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特許7471702樹脂シートの矯正方法および製造方法ならびに樹脂シートの矯正装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】樹脂シートの矯正方法および製造方法ならびに樹脂シートの矯正装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 53/18 20060101AFI20240415BHJP
   B29C 53/80 20060101ALI20240415BHJP
   B29C 53/84 20060101ALI20240415BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B29C53/18
B29C53/80
B29C53/84
B29C59/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023097472
(22)【出願日】2023-06-14
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518165682
【氏名又は名称】若水技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】清水 康男
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢二
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276380(JP,A)
【文献】特開2007-118449(JP,A)
【文献】米国特許第02442443(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0055076(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1408741(KR,B1)
【文献】国際公開第2011/018821(WO,A1)
【文献】特開平09-141673(JP,A)
【文献】特開2009-040055(JP,A)
【文献】特開2009-248431(JP,A)
【文献】特開2006-056220(JP,A)
【文献】特開2012-125776(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/34
B29C 43/44-43/48
B29C 48/00-48/96
B29C 53/00-53/84
B29C 59/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の樹脂シートを矯正する方法であって、
搬送ロールとエンドレスベルトとの間に熱可塑性の樹脂シートを供給する供給工程と、
供給された前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間に挟持して搬送しながら形状の矯正を行う形状矯正工程と、
形状が矯正された前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間から排出する排出工程とを備え、
前記形状矯正工程は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間に前記樹脂シートが挟持されるニップ領域を前記樹脂シートが通過する間に、挟持により加圧された状態の前記樹脂シートを加熱することにより軟化させ、
前記ニップ領域は、前記搬送ロールの中心角が90~270度となるように設定され、
前記ニップ領域において、前記エンドレスベルトが前記搬送ロールの表面に沿うように湾曲し、
前記形状矯正工程は、前記樹脂シートを挟持した前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間を幅方向両側から吸引することにより、軟化状態の前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルトに密着させる工程を備え、
前記排出工程は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間から前記樹脂シートを軟化状態で排出する樹脂シートの矯正方法。
【請求項2】
前記形状矯正工程は、前記エンドレスベルトの外側に配置した加熱装置により、前記エンドレスベルトを介して前記樹脂シートを加熱する工程を備える請求項1に記載の樹脂シートの矯正方法。
【請求項3】
前記形状矯正工程は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルトの挟持面にプラズマ照射を行う工程を備える請求項1に記載の樹脂シートの矯正方法。
【請求項4】
前記形状矯正工程は、前記エンドレスベルトの幅方向中央部を前記搬送ロールに向けて加圧する工程を備える請求項に記載の樹脂シートの矯正方法。
