IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図1
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図2
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図3
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図4
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図5
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図6
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図7
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図8
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図9
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図10
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図11
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図12
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図13
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図14
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図15
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図16
  • 特許-定着装置、画像形成装置及びヒータ 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置及びヒータ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240415BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G03G15/20 505
H05B3/00 335
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019218600
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021089330
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】道田 一洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亞弘
(72)【発明者】
【氏名】中本 淳嗣
(72)【発明者】
【氏名】池上 祥一郎
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-129883(JP,A)
【文献】特開2007-232819(JP,A)
【文献】特開2010-244942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に担持された未定着のトナー像を定着する定着装置であって、
記録材の搬送方向に直交する方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量である第1の領域と、前記第1の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量である第2の領域と、前記第2の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量である第3の領域と、を有する発熱体を有するヒータを備え、
前記発熱量が、前記第2の発熱量、前記第3の発熱量、前記第1の発熱量の順に大きく、
前記第3の領域の前記搬送方向の長さである幅は、前記記録材の搬送方向に直交する方向に亘って一定であり、
前記定着装置によって定着処理を行うことが可能な用紙のうち最も大きい第1の用紙に形成されうる画像の領域の前記直交する方向における端部が前記第2の領域に含まれ、前記第1の用紙の次に大きい第2の用紙の前記直交する方向における端部が前記第1の領域に含まれることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記発熱体の前記領域は、前記直交する方向において、前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、前記第2の領域、前記第1の領域、の順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1の領域は、電気抵抗値が第1の電気抵抗値であり、
前記第2の領域は、電気抵抗値が第2の電気抵抗値であり、
前記第3の領域は、電気抵抗値が第3の電気抵抗値であり、
前記電気抵抗値が、前記第2の電気抵抗値、前記第3の電気抵抗値、前記第1の電気抵抗値の順に大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1の領域は、前記直交する方向の長さが第1の長さであり、
前記第2の領域は、前記直交する方向の長さが第2の長さであり、
前記第3の領域は、前記直交する方向の長さが第3の長さであり、
前記直交する方向の長さが、前記第3の長さ、前記第2の長さ、前記第1の長さの順に大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1の領域は、前記搬送方向の長さである幅が第1の幅であり、
前記第2の領域は、前記幅が第2の幅であり、
前記第3の領域は、前記幅が第3の幅であり、
前記幅が、前記第1の幅、前記第3の幅、前記第2の幅の順に大きいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1の領域は、前記搬送方向の長さである幅が前記直交する方向の内側に向かうほど狭くなり、
前記第2の領域は、前記幅が前記直交する方向の内側に向かうほど広くなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第1の領域は、前記幅の平均が第1の幅であり、
前記第2の領域は、前記幅の平均が第2の幅であり、
前記第3の領域は、前記幅が第3の幅であり、
前記幅が、前記第1の幅、前記第3の幅、前記第2の幅の順に大きいことを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、それぞれ異なる材料で形成されており、
前記第1の領域は、電気抵抗率が第1の電気抵抗率であり、
前記第2の領域は、電気抵抗率が第2の電気抵抗率であり、
前記第3の領域は、電気抵抗率が第3の電気抵抗率であり、
前記電気抵抗率は、前記第2の電気抵抗率、前記第3の電気抵抗率、前記第1の電気抵抗率の順に大きいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第1の領域は、前記搬送方向及び前記直交する方向に直交する方向の長さである厚みが第1の厚みであり、
前記第2の領域は、前記厚みが第2の厚みであり、
前記第3の領域は、前記厚みが第3の厚みであり、
前記厚みが、前記第1の厚み、前記第3の厚み、前記第2の厚みの順に厚いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記発熱体が搭載される基板を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記発熱体を複数備え、
複数の前記発熱体は、前記搬送方向である前記基板の短手方向において対称に配置されることを特徴とする請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記第1の用紙は、LTR用紙であり、
前記第2の用紙は、A4用紙であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記第1の用紙は、A3用紙であり、
前記第2の用紙は、LTR用紙であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項14】
前記発熱体により加熱される第1の回転体と、
前記第1の回転体とともにニップ部を形成する第2の回転体と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項15】
前記第1の回転体は、フィルムであることを特徴とする請求項14に記載の定着装置。
【請求項16】
前記ヒータは、前記フィルムの内部空間に配置されており、
前記ニップ部は、前記フィルムを介して前記発熱体と前記第2の回転体により形成されていることを特徴とする請求項15に記載の定着装置。
【請求項17】
前記発熱体は、前記搬送方向に直交する方向の長さが第4の長さである第1の発熱体であり、
前記ヒータは、前記搬送方向に直交する方向の長さが前記第1の発熱体よりも短い第5の長さである第2の発熱体と、
前記搬送方向に直交する方向の長さが前記第2の発熱体よりも短い第6の長さである第3の発熱体と、をさらに備え、
前記搬送方向である前記基板の短手方向において、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記第1の発熱体、の順で前記基板に配置されることを特徴とする請求項10に記載の定着装置。
【請求項18】
記録材に担持された未定着のトナー像を定着する定着装置であって、
記録材の搬送方向に直交する方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量である第1の領域と、前記第1の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量である第2の領域と、前記第2の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量である第3の領域と、を有する発熱体を有するヒータを備え、
