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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/037 20120101AFI20240415BHJP
【FI】
F16H57/037
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023529569
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012846
(87)【国際公開番号】W WO2022270059
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021106196
(32)【優先日】2021-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】小坂 昌広
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127772(JP,A)
【文献】特開2019-138381(JP,A)
【文献】特開2020-128789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと接続するファイナルギアを収容するハウジングを有し、
前記ハウジング内に2つのキャッチタンクを少なくとも有し、
前記ファイナルギアはデファレンシャルケースと一体に回転し、
軸方向視において前記2つのキャッチタンクは前記ファイナルギアとオーバーラップする部分を有し、
軸方向視において前記2つのキャッチタンクは前記モータとオーバーラップする部分を有し、
前記2つのキャッチタンクには互いに異なるオイルレベルが形成される、ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記2つのキャッチタンクは前記モータと前記ファイナルギアとの間に挟まれた部分を有する、ユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
軸方向視において、前記2つのキャッチタンクは互いにオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記ハウジングは、前記2つのキャッチタンクを区画形成するリブを有する、ユニット。
【請求項5】
モータと接続するファイナルギアを収容するハウジングを有し、
前記ハウジング内にキャッチタンクを有し、
前記ファイナルギアはデファレンシャルケースと一体に回転し、
軸方向視において前記キャッチタンクは前記ファイナルギアとオーバーラップする部分を有し、
軸方向視において前記キャッチタンクは前記モータとオーバーラップする部分を有し、
重力方向視において、前記ファイナルギアは前記デファレンシャルケースと前記モータとの間に位置する部分を有し、
重力方向視において、前記ファイナルギアは前記キャッチタンクと前記モータとの間に位置する部分を有し、
軸方向視において、前記キャッチタンクは前記モータ及び前記ファイナルギアとオーバーラップする、ユニット。
【請求項6】
請求項5において、
前記キャッチタンクは前記ファイナルギアと対向し、
前記キャッチタンクの底面は車両前方に向かうほど下方に傾斜する部分を有する、ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動モータの発熱部位を冷却できる減速機(ユニット)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-102502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のユニットの寸法の拡大を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、
モータと接続するファイナルギアを収容するハウジングを有し、
前記ハウジング内に2つのキャッチタンクを少なくとも有し、
前記ファイナルギアはデファレンシャルケースと一体に回転し、
軸方向視において前記2つのキャッチタンクは前記ファイナルギアとオーバーラップする部分を有し、
軸方向視において前記2つのキャッチタンクは前記モータとオーバーラップする部分を有し、
前記2つのキャッチタンクには互いに異なるオイルレベルが形成されるユニット。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、径方向におけるユニットの寸法の拡大が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ユニットを車両に搭載した状態を示すスケルトン図である。
図2図2は、ユニットの断面模式図である。
図3図3は、ユニットのキャッチタンク周りを拡大して示す断面図である。
図4図4は、ユニットのアイドラギア周りを拡大して示す断面図である。
図5図5は、ユニットの断面模式図である。
図6図6は、ギアケースの平面図である。
図7図6は、ギアケースの平面図である。
図8図8は、カバーの平面図である。
図9図9は、カバーのオイルキャッチ部でのオイルの流れを説明する図である。
図10図10は、カバーの平面図である。
図11図11は、中間ケースの斜視図である。
図12図12は、中間ケースの平面図である。
図13図13は、キャッチタンクを説明する模式図である。
図14図14は、キャッチタンクに設けた排出孔の機能を説明する図である。
図15図15は、中間ケースの断面図である。
図16図16は、ギアケースでのオイルの流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
「ユニット」は、「モータユニット」、「動力伝達装置」などとも呼ばれる。モータユニットは、少なくともモータを有するユニットである。動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達装置は、例えば、歯車機構及び/又は差動歯車機構である。モータ及び動力伝達機構を有する装置であるユニットは、モータユニット及び動力伝達装置の双方の概念に属する。
【0009】
「ハウジング」は、モータ、ギア、インバータを収容するものである。ハウジングは1つ以上のケースから構成される。
【0010】
「3in1」とは、モータを収容するモータケースの一部と、インバータを収容するインバータケースの一部とが、一体形成された形式を意味する。たとえば、カバーとケースが1つのケースを構成する場合、「3in1」では、モータを収容するケースとインバータを収容するケースが一体に形成されている。
【0011】
「モータ」は、電動機機能及び/又は発電機機能を有する回転電機である。
【0012】
第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0013】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0015】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0016】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0017】
「軸方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0018】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。
【0019】
「キャッチタンク」は、オイルが導入されるタンク(コンテナ)の機能を有する要素(部品、部分等)である。タンクの外側からタンクにオイルが供給されることを、「キャッチ」と表現している。キャッチタンクは、たとえばハウジングの少なくとも一部を利用して設けられるか、ハウジングと別体で設けられる。キャッチタンクとハウジングとを一体形成することにより、部品点数削減に寄与する。
【0020】
「クーラント」は、冷媒。例えば、液体(冷却水等)、気体(空気等)等である。クーラントはオイルを含む概念であるが、本明細書においてオイルとクーラントとが併記されている場合は、クーラントはオイルとは異なる材料で構成されていることを意味する。
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、ユニット1を車両に搭載した状態を示すスケルトン図である。
図2は、ユニット1の断面模式図である。図2は、アイドラギア3と差動装置4が断面で示されるようにユニット1を切断した断面を示している。
図3は、ユニット1のキャッチタンクCT4周りを拡大して示す断面図である。
図4は、ユニット1のアイドラギア3周りを拡大して示す断面図である。
図5は、車両に搭載した状態でのユニット1の重力方向VLの断面図である。
【0022】
図1に示すようにユニット1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動装置4に入力するアイドラギア3(減速ギア)と、ドライブシャフト5(5A、5B)と、モータ2の電力変換装置であるインバータINVと、を有する。
【0023】
ユニット1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、アイドラギア3と、差動装置4と、ドライブシャフト5(5A、5B)と、が設けられている。
モータ2の出力回転は、アイドラギア3で減速されて差動装置4に入力された後、ドライブシャフト5(5A、5B)を介して、ユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
【0024】
ここで、アイドラギア3は、モータ2の下流に接続されている。差動装置4は、アイドラギア3の下流に接続されている。ドライブシャフト5(5A、5B)は、差動装置4の下流に接続されている。
【0025】
図2に示すように、ユニット1のハウジングHSは、モータケース6と、中間ケース7と、ギアケース8と、カバー9と、を有する。
ハウジングHSは、冷却および潤滑に用いられるオイルOLと、動力伝達機構としてのギア列(アイドラギア3、差動装置4)を収容する。ハウジングHSのうち、モータケース6にはモータ2が収容される。ギアケース8には、動力伝達機構としてのギア列(アイドラギア3、差動装置4)が収容される。
冷却および潤滑に用いられるオイルOLは、モータケース6とギアケース8のうちの少なくとも一方に収容される。
【0026】
中間ケース7は、筒状の周壁部71と、壁部72と、を有する。
中間ケース7は、周壁部71を、ドライブシャフト5(5A、5B)の回転軸X1に沿わせた向きで配置される。周壁部71は、回転軸X1を、間隔を空けて囲んでいる。
周壁部71では、回転軸X1方向における一方の端部に、モータケース6との接合部711が設けられている。周壁部71では、回転軸X1方向における他方の端部に、ギアケース8との接合部712が設けられている。
【0027】
周壁部71では、接合部711と接合部712の間の領域に、壁部72が設けられている。壁部72は、周壁部71の内周から内側に延びている。壁部72は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。壁部72は、ドライブシャフト5(5A、5B)の回転軸X1と、アイドラギア3の回転軸X2を横切る範囲に設けられている。
この壁部72は、ハウジングHSにおけるファイナルギアFG(ギア)とモータ2とに挟まれた部分であるウォールに相当する。
【0028】
壁部72における回転軸X1と交差する領域には、貫通孔70が設けられている。貫通孔70は、壁部72を厚み方向(回転軸X1方向:図中、左右方向)に貫通している。
【0029】
壁部72におけるモータケース6側(図中、右側)の面には、貫通孔70を囲む筒状のモータ支持部74が設けられている。モータ支持部74は、貫通孔70よりも大きい内径で形成されており、モータ支持部74の内周に、ベアリングB1が支持されている。
【0030】
モータケース6は、筒状の周壁部61と、壁部62とを有する。
モータケース6は、周壁部61を回転軸X1に沿わせた向きで設けられている。周壁部61は、回転軸X1を、間隔を空けて囲んでいる。
【0031】
周壁部61では、回転軸X1方向における一方の端部に、壁部62が設けられており、回転軸X1方向における他方の端部に、中間ケース7との接合部611が設けられている。
【0032】
壁部62は、回転軸X1方向における周壁部61の一方の端部から内径側に延びている。壁部62は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。壁部62における回転軸X1と交差する領域には、貫通孔60が設けられている。貫通孔60は、壁部62を厚み方向(図中、左右方向)に貫通している。
【0033】
壁部62の外側面(図中、右側の面)には、貫通孔60を囲む筒壁部63が設けられている。筒壁部63は、回転軸Xに沿って、ハウジングHSの外側(図中、右方向)に延びている。
筒壁部63の内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、筒壁部63の内周と、ドライブシャフト5Aの外周との間の隙間を封止している。
【0034】
壁部62の内側面(図中、左側の面)には、貫通孔60を囲む筒状のモータ支持部64が設けられている。モータ支持部64は、回転軸X1に沿って、ハウジングHSの内側(図中、左方向)に延びている。
