(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】量子系の基底状態エネルギーの推定方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
G06N 10/60 20220101AFI20240415BHJP
【FI】
G06N10/60
(21)【出願番号】P 2022567390
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 CN2021124392
(87)【国際公開番号】W WO2022257316
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】202110634389.5
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TENCENT TECHNOLOGY (SHENZHEN) COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】35/F,Tencent Building,Kejizhongyi Road,Midwest District of Hi-tech Park,Nanshan District, Shenzhen,Guangdong 518057,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 士欣
(72)【発明者】
【氏名】万 周全
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲勝▼誉
【審査官】武田 広太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109800883(CN,A)
【文献】国際公開第2020/113339(WO,A1)
【文献】TAO, Yanxian et al.,Exploring Accurate Potential Energy Surfaces via Integrating Variational Quantum Eigensolver with Machine Learning,The Journal of Physical Chemistry Letters 2022 13 (28) [online],2022年07月21日,6420-6426,[検索日 2023.11.29], インターネット:<URL: https://pubs.acs.org/doi/epdf/10.1021/acs.jpclett.2c01738>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューター機器によって実行される量子系の基底状態エネルギーの推定方法であって、
パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するステップであって、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数であるステップと、
ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するステップと、
前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束
条件を満たすまで、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを
更新するステップと、
前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出することは、
前記ハミルトニアンを分解してなるパウリ文字列と、前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子を分解してなるパウリ文字列とに応じて、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するステップと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれについて、前記パウリ文字列に対応する測定基底上での前記n個の量子ビットの出力量子状態のビット文字列を測定で取得するステップと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するビット文字列に応じて、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を算出するステップと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するステップと、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハミルトニアンを分解してなるパウリ文字列と、前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子を分解してなるパウリ文字列とに応じて、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成することは、
前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子に対してテイラー展開を行うことで、t個のパウリ文字列を取得するステップであって、tは正の整数であるステップと、
前記t個のパウリ文字列と、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列とに対して直積演算を行うことで、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するステップと、を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出することは、
前記k個のパウリ文字列のうちのターゲットパウリ文字列について、前記ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路を介して前記n個の量子ビットの出力量子状態に対して前記ターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行してなる変換後の出力量子状態を取得するステップと、
指定された測定基底上での前記変換後の出力量子状態のビット文字列を測定で取得するステップと、
前記ニューラルネットワークを介して、前記ビット文字列に応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力するステップと、
前記メタデータに応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を算出するステップと、
前記k個のパウリ文字列のエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するステップと、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットパウリ
文字列に対応する測定回路は、符号量子ビット以外
の非符号量子ビットに対応する量子ゲートを含み、前記非符号量子ビットが同一の測定基底で測定されるようにし、前記符号量子ビットは、前記n個の量子ビットのうち、前記ターゲットパウリ文字列における1つのターゲットパウリ演算子に対応する量子ビットであり、前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記ターゲットパウリ文字列における前記符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記同一の測定基底は、第1のパウリ演算子に対応する測定基底であり、前記ターゲットパウリ演算子は、第2のパウリ演算子または第3のパウリ演算子であり、前記第1のパウリ演算子、前記第2のパウリ演算子および前記第3のパウリ演算子は互いに異なり、且つ、前記第1のパウリ演算子、前記第2のパウリ演算子および前記第3のパウリ演算子のうちのいずれか1つは、パウリX演算子、パウリY演算子、およびパウリZ演算子のうちの1つである、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、2ビット制御Xゲートであり、または、
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、2ビット制御Yゲートであり、または、
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、2ビット制御Zゲートである、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、前記パウリX演算子に対応する測定基底であり、または、
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、前記パウリY演算子に対応する測定基底であり、または、
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、前記パウリZ演算子に対応する測定基底である、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記メタデータに応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を算出することは、
次の式に従って、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値
【数1】
を計算するステップを含み、
【数2】
fは、前記ニューラルネットワークを表し、s
0は、前記符号量子ビットに対応する測定結果を表し、sは、前記ビット文字列を表し、0s
1:n-1は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを0に設定してなるビット文字列を表し、
【数3】
は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを1に設定し、且つ他のビットについて前記ターゲットパウリ文字列に従って対応するビット反転を行ってなるビット文字列を表す、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記ターゲットパウリ文字列における前記非符号量子ビットに対応するパウリ演算子が、前記同一の測定基底に対応するパウリ演算子と同じである場合、前記非符号量子ビットに対応する量子ゲットは、前記非符号量子ビットに対応する測定結果に対応する符号で等価的に置き換える、
請求項5に記載の方法。
【請求項11】
量子系の基底状態エネルギーの推定装置であって、
パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するためのものであって、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数である状態取得モジュールと、
ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するための後処理モジュールと、
前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束
条件を満たすまで、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを
更新し、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定するためのオプティマイザモジュールと、を含む、
装置。
【請求項12】
プロセッサと、
前記プロセッサによってロードされ実行されることで、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実現するコンピュータープログラムが記憶されたメモリと、を含む、
コンピューター機器。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法をプロセッサに実現させる、コンピュータープログラム。
【請求項14】
コンピューター読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピューター命令を含み、
プロセッサは、前記コンピューター読み取り可能な記憶媒体から前記コンピューター命令を読み出して実行することで、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実現する、
コンピュータープログラム製品またはコンピュータープログラム。
【請求項15】
パラメータ化された量子回路とコンピューター機器とを含む量子系の基底状態エネルギーの推定システムであって、前記コンピューター機器は、後処理モジュールとオプティマイザモジュールとを含み、
前記パラメータ化された量子回路は、n個の量子ビットの入力量子状態を変換処理することで、前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するために用いられ、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数であり、
