(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】クリーニング装置及びこれを備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
G03G21/00 318
(21)【出願番号】P 2019202809
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】岩川 正
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-093986(JP,A)
【文献】特開2019-128393(JP,A)
【文献】特開2018-025667(JP,A)
【文献】特開2001-337549(JP,A)
【文献】特開2017-111320(JP,A)
【文献】特開平11-231688(JP,A)
【文献】米国特許第05534988(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/16
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上のトナーをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を保持する揺動板金と、
前記クリーニング部材の両端位置にて前記揺動板金を揺動可能に保持する一対の揺動軸と、
前記像担持体に対して前記クリーニング部材を揺動付勢させる付勢力を与える付勢部材と、
前記揺動軸を保持するクリーニング容器と、
を有するクリーニング装置において、
前記一対の揺動軸のうち少なくとも一つの揺動軸は、前記揺動板金を保持する小径軸部と、前記クリーニング容器に回動可能に保持される大径軸部と、備え、
前記小径軸部の軸中心位置は前記大径軸部の軸中心位置に対して偏芯して配置されており、
前記大径軸部の軸中心にて回転することで前記小径軸部が移動し、
この移動により前記像担持体に対する前記クリーニング部材の付勢力の両端部の差を変化させる調整が可能であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記揺動軸の軸線方向と直交する断面において、前記小径軸部の中心と前記大径軸部の中心を結んだ直線L1と、前記像担持体に前記クリーニング部材が接する接点を通る前記像担持体の外周円の接線L2のなす角度θは0±45°の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記付勢部材は伸縮することで付勢力を付与し、前記揺動軸の軸線方向と直交する断面において、前記小径軸部と前記大径軸部を結んだ前記直線L1と、前記付勢部材の伸縮方向のなす角θspは0±45°の範囲内であることを特徴とす
る請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記揺動軸と結合されている部材の少なくとも一部は、前記クリーニング容器の外側に配置されており、前記結合されている部材を回動することで前記クリーニング部材の付勢力の両端部差圧を調整可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のクリーニング装置を有し、前記像担持体に形成した像を、転写紙上に転写して画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置及びこれを備える電子写真方式を利用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電子写真方式を利用した画像形成装置にあっては、画像形成に必要な色と同数の像担持体(感光体)が設けられている。感光体の周辺に帯電手段、像露光手段、現像手段、クリーニング手段が設けられており、それぞれの感光体に形成した単色のトナー像を、ベルト部材の中間転写体上に重畳転写(一次転写)する。そして、中間転写ベルト上に担持されている可視像を普通紙等の転写紙に転写(二次転写)して記録画像を得る。中間転写ベルトから可視像を転写された転写紙は、定着装置に搬送されて可視像の定着を受けた後に排出される。
【0003】
転写後の感光体及び中間転写ベルト上に残留する転写残トナーをクリーニングする方法としては、従来から種々提案されている。その中でもウレタンゴム等の弾性材料から成るクリーニングブレードによって感光体や中間転写ベルト上の転写残トナーを掻き落とすものが、その構成が簡単でコンパクト、低コストであり、しかも、トナー除去機能も優れていることから、一般に広く利用されている。
