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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240415BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240415BHJP
   G03G 21/00 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
G03G15/20 555
H05B3/00 310C
G03G21/00 510
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020038910
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140073
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 望
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185462(JP,A)
【文献】特開2001-100558(JP,A)
【文献】特開2000-122489(JP,A)
【文献】特開2013-235181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発熱体と、
交流電源から前記第1の発熱体への電力の供給と電力の遮断を切り替える第1のスイッチ素子と、
第2の発熱体と、
前記交流電源から前記第2の発熱体への電力の供給と電力の遮断を切り替える第2のスイッチ素子と、
前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対する力供が排他的に行われるように前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子を制御する制御手段と、
を備える加熱装置であって、
前記第1のスイッチ素子が導通状態又は非導通状態となっていることを検出する第1の検出回路と、
前記第2のスイッチ素子が導通状態又は非導通状態となっていることを検出する第2の検出回路と、
前記第1の検出回路と前記第2の検出回路双方の検出結果に基づいて、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体対して同時に電力が供給されている状態であるか否かを判断する判断手段と、
前記交流電源と前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子とを電気的に接続する電力供給路に設けられ、前記交流電源から前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子へ電力を供給する接続状態又は電力供給を遮断する非接続状態となるリレーと、
を備え
前記判断手段は、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であると判断した場合、前記リレーを前記非接続状態とすることで前記第1の発熱体と前記第2の発熱体への電力供給を遮断することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第1の検出回路は、前記第1のスイッチ素子に並列に接続されており、
前記第2の検出回路は、前記第2のスイッチ素子に並列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路は、ACフォトカプラを含み、
前記判断手段は、前記第1の検出回路のACフォトカプラの発光部が消灯し、かつ、前記第2の検出回路のACフォトカプラの発光部が消灯している場合に、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であると判断することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第1の検出回路は、前記第1のスイッチ素子に直列に接続されており、
前記第2の検出回路は、前記第2のスイッチ素子に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路は、ACフォトカプラを含み、
前記判断手段は、前記第1の検出回路のACフォトカプラの発光部が発光し、かつ、前記第2の検出回路のACフォトカプラの発光部が発光している場合に、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であると判断することを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記第1の検出回路のACフォトカプラの発光部が消灯し、かつ、前記第2の検出回路のACフォトカプラの発光部が消灯している場合に、前記交流電源からの電力供給が遮断されていると判断することを特徴とする請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記交流電源の正の半波及び負の半波の両方の期間で前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であるか否かの判断を行うことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路は、DCフォトカプラを含み、