前記後処理モジュールは、ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するために用いられ、
前記オプティマイザモジュールは、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束
条件を満たすまで、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを
更新するために用いられ、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する、
システム。
【請求項16】
前記後処理モジュールは、
前記ハミルトニアンを分解してなるパウリ文字列と、前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子を分解してなるパウリ文字列とに応じて、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するための分解ユニットと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれについて、前記パウリ文字列に対応する測定基底上での前記n個の量子ビットの出力量子状態のビット文字列を測定で取得するための測定ユニットと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するビット文字列に応じて、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を算出し、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するための計算ユニットと、を含む、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
kグループの測定回路をさらに含み、前記後処理モジュールは、測定ユニット、ニューラルネットワークユニットおよび計算ユニットを含み、前記kグループの測定回路と前記k個のパウリ文字列とは、一対一対応し、
前記
k個のパウリ文字列のうちのターゲットパウリ文字列に対応する測定回路は、前記n個の量子ビットの出力量子状態に対して前記ターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行することで、変換後の出力量子状態を取得するために用いられ、
前記測定ユニットは、指定された測定基底上での前記変換後の出力量子状態のビット文字列を測定で取得するために用いられ、
前記ニューラルネットワークユニットは、前記ニューラルネットワークを介して、前記ビット文字列に応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力するために用いられ、
前記計算ユニットは、前記メタデータに応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を算出し、前記k個のパウリ文字列のエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するために用いられる、
請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記ターゲットパウリ
文字列に対応する測定回路は、符号量子ビット以外
の非符号量子ビットに対応する量子ゲートを含み、前記非符号量子ビットが同一の測定基底で測定されるようにし、前記符号量子ビットは、前記n個の量子ビットのうち、前記ターゲットパウリ文字列における1つのターゲットパウリ演算子に対応する量子ビットであり、前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記ターゲットパウリ文字列における前記符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記計算ユニットは、次の式に従って、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値
【数4】
を計算するために用いられ、
【数5】
その中、fは、前記ニューラルネットワークを表し、s
0は、前記符号量子ビットに対応する測定結果を表し、sは、前記ビット文字列を表し、0s
1:n-1は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを0に設定してなるビット文字列を表し、
【数6】
は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを1に設定し、且つ他のビットについて前記ターゲットパウリ文字列に応じて対応するビット反転を行ってなるビット文字列を表す、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記ターゲットパウリ文字列における前記非符号量子ビットに対応するパウリ演算子が、前記同一の測定基底に対応するパウリ演算子と同じである場合、前記非符号量子ビットに対応する量子ゲットは、前記非符号量子ビットに対応する測定結果に対応する符号で等価的に置き換える、
請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年06月07日に提出された、出願番号が202110634389.5であって、発明の名称が「量子系の基底状態エネルギーの推定方法、およびシステム」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体が援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願の実施例は、量子技術の分野に関し、特に、量子系の基底状態エネルギーの推定方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、量子系の基底状態エネルギーを推定するために、VQE (Variational Quantum Eigensolver、変分量子固有値ソルバー) ソリューションが提案されている。VQEは、変分量子回路を介して量子系の基底状態エネルギー推定を実現する典型的な量子古典ハイブリッドコンピューティングパラダイムである。
【0004】
VQEの出力性能をさらに向上させ、基底状態エネルギーの推定精度を高めるために、関連技術では、VQEの後処理強化としてJastrow因子を使用するソリューションが提案されている。VQEの可変量子回路によって出力される波動関数に対してJastrow因子で後処理することによって、より多くの量子もつれと相関関係を記述し、最終的に推定された基底状態エネルギーが可能な限り実際値に近づくようにすることが望まれる。
【0005】
然しながら、Jastrow因子は多体系相関の記述により適するが、依然として、古典的な後処理が有し得る最も一般的な形式ではないため、その表現能力が弱く、基底状態エネルギーの推定精度に影響を与える場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の実施例では、量子系の基底状態エネルギーの推定方法およびシステムを提供する。前記技術案は以下の通りである。
【0007】
本出願の実施例の一局面によれば、コンピューター機器によって実行される量子系の基底状態エネルギーの推定方法を提供、
パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するステップであって、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数であるステップと、
ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するステップと、
前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを調整するステップと、
前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定するステップと、を含む方法。
【0008】
本出願の実施例一局面によれば、量子系の基底状態エネルギーの推定装置を提供し、
パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するためのものであって、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数である状態取得モジュールと、
ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するための後処理モジュールと、
前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを調整し、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定するためのオプティマイザモジュールと、を含む装置。
【0009】
本出願の実施例の一局面によれば、プロセッサと、前記プロセッサによってロードされ実行されることで、前記方法を実現するコンピュータープログラムが記憶されたメモリとを含むコンピューター機器を提供する。
【0010】
本出願の実施例の一局面によれば、前記プロセッサによってロードされ実行されることで前記方法を実現するコンピュータープログラムが記憶された、コンピューター読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0011】
本出願の実施例の一局面によれば、コンピューター読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピューター命令を含み、プロセッサは、前記コンピューター読み取り可能な記憶媒体から前記コンピューター命令を読み出して実行することで、前記方法を実現する、コンピュータープログラム製品またはコンピュータープログラムを提供する。
【0012】
本出願の実施例の一局面によれば、パラメータ化された量子回路とコンピューター機器とを含む量子系の基底状態エネルギーの推定システムを提供し、前記コンピューター機器は、後処理モジュールとオプティマイザモジュールとを含み、
前記パラメータ化された量子回路は、n個の量子ビットの入力量子状態を変換処理することで、前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するために用いられ、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数であり、
前記後処理モジュールは、ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するために用いられ、
前記オプティマイザモジュールは、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラル ネットワークのパラメータを調整するために用いられ、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する、システム。
【発明の効果】
【0013】
本出願の実施例で提供される技術案は、以下の有益な効果を含むことができる。
ニューラルネットワークを使用してパラメータ化された量子回路によって出力される波動関数を後処理することによって、このニューラルネットワークは一般関数近似器として機能することができ、Jastrow因子に比べて、より強い表現能力と基底エネルギー近似能力を有するため、基底状態エネルギーの推定精度の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本出願の実施例の技術案をより明らかに説明するために、以下、実施例の説明において使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明の図面は本出願のいくつかの実施例に過ぎなく、当業者にとって、創造的な労力をしない前提で、これらの図面に応じて他の図面を得ることもできる。
【0015】
【
図1】本出願の一実施例で提供されるVQNHEフレームワークを示す概略図である。
【
図2】本出願の一実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定方法のフローチャートである。
【
図3】本出願の別の実施例で提供されるVQNHEフレームワークを示す概略図である。
【
図4】本出願の別の実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定方法のフローチャートである。
【
図5】本出願の一実施例で提供される測定回路の概略図である。
【
図6】本出願の別の実施例で提供される測定回路の概略図である。
【
図7】本出願に例示的に示される分子エネルギー計算における様々なソリューションの比較概略図である。
【
図8】本出願に例示的に示される分子エネルギー計算における量子回路構造の概略図である。
【
図9】本出願に例示的に示される実際のハードウェアおよびノイズのあるシミュレーター上でのVQEおよびVQNHEのパフォーマンスの比較図である。
【
図10】本出願に例示的に示されるPQC回路構成の概略図である。
【
図11】本出願の一実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定装置のブロック図である。