【0004】
このクリーニングブレードの当接圧は低すぎると部分的に残留トナーが掻き取れず、転写時に紙上に写って画像上にスジが発生する等のクリーニング不良が発生し、逆に高すぎると感光体の感光層やクリーニングブレードの摩耗量が多くなってしまったり、クリーニングブレード材のエッジが部分的に欠ける等の問題が発生する。また、当接圧が同一であったとしても、当接角が変わるとニップ幅が変わる為、ブレードが接触する単位面積あたりの当接圧は変わってしまう。よって、当接圧と当接角は所定の設定範囲内で一定であることが望ましい。
【0005】
特に当接圧に前奥差が生じている場合は感光体の感光層やクリーニングブレードは偏摩耗してより低寿命になってしまう。また、当接圧に前奥差が生じていると前奥でのブレード材の撓み量が違う状態で使用していることになるため、ブレード材に捩じれが生じてしまい、結果ブレード材が捲れてしまうという不具合が発生しやすくなってしまう。
【0006】
以上のように、ブレード当接圧は前奥差がない状態で使用されることが望ましく、これを実現する為、ブレード材を接着している板金と並行する方向にブレード先端位置を調整可能に構成したものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先述のウレタンゴム等の弾性材料から成るクリーニングブレードによるブレードクリーニング方式において、クリーニングブレードの当接角は15°~30°程度に設定されているものがほとんどである。これは当接角を小さくし過ぎるとクリーニングブレードが腹当たりしてニップ幅が大きくなりすぎてしまい、結果ブレードが接触する単位面積あたりの当接圧が低くなってしまうからである。逆に当接角を大きくすると像担持体回転方向に対してカウンター方向に当接させているクリーニングブレードは当然捲れやすくなってしまうからである。
【0009】
よって上記の特許文献1のようにクリーニングブレード材を接着している板金と並行する方向にブレード先端位置を調整可能に構成したものでは、前奥の当接圧差をキャンセルさせるためには、像担持体にクリーニングブレードが接する接点を通る像担持体外周円の接線と直行する方向にブレード先端位置を調整可能に構成したものに対してより多くの移動量が必要となってしまう。
【0010】
当接圧差をキャンセルさせるために先端位置の移動量が多くなってしまうと、今度は当接角の前奥差が不均一になってしまう。
【0011】
このため現在では前奥の当接圧差をキャンセルさせるためにブレード支板と揺動板金の間にスペーサを挟んでブレード支板と直行する方向に調整する構成が主流となっている。
【0012】
しかしながら、このスペーサによる調整ではスペーサの厚みに応じた段階的な調整しか出来ないため、高精度に前奥差調整をすることが困難である。また、クリーニングブレードユニットを容器に組み込んだ後に圧測定を行い、その測定結果からスペーサの厚みを決定し、その後スペーサを組み込むためには、クリーニングブレードユニットを容器から分解する工数が必要となるため、非常に多くの作業工数が必要となってしまう。この工数削減のため、容器にクリーニングブレードユニットを組み込む前段階でクリーニングブレードのおじぎ量や突き出し量等の情報からスペーサ厚みを決定することは可能であるが、この調整工程では容器成分等によるブレードの前奥差圧をキャンセルすることは出来ないことから、やはり高精度に前奥差調整をすることが困難であるといった問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、前奥の当接角の変動が少なく、尚且つ圧調整時の工数を極力抑え、高精度にブレード圧の前奥差を略均一に調整することが可能なクリーニング装置及びこれを備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクリーニング装置は、
像担持体上のトナーをクリーニングするクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を保持する揺動板金と、
前記クリーニング部材の両端位置にて前記揺動板金を揺動可能に保持する一対の揺動軸と、
前記像担持体に対して前記クリーニング部材を揺動付勢させる付勢力を与える付勢部材と、
前記揺動軸を保持するクリーニング容器と、
を有するクリーニング装置において、
前記一対の揺動軸のうち少なくとも一つの揺動軸は、前記揺動板金を保持する小径軸部と、前記クリーニング容器に回動可能に保持される大径軸部と、備え、
