(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】放射線量測定の判定
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
A61N5/10 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019207289
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517183340
【氏名又は名称】エスセーカー・セーエーエヌ
【氏名又は名称原語表記】SCK.CEN
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ルアナ・デ・フレイタス・ナシメント
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ファンハーヴェレ
(72)【発明者】
【氏名】ララ・ストリューレンス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・アクセルロッド
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0181815(US,A1)
【文献】国際公開第2018/124874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
G01T 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線医療または放射線治療のための照射システム(200)における使用のための線量測定システム(100)であって、前記線量測定システム(100)が、
・放射線感受性材料を備えた、少なくとも二次元の放射線発光照射検出面(110)であって、前記放射線感受性材料が、放射線発光特性を有する、少なくとも二次元の放射線発光照射検出面(110)と、
・放射線医療または放射線治療照射ビームを用いた照射時に、前記少なくとも二次元の検出面(110)から放射線発光光を検出するように構成された検出システム(120)と、を備え、
前記検出システム(120)が、放射線発光に対して感受性であり、かつ画像を形成するための複数の画素を含む、検出器(130)を備え、前記検出システム(120)が、前記放射線医療または放射線治療照射ビームおよび周囲光からの放射線を少なくとも部分的に遮断するためのフィルタ(140)をさらに備え、
前記検出器(130)および前記フィルタ(140)は、前記放射線医療または放射線治療照射ビームに対して平行に位置決めされる、線量測定システム(100)。
【請求項2】
前記少なくとも二次元の放射線発光照射検出面(110)が、前記放射線医療または放射線治療照射ビームを用いた照射時に、さらなる外部刺激を必要とすることなく、放射線発光信号を放出するように適合されている、請求項1に記載の線量測定システム(100)。
【請求項3】
前記放射線感受性材料が、1ns~100msの放出減衰時間を有する、請求項1または2に記載の線量測定システム(100)。
【請求項4】
前記フィルタ(140)が、10~700nmの波長域にある、周囲の放射線、室内光および/またはいかなる汚染光も遮断するように適合されている、請求項1~3のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項5】
前記フィルタ(140)が、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、ノッチフィルタ、ダイクロイックフィルタ、撮像フィルタ、または減光フィルタのいずれかである、請求項1~4のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項6】
前記検出器が、任意の所定の入射角における光を検出するように適合されている、請求項1~5のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項7】
前記線量測定システム(100)が、前記検出された放射線発光信号を処理し、それに基づいて、対象に提供された、照射の相対もしくは臓器線量および/またはその位置を算出するための処理装置(160)をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項8】
前記線量測定システム(100)が、前記放射線医療または放射線治療中にオンラインで行われるように放射線発光の前記検出を制御するための制御装置(150)を備える、請求項1~7のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項9】
前記制御装置(150)が、前記検出された照射の判定された線量および/または位置に基づいて、前記放射線医療または放射線治療システムを調整するようにさらに適合される、請求項8に記載の線量測定システム(100)。
【請求項10】
