(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】圧縮空気システム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240415BHJP
B64D 13/02 20060101ALI20240415BHJP
F04B 49/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F04B49/06 341H
B64D13/02
F04B49/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020012427
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・エー・アトキー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・ジー・マッキン
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤル・イー・ボッグス
(72)【発明者】
【氏名】ホサム・イー・エル-ガバラウィ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0268430(US,A1)
【文献】米国特許第09810158(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/00
F04B 49/06
B64D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機システム(100)によって生成されて空気圧システム(12)に送られる圧縮空気(102)を制御するための方法であって、前記方法が、
プラットフォーム内の複数の空気圧システム(12)の各々についての性能要求(132)のセットを取得するステップであって、前記性能要求(132)が前記空気圧システム(12)の各々に供給される前記圧縮空気(102)の
、前記空気圧システム(12)によって必要とされる圧力、流量及び/または温度を示
し、当該ステップが前記複数の空気圧システム(12)の各々についての最大空気圧、最大空気流量、および最低気温のうちの少なくとも1つを特定するステップを含む、ステップと、
前記空気圧システム(12)に圧縮空気(102)を供給するように構成された可変速空気圧縮機(110)の最高許容圧縮機空気吐出温度限界(138)を特定するステップと、
前記特定された最大空気圧の中から最大空気圧(400)を選択するステップと、
前記特定された最低気温の中から最低気温(404)を選択するステップと、
前記可変速空気圧縮機(110)を前記最高許容圧縮機空気吐出温度限界(138)未満で動作させながら、前記空気圧システム(12)のうちの少なくとも1つについての取得された性能要求(132)を満たすために前記空気圧システム(12)に前記圧縮空気(102)を供給するよう前記可変速空気圧縮機(110)の速度を制御するステップ
であって、前記選択された最大空気圧(400)および前記最低気温(404)を満たすように、前記空気圧システム(12)のうちの少なくとも1つに前記圧縮空気(102)を供給するよう前記可変速空気圧縮機(110)の動作を制御する、ステップと
、
を含む、方法。
【請求項2】
取得された性能要求(132)と特定された最高許容圧縮機空気吐出温度限界(138)とに基づいて前記可変速空気圧縮機(110)をピーク効率で動作させるための所望の圧縮機動作マップポイント(908)を特定するステップと、
ピーク効率および所定のサージマージン(48)での前記圧縮機動作マップポイント(908)を達成するように、前記可変速空気圧縮機(110)の形状(208)を制御するステップと
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可変速空気圧縮機(110)が圧縮機サージ条件で動作するのを抑制しながら、前記特定された圧縮機動作マップポイント(908)で前記空気圧システム(12)に前記圧縮空気(102)を供給するようサージ逃し弁(162)を制御するステップをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定された圧縮機動作マップポイント(908)で前記空気圧システム(12)に前記圧縮空気(102)を供給するよう熱サージ制御弁(160)を制御し、前記可変速空気圧縮機(110)が圧縮機サージ条件で動作するのを抑制し、前記可変速空気圧縮機(110)を前記最高許容圧縮機空気吐出温度限界(138)未満で動作させるステップをさらに含む、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記可変速空気圧縮機(110)が、前記可変速空気圧縮機(110)の入力または出力のどちらかに位置決めされた複数の調整可能な羽根(210)を含み、前記方法が、前記動作マップポイント(908)を達成するように、前記調整可能な羽根(210)の角度を変更するステップをさらに含む、
請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧縮空気(102)の温度を前記最高許容圧縮機空気吐出温度限界(138)未満に維持するように、ファン空気弁(166)を制御するステップをさらに含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記空気圧システム(12)が空調パック(30、32)を含み、前記方法が、
空調パック要求が前記性能要求(132)の中から最大空気圧(400)として選択された場合、空調パックの流量制御弁(182、189)を全開に位置決めするステップと、
前記空調パック要求が前記最大空気圧(400)として選択されなかった場合、前記空調パック(30、32)に供給される圧縮空気流量を調節するように、前記空調パックの流量制御弁(182、189)の位置を調節するステップとをさらに含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの圧縮機条件を監視するステップであって、前記少なくとも1つの圧縮機条件が、前記可変速空気圧縮機(110)の圧縮機速度、圧縮機入口圧力、圧縮機出口圧力、圧縮機出口温度、および流量のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、
監視された圧縮機条件に基づいて前記可変速空気圧縮機(110)の速度または形状(208)、サージ逃し弁(162)、熱サージ制御弁(160)、およびファン空気弁(166)のうちの少なくとも1つを制御するステップと
をさらに含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
最小所望空気マニホールド圧力を特定するステップと、
前記空気圧システム(12)の大部分または全部が動作していない場合のように前記空気圧システム(12)の性能要求(132)が低い場合、前記特定された最小所望マニホールド圧力を維持するようにサージ逃し弁(162)を制御するステップと
