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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】塗料ミスト捕集装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 14/43 20180101AFI20240415BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B05B14/43
B01D45/08 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020200001
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087879
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391022658
【氏名又は名称】パーカーエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】渡部 隆郁
(72)【発明者】
【氏名】畠山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 チエリ
(72)【発明者】
【氏名】守中 隆治
(72)【発明者】
【氏名】山本 高弘
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6723677(JP,B1)
【文献】特開2011-206718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023231(US,A1)
【文献】特開昭49-042744(JP,A)
【文献】特表2009-506887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/16-12/36
14/00-16/80
B01D 45/00-45/18
46/00-46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板が、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の横板に、自身のスリットを横板のスリットに整合させて差し込まれ、前記複数の縦板と前記複数の横板とが協働して格子構造体を形成し、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成され、前記格子構造体が箱体に収容され、格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方に出口開口が形成され、格子構造体の格子形状に対峙する箱体の一対の壁面の一方に入口開口が形成され、入口開口は格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の他方に近接して配設されており、入口開口には格子構造体は対峙せず、格子構造体から延長された縦板が対峙していることを特徴とする塗料ミスト捕集装置。
【請求項2】
複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板が、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の横板に、自身のスリットを横板のスリットに整合させて差し込まれ、前記複数の縦板と前記複数の横板とが協働して格子構造体を形成し、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成され、前記格子構造体が箱体に収容され、格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方に出口開口が形成され、格子構造体の格子形状に対峙する箱体の一対の壁面の一方に入口開口が形成され、入口開口は格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の他方に近接して配設されており、入口開口には格子構造体と格子構造体から延長された縦板とが対峙していることを特徴とする塗料ミスト捕集装置。
【請求項3】
格子構造体から延長された縦板には開口は形成されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料ミスト捕集装置。
【請求項4】
複数の細長開口と前記各細長開口を間に挟んで周縁から前記細長開口の長手方向延在長の途中まで延在する複数のスリットとが形成された複数の第1横板と、複数の細長開口と前記各細長開口を間に挟んで周縁から前記細長開口の長手方向延在長の途中まで延在する複数のスリットとが形成された複数の第2横板と、複数の細長開口と前記各細長開口を間に挟んで周縁から前記細長開口の長手方向延在長の途中まで延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板とを備え、第1横板と第2横板とが隙間を隔てて交互に配設されて横板集合体を形成し、横板集合体内において第2横板の隣接する細長開口の間の部位が第1横板の細長開口に対峙すると共に第2横板の細長開口が第1横板の隣接する細長開口の間の部位に対峙し、複数の縦板が隙間を隔てて配設されて縦板集合体を形成し、縦板集合体が自身のスリットを横板集合体のスリットに整列させて横板集合体に差し込まれ、横板集合体と縦板集合体とが協働して格子構造体を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の塗料ミスト捕集装置。