【
図12】本出願の一実施例で提供されるコンピューター機器の構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の目的、技術案および利点をより明らかにするために、以下は図面を参照しながら、本出願の実施形態をさらに詳しく説明する。
【0017】
本出願の技術案を説明する前に、まず、本出願に係る幾つかの重要な技術用語について紹介する。
【0018】
1.量子コンピューティング:量子論理に基づく計算方式であり、データを格納する基本単位は量子ビット(qubit)である。
【0019】
2.量子ビット:量子コンピューティングの基本単位である。従来の計算機は、バイナリの基本単位として0と1を使用している、違いは、量子コンピューティングが0と1を同時に処理し得、システムが0と1の線形重ね合わせ状態
【数1】
にあり得ることである。ここでα、βは、0と1でのシステムの複素数確率振幅を表す。それらのマグニチュードの二乗|α|
2、|β|
2は、それぞれ、0と1である確率を表す。
【0020】
3.量子回路:汎用の量子コンピューターの1つの表現であり、量子ゲートモデルでの相応する量子アルゴリズム/プログラムのハードウェア実現を表す。量子回路に量子ゲートを制御する調整可能なパラメータが含まれている場合、パラメータ化された量子回路(Parameterized Quantum Circuit、PQCと略称する)または変分量子回路(Variational Quantum Circuit、VQCと略称する)と呼ばれ、両方は同じ概念である。
【0021】
4.ハミルトニアン:量子系の総エネルギーを記述するエルミート共役の行列である。ハミルトニアンは物理用語であり、システムの総エネルギーを記述する演算子であり、通常、Hで表される。
【0022】
5.固有状態:1つのハミルトニアン行列Hについて、方程式
【数2】
を満たす解は、Hの固有状態
【数3】
と呼ばれ、固有エネルギーEを持つ。基底状態は、量子系のエネルギーが最も低い固有状態に対応する。
【0023】
6.量子アーキテクチャ探索(Quantum Architecture Search、QASと略称する):量子回路の構造、パターンおよび配置を自動化およびプログラム化探索を実行しようとする一連の作業とソリューションの総称である。従来、量子構造の探索作業では、通常、グリーディ法、強化学習、または遺伝的アルゴリズムをコア技術として採用している。最近開発された技術には、微分可能な量子構造探索と予測子による構造探索ソリューションが含まれている。
【0024】
7.量子古典ハイブリッドコンピューティング:内層が量子回路(例えば、PQC)を用いて相応する物理量または損失関数を算出し、外層が従来の古典的オプティマイザを用いて量子回路の変分パラメータの計算パラダイムを調整し、量子コンピューティングの優位性を最大化することができ、量子の優位性を実証する可能性を秘めた重要な方向性の一つと考えられる。
【0025】
8.NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum):最近のノイズあり中規模量子ハードウェアであり、量子コンピューティングの現在の発展段階と研究の重要な方向とされる。この段階では、量子コンピューティングは規模やノイズの制限により、汎用のコンピューティングのエンジンとして使用できないが、いくつかの問題では、最強の古典的コンピューターを超える結果が達成され、量子超越性または量子優位性と呼ばれることがよくある。
【0026】
9.量子誤り抑制(Quantum Error Mitigation):量子誤り訂正(Quantum Error Correction)に対応し、NISQ時代のハードウェアにおけるより低いリソースコストの一連の量子誤り緩和およびノイズ抑制ソリューションである。完全な量子誤り訂正に比べて、必要なリソースは著しく削減され、一般的なソリューションではなく、特定のタスクにのみ適する場合がある。
【0027】
10.変分量子固有値ソルバー(Variational Quantum Eigensolver、VQEと略称する):変分回路(即ち、PQC/VQC)により特定の量子系の基底状態エネルギーの推定を実現し、典型的な量子古典ハイブリッドコンピューティングパラダイムであり、量子化学の分野で幅広く適用されている。
【0028】
11.Jastrow因子:変分モンテカルロ波動関数のシミュレーションで一般的に使用されている因子であり、より多くの量子相関情報を記述するために、平均場での相互作用のない波動関数を強化するために使用される。その基本形式は
【数4】
である。ここで、φは変分パラメータであり、Zは測定基底上で±1の固有値を与える量子演算子であり、k及びlは異なる量子ビットの自由度を表し、kはk番目の量子ビットを表し、lはl番目の量子ビットを表す。
【0029】
12.非ユニタリ:いわゆるユニタリ行列は、
【数5】
を満たすすべての行列であり、量子力学によって直接許容されるすべての進化プロセスはユニタリ行列で記述されることができる。ここで、Uはユニタリ行列(Unitary Matrix)であり、ユニタリ行列、ユニタリマトリックスなどとも呼ばれ、
【数6】
はUの共役転置である。さらに、この条件を満たさない行列は非ユニタリであり、補助的な手段を介して、指数関数的多いリソースでさえ実験的に実現する必要があるが、非ユニタリ行列は、表現力がより強く、基底状態の射影効果がさらに高速となる場合が多い。上記の「指数関数的多いリソース」とは、量子ビット数の増加に伴ってリソースの所要量が指数関数的に増加することを意味し、この指数関数的リソース増加は、測定を必要とする量子回路の総数が指数関数的に多くなり、即ち、それに対応して、指数関数的に多くなる計算時間がかかることを意味する場合がある。
【0030】
13.パウリ文字列(Pauli string):異なるグリッドにおける複数のパウリ演算子の直積からなる項であり、一般的なハミルトニアンは通常、一連のパウリ文字列の直積に分解できる。VQEの測定も通常、パウリ文字列の分解に従って項ごとに行われる。
【0031】
14.パウリ演算子:パウリ行列とも呼ばれ、3つの2×2ユニタリエルミート複素行列(ユニタリ行列とも呼ばれる)のグループであり、一般的に、ギリシャ文字σ(シグマ)で表される。ここで、パウリX演算子は
【数7】
であり、パウリY演算子は
【数8】
であり、パウリZ演算子は
【数9】
である。
【0032】
15.UCC(Unitary Coupled Cluster、ユニタリ結合クラスタ)仮説(ansatz)およびハードウェア効率化(hardware efficient)仮説:VQEの異なる2つの変分回路構造である。前者は、量子化学の伝統的な変分数値法coupled-cluster(結合クラスター)を参考し、近似効果が良くなる一方、対応する指数演算子を分解するためにトロッター(Trotter)が必要となるため、量子リソースが高く要求されている。後者は、ネイティブ量子ゲートの密集配列スキームを採用し、必要な回路が浅く、量子リソースが低く要求されているが、対応する表現も近似能力も、UCC仮説と比べて劣っている。
【0033】
16.ビット文字列(bit string):0と1からなる数字の列である。量子回路の各測定によって得られた古典的な結果は、測定基底上のスピン配置の上下に従ってそれぞれ0と1で表され得るため、1回の測定の加算結果が1ビット文字列に対応する。
【0034】
本出願で提供される技術案は、現段階での変分量子アルゴリズムの開発と設計を加速化および強化するのに役立つ。NISQ時代の量子ハードウェアの典型的な欠点は、コヒーレンス時間が短く量子ノイズが大きいことであり、それに対して、量子ハードウェア自体の固有の特性を十分に考慮した場合に、量子回路の深さをできるだけ減少する必要がある。UCC仮説に基づく従来のVQEソリューションは、高精度を有する一方、回路の深さに対する要求が高まっているため、既存のコヒーレンス時間の量子ハードウェアで大規模に実現することは困難であった。これに対して、ハードウェア節約仮説では、密集配列によるネイティブ量子ゲートを回路構造とし、変分構造は量子ハードウェア上で実現しやすいという利点があるが、表現能力や基底状態への近似能力が不十分な場合は多い。本出願で提供される技術案は、上記の矛盾を見事に解決できる変分量子-ニューラルネットワークハイブリッド固有値ソルバー(Variational Quantum Neural Network Hybrid Eigensolver、VQNHEと略称する)と呼ばれる。ニューラルネットワークによってサポートされるユニバーサル非ユニタリ後処理により、浅い変分量子回路でも物理的/化学的精度要求を超越する基底状態エネルギーの近似を強化することができる。したがって、このソリューションは、現段階の量子ハードウェアでの応用に特に適しており、結果として、効果的な量子優位性の実証と商業化を加速化する。
【0035】
また、本出願で提供される技術案は、短中期的に量子ハードウェアの評価と実際の生産に適用され得る。その応用には、凝縮物質物理学および量子化学問題におけるハミルトニアンからの様々な基底状態のシミュレーションおよびソルビングを含むが、それらに限定されない。また、本出願で提供される技術案は、励起状態探索や量子時間依存進化など、他の変分量子アルゴリズムによってサポートされるタスク上でさらに役割を果たすことも期待されている。さらに、本出願で提供される技術案では、ニューラルネットワークモデルをさらに最適化することによって、アプリオリノイズモデルなしで量子誤り訂正効果がある程度で実現され得ることから、NISQ時代における本提案の巨大な潜在力が解放される。このアルゴリズムはVQE拡張の汎用ソリューションとして使用され得、一般的なVQEと同じな量子リソースが消費されるため、任意のVQEプログラム(システムアーキテクチャ全体における測定推定プロセスを実行するために使用される)でも、VQNHEフレームワークにシームレスに移植でき、このフレームワークは量子クラウドサービスとして提供および呼び出すことができ、且つ非常に簡単なVQE拡張のAPI(Application Programming Interface、アプリケーションプログラミングインターフェイス)にカプセル化できる。さらに、このソリューションは量子構造探索法と組み合わせて、VQNHEに適した量子回路構造をさらに適応的に構築することができる。
【0036】
本出願の一の例示的な実施例で提供されるVQNHEフレームワークは、
図1に示すように、パラメータ化された量子回路(PQC)10、ニューラルネットワーク20、およびオプティマイザ30を含む。その中、ニューラルネットワーク20およびオプティマイザ30は、コンピューター機器に配置された機能モジュールであり得、オプティマイザ30は、オプティマイザモジュールと呼ばれることもある。本出願の実施例では、コンピューター機器は、プロセッサがコンピュータープログラムを実行することで当該方法を実現する、格納および演算能力を有する古典コンピューターであり得る。パラメータ化された量子回路10は、n個の量子ビットの入力量子状態を変換処理することによって、このn個の量子ビットの出力量子状態を取得するために用いられ、ここで、nは正の整数である。このn個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、kは正の整数である。ニューラルネットワーク20は、このn個の量子ビットの出力量子状態を後処理するために用いられる。ニューラルネットワーク20による後処理結果に基づいて、k個のパウリ文字列のエネルギー期待値を取得し、次に、ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算する。オプティマイザ30は、ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、パラメータ化された量子回路10のパラメータおよびニューラルネットワーク20のパラメータを調整するために用いられる。ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、収束条件を満たしたハミルトニアンのエネルギー期待値を、ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0037】
図1の左上隅にあるパラメーター化された量子回路(PQC)10は、従来のVQEフレームワークと一致し、それから出力された波動関数|ψ>は、ニューラルネットワークの後処理演算子
【数10】
の作用を受けて、強化された量子-ニューラルネットワークハイブリッド波動関数
【数11】
を得る。
【数12】
に対応するハミルトニアンのエネルギー期待値を測定、推定するために、次の方法を利用することができる。即ち、上記k個のパウリ文字列のそれぞれについて、当該パウリ文字列に対応する測定基底上でのn個の量子ビットの出力量子状態のビット文字列をそれぞれに測定し、ニューラルネットワーク20を介して当該ビット文字列に応じて、当該パウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力し、そして、それらのメタデータに基づいて、当該パウリ文字列のエネルギー期待値を算出し、最後に、k個のパウリ文字列のエネルギー期待値に対して加算処理を行うことによって、ハミルトニアンのエネルギー期待値を得る。ハミルトニアンのエネルギー期待値を得ると、パラメータ並進と逆伝播をそれぞれ応用して、パラメーター化量子回路10のパラメータθとニューラルネットワーク20のパラメータφに対するエネルギー期待値の導関数を計算することができる。この導関数情報を通じて、古典機械学習コミュニティから開発された勾配によるオプティマイザ30(Adamなど)を使用して、相応するパラメータを更新することができ、それによって、得られたエネルギ期待値が収束するまで、量子‐古典ハイブリッドコンピューティングパラダイムの1反復を完了することができ、その値は、相応するシステムのハミルトニアンの基底状態の近似推定値として使用されてもよい。