モータ支持部64は、貫通孔60よりも大きい内径で形成されており、モータ支持部64の内周に、ベアリングB1が支持されている。
モータ支持部64では、ベアリングB1とリップシールRSとの間の領域に、油孔641が開口している。油孔641には、後記するキャッチタンクCT2に捕捉されたオイルOLが、ハウジングHSに付設された図示しない配管を介して供給される。
【0035】
ハウジングHSでは、モータケース6と中間ケース7が、互いの接合部611、711同士を回転軸X1方向で接合した状態で、組み付けられている。この状態において、周壁部61と周壁部71の内側の壁部62、72の間の空間が、モータ2を収容するモータ室Saとなっている。
【0036】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を、間隔をあけて囲むステータコア22とを、有する。
【0037】
モータシャフト20は、ドライブシャフト5Aに外挿された筒状部材である。
モータシャフト20は、長手方向の一方の端部20a側が、ベアリングB1による被支持部201となっており、他方の端部20b側が、インプットギア23との連結部202となっている。
被支持部201と連結部202の内周は、ドライブシャフト5Aに外挿されたニードルベアリングNB、NBで支持されている。この状態において、モータシャフト20は、ドライブシャフト5Aに対して相対回転可能である。
【0038】
モータシャフト20では、端部20a側の被支持部201の外周に、ベアリングB1が外挿されて位置決めされている。
さらに、モータシャフト20では、端部20bから端部20a側(図中、右側)に離れた位置の外周に、ベアリングB1が外挿されて位置決めされている。
モータシャフト20は、長手方向の一方の端部20a側と、他方の端部20b側が、それぞれベアリングB1、B1を介して、モータ支持部64、74で回転可能に支持されている。
【0039】
モータシャフト20では、回転軸X1方向におけるベアリングB1、B1の間の領域に、ロータコア21が固定されている。ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
回転軸X1方向から見て珪素鋼板は、リング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0040】
回転軸X1方向におけるロータコア21の端部21bは、モータシャフト20の大径部203で位置決めされている。ロータコア21の端部21aは、モータシャフト20に圧入されたストッパ24で位置決めされている。
【0041】
ロータコア21の径方向外側には、ステータコア22が位置している。ステータコア22は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。電磁鋼板の各々は、リング状のヨーク部221と、ヨーク部221の内周からロータコア21側に突出するティース部222を、有する。
本実施形態では、巻線223を、複数のティース部222に跨がって分布巻きした構成のステータコア22を採用している。ステータコア22は、回転軸X1方向に突出するコイルエンド223a、223bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X1方向の長さが長くなっている。
【0042】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部222の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0043】
ステータコア22のヨーク部221は、モータケース6の周壁部61の内周に、中間ケース7側から挿入されている。周壁部61の内周には、段部612が設けられている。ステータコア22は、ヨーク部221を、周壁部61側の段部612に当接させた位置で、位置決めされている。
【0044】
この状態において、ステータコア22のティース部222の内周222cは、ロータコア21の外周21cとの間に僅かなエアギャップCL(隙間)をあけて、ロータコア21の外周に対向している。
【0045】
図5に示すように、モータケース6の周壁部61には、重力方向VLにおける下部となる領域の内周に、連通溝65が形成されている。周壁部61において連通溝65は、回転軸X1周りの周方向の一箇所に設けられている。
連通溝65は、ステータコア22のヨーク部221の外径側を回転軸X方向に沿って延びている。なお、連通溝65は、複数設けられていても良い。例えば連通溝65は、周壁部61の下部となる領域に、回転軸X1周りの周方向に間隔をあけて複数設けられていても良い。
【0046】
モータ室Sa下部空間は、ヨーク部221を間に挟んだ一方側の空間(第1空間Sa1)と、他方側の空間(第2空間Sa2)とに分かれている。第1空間Sa1と第2空間Sa2との間に、ステータコア22が位置しているので、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動が行われ難くなっている。
本実施形態では、周壁部61における重力方向VLにおける下部となる領域、より好ましくは最下部となる領域に、連通溝65を設けている。これにより、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を、連通溝65を介して行える。よって、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を行いやすくしている。
【0047】
図2に示すように、ステータコア22のコイルエンド223a、223bの内径側(回転軸X1側)には、前記したモータ支持部64、74が、回転軸X1方向から挿入されている。 モータ支持部64、74は、コイルエンド223a、223bの内径よりも小さい外径で形成されている。モータ支持部64、74の先端64a、74aは、ロータコア21の端部21a、21bに回転軸X1方向の隙間をあけて対向している。
【0048】
ロータコア21が外挿されたモータシャフト20は、他方の端部20b側が、中間ケース7の貫通孔70を、モータケース6側からギアケース8側(図中、左側)に貫通している。
図3に示すように、モータシャフト20の端部20bは、差動装置4の円筒状の支持部401に、回転軸X1方向の隙間をあけて対向している。モータシャフト20では、端部20b側の連結部202の外周に、インプットギア23がスプライン嵌合している。インプットギア23は、連結部202の外周に螺合したナットNにより、回転軸X1方向の位置決めがされている。
【0049】
図4に示すように、インプットギア23の外周には、アイドラギア3のラージギア33が、回転伝達可能に噛合している。アイドラギア3においてラージギア33は、円筒状の軸部31の外周にスプライン嵌合している。
【0050】
軸部31の長手方向の一方の端部31aと他方の端部31bには、ベアリングB3、B3が外挿されている。軸部31の端部31aに外挿されたベアリングB3は、中間ケース7の円筒状の支持部75に挿入されている。軸部31の端部31a側は、ベアリングB3を介して、中間ケース7の支持部75で回転可能に支持されている。
【0051】
軸部31の端部31bに外挿されたベアリングB3は、ギアケース8の円筒状の支持部84に挿入されている。軸部31の端部31bは、ベアリングB3を介して、ギアケース8の支持部84で回転可能に支持されている。
【0052】
この状態において、アイドラギア3の軸部31は、回転軸X1に平行な回転軸X2に沿って設けられている。アイドラギア3の軸部31は、モータ2の出力回転がラージギア33を介して入力されると、回転軸X2回りに回転する。
【0053】
軸部31では、ラージギア33から見て端部31b側(図中、左側)に離れた位置に、スモールギア32が設けられている。スモールギア32は、軸部31と一体に形成されていると共に、ラージギア33の外径R33よりも小さい外径R32で形成されている。
スモールギア32は、差動装置4のデファレンシャルケース40に固定されたファイナルギアFGに回転伝達可能に噛合している。
【0054】
図3に示すように、デファレンシャルケース40は、シャフト41と、かさ歯車42A、42Bと、サイドギア43A、43Bとを、内部に収納する中空状に形成されている。
デファレンシャルケース40では、回転軸X1方向(図中、左右方向)の両側部に、筒状の支持部401、402が設けられている。支持部401、402は、シャフト41から離れる方向に、回転軸X1に沿って延出している。
【0055】
デファレンシャルケース40の支持部402には、ベアリングB2が外挿されている。ベアリングB2は、ギアケース8の円筒状の支持部83の内周に支持されている。デファレンシャルケース40の支持部402は、ベアリングB2を介して、ギアケース8で回転可能に支持されている。
【0056】
支持部402には、ギアケース8の開口80を貫通したドライブシャフト5Bが、回転軸X1方向から挿入されており、ドライブシャフト5Bは、支持部402で回転可能に支持されている。
開口80の内周には、リップシールRSが固定されており、ドライブシャフト5Aの外周と開口80の内周との隙間が、リップシールRSで封止されている。
【0057】
デファレンシャルケース40の支持部401には、ベアリングB2が外挿されている。支持部401に外挿されたベアリングB2は、カバー9のリング状の支持部92の内周に支持されている。デファレンシャルケース40の支持部401は、ベアリングB2を介して、カバー9で回転可能に支持されている。
【0058】
デファレンシャルケース40の支持部401には、モータケース6の貫通孔60(図2参照)を貫通したドライブシャフト5Aが、回転軸X1方向から挿入されている。
ドライブシャフト5Aは、モータ2のモータシャフト20と、インプットギア23の内径側と、カバー9を回転軸X1方向に横切って設けられており、ドライブシャフト5Aの先端側が、支持部401で回転可能に支持されている。
【0059】
図3に示すように、デファレンシャルケース40の内部では、ドライブシャフト5A、5Bの先端部の外周に、サイドギア43A、43Bがスプライン嵌合している。 サイドギア43A、43Bは、互いの歯部を対向させた状態で、回転軸Xの軸方向に間隔を空けて2つ設けられており、サイドギア43A、43Bの間には、シャフト41が位置している。
【0060】
シャフト41の一端と他端は、デファレンシャルケース40の軸孔40a、40bに挿入されている。デファレンシャルケース40においてシャフト41は、ピンPにより固定されている。
シャフト41には、かさ歯車42A、42Bが外挿して回転可能に支持されている。かさ歯車42A、42Bは、シャフト41の長手方向(軸線Yの軸方向)で間隔を空けて2つ設けられている。かさ歯車42A、42Bは、互いの歯部を対向させた状態で配置されている。
デファレンシャルケース40内において、かさ歯車42A、42Bとサイドギア43A、43Bとは、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0061】
図2に示すように、デファレンシャルケース40とアイドラギア3は、ギアケース8と中間ケース7との間のギア室Sb(Sb2、Sb1)に、それぞれ収容される。
ハウジングHS内では、ギアケース8と中間ケース7との間がギア室Sb(図5参照)となっている。ギア室Sb内に、モータ2の出力回転を伝達するギア列が収容される。
図5に示すように、ギア室Sbは、ギアケース8に固定されたカバー9により、モータ2側の第1ギア室Sb1と、差動装置4側の第2ギア室Sb2とに区画されている。
【0062】
図6は、ギアケース8を、回転軸X1方向の外側から見た平面図である。
図7は、ギアケース8を、回転軸X1方向の中間ケース7側から見た平面図である。
なお、図7では、キャッチタンクCT4の領域の拡大図と共に、キャッチタンクCT4に取り付けられるプレート88を示している。さらに、図7では、説明の便宜上、接合部82の領域と、キャッチガイド85の領域にハッチングを付して示している。
【0063】
図2に示すようにギアケース8は、筒状の周壁部81を有している。周壁部81は、差動装置4の外周を囲む第1領域811と、アイドラギア3のスモールギア32の外周を囲む第2領域812と、を有している。
周壁部81は、差動装置4とアイドラギア3のスモールギア32を収容可能な形状に形成されている。
【0064】
周壁部81では、回転軸X1方向における他方の端部に、ベアリングB2の支持部83が設けられている。支持部83は、回転軸X1を、間隔をあけて囲む筒状を成しており、支持部83の内周にベアリングB2が固定されている。
【0065】
周壁部81では、回転軸X1方向における一方の端部に、中間ケース7との接合部82が設けられている。接合部82は、ギアケース8の中間ケース7側の端部から径方向外側にフランジ状に延出している。
図7に示すように、回転軸X1方向から見て接合部82は、ギアケース8の中間ケース7側の開口を全周に亘って囲んでおり、接合部82の内側に第1領域811と第2領域812とが位置している。
【0066】
第1領域811の略中央部には、開口80が設けられている。図5に示すように、開口80は、ギアケース8の内部と外部とを連通させており、ドライブシャフト5Bを挿通可能な内径で形成されている。第1領域811は、支持部83から接合部82側に向かうにつれて内径が大きくなる向きで、回転軸X1に対して傾斜している。
