(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20240415BHJP
B65H 11/00 20060101ALI20240415BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B65H1/04 310B
B65H11/00 A
G03G15/00 401
(21)【出願番号】P 2019211679
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊介
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-187188(JP,A)
【文献】特開2011-013429(JP,A)
【文献】特開2017-039600(JP,A)
【文献】特開2017-186113(JP,A)
【文献】特開2008-037549(JP,A)
【文献】特開2016-005986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/04
B65H 11/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に対して開閉可能に支持される開閉部と、
前記開閉部に支持され、前記開閉部が前記装置本体に対して開かれた開位置に位置する状態において、シートを支持するシート支持部と、
前記装置本体に設けられ、前記シート支持部に支持されたシートを給送方向に給送する給送回転体と、
前記装置本体に設けられる第1係合部と、
前記給送方向において前記シート支持部の下流端部に設けられ、前記開閉部が前記開位置に位置する状態で、前記給送回転体の軸線方向に交差する交差方向において前記第1係合部に係合する第2係合部と、を備
え、
前記シート支持部は、シートを支持する支持面を有し、
前記開閉部は、前記支持面に沿った方向において、前記シート支持部を移動可能に支持している、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記第2係合部は、前記開閉部が前記装置本体に対して閉じられた閉位置に位置する状態において、前記第1係合部に係合しない、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記第1係合部は、穴部であり、
前記第2係合部は、前記穴部に係合する爪部であり、
前記爪部は、前記開閉部が前記開位置に位置する状態で、前記穴部の縁部に接触することで、前記シート支持部を前記交差方向に位置決めする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記装置本体は、前記給送回転体によって給送されたシートを案内する案内面を有するガイド部を有し、
前記第1係合部は、前記ガイド部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記装置本体は、前記給送回転体によって給送されたシートを搬送する搬送部と、前記搬送部と共にシートを1枚ずつに分離する分離ニップを形成する分離部と、を有し、
前記案内面は、前記分離ニップに向けてシートを案内し、
前記ガイド部は、前記分離部を保持する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記装置本体に設けられる第3係合部と、
前記シート支持部の前記下流端部に設けられ、前記開閉部が前記開位置に位置する状態で、前記給送方向において前記第3係合部に係合する第4係合部と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記開閉部は、前記支持面の法線方向において、前記シート支持部の位置を規制する規制部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記開閉部の開閉に連動して前記シート支持部を前記支持面に沿った方向に移動させる連動部を更に備え、
前記連動部は、前記開閉部が前記装置本体に対して開かれることで、前記第2係合部が前記第1係合部から離れるように前記シート支持部を移動させる、
ことを特徴とする請求項
1乃至7のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記シート支持部は、前記開閉部に回動可能に支持される、
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記装置本体は、前記開閉部が前記装置本体に対して閉じられた閉位置に位置する状態において、前記開閉部の下方に開口部を有し、