前記小径軸部の軸中心位置は前記大径軸部の軸中心位置に対して偏芯して配置されており、
前記大径軸部の軸中心にて回転することで前記小径軸部が移動し、
この移動により前記像担持体に対する前記クリーニング部材の付勢力の両端部の差を変化させる調整が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前奥の当接角の変動が少なく、尚且つ圧調整時の工数を極力抑え、高精度にブレード圧の前奥差を略均一に調整することが可能なクリーニング装置及びこれを備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の実施例におけるクリーニングブレード、揺動板金、揺動軸、クリーニング容器を有する感光体クリーナ部及び感光体の斜視図
【
図3】本発明の実施例におけるクリーニングブレード、揺動軸、クリーニング容器を有する感光体クリーナ部及び感光体の部分断面図
【
図4】本発明の実施例における揺動軸153の斜視図
【
図5】本発明の実施例における揺動軸153の移動方法及び揺動軸153のクリーニング容器154への固定方法説明図
【
図6】本発明の実施例における揺動軸の偏芯段軸位相説明図
【
図8】本発明の実施例における差圧調整時移動方向に揺動軸を移動した際の移動量とクリーニングブレードの前奥差圧変化量グラフ
【
図9】比較例の移動方向に揺動軸を移動した際の移動量とクリーニングブレードの前奥差圧変化量グラフ
【
図10】本発明の実施例における付勢部材の伸縮方向説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
ただし、以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置等は、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0019】
図1には本発明実施形態の一例である画像形成装置の概略断面図を示す。
【0020】
<転写紙の搬送プロセス>
転写紙Sは転写紙収納庫61~64に積載される形で収納されており、給紙部61a~64aにより画像形成タイミングに合わせて転写紙Sが給送される。給紙部61a~64aにより送り出された転写紙Sは搬送パス81等を通過し、転写前搬送部であるレジストローラ対76へと搬送される。該レジストローラ対76は転写紙収納庫61~64から搬送されてくる転写紙Sを突き当ててループを作成することにより転写紙Sの先端を倣わせ斜行を修正する機能を有する。また、転写紙Sへの画像形成のタイミング、即ち、像担持体上に担持されたトナー像に合わせて、所定のタイミングにて転写紙Sを二次転写部4へ搬送する機能を有している。そして、斜行修正を行った後に、所望のタイミングにて二次転写部4へ転写紙Sを送りだす。二次転写部4は、対向する二次転写内ローラ32および二次転写外ローラ41により転写ニップ部が形成されている。転写紙Sは転写ニップ部で挟持され、所定の加圧力が付与され、静電的負荷バイアスが付与されることで転写紙S上にトナー像が転写される。
【0021】
<画像の作像プロセス>
以上説明した二次転写部4までの転写紙Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部4まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。画像形成部は、主に感光体11(11Y、11M、11C、11K)、帯電装置12(12Y、12M、12C、12K)、露光装置13(13Y、13M、13C、13K)、現像装置14(14Y、14M、14C、14K)を備える。また、一次転写装置35(35Y、35M、35C、35K)、および感光体クリーナ15(15Y、15M、15C、15K)等から構成される。感光体11は、予め帯電装置12により表面を一様に帯電される。
【0022】
回転する前記感光体11に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて前記露光装置13が駆動され潜像が形成される。前記感光体11上に形成された静電潜像は、前記現像装置14によるトナー現像を経て、感光体11上にトナー像として顕在化する。その後、前記一次転写装置35により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト31上にトナー像が転写される。その後、前記感光体11上に僅かに残った転写残トナーは前記感光体クリーナ15により回収され、再び次の画像形成に備える。以上説明した画像形成部は
