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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】高分子電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20240415BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240415BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20240415BHJP
   C08F 8/26 20060101ALI20240415BHJP
   C08F 8/34 20060101ALI20240415BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240415BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01B1/06 A
C08G65/48
C08F8/26
C08F8/34
H01M8/10 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019186341
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021061220
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 章
(72)【発明者】
【氏名】多胡 貴広
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 久遠
(72)【発明者】
【氏名】堀 開史
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088345(JP,A)
【文献】特開2002-216845(JP,A)
【文献】特開2005-315984(JP,A)
【文献】特開2014-189569(JP,A)
【文献】特開昭61-004727(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020650(WO,A1)
【文献】特開2006-261103(JP,A)
【文献】特開平08-286375(JP,A)
【文献】特開2012-025811(JP,A)
【文献】特許第7103830(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01B 1/06
C08G 65/48
C08F 8/26
C08F 8/34
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を含むベンゾジオキソール誘導体骨格を側鎖に有するベンゾジオキソール構造単位を含み、
高分子電解質100mol%中の前記ベンゾジオキソール構造単位の割合が12~100mol%であり、
80℃30%RH条件でPt厚膜法により測定した酸素溶解度が、7.0mol/m以上であり、
当量重量EWが100~2000g/eqである、高分子電解質。
【化1】
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、Xは、それぞれ独立にエーテル結合又はスルホンアミド結合を含む構造を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、a及びbは整数を表し、a+b=4、a≧1である。)
【請求項2】
前記式(1)中、Xが、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造を含む、請求項1に記載の高分子電解質。
【化2】
(式(2)、(3)中、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、lは、1から10のいずれかの整数を表し、*は結合手を表す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の高分子電解質と、触媒とを含むことを特徴とする、電極触媒インク。
【請求項4】
請求項1または2に記載の高分子電解質と、触媒とを含むことを特徴とする、電極触媒層。
【請求項5】
請求項4に記載の電極触媒層と電解質膜とを備えることを特徴とする、膜電極接合体。
【請求項6】
請求項5に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質、上記高分子電解質を含む電極触媒インク、上記高分子電解質を含む電極触媒層、上記電極触媒層を備える膜電極接合体、上記膜電極接合体を備える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は近年、家庭用燃料電池システムや燃料電池自動車に搭載、市販され、地球温暖化防止の観点から、今後も成長が期待される。
この固体高分子型燃料電池には、パーフルオロカーボンスルホン酸のような電解質膜とその両面に白金担持カーボンとバインダー樹脂(アイオノマー)からなる電極触媒層が密着した膜電極接合体(MEA)が設けられている。
このMEAの片方の電極触媒層に加湿した水素ガスを、もう一方の電極触媒層に加湿した酸素ガスを流通させると、水素ガス側(以下、アノード)の電極触媒上でプロトンが生成し、電解質膜を通して酸素ガス側(以下、カソード)に移動する。反対にカソードの電極触媒上では酸素が還元され、別回路から流れてきた電子と、アノードから流れてきたプロトンと反応し水が生成する。
【0003】
固体高分子形燃料電池では、特に、カソードの電極触媒上での酸素還元反応を如何に効率よく起こすかが課題となる。
一方、今後、固体高分子形燃料電池システムの更なる市場成長のためには、システムを構成する各種部材のコスト低減が必要であるが、特に、コスト比率の高い白金触媒の使用量を削減することが必要である。
従来の固体高分子形燃料電池システムではカソードに多くの白金触媒を使用することで性能を担保していたが、白金触媒の使用量を削減すると、発電に寄与する触媒表面積の低下から発電性能が低くなる問題が生じる。
そこで、少ない触媒表面により多くの酸素を供給する為にアイオノマーの酸素透過性を向上させて、電極中に酸素を行き渡らせる試みがなされてきた。
【0004】
特許文献1、2には、酸素透過性が高く、カソード側触媒層高分子電解質として好適な高分子電解質として、ラジカル重合により主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーを与える含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位と、フッ素系スルホン酸含有モノマーに基づく繰り返し単位とを含む共重合体並びに当該共重合体を含有するガス拡散電極が記載されている。
【0005】
特許文献3には、嵩高い環構造を有することで低密度化し、酸素透過性を促進する高分子電解質として、2位にパーフルオロ環構造を有するパーフルオロ(1,3-ジオキソール)とスルホン酸を有するパーフルオロビニルエーテルの共重合体が記載されている。
【0006】
特許文献4には、プロトン伝導性と酸素透過性を両立する高分子電解質として、主鎖又は側鎖に、パーフルオロ脂肪族とスルホンイミドを有する電解質が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-36859号公報
【文献】特開2002-260705号公報
【文献】特開2018-39937号公報
【文献】特開2012-38515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1~4に開示されている高分子電解質は、嵩高い環構造の影響で、配合量を多くすると酸素透過性は上昇するものの、電極触媒層を形成させると表面に亀裂を生じ、発電性能が低下する、電池での耐久性が低下する、という問題が生じた。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、電極触媒層のひび割れを抑制し、電池での発電性能、耐久性が良好な高分子電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ベンゾジオキソール誘導体骨格を含む高分子電解質が、電極触媒層の表面に亀裂を生じることなく、電池での発電性能、耐久性が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される構造を含むベンゾジオキソール誘導体骨格を側鎖に有するベンゾジオキソール構造単位を含み、
高分子電解質100mol%中の上記ベンゾジオキソール構造単位の割合が12~100mol%であり、
80℃30%RH条件でPt厚膜法により測定した酸素溶解度が、7.0mol/m以上であり、
当量重量EWが100~2000g/eqである、高分子電解質。
【化1】
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、Xは、それぞれ独立にエーテル結合又はスルホンアミド結合を含む構造を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、a及びbは整数を表し、a+b=4、a≧1である。)
[2]
上記式(1)中、Xが、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造を含む、[1]に記載の高分子電解質。
【化2】
(式(2)、(3)中、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、lは、1から10のいずれかの整数を表し、*は結合手を表す。)
[3]
[1]または[2]に記載の高分子電解質と、触媒とを含むことを特徴とする、電極触媒インク。
[4]
[1]または[2]に記載の高分子電解質と、触媒とを含むことを特徴とする、電極触媒層。
[5]
[4]に記載の電極触媒層と電解質膜とを備えることを特徴とする、膜電極接合体。
[6]
[5]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子電解質は、電極触媒層のひび割れを抑制し、発電性能、耐久性が良好な高分子電解質を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
