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特許7471845撮像装置、レンズ鏡筒、及びプリント回路板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】撮像装置、レンズ鏡筒、及びプリント回路板
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20240415BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240415BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240415BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240415BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G03B17/02
G02B7/04 E
G02B7/02 E
H04N23/52
H01F27/06 103
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020023822
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021128288
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葉 文穎
(72)【発明者】
【氏名】増田 和則
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-021558(JP,A)
【文献】特開2015-225157(JP,A)
【文献】特開2019-159081(JP,A)
【文献】特開2011-138811(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110517868(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G02B 7/02 - 7/16
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
H01F 17/00 - 38/42
H05K 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置された撮像素子と、
前記筐体の内部に配置されたプリント配線板と、
前記プリント配線板に実装されたインダクタと、を備え、
前記インダクタは、
巻線部と、
前記巻線部から第1方向の一方側に引き出された一対の線部と、
前記第1方向と直交する第2方向に間隔をあけて配置され、前記一対の線部と接合された一対の電極と、を有し、
前記プリント配線板は、
前記一対の電極に接合された一対のパッドと、
前記一対のパッドから延出する一対の配線パターンと、を有し、
前記巻線部の巻き回される軸方向は、前記プリント配線板の、前記一対のパッドが設けられる面に垂直な方向であり、
前記一対の配線パターンの各々は、前記一対のパッドのうち対応するパッドにおける前記第1方向の他方側から前記第1方向の長さに対して3分の2の位置までの部分から延出している、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記一対の配線パターンのうち少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記第1方向の他方側の端から前記第1方向の長さに対して3分の1の位置までの部分から延出している、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記他方側の端から延出している、
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記少なくとも一方の配線パターンは、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に見て前記インダクタと重なる部分を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記一対のパッドの各々の前記第1方向の長さは、前記第2方向の長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記インダクタは、前記巻線部を囲う磁性コアを更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記インダクタを介して負荷に交流電流を供給する駆動回路を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像素子に結像する撮像光学系と、
前記撮像光学系を駆動する振動波モータと、
前記インダクタを介して前記振動波モータに交流電流を供給する駆動回路と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
レンズ筐体と、
前記レンズ筐体の内部に配置され、撮像素子に光を結像する撮像光学系と、
前記レンズ筐体の内部に配置されたプリント配線板と、
前記プリント配線板に実装されたインダクタと、を備え、
前記インダクタは、
巻線部と、
前記巻線部から第1方向の一方側に引き出された一対の線部と、
前記第1方向と直交する第2方向に間隔をあけて配置され、前記一対の線部と接合された一対の電極と、を有し、
前記プリント配線板は、
前記一対の電極に接合された一対のパッドと、
前記一対のパッドから延出する一対の配線パターンと、を有し、
前記巻線部の巻き回される軸方向は、前記プリント配線板の、前記一対のパッドが設けられる面に垂直な方向であり、
前記一対の配線パターンの各々は、前記一対のパッドのうち対応するパッドにおける前
記第1方向の他方側から前記第1方向の長さに対して3分の2の位置までの部分から延出している、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記一対の配線パターンのうち少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記第1方向の他方側の端から前記第1方向の長さに対して3分の1の位置までの部分から延出している、
ことを特徴とする請求項9に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記一対の配線パターンのうち少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記他方側の端に接続されている、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記他方側の端から前記第1方向の他方側に向かって延出し、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に見て前記インダクタと重なる部分を有する、
ことを特徴とする請求項11に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
前記一対のパッドの各々の前記第1方向の長さは、前記第2方向の長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項14】
前記インダクタは、前記巻線部を囲う磁性コアを更に有する、
ことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項15】
前記撮像光学系を駆動する振動波モータと、
