(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240415BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20240415BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240415BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/20 555
G03G21/20
G03G21/00 500
G03G21/00 398
H05B3/00 310E
H05B3/00 335
(21)【出願番号】P 2020025409
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陣駒 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】植川 英治
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003615(JP,A)
【文献】特開2020-013026(JP,A)
【文献】特開2016-012077(JP,A)
【文献】特開2017-050050(JP,A)
【文献】特開平11-074061(JP,A)
【文献】特開平01-221778(JP,A)
【文献】特開2002-214966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/20
G03G 21/00
H05B 1/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に形成された画像を加熱するためのヒータと、
前記ヒータを保持するヒータ保持部材と、
内面に前記ヒータが接触する筒状のフィルムと、
前記ヒータの温度を検知するための温度検知素子と、
前記ヒータに接触する接触部材と、
を備える像加熱装置において、
前記温度検知素子は、前記接触部材が前記ヒータと接触する位置の近傍に配置され
、
前記接触部材が前記ヒータと接触する位置は、前記ヒータの長手方向の温度分布において、前記記録材が通過する領域と重なる範囲のなかで温度の高さが最も低くなる位置であることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記温度検知素子は、前記ヒータの長手方向において前記接触部材が前記ヒータと接触する領域と重なる位置
における温度、または該重なる位置の近傍における温度を検知することができるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記ヒータは、基板と、前記基板の一方の面に設けられる発熱抵抗体と、前記一方の面に設けられ前記発熱抵抗体を通電するための電力が供給される電極と、を有し、
前記温度検知素子は、前記基板の他方の面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記発熱抵抗体は、前記基板の長手方向に複数並ぶように設けられ、
前記電極及び前記温度検知素子は、複数の前記発熱抵抗体に対応してそれぞれ複数設けられており、
複数の前記温度検知素子は、少なくとも、前記長手方向において最も端に配置される温度検知素子を除いて、前記接触部材が前記ヒータと接触する位置の近傍に配置されることを特徴とする請求項3に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記接触部材は、前記ヒータにおける前記フィルムの内面に接触する面とは反対側の面に接触することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記接触部材は、前記ヒータに電力を供給するために前記ヒータに接触する接点部材であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記接触部材は、前記ヒータが異常高温になった場合に前記ヒータに供給される電力を遮断するための安全素子であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記接触部材は、前記ヒータと前記ヒータ保持部材とを接着する接着部材であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項9】
前記近傍となる位置は、前記ヒータの長手方向の温度分布において、平均温度よりも低い温度になる位置であることを特徴とする請求項
1に記載の像加熱装置。
【請求項10】
前記温度検知素子は、サーミスタであることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項11】
前記フィルムの外面に接触して前記外面との間に記録材を搬送するニップ部を形成する加圧回転体をさらに備えることを特徴とする請求項1~1
0のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項12】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が請求項1~1