図1の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の4セット存在する。勿論、色数は4色に限定されるものではなく、また色の並び順もこの限りではない。
【0023】
次に、前記中間転写ベルト31について説明する。前記中間転写ベルト31は駆動ローラ33、テンションローラ34および二次転写内ローラ32等のローラによって張架され、図中矢印Eの方向へと搬送駆動される。先述のY、M、CおよびBkの各画像形成装置により並列処理される各色の画像形成プロセスは、該中間転写ベルト31上に一次転写された上流色のトナー像上に重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト31上に形成され、二次転写部4へと搬送される。二次転写部4へと搬送されたトナー像は前述の通り、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることで転写紙S上に転写される。その後、前記中間転写ベルト31上に僅かに残った転写残トナーは転写ベルトクリーナ36により回収される。
【0024】
<二次転写以降のプロセス>
以上、それぞれ説明した転写紙Sの搬送プロセスおよび画像形成プロセスを以って、前記二次転写部4において転写紙S上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、転写紙Sは吸着搬送手段42により定着装置5へと搬送される。吸着搬送手段42はファン等によって転写紙をエアー吸着して搬送する。該定着装置5は、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による加熱効果を加えて転写紙S上にトナー像を溶融固着させる。このようにして得られた定着画像を有する転写紙Sは、そのまま排紙トレイ66上に排出する排紙搬送パス82か、もしくは両面画像形成を要する場合には反転誘導パス83のいずれかに搬送されるべく経路選択が行われる。両面画像形成を要する場合、転写紙Sは前記反転誘導パス83からスイッチバックパス84へと引き込まれ、反転Bローラ対79の回転方向を正逆転させること(スイッチバック動作)を行うことで先後端を入れ替え、両面搬送パス85へと搬送される。その後、前記各給紙手段より搬送されてくる後続ジョブの転写紙Sとのタイミングを合わせて再合流し、同様に前記レジストローラ対76を経て二次転写部4へと送られる。
【0025】
裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、先述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。また、転写紙Sを反転排紙させる場合には、定着装置5を転写紙Sが通過後、前記反転誘導パス83からスイッチバックパス84へと搬送する。そして、スイッチバックパス84に転写紙Sが引き込まれ後、反転Aローラ対78及び反転Bローラ対79の逆転により、送り込まれた際の後端を先頭にして、送り込まれた方向と反対向きに退出させ、排紙トレイ66に排紙される。
【0026】
<本発明のクリーニング装置>
次に本発明のクリーニング装置について詳しく説明する。
【0027】
図2には本発明の一例のクリーニングブレード151、揺動板金152、揺動軸153、クリーニング容器154を有する感光体クリーナ部15及び感光体11の斜視図を、
図3にはクリーニングブレード151、揺動軸152、クリーニング容器154を有する感光体クリーナ部15及び感光体11の部分断面図を示す。ここで、
図3の部分断面図では揺動軸152の小径軸部1532と大径軸部1531の位相が視認できるよう、あえて揺動板金152の揺動軸152に保持される個所は図示していない。
【0028】
これより感光体クリーナ部15について説明していくが、本発明はこれに限定されるものではなく、転写ベルトクリーナ部36においても同等の効果が得られる。
【0029】
本発明の感光体クリーナ部15は、クリーニング部材であるクリーニングブレード151を備える。該クリーニングブレード151は揺動板金152に保持されており、揺動板金152は、クリーニングブレード151の両端位置にて一対の揺動軸153に揺動可能に保持されている。該揺動軸153はクリーニング容器154に保持されており、揺動板金152に対して伸縮可能に取り付けられた引張りコイルバネ(付勢部材)155のバネ力により、クリーニングブレード151は揺動軸153を中心として回動し感光体11に対して所望の当接圧を付加している。このクリーニングブレード151の当接圧により、感光体11に僅かに残った転写残トナーは掻き落とされる。掻き落とされた転写残トナーは一時的にクリーニング容器154内に収容され、クリーニング容器154内に備えられた搬送スクリュー156により、クリーニング容器外へと搬送される。
