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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20240415BHJP
   B61D 33/00 20060101ALI20240415BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20240415BHJP
   B60N 3/02 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B61D37/00 F
B61D37/00 Z
B61D33/00 A
B61D33/00 Z
B60N3/00 Z
B60N3/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020031605
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021133819
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松方 稜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】貴志 崇
(72)【発明者】
【氏名】岸 康敏
(72)【発明者】
【氏名】玉川 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大野 幸奈
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-137405(JP,A)
【文献】特開2008-296815(JP,A)
【文献】特開2006-35969(JP,A)
【文献】特開2011-37440(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0383897(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00,33/00,
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、前記客室に配設される腰掛と、前記腰掛の前記客室の天井側に、前記車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、
前記荷棚と、前記荷棚の長手方向端部に連結することで前記荷棚を保持する保持柱と、前記保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、
前記荷棚ユニットは、前記ベース体のみが前記車両構体を構成する床構体の前記客室の側の面に結合され、前記側構体からは独立した状態で前記客室の内部に組付けられること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、前記客室に配設される腰掛と、前記腰掛の前記客室の天井側に、前記車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、
前記荷棚と、前記荷棚の長手方向端部に連結することで前記荷棚を保持する保持柱と、前記保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、
前記荷棚ユニットは、前記ベース体のみが前記車両構体の前記客室の側の面に結合され、前記側構体からは独立した状態で前記客室の内部に組付けられること、
前記ベース体は、前記車両構体を構成する床構体の前記客室の側の面に結合されること、
前記ベース体には、1本の前記保持柱が、前記客室の天井側に向かって立設され、前記保持柱の、前記客室の天井側の端部が、前記荷棚に連結していること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、前記客室に配設される腰掛と、前記腰掛の前記客室の天井側に、前記車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、
前記荷棚と、前記荷棚の長手方向端部に連結することで前記荷棚を保持する保持柱と、前記保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、
前記荷棚ユニットは、前記ベース体のみが前記車両構体の前記客室の側の面に結合され、前記側構体からは独立した状態で前記客室の内部に組付けられること、
前記ベース体は、前記車両構体を構成する床構体の前記客室の側の面に結合されること、
前記ベース体から、2本の前記保持柱が、前記客室の天井側に向かって立設され、2本の前記保持柱のそれぞれの、前記客室の天井側の端部が、前記荷棚に連結していること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、前記客室に配設される腰掛と、前記腰掛の前記客室の天井側に、前記車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、
