の関係を化粧皿9の上面側から見た図である。
化粧皿9を所定の位置まで搬送すると、挿入制御部61は、図6に示すように、移動手段4を制御することによって、化粧皿9の収容部91における一方の壁面95A側にノズル3を挿入させる(図中矢印参照)。
【0039】
図7は、化粧料の充填を開始した状態を示す図である。具体的には、図7(A)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図であり、図7(B)は、化粧皿9およびノズル3の関係を化粧皿9の上面側から見た図である。
化粧皿9の収容部91にノズル3を挿入した後、充填制御部62は、図7に示すように、駆動手段5を制御してノズル3に化粧料C(化粧料C1~C3)の吐出を開始させる。
【0040】
図8は、化粧皿の収容部に化粧料を充填している状態を示す図である。具体的には、図8(A)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図であり、図8(B)は、化粧皿9およびノズル3の関係を化粧皿9の上面側から見た図である。
ノズル3に化粧料Cの吐出を開始させた後、充填制御部62は、図8に示すように、移動手段4を制御することによって、収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3を移動させることによって、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する(図中矢印参照)。
【0041】
図9は、化粧料を擦り切っている状態を示す図である。具体的には、図9(A)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図であり、図9(B)は、化粧皿9およびノズル3の関係を化粧皿9の上面側から見た図である。
化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填した後、擦り切り制御部63は、駆動手段5を制御してノズル3に化粧料の吐出を停止させる。また、擦り切り制御部63は、図9に示すように、移動手段4を制御することによって、化粧皿9の収容部91における他方の壁面95Bと、ノズル3とを接触させるようにノズル3を移動させることによって、化粧料Cを擦り切る(図中矢印参照)。
【0042】
図10は、化粧皿の収容部からノズルを離間させている状態を示す図である。具体的には、図10(A)は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図であり、図10(B)は、化粧皿9およびノズル3の関係を化粧皿9の上面側から見た図である。
化粧料Cを擦り切った後、制御手段6は、図10に示すように、移動手段4を制御することによって、化粧皿9の収容部91からノズル3を離間させる(図中矢印参照)。
【0043】
その後、制御手段6は、搬送手段2を制御することによって、搬送路21に載置された化粧皿9を所定の位置から搬出する。
なお、本実施形態では、制御手段6は、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する際、搬送路21に載置された化粧皿9を静止させているが、静止させることなく、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填するようにしてもよい。この場合には、制御手段6は、搬送手段2および移動手段4を制御することによって、搬送手段2による化粧皿9の搬送と、移動手段4によるノズル3の移動とを同期させて搬送路21に載置された化粧皿9を相対的に静止させればよい。
【0044】
図11は、化粧皿の収容部に化粧料を充填している状態の詳細工程を示す図である。具体的には、図11は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図である。また、図11(A)は、ノズル3に化粧料Cの吐出を開始させた直後の状態であり、図11(B)は、収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3を移動させている状態であり、図11(C)は、化粧料Cを擦り切る直前の状態である。
充填制御部62は、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する際、図11(A)~(C)に示すように、移動手段4を制御することによって、化粧皿9の収容部91の底面93に対してノズル3を徐々に上昇させる。
【0045】
また、充填制御部62は、一方の壁面95A側におけるノズル3の移動速度を他方の壁面95B側におけるノズル3の移動速度よりも遅く設定している。
なお、本実施形態では、充填制御部62は、一方の壁面95A側におけるノズル3の移動速度を他方の壁面95B側におけるノズル3の移動速度よりも遅く設定しているが、同一の移動速度に設定してもよく、他方の壁面95B側におけるノズル3の移動速度よりも速く設定してもよい。
【0046】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)化粧料の充填装置1は、ノズル3を化粧皿9の収容部91に挿入し、ノズル3にスラリー状の化粧料Cを吐出させるとともに、収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3を移動させることによって、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填するので、化粧皿9に汚れを付着させることなく、製造効率の低下や化粧料Cの損失を抑制することができる。
(2)ノズル3の各外側面37A,37Bの間隔は、収容部91の各内側面94A,94Bの間隔よりも僅かに狭く設定されているので、例えば、ノズル3を作業者の手作業にて移動させて化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する場合には、ノズル3の各外側面37A,37Bおよび収容部91の各内側面94A,94Bは、収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3を移動させる際のガイドの役割を果たすことができ、作業者は、化粧料の充填装置1を使用して化粧皿9の収容部91に化粧料Cを容易に充填することができる。
【0047】
(3)第1のノズルおよび第2のノズルは、ノズル3の各外側面37A,37Bと直交する方向に沿って、ノズル3の各外側面37A,37Bの間に隣り合うようにして配置されているので、化粧皿9の収容部91にストライプ状の化粧料C(C1~C3)を容易に充填することができる。