【0030】
次に本発明の特徴である揺動軸153及び揺動軸153の移動方法、揺動軸153のクリーニング容器154への固定方法に関して説明する。
【0031】
図4には揺動軸153の斜視図を、
図5には揺動軸153の移動方法、揺動軸153のクリーニング容器154への固定方法説明図を示す。
【0032】
本発明の一対の揺動軸153のうち少なくとも一方の揺動軸は、揺動板金152を保持する小径軸部1532と、クリーニング容器154に回動可能に支持される大径軸部1531よりなる段軸で構成され、
図4に示す通り、小径軸部1532の軸中心位置は大径軸部1531の軸中心位置に対して偏芯して配置されている。この偏芯段軸は揺動軸保持板金1533にカシメられ一体化されている。
【0033】
このため
図5に示す通り、揺動軸保持板金1533をD2方向に回動することで、大径軸部1531は回転し、大径軸部1531に対して偏芯配置されている小径軸部1532はD3方向に移動することが可能である。
【0034】
上述の移動方法で、一方の揺動軸153の揺動板金保持部を他方の揺動軸153に対して移動することで、揺動板金152と感光体11の相対位置関係をクリーニングブレード151の両端部にて可変にすることが出来るため、クリーニングブレード151の両端部の当接圧差を変更することが可能となっている。
【0035】
現在主流のブレード支板と揺動板金の間にスペーサ(シム)を挟んで当接圧差を調整するシム調整方法がスペーサの厚みに応じた段階的な調整しか出来ないのに対して、本発明の偏芯段軸による当接圧差調整方法では無段階に調整が可能であるため、より高精度に当接圧差を調整することが可能である。
【0036】
このようにしてクリーニングブレード151の両端部の当接圧差が調整された揺動軸153は締結ビス157にてクリーニング容器154に固定される。
【0037】
ここまで当接圧差調整時に揺動板金保持部を移動させる側の揺動軸に関して説明してきたが、他方の揺動軸は同様に偏芯段軸構成をとっても良いし、当然段軸構成を取らなくても良い。
【0038】
次に本発明の特徴である偏芯段軸よりなる揺動軸153の大径軸部1531に対する小径軸部1532の相対位置に関して説明する。
【0039】
図6には偏芯段軸よりなる揺動軸153の大径軸部1531に対する小径軸部1532の相対位置の説明図を、
図7には大径軸部1531に対する小径軸部1532の相対位置が本発明外に配置された場合の説明図を示す。
【0040】
図6に示す本実施例では大径軸部1531に対し、略鉛直下方に小径軸部1532を配置している。この大径軸部1531と小径軸部1532を結んだ直線をL1とし、感光体11にクリーニングブレード151が接する接点を通る感光体11の外周円の接線をL2とすると、L1とL2のなす角θは13°となる。このように大径軸部1531と小径軸部1532を結んだ直線L1が鉛直上下方向に向いている場合、小径軸部1532の調整時移動方向は略L1と直行する方向(
図6の左右方向)となるため、これに伴い小径軸部1532に保持される揺動板金152及び揺動板金に保持されるクリーニングブレード151も
図6のD1方向に移動される。このようにD1方向にクリーニングブレード151先端位置を移動させると、感光体11の中心位置との相対距離は大きく変化するため、小径軸部1532を少量移動しただけで、多くの当接圧差を変化させることが可能となる。実際に
図6に示す断面図の位相にて当接圧差調整を行った際の小径軸部1532移動量とクリーニングブレードの前奥差圧変化量グラフを
図8に示す。
【0041】
一方、
図7に示す通り、大径軸部1531に対し、水平方向に小径軸部1532を配置した場合、L1とL2のなす角θは77°となり、小径軸部1532を移動させた場合のクリーニングブレード151先端位置移動方向は
図7のD1のように鉛直上下方向となる。このD1の移動方向では、クリーニングブレード151先端位置と、感光体11の中心位置との相対距離は大きく変化しないため、小径軸部1532の移動量に対する当接圧差の変化量も小さくなってしまう。実際に
