(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】改善された親水性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20240415BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20240415BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20240415BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240415BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240415BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240415BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20240415BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240415BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20240415BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20240415BHJP
H01M 10/08 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F2/46
C08F283/00
C09J4/00
C09J9/02
C09J11/06
C09J201/02
G09F9/30 330
H01B1/12 F
H01G11/56
H01M10/08
(21)【出願番号】P 2018547347
(86)(22)【出願日】2016-11-30
(86)【国際出願番号】 GB2016053753
(87)【国際公開番号】W WO2017153706
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2019-11-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2016-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518231345
【氏名又は名称】スーパーダイエレクトリクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】ハイゲイト、ドナルド ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ハマートン、イアン
(72)【発明者】
【氏名】ハウリン、ブレンダン
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】大畑 通隆
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第2479449(GB,A)
【文献】特開2011-108425(JP,A)
【文献】特開2021-185227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
H01M10/06
H01M10/36
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋された電子的に活性な親水性コポリマーを形成する方法であって、以下の工程を含む方法:
a.本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を水と一緒に混合して中間混合物を形成する;
b.少なくともひとつの親水性モノマー、少なくともひとつの疎水性モノマーおよび少なくともひとつの架橋剤を中間混合物に添加してコモノマー混合物を形成する;
c.コモノマー混合物を重合させる;
式(I)は以下のように定義される:
【化1】
式中:
R
1およびR
2は独立して、置換されてもよいC
1-C
6アルキル;
X
-は陰イオン。
【請求項2】
X
-が、Cl
-、C
2N
3
-、CH
3O
3S
-、BF
4
-、PF
6
-、CF
3SO
3
-、Al
2Cl
7
-、AlCl
4
-、NO
3
-、OH
-、F
-、Br
-、I
-、
S
2-
、N
3
-、O
2
-、CO
3
2-、
ClO
3
-
、CrO
4
2-、CN
-、Cr
2O
7
2-、SCN
-、SO
3
2-、MnO
4
-、CH
3COO
-、HCO
3
-、ClO
4
-およびC
2O
4
2-から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
X
-が、Cl
-、C
2N
3
-およびCH
3O
3S
-から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R
1およびR
2が独立して、ヒドロキシル、ハロ、NH
2、NO
2、CH
3O、CO
2H、COOOH、
NHR、NRR’、NHCORおよび
SH(式中、RおよびR’はC
1-C
6アルキル)の1つ以上で置換されていてもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
R
1およびR
2のひとつが置換されてもよいメチルであり、他方が置換されてもよいエチルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程bにおいて、架橋剤の添加の前に、少なくともひとつの親水性モノマーおよび少なくともひとつの疎水性モノマーを中間混合物に添加する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程bにおいて、少なくともひとつの疎水性モノマーの添加の前に、少なくともひとつの親水性モノマーを中間混合物に添加する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
本質的に電子的活性な材料が、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンまたはその組み合わせから選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
本質的に電子的活性な材料が、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネートである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくともひとつの親水性モノマーが、メタアクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピロリドン、プロペン酸メチルエステル、モノメタクリロイルオキシエチルフタレート、アンモニウムスルファトエチル(sulphatoethyl)メタクリレート、ポリビニルアルコールまたはその組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくともひとつの親水性モノマーが、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレートまたはその組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくともひとつの疎水性モノマーが、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートまたはその組み合わせから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくともひとつの疎水性モノマーが、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはその組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
架橋剤が、アリルメタクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレートである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
架橋剤および疎水性モノマーの両方が、アリルメタクリレートである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
重合工程が、サーマル、UVまたはガンマ線照射により行われる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
重合工程が、UVまたはガンマ線照射により行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コモノマー混合物がさらに重合開始剤を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
