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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/14 20060101AFI20240415BHJP
   B65H 31/18 20060101ALI20240415BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B65H31/14
B65H31/18
G03G15/00 440
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019184744
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021059431
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 浩平
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-128372(JP,A)
【文献】特開2000-118841(JP,A)
【文献】特開2007-197142(JP,A)
【文献】特開2000-238955(JP,A)
【文献】特開2000-038247(JP,A)
【文献】特開2014-215456(JP,A)
【文献】特開2007-112581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/04-31/18
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成されたシートを排出する排出手段と、
前記排出手段によって排出されシートが積載される積載部と、
前記積載部の上方であって、水平方向の位置に関して前記積載部と重複するように配置され、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、
を備えた画像形成装置であって、
前記積載部は、
シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜した傾斜面であってスリットが形成された傾斜面と、上方に突出し、前記排出手段によって排出されるシートに接する第1リブと、を含み、前記排出手段によって排出されるシートを支持する第1部材と、
上部が前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜し且つ前記排出手段によって排出されシートを支持する第2リブを含み、前記スリットを介して前記傾斜面の上方に突出可能な第2部材と、を有し、
前記シート排出方向において、前記第2リブのシートを支持する領域の上流端は、前記シート排出方向において前記第1部材のシートを支持する領域を4等分したときの上流側の四等分点よりも上流にあり、
前記シート排出方向において、前記第2リブのシートを支持する領域の下流端は、前記第1部材のシートを支持する領域の中間位置よりも下流にあり、
前記シート排出方向において前記第2リブのシートを支持する領域の下流端から前記第1部材のシートを支持する領域の下流端までの距離は、前記シート排出方向において前記第1部材のシートを支持する領域の上流端から前記第2リブのシートを支持する領域の上流端までの距離よりも長く、
前記画像読取装置は、前記水平方向の位置に関して、前記第2リブと重複し且つ前記シート排出方向における前記第2リブの下流端よりも下流において前記第1リブと重複するように配置され、
前記第2部材は、前記傾斜面からの前記第2リブの突出量が変更されるように前記第1部材に対して移動可能であり、
前記第1リブと前記第2リブとは、前記シート排出方向に直交するシート幅方向において互いに異なる位置に配置され、
前記第1リブと前記第2リブとは、前記シート排出方向の位置に関して互いに重複するように配置され、
前記第1リブは、前記シート排出方向における前記スリットの下流端よりも上流側から前記スリットの下流端よりも下流まで連続している、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1部材は、前記シート排出方向において前記第2リブよりも下流側でシートを支持する支持部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記傾斜面よりも水平面に対する角度が小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記支持部には、上方に突出し且つ前記シート排出方向に延びた他のリブが配置され、
前記第1リブは、前記シート排出方向の位置に関して前記他のリブおよび前記第2リブの双方に重複するように配置されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2リブの前記傾斜面からの突出量が変更されるように前記第2部材を移動させるためのモータを備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置の動作条件に応じて前記傾斜面からの前記第2リブの突出量が変更されるように、前記モータは前記第2部材を移動させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
シートの積載枚数が同じ場合であっても前記傾斜面からの前記第2リブの突出量が異なるように、前記画像形成装置の動作条件に応じて前記第2部材の位置を設定可能である、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1部材は、前記シート幅方向において前記第1部材の端まで延びた凹部を含み、
前記第2リブは、前記シート排出方向の位置に関して前記凹部と重複し、且つ、前記シート排出方向において前記凹部よりも下流側に延びている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2リブは、前記シート排出方向の位置に関して、前記凹部及び前記第1リブの双方と重複するように配置され、
前記第1リブは、前記シート幅方向の位置に関して、前記凹部と重複するように配置される、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第2リブの前記シート排出方向における下流側の端部は、前記シート排出方向において前記凹部よりも下流に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第2リブは、前記シート排出方向の位置に関して、前記凹部及び前記第1リブの双方と重複するように配置され、
前記スリットを第1スリットとして、