【0067】
図6に示すように、回転軸X1方向から見て、アイドラギア3の回転軸X2は、ユニット1の車両への設置状態を基準とした重力方向VL上側であって、車両前後方向の後方に位置している。
回転軸X1方向から見て、周壁部81の第2領域812は、第1領域811の後方側であって、回転軸X1を通る水平線HLよりも上側に位置している。
【0068】
図4に示すように、第2領域812には、ベアリングB3の支持部84が設けられている。支持部84は、回転軸X2を、間隔をあけて囲む筒状を成している。支持部84は、第2領域812の内側の面から、回転軸X2に沿って中間ケース7側(図中、右側)に延びている。
【0069】
第2領域812では、支持部84の延長上となる位置に、キャッチガイド85が設けられている。キャッチガイド85は、ギアケース8と一体に形成されていると共に、回転軸X2に沿う向きで設けられている。キャッチガイド85は、アイドラギア3のスモールギア32の径方向外側を、ラージギア33側(図中、右側に)に延びている。
【0070】
回転軸X2に沿う断面視において、キャッチガイド85は、スモールギア32の外周との離間距離h1が、ラージギア33側の端部85aに向かうにつれて大きくなるように湾曲している。
キャッチガイド85の端部85aは、後記するカバー9の外径側まで達しており、回転軸X1の径方向から見ると、キャッチガイド85の端部85aと、カバー9とが重なる位置関係になる。すなわち、回転軸X1の径方向から見て、キャッチガイド85の端部85aと、カバー9とがオーバーラップしている。
【0071】
図7に示すように、キャッチガイド85の端部85aは、ギアケース8の接合部82の端面82aと同一平面上に位置している。
回転軸X2方向から見て、キャッチガイド85は、接合部82の内側(回転軸X2側)で、回転軸X2を、間隔をあけて囲むよう弧状に形成されている。回転軸X2回りの周方向の一方の端部851は、重力方向VLにおける回転軸X2の下方に位置している。端部851は、接続壁850、850を介して接合部82に接続している。
【0072】
キャッチガイド85の他方の端部852は、エアブリーザ86の下方であって、支持部84の上端とほぼ同じ高さまで及んでいる。
【0073】
キャッチガイド85は、回転軸X2回りの周方向の一方の端部851から他方の端部852まで連続する一つの壁として形成される。回転軸X2方向から見て、キャッチガイド85の端部852側の曲率半径は、端部851側の曲率半径よりも小さくなっている。
そのため、キャッチガイド85は、回転軸X2方向(図4参照)だけでなく、回転軸X2回りの周方向(図7参照)でも、支持部84で支持されるアイドラギア3のスモールギア32の外周との離間距離が変化している。
【0074】
本実施形態では、キャッチガイド85とスモールギア32の外周との離間距離は、重力方向VLの下側が最も大きくなり、重力方向の上側に向かうにつれて小さくなる。
ここで、ユニット1を搭載した車両の走行時には、ハウジングHS内のオイルが、スモールギア32やファイナルギアFGにより掻き上げられる。車両の前進走行時には、ギアケース8の内部では、ファイナルギアFGが掻き上げたオイルOLが、キャッチガイド85の内周に沿って上方に移動する(図16、矢印参照)。
【0075】
本実施形態では、キャッチガイド85の端部852側の曲率半径を小さくして、エアブリーザ86の下方に、キャッチガイド85の端部852側を挿入している。これにより、キャッチガイド85の内周に沿って上方に移動するオイルOLのうち、エアブリーザ86側へ移動するオイルOLの流れが端部852側の領域で阻害されて、エアブリーザ86に到達し難くなる。
【0076】
なお、前記したようにキャッチガイド85は、回転軸X2に沿う断面視において、スモールギア32の外周との離間距離h1が、ラージギア33側の端部85aに向かうにつれて大きくなるように湾曲している。
そのため、キャッチガイド85の内周に沿って上方に移動するオイルOLのうち、エアブリーザ86側への移動が阻害されたオイルOLの少なくとも一部は、その移動方向が回転軸X2方向に沿う方向に変更されて、ラージギア33側に移動するようになっている。
【0077】
図7に示すように、重力方向VLにおける支持部84の上側には、エアブリーザ86から見て、第1領域811側(図中、右側)に、紙面手前側に突出してリブ841が設けられている。リブ841は、支持部84の外周から上方に延びており、第1領域811と第2領域812とを区画している。
【0078】
図7に示すように、第1領域811では、重力方向VLにおける支持部83の上側に、キャッチタンクCT4が設けられている。
図7においてキャッチタンクCT4は、紙面手前側と紙面奥側に突出して形成された空間870を内部に有している。キャッチタンクCT4は、筒壁87を有する。筒壁87は、支持部83の外周を囲む弧状の内壁部871と、内壁部871よりも内径が大きい弧状の外壁部872と、側壁部873、874と、から構成される。側壁部873は、内壁部871と外壁部872の周方向の一方の端部同士を接続する。側壁部874は、内壁部871と外壁部872の周方向の一方の端部同士を接続する。
【0079】
図3に示すようにキャッチタンクCT4は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。キャッチタンクCT4は、ギアケース8の第1領域811から、ギアケース8の内部と外部に突出している。
キャッチタンクCT4は、回転軸X1の径方向から見てギアケース8の周壁部81(第1領域811)と重なる位置関係で設けられている。さらに、回転軸X1方向から見て、キャッチタンクCT4は、周壁部81(第1領域811)と重なる位置関係で設けられている。
【0080】
図3に示すように、周壁部81の第1領域811は、中間ケース7から離れる方向(図中、左方向)に向かうにつれて外径が小さくなる向きで傾斜している。
そのため、第1領域811の部分では、回転軸X1方向と、回転軸X1の径方向の両方に、モータケース6に比べて空間的な余裕がある。本実施形態では、第1領域811の部分にキャッチタンクCT4を設けることで、キャッチタンクCT4が、回転軸X1方向と回転軸X1の径方向の両方に大きく膨出しないようにしている。
【0081】
キャッチタンクCT4の内部の空間870は、回転軸X1方向の一端が底壁部875で封止された有底の筒状の空間である。空間870は、ギアケース8の内部(第2ギア室Sb2)に開口している。
キャッチタンクCT4の開口870aは、デファレンシャルケース40のシャフト41の上方に位置している。開口870aは、デファレンシャルケース40の外周に固定されたファイナルギアFGに、回転軸X1方向から対向している。
【0082】
キャッチタンクCT4の開口870aは、回転軸X1側(下側)の一部が、プレート88で塞がれている。
図7に示すようにプレート88は、板状の本体部880を有している。プレート88は、開口870aの回転軸X1側(図中、下側)の領域を塞ぐことができる形状に形成されている。
本体部880の上辺880aは、直線状を成しており、この直線状の部分に、紙面手前側の斜め上方に延びるガイド881が設けられている。
本体部880の幅方向の両側には、ボルト孔882、882が設けられている。本体部880は、ボルト孔882、882を貫通したボルトB、Bにより、筒壁87の先端87a(図3参照)に取り付けられる。
【0083】
図7に示すように、キャッチタンクCT4は、重力方向VLにおける支持部83の上方で、回転軸X1を通る鉛直線Vを周方向に横切る範囲に設けられている。
キャッチタンクCT4の側壁部874は、側壁部873よりも重力方向VL下側に位置している。ここで、キャッチタンクCT4の底面となる内壁部871は、車両前方側に向かうほど、重力方向下側に位置するように、斜めに傾斜している。前記したようにキャッチタンクCT4の開口870aは、ファイナルギアFGの側面に回転軸X1方向で対向している(図3参照)。
【0084】
ユニット1を搭載した車両の走行時には、回転軸X1回りに回転するファイナルギアFGが、ハウジングHS内のオイルを掻き上げることになる。そうすると、掻き上げられたオイルOLの一部が、開口870aを通ってキャッチタンクCT4内に流入する。
図7に示すように、キャッチタンクCT4は、ファイナルギアFGの外周に沿う弧状を成している。そして、キャッチタンクCT4の側壁部874は、側壁部873よりも重力方向VLの下側に位置しているので、キャッチタンクCT4内に流入したオイルOLは、側壁部874側に溜まることになる(図7の拡大図参照)。
ここで、プレート88には、オイルOLの排出口883が設けられている。この排出口883の開口径は、キャッチタンクCT4の開口870aの開口面積よりも十分に狭くなっている。そのため、キャッチタンクCT4へのオイルOLの流入量に比べて、排出口883からのオイルOLの排出量が少なくなる。よって、キャッチタンクCT4に捕捉されたオイルOLは、排出口883から徐々に、ギアケース8(第2ギア室Sb2)内に戻されるようになっている。
【0085】
図5に示すように、ハウジングHS内では、ファイナルギアFGから見て、モータ2側に、カバー9が位置している。
図8は、カバー9をギアケース8側から見た平面図である。図8では、ギアケース8との取付面である接合部94と、仕切壁96の領域にハッチングを付して示している。
図9は、カバー9のキャッチタンクCT5でのオイルOLの流れを説明する図である。
【0086】
図8に示すように、カバー9は、円板状の基部91を有している。基部91は、回転軸X1に直交する向きで設けられている。基部91の中央部には、貫通孔90が設けられている。貫通孔90は、基部91を厚み方向(回転軸X1方向)に貫通している。
【0087】
図3に示すように、基部91のギアケース8側(図中、左側の面)には、貫通孔90を囲むリング状の支持部92が設けられている。支持部92は、貫通孔90よりも大きい内径で形成されている。支持部92の内周には、ベアリングB2が支持される。
【0088】
基部91の外径側には、傾斜部93が設けられている。傾斜部93は、外径側に向かうに連れてファイナルギアFGに近づく向きで、回転軸X1に対して傾斜している。
ファイナルギアFGと傾斜部93は、回転軸X1方向から見て重なる位置関係で設けられている。
【0089】
傾斜部93の外周には、フランジ状の接合部94が設けられている。接合部94は、傾斜部93の外周から、径方向外側に延びている。接合部94は、回転軸X1に対して直交する向きで設けられている。
図8に示すように、接合部94は、傾斜部93の外周を略全周に亘って囲んでいる。
【0090】
接合部94には、回転軸X1回りの周方向に間隔を空けて複数の連結片95が設けられている。連結片95は、接合部94の外周から径方向外側に延びている。連結片95の各々には、ボルト孔95aが設けられている。連結片95の紙面手前側の端面と、接合部94の紙面手前側の端面は、同一平面上に位置している。
【0091】
図5に示すように、カバー9は、連結片95のボルト孔95aを貫通したボルトBにより、ギアケース8に固定されている。図7に示すようにギアケース8の第1領域811では、複数のボルト孔89が、接合部82の内径側で、回転軸X1周りの周方向に間隔を空けて設けられている。
【0092】
図8に示すように、カバー9では、当該カバー9をギアケース8に取り付けた際に、重力方向VL上側となる領域に、仕切壁96が設けられている。
仕切壁96は、支持部92よりも上側に位置しており、仕切壁96は、回転軸X1を通る鉛直線Vを、車両前後方向に横切って設けられている。仕切壁96の一方の端部96aと他方の端部96bは、それぞれ接合部94の内周に接続している。仕切壁96は、接合部94よりも内側を上下2つの空間に区画して、支持部92の上側にキャッチタンクCT5として機能する空間を形成している。
【0093】
仕切壁96は、ユニット1の車両への搭載状態を基準とした重力方向VLで、端部96aの方が端部96bよりも下側に位置する向きで、鉛直線Vと交差している。
図3に示すように、仕切壁96は、回転軸X1に対して傾斜した向きで設けられている。仕切壁96は、基部91からファイナルギアFGに近づくにつれて、重力方向VL上側に位置する向きで傾斜している。仕切壁96の先端は、前記したキャッチタンクCT4の筒壁87の先端87aとほぼ同じ高さに達している。キャッチタンクCT5は、開口をファイナルギアFGに向けて設けられている。
図8に示すように、キャッチタンクCT5の内部では、傾斜部93における端部96aの近傍領域に、排出孔971が設けられている。排出孔971は、傾斜部93を回転軸X1方向に貫通している。
【0094】
ここで、ユニット1を搭載した車両の走行時には、回転軸X1回りに回転するファイナルギアFGが、ハウジングHS内のオイルを掻き上げることになる(図3参照)。
ギアケース8の上部では、キャッチタンクCT4の開口870aと、キャッチタンクCT5の開口とが、ファイナルギアFGを間に挟んだ一方側と他方側に位置している。そのため、キャッチタンクCT4の開口870aと、カバー9側のキャッチタンクCT5と、ファイナルギアFGとが、回転軸X1方向から見て重なる位置関係で設けられている。
【0095】