前記開閉部に支持され、前記開口部を覆うカバー部材を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項11】
前記第2係合部は、前記軸線方向において並設される第1係合部分及び第2係合部分を有し、
前記第1係合部分は、前記軸線方向において、前記給送回転体の一方側に配置され、
前記第2係合部分は、前記軸線方向において、前記給送回転体の他方側に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至1
0のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項12】
前記交差方向は、鉛直方向である、
ことを特徴とする請求項1乃至1
1のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項13】
前記シート支持部は、シートが手差しされる手差しトレイである、
ことを特徴とする請求項1乃至1
2のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項14】
請求項1乃至1
3のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置によって給送されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成部を有するプリンタ本体に設けられた給紙カセットからシートを給送する本体シート給送装置と、手差しトレイからシートを給送する手差し給送装置と、を備えたプリンタが提案されている(特許文献1参照)。このプリンタは、プリンタ本体に対して開閉可能な右カバーと、右カバーの上側部に設けられる手差しトレイと、を有し、手差しトレイに載置されたシートはピックアップローラによって給送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の手差し給送装置において、安定したシートの給送性能を得るためには、ピックアップローラと手差しトレイとの相対位置関係に、一定の精度が要求される。例えば、ピックアップローラによって手差しトレイ上のシートを給送する際には、手差しトレイにはピックアップローラから所定の給送圧が作用する。この給送圧によって手差しトレイが変形すると、ピックアップローラと手差しトレイとの相対位置精度が低下し、安定した給送性能を得ることができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、安定した給送性能が得られるシート給送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シート給送装置において、装置本体と、前記装置本体に対して開閉可能に支持される開閉部と、前記開閉部に支持され、前記開閉部が前記装置本体に対して開かれた開位置に位置する状態において、シートを支持するシート支持部と、前記装置本体に設けられ、前記シート支持部に支持されたシートを給送方向に給送する給送回転体と、前記装置本体に設けられる第1係合部と、前記給送方向において前記シート支持部の下流端部に設けられ、前記開閉部が前記開位置に位置する状態で、前記給送回転体の軸線方向に交差する交差方向において前記第1係合部に係合する第2係合部と、を備え、前記シート支持部は、シートを支持する支持面を有し、前記開閉部は、前記支持面に沿った方向において、前記シート支持部を移動可能に支持している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、安定した給送性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図。
【
図3】(a)はカバー及び手差しトレイを示す斜視図、(b)はカバー及び手差しトレイを示す分解斜視図。
【
図5】(a)はカバーが閉位置に位置する状態の手差し給送部を示す断面図、(b)はカバーが閉位置に位置する状態の手差し給送部を示す他の断面図。
【
図6】(a)はカバーが中途位置に位置する状態の手差し給送部を示す断面図、(b)はカバーが中途位置に位置する状態の手差し給送部を示す他の断面図。
【
図7】(a)はカバーが開位置に位置する状態の手差し給送部を示す断面図、(b)はカバーが開位置に位置する状態の手差し給送部を示す他の断面図、(c)はカバーが開位置に位置する状態の手差し給送部を示す側面図。
【
図8】第2の実施の形態に係る手差し給送部を示す斜視図。
【
図9】(a)はカバー、手差しトレイ及び下カバーを示す斜視図、(b)はカバー、手差しトレイ及び下カバーを示す分解斜視図。
【
図11】カバーが閉位置に位置する状態の手差し給送部を示す断面図。