前記インダクタを介して前記振動波モータに交流電流を供給する駆動回路と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項16】
プリント配線板と、
前記プリント配線板に実装されたインダクタと、を備え、
前記インダクタは、
巻線部と、
前記巻線部から第1方向の一方側に引き出された一対の線部と、
前記第1方向と直交する第2方向に間隔をあけて配置され、前記一対の線部と接合された一対の電極と、を有し、
前記プリント配線板は、
前記一対の電極に接合された一対のパッドと、
前記一対のパッドから延出する一対の配線パターンと、を有し、
前記巻線部の巻き回される軸方向は、前記プリント配線板の、前記一対のパッドが設けられる面に垂直な方向であり、
前記一対の配線パターンの各々は、前記一対のパッドのうち対応するパッドにおける前記第1方向の他方側から前記第1方向の長さに対して3分の2の位置までの部分から延出している、
ことを特徴とするプリント回路板。
【請求項17】
前記一対の配線パターンの延出する方向と、前記巻線部の巻き回される軸方向とが直交することを特徴とする請求項16に記載のプリント回路板。
【請求項18】
前記一対の配線パターンのうち少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記第1方向の他方側の端から前記第1方向の長さに対して3分の1の位置までの部分から延出している、
ことを特徴とする請求項16に記載のプリント回路板。
【請求項19】
前記少なくとも一方の配線パターンは、前記対応するパッドにおける前記他方側の端から延出している、
ことを特徴とする請求項18に記載のプリント回路板。
【請求項20】
前記少なくとも一方の配線パターンは、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に見て前記インダクタと重なる部分を有する、
ことを特徴とする請求項19に記載のプリント回路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射ノイズを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置においては、電源から負荷へ回路を通じて伝達する高周波ノイズを低減するために、回路中にインダクタが設けられているのが一般的である。この種のインダクタは、巻線コイルを備えており、漏れ磁束による磁界ノイズが問題となっている。特許文献1には、インダクタの漏れ磁束を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-89887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、撮像装置においては、撮像素子のISO感度が上がっており、夜景のような光量の少ない場面で撮像しても、より鮮明な撮像画像が求められる。しかし、特許文献1のようなインダクタを用いる場合であっても、インダクタにおいて微弱な磁界ノイズが発生してしまうのは避けられない。撮像素子のISO感度が上がるのに伴い、撮像装置内に配置されたインダクタから発生する磁界ノイズの影響を撮像素子が受けやすくなり、撮像画像に乱れが発生することがあった。
【0005】
本発明は、撮像画像の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の第1態様は、筐体と、前記筐体の内部に配置された撮像素子と、前記筐体の内部に配置されたプリント配線板と、前記プリント配線板に実装されたインダクタと、を備え、前記インダクタは、巻線部と、前記巻線部から第1方向の一方側に引き出された一対の線部と、前記第1方向と直交する第2方向に間隔をあけて配置され、前記一対の線部と接合された一対の電極と、を有し、前記プリント配線板は、前記一対の電極に接合された一対のパッドと、前記一対のパッドから延出する一対の配線パターンと、を有し、前記巻線部の巻き回される軸方向は、前記プリント配線板の、前記一対のパッドが設けられる面に垂直な方向であり、前記一対の配線パターンの各々は、前記一対のパッドのうち対応するパッドにおける前記第1方向の他方側から前記第1方向の長さに対して3分の2の位置までの部分から延出している、ことを特徴とする撮像装置である
【0007】
開示の第2態様は、レンズ筐体と、前記レンズ筐体の内部に配置され、撮像素子に光を結像する撮像光学系と、前記レンズ筐体の内部に配置されたプリント配線板と、前記プリント配線板に実装されたインダクタと、を備え、前記インダクタは、巻線部と、前記巻線部から第1方向の一方側に引き出された一対の線部と、前記第1方向と直交する第2方向に間隔をあけて配置され、前記一対の線部と接合された一対の電極と、を有し、前記プリント配線板は、前記一対の電極に接合された一対のパッドと、前記一対のパッドから延出する一対の配線パターンと、を有し、前記巻線部の巻き回される軸方向は、前記プリント配線板の、前記一対のパッドが設けられる面に垂直な方向であり、前記一対の配線パターンの各々は、前記一対のパッドのうち対応するパッドにおける前記第1方向の他方側から前記第1方向の長さに対して3分の2の位置までの部分から延出している、ことを特徴とするレンズ鏡筒である
【0008】
開示の第3態様は、プリント配線板と、前記プリント配線板に実装されたインダクタと、を備え、前記インダクタは、巻線部と、前記巻線部から第1方向の一方側に引き出された一対の線部と、前記第1方向と直交する第2方向に間隔をあけて配置され、前記一対の線部と接合された一対の電極と、を有し、前記プリント配線板は、前記一対の電極に接合された一対のパッドと、前記一対のパッドから延出する一対の配線パターンと、を有し、前記巻線部の巻き回される軸方向は、前記プリント配線板の、前記一対のパッドが設けられる面に垂直な方向であり、前記一対の配線パターンの各々は、前記一対のパッドのうち対応するパッドにおける前記第1方向の他方側から前記第1方向の長さに対して3分の2の位置までの部分から延出している、ことを特徴とするプリント回路板である
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像画像の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラの説明図である。
図2】第1実施形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラの説明図である。
図3】第1実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニットの回路構成を説明するためのブロック図である。
図4】第1実施形態に係るインダクタの斜視図である。
図5】第1実施形態に係る駆動ユニットの一部分の斜視図である。
図6】(a)及び(b)は、第1実施形態に係る駆動ユニットの一部の平面図である。
図7】(a)及び(b)は、比較例の駆動ユニットの一部の平面図である。
図8】(a)及び(b)は、第2実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニットの一部の平面図である。
図9】(a)は、実施例における実測結果を示すグラフである。(b)は、実施例におけるシミュレーション結果を示すグラフである。
図10】第3実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニットの一部の平面図である。
図11】第4実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニットの一部の平面図である。
図12】第5実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニットの一部の平面図である。
