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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240415BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240415BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240415BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B32B27/34
A23L5/00 G
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020003412
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2020111050
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019004462
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 良美
(72)【発明者】
【氏名】野崎 孝典
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 博幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 泰宏
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002114(JP,A)
【文献】特開2015-134465(JP,A)
【文献】特開2010-253712(JP,A)
【文献】特開2007-112999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C08J 5/00
B65D 65/00
A23L 5/00
A23L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層を有し、冷凍食品の包装袋に用いられるポリアミド系フィルムであって、
前記脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層は、更に、ポリエステル系エラストマーを含む第1の層及びポリエステル系エラストマーを含まない第2の層を含み、
前記第2の層は、前記第1の層の両側に配置され、
前記第1の層は、脂肪族ポリアミドを78重量%~99.5重量%及びポリエステル系エラストマーを0.5重量%~22重量%含有し、
前記第2の層は、前記第2の層を構成する樹脂成分の全重量を100重量%としたときに、脂肪族ポリアミドを70重量%以上含有し、
前記第1の層は、前記第2の層に含まれない種類の脂肪族ポリアミドを含み、
前記第1の層における脂肪族ポリアミドの相対粘度は、前記第2の層における脂肪族ポリアミドの相対粘度よりも低く、
前記第1の層と前記第2の層とが隣接している、
ポリアミド系フィルム。
【請求項2】
冷凍食品の包装袋に用いるフィルムを用いてピンホールの発生を抑える方法であって、
前記フィルムは、脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含有する第1の層と、脂肪族ポリアミドを含有するが、ポリエステル系エラストマーを含有しない第2の層とを少なくとも有するポリアミド系フィルムであり、
前記第2の層は、前記第1の層の両側に配置され、
前記第1の層は、脂肪族ポリアミドを78重量%~99.5重量%及びポリエステル系エラストマーを0.5重量%~22重量%含有し、
前記第2の層は、前記第2の層を構成する樹脂成分の全重量を100重量%としたときに、脂肪族ポリアミドを70重量%以上含有し、
前記第1の層は、前記第2の層に含まれない種類の脂肪族ポリアミドを含み、
前記第1の層における脂肪族ポリアミドの相対粘度は、前記第2の層における脂肪族ポリアミドの相対粘度よりも低く、
前記フィルムを用いて、食品を包装する工程を含み、
前記包装後の食品の冷凍及び解凍の後の、
前記包装袋にピンホールの発生を抑える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン樹脂を含むフィルムは、ガスバリア性、強靭性等を有するフィルムとして各方面で多用されており、特に、商品の包装に広く利用されている。
【0003】
このフィルムは、市場に流通する食品等の包装フィルムとして好ましく用いられる。しかし、その搬送、運搬等においてピンホールが生じる場合があり、内容物の保護の観点から、様々な改良が進められている。
【0004】
本出願人は、ポリアミドを86重量%~98重量%、及び耐屈曲剤を2重量%~14重量%含有するポリアミド層を少なくとも有するポリアミド系フィルムを開発している(特許文献1)。このポリアミド系多層フィルムは、屈曲に耐えるソフト性と、繰り返し接触による磨耗に耐える硬さとを備えた、優れた耐ピンホール性を有している。このポリアミド系フィルムは、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れ、優れた耐突刺し性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-2114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
常温環境下で輸送される食品包装用袋に比べ、低温環境下、特に冷凍状態で輸送される食品用包装袋等では、ピンホールの発生が高くなる傾向にある。内容物が水分を含むものの場合、冷凍輸送時に発生したピンホールにより、解凍時に内容物が流れ出すなどのトラブルが発生していた。
【0007】
本発明は、低温の状態、特に冷凍状態で輸送される食品の包装用として、耐ピンホール性に優れ、且つ、耐突刺し性に優れたポリアミド系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含有するポリアミド層を少なくとも有するポリアミド系フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記のポリアミド系フィルムを提供する。
【0010】
項1.
脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層を有するポリアミド系フィルムであって、 前記脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層は、更に、ポリエステル系エラストマーを含む第1の層及びポリエステル系エラストマーを含まない第2の層を含み、
前記第1の層と前記第2の層とが隣接している、
ポリアミド系フィルム。
【0011】
項2.