前記荷棚と、前記荷棚の長手方向端部に連結することで前記荷棚を保持する保持柱と、前記保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、
前記荷棚ユニットは、前記ベース体のみが前記車両構体の前記客室の側の面に結合され、前記側構体からは独立した状態で前記客室の内部に組付けられること、
前記腰掛は、前記側構体に沿って長手方向を有するロングシートであること、
前記鉄道車両は、前記ロングシートの長手方向端部に、前記側構体から前記客室の内方側に向かって立設される袖仕切りを備えること、
前記ベース体は、前記袖仕切りの前記客室の床側であって、前記袖仕切りの前記客室の内方側の先端部よりも前記客室の外方側において、前記車両構体を構成する床構体の前記客室の側の面に結合されること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、客室に配設される腰掛と、腰掛の客室の天井側に、車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通勤車両等の鉄道車両においては、客室の枕木方向の両側の側壁に沿って、鉄道車両の軌道方向に長手方向を有するロングシートが設けられている。そして、ロングシートの客室の天井側には、特許文献1にも示されるように、ロングシートと平行に、鉄道車両の軌道方向に長手方向を有する荷棚が備えられており、鉄道車両の乗客は、荷棚に荷物を載せることができるようになっている。
【0003】
荷棚の短手方向の一方の端部は、側壁と結合され、他方の端部は、ロングシート端部に配置される袖仕切り等に結合されているスタンションポールに支持されている。つまり、荷棚の短手方向は、側壁とスタンションポールとにより、両持ち状態となっているのが一般的である。
【0004】
客室の側壁は、側構体と、側構体に取り付けられて見付面を構成する側パネルとにより構成されているが、荷棚に耐荷重性を持たせるため、荷棚は、側構体に結合させる必要がある。荷棚を側構体に結合させるため、側パネルには、荷棚の形状に合わせた切欠部を設け、荷棚は、当該切欠部を貫通して、側構体と結合されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-37440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
側パネルに設ける切欠部を荷棚の形状に合わせたものとするのは、側パネルは見付け面であるためであり、乗客が切欠部を可能な限り目視できないようにするためである。切欠部を大きく取れば、荷棚を取り付ける際に、荷棚と切欠部の位置合わせが容易となるが、切欠部が目視できるようになってしまい、見栄えが悪くなる。一方で、切欠部を小さくし過ぎると、荷棚と切欠部の形状が合わなくなってしまい、荷棚を側壁に取り付けられなくなってしまう。
【0007】
よって、上述の通り、切欠部を荷棚の形状に合わせたものとしているのであるが、製造誤差により、荷棚と切欠部の位置が合わなくなる場合があるため、切欠部の形状を、荷棚を客室内に取り付ける際に、荷棚の形状および位置に合わせながら調整する必要があった。通勤車両の客室には、複数の荷棚が取り付けられるのであり、その複数の荷棚毎に、切欠部の調整を行わなければならないため、鉄道車両の製造効率の悪化を招くおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、荷棚の客室への取り付けが容易となる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(1)車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、客室に配設される腰掛と、腰掛の客室の天井側に、車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、荷棚と、荷棚の長手方向端部に連結することで荷棚を保持する保持柱と、保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、荷棚ユニットはベース体のみが車両構体を構成する床構体の客室の側の面に結合され、側構体からは独立した状態で客室の内部に組付けられること、を特徴とする。
【0010】
(1)に記載の鉄道車両によれば、荷棚と、保持柱と、ベース体からなる荷棚ユニットが側構体からは独立した状態で客室の内部に組付けられる。荷棚が側構体に結合されるものでないことから、側パネルに、従来設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚の客室への取り付けが容易となる。なお、腰掛としては、JIS E 7104「鉄道車両-旅客用腰掛」に定められているロングシートやクロスシートなどが考えられる。
【0011】
(2)車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、客室に配設される腰掛と、腰掛の客室の天井側に、車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、荷棚と、荷棚の長手方向端部に連結することで荷棚を保持する保持柱と、保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、荷棚ユニットは、ベース体のみが車両構体の客室の側の面に結合され、側構体からは独立した状態で客室の内部に組付けられること、ベース体は、車両構体を構成する床構体の客室の側の面に結合されること、ベース体には、1本の保持柱が、客室の天井側に向かって立設され、保持柱の、客室の天井側の端部が、荷棚に連結していること、を特徴とする。