前記判断手段は、前記第1の検出回路のDCフォトカプラの発光部が発光し、かつ、前記第2の検出回路のDCフォトカプラの発光部が発光している場合に、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であると判断することを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記判断手段は、前記第1の検出回路のDCフォトカプラの発光部が消灯し、かつ、前記第2の検出回路のDCフォトカプラの発光部が消灯している場合に、前記交流電源からの電力供給が遮断されていると判断することを特徴とする請求項8に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記判断手段は、前記交流電源の交流電圧の正の半波及び負の半波のいずれか一方の期間で前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であるか否かの判断を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の加熱装置。
【請求項11】
複数の前記発熱体により加熱される第1の回転体と、
前記第1の回転体とともにニップ部を形成する第2の回転体と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記第1の回転体は、フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記複数の発熱体は、前記フィルムの内面に接するように設けられており、
前記ニップ部は、前記フィルムを介して前記複数の発熱体と前記第2の回転体とにより形成されていることを特徴とする請求項12に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体が配置される基板と、
2つの前記第1の発熱体と、
を備え、
前記第2の発熱体は、前記第1の発熱体よりも前記基板の長手方向の長さが短い第3の発熱体と、前記第3の発熱体よりも前記長手方向の長さが短い第4の発熱体と、を有し、
一方の前記第1の発熱体は、前記基板の短手方向の一方の端部に配置され、他方の前記第1の発熱体は、前記短手方向の他方の端部に配置され、
前記短手方向において、前記一方の第1の発熱体、前記第3の発熱体、前記第4の発熱体、前記他方の第1の発熱体の順に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項15】
前記一方の第1の発熱体及び前記他方の第1の発熱体の一方の端部が電気的に接続された第1の接点と、
前記一方の第1の発熱体、前記他方の第1の発熱体及び前記第3の発熱体の他方の端部が電気的に接続された第2の接点と、
前記第3の発熱体及び前記第4の発熱体の一方の端部が電気的に接続された第3の接点と、
前記第4の発熱体の他方の端部が電気的に接続された第4の接点と、
を備えることを特徴とする請求項14に記載の加熱装置。
【請求項16】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
記第1の発熱体及び前記第2の発熱体を有し、前記第1の発熱体又は前記第2の発熱体により前記記録材に転写された未定着のトナー像を加熱して定着させる請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の加熱装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着しトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
記第1の発熱体、前記第3の発熱体及び前記第4の発熱体を有し、前記第1の発熱体、前記第3の発熱体又は前記第4の発熱体により前記記録材に転写された未定着のトナー像を加熱して定着させる請求項14又は請求項15に記載の加熱装置と、
前記交流電源から前記第3の発熱体及び前記第4の発熱体への電力供給路をいずれか一方に切り替える切替手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記記録材の搬送方向に直交する方向の長さに応じて、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子を制御し、かつ、前記切替手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の像加熱装置で生じる非通紙部昇温に対して、ヒータに複数の発熱体を備え、記録紙の幅に応じて複数の発熱体への電力供給を制御して非通紙部昇温の軽減を図る手段が提案されている。ここで、複数の発熱体を備える像加熱装置は2種類の方式に大別される。第1の方式は、複数の発熱体を同時に発熱させながら使用する方法である(例えば、特許文献1参照)。第2の方式は、発熱体への電力供給を排他的に行う方法である(例えば、特許文献2参照)。具体的には、発熱体1に電力を供給している期間は発熱体2には電力を供給せず、発熱体2に電力を供給している期間は発熱体1には電力を供給しない等である。第2の方式は第1の方式に比べてヒータが簡素で安価に製造できるメリットがあり、第1の方式より安価な画像形成装置に好適である。
【0003】
第2の方式の像加熱装置の場合、複数の発熱体に同時に電力を供給すると装置の破損につながるおそれがある。そのため、複数の発熱体への電力供給を制御する複数のトライアックが何らかの不具合により同時に電力を供給する状態となることを防止する必要がある。このため、トライアックの故障(異常)を正確に検知する技術が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-004860号公報