前記放射線感受性材料が、放射線発光(RL)およびシンチレーションに好適な有機または無機発光材料である、請求項1~9のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項11】
前記放射線感受性材料が、γ放射線、β放射線、α放射線、X線、陽子放射線ビーム、ハドロン放射線ビーム、および中性子放射線ビームのうちの1つ以上である電離放射線に対して感受性である、請求項1~10のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項12】
前記線量測定システムは、放射線発光が、放射線発光特性を有する前記放射線感受性材料から、または環境からもたらされるかどうかを考慮するように構成されている、請求項1~11のいずれかに記載の線量測定システム(100)。
【請求項13】
放射線医療または放射線治療を対象に提供するための照射システム(200)であって、請求項1~12のいずれかに記載の線量測定システム(100)を備える、照射システム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線量測定の分野に関する。より具体的には、放射線ビームの用途(放射線医療または放射線治療)例えば、医療用放射線ビームの用途における二次元リアルタイム線量測定を実行するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線量品質保証測定は、放射線治療、診断および介入放射線医療等の医療用用途において、非常に重要である。放射線治療の場合、治療の成功のために必要な線量(「腫瘍制御確率」、TCPの向上)と正常組織を害する線量(「正常組織障害発生確率」、NTCPの低減)との間の平衡は非常に難しい。これは、適用される線量、照射領域の範囲、放射線照射の数および頻度、放射線エネルギー等について最大限の慎重かつ正確な制御を必要とする。これに関して、放射線のより高い線量を腫瘍に、より低い線量を周辺組織に送達することを目的として、放射線治療技術は大きく進歩している。例えば、強度変調放射線治療(IMRT)は、周辺の正常な重要構造への線量を最小限に抑えながら腫瘍に原体線量を送達することを目的としている。別の例として、隣接した正常組織への線量を低減する陽子線放射療法(PT)がある。それでもなお、これらの技術の複雑性が増加することにより、送達された線量に不確定度が加えられる。
【0003】
腫瘍および周辺臓器に送達された線量を知るための現在の臨床プロトコルは、数学的アルゴリズムを使用する治療計画システム(TPS)によるものである。しかしながら、例えば患者の位置決めの誤りにより、正確な線量算出が、患者に送達された実際の線量に対応するとは限らない。これらの誤り、および放射線散乱等の他の不確定性は、TPSからの線量が必ずしも正確な線量を患者に提供するわけではないという事実につながる。放射線治療におけるリアルタイム生体内線量測定の手順の開発は、重要な課題である(IAEA、Human Health Reports No.8,Vienna 2013)。
【0004】
生体内線量測定技術は現在、出射線量を撮像するために患者の後ろに配置された電子的放射線治療照合装置(EPID)、および、例えば、熱発光検出器(TLD)等の検出器を適用するか、または患者の皮膚もしくは固定化装置にダイオードを適用することによる、点光源測定を伴う。このプロトコルは、患者への直接的な入射および出射線量を測定すること、ならびに放射線治療の直接的な品質保証を行うことを含む。しかしながら、これらの技術は、IMRTまたは非常に小さな領域の治療には適用可能ではなく、困難な技術のままである。さらに、EPIDは出射線量が存在しなくなると陽子およびハドロン療法ビームには好適ではないが、ポイント検出器の場合、これらの技術は線量分布に関する二次元情報をもたらさず、その同時再現性(患者の正確に同一の位置に検出器を位置決めすること)は、不確かである。
大抵の治療は、数週間または数カ月間の定期的な測定を含むという事実に起因して、治療プロトコルの多くには、特定の固定化要素が使用される。これらの要素の例には、真空封止クッション、「ベリーボード」、および長期治療中の良好な再現性のための、固定化金型(パースペックスシェルまたは他の熱可塑性金型)が含まれる。例えば、脳腫瘍照射の場合、マスクは固定されて成形され、その後の治療において提供される放射線の位置の特定の制御を可能にする。
【0005】
国際特許出願第WO2016/083473号は、放射線療法中の対象領域の固定化のためのマスクについて説明している。マスクは、放射線療法中に放射線に曝されたそれらの領域における放射線感受性材料の放射線エネルギーを部分的に貯蔵するよう適合される。当文書はまた、刺激によるマスクの表面に対する放射線感受性材料の物理的反応を収集することによって、放射線療法の線量の推定を得る方法を開示する。光刺激発光(OSL)および放射線フォト発光(RPL)の両方について説明されている。照射療法中のin-situ測定およびオフライン線量測定の両方が推奨されるが、説明される方法は、受動的な、照射後の全吸収線量評価に特に好適である。
【0006】