[高分子電解質]
本実施形態の高分子電解質は、ベンゾジオキソール誘導体骨格を含むことで、高酸素透過性を発現するだけでなく、上記高分子電解質を含む電極触媒層の表面にひび割れがなく、燃料電池の運転において、高性能、高化学耐久性を発現する。
【0014】
上記ベンゾジオキソール誘導体骨格としては、下記式(1)で表される構造を含む骨格が挙げられ、下記式(1)で表される構造である骨格が好ましい。
【化3】
式(1)において、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、エーテル結合、芳香族環等が挙げられる。上記R1、R2としては、合成の容易性から、水素原子、フッ素原子、メチル基が好ましい。
式(1)において、Xは、それぞれ独立にエーテル結合を含む構造又はスルホンアミド結合を含む構造を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、a及びbは整数を表し、a+b=4、a≧1である。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基等が挙げられる。Xは他の構造との連結基であってよく、Yはベンゼン環の末端置換基であってよい。
【0015】
上記Xとしては、電極触媒層のひび割れを一層抑制し、酸素透過性を一層向上させる観点から、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造を含むことが好ましく、下記式(2)又は下記式(3)で表される構造であることがより好ましい。
【化4】
ここで、式(2)(3)中、R3、R4、R5は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、lは、1から10のいずれかの整数を表し、*は結合手を表す。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基等が挙げられる。上記R3、R4、R5としては、合成の容易性から、水素原子、フッ素原子、メチル基が好ましい。
【0016】
ここで、ベンゾジオキソール誘導体とは、ベンゾジオキソール骨格の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、エーテル結合又はスルホンアミド結合を含む構造、芳香族環等の置換基で置換された構造をいう。ベンゾジオキソール誘導体とは、例えば、上記式(1)で表される1、3ベンゾジオキソール骨格のジオキソール環の2個の水素原子、ベンゼン環の4個の水素原子の1つ以上が上記置換基で置換された構造が挙げられる。なお、上記式(1)で表される構造が、ベンゾジオキソール誘導体にa個のX、b個のY、R1及びR2が結合した構造である場合、式(1)において、1個のXを除き、R1、R2、a個のX、b個のYは存在しなくてもよく、例えば、a+b等は適宜変更してよい。
【0017】
上記高分子電解質は、少なくともベンゾジオキソール誘導体骨格を含む構造単位(繰り返し単位)(本明細書において、「ベンゾジオキソール構造単位」と称する場合がある)を含む単独重合体又は共重合体であることが好ましい。上記高分子電解質に含まれる上記ベンゾジオキソール構造単位は、一種であってもよいし複数種であってもよいが、生産性の観点から、一種であることが好ましい。
上記高分子電解質は、ベンゾジオキソール構造単位以外に、他の構造単位を有していてもよい。上記他の構造単位は、一種であってもよいし複数種であってもよい。
【0018】
(ベンゾジオキソール構造単位)
上記ベンゾジオキソール構造単位としては、上記ベンゾジオキソール誘導体骨格を主鎖に有する構造単位(本明細書において、「構造単位A」と称する場合がある)、上記ベンゾジオキソール誘導体骨格を側鎖に有する構造単位(本明細書において、「構造単位B」と称する場合がある)、上記ベンゾジオキソール誘導体骨格を主鎖及び側鎖に有する構造単位、等が挙げられる。
【0019】
-構造単位A-
上記構造単位Aは、主鎖にベンゾジオキソール誘導体骨格を1個有していてもよいし、複数個有していてもよい。
【0020】
上記構造単位Aとしては、例えば、下記式(4)の構造等が挙げられる。
【化5】
式(4)
上記式(4)中、側鎖R6、R7、R8、R9としては、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、プロトン伝導性基を末端に有する側鎖、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基、エーテル結合、これらの組み合わせ、等が挙げられる。上記炭化水素基は構造中にエーテル性酸素原子を含んでも良い。プロトン伝導性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等が挙げられ、後述の式(37)~(40)で表される構造等が挙げられる。
【0021】
-構造単位B-
上記構造単位Bは、主鎖と側鎖末端との間にベンゾジオキソール誘導体骨格を有していてもよいし、側鎖末端にベンゾジオキソール誘導体骨格を有していてもよい。中でも、合成の容易性から、側鎖末端にベンゾジオキソール誘導体骨格を有することが好ましく、ジオキソール環が側鎖末端側に配置されることがより好ましい。
【0022】
上記構造単位Bにおいて、主鎖と側鎖末端のベンゾジオキソール誘導体骨格とは、エーテル結合、上記式(3)で表される構造、スルホニル基、チオエーテル基、ケトン基、エステル基、イミド基、芳香族環、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、又はこれらの組み合わせ等を介して結合されていてよい。
【0023】
上記構造単位Bの主鎖としては、特に限定されないが、例えば、下記式(21)で表される構造の主鎖
【化6】
式(21)
(式(21)中、nは構造単位の繰り返し数を表す。X1~X3は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子を表す。Aはベンゾジオキソール誘導体骨格を有する側鎖を表す。);下記式(23)で表される主鎖
【化7】
式(23)
(式(23)中、nは構造単位の繰り返し数を表す。Arは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレン等の芳香環を表す。Aは、ベンゾジオキソール誘導体骨格を有する側鎖を表す。Rxは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、プロトン伝導性基などが挙げられる。上記炭化水素基は構造中にエーテル性酸素原子を含んでも良い。プロトン伝導性基としては、例えば、-(CF22O(CF22SO3H、-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF(CF3)-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF(CF2OCF2CF2SO3H)-OCF2CF2SO3H等が挙げられる。);下記式(24)で表される主鎖
【化8】
式(24)
(式(24)中、nは構造単位の繰り返し数を表す。Arは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレン等の芳香環を表す。Aは、ベンゾジオキソール誘導体骨格を有する側鎖を表す。Rxは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、プロトン伝導性基などが挙げられる。上記炭化水素基は構造中にエーテル性酸素原子を含んでも良い。プロトン伝導性基としては、例えば、-(CF22O(CF22SO3H、-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF(CF3)-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF(CF2OCF2CF2SO3H)-OCF2CF2SO3H等)が挙げられる。);等が挙げられる。
【0024】
上記主鎖としては、-(CF2-CFA)-、-(CH2-CHA)-等のエチレン系主鎖;ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)等の主鎖にエーテル結合を有する主鎖;式(23)又は(24)で表される主鎖等が好ましい。
【0025】
上記構造単位Bとしては、合成の容易性と、電極触媒層のひび割れを一層抑制し、酸素透過性を一層向上させる観点から、下記式(25)~(30)で表される構造が好ましい。
【化9】
【化10】
式(25)、(26)において、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表し、Arは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレン等の芳香環を表す。R6は、エーテル結合及びプロトン交換基を含む炭素数1以上のフッ素化炭化水素基を表し、フッ素化炭化水素基の炭素数が2以上である場合は炭素-炭素原子間にエーテル結合が挿入されていてもよい。上記R6としては、例えば、-(CF22O(CF22SO3H、-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF2SO3H等が挙げられる。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、エーテル結合、芳香族環等が挙げられる。上記R1、R2としては、合成の容易性から、水素原子、フッ素原子、メチル基が好ましい。
【化11】
式(27)
式(27)において、R7は、下記式(31)の構造を表し、R8は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基等が挙げられる。R9は、エーテル結合及びプロトン交換基を含む炭素数1以上のフッ素化炭化水素基を表し、フッ素化炭化水素基の炭素数が2以上である場合は炭素-炭素原子間にエーテル結合が挿入されていてもよい。上記R9としては、例えば、-(CF22O(CF22SO3H、-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF(CF3)-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF(CF2OCF2CF2SO3H)-OCF2CF2SO3H等が挙げられる。