重合開始剤が、アゾビスイソブチロニトリルまたは2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノン(methylpriophenone)である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
コモノマー混合物中の少なくともひとつの疎水性モノマーに対する少なくともひとつの親水性モノマーの容積比が、20:1~1:1である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
コモノマー混合物中の少なくともひとつの疎水性モノマーに対する少なくともひとつの親水性モノマーの容積比が、20:1~5:1である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
コモノマー混合物中の容積比;少なくともひとつの親水性モノマーおよび少なくともひとつの疎水性モノマー:本質的に電子的活性な材料が、30:1~2:1である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
コモノマー混合物中の容積比;少なくともひとつの親水性モノマーおよび少なくともひとつの疎水性モノマー:本質的に電子的活性な材料が、6:1~3:1である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
コモノマー混合物中の本質的に電子的活性な材料に対する水の容積比が、1:1~10:1である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
コモノマー混合物中の本質的に電子的活性な材料に対する水の容積比が、1:1~3:1である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
さらに重合後コポリマーを水和させる工程を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
コポリマーの水和に続いて少なくとも7日間保存する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
コポリマーを水和し、水和されたコポリマーの合計重量に対して少なくとも10重量%の水を含むように水和する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の方法によって得られる、均質で等方性の電子的に活性な親水性コポリマー。
【請求項30】
少なくともひとつの疎水性モノマー、少なくともひとつの親水性モノマー、水、少なくともひとつの架橋剤、本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を含むコモノマー混合物であって、
a.該本質的に電子的活性な材料および該少なくともひとつの式(I)の化合物を水と一緒に混合して中間混合物を形成する;および
b.該少なくともひとつの親水性モノマー、該少なくともひとつの疎水性モノマーおよび該少なくともひとつの架橋剤を該中間混合物に添加する;
ことによって得られ、
式(I)は以下のように定義されるコモノマー混合物:
【化2】
(式中、
R
1およびR
2は独立して置換されてもよいC
1-C
6アルキル;
X
-は陰イオン)。
【請求項31】
3Dプリンティングにおける、請求項30に記載のコモノマー混合物の使用であって、コモノマー混合物が重合されて3D画像を形成する、使用。
【請求項32】
3Dプリンティングが、スクリーン印刷システムまたはインクジェット印刷システムを使用する、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
水性電解質および請求項29に記載のコポリマーを含む、電池。
【請求項34】
電池が鉛蓄電池である、請求項33の電池。
【請求項35】
水または水性電解質、および請求項29に記載のコポリマーを含む、電気化学セル。
【請求項36】
請求項29に記載のコポリマーを含む、光電子ディスプレイデバイス。
【請求項37】
請求項29に記載のコポリマーを含む、携帯電話のスクリーンまたはコンピュータのスクリーン。
【請求項38】
請求項29に記載のコポリマーを含む、電気伝導性接着ジャンクションであって、隣接する電気伝導性成分の間に位置する接着ジャンクション。
【請求項39】
電気伝導性接着ジャンクションを形成する方法であって、以下の工程を含む:
a.本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を水と一緒に混合して中間混合物を形成する;
b.少なくともひとつの親水性モノマー、少なくともひとつの疎水性モノマーおよび少なくともひとつの架橋剤を中間混合物に添加してコモノマー混合物を形成する;
コモノマー混合物を隣接する電気伝導性部材の間に導入する;
c.コモノマー混合物をin situで前記電気伝導性部材の間に重合させる;
式(I)は以下のように定義される:
【化3】
(式中:
R
1およびR
2は独立して、置換されてもよいC
1-C
6アルキル;
X
-は陰イオン)。
【請求項40】
請求項39の方法により形成される、電気伝導性接着ジャンクション。
【請求項41】
2本の電極およびそれらの間に存在する請求項29に記載のコポリマーを含む、スーパーキャパシタ。
【請求項42】
その構造全体にわたって分散された化学成分と一緒に請求項29に記載のコポリマーを含むセンシングシステムであって、該化学成分が特定の化合物を検知しうるセンシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、改善された電子的に活性な親水性ポリマーおよびその製造に関する。
【0002】
背景技術
本来電子伝導性ポリマーは公知であり、伝導過程が主に電子移動に依存する材料を意味すると理解される。これは、伝導過程が主にイオン移動に依存するイオン電導性ポリマーとは対照的である。
【0003】
電子伝導性の結果として、電子伝導性ポリマーは、カーバッテリー、携帯電話のスクリーンおよびコンピュータのスクリーンなどの電子システム内での適用性を有し得る。これらの電子システムの機能は、電子の伝達および適切な制御に依存する。電子伝導性ポリマーとしては、一般的な金属の伝導率に近い107S/mの伝導率を達成したポリアセチレンが挙げられ、商業的材料は水中に分散剤として供給される。例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS、Clevios 500(登録商標)として市販されている)は、3x104S/mの伝導率を有し、電気化学セルの導体として一般的に使用されるグラファイトの伝導率を超える。
【0004】
しかしながら、電子伝導性ポリマーは水の特性が悪く、水性環境での適用が制限されている。これらの電子伝導性ポリマーは、水性環境に分散または溶解すると不安定になる。したがって、それらは乾燥しているときに最も使用され、水ベースの環境(例えばカーバッテリー)を有する電子システムでは非常に限定的に使用される。電子システムにおける水ベースの環境は、生理食塩水、酸性またはアルカリ性水性環境でありうる。
【0005】
さらに、電子伝導性ポリマーは製造が困難であり、通常は非自立性フィルムとして製造される。これらのポリマーを形成するためには、それらの非自立性のためガラスシートのような固体支持体上で重合または蒸着が行われる。このように、得られるポリマーは、バルクの三次元構造ではなく、大部分が二次元のフィルムである。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
特定の順序で混合された場合、少なくともひとつの疎水性モノマー、少なくともひとつの親水性モノマー、水、少なくともひとつの架橋剤、少なくともひとつの式(I)の化合物、および本質的に電子的活性な材料を含むコポリマー混合物は、(一度重合されると)新しい電子的に活性な親水性コポリマーを提供することを見出した。この材料は、導電性および水特性において均質で等方性である。それは、その構造全体にわたって、親水性であり、架橋され、電子伝導性である。
【0007】
式(I)は、以下のように定義される:
【0008】
【0009】
式中:R1およびR2は、独立して置換されてもよいC1-C6アルキル;
X-は陰イオン。
【0010】
それらの親水性の結果として、本明細書に記載されたコポリマーは良好な水特性を有し、結果として電子システムの水性環境における性能が向上する(既存の親水性材料は電子伝導性ではなくイオン伝導性である)。コポリマーは、様々な異なる水ベースの環境において安定であり、蒸留脱イオン(DD)水だけでなく、生理食塩水、食塩水、酸またはアルカリ溶液などの水性環境においても良好に機能する。さらに、本明細書に記載のコポリマーは、優れた機械的性質および電気伝導性も有する。少なくともひとつの式(I)の化合物の使用は、特に改善された電気的特性を最終コポリマーに付与すると考えられる。このように、本明細書に開示されるコポリマー材料は、カーバッテリーのような水ベースの環境を有するものを含む、電子システム内での広い適用性を有する。これは、悪い水の特性のために乾燥した環境においてのみ従来から使用されているPEDOT:PSSのような既存の電子材料とは対照的である。