前記第2部材は、前記第1部材に設けられた第2スリットを介して前記傾斜面の上方に突出可能な第3リブであって、前記シート幅方向の位置に関して前記凹部と重複するように配置された第3リブを有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第部材は、前記第リブを含む複数のリブであって、それぞれ上方に突出した複数のリブを備え、
前記複数のリブは、いずれも前記シート幅方向における位置が異なっている、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記複数のリブのうちの1つは、前記シート幅方向において前記第2リブの一方側に配置され、前記複数のリブのうちの他の1つは、前記シート幅方向において前記第2リブの他方側に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記第2部材は、前記シート排出方向における前記積載部の上流端と下流端の中間位置よりも上流に設けられた支点を中心として回動可能であり、
前記支点から前記積載部の前記上流端までの前記シート排出方向の距離は、前記支点から前記積載部の前記中間位置までの前記シート排出方向の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記第2リブの上面は、前記シート排出方向の下流に向かうほど水平面に対する傾斜が小さくなるように湾曲している、
ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記積載部に積載されたシートの前記シート排出方向における後端に当接してシートを整合する整合壁をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記第1リブは、前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜している、
ことを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記第2リブが上方に向かうように前記第2部材を付勢する付勢手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記第1部材の前記傾斜面には、他のスリットが設けられ、
前記第2部材は、本体部と、前記他のスリットを介して前記傾斜面よりも上方に突出する第3リブと、を備え、
前記第2リブ及び前記第3リブは、前記本体部から上方に突出しており、
前記本体部のうち、前記シート幅方向における前記第2リブと前記第3リブとの間の部分の少なくとも一部は、前記第1部材により覆われている、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記積載部を第1積載部とし、前記排出手段を第1排出手段とするとき、
前記第1積載部の上方であって前記画像読取装置の下方に配置された第2積載部と、
前記画像形成手段によって画像を形成されたシートを前記第2積載部に排出する第2排出手段と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記シート排出方向において、前記第2リブのシートを支持する領域の中間位置は、前記第1部材のシートを支持する領域の中間位置よりも上流に位置し、
前記シート排出方向において、前記第2リブのシートを支持する領域の下流端は、前記第1部材のシートを支持する領域の中間位置よりも下流、且つ、前記第1部材のシートを支持する領域を4等分したときの下流側の四等分点よりも上流にある、
ことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記シート排出方向において前記第2リブのシートを支持する領域の少なくとも一部において、前記第2リブの上部が前記第1リブの上部よりも上方となるように前記第2部材は位置できる、
ことを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項23】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成されたシートをシート排出方向に排出する排出手段と、
上方に突出し、前記排出手段によって排出されるシートに接する第1リブと、前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜した傾斜部と、前記傾斜部に設けられたスリットと、を含み、前記排出手段によって排出されるシートが積載される積載部材と、
上部が前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜し且つ前記排出手段によって排出されるシートを支持する複数の第2リブを含み、前記スリットを介して前記傾斜部の上方に突出可能な支持部材と、
前記傾斜部からの前記複数の第2リブの突出量が変更されるように前記支持部材を移動させるモータと、
前記積載部材の上方であって、水平方向の位置に関して前記傾斜部に重複するように配置され、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、
を有し、
前記シート排出方向において、前記複数の第2リブのシートを支持する領域の上流端は、前記シート排出方向において前記積載部材のシートを支持する領域を4等分したときの上流側の四等分点よりも上流にあり、
前記シート排出方向において、前記複数の第2リブのシートを支持する領域の下流端は、前記積載部材のシートを支持する領域の中間位置よりも下流にあり、
前記シート排出方向において前記複数の第2リブのシートを支持する領域の下流端から前記積載部材のシートを支持する領域の下流端までの距離は、前記シート排出方向において前記積載部材のシートを支持する領域の上流端から前記複数の第2リブのシートを支持する領域の上流端までの距離よりも長く、
前記画像読取装置は、前記水平方向の位置に関して、前記複数の第2リブと重複し且つ前記シート排出方向における前記複数の第2リブの下流端よりも下流において前記第1リブと重複するように配置され、
前記第1リブと前記複数の第2リブとは、前記シート排出方向に直交するシート幅方向において異なる位置に配置され、
前記第1リブと前記複数の第2リブとは前記シート排出方向の位置に関して互いに重複するように配置され、