前記発熱量が、前記第2の発熱量、前記第3の発熱量、前記第1の発熱量の順に大きく、
前記第3の領域の前記搬送方向の長さである幅は、前記記録材の搬送方向に直交する方向に亘って一定であり、
前記発熱体が搭載される基板を備え、
前記発熱体は、前記搬送方向に直交する方向の長さが第4の長さである第1の発熱体であり、
前記ヒータは、前記搬送方向に直交する方向の長さが前記第1の発熱体よりも短い第5の長さである第2の発熱体と、
前記搬送方向に直交する方向の長さが前記第2の発熱体よりも短い第6の長さである第3の発熱体と、をさらに備え、
前記搬送方向である前記基板の短手方向において、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記第1の発熱体、の順で前記基板に配置されることを特徴とする定着装置。
【請求項19】
記録材に未定着のトナー像を形成する画像形成手段と、
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の定着装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
細長い基板と、
前記基板の長手方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量である第1の領域と、前記第1の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量である第2の領域と、前記第2の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量である第3の領域と、を有する発熱体と、を備え、
前記発熱量が、前記第2の発熱量、前記第3の発熱量、前記第1の発熱量の順に大きく、
前記第3の領域の前記長手方向に直交する短手方向の長さである幅は、前記長手方向に亘って一定であり、
前記発熱体は、前記長手方向の長さが第4の長さである第1の発熱体であり、
前記ヒータは、前記長手方向の長さが前記第1の発熱体よりも短い第5の長さである第2の発熱体と、
前記長手方向の長さが前記第2の発熱体よりも短い第6の長さである第3の発熱体と、をさらに備え、
前記短手方向において、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記第1の発熱体、の順で前記基板に配置されることを特徴とするヒータ。
【請求項21】
前記発熱体の前記領域は、前記長手方向において、前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、前記第2の領域、前記第1の領域、の順に配置されていることを特徴とする請求項20に記載のヒータ。
【請求項22】
前記第1の領域は、電気抵抗値が第1の電気抵抗値であり、
前記第2の領域は、電気抵抗値が第2の電気抵抗値であり、
前記第3の領域は、電気抵抗値が第3の電気抵抗値であり、
前記電気抵抗値が、前記第2の電気抵抗値、前記第3の電気抵抗値、前記第1の電気抵抗値の順に大きいことを特徴とする請求項20又は請求項21に記載のヒータ。
【請求項23】
前記第1の領域は、前記長手方向の長さが第1の長さであり、
前記第2の領域は、前記長手方向の長さが第2の長さであり、
前記第3の領域は、前記長手方向の長さが第3の長さであり、
前記長手方向の長さが、前記第3の長さ、前記第2の長さ、前記第1の長さの順に大きいことを特徴とする請求項20から請求項22のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項24】
前記第1の領域は、前記短手方向の幅が第1の幅であり、
前記第2の領域は、前記短手方向の幅が第2の幅であり、
前記第3の領域は、前記短手方向の幅が第3の幅であり、
前記幅が、前記第1の幅、前記第3の幅、前記第2の幅の順に大きいことを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項25】
前記第1の領域は、前記短手方向の幅が前記長手方向の内側に向かうほど狭くなり、
前記第2の領域は、前記短手方向の幅が前記長手方向の内側に向かうほど広くなることを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項26】
前記第1の領域は、前記幅の平均が第1の幅であり、
前記第2の領域は、前記幅の平均が第2の幅であり、
前記第3の領域は、前記幅が第3の幅であり、
前記幅が、前記第1の幅、前記第3の幅、前記第2の幅の順に大きいことを特徴とする請求項25に記載のヒータ。
【請求項27】
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、それぞれ異なる材料で形成されており、
前記第1の領域は、電気抵抗率が第1の電気抵抗率であり、
前記第2の領域は、電気抵抗率が第2の電気抵抗率であり、
前記第3の領域は、電気抵抗率が第3の電気抵抗率であり、
前記電気抵抗率は、前記第2の電気抵抗率、前記第3の電気抵抗率、前記第1の電気抵抗率の順に大きいことを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項28】
前記第1の領域は、前記長手方向及び前記短手方向に直交する方向の長さである厚みが第1の厚みであり、
前記第2の領域は、前記厚みが第2の厚みであり、
前記第3の領域は、前記厚みが第3の厚みであり、
前記厚みが、前記第1の厚み、前記第3の厚み、前記第2の厚みの順に厚いことを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか1項に記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置画像形成装置及びヒータに関し、特に、レーザプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真記録方式を利用する画像形成装置における定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム加熱方式の定着装置は、定着フィルム内にヒータ基板を有し、定着フィルムと接触する加圧ローラを備える。定着フィルムや加圧ローラなどの部材は発熱体よりも長いことが一般的であるため、各部材の長手方向の端部は中央部に比べて、温度が低くなりやすく、用紙へのトナーの定着性が低下する傾向にある。部材の長手方向の端部における温度の低下を、以降、端部温度ダレという。端部温度ダレを改善する方法として、例えば、長手方向の両端部の発熱体の幅(短手方向の長さ)を狭くし、単位長さあたりの電気抵抗値を長手方向の中央部よりも高く設定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、長手方向の両端部では長手方向の中央部よりも高い発熱量を得ることができ、各部材の端部温度ダレを改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-260599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発熱体を用いた場合、長手方向の幅の広い用紙を定着装置に通過させる場合は非通紙部昇温が発生しにくい。しかし、長手方向の幅の狭い用紙を定着装置に通過させる場合は、用紙が通過しない両端の領域が過剰に加熱される非通紙部昇温が発生するおそれがある。用紙の長手方向の長さ(用紙幅)を長手紙幅(W)とする。
【0005】
例えばA4サイズの用紙に対応したプリンタにおいて、長手紙幅が最も広い用紙サイズはLTR(W=215.9mm)、次に長手紙幅の広い用紙サイズはA4(W=210mm)である。LTR用紙もA4用紙も短辺を搬送方向の先端として搬送する。例えば、従来の発熱体をA4プリンタに搭載した場合、LTR用紙よりも長手紙幅の狭いA4用紙を搬送すると、非通紙部の領域がLTR用紙よりも広くなるため、非通紙部での過昇温の発生が懸念される。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)記録材に担持された未定着のトナー像を定着する定着装置であって、記録材の搬送方向に直交する方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量である第1の領域と、前記第1の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量である第2の領域と、前記第2の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量である第3の領域と、を有する発熱体を有するヒータを備え、前記発熱量が、前記第2の発熱量、前記第3の発熱量、前記第1の発熱量の順に大きく、前記第3の領域の前記搬送方向の長さである幅は、前記記録材の搬送方向に直交する方向に亘って一定であり、前記定着装置によって定着処理を行うことが可能な用紙のうち最も大きい第1の用紙に形成されうる画像の領域の前記直交する方向における端部が前記第2の領域に含まれ、前記第1の用紙の次に大きい第2の用紙の前記直交する方向における端部が前記第1の領域に含まれることを特徴とする定着装置。
(2)記録材に担持された未定着のトナー像を定着する定着装置であって、記録材の搬送方向に直交する方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量である第1の領域と、前記第1の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量である第2の領域と、前記第2の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量である第3の領域と、を有する発熱体を有するヒータを備え、前記発熱量が、前記第2の発熱量、前記第3の発熱量、前記第1の発熱量の順に大きく、前記第3の領域の前記搬送方向の長さである幅は、前記記録材の搬送方向に直交する方向に亘って一定であり、前記発熱体が搭載される基板を備え、前記発熱体は、前記搬送方向に直交する方向の長さが第4の長さである第1の発熱体であり、前記ヒータは、前記搬送方向に直交する方向の長さが前記第1の発熱体よりも短い第5の長さである第2の発熱体と、前記搬送方向に直交する方向の長さが前記第2の発熱体よりも短い第6の長さである第3の発熱体と、をさらに備え、前記搬送方向である前記基板の短手方向において、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記第1の発熱体、の順で前記基板に配置されることを特徴とする定着装置。