【0038】
図2は、本出願の一実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定方法のフローチャートである。この方法は、
図1に示されるVQNHEフレームワークに適用され得、例えば、この方法の各ステップの実行本体はコンピューター機器であり得る。この方法は、次のステップ(210~240)を含むことができる。
【0039】
ステップ210において、パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる当該n個の量子ビットの出力量子状態を取得し、ここで、当該n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数、kは正の整数である。
【0040】
本出願の実施例では、パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理することで、当該n個の量子ビットの出力量子状態を取得する。
【0041】
パラメータ化された量子回路の入力量子状態は、通常、全ゼロ状態、均一重ね合わせ状態、または試行状態とも呼ばれるハートリー・フォック(Harttree-Fock)状態を使用することができる。ターゲット量子系のハミルトニアンは、k個のパウリ文字列の直積に分解でき、kは通常、1よりも大きい整数であるが、特別な場合において、kは1と等しいこともある。つまり、ターゲット量子系のハミルトニアンは、1つのパウリ文字列として見なすことができる。したがって、VQEフレームワークでは、ターゲット量子系の出力量子状態を、パラメータ化された量子回路の出力で近似し、パラメータ化された量子回路の出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値を測定して推定し、且つこのエネルギー期待値の最小化を最適化の目標として、パラメータ化された量子回路のパラメータを最適化し続け、当該出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値が最小値に近づくようにその出力量子状態を調整し、最終的に当該ターゲット量子系の基底状態エネルギーを取得する。
【0042】
ステップ220において、ニューラルネットワークを使用して当該n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、当該ニューラルネットワークによる後処理結果に従ってハミルトニアンのエネルギー期待値を算出する。
【0043】
本出願で提供されるVQNHEフレームワークでは、ニューラルネットワークを使用して、パラメータ化された量子回路によって出力される波動関数を後処理し、このニューラルネットワークは一般関数近似器として機能することができ、Jastrow因子に比べて、より強い表現能力と基底エネルギー近似能力を有するため、基底状態エネルギーの推定精度の向上に寄与する。
【0044】
幾つかの実施例において、ステップ220は、以下のサブステップを含む。
【0045】
1、ターゲット量子系のハミルトニアンを分解してなるパウリ文字列と、ニューラルネットワークに対応する後処理演算子を分解してなるパウリ文字列とに応じて、ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成する。
【0046】
任意選択で、ニューラルネットワークに対応する後処理演算子に対してテイラー展開を行うことで、t個のパウリ文字列を取得し、ここで、tは正の整数であり、当該t個のパウリ文字列と、ターゲット量子系のハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列とに対して直積演算を行うことで、ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成する。ここで、ターゲット量子系の等価ハミルトニアンは、それに対応するパウリ文字列の直積である。
【0047】
任意選択で、ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列の最大数は、t×t×kである。
【0048】
2、上記等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列のそれぞれについて、当該パウリ文字列に対応する測定基底上でのn個の量子ビットの出力量子状態のビット文字列を測定で取得する。
【0049】
3、上記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するビット文字列に応じて、当該複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を算出する。
【0050】
4:当該複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値に応じて、ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算する。
【0051】
測定基底Zを例にとると、ニューラルネットワークに対応する後処理演算子
【数13】
のテイラー展開は以下通りであ、即ち、
【数14】
であり、ここで、c
ijk...はZ
iZ
jZ
k...に対応する係数を表し、且つc
ijk...はニューラルネットワークのパラメータに基づいて決定され、Z
jはi番目の量子ビット上のZパウリ演算子であり、Z
jはj番目の量子ビット上のZパウリ演算子であり、Z
kはk番目の量子ビット上のZパウリ演算子であり、以上のように類推する。上記のテイラー展開によって、指数関数的に多いパウリ文字列を得ることができ、つまり、tは、量子ビットの数nと指数関数的に関連付けられている。ターゲット量子系の等価ハミルトニアンはt個のパウリ文字列、ターゲット量子系のハミルトニアンおよびt個のパウリ文字列の直積と等しく、ターゲット量子系のハミルトニアンはk個のパウリ文字列に分解され得るため、最大でt×t×k個のパウリ文字列の各々に対応するエネルギー期待値を測定する必要がある。このt×t×k個のパウリ文字列のそれぞれについて、複数回の測定をそれぞれ行い、各測定で得られたビット文字列に基づいてエネルギー計算結果を取得し、その後、この複数回の測定で得られたエネルギー計算結果を平均化することにより、当該パウリ文字列のエネルギー期待値を得る。PQCの出力量子状態における上記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンのエネルギー期待値は、後処理波動関数におけるターゲット量子系の元のハミルトニアンのエネルギー期待値と等しい。したがって、ターゲット量子系の元のハミルトニアンのエネルギー期待値を計算することは、その等価ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算することに想到する。当該等価ハミルトニアンのエネルギー期待値は、
【数15】
で表され、ここで
【数16】
は、t×t×k個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果に対応する。例えば、t×t×k個のパウリ文字列のエネルギー期待値を加算すれば、当該等価ハミルトニアンのエネルギー期待値を得る。なお、上記加算は、直接加算であってもよいし加重加算であってもよいが、本出願では、それを限定しない。
【0052】
本出願の実施例では、ニューラルネットワークの具体的な構造は限定されず、単純な全結合構造であってもよいし、他の比較的複雑な構造であってもよく、本出願では、それを限定しない。
【0053】
ステップ230において、ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、パラメータ化された量子回路のパラメータおよびニューラルネットワークのパラメータを調整する。
【0054】
任意選択で、ハミルトニアンのエネルギー期待値に対するパラメータ化された量子回路のパラメータおよびニューラルネットワークのパラメータの導関数を別々に計算する。次に、ハミルトニアンのエネルギー期待値を最小に近づけるように、当該導関数情報に基づいて、勾配降下法によりパラメータ化された量子回路のパラメータとニューラルネットワークのパラメータをそれぞれ調整する。その中、パラメーター化量子回路のパラメータ最適化プロセスとニューラルネットワークのパラメータ最適化プロセスは、同時に実行されてもよいし、順次実行されてもよいが、本出願では、それを限定しない。
【0055】
ステップ240において、ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、収束条件を満たしたハミルトニアンのエネルギー期待値を、ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0056】
最後に、当該ハミルトニアンのエネルギー期待値の最小値を、ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0057】
本出願の実施例では、ニューラルネットワークを使用してパラメータ化された量子回路によって出力される波動関数を後処理し、このニューラルネットワークは一般関数近似器として機能することができるため、Jastrow因子に比べて、より強い表現能力と基底エネルギー近似能力を有し、基底状態エネルギーの推定精度の向上に寄与する。
【0058】
本出願の別の例示的な実施例で提供されるVQNHEフレームワークは、
図3に示すように、パラメータ化された量子回路(PQC)10、測定回路40、ニューラルネットワーク20、およびオプティマイザ30を含む。その中、ニューラルネットワーク20およびオプティマイザ30は、コンピューター機器に配置された機能モジュールであり得、オプティマイザ30は、オプティマイザモジュールと呼ばれることもある。本出願の実施例では、コンピューター機器は、プロセッサがコンピュータープログラムを実行することで当該方法を実現させる、格納および計算能力を有する古典コンピューターであり得る。測定回路40はkグループの測定回路を備え、当該kグループの測定回路は、ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列と一対一対応する。パラメータ化された量子回路10は、n個の量子ビットの入力量子状態を変換処理することで、当該n個の量子ビットの出力量子状態を得るために用いられ、ここで、nは正の整数である。当該n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、ここで、kは正の整数である。当該k個のパウリ文字列のうちのターゲットパウリ文字列について、当該ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路は、n個の量子ビットの出力量子状態に対してターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行することによって、変換後の出力量子状態を取得するために用いられる。ニューラルネットワーク20は、当該変換後の出力量子状態を後処理するために用いられる。ニューラルネットワーク20による後処理結果に基づいて、ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を得る。k個のパウリ文字列に対して、当該操作をそれぞれ実行することで、当該k個のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を取得し、そして、加算してハミルトニアンのエネルギー期待値を得る。オプティマイザ30は、ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、パラメータ化された量子回路10のパラメータおよびニューラルネットワーク20のパラメータを調整するために用いられる。ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、収束条件を満たしたハミルトニアンのエネルギー期待値を、ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0059】
図4は、本出願の別の実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定方法のフローチャートである。この方法は、
図3に示されるVQNHEフレームワークに適用され得、例えば、この方法の各ステップの実行本体はコンピューター機器であり得、コンピューター機器はプロセッサがコンピュータープログラムを実行することで当該方法を実現させる、格納および計算能力を有する古典コンピューターであり得る。この方法は、次のステップ(410~480)を含むことができる。