【0011】
さらに、コモノマー混合物を得るために使用される特定の混合順序は、バルクの三次元コポリマー構造(大部分は二次元ポリマーフィルムではなく)を達成することを可能にする。得られるコポリマーは自立性であり、したがって、基板上に重合する必要はない。
【0012】
第一の態様において、本発明は、以下の工程を含む架橋された電子的に活性な親水性コポリマーを形成する方法を提供する:
a.本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を水と一緒に混合し中間混合物を形成する;
b.少なくともひとつの親水性モノマー、少なくともひとつの疎水性モノマーおよび少なくともひとつの架橋剤を中間混合物に添加してコモノマー混合物を形成する;
c.コモノマー混合物を重合させる;
式(I)は以下のように定義される:
【0013】
【0014】
式中:R1およびR2は独立して置換されてもよいC1-C6アルキル;
X-は陰イオン。
【0015】
第二の態様においては、本発明は、本発明の第一の態様の方法により得られ得る均質で等方性の電子的に活性な親水性コポリマーを提供する。
【0016】
第三の態様においては、本発明は、少なくともひとつの疎水性モノマー、少なくともひとつの親水性モノマー、水、少なくともひとつの架橋剤、本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を含むコモノマー混合物を提供し、式(I)は以下のように定義される:
【0017】
【0018】
式中:R1およびR2は独立して置換されてもよいC1-C6アルキル;
X-は陰イオン。
【0019】
さらなる態様は、独立請求項に定義されており、電子システムを利用する様々な工業製品が挙げられる。そのような工業製品のひとつがスーパーキャパシタである。それらの改善された電子特性の結果として、本明細書に記載されるコポリマーは、スーパーキャパシタシステム内の電解質成分として使用され得る。本明細書に記載されたコポリマーがこの文脈で使用される場合、結果として得られるスーパーキャパシタは特に高いキャパシタンス値を達成する。さらに、本明細書に記載のコポリマーの改善された機械的性質および自立性の結果として、得られるスーパーキャパシタは追加のセパレータを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、VP:PEDOT-PSS+CL-14(45%含水率)を示す。
【
図2】
図2は、VP:PEDOT-PSS+CL-14(生理食塩水中最大水和)を示す。
【
図3】
図3は、VP:PEDOT-PSS+CL-14(食塩水中最大水和)を示す。
【
図4】
図4は、VP:PEDOT-PSS+ST-35(含水率45%)を示す。
【
図5】
図5は、VP:PEDOT-PSS+ST-35(DD水中最大水和)を示す。
【
図6】
図6は、VP:PEDOT-PSS+ST-35(H
2SO
4中最大水和)を示す。
【
図7】
図7は、CL-14を伴うVP:PEDOT-PSS(比4:1)を示す。
【
図8】
図8は、CL-14を伴うVP:PEDOT-PSS(比3:1)を示す。
【
図9】
図9は、CL-14を伴うVP:PEDOT-PSS(比2:1)を示す。
【
図10】
図10は、負電位限界の関数として100mV s-1におけるVP:PEDOTPSS:Cl4のサイクルボルタモグラムを示す。破線は、コポリマー層における不可逆的な構造変化(例えば、分解)に関連する非対称電流応答を示す。
【
図11】
図11は、負電位限界の関数として100mV s-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4のサイクルボルタモグラムを示す。破線は、コポリマー層における不可逆的な構造変化(例えば、分解)に関連する非対称電流応答を示す。
【
図12】
図12は、走査速度50、100、150および200mV s
-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4(出来上がった状態)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図13】
図13は、走査速度50、100、150および200mV s
-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4(水中の水和)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図14】
図14は、走査速度50、100、150および200mV s
-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4(生理食塩水(saline)中の水和)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図15】
図15は、走査速度50、100、150および200mV s
-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4(H
2SO
4中の水和)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図16】
図16は、走査速度5mV s
-1での、出来上がった状態のVP:PEDOTPSS:Cl4、生理食塩水(Saline)中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4、水中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4およびH
2SO
4中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図17】
図17は、走査速度25、50、100、150および200mV s
-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4(出来上がった状態)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図18】
図18は、走査速度25、50、100、150および200mV s
-1でのVP:PEDOTPSS:Cl4(出来上がった状態)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図19】
図19は、走査速度100mV s
-1での、生理食塩水中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4、水中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4、H
2SO
4中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4および食塩水中の水和VP:PEDOTPSS:Cl4のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図20】
図20は、走査速度100mV s
-1での、生理食塩水中の水和VP:PEDOTPSS:ST35、水中の水和VP:PEDOTPSS:ST35、H
2SO
4中の水和VP:PEDOTPSS:ST35および食塩水中の水和VP:PEDOTPSS:ST35のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図21】
図21は、走査速度100mV s
-1での、生理食塩水中の水和VP:PEDOTPSS:413、水中の水和VP:PEDOTPSS:413、H
2SO
4中の水和VP:PEDOTPSS:413および食塩水中の水和VP:PEDOTPSS:413のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図22】
図22は、走査速度50、100、150および200mV s
-1における水中での水和VP:PEDOTPSS:Cl4のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図23】
図23は、走査速度50、100、150および200mV s
-1での生理食塩水中での水和VP:PEDOTPSS:Cl4のサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図24】
図24は、1Vからさまざまな負電位までの生理食塩水中での水和VP:PEDOTPSS:ST35のクロノアンペロメトリックトランジェントを示す。
【
図25】
図25は、生理食塩水中での水和VP:PEDOTPSS:ST35に対する電位ステップの振幅の関数としての
図24のトランジェントの積分により得られた変化を示す。
【
図26】
図26は、生理食塩水中での水和VP:PEDOTPSS:ST35の現象論的固有キャパシタンスの周波数依存性を示す。
【0021】
好ましい実施形態の説明
本明細書で使用するとき、用語「モノマー」は、当技術分野での通常の定義をとり、別のモノマーと化学的に結合してポリマーを形成し得る分子化合物を指す。
