(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240415BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240415BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240415BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240415BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 D
H01F17/04 F
H01F27/28 104
H01F41/04 C
H01F27/32 140
(21)【出願番号】P 2020024126
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】竹内 拓也
(72)【発明者】
【氏名】名取 光夫
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-067214(JP,A)
【文献】特開2020-013854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0180995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0292460(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-17/08
H01F 27/24-27/255
H01F 27/28
H01F 27/32
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層間絶縁膜とスパイラル状に巻回された複数のコイルパターンが軸方向に交互に積層された構造を有するコイル部と、
前記コイル部を埋め込む磁性素体と、を備え、
前記複数のコイルパターンは、前記軸方向における一端に位置する第1のコイルパターンと、前記軸方向における他端に位置する第2のコイルパターンと、前記第1のコイルパターンと前記第2のコイルパターンの間に位置する1又は2以上の第3のコイルパターンとを含み、
前記第1、第2及び第3のコイルパターンは、いずれも、側面及び前記軸方向における前記一端側に位置する上面を有し、
前記複数の層間絶縁膜は、前記第1のコイルパターンの前記側面及び前記上面を覆う第1の層間絶縁膜と、前記第2のコイルパターンの前記側面及び前記上面を覆う第2の層間絶縁膜と、前記第3のコイルパターンの前記側面及び前記上面を覆う第3の層間絶縁膜とを含み、
前記磁性素体は、前記コイル部の内径領域に埋め込まれた第1の部分と、前記コイル部を前記軸方向における前記
他端側から覆う第2の部分と、前記コイル部を前記軸方向における前記
一端側から覆う第3の部分とを含み、
前記第1の層間絶縁膜は、前記第3の層間絶縁膜よりも透磁率が高く、
前記磁性素体は、前記第1の層間絶縁膜よりも透磁率が高く、
前記第1の層間絶縁膜は、前記磁性素体よりも絶縁性が高いことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1の層間絶縁膜は、前記第2の層間絶縁膜よりも透磁率が高いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の層間絶縁膜は、前記内径領域に突出する突出部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の層間絶縁膜は、樹脂材料に磁性フィラーが添加された磁性樹脂材料からなり、
前記磁性フィラーの最大粒径は、前記第1のコイルパターンのパターン間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁性フィラーは、平均粒径が1μm以下の金属磁性体からなるナノフィラーを含むことを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1のコイルパターンの断面は、前記軸方向における前記一端側に向かって細くなるテーパー形状を有していることを特徴とする請求項4又は5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コイル部は、前記第1のコイルパターンと同じ導体層に位置する電極パターンを含み、
前記電極パターンは、前記第1の層間絶縁膜と接し、且つ、前記磁性素体から露出していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記複数の層間絶縁膜は、前記第2のコイルパターンを前記軸方向における前記他端側から覆う第4の層間絶縁膜をさらに有し、
前記第4の層間絶縁膜は、前記第2及び第3の層間絶縁膜よりも透磁率が高いことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
複数の層間絶縁膜とスパイラル状に巻回された複数のコイルパターンを軸方向に交互に積層することによってコイル部を形成する第1の工程と、
前記コイル部を磁性素体によって埋め込む第2の工程と、を備え、