1のいずれか1項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真記録方式の画像形成装置に搭載する定着器、あるいは記録材上の定着済みトナー画像を再度加熱することにより画像の光沢度を向上させる光沢付与装置等の像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載される像加熱装置として、筒状のフィルムと、フィルムの内面に接触するヒータと、フィルムを介してヒータと共にニップ部を形成するローラとを有する装置がある。この像加熱装置を搭載する画像形成装置で小サイズ紙を連続プリントすると、ニップ部長手方向において紙が通過しない領域の温度が徐々に上昇するという現象(非通紙部昇温)が発生する。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、ヒータ上の発熱抵抗体を記録材の搬送方向に直交する方向(以下、長手方向)において複数の発熱ブロックに分割し、記録材のサイズに応じてヒータの発熱ブロックを切換える装置が提案されている(特許文献1)。特許文献1における発熱ブロックには、それぞれの発熱ブロックの温度を検知するために、ヒータの表面側(フィルムとの摺動面側)に温度制御用のサーミスタが配置されている。そのときのヒータへの電力はヒータの裏面側の電極を通じて供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によると、ヒータ裏面に電力供給のための接点部材が接触している箇所では、熱容量の大きな接点部材へ熱を奪われることで局所的に温度が低下し、ヒータ表面側でも温度が低下することが分かった。接点部材の温度や接触具合によって温度低下量は変動するため、温度が低下していない箇所にサーミスタを配置して温度制御を行った場合、定着不良が発生する可能性があった。特に、像加熱装置が冷えている状態では、長手方向の温度ムラが発生しやすく、定着不良が発生しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、接点部材等のヒータに接触する部材を備えることでヒータ長手方向の温度ムラが生じる場合でも、安定した温度制御を可能として、定着不良の発生を抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の像加熱装置は、
記録材に形成された画像を加熱するためのヒータと、
前記ヒータを保持するヒータ保持部材と、
内面に前記ヒータが接触する筒状のフィルムと、
前記ヒータの温度を検知するための温度検知素子と、
前記ヒータに接触する接触部材と、
を備える像加熱装置において、
前記温度検知素子は、前記接触部材が前記ヒータと接触する位置の近傍に配置され、
前記接触部材が前記ヒータと接触する位置は、前記ヒータの長手方向の温度分布において、前記記録材が通過する領域と重なる範囲のなかで温度の高さが最も低くなる位置であることを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が本発明の像加熱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接点部材等のヒータに接触する部材を備えることでヒータ長手方向の温度ムラが生じる場合でも、安定した温度制御が可能となり、定着不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施例1におけるヒータ電極への接点部分の拡大図
【
図6】実施例1におけるサーミスタ配置とヒータ温度分布の関係図
【
図7】実施例1における変形例のサーミスタ配置とヒータ温度分布の関係図
【
図8】実施例1における比較例のサーミスタ配置とヒータ温度分布の関係図
【
図10】実施例2におけるヒータ接着位置とヒータ温度分布の関係図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式や静電記録方式を利用したプリンタ、複写機などが挙げられ、ここではレーザプリンタに適用した場合について説明する。
【0012】
1.画像形成装置の構成
図1は、本発明の実施例1に係る電子写真記録技術を用いた画像形成装置(レーザプリンタ)100の断面図である。プリント信号が発生すると、画像情報に応じて変調されたレーザ光をスキャナユニット21が出射し、帯電ローラ16によって所定の極性に帯電された感光体(感光ドラム)19を走査する。これにより感光体19には静電潜像が形成される。この静電潜像に対して現像器(現像ローラ)17からトナーが供給され、感光体19上に画像情報に応じたトナー画像が形成される。一方、給紙カセット11に積載された記録材(記録紙)Pはピックアップローラ12によって一枚ずつ給紙され、ローラ13によってレジストローラ14に向けて搬送される。さらに記録材Pは、感光体19上のトナー画像が感光体19と転写ローラ20で形成される転写位置に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ14から転写位置へ搬送される。記録材Pが転写位置を通過する過程で感光体19上のトナー画像は記録材Pに転写される。その後、記録材Pは定着部(像加熱部)としての定着装置200においてヒータの熱を利用して加熱されてトナー画像が記録材Pに加熱定着される。定着済みのトナー画像を担持する記録材Pは、ローラ26、