本明細書で使用するとき、用語「コモノマー混合物」は、当該技術分野での通常の定義をとり、重合したときにコポリマーを形成する混和性モノマーの溶液または分散液を指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「架橋剤」は、ポリマー鎖の間に化学結合を形成することができる分子化合物を指し、メチレンビスアクリルアミド、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミド、アリルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートなどの化合物が挙げられる。アリルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。架橋剤は、疎水性または親水性であってもよい。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「重合開始剤」は、当該技術分野において通常の定義をとり、化学重合の過程、例えばフリーラジカル重合を開始することができる薬剤を指す。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノン(methylpriophenone)はかかる開始剤の例である。重合がサーマル手段による場合はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が有用であり、2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノンはUV重合での使用に適している。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「中間混合物」は、さらなる成分が添加される溶液または分散液を指す。例えば、コモノマー混合物を形成するという文脈において、用語「中間混合物」は、完全なコモノマー混合物の全てではないが一部の成分を含む混合物を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「コポリマー」は、当該技術分野において通常の定義をとり、ポリマー鎖が2つ以上の異なるタイプのモノマーを含むポリマーを指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、ポリマー材料に関して使用される場合の用語「水特性」は、水および他の水性環境(例えば生理食塩水)に対するそのポリマー材料の特性および挙動、すなわち水性環境におけるその親水性および安定性を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、ポリマー材料に関して使用される場合の用語「均質な」は、その物理的特性(例えば、導電特性および水特性)がその全体の構造にわたって実質的に均一であるポリマー材料を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、ポリマー材料に関して使用される場合の用語「等方性」は、その性質がすべての配向において同じであるポリマー材料を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、コモノマー混合物に関して使用される場合の用語「均質な」は、均一に溶解または混合される混和性モノマーを含むコモノマー溶液または分散液を指す。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「親水性ポリマー」は、架橋されていないときに水に溶解し、架橋したときに水を吸収して膨潤して安定な弾性固体を形成するポリマーを指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「親水性モノマー」は、当該技術分野において通常の定義をとり、水分子に対する親和性を有するモノマーを指す。用語「疎水性モノマー」は、当該技術分野において通常の定義をとり、水分子をはじくモノマーを指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「電気的に活性な」は、当該技術分野において通常の定義をとり、従って、電子的に活性な材料およびイオン的に活性な材料の両方を包含することができる。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「電子的に活性な材料」は、当技術分野での通常の定義をとり、伝導過程が主に電子伝達に依存するか、またはインターフェースで出力として電子が生成される材料を指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「本質的に電子的活性な材料」は、さらなる修飾を必要とせずに電子的に活性化される電子的活性な材料を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「イオン活性材料」は、当該技術分野において通常の定義をとり、伝導過程が主にイオン移動に依存する材料を指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、中間またはコモノマー混合物中の成分としての用語「水」は、添加された水を指し、すなわち、例えばかかる原材料が水溶液または分散液として供給される場合には残りの成分の原材料に既に付随する水を含まない残りの成分に加えられた水を指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、C1-C6アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基を指す。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、tert-ヘキシル、イソヘキシルおよびsec-ヘキシルが挙げられる。
【0038】
それが生じる文脈において他に特定されない限り、本明細書の任意の部分に適用される用語「置換された」は、例えば、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオ、ハロ(フルオロおよびクロロなど)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、ニトリル(-CN)、オキソ、フェニル、-COOH、-COORA、-CORA、-SO2RA、-CONH2、-SO2NH2、-CONHRA、-SO2NHRA、-CONRARB、-SO2NRARB、-NH2、-NHRA、-NRARB、-OCONH2、-OCONHRA、-OCONRARB、-NHCORA、-NHBCOORA、-NRBCOORA、-NHSO2ORA、-NRBSO2ORA、-NHCONH2、-NRACONH2、-NHCONHRB、-NRACONHRB、-NHCONRARBまたは-NRACONRARB(式中、RAおよびRBは、独立して、(C1C6)アルキル基、または同じ窒素に結合している場合のRAおよびRBは、モルホリニル、ピペリジニルまたはピペラジニル環などの環状アミノ環を形成してもよい)から選択される少なくともひとつの置換基に置換されることを意味する。「任意の置換基」または「置換基」は、前述の置換基のひとつであり得る。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「液体電解質」は、当該技術分野において通常の定義を有し、水、アセトニトリル、プロピレンカーボネートまたはテトラヒドロフランなどの溶媒に溶解させた、カチオン(カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムなど)溶液およびアニオン(クロライド、カーボネートおよびホスフェートなど)溶液を指す。本明細書で使用するとき、用語「水性電解質」は、当該技術分野で通常の定義をとり、カチオン(例えばカリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムなど)およびアニオン(クロライド、カーボネートおよびホスフェートなど)を含む水溶液を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「光電子ディスプレイデバイス」は、当該技術分野において通常の定義をとり、したがって、赤外線、紫外線または可視光のような電磁エネルギーを供給、検出および制御することができるデバイスを指す。
【0041】
第一態様において、本発明は、以下の工程を含む、架橋された電子的に活性な親水性コポリマーを形成する方法を提供する:
a.本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を水と一緒に混合して中間混合物を形成する;
b.少なくともひとつの親水性モノマー、少なくともひとつの疎水性モノマーおよび少なくともひとつの架橋剤を中間混合物に添加してコモノマー混合物を形成する;
c.コモノマー混合物を重合させる;
式(I)は以下のように定義される:
【0042】
【0043】
式中、R1およびR2は独立して置換されてもよいC1-C6アルキル;
X-は陰イオン。
好ましくは、電子的に活性な材料はポリマーである。
【0044】