前記第1の層は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%及びポリエステル系エラストマーを0.5重量%~20重量%含有する、前記項1記載のポリアミド系フィルム。
【0012】
項3.
前記脂肪族ポリアミドは、JIS K6920-2:2009に準拠した測定方法により、96%H2SO4を溶媒とし、試料濃度1.0重量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.0~5.5である、前記項1又は2に記載のポリアミド系フィルム。
【0013】
項4.
食品の包装袋に用いるフィルムを用いてピンホールの発生を抑える方法であって、
前記フィルムは、脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含有する第1の層を少なくとも有するポリアミド系フィルムであり、
前記フィルムを用いて、食品を包装する工程を含み、
前記包装後の食品の冷凍及び解凍の後の、
前記包装袋にピンホールの発生を抑える方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリアミド系フィルムは、低温の状態、特に冷凍状態で輸送される食品の包装用として耐ピンホール性に優れ、且つ、優れた耐突刺し性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
[1]ポリアミド系フィルム
本発明のポリアミド系フィルムは、以下の態様を含む。
【0017】
本発明のポリアミド系フィルムは、
脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層を有し、
前記脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層は、更に、ポリエステル系エラストマーを含む第1の層及びポリエステル系エラストマーを含まない第2の層を含み、
前記第1の層と前記第2の層とが隣接している。
【0018】
本発明のポリアミド系フィルムでは、前記脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含む第1の層は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含み、ポリエステル系エラストマーを20重量%~0.5重量%含むことが好ましい。
【0019】
本発明のポリアミド系フィルムでは、前記脂肪族ポリアミドは、JIS K6920-2:2009に準拠した測定方法により、96%H2SO4を溶媒とし、試料濃度1.0重量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.0~5.5であることが好ましい。
【0020】
包装する食品が比較的尖った内容物(食品)である場合、包装袋は、搬送、運搬等の際に内容物による突刺しにも耐え、ピンホールの発生を抑えることも必要である。特に内容物が冷凍食品である場合、包装袋には優れた耐突き刺し性が求められる。
【0021】
また、包装する食品が常温時に液体である冷凍食品の場合、その重量が大きい場合もあり、包装袋は優れた耐衝撃性が求められる。
【0022】
本発明のポリアミド系フィルムは、食品包装用フィルム、特に冷凍充填商品、及び冷凍流通商品向けの包装に用いる場合に、耐突刺し性、及び耐衝撃性に加えて、冷凍下での耐屈曲性に優れるフィルムである。本発明のポリアミド系フィルムは、食品を包装し、食品の搬送、運搬等において、常温環境下に加えて、冷凍環境下においても、優れた強靭性を示し、ピンホールが発生し難いフィルムである。冷凍技術の向上により、様々な食品を冷凍することができるようになり、食品の長距離移動が可能となっている。本発明のポリアミド系フィルムは、食品を冷凍状態で長距離移動する際に、有用である。
【0023】
本発明において、「冷凍」とは、食品や原材料などを-5℃以下、好ましくは-15℃以下に冷却して凍結、貯蔵することをいう。
【0024】
(1)脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。具体的には、ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)等を例示できる。
【0025】
これら脂肪族ポリアミドは、1種の使用であっても、2種以上の併用であっても良い。
【0026】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6の共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン-6、ナイロン-6/6,6であり、特に好ましくはナイロン-6である。2種以上の脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6とナイロン-6/6,6との組み合わせであることが好ましい。
【0027】
前記組み合わせは、ナイロン-6:ナイロン-6/6,6の重量比が50:50~95:5程度であることが好ましい。
【0028】
ポリアミドの相対粘度
本発明のポリアミド系フィルムでは、前記脂肪族ポリアミドは、JIS K6920-2:2009に準拠した測定方法により、96%H2SO4を溶媒とし、試料濃度1.0重量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.0~5.5であることが好ましい。前記相対粘度は、より好ましくは3.2~4.2である。
【0029】
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミドとして、前記相対粘度のポリアミドを用いることにより、耐突刺し性をより向上することができる。
【0030】
本発明のポリアミド系フィルムでは、2種以上のポリアミドを混合して用いる場合、前記ポリアミドの相対粘度は、混合される夫々のポリアミドの相対粘度を測定し、加重平均して得られた値を混合されたポリアミドの相対粘度とする。