【請求項5】
横板の入口開口の方向へ差し向けられた面と、縦板の両面と、箱体の内面に、塗料ミスト捕集効率を高めるための表面処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の塗料ミスト捕集装置。
【請求項6】
前記表面処理は低内部密度シートの貼付による吸着力増加処理であることを特徴とする請求項5に記載の塗料ミスト捕集装置。
【請求項7】
前記表面処理は防滑塗料の塗布又は目粗し加工による表面粗度増加処理であることを特徴とする請求項5に記載の塗料ミスト捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装ブースに配設される塗料ミスト捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板が、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の横板に、自身のスリットを横板のスリットに整合させて差し込まれ、前記複数の縦板と前記複数の横板とが協働して格子構造体を形成し、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成され、前記格子構造体が箱体に収容され、格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方に入口開口が形成され他方に出口開口が形成されていることを特徴とする塗料ミスト捕集装置が文献1に開示されている。
特許文献1の塗料ミスト捕集装置は、循環水ポンプの駆動電力を必要としない点で従来の湿式塗料ミスト捕集装置に比べて省エネを実現できるという利点と共に、特許文献2に開示された塗料ミスト捕集装置のように板部材を複雑に折り曲げて形成する必要がないという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6723677号公報
【文献】特許第6475241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の塗料ミスト捕集装置においては、格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方に入口開口が形成され他方に出口開口が形成されている。塗装ブース排気経路の直進部に塗料ミスト捕集装置が配設される場合には、箱体の互いに対峙する壁面に入口開口と出口開口とを形成するのが合理的である。しかし、箱体の互いに対峙する壁面に入口開口と出口開口とが形成された塗料ミスト捕集装置を塗装ブース排気経路の屈曲部に配設して所期の機能を発揮させるのは困難である。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板が、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の横板に、自身のスリットを横板のスリットに整合させて差し込まれ、前記複数の縦板と前記複数の横板とが協働して格子構造体を形成し、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成され、前記格子構造体が箱体に収容された塗料ミスト捕集装置であって、塗装ブース排気経路の屈曲部に設置して所期の機能を発揮させることが可能な塗料ミスト捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板が、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の横板に、自身のスリットを横板のスリットに整合させて差し込まれ、前記複数の縦板と前記複数の横板とが協働して格子構造体を形成し、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成され、前記格子構造体が箱体に収容され、格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方に出口開口が形成され、格子構造体の格子形状に対峙する箱体の一対の壁面の一方に入口開口が形成され、入口開口は格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の他方に近接して配設されており、入口開口には格子構造体は対峙せず、格子構造体から延長された縦板が対峙していることを特徴とする塗料ミスト捕集装置を提供する。