c~gは整数を表し、c+d=5、c+e≧1、e+f+g=5、g≧1である。
【化12】
式(29)
【化13】
式(30)
式(29)、(30)において、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。R3、R4、R5は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、エーテル結合、芳香族環等が挙げられる。lは、1から10のいずれかの整数を表す。qは0~2の整数であり、rは0~12の整数である。ただし、q及びrは同時に0にならない。R10、R11はそれぞれ独立にフッ素原子、又は下記式(31)の構造を表す。
【化14】
式(31)
式(31)において、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、エーテル結合、芳香族環等が挙げられる。
【0026】
(他の構造単位)
上記他の構造単位としては、上記ベンゾジオキソール構造単位と同じ主鎖を有し、側鎖にベンゾジオキソール誘導体骨格を有さない構造単位としてもよい。上記他の構造単位は、例えば、上記ベンゾジオキソール構造単位と同じ主鎖を有し、側鎖を有さない構造単位と、上記ベンゾジオキソール構造単位と同じ主鎖を有し、プロトン伝導性を促す側鎖を有する構造単位とであってもよい。
例えば、上記他の構造単位としては、テトラフルオロエチレンに由来する構造単位(-CF2-CF2-)を含んでいてもよい。
【0027】
上記高分子電解質は、プロトン伝導性を促す側鎖を有してもよい。
プロトン伝導性を促す側鎖としては、下記式(37)~下記式(40)で表わされる構造であることが好ましい。
【化15】
式(37)
(式(37)中、Xは、F、Cl、又は置換されていてもよい炭素数1~3のフッ素化炭化水素基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表す。n個のXは、同一でも異なっていてもよい。Yは、F又はClを表す。mは1~6の整数を表す。m個のYは、同一でも異なっていてもよい。Zは、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属表す。)
上記式(37)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2、YがF、ZがHであることが好ましい。
【化16】
式(38)
(式(38)中、Xは、F、Cl、又は置換されていてもよい炭素数1~3のフッ素化炭化水素基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表す。n個のXは、同一でも異なっていてもよい。Yは、F又はClを表す。mは1~6の整数を表す。m個のYは、同一でも異なっていてもよい。Zは、NR12を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、水素原子、-SO2-R3を表す。ここでR3は、炭素数1~10の炭化水素基を表す。R1、R2の一方が置換されても良いアルキル基又は水素であるとき、R2は、-SO2-R3である。)
上記式(38)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2であることが好ましい。
【化17】
式(39)
(式(39)中、Rfは、それぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含む炭素数1~10のフッ素化炭化水素基、単結合を表す。Xは、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表す。)
【化18】
式(40)
(式(40)中、Rfは、それぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含む炭素数1~10のフッ素化炭化水素基、単結合を表す。Xは、NR12を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基又は水素原子、-SO2-R3を表す。ここでR3は、炭素数1~10の炭化水素基を表す。R1、R2の一方が置換されても良いアルキル基又は水素原子であるとき、R2は、-SO2-R3である。)
【0028】
上記他の構造単位としては、下記式(41)で表される構造を有する側鎖(D)を有する構造単位を含んでいてもよく、-(CF2-CFA)-のAに上記側鎖(D)が直接結合した構造単位としてよい。上記側鎖(D)を有する構造単位を導入することで、高分子電解質溶液を調製する際に、溶媒への溶解性を調整しやすくなる。
【化19】
式(41)
(式(41)中、Rfは、炭素数1~10のフッ素化炭化水素基を表す。上記フッ素化炭化水素基は構造中にエーテル性酸素原子を含んでも良い。)
上記側鎖(D)としては、-O-CF3、-O-C25、-O-C37、-O-C24-O-C25、-O-(CF2CF(CF3))-O-C37、が挙げられる。
【0029】
上記他の構造単位における主鎖としては、上述の構造単位Bにおける主鎖と同様のものが挙げられる。
【0030】
上記高分子電解質中に、プロトン伝導性基が含まれていることが好ましい。プロトン伝導性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等が挙げられる。プロトン伝導性の観点から、強酸であるスルホン酸基が好ましい。
上記高分子電解質は、上記プロトン伝導性基を有する構造単位を含むことが好ましい。上記プロトン伝導性基を有する構造単位としては、上記ベンゾジオキソール構造単位であってもよいし、他の構造単位であってもよい。
【0031】
上記高分子電解質は、化学耐久性と疎水性の観点から、含フッ素高分子電解質であることが好ましい。
【0032】
上記高分子電解質としては、電極触媒層のひび割れを一層抑制でき、発電性能、耐久性が一層良好な電池が得られる観点から、上記式(25)、上記式(26)、及び上記式(27)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位からなる重合体;下記式(7)で表される化合物
【化20】
式(7)
;下記式(8)で表される化合物
【化21】
式(8)
(式(7)、(8)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。R3、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。上記有機基としては、例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、エーテル結合、芳香族環等が挙げられる。lは、1から10のいずれかの整数を表す。qは0~2の整数であり、rは0~12の整数である。ただし、q及びrは同時に0にならない。R10、R11はそれぞれ独立にフッ素原子、又は上記式(31)の構造を表す。);が好ましい。
【0033】
(構造単位の含有割合)
上記高分子電解質100mol%中の上記ベンゾジオキソール構造単位の合計割合は、電極触媒層のひび割れを一層抑制でき、発電性能、耐久性が一層良好な電池が得られる観点から、5~600mol%であることが好ましく、より好ましくは10~500mol%である。
上記高分子電解質100mol%中の上記構造単位Aの合計割合は、電極触媒層のひび割れを一層抑制でき、発電性能、耐久性が一層良好な電池が得られる観点から、1~100mol%であることが好ましく、より好ましくは5~90mol%である。
上記高分子電解質100mol%中の上記構造単位Bの合計割合は、電極触媒層のひび割れを一層抑制でき、発電性能、耐久性が一層良好な電池が得られる観点から、1~100mol%であることが好ましく、より好ましくは5~90mol%である。
高分子電解質中の構造単位のモル割合は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
(特性)
上記高分子電解質は、当量重量EW(プロトン交換基1当量あたりの高分子電解質の乾燥質量グラム数)が100~2000g/eqであることが好ましい。即ち、上記EWの範囲内となるように共重合比やプロトン性伝導基導入率を制御することが好ましい。EWの上限は、好ましくは1000g/eqであり、より好ましくは900g/eqである。EWの下限は、好ましくは300g/eqであり、より好ましくは500g/eqである。EWが上記の範囲内にあることにより、加工性に一層優れ、電極触媒層の伝導度が低くなりすぎず、熱水への溶解性も小さい。上記EWは、後述の実施例に記載の方法により、算出することができる。
【0035】
上記高分子電解質は、加工性、電気伝導度及び機械的強度がより一層優れることから、数平均分子量が、1万~200万であることが好ましく、より好ましくは3万~100万である。数平均分子量が比較的低く機械的強度に劣る場合は、特願2016-171717の参考例1に記載のあるようなMIが比較的低い、すなわち高分子量のポリマーと混合しても良い。
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフ)法により測定される値であり、例えば、以下に示す方法により、標準ポリスチレンを基準として数平均分子量を算出することができる。
TOSOH社製 HLC-8020を用い、カラムはポリスチレンゲル製MIXカラム(東ソーGMHシリーズ、30cmサイズ)を3本、40℃、NMP(5mmol/L LiBr含有)溶剤、流速0.7mL/分で行うことができる。サンプル濃度は、0.1重量%で打ち込み量は500μLで行うことができる。数平均分子量がポリスチレン換算値で10万~80万程度のものが更に好ましく、13万~70万程度のものが更により好ましく、16万~60万程度のものが特に好ましい。
【0036】
GPCにより分子量が測定できないポリマーについては、メルトフローレート(MFR)により測定しても良い。
上記高分子電解質のMFRは、0.1~1000g/10分であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であることが更に好ましく、200g/10分以下であることがより好ましく、100g/10分以下であることが更に好ましい。