前記第1リブは、前記シート排出方向における前記スリットの下流端よりも上流側から前記スリットの下流端よりも下流まで連続している、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置は、電子写真機構やインクジェット式の印刷ユニットにより画像形成したシートを排出ローラ対によって装置本体の外部に排出し、成果物として排出トレイに積載する。このとき、排出済みのシートは、ユーザが取り出しやすい状態で排出トレイに積載されることが好ましい。特許文献1には、排出トレイの上方に突出するリブガイドを設けて、用紙の積載枚数に応じてリブガイドが下降するように構成して用紙の取り出しを容易にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-38247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の構成では用紙が円滑に排出されない可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、円滑にシートを排出可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成されたシートを排出する排出手段と、前記排出手段によって排出されシートが積載される積載部と、前記積載部の上方であって、水平方向の位置に関して前記積載部と重複するように配置され、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、を備えた画像形成装置であって、前記積載部は、シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜した傾斜面であってスリットが形成された傾斜面と、上方に突出し、前記排出手段によって排出されるシートに接する第1リブと、を含み、前記排出手段によって排出されるシートを支持する第1部材と、上部が前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜し且つ前記排出手段によって排出されシートを支持する第2リブを含み、前記スリットを介して前記傾斜面の上方に突出可能な第2部材と、を有し、前記シート排出方向において、前記第2リブのシートを支持する領域の上流端は、前記シート排出方向において前記第1部材のシートを支持する領域を4等分したときの上流側の四等分点よりも上流にあり、前記シート排出方向において、前記第2リブのシートを支持する領域の下流端は、前記第1部材のシートを支持する領域の中間位置よりも下流にあり、前記シート排出方向において前記第2リブのシートを支持する領域の下流端から前記第1部材のシートを支持する領域の下流端までの距離は、前記シート排出方向において前記第1部材のシートを支持する領域の上流端から前記第2リブのシートを支持する領域の上流端までの距離よりも長く、前記画像読取装置は、前記水平方向の位置に関して、前記第2リブと重複し且つ前記シート排出方向における前記第2リブの下流端よりも下流において前記第1リブと重複するように配置され、前記第2部材は、前記傾斜面からの前記第2リブの突出量が変更されるように前記第1部材に対して移動可能であり、前記第1リブと前記第2リブとは、前記シート排出方向に直交するシート幅方向において互いに異なる位置に配置され、前記第1リブと前記第2リブとは、前記シート排出方向の位置に関して互いに重複するように配置され、前記第1リブは、前記シート排出方向における前記スリットの下流端よりも上流側から前記スリットの下流端よりも下流まで連続している、ことを特徴とする画像形成装置である。
本発明の他の一態様は、シートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成されたシートをシート排出方向に排出する排出手段と、上方に突出し、前記排出手段によって排出されるシートに接する第1リブと、前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜した傾斜部と、前記傾斜部に設けられたスリットと、を含み、前記排出手段によって排出されるシートが積載される積載部材と、上部が前記シート排出方向の下流に向かって上方に傾斜し且つ前記排出手段によって排出されるシートを支持する複数の第2リブを含み、前記スリットを介して前記傾斜部の上方に突出可能な支持部材と、前記傾斜部からの前記複数の第2リブの突出量が変更されるように前記支持部材を移動させるモータと、前記積載部材の上方であって、水平方向の位置に関して前記傾斜部に重複するように配置され、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、を有し、前記シート排出方向において、前記複数の第2リブのシートを支持する領域の上流端は、前記シート排出方向において前記積載部材のシートを支持する領域を4等分したときの上流側の四等分点よりも上流にあり、前記シート排出方向において、前記複数の第2リブのシートを支持する領域の下流端は、前記積載部材のシートを支持する領域の中間位置よりも下流にあり、前記シート排出方向において前記複数の第2リブのシートを支持する領域の下流端から前記積載部材のシートを支持する領域の下流端までの距離は、前記シート排出方向において前記積載部材のシートを支持する領域の上流端から前記複数の第2リブのシートを支持する領域の上流端までの距離よりも長く、前記画像読取装置は、前記水平方向の位置に関して、前記複数の第2リブと重複し且つ前記シート排出方向における前記複数の第2リブの下流端よりも下流において前記第1リブと重複するように配置され、前記第1リブと前記複数の第2リブとは、前記シート排出方向に直交するシート幅方向において異なる位置に配置され、前記第1リブと前記複数の第2リブとは前記シート排出方向の位置に関して互いに重複するように配置され、前記第1リブは、前記シート排出方向における前記スリットの下流端よりも上流側から前記スリットの下流端よりも下流まで連続している、ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円滑にシートを排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る画像形成装置の概略図。
図2】実施例1に係る排出トレイ(第1排出トレイ)の上面側の斜視図。
図3】実施例1に係る排出トレイの下面側の斜視図。
図4】実施例1に係る排出トレイの断面図(待機状態)。
図5】実施例1に係る排出トレイの断面図(満載状態)。
図6】実施例1におけるシート排出動作の様子を表す断面図。
図7】実施例1において排出トレイに排出されたシートの動きを表す断面図。
図8】実施例1において複数枚のシートが積載された状態を表す断面図。
図9】比較例において複数枚のシートが積載された状態を表す断面図。
図10】実施例2に係る可動トレイの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1に係る画像形成装置100の概略図である。画像形成装置100の装置本体101は、4色のトナー像を形成する4つの画像形成ステーション1Y,1M,1C,1Kを中間転写ベルト145に沿って配置した中間転写タンデム方式の電子写真機構として、画像形成部140を収容している。
【0011】