それでもなお、現在利用可能な方法およびシステムが複雑であるため、リアルタイムでのオンラインin-situ線量測定を行うことには依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態の目的は、放射線医療または放射線治療中に正確なin-situ二次元線量測定を実行する方法およびシステムを提供することである。
【0008】
本発明の実施形態の利点は、放射線医療または放射線治療システムから線量および線量率への即時フィードバック(ミリ秒)を得る、正確なオンラインでのin-situ二次元線量測定を可能にする方法およびシステムが提供されることである。
【0009】
本発明の実施形態の利点は、線量測定を得るために光刺激を必要としない方法およびシステムが提供され、線量測定のための方法およびシステムの複雑性を低下することである。
【0010】
上述の目的は、本発明による方法および装置によって達成される。
【0011】
第1の態様において、本発明は放射線医療または放射線治療のための照射システムにおける使用のための線量測定システムに関し、線量測定システムは、放射線発光特性を有する放射線感受性材料を備えた少なくとも二次元の放射線発光照射検出面と、
放射線医療または放射線治療照射ビームを用いた照射時に少なくとも二次元の検出面からの放射線発光光を検出するように構成された検出システムであって、放射線発光に対して感受性である検出器と、放射線医療または放射線治療照射ビームおよび周囲光から放射線を少なくとも部分的に遮断するためのフィルタを備えた検出システムと、を備える。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、放射線発光被照射面から放射線発光光を検出することで放射線医療または放射線治療照射の正確な線量検出が実行され得ることである。本発明の実施形態の利点は、良好な信号対雑音比を有する放射線発光光の正確な検出を行い得るように、放射線医療または放射線治療照射ビームから放射線を少なくとも部分的に除去し、周囲光を少なくとも部分的に除去するために検出システムが適合されていることである。
【0013】
少なくとも二次元の放射線発光照射検出面は、放射線医療または放射線治療照射ビームによる照射を受けている際に、さらなる外部刺激を必要とせずに放射線発光信号を放出するように適合されてもよい。本発明の実施形態の利点は、例えば、温度またはさらなる放射線等の外部刺激が必要とされないことである。
【0014】
放射線感受性材料は、1ns~100msの放出減衰時間を有してもよい。フィルタは、10nm~700nmの波長域にある、周囲の放射線、室内光および/またはいかなる汚染光も遮断するように適合されてもよい。
【0015】
フィルタは、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、ノッチフィルタ、ダイクロイックフィルタ、撮像フィルタまたは減光フィルタのうちのいずれかであってもよい。
【0016】
検出器は、任意の所定の入射角において光を検出するように適合されてもよい。
【0017】
線量測定システムはさらに、検出された放射線発光信号を処理し、それに基づいて対象に提供されたその照射および/または位置の相対または臓器線量を算出するための処理装置を備えてもよい。
【0018】
線量測定システムは、放射線医療または放射線治療中にオンラインで行われるように、放射線発光の検出を制御するための制御装置を備えてもよい。
【0019】
制御装置はさらに、検出された照射の、判定された線量および/または位置に基づいて、放射線医療または放射線治療システムを調整するように適合されてもよい。
【0020】
放射線感受性材料は、放射線発光(RL)およびシンチレーションに好適な有機または無機発光材料であってもよい。本発明の実施形態の利点は、放射線感受性材料が、シンチレーションに対して感受性である材料をさらに含むことである。本発明の実施形態の利点は、放射線感受性材料が、例えばBaF2、CaF2(Eu)、ZnS(Ag)、CaWO4、CdWO4、YAG(Ce)、NaI(TI)、LYSO、BGO、CsI(TI)、CsI(Na)等の無機シンチレータ、例えば、BeO、LiF、Al2O3:C、Al2O3:C、Mg等の絶縁体、例えば、ポリエチレンナフタレート等のプラスチック、例えば、n-ターフェニル等の蛍光体またはガラスを含むことである。
【0021】
放射線感受性材料は、γ放射線、β放射線、α放射線、X線、陽子放射線ビーム、ハドロン放射線ビームおよび中性子放射線ビームのうちの1つ以上である電離放射線に対して感受性であり得る。
【0022】
本システムは、患者の全身にわたる曝露を測定し、かつ2-D放射線曝露データ、例えば、リアルタイム2-D放射線曝露データを生成する検出器としてカメラを使用することが、本発明の実施形態の利点である。画像を形成するための複数の画素を含むカメラまたは検出器を使用することによって、それは、放射線発光特性を有する放射線感受性材料を含む検出面からの放射線発光を可視化するだけでなく、例えば、患者などの環境内のすべてのものからの放射線発光を可視化することから、患者からの情報を収集することができる。カメラを使用することによって、検出面からの放射線発光と、環境からの放射線発光とを区別することができ、このため、より正確な検出が可能になる。