【0060】
ステップ410において、パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる当該n個の量子ビットの出力量子状態を取得し、ここで、当該n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数である。
【0061】
本実施例では、ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を直接計算し、次に、当該k個のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値に応じてターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値を算出する。任意選択で、当該k個のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を加算処理し、得られた加算結果を、ターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値とする。なお、ここでの加算処理は、直接加算であってもよいし、加重加算であってもよいが、本出願では、それを限定しない。
【0062】
上記の実施例では、ターゲット量子系の等価ハミルトニアンを分解してなる複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー値期待を計算し、当該複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を加算処理することによって、等価ハミルトニアンのエネルギー期待値を取得し、当該等価ハミルトニアンのエネルギー期待値をターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値とする。この方法は、最大でt×t×k個のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を計算する必要があるため、複雑で非効率的である。一方、本実施例で提供される方法は、測定回路を導入することによって、k個のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を計算するだけで済むから、簡単で効率的である。
【0063】
ステップS420において、k個のパウリ文字列のうちのターゲットパウリ文字列について、ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路を介してn個の量子ビットの出力量子状態に対してターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行してなる変換後の出力量子状態を取得する。
【0064】
任意選択で、k個のパウリ文字列のうちのターゲットパウリ文字列について、ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路を使用して、n個の量子ビットの出力量子状態に対してターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行し、変換された出力量子状態を得る。
【0065】
ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列について、1つずつ測定して推定することで、そのエネルギー期待値を得る。
図3に示すVQNHEフレームワークは、kグループの測定回路を含み、当該kグループの測定回路は、k個のパウリ文字列と一対一対応する。ターゲットパウリ文字列は、当該k個のパウリ文字列のうちのいずれか1つであってもよく、ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を測定して推定する場合、当該ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路を使用して、パラメータ化された量子回路の出力量子状態に対して、ターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行し、変換された出力量子状態を得る。このような変換ステップは、測定推定過程におけるリソース消費の削減を目的とし、具体的な原理は、下記の導出と分析を参照されたい。
【0066】
例示的な実施例では、ターゲットパウリ列に対応する測定回路は、符号量子ビットを除く非符号量子ビットに対応する量子ゲートを含み、非符号量子ビットが同一の測定基底で測定されるようにし、ここで、符号量子ビットは、n個の量子ビットのうちターゲットパウリ文字列における1つのターゲットパウリ演算子に対応する量子ビットであり、当該符号量子ビットに対応する測定基底は、ターゲットパウリ文字列における符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される。各々の非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、2量子ビットゲートであり、符号量子ビットと非符号量子ビットの両方に同時に作用する。
【0067】
図5に示す測定回路を例にとると、ターゲットパウリ文字列はI
0X
1X
2Y
3I
4であり、その中のI演算子が無視され得るため、当該ターゲットパウリ文字列はX
1X
2Y
3と表記されることができる。測定基底Z上で測定することが想定された場合、2番目の量子ビット(パウリ演算子X
1に対応する)は符号量子ビットとされ、他の量子ビットは非符号量子ビットとされてもよい。この場合、当該ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路50は、2番目の量子ビット(即ち、符号量子ビット)および3番目の量子ビット(パウリ演算子X
2に対応する)に作用する2ビット制御Xゲート51と、2番目の量子ビット(即ち、符号量子ビット)および4番目の量子ビット(パウリ演算子Y
3に対応する)に作用する2ビット制御Yゲート52を含む。また、符号量子ビットに対応する測定基底は、ターゲットパウリ文字列における当該符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される。この例では、2番目の量子ビットは符号量子ビットであり、パウリ演算子X
1に対応し、したがって、測定基底Xに対応する。
【0068】
任意選択で、上記同一の測定基底は、第1のパウリ演算子に対応する測定基底であり、ターゲットパウリ演算子は、第2のパウリ演算子または第3のパウリ演算子であり、ここで、第1のパウリ演算子、第2のパウリ演算子および第3のパウリ演算子は互いに異なり、且つ第1のパウリ演算子、第2のパウリ演算子および第3のパウリ演算子のうちのいずれか1つは、パウリX演算子、パウリY演算子、およびパウリZ演算子のうちの1つである。つまり、上記同一の測定基底が測定基底Xである場合、符号量子ビットは、パウリYまたはZ演算子に対応する一方の量子ビットであり、当該同一の測定基底が測定基底Yである場合、符号量子ビットは、パウリXまたはZ演算子に対応する一方の量子ビットであり、当該同一の測定基底が測定基底Zである場合、符号量子ビットは、パウリXまたはY演算子に対応する一方の量子ビットである。
【0069】
任意選択で、非符号量子ビットについて、非符号量子ビットがターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、当該非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、2ビット制御Xゲートであり、非符号量子ビットがターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、当該非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、2ビット制御Yゲートであり、または、非符号量子ビットがターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、当該非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、2ビット制御Zゲートである。
【0070】
任意選択で、符号量子ビットについて、符号量子ビットがターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、当該符号量子ビットに対応する測定基底は、パウリX演算子に対応する測定基底であり、符号量子ビットがターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、当該符号量子ビットに対応する測定基底は、パウリY演算子に対応する測定基底であり、符号量子ビットがターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、当該符号量子ビットに対応する測定基底は、パウリZ演算子に対応する測定基底である。
【0071】
ステップ430において、指定された測定基底上での変換後の出力量子状態のビット文字列を測定で取得する。
【0072】
指定された測定基底のグループにおいて、符号量子ビットに対応する測定基底を除いて、他の非符号量子ビットに対応する測定基底は同じである。例えば、
図5において、符号量子ビットは測定基底Xに対応し、他の非符号量子ビットはいずれも測定基底Zに対応する。
【0073】
ステップS440において、ニューラルネットワークを介して、当該ビット文字列に応じて、ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力する。
【0074】
測定されたビット文字列をニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークは順方向演算を行い、ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力する。
【0075】
ステップS450において、当該メタデータに応じて、ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を算出する。
【0076】
任意選択で、次の式に従って、ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値
【数17】
を計算する。
【数18】
その中、fはニューラルネットワークを表し、s
0は符号量子ビットに対応する測定結果(その値が0または1である)を表し、sはビット文字列を表し、0s
1:n-1は、ビット文字列sにおける符号量子ビットに対応するビットの値を0に設定した際に得られたビット文字列を表し、
【数19】
は、ビット文字列sにおける符号量子ビットに対応するビットを1に設定し、且つターゲットパウリ文字列に応じて、他のビットに対して対応するビット反転を実行してなるビット文字列を表す。いわゆるビット反転とは、0を1に、1を0に変換することである。
【0077】
図5を例にとると、ビット文字列sはs
0s
1s
2s
3s
4であり、符号量子ビットは2番目の量子ビットであるため、ビット文字列sにおける符号量子ビットに対応するビットの値を0に設定した際に得られたビット文字列0s
1:n-1はs
00s
2s
3s
4であり、ビット文字列sにおける符号量子ビットに対応するビットの値を1に設定し、他のビットの値をビット反転してなるビット文字列
【数20】
は
【数21】
である。s、0s
1:n-1および
【数22】
をそれぞれニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークは、f(s)、
f(0s
1:n-1)及び
【数23】
の値を出力し、次に、上記数式に代入すると当該パウリ文字列X
1X
2Y
3のエネルギー期待値
【数24】
を計算でき、即ち、
【数25】
である。
【0078】
ステップS460において、k個のパウリ文字列のエネルギー期待値に応じて、ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算する。
【0079】
例えば、k個のパウリ文字列のエネルギー期待値を加算することで、ハミルトニアンのエネルギー期待値を取得する。なお、上記加算は、直接加算であってもよいし加重加算であってもよいが、本出願では、それを限定しない。
【0080】
ステップ470において、ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、パラメータ化された量子回路のパラメータおよびニューラルネットワークのパラメータを調整する。
【0081】
ステップ480において、ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、収束条件を満たしたハミルトニアンのエネルギー期待値を、ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0082】
ステップS470~S480は、
図2の実施例におけるステップS230~S240と同じであり、具体的には、上記の説明を参照でき、本実施例では再び繰り返さない。
【0083】