【0012】
(3)車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、客室に配設される腰掛と、腰掛の客室の天井側に、車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、荷棚と、荷棚の長手方向端部に連結することで荷棚を保持する保持柱と、保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、荷棚ユニットは、ベース体のみが車両構体の客室の側の面に結合され、側構体からは独立した状態で客室の内部に組付けられること、ベース体は、車両構体を構成する床構体の客室の側の面に結合されること、ベース体から、2本の保持柱が、客室の天井側に向かって立設され、2本の保持柱のそれぞれの、客室の天井側の端部が、荷棚に連結していること、を特徴とする。
【0013】
(2)または(3)に記載の鉄道車両によれば、荷棚と、保持柱と、ベース体からなる荷棚ユニットが、ベース体が床構体に結合されることで、側構体からは独立した状態で客室の内部に組付けられる。荷棚が側構体に結合されるものでないことから、側パネルに、従来設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚の客室への取り付けが容易となる。なお、床構体とは、例えば、客室の床面をなす床板パネルと台枠とからなる構造体であり、ベース体は、床板パネルまたは台枠のどちらか一方に結合されるか、床板パネルおよび台枠の双方に結合されることが考えられる。
【0014】
(4)車両構体に囲まれた空間としての客室を有する鉄道車両であって、客室に配設される腰掛と、腰掛の客室の天井側に、車両構体を構成する側構体に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、荷棚と、荷棚の長手方向端部に連結することで荷棚を保持する保持柱と、保持柱が立設されるベース体と、により荷棚ユニットが構成されること、荷棚ユニットは、ベース体のみが車両構体の客室の側の面に結合され、側構体からは独立した状態で客室の内部に組付けられること、腰掛は、側構体に沿って長手方向を有するロングシートであること、鉄道車両は、ロングシートの長手方向端部に、側構体から客室の内方側に向かって立設される袖仕切りを備えること、ベース体は、袖仕切りの客室の床側であって、袖仕切りの客室の内方側の先端部よりも客室の外方側において、車両構体を構成する床構体の客室の側の面に結合されること、を特徴とする。
【0015】
(4)に記載の鉄道車両によれば、床構体に結合されるベース体に乗客がつまずくおそれが低減される。
客室の、ロングシートの客室の内方側には、通路が設けられている。ベース体が床構体に結合される場合、ベース体が通路上に位置すると、乗客がベース体につまずき、転倒するおそれがある。そこで、ベース体を、袖仕切りの客室の床側であって、袖仕切りの客室の内方側の先端部よりも客室の外方側に位置させることで、ベース体が通路にいる乗客の邪魔にならず、乗客がつまずくおそれが低減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る鉄道車両によれば、荷棚の客室への取り付けが容易な鉄道車両とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る鉄道車両の、枕木方向に切断した断面図である。
図2】第1の実施形態に係る鉄道車両の客室内部を表す図である。
図3】(A)は、図1の荷棚と保持柱の結合部分の部分拡大図である。(B)は、図2の荷棚と保持柱の結合部分の部分拡大図である。
図4】第2の実施形態に係る鉄道車両の、枕木方向に切断した断面図である。
図5】第2の実施形態に係る鉄道車両の変形例を表す図である。
図6】第2の実施形態に係る鉄道車両の変形例における、荷棚と保持柱の結合部分の正面図である。
図7】(A)および(B)は、第1の実施形態に係る鉄道車両の変形例を表す図である。
図8】第3の実施形態に係る鉄道車両の、枕木方向に切断した断面図である。
図9】(A)は、図8の荷棚と保持柱の結合部分の部分拡大図である。(B)は、荷棚と保持柱の結合部分を拡大する部分拡大図であり、図3(B)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の鉄道車両の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は第1の実施形態に係る鉄道車両1の、枕木方向に切断した断面図である。鉄道車両1は、在来線等の通勤車両であり、図1に示されるように、車両構体2に囲まれた空間として、客室3を内部に有している。また、鉄道車両1の側面には、客室3に乗客が出入り可能な乗降口32(図2参照)が設けられている。