をさらに含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラットフォームが複数の前記圧縮機システムを備え、
前記空気圧システムの性能要求(132)が低く、1つの
みの前記圧縮機システムを動作
させる必要
がある場合、
他の前記圧縮機システ
ムを遮断するステップをさらに含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮機システムが遮断された場合、圧縮機速度をゼロrpmに制御し、出口遮断弁を閉じるステップをさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に航空機に関し、特に、航空機の空気圧システムのための圧縮空気の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機では、多くの空気圧システムが圧縮空気を使用して動作する。圧縮空気は、多くの場合、航空機エンジンから引き出された抽気から得られる。スロットルが航空機エンジンによって生成されるスラストを制御し、スラストは抽気の圧力および流量に影響を与える。そのため、空気圧システムに供給される圧縮空気の流量および圧力は、航空機エンジンのスロットル位置の関数である。
【0003】
しかしながら、特定のスロットル設定で航空機エンジンから吐出される抽気は、空気圧システムの要求を満たさない場合がある。この問題の解決策の1つは、スロットルを再配置して、航空機エンジンの飛行アイドルスラストまたは地上アイドルスラストを調整することである。しかしながら、飛行アイドルスラストまたは地上アイドルスラストの調整には、非効率性と制限がある。
【0004】
逆に、特定のスロットル設定で航空機エンジンから吐出される抽気は、空気圧システムの要求を超える場合がある。このような条件は、空気圧システムの要求を満たすために必要な動力よりも高いエンジンからの動力抽出を表す。この過剰な動力抽出は、不必要な燃料燃焼を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上述した問題の少なくともいくつか、および他の起こり得る問題を考慮に入れた方法および装置があれば望ましいはずである。例えば、圧縮空気を所望のレベルの効率で空気圧システムに供給することに関する技術的問題を克服する方法およびシステムがあれば望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの特徴および機能を本開示の様々な実施形態において別々に達成することができ、またはこれらの特徴および機能は、以下の説明および図面を参照してさらなる詳細が理解され得る他の実施形態において組み合わされてもよい。
【0007】
本開示による主題の一例は、空気圧システムに送られる圧縮空気を制御するための方法である。本方法は、プラットフォーム内の複数の空気圧システムの各々についての性能要求のセットを取得するステップであって、性能要求が空気圧システムの各々に供給される圧縮空気の必要を指示する、ステップと、空気圧システムに圧縮空気を供給するように構成された可変速空気圧縮機の最高許容空気吐出温度限界を特定するステップと、圧縮機の動作を、圧縮機を最高許容空気吐出温度限界未満で動作させながら空気圧システムのうちの少なくとも1つについての取得された性能要求を満たすために空気圧システムに圧縮空気を供給するよう制御するステップと、を含む。
【0008】
例示的な実施形態に特徴的であると考えられる特徴は添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施形態、ならびにその好ましい使用モード、さらなる目的および特徴は、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照すれば最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な実施形態による圧縮空気環境の図である。
【
図2】例示的な実施形態による可変速空気圧縮機の図である。
【
図3】例示的な実施形態による、空気圧システムに送られる圧縮空気を制御するためのプロセスを示すフローチャートである。
【
図4A】例示的な実施形態による圧縮機動作マップポイントの決定を示すブロック図である。
【
図4B】例示的な実施形態による圧縮機動作マップポイントの決定を示すブロック図である。
【
図5】例示的な実施形態による圧縮機動作マップポイントの動作パラメーターを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施形態は、航空機などのプラットフォーム内の空気圧システムに送られる圧縮空気を制御するための方法、システム、および装置を提供する。1つの実施例では、コントローラーは、複数の空気圧システムについての1つまたは複数の性能要求を特定するように構成されている。本明細書で使用される場合、性能要求とは、空気圧システムがピーク効率で動作できるようにするために空気圧システムによって必要とされる圧縮空気の最適な圧力、流量、および/または温度である。
【0011】
例示的な実施形態では、各空気圧システムは、性能要求のセットを満たす圧縮空気を必要とし得る。性能要求のセットは、単一の性能要求、2つの性能要求、または3つ以上の性能要求を含み得る。例えば、第1の空気圧システムは、空気圧システムがピーク効率で動作するために40ポンド/平方インチ(PSIA)、4ポンド/秒、および華氏200度(F)を超える気温で圧縮空気を受けることを必要とする性能要求のセットを有する場合がある。よって、第1の例示的な空気圧システムは、3つの性能要求、すなわち、(>40PSIA、>4ポンド/秒、および>200F)を含むセットを有する。第2の異なる空気圧システムは、2つの性能要求(>20PSIA、>3ポンド/秒、および>350F)を含む性能要求のセットを有し得る。特に、第2の空気圧システムは、ピーク効率で動作するために圧縮空気が20PSIAで、3ポンド/秒超で提供されることを必要とする。したがって性能要求は、各空気圧システムがそのピーク効率で動作できるようにする固有のパラメーターセットを示す。
【0012】
動作に際して、コントローラーは、航空機などのプラットフォーム内の複数の空気圧システムの各々についての性能要求のセットを取得する。コントローラーはまた、空気圧システムに圧縮空気を供給するように構成されている可変速空気圧縮機の最高許容空気吐出温度限界を特定する。次いでコントローラーは、空気圧システムから受け取られた性能要求と最高許容空気吐出温度限界を利用して可変速空気圧縮機の動作を制御する。特に、コントローラーは取得された情報を利用して、空気圧システムの各々に圧縮空気を供給すると同時に圧縮機が圧縮機の最高許容空気吐出温度限界未満で動作するようにする。
【0013】