)記録材に未定着のトナー像を形成する画像形成手段と、前記(1)又は前記(2)に記載の定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
)細長い基板と、前記基板の長手方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量である第1の領域と、前記第1の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量である第2の領域と、前記第2の領域に隣り合う単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量である第3の領域と、を有する発熱体と、を備え、前記発熱量が、前記第2の発熱量、前記第3の発熱量、前記第1の発熱量の順に大きく、前記第3の領域の前記長手方向に直交する短手方向の長さである幅は、前記長手方向に亘って一定であり、前記発熱体は、前記長手方向の長さが第4の長さである第1の発熱体であり、前記ヒータは、前記長手方向の長さが前記第1の発熱体よりも短い第5の長さである第2の発熱体と、前記長手方向の長さが前記第2の発熱体よりも短い第6の長さである第3の発熱体と、をさらに備え、前記短手方向において、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記第1の発熱体、の順で前記基板に配置されることを特徴とするヒータ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1~5の画像形成装置の全体構成概略図
図2】実施例1~5の画像形成装置の制御ブロック図
図3】実施例1の定着装置の構成を示す斜視図及び断面図
図4】実施例1のヒータの構成を示す平面図、側面図及び断面図
図5】実施例1のヒータと用紙との位置関係を示す図
図6】実施例1との比較のための比較例を示す図
図7】実施例1のフィルム温度を示すグラフ、用紙との位置関係を示す図
図8】実施例1のフィルム温度を示すグラフ、用紙との位置関係を示す図
図9】実施例2のヒータの構成を示す平面図、側面図及び断面図
図10】実施例2のヒータと用紙との位置関係を示す図
図11】実施例2のフィルム温度を示すグラフ、用紙との位置関係を示す図
図12】実施例2のフィルム温度を示すグラフ、用紙との位置関係を示す図
図13】実施例3のヒータの構成を示す図、要部拡大図
図14】実施例4のヒータの構成を示す図、要部拡大図
図15】実施例4のその他のヒータの構成を示す平面図
図16】実施例4のヒータと用紙との位置関係を示す図
図17】実施例5のヒータの平面図、断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の実施例において、記録紙を定着ニップ部に通すことを、通紙するという。また、発熱体が発熱している領域で、記録紙が通紙していない領域を非通紙領域(又は非通紙部)といい、記録紙が通紙している領域を通紙領域(又は通紙部)という。また、非通紙領域が通紙領域に比べて温度が高くなってしまう現象を非通紙部昇温という。更に、フィルムや加圧ローラなどの部材が発熱体よりも長いため、各部材の長手方向の両端部が中央部に比べて温度が低くなりやすい。部材の長手方向の両端部における温度の低下を、端部温度ダレという。
【実施例1】
【0013】
[全体構成]
図1は実施例1の定着装置を搭載した一例の画像形成装置である、インライン方式のカラー画像形成装置を示す構成図である。図1を用いて電子写真方式のカラー画像形成装置の動作を説明する。なお、第1ステーションをイエロー(Y)色のトナー画像形成用のステーション、第2ステーションをマゼンタ(M)色のトナー画像形成用のステーションとしている。また、第3ステーションをシアン(C)色のトナー画像形成用のステーション、第4ステーションをブラック(K)色のトナー画像形成用のステーションとしている。
【0014】
第1ステーションで、像担持体である感光ドラム1aは、OPC感光ドラムである。感光ドラム1aは金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層等からなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。帯電手段である帯電ローラ2aが感光ドラム1aに当接され、感光ドラム1aの回転に伴い、従動回転しながら感光ドラム1a表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aには直流電圧又は交流電圧を重畳した電圧が印加され、帯電ローラ2aと感光ドラム1a表面とのニップ部から、回転方向の上流側及び下流側の微小な空気ギャップにおいて放電が発生することにより感光ドラム1aが帯電される。クリーニングユニット3aは、後述する転写後に感光ドラム1a上に残ったトナーをクリーニングするユニットである。現像手段である現像ユニット8aは、現像ローラ4a、非磁性一成分トナー5a、現像剤塗布ブレード7aからなる。感光ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、現像ユニット8aは、画像形成装置に対して着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9aとなっている。
【0015】
露光手段である露光装置11aは、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニット又はLED(発光ダイオード)アレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1a上に照射する。また、帯電ローラ2aは、帯電ローラ2aへの電圧供給手段である帯電高電圧電源20aに接続されている。現像ローラ4aは、現像ローラ4aへの電圧供給手段である現像高電圧電源21aに接続されている。1次転写ローラ10aは、1次転写ローラ10aへの電圧供給手段である1次転写高電圧電源22aに接続されている。以上が第1ステーションの構成であり、第2、第3、第4ステーションも同様の構成をしている。他のステーションについて、第1ステーションと同一の機能を有する部品は同一の符号を付し、符号の添え字にステーションごとにb、c、dを付している。なお、以下の説明において、特定のステーションについて説明する場合を除き、添え字a、b、c、dを省略する。
【0016】
中間転写ベルト13は、その張架部材として2次転写対向ローラ15、テンションローラ14、補助ローラ19の3本のローラにより支持されている。テンションローラ14のみバネで中間転写ベルト13を張る方向の力が加えられており、中間転写ベルト13に適当なテンション力が維持されるようになっている。2次転写対向ローラ15はメインモータ(不図示)からの回転駆動を受けて回転し、外周に巻かれた中間転写ベルト13が回動する。中間転写ベルト13は感光ドラム1a~1d(例えば、図1では反時計回り方向に回転)に対して順方向(例えば、図1では時計回り方向)に略同速度で移動する。また、中間転写ベルト13は、矢印方向(時計回り方向)に回転し、1次転写ローラ10は中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と反対側に配置されて、中間転写ベルト13の移動に伴い従動回転する。中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と1次転写ローラ10とが当接している位置を1次転写位置という。補助ローラ19、テンションローラ14及び2次転写対向ローラ15は電気的に接地されている。なお、第2~第4ステーションも1次転写ローラ10b~10dは第1ステーションの1次転写ローラ10aと同様の構成としているので説明を省略する。
【0017】
次に実施例1の画像形成装置の画像形成動作を説明する。画像形成装置は待機状態時に印刷指令を受信すると、画像形成動作をスタートする。感光ドラム1や中間転写ベルト13等はメインモータ(不図示)によって所定のプロセススピードで矢印方向に回転を始める。感光ドラム1aは、帯電高電圧電源20aにより電圧が印加された帯電ローラ2aによって一様に帯電され、続いて露光装置11aから照射された走査ビーム12aによって画像情報(画像データともいう)に従った静電潜像が形成される。現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像ローラ4aに塗布される。そして、現像ローラ4aには、現像高電圧電源21aより所定の現像電圧が供給される。感光ドラム1aが回転して感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像ローラ4aに到達すると、静電潜像は負極性のトナーが付着することによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(例えば、Y(イエロー))のトナー像が形成される。他の色M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各ステーション(プロセスカートリッジ9b~9d)も同様に動作する。各色の1次転写位置間の距離に応じて、一定のタイミングでコントローラ(不図示)からの書き出し信号を遅らせながら、露光による静電潜像が各感光ドラム1a~1d上に形成される。それぞれの1次転写ローラ10a~10dにはトナーと逆極性の直流高電圧が印加される。以上の工程により、順に中間転写ベルト13にトナー像が転写されていき(以下、1次転写という)、中間転写ベルト13上に多重トナー像が形成される。
