(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ケーブルクランプ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20240415BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20240415BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/06 A
F16L3/10 A
(21)【出願番号】P 2020010253
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】323012841
【氏名又は名称】東芝テリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 諒
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-177957(JP,A)
【文献】特開2011-208778(JP,A)
【文献】特開平08-126170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
F16B 2/06
F16L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの表面に、半円柱状の第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具と、
一つの表面に、半円柱状の第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具と、を有し、
前記第1金具は、前記第1ケーブル固定用溝に間隔をおいてさらに第3ケーブル固定用溝を有し、
前記第2金具は、前記第2ケーブル固定用溝に間隔をおいてさらに第4ケーブル固定用
溝を有し、
前記第1ケーブル固定用溝および前記第2ケーブル固定用溝は、ねじ加工により形成されたねじ溝構造の一部を備え、
前記第3ケーブル固定用溝および前記第4ケーブル固定用溝は、ねじ加工により形成されたねじ溝構造の一部を備え、
前記第1金具の前記一つの表面における前記第1ケーブル固定用溝の深さと、前記第3
ケーブル固定用溝の深さとは異なり、
前記第2金具の前記一つの表面における前記第2ケーブル固定用溝の深さと、前記第4
ケーブル固定用溝の深さとは異なり、
前記第1ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固定用溝が向かい合い、かつ前記第3ケーブル固定用溝と前記第4ケーブル固定用溝が向かい合う第1の状態か、又は前記第1ケーブル固定用溝と前記第4ケーブル固定用溝が向かい合い、かつ前記第3ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固定用溝が向かい合う第2の状態とのいずれか一方の状態で前記第
1金具と前記第2金具を組み合わせる機構を備える、ケーブルクランプ装置。
【請求項2】
前記半円柱状とは、円柱を底面に垂直な面で切り取り、底面に平行な断面形状が半円または弓形である状態をいう、請求項1に記載のケーブルクランプ装置。
【請求項3】
前記ねじ溝構造の一部は、内径側の突出先端が台形となる形状である、請求項1から2
のいずれか1項に記載のケーブルクランプ装置。
【請求項4】
前記第1金具と前記第2金具を組み合わせる機構は、前記第1金具と前記第2金具が前
記合わせられた状態で、前記第1金具と前記第2金具に挟持力を与えるように、前記第1
金具と前記第2金具を互いに締め付ける締め付け具を備える、請求項1に記載のケーブル
クランプ装置。
【請求項5】
前記締め付け具は、前記第1金具の前記第1ケーブル固定用溝と前記第3ケーブル固定
用溝の間に形成された貫通穴と、前記第2金具の前記第2ケーブル固定用溝と前記第4ケーブル固定用溝の間に形成されて、前記貫通穴に対向したねじ穴と、前記貫通穴を通過し
て前記ねじ穴に螺合されるねじとを備
えている請求
項4記載のケーブルクランプ装置。
【請求項6】
一つの表面に、半円柱状の第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具と、一つの表面
に、半円柱状の第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具とを有するケーブルクランプ
装置の製造方法であって、
金属部材に対して穴を形成する工程と、
前記穴に軸方向へ螺旋を描くねじ溝を加工する工程と、
前記金属部材を、前記穴を分割する線上で切削して、前記第1ケーブル固定用溝が形成
された前記第1金具と前記第2ケーブル固定用溝が形成された前記第2金具を得る工程と、を備える、前記ケーブルクランプ装置の製造方法。