各画像形成ステーション1Y,1M,1C,1Kでは、電子写真プロセスによりトナー像が形成される。即ち、像担持体である感光体141は、予め帯電器により一様に帯電させられた後、露光装置142から照射される光によって走査露光され、感光体141の表面に静電潜像が書き込まれる。この静電潜像は、現像器143から供給される帯電したトナー粒子により、トナー像として現像される。感光体141に担持されたトナー像は、一次転写ローラ144により、中間転写体としての中間転写ベルト145に一時転写される。このとき、各画像形成ステーション1Y,1M,1C,1Kで形成されたイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像が中間転写ベルト145の上で重ね合わせられることで、フルカラーのトナー像が形成される。このフルカラーのトナー像は、中間転写ベルト145に担持されて二次転写部130へと搬送される。
【0012】
このような画像形成のプロセスに並行して、記録材であるシートSの搬送プロセスが実行される。シートSは、シート給送装置が有するリフトアップ装置の上に積載された状態で、画像形成装置の装置本体101に対して挿入及び引き出しが可能なカセットに収納されている。なお、シートSとしては、普通紙及び厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシート材を使用可能である。カセットに収納されているシートSは、給送手段としての給送ユニット110により、画像形成ステーション1Y,1M,1C,1Kによる画像形成動作の進捗に基づいて1枚ずつ給送される。
【0013】
給送ユニット110により給送されるシートSは、搬送経路を介して斜行補正装置120へと搬送され、さらに斜行補正装置120において斜行補正やタイミング補正を行った後、二次転写部130へと送られる。二次転写部130とは、中間転写ベルト145を挟んで対向する二次転写内ローラ131及び二次転写外ローラ132により形成されるニップ部である。中間転写ベルト145に担持されたトナー像は、二次転写部130において機械的な加圧力及び静電的負荷バイアスを加えられることで、シートSへと転写される。
【0014】
二次転写部130を通過したシートSは、定着器150へと搬送される。定着器150は、シートSを挟持して回転する回転体対と、ハロゲンランプ等の熱源とを有し、シートSを搬送しながらシート上のトナー像を加熱及び加圧する。これにより、トナー粒子が溶融し、その後固着することで、トナー像がシートSに定着する。定着画像が得られたシートSは、切替部材である第1フラップ151により、第1排出ローラ160に向かう経路(下排出パス)又は第2排出ローラ161に向かう経路(上排出パス)に案内される。
【0015】
本実施例の画像形成装置100には、画像形成済みのシートSの排出先として、第1排出トレイ170及び第2排出トレイ171が設けられている。下排出パスに案内されたシートSは、第1排出ローラ160により装置本体101の外部に排出され、第1排出トレイ170に積載される。上排出パスに案内されたシートSは、第2排出ローラ161により装置本体101の外部に排出され、第2排出トレイ171に積載される。第1排出ローラ160及び第1排出トレイ170は第1排出部190を構成し、第2排出ローラ161及び第2排出トレイ171は第2排出部191を構成している。第1排出部190及び第2排出部191は、いずれもシートを排出するシート排出装置の例である。
【0016】
一方、両面印刷を実行する場合、第1面に対する画像形成が行われたシートSは、第1フラップ151により上排出パスに案内された後、第2排出ローラ161の反転動作によりスイッチバック搬送される。第2フラップ152は、スイッチバック後のシートSを両面搬送パス180に案内する。そして、両面搬送パス180を介して再び斜行補正装置120に到達したシートSは、第1面と同様のプロセスで第2面に画像形成された後、第1排出トレイ170又は第2排出トレイ171に排出される。
【0017】
なお、第1排出トレイ170及び第2排出トレイ171は、いずれも排出方向(図中左方)の下流に向かって鉛直方向の上方に傾斜した傾斜面を有している。そのため、各排出トレイに排出されたシートSは、自身の重量によって排出方向の上流側に戻され、装置本体101に設けられた整合基準壁に当接して整合される。
【0018】
また、本実施例の画像形成装置100は、鉛直方向に関して装置本体101の上部に設置される画像読取装置102と画像形成部140との間にシートの排出空間が設けられた、いわゆる胴内排出型の構成である。この排出空間に上下2段に設けられた第1排出トレイ170及び第2排出トレイ171のうち、下段の第1排出トレイ170は、装置本体101の上部に取り付けられている。なお、画像読取装置102は、撮像素子を備えたイメージセンサユニットによって原稿を走査して画像情報を読み取り、装置本体101の制御回路に転送する装置である。
【0019】
[排出トレイ]
以下、本実施例のシート排出装置である第1排出部190の構成について説明する。以下の説明では、第1排出トレイ170を単に「排出トレイ170」とし、第1排出ローラ160を単に「排出ローラ160」として説明する。また、水平方向において排出ローラ160から排出されるシートが移動する方向を「シート排出方向D1」とし、排出ローラ160の軸線方向(鉛直方向及びシート排出方向D1に垂直な方向)を「幅方向D2」とする。
【0020】
図2は排出トレイ170を上方側から(表側から)見た斜視図であり、図3は排出トレイ170を下方側から(裏側から)見た斜視図である。本実施例の積載部である排出トレイ170は、第1積載面を形成する固定部材としての固定トレイ20と、第2積載面を形成し固定部材に対して移動可能な可動部材としての可動トレイ21と、を有するトレイユニットである。排出ローラ160によって排出されるシートSは、これら固定トレイ20及び可動トレイ21が形成する積載面に積載される。
【0021】
固定トレイ20の表側(図2)には、第1積載面を構成する上面20sと、シート排出方向D1の上流側端部から中央部にかけて幅方向D2に並んだ複数のスリット20bと、が設けられている。後述するように、上面20sに設けられた各スリット20bからは可動トレイ21の円弧リブ21dが突出する。なお、上面20sには、幅方向D2において各スリット20bに対応する位置に、複数のガイドリブ20gがシート排出方向D1に沿って延びている。つまり、可動トレイ21の円弧リブ21dと固定トレイ20のガイドリブ20gとはシート排出方向D1に並んで配置されている。
【0022】
固定トレイ20の裏側(図3)には、シート排出方向の上流側端部に回動穴20dが設けられ、シート排出方向の中央部に付勢バネ22を取り付ける2つの固定トレイフック部20eが設けられている。また、固定トレイ20は、裏側に設けられた4つの取付部20cを装置本体101(図1)の被係合部に係合させることで画像形成装置に取り付けられ、装置本体101に対して固定される。
【0023】