【文献】特開2001-100558号公報
【文献】特許第5577077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の発熱体への電力の同時供給を防止するためには、複数のトライアックの電力供給状態を検知した上で、それら複数の発熱体の電力供給状態の相互関係を判断することが求められる。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、複数の発熱体に排他的に電力を供給する加熱装置における故障判断の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)第1の発熱体と、交流電源から前記第1の発熱体への電力の供給と電力の遮断を切り替える第1のスイッチ素子と、第2の発熱体と、前記交流電源から前記第2の発熱体への電力の供給と電力の遮断を切り替える第2のスイッチ素子と、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対する力供が排他的に行われるように前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子を制御する制御手段と、を備える加熱装置であって、前記第1のスイッチ素子が導通状態又は非導通状態となっていることを検出する第1の検出回路と、前記第2のスイッチ素子が導通状態又は非導通状態となっていることを検出する第2の検出回路と、前記第1の検出回路と前記第2の検出回路双方の検出結果に基づいて、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体対して同時に電力が供給されている状態であるか否かを判断する判断手段と、前記交流電源と前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子とを電気的に接続する電力供給路に設けられ、前記交流電源から前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子へ電力を供給する接続状態又は電力供給を遮断する非接続状態となるリレーと、を備え、前記判断手段は、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体に対して同時に電力が供給されている状態であると判断した場合、前記リレーを前記非接続状態とすることで前記第1の発熱体と前記第2の発熱体への電力供給を遮断することを特徴とする加熱装置。
(2)静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着しトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体を有し、前記第1の発熱体又は前記第2の発熱体により前記記録材に転写された未定着のトナー像を加熱して定着させる前記(1)に記載の加熱装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の発熱体に排他的に電力を供給する加熱装置における故障判断の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1~3の画像形成装置の構成を示す断面図
図2】実施例1の定着装置の回路ブロック図
図3】実施例1の定着装置の詳細図
図4】実施例1の判断部の動作を示すシーケンス図
図5】実施例2の定着装置の回路ブロック図
図6】実施例2の定着装置の詳細図
図7】実施例2の判断部の動作を示すシーケンス図
図8】実施例3の定着装置の詳細図
図9】実施例3の判断部の動作を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0013】
[全体構成]
図1は実施例1の定着装置を搭載した一例の画像形成装置である、インライン方式のカラー画像形成装置を示す構成図である。図1を用いて電子写真方式のカラー画像形成装置の動作を説明する。なお、第1ステーションをイエロー(Y)色のトナー画像形成用のステーション、第2ステーションをマゼンタ(M)色のトナー画像形成用のステーションとしている。また、第3ステーションをシアン(C)色のトナー画像形成用のステーション、第4ステーションをブラック(K)色のトナー画像形成用のステーションとしている。
【0014】
第1ステーションで、像担持体である感光ドラム1aは、OPC感光ドラムである。感光ドラム1aは金属円筒上に感光して電荷を生成するキャリア生成層、発生した電荷を輸送する電荷輸送層等からなる機能性有機材料が複数層積層されたものであり、最外層は電気的導電性が低くほぼ絶縁である。帯電手段である帯電ローラ2aが感光ドラム1aに当接され、感光ドラム1aの回転に伴い、従動回転しながら感光ドラム1a表面を均一に帯電する。帯電ローラ2aには直流電圧又は交流電圧を重畳した電圧が印加され、帯電ローラ2aと感光ドラム1a表面とのニップ部から、回転方向の上流側及び下流側の微小な空気ギャップにおいて放電が発生することにより感光ドラム1aが帯電される。クリーニングユニット3aは、後述する転写後に感光ドラム1a上に残ったトナーをクリーニングするユニットである。現像手段である現像ユニット8aは、現像ローラ4a、非磁性一成分トナー5a、現像剤塗布ブレード7aからなる。感光ドラム1a、帯電ローラ2a、クリーニングユニット3a、現像ユニット8aは、画像形成装置に対して着脱自在な一体型のプロセスカートリッジ9aとなっている。