【
図12】カバーが中途位置に位置する状態の手差し給送部を示す断面図。
【
図13】(a)はカバーが開位置に位置する状態の手差し給送部を示す断面図、(b)は手差しトレイとガイド部との係合部分を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
〔全体構成〕
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。画像形成装置としてのプリンタ1は、モノクロのトナー像を形成する電子写真方式のレーザビームプリンタである。なお、以下の説明において、シートSとは、プリンタ1によって画像が形成されるものであって、例えば、紙、OHTシート等が含まれる。
【0010】
プリンタ1は、
図1に示すように、積載されたシートを給送する本体給送部10及び手差し給送部20と、を有している。また、プリンタ1は、本体給送部10又は手差し給送部20によって給送されたシートに画像を形成する画像形成部5と、シートに転写された画像を定着させる定着装置6と、シートを排出トレイ9に排出可能な排出ローラ対8と、を有している。
【0011】
プリンタ1に画像形成ジョブが出力されると、プリンタ1に接続された外部のコンピュータ等から入力された画像情報に基づいて、画像形成部5による画像形成プロセスが開始される。画像形成部5は、レーザスキャナ52と、感光ドラム51を有するプロセスカートリッジPと、転写ローラ53と、を備えている。感光ドラム51の周囲には、不図示の帯電ローラ及び現像ローラ等が設けられている。感光ドラム51及び転写ローラ53は、転写ニップT1を形成している。
【0012】
レーザスキャナ52は、入力された画像情報に基づいて、感光ドラム51に向けてレーザ光を照射する。このとき感光ドラム51は、帯電ローラにより予め帯電されており、レーザ光が照射されることで感光ドラム51上に静電潜像が形成される。その後、現像ローラによりこの静電潜像が現像され、感光ドラム51上にモノクロのトナー像が形成される。
【0013】
上述の画像形成プロセスに並行して、本体給送部10又は手差し給送部20からシートSが給送される。本体給送部10は、プリンタ1の装置本体1Aに対して引出し及び装着可能なカセット11と、給送ローラ12と、分離ローラ対13と、を有している。カセット11に収容されたシートSは、給送ローラ12によって給送され、給送ローラ12によって給送されたシートSは、分離ローラ対13によって1枚ずつに分離される。
【0014】
また、シート給送装置としての手差し給送部20は、装置本体1Aに開閉可能に支持されるカバー25と、手差しトレイ24と、給送ローラ21と、給送アーム19と、搬送部としての搬送ローラ22と、分離部としての分離ローラ23と、を有している。給送回転体としての給送ローラ21は、給送アーム19に回転可能に保持されると共に、給送アーム19によって昇降可能に支持されている。手差しトレイ24に支持されたシートSは、給送ローラ21によって給送され、給送ローラ21によって給送されたシートSは、搬送ローラ22及び分離ローラ23によって1枚ずつに分離される。なお、給送ローラ21に代えて、シートを吸着しながら搬送する吸着ベルト等を適用してもよい。
【0015】
なお、分離ローラ23は、トルクリミッタ方式及びリタード方式のいずれでもよく、また分離ローラ23に代えて分離パッドを設けてもよい。トルクリミッタ方式は、分離ローラ23の駆動伝達経路にトルクリミッタを設け、トルクリミッタのリミット値を超えた負荷が分離ローラ23に作用した際には、分離ローラ23が空転する機構のものである。リタード方式は、トルクリミッタ方式に加えて、搬送ローラ22のシート搬送方向とは反対方向に分離ローラ23を駆動するリタード駆動を分離ローラ23の回転軸に入力するものである。
【0016】
本体給送部10又は手差し給送部20から送り出され、搬送ローラ対34によって搬送されたシートSには、転写ローラ53に印加された静電的負荷バイアスによって、転写ニップT1において感光ドラム51上のトナー像が転写される。感光ドラム51上に残った残トナーは、不図示のクリーニングブレードによって回収される。トナー像が転写されたシートSは、定着装置6の定着フィルム61及び加圧ローラ62によって所定の熱及び圧力が付与されて、トナーが溶融固着(定着)される。定着フィルム61の内部には、セラミックヒータ等の加熱部材が配設されている。定着装置6を通過したシートSは、排出ローラ対8によって排出トレイ9に排出される。
【0017】