【0031】
また、本発明のポリアミド系フィルムは、表層、裏層、及び、中間層で用いる脂肪族ポリアミドの相対粘度は同じであっても、異なっていてもよい。
【0032】
本発明のポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド以外のポリアミドを含有してもよい。
【0033】
芳香族ポリアミド
ポリアミドとして、上記脂肪族ポリアミドに芳香族ポリアミドを含有しても良い。
【0034】
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。芳香族ポリアミドとしては、好ましくは、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD-ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。芳香族ポリアミドの具体例としては、例えば、S-6007、S-6011(いずれも三菱ガス化学株式会社製)が例示される。
【0035】
芳香族ポリアミドとしては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる、非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。芳香族ポリアミドとしては、好ましくはヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体等である。上記芳香族ポリアミドの具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)が例示される。
【0036】
ポリアミドの組み合わせ
脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの好ましい組み合わせとしては、ナイロン-6とMXD-ナイロンとの組み合わせ、ナイロン-6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)との組み合わせが挙げられる。
【0037】
ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとを混合する場合、ポリアミド中の脂肪族ポリアミドの含有量は、ポリアミドの量を100重量%として、80重量%~100重量%が好ましく、90重量%~100重量%がより好ましい。また、ポリアミド中の脂肪族ポリアミドの含有量は、91重量%~99重量%が更に好ましく、92重量%~98重量%が特に好ましく、93重量%~97重量%が最も好ましい。
【0038】
ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミド(非晶性芳香族ポリアミド等)とを含有する場合、ポリアミド中の芳香族ポリアミドの含有量は、ポリアミドの量を100重量%として、0重量%~20重量%が好ましく、0重量%~10重量%がより好ましい。また、ポリアミド中の芳香族ポリアミドの含有量は、1重量%~9重量%が更に好ましく、2重量%~8重量%が特に好ましく、3重量%~7重量%が最も好ましい。
【0039】
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミドとして、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含有する場合、より優れた延伸製膜性を示すことができる。ポリアミド中の脂肪族ポリアミドの含有量を上記範囲とすることにより、ポリアミド系フィルムの繰り返し接触による耐ピンホール性及び耐突刺し性を、更に向上させることができる。
【0040】
(2)ポリエステル系エラストマー
ポリエステル系エラストマーとしては、変性ポリエステル系エラストマーが挙げられる。前記変性ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたものである。
【0041】
具体的には、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58重量%~73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる変性ポリエステル系エラストマーである。不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト反応及び末端付加反応により反応性基が導入されるため、多種の樹脂との化学結合性、水素結合性が向上する。
【0042】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと、ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体であり、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が、該ポリエステル系エラストマー中の58重量%~73重量%程度である。
【0043】
ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、400~6,000程度が好ましい。
【0044】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩等が挙げられる。
【0045】
ラジカル発生剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0046】
前記各成分の配合割合は、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01重量部~30重量部であり、ラジカル発生剤が0.001重量部~3重量部であることが好ましい。
【0047】