図13】第6実施形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1及び図2は、第1実施形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラの説明図である。図1は、デジタルカメラ1000を正面から見た模式図である。図2は、デジタルカメラ1000を上面から見た模式図である。デジタルカメラ1000は、例えばデジタル一眼レフカメラである。デジタルカメラ1000は、撮像装置本体であるカメラ本体100と、カメラ本体100に着脱可能なレンズ鏡筒200と、を備える。レンズ鏡筒200は、いわゆる交換レンズである。
【0013】
カメラ本体100は、デジタルカメラ1000の筐体110の一部である外装ケース101を備える。外装ケース101は、レンズ鏡筒200が装着される装着部102を有する。装着部102は、正面視リング状に形成されている。外装ケース101の内部には、撮像ユニット400が配置されている。撮像ユニット400は、受光面301を含む撮像素子300と、画像信号を制御する不図示の電子部品と、撮像素子300及び不図示の電子部品が実装されたプリント配線板103と、を有する。
【0014】
レンズ鏡筒200は、デジタルカメラ1000の筐体110の一部であるレンズ筐体201を備える。また、レンズ鏡筒200は、レンズ筐体201の内部に配置され、レンズ鏡筒200が外装ケース101に装着された際に撮像素子300の受光面301に光像を結像する撮像光学系202と、を備える。レンズ鏡筒200は、正面視リング状に形成され、外装ケース101の装着部102に装着されるマウント204を有する。第1実施形態では、外装ケース101とレンズ筐体201とで、デジタルカメラ1000の筐体110が構成されている。
【0015】
撮像素子300は、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等のイメージセンサである。撮像素子300の外形は、正面視、即ち撮像素子300の受光面301に垂直な方向に見て、四角形状である。撮像素子300は、レンズ鏡筒200が外装ケース101に装着された際に受光面301が撮像光学系202に光軸方向で対向するように外装ケース101の内部に配置されている。撮像素子300は、受光面301に結像された光像を光電変換し、画像信号をプリント配線板103に出力する。
【0016】
撮像光学系202は、複数のレンズ211,212を有している。レンズ211は、レンズ筐体201の光入射側に配置されている。レンズ212は、レンズ筐体201の光出射側に配置されている。レンズ211は、レンズ筐体201に固定されている。レンズ212は、光軸方向にスライド可能にスライダ60を介してレンズ筐体201に支持されている。
【0017】
レンズ鏡筒200は、レンズ筐体201の内部に配置され、スライダ60を介して撮像光学系202のレンズ212を駆動する振動波モータの一例である超音波モータ(USM)50を備える。超音波モータ50は、負荷の一例でもある。また、レンズ鏡筒200は、レンズ筐体201の内部に配置され、USM50による撮像光学系202の駆動動作を制御する、プリント回路板の一例である駆動ユニット500を備える。
【0018】
駆動ユニット500は、プリント配線板250と、プリント配線板250に実装された、1つ以上、第1実施形態では2つのインダクタ600と、を有する。図2には、2つのインダクタ600のうちの一方のみを図示している。
【0019】
プリント配線板250は、撮像光学系202から撮像素子300の受光面301に至る光路を遮蔽しない形状であり、例えば正面視リング形状である。ただし、プリント配線板250の形状は、リング形状に限定するものではなく、光路を遮蔽しない形状であればどのような形状であってもよく、例えばリングの一部分が欠けた形状、即ち円弧形状であってもよい。各インダクタ600は、プリント配線板250において、カメラ本体100の側とは反対の側に実装されている。
【0020】
デジタルカメラ1000においては、被写体の焦点評価値に応じた信号を検出し、駆動ユニット500により撮像光学系202を駆動して合焦させるコントラスト検出式であるオートフォーカス方式が用いられる。図3は、第1実施形態に係る駆動ユニット500の回路構成を説明するためのブロック図である。
【0021】
ここで、カメラ本体100の外装ケース101の内部には、バッテリ20が配置されている。駆動ユニット500は、バッテリ20から直流電圧が供給され、USM50を動作させるための交流電流である駆動電流を出力する駆動回路30を備える。駆動電流は、例えば1kHz以上1MHz未満、即ちkHz帯域の駆動周波数の交流電流である。駆動回路30は、プリント配線板250に実装されている。駆動回路30から出力された駆動電流は、フレキシブルプリント回路板(FPC)40を経てUSM50に送られる。駆動回路30から出力される駆動電流には、不要な高周波電流も重畳することがあるため、高周波電流を除去するために、駆動回路30の出力側、例えば駆動回路30とFPC40との間に、インダクタ600が配置されている。即ち、駆動回路30は、インダクタ600を介してUSM50に交流電流である駆動電流を供給する。プリント配線板250は、インダクタ600に対して駆動回路30の側に設けられた配線パターン551と、インダクタ600に対してUSM50の側に設けられた配線パターン552とを有する。なお、プリント配線板250は、グラウンド配線パターンであって、リターン電流が流れる配線パターン553を有する。
【0022】
インダクタ600に駆動電流が流れると、インダクタ600からは漏れ磁束が発生し、この漏れ磁束が図2に示す撮像素子300に到達すると、撮像素子300において磁界ノイズとなる。なお、図2において漏れ磁束を破線矢印で示しているが、交流電流により発生する交流磁場であるので、漏れ磁束は破線矢印の方向とその反対方向とに交互に切り替わる。
【0023】
インダクタ600及びプリント配線板250の構成について説明する。図4は、第1実施形態に係るインダクタ600の斜視図である。図5は、第1実施形態に係る駆動ユニット500の一部分の斜視図である。図5には、説明の都合上、インダクタ600とプリント配線板250とを分離して図示している。また、図5には、プリント配線板250の一部分を切り出して図示している。
【0024】
インダクタ600は、巻線部630と、巻線部630から延出する一対の線部631,632と、一対の電極601,602と、磁性コア640と、を有する。巻線部630及び一対の線部631,632は、導電材料、例えば銅で構成されている。巻線部630及び一対の線部631,632は、連続した1本の導体線で構成されている。即ち、巻線部630と一対の線部631,632は連続している。一対の線部631,632は、巻線部630からX方向の一方側X1、即ち同一方向に引き出されている。一対の線部631,632は、はんだ等の接合部材で一対の電極601,602に接合されている。線部631と電極601とが対応し、線部632と電極602とが対応している。即ち、線部631は電極601に接合されており、線部632は電極602に接合されている。電極601,602は、導電材料で構成されている。巻線部630は、導体線が巻き回されて形成されている。巻線部630の導体線は、不図示の絶縁体で被覆されている。また、各線部631,632の導体線において各電極601,602に接合される部分以外は、不図示の絶縁体で被覆されている。
【0025】
一対の電極601,602は、X方向と直交するY方向に間隔をあけて配置されている。一対の電極601,602は、磁性コア640の外面に配置され、磁性コア640から外部に露出している。X方向は第1方向、Y方向は第2方向である。また、X方向及びY方向と直交する第3方向をZ方向とする。