27によって画像形成装置100上部のトレイに排出される。
【0013】
なお、ドラムクリーナ18は感光体19に残存するトナーを清掃する。記録材Pのサイズに応じて幅調整可能な一対の記録材規制板を有する給紙トレイ28(手差しトレイ)は、定形サイズ以外のサイズの記録材Pにも対応するために設けられている。ピックアップローラ29は、給紙トレイ28から記録材Pを給紙する。画像形成装置100は、定着装置200等を駆動するモータ30を有する。商用の交流電源401に接続された制御手段としての制御回路400は、定着装置200へ電力供給を行う。上述した、感光体19、帯電ローラ16、スキャナユニット21、現像器17、転写ローラ20が、記録材Pに未定着画像を形成する画像形成部を構成している。また、本実施例では、帯電ローラ16、現像器17を含む現像ユニット、感光体19、ドラムクリーナ18を含むクリーニングユニットが、プロセスカートリッジ15として画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、スキャナユニット21は、光源22、ポリゴンミラー23、反射ミラー24を備える。
【0014】
また、上記の画像形成装置は、単色のモノクロトナーを使用したモノクロレーザプリンタを代表例に説明を行っているが、これに限られるものではなく、2色以上のカラートナーを、中間転写ベルトを介して記録材上に転写し画像形成するタンデム方式等のカラーレーザプリンタに適用することも可能である。
【0015】
本実施例の画像形成装置100は、記録材Pの搬送方向と直交する方向(ヒータの長手方向)における最大通紙幅が216mmであり、記録材Pの搬送速度は300mm/secである。
【0016】
2.定着装置(定着部)の構成
図2は、本実施例の像加熱装置としての定着装置200の概略断面図である。定着装置200は、加熱回転体(加熱部材)としての定着フィルム202と、熱源として定着フィルム202の内面に接触するヒータ300と、定着フィルム202の外面に接触する加圧回転体(加圧部材)としての加圧ローラ208と、金属ステー204と、を有する。加圧ローラ208は、定着フィルム202を介してヒータ300に圧接され、定着フィルム202との間に定着ニップ部Nを形成する。
【0017】
定着フィルム202は、筒状に形成された複層耐熱フィルムであり、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属を基層としている。また、定着フィルム202の表面には、トナーの付着防止や記録材Pとの分離性を確保するため、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の離型性にすぐれた耐熱樹脂を被覆して離型層を形成してある。さらに、画質向上のため、上記基層と離型層の間にシリコーンゴム等の耐熱ゴムを弾性層として形成してもよい。
【0018】
加圧ローラ208は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金209と、シリコーンゴム等の材質の弾性層210を有する。ヒータ300は、耐熱樹脂製のヒータ保持部材201に保持されており、定着ニップ部N内を加熱することで、定着フィルム202を加熱する。ヒータ保持部材201は定着フィルム202の回転を案内するガイド機能も有している。
【0019】
ヒータ300には、定着ニップ部Nの反対側に電極Eが設けられており、電気接点Cより電極Eに給電を行っている。金属ステー204は、不図示の加圧力を受けて、ヒータ保持部材201を加圧ローラ208に向けて押圧する。また、ヒータ300の異常発熱(異常高温)により作動してヒータ300に供給する電力を遮断するサーモスイッチや温度ヒューズ等の安全素子212が、ヒータ300に対してヒータ保持部材201を介して配置されている。
【0020】
加圧ローラ208は、モータ30から駆動力を受けて矢印R1方向に回転する。加圧ローラ208が回転することによって、定着フィルム202が従動して矢印R2方向に回転する。定着ニップ部Nにおいて記録材Pを挟持搬送しつつ定着フィルム202の熱を与えることで、記録材P上の未定着トナー像は定着処理される。また、定着フィルム202の摺動性を確保し安定した従動回転状態を得るために、ヒータ300と定着フィルム202の間には、耐熱性の高いグリース(不図示)を介在させている。
【0021】
3.ヒータの構成
図3を用いて、本実施例に係るヒータ300の構成を説明する。
図3(A)はヒータ300の断面図、
図3(B)はヒータ300の各層の平面図、
図3(C)はヒータ300への電気接点Cの接続方法を説明する図である。
【0022】
図3(B)には、本実施例の画像形成装置100における記録材Pの搬送基準位置Xを示してある。本実施例における搬送基準は中央基準となっており、記録材Pはその搬送方向に直交する方向における中心線が搬送基準位置Xを沿うように搬送される。また、