【0021】
車両構体2は、床板パネル24とともに床構体をなす台枠21と、台枠21の枕木方向両端部に立設される一対の側構体22と、一対の側構体22の上端部に接続される屋根構体23と、台枠21の軌道方向両端部に立設される不図示の妻構体と、により6面体をなすように構成されている。また、車両構体2は、枕ばねを介して台車に支持されているが、図1において枕ばねおよび台車は省略している。
【0022】
台枠21の客室3の側の面には床板パネル24が貼り付けられ、客室3の床27が形成されている。床27の枕木方向の中央部は通路として利用される。側構体22の客室3の側の面には側パネル25が取り付けられ、客室3の側壁28が形成されている。屋根構体23の客室3の側の面には天井パネル26が取り付けられ、客室3の天井29が形成されている。
【0023】
そして、客室3には、側壁28に沿って長手方向を有するロングシート4(腰掛の一例)が配設されている。このロングシート4が配設される位置は、例えば、図2に示すように、隣り合う乗降口32,32の間である。また、ロングシート4の長手方向の両端部には、袖仕切り5が配設されている。袖仕切り5は側構体22に結合されており、側構体22から客室3の内方側に向かって立設されている。
【0024】
さらに、客室3には、荷棚ユニット6が配設される。この荷棚ユニット6は、荷棚61と、一対の保持柱62と、一対のベース体63と、からなっており、ロングシート4の客室3の天井29側において、荷棚61がロングシート4の長手方向に沿って長手方向を有するように位置されるよう、客室3に配設されている。
【0025】
一対のベース体63は、図2に示すように、ロングシート4の長手方向を挟むようにして、床27の上に配置され、床板パネル24を貫通するボルト30によって台枠21の客室3の側の面に結合されている。また、一対のベース体63のそれぞれは、袖仕切り5と、乗降口32との間において、袖仕切り5寄りに位置されている。ベース体63を、乗降口32よりも、袖仕切り5寄りに位置させることで、ベース体63が、乗降口32から客室3に出入りする乗客の足元の障害になりにくくなっている。なお、本実施例において、ベース体63は台枠21のみに結合されているが、床板パネル24のみに結合されるものとしても良く、さらには、台枠21と床板パネル24の双方に結合されるものとしても良い。
【0026】
また、一対のベース体63のそれぞれに、丸棒状に形成された1本の保持柱62が、客室3の天井29に向かって立設されている。保持柱62は、客室3の天井29側の端部に、保持部材621(図3(A)および図3(B)参照)を備えており、該保持部材621が、荷棚61の長手方向端部を保持している。なお、保持柱62は、丸棒状に形成されているため、鉄道車両1の乗客が握りやすくなっており、手すりとして利用することができる。
【0027】
保持部材621は、保持柱62が結合されている側の端部とは反対側の端部(上端部)に、荷棚61の長手方向と平行な方向に貫通する貫通孔621aが形成されている。また、荷棚61には、固定用パイプ611が、荷棚61の長手方向の一方の端部から他方の端部まで横架されており、保持部材621による荷棚61の保持は、保持部材621の貫通孔621aに、荷棚61の固定用パイプ611が挿通されることで行われる。
【0028】
なお、荷棚61は、客室3の枕木方向の外方に向かって下り傾斜となるように保持されている。傾斜を持たせることで、荷棚61に乗せた荷物が客室3の通路側に落下しにくいようになっている。
【0029】
以上のように、荷棚61と、保持柱62と、ベース体63からなる荷棚ユニット6が側構体22からは独立した状態で客室3の内部に組付けられる。荷棚61が側構体22に結合されるものでないことから、側パネル25に、従来、荷棚を側構体に結合するために設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚61の客室3への取り付けが容易となる。
【0030】
なお、図7(A)および図7(B)に示すように、保持柱92による荷棚91の保持は、荷棚91の荷棚長手方向の端部の外方側で行うこととしても良い。例えば、保持柱92の上端部に、弓なり状の保持部材921が一体とされており、保持部材921は、荷棚91の長手方向と平行な方向に貫通する貫通孔921aが形成されている。荷棚91の長手方向の一方の端部から他方の端部まで横架する固定用パイプ911は、荷棚91の長手方向の端部から外方に突出されており、固定用パイプ911の突出した部分が、貫通孔921aに挿通されることで、保持部材921による荷棚91の保持が行われるのである。
【0031】
図7(A)に示す保持柱92は、荷棚91の、短手方向の中央部よりも、客室3の外方寄りに位置している。この場合、荷棚91をロングシート4の上方に位置させるために、ベース体63は、図1に示す位置よりも、客室3の外方寄りに位置させるのが望ましい。例えば、ベース体63は、袖仕切り5の客室3の床27側であって、袖仕切り5の客室3の内方側の先端部よりも客室3の外方側において、台枠21に結合させるのである。袖仕切り5の客室3の内方側の先端部よりも客室の外方側に位置させることで、ベース体63が通路にいる乗客の邪魔にならず、乗客がつまずくおそれが低減されるという効果も得ることができる。