よって、車両の走行時には、ファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLが、ギアケース8の上壁部811aに衝突する(図3参照)。上壁部811aに衝突したオイルOLは、回転軸X1方向の一方側のキャッチタンクCT4側と、他方側のキャッチタンクCT5側に向けて移動する。キャッチタンクCT5に流入したオイルは、仕切壁96に沿って流れて排出孔971から、ギア室Sbの第1ギア室Sb1側に排出される(図9図5参照)。
【0096】
図8に示すように、カバー9では、傾斜部93における端部96bの近傍領域に、切欠931が設けられている。切欠931は、アイドラギア3の軸部31(図4参照)との干渉を避けるために設けられている。
傾斜部93において切欠931は、仕切壁96の端部96bよりも下側であって、回転軸X1を通る水平線HLよりも上側の領域を弧状に切り欠いて形成されている。図8において切欠931は、紙面手前側(ギアケース8側)に開口を向けている。
【0097】
基部91における支持部92よりも下側には、排出孔98と、連通孔99が設けられている。
ギアケース8側から見て排出孔98は、鉛直線Vよりも車両前方側に位置しており、基部91を厚み方向に貫通している。ギアケース8側から見て連通孔99は、鉛直線Vよりも車両後方側に位置しており、基部91と傾斜部93とに跨がる範囲に設けられている。
【0098】
図10は、カバー9を中間ケース7側から見た平面図である。なお、図10では、インプットギア23とラージギア33の位置を仮想線で示している。
カバー9の中間ケース7側の面では、貫通孔90よりも下側の領域に、前記した排出孔98を囲む筒壁部981と、連通孔99を囲む筒壁部991が設けられている。筒壁部991は、基部91と傾斜部93とに跨がる領域から、紙面手前側に突出して形成されている。
【0099】
筒壁部981は、筒壁部991から離れる方向に延びている。排出孔98は、連通孔99から見て車両前方側で開口している。
筒壁部981と筒壁部991との間には、第1リブ910が設けられている。第1リブ910は、紙面手前側に突出して形成されていると共に、回転軸X1の径方向に略直線状に延びている。第1リブ910の内径側の端部910aは、貫通孔90を囲む第2リブ920の外周に接続している。第1リブ910は、基部91から傾斜部93を通って接合部94まで及んでいる。第1リブ910の外径側の端部910bは、接合部94に設けられた第4リブ940に接続している。
【0100】
第2リブ920は、貫通孔90の内周に沿う弧状を成している。ユニット1では、第2リブ920の内径側にインプットギア23が配置される。そのため、第2リブ920は、インプットギア23の外周を、間隔を開けて囲むように設けられている。
第2リブ920の車両前方側の端部920aは、水平線HL上に位置している。
【0101】
第2リブ920の車両後方側の端部920bは、ラージギア33の外周を囲む第3リブ930に接続している。端部920bは、インプットギア23とラージギア33との噛み合い部分の重力方向VL略直下となる位置で、第3リブ930に接続している。
第2リブ920の端部920bは、端部920aよりも重力方向VL下側に位置している。第3リブ930は、回転軸X1の径方向に延びている。第3リブ930は、基部91から傾斜部93を通って接合部94まで及んでいる。
【0102】
端部930aから見て、車両前方側では、第4リブ940の一方の端部940aが、前記した第1リブ910の端部910bに接続している。第4リブ940の端部940a側は、連結片95のボルト孔95aを迂回して回転軸X1側に湾曲している。第4リブ940の端部940a側は、湾曲した先が、第1リブ910の端部910bに接続している。
【0103】
第4リブ940は、接合部94における鉛直線Vよりも車両前方側に設けられている。第4リブ940における水平線HLよりも下側の領域は、接合部94の外周に沿って設けられている。第4リブ940における水平線HLと交差する領域は、連結片95のボルト孔95aの部分を迂回して回転軸X1側に湾曲している。
第4リブ940の他方の端部940bは、水平線HLよりも上側に位置している。第4リブ940の他方の端部940bは、前記した排出孔971の側方で、第5リブ950の一方の端部950aに接続している。
【0104】
第5リブ950の他方の端部950bは、鉛直線Vの近傍で、連結片95と接合部94との境界部分に位置している。
第5リブ950は、端部950aと端部950bとの間の領域が、接合部94よりも回転軸X1側の傾斜部93の領域を通過している。傾斜部93では、端部950aに隣接する領域に、前記したキャッチタンクCT5(図8参照)に連絡する排出孔971が開口している。
【0105】
第5リブ950から見て回転軸X1側には、第6リブ960が設けられている。第6リブ960の一方の端部960aは、第4リブ940の内周に接続している。第6リブ960は、排出孔971よりも下側であって水平線HLよりも上側で、第4リブ940に接続している。
【0106】
第6リブ960は、貫通孔90の近傍まで延びたのち、屈曲部960cよりも先の領域が、貫通孔90を間隔をあけて囲む弧状に形成されている。第6リブ960の他方の端部960bは、鉛直線Vよりも車両後方側に位置している。第6リブ960の端部960b側は、鉛直線Vよりも車両後方側の領域が貫通孔90から離れる方向(図中、上方向)に僅かに湾曲している。第6リブ960の端部960bは、アイドラギア3のラージギア33の外周に間隔を開けて対向する位置に配置される。
【0107】
第6リブ960の屈曲部960cから鉛直線Vまでの領域は、前記した第2リブ920よりも大きい曲率半径で形成されている。さらに、この領域は、インプットギア23の外周に沿って設けられている。この領域は、インプットギア23の外周との離間距離が、前記したインプットギア23の外周と第2リブ920との離間距離よりも大きくなるように設けられている。
【0108】
前記した第1リブ910における鉛直線V側の面には、前記した筒壁部991から延びる第7リブ970が接続されている。
本実施形態では、上記したリブ(第1リブ910から第7リブ970)と、筒壁部991の紙面手前側の端面が同一平面上に位置している。リブ(第1リブ910から第7リブ970)と筒壁部991の紙面手前側の端面には、シール材SLを取り付け可能な溝が形成されている。なお、図10では、溝にシール材SLが設置された状態を示しており、溝に設置されたシール材SLの領域を塗りつぶして示している。
【0109】
シール材SLは、カバー9を組み付けたギアケース8と、中間ケース7とを組み付けた際に、中間ケース7側の対応する部位(リブ、筒壁部)に接触して、接合面の隙間を封止するために設けられている。
シール材SLは、一体部品であっても良いし、複数部品から構成されていても良い。
【0110】
図11は、中間ケース7をギアケース8側から見た斜視図であり、中間ケース7を、カバー9と共に示している。この図11では、説明の便宜上、中間ケース7とカバー9の互い接合される部位(リブ、筒壁部)にハッチングを付して示している。さらに、シール材SLの図示を省略している。
図12は、中間ケース7をギアケース8側から見た平面図である。この図12では、説明の便宜上、カバー9に接合される部位(リブ、筒壁部)と、ギアケース8に接合される部位(接合部712)に、ハッチングを付して示している。
【0111】
図2に示すように、中間ケース7は、周壁部71の内側に壁部72を有している。
図12に示すように、中間ケース7の壁部72は、インプットギア23が配置される第1領域721と、アイドラギア3のラージギア33が配置される第2領域722と、を有する。
【0112】
第1領域721には、貫通孔70が開口している。貫通孔70は、モータ2のモータシャフト20(図2参照)が通過可能な内径で形成されている。第1領域721のギアケース8側の面では、貫通孔70よりも下側の領域に、連通孔79と、連通孔79を囲む筒壁部791が設けられている。
筒壁部791は、第1領域721における鉛直線Vよりも車両後方側に隣接した領域から、紙面手前側に突出して形成されている。
【0113】
筒壁部791は、ギアケース8と中間ケース7とを組み付けた際に、ギアケース8に取り付けられたカバー9側の筒壁部991と接合される位置に設けられている(図5参照)。
図11に示すように、中間ケース7では、カバー9との対向面に、カバー9側のリブ(第1リブ910~第6リブ960)に対応するリブ(第1リブ710~第6リブ760)が、それぞれカバー9側に突出して設けられている。
【0114】
図12に示すように、第1リブ710は、筒壁部791の車両前方側の側方を、回転軸X1の径方向に略直線状に延びている。第1リブ710は、前記したカバー9側の第1リブ910の形状と整合する形状で形成されている。
第1リブ710の回転軸X1側の端部710aは、貫通孔70を囲む第2リブ720の外周に接続している。第1リブ710の外径側の端部710bは、筒壁部791よりも外径側に位置している。第1リブ710の端部710bは、接合部712の内側に設けられた第4リブ740に接続している。
【0115】
第2リブ720は、貫通孔70の内周に沿う弧状を成している。第2リブ720は、前記したカバー9側の第2リブ920の形状と整合する形状で形成されている。
ユニット1では、第2リブ720の内径側にインプットギア23が配置される。そのため、第2リブ720は、インプットギア23の外周を、間隔を開けて囲むように設けられている。
第2リブ720の車両前方側の端部720aは、水平線HL上に位置している。
【0116】
第2リブ720の車両後方側の端部720bは、ラージギア33の外周を囲む第3リブ730に接続している。端部720bは、インプットギア23とラージギア33との噛み合い部分の重力方向VL略直下となる位置で、第3リブ730に接続している。第2リブ720の端部720bの位置は、端部720aよりも重力方向VLの下側である。回転軸X1方向から見て第2リブ720は、インプットギア23側の上面に、オイルOLを貯留することができる形状になっている。
【0117】
第3リブ730は、回転軸X1の径方向に延びている。第3リブ730は、前記したカバー9側の第3リブ930の形状と整合する形状で形成されている。
回転軸X2方向から見て、第3リブ730は、ラージギア33の外周を囲む弧状に形成されている。第3リブ730の一方の端部730aよりも先の領域は、接合部712の内周から延びる壁部713に接続している。壁部713は、接合部712と同一平面上に位置している。第3リブ730は、壁部713よりも、モータ2側の位置(図12における紙面奥側)に配置される。
なお、壁部713の領域の内周は、前記したキャッチガイド85により移動方向が回転軸X2に沿う方向に変更されたオイルOLが流入する流入部として機能する。
【0118】
図12に示すように、前記した筒壁部791の車両前方側では、第4リブ740の一方の端部740aが、前記した第1リブ710の端部710bに接続している。第4リブ740は、第1領域721における鉛直線Vよりも車両前方側に設けられている。
【0119】
第4リブ740における水平線HLよりも下側の領域は、接合部712に沿って設けられている。第4リブ740における水平線HLと交差する領域は、前記したカバー9の第4リブ940の形状に合わせて回転軸X1側に迂回するように湾曲している。
第4リブ740の他方の端部740bは、水平線HLよりも上方に位置している。第4リブ740の端部740bは、排出孔77の側方で、第5リブ750の一方の端部750aに接続している。第4リブ740は、前記したカバー9側の第4リブ940の形状と整合する形状で形成されている。
【0120】
第5リブ750の他方の端部750bは、鉛直線Vの近傍で、周壁部71の内周に接続している。第5リブ750は、前記したカバー9側の第5リブ950の形状と整合する形状で形成されている。
第5リブ750は、端部750aと端部750bとの間の領域が、前記したカバー9の第5リブ950の形状に合わせて回転軸X1側に迂回するように湾曲している。
【0121】
第5リブ750と接合部712との間の領域の上側には、第1領域721を厚み方向(回転軸X1方向)に貫通する貫通孔78が設けられている。貫通孔78は、モータ室Saと、第1ギア室Sb1とを連通させる(図5参照)。
さらに、第1領域721では、第5リブ750と第6リブ760との間に、排出孔77が開口している。この排出孔77は、中間ケース7の外部に設けた配管(図示せず)に連絡している。排出孔77は、図示しない配管を介して、モータケース6の油孔641に連絡している(図5参照)。
【0122】
第5リブ750から見て回転軸X1側には、第6リブ760が設けられている。第6リブ760の一方の端部760aは、第4リブ740の内周に接続している。第6リブ760は、排出孔77よりも下側であって水平線HLよりも上側で、第4リブ740に接続している。
【0123】
前記した排出孔77は、第6リブ760における第4リブ740に接続する端部760aの近傍で開口している。排出孔77は、第4リブ740の端部740b側の領域と、第5リブ750の端部750a側の領域と、第6リブ760の端部760a側の領域とに囲まれている。
【0124】
第6リブ760は、貫通孔70の近傍まで延びている。第6リブ760は、屈曲部760cよりも先の領域が、貫通孔70を間隔をあけて囲む弧状に形成されている。第6リブ760の他方の端部760bは、鉛直線Vよりも車両後方側に位置している。第6リブ760の端部760b側は、鉛直線Vよりも先の領域が貫通孔70から離れる方向(図中、上方向)に僅かに湾曲している。第6リブ760の端部760bは、アイドラギア3のラージギア33の外周に間隔を開けて対向する位置に配置される。