例示的な実施例では、測定回路の構造をさらに簡素化するために、ターゲットパウリ文字列における非符号量子ビットに対応するパウリ演算子が、上記同一の測定基底に対応するパウリ演算子と同じである場合、当該非符号量子ビットに対応する量子ゲットは、非符号量子ビットに対応する測定結果に対応する符号で等価的に置き換えられる。
【0084】
図6を例にとると、ターゲットパウリ文字列はI
0I
1Y
2Z
3X
4であり、その中のI演算子が無視され得るため、当該ターゲットパウリ文字列はY
2Z
3X
4と表記されることができる。測定基底Z上で測定することが想定された場合、3番目の量子ビット(パウリ演算子Y
2に対応する)は符号量子ビットとされ、他の量子ビットは符号量子ビットとされる。この際、当該ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路60は、3番目の量子ビット(即ち、符号量子ビット)および4番目の量子ビット(パウリ演算子Z
3に対応する)に作用する2ビット制御Zゲートと、3番目の量子ビット(即ち、符号量子ビット)および5番目の量子ビット(パウリ演算子X
4に対応する)に作用する2ビット制御Xゲート61を含む。しかし、測定回路60の構造をさらに簡素化するために、上記の3番目の量子ビット(即ち、符号量子ビット)および4番目の量子ビット(パウリ演算子Z
3に対応)に作用する2ビット制御Zゲートを省略し、当該4番目の量子ビットに対応する測定結果s
3に対応する記号1-2s
3を使用して等価的に置き換えることができる。
【0085】
等価的に置き換えなければ、当該パウリ文字列Y
2Z
3X
4のエネルギー期待値の計算公式は、
【数26】
となるが、等価的に置き換えられた後、当該パウリ文字列のエネルギー期待値の計算公式は、
【数27】
となる。
【0086】
次に、測定回路を追加して測定推定過程中のリソース消費を削減する原理について導き出したり、分析したりする。
【0087】
後処理演算子の非ユニタリ性質によって、最適化する必要がある目標は、正規化されたエネルギー期待値
【数28】
であり、ここで、
【数29】
は任意のパウリ文字列である)。ハミルトニアンのエネルギー期待値は、常に複数のパウリ文字列のエネルギー期待値の単純加算に分解できるので、本測定推定手法は、単一のパウリ文字列の期待値の推定問題を解決すれば済む。
【0088】
上記式における分母
【数30】
について、
【数31】
は、測定基底上でのパラメータ化された量子回路PQCによって出力された波動関数の確率振幅を表す。この公式に対応する実現スキームは非常に簡単であり、PQC測定基底でビット文字列sを直接測定して得て、その後、複数回の測定結果の|f(s)|
2の平均値を計算すればよく、f(s)は、ニューラルネットワークfがビット文字列sのを入力された際に出力された値を表す。
【0089】
PQC測定基底が測定基底Zであることを例にとると、推定すべきパウリ文字列
【数32】
にパウリZ演算子(任意選択でI演算子
【数33】
をさらに含む)のみが含まれる場合、つまり
【数34】
とされた場合(ここで、s及びs’は2つのビット文字列を表し、
【数35】
はクロネッカー関数であり、s及びs’が同じである場合のみに1、それ以外の場合は0であり、H
sは、sに対応する基底でのパウリ文字列の期待値である)、上記式中の分子について、
【数36】
を挙げる。その測定スキームと分母の推定とは完全に同様であり、PQC測定基底でビット文字列sを測定して得た後に、|f(s)|
2H
sの期待値を計算する。
【0090】
従来から指数関数的なリソースの消費が必要だと考えられてきたVQE後処理の実際の難点は、パウリ文字列
【数37】
にパウリXまたはY演算子が含まれている場合に生じる。最も直接的な観点からみれば、後処理による強化効果を計算する必要があるため、ニューラルネットワークの後処理は測定基底Zを基として構築されるので、すべての量子ビットは、測定基底Z上でビット文字列sを測定して得て、その後、ニューラルネットワークに入力してf(s)の値を計算する必要がある一方、パウリXまたはY演算子を含む1つのパウリ文字列は、測定基底XまたはY上で測定して対応する量子ビットの相応結果を得る必要がある。つまり、ここで、同一の測定における幾つかの量子ビットのXとZの値を同時に取得することが求められているが、両者は交換不可能であるため(即ち、XZ≠ZX)同時に取得できないという矛盾が存在しており、これは、以前の実現ソリューションにおいて指数関数的なリソースを消費する必要がある理由でもある。
【0091】
非ユニタリ後処理の指数関数的な加速を実現するために、パウリ文字列の具体的な数学的構造が考察される。本出願では、パウリ文字列におけるXまたはY演算子に対応する特定の量子ビットを符号量子ビットと定義し、公式に反映する便宜上、当該符号量子ビットを0番目のビットと表記し、対応する測定結果をs
0と表記する。
【数38】
がパウリ文字列の作用下でのビット文字列の変換に対応すると定義した際、
【数39】
であり、ここで、S(s)は位相因子に対応し、取り得る値は具体的なパウリ演算子に依存し、±1、±iのうちの1つであり得る。
【数40】
を考慮すると、
【数41】
を挙げるが、パウリ文字列の形式は、
【数42】
である。ここでの加算では、符号量子ビットが0に固定されたままになることに留意し、このような加算は、後でs∈{0,1}
n-1と簡単に表記される。
【0092】
当該パウリ文字列のすべての固有値は±1であり、対応する各2
n-1の固有状態は、それぞれに次の通りである。
【数43】
【0093】
後処理用のニューラルネットワークの出力f(s)が実数であることを考慮すると(複素数の場合については以下で説明する)、次の式が得られる。
【数44】
【0094】
最後の確率振幅
【数45】
は、パウリ文字列の固有状態基底でのPQC出力波動関数の確率振幅である。この基底のグループでの測定を実現するには、PQC(Uで表される)の後に追加する測定回路(Vで表される)を導入する必要があるが、
【数46】
とすれば、正に
【数47】
がある。つまり、測定回路V、これに対応する
【数48】
を構築する必要がある。このような回路の構造ソリューションは以下の通りである。
【0095】
1.パウリ文字列に含まれる符号量子ビット以外の非符号量子ビットには、2ビット制御X/Y/Zゲートが適用され、具体的な選択は、対応するビットの演算子の種類に対応し、制御ビットはすべて符号量子ビットである。
【0096】
任意選択で、ターゲットパウリ文字列における非符号量子ビットに対応するパウリ演算子が、上記の同一の測定基底に対応するパウリ演算子と同じである場合、当該非符号量子ビットに対応する2ビット量子ゲートは、当該非符号量子ビットに対応する測定結果に対応する符号で等価的に置き換えられるため、測定回路の構造の簡素化に寄与する。
【0097】
2.符号量子ビットを除くすべての非符号量子ビットは同一の測定基底で測定されるが、符号量子ビットに対応する測定基底は、パウリ文字列における符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される。
【0098】
上記の理論的導出および実験ソリューション構築から分かるように、VQEに比べて、m-1個の2ビット量子ゲートという追加の量子リソースのみが必要とされ、その中、非符号量子ビットに対応する同一の測定基底が測定基底Zである場合、mは、対応するパウリ文字列に含まれるパウリXおよびY演算子の数である(他の場合も同様である)。一般の短距離相互作用の場合、この数は通常O(1)のオーダーである。したがって、VQNHEフレームワーク全体が指数時間を必要としないかを分析する必要があるのは、測定誤差の影響だけである。次に、現在のソリューションに多項式リソースのみが必要であると確実に結論付けるために、期待値の測定推定によるランダム誤差について分析する。
【0099】
標準のVQEフレームワークの場合、測定誤差は、
【数49】
として推定される。
ここで、pは、パウリ文字列が+1に対応する確率である。パウリ文字列の推定精度が1-εとなるように、必要な測定回数はN=4p(1-p)/ε
2である。測定が最も困難な期待値が0、p=0.5である場合について、必要な測定回数は1/ε
2のオーダーである。
【0100】
VQNHEフレームワークによる測定誤差推定は、分子分布の期待値nと分母分布の期待値dの比で構成され、次のようになる。
【数50】
その中、δnは分子分布の期待値に対応する標準偏差であり、δdは分母分布の期待値に対応する標準偏差である。ニューラルネットワークによる後処理の出力値が1/r~rの範囲に制限されていることを考慮すると、1/d<r
2、δd<r
2/2、
【数51】
となる。まとめると、次のようになる。
【数52】
つまり、VQNHEの場合に、対応する精度を達成するために必要な測定回数の理論的な上限は9r
8/4ε
2であり、この数値はVQEと比べて、ニューラルネットワークの関数範囲の多項式のみに依存し、且つシステム系のサイズとは関係しない。したがって、VQNHEは量子ハードウェアの方で効率的に実現されることができる。この理論の上限は比較的緩く、実際の問題で必要な追加測定回数はこの数値よりもはるかに小さいことに留意されたい。
【0101】
さらに、以上で、主に、ニューラルネットワークの出力f(s)が実数である場合でのVQNHEフレームワークによる理論導出および実験ソリューションについて説明した。ニューラルネットワークの出力f(s)が複素数を使用する場合について、本出願で提供されるVQNHEフレームワークによって高効率的に完了することができ、対応する導出は次のようになる。
【0102】
【数53】
とし、分子の推定を以下の2つの部分に分ける。
【数54】
【0103】
実部に関連する部分については、測定および推定は上記の説明と同じであり、因子が
【数55】
であり実部をとる点だけで相違する。
【0104】
虚部に関連する部分については、同様に、基底の別のグループに移行して測定する。
【数56】
【0105】
PQCの出力状態の確率振幅を拡張するための新しい基底は次の通りである。
【数57】
【0106】
同様に、
【数58】
となるように、測定回路V’を構築することが求められている。この測定回路V’の構成規則は実数の場合と類似するが、パウリ文字列における符号量子ビットがY(X)演算子である場合、最後に符号量子ビットX(-Y)の基底上で測定する点だけで相違する。
【0107】
本出願の実施例では、PQCの後に測定回路を追加し、この測定回路によりPQCの出力量子状態に対してウリ文字列に対応する変換処理を実行することで、変換後の出力量子状態を取得し、このような変換は、測定推定過程におけるエネルギー消費を削減できるため、多項式リソースの消費下で、パウリ文字列、さらに一般ハミルトニアンの測定や不偏推定を実現することができる。
【0108】
以下、本出願で提供されるVQNHEフレームワークを具体的なモデルに適用して検討するケースについて例示的に説明する。
【0109】
量子スピンモデルと分子モデルとの2つのモデルの物性物理学と量子化学分野における典型的な問題について別々に検討する。このVQNHEフレームワークを実際の量子ハードウェアで実行する効果をさらに展示する。
【0110】
ケース1:横磁場イジングモデルとハイゼンベルグモデルでのVQNHEフレームワークによる計算。
【0111】
VQNHEフレームワークを使用して最適化し、1次元の横磁場イジングモデルと等方性量子ハイゼンベルグモデルの基底状態エネルギー値を計算した。2つのモデルは12のグリッドで計算し、且つ対応するモデルのハミルトニアンパラメータはすべて1とし、周期的境界条件をとる。VQNHE、VQEの結果と厳しい結果との比較は以下の表1に示される。ここで、VQEとVQNHEは、同一のモデルにおいて同じ量子回路構造で計算される。
【0112】
【0113】
ケース2:VQNHEフレームワークによるLiH(水素化リチウム)分子の解離曲線の計算。
【0114】
VQNHEフレームワークは、分子エネルギーの計算にも適用され得る。この例では、VQNHEフレームワークを使用して、様々な原子距離に対応するLiH系の基底状態エネルギーを計算する。また、このエネルギー、VQEによって得られたエネルギー、およびハートリー・フォック(Hartree-Fock)平均場近似法によって得られたエネルギーを比較し、結果として、
図7(a)の部分に示されるように、曲線71は、ハートリー・フォック(Hartree-Fock)平均場近似法によって得られたエネルギーに対応し、曲線72は、VQEによって得られたエネルギーに対応し、曲線73は、VQNHEによって得られたエネルギーに対応し、このVQNHEによって得られたエネルギーは厳しい結果とほぼ重ね合わせる。
図7(b)の部分から明らかなように、VQNHEに対応するエネルギー最適化精度は、VQEよりも1オーダー以上高くなっている。この問題について、VQNHEおよびVQEの両方は、対称性がリダクションした4量子ビットの完全活性化空間で計算される。2つのアルゴリズムは、同じハードウェア効率化仮説の量子回路構造を使用し、当該量子回路構造は、
図8に示すようである。
【0115】
ケース3:実際のハードウェアとノイズのあるシミュレーターでのVQNHEフレームワークのパフォーマンスである。
【0116】