【0023】
いくつかの実施形態において、このため、線量測定システムは、放射線発光が、放射線発光特性を有する放射線感受性材料から、または環境からもたらされるかどうかを考慮するように構成され得る。それによって、環境は全て、感受性材料とは異なる要素であり得、このため、例えば、患者を含み得る。線量測定システムは、実施される放射線発光の検出に基づいて、放射線発光が、放射線感受性材料または環境からもたらされるかどうかを区別することを可能にする、コントローラを有し得る。コントローラは、検出された放射線発光信号を処理するとき、ならびに照射の相対もしくは臓器線量および/または対象に提供されるその位置に基づいて計算するときに、放射線発光の起点を考慮するためにプロセッサと通信し得る。
【0024】
放射線発光材料を使用することにより、検出が、累積結果に基づく必要がないため、以前に記憶された信号を、ゼロに容易に設定し戻すことができることは、本発明の実施形態の利点である。後者は、良好な動的範囲を得ることを支援し得る。放射線発光を使用すると、動的範囲は、数マイクロGy~100Gyであり得る。
【0025】
本発明はまた、上述の線量測定システムを備えた照射システムに関する。
【0026】
放射線発光を検出するための検出システムは、照射システムの照射源にほぼ対向するか、または平行に位置してもよい。
【0027】
本発明はさらに、対象のための放射線医療または放射線治療中の照射線量を判定する方法に関し、本方法は、対象上に少なくとも二次元の放射線発光照射検出面を提供することと、放射線医療または放射線治療を実行するための照射ビームがもたらす周囲光および放射線を除去しながら、少なくとも二次元の放射線発光照射検出面から放射線発光信号を検出することと、検出された放射線発光信号に基づいて対象上に送達された線量および/または照射位置を導出することと、を含む。
【0028】
本発明の実施形態の利点は、放射線発光現象が使用され、それによって、放射線感受性材料の照射線量への物理的反応を読み出すために外部刺激が必要とされないことである。
本発明の実施形態の利点は、放射線療法中の入射皮膚線量率、時間分解吸収線量およびビーム位置/分布を判定するための良好な方法およびシステムが提供されることである。本発明の実施形態の利点は、システムおよび/または方法が、放射線医療または放射線治療中の線量測定に特に好適であるということである。
【0029】
本発明の実施形態の利点は、患者の皮膚上に位置する二次元マトリックスまたは面(例えば、固定化要素/医療用シート/医療用ティッシュ/パッチ/マスク)が使用され、それにより、患者上の入射皮膚線量率およびビーム二次元位置の正確な判定が可能になることである。
【0030】
本発明の特定の、かつ好ましい態様は、添付の独立請求項および従属請求項に述べられている。従属請求項の特徴は、請求項において明確に述べられているとおりだけでなく、必要に応じて、独立請求項の特徴、および他の従属請求項の特徴と組み合わせることができる。
本発明のこれらの、また他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、かつそれらを参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態による、線量測定システムおよび放射線治療システムの概略図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による、電離放射線に曝露される際に放射線発光材料からリアルタイムで放出された光を科学用カメラが収集するシステムを示す。
【
図3a】本発明の実施形態の特徴を示す、EMCCDカメラで得られた、Al
2O
3:C、Mgシートからリアルタイムで放出された放射線発光(RL)光の二次元表現を示す。
【
図3b】本発明の実施形態の特徴を示す、EMCCDカメラで得られた、Al
2O
3:C、Mgシートからリアルタイムで放出された放射線発光(RL)光の三次元表現を示す。
【0032】
図面は概略的なものであり、限定的ではない。図面において、要素のうちのいくつかのサイズは、説明の目的のために誇張されていて、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0033】
請求項内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されないものとする。
【0034】
異なる図において、同一の参照符号は、同一の、または類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は特定の実施形態に関して、また、特定の図を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載の図面は単に概略的なものであり、限定的ではない。図面において、要素のうちのいくつかのサイズは、説明の目的のために誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実物の縮小には対応していない。