シートSの両面に画像を形成する場合には、第1面に画像が形成されたシートSは、反転ローラ対7によってスイッチバックされて、両面搬送路CPに搬送される。両面搬送路CPは、シートSを搬送ローラ対31に向けて案内する。そして、シートSは、搬送ローラ対31,34によって再び転写ニップT1に搬送され、転写ニップT1において第2面に画像が形成されて排出トレイ9に排出される。
【0018】
[手差し給送部の詳細構成]
次に、手差し給送部20の詳細構成について説明する。
図2に示すように、開閉部としてのカバー25は、装置本体1Aの右側面に設けられた右カバー18に対して開閉可能に支持されており、カバー25には、手差しトレイ24が支持されている。シート支持部としての手差しトレイ24は、カバー25が装置本体1Aに対して開かれた開位置に位置する状態において、シートを支持する。手差しトレイ24は、シートを支持する支持面24aを有する。
【0019】
給送ローラ21は、手差し給送部20からシートを給送するジョブが入力された際には、給送アーム19によって下降し、手差しトレイ24に積載された最上位のシートに接触する。給送ローラ21は、不図示の付勢機構によって、手差しトレイ24に積載されたシートに対して所定の給送圧で接触する。
【0020】
手差しトレイ24には、1対のサイド規制板26,27が給送方向FDに直交する幅方向Wに移動可能に支持されている。幅方向Wは、給送ローラ21の軸線方向である。手差しトレイ24には、案内溝24nL,24nRが形成されており、サイド規制板26,27は、案内溝24nL,24nRによって幅方向Wに案内される。
【0021】
サイド規制板26,27は、手差しトレイ24の支持面24aとは反対側において、幅方向Wに延びる不図示のラック部をそれぞれ有している。これらラック部は、不図示のピニオンギアを介して噛合している。このため、サイド規制板26,27は、幅方向Wにおいて互いに逆方向に連動するように構成されている。
【0022】
更に、手差し給送部20は、サイド規制板26をロックする不図示のロック機構を有しており、該ロック機構は、サイド規制板26に設けられた操作レバー28を操作することで解除される。
【0023】
[手差しトレイの保持構成]
次に、手差しトレイ24の保持構成について詳述する。
図2乃至
図4に示すように、装置本体1Aの右カバー18には、カバー係合穴183,184と、リンク係合穴181,182と、が設けられている。カバー25には、カバー係合穴183,184に係合可能な突起部253,254が設けられており、突起部253,254には、それぞれ回動軸253a,254aが設けられている。カバー25は、突起部253,254がカバー係合穴183,184に係合した状態で、装置本体1Aに対して回動軸253a,254aを中心に回動可能に支持されている。
【0024】
また、カバー25は、
図3(a)(b)に示すように、幅方向Wにおける一端部側にガイド部251,255を有しており、幅方向Wにおける他端部側にガイド部252,256を有している。ガイド部251は、給送方向FDにおいてガイド部255の上流に配置されており、ガイド部252は、給送方向FDにおいてガイド部256の上流に配置されている。
【0025】
ガイド部251,252には、それぞれ給送方向FDに沿って延びるガイド孔部251a,252aが形成されており、ガイド部255,256には、それぞれ給送方向FDに沿って延びる浮き防止溝255a,256aが形成されている。
【0026】
手差し給送部20は、トレイリンク29,30を有しており、トレイリンク29,30は、幅方向Wにおいて手差しトレイ24を挟むように対向して配置されている。トレイリンク29は、一端にリンク支持軸292を有し、他端にリンク孔291を有している。同様にして、トレイリンク30は、一端にリンク支持軸302を有し、他端にリンク孔301を有している。
【0027】
これらトレイリンク29,30は、リンク支持軸292,302がそれぞれ右カバー18のリンク係合穴181,182に係合することで、装置本体1Aに回動可能に支持されている。
【0028】
一方で、手差しトレイ24は、それぞれ幅方向Wに延びる支持軸241,242を有しており、支持軸241,242は、手差しトレイ24の給送方向FDにおける上流側に設けられている。支持軸241は、トレイリンク29のリンク孔291を貫通して、手差しトレイ24のガイド部251に設けられたガイド孔部251aに係合する。また、支持軸242は、トレイリンク30のリンク孔301を貫通して、手差しトレイ24のガイド部252に設けられたガイド孔部252aに係合する。
【0029】