測定誤差と量子ハードウェアノイズを有する非理想的な条件でのVQNHEフレームワークのパフォーマンスを考察するために、実際のIBM量子ハードウェアと量子ノイズシミュレーションモデルでVQNHEアルゴリズムを実行した。対応するVQEとVQNHEで得られた結果は
図9に示される。テストモデルは、5グリッド開放境界条件を有する横磁場イジングモデルであり、対応するPQC回路構造は
図10に示すようである。
【0117】
VQNHEフレームワークによって得られた結果は、理想モデルでも実際のハードウェアでも、同じ量の量子リソースを利用するVQEフレームワークよりもはるかに優れることが判明した。これと同時に、同様に8192回に測定したという前提の下で、VQNHE手法は著しく増加する測定誤差を導入することはない。
図9における線91は、実際の基底状態エネルギーと、理想的な条件下でVQNHEが収束したエネルギー(両者はほぼ重ね合わせる)であり、線92は、理想的な条件下でのVQEによる最適化エネルギーである。ここで、測定されたビット文字列に基づく実際のデータを使用し、ニューラルネットワークの後処理部分を再最適化することは、言及に値するであろう。理想的な条件から逸脱した最適なニューラルネットワークは、逆に最低のエネルギー推定値を与えることができることが発見された。つまり、ニューラルネットワークの後処理部分は、部分的な量子ノイズの効果を適応的に考慮することができ、一定のQEM(Quantum Error Mitigation、量子誤り抑制)の自然的特性を備えている。
【0118】
以下、本出願の装置およびシステムに係る実施例であり、前記装置およびシステムに係る実施例は、上記の方法に係る実施例に対応し、同じ発明構想に属する。装置およびシステムに係る実施例で詳細に説明されていない部分については、本出願の方法に係る実施例を参照されたい。
【0119】
図11は、本出願の一実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定装置のブロック図である。この装置は、上記の方法例を実現する機能をを有し、その機能は、ハードウェアによって実現されてもよいし、またはハードウェアが対応するソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。この装置は、コンピューター機器であってもよいし、コンピューター機器に設置されてもよい。
図11に示すように、この装置1100は、状態取得モジュール1110と、後処理モジュール1120と、オプティマイザモジュール1130とを備えることができる。
【0120】
状態取得モジュール1110は、パラメータ化された量子回路を介してn個の量子ビットの入力量子状態を変換処理してなる前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するために用いられ、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数である。
【0121】
後処理モジュール1120は、ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するために用いられる。
【0122】
オプティマイザモジュール1130は、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを調整するために用いられ、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0123】
例示的な実施例では、前記後処理モジュール1120は、
前記ハミルトニアンを分解してなるパウリ文字列と、前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子を分解してなるパウリ文字列とに応じて、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するための分解ユニットと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれについて、前記パウリ文字列に対応する測定基底上での前記n個の量子ビットの出力量子状態のビット文字列を測定で取得するための測定ユニットと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するビット文字列に応じて、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を算出し、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するための計算ユニットと、を含む。
【0124】
任意選択で、前記分解ユニットは、
前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子に対してテイラー展開を行うことで、t個のパウリ文字列を取得し、ここで、tは正の整数である。
前記t個のパウリ文字列と、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列とに対して直積演算を行うことで、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するために用いられる。
【0125】
例示的な実施例では、前記後処理モジュールは、
前記k個のパウリ文字列のうちのターゲットパウリ文字列について、前記ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路を介して前記n個の量子ビットの出力量子状態に対して前記ターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行してなる変換後の出力量子状態を取得するための取得ユニットと、
指定された測定基底上での前記変換後の出力量子状態のビット文字列を測定で取得するための測定ユニットと、
前記ニューラルネットワークを介して、前記ビット文字列に応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力するためのニューラルネットワークユニットと、
前記メタデータに応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を算出し、前記k個のパウリ文字列のエネルギー期待値に応じて前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するための計算ユニットと、を備える。
【0126】
任意選択で、前記ターゲットパウリ列に対応する測定回路は、符号量子ビット以外の前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートを含み、前記非符号量子ビットが同一の測定基底で測定されるようにし、前記符号量子ビットは、前記n個の量子ビットのうち、前記ターゲットパウリ文字列における1つのターゲットパウリ演算子に対応する量子ビットであり、前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記ターゲットパウリ文字列における前記符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される。
【0127】
任意選択で、前記同一の測定基底は、第1のパウリ演算子に対応する測定基底であり、前記ターゲットパウリ演算子は、第2のパウリ演算子または第3のパウリ演算子であり、前記第1のパウリ演算子、前記第2のパウリ演算子および前記第3のパウリ演算子は互いに異なり、且つ、前記第1のパウリ演算子、前記第2のパウリ演算子および前記第3のパウリ演算子のうちのいずれか1つは、パウリX演算子、パウリY演算子、およびパウリZ演算子のうちの1つである。
【0128】
任意選択で、前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、2ビット制御Xゲートであり、または、
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、2ビット制御Yゲートであり、または、
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、2ビット制御Zゲートである。
【0129】
任意選択で、前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、前記パウリX演算子に対応する測定基底であり、または、
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、前記パウリY演算子に対応する測定基底であり、または、
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、前記パウリZ演算子に対応する測定基底である。
【0130】
任意選択で、前記計算ユニットは、次の式に従って、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値
【数59】
を計算するために用いられる。
【数60】
その中、fは、前記ニューラルネットワークを表し、s
0は、前記符号量子ビットに対応する測定結果を表し、sは、前記ビット文字列を表し、0s
1:n-1は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを0に設定してなるビット文字列を表し、
【数61】
は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを1に設定し、且つ他のビットについて前記ターゲットパウリ文字列に従って対応するビット反転を行ってなるビット文字列を表す。
【0131】
任意選択で、前記ターゲットパウリ文字列における前記非符号量子ビットに対応するパウリ演算子が、前記同一の測定基底に対応するパウリ演算子と同じである場合、前記非符号量子ビットに対応する量子ゲットは、前記非符号量子ビットに対応する測定結果に対応する符号で等価的に置き換える。
【0132】
本出願は、ニューラルネットワークを使用してPQCから出力された波動関数を後処理することにより、このニューラルネットワークは一般関数近似器として機能することができ、Jastrow因子と比べて、より強い表現能力と基底エネルギー近似能力を有するため、基底状態エネルギーの推定精度の向上に寄与する。
【0133】
本出願の一例示的な実施例では、パラメータ化された量子回路とコンピューター機器とを含む量子系の基底状態エネルギーの推定システムをさらに提供する。前記コンピューター機器は、後処理モジュールとオプティマイザモジュールとを含む。
【0134】
前記パラメータ化された量子回路は、n個の量子ビットの入力量子状態を変換処理することで、前記n個の量子ビットの出力量子状態を取得するために用いられ、前記n個の量子ビットの出力量子状態におけるターゲット量子系のハミルトニアンのエネルギー期待値は、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列のエネルギー期待値の加算結果であり、nは正の整数であり、kは正の整数である。
【0135】
前記後処理モジュールは、ニューラルネットワークを使用して前記n個の量子ビットの出力量子状態を後処理し、前記ニューラルネットワークによる後処理結果に従って、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を算出するために用いられる。
【0136】
前記オプティマイザモジュールは、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束することを目的として、前記パラメータ化された量子回路のパラメータおよび前記ニューラルネットワークのパラメータを調整するために用いられ、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値が収束条件を満たした場合、前記収束条件を満たした前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を、前記ターゲット量子系の基底状態エネルギーとして決定する。
【0137】
例示的な実施例において、前記後処理モジュールは、
前記ハミルトニアンを分解してなるパウリ文字列と、前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子を分解してなるパウリ文字列とに応じて、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するための分解ユニットと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれについて、前記パウリ文字列に対応する測定基底上での前記n個の量子ビットの出力量子状態のビット文字列を測定で取得するための測定ユニットと、
前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するビット文字列に応じて、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値を算出し、前記複数のパウリ文字列のそれぞれに対応するエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するための計算ユニットと、を含む。
【0138】
任意選択で、前記分解ユニットは、