上記MFRは、ASTM規格D1238に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、MELT INDEXER TYPE C-5059D(商品名、東洋精機社製)を用いて測定することができる。
【0037】
(製造方法)
上記高分子電解質は、所定の構造単位を形成できるモノマーを重合して得てもよいし、重合後の重合体に所定の側鎖を導入してもよい。
上記高分子電解質は、例えば、重縮合、ラジカル重合、アニオン重合等の従来公知の方法にて合成することができ、中でも、重縮合又はラジカル重合が好ましく用いられる。
上記高分子電解質粒子が水に分散又は溶解したエマルションの形態で、上記高分子電解質が得られる。
【0038】
上記ラジカル重合は、界面活性剤の存在下に行ってもよい。界面活性剤としては、公知の含フッ素アニオン界面活性剤が好ましい。
【0039】
上記ラジカル重合は、重合開始剤を添加して行うことが好ましい。上記重合開始剤としては、重合温度でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。また、レドックス開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤の濃度は、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。上記レドックス開始剤としては、過硫酸塩又は有機過酸化物と、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
【0040】
ラジカル重合は、0.05~5.0MPaの圧力下で行うことができる。好ましい圧力の範囲は0.1~1.5MPaである。また、ラジカル重合は、5~100℃の温度で行うことができる。好ましい温度の範囲は10~90℃である。ラジカル重合では、また、目的に応じて、公知の安定剤、連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0041】
上記式(25)の高分子電解質の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、オクタフルオロシクロペンテンを、水酸基を2つ以上有するモノマーと重縮合させた後、水酸基を有するベンゾジオキソール誘導体(例えば、セサモール等)と反応させ、アリル位のフッ素原子を置換することで合成できる。
【0042】
上記式(26)の高分子電解質の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、まずオクタフルオロシクロペンテンを、水酸基を有するベンゾジオキソール誘導体(例えば、セサモール等)と反応させ、式(10)のようなモノマーを合成する。その後、このモノマーと、水酸基を2つ以上有するモノマーを重縮合させることで合成できる。スルホン酸基の導入方法としては、特に限定されないが、例えば、脱ハロゲンカップリング等で導入可能である。
【化22】
式(10)において、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は有機基を表す。
【0043】
上記式(27)の高分子電解質の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、ペンタフルオロスチレンモノマーをラジカル重合した後に、水酸基を有するベンゾジオキソール誘導体(例えば、セサモール等)を芳香族求核置換反応によって導入できる。スルホン酸基の導入方法は、特に限定されないが、例えば、得られたポリマーを水酸化カリウムや水酸化ナトリウムで処理し、芳香環に水酸基を導入した後に、二重結合を有するスルホン酸誘導体(例えば、CF2=CF-OCF2CF2SO3X、CF2=CF-OCF2CF(CF3)-OCF2CF2SO3X、CF2=CF-OCF2CF(CF2OCF2CF2SO3X)-OCF2CF2SO3X、Xは水素やアルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウム塩である)を付加させることで導入できる。
【0044】
上記式(29)、(30)の高分子電解質の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合で合成する方法や、式(11)のポリマーに対してアミノ基を有するベンゾジオキソール誘導体(例えば、ピペロニルアミン等)を反応させ、その後加水分解処理することで合成できる。
【化23】
式(11)において、qは0~2の整数であり、rは0~12の整数である。ただし、q及びrは同時に0にならない。
【0045】
上記高分子電解質は、80℃30%RH条件でPt厚膜法により測定した酸素溶解度が7.0mol/m3以上であることが、電池性能の観点から好ましい。触媒表面を覆う高分子電解質の薄膜は数nm程度であり、そこでの酸素透過性はバルクでの挙動とは異なる。すなわち、バルクでは酸素拡散性が律速となるが、薄膜では酸素溶解性が律速となる。上記酸素溶解度は、後述の実施例に記載の方法により、算出することができる。
【0046】
(高分子電解質溶液)
本実施形態の高分子電解質溶液は、上記高分子電解質と水及び/又は有機溶媒とを含むことが好ましい。上記高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層(例えば、カソード用電極触媒層)を形成する原料として好適に用いることができる。上記高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層形成用高分子電解質溶液であることが好ましい。
【0047】
上記高分子電解質溶液中の上記高分子電解質の質量割合は、2~50質量%であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
【0048】
上記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリン等のプロトン性有機溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、酢酸エチル等の非プロトン性溶媒;トリフルオロエタノール、バートレルXF、ノベック7100、ノベック7300等のフッ素系溶媒;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0049】
上記高分子電解質溶液は、有機系添加剤を含んでもよい。また、上記高分子電解質溶液は、無機系添加剤を含んでもよい。
【0050】
上記有機系添加剤としては、例えば、3級炭素に結合した水素、炭素-ハロゲン結合等を構造中に有する化合物等の原子がラジカルにより引き抜かれやすい化合物が挙げられる。具体的には、ポリアニリンのような官能基で一部置換された芳香族化合物、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、フェニル化ポリキノキサリン、フェニル化ポリキノリン等の不飽和の複素環化合物を挙げることができる。
また、チオエーテル化合物も挙げられる。例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル;テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロアピランのような環状チオエーテル;メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル;等が挙げられる。
【0051】
上記高分子電解質溶液中の上記有機系添加剤の質量割合は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。上記有機系添加剤を0.1質量%以上含有することで、燃料電池運転での化学耐久性を向上させることが可能となる。
【0052】
上記無機系添加剤としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硝酸塩等が挙げられる。上記無機添加剤は、一種を単独で用いても良いし、2種以上の混合物を用いても良い。
上記金属酸化物としては、例えば、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe34)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In23、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化タングステン(WO3、W25)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化セリウム(CeO2、Ce23)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La23)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いてもよいし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al23)、等に挙げられる複合酸化物を挙げることができる。
上記金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ジルコニウム(Zr(CO32)、炭酸チタニウム(Ti(CO32)、炭酸鉄(FeCO3)、炭酸銅(Cu2CO3)、炭酸亜鉛(ZnCO3)、炭酸モリブデン、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸ニッケル(NiCO3)、炭酸コバルト(CoCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)、等が挙げられる。
上記金属硝酸塩としては、例えば、硝酸ジルコニウム(Zr(NO34)、硝酸鉄(Fe(NO33)、硝酸銅(Cu(NO32)、硝酸チタン(Ti(NO34)、硝酸セリウム(Ce(NO33)、硝酸ニッケル(Ni(NO32)、硝酸コバルト(Co(NO32)、硝酸マンガン(Mn(NO32)、等が挙げられる。
中でも、親水性向上の観点からシリカ(SiO2)が好ましく、化学耐久性向上の観点から酸化セリウム(CeO2、Ce23)、酸化マンガン(MnO)、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)、硝酸セリウム(Ce(NO33)、硝酸マンガン(Mn(NO32)、硝酸チタン(Ti(NO34)が好ましい。