本発明の第1の態様に従って成分を特定の順序で混合する場合、均質なコモノマー混合物が得られることが分かった。これは、他の可能な混合順序とは対照的であり、重合工程中に成分が別個の層に分離しやすくなり、それによって連続材料の形成が妨げられる。これらの問題が本明細書に開示された方法で回避されるので、自立性の連続バルク三次元コポリマー構造が達成される。
【0045】
より好ましくは、本質的に電子的活性な材料はPEDOT:PSSである。本明細書に開示された方法とは別の他の混合順序に関連する問題は、PEDOT:PSSに対して特に顕著である。しかし、本発明の文脈においてPEDOT:PSSが本質的に電子的活性な材料として使用される場合、実施例に示すように、良好な結果が達成される。
【0046】
少なくともひとつの式(I)の化合物の使用は、特に改善された電気特性を有する最終コポリマーをもたらす。少なくともひとつの式(I)の化合物は、コモノマー混合物の総重量に基づいて8重量%~33重量%、好ましくは14重量%~20重量%、最も好ましくは17重量%の量で存在する。式(I)の化合物は、典型的には、工程a)においてイオン液体として添加される。誤解を避けるために、式(I)の化合物のイミダゾリウム成分は、イミダゾリウム環の周りの電子的な非局在化に起因して、イミダゾリウム互変異性体をもカバーし、以下の構造を含む:
【0047】
【0048】
好ましくは、X-は、Cl-、C2N3
-、CH3O3S-、BF4
-、PF6
-、CF3SO3
-、Al2Cl7
-、AlCl4
-NO3
-、OH-、F-、Br-、I-、S2
-、N3
-、O2
-、CO3
2-、ClO3
2-、CrO4
2-、CN-、Cr2O7
2-、SCN-、SO3
2-、MnO4
-、CH3COO-、HCO3
-、ClO4
-およびC2O4
2-から選択される。より好ましくは、X-は、Cl-、C2N3
-、CH3O3S-、BF4
-、PF6
-、CF3SO3
-、Al2Cl7
-、AlCl4
-およびNO3
-から選択される。最も好ましくは、X-は、Cl-、C2N3
-およびCH3O3S-から選択される。
【0049】
好ましくは、任意の置換基は、ヒドロキシル、ハロ、NH2、NO2、CH3O、CO2H、COOOH、NR、NRR’、NHCORおよびRSH(式中、RおよびR’はC1-C6アルキル)のひとつ以上から選択される。より好ましくは、任意の置換基は、ヒドロキシル、ハロ、NH2またはNO2のひとつ以上から選択される。R1およびR2の一方または両方が特定の官能基で置換されている場合、得られる式(I)の化合物の分散特性を調整および改善することができる。
【0050】
R1およびR2は、同一でも異なっていてもよい。好ましくは、R1およびR2のひとつは置換されてもよいメチルおよび他方は置換されてもよいエチルである。
【0051】
最も好ましくは、少なくともひとつの式(I)の化合物は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドおよび1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネートから選択される。
【0052】
好ましくは、工程bにおいて、架橋剤の添加前に、少なくともひとつの親水性モノマーおよび少なくともひとつの疎水性モノマーを中間混合物に添加する。
【0053】
好ましくは、工程bにおいて、少なくとも疎水性モノマーの添加の前に少なくともひとつの親水性モノマーを中間混合物に添加する。
【0054】
好ましくは、少なくともひとつの親水性モノマーは、メタアクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート(例、2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチルアクリレート、ビニルピロリドン(例、n-ビニル-2-ピロリドン)、プロペン酸メチルエステル(例、プロペン酸2-メチルエステル)、モノメタクリロイルオキシエチルフタレート、ポリ-ビニルアルコール、アンモニウムスルファトエチル(sulphatoethyl)メタクリレート、またはその組み合わせから選択される。好ましくは、コモノマー混合物はひとつの親水性モノマーを含む。
【0055】
より好ましくは、少なくともひとつの親水性モノマーは、ビニル-2-ピロリドン(VP)および2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはその組み合わせから選択される。より好ましくは、少なくともひとつの親水性モノマーは、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはその組み合わせから選択される。
【0056】
好ましくは、少なくともひとつの疎水性モノマーは、メチルメタクリレート、アクリロニトリル(AN),メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、アリルメタクリレートまたはその組み合わせから選択される。好ましくは、コモノマー混合物は、ひとつの疎水性モノマーを含む。
【0057】
より好ましくは、少なくともひとつの疎水性モノマーは、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、またはその組み合わせから選択される。
【0058】
好ましくは、少なくともひとつの架橋剤は、アリルメタクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレートから選択される。
【0059】
上の定義から理解されるように、上で使用される用語は必ずしも相互に排他的ではない。例えば、用語「疎水性モノマー」および「架橋剤」は必ずしも相互に排他的ではない。本発明において、疎水性モノマーと架橋剤は、同一でも異なっていてもよい。
【0060】
特定の形態では、疎水性モノマーは、架橋剤と同じであってもよい。例えば、特定の実施形態では、架橋剤および疎水性モノマーの両方がアリルメタクリレートである。
【0061】
いくつかの実施形態では、親水性モノマーおよび/または疎水性モノマーは非架橋性である。用語「非架橋性疎水性モノマー」、「非架橋性親水性モノマー」および「架橋剤」の間に重複はない。これらの実施形態において、架橋剤、疎水性モノマーおよび親水性モノマーは、異なる化学種である。
【0062】
好ましくは、疎水性モノマーは、架橋剤とは異なる化学種である。これらの実施形態において、架橋剤とは異なる疎水性モノマーの使用は、実施例に記載されるように、特に良好な機械的安定性を有するコポリマーの形成を可能にする。
【0063】
好ましくは、重合工程は、サーマル、UVまたはガンマ線照射により行われる。
【0064】
より好ましくは、重合工程は、UVまたはガンマ線照射により行われる。
【0065】
好ましい実施形態においては、コモノマー混合物はさらに重合開始剤を含む。重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノン(methylpriophenone)であってもよい。
【0066】
重合開始剤の存在は、重合がサーマルまたはUV照射による場合に特に好ましい。ひとつの実施形態では、重合はサーマル手段によるものであり、開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。別の実施形態では、重合はUV照射によるものであり、開始剤は2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノン(methylpriophenone)である。
【0067】
コモノマー混合物の個々の成分は、均一に混合して均質な溶液または分散液を形成するのに十分な量で含まれていなければならない。
【0068】
疎水性モノマーは、コモノマー混合物の総重量を基準にして、5重量%~80重量%、好ましくは5重量%~60重量%、最も好ましくは5重量%~20重量%の量で存在し得る。親水性モノマーは、コモノマー混合物の総重量を基準にして、5重量%~90重量%、好ましくは5重量%~80重量%、最も好ましくは50重量%~70重量%の量で存在し得る。架橋剤は、コモノマー混合物中に、コモノマー混合物の総重量を基準にして、1重量%~25重量%、好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは2重量%~10重量%で存在し得る。本質的に電子的活性な材料は、1重量%~20重量%、最も好ましくは2重量%~10重量%の量で存在し得る。
【0069】
コモノマー混合物中の水の量は、均一に混合された均質な溶液または分散液を提供するのに十分でなければならず、水に不溶性である本質的に電気的活性な材料を均一に分散させるのに十分でなければならない。コモノマー混合物中の水の量は、コモノマー混合物の総重量を基準として、1重量%~50重量%、好ましくは5重量%~50重量%、最も好ましくは5重量%~20重量%であり得る。
【0070】
好ましくは、コモノマー混合物中の少なくともひとつの疎水性モノマーに対する少なくともひとつの親水性モノマーの容積比は、20:1~1:1、より好ましくは20:1~5:1、特に10:1である。
【0071】
好ましくは、コモノマー混合物中の容積比、少なくとも1種の親水性モノマーおよび少なくとも1種の疎水性モノマー:本質的に電子的活性な材料は、30:1~2:1、より好ましくは6:1~3:1である。