【請求項5】
前記排出工程で排出された軟化状態の前記樹脂シートに対して、転写ロールの表面に形成された凹凸を転写する転写工程を更に備える請求項1に記載の樹脂シートの矯正方法。
【請求項6】
前記排出工程で排出された軟化状態の前記樹脂シートに対して、他の樹脂シートを貼り合わせる貼合工程を更に備える請求項1に記載の樹脂シートの矯正方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の樹脂シートの矯正方法を用いて形状が矯正された樹脂シートを製造する樹脂シートの製造方法。
【請求項8】
既存の樹脂シートを矯正する装置であって、
搬送ロールと、
熱可塑性の樹脂シートを前記搬送ロールとの間に挟持して搬送するエンドレスベルトと、
樹脂シートを、前記搬送ロールおよびエンドレスベルトにより挟持した状態で加熱して軟化させる加熱装置とを備え、
前記加熱装置は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間に前記樹脂シートが挟持されるニップ領域を前記樹脂シートが通過する間に、挟持により加圧された状態の前記樹脂シートを加熱することにより軟化させ、
前記ニップ領域は、前記搬送ロールの中心角が90~270度となるように設定され、
前記ニップ領域において、前記エンドレスベルトが前記搬送ロールの表面に沿うように湾曲し、
前記樹脂シートを挟持した前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間を幅方向両側から吸引することにより、軟化状態の前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルトに密着させる吸引装置を更に備え、
前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間から前記樹脂シートが軟化状態で排出される樹脂シートの矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの矯正方法および製造方法ならびに樹脂シートの矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートからなる基板に対して溝や電極パターン等を形成することが、従来から行われている。最近では、薄型基板に対して微細溝や微細パターン等を精度良く形成できるように、薄くて歪みがない樹脂シートのニーズが高まっているが、樹脂シートの厚みが小さくなると歪みや残留応力による変形が問題になり易いことから、既存の樹脂シートの矯正が必要になるケースが増加しつつある。
【0003】
樹脂シートを矯正する方法として、ロールトゥロールにより連続搬送される熱可塑性樹脂シートに対してアニール処理を施す方法が従来から知られている(例えば、特許文献1)。ところが、厚みが薄い樹脂フィルムの場合には、単に加熱するだけでは残留応力を確実に除去することが困難であり、要求品質に合致しないおそれがある。
【0004】
また、特許文献2には、 口金から帯状に吐出される溶融樹脂を、一対のエンドレスベルトで挟圧しながら冷却固化することにより、樹脂シートを製造する方法が開示されている。ところが、この製造方法は、樹脂を溶融状態で供給するため、製造設備や製造エネルギーが過大になり、製造コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-217342号公報
【文献】特許第3679816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、既存の樹脂シートを所望の形状に安価に矯正することができる樹脂シートの矯正方法および製造方法ならびに樹脂シートの矯正装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、既存の樹脂シートを矯正する方法であって、搬送ロールとエンドレスベルトとの間に熱可塑性の樹脂シートを供給する供給工程と、供給された前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間に挟持して搬送しながら形状の矯正を行う形状矯正工程と、形状が矯正された前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間から排出する排出工程とを備え、前記形状矯正工程は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間に前記樹脂シートが挟持されるニップ領域を前記樹脂シートが通過する間に、挟持により加圧された状態の前記樹脂シートを加熱することにより軟化させ、前記ニップ領域は、前記搬送ロールの中心角が90~270度となるように設定され、前記ニップ領域において、前記エンドレスベルトが前記搬送ロールの表面に沿うように湾曲し、前記形状矯正工程は、前記樹脂シートを挟持した前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間を幅方向両側から吸引することにより、軟化状態の前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルトに密着させる工程を備え、前記排出工程は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間から前記樹脂シートを軟化状態で排出する樹脂シートの矯正方法により達成される。