【0053】
無機系添加剤の形態としては、粒子状や繊維状といったものを用いても構わないが、特に非定形であることが望ましい。ここでいう非定形とは、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察しても、粒子状や繊維状の金属酸化物が観察されないことをいう。特に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電極触媒層を数10万倍までに拡大して観察しても、粒子状や繊維状の金属酸化物は観察されない。また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電極触媒層を数10万倍~数100万倍に拡大して観察しても、明確に粒子状や繊維状の金属酸化物は観察することができない。このように現状の顕微鏡技術の範囲内では、金属酸化物の粒子状や繊維状を確認することができないことを指す。
【0054】
上記高分子電解質溶液中の上記無機系添加剤の質量割合は、0.01~100質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~45質量%、更に好ましくは0.01~25質量%、特に好ましくは0.5~6.0質量%である。上記無機系添加剤を0.01質量%以上含有することで、燃料電池運転での化学耐久性を向上させることが可能となる。
【0055】
上記高分子電解質溶液は、所望の固形分濃度にするために、濃縮することが可能である。濃縮の方法としては特に限定されない。例えば、加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法等がある。その結果得られる高分子電解質溶液の固形分率は、取り扱い性及び生産性を考慮して、最終的な高分子電解質溶液の固形分率は0.5~50質量%が好ましい。
【0056】
上記高分子電解質溶液は、粗大粒子成分を除去する観点から、濾過されることがより好ましい。濾過方法は、特に限定されず、従来行われている一般的な方法が適用できる。例えば、通常使用されている定格濾過精度を有する濾材を加工したフィルターを用いて、加圧濾過する方法が代表的に挙げられる。フィルターについては、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10~100倍の濾材を使用することが好ましい。この濾材は濾紙でもよいし、金属焼結フィルターのような濾材でもよい。特に濾紙の場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10~50倍であることが好ましい。金属焼結フィルターの場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の50~100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞したりすることを抑制し得る。一方、平均粒子径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
【0057】
上記高分子電解質溶液は、1種類以上の上記ベンゾジオキソール誘導体骨格を含む高分子電解質以外にも、ベンゾジオキソール誘導体骨格を持たない他の高分子電解質を含んでいてもよい。
ベンゾジオキソール誘導体骨格を持たない他の高分子電解質としては、特に限定されず、既知の高分子電解質を使うことができる。例えば、下記式(12)又は(13)で表わされる繰り返し単位を有す重合体が挙げられる。
【化24】
式(12)
(式(12)中、Y31は、F、Cl、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表し、n個のY31は、同一でも異なっていてもよい。Y32は、F又はClを表す。mは2~6の整数を表す。m個のY32は、同一でも異なっていてもよい。Z31は、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はNR4を表す。Rは、それぞれ独立に、アルキル基又はHを表わす。)
【化25】
式(13)
(式(13)中、Y33は、F、Cl、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を表す。oは0~1の整数を表す。Q31は、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基であり、Q32は、単結合又はエーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基である。R31は、エーテル結合を有していてもよいパーフルオロアルキル基である。Xは、O、N、又はCであって、XがOの場合はaは0であり、XがNの場合はaは1であり、XがCの場合はaは2である。Z32は、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はNR32 4を表す。R32は、それぞれ独立に、アルキル基又はHを表わす。)
上記繰り返し単位(12)について、Y31はF又はCF3であることが好ましい。kは0であることが好ましい。nは0又は1であることが好ましい。Y32はFであることが好ましい。mは2であることが好ましい。Z31はH、Na、K、又はNH4であることが好ましい。
上記繰り返し単位(12)は、上述したものの中でも特に、-CF2-CF(-O-CF2-CF2-SO3H)-、又は-CF2-CF(-O-CF2-CF(CF3)-O-CF2-CF2-SO3H)-が好ましい。
上記繰り返し単位(13)について、Y33はFであることが好ましい。oは0であることが好ましい。Q31は、-CF2-CF2-又は-CF2-O-CF2-CF2-であることが好ましい。Q32は、-O-CF2-CF2-であることが好ましい。R31は、-CF3又は-CF2-CF3であることが好ましい。XはOであることが好ましい。Z32は、H、Na、K、又はNH4であることが好ましい。
上記繰り返し単位(13)は、上述したものの中でも特に、-CF2-CF(-O-CF2-CF(-CF2-O-CF2-CF2-SO3H)(-O-CF2-CF2-SO3H)-が好ましい。
【0058】
(電極触媒インク)
上記高分子電解質は、電極触媒インクを形成する原料として好適に用いることができる。上記電極触媒インクは、上記高分子電解質と触媒とを含むことが好ましく、さらに水及び/又は有機溶媒を含んでいてもよい。上記電極触媒インクは、燃料電池の電極触媒層(例えば、カソード用電極触媒層)を形成する原料として好適に用いることができる。上記電極触媒インクは、燃料電池の電極触媒層形成用電極触媒インクであることが好ましい。
【0059】
上記触媒としては、電極触媒層において活性を有し得るものであれば特に限定されず、上記電極触媒層が用いられる燃料電池の使用目的に応じて適宜選択される。上記触媒は、触媒金属であることが好ましい。
上記触媒としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であることが好ましく、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属であることがより好ましい。中でも、白金が好ましい。
【0060】
触媒金属の粒子径は限定されないが、10~1000オングストロームが好ましく、より好ましくは10~500オングストローム、最も好ましくは15~100オングストロームである。
【0061】
上記電極触媒インク中の上記高分子電解質の含有量は、上記電極触媒インクに対して、5~30質量%であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
上記電極触媒インク中の上記触媒の含有量は、上記高分子電解質に対して、50~200質量%であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%以上であることが更に好ましく、150質量%以下であることがより好ましく、130質量%以下であることが更に好ましい。
【0062】
上記電極触媒インクは、更に、導電剤を含むことが好ましい。上記触媒及び上記導電剤は、上記触媒の粒子を担持した導電剤からなる複合粒子(例えば、Pt担持カーボン等)であることも好ましい形態の一つである。この場合、上記高分子電解質は、バインダーとしても機能する。
【0063】
導電剤としては、導電性を有する粒子(導電性粒子)であれば限定されないが、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛及び各種金属(触媒金属を除く)からなる群より選択される少なくとも1種の導電性粒子であることが好ましい。これら導電剤の粒子径としては、好ましくは10オングストローム~10μm、より好ましくは50オングストローム~1μm、最も好ましくは100~5000オングストロームである。
【0064】
上記複合粒子としては、導電性粒子に対する触媒粒子の含有量が、好ましくは1~99質量%、より好ましくは10~90質量%、最も好ましくは30~70質量%である。具体的には、田中貴金属工業(株)製TEC10E40E、TEC10E50E、TEC10E50HT等のPt触媒担持カーボンが好適な例として挙げられる。
【0065】
複合粒子の含有量は、上記高分子電解質に対して、1.0~3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.4~2.9質量%、更に好ましくは1.7~2.9質量%、特に好ましくは1.7~2.3質量%である。
【0066】
上記電極触媒インクは、更に、撥水剤を含んでもよい。
上記電極触媒インクは、撥水性の向上のため、更にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の共重合体を含有してもよい。この場合、撥水剤の形状としては特に限定されないが、定形性のものであればよく、粒子状、繊維状であることが好ましく、これらが単独で使用されても混合して使用されていてもよい。
【0067】
上記撥水剤の含有量は、上記高分子電解質に対して、0.01~30.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0~25.0質量%、更に好ましくは2.0~20.0質量%、特に好ましくは5.0~10.0質量%である。