【請求項7】
一つの表面に、半円柱状の2つの第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具と、一つ
の表面に、半円柱状の2つの第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具とを有するケー
ブルクランプ装置の製造方法であって、
金属部材に対して隣り合う第1穴と第2穴を形成する工程と、
前記第1穴と前記第2穴に各々軸方向へ螺旋を描くねじ溝を加工する工程と、
前記金属部材を、前記第1穴と前記第2穴の中心を結ぶ線を横切りかつ前記第1穴と前
記第2穴を各々分割する線上で切削して、前記2つの第1ケーブル固定用溝が形成された
前記第1金具と前記2つの第2ケーブル固定用溝が形成された前記第2金具を得る工程と、を備える、前記ケーブルクランプ装置の製造方法。
【請求項8】
一つの表面に、半円柱状の第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具と、
一つの表面に、半円柱状の第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具と、を有し、
前記第1ケーブル固定用溝および前記第2ケーブル固定用溝は、ねじ加工により形成されたねじ溝の一部を備え、ここで、前記半円
柱状は、円柱を底面に垂直な面で切り取り、
底面に平行な断面形状が弓形の状態であり、前記第1ケーブル固定用溝の弓形と前記第2
ケーブル固定用溝の弓形とは1つの円形の一部に配列可能であって、
前記第1ケーブル固定用溝の前記表面からの深さと、前記第2ケーブル固定用溝の前記
表面からの深さとが異なり、且つ、前記第1ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固定用
溝とを直接対向させて合わせた場合、前記第1ケーブル固定用溝が有する一方の縁と他方
の縁との間の距離と前記第2ケーブル固定用溝が有する一方の縁と他方の縁との間の距離とが異なるように構成されており、
前記第1ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固定用溝が向かい合うように前記第1金
具と前記第2金具を合わせ、ケーブルを前記第1ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固
定用溝の中に挟み込み圧接可能な、ケーブルクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ケーブルクランプ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルクランプ装置は、ケーブルを有する装置全般に広く使用されている。例えば、監視カメラの一つである防爆カメラ装置では、接続されるケーブルを固定するために、ケーブルクランプ装置が使用されている。防爆カメラ装置は、石油化学プラントなどのような危険物が扱われる環境下で使用され、防爆カメラ装置が撮影した映像はケーブルを介してモニタ室、或いはネットワークを介してサーバ等に伝送される。
【0003】
ケーブルクランプ装置は、接続されたケーブルに強い引っ張り力が加わった場合でもケーブルを固定した状態を維持することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-537087号公報
【文献】特開2006-187107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態によると、ケーブルの引っ張り力に対する耐挟持強度を高く維持し得るケーブルクランプ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態のクランプ装置は、一つの表面に、半円柱状の第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具と、一つの表面に、半円柱状の第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具と、を有する。前記第1金具は、前記第1ケーブル固定用溝に間隔をおいてさらに第3ケーブル固定用溝を有し、前記第2金具は、前記第2ケーブル固定用溝に間隔をおいてさらに第4ケーブル固定用溝を有する。前記第1ケーブル固定用溝および前記第2ケーブル固定用溝は、ねじ加工により形成されたねじ溝構造の一部を備え、前記第3ケーブル固定用溝および前記第4ケーブル固定用溝は、ねじ加工により形成されたねじ溝構造の一部を備える。さらに、前記第1金具の前記一つの表面における前記第1ケーブル固定用溝の深さと、前記第3ケーブル固定用溝の深さとは異なり、前記第2金具の前記一つの表面における前記第2ケーブル固定用溝の深さと、前記第4ケーブル固定用溝の深さとは異なる。