【0008】
この樹脂シートの矯正方法において、前記形状矯正工程は、前記エンドレスベルトの外側に配置した加熱装置により、前記エンドレスベルトを介して前記樹脂シートを加熱する工程を備えることが好ましい。
【0009】
前記形状矯正工程は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルトの挟持面の少なくとも一方にプラズマ照射を行う工程を備えることが好ましい。
【0010】
前記形状矯正工程は、前記エンドレスベルトの幅方向中央部を前記搬送ロールに向けて加圧する工程を備えることが好ましい。
【0011】
上述した樹脂シートの矯正方法は、前記排出工程で排出された軟化状態の前記樹脂シートに対して、転写ロールの表面に形成された凹凸を転写する転写工程を更に備えることができる。
【0012】
上述した樹脂シートの矯正方法は、前記排出工程で排出された軟化状態の前記樹脂シートに対して、他の樹脂シートを貼り合わせる貼合工程を更に備えることができる。
【0013】
また、本発明の前記目的は、上述した樹脂シートの矯正方法を用いて形状が矯正された樹脂シートを製造する樹脂シートの製造方法により達成される。
【0014】
また、本発明の前記目的は、既存の樹脂シートを矯正する装置であって、搬送ロールと、熱可塑性の樹脂シートを前記搬送ロールとの間に挟持して搬送するエンドレスベルトと、樹脂シートを、前記搬送ロールおよびエンドレスベルトにより挟持した状態で加熱して軟化させる加熱装置とを備え、前記加熱装置は、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間に前記樹脂シートが挟持されるニップ領域を前記樹脂シートが通過する間に、挟持により加圧された状態の前記樹脂シートを加熱することにより軟化させ、前記ニップ領域は、前記搬送ロールの中心角が90~270度となるように設定され、前記ニップ領域において、前記エンドレスベルトが前記搬送ロールの表面に沿うように湾曲し、前記樹脂シートを挟持した前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間を幅方向両側から吸引することにより、軟化状態の前記樹脂シートを前記搬送ロールおよびエンドレスベルトに密着させる吸引装置を更に備え、前記搬送ロールおよびエンドレスベルト間から前記樹脂シートが軟化状態で排出される樹脂シートの矯正装置により達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂シートの矯正方法および製造方法ならびに樹脂シートの矯正装置によれば、既存の樹脂シートを所望の形状に安価に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの矯正装置の概略構成図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る樹脂シートの矯正装置の概略構成図である。
図3図2の要部を示す概略構成図である。
図4】本発明の更に他の実施形態に係る樹脂シートの矯正装置の概略構成図である。
図5】本発明の更に他の実施形態に係る樹脂シートの矯正装置の概略構成図である。
図6】本発明の更に他の実施形態に係る樹脂シートの矯正装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートの矯正装置(以下、単に「矯正装置」という)の概略構成図である。図1に示す矯正装置1は、繰出しロール2からガイドロール2aを介して繰り出される既存の樹脂シートSの形状を矯正した後、ガイドロール3aを介して巻取りロール3で巻き取る装置であり、搬送ロール10、エンドレスベルト20、加熱装置30、予熱装置40およびプラズマ洗浄装置50を備えている。
【0018】
搬送ロール10は、金属材料等からなる表面が平滑なロールであり、矢示方向に回転駆動されることにより、表面に密着した帯状の樹脂シートSを搬送する。
【0019】
エンドレスベルト20は、アルミニウム等の熱伝導性を有する金属材料等からなる表面が平滑な帯板からなり、搬送ロール10の表面に半周程度沿うように駆動ロール21、テンションロール22および支持ロール23,24,25に掛け渡されている。エンドレスベルト20は、樹脂シートSの幅よりも若干大きな幅を有しており、樹脂シートSの幅方向全体を搬送ロール1との間に挟持する。駆動ロール21は、エンドレスベルト20の移動速度が搬送ロール10の表面速度に略一致するように駆動制御される。
【0020】