【0068】
(電極触媒層)
本実施形態の電極触媒層としては、上記高分子電解質を含む電極触媒層であることが好ましい。上記電極触媒層は、上記電極触媒インクを含むことが好ましく、上記電極触媒インクからなることがより好ましい。上記電極触媒層は、安価に製造することができる上、酸素透過性が高い。上記電極触媒層は、カソード用電極触媒層として用いることができ、燃料電池用として好適に用いることができる。
【0069】
上記電極触媒層は、上記高分子電解質及び上記触媒からなることが好ましい。上記電極触媒層は、電極面積に対する上記高分子電解質の担持量が、好ましくは0.001~10mg/cm2、より好ましくは0.01~5mg/cm2、更に好ましくは0.1~1mg/cm2である。
【0070】
上記電極触媒層は、高分子電解質、触媒及び導電剤からなるものであることが好ましい。上記電極触媒層は、高分子電解質と、触媒の粒子及びこれを担持した導電剤からなる複合粒子(例えば、Pt担持カーボン等)と、からなるものであることも好ましい形態の一つである。この場合、上記高分子電解質は、バインダーとしても機能する。
【0071】
上記導電剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
上記複合粒子としては、導電性粒子に対して触媒粒子が、好ましくは1~99質量%、より好ましくは10~90質量%、最も好ましくは30~70質量%である。具体的には、田中貴金属工業(株)製TEC10E40E等のPt触媒担持カーボンが好適な例として挙げられる。
【0072】
上記複合粒子の含有率は、電極触媒層の全質量に対し、20~95質量%であることが好ましく、より好ましくは40~90質量%、更に好ましくは50~85質量%、特に好ましくは60~80質量%である。電極触媒層が燃料電池の電極触媒層として用いられる場合、電極面積に対する触媒金属の担持量としては、電極触媒層を形成した状態で、好ましくは0.001~10mg/cm2、より好ましくは0.01~5mg/cm2、更に好ましくは0.1~1mg/cm2、更により好ましくは0.2~0.5mg/cm2である。
【0073】
上記電極触媒層の厚みとしては、好ましくは0.01~200μm、より好ましくは0.1~100μm、最も好ましくは1~50μmである。
【0074】
上記電極触媒層は、必要に応じて撥水剤を含んでもよい。
上記撥水剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
電極触媒層が撥水剤を含有する場合、PTFE並びにテトラフルオロエチレンとパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の共重合体の含有率としては、電極触媒層の全質量に対し、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0075】
上記電極触媒層は、親水性向上及び化学耐久性向上のため、無機系添加剤を配合しても良い。
無機系添加剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
上記無機系添加剤の含有率としては、電極触媒層の全質量に対し、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
【0076】
上記電極触媒層の空隙率としては特に限定されないが、好ましくは10~90体積%、より好ましくは20~80体積%、最も好ましくは30~60体積%である。
【0077】
上記電極触媒層の製造方法は、得られた高分子電解質溶液に上記触媒を分散させて上記電極触媒インクを調製する工程と、電極触媒インクを基材に塗布する工程と、基材に塗布した電極触媒インクを乾燥させて電極触媒層を得る工程と、を含む。
【0078】
得られた高分子電解質溶液に上記触媒を分散させて電極触媒インクを調製する工程は、得られたエマルジョン又は高分子電解質溶液に、触媒の粒子及びこれを担持した導電剤からなる複合粒子を分散させた電極触媒インクを調製するものであることが好ましい。
【0079】
上記電極触媒インクの塗布は、スクリーン印刷法、スプレー法等の一般的に知られている各種方法を用いることが可能である。
【0080】
(膜電極接合体)
本実施形態の膜電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、「MEA」ともいう。)は、上記電極触媒層を備えることが好ましい。本実施形態の膜電極接合体は、上記電極触媒層を備えるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。上記膜電極接合体は、燃料電池用として好適に用いることができる。
【0081】
電解質膜の両面にアノードとカソードの2種類の電極触媒層が接合したユニットは、膜電極接合体(以下「MEA」ともいう。)と呼ばれる。電極触媒層のさらに外側に一対のガス拡散層を対向するように接合したものについても、MEAと呼ばれる場合がある。電極触媒層はプロトン伝導性を有することが必要となる。
【0082】
アノードとしての電極触媒層は、燃料(例えば水素)を酸化して容易にプロトンを生じさせる触媒を包含し、カソードとしての電極触媒層は、プロトン及び電子と酸化剤(例えば酸素や空気)を反応させて水を生成させる触媒を包含する。アノードとカソードのいずれについても、触媒としては上述した触媒金属を好適に用いることができる。
【0083】
ガス拡散層としては、市販のカーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等を用いることができる。これらのガス拡散層にはポリテトラフルオロエチレン等により撥水処理されていることが好ましい。
具体例として、炭素繊維トレカ(東レ社製)、パイロフィル(三菱ケミカル社製)、SIGRACET GDL(MFCテクノロジー社製)等が挙げられる。
【0084】
MEAは、例えば、電極触媒層の間に電解質膜を挟みこみ、熱プレスにより接合することにより作製することができる。より具体的には、上記高分子電解質をアルコールと水の混合溶液に分散又は溶解したものに、触媒として市販の白金担持カーボン(例えば、田中貴金属(株)製TEC10E40E)を分散させてペースト状にする。これを2枚のPTFEシートのそれぞれの片面に一定量塗布して乾燥させて電極触媒層を形成する。次に、各PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に電解質膜を挟み込み、100~200℃で熱プレスにより転写接合してから、PTFEシートを取り除くことにより、MEAを得ることができる。当業者にはMEAの作製方法は周知である。MEAの作製方法は、例えば、JOURNAL OF APPLIED ELECTROCHEMISTRY,22(1992)p.1-7に詳しく記載されている。
【0085】
上記MEA(一対のガス拡散電極が対向した構造のMEAを含む。)は、更にバイポーラプレートやバッキングプレート等の一般的な燃料電池に用いられる構成成分と組み合わされて、燃料電池が構成される。
【0086】
(燃料電池)
本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を備えることが好ましい。上記燃料電池は、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。上記燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものであれば特に限定されず、通常、燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。上記燃料電池は、上記電極触媒層を有する膜電極接合体を備えるものであるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。
【0087】
バイポーラプレートとは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトと樹脂との複合材料、又は金属製のプレート等を意味する。バイポーラプレートは、電子を外部負荷回路へ伝達する機能の他、燃料や酸化剤を電極触媒近傍に供給する流路としての機能を持っている。こうしたバイポーラプレートの間にMEAを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池が製造される。
【実施例
【0088】
次に本発明を、実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
(イオン交換容量)
イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている高分子電解質膜、およそ2~20cm2を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液として中和滴定した。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている高分子電解質膜を、純水ですすぎ、更に真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの高分子電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式により当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)-22
【0090】
(酸素溶解度)
高分子電解質の膜の酸素溶解度を、クロノアンペロメトリー法を用いて測定した。ガラス封入した100μmφの白金微小電極を厚さ200μm程度のサンプルに押し当てて、温度、湿度を調整した。窒素又は酸素雰囲気下にて、電位を1100mV(vs.SHE)に保持した後、400mVにステップして電流値を測定した。窒素及び酸素雰囲気下で観測された電流値の差分を印加時間の-1/2乗に対してプロットし、直線性が得られた範囲において下記式を用いて酸素溶解度を算出した。
I=4πFrDc[1+r/(πDt)1/2+0.2732exp{-0.3911r/(Dt)1/2}]