そして、前記第1ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固定用溝が向かい合い、かつ前記第3ケーブル固定用溝と前記第4ケーブル固定用溝が向かい合う第1の状態か、又は前記第1ケーブル固定用溝と前記第4ケーブル固定用溝が向かい合い、かつ前記第3ケーブル固定用溝と前記第2ケーブル固定用溝が向かい合う第2の状態とのいずれか一方の状態で前記第1金具と前記第2金具を組み合わせる機構を備える、構成である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】実施形態に係るケーブルクランプ装置の構成図および断面図。
【
図4】実施形態に係るケーブルクランプ装置の使用状態を説明する断面図。
【
図5】実施形態に係るケーブルクランプ装置の第1金具と第2金具が製造される工程を示す製造工程図(斜視図)。
【
図6】実施形態に係るケーブルクランプ装置の第1金具と第2金具が製造される工程を示す製造工程図(上面図)。
【
図7】実施形態に係るケーブルクランプ装置に用いられるブロックが切削カットされる様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、一実施形態が適用された防爆カメラ装置の外観図である。
図2は
図1の防爆カメラ装置の正面図と側面図である。防爆カメラ装置100は、円筒状の中央ケース101と、頭部ケース102、後部蓋104を有する。頭部ケース102の先頭開口部には、防曇ガラス103がはめ込まれている。
【0010】
後部蓋104の中央部の設けられた取り付け部には、ケーブル取出し口105を後部蓋104に固定するためのナット105が螺合されている。このナット105の内側の空間部には、これから説明するケーブルクランプ装置300が配置されている。
【0011】
図3(a)は、ケーブルクランプ装置300の一実施形態である。図において310は第1金具である、320は第2金具である。
【0012】
第1金具310は、厚さを持つ第1部材が加工されたものであり、この第1部材を正面から見た状態で対向する他方の表面(上側の表面)311と一方の表面(下側の表面)312のうち、前記一方の表面(下側の表面)312に対して間隔を置いてかつ表面から窪み、正面手前から後方へ向かってケーブル固定用溝H1と、ケーブル固定用溝H2とを形成している。ケーブル固定用溝H1とケーブル固定用溝H2は、それぞれ半円形状である。ここで、半円柱状とは、円柱を底面に垂直な面で切り取り、底面に平行な断面形状が半円または弓形である状態をいう。
【0013】
また前記ケーブル固定用溝H1とケーブル固定用溝H2の内面は、軸方向へ螺旋を描くねじ加工により形成されたねじ構造の一部R1,R2を備えている。このねじ構造の一部R1,R2は、内径側の突出先端が台形となる形状である。
【0014】
さらに前記他方の表面(上側の表面)311の中間部(溝と溝の間)から前記一方の表面312の中間部に向けて形成された貫通穴313を備える。
【0015】
上記第1金具310に対してペアとなる第2金具320が用意される。この第2金具310は、厚さを持つ第2部材を正面から見た状態で対向する一方の表面(上側の表面)323と他方の表面(下側の表面)324のうち、前記一方の表面(上側の表面)323に対して間隔を置いてかつ表面から窪み、正面手前から後方へ向かってケーブル固定用溝H3と、ケーブル固定用溝H4とを形成している。ケーブル固定用溝H3とケーブル固定用溝H4は、それぞれ半円形状であり、先のケーブル固定用溝H1とケーブル固定用溝H2に対向している。ここでも半円柱状とは、円柱を底面に垂直な面で切り取り、底面に平行な断面形状が半円または弓形である状態をいう。
【0016】
またケーブル固定用溝H3とケーブル固定用溝H4の内面も、軸方向へ螺旋を描くねじ加工により形成されたねじ構造の一部R3,R4を備えている。このねじ構造の一部R3,R4も、内径側の突出先端が台形となる形状であり、先鋭ではない。
【0017】
さらに一方の表面(上側の表面)323の中間部(溝と溝の間)から他方の表面(下側の表面)324の中間部に向けて厚み内に形成されたねじ穴325を備える。
【0018】
さらにまた、第1金具310の他方の表面(上側の表面)311は、他方の表面312側へ窪んだ曲面311Rを形成している。この曲面311Rに対して座金411が配置され、この座金411を利用してねじ412が貫通穴313を介してねじ穴325に螺合される。座金411の曲面311Rに対向する面も曲面311Rに適合するように、湾曲して形成されている。
【0019】
これにより、第1金具310と第2金具320とは、ねじ412により締め付け固定されることが可能である。第1金具310と第2金具320は、対となり、ケーブル固定用溝H1-H4によりケーブル200を挟持することができる。