【0032】
以上説明したように、第1の実施形態に係る鉄道車両1によれば、
(1)車両構体2に囲まれた空間としての客室3を有する鉄道車両1であって、客室3に配設される腰掛(例えば、ロングシート4)と、腰掛(例えば、ロングシート4)の客室3の天井29側に、車両構体2を構成する側構体22に沿って長手方向を有するように配置される荷棚61(91)と、を備える鉄道車両1において、荷棚61(91)と、荷棚61(91)の長手方向端部に連結することで荷棚61(91)を保持する保持柱62(92)と、保持柱62(92)が立設されるベース体63と、により荷棚ユニット6が構成されること、荷棚ユニット6はベース体63のみが車両構体2の客室3の側の面に結合され、側構体22からは独立した状態で客室3の内部に組付けられること、を特徴とする。
【0033】
(1)に記載の鉄道車両1によれば、荷棚61(91)と、保持柱62(92)と、ベース体63からなる荷棚ユニット6が側構体からは独立した状態で客室3の内部に組付けられる。荷棚61(91)が側構体22に結合されるものでないことから、側パネル25に、従来設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚61の客室への取り付けが容易となる。なお、腰掛としては、JIS E 7104「鉄道車両-旅客用腰掛」に定められているロングシートやクロスシートなどが考えられる。
【0034】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、ベース体63は、車両構体2を構成する床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)の客室3の側の面に結合されること、ベース体63には、1本の保持柱62(92)が、客室3の天井29側に向かって立設され、保持柱62(92)の、客室3の天井29側の端部が、荷棚61(91)に連結していること、を特徴とする。
【0035】
(2)に記載の鉄道車両によれば、荷棚61(91)と、保持柱62(92)と、ベース体63からなる荷棚ユニット6が、ベース体63が床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)に結合されることで、側構体22からは独立した状態で客室3の内部に組付けられる。荷棚61(91)が側構体22に結合されるものでないことから、側パネル25に、従来設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚61(91)の客室3への取り付けが容易となる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に本発明の鉄道車両の第2の実施形態について、図4を参照しながら詳細に説明する。
第2の実施形態に係る鉄道車両201は、車両構体2に囲まれた空間として客室3を内部に有しており、乗客が出入り可能な乗降口32(図2参照)が設けられている点と、車両構体2が、台枠21と、一対の側構体22と、屋根構体23と、不図示の妻構体とからなる点と、それぞれの構体にパネル(床板パネル24、側パネル25、天井パネル26)が取り付けられ、客室の内壁(床27、側壁28、天井29)が形成されている点と、側壁28に沿って長手方向を有するロングシート4が配設され、ロングシート4の長手方向の両端部に、袖仕切り5が配設されている点は、第1の実施形態に係る鉄道車両1と同様である。
【0037】
客室3には、荷棚ユニット7が配設される。この荷棚ユニット7は、荷棚71と、保持柱72A,・72Bと、一対のベース体73と、からなっており、ロングシート4の客室3の天井29側において、荷棚71がロングシート4の長手方向に沿って長手方向を有するように、客室3に配設されている。
【0038】
一対のベース体73が、ロングシート4の長手方向を挟むようにして、床27の上に配置される点と、一対のベース体73のそれぞれは、袖仕切り5と、乗降口32との間において、袖仕切り5寄りに位置されている点と、床板パネル24を貫通するボルト30により台枠21の客室3の側の面に結合されている点は、第1の実施形態に係る鉄道車両1と同様である。なお、ベース体73は、床板パネル24のみに結合されるものとしても良く、さらには、台枠21と床板パネル24の双方に結合されるものとしても良い。
【0039】
さらに、ベース体73は、図4に示すように、袖仕切り5の客室3の内方側の先端部よりも客室3の外方側において、台枠21に結合されている。袖仕切り5の客室3の内方側の先端部よりも客室3の外方側に位置させることで、ベース体73が通路にいる乗客の邪魔にならず、乗客がつまずくおそれが低減される。
【0040】
また、一対のベース体73のそれぞれに、丸棒状に形成された2本の保持柱72A・72Bが、客室3の天井29に向かって立設されている。つまり、1つの荷棚ユニット7につき、保持柱72Aが2本、保持柱72Bが2本用いられる。
【0041】
保持柱72Aは、客室3の通路側に膨出するように弓なり状の形状を有しているとともに、丸棒状に形成されているため、乗客が握りやすくなっており、手すりとして利用することが可能である。