前記複数のコイルパターンは、最初に形成する第2のコイルパターンと、最後に形成する第1のコイルパターンと、前記第2のコイルパターンを形成した後、前記第1のコイルパターンを形成する前に形成する1又は2以上の第3のコイルパターンとを含み、
前記第1、第2及び第3のコイルパターンは、いずれも、側面及び前記軸方向における一端側に位置する上面を有し、
前記複数の層間絶縁膜は、前記第1のコイルパターンの前記側面及び前記上面を覆う第1の層間絶縁膜と、前記第2のコイルパターンの前記側面及び前記上面を覆う第2の層間絶縁膜と、前記第3のコイルパターンの前記側面及び前記上面を覆う第3の層間絶縁膜とを含み、
前記第1の工程は、前記第2のコイルパターンの前記側面及び前記上面を前記第2の層間絶縁膜で覆う工程と、前記第3のコイルパターンの前記側面及び前記上面を前記第3の層間絶縁膜で覆う工程と、前記第1のコイルパターンの前記側面及び前記上面を前記第1の層間絶縁膜で覆う工程とを含み、
前記磁性素体は、前記コイル部の内径領域に埋め込まれた第1の部分と、前記コイル部を前記軸方向における
他端側から覆う第2の部分と、前記コイル部を前記軸方向における前記
一端側から覆う第3の部分とを含み、
前記第1の層間絶縁膜は、前記第3の層間絶縁膜よりも透磁率が高く、
前記磁性素体は、前記第1の層間絶縁膜よりも透磁率が高く、
前記第1の層間絶縁膜は、前記磁性素体よりも絶縁性が高いことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、スパイラル状のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル状のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、球状磁性フィラーを含有する第1磁性樹脂層によってコイルパターンを埋め込むとともに、扁平磁性フィラーを含有する第2磁性樹脂層によってコイルパターンを積層方向に挟み込んだ構造を有している。
【0003】
このように、特許文献1に記載されたコイル部品は、コイルパターンが磁性樹脂層に埋め込まれていることから、高いインダクタンス値を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、第1磁性樹脂層の外側にさらに第2磁性樹脂層を配置していることから、コイル部品の全体の厚みが大きくなるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、スパイラル状のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法において、全体の厚みを薄くしつつ、高いインダクタンス値を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコイル部品は、複数の層間絶縁膜とスパイラル状に巻回された複数のコイルパターンが軸方向に交互に積層された構造を有するコイル部と、コイル部を埋め込む磁性素体とを備え、複数の層間絶縁膜は、複数のコイルパターンのうち軸方向における一端に位置する第1のコイルパターンを軸方向における一端側から覆う第1の層間絶縁膜と、複数のコイルパターンのうち残りのコイルパターンを覆う第2の層間絶縁膜とを有し、第1の層間絶縁膜は、第2の層間絶縁膜よりも透磁率が高いことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、端部に位置する第1のコイルパターンが透磁率の高い第1の層間絶縁膜で覆われていることから、全体の厚みを薄くしたまま、高いインダクタンス値を得ることが可能となる。
【0009】
本発明において、磁性素体は第1の層間絶縁膜よりも透磁率が高くても構わない。これによれば、より高いインダクタンス値を得ることが可能となる。しかも、第1の層間絶縁膜の材料として、熱膨張係数が磁性素体に近い材料を用いれば、第1の層間絶縁膜と磁性素体の界面における剥離を防止することも可能となる。
【0010】
本発明において、第1の層間絶縁膜は磁性素体と同じ磁性材料からなるものであっても構わない。これによれば、第1の層間絶縁膜と磁性素体の熱膨張係数が一致することから、第1の層間絶縁膜と磁性素体の界面における剥離をより効果的に防止することが可能となる。
【0011】
本発明において、第1の層間絶縁膜は樹脂材料に磁性フィラーが添加された磁性樹脂材料からなり、磁性フィラーの最大粒径は、第1のコイルパターンのパターン間隔よりも小さくても構わない。これによれば、第1のコイルパターンのパターン間に磁性フィラーが入り込むことから、より高いインダクタンス値を得ることが可能となる。
【0012】
本発明において、磁性フィラーは、平均粒径が1μm以下の金属磁性体からなるナノフィラーを含んでいても構わない。これによれば、第1のコイルパターンのパターン間に磁性フィラーがより入り込みやすくなる。
【0013】
本発明において、第1のコイルパターンの断面は、軸方向における一端側に向かって細くなるテーパー形状を有していても構わない。これによれば、第1のコイルパターンのパターン間に磁性フィラーがより入り込みやすくなる。
【0014】