加熱装置30は、例えばIR(赤外線)ヒータ等の電気ヒータからなり、搬送ロール10およびエンドレスベルト20間に樹脂シートSが挟持されるニップ領域Nの近傍に配置されて、搬送中の樹脂シートSをニップ領域Nにおいて所望の温度まで加熱するように制御される。ニップ領域Nは、例えば、搬送ロール10の中心角θが90~270度となるように設定されることが好ましい。加熱装置30は、本実施形態では搬送ロール10の搬送方向に沿って複数配置しているが、単一であってもよい。本実施形態の加熱装置30は、樹脂シートSをエンドレスベルト20の外側から加熱するように配置することで、熱伝導性が良好なエンドレスベルト20を介して樹脂シートSを均一に加熱することができる。但し、搬送ロール10が円筒状等の場合には、搬送ロール10の内側に加熱装置30を配置して、搬送ロール10を介して樹脂シートSを均一に加熱することもできる。
【0021】
予熱装置40は、加熱装置30と同様に電気ヒータ等からなり、樹脂シートSをニップ領域Nの搬送方向上流側で予熱するように配置されている。予熱装置40の数も特に限定されるものではない。
【0022】
プラズマ洗浄装置50は、公知の手法によりプロセスガスをプラズマ化して生成されたプラズマガスを対象物に噴出して、対象物表面の有機物等の汚れを除去する装置である。図1に示すように、プラズマ洗浄装置50は、搬送ロール10およびエンドレスベルト20をそれぞれニップ領域Nの搬送方向直前で洗浄するように配置されると共に、ニップ領域Nを通過した樹脂シートSをニップ領域Nの搬送方向直後で洗浄するように配置されている。
【0023】
次に、上記の構成を備える矯正装置1を用いた樹脂シートSの矯正方法を説明する。この樹脂シートSの矯正方法は、搬送ロール10とエンドレスベルト20との間に熱可塑性の樹脂シートSを供給する供給工程S1と、供給された樹脂シートSを搬送ロール10およびエンドレスベルト20間に挟持して搬送しながら形状の矯正を行う形状矯正工程S2と、形状が矯正された樹脂シートSを搬送ロール10およびエンドレスベルト20間から排出する排出工程S3とを備えている。
【0024】
供給工程S1においては、形状の矯正が必要な既存の樹脂シートSが繰出しロール2から繰り出されて、予熱装置40による予熱後に搬送ロール10とエンドレスベルト20との間に供給される。樹脂シートSは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ABS樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂などを挙げることができる。
【0025】
形状矯正工程S2においては、供給された樹脂シートSが、搬送ロール10およびエンドレスベルト20間に挟持されて搬送され、エンドレスベルト20により搬送ロール10に向けて押し付けられた状態でニップ領域Nを通過する間に、加熱装置30により加熱される。これにより、樹脂シートSが、挟持により加圧された状態で軟化して流動性を発現することにより、樹脂シートS自体には張力が作用することなく厚みが均一になるように広がることで、形状の矯正が行われる。エンドレスベルト20による樹脂シートSの押付力は、エンドレスベルト20の張力を調節することで、所望の大きさに設定することができる。搬送ロール10およびエンドレスベルト20は、樹脂シートSを挟持する前に、プラズマ洗浄装置50により洗浄されることが好ましく、これによって樹脂シートSの形状矯正をより精度良く行うことができる。なお、予熱装置40による樹脂シートSの予熱は、形状矯正工程S2が開始された直後に樹脂シートSが軟化するように行われることが好ましいが、加熱装置30が樹脂シートSを十分加熱できる場合には、予熱装置40を設けない構成であってもよい。
【0026】
形状矯正工程S2において、加熱装置30による樹脂シートSの加熱温度は、樹脂シートSがニップ領域Nを通過する間に、変形可能に軟化するように設定される。この加熱温度は、例えば、樹脂シートSのガラス転移温度(Tg)よりも高い温度に設定することができ、5~15秒程度維持することが好ましい。ガラス転移温度(Tg)の一例を挙げると、PET樹脂の場合で約180℃である。加熱温度の上限は必ずしも制限されないが、高温になり過ぎると樹脂シートSの流動性が高くなり過ぎて、巻取りロール3による巻き取りが困難になることから、樹脂シートSの加熱温度を、融点以下に設定する必要があり、好ましくは(融点-20℃)以下であり、より好ましくは(Tg+30℃)以下である。
【0027】
上記の形状矯正工程S2によって、既存の樹脂シートSの歪みや残留応力を確実に除去することができ、厚みが小さい(例えば、100μm程度)樹脂シートSであっても、均一な厚みを有する所望の形状に安価に矯正することができる。
【0028】
排出工程S3は、形状が矯正された樹脂シートSを、搬送ロール10およびエンドレスベルト20の間から排出する。排出工程S3を経た樹脂シートSは、低張力で搬送されて、プラズマ洗浄装置50により洗浄された後に、歪みがない状態で巻取りロール3に巻き取られる。
【0029】