【0036】
さらに、詳細な説明および請求項における、第1の、第2の等の用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも時間的、空間的、ランク付け、または任意の他の様態のいずれかの順序を述べているわけではない。そのように用いられる用語が、適切な状況の下で相互に交換可能であり、本明細書に記載されている本発明の実施形態が、本明細書に記載、または例示されるものとは異なる順序で動作が可能であることが理解されるべきである。
【0037】
また、詳細な説明および請求項における、上部、下部等の用語は、説明の目的で用いられ、必ずしも相対位置を述べているわけではない。そのように用いられる用語が、適切な状況の下で相互に交換可能であり、本明細書に記載されている本発明の実施形態が、本明細書に記載または例示されるもの以外の配向で動作が可能であることが理解されるべきである。
【0038】
請求項に使用される「備える(comprising)」という用語は、それ以降に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、他の要素または工程を排除しない。言及されるように、記載された特徴、整数、工程、または構成要素の存在を特定するとして解釈されるべきであり、1つ以上の他の特徴、整数、工程、もしくは構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。「手段AおよびBを含むデバイス」という表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。本発明では、単にデバイスに関連した構成要素がAとBであることを意味する。
【0039】
本明細書全体を通して「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」に対する参照は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所に見られる「一実施形態における(in one embodiment)」または「一実施形態における(in an embodiment)」という句は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本開示から当業者には明らかであるように、1つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0040】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本開示を能率化しかつ様々な発明態様の1つ以上を理解するのを助けるために、本発明の様々な特徴が時として単一の実施形態、図または説明にまとめられることが理解されるべきである。しかしながら、本開示の方法は、請求項に係る発明が、各請求項に明示的に列挙されたものよりも多くの特徴を要求するという意図を反映するものと解釈されるべきでない。むしろ、以下の請求項が示すように、発明の態様は、開示された上述の単一の実施形態の全ての特徴の中にあるわけではない。このように、詳細な説明による請求項は、各請求項が本発明の独立した実施形態として自立している状態で、これにより本詳細な説明に明示的に組み込まれる。
【0041】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、当業者には理解されるとおり、他の実施形態に含まれる特徴を含む場合もあれば、含まない場合もあり、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用され得る。
【0042】
本明細書に提示する説明において、数多くの特定の詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細がなくても実施され得ることが理解される。他の例において、本説明の理解を曖昧にしないため、既知の方法、構造および技術は詳細には示されていない。
【0043】
本発明の実施形態において、放射線発光について言及する場合、放射線発光材料を照射するX線、電子、陽子または重イオンのビーム線量率に比例して生成される放射線について言及している。
【0044】
本発明の実施形態において「二次元マトリックス」について言及する場合、異なる形で密着固定するか、または折り畳むことを可能にする弾性特性を有する成形した薄膜について言及している。薄膜は熱可塑性物質または他のポリマーを含んでもよいが、本発明はそれに限定されない。同様に、「二次元マトリックス」という用語は、その使用に限定されず、マトリックスは、いかなる領域、容積、または物体にも適用可能である。薄膜の形状は、各々の特定のマトリックス用途に有利に最適化され、有利には、二次元であり、対象領域周辺の物体の境界線をたどる。本発明のいくつかの実施形態において、マトリックスは、例えば頭部、四肢、または身体の他の部分の固定化に好適であり得るが、それらに限定されず、あるいは、成形に使用してもよいが、それに限定されない。
【0045】