また本発明においては、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板が、複数の開口と前記開口を間に挟んで周縁から延在する複数のスリットとが形成された複数の横板に、自身のスリットを横板のスリットに整合させて差し込まれ、前記複数の縦板と前記複数の横板とが協働して格子構造体を形成し、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成され、前記格子構造体が箱体に収容され、格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方に出口開口が形成され、格子構造体の格子形状に対峙する箱体の一対の壁面の一方に入口開口が形成され、入口開口は格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の他方に近接して配設されており、入口開口には格子構造体と格子構造体から延長された縦板とが対峙していることを特徴とする塗料ミスト捕集装置を提供する。
上記塗料ミスト捕集装置は、互いに直交する入口開口と出口開口とを備えているので、塗装ブース排気経路の屈曲部に設置可能である。
格子構造体が入口開口に対峙すると、入口開口を通り格子形状へ向けて格子構造体に流入する塗装ブース排気と、格子形状に平行に格子構造体内を出口開口へ向けて流れる塗装ブース排気が衝突して、格子構造体内の気流が乱れ、塗料ミスト捕集効率が低下する可能性がある。従って、格子構造体は入口開口に対峙しないのが望ましい。一方箱体内で格子構造体を位置決めするために、縦板は格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方から他方まで延在するのが望ましい。格子構造体から縦板を延長すれば、縦板を格子構造体の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方から他方まで延在させることができる。この場合、縦板の延長部が入口開口に対峙することになる。
格子構造体から縦板を延長すると、当該延長部は格子構造ではなくなるので強度が低下する。縦板延長部に横板を配設して、内部に屈曲した空気通路が形成された格子構造体を拡張すれば、縦板延長部の強度低下を防止できる。この結果、格子構造体の一部が入口開口に対峙することになるが、入口開口の寸法に応じて縦板の延長部が長くなる場合には、縦板延長部に横板を配設する必要が生ずる場合もある。
本発明の好ましい態様においては、格子構造体から延びる縦板の延長部には開口は形成されていない。
縦板の延長部は内部に屈曲した空気通路が形成された格子構造体を形成しないので、開口は必要ない。
本発明の好ましい態様においては、複数の細長開口と前記各細長開口を間に挟んで周縁から前記細長開口の長手方向延在長の途中まで延在する複数のスリットとが形成された複数の第1横板と、複数の細長開口と前記各細長開口を間に挟んで周縁から前記細長開口の長手方向延在長の途中まで延在する複数のスリットとが形成された複数の第2横板と、複数の細長開口と前記各細長開口を間に挟んで周縁から前記細長開口の長手方向延在長の途中まで延在する複数のスリットとが形成された複数の縦板とを備え、第1横板と第2横板とが隙間を隔てて交互に配設されて横板集合体を形成し、横板集合体内において第2横板の隣接する細長開口の間の部位が第1横板の細長開口に対峙すると共に第2横板の細長開口が第1横板の隣接する細長開口の間の部位に対峙し、複数の縦板が隙間を隔てて配設されて縦板集合体を形成し、縦板集合体が自身のスリットを横板集合体のスリットに整列させて横板集合体に差し込まれ、横板集合体と縦板集合体とが協働して格子構造体を形成する。
上記構成により、格子構造体内に屈曲した空気通路が形成される。
本発明の好ましい態様においては、横板の入口開口の方向へ差し向けられた面と、縦板の両面と、箱体の内面に、塗料ミスト捕集効率を高めるための表面処理が施されている。
横板の入口開口の方向へ差し向けられた面と、縦板の両面と、箱体の内面に、塗料ミスト捕集効率を高めるための表面処理が施されているので、塗料ミスト捕集効率が向上する。
本発明の好ましい態様においては、前記表面処理は低内部密度シートの貼付による吸着力増加処理である。
本発明の好ましい態様においては、前記表面処理は防滑塗料の塗布又は目粗し加工による表面粗度増加処理である。
吸着力増加処理や表面粗度増加処理を施すことにより、塗料ミスト捕集効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例に係る塗装ミスト捕集装置の一部を構成する格子構造体と、塗装ミスト捕集装置が塗装ブース排気経路の直進部に配設される場合に使用される格子構造体を収容する箱体の、斜視図である。(a)は格子構造体の斜視図であり、(b)は箱体の斜視図である。
図2】格子構造体が備える第1横板の正面図である。
図3】格子構造体が備える第2横板の正面図である。
図4】格子構造体が備える横板集合体の正面図である。
図5】格子構造体が備える縦板の第1部分と第2部分の正面図である。
図6】第1部分と第2部分とで形成された縦板の正面図である。
図7】格子構造体の部分平断面図である。
図8】本発明の実施例に係る塗装ミスト捕集装置を構成する格子構造体と、格子構造体を収容する箱体の、斜視図である。(a)は箱体の斜視図であり、(b)は格子構造体の斜視図である。尚(b)には箱体に格子構造体を収容した時の入口開口5aの輪郭を三点鎖線で示している。
図9】本発明の他の実施例に係る塗装ミスト捕集装置を構成する格子構造体と、格子構造体を収容する箱体の、斜視図である。(a)は箱体の斜視図であり、(b)は格子構造体の斜視図である。尚(b)には箱体に格子構造体を収容した時の入口開口5aの輪郭を三点鎖線で示している。