可動トレイ21は、第2積載面を形成する複数の円弧リブ21d(図2)を備えている。複数の円弧リブ21dは固定トレイ20の幅方向D2に関してスリット20bと対応する位置に設けられ、その少なくとも一部は、シート排出方向D1における可動トレイ21の上流側端部から下流側端部にかけて延びている。また、円弧リブ21dの上端部は、シート排出方向D1の下流に向かって上方に傾斜しており、かつ、シート排出方向D1の下流に向かうほど水平面に対する傾斜角度が小さくなるように略円弧状に湾曲している。なお、円弧リブ21dは、本実施例では9つ配置されている。幅方向における中央の5つの円弧リブ21d同士の間隔Mは、幅方向における両側の2つの円弧リブ21d同士の間隔Nよりも狭い。
【0024】
また、可動トレイ21は、固定トレイ20の裏側(図3)に、複数の円弧リブ21dを連結する板状の本体部21fと、可動トレイ21の回動支点となる2つの回動軸21aと、2つの可動トレイフック部21bと、を有している。各円弧リブ21dは、本体部21fから鉛直方向における上方に延びており、固定トレイ20のスリット20bを介して固定トレイ20よりも上方に突出することが可能である。
【0025】
2つの回動軸21aは、シート排出方向D1における可動トレイ21の上流側端部に設けられ、それぞれ固定トレイ20の回動穴20dに嵌合している。これにより、可動トレイ21は、幅方向D2に延びる回動軸線(2つの回動軸21aを通る仮想直線)を中心にして、固定トレイ20に対して回動可能に構成されている。2つの可動トレイフック部21bは、シート排出方向D1における可動トレイ21の下流側端部に設けられている。2組の可動トレイフック部21b及び固定トレイフック部20eの間には、それぞれ付勢バネ22が取り付けられており、可動トレイフック部21bを固定トレイフック部20eに近づけるように(つまり可動トレイ21が上方に向かうように)付勢している。なお、シート排出方向D1における可動トレイ21の下流側端部には、固定トレイ20の裏面と当接する突当部21c(図4図5参照)が設けられている。突当部21cが固定トレイ20に当接する位置(図4)が、可動トレイ21の回動範囲の上限位置である。
【0026】
上記のようにしてアセンブリ化された排出トレイ170は、固定トレイ20の4つの取付部20cによって装置本体101に取り付けられる。なお、本実施例の排出トレイ170(及びその上方の第2排出トレイ171)は装置本体101に対して着脱可能であり、両方の排出トレイを取り外すことで後処理装置を装着するためのスペースが画像形成装置100の胴内排出空間に確保される。
【0027】
[トレイ形状の詳細]
次に、可動トレイ21を含む排出トレイ170が形成する積載面の形状とその動作について説明する。図4は可動トレイ21が待機状態にあるときの排出トレイ170の断面図、図5は可動トレイ21が最大回動状態にあるときの排出トレイ170の断面図である。ただし、待機状態とは、排出トレイ170に1枚もシートが積載されていない状態を指し、最大回動状態とは、可動トレイ21が待機状態の位置から下方に向かって最も回動した状態を指す。待機状態の可動トレイ21の位置は本実施例の第1位置であり、最大回動状態の可動トレイ21の位置は本実施例の第2位置である。また、以下の説明において特に断らない限り、「上流」又は「下流」とはシート排出方向D1における上流又は下流の位置関係を表す。
【0028】
第1積載面WXは、位置Wから位置Xにかけて固定トレイ20が形成する面である。位置Wは、固定トレイ20の上面においてシートの下面を支持可能な領域の、シート排出方向D1における上流端の位置であり、位置Xはその下流端の位置である。
【0029】
第2積載面YZは、位置Yから位置Zにかけて可動トレイ21の円弧リブ21dが形成する面である。即ち、本実施例における第2積載面YZは、幅方向に並ぶ複数の円弧リブ21dの上端部を幅方向に結んだ仮想の面である。位置Yは、円弧リブ21dが上端部においてシートの下面を支持可能な領域の、シート排出方向D1における上流端の位置であり、位置Zはその下流端の位置である。
【0030】
可動トレイ21は、シート排出方向D1において排出トレイ170の上流側に寄せて配置されている。例えば、シート排出方向D1における第2積載面の中間位置V(位置Yと位置Zの中点)は、排出トレイ170全体の中間位置でもある第1積載面の中間位置U(位置Wと位置Xの中点)よりも上流に位置する。第1積載面WXの上流端から第2積載面YZの上流端までの距離は、第1積載面WXの下流端から第2積載面YZの下流端までの距離までの距離よりも短い(WY<XZ)。
【0031】
また、第2積載面YZの上流端(Y)は、排出トレイ170の上流側の端部領域に位置する。例えば、第2積載面YZの上流端(Y)は、シート排出方向D1における排出トレイ170の積載面の範囲を4等分したときの上流側の四等分点Q1よりも上流にある。一方、第2積載面YZの下流端(Z)は、排出トレイ170の中間位置Uよりも下流まで延びている。ただし、第2積載面YZの下流端(Z)は、排出トレイ170の積載面の範囲を4等分したときの下流側の四等分点Q3よりも上流にある。
【0032】
可動トレイ21の回動支点Pは、排出トレイ170の上流側の端部付近に設けられている。具体的には、回動支点Pは、シート排出方向D1において排出トレイ170の中間位置Uよりも上流にあり、かつ、回動支点Pから位置Xまでの距離が回動支点Pから中間位置Uまでの距離より小さい。言い換えれば、回動支点Pは、排出トレイ170の積載面の上流側の四等分点Q1よりも上流にある。
【0033】
また、可動トレイ21の回動支点Pは、可動トレイ自身の上流側の端部付近に設けられている。具体的には、回動支点Pは、シート排出方向D1において可動トレイ21の中間位置Vよりも上流にあり、かつ、回動支点Pから位置Yまでの距離が回動支点Pから中間位置Vまでの距離より小さい。言い換えれば、回動支点Pは、シート排出方向D1における第2積載面の範囲を4等分したときの上流側の四等分点q1よりも上流にある。
【0034】
なお、図示した構成例において、可動トレイ21の回動支点Pは、上記の範囲の中でも排出トレイ170の上流端及び可動トレイ自身の上流端により近い位置に設けられている。例えば、回動支点Pから排出トレイ170の上流端までのシート排出方向D1の距離(PW)は、排出トレイ170の積載面全体の範囲(WX)の8分の1未満である。また、回動支点Pから第2積載面YZの上流端までのシート排出方向D1の距離(PY)は、排出トレイ170の積載面全体の範囲(YZ)の8分の1未満である。
【0035】
待機状態において、第1積載面WX及び第2積載面YZは、いずれもシート排出方向D1の下流に向かって鉛直方向の上方に傾斜した傾斜面で構成されている。つまり、固定トレイ20及び可動トレイ21は、待機状態において排出トレイ170に排出されたシートを排出方向上流側に戻す力を発生させるように傾斜している。
【0036】