【0026】
磁性コア640は、磁性材料、例えばフェライトで構成されている。磁性コア640は、略直方体の形状に形成されている。第1実施形態では、磁性コア640は、2つのコア部641,642で構成されている。コア部641は、平板部643と、平板部643に立設された円柱部644とを含む。平板部643には、各電極601,602が固定されている。平板部643は、プリント配線板250と対向する主面645を含む。一対の電極601,602は、主面645の側に配置されている。
【0027】
磁性コア640の主面645は、X方向で互いに対向する一対の辺6451,6452と、Y方向で互いに対向する一対の辺6453,6454と、を含む。辺6451は、X方向の一方側X1の辺である。辺6452は、X方向の他方側X2の辺である。電極601は、主面645の辺6453に沿って配置され、電極602は、主面645の辺6454に沿って配置されている。電極601及び602は、主面645の辺6451及び6452に亘ってX方向に延在している。
【0028】
第1実施形態では、各電極601,602は、断面U字形状に形成されており、平板部643の主面645及び側面646,647上に配置されている。具体的に説明すると、電極601は、主面645に接する主部650を含む。主部650は、プリント配線板250との接合に用いられる部分である。また、電極601は、X方向の一方側X1の端部651と、X方向の他方側X2の端部652とを含む。端部651は、主部650のX方向の一方側X1の端からZ方向に延び、側面646に接する。端部652は、主部650のX方向の他方側X2の端からZ方向に延び、側面647に接する。
【0029】
また、電極602は、電極601と略同様の構成であり、主面645に接する主部660を含む。主部660は、プリント配線板250との接合に用いられる部分である。また、電極602は、X方向の一方側X1の端部661と、X方向の他方側X2の端部662とを含む。端部661は、主部660のX方向の一方側X1の端からZ方向に延び、側面646に接する。端部662は、主部660のX方向の他方側X2の端からZ方向に延び、側面647に接する。第1実施形態では、線部631は、電極601の端部651に接合されており、線部632は、電極601の端部661に接合されている。
【0030】
円柱部644には、巻線部630が巻き付けられている。コア部642には、巻線部630を収容する凹部が形成されている。コア部641とコア部642とは、接着剤等で固定されている。よって、巻線部630は、磁性コア640で囲われるように磁性コア640の内部に配置されている。巻線部630が磁性コア640で囲われることにより、磁性コア640の内部に磁気回路が形成され、巻線部630によって発生する磁束の大部分が、磁性コア640の内部の磁気回路を通過し、一部分が、磁性コア640の外部に漏れる漏れ磁束となる。
【0031】
そこで、第1実施形態では、プリント配線板250を、インダクタ600の漏れ磁束を打ち消すような配線構造としている。プリント配線板250は、主面261を含む絶縁基板260と、Y方向に間隔をあけて主面261に配置された一対のパッド501,502と、を有する。なお、X方向及びY方向は、主面261に平行な方向であり、Z方向は、主面261に垂直な方向である。絶縁基板260の主面261上には、不図示のソルダーレジスト膜が設けられている。各パッド501,502は、ソルダーレジスト膜に形成された不図示の開口部を通じて外部に露出する。
【0032】
プリント配線板250の一対のパッド501,502には、インダクタ600の一対の電極601,602がはんだ等の接合部材で接合されている。パッド501と電極601とが対応し、パッド502と電極602とが対応している。即ち、パッド501には電極601が接合され、パッド502には電極602が接合されている。
【0033】
電極601及び電極602は、Z方向に見て、略四角形状、第1実施形態では、長方形状に形成されている。よって、各電極601,602は、Y方向よりもX方向に長い。即ち、電極601のX方向の長さL1は、Y方向の長さL10よりも長い。同様に、電極602のX方向の長さL2は、Y方向の長さL20よりも長い。よって、X方向は、電極601,602に対する長手方向であり、Y方向は、電極601,602に対する短手方向である。第1実施形態では、電極601の長さL1と電極602の長さL2とは等しい。また、電極601の長さL10と電極602の長さL20とは等しい。
【0034】
一対のパッド501,502の各々は、Z方向に見て、略四角形状、具体的には長方形状に形成されている。よって、各パッド501,502は、Y方向よりもX方向に長い。即ち、パッド501のX方向の長さL3は、Y方向の長さL30よりも長い。同様に、パッド502のX方向の長さL4は、Y方向の長さL40よりも長い。よって、X方向は、パッド501,502に対する長手方向であり、Y方向は、パッド501,502に対する短手方向である。第1実施形態では、パッド501の長さL3とパッド502の長さL4とは等しい。また、パッド501の長さL30とパッド502の長さL40とは等しい。
【0035】
第1実施形態では、Z方向に見て、パッド501は、電極601と同じ大きさ、又は電極601よりもわずかに大きく形成されている。また、Z方向に見て、パッド502は、電極602と同じ大きさ、又は電極602よりもわずかに大きく形成されている。
【0036】
図3に示す一対の配線パターン551,552は、図5に示す主面261に配置されている。一対の配線パターン551,552は、不図示のソルダーレジスト膜で覆われている。ここで、パッド501と配線パターン551とが対応し、パッド502と配線パターン552とが対応している。即ち、配線パターン551は、パッド501から延出し、配線パターン552は、パッド502から延出している。
【0037】
パッド501は、X方向の一方側X1の端511、及びX方向の他方側X2の端512を有する。また、パッド501は、Y方向の内側端513及び外側端514を有する。パッド502は、X方向の一方側X1の端521、及びX方向の他方側X2の端522を有する。また、パッド502は、Y方向の内側端523及び外側端524を有する。パッド501の内側端513とパッド502の内側端523とがY方向に間隔をあけて対向している。パッド501における端511と端512とのX方向の長さが、パッド501のX方向の全長であり、長さL3である。パッド502における端521と端522とのX方向の長さが、パッド502のX方向の全長であり、長さL4である。
【0038】
ここで、パッド501は、端511を含む部分531と、端512を含む部分532とに区分けすることができる。即ち、パッド501は、部分531と部分532とを含む。部分531は、電極601の端部651に対向する部分であり、部分532は、電極601の端部652に対向する部分である。
【0039】
パッド501の部分531は、端511からパッド501のX方向の長さL3の3分の1の位置までの部分である。即ち、部分531のX方向の長さL31は、長さL3の3分の1である。パッド501の部分532は、端512からパッド501のX方向の長さL3の3分の2の位置までの部分である。即ち、部分532のX方向の長さL32は、長さL3の3分の2である。
【0040】
同様に、パッド502は、端521を含む部分541と、端522を含む部分542とに区分けすることができる。即ち、パッド502は、部分541と部分542とを含む。部分541は、電極602の端部661に対向する部分であり、部分542は、電極602の端部662に対向する部分である。
【0041】