本発明において、コイル部は第1のコイルパターンと同じ導体層に位置する電極パターンを含み、電極パターンは、第1の層間絶縁膜と接し、且つ、磁性素体から露出していても構わない。これによれば、コイル部品の放熱性が向上する。
【0015】
本発明において、複数の層間絶縁膜は、複数のコイルパターンのうち軸方向における他端に位置する第2のコイルパターンを軸方向における他端側から覆う第3の層間絶縁膜をさらに有し、第3の層間絶縁膜は、第2の層間絶縁膜よりも透磁率が高くても構わない。これによれば、端部に位置する第3のコイルパターンが透磁率の高い第3の層間絶縁膜で覆われていることから、全体の厚みを薄くしたまま、高いインダクタンス値を得ることが可能となる。
【0016】
本発明によるコイル部品の製造方法は、複数の層間絶縁膜とスパイラル状に巻回された複数のコイルパターンを軸方向に交互に積層することによってコイル部を形成する第1の工程と、コイル部を磁性素体によって埋め込む第2の工程とを備え、複数のコイルパターンは、最後に形成する第1のコイルパターンと残りの第2のコイルパターンを含み、複数の層間絶縁膜は、第1及び第2の層間絶縁膜を含み、第1の工程は、第2のコイルパターンと第2の層間絶縁膜を交互に形成する工程と、第1のコイルパターンを形成した後、第1のコイルパターンを第1の層間絶縁膜で覆う工程とを含み、第1の層間絶縁膜は、第2の層間絶縁膜よりも透磁率が高いことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、端部に位置する第1のコイルパターンが透磁率の高い第1の層間絶縁膜で覆われることから、全体の厚みが薄く、且つ、インダクタンス値の高いコイル部品を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、スパイラル状のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法において、全体の厚みを薄くしつつ、高いインダクタンス値を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【
図3】
図3は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図5】
図5は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図15】
図15は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図16】
図16は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図17】
図17は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図18】
図18は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図19】
図19は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図20】
図20は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図21】
図21は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図22】
図22は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図23】
図23は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図24】
図24は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図25】
図25は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図26】
図26は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図27】
図27は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【0022】
本発明の一実施形態によるコイル部品1は、電源回路用のインダクタとして用いることが好適な表面実装型のチップ部品であり、
図1に示すように、磁性素体M1~M3と、磁性素体M1~M3に埋め込まれたコイル部Cとを備える。コイル部Cの構成については後述するが、本実施形態においてはスパイラル状のコイルパターンを有する導体層が層間絶縁膜を介して4層積層され、これによって1つのコイル導体が形成される。
【0023】
磁性素体M1~M3は、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などからなる金属磁性フィラーと樹脂バインダーを含む複合部材であり、コイル部Cに電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。樹脂バインダーとしては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。磁性素体M1~M3を構成する材料は、互いに同じであっても構わないし、互いに異なっていても構わない。ここで、磁性素体M1はコイル部Cの内径領域に埋め込まれた部分であり、磁性素体M2はコイル部Cを軸方向における一方側(