第1積載面WX及び第2積載面YZの傾斜角度について詳しく説明する。第1積載面WXは、第2積載面YZの下流端よりも上流側の区間(W~Z)と、第2積載面YZの下流端よりも下流側の区間(Z~X)とで平均の傾斜角度が異なっている。第1積載面WXの上流側の区間(W~Z)の傾斜角度をθa[度]とし、下流側の区間(Z~X)の傾斜角度をθb[度]とするとき、θa>θbである。なお、本実施例における第1積載面WXの上流側及び下流側の区間は、いずれもθa又はθbの一定の傾斜角度で傾斜した平面状に形成されている。各区間の傾斜角度が一定でない場合のθa、θbとは、平均の傾斜角度を表すものとする。
【0037】
第2積載面YZは、少なくともその上流側部分の傾斜角度が、第2積載面YZとシート排出方向D1の位置が重なる第1積載面WXの上流側の区間の傾斜角度θaよりも大きくなるように構成されている。つまり、円弧リブ21dの接線の水平面に対する傾斜角度をθc[度]とすると、傾斜角度θcは上流側から下流側に向かって徐々に小さくなる。このとき、少なくとも傾斜角度θcが最大となる第2積載面YZの上流側の端部領域において、θc>θaとなるように構成されている。言い換えると、第2積載面YZの上流側の端部領域における第2積載面YZの傾斜角度θcをθcmaxとすると、θcmaxはθaよりも大きな値である。
【0038】
図示した構成例では、θa=20[度]、θb=6[度]、θcmax=32[度]に設定されている。ただし、積載面の傾斜角度はこれに限らず、使用が想定される主なシートの材質やサイズ、並びに排出トレイ170を構成する材料の表面性等に応じて適宜変更可能である。
【0039】
排出トレイ170に1枚もシートが積載されていないとき、可動トレイ21は、付勢バネ22の付勢力によって第2積載面YZが第1積載面WXから上方に最も突出する待機状態に維持される。このとき、図4に示すように第2積載面YZの全体が第1積載面WXの上方に位置する。可動トレイ21は、上方向からの力、つまり排出されたシートの重量に応じて、図5に矢印Bで示すように下方に回動する。付勢バネ22の付勢力は、微小な力が加わっても可動トレイ21の突当部21cの固定トレイ20への当接が維持され、容易に振動音が発生することのないように設定される。
【0040】
その一方で、付勢バネ22の付勢力は、排出トレイ170にある程度以上のシートが積載された状態では、シートの重量に応じて最大回動状態まで回動するように設定される。後述するように、積載枚数が少ない状態では、より傾斜のきつい第2積載面YZがシートを支持することで、シートに作用する戻し力が大きく、より高い整合性を発揮する。シートの積載量が多くなると、可動トレイ21の下端部21gが装置本体101の取付面210に当接することで下方への回動が規制され、可動トレイ21は最大回動状態となる。このとき、付勢バネ22は最も伸びた状態となるが、塑性変形域とならないような設定となっている。このようにすることで、誤って人為的に可動トレイ21を回動させてしまっても、付勢バネ22の機能が損なわれることがないようになっている。また、最大回動状態では、少なくとも第2積載面の中間位置Vから下流端(Z)までの範囲で第2積載面が第1積載面より下方に退避する。
【0041】
上記のように構成された可動トレイ21は、その回動支点がシート排出方向における排出トレイ170の上流側端部に設けられたことで、第2積載面YZの傾斜角度θcは積載枚数の増加に対して徐々にθcmaxから傾斜角度θaに近づいていく。そのため、積載枚数が増えると第2積載面YZがシートに作用させる戻し力は減少していく一方で、第2積載面YZが下降するとともに、第2積載面YZに支持される部分のシートの傾きは小さくなる。つまり、排出トレイ170に積載されたシート束の姿勢がより水平に近く、かつ、シート束の下面位置が低くなっていく。そのため、後述するように、トレイ上の積載枚数が多くなってもシートの排出を円滑に行うことが可能となっている。
【0042】
ところで、固定トレイ20の下流部の傾斜角度θbは、上流部の傾斜角度θa及び可動トレイ21の最大傾斜角度(θcmax)よりも小さな設定となっている。これは、排出トレイ170の鉛直方向の占有範囲が大きくなりすぎることを防ぐためであり、本実施例の場合、排出トレイ170の上方に設けられる第2排出トレイ171及びその上に積載されるシートのための空間を確保するためである。また、また、下流部の傾斜角度θbを小さな値とすることで、比較的大きなシートについて、シート排出中にシートが積載面から受ける搬送抵抗力が大きくなって排出不良が生じることを抑制可能である。ただし、固定トレイ20の下流部においてもθbを0度又はそれ以下としないのは、排出トレイ170のどの位置においてもシートに戻し力を発生させるためである。
【0043】
なお、第1積載面WX及び第2積載面YZを構成する固定トレイ20及び可動トレイ21はいずれも排出方向に沿って延びるリブを有しており、特に第2積載面は円弧リブ21dによって形成されている。このようなリブは、排出トレイ170に排出されつつあるシートがトレイ表面から受ける搬送抵抗を軽減するために有効である。また、第2積載面YZが、下流側ほど傾斜が小さくなるように湾曲していることで、可動トレイ21の回動角度に関わらず、第2積載面YZと第1積載面との境界にシートの引っ掛かりにつながるような大きな段差や溝が生じることを防ぐことができる。
【0044】
さらに、可動トレイ21の円弧リブ21dは、第2積載面YZの上流端の位置Yの付近及び下流端の位置Zの付近において、それぞれ第1積載面WXよりも上方に(つまり固定トレイ20のガイドリブよりも上方に)、若干量突出している。円弧リブ21dを少し高めに形成することで、シート排出方向におけるシートの先端や後端が固定トレイ20のスリット20bの長手方向端部に引っ掛かることを防ぐことができる。さらに、スリット20bのシート排出方向下流端は、下流に向かうほど幅が狭くなるテーパ形状に形成されている。これにより、仮に可動トレイ21が待機状態よりも下方に回動しており、円弧リブ21dの下流部がスリット20bより下方にある状態でシートが新たに排出されたときでも、スリット20bの下流端にシートが引っ掛かることを防ぐことができる。
【0045】
また、第1積載面WXを、シート排出方向及び幅方向に広がる板状部材である固定トレイ20の上面によって構成し、第2積載面YZを、板状部材に設けられたスリットを介して突出するシート排出方向に延びたリブ状部材によって構成している。このため、可動トレイ21が待機状態のときはスリット20bの開口部の大部分が円弧リブ21dによって塞がれ、シートの重量によって可動トレイ21が下方に回動したときはスリット20bの開口部の少なくとも一部はシートによって塞がれる。従って、固定トレイ20に対して可動トレイ21を出没させるための開口部を設けるにあたって排出トレイ170の裏側に異物が落下する可能性を抑制することができる。
【0046】