例示的な実施形態では、コントローラーは、空気圧システムの性能要求に基づいて目標圧縮機動作マップポイントを決定する。コントローラーはまた、空気圧システムに圧縮空気を供給するように構成された可変速空気圧縮機の最高許容空気吐出温度限界を特定する。次いでコントローラーは、空気圧システムに圧縮空気を供給すると同時に圧縮機が最高許容空気吐出温度限界を超えないようにするために、目標マップポイントで圧縮機を動作させる。
【0014】
結果として、電気ベースの二次動力システムアーキテクチャと比較して、本実施形態は、電力システムおよび空調システムの複雑さを軽減することができる。エンジン抽気ベースの空気二次動力システムと比較して、本実施形態は、燃料消費量を削減し、最新の高バイパス比エンジン、航空機複合構造、および燃料システムとの容易な統合を促進することができる。
【0015】
次に各図を参照し、特に
図1を参照すると、例示的な実施形態による圧縮空気環境の図が示されている。この実施例では、圧縮空気環境10は、プラットフォーム14内の複数の空気圧システム12を含む。図示されているように、プラットフォーム14は航空機16の形態を取る。
【0016】
空気圧システム12は、圧縮空気を使用して動作するプラットフォーム14内の物理システムである。本例に示されているように、空気圧システム12は、左翼防氷装置(WAI)20、右翼防氷装置(WAI)22、左翼空気圧式油圧システム24、右翼空気圧式油圧システム26、左空調(L AC)パック30、右空調(R AC)パック32、飲料水ユニット40、補助動力ユニット(APU)42、貨物ヒーター44、第1の空気駆動式ポンプ(ADP)46、窒素生成システム(NGS)48、第2の空気駆動式ポンプ(ADP)50、および全大気温度プローブ(TAT)52のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
上述したように、空気圧システム12は、その効率的な動作を可能にするために、本明細書では性能要求と呼ばれる圧縮空気要件を有する。これらの性能要求は、プラットフォーム14の動作中に変化し得る。例えば、プラットフォーム14が航空機16の形態を取る場合、性能要求は、航空機16の飛行段階または他の種類の動作の少なくとも1つに応じて変化し得る。飛行段階は、静止地上、タキシング、離陸、初期上昇、エンルート、操縦、進入、降下、着陸、または航空機16の他の飛行段階のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0018】
動作に際して、マニホールド104を介して空気圧システム12に供給される圧縮空気102は、給気圧縮機システム100によって生成される。この実施例では、給気圧縮機システム100は、可変速空気圧縮機110と、空気圧システム12のための圧縮空気102を生成する際の可変速空気圧縮機110の動作を制御する圧縮機コントローラー112とを含む。特に、圧縮機コントローラー112は、空気圧システム12への圧縮空気102の供給を制御するように可変速空気圧縮機110を動作させる。
【0019】
圧縮機コントローラー112は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせとして実装され得る。ソフトウェアが使用される場合、圧縮機コントローラー112によって行われる動作は、プロセッサーユニットなどのハードウェア上で動作するように構成されたプログラムコードで実施され得る。ファームウェアが使用される場合、圧縮機コントローラー112によって行われる動作は、プログラムコードおよびデータで実施され、プロセッサーユニット上で動作する永続的メモリに格納され得る。ハードウェアが用いられる場合、ハードウェアは、圧縮機コントローラー112で動作を行うように動作する回路を含み得る。
【0020】
この実施例では、ハードウェアは、回路システム、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル・ロジック・デバイス、またはいくつかの動作を行うように構成された他の何らかの適切な種類のハードウェアのうちの少なくとも1つから選択された形態を取り得る。プログラマブル・ロジック・デバイスでは、デバイスはいくつかの動作を行うように構成され得る。デバイスは、後で再構成されてもよく、またはいくつかの動作を行うように永続的に構成されていてもよい。プログラマブル・ロジック・デバイスには、例えば、プログラマブル・ロジック・アレイ、プログラマブル・アレイ・ロジック、フィールド・プログラマブル・ロジック・アレイ、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ、および他の適切なハードウェアデバイスが含まれる。加えて、これらのプロセスは、無機構成要素と一体化された有機構成要素において実施されてもよく、人間を除く有機構成要素から完全に構成されてもよい。例えば、プロセスは有機半導体中の回路として実装されてもよい。
【0021】
図2は、例示的な実施形態による
図1に示される可変速空気圧縮機110の図である。この実施例では、可変速空気圧縮機110は、空気圧縮機200と変速機202とを含む。可変速空気圧縮機110は、航空機エンジン122から受け取られた空気121の圧力および/または流量を、空気圧システム12の性能要求を満たすよう変更するように構成されている。
【0022】
図示されているように、航空機エンジン122は、エンジンコア(高速スプール)204とエンジンファン214とを含む。変速機202は、シャフト206によってエンジンコア204に連結されている。エンジンコア204は、変速機202を介して空気圧縮機200に動力を提供する。例示的な実施形態では、変速機202は、アクセサリギアボックスがシャフト206を介して変速機202を駆動するよう構成されるように、エンジンコア204上のアクセサリギアボックスに結合され得る。他の例示的な実施形態では、変速機202は、エンジンファン214も駆動する低速スプール、または中間スプールに結合され、よって低速スプールによって駆動され得る。
【0023】
この実施例では、変速機202は、空気圧縮機200の速度203を調整するように構成されている。例えば、回転シャフト206がエンジンコア204と変速機202とを機械的に結合することができる。よって、シャフト206がエンジンコア204によって回転されると、動力が提供されて可変速空気圧縮機110を駆動/回転する。さらに別の実施例では、エンジンコア204以外の別の構成要素を介して変速機202に動力が提供され得る。例えば、エンジンコア204の代わりに、またはエンジンコア204に加えて、補助動力ユニット、または何らかの他の動力源が使用されてもよい。
【0024】