図10】本発明の他の実施例に係る塗装ミスト捕集装置を構成する格子構造体を収容する箱体の、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1(a)に示すように、本発明の実施例に係る乾式の塗料ミスト捕集装置1は、3枚の第1横板2aと、3枚の第2横板2bと、10枚の縦板3とで構成された格子構造体4を備えている。
図2に示すように、第1横板2aは、互いに所定間隔を隔てて平行に延在する5つの細長開口2aと、細長開口2aを間に挟んで細長開口2aの長手方向一端側の周縁と長手方向他端側の周縁とから細長開口2aの長手方向延在長の途中まで延びる複数のスリット2aとが形成された、ボール紙、厚紙、ダンボール紙等の矩形板紙で形成されている。
図3に示すように、第2横板2bは、互いに所定間隔を隔てて平行に延在する4つの細長開口2bと、細長開口2bを間に挟んで細長開口2bの長手方向一端側の周縁と長手方向他端側の周縁とから細長開口2bの長手方向延在長の途中まで延びる複数のスリット2bとが形成された、ボール紙、厚紙、ダンボール紙等の矩形板紙で形成されている。
図1(a)から分かるように、第1横板2aと第2横板2bとが隙間を隔てて交互に配設されて横板集合体2’を形成している。図4に示すように、横板集合体2’内において、第2横板2bの隣接する細長開口2bの間の部位が第1横板2aの細長開口2aに対峙すると共に、第2横板2bの細長開口2bが第1横板2aの隣接する細長開口2aの間の部位に対峙している。開口2a、2bを正面から見た時に、図4に示すように、スリット2aとスリット2bとは重畳している。
【0008】
図5に示すように、縦板3は、互いに所定間隔を隔てて平行に延在する5つの細長開口3aと、細長開口3aを間に挟んで細長開口3aの長手方向一端側の周縁から細長開口3aの長手方向延在長の途中まで延びる複数のスリット3aとが形成された、ボール紙、厚紙、ダンボール紙等の矩形板紙で形成された第1部分3aと、互いに所定間隔を隔てて平行に延在する5つの細長開口3bと、細長開口3bを間に挟んで細長開口3bの長手方向一端側の周縁から細長開口3bの長手方向延在長の途中まで延びる複数のスリット3bが形成されたボール紙、厚紙、ダンボール紙等の矩形板紙で形成された第2部分3bとで構成されている。第1部分3aと第2部分3bとは対称形状に形成されている。図1(a)、図6に示すように、第1部分3aと第2部分3bとが、前記一端側の周縁を互いに当接させて、縦板3を形成している。
図1(a)から分かるように、10枚の縦板3の第1部分3aが隙間を隔てて配設されて第1縦板集合体3’を形成し、10枚の縦板3の第2部分3bが隙間を隔てて配設されて第2縦板集合体3”を形成している。
【0009】
図1(a)に示すように、第1縦板集合体3’が自身のスリット3aを横板集合体2’のスリット2a、2bに整列させて、細長開口2a、2bの長手方向一端側の周縁から横板集合体2’に差し込まれ、第2縦板集合体3”が自身のスリット3bを横板集合体2’のスリット2a、2bに整列させて、細長開口2a、2bの長手方向他端側の周縁から横板集合体2’に差し込まれており、横板集合体2’と第1縦板集合体3’と第2縦板集合体3”とが協働して、3枚の第1横板2aと、3枚の第2横板2bと、10枚の縦板3とで構成された格子構造体4を形成している。図7に示すように、格子構造体4内に、横板集合体2’、第1縦板集合体3’、第2縦板集合体3”を構成する板紙間の隙間と開口2a、2b、3a、3bとによって屈曲した空気通路が形成されている。
塗装ブース排気経路の直進部に塗料ミスト捕集装置1が配設される場合には、箱体5の互いに対峙する壁面に入口開口5aと出口開口5bとを形成するのが合理的である。しかし、箱体5の互いに対峙する壁面に入口開口5aと出口開口5bとが形成された塗料ミスト捕集装置1を塗装ブース排気経路の屈曲部に配設して所期の機能を発揮させるのは困難である。
図8、9に示すように、塗料ミスト捕集装置1が互いに直交する入口開口5aと出口開口5bとを備えていれば、塗装ブース排気経路の屈曲部に設置して、所期の機能を奏することが可能である。
図8に示す実施例においては、格子構造体4の横板に対峙する箱体5の一対の壁面の一方、具体的には第2横板2bに対峙する壁面に出口開口5bを形成し、格子構造体4の格子形状に対峙する箱体5の一対の壁面の一方に入口開口5aを形成し、入口開口5aを格子構造体4の横板に対峙する箱体5の一対の壁面の他方、具体的には第1横板2aに対峙する壁面に近接して配設した。
格子構造体4が入口開口5aに対峙すると、入口開口5aを通り格子形状へ向けて格子構造体4に流入する塗装ブース排気と、格子形状に平行に格子構造体内を出口開口5bへ向けて流れる塗装ブース排気が衝突して、格子構造4体内の気流が乱れ、塗料ミスト捕集効率が低下する可能性がある。従って、格子構造体4は入口開口5aに対峙しないのが望ましい。一方箱体5内で格子構造体5を位置決めするために、縦板3は格子構造体4の横板に対峙する箱5体の一対の壁面の一方、具体的には出口開口5bが形成された壁面から、格子構造体4の横板に対峙する箱5体の一対の壁面の他方、具体的には第1横板2aに対峙する壁面、まで延在するのが望ましい。格子構造体4から縦板3を延長させれば、縦板3を格子構造体4の横板に対峙する箱体の一対の壁面の一方から他方まで延在することができる。この場合、図8(b)に示すように、一点鎖線で示す縦板の延長部3cが三点鎖線で示す入口開口5aに対峙することになる。