支持軸241,242は、ガイド孔部251a,252aに沿って移動可能である。このため、カバー25の開閉によって支持軸241,242がガイド孔部251a,252a内を移動し、支持軸241,242に連動して手差しトレイ24がカバー25の上面25aに沿ってスライド移動する。言い換えれば、カバー25は、手差しトレイ24の支持面24aに沿った方向において、手差しトレイ24を移動可能に支持している。すなわち、連動部としてのトレイリンク29,30は、カバー25の開閉に連動して手差しトレイ24を支持面24aに沿った方向に移動させる。
【0030】
また、
図3(b)に示すように、手差しトレイ24の幅方向Wにおける両端部には、下方に突出する浮き防止ピン246,247が設けられている。これら浮き防止ピン246,247は、カバー25のガイド部255,256にそれぞれ形成された規制部としての浮き防止溝255a,256aに係合している。これにより、カバー25が回動する際に、手差しトレイ24が、カバー25に対して、シートの積載方向に浮き上がることが規制される。すなわち、手差しトレイ24は、手差しトレイ24の支持面24aの法線方向PDにおいて、位置が規制される。
【0031】
更に、
図3(b)及び
図4に示すように、手差しトレイ24の給送方向FDにおける下流端部124には、第2係合部及び爪部としての係合爪243,244が設けられている。装置本体1Aには、分離ローラ23(
図1参照)を回転可能に保持するガイド部123が設けられており、ガイド部123には、係合爪243,244に係合可能な第1係合部としての穴部185,186が形成されている。また、ガイド部123は、シートを搬送ローラ22及び分離ローラ23によって形成される分離ニップN(
図1参照)に向けて案内する案内面123aを有している。手差しトレイ24は、係合爪243,244がそれぞれ穴部185,186に係合することで、装置本体1Aに対して直接位置決めされる。
【0032】
[カバーの開閉動作]
次に、カバー25が開閉する際の、各部材の動きについて説明する。
図5(a)(b)に示すように、カバー25が装置本体1Aの右カバー18に対して閉じられた閉位置に位置する状態では、給送アーム19及び手差しトレイ24は、右カバー18の収容空間18Sに収容される。
【0033】
カバー25が閉位置に位置する状態では、トレイリンク29,30の作用によって、手差しトレイ24は収容空間18Sの上側の上位置に位置している。このため、手差しトレイ24の係合爪243,244は、穴部185,186から離間している。言い換えれば、カバー25が閉位置に位置する状態では、係合爪243,244は穴部185,186に係合しない。また、給送アーム19及び給送ローラ21は、収容空間18Sの下側に位置し、手差しトレイ24が収容空間18Sの上側に位置しているので、給送アーム19、給送ローラ21及び手差しトレイ24を、左右方向RDにコンパクトに配置することができる。左右方向RDは、右カバー18の外装面18aの面方向に直交する方向である。
【0034】
図6(a)(b)に示すように、カバー25が閉位置から所定量開かれた中途位置に位置する状態では、トレイリンク29,30の作用によって、手差しトレイ24は上位置と給送位置との間の位置に位置している。給送位置は、
図2に示すように、手差しトレイ24に積載されたシートを給送可能な手差しトレイ24の位置である。
【0035】
この時、手差しトレイ24の係合爪243,244は、
図5(a)(b)と同様に、穴部185,186から離間している。このように、カバー25が
図2に示すような開位置に至る前の閉位置や中途位置に位置する状態では、係合爪243,244は穴部185,186に係合していない。
【0036】
一方、カバー25が閉位置や中途位置に位置する状態では、手差しトレイ24の浮き防止ピン246,247は、カバー25の浮き防止溝255a,256aの上壁によって浮き上がりを規制されている。また、手差しトレイ24の支持軸241,242がガイド孔部251a,252aに係合している。これらの構成により、手差しトレイ24は、カバー25を開閉する過程において、カバー25からシートの積載方向に脱落することがなく、給送方向FDに沿ってスライド移動することができる。
【0037】
図7(a)~(c)に示すように、カバー25が開位置に位置した状態では、トレイリンク29,30の作用により、手差しトレイ24は給送位置に位置している。この時、手差しトレイ24の支持軸241,242は、ガイド孔部251a,252aの給送方向FDにおける下流端251R,252Rに突き当たっている。下流端251R,252Rは、支持軸241,242と概ね同一の半径を有する円弧形状を有している。
【0038】
手差しトレイ24及びカバー25の自重は、カバー25を開ける方向に作用し、支持軸241,242が下流端251R,252Rに突き当たることで、手差しトレイ24が給送位置に位置決めされると共に、カバー25が開位置で保持される。