パッド502の部分541は、端521からパッド502のX方向の長さL4の3分の1の位置までの部分である。即ち、部分541のX方向の長さL41は、長さL4の3分の1である。パッド502の部分542は、端522からパッド502のX方向の長さL4の3分の2の位置までの部分である。即ち、部分542のX方向の長さL42は、長さL4の3分の2である。
【0042】
配線パターン551は、パッド501の部分532から延出している。また、配線パターン552は、パッド502の部分542から延出している。第1実施形態では、配線パターン551は、パッド501の端512から延出している。また、配線パターン552は、パッド502の端522から延出している。
【0043】
図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る駆動ユニット500の一部の平面図である。図6(a)及び図6(b)には、図5に示す矢印Z1方向に見たインダクタ600の配線構造及びプリント配線板250の配線構造の一部を図示している。図6(a)及び図6(b)には、インダクタ600における磁性コア640の図示を省略している。また、Z方向に見て、電極601は、パッド501と重なり、かつ電極602は、パッド502と重なる。よって、図6(a)では、矢印Z1方向に見ると電極601,602によってパッド501,502が隠れるため、図6(b)では、説明の都合上、インダクタ600をプリント配線板250に対してずらして図示している。なお、各配線パターン551,552は、Z方向に見て、インダクタ600と重なっていない。
【0044】
配線パターン551は、パッド501におけるX方向の3分の2の部分532に接続され、配線パターン552は、パッド502におけるX方向の3分の2の部分542に接続されている。
【0045】
配線パターン551から図6(a)及び図6(b)に示す矢印の向きに駆動電流が流れているとき、巻線部630の内側には、矢印Z1方向とは反対の矢印Z2方向に向かう磁束B0が発生する。
【0046】
一方、パッド501においては、端512を含む部分532から端511に向かって駆動電流が流れることにより、一対のパッド501,502の間において矢印Z1方向に向かう磁束B1が発生する。また、パッド502において端521から端522を含む部分542に向かって駆動電流が流れることにより、一対のパッド501,502の間において矢印Z1方向に向かう磁束B2が発生する。つまり、磁束B1,B2は、磁束B0とは反対方向に発生する。なお、駆動電流は交流電流であるため、図6(a)及び図6(b)に示す矢印の向きと反対方向に流れる場合には、各磁束B0,B1,B2の向きが逆になるが、この場合も、磁束B1,B2は、磁束B0とは反対方向に発生する。これにより、磁束B0が、磁束B1,B2で打ち消され、その結果、インダクタ600から放射される磁界ノイズが低減される。
【0047】
パッド501、即ち部分532は、パッド501の端512からパッド501のX方向の長さL3の3分の1の位置までの部分533を含む。即ち、部分533のX方向の長さL33は、長さL3の3分の1である。第1実施形態では、配線パターン551は、部分533から延出している。部分532において、部分533以外の部分534は、部分531と部分533との間にある。パッド501の3つの部分531,534,533のX方向の長さは等しい。
【0048】
また、パッド502、即ち部分542は、パッド502の端522からパッド502のX方向の長さL4の3分の1の位置までの部分543を含む。即ち、部分543のX方向の長さL43は、長さL4の3分の1である。第1実施形態では、配線パターン552は、部分543から延出している。部分542において、部分543以外の部分544は、部分541と部分543との間にある。パッド502の3つの部分541,544,543のX方向の長さは等しい。
【0049】
パッド501において、部分533から端511に向かって駆動電流が流れることにより、発生する磁束B1が強まる。また、パッド502において、端521から部分543に向かって駆動電流が流れることにより、発生する磁束B2が強まる。駆動電流が矢印方向と逆に流れる場合も同様である。これにより、磁束B0が、磁束B1,B2で効果的に打ち消され、その結果、インダクタ600から放射される磁界ノイズが効果的に低減される。
【0050】
更に、第1実施形態では、配線パターン551は、パッド501において端511とは逆側の端512に接続され、配線パターン552は、パッド502において端521とは逆側の端522に接続されている。これにより、インダクタ600と重なる位置に磁束B1及びB2を発生させる電流の経路が長くなり、インダクタ600と重なる位置に発生する磁束B1,B2を更に強めることができる。これにより、巻線部630により発生する磁束B0に対する打ち消し効果も大きくなるため、インダクタ600から放射される磁界ノイズを効果的に低減することができる。
【0051】
さらに、第1実施形態では、配線パターン551は、パッド501の部分532のうち、X方向の端512に接続されている。また、配線パターン552は、パッド502の部分542のうち、X方向の端522に接続されている。これにより、Z方向に見て、プリント配線板250においてインダクタ600と重なる箇所以外の箇所で、配線パターン551と配線パターン552とを近づけて配置することができる。よって、一対の配線パターン551,552から放射される磁界ノイズを低減することができる。
【0052】
次に、比較例のプリント配線板の配線構造について説明する。図7(a)及び図7(b)は、比較例の駆動ユニット500Xの一部の平面図である。駆動ユニット500Xは、インダクタ600と、インダクタ600が実装されたプリント配線板250Xとを含む。図7(a)及び図7(b)には、インダクタ600の配線構造及びプリント配線板250Xの配線構造の一部を図示している。比較例では、パッド501に接続される配線パターン551Xの接続位置、及びパッド502に接続される配線パターン552Xの接続位置を、第1実施形態と異ならせたものである。
【0053】
比較例では、配線パターン551Xは、パッド501の端511に接続されている。また、配線パターン552Xは、パッド502の端521に接続されている。つまり、各配線パターン551X,552Xは、線部631,632が引き出された方向と同一方向にパッド501,502から引き出されている。したがって、比較例では、一対の配線パターン551X,552Xを通じてインダクタ600に駆動電流が流れる場合、インダクタ600と重なる位置に図6(a)及び図6(b)に示すような磁束B0を打ち消す磁束B1,B2を発生させることができない。一方、第1実施形態では、磁束B0を打ち消す磁束B1,B2を発生させることができ、インダクタ600から放射される磁界ノイズが低減される。
【0054】
インダクタ600から放射される磁界ノイズがプリント配線板250の配線構造によって低減されるので、撮像素子300に到達する磁界ノイズが低減する。よって、撮像素子300により生成される撮像画像の品質が向上する。例えば、夜景のような光量の少ない場面で撮像しても、より鮮明な撮像画像が得られる。
【0055】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る撮像装置について説明する。図8(a)及び図8(b)は、第2実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニット500Aの一部の平面図である。駆動ユニット500Aは、インダクタ600と、インダクタ600が実装されたプリント配線板250Aとを有する。図8(a)及び図8(b)には、インダクタ600の配線構造及びプリント配線板250Aの配線構造の一部を図示している。上記第1実施形態では、図5に示すように、配線パターン551がパッド501の端512に接続され、配線パターン552がパッド502の端522に接続される場合について説明した。第2実施形態では、パッド501に接続される配線パターン551Aの接続位置、及びパッド502に接続される配線パターン552Aの接続位置を、第1実施形態と異ならせたものである。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