また、保持柱72Bは、床27に対して直角ではなく、通路側にやや倒れるようにして天井29に向かって延伸している。保持柱72Bも、丸棒状に形成されているため、乗客が握りやすくなっており、乗降口32付近に立つ乗客が、手すりとして利用することができる。従来、鉄道車両の乗降口の両脇の側壁には、手すりが設置されるが、本実施形態によれば、保持柱72Bを乗降口32の両脇の手すりとして利用できるため、乗降口32の両脇の側壁28に手すりを設置する必要がなく、製造コストの削減につながる。
【0042】
保持柱72A・72Bは、客室3の天井29側の端部に、第1の実施形態と同様に、保持部材を備えており、該保持部材が、荷棚71の長手方向端部を保持している。荷棚71には、固定用パイプ711が、荷棚71の長手方向の一方の端部から他方の端部まで横架されているため、第1の実施形態と同様に、保持柱72A・72Bの保持部材に、固定用パイプ711が挿通されることで、荷棚71の保持が行われる。また、荷棚71が、客室3の枕木方向の外方に向かって下り傾斜となるように保持されている点は、第1の実施形態と同様である。
【0043】
以上のように、荷棚71と、保持柱72A・72Bと、ベース体73からなる荷棚ユニット7が側構体22からは独立した状態で客室3の内部に組付けられる。荷棚71が側構体22に結合されるものでないことから、側パネル25に、従来、荷棚を側構体に結合するために設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚61の客室3への取り付けが容易となる。
【0044】
なお、図5に示すように、1つのベース体83に対し、2本の弓なり状の保持柱82A・82Bを立設させ、保持柱82A・82Bの客室3の天井29側の端部(上端部)において、荷棚81を保持するようにしても良い。
【0045】
保持柱82Aは、客室3の通路側に膨出した弓なり状となっており、保持柱82Bは、客室3の外方側に膨出した弓なり状となっている。さらに、荷棚81には、天井29側に膨出した弓なり状の柵部材84が立設されている。柵部材84により、荷棚81の長手方向端部から荷物が落下することを防止するとともに、保持柱82A・82Bおよび柵部材84が、一体として楕円状の外観を有するため、意匠性に優れた構成とすることができる。
【0046】
保持柱82A・82Bのそれぞれの上端部には、保持部材821(図6参照)を備えており、該保持部材821が、荷棚81の長手方向端部を保持している。
【0047】
保持部材821は、荷棚81の長手方向と平行な方向に貫通する貫通孔821aが形成されている。また、荷棚81には、固定用パイプ811が、荷棚81の長手方向の一方の端部から他方の端部まで横架されており、保持部材821による荷棚81の保持は、保持部材821の貫通孔821aに、荷棚81の固定用パイプ811が挿通されることで行われる。
【0048】
さらに、柵部材84は、保持部材821の客室3の天井29側の端面に固定されることで、荷棚81に立設されている。なお、柵部材84は、荷棚81の長手方向の両端部に立設されている。
【0049】
以上説明したように、第2の実施形態に係る鉄道車両201によれば、
(3)(1)に記載の鉄道車両201において、ベース体73(83)は、車両構体2を構成する床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)の客室3の側の面に結合されること、ベース体73(83)から、2本の保持柱72A・72B(82A・82B)が、客室3の天井29側に向かって立設され、2本の保持柱72A・72B(82A・82B)のそれぞれの、客室3の天井29側の端部が、荷棚71(81)に連結していること、を特徴とする。
【0050】
(3)に記載の鉄道車両201によれば、荷棚71(81)と、保持柱72A・72B(82A・82B)と、ベース体73(83)からなる荷棚ユニット7(8)が、ベース体73(83)が床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)に結合されることで、側構体22からは独立した状態で客室3の内部に組付けられる。荷棚71(81)が側構体22に結合されるものでないことから、側パネル25に、従来設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚71(81)の客室への取り付けが容易となる。
【0051】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の鉄道車両201において、腰掛は、側構体22に沿って長手方向を有するロングシート4であること、鉄道車両201は、ロングシート4の長手方向端部に、側構体22から客室3の内方側に向かって立設される袖仕切り5を備えること、ベース体73(83)は、袖仕切り5の客室の床27側であって、袖仕切り5の客室3の内方側の先端部よりも客室3の外方側において、車両構体2を構成する床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)の客室3の側の面に結合されること、を特徴とする。
【0052】