変性ポリエステル系エラストマーの調製方法は特に限定されないが、例えば、特開2002-155135号公報等に記載されている方法により調製することができる。得られる変性ポリエステル系エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、40g/10分~300g/10分であることが好ましい。メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠した測定方法により、230℃、2.16kgの条件により測定される値である。
【0048】
前記変性ポリエステル系エラストマーの市販品としては、具体的には、テファブロック(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0049】
本発明のポリアミド系フィルムは、前記脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層を有する。本発明において「主たる構成成分」とは、当該の層を構成する樹脂成分の全重量を100重量%として、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含まれている成分のことをいう。
【0050】
本発明のポリアミド系フィルムにおける、前記第1の層の前記脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーの含有量は、当該の層全体の重量を100重量%として、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含み、ポリエステル系エラストマーを20重量%~0.5重量%含むことが好ましい。
【0051】
前記第1の層中の脂肪族ポリアミドの含有量は、99.5重量%~85重量%がより好ましく、99.5重量%~90重量%が更に好ましく、99.5重量%~93重量%が特に好ましく、99.5重量%~98.1重量%が最も好ましい。当該層中のポリエステル系エラストマーの含有量は、ポリアミド層全体の重量を100重量%として、0.5重量%~15重量%がより好ましく、0.5重量%~10重量%が更に好ましく、0.5重量%~7重量%が特に好ましく、0.5重量%~1.9重量%が最も好ましい。
【0052】
前記第1の層中のポリアミドの含有量を上記範囲とすることにより、ポリアミド系フィルムの屈曲による耐ピンホール性及び耐突き刺し性をより向上させることができる。
【0053】
前記第1の層中のポリエステル系エラストマーの含有量を上記範囲とすることにより、ポリアミド系フィルムの耐ピンホール性を向上させることができる。
【0054】
本発明のポリアミド系フィルムでは、ポリアミド層に含まれるポリエステル系エラストマーは、耐屈曲剤として機能する。ポリエステル系エラストマーは、ポリアミド系フィルムの屈曲による耐ピンホール性、特に、冷凍環境下での耐ピンホール性の向上に効果的である。
【0055】
本発明のポリアミド系フィルムにおいて、前記第2の層は、前記脂肪族ポリアミドを主たる構成成分として、ポリエステル系エラストマーを含まない。
【0056】
前記第2の層がポリエステル系エラストマーを含まないことで、ポリアミド系フィルムの耐突き刺し性を向上させることができる。
【0057】
(3)耐屈曲剤
本発明のポリアミド系フィルムでは、前記第1の層には、前記ポリエステル系エラストマーに加えて、耐屈曲剤として、熱可塑性エラストマーを含有しても良い。
【0058】
熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する物質としての熱可塑性材料であり、例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、ポリアミド系フィルムの屈曲による耐ピンホール性をより向上させることができる点で、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが好ましく、ポリアミド系エラストマーがより好ましい。
【0060】
これら熱可塑性エラストマーは、1種の使用であっても、2種以上の併用であっても良い。
【0061】
熱可塑性エラストマーは、ポリアミド系フィルムの屈曲による耐ピンホール性を低下させない範囲において改質が行われてもよい。例えば、前記熱可塑性エラストマーの変性体であってもよい。熱可塑性エラストマーにおける改質としては、例えば、共重合やグラフト変性による改質、極性基の付与による改質等が挙げられる。極性基の付与は、グラフト変性により行われてもよい。このような極性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキソ基等が挙げられる。極性基は1種類で又は複数の種類を組み合わせて付与することができる。従って、極性基が付与された変性体には、例えば熱可塑性エラストマーのエポキシ変性体、カルボキシ変性体、酸無水物変性体、ヒドロキシ変性体、アミノ変性体等が含まれる。
【0062】
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントからなるポリアミド系ブロック共重合体が挙げられる。
【0063】
ポリアミド系ブロック共重合体のハードセグメントを構成するポリアミド成分は、(1)ラクタム、(2)ω-アミノ脂肪族カルボン酸、(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、又は(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される。具体的には、ε-カプロラクタム等のラクタム、アミノヘプタン酸等の脂肪族ジアミン、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を例示することができる。
【0064】
ポリアミド系ブロック共重合体のソフトセグメントを構成するポリオキシアルキレングリコール成分は、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ-1,2-プロピレングリコール等が挙げられる。
【0065】