空気圧縮機200はまた、形状208も含む。形状208は、圧縮機出力圧力および/または圧縮機出力流量の少なくとも一方など、可変速空気圧縮機110内の1つまたは複数のパラメーターを調整するために変更され得る可変形状である。例えば、形状208は、羽根210の形態を取り得る。羽根210は、空気圧縮機200への入力(入口)または空気圧縮機200からの出力(出口)の少なくとも一方から選択された箇所に配置されている。この実施例では、羽根210は、可変速空気圧縮機110によって空気圧システム12に供給される圧縮空気102の圧力および/または流量を変えるために角度212を変更するように構成されている。さらに別の実施例では、形状208は、羽根210に加えて、または羽根210の代わりに他の形態を取り得る。例えば、調整可能な角度を有する羽根210に加えて、またはその代わりに可変ディフューザーも使用され得る。
【0025】
加えて、変速機202は圧縮機コントローラー112と通信している。変速機202の動作は、圧縮機コントローラー112によって制御される。形状208も圧縮機コントローラー112によって変更され得る。例えば、圧縮機コントローラー112は、羽根210の角度212を変更することができる。よって、圧縮機コントローラー112は、可変速空気圧縮機110の速度または可変速空気圧縮機110の形状208の少なくとも一方を制御して、可変速空気圧縮機110が空気圧システム12の性能要求を満たす圧縮空気102を供給できるようにする。
【0026】
再び
図1を参照すると、給気圧縮機システム100は予冷器140も含む。給気圧縮機システム100には、圧力センサー150、圧力センサー152、温度センサー154、および流量センサー156の形態のセンサーも存在する。給気圧縮機システム100は、熱サージ制御弁(HSCV)160、サージ逃し弁162、出口遮断弁164、およびファン空気弁(FAV)166の形態の弁も含む。
【0027】
動作に際して、圧力センサー152、温度センサー154、および流量センサー156は、空気圧縮機200の出力からライン170を通って流れる圧縮空気の圧力、温度、および流量をそれぞれ検出する。
【0028】
さらに、圧力センサー150は、図示の実施形態ではエンジンファン214に連結されているライン120を介して空気圧縮機200に入力される空気の圧力を検出する。例示的な実施形態では、空気圧縮機200に入力される空気は、ライン120を介してエンジンファン214から受け取られる。任意選択で、空気圧縮機200は、エンジンコア204(すなわち抽気)、任意の他の利用可能な空気圧システム、または周囲空気からの入力空気を受け取り得る。圧力センサー150は、圧縮機マップ上の、本明細書でマップポイントとも呼ばれる、圧縮機動作点を識別するために使用されるデータポイントのうちの1つを提供する。
【0029】
本明細書で使用される圧縮機マップは、例えば、特定の圧縮機の効率、質量流量範囲、ブースト圧能力、および/または回転速度を含み得る性能特性を記述するグラフである。例示的な圧縮機マップ900が
図5に示されている。加えて、本明細書で使用される「マップポイント」とは、圧縮機マップ上の動作点を指す。例えば、第1のマップポイントは、圧縮機によって生成されている現在または実際の圧力および/または流量を表し得る。一方、本明細書で目標マップポイントと呼ばれる第2のマップポイントは、空気圧システムのうちの少なくとも1つの性能要求を満たすために圧縮機が出力する必要がある圧力および/または流量を表し得る。一例として、ラベルまたは点908は、初期圧縮機動作マップポイントを表し、ラベルまたは点912は、目標圧縮機動作マップポイント136を表し得る。
【0030】
図5に示されるように、X軸902は補正された流量を表し、Y軸904は異なる圧縮機回転速度で動作する単一の圧縮機の圧力比を表す。線906は、異なる圧縮機速度で圧縮機によって達成され得る圧力と空気流との最大の組み合わせを表す。
【0031】
本例では、点908、点910、および点912は、圧縮機動作マップポイントである。点908は、航空機の空調システムからの要件を満たす海面での圧縮機動作マップポイントを表す。点910は、同じ空調システムの要件を満たす22,000フィート(6,705.6メートル)での圧縮機動作マップポイントを表す。点912は、航空機が巡航高度にあるときの空調システムの要件を満たす圧縮機動作マップポイントを表す。
【0032】
この実施例では、ライン906中の各ラインの中央で圧縮機を運転すると効率が向上する。図示されているように、流量の低減が圧縮機速度を下げることによってより効率的に行われ、流量の増加が圧縮機の速度を上げることによってより効率的に行われ得る。流量変化の大きさに応じて、入口案内羽根などの圧縮機形状を、圧縮機の形状の可変ディフューザー設定と共に変更することができる。
【0033】
再び
図1を参照すると、動作に際して、予冷器140は、空気圧縮機200から吐出され、ライン170を流れる圧縮空気の動作温度を下げるように動作する。例示的な実施形態では、ライン170を介して空気圧縮機200から吐出される圧縮空気の動作温度を下げるために冷却媒体としてファン吐出空気も使用される。動作に際して、ファン空気弁(FAV)166は、予冷器140に供給される冷却媒体(ファン空気)の量を制御する。より詳細には、例示的な実施形態では、ファン空気はエンジンファン回路から抽出され、予冷器140内の予冷器熱交換器のヒートシンクとして使用され、ライン170を流れる圧縮機出口空気流を冷却するために使用される。
【0034】
図示されているように、ライン172は、給気圧縮機システム100内のフィードバックループである。フィードバックループは、圧縮空気を空気圧縮機200にフィードバックし得る。このフィードバックは、圧縮空気の温度を上げるために、かつ/または流れを提供してサージ中の圧縮機の動作を回避するために行われ得る。この実施例では、熱サージ制御弁(HSCV)160がフィードバック・ループ・ライン172を制御する。熱サージ制御弁(HSCV)160は、圧縮機コントローラー112と通信している。サージ逃し弁162は、熱サージ制御弁(HSCV)160が十分な流量を提供できないか、または温度センサー154によって測定された圧縮機出口温度が過熱限界を超えるか、またはそれらの組み合わせが存在しており、サージ中の圧縮機の動作を回避するために追加の流量が必要である場合に空気を抜き取るように構成されている。
【0035】
図示されているように、出口遮断弁164は、予冷器140およびマニホールド104に連結されている。動作に際して、給気圧縮機システム100が動作しておらず、マニホールド104が補助動力ユニット(APU)42、第2のエンジン圧縮機システム(反対側の翼に搭載されたエンジン)、または外部空気圧空気源などの別の供給源によって加圧されている場合、遮断弁164は空気の逆流を防止する。マニホールド104は、圧縮空気102が複数の空気圧システム12に供給されることを可能にする複数の弁を含む。
【0036】
図示されているように、マニホールド104内の弁には、調節弁180、逆止弁181、調節弁182、遮断弁183、遮断弁184、調節弁185、調節弁186、逆止弁187、調節弁188、遮断弁189、調節弁190、調節弁191、調節弁192、遮断弁193、および逆止弁194が含まれる。調節弁185および調節ファン空気弁(FAV)166は、いくつかの実施例では遮断弁の形態を取り得る。動作に際して、複数の弁は、圧縮空気102が複数の空気圧システム12の各々に供給されることを可能にするために、開かれ、閉じられ、または調節される。特に、複数の弁は、複数の空気圧システム12の各々に供給される圧縮空気102が個々のシステムごとの個々の性能要求を満たすことができるように開かれ、閉じられ、または調節される。複数の弁のうちの1つまたは複数は、下流の漏れまたは破裂が検出されたときに閉じられるマニホールド隔離弁と呼ばれることがある。