上述した樹脂シートの矯正方法によれば、形状精度に優れた樹脂シートSを製造することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、図2に示す矯正装置1aのように、ニップ領域Nに吸引装置60および加圧装置70を配置してもよい。図2において、図1と同様の構成部分には同一の符号を付して、繰り返しの説明を省略する(以下の図においても同様)。
【0031】
図3は、図2のA-A断面図である。図2および図3に示すように、吸引装置60は、樹脂シートSが搬送ロール10およびエンドレスベルト20により挟持された部分を覆うケーシング61を備えている。ケーシング61には、搬送ロール10および加圧装置70がそれぞれ収容される切欠部62,63と、樹脂シートSの幅方向両側に位置する吸引口64,65とが形成されている。吸引口64,65は、真空ポンプ等の吸引源(図示せず)に接続される。
【0032】
加圧装置70は、エンドレスベルト20の外表面と対向するように配置されており、多数の噴出口71からエンドレスベルト20の幅方向中央部に加圧エアを噴出する。
【0033】
図2に示す矯正装置1aを用いた樹脂シートSの矯正方法は、図1に示す矯正装置1を用いた樹脂シートSの矯正方法と同様に行うことができるが、形状矯正工程S2において吸引装置60を作動させることにより、樹脂シートSを挟持した搬送ロール10およびエンドレスベルト20間を、樹脂シートSの幅方向両側から吸引する工程を備えることができる。これにより、樹脂シートSを搬送ロール10およびエンドレスベルト20に密着させて、樹脂シートSに作用する加圧力を確実に維持することができるので、樹脂シートSの形状矯正をより精度良く行うことができる。このような効果は、吸引装置60の作動に加えて加圧装置70を作動させて、エンドレスベルト20の幅方向中央部を搬送ロール10に向けて加圧する工程を備えることによって、より顕著なものになる。
【0034】
搬送ロール10およびエンドレスベルト20間から排出された形状矯正後の樹脂シートSに対しては、軟化した状態を維持したまま必要な加工を行ってもよい。
【0035】
例えば、図4に示す矯正装置1bは、図1に示す矯正装置1におけるニップ領域Nよりも樹脂シートSの搬送方向下流側に、加熱装置50および転写ロール80を配置している。転写ロール80は、例えば、表面に凹凸を有する金属製のエンボスロールであり、支持ロール23との間で樹脂シートSを押圧しながら成形加工を行う。
【0036】
図4に示す矯正装置1bを用いた樹脂シートSの矯正方法は、排出工程S3で排出された軟化状態の樹脂シートSに対して、転写ロール80の表面に形成された凹凸を転写する転写工程を更に備えることで、樹脂シートSの厚みが薄い場合であっても、高精度の微細加工を行うことができる。
【0037】
また、図5に示す矯正装置1cは、図1に示す矯正装置1におけるニップ領域Nよりも樹脂シートSの搬送方向下流側に、加熱装置50および貼合ロール90を配置している。貼合ロール90は、繰出しロール4から繰り出された他の樹脂シートS1を、軟化状態の樹脂シートSの一方面に重ね合わせた状態で支持ロール23との間に挟持して、ラミネート加工を行う。
【0038】
図5に示す矯正装置1cを用いた樹脂シートSの矯正方法は、排出工程S3で排出された軟化状態の樹脂シートSの一方面に対して、他の樹脂シートS1を圧着して貼り合わせる貼合工程を更に備えることで、樹脂シートSの厚みが薄い場合であっても、高精度のラミネート加工を行うことができる。
【0039】
また、図6に示す矯正装置1dは、図5に示す矯正装置1cにおける貼合ロール90に隣接するように、他の貼合ロール100を配置している。貼合ロール100は、繰出しロール5から繰り出された他の樹脂シートS2を、軟化状態の樹脂シートSの他方面に重ね合わせた状態で支持ロール23との間に挟持して、ラミネート加工を行う。
【0040】
図6に示す矯正装置1dを用いた樹脂シートSの矯正方法は、排出工程S3で排出された軟化状態の樹脂シートSの両面に他の樹脂シートS1,S2を圧着して貼り合わせる貼合工程を更に備えており、この場合も、厚みが薄い樹脂シートSに対して、高精度のラミネート加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 矯正装置
10 搬送ロール
20 エンドレスベルト
30 加熱装置
50 プラズマ洗浄装置
60 吸引装置
70 加圧装置
80 転写ロール
90,100 貼合ロール
S 樹脂シート
【要約】
【課題】 既存の樹脂シートを所望の形状に安価に矯正することができる樹脂シートの矯正装置を提供する。
【解決手段】 繰出しロール2等から供給される既存の樹脂シートを矯正する装置1であって、搬送ロール10と、熱可塑性の樹脂シートSを搬送ロール10との間に挟持して搬送するエンドレスベルト20と、樹脂シートSを、搬送ロール10およびエンドレスベルト20により挟持した状態で加熱することにより軟化させる加熱装置30とを備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6