第1の態様において、本発明は、診断および治療(例えば、放射線医療、放射線治療)の両方のための照射システムにおける使用のための線量測定システムに関する。本発明の実施形態による線量測定システムは、有利には照射中のオンライン線量測定の判定を可能にする。これにより、生体内線量測定が可能となる。これは、例えば、人間などの生物に放射線医療または放射線治療を実行する際の線量測定の実行に特に好適であり得る。本発明の実施形態による、線量測定システムは、放射線感受性材料を備えた、少なくとも二次元の放射線発光照射検出面を備える。二次元照射検出面は、照射ビームが皮膚に入射する位置および表面の異なる位置において受けた照射のリアルタイムでの線量に関する情報を提供し得る。本発明の実施形態によると、放射線感受性材料は放射線発光特性を有する。
【0046】
システムはさらに、放射線医療または放射線治療照射ビームを用いた照射時に少なくとも二次元の放射線発光照射検出面から放射線発光光を検出するように構成された検出システムを備える。検出システムは、放射線発光光に対して感受性である検出器および、放射線医療または放射線治療照射ビームおよび周囲光からの放射線を少なくとも部分的に遮断するためのフィルタを備える。
【0047】
例示として、本発明の実施形態はそれに限定されず、例示的な実施形態による方法およびシステムの一例を以下でさらに説明する。
【0048】
本発明の実施形態による線量測定システムの異なる構成要素を概略的に示しながら、例示的なシステムを
図1に示す。線量測定システム100は、少なくとも二次元の放射線発光照射検出面110を備える。
【0049】
二次元放射線発光照射検出面110は、有利には、例えば、γ放射線、β放射線、α放射線、X線、陽子放射線ビーム、ハドロン放射線ビームおよび中性子放射線ビーム等のうちの1つ以上の1つ以上の電離放射線タイプを検出する、すなわち、それらに反応するように適合されている。照射検出面110は、二次元または三次元の面であってもよい。検出面は有利には、主に2つの方向に延在し、限定的な厚みを有する。これは、例えば薄膜であってもよい。照射検出面110は、1μm~10mm、例えば2μm~5mmの厚みを有する薄膜形状面であってもよい。照射検出面110は、1mm2~10000cm2、例えば、10mm2~2500cm2の表面積を有してもよい。
【0050】
照射検出面110は、可撓性であり、かつそれが被覆する身体の部分に従って成形可能であってもよい。代替的に、より剛性であり、かつ被覆することが意図される身体の部分に従って成形されてもよい。照射検出面110は、ショア硬度の尺度においてショア00(非常に柔らかいゴムおよびジェル)と、ショアD(堅いゴム、半剛性プラスチックおよび堅いプラスチック)との間の硬度を有してもよい。いくつかの実施形態によると、照射検出面110は同時に、例えば、身体部分のための固定化装置等の固定化装置であり得る。このような固定化装置は顔マスクに限定されず、代替的に、例えば四肢、腹部、胸部等の、別の身体部分を覆うのに好適であり得ることがわかる。照射検出面は、国際特許出願第2016/083473号に記載されるようなものであってもよいが、放射線感受性材料は、以下に説明するように、放射線発光特性を含む。
【0051】
本発明の実施形態による照射検出面110は、典型的には、放射線発光特性を含む放射線感受性材料を備える。放射線感受性材料は、粉末材料を含んでもよい。粉末材料は、例えば、1μm~1000μmの平均直径を有するマイクロサイズか、または、例えば、1nm~1000nmの平均直径を有するナノサイズであってもよい。放射線感受性材料は、照射検出面110内で、またはその上でほぼ均一に分散されてもよい。放射線感受性材料は、有機または無機発光材料であってもよい。いくつかの実施形態において、放射線発光特性を除き、放射線感受性材料またはその一部はまた、シンチレーション特性を含んでもよい。放射線感受性材料は、例えば、BaF2、CaF2(Eu)、ZnS(Ag)、CaWO4、CdWO4、YAG(Ce)、NaI(TI)、LYSO、BGO、CsI(TI)、CsI(Na)等の無機シンチレータ、例えば、BeO、LiF、Al2O3:C、Al2O3:C、Mg等の絶縁体、例えば、ポリエチレンナフタレート等のプラスチック、例えばn-ターフェニル等の蛍光体またはガラスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、放射線感受性材料は、1つの種類の発光材料を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態において、放射線感受性材料は、いくつかの発光材料の組み合わせを含んでもよい。これらの全てが放射線発光性である必要はないが、少なくともそのいくつかは放射線発光性である必要がある。
【0052】
本発明の実施形態の利点は、適用された放射線医療または放射線治療照射の位置および/または線量に関する情報を表す放射線を放出するために外部刺激を照射検出面に提供する必要はなく、放出は自発的である。これは、例えば、光刺激発光、熱発光、放射線フォト発光等に基づくシステムと対照的である。
【0053】