【0072】
好ましくは、コモノマー混合物中の本質的に電子的活性な材料に対する水の容積比は、1:1~10:1、好ましくは1:1~3:1、特には2:1である。
【0073】
上記の好ましい比率で成分を使用すると、特に良好な結果が達成されることが見出されている。これらの比で使用する場合、成分は特に互いに混和性であり、これは重合工程および連続バルクコポリマー材料の形成を助ける。
【0074】
好ましい実施形態では、コポリマーは重合後に水和される。この水和工程は、蒸留脱イオン(DD)水を用いて、または生理食塩水、食塩水、酸、またはアルカリ溶液などの水溶液を用いて行ってもよい。生理食塩水が水和工程に使用される場合、生理食塩水は好ましくは水に0.002g/cc~0.1g/ccのNaCl、より好ましくは水に0.009g/ccのNaClを有する。食塩水溶液を水和工程に使用する場合、食塩水溶液は好ましくは水に0.3g/ccのNaClを有する。酸溶液が水和工程に使用される場合、酸は好ましくは5mol/dm3のH2SO4である。アルカリ溶液が水和工程に使用される場合、アルカリ溶液は好ましくはKOHの水溶液であり、KOHは10重量%~30重量%で存在する。この水和工程により、コポリマー中の水の量は、水和したコポリマーの総重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%になる。理論に拘束されることを望むものではないが、水がこの量で存在する場合、それは「可塑剤」として作用し、コポリマーの他の成分が十分な分子間移動度を有することを可能にし、時間が経つにつれてコモノマーの形成が自己組織化される。例えば、この自己組織化は、約7~14日の期間内に起こり得る。製造および/またはさらなる水和に続いて、コポリマーの電気的特性が経時的に改善することが観察されている。このように、好ましい実施形態では、水和後に少なくとも7日間、好ましくは少なくとも14日間、コポリマーを保存する。水和後100日を超える期間にわたって特性が改善されることを実証している実施例で示されているように、水和後にコポリマーが安定するだけでなく、改善された電気伝導性も示す。
【0075】
本明細書に開示されるコポリマーは、種々の水性環境において良好に機能し、実施例に示されるように、様々な環境において良好に水和する。さらに、式(I)のアニオンX-は、意図される水和溶液および/またはコポリマーが使用されることが意図される水性環境の性質に応じて選択され得る。このように、本明細書に開示されるコポリマーは、特定の溶液における水和に特によく適合するように、および/または特定の工業製品での使用に特によく適合するように仕立ててもよい。例えば、X-がメタンスルホネート(CH3O3S-)である場合、得られるコポリマーは水性硫酸中で特に良好に水和する。得られるコポリマーも、特に良好な電気伝導率を示すという点で、水性硫酸環境で特に良好に機能する。このように、X-がメタンスルホネート(CH3O3S-)であるときに生じるコポリマーは、鉛蓄電池(鉛蓄電池は水性硫酸環境である)において特に良好に機能する。別の例として、X-がクロライド(Cl-)である場合、得られるコポリマーは塩酸中で特に良好に水和し、塩酸環境において特に良好な電気伝導性を示す。
【0076】
コモノマー混合物は、UV、ガンマ線またはサーマル照射を用いて提供および重合されてもよい。UVまたはガンマ線照射は周囲温度および圧力下で実施してもよく、サーマル重合は70℃までの温度で行ってもよい。
【0077】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に関して記載された実施形態のいずれかによる方法によって得ることができる均質で等方性の電気的に活性な親水性コポリマーを提供する。かかる均質なコポリマーは新規であると考えられる。
【0078】
第3の態様において、本発明は、少なくともひとつの疎水性モノマー、少なくともひとつの親水性モノマー、水、少なくともひとつの架橋剤、および本質的に電子的活性な材料を含むコモノマー混合物を提供する。
【0079】
好ましい疎水性モノマー、親水性モノマー、本質的に電子的活性な材料および架橋剤は上記定義の通りである。
【0080】
上述のコモノマー混合物の重合は、本明細書に開示される均質で等方性の電子的に活性な親水性コポリマーをもたらす。
【0081】
本明細書に開示されるコポリマーおよびコモノマー混合物は、様々な用途で使用することができ、水ベースの環境を有する電子システムで特に有用である。しかしながら、本明細書に開示されたコポリマーは、他の電子システム、すなわち、それらの優れた機械的特性および電気伝導性のために、非水ベースの環境で使用される場合にも利点を提供する。
【0082】
好ましくは、本明細書に開示されるコモノマー混合物は、コモノマー混合物が重合されて3D画像を形成する3Dプリンティングにおいて使用される。コモノマー混合物から形成されたコポリマーの親水性は3D印刷画像を形成する際に有利であると考えられる。
【0083】
好ましくは、本明細書に開示されるコポリマーは、水性電解質と共に電池中で使用される。好ましくは、電池は鉛蓄電池である。あるいは、本明細書に開示されたコポリマーは、水または水性電解質と共に電気化学セルに使用される。この実施形態では、電池または電気化学セルは、本発明のコポリマーの有利な特性のために可能になるフレキシブルであってもよい。特定の実施形態では、本明細書に開示されるコポリマーは、光電池において使用される。
【0084】
好ましくは、本明細書に開示されるコポリマーは、スーパーキャパシタシステム内の電解質成分として使用される。当業者には理解されるように、スーパーキャパシタは一般にふたつの電極とその間に配置された電解質成分とを含む。スーパーキャパシタによって達成される最大キャパシタンス値は、電解質の性質ならびに電極の性質に依存し得る。当業者には理解されるように、複数の異なる種類のスーパーキャパシタシステムが存在する。これらには、2層スーパーキャパシタ、疑似容量性スーパーキャパシタ、およびハイブリッドスーパーキャパシタが含まれる。二層スーパーキャパシタは、通常、比較的低コストの炭素電極を含む。二層スーパーキャパシタのキャパシタンスは主に静電キャパシタンスである。一方、擬似容量性スーパーキャパシタは、電解質と一緒に酸化還元(レドックス)反応を受けることができる比較的高価な電極を含む。そのようなレドックス活性電極は、例えば、ランタンルテニウムまたはバナジウムを含むことができる。したがって、疑似容量性スーパーキャパシタのキャパシタンスは、電気化学キャパシタンスによって著しく増加(または増大)される。ハイブリッドスーパーキャパシタは、異なる特性を有する電極の組み合わせを含み、例えば、ひとつの炭素電極と、電解質とのレドックス反応を受けることができるひとつの電極とを含むことができる。したがって、ハイブリッドスーパーキャパシタのキャパシタンスは、静電キャパシタンスと電気化学キャパシタンスとの組み合わせである。従来、上記スーパーキャパシタシステム内の電解質成分は液体電解質である。
【0085】
本明細書に開示されたコポリマーがスーパーキャパシタの従来の液体電解質の代わりに使用される場合、得られるスーパーキャパシタは特に高いキャパシタンス値を達成する。これは実施例で示されている。本明細書に開示されるコポリマーが二層スーパーキャパシタに使用される場合、達成されるキャパシタンス値は、従来の液体電解質で達成されるキャパシタンス値に対して3~4桁大きい。本明細書に開示されたコポリマーが疑似容量性スーパーキャパシタに使用される場合、キャパシタンス値は、さらに2倍(すなわち、本発明のコポリマーを含む二層スーパーキャパシタのキャパシタンス値に対して)増加した。理論に拘束されることを望むものではないが、疑似容量性スーパーキャパシタは、電解質と電極とが相互にレドックス反応を起こす能力により、より高い静電キャパシタンス値を達成すると考えられる。理論に束縛されることを望まないが、本明細書に開示されたコポリマーの電子特性は、有効なレドックス反応が達成され、それにより特に増加したキャパシタンス値を提供するようなものであると考えられる。良好なキャパシタンス値は、ハイブリッドスーパーキャパシタの状況においても達成される。要約すれば、所与のスーパーキャパシタシステムおよび所与の電極に関して、スーパーキャパシタ内の電解質成分として本明細書で開示されるコポリマーを使用する場合、最大キャパシタンスが増加する。さらに、コポリマーは、実施例に示すように、商業的に許容可能な電圧範囲にわたって安定している。
【0086】
さらに、本明細書に記載のコポリマーの改善された機械的特性および自立性の結果として、本明細書で開示されるコポリマーを電解質成分として含むスーパーキャパシタは、追加のセパレータを必要としない。従来、スーパーキャパシタシステム内で液体電解質が使用される場合、スーパーキャパシタは、ふたつの電極間の分離を維持するために、追加のセパレータをさらに備える必要がある。本明細書に記載のコポリマーが従来の液体電解質の代わりに使用される場合、それらの機械的性質および自立性は、追加のセパレータがない場合でも電極間の分離が維持されるほどである。
【0087】