図3(A)は、搬送基準位置Xにおけるヒータ300の断面図となっている。
【0023】
ヒータ300は、セラミックス製の基板305と、基板305上に設けられた裏面層1と、裏面層1を覆う裏面層2と、基板305上の裏面層1とは反対側の面に設けられた摺動面層1と、摺動面層1を覆う摺動面層2と、から構成される。
【0024】
裏面層1は、ヒータ300の長手方向に沿って設けられている導電体301(301a、301b)を有する。導電体301は、導電体301aと導電体301bに分離されており、導電体301bは、導電体301aに対して記録材Pの搬送方向の下流側に配置されている。
【0025】
また、裏面層1は、導電体301a、301bに平行して設けられた導電体303(303-1~303-7)を有する。導電体303は、導電体301aと導電体301bの間にヒータ300の長手方向に沿って設けられている。
【0026】
さらに、裏面層1は、通電により発熱する発熱抵抗体素子として、発熱体302a(302a-1~302a-7)と発熱体302b(302b-1~302b-7)を有する。発熱体302aは、導電体301aと導電体303の間に設けられており、導電体301aと導電体303を介して電力が供給されることにより発熱する。発熱体302bは、導電体301bと導電体303の間に設けられており、導電体301bと導電体303を介して電力が供給されることにより発熱する。
【0027】
導電体301と導電体303と発熱体302aと発熱体302bとから構成される発熱部位は、ヒータ300(基板305)の長手方向に対し7つの発熱ブロックHB(HB1~HB7)に分割されている。すなわち、発熱体302aは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱体302a-1~302a-7の7つの領域に分割(長手方向に複数並ぶように形成)されている。また、発熱体302bは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱体302b-1~302b-7の7つの領域に分割(長手方向に複数並ぶように形成)されている。さらに、導電体303は、発熱体302a、302bの分割位置に合わせて、導電体303-1~303-7の7つの領域に分割されている。発熱ブロックHBの分割幅は
図3(B)に記載の通り、A5紙・B5紙・A4紙:Letter紙に対応可能な分割幅としている。ただし、分割数や分割の幅はこれに限定されるものではない。
【0028】
発熱体302a、302bの平面形状(基板305の面に垂直な方向に見たときの形状
)はどちらも点対称な平行四辺形で形成されている。また、記録材Pの搬送方向の上流側の発熱体302a、下流側の発熱体302bは、短手方向の発熱分布が対称になるように、ヒータ短手方向(記録材Pの搬送方向)中央に対し、互いに線対称に配置される。さらに、発熱体302a、302bは、ヒータ300の長手方向、及び短手方向に対して傾いた方向に延びるような平面視形状で配置されている。かかる配置により、分割された複数の発熱体の間の隙間部の影響を低減し、ヒータ300の長手方向の発熱分布の均一性を改善することができる。
【0029】
裏面層1は、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)を有する。電極E1~E7は、それぞれ導電体303-1~303-7の領域内に設けられており、導電体303-1~303-7を介して発熱ブロックHB1~HB7それぞれに電力供給するための電極である。電極E8-1、E8-2は、ヒータ300の長手方向端部の導電体301に接続するよう設けられており、導電体301を介して発熱ブロックHB1~HB7に電力供給するための電極である。本実施例ではヒータ300の長手方向両端に電極E8-1、E8-2を設けているが、例えば、電極E8-1のみを片側に設ける構成(即ち、電極E8-2を設けない構成)でも構わない。また、導電体301a、301bに対し共通の電極で電力供給を行っているが、導電体301aと導電体301bそれぞれに個別の電極を設け、それぞれ電力供給を行っても構わない。
【0030】
裏面層2は、絶縁性を有する表面保護層307(本実施例ではガラス)により構成されており、導電体301、導電体303、発熱体302a、302bを覆っている。また、表面保護層307は、電極Eの箇所を除いて形成されており、電極Eに対して、ヒータの裏面層2側から電気接点Cを接続可能な構成となっている。
【0031】
摺動面層1は、基板305において裏面層1が設けられる一方の面とは反対側の他方の面に設けられており、各発熱ブロックHB1~HB7の温度を検知する温度検知素子としてサーミスタT(T1-1~T1-4、およびT2-5~T2-7)が各発熱ブロックHB1~HB7に対応して複数設けられている。サーミスタTは、PTC特性、若しくはNTC特性を有した材料から成り、その抵抗値を検出することにより、全ての発熱ブロックの温度を検知できる。
【0032】