縦板の延長部3cは内部に屈曲した空気通路が形成された格子構造体4を形成しないので開口は必要ない。従って延長部3cは開口無しの板体としている。
第1横板2aと第2横板2bの入口開口5aの方向へ差し向けられた面と、縦板3の両面と、箱体5の内面とに、塗料ミスト捕集効率を高めるための表面処理が施されている。具体的には、不織布やコットン紙等の低内部密度シートの貼付による吸着力増加処理、或いは防滑塗料の塗布や目粗し加工等の表面粗度増加処理が施されている。
【0010】
図8に示す塗料ミスト捕集装置1の作動と作用効果とを説明する。
塗料ミスト捕集装置1は塗装ブース排気経路の屈曲部に配設されている。
図示しない塗装ブースの排気が、図8(a)に白抜矢印で示すように、入口開口5aを通って箱体5へ流入し、隣接する縦板延長部3c間の排気流路内で流線が90度曲がり、図1(a)に白抜矢印で示すように、第1横板2aに向かう排気流を形成して格子構造体4に流入し、図7に示すように、横板集合体2’、第1縦板集合体3’、第2縦板集合体3”を構成する板紙間の隙間と開口2a、2b、3a、3bとが形成する屈曲した空気通路を通過し、直進して、図8(a)に白抜矢印で示すように、出口開口5bを通り箱体5から流出する。前記屈曲した空気通路を通過する際に、横板2a、2bの開口2a、2bに挟まれた部位や、縦板3a、3bの開口3a、3bに挟まれた部位に塗装ブースの排気が衝突し、前記部位に塗料ミストが付着して、塗料ミストが捕集される。塗料ミストが除去された塗装ブースの排気が塗料ミスト捕集装置1から排出される。
塗料ミスト捕集装置1は、循環水ポンプの駆動電力を必要としない点で従来の湿式塗料ミスト捕集装置に比べて省エネを実現できる。
塗料ミスト捕集装置1においては、開口2a、2bとスリット2a、2bとが形成された横板2a、2bに開口3a、3bとスリット3a、3bとが形成された縦板3a、3bを、互いのスリットを整列させて差し込むことにより、複雑な折り曲げ工程を経ることなく塗料ミスト捕集装置が構成されている。
塗装ブース排気が屈曲した空気通路を通過するので、塗装ブース排気と横板2a、2b、縦板3a、3bとの衝突回数が増加し、塗料ミスト捕集効率が向上している。
塗料ミスト捕集装置1は、互いに直交する入口開口5aと出口開口5bとを備えているので、塗装ブース排気経路の屈曲部に設置することが可能である。
第1横板2aと第2横板2bの入口開口5aの方向へ差し向けられた面と、縦板3の両面と、箱体5の内面とに、不織布やコットン紙等の低内部密度シートの貼付による吸着力増加処理、或いは防滑塗料の塗布や目粗し加工等の表面粗度増加処理を施したので、塗料ミスト捕集効率が向上している。
【0011】
格子構造体4から縦板3を延長すると、延長部3cの集合体は格子構造を形成しないので強度が低下する。図9(b)に示すように、一点鎖線で示す縦板延長部3cの集合体に、二点鎖線で示す第2横板2bを配設して、内部に屈曲した空気通路が形成された格子構造体4を拡張することにより、縦板延長部3cの集合体の強度低下を防止できる。この結果、図9(b)に示すように、格子構造体4の一部が三点鎖線で示す入口開口5aに対峙することになるが、入口開口5aの寸法に応じて縦板3の延長部が長くなる場合には、縦板延長部3cの集合体に横板を配設する必要が生ずる場合もある。この場合、格子構造体4の拡張部に含まれる縦板延長部3cには開口を形成するが、拡張された格子構造体4から延びる縦板延長部3cは内部に屈曲した空気通路が形成された格子構造体4を形成しないので開口は不要である。
【0012】
図1(b)の対峙する一対の壁面に入口開口5aと出口開口5bとが形成された箱体5に図1(a)の格子構造体4を収容し、図10に示すように、箱体5の入口開口5aが形成された端部に中空の蓋体6を取り付け、蓋体6の側面に箱体5の入口開口5aに連通する入口開口6aを形成しても良い。
上記構成の塗料ミスト捕集装置1おいては、図10に白抜矢印で示すように、蓋体6の開口6aと箱体5の入口開口5aとを通って格子構造体4に塗装ブース排気が流入し、格子構造体4内の屈曲した空気通路を通過し、出口開口5bを通って箱体5から流出する。蓋体6の入口開口6aと箱体5の出口開口5bとは直交するので、上記構成の塗料ミスト捕集装置1は塗装ブース排気経路の屈曲部に設置可能である。
蓋体6を箱体5の入口開口5aが形成された端部に外嵌合させることにより、蓋体6を箱体5に容易に取り付けることができる。
以上本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されない。例えば、格子構造体4を構成する横板、縦板の枚数や縦横比は、上記実施例のものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、乾式の塗料ミスト捕集装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0014】
1 塗料ミスト捕集装置
2a 第1横板
2b 第2横板
2’横板集合体
3 縦板
3a 縦板の第1部分
3b 縦板の第2部分
3’第1縦板集合体
3” 第2縦板集合体
4 格子構造体
5 箱体
5a、6a 入口開口
5b 出口開口
6 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10