【0039】
この時、給送位置に位置する手差しトレイ24に設けられた係合爪243,244は、給送ローラ21の軸線方向(
図2の幅方向Wに相当)に直交する交差方向IDにおいて、穴部185,186に係合している。より詳しくは、係合爪243,244は、穴部185,186の縁部185a,186aに接触することで、手差しトレイ24を交差方向IDに位置決めしている。なお、本実施の形態において係合とは、2つの要素が直接的に接触することに限らず、例えば2つの要素が磁気的に関わり合いをもって一方の要素が他方の要素に対して位置決めされることも含む。また、本実施の形態では、交差方向IDは、手差しトレイ24に積載されたシートの積載方向と、シートが給送ローラ21から受ける給送圧の作用方向と、鉛直方向と、に略一致する方向である。例えば、交差方向IDは、鉛直方向である。なお、交差方向IDは、給送ローラ21の軸線方向に交差していれば、直交していなくてもよい。
【0040】
これにより、手差しトレイ24は、装置本体1Aに対して交差方向IDにおいて直接的に位置決めされ、給送ローラ21に対する相対位置精度を向上することができる。このため、手差し給送部20は、安定した給送性能を得ることができる。
【0041】
一方、手差しトレイ24の浮き防止ピン246,247は、カバー25の浮き防止溝255a,256aの上壁に対して所定のクリアランスを存して離間している。これは、手差しトレイ24の係合爪243,244が、穴部185,186に係合しているためである。なお、手差しトレイ24は、支持軸241,242を中心に、浮き防止溝255a,256aの幅の範囲で僅かに回動可能であるが、これにより、部品交差があっても係合爪243,244を穴部185,186に確実に係合することができる。
【0042】
また、トレイリンク29,30は、カバー25が装置本体1Aに対して開かれることで、係合爪243,244が穴部185,186から離れるように手差しトレイ24を移動させる。この時、浮き防止ピン246,247と浮き防止溝255a,256aの上壁との間の上記クリアランスがあることで、手差しトレイ24をスムーズに移動させることができる。
【0043】
以上の構成により、カバー25が開位置に位置する状態では、手差しトレイ24は給送位置(
図2及び
図7(a)~(c)に示す位置)に位置する。この時、手差しトレイ24は、支持軸241,242がガイド孔部251a,252aの下流端251R,252Rに突き当たることで、給送方向FDにおいて位置決めされる。また、手差しトレイ24及びカバー25の自重は、カバー25を開ける方向、すなわち支持軸241,242を下流端251R,252Rに押し付ける方向に作用するので、より確実に手差しトレイ24は給送方向FDにおいて位置決めされる。
【0044】
また、手差しトレイ24の係合爪243,244が装置本体1Aに設けられたガイド部123の穴部185,186に、交差方向IDにおいて係合しているので、手差しトレイ24はガイド部123に対して交差方向IDにおいて位置決めされる。交差方向IDは、給送ローラ21の軸線方向に直交する方向であると共に、給送圧の作用方向及びシートの積載方向に略一致する方向である。
【0045】
係合爪243,244は、手差しトレイ24の給送方向FDにおける下流端部124に設けられているため、装置本体1Aと手差しトレイ24の下流端部124は、交差方向IDにおいて直接的に位置決めされる。このため、例えば手差しトレイ24の下流端部124には、給送ローラ21の給送圧が作用するが、係合爪243,244と穴部185,186との係合により、手差しトレイ24の変形、振動及び寸法バラツキ等を抑えられる。よって、給送ローラ21と手差しトレイ24との相対位置精度が向上し、安定した給送性能を得ることができる。
【0046】
また、係合爪243,244及び穴部185,186によって給送圧を受けることができるので、手差しトレイ24自体の剛性はさほど必要ない。特に、係合爪243,244は、カバー25の回動軸253a,254aよりも幅方向Wにおいて給送ローラ21に近い位置に配置されると共に、幅方向Wにおいて給送ローラ21を挟むように並設されている。言い換えれば、第1係合部分としての係合爪243は、幅方向Wにおいて給送ローラ21の一方側に配置され、第2係合部分としての係合爪244は、幅方向Wにおいて給送ローラ21の他方側に配置されている。これにより、係合爪243,244及び穴部185,186が給送圧をより確実に受けることができる。このため、例えば手差しトレイ24を薄型化することができ、装置の小型化、省資源化及びコストダウンすることができる。
【0047】