放射線感受性材料は、その放射線発光を1つ以上の特定の波長で放出してもよい。いくつかの例は、ほぼ420nmで放出するAl2O3:C、ほぼ310nmおよび295nmで放出するBaF2、545nmで放出するGd2O2S:Tbである。放射線感受性材料は、入射電離照射強度に応じた強度で変化する光を放出し、それによって、放出された光が線量率を表す。放射線感受性材料は、数ナノ秒から数秒の範囲の半減期を有する光を放出し得る。放射線感受性材料は、数μGy/分からMGy/分の半減期およびダイナミックレンジを有する放射線を放出してもよい。
【0054】
上述のとおり、線量測定システム100はまた、照射ビームの照射時に、少なくとも二次元の、放射線発光照射検出面110から放射線発光光を検出するように構成された検出システム120を備える。検出システム120は、照射検出面110からの放射線発光光に対して感受性である検出器130を備える。検出器130は、放射線発光光を捕捉して、デジタル画像を形成する、固体装置である、カメラセンサであってもよい。検出器は典型的には、ダイナミックレンジを有する可視光および/またはUV光に対して感受性である。検出器は典型的には、使用した照射検出面に応じて、予想される放射線発光光スペクトルに適合する。検出器130はこのように、照射検出面110が、放射線発光を放出する波長の高量子効率を有し得る。これは、例えば、1000~1Hzの範囲で調整可能であるような、調整可能な周波数を有し得る。検出器130は、CCD、EMCCD、CMOS、LiveMOS、InGaAsSWIR、SWIR、TDI CCD、および/またはOEM検出器のうちのいずれかであってもよい。検出器130は、フルフレーム(36mm×24mm)から、例えば、1×1mmの、より小さいサイズの範囲のサイズを有してもよい。検出器は典型的には複数の画素を有し、各画素は、1つ以上の光感受性光検出素子を含む。検出器130は、白黒またはカラーであってもよい。検出器は、PAL、NTSC、ITU-R、BT656-4と互換性があり得るビデオ出力を有してもよい。検出器は、代替的に、またはそれに加えて、CameraLink、GigE、LVDS、USBと互換性があり得るデジタル出力を有してもよい。
【0055】
検出システムはまた、放射線医療または放射線治療照射ビームおよび周囲光からの放射線を少なくとも部分的に遮断するフィルタ140を備える。フィルタは、検出器130に合うサイズ、形状、および厚みを有し得る。フィルタ140は選択的に、波長または波長の範囲もしくは組み合わせを伝搬させるか、または阻止してもよい。フィルタ140は典型的には、マトリックスによって放出された放射線発光に対応する波長の放射線を伝搬させ得る。フィルタは、例えば、室内光等の、10~800nmの波長域の周囲光を遮断してもよい。これは、5nm~400nmの範囲の中心波長(CWL)を有してもよい。フィルタ140はコーティングされていてもよく、またはコーティングされていなくてもよい。これは、金属系のコーティングを有してもよい。これは、高い光学濃度を有する堅いコーティングを有してもよい。これは、ガラスの1つまたは組み合わせで構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタは、例えば、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、ノッチフィルタ、ダイクロイックフィルタ、撮像フィルタ、減光フィルタ等の特定のカテゴリのフィルタに属してもよい。フィルタは光学濃度フィルタであってもよく、光学濃度は0.3~10まで変化してもよい。光フィルタは、いくつかの実施形態において、通過帯域フィルタであってもよく、フィルタが設置される際に、放射線の少なくとも93%が狭い波長帯で検出器に伝搬され、通過帯域外では、少なくとも6の光学濃度で放射線が遮断される。
【0056】
本発明の実施形態によると、所定の範囲内の入射角を有する放射線のみを伝搬させるために、フィルタ140または別個のフィルタが採用されてもよい。このような範囲は狭くてもよく、例えば、5°以内の所定の入射角など、例えば10°以内の所定の入射角であってもよい。
【0057】
本発明の実施形態によると、構成により、照射源からの直接の放射線の量が可能な限り少なくなるように、検出システムは、放射線源に隣接して、例えば、それに平行に位置付けられる。後者について
図2に示す。
【0058】
いくつかの実施形態によると、システム100はまた、放射線発光の検出を制御し、それによって線量検出を制御する制御装置150を備える。一方で制御装置は、検出および線量判定のタイミングを制御してもよい。他方で制御装置は、リアルタイムでの、または将来的な治療目的のために、放射線医療または放射線治療中に照射を調節するために、放射線医療または放射線治療システム、例えば、その治療計画装置を調整してもよい。例えば、所定の線量および/もしくは線量率に達すると、照射は停止され得るか、または変更され得る。照射が行われるべきでない位置で線量が計測されると、システムは停止され、対象の位置決めが再度行われ得る。制御装置は、検出された線量を治療計画システムによって計画された線量と比較するようにプログラミングすることができ、それに基づいて療法を調整することができる。