【0125】
第6リブ760の屈曲部760cから鉛直線Vまでの領域は、前記した第2リブ720よりも大きい曲率半径で形成されている。さらに、この領域は、インプットギア23の外周と第2リブ720との離間距離よりも大きい間隔をあけて、インプットギア23の外周に沿って設けられている。
第6リブ760は、前記したカバー9側の第6リブ960の形状と整合する形状で形成されている。
【0126】
前記した第1リブ710における鉛直線V側の面には、前記した筒壁部791から延びる第7リブ770が接続されている。
上記したリブ(第1リブ710から第7リブ770)と、筒壁部791の紙面手前側の端面が同一平面上に位置している。
リブ(第1リブ710から第7リブ770)と、筒壁部791の紙面手前側の端面には、ギアケース8と中間ケース7とを組み付けた際に、ギアケース8に組み付けられたカバー9のシール材SLが圧接する。これにより、中間ケース7側の第1リブ710から第7リブ770および筒壁部791と、カバー9側の第1リブ910から第7リブ970および筒壁部991との接合面の隙間が封止される。
【0127】
第1領域721では、第6リブ760の端部760bの上側に、第8リブ780が設けられている。第8リブ780は、接合部712の内周から、第6リブ760と第5リブ750との間に向けて延びている。第8リブ780は、ラージギア33の外周との間に間隔を開けて設けられている。第8リブ780は、前記した第5リブ750や第6リブ760よりも低い高さで形成されていると共に、先端側に向かうにつれて紙面手前側への突出高さが低くなっている。
【0128】
図4に示すように、ラージギア33は、アイドラギア3の軸部31の外周にスプライン嵌合している。軸部31の端部31aに外挿されたベアリングB3は、中間ケース7の壁部72の円筒状の支持部75で支持される。
図12に示すように、重力方向VLにおける支持部75の上側には、リブ751、751が設けられている。リブ751、751は、回転軸X2周りの周方向に間隔を開けて設けられている。リブ751、751は、回転軸X2の径方向に直線状に延びており、周壁部71の内周に接続している。
【0129】
リブ751、751の間には、油孔752、752が開口している。油孔752、752は、支持部75の内周に開口している。
ここで、図12に示すリブ751、751においてハッチングを示した領域は、図11に示すように回転軸X2方向の高さが、支持部75よりも低くなっている。そのため、図12に示すように、インプットギア23が掻き上げたオイルOLの一部が、リブ751、751の間の油孔752、752から支持部75の内側に流入し、支持部75で支持されたベアリングB3(図4参照)を潤滑できるようになっている。
【0130】
図13は、中間ケース7をモータケース6側から見た平面図である。この図13では、モータケース6に接合される部位(接合部711)にハッチングを付して示していると共に、中間ケース7から見てギアケース8側(紙面奥側)に位置するキャッチタンクCT1~CT3と、キャッチタンクCT4、CT5の位置を破線で示している。
【0131】
図13に示すように、中間ケース7は、壁部72におけるモータケース6側に、モータ2との対向領域である第3領域723と、アイドラギア3の裏側の領域である第4領域724と、を有する。
モータケース6側から見て第3領域723は、略円形を成している。第3領域723は、第4領域724よりも紙面奥側に位置している。第3領域723の外周723aは、モータ2の外周の位置、ファイナルギアFGの外周の位置に略相当する。
そのため、回転軸X1方向から見て、キャッチタンクCT1~CT5は、ファイナルギアFGとオーバーラップする部分を有するといえる。さらに、回転軸X1方向から見て、キャッチタンクCT1~CT5は、モータ2とオーバーラップする部分を有するといえる。
【0132】
第3領域723の中央には、貫通孔70を囲むリング状のモータ支持部74が設けられている。
モータ支持部74の上側には、前記した貫通孔78が開口している。貫通孔78は、回転軸X1を通る鉛直線Vよりも車両前方側に位置している。
モータ支持部74の下側には、前記した連通孔79が開口している。連通孔79は、回転軸X1を通る鉛直線Vよりも車両後方側に位置している。
【0133】
図14は、インプットギア23の周囲に形成されるキャッチタンクCT1~CT3を説明する模式図である。なお、図14では、説明の便宜上、キャッチタンクCT1~CT3を区画形成するリブとして、便宜上、中間ケース7側のリブ(第1リブ710~第6リブ760)を示す符号を用いている。
なお、実際のユニット1では、カバー9側のリブ(第1リブ910~第6リブ960)と、中間ケース7側のリブ(第1リブ710~第6リブ760)とを接合したリブにより、中間ケース7内の第2ギア室Sb2内にキャッチタンクCT1~CT3が形成される。
【0134】
図15は、第3キャッチタンクCT3に設けた排出孔98の機能を説明する図である。
図16は、ギアケース8を中間ケース7側から見た平面図である。
【0135】
ギアケース8と中間ケース7とを組み付けると、ギアケース8に取り付けられたカバー9側のリブ(第1リブ910~第6リブ960)が、中間ケース7側の対応するリブ(第1リブ710~第6リブ760)に、シール材SLを間に挟んで圧接する。
そうすると、図2および図5に示すように、カバー9と中間ケース7の壁部72との間に、第1ギア室Sb1が形成される。この第1ギア室Sb1は、モータ室Saや第2ギア室Sb2から区画された空間である。
【0136】
第1ギア室Sb1内には、アイドラギア3のラージギア33と、ラージギア33が噛合するインプットギア23が収容される。
図14に示すように、第1ギア室Sb1をギアケース8側から見ると、ラージギア33およびインプットギア23の周囲に配置された各リブ(第1リブ710~第6リブ760)が、インプットギア23の周りにオイルOLを貯留可能な空間(キャッチタンクCT1~CT3)を形成する。
【0137】
第2リブ720と第3リブ730は、長手方向の中央部が重力方向VL下側に、それぞれ窪んだ弧状に形成されている。第2リブ720と第3リブ730は、上面にオイルOLを貯留可能な棚として機能するようになっている。そのため、第2リブ720と第3リブ730の上面が、オイルOLを貯留可能なキャッチタンクCT1の領域となっている。
【0138】
さらに、インプットギア23の上方では、第5リブ750と第6リブ760が上下方向に間隔を開けて配置されている。第5リブ750と第6リブ760との間の空間は、車両後方側に開口を向けたキャッチタンクCT2となっている。
キャッチタンクCT2は、インプットギア23の上方から車両前方側まで及ぶ略弧状の空間である。ユニット1を搭載した車両の前進走行時に、インプットギア23とラージギア33は、図中白抜き矢印方向に回転する。回転するラージギア33は、第3リブ730に貯留されたオイルOLを車両前方側の上方に向けて掻き上げる。
【0139】
キャッチタンクCT2は、開口を車両後方側の上方に向けており、ラージギア33が掻き上げたオイルOLを受け入れ可能となっている。そのため、ラージギア33が掻き上げたオイルOLの多くがキャッチタンクCT2に捕捉可能となっている。
キャッチタンクCT2の開口側には、先端をキャッチタンクCT2内に向けた第8リブ780が設けられている。この第8リブ780は、ラージギア33が掻き上げたオイルOLが衝突する位置に設けられている。第8リブ780は、衝突したオイルOLを、キャッチタンクCT2内に誘導するガイドとして機能するようになっている。
【0140】
ラージギア33が掻き上げたオイルOLは、第3リブ730に隣接する第2リブ720の領域にも到達する。第2リブ720の上方にはインプットギア23が位置している。インプットギア23の上方には、第6リブ760が位置している。第6リブ760が位置することにより、車両の前進走行時に回転するインプットギア23が掻き上げたオイルOLの多くは、その移動方向が、車両後方側の上方と、車両前方側の側方に制限される。
【0141】
インプットギア23から見て車両後方側の上方には、図12に示すように、アイドラギア3の支持部75が位置している。支持部75の上方では、前記したリブ751、751の間に、油孔752、752が開口している。
そのため、車両後方側の上方に送り出されたオイルOLは、油孔752、752を通って支持部75の内周で支持されたベアリングB3(図4参照)を潤滑することになる。
【0142】
また、図14に示すように、インプットギア23から見て車両前方側には、第1リブ710と、第2リブ720と、第4リブ740と、第6リブ760とで囲まれた空間が形成されている。そして、第2リブ720の端部720aが、第6リブ760に対して間隔を開けて設けられている。そのため、これらリブで囲まれた空間は、車両後方側に開口を向けたキャッチタンクCT3となっている。これにより、インプットギア23が車両前方側に送り出したオイルOLが、キャッチタンクCT3に捕捉されるようになっている。
【0143】
図15に示すように、キャッチタンクCT3のギアケース8側(図中、左側)に位置するカバー9では、キャッチタンクCT3の下部に対向する位置に、排出孔98が開口している。この排出孔98の開口径は、キャッチタンクCT3の入り口の開口径(図14に示す第2リブ720の端部720aと第6リブ760との間隔)に対して十分に小さくなっている。そのため、キャッチタンクCT3に捕捉されたオイルOLは、第2ギア室Sb2に徐々に戻されるようになっている。
【0144】
このように、第1ギア室Sb1には、インプットギア23の周りに、オイルOLを捕捉可能な空間(キャッチタンクCT1~CT3)が形成されている。
図13に示すように、これらキャッチタンクCT1~CT3は、モータ2の外径の範囲内(第3領域723の外周723aの範囲内)内に形成されている。キャッチタンクCT1~CT3は、前記したキャッチタンクCT4、CT5と共に、回転軸X1方向から見てモータ2と重なる位置関係で設けられている。
さらに、キャッチタンクCT1~CT3は、回転軸X1の径方向から見て重なる位置関係で設けられている。キャッチタンクCT1~CT3は、回転軸X1方向の限られた範囲(第1ギア室Sb1の範囲)内に納められている。
【0145】
図5に示すように、連通孔79を囲む筒壁部791は、カバー9の連通孔99を囲む筒壁部991に接合されている。これにより、モータ室Saと、ギア室Sbの第2ギア室Sb2とを直接連通させるトンネルが、接合された筒壁部791と筒壁部991の内側に形成される。
そして、中間ケース7の上部には、モータ室Saと、ギア室Sbとを連通させる貫通孔78が設けられている。そのため、モータ室Sa内のオイルOLの高さと、ギア室Sb内のオイルOLの高さを略同じ高さに保つことができるようになっている。
【0146】
本実施形態のユニット1の作用を説明する。
図1および図2に示すように、ユニット1では、モータ2の出力回転の伝達経路上に、ギア列(アイドラギア3、ファイナルギアFG)と差動装置4(かさ歯車42A、42B、サイドギア43A、43B)が設けられている。
ユニット1を搭載した車両の走行時には、モータ2の出力回転が、モータシャフト20と一体に回転するインプットギア23と、インプットギア23に噛合したラージギア33とを介して、アイドラギア3に入力される。
モータ2の出力回転が、ラージギア33を介してアイドラギア3に入力されると、スモールギア32が、ラージギア33と共に回転軸X2回りに回転する。
【0147】
そうすると、スモールギア32が回転伝達可能に噛合するファイナルギアFGが、デファレンシャルケース40に固定されているので、アイドラギア3の回転軸X2回りの回転に連動して、デファレンシャルケース40が回転軸X1回りに回転する。
【0148】
ここで、アイドラギア3では、スモールギア32の外径R32は、ラージギア33の外径R33よりも小さい(図4参照)。そして、アイドラギア3では、ラージギア33が、モータ2の出力回転の入力部となっており、スモールギア32が、入力された回転の出力部となっている。
そのため、アイドラギア3に入力された回転は、大きく減速されたのちに、デファレンシャルケース40に出力される。
【0149】
図5に示すように、ユニット1を搭載した車両の非走行時には、ハウジングHS内のオイルOLの高さは、デファレンシャルケース40の下部がオイルOLにつかる高さになる。
車両が走行を開始すると、モータ2の出力回転が伝達されたデファレンシャルケース40が、回転軸X1回りに回転する。そうすると、デファレンシャルケース40と、このデファレンシャルケース40と一体に回転するファイナルギアFGが、第2ギア室Sb2内のオイルOLを掻き上げることになる。
【0150】
車両の前進走行時には、ファイナルギアFGが掻き上げたオイルOLは、車両後方側から上方に向けて移動する。
図3に示すように、ギアケース8の上部では、キャッチタンクCT4の開口870aと、カバー9側のキャッチタンクCT5とが、ファイナルギアFGを間に挟んだ一方側と他方側に位置している。
そのため、ファイナルギアFGが掻き上げられて、ギアケース8の上壁部811aに衝突したオイルOLは、回転軸X1方向の一方側のキャッチタンクCT4側と、他方側のオキャッチタンクCT5に向けて移動する。
【0151】