なお、図8(a)及び図8(b)には、インダクタ600における磁性コア640の図示を省略している。また、Z方向に見て、電極601は、パッド501と重なり、かつ電極602は、パッド502と重なる。よって、図8(a)では、矢印Z1方向に見ると電極601,602によってパッド501,502が隠れるため、図8(b)では、説明の都合上、インダクタ600をプリント配線板250Aに対してずらして図示している。
【0057】
配線パターン551Aは、パッド501の部分532から延出している。また、配線パターン552Aは、パッド502の部分542から延出している。第2実施形態では、配線パターン551Aは、パッド501の部分532のうち部分534から延出している。また、第2実施形態では、配線パターン552Aは、パッド502の部分542のうち部分544から延出している。
【0058】
第2実施形態では、配線パターン551Aは、パッド501のX方向の中央C1に接続されている。中央C1は、部分534に含まれる。また、第2実施形態では、配線パターン552Aは、パッド502のX方向の中央C2に接続されている。中央C2は、部分544に含まれる。配線パターン551Aは、内側端513及び外側端514のいずれの側端に接続されていてもよいが、第2実施形態では、内側端513に接続されている。同様に、配線パターン552Aは、内側端523及び外側端524のいずれの側端に接続されていてもよいが、第2実施形態では、内側端523に接続されている。このような接続構造であっても、インダクタ600から放射される磁界ノイズを低減することができる。
【0059】
[実施例]
上述した第1実施形態、第2実施形態、及び比較例について、一対の配線パターンを通じてインダクタ600に交流電流を供給することによりインダクタ600に発生する磁界の実測とシミュレーションを行った。第1実施形態に対応する実測結果及びシミュレーション結果を実施例1、第2実施形態に対応する実測結果及びシミュレーション結果を実施例2、比較例に対応する実測結果及びシミュレーション結果を比較例1として説明する。
【0060】
インダクタ600から矢印Z1方向に1cm離れた位置にスペクトルアナライザのプローブを配置して磁界を実測した。具体的には、磁界のX方向成分、Y方向成分及びZ方向成分を実測した。また、インダクタ600から矢印Z1方向に1cm離れた位置の磁界をシミュレーションした。具体的には、磁界のX方向成分、Y方向成分、及びZ方向成分、並びに磁界の絶対値をシミュレーションした。各シミュレーション値は、1cm角の平均値とした。
【0061】
実測及びシミュレーションのいずれにおいても、インダクタ600に供給した交流電流は、周波数100kHz、振幅100mAとした。実測においては、インダクタ600としてインダクタンスの公称値が10μHで、許容範囲が±20%のものを用いた。シミュレーションにおいては、インダクタ600のインダクタンスを11.6μHとした。
【0062】
図9(a)は、実施例における実測結果を示すグラフである。図9(a)に示すように、実施例1,2では、磁界のX方向成分、Y方向成分、及びZ方向成分のいずれも、比較例1よりも低かった。つまり、配線パターン551,551Aがパッド501の部分532に接続され、配線パターン552,552Aがパッド502の部分542に接続されていることで、磁界ノイズを低減する効果があることが確認された。
【0063】
また、実施例1では、磁界のX方向成分、Y方向成分、及びZ方向成分のいずれも、実施例2よりも低かった。つまり、配線パターン551がパッド501の端512に接続され、配線パターン552がパッド502の端522に接続されていることで、磁界ノイズを低減する効果が高いことが確認された。
【0064】
図9(b)は、実施例におけるシミュレーション結果を示すグラフである。シミュレーション結果についても、実測結果と同様の傾向がみられた。図9(b)に示すように、実施例1,2では、磁界のX方向成分、Y方向成分、及びZ方向成分、並びに磁界の絶対値のいずれも、比較例1よりも低かった。つまり、配線パターン551,551Aがパッド501の部分532に接続され、配線パターン552,552Aがパッド502の部分542に接続されていることで、磁界ノイズを低減する効果があることが確認された。
【0065】
また、実施例1では、磁界のX方向成分、Y方向成分、及びZ方向成分、並びに磁界の絶対値のいずれも、実施例2よりも低かった。つまり、配線パターン551がパッド501の端512に接続され、配線パターン552がパッド502の端522に接続されていることで、磁界ノイズを低減する効果が高いことが確認された。
【0066】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る撮像装置について説明する。図10は、第3実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニット500Bの一部の平面図である。駆動ユニット500Bは、インダクタ600と、インダクタ600が実装されたプリント配線板250Bとを有する。図10には、インダクタ600の配線構造及びプリント配線板250Bの配線構造の一部を図示している。上記第1実施形態では、図5に示すように、配線パターン551がパッド501の端512に接続され、配線パターン552がパッド502の端522に接続される場合について説明した。第3実施形態では、パッド501に接続される配線パターン551Bの接続位置、及びパッド502に接続される配線パターン552Bの接続位置を、第1実施形態と異ならせたものである。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
なお、図10には、インダクタ600における磁性コア640の図示を省略している。また、Z方向に見て、電極601は、パッド501と重なり、かつ電極602は、パッド502と重なる。よって、図10では、説明の都合上、インダクタ600をプリント配線板250Bに対してずらして図示している。
【0068】
配線パターン551Bは、パッド501の部分532から延出している。また、配線パターン552Bは、パッド502の部分542から延出している。配線パターン551Bは、内側端513及び外側端514のうちいずれの側端に接続されていてもよいが、第3実施形態では、外側端514に接続されている。同様に、配線パターン552Bは、内側端523及び外側端524のうちいずれの側端に接続されていてもよいが、第3実施形態では、外側端524に接続されている。また、側端に対する配線パターン551Bの接続位置は、端512に近いほど、磁束B1が大きくなるので好ましい。第3実施形態では、配線パターン551Bは、部分533に接続されている。同様に、側端に対する配線パターン552Bの接続位置は、端522に近いほど、磁束B2が大きくなるので好ましい。第3実施形態では、配線パターン552Bは、部分543に接続されている。このような接続構造であっても、インダクタ600から放射される磁界ノイズを低減することができる。