【0037】
図3は、例示的な実施形態による、空気圧システムに送られる圧縮空気を制御するためのプロセス300のフローチャートである。プロセス300を、
図1にブロック形式で示されている圧縮空気環境10で実施することができる。例えば、プラットフォーム14内の給気圧縮機システム100による圧縮空気102の生成を制御するために、圧縮機コントローラー112において様々な動作を実施することができる。
【0038】
プロセス300はまず、プラットフォーム内の空気圧システム12の性能要求132(
図4Aおよび
図4Bに示されている)を特定する(動作302)。性能要求132は、空気圧システムのための圧縮空気の必要を指示する。
【0039】
図4Aおよび
図4Bに、空気圧、空気流、および/または温度を含み得る例示的な性能要求132を示す。上述したように、空気圧システム12のうちの1つまたは複数が性能要求132を生成する。さらに、性能要求は、空気圧システムがピーク効率で動作できるようにするために空気圧システムによって必要とされる圧縮空気の最適な圧力、流量、および/または温度である。例示的な実施形態では、空気圧システム12は、複数の性能要求を満たす圧縮空気を必要とし得る。よって、
図1に示される空気圧システム12の各々は、その特定の空気圧システムがピーク効率で動作するために必要とされる性能要求132のセットを有し得る。
【0040】
いくつかの空気圧システム12についての性能要求132が例示されているが、性能要求132はすべての空気圧システム12または一部分のみの空気圧システム12について生成され得ることを理解されたい。
【0041】
図示の実施形態では、性能要求132は、左翼防氷装置(WAI)20、左空調(L AC)パック30、および窒素生成システム(NGS)48について生成される。ブロックラベルNは、残りの空気圧システム12の一部または全部について生成され得る性能要求Na1~Na4を指定するために使用される。よって、図示の実施形態では、性能要求のセット20aは、左翼防氷装置(WAI)20から受け取られた性能要求を表し(同様の性能要求のセット20bが右翼防氷装置(WAI)22を表し)、性能要求のセット30aは、左空調(L AC)パック30から受け取られた性能要求を表し(同様の性能要求のセット30bが右空調(R AC)パック32を表し)、性能要求のセット48aは、窒素生成システム(NGS)48から受け取られた性能要求を表し、性能要求のセットNa1は、補助動力ユニット(APU)42から受け取られた性能要求を表し、性能要求のセットNa2は、左翼空気圧式油圧システム24から受け取られた性能要求を表し(同様の性能要求のセットNa2bは、右翼空気圧式油圧システム26を表し)、性能要求のセットNa3は、第1の空気駆動式ポンプ(ADP)46から受け取られた性能要求を表し(同様の性能要求のセットNa3bは、第2の空気駆動式ポンプ(ADP)50を表し)、性能要求のセットNa4は、貨物ヒーター44から受け取られた性能要求を表す。
【0042】
例示的な実施形態では、以下でより詳細に説明するように、最低気温404がこの実施例の任意選択の性能要求132である。温度に関しては、圧縮空気102の気温を、熱サージ制御弁(HSCV)160および/またはファン空気弁(FAV)166を調節することにより制御することができる。任意選択で、または熱サージ制御弁160および/もしくはファン空気弁166の使用に加えて、圧縮空気102の温度は、可変速空気圧縮機110のフィードバックシステム、可変速空気圧縮機110の出力に連結された予冷器140、または何らかの他の適切なデバイスもしくはシステムのうちの少なくとも1つを使用して調節されてもよい。
【0043】
空気圧システム12の各々が独自の固有の動作要件を有し、よって独自の性能要求132のセットも有することを理解されたい。よって、M個の空気圧システム12(Mは整数)が給気圧縮機システム100から圧縮空気を供給されている場合、圧縮機コントローラー112は、各それぞれの空気圧システム12から1つずつ、最大Mセットの性能要求132を受け取り得る。
【0044】
動作に際して、
図1にブロック形式で示されている空気圧システム12は、
図4Aおよび
図4Bに示されている性能要求132を、
図1にブロック形式で示されている圧縮機コントローラー112に、プラットフォームの動作中に動的に送ることができる。例えば、空気圧システム12の各々についての性能要求132は、空気圧システム12から圧縮機コントローラー112に送られる要求またはメッセージに含まれ得る。
【0045】
他の実施例では、性能要求132は事前に知られていてもよい。言い換えると、性能要求132は、空気圧システム12が圧縮機コントローラー112に性能要求132を送らなくてもよいように、空気圧システム12ついて事前決定され得る。圧縮機コントローラー112は、データベース139または他の何らかのデータ構造内の性能要求132を探し出し、どの性能要求132が使用されるべきかを決定することができる。
【0046】
例えば、航空機のフラップで使用される空気圧システムの圧力および空気流は、特定の飛行段階、操縦、または他の操作について事前に知られている場合がある。その特定の飛行段階、操縦、または他の操作が存在する場合には、その空気圧システムの性能要求132を、圧縮機コントローラー112に自動的に入力することができる。これらの性能要求は、様々な飛行段階、操縦、または他の操作が発生したときにコントローラー112が使用するために、ライブラリ、ファイル、または何らかの他のデータ構造に格納され得る。
【0047】
動作に際して、空気圧システム12内のコントローラー(図示されていない)は、給気圧縮機システム100内の圧縮機コントローラー112に送られる性能要求132を生成し得る。任意選択で、より複雑でないシステムでは、性能要求132は、コンピューターシステム130内のデータベース139に先験的情報として格納されていてもよい。さらに、これらの性能要求132を航空機の動作中に動的に生成することができる。他の実施例では、性能要求132は事前に知られており、飛行段階、行われている操縦、対気速度、および他の飛行因子などの飛行パラメーターに基づいて生成され得る。
【0048】
再び
図3を参照すると、プロセス300は次いで、性能要求132に基づいて圧縮機動作マップポイント136を決定する(動作304)。
【0049】
この実施例では、圧縮機コントローラー112は空気圧システム12と通信しており、空気圧システム12についての性能要求132を特定するように構成されている。圧縮機コントローラー112はまた、空気圧システム12から受け取られた性能要求132または上述した先験的情報に基づいて圧縮機動作マップポイント136を決定するようにも構成されている。