【0018】
その後、トナー像の作像に合わせて、カセット16に積載されている記録材である用紙Pは、搬送経路Yに沿って搬送される。具体的には、用紙Pは給紙ソレノイド(不図示)によって回転駆動される給紙ローラ17により給送(ピックアップ)される。給送された用紙Pは搬送ローラによりレジストレーションローラ(以下、レジストローラという)18に搬送される。そして、用紙Pは、搬送方向に直交する方向の長さ(以下、幅という)を検知する検知手段である紙幅センサ112を通過する。レジストローラ18の下流側にはレジストレーションセンサ(以下、レジセンサという)113が配置されている。レジセンサ113は、用紙Pの先端が到着すると用紙Pの「有り」を検知し、用紙Pの後端が通過すると用紙Pの「無し」を検知する。
【0019】
用紙Pは、中間転写ベルト13上のトナー像に同期して、レジストローラ18によって中間転写ベルト13と2次転写ローラ25との当接部である転写ニップ部へ搬送される。2次転写ローラ25には2次転写高電圧電源26により、トナーと逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー像が一括して用紙P上(記録材上)に転写される(以下、2次転写という)。用紙P上に未定着のトナー像が形成されるまでに寄与した部材(例えば、感光ドラム1等)は画像形成手段として機能する。一方、2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留したトナーは、クリーニングユニット27によって清掃される。2次転写が終了した後の用紙Pは、定着手段である定着装置50へと搬送され、トナー像の定着を受けて画像形成物(プリント、コピー)として排出トレー30へと排出される。定着装置50のフィルム51、ニップ形成部材52、加圧ローラ53、ヒータ54については後述する。
【0020】
複数枚の用紙Pに連続して画像を印刷する印刷モードを、以下、連続印刷や連続ジョブという。連続印刷において、先行して印刷が行われる用紙P(以下、先行紙という)の後端と先行紙に続いて印刷が行われる後続の用紙P(以下、後続紙という)の先端との間を紙間という。実施例1の画像形成装置は、各部材と用紙Pとの搬送方向に直交する方向(後述する、長手方向)における中央の位置を一致させて印刷動作を行う中央基準の画像形成装置である。したがって、搬送方向に直交する方向の長さが大きい用紙Pの印刷動作であっても、搬送方向に直交する方向の長さが小さい用紙Pの印刷動作であっても、各用紙Pの中央位置は一致する。なお、搬送基準を中央基準としているが、端部基準等他の基準としてもよい。
【0021】
[画像形成装置のブロック図]
図2は画像形成装置の動作を説明するブロック図であり、この図を参照しながら画像形成装置の印刷動作について説明する。ホストコンピュータであるPC110は、画像形成装置の内部にあるビデオコントローラ91に対して印刷指令を出力し、印刷画像の画像データをビデオコントローラ91に転送する役割を担う。
【0022】
ビデオコントローラ91はPC110から入力された画像データを露光データに変換し、エンジンコントローラ92内にある露光制御装置93に転送する。露光制御装置93はCPU94から制御され、露光データのオンオフ、露光装置11の制御を行う。露光データのサイズは画像サイズによって決定される。制御手段であるCPU94は印刷指令を受信すると画像形成シーケンスをスタートさせる。
【0023】
エンジンコントローラ92にはCPU94、メモリ95等が搭載されており、予めプログラムされた動作を行う。高電圧電源96は上述の帯電高電圧電源20、現像高電圧電源21、1次転写高電圧電源22、2次転写高電圧電源26から構成される。また、電力制御部97は双方向サイリスタ(以下、トライアックという)56を有している。電力制御部97は、電力を供給する電力供給経路を切り替えることによって実施例5で説明する長手方向の長さが異なる複数の発熱体を切り替える切替手段である発熱体切り替え器57等も有している。電力制御部97は、供給する電力量を決定する。また、実施例5の定着装置50においては、電力制御部97は発熱する発熱体を選択する。発熱体切り替え器57は、例えばリレーである。
【0024】
また、駆動装置98はメインモータ99、定着モータ100等から構成される。またセンサ111は定着装置50の温度を検知する定着温度センサ59、用紙Pの幅を検知する紙幅センサ112等からなり、センサ111の検知結果はCPU94に送信される。なお、レジセンサ113もセンサ111に含まれる。CPU94は画像形成装置内のセンサ111の検知結果を取得し、露光装置11、高電圧電源96、電力制御部97、駆動装置98を制御する。これにより、CPU94は、静電潜像の形成、現像されたトナー像の転写、用紙Pへのトナー像の定着等を行い、露光データがトナー像として用紙P上に印刷される画像形成工程の制御を行う。なお、本発明が適用される画像形成装置は、図1で説明した構成の画像形成装置に限定されるものではなく、異なる幅の用紙Pを印刷することが可能で、後述するヒータを有する定着装置50を備える画像形成装置であればよい。
【0025】
[定着装置]
実施例1の定着装置50の長手方向の要部斜視図を図3(a)に示す。長手方向の中央の位置における定着装置50の断面図を図3(b)に示す。定着装置50は、円筒状の第1の回転体であるフィルム51、フィルム51と共に定着ニップ部(ニップ部)を形成する第2の回転体である加圧ローラ53を有している。定着装置50は、加熱体であるヒータ54、ヒータ54を保持するニップ形成部材52、長手方向の強度を保持するステー6を有している。
【0026】
フィルム51は、例えば膜厚50μmのポリイミド基材の上に、膜厚200μmのシリコーンゴム層、その上に、膜厚20μmのPFA離型層で構成される。加圧ローラ53は例えば外径13mmのSUM芯金、その上に膜厚3.5mmのシリコーンゴム弾性層、更にその上に膜厚40μmのPFA離型層で構成される。駆動源(不図示)により、加圧ローラ53を回転させ、フィルム51は加圧ローラ53の駆動を受けて従動回転する。ヒータ54はニップ形成部材52に保持され、フィルム51の内周面(内面)とヒータ54表面とが接触する。ステー6は加圧手段(不図示)によって両端を加圧され、その加圧力はニップ形成部材52、フィルム51を介して加圧ローラ53が受ける。これにより、フィルム51と加圧ローラ53とが押圧接触する定着ニップ部Nが形成される。ニップ形成部材52は剛性・耐熱性・断熱性を有する必要があり、液晶ポリマーで形成される。
【0027】
加熱体であるヒータ54の裏面かつ長手方向の中央部には、温度検知手段である定着温度センサ59と安全素子であるサーモスイッチ(不図示)を接触配置する。定着温度センサ59はチップ抵抗式のサーミスタである。定着温度センサ59のチップ抵抗が検出され、検出結果がヒータ54の温度制御に使用される。定着温度センサ59は過剰な昇温(以下、過剰昇温という)を検出することもできる。定着温度センサ59の長手方向の両端部には1つずつサーミスタ(不図示)が配置されており、これらのサーミスタは長手方向の端部のヒータ54裏面の温度をモニタする。サーモスイッチ(不図示)はバイメタルサーモスイッチであり、ヒータ54とサーモスイッチとは電気的に接続されている。サーモスイッチがヒータ54裏面の過剰昇温を検知すると、サーモスイッチ内部のバイメタルが動作し、ヒータ54に供給される電力を遮断することができる。
【0028】
[ヒータ]
図4は実施例1におけるヒータ54の長手方向の平面、側面及び断面を示している。ヒータ54の基本構成は、セラミック基板(以下、基板という)41の上に、発熱体42a、42b、導電経路43、接点44a、44bを形成する。セラミック基板41は、例えばアルミナなどで形成された板状の基板である。発熱体42a、42bは、例えば銀とパラジウムが主成分の発熱体である。導電経路43は、発熱体42a、42bよりも電気抵抗値が低くなっている。接点44a、44bは発熱体42a、42bに電力を供給するためのものである。接点44a、44b以外の領域は絶縁性のガラス45でコートされる。接点44aと接点44bとの間に電圧を印加すると、基板41上の発熱体42a、42bが発熱する。
【0029】
基板41の寸法は、例えば厚みt=1mm、幅W=7.0mm、長さl=280mmである。長手方向の長さ42l=222mmの同一寸法の発熱体42a、42bを基板41の短手方向に並べて配置する。基板41の長手方向の配置については、接点44a、導電経路43、発熱体42a、導電経路43、接点44bの順に電気的に直列に接続する。発熱体42bの基板41上についても同様に接続する。発熱体42aの長手方向の電気抵抗は21Ω、発熱体42bも21Ωであり、それぞれの発熱体42a、42bは並列に接続するので、2つの発熱体42a、42bの合成電気抵抗値は10.5Ωになる。発熱体42a、42b及び導電経路43はガラス45で被覆され、絶縁性が保持される。ヒータ54裏の温度を検出する定着温度センサ59は長手方向の略中央部に配置され、定着温度センサ59の検出結果に基づいて、発熱体42a、42bに投入される電圧が制御される。
【0030】
[ヒータ端部の構成]
図5(a)に実施例1の発熱体42a、42bの長手方向の中心部側を左端としたヒータ54の右側半分の要部拡大図を示す。なお、発熱体42a、42bは左右対称の形状であるため、左側半分については説明を省略する。以下に、発熱体42aの寸法について説明する。発熱体42aは、短手方向の長さ(以下、幅という)H1=1.0mm、H2=0.7mm、H3=0.8mmである。すなわち、発熱体42aは、短手方向の幅が、H1>H3>H2となるような異なる3つの幅を有する形状となっている。
【0031】