図1に示す下側)から覆う部分であり、磁性素体M3はコイル部Cを軸方向における他方側(
図1に示す上側)から覆う部分である。
【0024】
図1に示すように、コイル部Cは、層間絶縁膜51~55と導体層10,20,30,40が交互に積層された構成を有している。導体層10,20,30,40はそれぞれスパイラル状のコイルパターンCP1~CP4を有しており、コイルパターンCP1~CP4の上面又は下面が層間絶縁膜51~55で覆われている。コイルパターンCP1~CP4の側面は、それぞれ層間絶縁膜52~55の一部で覆われている。ここで、コイルパターンCP1~CP4の上面及び下面とは、コイル軸に対して垂直な面を指し、コイルパターンCP1~CP4の側面とは、コイル軸に対して水平又は傾斜した面を指す。
【0025】
コイルパターンCP1~CP4は、層間絶縁膜52~54に形成されたスルーホールを介して互いに接続されることにより、1つのコイル導体を構成している。導体層10,20,30,40の材料としては、銅(Cu)を用いることが好ましい。本実施形態においては、層間絶縁膜51~55のうち、層間絶縁膜51~54については非磁性材料が用いられ、最上層に位置する層間絶縁膜55については磁性材料が用いられる。つまり、層間絶縁膜55は、層間絶縁膜51~54よりも透磁率が高い。最下層に位置する層間絶縁膜51についても、層間絶縁膜55と同様の磁性材料を用いても構わない。
【0026】
導体層10は、磁性素体M2の上面に層間絶縁膜51を介して形成された1層目の導体層であり、下地であるシード層S1を含んでいる。導体層10には、スパイラル状に複数ターン巻回されたコイルパターンCP1と、2つの電極パターン11,12が設けられている。コイルパターンCP1の下面は層間絶縁膜51で覆われ、コイルパターンCP1の側面及び上面は層間絶縁膜52で覆われている。
図1に示すように、所定の断面においては、コイルパターンCP1と電極パターン11が接続されている。これに対し、電極パターン12はコイルパターンCP1とは独立して設けられている。電極パターン11,12は磁性素体M1~M3から露出している。
【0027】
導体層20は、導体層10の上面に層間絶縁膜52を介して形成された2層目の導体層であり、下地であるシード層S2を含んでいる。導体層20には、スパイラル状に複数ターン巻回されたコイルパターンCP2と、2つの電極パターン21,22が設けられている。コイルパターンCP2の下面は層間絶縁膜52で覆われ、コイルパターンCP2の側面及び上面は層間絶縁膜53で覆われている。電極パターン21,22は、いずれもコイルパターンCP2とは独立して設けられている。電極パターン21,22は磁性素体M1~M3から露出している。
【0028】
導体層30は、導体層20の上面に層間絶縁膜53を介して形成された3層目の導体層であり、下地であるシード層S3を含んでいる。導体層30には、スパイラル状に複数ターン巻回されたコイルパターンCP3と、2つの電極パターン31,32が設けられている。コイルパターンCP3の下面は層間絶縁膜53で覆われ、コイルパターンCP3の側面及び上面は層間絶縁膜54で覆われている。電極パターン31,32は、いずれもコイルパターンCP3とは独立して設けられている。電極パターン31,32は磁性素体M1~M3から露出している。
【0029】
導体層40は、導体層30の上面に層間絶縁膜54を介して形成された4層目の導体層であり、下地であるシード層S4を含んでいる。導体層40には、スパイラル状に複数ターン巻回されたコイルパターンCP4と、2つの電極パターン41,42が設けられている。コイルパターンCP4の下面は層間絶縁膜54で覆われ、コイルパターンCP4の側面及び上面は層間絶縁膜55で覆われている。
図1に示すように、所定の断面においては、コイルパターンCP4と電極パターン42が接続されている。これに対し、電極パターン41はコイルパターンCP4とは独立して設けられている。電極パターン41,42は磁性素体M1~M3から露出している。
【0030】
そして、コイルパターンCP1の内周端とコイルパターンCP2の内周端は、導体層20の一部であり層間絶縁膜52を貫通して設けられたビア導体を介して接続される。また、コイルパターンCP2の外周端とコイルパターンCP3の外周端は、導体層30の一部であり層間絶縁膜53を貫通して設けられたビア導体を介して接続される。さらに、コイルパターンCP3の内周端とコイルパターンCP4の内周端は、導体層40の一部であり層間絶縁膜54を貫通して設けられたビア導体を介して接続される。これにより、コイルパターンCP1~CP4が直列に接続され、複数ターンからなるコイル導体が形成される。また、電極パターン11,21,31,41は一方の外部端子として用いられ、電極パターン12,22,32,42は他方の外部端子として用いられる。
【0031】