別の実施形態では、本明細書に開示されるコポリマーは、センシングシステムにおいて使用される。センシングシステムは、1つ以上の化学成分を含んでもよく、これらの化学成分は特定の化合物を検出することができる。有利には、これらの1つ以上の化学成分は、本明細書に開示されるコポリマーの構造全体に分散されてもよく、得られるコポリマーは、センシングシステムに含まれてもよい。本明細書に開示されるコポリマーは、コポリマー構造内に安定して保持される化学成分のための支持マトリックスとして作用し、その検出能力が保存されるように作用する。そのようなセンシングシステムによって検出される特定の化合物としてはグルコースが挙げられる。当業者は、グルコースを検出することができる化学成分に精通しており、そのような化学成分として、ベネディクト試薬(無水炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムおよび硫酸銅(II)五水和物を含む)を挙げることができる。
【0088】
別の実施形態では、本明細書で開示されるコポリマーは、光電子ディスプレイデバイスに使用される。この実施形態では、光電子ディスプレイデバイスは、好ましくはフレキシブルであり、これは、本発明のコポリマーの有利な特性によって可能である。
【0089】
別の実施形態では、本明細書に開示されるコポリマーは、接着ジャンクションが隣接する電気伝導性部材の間に配置される、電気伝導性接着ジャンクションを形成するために使用してもよい。好ましくは、接着ジャンクションと共に隣接する電気伝導性部材は、2D電気チップのスタックのような集積回路のスタックを形成する。
【0090】
別の実施形態では、電気伝導性接着ジャンクションを形成する方法があり、当該方法は以下の工程を含む:
a.本質的に電子的活性な材料および少なくともひとつの式(I)の化合物を水と一緒に混合して中間混合物を形成する;
b.少なくともひとつの親水性モノマー、少なくともひとつの疎水性モノマーおよび少なくともひとつの架橋剤を中間混合物に添加してコモノマー混合物を形成する;
隣接する電気伝導性部材の間にコモノマー混合物を導入する;
c.該電気伝導性部材の間にin situでコモノマー混合物を重合させる;
式(I)は以下のように定義される:
【0091】
【0092】
式中:R1およびR2は独立して置換されてもよいC1-C6アルキル;
X-が陰イオン。
【0093】
電気伝導性接着ジャンクションを形成する方法は、本明細書で開示されたコポリマーを形成する工程に関して特定された追加の特徴のいずれかを含んでもよい。さらに、別の実施形態では、この方法によって形成された電気伝導性接着ジャンクションがある。
【0094】
以下の実施例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0095】
実施例1:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライドを伴う3:1 VP対PEDOT-PSS
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライドは、以後「CL-14」と呼ぶ。
【0096】
親水性コポリマーは、式(I)の化合物としてのCL-14および(架橋剤および疎水性コモノマーとしての)アリルーメタクリレートと共にビニルピロリドンおよびPEDOT-PSSを3:1の比で使用して調製した。
【0097】
PEDOT-PSSに対するVPの3:1の比を得るために、1gのCL-14をPEDOT-PSS(分散液として供給)1mlに溶解した。次いで、水1.5mlを加え、得られた混合物をスターラーバーで20分間連続的に撹拌した。1-ビニル-2-ピロリドン3mlをPEDOT-PSS/CL-14/水混合物に滴下した。均一に混合した後、アリルメタクリレート0.165mlを加え、開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノン0.11mlを加えた。
【0098】
得られたコモノマー混合物をUV下で硬化させて、架橋コポリマーを製造した。「出来上がった状態」、すなわちさらなる水和を伴わないコポリマーの含水率は45%と測定された。伝導率は製造直後に測定し、製造後の様々な日数で再度測定した。結果を表1(下記)および
図1に示す。
【0099】
【0100】
これらの結果から分かるように、コポリマーは、製造直後に良好な電気伝導性を示し、製造後に経時的にさらに改善された電気特性を示す。
【0101】
実施例1aおよび1b-水和されたコポリマー
親水性架橋コポリマーを実施例1と同じ方法で製造した。これらをa)生理食塩水(0.009g/cc DD水中のNaCl)およびb)食塩水(0.3g/cc 水中のNaCl)中で水和させた。
【0102】
1a-生理食塩水中での水和(0.009g/cc、DD水中のNaCl)
実施例1のコポリマーを、最大レベルの水和に達するまで水和させた(約80重量%の含水率に相当する)。水和直後に伝導率を測定し、水和後の様々な日数に続いて再度測定した。結果を表2(下記)および
図2に示す。
【0103】
表2において、用語「膨張率」とは、最大レベルの水和に到達した後のコポリマーの厚さ(すなわち、コポリマーの最短線形寸法)を、水和前のコポリマーの厚さで割ったものを指す。厚さは、マイクロメーター、バーニアキャリパーまたは走行顕微鏡などの任意の適切な手段によって測定した。
【0104】
【0105】
1b-食塩水中での水和
実施例1のコポリマーを、最大レベルの水和に達するまで(約75重量%の含水率に対応する)食塩水中で水和させた。水和直後に伝導率を測定し、水和後の様々な日数に続いて再度測定した。結果を表3(下記)および
図3に示す。
表2と同様の方法で表3の膨張率を算出した。
【0106】
【0107】
見て分かるように、コポリマーは、各水溶液中の水和の直後に良好な電気伝導性を示し、水和後時間と共にさらに改善された電気特性を明示する。
【0108】
実施例2:1-エチル(ethy)-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネートを伴う3:1 VP対PEDOT-PSS
1-エチル(ethy)-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネートを以後ST-35という。
CL-14の代わりにST-35を用いた以外は実施例1と同様の方法を用いて親水性架橋コポリマーを得た。
【0109】
「出来上がった状態」、すなわちさらなる水和を伴わないコポリマーの含水率は45%と測定された。伝導率は製造直後に測定し、製造後9日目に再び測定した。結果を表4(下記)および
図4に示す。
【0110】
【0111】
これらの結果から分かるように、コポリマーは、製造直後に良好な電気伝導性を示し、製造後時間と共にさらに改善された電気特性を明示する。
【0112】
実施例2aおよび2b-水和されたコポリマー
架橋コポリマーを実施例2と同じ方法で製造した。次いでこれらをa)DD水およびb)硫酸溶液(濃度5mol/dm3)中で水和させた。
【0113】
2a-DD水中での水和
実施例2のコポリマーを、25℃で最大レベルの水和に達するまで水和した(約78重量%の含水率に相当する)。水和直後に伝導率を測定し、水和後7日に再び測定した。結果を表5(下記)および
図5に示す。
表5の膨張率は、表2と同様に算出した。
【0114】
【0115】
2a-硫酸溶液中での水和
実施例2のコポリマーを、最大レベルの水和に達するまで水和した(約84重量%の含水率に相当)。水和直後に伝導率を測定し、水和後7日に再び測定した。結果を表6(下記)および
図6に示す。
表6の膨張率は、表2と同様に算出した。
【0116】
【0117】
見て分かるように、コポリマーは、各水溶液中での水和の直後に良好な電気伝導性を示し、水和後の時間と共にさらに改善された電気特性を明示する。
【0118】
実施例3
3つの異なる比のビニルピロリドンとPEDOT-PSSを用いて3つのコポリマーを調製し、それらの電気伝導性を比較した。
【0119】
式(I)の化合物としてのCL-14および(架橋剤および疎水性コモノマーとしての)アリル-メタクリレートと一緒に、4:1の比のビニルピロリドンおよびPEDOT-PSSを用いて第1の親水性コポリマーを調製した。
【0120】
PEDOT-PSSに対するVPの比4:1は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド1gをPEDOT-PSS1mlに溶解することにより得た。スターラーバーを用いて撹拌しながら1.5mlの水を添加した。その後1-ビニル-2-ピロリドン4mlをPEDOT-PSS/CL-14/水混合物に滴下した。均一な混合が達成されたら、アリルメタクリレート0.195mlおよび2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノン(開始剤として)0.13mlを添加した。
得られたコモノマー混合物をUV下で硬化させて架橋コポリマーを製造した。
【0121】