また、発熱体42aは、第1の幅である幅H1となっている部分の長手方向の第1の長さはL1=6mmである。また発熱体42aは、第2の幅である幅H2となっている部分の長手方向の第2の長さはL2=22mmである。更に発熱体42aは、第3の幅である幅H3となっている部分の長手方向の第3の長さはL3=83mmである。すなわち、発熱体42aは、各幅を有する部分の長手方向の長さが、L3>L2>L1となるような異なる3つの長さを有する形状となっている。発熱体42bは発熱体42aと上下対称(短手方向の仮想の中心線に対して対称)の形状であり、発熱体42aと同一寸法である。発熱体42aと基板41の一方の端部との間の距離W1、及び、発熱体42bと基板41の他方の端部との間の距離W3は1.0mm、発熱体42aと発熱体42bとの間の距離W2は3.4mmとしている。図5(b)に示すように、発熱体42a、42bの短手方向の幅H1の領域を領域A、幅H2の領域を領域B、幅H3の領域を領域Cとする。
【0032】
発熱体42a、42bの形状を前述した形状としている理由は、発熱体42a、42bに電圧を印加した際に、領域B、C、Aの順に単位長さ当たりの発熱量(エネルギー密度P)を高くしたいからである。領域A、B、Cにおけるそれぞれのエネルギー密度をP1、P2、P3とすると、P2>P3>P1の関係である。すなわち、発熱体42a、42bは、用紙Pの搬送方向に直交する方向において、端部側に位置する単位長さあたりの発熱量が第1の発熱量であるエネルギー密度P1の第1の領域である領域Aを有する。また発熱体42a、42bは、第1の領域よりも内側に位置する単位長さあたりの発熱量が第2の発熱量であるエネルギー密度P2の第2の領域である領域Bを有する。更に発熱体42a、42bは、第2の領域よりも内側に位置する単位長さあたりの発熱量が第3の発熱量であるエネルギー密度P3の第3の領域である領域Cを有する。
【0033】
実施例1の発熱体42a、42bは、領域Aの幅H1が最も広く、領域Bの幅H2が最も狭く、領域Cの幅H3が領域Aの幅H1と領域Bの幅H2との中間である。すなわち、H1>H3>H2である。これにより、領域A、B、Cの中で最も外側の領域(以下、最外領域という)である領域Aにおける単位長さたりの第1の電気抵抗値である電気抵抗値R1を最小とする。また、最外領域に隣接する領域Bの第2の電気抵抗値である電気抵抗値R2を最大とし、長手方向中央部の領域Cの第3の電気抵抗値である電気抵抗値R3をそれらの間とする。これにより、単位長さあたりの電気抵抗値は領域B、領域C、領域Aの順に大きくすることができる。すなわち、R2>R3>R1とする。これにより、発熱体42a、42bに電圧を印加した際に、領域B、C、Aの順に単位長さあたりの発熱量(エネルギー密度P)を高くすることができる。
【0034】
図5(c)に長手方向の長さ(以下、紙幅という)が最も広い第1の用紙であるLTR用紙、第1の用紙の次に紙幅が広い第2の用紙であるA4用紙を示し、用紙Pと発熱体42a、42bとの位置関係について説明する。ここで、第1の用紙は、定着装置50によって定着処理を行うことが可能な用紙のうち最も大きい用紙である。なお、用紙の先端、用紙の右端いずれも余白5mmとし、余白以外の画像の領域を画像域と定義する。用紙の後端、用紙の左端は不図示ではあるが、いずれも余白5mmとする。長手方向において、A4用紙の端部は領域A内に入る。一方、LTR用紙では画像域の端部は領域B内に入る。A4用紙はLTR用紙より紙幅が狭いので、非通紙部領域が広い。すなわち、A4用紙はLTR用紙に比べれば、非通紙部が過昇温となりやすい。実施例1においては、発熱体42a、42bの形状を上述した形状としたことで、A4用紙の端部をエネルギー密度Pの低い領域A(エネルギー密度P1)内に入るようにしている。これにより、A4用紙に定着処理を行う場合でも非通紙部の発熱量を低減することができる。つまり、非通紙部の過昇温を抑制することが可能となる。
【0035】
次に、フィルム51や加圧ローラ53などの部材は発熱体42a、42bよりも長いことが一般的であるため、各部材の長手方向の端部は中央部に比べて、温度が低くなりやすく、用紙Pへのトナーの定着性が低下する傾向にある。フィルム51や加圧ローラ53の端部であればあるほど温度が低くなる傾向にある。紙幅の最も広いLTR用紙に定着処理を施すときが、最も端部温度ダレの度合い(以下、端部温度ダレ量という)が大きい。実施例1においては、LTR用紙の画像域の端部をエネルギー密度Pの高い領域B(エネルギー密度P2)内に入るようにしたので、LTR用紙を搬送した際のLTR用紙の画像域の端部近傍における各部材の端部温度ダレを軽減することができる。
【0036】
以上より、発熱体42a、42bの長手方向の端部から中心部までの領域において、端部から順に発熱体42a、42bを第1の領域、第2の領域、第3の領域と区分けする。そしてそれらの領域に対応した、発熱体42a、42bの短手方向の幅を第2の幅、第3の幅、第1の幅の順に狭くする。更に、発熱体42a、42bの単位長さあたりの電気抵抗値を第2の電気抵抗値、第3の電気抵抗値、第1の電気抵抗値の順に大きくし、単位長さあたりの発熱量(エネルギー密度)を第2の発熱量、第3の発熱量、第1の発熱量の順に大きくする。これにより、紙幅の最も広い第1の用紙の画像域の端部を第2の領域内に含めることができ、第1の用紙の次に紙幅の広い第2の用紙の端部を第1の領域内に含めることができる。発熱体42a、42bをこのような形状とすることで、紙幅の最も広い第1の用紙を搬送した際の定着装置50の各部材の端部温度ダレを改善し、第1の用紙の次に紙幅の広い第2の用紙を搬送した際の非通紙部の過昇温を抑制することができる。すなわち、両者を両立することができる。
【0037】
[実施例と比較例]
実施例1の効果を確認するために、発熱体42a、42bの形状の異なる比較例1を用い、(i)発熱体42a、42bの長手方向端部の温度の低下量、(ii)A4用紙に連続して定着処理を施したときの非通紙部の昇温量、をそれぞれ確認した。
【0038】
(比較例1)
図6(a)は比較例1のヒータ54の長手方向の平面図、側面図及び断面を示している。基板101の寸法は厚みt=1mm、幅W=7.0mm、長さl=280mmである。長さ102l=222mmの発熱体102を長手方向に配置し、発熱体102の端部は導電経路103、電力供給用の接点104a、104bに電気的に接続される。長手方向における発熱体102の電気抵抗値は10.5Ωとしている。発熱体102は基板101の長手方向の中央部に対して、左右対称の寸法形状である。また、発熱体102及び導電経路103はガラス45で被覆され、絶縁性が保持される。ヒータ54裏面の温度を検出する定着温度センサ59は長手方向の略中央部に配置され、定着温度センサ59の検出結果に基づいて、発熱体102に投入される電圧が制御される。
【0039】
図6(b)に比較例1の発熱体102の長手方向の中心部を左端としたヒータ54の右側半分の拡大図を示す。なお、発熱体102は長手方向において左右対称の形状であるため、左側半分については説明を省略する。比較例1の発熱体102は、長手方向の端部と長手方向の中央部とで発熱体102の短手方向の幅が異なる。発熱体102の短手方向の幅H4=1.46mm、幅H5=1.6mmであり、H5>H6である。発熱体102の幅H4の部分は長手方向の長さL4=28mm、幅H5の部分は長手方向の長さL5=83mmである。発熱体102と基板101の短手方向の一方の端部との間の距離W4、及び、発熱体102と基板101の短手方向の他方の端部との間の距離W5は、ともに5.4mmである。
【0040】
図6(c)に示すように、発熱体102の幅H4の領域を領域D、幅H5の領域を領域Eとする。領域Dは発熱体102の短手方向における幅が最も狭く、領域Eは発熱体102の短手方向における幅が最も広い。発熱体102は、長手方向において、領域Eよりも領域Dの方が単位長さあたりの電気抵抗値が大きく、かつエネルギー密度が高い。
【0041】
図6(d)に紙幅の最も広い第1の用紙であるLTR用紙、第1の用紙の次に紙幅の広い第2の用紙であるA4用紙を示し、用紙Pと発熱体102との位置関係について説明する。なお、用紙の先端、用紙の右端いずれも余白5mmとし、余白以外の領域を画像域と定義する。用紙の後端、用紙の左端は不図示ではあるが、いずれも余白5mmとする。比較例では、LTR用紙の端部、LTR用紙の画像域の端部、A4用紙の端部、A4用紙の画像域の端部いずれも単位長さあたりの電気抵抗値が高い領域D内に含まれてしまう。
【0042】
(i)長手方向の端部における温度の低下量(端部温度ダレ)
実施例1、比較例1のヒータ54を定着装置50に組み込んだ際の、フィルム51の長手方向における温度プロファイルを確認し、図7(a)に示す。図7(a)は、横軸に長手方向の位置[mm]、縦軸にフィルム51の温度(フィルム温度)[℃]を示す。また、図7(b)には図7(a)の長手方向の位置に対応するLTR用紙及び画像域を示す。なお、発熱体42a、42b又は発熱体102の長手方向の中央部をX軸方向の0(0mm)とし、発熱体42a、42b又は発熱体102の右側に対応したフィルム51の温度のみを表示する。試験条件については、加圧ローラ53を3回転/秒の速度で回転駆動させ、温度制御の設定(目標温度)を190℃とする。また、グラフの実線は実施例1の温度を示し、破線は比較例1の温度を示す。
【0043】
比較例1の長手方向中央部でのフィルム51の温度T0は約173℃であり、LTR用紙の画像域の端部位置におけるフィルム51の温度T1は約178℃であった。LTR用紙の画像域の端部の温度T1は長手方向中央部の温度T0より高く(T1>T0)、比較例1においても端部温度ダレを解消することができた。
【0044】
また、実施例1は長手方向中央部でのフィルム51の温度T0は約173℃であり、LTR用紙の画像域の端部位置におけるフィルム51の温度T2は約178℃であった。LTR用紙の画像域の端部の温度T2は長手方向中央部の温度T0より高く(T2>T0)、端部温度ダレを解消することができた。なお、図7(a)のグラフではT1とT2を区別できるように丸印をずらして描画している。以上より、比較例1、実施例1のどちらであっても、紙幅の最も広い第1の用紙を搬送した際の画像域内の端部温度ダレを改善できることを確認できた。
【0045】
(ii)A4用紙連続通紙時の非通紙部昇温
実施例1、比較例1のヒータ54を定着装置50に組み込み、100枚の用紙Pに連続して定着処理を施した後のフィルム51の長手方向における温度プロファイルを確認した。なお、発熱体42a、42b又は発熱体102の長手方向の中心をX軸方向の0(0mm)とし、発熱体42a、42b又は発熱体102の右側に対応したフィルム51の温度のみを表示する。試験条件については、加圧ローラ53を3回転/秒の速度で回転駆動させ、2秒に1枚の間隔で、用紙Pを定着装置50に投入した。用紙Pはキヤノン製GF-C081(81.4g/m)のA4用紙を利用した。定着装置50の目標温度は210℃とし、温度制御を行った。