また、摺動面層1は、サーミスタTに通電しその抵抗値を検出するため、導電体ET(ET1-1~ET1-4、およびET2-5~ET2-7)と導電体EG(EG1、EG2)とを有している。導電体ET1-1~ET1-4は、それぞれサーミスタT1-1~T1-4に接続されている。導電体ET2-5~ET2-7は、それぞれサーミスタT2-5~T2-7に接続されている。導電体EG1は、4つのサーミスタT1-1~T1-4に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体EG2は、3つのサーミスタT2-5~T2-7に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体ETおよび導電体EGは、それぞれヒータ300の長手に沿って長手端部まで形成され、ヒータ長手端部において不図示の電気接点を介して制御回路400と接続されている。
【0033】
摺動面層2は、摺動性と絶縁性を有する表面保護層308(本実施例ではガラス)により構成されており、サーミスタT、導電体ET、導電体EGを覆うとともに、定着フィルム202内面との摺動性を確保している。また、表面保護層308は、導電体ETおよび導電体EGに対して電気接点を設けるために、ヒータ300の長手両端部を除いて形成されている。
【0034】
続いて、各電極Eへの電気接点(接点部材)Cの接続方法を説明する。
図3(C)は、各電極Eへ電気接点Cを接続した様子をヒータ保持部材201側から見た平面図である。また、
図4はヒータ300の短手方向中心線Hの位置と、その短手方向中心線Hでの断面
図を表している。ヒータ保持部材201には、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対応する位置に貫通穴が設けられている。各貫通穴の位置において、接触部材としての電気接点C(C1~C7、およびC8-1、C8-2)が、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対してバネKによる付勢手段によって電気的に接続されている。
図4の断面図では、発熱ブロックHB2とHB3の拡大図のみ示しているが、他の発熱ブロックHBでも同様の形状である。
【0035】
電気接点Cは、ヒータ保持部材201上に固定された導電材料Fを介して、後述するヒータ300の制御回路400と接続されている。導電材料Fは、ヒータ保持部材201に形成されたボス201-1に嵌合し、固定されている。なお、電極Eと電気接点Cの接続方法はバネによる付勢手法に限定されず、例えば超音波接合やレーザ溶接等の手段によって、電極Eと電気接点Cを接合しても構わない。
【0036】
4.ヒータ制御回路の構成
図5は、本実施例におけるヒータ300の制御回路400の回路図である。画像形成装置100には、商用の交流電源401が接続されている。ヒータ300の電力制御は、トライアック411~トライアック417の通電/遮断により行われる。トライアック411~417は、それぞれ、CPU420からのFUSER1~FUSER7信号に従って動作する。トライアック411~417の駆動回路は省略して示してある。
【0037】
ヒータ300の制御回路400は、7つのトライアック411~417によって、7つの発熱ブロックHB1~HB7を独立制御可能な回路構成となっている。
【0038】
ゼロクロス検知部421は、交流電源401のゼロクロスを検知する回路であり、CPU420にZEROX信号を出力している。ZEROX信号は、トライアック411~417の位相制御や波数制御のタイミングの検出等に用いている。
【0039】
ヒータ300の温度検知方法について説明する。ヒータ300の温度検知は、サーミスタT(T1-1~T1-4、T2-5~T2-7)によって行われる。サ-ミスタT1-1~T1-4と抵抗451~454との分圧がTh1-1~Th1-4信号としてCPU420で検知されており、CPU420にてTh1-1~Th1-4信号を温度に変換している。同様に、サ-ミスタT2-5~T2-7と抵抗465~467との分圧が、Th2-5~Th2-7信号としてCPU420で検知されており、CPU420にてTh2-5~Th2-7信号を温度に変換している。
【0040】
CPU420の内部処理では、各発熱ブロックの設定温度(制御目標温度)と、サーミスタの検知温度に基づき、例えばPI制御(比例積分制御)により、供給するべき電力を算出している。さらに、供給する電力を、電力に対応した位相角(位相制御)や、波数(波数制御)の制御レベルに換算し、その制御条件によりトライアック411~417を制御している。
【0041】
リレー430、リレー440は、電源OFF時やスリープ時、故障等によりヒータ300が過昇温したときの、ヒータ300への電力遮断手段として用いている。
【0042】
リレー430、及びリレー440の回路動作を説明する。RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ433がON状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに通電され、リレー430の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ433がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー430の1次側接点はOFF状態になる。同様に、RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ443がON状態
になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに通電され、リレー440の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ443がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー440の1次側接点はOFF状態になる。なお、抵抗434、抵抗444は電流制限抵抗である。
【0043】
次に、リレー430、及びリレー440を用いた、安全回路の動作について説明する。サーミスタT1-1~T1-4による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部431はラッチ部432を動作させ、ラッチ部432はRLOFF1信号をLow状態でラッチする。RLOFF1信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ433がOFF状態で保たれるため、リレー430はOFF状態(安全な状態)で保つことができる。尚、ラッチ部432は非ラッチ状態において、RLOFF1信号をオープン状態の出力にしている。
【0044】
同様に、サーミスタT2-5~T2-7による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部441はラッチ部442を動作させ、ラッチ部442はRLOFF2信号をLow状態でラッチする。RLOFF2信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ443がOFF状態で保たれるため、リレー440はOFF状態(安全な状態)で保つことができる。同様に、ラッチ部442は非ラッチ状態において、RLOFF2信号をオープン状態の出力にしている。
【0045】
5.サーミスタの長手位置の詳細説明
図6は、
図3、
図4で説明した電極E、電気接点(接点部材)C、サーミスタTおよび、ヒータ温度の長手位置の関係を表した図である。前述のとおり、ヒータ保持部材201には、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対応する位置に電気接点C(C1~C7、およびC8-1、C8-2)が接続されており、電極Eと電気接点Cの長手位置は同一である。具体的には、基板305の面に垂直な方向に見た平面視形状において、それぞれの長手方向の幅の中央(重心)の位置が、長手方向の位置関係において一致する配置となっている。また、本実施例においては電気接点C2~C6と、サーミスタT1-2~T1-4、T2-5、T2-6の長手位置がそれぞれ同じ長手位置に配置されている。すなわち、上記平面形状において、それぞれの長手方向の幅の中央(重心)の位置が長手方向の位置関係において一致する配置となっている。サーミスタT1-1は、電気接点C1の長手位置とは異なる位置に配置されており、ヒータ300の搬送基準位置X方向へ10mm内側に配置されている。その理由は、電気接点C1はヒータ300の最大発熱幅よりも外側にあり、発熱領域内にサーミスタT1-1を配置した方が発熱ブロックHB1の温度を適切に検知できるためである。サーミスタT2-7も同様である。すなわち、長手方向において最も端に配置されるサーミスタを除き、サーミスタは、長手方向において接触部材がヒータと接触する領域と重なる位置、あるいは当該領域の長手幅中央(重心)の位置におけるヒータの温度を検知することができるように配置される。
【0046】
以下では、サーミスタTと接触部材(本実施例では電気接点C)間のヒータ長手方向の幅中央(重心)位置の位置関係における距離をLと定義する(L1~L4:T1-1~T1~4とC1~C4間距離、L5~L7:T2-5~T2-7とC5~C7間距離)。
図6の実施例においては、L1=10mm、L2~L6=0mm、L7=10mmである。なお、本実施例では、サーミスタTと接触部材との長手方向の位置関係を、幅中央(重心)位置を基準に規定しているが、かかる規定の仕方に限定されるものではない。すなわち、接触部材により温度が低下した箇所におけるヒータ温度をサーミスタで検知可能となる配置を実現することができるのであれば他の規制の仕方を用いてよい。
【0047】
図6のヒータ温度分布は、各サーミスタTで各発熱ブロックHBを、それぞれ制御目標温度を230℃に設定して制御した場合の結果である。電気接点Cがヒータに接触している部分では、熱容量の大きな電気接点Cにヒータの熱が奪われ、電気接点Cが接触していない箇所と比較して温度が低くなる。本実施例においては、温度が低くなる電気接点C2~C6部と、サーミスタT1-2~T1-4、T2-5、T2-6がそれぞれ同じ長手位置に配置されている(長手幅中央(重心)の位置が一致する)ため、発熱ブロックHB1~HB7内では最低温度が230℃に保たれている。すなわち、接触部材と長手方向の位置が一致するサーミスタが検知する温度は、ヒータの長手方向の温度分布において、記録材が通過する領域と重なる範囲のなかで温度が最も低くなる位置となる。この効果については後述する。