ただし、Iは電流値(A)、Fはファラデー定数(96500C/mol)、rは電極半径(cm)、Dは酸素拡散係数(cm2/s)、cは酸素溶解度(mol/m3)、tは時間(s)である。
本検討では評価温度80℃、湿度30%での酸素溶解度を示した。
【0091】
(SEM観察)
ダイコーターで作製した触媒層の表面を、走査型電子顕微鏡(製品名:VE8800、キーエンス社製)を用い、倍率50倍、加速電圧1kVの条件で観察した。観察の結果、触媒層表面にひび割れがなかった場合を「A」(良好)、ひび割れが見られた場合を「B」(不良)と表記した。
【0092】
(燃料電池評価)
高温低加湿条件下におけるMEAの性能を評価するため、以下のような手順で発電試験を実施した。
(1)電極触媒インクの調製
固形分濃度15質量%の高分子電解質溶液、電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属工業(株)製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(質量)となるように配合し、次いで、固形分(電極触媒とパーフルオロスルホン酸ポリマーの和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。
(2)電極触媒層の作製
ダイコーター(製品名:理化ダイ、伊藤忠ファインテクノ社製)を用い、膜厚100μmのテフロン(登録商標)基材(製品名:ナフロンテープ、ニチアス社製)上に上記電極触媒インクを、白金量が0.2mg/cm2となる様に塗布し、160℃、5分の条件で乾燥・固化させることで電極触媒層を得た。
(3)MEAの作製
プレス機(製品名:SFA-37、神藤金属工業社製)を用い、電解質膜(製品名:NafionHP、ケマーズ社製)の両面に、アノード側に高分子電解質としてNafionDE2020CSを用いた電極触媒層を、カソード側に本実施形態の高分子電解質を用いた電極触媒層を、温度160℃、圧力13MPaの条件で熱プレスすることで、MEAを得た。
(4)燃料電池単セルの作製
上記MEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。
(5)発電試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ社製燃料電池評価システム890CL)にセットして、発電試験を実施した。
発電の試験条件は、高加湿条件が、セル温度65℃、アノード及びカソードの加湿ボトル60℃に設定し、低加湿条件が、セル温度90℃、アノード及びカソードの加湿ボトル61℃に設定し、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ900ml/minの条件で供給した。また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。
上記高加湿条件において、電流密度0.2A/cm2において電圧値が0.830V以上であれば「A」(優れる)、0.820V超0.830V未満であれば「B」(普通)、0.820V以下であれば「C」(劣る)、電流密度0.8A/cm2において電圧値が0.685V以上であれば「A」(優れる)、0.675V超0.685V未満であれば「B」(普通)、0.675V以下であれば「C」(劣る)として表記した。
また、上記低加湿条件において、電流密度0.2A/cm2において電圧値が0.750V以上であれば「A」(優れる)、0.720V超0.750V未満であれば「B」(普通)、0.720V以下であれば「C」(劣る)、電流密度0.8A/cm2において電圧値が0.550V以上であれば「A」(優れる)、0.440V超0.550V未満であれば「B」(普通)、0.440V以下であれば「C」(劣る)として表記した。
【0093】
(化学耐久性)
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ製燃料電池評価システム890CL)にセットして、セル温度90℃、加湿ボトル61℃(相対湿度30%RH)、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ300cc/minの条件で流通させることでOCV試験を実施した。
上記OCV試験の終点を判定するために、カソード側にマイクロガスクロマトグラフ(製品名:CP-4900、GLサイエンス社製)を接続し、アノード側より透過するH2ガスの濃度を測定した。上記H2ガスの濃度が1000ppmを越えた時点を終点とした。上記終点が200時間以上を「A」(良好)、200時間未満を「B」(不良)と表記した。
【0094】
(構造単位の割合)
ベンゾジオキソール構造単位の導入率は、上記高分子電解質のH-NMR並びにF-NMR解析を行い、EW測定でのプロトン伝導基導入量と併せることで算出した。
【0095】
(実施例1)
300ml三つ口フラスコに、5-ブロモレソルシノール4.2g(22mmol)、脱水N,N-ジメチルアセトアミド50ml、トリエチルアミン4.9g(49mmol)を入れ、窒素置換してキャップをした後、常温で撹拌混合した。オクタフルオロシクロペンテン4.7g(22mmol)を入れ、室温で30分攪拌後、50℃で30分攪拌、80℃で30分攪拌し、100℃で24時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液をイオン交換水500mL中に投入し、ガラスフィルターで減圧ろ過後、イオン交換水で十分に洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥した。得られたポリマーA1は薄茶色固体で、収量6.0g(収率77%)であった。19F-NMR(d-DMSO)では、-113~-121ppmに積分比4、-133~-137ppmに積分比2のブロードなピークが各々見られた。
次に、ベンゾジオキソール誘導体の導入反応を下記の通り実施した。
300ml三つ口フラスコに、上記A1 5.0g、脱水N,N-ジメチルアセトアミド50ml、セサモール5.7g(42mmol)、炭酸カリウム5.7g(42mmol)を入れ、窒素置換してキャップをした。その後、100℃で24時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液をイオン交換水500mL中に投入し、ガラスフィルターで減圧ろ過後、イオン交換水で十分に洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥した。得られたポリマーA2は薄茶色固体で、収量5.0g(収率61%)であった。19F-NMR(d-DMSO)では-113~-121ppmに積分比2、-133~-137ppmに積分比2のブロードなピークが各々見られた。
次にスルホン酸基の導入反応を下記の通り実施した。
300mL三つ口フラスコに、上記A2 4.0g、直径100nmの銅粉3.0g、ジメチルスルホキシド20mLを入れ、窒素置換してキャップをした後、120℃で2時間撹拌混合した。次に、Macromolecules,2009年,Vol.42,p.9302-9306を参考に、1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-ヨードエトキシ)エタンスルホニルフルオライドを加水分解して得られた1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-ヨードエトキシ)エタンスルホン酸カリウム6.0g(13mmol)をジメチルスルホキシド20mlに溶解し、上記反応液に滴下し、120℃で6時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液をセライトろ過し銅粉を除去した。その後、ろ液を5N塩酸500mLに滴下し、遠心分離を行った後、減圧ろ過することで沈殿物を回収した。これをさらに3回繰り返した。その後、イオン交換水によって、上澄み液のpHが中性になるまで洗浄を行った。得られた固体を50℃12時間減圧乾燥した。得られたポリマーA3は黒色固体で、収量2.8g(収率52%)であった(式(14))。ポリマーA3のベンゾジオキソール構造単位のモル割合は100mol%であった。
【化26】
得られたポリマーA3をエタノールとともに5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、窒素置換した後、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して3時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、固形分濃度10質量%の均一なポリマー溶液を作製した。
得られた固形分濃度10質量%のポリマー溶液を80℃にて減圧濃縮して、固形分濃度15質量%のポリマー溶液AS1(高分子電解質溶液)を作製した。
上記AS1を用いて上述の方法によりキャスト製膜して、厚み200μmの膜AM1を作製した。AM1のEW及び酸素溶解度を表1に示す。またAS1を含む電極触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性の結果を表2に示す。
AM1は高い酸素溶解度を示す。またAS1を含む電極触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較例の材料よりも高いことが分かる。
【0096】
(実施例2)
300ml三つ口フラスコに、セサモール13g(94mmol)、脱水N,N-ジメチルアセトアミド50ml、トリエチルアミン11g(105mmol)を入れ、窒素置換してキャップをした後、常温で撹拌混合した。オクタフルオロシクロペンテン10g(47mmol)を入れ、室温で2時間攪拌後、80℃で6時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液にイオン交換水200mLと酢酸エチル200mlを加え、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ガラスフィルターで減圧ろ過後、溶媒をエバポレーターで除去した。その後、カラムクロマトグラフィーで精製し、式(10)のR1、R2が水素原子である化合物B1を薄茶色固体で、収量16g(収率78%)で得た。19F-NMR(CDCl3)では、-116ppmに積分比4、-132ppmに積分比2のピークが各々見られた。