(4)化粧料の充填装置1は、ノズル3を移動させる移動手段4と、移動手段4を制御することによって、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する制御手段6とを備えているので、ノズル3を作業者の手作業にて移動させて化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する場合と比較して安定して高い品質の製品を製造することができる。
【0048】
(5)制御手段6は、挿入制御部61と、充填制御部62と、擦り切り制御部63とを備え、充填制御部62は、移動手段4にて収容部91の底面93に対してノズル3を徐々に上昇させるので、化粧料Cの充填開始から充填完了までのノズル3の動きを滑らかにすることができる。したがって、化粧料の充填装置1は、化粧皿9に充填された化粧料Cの外観を美しく仕上げることができる。
(6)化粧皿9の収容部91における一方の壁面95A側では、化粧皿9の底面93と、ノズル3との距離は近くなるので、化粧皿9の収容部91に充填された化粧料Cに大きな負荷をかけることになる。しかしながら、充填制御部62は、一方の壁面95A側におけるノズル3の移動速度を他方の壁面95B側におけるノズル3の移動速度よりも遅く設定するので、化粧皿9の収容部91に充填された化粧料Cにかかる負荷のバランスを取ることができる。したがって、化粧料の充填装置1は、化粧皿9に充填された化粧料Cの外観を美しく仕上げることができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図12は、本発明の第2実施形態に係る化粧料の充填装置を示す斜視図である。図13は、化粧料の充填装置の機能を示すブロック図である。
前記第1実施形態では、化粧料の充填装置1は、搬送手段2、ノズル3、移動手段4、および制御手段6を備えていた。
これに対して、本実施形態では、化粧料の充填装置1Aは、図12および図13に示すように、搬送手段2、ノズル3、移動手段4A、および制御手段6Aを備えている点で前記第1実施形態と異なる。
【0051】
具体的には、移動手段4Aは、図12に示すように、軸体44に対して回動部材45を固定するとともに、軸体44に対して回動部材45を回動させるモータ47を備えている。
このように、本実施形態では、モータ47は、ノズル3の各外側面37A,37Bと直交する方向を回動軸としてノズル3を回動させる回動移動部として機能する。
【0052】
また、制御手段6Aは、図13に示すように、挿入制御部61と、充填制御部62Aと、擦り切り制御部63とを備えている。
充填制御部62Aは、駆動手段5を制御してノズル3に化粧料C(化粧料C1~C3)の吐出を開始させるとともに、収容部91の各内側面94A,94Bに沿って移動手段4にてノズル3を移動させることによって、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する。
【0053】
図14は、化粧皿の収容部に化粧料を充填している状態の詳細工程を示す図である。具体的には、図14は、化粧皿9およびノズル3の関係をノズル先端部36の外側面37B側から見た図である。また、図14(A)は、ノズル3に化粧料Cの吐出を開始させた直後の状態であり、図14(B)は、収容部91の各内側面94A,94Bに沿ってノズル3を移動させている状態であり、図14(C)は、化粧料Cを擦り切る直前の状態である。
充填制御部62Aは、化粧皿9の収容部91に化粧料Cを充填する際、図14(A)~(C)に示すように、一方の壁面95A側における化粧料Cの吐出方向を一方の壁面95A側の隅に向けるように、移動手段4Aを制御することによって、ノズル3を回動させ、他方の壁面95B側における化粧料Cの吐出方向を他方の壁面95B側の隅に向けるように、移動手段4Aを制御することによって、ノズル3を回動させる。
【0054】
このような本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏することができる他、以下の作用・効果を奏することができる。
(7)充填制御部62Aは、一方の壁面95A側における化粧料Cの吐出方向を一方の壁面95A側の隅に向けるように、移動手段4Aにてノズルを回動させ、他方の壁面95B側における化粧料Cの吐出方向を他方の壁面95B側の隅に向けるように、移動手段4Aにてノズル3を回動させるので、化粧皿9の収容部91の隅に確実に化粧料Cを充填することができる。したがって、化粧料の充填装置1Aは、化粧皿9に充填された化粧料Cの外観を美しく仕上げることができる。
【0055】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、ノズル3は、第1の化粧料を吐出する第1のノズルと、第1の化粧料と異なる色の第2の化粧料を吐出する第2のノズルとを備えていたが、ノズルは、単一のノズルのみを備えていてもよく、単一色の化粧料のみを吐出してもよい。
【0056】
また、前記各実施形態では、化粧料の充填装置1,1Aは、搬送手段2、ノズル3、移動手段4,4A、および制御手段6,6Aを備えていたが、移動手段4,4Aおよび制御手段6,6Aを備えていなくてもよい。この場合には、化粧料の充填装置は、ノズルを作業者の手作業にて移動させて容器の収容部に化粧料を充填するように構成してもよい。
また、前記各実施形態では、移動手段4,4Aは、X軸スライダ42Xと、Y軸スライダ42Yと、Z軸スライダ42Zとを備えていたが、X軸スライダ42Xを備えていなくてもよい。要するに、移動手段は、収容部の各内側面に沿ってノズルをスライドさせるスライド移動部と、収容部の底面に対してノズルを昇降させる昇降移動部とを備えていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明は、化粧料の充填装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A 化粧料の充填装置
3 ノズル
4,4A 移動手段
6,6A 制御手段
9 化粧皿(容器)
34A 貫通穴(第1のノズルまたは第2のノズル)
34B 貫通穴(第1のノズルまたは第2のノズル)
34C 貫通穴(第1のノズルまたは第2のノズル)
37A,37B 外側面
42X X軸スライダ
42Y Y軸スライダ(スライド移動部)
42Z Z軸スライダ(昇降移動部)
47 モータ(回動移動部)
61 挿入制御部
62,62A 充填制御部
63 擦り切り制御部
91 収容部
94A,94B 内側面
95A,95B 壁面
C 化粧料
C1 化粧料(第1の化粧料または第2の化粧料)
C2 化粧料(第1の化粧料または第2の化粧料)
C3 化粧料(第1の化粧料または第2の化粧料)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14