【0048】
電気接点Cの接触によって奪われる熱量は、常に一定ではなく、電気接点Cの接触具合や接点自身の温度、あるいは接触する位置のずれ等により変動する。そのため、
図6のヒータ温度分布においても、発熱ブロックHBごとにサーミスタTがある箇所以外の温度は異なっている。例えば、発熱ブロックHB4では最高温度が240℃になっているが、発熱ブロックHB3では240℃より高い温度になっており、逆に発熱ブロックHB5では240℃より低い温度になっている。
【0049】
また、本発明における接触部材とは電気接点Cに限らない。例えば、安全素子212もヒータ300への接触部材であり、安全素子212の接触した箇所でもヒータ温度が下がっている。安全素子212の設置方法としては、ヒータ300に直接接触するように設置する場合もあるし、ヒータ保持部材201を間に介在させた形で設置する場合もある。ヒータ300と直接当接する設置構成においては無論、間にヒータ保持部材201が介在する場合においても、ヒータ保持部材201において安全素子212が接触する箇所において局所的に温度が低下し、ヒータの温度分布に影響を与える場合がある。本実施例においては、電気接点C4部の方がヒータ温度の低下量が大きいため、サーミスタT1-4を電気接点Cと長手同一位置に配置したが、安全素子212と長手同一位置もしくはその近傍に配置しても構わない。
なお、ヒータ保持部材201、定着フィルム202は、接点部材Cや安全素子212、後述する接着部材Dよりも熱容量が小さく、またそれらの部材のように温調制御の長手均一性に影響を与えるような部材ではなく、本発明における接触部材には含まれない。
【0050】
図7は本実施例の変形例である。
図6の例とはサーミスタTの位置が異なり、サーミスタTを、電気接点Cの対向位置近傍に配置している(同一の長手位置ではない)。
図7におけるサーミスタTと電気接点C間の距離Lは、L1=10mm、L2=0.5mm、L3=1mm、L4=2mm、L5=1mm、L6=0.5mm、L7=10mmである。
【0051】
本発明における接触部材(電気接点C)の対向位置近傍とは、接触部材によって長手方向の温度が、発熱領域全体の長手平均温度より低くなった領域を指している。本実施例における長手平均温度は233℃であったため(サーミスタ目標温度230℃制御)、その温度以下となる箇所にサーミスタTを配置(当該箇所における温度を検知することができるようにサーミスタTを配置)した場合には、本発明の範囲となる。
【0052】
本変形例のサーミスタTと電気接点C間の距離Lは、
図6のヒータ温度分布拡大図のように、例えば発熱ブロックHB4では電気接点C4から2mm離れたところで233℃になっていたため、L4=2mmと設定した。また、発熱ブロックHB3では電気接点C3から1mm離れたところで233℃になっていたため、L3=1mmと設定した。他の発熱ブロックにおける距離Lも同様に決定した。ただし、サーミスタTと電気接点C間の距離Lは本実施例で用いた値に限定されず、ヒータや接触部材の構成、材料など諸条件によって任意に決定してもよい。
【0053】
サーミスタT1-2~T1-4、T2-5,T2-6はすべて電気接点C2~C6の対向位置近傍に配置されているため、ヒータ温度分布も
図6と大きくは変わらない。各発熱ブロックHBの最低温度は227℃に保たれている。
【0054】
なお、本実施例では複数のサーミスタTを電気接点Cの対向位置近傍に配置したが、少なくとも1つ以上のサーミスタをヒータ接触部材の近傍に配置していれば、本発明の適用範囲である。すなわち、ヒータの長手方向の温度分布において、記録材が通過する領域と重なる範囲のなかで温度が最も低くなる位置の少なくとも一箇所において最低温度もしくは最低温度に近い温度を検知することができれば、定着に必要な温度の確保した温調制御を実現することが可能となる。
【0055】
6.実施例1の効果
実施例1(
図6)、実施例1の変形例(
図7)と、サーミスタTが電気接点Cと離れている場合の比較例を用いて、本発明の効果を説明する。
【0056】
図8を用いて比較例を説明する。本実施例の
図6や
図7とは、サーミスタTの配置が異なり、サーミスタT1-1~T1-4,T2-5~T2-7のいずれも、電気接点C1~C7の対向位置近傍に配置されていない。
図8におけるサーミスタTと電気接点C間の距離Lは、L1=10mm、L2=3mm、L3=10mm、L4=10mm、L5=10mm、L6=3mm、L7=10mmである。
【0057】
以下の条件で、本実施例の効果を検証した。記録材Pには「HP Laser Jet
90g」を使用し、連続で50枚通紙した場合に、定着不良が発生するか否かを検証した。前述のとおり、記録材Pの搬送速度は300mm/secである。また、事前の検証により、ヒータ温度が225℃以下になると、定着フィルム202の温度が170℃以下となり、定着不良が発生する可能性があることを確認している。そこで、実施例1と変形例ではサーミスタT(T1-1~T1-4、T2-5~T2-7すべて)の目標温度を230℃とし、比較例では電気接点C部で温度が低下することを加味して、240℃とした。