【0020】
上記の構成において、第1金具310には、ケーブル固定用溝H1とケーブル固定用溝H2が間隔を置いて、それぞれ窪んで形成されている。また第2金具320には、ケーブル固定用溝H3とケーブル固定用溝H4が間隔を置いて、それぞれ窪んで形成されている。
【0021】
この場合、各溝H1~H4の各窪みの深さの組合せパターンは種々の組合せパターンが可能である。全ての溝H1~H4の窪みの深さが同じであってもよいし、それぞれが異なってもよい。或いは、同じ深さの溝が2つずつ組み合わされてもよい。さらにまた、例えば溝H1とH3が間隔を置いて対向した場合、第1円が形成され、また溝H2とH4が間隔を置いて対向した場合、第2円が形成されるが、第1円と第2円の中心は、表面311側と表面324側にずれて(オフセットして)いてもよい(詳細は
図5、
図6で詳述する)。
【0022】
図3(b)は、上記したケーブルクランプ装置300の構造の効果を説明するために取り出した説明図である。図では、ケーブル固定用溝H1の部分を取り出して示している。今、ケーブル固定用溝H1の軸方向へ、ケーブル200を強力に引く力F1が作用したとする。すると本装置は、ケーブル200から第1金具310に作用する軸方向の力F1は、力f2、f3方向へ分散される。これは、ケーブル固定用溝H1の内周面に軸方向へ螺旋を描くねじ構造の一部R1,R3が形成されているからである。ねじ構造の一部R1,R3の傾斜があるために、力F1を分散させることになり、結果的にケーブルを引っ張る力のすべてが、クランプ装置300のみに直接に集中して係ることが防止される。つまり、力F1が分散されることなく、常に、力F1の100%がクランプ装置300に係ることがない。もし、力F1が分散されることなく、力F1の100%がクランプ装置300に加わると、ケーブルの軸方向へのずれ、ケーブルの引き抜け、さらには、クランプ装置300を保持する保持部材への直接的な影響があり、装置全体の故障や耐久性の劣化を生じやすくなる。本クランプ装置であると、ケーブルの軸方向へのずれ、ケーブルの引き抜け、故障や耐久性の劣化が軽減される。
【0023】
また、このねじ構造の一部R1~R4は、内径側の突出先端が台形となる形状である。このために、ねじ構造により、例えばアクリル製のケーブル被覆に傷をつけにくい。そのために、ケーブルの締め付け強度を更に強化し、ケーブル保持力も更に向上することができる。
【0024】
なお、上記の実施形態によれば、第1金具310と第2金具320により2本のケーブルを挟持可能としているが、1本のケーブルだけを挟持する装置であってもよい。その場合は、第1金具310に1つのケーブル固定用溝が形成され、第2の金具320に1つのケーブル固定用溝が形成された装置である。このような構成であっても上記した効果を得られることは勿論である。この場合、第1金具310と第2金具320を一体に締め付ける構造は、上記実施形態に限らず各種の実施形態が可能である。例えば、第1金具310と第2金具320の中央(ねじ412が位置する部分)にケーブル固定用溝を設け、その左右(溝H1,H3と溝H2,H4が位置する部分)にねじによる締め付け部分を構成すればよい。
【0025】
図4(a)から
図4(d)は、さらに本ケーブルクランプ装置300の使用状態の例を説明するために示した図である。
図4(a)の例は、第1金具310に形成されている他方の表面312のケーブル固定用溝H1に対し、第2金具320の一方の表面(上側の表面)323の溝H4が対向し、ケーブル固定用溝H2に対し、第2金具320の一方の表面(上側の表面)323の溝H3が対向した状態である。そして、ケーブル固定用溝H1と溝H4でケーブル200aが挟持され、ケーブル固定用溝H2と溝H3では、ケーブル200bが挟持された様子を示している。当然この場合、ねじ412は、座金411を介して第1金具310と第2金具320を締め付けて、これに伴いケーブル200a、200bを挟持している。なおケーブル200a、200bは、
図1に示す外装ケーブル200内に敷設される。
【0026】
上記した状態では、窪みが深いケーブル固定用溝H1と第4溝H4とは、径が太いケーブル200aを挟持し、窪みが浅いケーブル固定用溝H2と第3溝H3とは、径の小さいケーブル200bを挟持することができる。
【0027】
図4(b)は、
図4(a)の断面図である。
図4(b)においては、500は、ケーブル通線金具であり、ケーブルが通過する部分は軸方向へ穴が設けられパッキン712が配置され、穴とケーブルとの隙間が埋められている。このケーブル通線金具500は、蓋104の筒状の軸受け部104aに対して、軸方向へ挿入されている。この場合、ケーブル通線金具500は、自由に回転しないように蓋104の軸受け部104aの爪104bと係合している。
【0028】