以上が本実施形態によるコイル部品1の構造である。このように、本実施形態によるコイル部品1は、コイル部Cが磁性素体M1~M3によって埋め込まれていることから、磁性素体M1~M3が磁路となり、高いインダクタンス値を得ることが可能となる。しかも、最上層のコイルパターンCP4を覆う層間絶縁膜55は、磁性材料によって構成されているため、別の磁性層など追加することなく、インダクタンス値をより高めることが可能となる。特に、層間絶縁膜55が内径領域に突出する突出部55aを有している場合には、この部分が磁気抵抗となってインダクタンス値が低下することがあるが、本実施形態によるコイル部品1では、層間絶縁膜55が磁性材料からなるため、層間絶縁膜55が突出部55aを有している場合であっても、インダクタンス値の低下を抑えることが可能となる。また、最下層に位置する層間絶縁膜51の材料として、層間絶縁膜55と同様の磁性材料を用いれば、突出部51aに起因するインダクタンス値の低下を抑えることが可能となる。
【0032】
層間絶縁膜55としては、樹脂材料に磁性フィラーを添加した磁性樹脂材料を用いることができる。これによれば、磁性フィラーの種類、添加量、粒径などによって、磁気特性や絶縁性を調整することができる。層間絶縁膜55の磁気特性を高めるためには、磁性素体M1~M3と同様、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などからなる金属磁性フィラーを添加すれば良いが、層間絶縁膜55はコイルパターンCP4と直接接するため、磁性素体M1~M3よりも高い絶縁性が求められる。層間絶縁膜55の絶縁性を高める方法としては、樹脂材料に添加する磁性フィラーの量を磁性素体M1~M3に比べて少なくする、或いは、樹脂材料に添加する磁性フィラーの粒径を磁性素体M1~M3に比べて小さくするなどの方法が挙げられる。この場合、層間絶縁膜55の透磁率は、磁性素体M1~M3の透磁率よりも低くなるものの、非磁性材料を用いた一般的な樹脂材料に比べれば高い透磁率が得られることから、インダクタンス値を高めることが可能となる。また、絶縁性が確保される限り、層間絶縁膜55は磁性素体M1~M3が同じ磁性材料からなるものであっても構わない。
【0033】
また、層間絶縁膜55は、磁性素体M1,M3と同種の材料からなるため、熱膨張係数の差を抑えることができる。これにより、層間絶縁膜55と磁性素体M1,M3の界面における剥離を防止することが可能となる。特に、層間絶縁膜55と磁性素体M1,M3が同じ磁性材料からなる場合には、両者の熱膨張係数が完全に一致することから、両者の界面における剥離は非常に生じにくい。
【0034】
ここで、層間絶縁膜55に含まれる磁性フィラーの最大粒径は、コイルパターンCP4のパターン間隔よりも小さいことが好ましい。これによれば、コイルパターンCP4のパターン間に磁性フィラーが入り込むことから、より高いインダクタンス値を得ることが可能となる。特に、平均粒径が1μm以下の金属磁性体からなるナノフィラーを添加すれば、コイルパターンCP4のパターン間にナノフィラーが容易に入り込む。
【0035】
コイルパターンCP4のパターン間に磁性フィラーが入り込みやすくするためには、部分断面図である
図2に示すように、コイルパターンCP4の断面をテーパー形状とすればよい。つまり、層間絶縁膜54と接する底部におけるパターン間隔をW2とし、底部と反対側の上部におけるパターン間隔をW1とした場合、W1>W2であり、且つ、底部から上部に向かって細くなるテーパー形状を持たせればよい。他のコイルパターンCP1~CP3についてもテーパー形状を有していても構わない。つまり、コイルパターンCP1~CP3の底部におけるパターン間隔をW4とし、コイルパターンCP1~CP3の上部におけるパターン間隔をW3とした場合、W3>W4であっても構わない。この場合であっても、コイルパターンCP4のテーパー形状をより大きく、つまり、(W1-W2)>(W3-W4)とすることにより、コイルパターンCP1~CP3の断面積を十分に確保しつつ、コイルパターンCP4のパターン間に磁性フィラーを入り込みやすくすることが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0037】
図3~
図27は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図3~
図27に示す工程図は、1個のコイル部品1に対応する断面を示しているが、実際には、集合基板を用いて多数のコイル部品1を同時に作製することによって多数個取りすることができる。
【0038】
まず、基材61の表面に銅(Cu)などの金属箔62,63が設けられた支持体60を用意する(
図3)。金属箔62と金属箔63の界面には剥離層が設けられている。次に、金属箔63をパターニングすることによって、金属箔63に突起部63aを形成する(
図4)。
【0039】
次に、突起部63aが設けられた金属箔63の表面に、層間絶縁膜51及び金属箔64を形成する(
図5)。層間絶縁膜51及び金属箔64の形成は、ラミネート法によって行うことができる。これにより、突起部63aの形状が層間絶縁膜51に転写され、層間絶縁膜51には膜厚の厚い領域51Aと膜厚の薄い領域51Bが形成される。
【0040】
次に、エッチングにより金属箔64を除去した後(
図6)、無電解メッキによって層間絶縁膜51の表面にシード層S1を形成する(