【0058】
結果を表1に示す。本実施例の構成および変形例の構成では、長手全域にわたって定着不良は発生しなかった。一方、比較例では発熱ブロックHB3内の、電気接点C3部で定着不良が発生した。実施例では、温度が低い位置でもヒータ温度230℃に保たれるが、比較例では電気接点Cによって奪われる熱量が大きく、定着不良が発生したと考えられる。
【0059】
比較例において、定着不良を防止するためには、前述した電気接点Cの接触具合等の変動を考慮し、最も熱が奪われる状況を想定して目標温度を設定する必要がある。その場合、奪われる熱量の小さな定着装置200においては、無駄に大きな電力を投入する必要があり、省エネ性を損なうことになる。
【0060】
以上のように、ヒータ300への接触部材の対向近傍の長手位置に、サーミスタTを配置することで、安定して温度制御ができ、定着不良を抑制することができる。
【0061】
【0062】
なお、本発明ではサーミスタTの搬送方向の位置はどこであっても構わないが、本実施例のように搬送方向の下流側に配置した方が、定着ニップ部Nの最終的な温度を検知できるため、より好ましい例である。
【0063】
また、本発明の範囲は、
図3で示した発熱体の形状に限定されない。例えば、
図9に示すように、各発熱体302a、302bを発熱ブロックごとに単一の発熱体で形成してもよい。
図9の各符号は
図3と同様である。
【0064】
(実施例2)
続いて、本発明の実施例2について説明する。実施例2の画像形成装置、および定着装置の基本的な構成および動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1と同一またはそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。実施例2において、ここで特に説明しない事項は、実施例1と同様である。
【0065】
実施例2における定着装置200は、常に定着ニップNを加圧している状態ではなく、例えば定着ニップN内でジャムが発生した場合は、加圧力を弱めて(ヒータ及びフィルムと加圧ローラとを離間して)定着ニップNから記録材を引き抜きやすくしている。このような加圧―離間機構を備える定着装置の場合には、ヒータ300とヒータ保持部材201を接着し、ヒータ300の位置がずれないようにすることが望ましい。
【0066】
ヒータ300とヒータ保持部材201を接着剤によって接着している構成について説明する。
図10は、実施例2の電気接点C、サーミスタT、接着部材としての接着剤D(D3~D5)および、ヒータ温度の長手位置の関係を表した図である。接着剤Dは、ヒータ300とヒータ保持部材201を固定するために塗布されている。接着剤Dには、200℃以上の耐熱性を有するゴム系の接着剤を用いるのが望ましく、本実施例では信越化学工業社製の一液タイプ、縮合反応型(湿度硬化)のシリコーンゴム系接着剤KE-3417を用いた。また、塗布量は1か所あたり10mgとした。
【0067】
接着剤Dの部分でも、実施例1における電気接点Cと同様に、ヒータ300への接触によってヒータ300の熱を奪い、局所的に温度低下が生じる。すなわち、接着剤Dもヒータ300への接触部材と言える。そこで、本実施例におけるサーミスタTは、電気接点Cまたは接着剤Dの対向近傍の長手位置(長手方向において電気接点C、接着剤Dがヒータと接触する領域と重なる位置、あるいは当該領域の長手幅中央(重心)の位置におけるヒータ温度を検知可能な位置)に配置した。発熱ブロックHB3~HB5では接着剤による温度低下が大きかったため、接着剤D3~D5の対向位置近傍にサーミスタT1-3、T1-4、T2-5をそれぞれ配置した。発熱ブロックHB2と発熱ブロックHB6には接着剤を塗布していないため、電気接点C2と電気接点C6の対向近傍にサーミスタT1-2とサーミスタT2-6をそれぞれ配置した。発熱ブロックHB1と発熱ブロックHB7では実施例1と同様に、電気接点C1と電気接点C7と離れた位置に、サーミスタT1-1とサーミスタT2-7をそれぞれ配置した。
図10に示すサーミスタTと接触部材(電気接点Cまたは接着剤D)との距離Lは、L1=10mm、L2=3mm、L3=10mm、L4=10mm、L5=10mm、L6=3mm、L7=10mmである。
【0068】
実施例2におけるヒータ温度分布も、
図10に示している。電気接点Cや接着剤D、安全素子212近傍ではヒータ温度が、その他の位置より低くなっているが、発熱ブロックHB1~HB7内では最低温度が230℃に保たれている。本実施例の構成でも、実施例1と同様の条件で効果を確認したところ、定着不良は発生しなかった。
【0069】
以上より、ヒータ300への接触部材として電気接点Cや接着剤Dの対向近傍の長手位置に、サーミスタTを配置することで、安定して温度制御ができ、定着不良を抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
100…画像形成装置、200…定着装置、201…ヒータ保持部材、202…定着フィルム、208…加圧ローラ、212…安全素子、300…ヒータ、T…温度検知素子、C…接点部材