次に、300ml三つ口フラスコに、上記B1 9.9g(22mmol)、5-ブロモレソルシノール4.2g(22mmol)、脱水N,N-ジメチルアセトアミド50ml、トリエチルアミン4.9g(49mmol)を入れ、窒素置換してキャップをした。その後、100℃で24時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液をイオン交換水500mL中に投入し、ガラスフィルターで減圧ろ過後、イオン交換水で十分に洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥した。得られたポリマーB2は薄茶色固体で、収量8.8g(収率67%)であった。19F-NMR(d-DMSO)では、-113~-121ppmに積分比2、-133~-137ppmに積分比2のブロードなピークが各々見られた。
ポリマーB2(6.0g)を用いる以外は実施例1と同様にスルホン酸基の導入反応を行い、ポリマーB3を得た(式(15))。ポリマーB3のベンゾジオキソール構造単位のモル割合は100mol%であった。
【化27】
実施例1と同様な方法で溶液化し、固形分濃度15質量%のポリマー溶液BS1(高分子電解質溶液)を得た。上記BS1を用いて上述の方法によりキャスト製膜して、厚み200μmの膜(BM1)を作製した。BM1のEW及び酸素溶解度を表1に示す。またBS1を含む電極触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
BM1は高い酸素溶解度を示す。またBS1を含む電極触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較例の材料よりも高いことが分かる。
【0097】
(実施例3)
100ml三つ口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.795g(4.8mmol)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン10g(52mmol)、トルエン20gを入れ、窒素置換してキャップをした後、60℃で8時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液を200mlのメタノールに滴下し、減圧濾過、乾燥することで白色固体としてポリペンタフルオロスチレンC1 4.9g(収率49%)を得た。19F-NMR(CDCl3)では、-140~-147ppmに積分比2、-153~-157ppmに積分比1、-159~-164ppmに積分比2のブロードなピークが各々見られた。
次に、200ml三つ口フラスコに、上記ポリマーC1 4g、脱水N,N-ジメチルアセトアミド40g、セサモール1.6g(12mmol)、炭酸カリウム1.6g(12mmol)を入れ、窒素置換してキャップをした。その後、90℃で6時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液を200mlのメタノールに滴下し、減圧濾過、乾燥することで白色固体として、ポリペンタフルオロスチレンのパラ位にセサモールを導入したポリマーC2 3.0g(収率58%)を得た。19F-NMR(CDCl3)では、-140~-147ppmに積分比2、-153~-157ppmに積分比0.5、-159~-164ppmに積分比2のブロードなピークが各々見られた。NMRより、ベンゾジオキソール構造単位の導入量は50mol%であった。
次に、200ml3つ口フラスコに、上記ポリマーC2 2.6g、18-クラウン6-エーテル8.2g(31mmol)、水2g(111mmol)、水酸化カリウム1.7g(31mmol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル40gを入れ、窒素置換してキャップをした後、90℃で6時間撹拌混合した。反応液を空冷した後、上澄みを除去してから37質量部の濃塩酸3.8g、エタノール40gを添加し、60℃で1時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液を200mlの水に滴下し、減圧濾過、水洗、乾燥することで淡褐色の固体としてポリペンタフルオロスチレンのパラ位に水酸基を導入したポリマーC3 2.3g(収率89%)を得た。19F-NMR(CDCl3)では、-140~-149ppmに積分比2、-163~-167ppmに積分比2のブロードなピークが各々見られ、パラ位に対応する-153~-157ppmにピークがないことを確認した。
更に、200ml三つ口フラスコに、上記ポリマーC3 2g、水素化ナトリウム0.48g(65%、13mmol)、1,2-ジメトキシエタン40gを加え、窒素置換してキャップをした後、50℃で1時間撹拌混合した。反応液を空冷した後、CF2=CF-OCF2CF2SO3Na 3.7g(12mmol)を加え、90℃で6時間撹拌混合した。反応終了後、真空乾燥により溶媒を除去し、残固体を60mlのジエチルエーテルで5回洗浄し、0.5Mの塩化水素のメタノール溶液を60ml加え、1時間撹拌混合した後濾過、水洗、真空乾燥することで、スルホン酸基を導入した式(16)のポリマーC4 1.8g(収率58%)を得た。固体19F-NMRでは、-70~-100ppmに積分比4、-110~-120ppmに積分比2、-130~-170ppmに積分比9のブロードなピークが各々見られた。NMRとEWより、スルホン酸基の導入量は50mol%であった。ポリマーC4のベンゾジオキソール構造単位のモル割合は50mol%であった。
【化28】
実施例1と同様な方法で溶液化し、固形分濃度15質量%のポリマー溶液CS1(高分子電解質溶液)を得た。上記CS1を用いて上述の方法によりキャスト製膜して、厚み200μmの膜(CM1)を作製した。CM1のEW及び酸素溶解度を表1に示す。またCS1を含む電極触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
CM1は高い酸素溶解度を示す。またCS1を含む電極触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較例の材料よりも高いことが分かる。
【0098】
(実施例4)
100mLオートクレーブ用のガラス内筒に、ラジカル重合法で取得した、テトラフルオロエチレンとCF2=CFOCF2CF2SO2Fとの共重合体(3.5g)、及び3M社製ノベックTM7300(70g)を投入し、160℃で2時間窒素下で撹拌することで、溶解させた。冷却後に溶液を取り出し、固形分重量を200℃1時間で測定したところ、5.0重量%の溶液(D1)であった。別の100mLオートクレーブ用のガラス内筒に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.8g、21mmol)とピペロニルアミン(2.6g、17mmol)を加え、均一に混合した。さらに同ガラス内筒に、上記溶液D1(40g)とノベックTM7300(40g)加え、130℃で6時間窒素下で撹拌することで、反応させた。冷却後、反応液をエタノール400ccにゆっくりと注ぎ、沈殿物をろ別回収し、エタノールで濃黄色着色成分が除去されるまで洗浄した。得られた濃黄色固体を乾燥させ、ポリマー前駆体D2を得た。上記ポリマー前駆体D2を、水酸化カリウム(15質量%)を溶解した水溶液中に70℃で10時間接触させ、70℃水中に5時間浸漬後、70℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を4回繰り返した後、イオン交換水で水洗し、乾燥させて、ポリマーD3(2.0g)を得た(式(17))。ポリマーD3のベンゾジオキソール構造単位のモル割合は12mol%であった。
【化29】
実施例1と同様な方法で溶液化し、固形分濃度15質量%のポリマー溶液DS1(高分子電解質溶液)を得た。上記DS1を用いて上述の方法によりキャスト製膜して、厚み200μmの膜(DM1)を作製した。DM1のEW及び酸素溶解度を表1に示す。またDS1を含む電極触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
DM1は高い酸素溶解度を示す。またDS1を含む電極触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較例の材料よりも高いことが分かる。
【0099】
(比較例1)
市販のナフィオン溶液(Nafion DE2020CS、SIGMA-ALDRICH社製)を用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmのキャスト膜を製膜し、EW、酸素溶解度を測定した。結果を表1に示す。
また上記ナフィオン溶液を用い実施例1と同様に電極触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
Nafion DE2020CSは、酸素溶解度が低い。また電極触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
【0100】
(比較例2)
ラジカル重合法で得られた、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体(69.8mol%/30.2mol%)をポリマー前駆体として用い、実施例4と同様の方法で、加水分解処理によりパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)/CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3Hからなる高分子電解質を得た。実施例1と同様の方法で、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1、及び厚さ200μmのキャスト膜を作製した。キャスト膜のEW及び酸素溶解度を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用いて実施例1と同様に電極触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用いたキャスト膜は、酸素溶解度は高いものの、電極触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】