また、手差しトレイ24の係合爪243,244は、シートを案内する案内面123aを有するガイド部123の穴部185,186に係合するので、手差しトレイ24とガイド部123との間の位置ずれを抑え、精度良くシートを給送することができる。
【0048】
また、カバー25の開閉動作に応じて、手差しトレイ24がカバー25の上面25aに沿ってスライド移動する。このため、カバー25が閉位置に位置する状態で、給送アーム19、給送ローラ21及び手差しトレイ24を収容空間18Sにコンパクトに収容することができる。
【0049】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の手差しトレイの周辺構成を変更したものである。特に、第2の実施の形態では、第1の実施の形態のトレイリンク29,30を省いて構成している。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0050】
[手差しトレイの保持構成]
まず、第2の実施の形態に係るシート給送装置としての手差し給送部220に設けられる手差しトレイ24の保持構成について詳述する。
図8乃至
図10に示すように、装置本体1Aの右カバー18には、カバー支持孔283,284が設けられている。カバー25の給送方向FDにおける下流端部からは、延出部353,354が延びている。これら延出部353,354の先端部には、カバー支持孔283,284に係合可能な回動軸353a,354aが設けられている。カバー25は、装置本体1Aに対して回動軸353a,354aを中心に回動可能に支持されている。
【0051】
また、カバー25は、
図9(b)に示すように、幅方向Wにおける一端部側にトレイ支持部257及びガイド部255を有しており、幅方向Wにおける他端部側にトレイ支持部258及びガイド部256を有している。トレイ支持部257は、給送方向FDにおいてガイド部255の上流に配置されており、トレイ支持部258は、給送方向FDにおいてガイド部256の上流に配置されている。トレイ支持部257,258には、それぞれ手差しトレイ24の支持軸241,242に係合するトレイ支持孔257a,258aが形成されている。これにより、手差しトレイ24は、支持軸241,242を中心に、浮き防止溝255a,256aの幅の範囲で僅かに回動可能である。
【0052】
図9(b)及び
図10に示すように、手差しトレイ24の給送方向FDにおける下流端部124には、係合爪243,244と、突き当て面248,249と、が設けられている。係合爪243及び突き当て面248は、給送ローラ21の幅方向Wにおける一方側において一体に形成されている。係合爪244及び突き当て面249は、給送ローラ21の幅方向Wにおける他方側において一体に形成されている。係合爪243,244は、装置本体1Aに設けられたガイド部123の穴部185,186に係合可能であり、突き当て面248,249は、ガイド部123に突き当て可能である。
【0053】
また、カバー25の給送方向FDにおける下流端部には、下カバー支持部259,260が形成されており、これら下カバー支持部259,260には、下カバー32の回動軸321,322が支持される。下カバー32は、下カバー支持部259,260に支持された状態で、下方に垂れ下がっている。
【0054】
本実施の形態では、回動軸353a,354aの軸方向に視たときに、カバー25の外装面25b(
図11参照)の給送方向FDにおける下流端25cと、回動軸353a,354aと、が離間している。これは、延出部353,354が設けられているためである。
【0055】
このため、カバー25が閉位置に位置する状態では、
図11に示すように、カバー25の下流端25cの下方に開口部400が形成されてしまう。カバー部材としての下カバー32は、この開口部400を覆う役割がある。
【0056】
[カバーの開閉動作]
次に、カバー25が開閉する際の、各部材の動きについて説明する。
図11に示すように、カバー25が閉位置に位置する状態では、給送アーム19及び手差しトレイ24は、右カバー18の収容空間18Sに収容される。このとき、手差しトレイ24の係合爪243,244は、穴部185,186から離間している。また、開口部400は、下カバー32によって覆われており、外観を向上できると共に、開口部400から装置内に異物が侵入するのを低減することができる。
【0057】
図12に示すように、カバー25が閉位置から所定量開かれた中途位置に位置する状態では、手差しトレイ24の係合爪243,244は、
図11と同様に、穴部185,186から離間している。このように、カバー25が
図2に示すような開位置に至る前の閉位置や中途位置に位置する状態では、係合爪243,244は穴部185,186に係合していない。
【0058】