ところで、固定トレイ20にはシートを取り出すための取り出し溝20aが設けられている。取り出し溝20aは、幅方向D2における排出トレイ170の一方側(画像形成装置の正面側)の端部に向かって延びている。また、取り出し溝20aは、シート排出方向D1に関して可動トレイ21と重複する位置に設けられ、固定トレイ20の上面20sが下方に凹んだ凹形状として形成されている。取り出し溝20aを介してユーザがシートにアクセス可能とするため、幅方向D2の位置が取り出し溝20aと重複する一部の円弧リブ21dは、シート排出方向D1に関して取り出し溝20aの外側にのみ形成されている。なお、この取り出し溝20aの下流側の壁面も、シートの先端引っ掛かりを抑制可能な傾斜角度に設定されている。
【0047】
また、固定トレイ20に設けられたスリット20bは必要最小限の長さであり、可動トレイ21に対して上流側及び下流側のそれぞれにおいて、固定トレイ20は幅方向D2につながった部材として形成されている。これは、固定トレイ20の剛性を確保できる利点があるだけでなく、樹脂材料で固定トレイ20を射出成型する際の流動性を考慮した形状でもある。樹脂材料の例は、PC+ABS(ポリカーボネート及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体のアロイ)である。なお、固定トレイ20は、全体が単一の部材であってもよく、例えば上流側部分と下流側部分とを別部材として成型して組み合わせたものであってもよい。
【0048】
[可動トレイの動作]
以上のようにして構成される排出トレイ170について、その積載面上にシートが排出された際の様子を説明する。図6は排出ローラ160によって1枚目のシートSが排出されている途中の様子を表す第1排出部190の断面図であり、図7は排出された1枚目のシートSが排出トレイ170の積載面によって整合される様子を表す第1排出部190の断面図である。
【0049】
図6に示すように、排出ローラ160は、水平方向においてシート排出方向D1の下流に向かって上方に傾斜した姿勢でシートSを排出するように構成されている。言い換えると、排出ローラ160は、やや上方を向いたニップ角度(ローラ対がニップ部からシートを送り出すときのローラ軸間方向に垂直な方向の角度)で配置されたローラ対である。また、排出ローラ160には、シート排出方向D1の下流側から見てシートSを湾曲させる(波打たせる)ことでシートSに剛性を付与する腰付け部材が設けられている。そのため、シートSは、排出ローラ160に挟持される位置から先端に向かってアーチ状の軌跡を描きながらシート排出方向D1の下流に排出される。このシートSは、先端において待機状態にある排出トレイ170の可動トレイ21に位置P1で接触し、固定トレイ20及び可動トレイ21に摺接しながら移動し、後端が排出ローラ160によって蹴り出される。
【0050】
図7に示すように、後端が蹴り出されたシートSは、排出トレイ170の積載面の傾斜、特に可動トレイ21が形成する傾斜面(第2積載面)の傾斜に従って、シート排出方向D1の上流側に戻っていく(矢印R)。そして、装置本体101に設けられた整合壁162にシート排出方向D1の後端が突き当たることで、シートSは停止する。整合壁162は、排出トレイ170に排出されたシートの後端に当接することでシート位置を整合する基準面である。
【0051】
1枚目のシートSが整合壁162に向かって移動するときの挙動は、シートSと排出トレイ170の積載面との間に作用する摩擦力の大きさに影響を受ける。2枚目以降のシートSについては、シートSと排出トレイ170との間の摩擦の影響は小さくなり、代わりにシート同士の摩擦の影響が大きくなる。
【0052】
上記の位置P1(1枚目のシートの先端が最初に排出トレイ170の積載面と接触することが想定される位置)は、排出ローラ160からある程度シート排出方向D1に離れた位置、かつ排出ローラ160のニップ高さと略同一高さであることが好ましい。また、先端部におけるシートSの向きと第2積載面との当接角度が大きくなりすぎないように、可動トレイ21が形成されている。本実施例の可動トレイ21は、待機状態において、上流端の最大傾斜角度(32度)から下流に向かうほど傾斜が緩くなり、下流端の傾斜角度が固定トレイ20の下流部の傾斜角度(6度)に略等しくなっている。このような構成により、シートSが積載面から受ける搬送抵抗を抑制し、排出トレイ170に積載可能なシートの最大枚数を確保し、剛度が低いシートを安定して排出可能とし、かつ積載されたシートの整合性が向上する。
【0053】
ところで、排出ローラ160によって排出されるシートSは、再生紙や薄紙のようなシートも含まれており、それらのシートは例えば高湿度環境においてシート端部の湾曲(カール)の程度が大きくなる傾向がある。このようなカールが大きいシートを比較的多量に積載した場合について、図8図9を用いて説明する。図8は、排出トレイ170に複数枚のカールしたシートSが積載された様子を表す第1排出部190及び第2排出部191の断面図である。図9は、参考例として、可動トレイ21を待機状態の位置に固定した場合の様子を表す第1排出部190及び第2排出部191の断面図である。ただし、図8図9に表されたシートSの枚数は実際のシート枚数を特定するものではない。
【0054】
本実施例の画像形成装置は、A4のようなスモールサイズのシートや、A3のようなラージサイズのシートのどちらも使用可能である。どちらのサイズにおいてもカールは発生するが、カールしたシートは湾曲した分だけ端部が上方に浮き上がってしまう。特に、ラージサイズに比べてスモールサイズはシートが短いことから、カールによりシートが急激に傾斜した面を形成しやすい。加えて、前述したように、排出トレイ170の積載面はシート排出方向の上流側の傾斜角度の方が下流側よりも大きい構成となっている。スモールサイズのシートは、より傾斜のきつい上流側の積載面によって主に支持されることから、積載面の傾斜との相乗効果でシートのカールの影響が現れやすい。
【0055】
図8では、スモールサイズのシートSが、カールした状態で積載されている。スモールサイズのシートSの場合、シート排出方向D1におけるシートの後端が整合壁162に当接した状態において、シートの先端は可動トレイ21の下流端よりも上流側に位置する。シートSは、画像面である下側の面(排出トレイ170の積載面に対向する面)が凸状となるようにカールしている。そのため、シートSの積載束Tは、中腹部は固定トレイ20及び可動トレイ21の積載面に接触して支持されているのに対し、シート排出方向D1の端部が上方に向かって立ち上がっている。
【0056】
ここで、積載束Tの重量により、可動トレイ21は待機状態の位置(図6図7)から下方に回動しており、可動トレイ21の円弧リブの一部がスリットを介して固定トレイ20の上面よりも下方に退避している。また、可動トレイ21が形成する積載面の傾斜も、待機状態に比べて緩くなっている。言い換えると、シート束の積載量が増えたことで、第2積載面の少なくとも一部が第1積載面より下方に退避し、水平面に対する第2積載面の傾斜が小さくなっている。このため、排出されたシートSがカールしている場合において、比較的少量のシートSからなる積載束Tによって排出トレイ170の上の排出空間が占有される事態が回避される。