キャッチタンクCT4に流入したオイルOLは、キャッチタンクCT4の開口870aの下側の一部がプレート88で塞がれているので、キャッチタンクCT4内に滞留する。
キャッチタンクCT4の開口870aの一部を塞ぐプレート88には、オイルOLの排出口883(図7参照)が設けられている。この排出口883の開口径は、キャッチタンクCT4の開口870aの開口面積よりも十分に狭くなっている。そのため、キャッチタンクCT4へのオイルOLの流入量に比べて、排出口883からのオイルOLの排出量が少なくなる。
よって、キャッチタンクCT4に捕捉されたオイルOLは、排出口883から徐々に、ギアケース8(第2ギア室Sb2)内に戻される。
すなわち、車両の走行時には、ファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLがキャッチタンクCT4内に滞留して、ギア室Sbの第2ギア室Sb2に戻されるオイルOLの量が少なくなる。
さらに、図3に示すように、排出口883の直下となる位置に、デファレンシャルケース40が位置している。そのため、排出口883から排出されたオイルOLの一部は、回転軸X1回りに回転するデファレンシャルケース40の開口から、デファレンシャルケース40の内部に侵入する。これにより、かさ歯車42A、42Bと、サイドギア43A、43Bとの噛み合い部分を潤滑する。
【0152】
また、図9に示すように、ファイナルギアFGが掻き上げたオイルOLのうち、キャッチタンクCT5に流入したオイルは、仕切壁96に沿って流れて、排出孔971から、紙面奥側の第1ギア室Sb1に排出される。
図11に示すように、排出孔971は、キャッチタンクCT2に連絡しているので、キャッチタンクCT5に捕捉されたオイルはキャッチタンクCT2に流入する。よって、ファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLのうち、キャッチタンクCT5に捕捉された分だけ、第2ギア室Sb2に戻されるオイルOLの量が少なくなる。
【0153】
なお、図14に示すように、キャッチタンクCT2には、排出孔77が開口している。図5に示すように、排出孔77は、ハウジングHSの外周に沿って設けられた図示しない配管を介して、モータケース6側の油孔641に連絡している。
モータ支持部64では、ベアリングB1とリップシールRSとの間の領域に、油孔641が開口している。そのため、油孔641から排出されたオイルOLは、ベアリングB1を潤滑したのち、モータ室Sa内の下部に向けて移動する。これにより、モータ2が、モータ室Saの下部に流入されるオイルOLで冷却される。
【0154】
図16に示すように、車両の走行時にファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLの一部は、ギアケース8内を上方に向けて移動する。
ファイナルギアFGの車両後方側には、キャッチガイド85が設けられている。車両の前進走行時には、掻き上げられたオイルOLの一部が、キャッチガイド85の内周に沿って上方に移動する。
【0155】
キャッチガイド85の内周に沿って上方に移動したオイルOLは、キャッチガイド85の端部852側の領域により移動が妨げられる。
ここで、図4に示すようにキャッチガイド85は、回転軸X2に沿う断面視において、スモールギア32の外周との離間距離h1が、ラージギア33側の端部85aに向かうにつれて大きくなるように湾曲している。
そのため、キャッチガイド85の端部852側の領域により移動が妨げられたオイルOLの移動方向は、スモールギア32からラージギア33側に向かう方向に変更される。
【0156】
さらに、スモールギア32の回転方向は、ファイナルギアFGと反対方向であるので、キャッチガイド85の内周に沿って上方に移動するオイルOLの一部は、回転するスモールギア32により、移動方向が、スモールギア32からラージギア33側に向かう方向に変更される。
【0157】
ここで、図4に示すように、キャッチガイド85のラージギア33側の端部85aは、カバー9の外径側まで達している。回転軸X1の径方向から見ると、キャッチガイド85の端部85aと、カバー9とが重なる位置関係になっている。
そのため、キャッチガイド85の内周に沿ってラージギア33側に移動したオイルOLの多くが、ラージギア33が位置する第1ギア室Sb1(キャッチタンクCT1)内に流入する。
【0158】
図14に示すように、第1ギア室Sb1内に到達したオイルOLは、始めに、第3リブ730の上面に流入して滞留する。
第3リブ730に滞留したオイルOLは、回転軸X2回りに回転するラージギア33により掻き上げられて、車両前方側と車両前方側の斜め上方に向けて移動する。
【0159】
ラージギア33から見て車両前方側の上側では、キャッチタンクCT2の開口が、車両後方側の上方に向いている。そのため、ラージギア33が掻き上げたオイルOLの多くがキャッチタンクCT2に捕捉される。そして、キャッチタンクCT2の開口径は、排出孔77の開口径よりも大きいので、車両の走行時には、排出孔77から排出されるオイルOLの量よりも、キャッチタンクCT2に滞留するオイルOLの量の方が多くなる。
なお、排出孔77から排出されるオイルOLは、前記したモータケース6側の油孔641から、モータ室Sa内に排出されて、モータ2の冷却に用いられることになる。
【0160】
ラージギア33が掻き上げたオイルOLは、第3リブ730に隣接する第2リブ720の領域にも到達する。そうすると、車両の走行時に回転するインプットギア23は、第2リブ720上に滞留したオイルOLを掻き上げることになる。
ここで、第2リブ720の上方にはインプットギア23が位置しており、インプットギア23の上方には、第6リブ760が位置している。
車両の前進走行時には、インプットギア23は、図14における反時計回り方向に回転する。この際にインプットギア23の上方に、第6リブ760が位置することにより、インプットギア23が掻き上げたオイルOLは、車両後方側の上方と、車両前方側の側方に向けて移動することになる。
【0161】
図12に示すように、インプットギア23から見て車両後方側の上方では、アイドラギア3の支持部75の上方に、油孔752、752が開口している。そのため、車両後方側の上方に送り出されたオイルOLは、油孔752、752を通って支持部75の内周で支持されたベアリングB3(図4参照)を潤滑することになる。
【0162】
また、図14に示すように、インプットギア23から見て車両前方側には、キャッチタンクCT3が位置している。キャッチタンクCT3は、第1リブ710と、第2リブ720と、第4リブ740と、第6リブ760とで囲まれている。キャッチタンクCT3の開口は、車両後方側に開口を向いている。そのため、インプットギア23により掻き上げられて車両前方側に移動するオイルOLが、キャッチタンクCT3内に流入する。
【0163】
図15に示すように、キャッチタンクCT3のギアケース8側(図中、左側)に位置するカバー9では、キャッチタンクCT3の下部に対向する位置に、排出孔98が開口している。この排出孔98の開口径は、キャッチタンクCT3の入り口の開口径(第2リブ720の端部720aと第6リブ760との間隔)に対して十分に小さくなっている。さらに、前記した排出孔77(図14参照)よりも開口面積が小さい。
【0164】
そのため、キャッチタンクCT3に捕捉されたオイルOLは、ギア室Sbの第2ギア室Sb2に徐々に戻されるようになっている。
さらに、車両の走行時には、排出孔77から排出されるオイルOLの量よりも、キャッチタンクCT2に滞留するオイルOLの量の方が多くなる。さらに、排出孔77からモータ室Sa側に供給されるオイルOLの方が、排出孔98から第2ギア室Sb2に戻されるオイルOLよりも多くなる。
これにより、第2ギア室Sb2へのオイルOLの戻しよりも、モータ2の冷却のためのモータ室SaへのオイルOLの供給の方が優先されることになる。
【0165】
このように、車両の走行時には、回転するファイナルギアFGが掻き上げたオイルOLが、キャッチタンクCT4、CT5や、キャッチタンクCT1~CT3に滞留して、ギア室Sbの第2ギア室Sb2内に戻るオイルOLの量が抑えられるようになっている。
そのため、第2ギア室Sb2内のオイルOLの高さが低くなって、回転するファイナルギアFGに対する抵抗が小さくなる。
【0166】
さらに、図5に示すように、ハウジングHSの下部では、モータ室Saと、ギア室Sbの第2ギア室Sb2とを直接連通させるトンネルが、互いに接合された筒壁部791と筒壁部991の内部に、連通孔79と連通孔99を直列に繋いて形成される。
【0167】
ハウジングHSの上部に、空気の移動孔となる貫通孔78が開口している。そのため、トンネルが、モータ室Sa内のオイルの高さと、第2ギア室Sb2内のオイルの高さを略同じにする機能を発揮する。
【0168】
本実施形態では、エアギャップCL(図2も参照)よりも下方に、連通孔79、99を直列に繋いだトンネルの下端791aが位置するように、トンネルの位置を設定している。ここで、エアギャップCLは、ステータコア22のティース部222の内周222cとロータコア21の外周21cとの間の隙間である。
そのため、車両の走行時に、キャッチタンクCT4、CT5やキャッチタンクCT1~CT3にオイルOLを滞留させている際に、モータ室Sa内のオイルOLの高さを、エアギャップCLよりも下方にすることができる。
【0169】
エアギャップCLの部分までオイルOLが存在すると、オイルOLが、ロータコア21の回転に対する抵抗となる。ロータコア21の回転に対する抵抗を低減できるので、ユニット1を搭載した車両の電力消費(電費)の改善が期待できる。
電費の改善は、ユニット1を搭載した電気車両の場合、一回の充電での走行距離の増加に期待できる。
【0170】
前記したように、キャッチタンクCT2に滞留するオイルOLの一部は、モータ2の冷却のためにモータ室Sa内に供給される。
【0171】
前記したように、モータ室Saには、キャッチタンクCT2から、冷却用のオイルOLが供給される。モータ室Sa内では、モータのステータコア22が、モータケース6の周壁部61の内周に中間ケース7側から挿入されている。
モータ室Sa下部空間は、ヨーク部221を間に挟んだ一方側の空間(第1空間Sa1)と、他方側の空間(第2空間Sa2)とに分かれている。第1空間Sa1と第2空間Sa2との間に、ステータコア22が位置しているので、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動が行われ難くなっている。
周壁部61における重力方向VLにおける下部となる領域、より好ましくは最下部となる領域に、連通溝65を設けている。これにより、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を、連通溝65を介して行える。よって、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を行いやすくしている。
【0172】
このように、車両の走行時に、キャッチタンクCT4、CT5やキャッチタンクCT1~CT3にオイルOLを滞留させることで、第2ギア室Sb2内のオイルOLの高さを低くして、ファイナルギアFGの回転に対する抵抗を低減させる。
さらに、エアギャップCLよりも下方に、連通孔79、99を直列に繋いだトンネルの下限が位置するようにトンネルの位置を設定して、車両の走行時にモータ室Sa内のオイルOLの高さを、エアギャップCLよりも下方にしている。これにより、ロータコア21の回転に対する抵抗を低減させる。
【0173】
そして、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を、連通溝65を介して行えるようにすることで、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を行いやすくしている。
これにより、車両の走行時に、ハウジングHSの下部におけるオイルOLの高さを低くしても、モータ室Saと第2ギア室Sb2との間でのオイルOLの循環をスムーズに行える。
【0174】
以上の通り、本実施形態にかかるユニット1は、以下の構成を有している。
(1)ユニット1は、モータ2と接続するファイナルギアFG(ギア)を収容するハウジングHSを有する。
ハウジングHS内に、キャッチタンクCT1~CT5を有する。
ファイナルギアFGは、デファレンシャルケース40と一体に回転軸X1回りに回転する。
回転軸X1方向から見て、キャッチタンクCT1~CT5は、ファイナルギアFGとオーバーラップする部分を有する。
回転軸X1方向から見て、キャッチタンクCT1~CT5は、モータ2とオーバーラップする部分を有する。
【0175】
このように構成すると、例えば、図13に示すように、第3領域723の外周723aよりも内径側に、キャッチタンクCT1~CT5が配置される。外周723aは、モータ2の外周の位置、ファイナルギアFGの外周の位置に略相当する。
これにより、キャッチタンクCT1~CT5を、回転軸X1の径方向で、モータ2やファイナルギアFGから大きくはみ出すことなく設置できる。
これにより、ユニット1における径方向への寸法拡大を抑制できる。
【0176】
(2)重力方向VLから見て、ファイナルギアFGは、デファレンシャルケース40とモータ2との間に位置する部分を有する。
重力方向VLから見て、ファイナルギアFGは、キャッチタンクCT4と、モータ2との間に位置する部分を有する。