【0069】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る撮像装置について説明する。図11は、第4実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニット500Cの一部の平面図である。駆動ユニット500Cは、インダクタ600Cと、インダクタ600Cが実装されたプリント配線板250Cとを有する。図11には、インダクタ600Cの配線構造及びプリント配線板250Cの配線構造の一部を図示している。上記第1実施形態では、図6(a)及び図6(b)に示すように、Z方向に見て、各電極601,602及び各パッド501,502が長方形状である場合について説明したが、長方形以外の形状であってもよい。なお、インダクタ600Cは、プリント配線板250Cに実装されているが、図11では、説明の都合上、インダクタ600Cをプリント配線板250Cに対してずらして図示している。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
インダクタ600Cは、第1実施形態と同様、巻線部630と、巻線部630からX方向の一方側X1に引き出された一対の線部631,632と、磁性コア640と、を有する。図11において、インダクタ600Cの磁性コア640を一点鎖線で示す。また、プリント配線板250C上においてインダクタ600Cを破線で示す。
【0071】
インダクタ600Cは、Y方向に間隔をあけて配置された一対の電極601C,602Cを有する。各電極601C,602Cは、Z方向に見て、正方形状である。一対の電極601C,602Cは、磁性コア640において、X方向の一方側X1の辺6451と、X方向の他方側X2の辺6452のうち、辺6451に寄せて配置されている。電極601Cには、線部631がはんだ等の接合部材で接合され、電極602Cには、線部632がはんだ等の接合部材で接合されている。具体的には、線部631は、電極601CにおけるX方向の一方側X1の端部651Cに接合され、線部632は、電極602CにおけるX方向の一方側X1の端部661Cに接合されている。
【0072】
プリント配線板250Cは、一対のパッド501C,502Cと、一対のパッド501C,502Cから延出する一対の配線パターン551C,552Cと、を有する。各パッド501C,502Cは、Z方向に見て、正方形状である。各パッド501C,502Cは、Z方向に見て、各電極601C,602Cと同じ大きさ、又はわずかに大きく形成されている。インダクタ600Cの各電極601C,602Cは、プリント配線板250Cの各パッド501C,502Cとはんだ等の接合部材で接合されている。
【0073】
パッド501Cは、X方向の一方側X1の端511C、及びX方向の他方側X2の端512Cを有する。パッド502Cは、X方向の一方側X1の端521C、及びX方向の他方側X2の端522Cを有する。第4実施形態では、配線パターン551Cは、パッド501Cの端512Cに接続されている。また、配線パターン552Cは、パッド502Cの端522Cに接続されている。
【0074】
配線パターン551Cは、パッド501Cの端512CからX方向の他方側X2に向かって延出し、Z方向に見てインダクタ600C、即ち磁性コア640と重なる部分5511Cを有する。配線パターン552Cは、パッド502Cの端522CからX方向の他方側X2に向かって延出し、Z方向に見てインダクタ600C、即ち磁性コア640と重なる部分5521Cを有する。したがって、各配線パターン551C,552Cは、Z方向に見て、磁性コア640の辺6452からインダクタ600Cの外側に向かって延出している。
【0075】
配線パターン551Cから矢印の向きに駆動電流が流れているとき、巻線部630の内側には、矢印Z1方向とは反対の矢印Z2方向に向かう磁束B0が発生する。
【0076】
一方、駆動電流が部分5511Cを通過しパッド501Cにおいて端512Cから端511Cに向かって流れることにより、一対のパッド501C,502Cの間において矢印Z1方向に向かう磁束B1が発生する。また、駆動電流がパッド502Cにおいて端521Cから端522Cに向かって流れ、部分5521Cを通過することで、一対のパッド501C,502Cの間において矢印Z1方向に向かう磁束B2が発生する。つまり、磁束B1,B2は、磁束B0とは反対方向に発生する。なお、駆動電流は交流電流であるため、図11に示す矢印の向きと反対方向に流れる場合には、各磁束B0,B1,B2の向きが逆になるが、この場合も、磁束B1,B2は、磁束B0とは反対方向に発生する。これにより、磁束B0が、磁束B1,B2で打ち消され、その結果、インダクタ600Cから放射される磁界ノイズが低減される。
【0077】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る撮像装置について説明する。図12は、第5実施形態に係るプリント回路板の一例である駆動ユニット500Dの一部の平面図である。駆動ユニット500Dは、インダクタ600Dと、インダクタ600Dが実装されたプリント配線板250Dとを有する。図12には、インダクタ600Dの配線構造及びプリント配線板250Dの配線構造の一部を図示している。上記第1実施形態では、図6(a)及び図6(b)に示すように、Z方向に見て、各電極601,602及び各パッド501,502が長方形状である場合について説明したが、長方形以外の形状であってもよい。なお、インダクタ600Dは、プリント配線板250Dに実装されているが、図12では、説明の都合上、インダクタ600Dをプリント配線板250Dに対してずらして図示している。第5実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
インダクタ600Dは、第1実施形態と同様、巻線部630と、磁性コア640と、を有する。図12において、インダクタ600Dの磁性コア640を一点鎖線で示す。また、プリント配線板250D上においてインダクタ600Dを破線で示す。
【0079】
インダクタ600Dは、巻線部630からX方向の一方側X1に引き出された一対の線部631D,632Dと、Y方向に間隔をあけて配置された一対の電極601D,602Dと、を有する。各電極601D,602Dは、Z方向に見て、正方形状である。一対の電極601D,602Dは、磁性コア640において、X方向の一方側X1の辺6451と、X方向の他方側X2の辺6452との中央に配置されている。電極601Dには、線部631Dがはんだ等の接合部材で接合され、電極602Dには、線部632Dがはんだ等の接合部材で接合されている。具体的には、線部631Dは、電極601DにおけるX方向の一方側X1の端部651Dに接合され、線部632Dは、電極602DにおけるX方向の一方側X1の端部661Dに接合されている。
【0080】
第5実施形態では、各電極601D,602Dが磁性コア640におけるX方向の中央に配置されている。したがって、巻線部630からX方向の一方側X1に引き出された各線部631D,632Dは、磁性コア640の辺6451においてX方向の他方側X2に折り返されて、各電極601D,602Dに導かれている。
【0081】
プリント配線板250Dは、一対のパッド501D,502Dと、一対のパッド501D,502Dから延出する一対の配線パターン551D,552Dと、を有する。各パッド501D,502Dは、Z方向に見て、正方形状である。各パッド501D,502Dは、Z方向に見て、各電極601D,602Dと同じ大きさ、又はわずかに大きく形成されている。インダクタ600Dの各電極601D,602Dは、プリント配線板250Dの各パッド501D,502Dとはんだ等の接合部材で接合されている。
【0082】
パッド501Dは、X方向の一方側X1の端511D、及びX方向の他方側X2の端512Dを有する。パッド502Dは、X方向の一方側X1の端521D、及びX方向の他方側X2の端522Dを有する。第5実施形態では、配線パターン551Dは、パッド501Dの端512Dに接続されている。また、配線パターン552Dは、パッド502Dの端522Dに接続されている。