(4)に記載の鉄道車両201によれば、床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)に結合されるベース体73(83)に乗客がつまずくおそれが低減される。
客室3の、ロングシート4の客室の内方側には、通路が設けられている。ベース体73(83)が床構体(台枠21と床板パネル24の両方、またはいずれか一方)に結合される場合、ベース体73(83)が通路上に位置すると、乗客がベース体73(83)につまずき、転倒するおそれがある。そこで、ベース体73(83)を、袖仕切り5の客室3の床27側であって、袖仕切り5の客室3の内方側の先端部よりも客室3の外方側に位置させることで、ベース体73(83)が通路にいる乗客の邪魔にならず、乗客がつまずくおそれが低減される。
【0053】
(第3の実施形態)
次に本発明の鉄道車両の第3の実施形態について、図8および図9を参照しながら詳細に説明する。
第3の実施形態に係る鉄道車両202は、車両構体2に囲まれた空間として客室3を内部に有しており、乗客が出入り可能な乗降口32(図2参照)が設けられている点と、車両構体2が、台枠21と、一対の側構体22と、屋根構体23と、不図示の妻構体とからなる点と、それぞれの構体にパネル(床板パネル24、側パネル25、天井パネル26)が取り付けられ、客室の内壁(床27、側壁28、天井29)が形成されている点と、側壁28に沿って長手方向を有するロングシート4が配設され、ロングシート4の長手方向の両端部に、袖仕切り5が配設されている点は、第1の実施形態に係る鉄道車両1および第2の実施形態に係る鉄道車両201と同様である。
【0054】
客室3の天井29には、荷棚ユニット10が配設される。この荷棚ユニット10は、荷棚101と、複数の保持柱102と、複数のベース体103と、からなっており、ロングシート4の客室3の天井29側において、荷棚101がロングシート4の長手方向に沿って長手方向を有するように配置されるよう、客室3に配設されている。
【0055】
一対のベース体103は、ロングシート4の長手方向を挟むようにして、天井29に配置され、ボルト31によって屋根構体23の客室3の側の面に結合されている。また、一対のベース体103のそれぞれに、1本の保持柱102が、客室3の床27に向かって立設されている。保持柱102は、客室3の床27側の端部に、保持部材104(図9参照)を備えており、該保持部材104が、荷棚101の長手方向端部を保持している。
【0056】
保持部材104は、保持柱102が結合されている側の端部とは反対側の端部(下端部)に、荷棚101の長手方向と平行な方向に貫通する貫通孔104aが形成されている。また、荷棚101には、固定用パイプ105が、荷棚101の長手方向の一方の端部から他方の端部まで横架されており、保持部材104による荷棚101の保持は、保持部材104の貫通孔104aに、荷棚101の固定用パイプ105が挿通されることで行われる。
【0057】
なお、荷棚101が、客室3の枕木方向の外方に向かって下り傾斜となるように保持されている点は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様である。
【0058】
以上説明したように、第3の実施形態に係る鉄道車両202によれば、
(5)(1)に記載の鉄道車両202において、ベース体103は、車両構体2を構成する屋根構体23の客室3の側の面に結合されること、を特徴とする。
【0059】
(5)に記載の鉄道車両202によれば、荷棚101と、保持柱102と、ベース体103からなる荷棚ユニット10が、ベース体103が屋根構体23に結合されることで、側構体22からは独立した状態で客室3の内部に組付けられる。荷棚101が側構体22に結合されるものでないことから、側パネル25に、従来設けられていた切欠部を設ける必要がなく、荷棚取付けの際に行われていた切欠部の調整を行う必要がない。よって、荷棚101の客室3への取り付けが容易となる。
【0060】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
【0061】
例えば、荷棚ユニット6において、荷棚61は、長手方向の両端部を保持柱62により保持されているが、これに加えて、荷棚61の長手方向中央部にも保持柱62を立設させ、手すりとして利用することとしても良い。荷棚ユニット7であれば、同様に荷棚71の長手方向中央部に、保持柱72Aを立設させることができ、荷棚ユニット8も同様に、荷棚81の長手方向中央部に、保持柱82Aを立設させることができる。
【0062】
また、荷棚ユニット10において、荷棚101は、長手方向の両端を1本ずつの保持柱102により保持されているが、荷棚ユニット7,8と同様に、1つのベース体103につき2本の保持柱を立設させることで、荷棚101の長手方向の両端を2本ずつの保持柱によって保持することとしても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 鉄道車両
2 車両構体
3 客室
4 ロングシート(腰掛の一例)
6 荷棚ユニット
22 側構体
61 荷棚
62 保持柱
63 ベース体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9