【0057】
ところで、図9に示す参考例では、可動トレイ21がスペーサ203を用いて待機状態の位置で固定されており、積載束Tの重量が増えても第2積載面の高さ及び傾斜は変化しない。そのため、排出されたシートSがカールしている場合において、シートの下流端が上方に立ち上がっていることで、比較的少量のシートSからなる積載束Tによって排出トレイ170の上の排出空間が占有されてしまう。
【0058】
この場合、排出ローラ160から排出されるシートSの先端が積載束Tの上面に接触する際の当接角度が、図8に示す可動トレイ21が回動した状態に比べて大きくなる結果、シートSが積載束Tの上面に衝突して大きな力を受けやすい。また、シートSが積載束Tの上面(特に、積載束Tの下流部でカールした部分)に対して滑りながら排出される際の搬送抵抗が大きくなる。その結果、排出ローラ160からシートSがうまく蹴り出されずにシートSの後端が排出ローラ160のニップに残って排出トレイ170に落下しない状態(後端もたれ)が発生する可能性がある。また、先行シートの後端が排出ローラ160のニップ付近に残っている状態で後続シートが排出ローラ160に到達すると、後続シートの先端が先行シートの後端に衝突して先行シート及び後続シートが適切に排出されない可能性がある。
【0059】
これに対し、本実施例では、上述した通り可動トレイ21が排出トレイ170の上流側の端部付近に設けられた回動支点を中心にして回動することで、積載束Tの上面高さを下げて排出空間を確保するとともに積載束Tの傾斜を小さくする。これにより、図9に示す参考例に比べて、排出されるシートが受ける抵抗力を低減して排出不良の発生を抑制し、円滑なシートの排出を実現することができる。
【0060】
また、本実施例は胴内排出型の構成であることから排出トレイ170の排出空間の高さに制限がある。このような場合において、可動トレイ21が排出トレイ170の上流側の端部付近に設けられた回動支点を中心にして回動する構成は、排出空間を確保できる利点がある。特に、本実施例では第1積載部としての排出トレイ170の上方に他の第2積載部である第2排出トレイ171が設けられていることから、排出空間を確保できる利点が大きい。本実施例では、幅方向における中央の5つの円弧リブ21d同士の間隔Mは狭いので、幅方向で小さいサイズのシートを中央の円弧リブ21dによって安定して支持できる。
【実施例2】
【0061】
実施例2では、可動トレイ21がシートの重量で回動する実施例1の構成に代えて、可動トレイ21を駆動して回動させるための駆動源を配置した構成例を説明する。以下、実施例1と同様の構成及び作用を有する要素には実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図10は、本実施例の可動トレイ21及びその駆動構成を示す斜視図である。可動トレイ21には回動軸21aとは反対のシート排出方向D1における下流側端部に、幅方向の2箇所に扇ギア21e,21eが設けられている。扇ギア21e,21eは、出力ギア222,222を介して入出力軸220に接続されている。入出力軸220の端部には、駆動源である回動モータ212のギア211と噛み合う入力ギア221が設けられている。従って、回動モータ212が正転及び逆転することで、ギア列を介して可動トレイ21が駆動されて、回動軸21aを中心にして上下に回動する。
【0063】
この回動モータ212は、ステッピングモータを用いると好適である。この場合、可動トレイ21の回動量、即ち傾斜角度は、トレイ上のシートの重量によらない任意の値を高い精度で設定することができる。このため、例えばシートのカールが生じやすい高湿度環境か否か、あるいは1枚当たりの積載高さが大きいシートか否かといった条件に応じて、シートの積載枚数が同じ場合であっても可動トレイ21の回動量が異なるような設定が可能である。つまり、画像形成装置の動作条件に応じた適切な回動量を設定することが可能である。
【0064】
可動トレイ21の位置を検知するセンサ(例えば、可動トレイ21が待機状態の位置にあることを検知するスイッチ)を用いることで、可動トレイ21の回動量をより正確に制御することが可能である。また、可動トレイ21の上方において排出トレイ170に積載されたシート束の上面高さを検知するセンサを配置し、その検知結果に基づいて可動トレイ21の回動量を制御することで、シート束の上面高さをより正確に制御することができる。
【0065】
なお、本実施例では駆動源として回動モータ212を使用し、図10で示す歯車伝動機構により可動トレイ21を回動させているが、他の駆動構成を使用しても構わない。
【0066】
(変形例)
上述の実施例1,2において、第1積載面が固定トレイ20の上面20sによって構成され、第2積載面は可動トレイ21に設けられた複数の円弧リブ21dによって形成されるものとして説明した。しかしながら、第1積載面が複数のリブ状部材で形成され、第2積載面がそのようなリブ状部材を通過させるスリットを備えた板状部材であってもよい。
【0067】
また、円弧状の円弧リブ21dに代えて、上端部が円弧以外の曲線で構成されるリブを可動トレイ21に配置してもよい。この場合も、リブの上端部が待機状態においてシート排出方向D1の下流に向かって上方に傾斜しており、かつ、シート排出方向D1の下流に向かうほど水平面に対する傾斜角度が小さくなるように湾曲している(折れ線状に屈曲したものを含む)と好適である。
【0068】
また、本実施例は電子写真方式の画像形成手段を備えた画像形成装置に用いられるシート排出装置について説明したが、他の方式の画像形成装置においても本技術は有用である。例えば、画像形成手段としてインクジェット方式の印刷ユニットを備えた画像形成装置においても、画像形成に伴ってシートのカールが生じる場合があるため、本技術を好適に適用できる。
【0069】
また、本開示におけるシート排出装置とは、画像形成装置の装置本体から記録材としてのシートを排出する装置に限らない。例えば、原稿としてのシートを自動的に給送しながらイメージセンサによって画像情報を読み取る画像読取装置において、読取り済みのシートを排出するシート排出装置が挙げられる。また、画像形成装置に連結され、画像形成装置から画像形成済みのシートを受け取ってパンチ処理や折り処理等の処理を施すシート処理装置において、処理後のシートを排出するシート排出装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0070】
20…固定部材(固定トレイ)/21…可動部材(可動トレイ)/100…画像形成装置/101…装置本体/140…画像形成手段(画像形成部)/160…排出手段(排出ローラ)/162…整合壁/170…積載部、第1積載部(排出トレイ)/171…第2積載部(排出トレイ)/190…シート排出装置(第1シート排出部)/P…回動支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10