ポリアミド系ブロック共重合体の融点は、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントの種類と比率によって決定されるが、通常は、120℃から180℃の範囲のものが使用される。
【0066】
ポリアミド系ブロック共重合体を積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの構成成分にすることにより、積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に効果がある。
【0067】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト変性或は共重合変性することによって得られる樹脂が挙げられる。
【0068】
ポリオレフィン系エラストマーのベースポリマーとして使用可能なポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体、これら2種以上のランダム共重合体、これら2種以上のブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エチルとの共重合体等のエチレン・極性モノマー共重合体等から選ばれる重合体が挙げられる。
【0069】
前記ベースポリマーとして使用可能なポリオレフィン樹脂として、より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体)、ポリプロピレン(単独重合体、ランダム重合体、ブロック共重合体など)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。これらは如何なる触媒系で製造されたものであっても良く、例えば上記直鎖低密度ポリエチレンにおいては、メタロセン系触媒或はマルチサイト触媒で製造されたものが使用できる。
【0070】
前記ポリオレフィン系エラストマーは、上記ベースポリマーであるポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸をグラフトすることにより得ることができ、また、オレフィンと少量の不飽和カルボン酸を共重合変性することによって得ることができる。グラフト或は共重合変性に使用される不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などを挙げることができるが、特に酸無水物が好ましく、取り分け無水マレイン酸が好ましい。
【0071】
ポリオレフィン系エラストマーは、無水マレイン酸変性エチレン共重合体であることが好ましい。無水マレイン酸変性エチレン共重合体としては、無水マレイン酸グラフト変性エチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を無水マレイン酸変性したものを好適に用いることができる。
【0072】
本発明のポリアミド系フィルムでは、前記脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含有するポリアミド層は、ポリアミド層全体の重量を100重量%として、脂肪族ポリアミドを80重量%~99重量%含み、耐屈曲剤は、前記ポリエステル系エラストマーと合わせて、20重量%~0.5重量%含むことが好ましい。
【0073】
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド層中の前記その他の耐屈曲剤の含有量が、ポリエステル系エラストマーと合わせて、20重量%~1重量%であることで、屈曲による耐ピンホール性、及び繰り返し接触による耐ピンホール性がより向上する。
【0074】
(4)その他の成分
脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0075】
(5)層構成
本発明のポリアミド系フィルムは、少なくとも、第1の層と第2の層とを、隣接した構成で含む。前記の通り、第1の層及び第2の層は前記脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層であり、第1の層はポリエステル系エラストマーを含む層であり、第2の層はポリエステル系エラストマーを含まない層である。
【0076】
本発明のポリアミド系フィルムの構成は、具体的には、第1の層/第2の層/第1の層、第2の層/第1の層/第2の層の3層構成や、第1の層/第2の層/第1の層/第2の層/第1の層、第2の層/第1の層/第2の層/第1の層/第2の層の5層構成とすることができる。
【0077】
本発明のポリアミド系フィルムの総厚みは、10μm~50μm程度が好ましく、10μm~30μmがより好ましく、15μm~25μmが更に好ましい。
【0078】
第1の層の厚みは0.5μm~30.0μmが好ましく、1.0μm~20.0μmがより好ましい。第2の層の厚みは0.5μm~30.0μmが好ましく、1.0μm~20.0μmがより好ましい。
【0079】
本発明のポリアミド系フィルムは、少なくとも、前記第1の層と前記第2の層を有する多層構成である。多層構成において、最外層となる層を表層及び裏層と称する。
【0080】
本発明のポリアミド系フィルムは、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装用として、屈曲による耐ピンホール性に優れ、且つ、優れた耐突刺し性を示すことができる。本発明のポリアミド系フィルムは、延伸性に優れておりフィルムの延伸破断はほとんど生じない。本発明のポリアミド系フィルムは、食品の包装、取り分け、水分を含む食品の包装等に好適であり、それら食品の低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適に用いることができる。
【0081】
[2]ポリアミド系フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系フィルムを製造する方法としては特に限定されず、従来公知の積層体を形成する製造方法が挙げられる。
【0082】