【0046】
図8(a)に試験結果を示す。図8(a)の横軸、縦軸、実線、破線は図7(a)と同様である。また、図8(b)には図8(a)の長手方向の位置に対応するA4用紙及び画像域を示す。比較例1はA4用紙の非通紙域にて、フィルム温度がT3=255℃に到達した。一方、実施例1はA4用紙の非通紙域にて、フィルム温度がT4=236℃に到達した。すなわち、T3>T4という結果を得た。実施例1の発熱体42a、42bの場合、比較例1の発熱体102と比べて、約20℃(=T3-T4=255-236)ほど過昇温を軽減することができた。以上のことから、実施例1では非通紙部昇温を抑制することができ、比較例1では非通紙部昇温を抑制することができないことを確認できた。
【0047】
以上より、実施例1によれば、紙幅の最も広い第1の用紙を搬送した際の各部材の端部温度ダレを改善することと、第1の用紙の次に紙幅の広い第2の用紙を搬送した際の非通紙部の過昇温を抑制することとの両立が可能であることが確認できた。
【0048】
発熱体の長手方向の長さに対し、フィルム51や加圧ローラ53などの各部材の長手方向の長さが長い場合は、発熱体の温度低下量が拡大するので、領域Bの発熱体の短手方向の幅をさらに狭くし発熱量を上げればよい。図5に示した実施例1の発熱体42a、42bの拡大図によれば、領域Aと領域Bとの境界とLTR用紙の画像域の端部とが略同位置であるが、領域Aと領域Bとの境界を長手方向において外側に移動させ、エネルギー密度の高い発熱領域を拡大してもよい。この場合、領域Aと領域Bとの境界はA4用紙の端部より内側である方が、非通紙部の昇温抑制の効果を維持できるので望ましい。
【0049】
LTR用紙の画像域よりも外側に配置される発熱領域であっても、LTR用紙の画像域内の端部温度ダレに寄与し、一定のエネルギー量を必要とする。仮に、領域Aにおけるエネルギー密度の低い領域Aの長手方向の長さL1を短くしたい場合には、領域Aにおける発熱体42a、42bの幅H1を狭くして、ややエネルギー密度を高くするとよい。それとは逆に、領域Aの長手方向の長さL1を長くしたい場合には、非通紙部領域のエネルギー量が増えてしまうので、領域Aの幅H1を広くして、エネルギー密度を低くするとよい。
【0050】
実施例1において、それぞれの領域の長手方向の長さは領域A、B、Cの順に小さくした(L1<L2<L3)。領域AはA4用紙を搬送したときの非通紙部昇温に大きく寄与し、可能な限り狭い領域であることが望ましい。次に、領域Bは端部温度ダレを解消するために発熱体42a、42bのエネルギー密度を高くてしている。しかし、発熱体42a、42bの長手方向の端部から長手方向の内側に20mm~40mmの領域で端部温度ダレが生じるので、領域Bの長さL2は20mm~40mmの長さであることが望ましい。領域Cは領域Aと領域Bとを望ましい形とすると、長手方向の長さL3が最も長い領域となる。よって、それぞれの領域の長手方向の長さは領域A、B、Cの順に小さいこと(L1<L2<L3)が望ましい。
【0051】
以上、実施例1によれば、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することができる。
【実施例2】
【0052】
[ヒータ]
図9は実施例2におけるヒータ54の長手方向の平面、側面及び断面を示している。基板201の寸法は厚みt=1mm、幅W=7.0mm、長さl=280mmである。長さ202l=222mmの同一寸法の発熱体202a、202bを基板201の短手方向に並べて配置する。基板201上には、接点204a、導電経路203、発熱体202a、導電経路203、接点204bの順に電気的に直列に接続して配置する。発熱体202bも同様に接続し基板201上に配置する。発熱体202aの長手方向の電気抵抗値は21Ω、発熱体202bの電気抵抗値も21Ωであり、それぞれの発熱体202a、202bは並列に接続するので、2つの発熱体202a、202bの合成電気抵抗値は10.5Ωになる。発熱体202a、202b及び導電経路203はガラス45で被覆され、絶縁性が保持される。ヒータ54の裏面の温度を検出する定着温度センサ59は長手方向の略中央部に配置し、定着温度センサ59の検出結果に基づいて発熱体202a、202bに投入される電圧が制御される。
【0053】
図10(a)に実施例2の発熱体202aの長手方向の中心を左端としたヒータ54の右側半分の拡大図を示す。なお、発熱体202bは長手方向において左右対称の形状であるため、左側半分については説明を省略する。以下に実施例2の発熱体202aの寸法について説明する。図10(b)に示すように、発熱体202aの短手方向の幅が長手方向の外側から徐々に狭くなる領域を第1の領域である領域Fとする。また、幅H7から幅H8に向かって徐々に広くなる領域を第2の領域である領域G、幅H8で一定である領域を第3の領域である領域Hとする。
【0054】
領域Fについて説明する。発熱体202aの短手方向の幅は長手方向の内側に向かって、幅H6から幅H7へと徐々に狭くなっており、幅H6は1.0mm、幅H7は0.7mmである。なお、図10(a)では領域Fの幅は直線状に狭くなっているが、曲線状に狭くなる構成としてもよい。また、領域Fの長手方向の長さL6は6mmである。次に領域Gについて説明する。発熱体202aの短手方向の幅は長手方向の内側に向かって、幅H7から幅H8へと徐々に広くなっており、幅H8は0.8mmである。すなわち、H6>H8>H7である。なお、図10(a)では領域Gの幅は直線状に広くなっているが、曲線状に広くなる構成としてもよい。領域Gの長手方向の長さL7は22mmである。領域Hの発熱体202aの短手方向の幅H8=0.8mmで一定であり、領域Hの長手方向の長さL8は83mmである。すなわち、L8>L7>L6である。発熱体202aと基板201の一方の端部との間の距離W6、及び、発熱体202bと基板201の他方の端部との間の距離W8は、ともに1.0mm、発熱体202aと発熱体202bとの間の距離W7は3.4mmとした。発熱体202bは発熱体202aと短手方向において対称(上下対称)の形状であり、発熱体202aと同一寸法である。
【0055】
前述した発熱体202a、202bのような形状としたのは、実施例1で説明した通り、発熱体202a、202bに電圧を印加した際に、領域G、H、Fの順に単位長さあたりの発熱量(エネルギー密度P)を高くしたいという理由からである。領域F、G、Hにおけるそれぞれのエネルギー密度をP6、P7、P8とすると、P7>P8>P6の関係である。ここで、領域Fの短手方向の幅の平均(幅H6と幅H7の平均)を第1の幅であるH67(=(H6+H7)/2)とし、領域Gの短手方向の幅の平均(H7とH8の平均)を第2の幅であるH78(=(H7+H8)/2)とする。この場合、実施例2の発熱体202a、202bは、H67>H8>H78の関係が成り立つ。これにより、発熱体202a、202bの長手方向の最外領域である領域Fにおける単位長さたりの電気抵抗値R6を最小とし、最外領域に隣接する領域Gの電気抵抗値R7を最大とし、長手方向中央部の領域Hの電気抵抗値R8をそれらの間とする。これにより、単位長さあたりの電気抵抗値は領域G、領域H、領域Fの順に大きくできる。すなわち、R7>R8>R6とする。これにより、発熱体202a、202bに電圧を印加した際に、領域G、H、Fの順に単位長さあたりの発熱量(エネルギー密度)を高くすることができる。すなわち、P7>P8>P6の関係となる。
【0056】
実施例2は実施例1とは異なり、領域F、領域Gにおいて、発熱体202a、202bの短手方向の幅を徐々に変えている。最外領域である領域Fは長手方向の外側に向かって徐々に短手方向の幅を広くしており、長手方向の外側に向かうほどエネルギー密度が小さくなる。逆に、領域Gは長手方向の内側に向かって徐々に短手方向の幅を広くしており、長手方向の内側に向かうほどエネルギー密度が小さくなる。
【0057】
図10(c)に長手方向の長さが最も広い第1の用紙であるLTR用紙、第1の用紙の次に長手方向の長さが広い第2の用紙であるA4用紙を示し、用紙Pと発熱体202a、202bとの位置関係について説明する。なお、用紙先端、用紙右端いずれも余白5mmとし、余白以外の領域を画像域と定義する。用紙後端、用紙左端は不図示ではあるが、いずれも余白5mmとしている。実施例1の説明と同様に、A4用紙の端部をエネルギー密度の低い領域F内に含め、LTR用紙の画像域の端部をエネルギー密度の高い領域G内に含めるので、非通紙部の過昇温の抑制と端部温度ダレの軽減との両立が可能である。
【0058】
実施例2では、長手方向における最外の領域Fにおいて、長手方向外側にむかい徐々にエネルギー密度を小さくした。このため、実施例1とは異なり、LTR用紙の画像域の端部の外側である領域Fと内側である領域Gとの境界近傍にて、エネルギー密度が急峻に変化しない。実施例2の構成で、LTR用紙が長手方向の外側にずれた状態で搬送され(以下、搬送ズレという)、LTR用紙の画像域の端部が仮にエネルギー密度の低い領域Fに入り込んだ場合について説明する。仮にこのような状況となった場合でも、LTR用紙の画像域の端部温度ダレは小さく、画像域の端部のトナーをLTR用紙に定着できないなどといった課題を解消することができる。また、領域Gにおいて、長手方向の内側に向かうほど徐々にエネルギー密度を低くしている。端部温度ダレは長手方向の外側に向かうほど温度低下量が大きい。領域Gにおいて、温度ダレの大きい外側の領域に対しては発熱体のエネルギー密度は高く、端部温度ダレの小さい内側の領域に対しては発熱体202a、202bのエネルギー密度は低い方が、無駄なエネルギーを使用しない。無駄なエネルギーを消費しない分、用紙Pを搬送した際の非通紙部の昇温を軽減できる。
【0059】
[実施例2の効果]
(i)長手方向の端部における温度の低下量(端部温度ダレ)