前記ニューラルネットワークに対応する後処理演算子に対してテイラー展開を行うことで、t個のパウリ文字列を取得し、ここで、tは正の整数であり、
前記t個のパウリ文字列と、前記ハミルトニアンを分解してなるk個のパウリ文字列とに対して直積演算を行うことで、前記ターゲット量子系の等価ハミルトニアンに対応する複数のパウリ文字列を生成するために用いられる。
【0139】
例示的な実施例では、前記システムは、kグループの測定回路をさらに含み、前記後処理モジュールは、測定ユニット、ニューラルネットワークユニットおよび計算ユニットを含み、前記kグループの測定回路と前記k個のパウリ文字列とは、一対一対応し、
前記ターゲットパウリ文字列に対応する測定回路は、前記n個の量子ビットの出力量子状態に対して前記ターゲットパウリ文字列に対応する変換処理を実行することで、変換後の出力量子状態を取得するために用いられ、
前記測定ユニットは、指定された測定基底上での前記変換後の出力量子状態のビット文字列を測定で取得するために用いられ、
前記ニューラルネットワークユニットは、前記ニューラルネットワークを介して、前記ビット文字列に応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を計算するためのメタデータを出力するために用いられ、
前記計算ユニットは、前記メタデータに応じて、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値を算出し、前記k個のパウリ文字列のエネルギー期待値に応じて、前記ハミルトニアンのエネルギー期待値を計算するために用いられる。
【0140】
任意選択で、前記ターゲットパウリ列に対応する測定回路は、符号量子ビット以外の前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートを含み、前記非符号量子ビットが同一の測定基底で測定されるようにし、前記符号量子ビットは、前記n個の量子ビットのうち、前記ターゲットパウリ文字列における1つのターゲットパウリ演算子に対応する量子ビットであり、前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記ターゲットパウリ文字列における前記符号量子ビットに対応するパウリ演算子に応じて決定される。
【0141】
任意選択で、前記同一の測定基底は、第1のパウリ演算子に対応する測定基底であり、前記ターゲットパウリ演算子は、第2のパウリ演算子または第3のパウリ演算子であり、ここで、前記第1のパウリ演算子、前記第2のパウリ演算子および前記第3のパウリ演算子は互いに異なり、且つ前記第1のパウリ演算子、前記第2のパウリ演算子および前記第3のパウリ演算子のうちのいずれか1つは、パウリX演算子、パウリY演算子、およびパウリZ演算子のうちの1つである。
【0142】
任意選択で、前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、2ビット制御Xゲートであり、または、
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、2ビット制御Yゲートであり、または、
前記非符号量子ビットに対応する量子ゲートは、前記非符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、2ビット制御Zゲートである。
【0143】
任意選択で、前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリX演算子に対応する場合、前記パウリX演算子に対応する測定基底であり、または、
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリY演算子に対応する場合、前記パウリY演算子に対応する測定基底であり、または、
前記符号量子ビットに対応する測定基底は、前記符号量子ビットが前記ターゲットパウリ文字列におけるパウリZ演算子に対応する場合、前記パウリZ演算子に対応する測定基底であるる。
【0144】
任意選択で、前記計算ユニットは、次の式に従って、前記ターゲットパウリ文字列のエネルギー期待値
【数62】
を計算するために用いられる。
【数63】
その中、fは、前記ニューラルネットワークを表し、s
0は、前記符号量子ビットに対応する測定結果を表し、sは、前記ビット文字列を表し、0s
1:n-1は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを0に設定してなるビット文字列を表し、
【数64】
は、前記ビット文字列における前記符号量子ビットに対応するビットを1に設定し、且つ他のビットについて前記ターゲットパウリ文字列に従って対応するビット反転を行ってなるビット文字列を表す。
【0145】
任意選択で、前記ターゲットパウリ文字列における前記非符号量子ビットに対応するパウリ演算子が、前記同一の測定基底に対応するパウリ演算子と同じである場合、前記非符号量子ビットに対応する量子ゲットは、前記非符号量子ビットに対応する測定結果に対応する符号で等価的に置き換える。
【0146】
なお、上述の実施例で提供される装置およびシステムは、その機能を実現する際に、上記の機能モジュールの分割のみを例して説明したが、実際の応用では、必要に応じて、上記の機能は、異なる機能モジュールが完成するように割り当てることができ、即ち、装置の内部構造を異なる機能モジュールに分けることで、上述の全部または一部の機能を完了してもよい。また、上述の実施例で提供される装置およびシステムは方法の実施例と同一の構想に属し、その具体的な実現過程は方法の実施例を参照することができ、ここで再度重複されない。
【0147】
図12は本出願の一実施例で提供されるコンピューター機器の構成の概略図である。当該コンピューター機器はデータ記憶およびコンピューティング機能を備えた任意の電子機器であり得る。当該コンピューター機器は、上記の実施例で提供される量子系の基底状態エネルギーの推定方法を実施するために使用され得る。具体的には、以下の通りである。
【0148】
当該コンピューター機器1200は、中央処理ユニット(例えば、central processing unit (CPU)、a graphics processing unit (GPU)、and a field programmable gate array (FPGA))1201、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)1202およびリードオンリーメモリ(Read-Only Memory、ROM)1203を含むシステムメモリ1204、およびシステムメモリ1204と中央処理ユニット1201とを接続するシステムバス1205を含む。前記コンピューター機器1200は、サーバー内の各部品間の情報伝送を支援するための基本入出力システム(I/O(Input/Output)システム)1206、およびオペレーティングシステム1213、アプリケーションプログラム1214、他のプログラムモジュール1215などを記憶するための大容量ストレージデバイス1207をさらに含む。
【0149】
幾つかの実施例では、当該基本入出力システム1206は、情報を表示するためのディスプレイ1208、ユーザが情報を入力するための例えばマウス、キーボードなどの入力装置1209などを含む。そのうち、当該ディスプレイ1208および入力装置1209はシステムバス1205に接続された入出力コントローラー1210によって中央処理ユニット1201に接続される。当該基本入出力システム1206は、キーボード、マウス、または電子タッチペンなどの複数の他の装置の入力を受信および処理するための入出力コントローラー1210をさらに含む。同様に、入出力コントローラー1210はさらに、表示スクリーン、プリンターまたは他のタイプの出力装置への出力を提供する。
【0150】
当該大容量ストレージデバイス1207は、システムバス1205に接続された大容量記憶コントローラー(図示せず)によって処理ユニット1201に接続される。当該大容量ストレージデバイス1207およびその関連するコンピューター読み取り可能な媒体は、コンピューター機器1200に不揮発性ストレージを提供する。言い換えれば、当該大容量ストレージデバイス1207はハードディスクまたはCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)ドライブのようなコンピューター読み取り可能な媒体(図示せず)を含んでもよい。
【0151】
一般性を失うことなく、コンピューター読み取り可能な媒体は、コンピューター記憶媒体および通信媒体を含み得る。コンピューター記憶媒体は、コンピューター読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実現された揮発性および不揮発性の取り外し可能および取り外し不可能な媒体を含む。コンピューターストレージメディアには、RAM、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-OnlyMemory、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)、フラッシュメモリまたはその他のソリッドステートストレージテクノロジ、CD-ROM、DVD(Digital Video Disc、高密度デジタルビデオディスク)またはその他の光ストレージ、テープカセット、磁気テープ、ディスクストレージ、またはその他の磁気ストレージデバイスを含む。もちろん、当業者であれば、当該コンピューター記憶媒体が前述のものに限定されないことを知ることができる。前述のシステムメモリ1204および大容量ストレージデバイス1207は、まとめてメモリと呼ばれることがある。
【0152】
本出願の各実施形態によれば、当該コンピューター機器1200はさらに、例えばインターネットなどのネットワークを介してネットワーク上のリモートコンピューターに接続され実行されてもよい。即ち、コンピューター機器1200は、当該システムバス1205に接続されるネットワークインタフェースユニット1211を介してネットワーク1212に接続されても良く、或いは、ネットワークインタフェースユニット1211を用いて他のタイプのネットワークまたはリモートコンピューターシステム(図示せず)に接続されると言ってもよい。
【0153】
前記メモリには、コンピュータープログラムがさらに含まれ、当該コンピュータープログラムはメモリに記憶されており、1つまたは複数のプロセッサで実行されることで、前記量子系の基底エネルギーの推定方法を実現させるように配置されている。
【0154】
例示的な実施例では、コンピューター機器のプロセッサによって実行される場合、前記量子系の基底エネルギーの推定方法を実現させるコンピュータープログラムが記憶されているコンピューター読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。
【0155】
任意選択で、前記コンピューター読み取り可能な記憶媒体は、ROM(Read-Only Memory、読み取り専用メモリ)、RAM(Random-Access Memory、ランダムアクセスメモリ)、SSD(Solid State Drives、ソリッドステートハードディスク)、または光ディスクを含み得る。ここで、ランダムアクセスメモリは、ReRAM(Resistance Random Access Memory、レジスタンスランダムアクセスメモリ)およびDRAM(Dynamic Random Access Memory、ダイナミックランダムアクセスメモリ)を含み得る。
【0156】
例示的な実施例では、コンピューター読み取り可能な記憶媒体に格納されたコンピューター命令を含むコンピュータープログラム製品またはコンピュータープログラムをさらに提供する。コンピューター機器のプロセッサは、前記コンピューター読み取り可能な記憶媒体から前記コンピューター命令を読み取り、前記プロセッサは前記コンピューター命令を実行することにより、前記量子系の基底状態エネルギーの推定方法を前記コンピューター機器に実行させる。
【0157】
なお、本文で言及される「複数」は、2つ以上を指すことを理解されたい。「および/または」は、関連付けられたオブジェクトの関連付け関係を説明し、例えば、Aおよび/またはBの3つのタイプの関係があり得ることを示し、これは、Aのみが存在し、AおよびBが同時に存在し、そして、Bのみが存在することを意味し得る。文字「/」は通常、前後の関連オブジェクトが「または」の関係にあることを示す。さらに、本文で説明されるステップの番号は、ステップ間の実行可能な順序を例示的に示すためのものにすぎない。他の幾つかの実施例では、上記のステップは、番号の順序で実行されなくてもよく、例えば、番号が異なる2つのステップは同時に実行されてもよく、或いは、番号が異なる2つのステップは図示とは逆の順序で実行されてもよいが、本出願の実施例はこれについて限定しない。
【0158】
以上は、本発明の例示的な実施例に過ぎず、本出願を制限するものではなく、本出願の精神および原則の範囲内に、行われるいかなる修正、均等置換、改善などは、いずれも、本出願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0159】
10 量子回路
20 ニューラルネットワーク
30 オプティマイザ