また、第1の実施の形態と同様であるため図示を省略するが、カバー25が閉位置や中途位置に位置する状態では、手差しトレイ24の浮き防止ピン246,247は、カバー25の浮き防止溝255a,256aの上壁によって浮き上がりを規制されている。これにより、手差しトレイ24は、カバー25を開閉する過程において、カバー25からシートの積載方向に脱落することがない。
【0059】
図13(a)(b)に示すように、カバー25が開位置に位置した状態では、手差しトレイ24の係合爪243,244は、給送ローラ21の軸線方向に直交する交差方向IDにおいて、ガイド部123の穴部185,186に係合している。より詳しくは、係合爪243,244は、穴部185,186の縁部185a,186aに接触することで、手差しトレイ24を交差方向IDに位置決めしている。本実施の形態では、交差方向IDは、手差しトレイ24に積載されたシートの積載方向と、シートが給送ローラ21から受ける給送圧の作用方向と、鉛直方向と、に略一致する方向である。なお、交差方向IDは、給送ローラ21の軸線方向に交差していれば、直交していなくてもよい。
【0060】
また、手差しトレイ24の第4係合部としての突き当て面248,249は、給送方向FDに沿った方向においてガイド部123の第3係合部としての被突き当て面123bに突き当たっている。手差しトレイ24及びカバー25の自重は、カバー25を開ける方向に作用する。これにより、係合爪243,244は穴部185,186に交差方向IDにおいて確実に係合し、突き当て面248,249はガイド部123の被突き当て面123bに給送方向FDに沿った方向に確実に突き当てられる。被突き当て面123bは、鉛直方向に延びる面である。よって、手差しトレイ24は、装置本体1Aに対して直接的かつ強固に位置決めされ、給送ローラ21に対する相対位置精度を向上することができる。このため、手差し給送部20は、安定した給送性能を得ることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態のトレイリンク29,30を省いて構成しているため、第1の実施の形態の効果に加えて、トレイリンクを配置するための空間上の配置制約を受けない。
【0062】
<その他の実施の形態>
なお、第1の実施の形態では、手差しトレイ24をガイド部123に対して給送方向FDに沿った方向に位置決めする突き当て面248,249を設けていないが、突き当て面248,249を第1の実施の形態に設けてもよい。また、第1の実施の形態では、装置本体1Aの開口部400を覆う下カバー32を設けていないが、下カバー32を第1の実施の形態に設けてもよい。
【0063】
また、既述のいずれの形態においても、プリンタ1の手差し給送部20を例に本発明を説明したが、これに限定されない。例えば、外装カバーを開けることで画像形成部の下方のシート収容部が露出し、シート収容部及び外装カバーにシートを積載するプリンタに本発明を適用してもよい。
【0064】
また、既述のいずれの形態においても、穴部185,186及び被突き当て面123bをガイド部123に設けたが、これに限定されない。これら穴部185,186及び被突き当て面123bは、装置本体1Aが有する部材であればどの部材に設けられてもよい。また、係合爪243,244を装置本体1Aに設け、穴部185,186を手差しトレイ24に設けてもよい。同様にして、突き当て面248,249を装置本体1Aに設け、被突き当て面123bを手差しトレイ24に設けてもよい。このように、手差しトレイ24と装置本体1Aとを接続する構成の形状は限定されない。
【0065】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式のプリンタ1を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1:画像形成装置(プリンタ)/1A:装置本体/5:画像形成部/20,220:シート給送装置(手差し給送部)/21:給送回転体(給送ローラ)/22:搬送部(搬送ローラ)/23:分離部(分離ローラ)/24:シート支持部(手差しトレイ)/24a:支持面/25:開閉部(カバー)/29,30:連動部(トレイリンク)/32:カバー部材(下カバー)/123:ガイド部/123a:案内面/123b:第3係合部(被突き当て面)/124:下流端部/185,186:第1係合部(穴部)/185a,186a:縁部/243:第2係合部、爪部、第1係合部分(係合爪)/244:第2係合部、爪部、第2係合部分(係合爪)/248,249:第4係合部(突き当て面)/255a,256a:規制部(浮き防止溝)/400:開口部/FD:給送方向/ID:交差方向/N:分離ニップ