【0083】
配線パターン551Dは、パッド501Dの端512DからX方向の他方側X2に向かって延出し、Z方向に見てインダクタ600D、即ち磁性コア640と重なる部分5511Dを有する。配線パターン552Dは、パッド502Dの端522DからX方向の他方側X2に向かって延出し、Z方向に見てインダクタ600D、即ち磁性コア640と重なる部分5521Dを有する。したがって、各配線パターン551D,552Dは、Z方向に見て、磁性コア640の辺6452からインダクタ600Dの外側に向かって延出している。
【0084】
配線パターン551Dから矢印の向きに駆動電流が流れているとき、巻線部630の内側には、矢印Z1方向とは反対の矢印Z2方向に向かう磁束B0が発生する。
【0085】
一方、駆動電流が部分5511Dを通過しパッド501Dにおいて端512Dから端511Dに向かって流れることにより、一対のパッド501D,502Dの間において矢印Z1方向に向かう磁束B1が発生する。また、駆動電流がパッド502Dにおいて端521Dから端522Dに向かって流れ、部分5521Dを通過することで、一対のパッド501D,502Dの間において矢印Z1方向に向かう磁束B2が発生する。つまり、磁束B1,B2は、磁束B0とは反対方向に発生する。なお、駆動電流は交流電流であるため、図12に示す矢印の向きと反対方向に流れる場合には、各磁束B0,B1,B2の向きが逆になるが、この場合も、磁束B1,B2は、磁束B0とは反対方向に発生する。これにより、磁束B0が、磁束B1,B2で打ち消され、その結果、インダクタ600Dから放射される磁界ノイズが低減される。
【0086】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る撮像装置について説明する。図13は、第6実施形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラ1000Fの説明図である。なお、第6実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。図13は、デジタルカメラ1000Fを上面から見た模式図である。
【0087】
デジタルカメラ1000Fは、筐体110Fと、筐体110Fの内部に配置された撮像ユニット400とを有する。撮像ユニット400は、受光面301を含む撮像素子300と、撮像素子300が実装されたプリント配線板103と、を有する。
【0088】
デジタルカメラ1000Fは、筐体110Fの内部に配置され、撮像素子300の受光面301に光像を結像する撮像光学系202を備える。撮像光学系202は、複数のレンズ211,212を有している。レンズ212は、光軸方向にスライド可能にスライダ60を介して筐体110Fに支持されている。
【0089】
デジタルカメラ1000Fは、筐体110Fの内部に配置され、スライダ60を介して撮像光学系202のレンズ212を駆動する振動波モータの一例である超音波モータ(USM)50を備える。超音波モータ50は、負荷の一例でもある。
【0090】
デジタルカメラ1000Fは、筐体110Fの内部に配置され、USM50による撮像光学系202の駆動動作を制御する、プリント回路板の一例である駆動ユニット500を備える。駆動ユニット500は、第1実施形態と同様、プリント配線板250と、プリント配線板250に実装されたインダクタ600と、を有する。第1実施形態では、駆動ユニット500は、レンズ筐体201の内部に配置されるが、第6実施形態では、筐体110Fの内部に配置される。即ち、第1実施形態では、カメラ本体とレンズ鏡筒とが別体の場合について説明したが、第6実施形態では、カメラ本体とレンズ鏡筒とが一体のデジタルカメラ1000Fである。
【0091】
第6実施形態によれば、カメラ本体とレンズ鏡筒とが一体のデジタルカメラ1000Fであっても、プリント配線板250の配線構造によってインダクタ600から放射される磁界ノイズが低減される。よって、撮像素子300に到達する磁界ノイズが低減されるので、撮像素子300により生成される撮像画像の品質が向上する。例えば、夜景のような光量の少ない場面で撮像しても、より鮮明な撮像画像が得られる。
【0092】
なお、第6実施形態では、デジタルカメラ1000Fが、第1実施形態で説明した駆動ユニット500を備える場合について説明したが、第2から第5実施形態で説明した駆動ユニット500A~500Dのいずれかを備える場合であってもよい。
【0093】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0094】
上述の実施形態では、撮像素子において磁界ノイズとなる漏れ磁束を発生するインダクタが、USMの駆動回路とFPCとの間に挿入されるインダクタである場合を説明したが、別の用途又は目的で使用されるインダクタであってもよい。例えば、撮像素子に近接する位置に配置される、スイッチング電源回路の出力フィルタ部のインダクタ、シャッターを駆動するためのDCブラシモータといった交流電流を供給する駆動回路に用いられるインダクタであってもよい。
【0095】
上述の実施形態では、各電極が、Z方向に見て、長方形状又は正方形状等の四角形状である場合について説明したが、四角形状以外の形状であってもよい。例えば、各電極が、Z方向に見て、三角形状などの四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状、又は長円形状などの形状であってもよい。
【0096】
同様に、上述の実施形態では、各パッドが、Z方向に見て、長方形状又は正方形状等の四角形状である場合について説明したが、四角形状以外の形状であってもよい。例えば、各パッドが、Z方向に見て、三角形状などの四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状、又は長円形状などの形状であってもよい。
【0097】
また、上述の第1実施形態で説明したように、一対の配線パターンの各々が、対応するパッドにおけるX方向の他方側X2の端に接続されるのが好適であるが、これに限定するものではない。即ち、一対の配線パターンのうち少なくとも一方の配線パターンが、対応するパッドにおけるX方向の他方側X2の端に接続されていてもよい。例えば、一対の配線パターンのうち、一方の配線パターンが、第1実施形態のように、対応するパッドのX方向の他方側X2の端に接続され、他方の配線パターンが、第2又は第3実施形態のように、対応するパッドの側端に接続される場合であってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、撮像装置がデジタルカメラである場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、撮像装置が携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ノートブックコンピュータなどのモバイル端末であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
200…レンズ鏡筒、202…撮像光学系、250…プリント配線板、300…撮像素子、500…駆動ユニット(プリント回路板)、501…パッド、502…パッド、511…端、522…端、532…部分、542…部分、551…配線パターン、552…配線パターン、600…インダクタ、601…電極、602…電極、630…巻線部、631…線部、632…線部、1000…デジタルカメラ(撮像装置)
図1
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