【0050】
再び
図4Aおよび
図4Bを参照すると、圧縮機コントローラー112は、M個の空気圧システム12から受け取られたMセットの性能要求132に基づいて、本明細書で目標マップポイント136とも呼ばれる単一の圧縮機動作マップポイント136を決定する。性能要求132に基づいて圧縮機動作マップポイント136を生成する際に、圧縮機コントローラー112は、圧縮機動作マップポイント136における圧縮機空気圧410として、受け取られた空気圧性能要求132の中から最大空気圧400を選択する。圧縮機コントローラー112はまた、圧縮機動作マップポイント136における圧縮機空気流412として、受け取られた空気流性能要求132の中から最大空気流402も選択する。さらに、圧縮機コントローラー112は、圧縮機動作マップポイント136における圧縮機気温414として、受け取られた気温性能要求132の中から最低気温404を選択する。
【0051】
結果として、圧縮機動作マップポイント136は、圧縮空気102が空気圧システム12のうちの少なくとも1つの必要を満たすための圧縮機空気圧410、圧縮機空気流412、および圧縮機気温414を指定することになる。
【0052】
再び
図3を参照すると、プロセス300は、圧縮機動作マップポイント136で圧縮空気102を空気圧システム12に供給するよう可変速空気圧縮機110の動作を制御する(動作306)。動作に際して、圧縮機コントローラー112は、可変速空気圧縮機110を所望の圧縮機動作マップポイント136で最高許容圧縮機空気吐出温度限界138未満に維持しながら空気圧システム12に圧縮空気102を供給するよう可変速空気圧縮機110の動作を制御するように構成されている。最高許容圧縮機空気吐出温度限界138は、燃料漏れゾーンの熱面燃料点火温度限界などの要件に基づいて事前決定され得る。材料限度および時間対温度の材料特性ノックダウンも、一部の飛行段階の最高温度限界に入力され得る。燃料点火限界は動的パラメーターではない。材料特性の限度(該当する場合)は、飛行段階とシステム動作状況とに基づく動的パラメーターであり得る。動作に際して、プロセスは、圧縮機動作マップポイント136で空気圧システム12に圧縮空気102を供給するよう可変速空気圧縮機110の速度203または可変速空気圧縮機110の形状208の少なくとも一方を制御する。
【0053】
さらに、性能要求132は、様々な動作モードで変化し得ることを理解されたい。図示されているように、これらの動作モードには、主動作モード、高過渡動作モード、および低要求動作モードが含まれ得る。
【0054】
例えば、圧縮空気環境10が主動作モードで動作しているとき、圧縮機コントローラー112は、左空調(L AC)パック30または右空調(R AC)パック32のどちらかの性能要求132を満たすよう可変速空気圧縮機110を動作させるように構成される。特に、圧縮機コントローラー112は、左空調パック流量制御弁(FCV)182または右空調パック流量制御弁(FCV)189のどちらかに信号を送り、全開に駆動され、可変速空気圧縮機110は左空調(L AC)パック30または右空調(R AC)パック32のどちらかの性能要求を満たすように動作する。左空調パック流量制御弁(FCV)182または右空調パック流量制御弁(FCV)189は、それぞれの空調コントローラーによって全開に制御され、給気圧縮機システム100は、所望のパック流量を達成するよう可変速空気圧縮機110の動作を制御する。例示的な実施形態では、運転時に、両方のパックFCV182および189が全開位置で動作し、可変速空気圧縮機110は、左空調(L AC)パック30と右空調(R AC)パック32両方の必要を同時に満たすように駆動している。
【0055】
主動作モードでは、その他の空気圧システム12、例えば左空調(L AC)パック30および/または右空調(R AC)パック32以外のシステムは、各々がそれぞれの性能要求を満たすようそれぞれの入口弁の動作を制御する。一例として、可変速空気圧縮機110が左空調(L AC)パック30の性能要求を満たすように動作しており、よって左空調(L AC)パック30への入口が完全に開いていると仮定すると、その性能要求が可変速空気圧縮機110によって直接満たされていない残りの空気圧システム12の入口弁は、独自の個々の性能要求を達成するよう調節される。特に、調節弁180は、左翼防氷装置(WAI)20への空気流を制御するよう動作し、逆止弁181は、左翼空気圧式油圧システム24のタンクへの空気流を制御するよう動作するなどである。この機能を、個々のユーザー・システム・コントローラーによって管理することができる。残りの空気圧システム12が所望の最小性能要求を達成できない場合、必要に応じて給気マニホールド圧力を上げることができる。このモードでは、特定の燃料消費量が削減される。
【0056】
高過渡要求モードは高圧縮機空気が要求される場合に行われ得る。この要求は、例えば、第1および第2の空気駆動式ポンプ(ADP)46、50の少なくとも一方から発せられ得る。このモードでは、圧縮機コントローラー112は、主要ユーザー、すなわち、左空調(L AC)パック30と右空調(R AC)パック32以外の空気圧システム12の要求を満たすために必要な給気マニホールドの圧力および温度を制御するよう可変速空気圧縮機110を動作させるように構成される。本例では、可変速空気圧縮機110は、第1および第2の空気駆動式ポンプ(ADP)46、50の少なくとも一方の性能要求を満たすように動作する。任意選択で、圧縮機コントローラー112は、空気圧システム12の要求を満たすために必要な給気マニホールドの圧力および温度を制御するよう可変速空気圧縮機110を動作させるように構成される。下流の空気圧システムの決定を、個々の給気コントローラーのうちの少なくとも1つによって、または個々の空気圧システム12から圧縮機コントローラー112への通信を介して管理することができる。この実施例では、左空調パック流量制御弁182および/または右空調パック流量制御弁189は、低減された流量レベルに調節される。この機能を、空調パックコントローラーによって管理することができる。
【0057】
低要求モードは、給気要求が低い場合である。例えば、給気要求が低くなり得るのは、左空調(L AC)パック30または右空調(R AC)パック32の一方がオフにされ、他の制御手段(速度、熱サージ制御弁(HSCV)、および可変形状など)が十分な圧縮機サージマージンを維持することができない場合である。この状況では、サージ逃し弁162が必要に応じて開かれるかまたは調節される。この機能を、圧縮機コントローラー112によって制御することができる。
【0058】