実施例2の効果を確認するため、実施例1の比較検証と同様の方法で発熱体202a、202bの長手方向の端部における温度低下量(ダレ)とA4用紙の連続通紙時の非通紙部昇温を確認した。図11(a)にフィルム51の長手方向の端部の温度低下量の確認結果を示す。図11(a)は、横軸に長手方向の位置[mm]、縦軸にフィルム51の温度[℃]を示す。また、図11(b)には図11(a)の長手方向の位置に対応するLTR用紙及び画像域の搬送ズレがある場合とない場合とを示す。実施例2において、長手方向の中央部におけるフィルム51の温度T0は約173℃であり、LTR用紙の画像域の端部の位置におけるフィルム51の温度T5は約182℃であった。LTR用紙の画像域の端部におけるフィルム51の温度T5は長手方向の中央部における温度T0より高く(T5>T0)、端部温度ダレを解消することができた。
【0060】
更に、用紙Pの搬送ズレを想定し、LTR用紙の画像域の端部の位置よりも3mm外側の位置におけるフィルム51の温度T6を測定したところ、温度T6は約175℃であった。こちらに関しても、中央部の温度T0より高く(T6>T0)、用紙Pの搬送ズレが発生したとしても、画像域の端部のトナーを用紙Pに定着することができないといった課題を解消できる。
【0061】
(ii)A4用紙連続通紙時の非通紙部昇温
図12(a)にA4用紙を連続して搬送したときの非通紙部昇温の確認結果を示す。なお、破線は実施例1の結果を示し、点線は実施例2の結果を示している。実施例2はA4用紙の非通紙域においてフィルム51の温度は温度T7=228℃であり、非通紙部の過昇温抑制が確認できた。実施例1の非通紙域の温度T4は236℃であったので、実施例2において非通紙部の昇温抑制効果の拡大を確認できた。長手方向における70mm~100mmの領域においてフィルム51の温度が低く、無駄なエネルギーの削減もできており、その結果、非通紙部の昇温を低減できた。
【0062】
以上より、発熱体202a、202bの長手方向の端部から中心部までの領域において、実施例2では次のような構成とする。発熱体202a、202bの端部から順に発熱体202a、202bを第1の領域、第2の領域、第3の領域と区分けした際、発熱体202a、202bの短手方向の長さ(幅)を第2の領域、第3の領域、第1の領域の順に狭くしている。また、単位長さあたりの電気抵抗値を第2の領域、第3の領域、第1の領域の順に大きくし、単位長さあたりの発熱量(エネルギー密度)を第2の領域、第3の領域、第1の領域の順に大きくしている。更に、長手方向の用紙幅の最も広い第1の用紙の画像域の端部を第2の領域内に含まれるようにし、第1の用紙の次に長手方向の用紙幅の広い第2の用紙の端部を第1の領域内に含まれるように発熱体202a、202bを形成している。これにより、長手方向の紙幅の最も広い用紙Pを搬送した際の各部材の端部温度ダレを改善し、次に長手方向の紙幅の広い第2の用紙を通紙した際の非通紙部の過昇温抑制を両立できる。
【0063】
更に、発熱体202a、202bの第1の領域において、発熱体202a、202bの端部から中央部に向かい、発熱体202a、202bの単位長さあたりの電気抵抗値を徐々に増大させる。これにより、用紙Pの搬送ズレが発生したとしても、用紙P上のトナーを定着することができる。また、第2の領域において、発熱体202a、202bの端部から中央部に向かい、発熱体202a、202bの単位長さあたりの電気抵抗値を徐々に低減させる。これにより、第2の用紙を搬送した際の非通紙部の過昇温の抑制効果をさらに高めることができる。
【0064】
なお、実施例2において、領域Fの発熱体202a、202bは長手方向の外側にむけて徐々に電気抵抗値を小さく、領域Gの発熱体202a、202bは長手方向の外側に向けて徐々に電気抵抗値を大きくした。その手段として、発熱体202a、202bの短手方向の幅を長手方向に線形的に変化させたが、曲線的に変化させたり、階段状に変化させたたりしても、同様の効果を得られる。
【0065】
以上、実施例2によれば、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することができる。
【実施例3】
【0066】
[ヒータ]
図13(a)は実施例3におけるヒータ54の長手方向の平面図を示している。基板301の寸法は実施例1、2と同じ、厚みt=1mm、幅W=7.0mm、長さl=280mmである。発熱体302a、302bの長手方向の長さ302lは222mmであり、短手方向に並べて配置する。発熱体302aは材料の異なる発熱部305a、306a、307a、308a、309aで構成する。ただし、発熱部305aと発熱部309aとは同じ材料、また発熱部306aと発熱部308aとは同じ材料である。発熱体302aの端部は導電経路303、電力供給用の接点304a、304bに電気的に接続される。発熱体302bは発熱体302aと同構成とし、発熱体302aと発熱体302bとの合成電気抵抗値は10.5Ωとしている。
【0067】
図13(b)に実施例3の発熱体302a、302bの長手方向の中心部を左端としたヒータ54の右側半分の拡大図を示す。なお、発熱体302a、302bは左右対称の形状なので、左側については説明を省略する。発熱体302aの寸法について説明する。発熱体302aの短手方向の幅は長手方向の位置にかかわらずH9=0.8mmと一定である。長手方向の外側に位置する発熱部309aの長手方向の長さL9は6mm、長手方向の中央側に位置する発熱部307aの長手方向の長さL11は83mm、その間の発熱部308aの長手方向の長さL10は22mmとしている(L11>L10>L9)。発熱部309aの領域を第1の領域である領域I、発熱部308aの領域を第2の領域である領域J、発熱部307aの領域を第3の領域である領域Kとする。発熱部307aに使用する発熱部材の電気抵抗率を1とした場合、発熱部305aと発熱部309aの電気抵抗率は0.875、発熱部306aと発熱部308aの電気抵抗率は1.25とする。すなわち、領域Iの第1の電気抵抗率をρ1、領域Jの第2の電気抵抗率をρ2、領域Kの第3の電気抵抗率をρ3とすると、ρ2>ρ3>ρ1の関係となる。発熱体302aと基板301の一方の端部との間の距離W9は1.0mm、発熱体302bと基板301の他方の端部との間の距離W11も1.0mm、発熱体302aと発熱体302bとの間の距離W10は3.4mmとする。発熱体302bは発熱体302aと上下対称(短手方向において対称)の形状であり、発熱体302aと同一寸法である。
【0068】
これにより、発熱体302a、302bの長手方向の最外領域である領域Iにおける単位長さたりの電気抵抗値を最小とし、最外領域に隣接する領域Jの電気抵抗値を最大とし、長手方向の中央部の領域Kの電気抵抗値をそれらの間にすることが可能である。単位長さあたりの電気抵抗値は、領域J、領域K、領域Iの順に大きい。すなわち、領域Iの電気抵抗値をR9、領域Jの電気抵抗値をR10、領域Kの電気抵抗値をR11とすると、R10>R11>R9の関係となる。つまり、発熱体に電圧を印加した際に、領域J、領域K、領域Iの順に単位長さあたりのエネルギー密度を高くすることができる。すなわち、領域Iのエネルギー密度をP9、領域Jのエネルギー密度をP10、領域Kのエネルギー密度をP11とすると、P10>P11>P9の関係となる。領域I、領域J、領域KとLTR用紙の画像域の端部、A4用紙の端部の長手方向における位置関係は実施例1と同じである。実施例1や実施例2においては、発熱体の短手方向の幅を長手方向の位置によって異ならせる方法を選択した。一方、実施例3のように、発熱体の長手方向の位置によって使用する材料の電気抵抗率を変える方法であっても、実施例1や実施例2と同等の効果を発揮することができる。
【0069】
以上、実施例3によれば、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することができる。
【実施例4】
【0070】
図14(a)は実施例4におけるヒータ54の長手方向の平面図である。基板401の寸法は実施例1のヒータ54と同寸法であり、厚みt=1mm、幅W=7.0mm、長さl=280mmである。発熱体402a、402bの短手方向の幅H12は0.8mm、長手方向の長さ402lは222mmであり、短手方向に並べて配置する。発熱体402aは厚みの異なる発熱部405a、406a、407a、408a、409aで構成する。ただし、発熱部405aと発熱部409aとは同じ厚み、また発熱部406aと発熱部408aとは同じ厚みである。発熱体402aの端部は導電経路403、電力供給用の接点404a、404bに電気的に接続される。発熱体402bは発熱体402aと同構成とし、発熱体402aと発熱体402bとの合成電気抵抗は10.5Ωとする。発熱体402aと基板401の一方の端部との間の距離W12は1.0mm、発熱体402bと基板401の他方の端部との間の距離W14も1.0mmとする。発熱体402aと発熱体402bとの間の距離W13は3.4mmとする。
【0071】
図14(b)に実施例4の発熱体402aの長手方向の中心を左端としたヒータ54の右側半分のA-A’断面図を示す。なお、発熱体402aは長手方向における左右対称の形状なので、左側については説明を省略する。長手方向の外側の発熱部409aの第1の厚みT1は12μm、長手方向の長さL12は6mmとする。長手方向の中央側の発熱部407aの第3の厚みT3は10μm、長手方向の長さL14は83mmとする。外側と中央側との間の発熱部408aの第2の厚みT2は8.75μm、長手方向の長さL13は22mmとする。すなわち、L14>L13>L12であり、T1>T3>T2である。発熱部409aの領域を第1の領域である領域L、発熱部408aの領域を第2の領域である領域M、発熱部407aの領域を第3の領域である領域Nとする。なお、発熱体402aはいずれも同一の材料で形成する。
【0072】
発熱体402a、402bの厚みを変えることで、最外領域である領域Lにおける単位長さあたりの電気抵抗値を最小とし、最外領域に隣接する領域Mの電気抵抗値を最大とし、長手方向の中央部の領域Nの電気抵抗値をそれらの中間にすることが可能である。単位長さあたりの電気抵抗値は、領域M、領域N、領域Lの順に大きい。すなわち、領域Lの電気抵抗値をR12、領域Mの電気抵抗値をR13、領域Nの電気抵抗値をR14とすると、R13>R14>R12の関係となる。つまり、発熱体402a、402bに電圧を印加した際に、領域M、領域N、領域Lの順に単位長さあたりのエネルギー密度を高くできる。すなわち、領域Lのエネルギー密度をP12、領域Mのエネルギー密度をP13、領域Nのエネルギー密度をP14とすると、P13>P14>P12の関係となる。