図7)。シード層S1を形成する代わりに、金属箔64をそのままシード層として用いても構わないが、シード層S1はできる限り薄いことが望ましいため、金属箔64を除去した後、より薄いシード層S1を新たに成膜することが好ましい。
【0041】
次に、シード層S1の表面にレジストパターンR1を形成する(
図8)。レジストパターンR1は、導体層10のネガパターンである。この状態で、電解メッキによってシード層S1を成長させることにより、導体層10を形成する(
図9)。この時、コイルパターンCP1の内径領域には、犠牲パターンVP1が形成される。犠牲パターンVP1は、層間絶縁膜51のうち膜厚の薄い領域51Aが完全に重なり、且つ、膜厚の厚い領域51Bが一部重なるよう、レジストパターンR1の位置が調整される。
【0042】
次に、レジストパターンR1を剥離した後(
図10)、レジストパターンR1の剥離部分に露出するシード層S1をエッチングにより除去する(
図11)。これにより、コイルパターンCP1と犠牲パターンVP1がスパイラル状のスリットSLによって電気的に分離される。次に、スリットSLを埋めるよう、導体層10の表面に層間絶縁膜52及び金属箔65を形成する(
図12)。層間絶縁膜52及び金属箔65の形成は、ラミネート法によって行うことができる。次に、金属箔65の表面にレジストパターンR2を形成し(
図13)、レジストパターンR2をマスクとして金属箔65をエッチングする(
図14)。これにより、犠牲パターンVP1と重なる部分の金属箔65が除去される。
【0043】
次に、レジストパターンR2を剥離した後(
図15)、金属箔65をマスクとしてブラスト加工することにより、犠牲パターンVP1を露出させる(
図16)。次に、金属箔65を除去した後(
図17)、レーザー加工によって層間絶縁膜52に開口部52aを形成する(
図18)。以上の工程により、導体層10及び層間絶縁膜52の形成が完了する。
【0044】
その後、
図7~
図18に示す工程を繰り返すことにより、導体層20、層間絶縁膜53、導体層30、層間絶縁膜54、導体層40を順次形成する(
図19)。導体層20,30,40には、犠牲パターンVP1と重なる犠牲パターンVP2~VP4が含まれている。次に、導体層40を覆う層間絶縁膜55を形成する(
図20)。層間絶縁膜55の形成は、磁性フィラーが配合された樹脂材料を塗布することによって行うことができる。次に、層間絶縁膜55をパターニングすることによって犠牲パターンVP4を露出させる(
図21)。この状態でウェットエッチングを行うことにより、犠牲パターンVP1~VP4を除去する(
図22)。コイルパターンCP1~CP4については、層間絶縁膜51~55で覆われているため、エッチングされることはない。これにより、コイルパターンCP1~CP4の内径領域には、空間Sが形成される。
【0045】
次に、この空間Sを埋める磁性素体M1,M3を形成する(
図23)。次に、金属箔62と金属箔63の界面を剥離することによって支持体60を除去し、上下反転させて支持体70を貼り付けた後(
図24)、エッチングにより金属箔63を除去する(
図25)。この状態でアッシング処理を行うことにより、層間絶縁膜51の膜厚を全体的に減少させる(
図26)。膜厚の減少量は、膜厚の薄い領域51Bが全て除去され、且つ、膜厚の厚い領域51Aが残存する量に調整する。これにより、コイル部Cの内径領域に埋め込まれた磁性素体M1が露出する。
【0046】
次に、層間絶縁膜51を覆うように磁性素体M2を形成する(
図27)。そして、支持体70を剥離し、ダイシングによって個片化すれば、
図1に示した本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0047】
このように、本実施形態においては、磁性フィラーが配合された樹脂材料を塗布することによって層間絶縁膜55を形成していることから、層間絶縁膜51~55が全て非磁性材料からなる場合と比べて、全体の厚みを増加させることなく、高いインダクタンス値を得ることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態においては、突起部63aが設けられた金属箔63の表面に層間絶縁膜51をラミネートしていることから、突起部63aの形状が層間絶縁膜51に転写される。これにより、層間絶縁膜51に膜厚の厚い領域51Aと膜厚の薄い領域51Bが形成されることから、
図26に示すアッシング処理によって、層間絶縁膜51の膜厚をより薄くすることが可能となる。これにより、コイル部品1を低背化することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 コイル部品
10,20,30,40 導体層
11,12,21,22,31,32,41,42 電極パターン
51~55 層間絶縁膜
51A 膜厚の厚い領域
51B 膜厚の薄い領域
51a 突出部
52a 開口部
55a 突出部
60 支持体
61 基材
62~65 金属箔
63a 突起部
70 支持体
C コイル部
CP1~CP4 コイルパターン
M1~M3 磁性素体
R1,R2 レジストパターン
S 空間
S1~S4 シード層
SL スリット
VP1~VP4 犠牲パターン