また、ケーブル通線金具500は、クランプ装置300の第1金具310と第2金具320が接触する面に、第1金具310と第2金具320が嵌まり込むように係合部501を形成している。これにより、クランプ装置300の全体が軸を中心に回転するのを規制している。
【0029】
また、蓋104の筒部104の外周に形成されたねじ部に、ナット105が螺合される。これにより、クランプ装置300は緩衝パッキン713を介してナット105の一部により押圧され、配置状態が安定する。
【0030】
図4(c)は、第1金具310のケーブル固定用溝H1に対し、第2金具320の第3溝H3が対向させられて、ケーブル固定用溝H2に対し、第2金具320の第4溝H4が対向された状態である。このように本装置の場合は、ケーブル200c、200dの径の太さに応じて、効果的に挟持できる溝を組合せて使用することができる。このときに、第1金具310の第2金具320に対する傾きが変化しても、座金411と曲面311Rは自在にフィットして、ねじ412による第1金具310と第2金具320との締め付け固定が可能となる。
【0031】
なお、この実施形態では、第1金具310と第2金具320とを締め付ける締め付け手段は、ねじ412が貫通穴313を貫通してねじ穴325に螺合される構成である。この実施形態に図示した締め付け手段は、シンプルで安価に実施できる構造である。しかし締め付け手段は、このような構成に限定されるものではなく、種々の形態が可能である。例えば第1金具310の他方の面311を上あご部材で噛み、第2金具320の他方の面324を下あご部材で噛み、第1金具310と第2金具320とをかみしめる構造の締め付け手段であってもよいし、複数の締め付け手段を用いてもよい。
【0032】
この実施形態の構造は、太さ(径)の異なる複数のケーブルを挟持するために好都合な構造である。
図4(a)は、第1金具310のケーブル固定用溝H1(窪みの深い溝)、H2(窪みの浅い)に対して、第2金具320のケーブル固定用溝H4(窪みの深い溝)、H3(窪みの浅い溝)がそれぞれ対向する関係を示しているが、
図4(n)は、第1金具310のケーブル固定用溝H1(窪みの深い溝)、H2(窪みの浅い溝)に対して、第2金具320のケーブル固定用溝H4(窪みの浅い溝)、H3(窪みの深い溝)がそれぞれ対向する関係を示している。このように金具の向きを変えることにより、ケーブルを挟むのに好都合な深さの溝を組み合わせて使用することが可能であり、このケーブルクランプ装置は、融通性があり使い買ってが良く、利用価値が高い。
【0033】
図4(d)は、ケーブル通線金具500を正面から見た図であり、一定径のケーブル通線穴511、512を有し、また、その奥にケーブルの太さに応じて内径が可変されるパッキン711、712が配置可能となっている。
【0034】
上記の構成により、第1の形態の効果に加えて、様々な径のケーブルのクランプに利用でき使い勝手が良く、ケーブルの被覆に傷を付け難く引っ張り強度を強化できることになる。
【0035】
図5(a)~
図5(d)と、
図6(a)~
図6(c)は、上記第1金具310と第2金具320が製造される工程の一例を示す説明図である。
図5(a)~
図5(d)と、
図6(a)~
図6(c)は、
図3で示した第1金具310と第2金具320の裏表の関係を逆に示している。
【0036】
図5(a)は、第1金具310と第2金具320が加工される前の第1部材と第2部材が一体の状態であり、金属の加工前の金属部材390を示している。金属部材390は、例えば長辺39a、39b、短辺39c、39dを有した矩形状のブロックである。加工前部材390は、説明を分かり易くするために、厚みを有する平板状で示しているが、必ずしもこのような形状に限定されるものではない。また長辺、短辺の関係もこのような関係である必要はない。さらにまた、説明では、1つのクランプ装置300を製造する例を説明するが、1つに限定されるものではなく、同時に複数のクランプ装置300が量産されてもよい。
【0037】
今、金属部材390の短辺39cと短辺39dの中間を結ぶ線L1で区分される2つの部分の一方側部分と他方側部分に間隔をおいて対称的に中心位置c1、c2が位置決めされる(
図5(a))。そして、この中心位置c1、c2を中心として円形穴H1H3と、H2H4が厚み方向へ形成される(
図5(b))。この円形穴H1H3と、H2H4は、穴形成用ドリルにより形成される。次に、前記円形穴H1H3と、H2H4の内壁面に対して、溝形成用ドリルにより溝が形成される。この場合、穴形成用ドリルの径と、溝形成用ドリルの歯の高さの選択により、溝の山の先端部が台形となるように形成される。台形の上辺の長さは、溝形成用ドリルの歯の高さの選択により選定可能である(
図5(c))。次に、前記線L1方向へ幅を持ってエンドミルによる切断が実施され、第1金具310と第2金具320が略出来上がる(
図5(c))。
【0038】