式(I)の化合物としてのCL-14および(架橋剤および疎水性コモノマーとしての)アリル-メタクリレートと一緒に、ビニルピロリドンおよびPEDOT-PSSを3:1の比で用いて第2の親水性コポリマーを調製した。このコポリマーは、4mlの代わりに3mlの1-ビニル-2-ピロリドンを使用したことを以外は、本実施例の第1のコポリマーと同じ方法を用いて調製した
【0122】
式(I)の化合物としてのCL-14および(架橋剤および疎水性コモノマーとしての)アリルーメタクリレートと一緒に、ビニルピロリドンおよびPEDOT-PSSを2:1の比で用いて第3の親水性コポリマーを調製した。このコポリマーは、4mlの代わりに2mlの1-ビニル-2-ピロリドンを使用したこと以外は、本実施例の第1のコポリマーと同じ方法を用いて調製した。上記の3つのコポリマーのそれぞれの伝導率を製造直後に測定し、製造後の様々な日数で再び測定した。結果を表7(下記)および
図7、8、9に示す。
【0123】
【0124】
見て分かるように、これら全てのコポリマーは、製造後経時的な改善を伴う良好な電気伝導性を示す。
【0125】
実施例4~9
以下の表の用語は、実施例4~9にわたり適用される:
【0126】
【0127】
実施例4~9にわたり、種々のコポリマーを調製した。実施例4~9のコポリマーの組成は、以下の表に記載されており、実施例1~3の方法と同様の方法を用いて調製した:下表の「コポリマー」欄に記載されている略称する用語は、実施例4~9の全体にわたって使用される。
【0128】
【0129】
該当する場合には、以下の水和溶液を使用した。以下の表の「溶液」欄に記載されている略称する用語は、実施例4~9の全体にわたって使用される。
【0130】
【0131】
実施例4~9のコポリマーの電気特性を、円筒形電極装置またはフラット電極装置のいずれかの中の定電位条件下で試験した。
【0132】
円筒電極装置は、作用電極および対電極を含み、0.06cm2の断面を有するガラス状炭素棒である。電極表面は巨視的に滑らかであり、したがってその断面は有効な電気活性領域とみなすことができる。擬参照電極は、活性ポリマーフィルムに挿入されたAgワイヤからなる。
【0133】
これらの材料の大きな幾何学的領域(5cm2を超える)に対する適合性を評価するために、フラット電極装置を使用した。
【0134】
すべての測定は、周囲条件および湿度下でIvium-Compactstatで記録した。コポリマー構造の不可逆的変化(例えば、過酸化)を、作業電極と参照電極との間の開放回路電位の系統的分析によってモニターした。
【0135】
実施例4
VP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いてを調製した。コポリマーの電気的特性を試験した。結果を
図10と
図11に示す。
図10と
図11は、負電位(
図10)または正電位(
図11)限界のいずれかの関数としての100mVs
-1でのサイクリックボルタモグラムである。破線は、コポリマー層における不可逆的構造変化(例えば、分解)に関連する非対称電流応答を示す。
【0136】
これらの結果は、コポリマーが約2Vの電位窓にわたって安定であり、その構造および組成が損なわれないことを示している。この挙動は、電気化学セル中のPEDOT:PSS修飾電極で観察された電気化学反応と一致する。
【0137】
実施例5
VP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。コポリマーの電気的特性を試験した。結果は、走査速度50、100、150および200mVs
-1でのサイクリックボルタモグラムである
図12に示す。
【0138】
さらに3つのVP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、第1のコポリマーをH
2O中で水和させ、第2のコポリマーを生理食塩水中で水和させ、第3のコポリマーをH
2SO
4中で水和させた。これらの3つのコポリマーのそれぞれの電気特性を試験し、その結果を
図13(H
2O中の水和)、
図14(生理食塩水中の水和)および
図15(H
2SO
4中の水和)に示す。
図13~
図15は、走査速度50、100、150および200mVs
-1でのサイクリックボルタモグラムである。
【0139】
非水和VP:PEDOTPSS:Cl4コポリマー、および3つの水和VP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーの各々も5mVs-1の走査速度で試験し、結果を
図16の同じボルタモグラム上で比較した。
【0140】
図12~16の結果は、各コポリマーの電気的特性が擬容量性スーパーキャパシティーシステムの特徴であることを示している。
【0141】
実施例6
VP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。ふたつの異なるフラット電極装置を用いて、コポリマーの電気的特性を試験した。これらのフラット電極装置は、電極の表面積において互いに異なる。結果を
図17(電極表面積0.5cm
2)および
図18(電極表面積0.6cm
2)に示す。
図17および
図18は、走査速度25、50、100、150および200mVs
-1でのサイクリックボルタモグラムである。
【0142】
図17および
図18の結果は、各コポリマーの電気的特性が擬容量性スーパーキャパシティーシステムの特徴であることを示している。これは、特に、容量性応答がフラット電極装置の電極面積に比例するという事実に関連する。
【0143】
実施例7
4つのVP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、第1のコポリマーをH
2O中で水和させ、第2のコポリマーを生理食塩水中で水和させ、第3のコポリマーを食塩水で水和させ、第4のコポリマーをH
2SO
4で水和させた。これらの4種のコポリマーのそれぞれの電気特性を試験し、その結果を
図19に示す。
【0144】
4つのVP:PEDOTPSS:ST35コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、第1のコポリマーをH
2O中で水和させ、第2のコポリマーを生理食塩水中で水和させ、第3のコポリマーを食塩水で水和させ、第4のコポリマーをH
2SO
4で水和させた。これらの4種のコポリマーのそれぞれの電気特性を試験し、その結果を
図20に示す。
【0145】
4つのVP:PEDOTPSS:413コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、第1のコポリマーをH
2O中で水和させ、第2のコポリマーを生理食塩水中で水和させ、第3のコポリマーを食塩水で水和させ、第4のコポリマーをH
2SO
4で水和させた。これらの4種のコポリマーのそれぞれの電気特性を試験し、その結果を
図21に示す。
【0146】
図19~
図21は、100mVs
-1の走査速度でのサイクリックボルタモグラムである。
図19~
図21の結果は、H
2Oで水和されたコポリマーについて記録された電流が、生理食塩水中で水和されたコポリマーについて記録された電流よりも小さいことを示している。
【0147】
実施例8
ふたつのVP:PEDOTPSS:Cl4コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、第1のコポリマーをH
2O中で水和させ、第2のコポリマーを生理食塩水中で水和させた。これらの2種のコポリマーのそれぞれの電気特性を試験した。結果を
図22(H
2O中で水和)および
図23(生理食塩水中で水和)に示す。
図22および
図23は、走査速度50、100、150および200mVs
-1でのサイクリックボルタモグラムである。
【0148】
これらの結果は、水和後に、コポリマーマトリックス全体にイオン含浸が存在し、電極表面でよりコンパクトな電気化学的二重層の形成を可能にすることを示している。したがって、これらの結果は、検出用途に使用するためのポリマーマトリックス中に化学成分を組み込む可能性を支持する。
【0149】
実施例9
VP:PEDOTPSS:ST35コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、コポリマーを生理食塩水中で水和させた。電気的特性を試験した。結果を
図24と25に示す。
図24は、1Vからさまざまな負電位までのクロノアンペロメトリックトランジェントである。
図25は、電位ステップの振幅の関数としてトランジェントを積分することによって得られた電荷をプロットしている。これらの図の結果は、電解キャパシタンスを示す。特に、生理食塩水で水和されたVP:PEDOTPSS:ST35コポリマーは、0.010Fcm
-2のオーダのキャパシタンスを示す。このキャパシタンス値は、水性電解質中の炭素電極の幾何学的キャパシタンスより3桁超えで大きい。
【0150】
実施例10
VP:PEDOTPSS:ST35コポリマーを実施例1~3と同様の方法を用いて調製した。次いで、コポリマーを生理食塩水中で水和させた。電気的特性を試験した。結果を
図26に示す。
【0151】
図26は、コポリマーの現象論的固有キャパシタンスの周波数依存性を示す。キャパシタンス値は、開回路電位で電気化学インピーダンス分光法を調べることによって得た。固有キャパシタンスは0.012Fg
-1に近い値に近づく。