本発明のポリアミド系フィルムの各層の樹脂組成物を、例えば、第2の層(表層)/第1の層/第2の層(裏層)の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しして、フラット状の多層のポリアミド系フィルムを調製する製造方法が挙げられる。
【0083】
得られたポリアミド系フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良い。延伸倍率は、例えば、縦延伸(MD)2.5~4.5倍、横延伸(TD)2.5~5.0倍である。
【0084】
例えば、逐次二軸延伸の場合、50℃~80℃のロール延伸機により2.5~4.5倍に縦延伸し、80℃~140℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5~5.0倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより180℃~220℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0085】
本発明のポリアミド系フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良く、得られたポリアミド系フィルムは、必要に応じて、その両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0086】
[3]包装袋にピンホールの発生を抑える方法
本発明は、以下の包装袋にピンホールの発生を抑える方法を含む。
【0087】
本発明の包装袋にピンホールの発生を抑える方法は、
食品の包装袋に用いるフィルムを用いてピンホールの発生を抑える方法であって、
前記フィルムは、脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含有するポリアミド層(第1の層)を少なくとも有するポリアミド系フィルムであり、
前記フィルムを用いて、食品を包装する工程を含み、
前記包装後の食品の冷凍及び解凍の後の、
前記包装袋にピンホールの発生を抑える方法である。
【0088】
前記第1の層は、前記の通り、脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層であり、更にポリエステル系エラストマーを含む層である。
【0089】
本発明の包装袋にピンホールの発生を抑える方法では、前記ポリアミド層は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含み、ポリエステル系エラストマーを20重量%~0.5重量%含むことが好ましい。
【0090】
本発明の包装袋にピンホールの発生を抑える方法では、前記脂肪族ポリアミドは、JIS K6920-2:2009に準拠した測定方法により、96%H2SO4を溶媒とし、試料濃度1.0重量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.0~5.5であることが好ましい。
【0091】
本発明の包装袋にピンホールの発生を抑える方法では、食品の包装袋に用いるフィルムとして、前記[1]ポリアミド系フィルムで説明したフィルムを用いることができる。
【0092】
包装袋の製造方法
本発明の食品の包装袋に用いるフィルムを用いてピンホールの発生を抑える方法では、本発明のポリアミド系フィルムを用いて袋状に加工し、包装袋を製造する。
【0093】
本発明の包装袋にピンホールの発生を抑える方法では、食品の包装袋にフィルムを用い、その前記フィルムは、脂肪族ポリアミド及びポリエステル系エラストマーを含有するポリアミド層(第1の層)を少なくとも有するポリアミド系フィルムである。
【0094】
包装袋は、本発明のポリアミド系フィルムの片面にシーラントフィルムを積層したラミネートフィルムを用いて、自動充てん包装機等により成形し得ることができる。ポリアミド系フィルムを袋状に加工し、食品を自動包装する装置としては、特に限定されないが、横型ピロータイプ包装機、縦型ピロータイプ包装機、三方シール包装機、四方シール包装機、スティック包装機等を挙げることができる。
【0095】
ポリアミド系フィルムの詳細は前記の通りである。
【0096】
本発明の包装袋にピンホールの発生を抑える方法は、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装袋に対して、屈曲によるピンホールの発生を良好に抑えることができる。
【0097】
[4]ポリアミド系フィルムの効果
(1)耐突き刺し性(突き刺し強度)
本発明のポリアミド系フィルムの耐突刺し性は、突き刺し強度であり、後述の実施例に記載のように、JIS Z-1707(1997)に準拠した測定方法により評価する。本発明のポリアミド系フィルムでは、突刺し強度は、23℃の条件下、8.0N以上であることが好ましい。本発明のポリアミド系フィルムでは、突刺し強度は、-25℃の条件下、13.0N以上であることが好ましい。
【0098】
(2)耐衝撃性(衝撃強度)
本発明のポリアミド系フィルムの耐衝撃性は、衝撃強度であり、後述の実施例に記載のように、インパクトテスターを用いて評価する。本発明のポリアミド系フィルムでは、衝撃強度は、23℃の条件下、1.0J以上であることが好ましい。本発明のポリアミド系フィルムでは、衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上であることが好ましい。
【0099】
本発明のポリアミド系フィルムは、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装用としても、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れ、且つ、優れた耐突刺し性を示すことができる。本発明のポリアミド系フィルムは、延伸性に優れておりフィルムの延伸破断はほとんど生じない。本発明のポリアミド系フィルムは、重量物の包装、取り分け、餅、ウィンナー等の食品の包装等に好適であり、それら食品の低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適に用いることができる。