図7に示す断面図の位相にて当接圧差調整を行った際の小径軸部1532移動量とクリーニングブレードの前奥差圧変化量グラフを
図9に示す。
【0042】
図8と
図9のグラフからもわかる通り、L1とL2のなす角θは0°に近い方が小径軸部1532の移動量を少なく当接圧差調整を行う事が可能である。
【0043】
逆にL1とL2のなす角θが90°に近くなると、当接圧差調整を行うために小径軸部1532の移動量が多く必要となってしまう。
【0044】
先述の通り、当接角は小さ過ぎるとクリーニングブレードが腹当たりしてニップ幅が大きくなり、結果ブレードが接触する単位面積あたりの当接圧が低くなってしまう。逆に当接角が大きいと感光体回転方向に対してカウンター方向に当接させているクリーニングブレードは当然捲れやすくなってしまう。よって、当接角は所望の範囲内で設定されることが望ましいが、当接圧差調整のために小径軸部1532の移動量が大きくなると、その影響で当接角も大きく変化してしまう。このため当接圧差調整のために小径軸部1532の移動量は少ない方が望ましい。
以上より、L1とL2のなす角θは
θ=0±45°
の範囲内であると良い。
【0045】
次に、引張りコイルバネ(付勢部材)155の伸縮方向に関して説明する。
【0046】
図10には本発明における付勢部材の伸縮方向説明図を示す。
【0047】
本発明である
図10の断面では、引張りコイルバネ155の伸縮方向をDspとすると、大径軸部1531と小径軸部1532を結んだ直線L1と引張りコイルバネ伸縮方向Dspのなす角θspは8°となっている。感光体11にクリーニングブレード151を当接させ不勢力を与えるために、当然ながらクリーニングブレード151と一体固定されている部材に引張りコイルバネ155の一端を取り付ける必要がある。よって、当接圧差調整のために小径軸部1532の移動を行うと、引張りコイルバネ155の取付部も一緒に移動してしまう。先述の通り、本実施例の位相に小径軸部1532を配置しておくと、当接圧差調整時の小径軸部1532の移動方向は略水平方向(
図10の左右方向)となるため、この移動により引張りコイルバネ155の伸縮量は大きく変化せず、結果クリーニングブレードの全当接圧は殆ど変化しない。これに対し、
図7に示す本発明の範囲外に小径軸部1532を配置し場合、当接圧差調整時の小径軸部1532の移動方向は略鉛直上下方向となるため、この移動により引張りコイルバネ155の伸縮量は大きく変化してしまい、結果クリーニングブレードの全当接圧は大きく変化してしまう。よって、L1とDspのなす角θspは0°に近い方が望ましく、
θsp=0±45°
の範囲内であると良い。
【0048】
ここまで、付勢部材155として引張りコイルバネを用いて説明してきたが、当然圧縮コイルバネで構成されているクリーニング装置においても同等の効果を得ることが可能である。
【0049】
また
図5に示す通り、本実施例においては、揺動軸保持板金1533がクリーニング容器154の外側に配置されており、この揺動軸保持板金1533を回動することで、当接圧差調整が可能となっている。
【0050】
現在主流のシム調整方法では、クリーニングブレード151や揺動板金152をクリーニング容器154内に組み込んだ後に圧測定を行い、その測定結果からスペーサの厚みを決定し、その後スペーサを組み込むためにはクリーニングブレード151や揺動板金152をクリーニング容器154から分解する工数が必要となっていたが、前述の揺動軸保持板金1533がクリーニング容器154の外側に配置されている構成をとることで、クリーニングブレード151や揺動板金152をクリーニング容器154から分解することなく当接圧差調整が可能となるため調整工程時間の削減にもなる。
【0051】
以上より、本発明によると、前奥の当接角の変動が少なく、尚且つ圧調整時の工数を極力抑え、高精度にブレード圧の前奥差を略均一に調整することが可能なクリーニング装置及びこれを備える画像形成装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
11 感光体(像担持体)、151 クリーニング部材(クリーニングブレード)、
152 揺動板金、153 揺動軸、1531 揺動軸の大径軸部、
1532 揺動軸の小径軸部、1533 揺動軸保持板金、
154 クリーニング容器、155 付勢部材、Dsp 付勢部材の伸縮方向、
L1 揺動軸の小径軸部と大径軸部を結んだ直線、
L2 感光体にクリーニング部材が接する接点を通る像担持体の外周円の接線、
θ L1とL2のなす角、θsp L1とDspのなす角