制御システムはまた、1つの給気圧縮機システム(ASCS)をオフにし、1つのエンジンの給気圧縮機システム(ASCS)のみを利用して給気マニホールドに供給し、ユーザーシステムの必要を満たしてもよい。図示されているように、この機能を、給気コントローラーまたは圧縮機コントローラーのうちの少なくとも1つによって管理することができる。例えば、制御システムは圧縮機を、圧縮機システム(ASCS)が遮断されると、圧縮機速度がゼロrpmになり、出口遮断弁164を閉じるように制御し得る。制御システムはまた、下流の漏れまたは破裂が検出された場合に、1つの圧縮機システム(ASCS)を遮断し、マニホールド隔離弁(上述したものなど)を閉じてもよい。
【0059】
1つの実施例では、所望のレベルの効率で空気圧システムに圧縮空気を供給することに関する技術的問題を克服する1つまたは複数の技術的解決策が存在する。結果として、1つまたは複数の技術的解決策により、航空機16などのプラットフォームの効率を高めるように空気圧システム12に圧縮空気102を供給する技術的効果が提供され得る。より具体的には、航空機エンジン122の効率が高まり得る。加えて、1つまたは複数の技術的解決策により、最大の圧力、空気流、温度、またはそれらの何らかの組み合わせを必要とする空気圧システムの性能要求132を満たす技術的効果も提供され得る。
【0060】
結果として、コンピューターシステム130は、コンピューターシステム130内の圧縮機コントローラー112が、望み通りに空気圧システム12の性能要求132を満たすように圧縮機動作マップポイント136で圧縮空気102を制御することを可能にする専用コンピューターシステムとして動作することになる。特に、圧縮機コントローラー112は、圧縮機コントローラー112のない現在利用可能な一般的なコンピューターシステムと比較して、コンピューターシステム130を専用のコンピューターシステムに変える。
【0061】
図1~
図4における圧縮空気環境10とこの環境内の様々な構成要素との例示は、例示的な実施形態が実施され得る方法に対する物理的制限やアーキテクチャ上の制限を意図したものではない。例示した構成要素に加えて、またはその代わりに他の構成要素が使用されてもよい。いくつかの構成要素が不要な場合もある。また、各ブロックはいくつかの機能要素を例示するために提示されている。これらのブロックのうちの1つまたは複数が、例示的な実施形態で実装される場合に結合され、分割され、または結合および分割して異なるブロックとされてもよい。
【0062】
実施例は航空機16に関して記載されているが、別の実施例が他の種類のプラットフォームに適用されてもよい。プラットフォーム14は、例えば、移動式プラットフォーム、固定式プラットフォーム、陸上構造、水中構造、および宇宙構造であり得る。より具体的には、プラットフォーム14は、水上艦船、タンク、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家、製造施設、建物、その他の適切なプラットフォームであり得る。
【0063】
いくつかの実施例では、空気圧システムについての性能要求は、様々な飛行段階について事前に知られている。結果として、空気圧システムから直接要求を受け取る必要がなくなる。代わりに、現在の飛行段階、操縦、またはその他の操作を、現在の飛行段階、操縦、またはその他の操作の間に動作する空気圧システムについてのどんな性能要求とも相関させないことを、空気圧システムについての性能要求を特定するために使用することができる。このようにして圧縮機動作マップポイントを決定することができる。さらに、圧縮機動作マップポイントを、同様に様々な飛行段階、操縦、またはその他の操作について事前に決定することができる。
【0064】
図1に示されているように、コンピューターシステム130は物理ハードウェアシステムであり、1つまたは複数のデータ処理システムを含む。コンピューターシステム130は、航空機16の航空用電子機器内の1つまたは複数のデータ処理システムを含み得る。複数のデータ処理システムが存在する場合、それらのデータ処理システムは通信媒体を使用して互いに通信する。通信媒体はネットワークであり得る。データ処理システムは、コンピューター、サーバーコンピューター、または何らかの他の適切なデータ処理システムのうちの少なくとも1つから選択され得る。
【0065】
よって、実施例では、可変速空気圧縮機のコントローラーは、プラットフォーム内の空気圧システムについての性能要求から適切な圧縮機動作マップポイントを決定するように構成されている。コントローラーは、可変速空気圧縮機の動作を、目標圧縮機動作マップポイントで圧縮空気を生成するよう制御する。この制御は、可変速空気圧縮機の速度または形状の少なくとも一方を制御することによって行われ得る。
【0066】
結果として、圧縮機の速度を変更して、圧力調節を必要としないように所望の圧力および流量を必要とするこの特定のシステムに圧縮空気が確実に供給されるようにすることができる。残りの空気圧システムは、弁機構を制御することによって所望の性能要求で圧縮空気を受け取ることができる。
【0067】
一般に、可変速空気圧縮機は、任意の所与の点で圧縮空気の最大圧力または流量の少なくとも一方を必要とする空気圧システムの必要を満たすと同時に残りのシステムが独自の必要のために圧縮空気を調節することも可能にすることができる。
【0068】
よって、1つまたは複数の実施例は、(特に着氷における)飛行アイドルスラストの改善を可能にし、高アイドル要件によって生じる飛行機の降下性能問題に対処し、特定の燃料消費量を削減し、地上アイドルを改善し、高アイドル要件によって生じる飛行機のグランドハンドリングおよびブレーキ摩耗の問題に対処し、着氷における最大連続スラストに起因するエンジンコアサイジングに対する衝撃を低減させ、空気圧システム設備の圧力および温度を低減させ、大規模な予冷器の必要(および関連付けられる重量、空間統合およびファンダクト性能への関連付けられる衝撃)をなくし、隣接した構造および設備への熱衝撃を低減させ、空間統合および材料選択の柔軟性を高め、断熱および遮蔽要件を低減させ、漏れ検出要件および関連付けられる脅威を低減させ、エンジン統合の柔軟性を高める(高スプール対低スプール馬力抽出)ことができる。
【0069】
様々な例示的な実施形態の説明は例示と説明のために提示されており、網羅的であることも開示された形態の実施形態に限定されることも意図されていない。様々な実施例は、動作または操作を行う構成要素を説明している。例示的な実施形態において、構成要素は記載された動作または操作を行うように構成され得る。例えば、構成要素は、実施例において構成要素によって行われるものとして記載されている動作または操作を行う能力をその構成要素に与える構造のための構成または設計を有し得る。
【0070】
さらに、本開示は以下の各項目に記載の実施形態を含む。
【0071】
項目1.空気圧システムに送られる圧縮空気を制御するための方法であって、方法が、
プラットフォーム内の複数の空気圧システムの各々についての性能要求のセットを取得するステップであって、性能要求が空気圧システムの各々に供給される圧縮空気の必要を指示する、ステップと、
空気圧システムに圧縮空気を供給するように構成された可変速空気圧縮機の最高許容圧縮機空気吐出温度限界を特定するステップと、