【0059】
いくつかの実施形態によると、システム100はまた、検出された信号を処理するための処理装置160を備え、それに基づいて、対象、例えば患者に提供される照射の相対または有効線量を算出する。処理装置160は、独立した処理装置であるか、またはシステムの別の部分に統合されてもよい。
実行されるアルゴリズムは、ソフトウェアまたはハードウェアにプログラミングされてもよい。
【0060】
別の態様において、本発明は、対象を照射するための画像放射線医療または放射線治療システムに関する。画像放射線医療または放射線治療システムは、第1の態様で説明した線量測定システムを備える。放射線医療または放射線治療システムはさらに、当業者に既知であるように、例えば、照射源、照射療法計画システム、対象の位置決めのための位置決めシステム等の、従来の要素を備える。特徴および利点は、第1の態様において述べられたとおりであり得る。照射源210、照射療法計画システム220、および対象の位置決めのための位置決めシステム230を示す、画像放射線医療または放射線治療システム200を
図1に示す。
【0061】
さらに別の態様において、本発明は、対象、例えば、患者の放射線医療または放射線治療中に照射線量を判定する方法に関する。
本方法は、少なくとも二次元の、放射線発光照射検出面を患者上に提供することと、放射線治療(および/または放射線医療)を行うために周囲の放射線および照射ビームがもたらす放射線を除去しながら、少なくとも二次元の、放射線発光照射検出面からの放射線発光信号を検出することと、検出された放射線発光信号に基づいて対象上に送達された線量および/または照射位置を導出することと、を含む。二次元線量はさらに、患者に送達された三次元線量に再構成され得る。さらなる工程は、第1の態様に記載された構成要素の機能に対応してもよい。
【0062】
本発明はさらに、第1の態様において説明するように、対象、例えば患者に照射中の線量測定のための線量測定システムの使用に関する。本発明はまた、第1の態様において説明するように、放射線治療または放射線医療のその後の照射セッション中の線量測定システムの使用に関する。本発明はさらに、第1の態様において説明するように、対象に送達された線量を制御するための、または放射線医療もしくは放射線治療の治療計画検証のための線量測定システムの使用に関する。
【0063】
一例として、本発明の少なくともいくつかの実施形態の特徴および利点を示しながら、放射線医療または放射線治療を受ける際に患者が受ける二次元のリアルタイムでの電離放射線の量を評価する方法およびシステムについて説明する。これは、再結合中心において迅速に再結合する自由電子ホールを照射下で生成する、放射線発光(RL)材料(例えば、Lu3Al5O12:Pr、BeO、ZnO、Al2O3:C、Al2O3:C、Mg、CaF2:Th、アルカリハライドクリスタル)からなる二次元シートからの光放出のリアルタイムの記録に基づく。放出光は、電離放射線線量率に比例する。RL光は、検出をRL二次元シートから来る主な放出に限定するために、ショートパス/バンドパスフィルタと組み合わせて科学用カメラ(CCD、sCMOS、CMOS、CMOSIS、InGaAs、EMCCD、および半導体)によって収集/計測される。カメラおよびフィルタは、LINAC(線形加速器)のヘッドまたは陽子/ハドロン療法ビームに平行に、主な放射線領域外に、患者に垂直に対向して、または任意の所望の角度で配置される。
【0064】
二次元放射線発光シートは、放射線医療または放射線治療を受けている患者の皮膚を被覆する。カメラは、実施例において、また、二次元シートに垂直である。静的(従来の)および動的治療(IMRT、rapidArc、VMAT、ペンシルビーム)に関して、カメラは、二次元シートに、また、結果的に患者の皮膚に当たる電離放射線の形状および強度の変化を撮像し、患者の安全のためにリアルタイム生体内線量測定ツールを提供することが可能である。
【0065】
専用の自動ソフトウェアにより、計測されたデータを分析し、臨床ワークフローにおけるルーチン生体内線量測定(IVD)のために、それを治療計画システムと比較する。ソフトウェアは、TPSにおいて計画された治療領域(ビームまたはアーク)および強度(線量率)の各々からの情報を使用し、この情報を行われた治療と比較する。システムは、治療の実行および検証プロセス中に線量測定要件およびQAに従うことを可能にする。
【0066】
EMCCDカメラによって得られた、Al
2O
3:C、Mgシートからリアルタイムで放出された放射線発光(RL)光の二次元および三次元表現を示す、対応する放射線発光放出の画像を
図3aおよび
図3bに示す。
【0067】
放射線療法における対象の照射の工程は、本発明の一部ではないことに留意されたい。本発明は、線量測定方法に関し、線量測定は、固定化マトリックスの物理的効果の計測によって行われ、それには、人間または動物の体での物理的効果の測定が必要とされない。結果的に、本方法は、人間または動物の体との相互作用を必要とせず、かつ手術方法または治療方法ではない。