【0177】
図2に示すように、デファレンシャルケース40のモータ2側(図中右側)は、モータ2側に向かうにつれて、回転軸X1に直交する径方向の外径が小さくなっている。
そのため、デファレンシャルケース40からみてモータ2側に有効活用できる空間がある。この空間にファイナルギアFGを配置することで、デファレンシャルケース40周りの空間を有効に活用できる。これにより、ユニット1におけるファイナルギアFGや、他の部品のレイアウト性が高まることになる。
【0178】
(3)キャッチタンクCT4、CT5は、回転軸X1方向で、ファイナルギアFGと対向する。
キャッチタンクCT4の底面となる内壁部871は、車両前方側に向かうほど、重力方向下側に位置するように、斜めに傾斜する部分を有する(図7参照)。
キャッチタンクCT5の底面となる仕切壁96は、車両前方側に向かうほど、重力方向下側に位置するように、斜めに傾斜する部分を有する(図8図9参照)。
【0179】
ユニット1を搭載した車両の前進走行時のファイナルギアFGの回転方向に鑑みると、ファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLは、車両前方に向かうベクトルを持って飛散する。
キャッチタンクCT4、CT5の底面となる内壁部871や仕切壁96が、車両前方側に向かうほど、重力方向下側に位置するように、斜めに傾斜する部分を持つことで、飛散したオイルOLの車両前方側への移動を促進できる。
飛散したオイルのキャッチタンクCT4、CT5内での移動をよりスムーズに行うことができるので、車両の走行時に掻き上げられたオイルOLをキャッチタンクCT4、CT5にスムーズに貯留できる。
【0180】
(4)ユニット1は、
モータ2と接続するファイナルギアFG(ギア)を収容するハウジングHSを有する。
ハウジングHS内に、オイルOLを貯留可能なキャッチタンクを少なくとも2つ有する。
ファイナルギアFGは、デファレンシャルケース40と一体に回転軸X1回りに回転する。
回転軸X1方向から見て、2つのキャッチタンクは、モータ2とオーバーラップする部分を有する。
【0181】
例えば、キャッチタンクCT1~CT5から選択した任意の2つのキャッチタンクが、回転軸X1方向から見て、ファイナルギアFGやモータ2と重なる位置関係で設けられている。
このように構成すると、任意の2つのキャッチタンクを、回転軸X1の径方向で、モータ2やファイナルギアFGから大きくはみ出すことなく設置できる。
これにより、ユニット1における径方向への寸法拡大を抑制できる。
【0182】
また、ハウジングHS内に、オイルOLを貯留可能なキャッチタンク少なくとも2つ設けることで、ユニット1を搭載した車両の走行時に一時的に捕捉することができるオイルOLの量を増やすことができる。これにより、ハウジングHS内でのオイルOLの高さを低くすることができるので、ハウジングHS内のオイルが、回転軸X1回りに回転するファイナルギアFGやロータコア21の回転に対するフリクションとなる程度を抑えることができる。
すなわち、回転体の攪拌抵抗を抑えることができる。かかる場合、モータ2への負荷の低減が期待できるので、ユニット1を搭載した車両での電費の向上が期待できる。
また、モータ2の出力回転におけるエネルギーロスの低減が期待できる。
【0183】
また、ハウジングHS内に、オイルOLを貯留可能なキャッチタンクを少なくとも2つ設けることで、ユニット1における潤滑設計の自由度が高まる。例えば、モータ2の潤滑用のオイルOLの捕捉や、ファイナルギアFGとアイドラギア3の潤滑用のオイルOLの捕捉というように、2つのキャッチタンクに異なる機能を持たせることができる。
【0184】
(5)オイルOLを貯留可能な少なくとも2つのキャッチタンクは、回転軸X1方向で、モータ2とファイナルギアFGとの間に挟まれた部分を有する。
【0185】
例えば、キャッチタンクCT1~CT3は、回転軸X1方向で、モータ2とファイナルギアFGとの間に位置している。
モータ2とファイナルギアFGとの間には、小径のインプットギア23と大径のラージギア33とが位置しており、インプットギア23の周りに空間的な余裕がある。
上記のように構成することで、ファイナルギアFGとモータ2との間の回転軸X1方向の空間を有効に利用でき、レイアウト性が高まることになる。
【0186】
(f)ユニット1は、
モータ2と接続されたファイナルギアFG(ギア)を収容するハウジングHSと、
ファイナルギアFGとモータ2とに挟まれた部分を有するカバー9を、有する。
ハウジングHS内に、キャッチガイド85を有する。
キャッチガイド85は、ファイナルギアFGに向けて開口する開口部を有する。
回転軸X1の径方向から見て、キャッチガイド85は、カバー9の径方向の側面とオーバーラップする部分を有する。
【0187】
図16に示すようにキャッチガイド85は、ファイナルギアFGに噛合するスモールギア32の外周を囲むように設けられている。キャッチガイド85は、スモールギア32から見て、車両後方側から下方まで及ぶ範囲に設けられており、開口をファイナルギアFG側の車両前方に向けている。
ユニット1を搭載した車両の前進走行時には、ファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLが、カバー9とファイナルギアFGとの回転軸X1方向の間の領域を通って、キャッチガイド85に向けて移動する。そのため、例えば、キャッチガイド85の形状を調整することで、キャッチガイド85部分でオイルOLの移動方向を制御できる。これにより、ユニット1における潤滑設計の自由度が向上する。
【0188】
例えば、ユニット1を搭載した車両の前進走行時には、ファイナルギアFGで掻き上げられたオイルOLが、連続的にキャッチガイド85に向けて供給される。
キャッチガイド85は、スモールギア32の回転軸X2を、間隔をあけて囲むよう弧状に形成されており、回転軸X2回りの周方向の一方の端部851は、重力方向VLにおける回転軸X2の下方に位置すると共に、上面にオイルOLを貯留可能な形状で湾曲している。そのため、キャッチガイド85の表面(スモールギア32との対向面)には一定量のオイルOLが滞留した状態となる。そのため、ユニット1を搭載した車両の走行時に、ユニット1内でのオイルOLの高さを下げるために、このキャッチガイド85の部分を利用できる。すなわち、ハウジングHS内のオイルレベルを下げることを目的とした潤滑設計の選択肢が増えることになる。
【0189】
例えば、カバー9の裏側(モータ2側)に移動したオイルOLや、ファイナルギアFGが掻き上げたオイルOLが、カバー9の表側(第2ギア室Sb2)に戻るまでの時間を稼ぐことができる。これにより、ハウジングHS内のオイルレベルを下げることを目的とした潤滑設計の選択肢が増える。例えば、カバー9の裏側(モータ2側)に位置する被潤滑対象にオイルを回すことができるので、潤滑設計の選択肢が増える。
【0190】
(g)キャッチガイド85の底面は、カバー9側の端部85aに向かうにつれて、下方に傾斜する部分を有する。
【0191】
図4に示すように、キャッチガイド85におけるスモールギア32との対向面である底面は、ラージギア33側の端部85aに向かうにつれて、スモールギア32の外周との離間距離h1が大きくなるように湾曲している。そのため、キャッチガイド85に到達したオイルOLを、回転軸X2方向に移動させて、ラージギア33側に誘導できる。
【0192】
(h)ユニット1は、ラージギア33とスモールギア32とを有するアイドラギア3を有する。
スモールギア32は、ファイナルギアFGと噛合する。 径方向視において、キャッチガイド85は、スモールギア32を囲う部分を有する。
【0193】
このように構成すると、スモールギア32は、キャッチガイド85に収容される部分(側方を覆われる部分)を有することになり、ユニット1の寸法拡大の抑制に寄与する。
【0194】
(i)キャッチガイド85は、モータ2のモータシャフト20(出力軸)の軸心である回転軸X1を通り、重力方向VLに直交する水平面(水平線HL)よりも上方に位置する部分を、車両後方側に有する。
【0195】
キャッチガイド85の回転軸X2回りの周方向の他方の端部852側は、スモールギア32から見て車両後方側で、水平線HLよりも重力方向VLの上側に位置している。
これにより、キャッチガイド85の端部852側の領域が、キャッチガイド85の内周に沿って車両後方側に移動するオイルOLの移動方向を、上方に向かう方向から、回転軸X2に沿って移動する方向に変更できる。
これにより、キャッチガイド85に到達したオイルOLの回転軸X2方向への飛散を促進できる。また、キャッチガイド85の端部852側の領域を、曲率半径を小さくしつつ、回転軸X2よりも重力方向VLの上側に配置している。そのため、キャッチガイド85の内周に沿って移動するオイルOLの移動方向を、重力を利用して、回転軸X2に沿って移動する方向に変更でき、この方向の変更を促進できる。これにより、軸方向への油送効率が高まることになる。
【0196】
(j)ハウジングHS内では、回転軸X1方向におけるカバー9とモータ2との間に挟まれた領域に、オイルOLを捕捉可能な棚部として機能するリブ(第2リブ720、920、第3リブ730、930)を有する(図11参照)。
棚部として機能するリブには、キャッチガイド85により移動方向が回転軸X2方向に変更されたオイルOLが、中間ケース7の壁部713の領域(図11参照)を通って供給されて貯留される。
ハウジングHS内では、棚部として機能するリブの上方を経由して、キャッチタンクCT2、CT3、ベアリングB3(図4図12図14参照)にオイルOLが供給される。
キャッチタンクCT2、CT3、ベアリングB3は、車両走行方向(車両の前後方向)から見て、モータ2とファイナルギアFGとの間に設けられている。
【0197】
このように構成すると、カバー9の裏側(モータ2側)のスペースを、オイルOLの捕捉や、オイルOLの利用に活用できる。これにより、カバー裏のスペースを有効利用した潤滑設計となる。
【0198】
(k)ユニット1は、
モータ2を収容するモータケース6と、
モータ2に接続されたファイナルギアFGを収容するギアケース8と、
ファイナルギアFGとモータ2との間に挟まれた部分を有するカバー9と、を有する。
モータケース6は、カバー9の開口部である連通孔79、99を介して、ギアケース8と連絡する。
開口部は、ファイナルギアFGの軸心である回転軸X1を通り、かつ重力方向VLに直交する水平面(水平線HL)よりも下方に位置する。
【0199】
ユニット1を搭載した車両の走行時には、回転軸X1回りに回転するファイナルギアFGがギアケース8(第2ギア室Sb2)内のオイルを掻き上げるので、第2ギア室Sb2内のオイルレベルが低下する。
図5に示すように、モータケース6内のモータ室Saと、ギアケース8内の第2ギア室Sb2とを、開口部である連通孔79、99を介して連絡すると、モータ室Sa内のオイルが開口部を通って第2ギア室Sb2内に流入する。すなわち、ギアケース8内のオイルレベルの低下に連動して、モータケース6(モータ室Sa)内のオイルレベルもまた、低下する。すなわち、モータケース6(モータ室Sa)内のオイルレベルを調整できる機構が提供される。
【0200】
(l)開口部では、連通孔79、99を直列に繋いだトンネルを介して、ギアケース8と、モータケース6とを連絡する。
【0201】
このように構成すると、モータケース6を基準として考えると、開口部が、ギアケース8側へのオイルOLの出口となる。第1ギア室Sb1に連絡していないトンネルを設けることで、トンネルの入口をモータ2に近づけることができる。開口部を設けたことにより、モータケース6(モータ室Sa)とギアケース8(第2ギア室Sb2)との間でのトンネルを介したオイルOLの移動が発生するので、オイルOLの移動がスムーズになる。
【0202】
特に、ファイナルギアFGで掻き上げられた後、キャッチタンクCT2を経由してモータ室Saに供給されたオイルOLが、トンネルを通って第2ギア室Sb2に戻されるので、ハウジングHS内部でのオイルOLの循環をスムーズに行える。
【0203】
(m)カバー9とモータ2との間に位置する部分を有する壁部72(ウォール)を有する。
トンネルは、カバー9から回転軸X1方向に突出する筒壁部991(カバートンネル:ウォール突出部)と、壁部72から回転軸X1方向に突出する筒壁部791(ウォールトンネル:ウォール突出部)とを有する。
筒壁部991と筒壁部791との接合面に介在するシール材SLを有する。
【0204】
このように構成すると、連通孔79、99を直列に繋いだトンネルを通過するオイルOLが、外部(第1ギア室Sb1)に漏出することを好適に防止できる。これにより、潤滑設計の精度が向上する。
【0205】
(n)モータ2は、ステータコア22(ステータ)と、ステータコア22の内周に位置するロータコア21(ロータ)と、を有する。
モータ2の回転軸X1方向から見て、開口部の下端(トンネルの下端791a)は、ステータコア22の内周222cよりも外周側に位置する(図5参照)。
【0206】
ステータコア22のティース部222の内周222cと、ロータコア21の外周21cとの間のエアギャップCLよりも下方に、連通孔79、99を直列に繋いだトンネルの下端791a(図5参照)が位置するように、トンネルの位置を設定している。
ステータコア22とロータコア21との間のエアギャップCLにオイルが浸入すると、浸入したオイルがロータコア21の回転に対するフリクションとなり、モータ2の回転抵抗の増加に繋がる。