【0073】
領域L、領域M、領域NとLTR用紙の画像域の端部、A4用紙の端部の長手方向における位置関係は実施例1と同じである。実施例1や実施例2においては、発熱体の短手方向の幅を長手方向の位置によって異ならせる方法を選択した。一方、実施例4のように、発熱体402a、402bの長手方向の位置によって、発熱体402a、402bの厚みを変えることで電気抵抗値を変える方法であっても、実施例1や実施例2と同等の効果を発揮することができる。
【0074】
[ヒータのその他の構成例]
図15に、その他の実施例を示す。なお、図15には一例として実施例1の発熱体42a(及び/又は42b)を図示しているが、実施例2~4で説明した発熱体に置き換えてもよい。実施例1~4において、2本の発熱体を短手方向に並べて配置するヒータ54について説明してきたが、図15(a)、(b)に示すように、発熱体は1本でも複数本でも同様の効果を得ることができる。すなわち、ヒータ54が発熱体を複数備えてもよい。例えば図15(a)では、ヒータ54は発熱体42aを1本有する構成である。この場合、基板41の短手方向の中央部に発熱体42a(又は42b)を配置することが好ましい。なお、発熱体42aは基板41の短手方向のどの位置に配置してもよい。また、図15(b)のように、実施例1の図5の発熱体42aと発熱体42bとの間に更に発熱体42a及び発熱体42bと同じ形状の発熱体をそれぞれ1本ずつ配置してもよい。このように、基板41上に短手方向において対称となるように発熱体42a、42bを複数配置してもよい。
【0075】
実施例1~4において、同一形状の2本の発熱体を短手方向に並べて配置するヒータについて説明してきたが、図15(c)に示すように、発熱体の形状は同一でなくてもよい。例えば、片側のみ直方体の発熱体502aとし、もう一方の発熱体を例えば発熱体42bとする等、片側のみを実施例1~4で説明した形状にしてもよい。また、図15(d)に示すように、発熱体の幅を変えるなどして、それぞれの抵抗値を異ならせてもよい。すなわち、発熱体502bのように短手方向の幅を発熱体42bよりも大きくする等してもよい。定着ニップ部N内に両方の発熱体が入りきらず、片方の発熱体が定着ニップ部Nからはみ出す場合などにおいて、はみ出す側の発熱体は急峻に昇温してしまう。このため、発熱ムラの小さい直方体形状や、抵抗値の高い発熱体とすることで急激な昇温を軽減できるため、図15(c)の発熱体502aや図15(d)の発熱体502bのような形状が望ましい。
【0076】
また、図15(e)のように、実施例1で示した発熱体を上下反転した形状であってもよい。すなわち、実施例1では基板41の短手方向の一方の端部に発熱体42aを配置し他方の端部に発熱体42bを配置した。しかし、図15(e)に示すように、基板501の短手方向の一方の端部に発熱体42bを配置し他方の端部に発熱体42aを配置してもよい。更に、図15(f)のように、基板501の短手方向に対称性がなくてもよい。すなわち、基板501の上に2つの発熱体42aを有してもよいし、基板41の上に2つの発熱体42b(図15(f))を有してもよい。以上のように、発熱体の形状、本数、配置等については、ヒータ54が搭載される画像形成装置の仕様に応じて種々の組み合わせが可能である。
【0077】
画像形成装置によっては、長手方向の一方の端側に用紙Pを寄せて搬送するものもあり、そのような装置においては、発熱体は長手方向に対称である必要はない。用紙Pを寄せる方向とは反対の方向においてのみ、実施例1などで説明した発熱体の特徴を付与すればよい。
【0078】
[A3サイズ対応の画像形成装置への適用]
図16(a)に実施例1で説明したヒータ54をA3プリンタ(A3サイズの用紙に対応した画像形成装置)に適用した場合の、発熱体42a、42bと用紙Pとの位置関係について示す。A3プリンタにおいては、長手方向の紙幅の最も広い第1の用紙はA3(W=297mm、l=420mm)、A4(W=297mm、l=210mm)であり、次に長手方向の紙幅の広い第2の用紙はLTR(W=279mm、l=216mm)である。A3用紙は短辺(W=297mm)、A4用紙は長辺(W=297mm)、LTR用紙は長辺(W=297mm)を搬送方向の先端として搬送する。
【0079】
また、図16(b)に示すように、発熱体42a、42bの長手方向における端部から順に第1の領域O、第2の領域P、第3の領域Qと区分けする。領域O、P、Qのエネルギー密度P1、P2、P3の関係は、P2>P3>P1であり、A3プリンタであってもA4プリンタと同じであることが望ましい。用紙Pと発熱体42a、42bとの位置関係においては、長手方向の紙幅の最も広い第1の用紙であるA3用紙の画像域の端部をエネルギー密度の高い領域Pに含まれるようにし、端部温度ダレを改善することを優先することが望ましい。第1の用紙の次に広い長手方向の紙幅を有するLTR用紙の端部は領域P内に含まれるようにしておけばよい。領域Oのエネルギー密度が低いので、LTR用紙の端部が領域Pに含まれていたとしても、非通紙部昇温の抑制効果が期待できる。
【0080】
以上、実施例4によれば、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することができる。
【実施例5】
【0081】
実施例5は、図17に示すような、搬送方向に直交する方向(短手方向;用紙の幅方向)において長さが異なる3つの発熱体を備えるヒータ54を用いた場合の実施例である。図17(a)に、実施例5のヒータ(長さが異なる3つの発熱体を備えるヒータ54)の模式図を示す。なお、図17では、各発熱体の形状が直方体(平面視で矩形)形状のように図示しているが、実際は実施例1から実施例4で説明したような本発明の特徴的な形状となっている。
【0082】
ヒータ54は、基板54a、第1の発熱体である発熱体54b1a、第4の発熱体である発熱体54b1b、第2の発熱体である発熱体54b2、第3の発熱体である発熱体54b3、導体54c、接点54d1~54d4、保護ガラス層54eからなる。以下、発熱体54b1a、54b1b、54b2、54b3を総称して発熱体54bということもある。また、長手方向の長さが略同じ長さである発熱体54b1a、54b1bを総称して発熱体54b1ということもある。基板54aは、セラミックであるアルミナ(Al)を用いている。基板54a上に、発熱体54b1a、54b1b、54b2、54b3、導体54c、接点54d1~54d4が形成されている。そして、その上に発熱体54b1a、54b1b、54b2、54b3とフィルム51との絶縁を確保するために保護ガラス層54eが形成されている。
【0083】
発熱体54bは、長手方向の長さ(以下、サイズともいう)が異なっている。発熱体54b1a、54b1bの長手方向の長さがHL1=222mmであり、発熱体54b2の長手方向の長さがHL2=188mmであり、発熱体54b3の長手方向の長さがHL3=154mmである。長さHL1、HL2、HL3は、HL1>HL2>HL3の関係になっている。
【0084】
また、実施例5の画像形成装置において使用することができる用紙の中で最も大きい紙幅(以下、最大紙幅という)は216mmであり、最も小さい紙幅(以下、最小紙幅という)は76mmである。したがって、HL1は、発熱体54b1によって最大紙幅(216mm)の画像サイズ(206mm)を定着可能な長さになっている。発熱体54b1は導体54cを介して第2の接点である接点54d2、第4の接点である54d4に電気的に接続されており、発熱体54b2は導体54cを介して接点54d2、54d3に電気的に接続されている。発熱体54b3は導体54cを介して第1の接点である接点54d1、第3の接点である54d3に電気的に接続されている。ここで、発熱体54b1aと発熱体54b1bとは同じ長さであり、必ず略同時に使用される。発熱体54b1aは、基板54aの短手方向の一方の端部に設けられ、発熱体54b1bは、基板54aの短手方向の他方の端部に設けられる。発熱体54b2、54b3は、基板54aの短手方向において発熱体54b1aと発熱体54b2bとの間に、短手方向中心に対して対称に設けられる。なお、電力供給経路の切り替え、言い換えれば発熱体54bの切り替えは、CPU94が図2で説明した発熱体切り替え器57を制御することによって行われる。
【0085】
温度検知手段である定着温度センサ59は、サーミスタである。定着温度センサ59の構成について図17(b)を参照しながら説明する。図17(b)に示す定着温度センサ59は、メインサーミスタ素子59a、ホルダ59b、セラミックペーパー59c、絶縁樹脂シート59dで構成される。セラミックペーパー59cは、ホルダ59bとメインサーミスタ素子59aとの間の熱伝導を阻害する役割を果たす。絶縁樹脂シート59dは、メインサーミスタ素子59aを物理的、電気的に保護する役割を果たす。メインサーミスタ素子59aは、ヒータ54の温度に応じて出力値が変化する温度検知手段であり、ジュメット線(不図示)と配線により画像形成装置のCPU(不図示)に接続される。メインサーミスタ素子59aはヒータ54の温度を検知して検知結果をCPUに出力する。
【0086】
定着温度センサ59は、基板54aに対して保護ガラス層54eと反対の面に位置し、かつ発熱体54bの長手方向における基準線aの位置(中央に対応する位置)に設置され、基板54aと接している。CPUは、定着温度センサ59の検知結果に基づいて、定着処理時の温度を制御する。以上がメインサーミスタである定着温度センサ59の構成についての説明である。
【0087】
以上、実施例5によれば、定着装置の各部材の長手方向の端部の温度低下の改善と、非通紙部の昇温の抑制とを両立することができる。
【符号の説明】
【0088】
42a、42b 発熱体
50 定着装置
A 領域
B 領域
C 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17