【0100】
(3)耐屈曲性(屈曲による耐ピンホール性)
本発明のポリアミド系フィルムの耐屈曲性は、屈曲による耐ピンホール性であり、後述の実施例に記載のように、ゲルボフレックステスターを用いて評価する。本発明のポリアミド系フィルムでは、サンプル300cm2を用いて、5℃の条件下、1,000回屈曲後に発生するピンホール数は3個以下であることが好ましい。本発明のポリアミド系フィルムでは、-5℃の条件下では、発生するピンホール数は7個以下であることが好ましい。本発明のポリアミド系フィルムでは、-25℃の条件下では、発生するピンホール数は25個以下であることが好ましい。
【実施例
【0101】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0102】
(1)ポリアミド系フィルムの原料
脂肪族ポリアミド1:ナイロン6、相対粘度3.4
脂肪族ポリアミド2:ナイロン6、相対粘度4.1
脂肪族ポリアミド3:ナイロン6、相対粘度4.0
ポリエステル系エラストマー:無水マレイン酸変性ポリエステル系エラストマー
(三菱ケミカル社製 ティファブロック)
【0103】
(2)ポリアミド系フィルムの製造
前記原料を用い、表に示した配合により、各ポリアミド層を形成するための樹脂組成物を調製した。これら樹脂組成物には、表に示した配合に加え、最外層となる層(表層及び裏層)には、アンチブロッキング剤として平均粒子径3μmのシリカを900ppm、滑剤としてエチレンビスステアリン酸アミドを300ppm添加した。
【0104】
各ポリアミド層を構成する樹脂組成物を、250℃の押出機に供給し、表層/中間層/裏層の順序になるように、250℃のTダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しして、フラット状のポリアミド層3層のポリアミド系フィルムを得た。
【0105】
前記表層/中間層/裏層の層構成では、実施例1及び2の通り、表層及び裏層が第1の層の場合、中間層は第2の層である。
【0106】
前記表層/中間層/裏層の層構成では、実施例3及び4の通り、表層及び裏層が第2の層の場合、中間層は第1の層である。
【0107】
このフィルムを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、更に同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して、厚さ15μmのポリアミド層3層のポリアミド系フィルムを得た。
【0108】
前記調製したポリアミド系フィルムを用いて、以下の評価を行った。
【0109】
(3)ポリアミド系フィルムの評価
(3-1)耐突刺し性
ポリアミド系フィルムの突刺し強度を、JIS Z-1707(1997)に準拠した測定方法により測定した。
【0110】
試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±5mmの速度で突刺し、針が貫通するまでの最大応力(突刺強度(N))を測定した。試験片の数は5個以上とし、平均値を求めて測定結果とした。
【0111】
突刺強度(23℃の条件下):強度は8.0N以上であると良好である。
【0112】
突刺強度(-25℃の条件下):強度は13.0N以上であると良好である。
【0113】
(3-2)耐衝撃性
ポリアミド系フィルムの衝撃強度(J)を、インパクトテスター((株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。
【0114】
衝撃強度(23℃の条件下):強度は、0.9J以上であると良好であり、1.0J以上であるとより良好である。
【0115】
衝撃強度(-25℃の条件下):強度は、0.3J以上であると良好であり、0.5J以上であるとより良好である。
【0116】
(3-3)耐屈曲性
ポリアミド系フィルムの屈曲による耐ピンホール性を、理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。
【0117】
折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を5℃、-5℃及び-25℃の条件下で試験速度40回/分にて1,000回繰り返した後、夫々浸透液を用いてピンホールの数を調べた。ピンホール数の測定はサンプルの中央部における300cm2の箇所で行った。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、平均値を測定結果とした。
【0118】
耐屈曲性(5℃の条件下):ピンホール数は、5個以下であると良好であり、3個以下であるとより良好である。
【0119】
耐屈曲性(-5℃の条件下):ピンホール数は、7個以下であると良好であり、5個以下であるとより良好である。
【0120】
耐屈曲性(-25℃の条件下):ピンホール数は、27個以下であると良好であり、25個以下であるとより良好である。
【0121】
(3-4)評価結果
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
本発明のポリアミド系フィルム(実施例)は、従来技術(比較例)と比べて、突き刺し強度及び衝撃強度を良好に維持しながらも、冷凍環境下での耐屈曲性は顕著に優れている。
【0125】
本発明のポリアミド系フィルムを用いると、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装用としても、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れ、且つ、優れた耐突刺し性を示した。本発明のポリアミド系フィルムを用いると、食品の包装、取り分け、水分を含む食品の包装等に好適であり、それら食品の低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適に用いることができると評価できた。