可変速空気圧縮機の動作を、可変速空気圧縮機を最高許容圧縮機空気吐出温度限界未満で動作させながら空気圧システムのうちの少なくとも1つについての取得された性能要求を満たすために空気圧システムに圧縮空気を供給するよう制御するステップとを含む、方法。
【0072】
項目2.複数の空気圧システムについての複数の性能要求を特定するステップが、複数の空気圧システムの各々についての最大空気圧、最大空気流量、および最低気温のうちの少なくとも1つを特定するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0073】
項目3.特定された最大空気圧の中から最大空気圧を選択するステップと、
特定された最低気温の中から最低気温を選択するステップと、
可変速空気圧縮機の動作を、選択された最大空気圧および最低気温を満たすために空気圧システムのうちの少なくとも1つに圧縮空気を供給するよう制御するステップと
をさらに含む、項目2に記載の方法。
【0074】
項目4.可変速圧縮機の速度を、所望の圧縮機システム出力圧力を満たすよう制御するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0075】
項目5.取得された性能要求と特定された最高許容圧縮機空気吐出温度限界とに基づいて可変速空気圧縮機をピーク効率で動作させるための所望の圧縮機動作マップポイントを特定するステップと、
可変速空気圧縮機の形状を、ピーク効率および所定のサージマージンでの圧縮機動作マップポイントを達成するよう制御するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
【0076】
項目6.サージ逃し弁を、圧縮機が圧縮機サージ条件で動作するのを抑制しながら特定された圧縮機動作マップポイントで空気圧システムに圧縮空気を供給するよう制御するステップをさらに含む、項目4に記載の方法。
【0077】
項目7.熱サージ制御弁を、特定された圧縮機動作マップポイントで空気圧システムに圧縮空気を供給するよう制御し、圧縮機が圧縮機サージ条件で動作するのを抑制し、圧縮機を最高許容空気吐出温度限界未満で動作させるステップをさらに含む、項目4に記載の方法。
【0078】
項目8.可変速空気圧縮機が、圧縮機の入力または出力のどちらかに位置決めされた複数の調整可能な羽根を含み、方法が、調整可能な羽根の角度を、動作マップポイントを達成するよう変更するステップをさらに含む、項目5に記載の方法。
【0079】
項目9.ファン空気弁を、圧縮空気の温度を最高許容空気吐出温度限界未満に維持するよう制御するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0080】
項目10.空気圧システムが空調パックを含み、方法が、
空調パック要求が性能要求の中から最大空気圧として選択された場合、空調パックの流量制御弁を全開に位置決めするステップと、
空調パック要求が最大空気圧として選択されなかった場合、空調パックの流量制御弁の位置を、空調パックに供給される圧縮空気流量を調節するよう調節するステップとをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0081】
項目11.空気圧システムが空調パックを含み、方法が、
空調パック要求が性能要求の中から最大空気圧として選択された場合、空調パックの流量制御弁を全開に位置決めするステップと、
残りの空気圧システムへの空気流量を調節するステップとをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0082】
項目12.少なくとも1つの圧縮機条件を監視するステップであって、少なくとも1つの圧縮機条件が、可変速空気圧縮機の圧縮機速度、圧縮機入口圧力、圧縮機出口圧力、圧縮機出口温度、および流量のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、
監視された圧縮機条件に基づいて可変速空気圧縮機の速度または形状、サージ逃し弁、熱サージ制御弁、およびファン空気弁のうちの少なくとも1つを制御するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
【0083】
項目13.最小所望空気マニホールド圧力を特定するステップと、
空気圧システムの大部分または全部が動作していない場合のように空気圧システムの性能要求が低い場合、サージ逃し弁を、特定された最小所望マニホールド圧力を維持するよう制御するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
【0084】
項目14.空気圧システムの性能要求が低く、1つの動作圧縮機システムがありさえすればよい場合、1つの圧縮機システムを遮断するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0085】
項目15.圧縮機システムが遮断された場合、圧縮機速度をゼロrpmに制御し、出口遮断弁を閉じるステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0086】
項目16.下流の漏れまたは破裂が検出された場合、1つの圧縮機システムを遮断し、マニホールド隔離弁を閉じるステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0087】
当業者には多くの改変形態および変形形態が明らかであろう。さらに、様々な例示的な実施形態は、他の所望の実施形態と比較して異なる特徴を提供する場合もある。選択された1つまたは複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の応用を最もよく説明し、当業者が、企図される特定の用途に適する様々な改変を伴った様々な実施形態について本開示を理解することを可能にするために選択され、説明されている。
【符号の説明】
【0088】
10 圧縮空気環境
12 空気圧システム
14 プラットフォーム
16 航空機
20 左翼防氷装置(WAI)
22 右翼防氷装置(WAI)
24 左翼空気圧式油圧システム
26 右翼空気圧式油圧システム
30 左空調(L AC)パック
32 右空調(R AC)パック
40 飲料水ユニット
42 補助動力ユニット(APU)
44 貨物ヒーター
46 第1の空気駆動式ポンプ(ADP)
48 窒素生成システム(NGS)
50 第2の空気駆動式ポンプ(ADP)
52 全大気温度プローブ(TAT)
100 給気圧縮機システム
102 圧縮空気
104 マニホールド
110 可変速空気圧縮機
112 圧縮機コントローラー
120 ライン
121 空気
122 航空機エンジン
130 コンピューターシステム
140 予冷器
150,152 圧力センサー
154 温度センサー
156 流量センサー
160 熱サージ制御弁(HSCV)
162 サージ逃し弁
164 出口遮断弁
200 空気圧縮機
202 変速機
203 速度
204 エンジンコア
206 回転シャフト
208 形状
210 羽根
212 角度
214 エンジンファン