上記のような位置にトンネルの下端791aを設定すると、モータ室Sa内でのオイルレベルをエアギャップCLよりも低い位置に調整できる。これにより、モータ2の回転抵抗の低減に寄与できる。
【0207】
(o)モータケース6は、キャッチタンクCT2に捕捉されたオイルOLが供給される油孔641を有する。
重力方向Vlから見てモータ2は、油孔641とカバー9との間に位置する部分(ステータコア22のヨーク部221)を有する。
モータ2の外周面であるステータコア22のヨーク部221は、モータケース6の周壁部61の内周面と接触する部分を有する。
モータケース6の周壁部61の内周面には、モータ2の重力方向VL下方に、回転軸X1方向に沿う連通溝65が設けられている。
【0208】
モータ室Sa下部空間は、ヨーク部221を間に挟んだ一方側の空間(第1空間Sa1)と、他方側の空間(第2空間Sa2)とに分かれている。第1空間Sa1と第2空間Sa2との間に、ステータコア22が位置しており、ステータコア22は、周壁部61での支持安定性を高めるために、周壁部61の内周面に接している。
そのため、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動が行われ難くなっている。
【0209】
油孔641を介してモータ2の冷却用のオイルOLをモータ室Saに供給すると、供給されたオイルOLの第2ギア室Sb2側への戻りが悪くなる可能性がある。
上記のように、周壁部61における重力方向VLにおける下部となる領域、より好ましくは最下部となる領域に、連通溝65を設けると、第1空間Sa1と第2空間Sa2との間でのオイルOLの移動を、連通溝65を介して行える。
連通溝65によりモータ2の表裏の間(第1空間Sa1と第2空間Sa2との間)でのオイルOLの通流量を増加することができる。これにより、第2空間Sa2側でのオイルレベルの調整精度が向上する。
【0210】
(p)ハウジングHS(ハウジング部材)は、ファイナルギアFG(ギア)とモータ2とに挟まれた部分を有する壁部72(ウォール)を有する(図2参照)。
【0211】
(q)壁部72(ウォール)とファイナルギアFGに挟まれた部分を有するカバー9を有する。
例えば、デファレンシャルケース40と一体回転するギアは、オイルOLの掻き上げ量が多い。例えば、上記した実施形態の場合には、デファレンシャルケース40と一体回転するファイナルギアFGが、ギアとして好適である。
また、アイドラギア3に代えて、遊星歯車機構を採用する場合には、デファレンシャルケース40と一体回転(公転)する遊星歯車機構のステップドピニオンギアのラージピニオン等は、ギアとして好適である。
【0212】
(r)中間ケース7の壁部72には、回転軸X1方向に沿って突出するウォール突出部(第1リブ710~第7リブ770、筒壁部791)を有する。
カバー9は、回転軸X1方向に沿って突出するカバー突出部(第1リブ910~第7リブ970、筒壁部991)を有する(図11参照)。
【0213】
(s)キャッチタンクCT1および/またはキャッチタンクCT2の底面部は、少なくともウォール突出部とカバー突出部とから構成される。
【0214】
(t)キャッチタンクCT1および/またはキャッチタンクCT2の底面部は、少なくともカバー突出部から構成される。
カバー9を追加することで、モータ2とファイナルギアFGとの間に、キャッチタンクを構成しやすくなる。
【0215】
(u)例えば、カバー9は、キャッチタンクの形成に加えて、ベアリングB2の支持に利用される。この場合、カバー9に複数の機能が付与されるので、部品点数の削減に寄与することになる。
【0216】
(v)キャッチタンクCT2は、モータ2側に向かう排出孔77(第1孔)を有する。排出孔77は、モータ2側に向かって延びる油路と接続されている。モータ2側に向かって延びる油路とは、中間ケース7の外部に設けた配管(図示せず)である。排出孔77は、図示しない配管を介して、モータケース6の油孔641に連絡している(図5参照)。
【0217】
(w)キャッチタンクCT3は、ギア側に向かう第2孔を有している。第2孔は、ファイナルギアFGが収容された第2ギア室SbとキャッチタンクCT3とを連通させる排出孔98である。排出孔98は、カバー9に設けられている。排出孔98は、回転軸X1方向で、ファイナルギアFGの側面に対向している。
【0218】
(x)排出孔98の開口面積は、排出孔77の開口面積よりも小さい。
これにより、キャッチタンクCT2へのオイルOLの貯留を促進できる。ユニット1を搭載した車両の停車時には、ファイナルギアFGが配置された第2ギア室Sb2側へオイルを戻すことが可能である。例えば、第2孔はオリフィスである。
【0219】
(y)カバー9のキャッチタンクCT5は、キャッチタンクCT2に向かう排出孔971(第3孔)を有する。排出孔971は、キャッチタンクCT5とキャッチタンクCT2とを連通する。回転軸X1方向から見て、排出孔971(第3孔)は、排出孔77(第1孔)よりも重力方向上方に位置する(図13参照)。
キャッチタンクCT5からキャッチタンクCT2を介したモータ2側へのオイルの移動を促進できる。
【0220】
(z)キャッチタンクCT4は、ファイナルギアFG側に向かう排出口883(第4孔)を有する。排出口883は、例えばファイナルギアFGの回転軸X1方向の側面と対向する。
排出口883(第4孔)は、例えば、デファレンシャルケース40の重力方向VLの上方に位置する。排出口883(第4孔)は、デファレンシャルケース40内にオイルOLを導入する機能を有する。回転軸X1方向から見て排出口883(第4孔)は、キャッチタンクCT4における車両前方側に位置する。
【0221】
(aa)軸方向視において、キャッチタンクCT3の面積は、キャッチタンクCT1、キャッチタンクCT2、キャッチタンクCT4よりも大きい。
キャッチタンクCT3でのオイルOLの貯留量が増えるので、ハウジングHS内でのオイルレベルを、より下げることができる。これにより、ファイナルギアFGが回転する際の攪拌抵抗が低下する。
【0222】
本明細書における用語「棚部」とは、カバー9とモータ2との間に挟まれた部分を有する要素(部品、部分など)を意味する。例えば、カバー9の一部及び/又はハウジングHSの壁部72(ウォール)の一部を用いて形成することができる。
かかる場合、他部品と一体形成された部分を有することになるので、コスト等に有利である。例えば、棚部を、カバー及び/又はハウジングと別体の部品で構成することも可能である。
【0223】
例えば、棚部は、モータ2の出力軸であるモータシャフト20と一体回転するインプットギア23の下方側の少なくとも一部を囲う部分を有する形状の第2リブ720、920である。
棚部に貯留されたオイルOLを、インプットギア23の回転を利用して所定方向に飛散させることができるので、所望の方向への油送が可能となる。よって、油送効率が高まる。
【0224】
例えば、棚部は、インプットギア23と噛合するラージギア33の下方側の少なくとも一部を囲う部分を有する形状の第3リブ730、930である。 ラージギア33の回転を利用した所定方向への油送が可能となるので、油送効率が高まる。
【0225】
本明細書における用語「トンネル」は、カバー9及び/又は壁部72(ウォール)と一体又は別体とすることができる。
トンネルを、カバー9及び/又は壁部72(ウォール)と一体とするとコスト低減等に寄与する。
例えば、カバー9は、回転軸X1に沿って突出する筒壁部991(カバートンネル:カバー突出部)を有する。
例えば、壁部72(ウォール)は、回転軸X1に沿って突出する筒壁部791(ウォールトンネル:ウォール突出部)を有する。 トンネルが複数の要素(部品、部分等)から構成される場合、2つの要素の間にシール(シール材SL)を設けるとリーク量を減らすことができる。
トンネルは、筒状部分を有するとリーク量を減らすことができる。リーク量が減るとオイルレベルの高さ調整の精度が高まる。
【0226】
(ab)軸方向視において、開口部の下端791aは、ステータコア22の内周面よりも外径側に位置する。ステータコイルエンドの冷却効率が高まる。
【0227】
ここで、本明細書における用語「連絡」とは、複数の空間がつながることを意味する。「キャッチガイド」とは、オイルをガイドする機能を有する要素(部品、部分等)である。
ガイドの外側からガイドにオイルが供給されることをキャッチと表現している。キャッチタンクがキャッチガイドとしての機能を有する場合もある。キャッチガイドは、例えばハウジングの少なくとも一部を利用して設けられるか、ハウジングと別体で設けられる。ハウジングと一体形成すると、部品点数の削減に寄与する。
【0228】
上記の実施形態では、動力伝達機構としてのギア列が、アイドラギア3と差動装置4である場合を例示した。動力伝達機構は、例えば、環状機構や歯車機構等を有していても良い。
【0229】
この場合の環状機構には、例えば、無端環状部品等が含まれる。
無端環状部品等には、例えば、チェーンスプロケット、ベルト&プーリ等が含まれる。
【0230】
この場合の歯車機構には、例えば、減速歯車機構、増速歯車機構、差動歯車機構等が含まれる。
減速歯車機構及び増速歯車機構には、例えば、遊星歯車機構、平行歯車機構等が含まれる。
差動歯車機構には、例えば、傘歯車式のデファレンシャルギア、遊星歯車式のデファレンシャルギア等が含まれる。
【0231】
差動歯車機構は、入力要素であるデファレンシャルケースと、出力要素である2つの出力軸と、差動要素である差動歯車セットと、を有する。
【0232】
傘歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは傘歯車を有する。
遊星歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは遊星歯車を有する。
【0233】
デファレンシャルケースと一体回転するギアは、例えば、平行歯車機構のうちのファイナルギア(デフリングギア)であり、ファイナルギアは、デファレンシャルケースと一体に回転する。
例えば、遊星歯車機構のキャリアとデファレンシャルケースとが一体に形成されている場合、ピニオンギアがデファレンシャルケースと一体に回転(公転)する。
【0234】
例えば、モータの下流に減速歯車機構が接続されている。減速歯車機構の下流に差動歯車機構が接続されている。即ち、モータの下流には減速歯車機構を介して差動歯車機構が接続されている。減速歯車機構に替えて増速歯車機構としても良い。
【0235】
シングルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギア入力、リングギア固定、キャリア出力とすることができる。
ダブルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギア入力、リングギア出力、キャリア固定とすることができる。
【0236】
シングルピニオン型又はダブルピニオン型の遊星歯車機構のピニオンギアは、例えば、ステップドピニオンギア、ノンステップドピニオンギア等を用いることができる。
ステップドピニオンギアは、ラージピニオンとスモールピニオンとを有する。例えば、ラージピニオンをサンギアに噛合させると好適である。例えば、スモールピニオンをリングギアに嵌合させると好適である。
【0237】
ノンステップドピニオンギアは、ステップドピニオンギアではない形式である。
軸方向視において、モータは差動歯車機構とオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、モータは減速歯車機構にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、減速歯車機構は差動歯車機構にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、減速歯車機構はモータにオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動歯車機構は減速歯車機構にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動歯車機構はモータにオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、モータは差動歯車機構とオーバーラップする部分を有する
【0238】
モータと差動歯車機構とが同軸のユニットにおいては、車高方向下方よりも車高方向上方のレイアウト制約が緩い。
例えば、差動歯車機構とモータに挟まれたカバーを有する。
カバーはハウジングに収容された部分を有する。例えば、カバー全体がハウジング内に収容される場合がある。例えば、ハウジングの有する2つのケースにカバーを挟んで固定する場合がある。後者の場合はカバーの一部はハウジング外に露出する。
【0239】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0240】
1:ユニット
2:モータ
3:アイドラギア
4:差動装置
40:デファレンシャルケース
5(5A、5B):ドライブシャフト
6:モータケース
7:中間ケース
8:ギアケース
9:カバー
CL:エアギャップ(隙間)
CT1~CT5:キャッチタンク
FG:ファイナルギア(ギア)
HS:ハウジング
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