上記のように構成される第1金具310、第2金具320によれば、窪みの深い溝H1,H4、窪みの浅い溝H3,H2を同時に形成することができる。この構成によると、
図4で説明したように溝H1―H4の組み合わせにより、使用するケーブルの径に応じて種々対応が可能である。使用する2本のケーブルの径が2本とも太く同じの場合、使用する2本のケーブルの径が、一方は小さく、他方が太い場合である(
図4(b)(c)の例)。
【0039】
図6は、上記の金属部材390が加工される様子を、正面からみて平面的に示している。
図6(a)は
図5(b)の段階の状態を示している。金属部材390の短辺39cと短辺39dの中間を結ぶ線L1で区分される2つの部分の一方側部分と他方側部分に間隔をおいて対称的に中心位置c1、c2が位置決めされている。
図6(b)は
図5(c)の段階の状態を示している。この状態において、金属部材390の線L1を中心にして幅を持って(斜線で示す部分)、エンドミル900による切削カットが実施される。
図6(c)は
図5(d)の段階の状態を示している。この状態で、第1金具310と第2金具320が得られる。
【0040】
即ち、実施形態によると金属部材に対して隣り合う少なくとも第1の穴と第2穴を形成する工程と、前記第1の穴と前記第2の穴に軸方向へ螺旋を描くねじ溝を加工する工程とを備える。そして前記金属部材をさらに加工するに際して、前記第1の穴と第2の穴の中心を結ぶ線を横切りかつ前記第1の穴と前記第2の穴をそれぞれ分割する太線上で切削して、前記第1の2つのケーブル固定用溝が形成された前記第1金具と前記第2の2つのケーブル固定用溝が形成された前記第2金具を得る工程を備える。
【0041】
図7(a)、
図7(b)は、金属部材390がエンドミル900により切削カットされる様子を示している。
上記したように第1の形態によると、第1金具310、第2金具320を有する。基本的には、一つの表面に、半円柱状の第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具310と、一つの表面に、半円柱状の第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具320とを有する。ここで、第1ケーブル固定用溝および第2ケーブル固定用溝は、ねじ加工により形成されたねじ構造の一部を備える。そして、第1ケーブル固定用溝と第2ケーブル固定用溝が向かい合うように第1金具310と第2金具320を合わさり、ケーブルを第1ケーブル固定用溝と第2ケーブル固定用溝の中に挟み込み圧接固定する構造である。ここで前記半円柱状とは、円柱を底面に垂直な面で切り取り、底面に平行な断面形状が半円または弓形である状態をいう。
【0042】
なお上記の実施形態では、一つの表面に、半円柱状の第1の2つのケーブル固定用溝が形成された第1金具と、一つの表面に、半円柱状の第2の2つのケーブル固定用溝が形成された第2金具とを有するケーブルクランプ装置の製造方法を説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、一つの表面に、半円柱状の第1ケーブル固定用溝が形成された第1金具と、一つの表面に、半円柱状の第2ケーブル固定用溝が形成された第2金具とを有するケーブルクランプ装置の製造方法であって、前記金属部材を、前記穴を分割する線上で切削して、前記第1ケーブル固定用溝が形成された前記第1金具と前記第2ケーブル固定用溝が形成された前記第2金具を得る工程と、を備える製造方法であってもよい。その効果は、
図3(b)で説明した通りである。即ち、1本のケーブルをクランプするクランプ装置であってもよい。
【0043】
以上詳述した少なくとも一つの実施形態によれば、ねじ溝構造のケーブル挟持部を有することにより、ケーブルの引っ張り力に対する耐強度を高くすることができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらにまた、請求項の各構成要素において、構成要素を分割して表現した場合、或いは複数を合わせて表現した場合、或いはこれらを組み合わせて表現した場合であっても本発明の範疇である。また、複数の実施形態を組み合わせてもよく、この組み合わせで構成される実施例も発明の範疇である。
【0045】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
100・・・防爆装置、200・・・ケーブル、300・・・ケーブルクランプ装置、310・・・第1金具、320・・・第2金具、311・・・他方の表面、312・・・一方の表面、323・・・一方の表面、324・・・他方の表面、H1~H4・・・ケーブル固定用溝、R1~R4・・・ねじ構造の一部、313・・・貫通穴、325・・・ねじ穴、311R・・・曲面、390・・・金属部材、411・・・座金、412・・・ねじ。