【0015】
露光手段である露光装置11aは、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニット又はLED(発光ダイオード)アレイから構成され、画像信号に基づいて変調された走査ビーム12aを感光ドラム1a上に照射する。また、帯電ローラ2aは、帯電ローラ2aへの電圧供給手段である帯電高電圧電源20aに接続されている。現像ローラ4aは、現像ローラ4aへの電圧供給手段である現像高電圧電源21aに接続されている。転写手段である1次転写ローラ10aは、1次転写ローラ10aへの電圧供給手段である1次転写高電圧電源22aに接続されている。以上が第1ステーションの構成であり、第2、第3、第4ステーションも同様の構成をしている。他のステーションについて、第1ステーションと同一の機能を有する部品は同一の符号を付し、符号の添え字にステーションごとにb、c、dを付している。なお、以下の説明において、特定のステーションについて説明する場合を除き、添え字a、b、c、dを省略する。
【0016】
中間転写ベルト13は、その張架部材として2次転写対向ローラ15、テンションローラ14、補助ローラ19の3本のローラにより支持されている。テンションローラ14のみバネで中間転写ベルト13を張る方向の力が加えられており、中間転写ベルト13に適当なテンション力が維持されるようになっている。2次転写対向ローラ15はメインモータ(不図示)からの回転駆動を受けて回転し、外周に巻かれた中間転写ベルト13が回動する。中間転写ベルト13は感光ドラム1a~1d(例えば、図1では反時計回り方向に回転)に対して順方向(例えば、図1では時計回り方向)に略同速度で移動する。また、中間転写ベルト13は、矢印方向(時計回り方向)に回転し、1次転写ローラ10は中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と反対側に配置されて、中間転写ベルト13の移動に伴い従動回転する。中間転写ベルト13をはさんで感光ドラム1と1次転写ローラ10とが当接している位置を1次転写位置という。補助ローラ19、テンションローラ14及び2次転写対向ローラ15は電気的に接地されている。なお、第2~第4ステーションも1次転写ローラ10b~10dは第1ステーションの1次転写ローラ10aと同様の構成としているので説明を省略する。
【0017】
次に実施例1の画像形成装置の画像形成動作を説明する。画像形成装置は待機状態時に印刷指令を受信すると、画像形成動作をスタートする。感光ドラム1や中間転写ベルト13等はメインモータ(不図示)によって所定のプロセススピードで矢印方向に回転を始める。感光ドラム1aは、帯電高電圧電源20aにより電圧が印加された帯電ローラ2aによって一様に帯電され、続いて露光装置11aから照射された走査ビーム12aによって画像情報(画像データともいう)に従った静電潜像が形成される。現像ユニット8a内のトナー5aは、現像剤塗布ブレード7aによって負極性に帯電されて現像ローラ4aに塗布される。そして、現像ローラ4aには、現像高電圧電源21aより所定の現像電圧が供給される。感光ドラム1aが回転して感光ドラム1a上に形成された静電潜像が現像ローラ4aに到達すると、静電潜像は負極性のトナーが付着することによって可視化され、感光ドラム1a上には第1色目(例えば、Y(イエロー))のトナー像が形成される。他の色M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各ステーション(プロセスカートリッジ9b~9d)も同様に動作する。各色の1次転写位置間の距離に応じて、一定のタイミングでコントローラ(不図示)からの書き出し信号を遅らせながら、露光による静電潜像が各感光ドラム1a~1d上に形成される。それぞれの1次転写ローラ10a~10dにはトナーと逆極性の直流高電圧が印加される。以上の工程により、順に中間転写ベルト13にトナー像が転写されていき(以下、1次転写という)、中間転写ベルト13上に多重トナー像が形成される。
【0018】
その後、トナー像の作像に合わせて、カセット16に積載されている記録材である用紙Pは、搬送経路Yに沿って搬送される。具体的には、用紙Pは給紙ソレノイド(不図示)によって回転駆動される給紙ローラ17により給送(ピックアップ)される。給送された用紙Pは搬送ローラによりレジストレーションローラ(以下、レジストローラという)18に搬送される。そして、用紙Pは、搬送方向に直交する方向の長さ(以下、幅という)を検知する検知手段である紙幅センサ122を通過する。レジストローラ18の下流側にはレジストレーションセンサ(以下、レジセンサという)123が配置されている。レジセンサ123は、用紙Pの先端が到着すると用紙Pの「有り」を検知し、用紙Pの後端が通過すると用紙Pの「無し」を検知する。
【0019】
用紙Pは、中間転写ベルト13上のトナー像に同期して、レジストローラ18によって中間転写ベルト13と2次転写ローラ25との当接部である転写ニップ部へ搬送される。2次転写ローラ25には2次転写高電圧電源26により、トナーと逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト13上に担持された4色の多重トナー像が一括して用紙P上(記録材上)に転写される(以下、2次転写という)。用紙P上に未定着のトナー像が形成されるまでに寄与した部材(例えば、感光ドラム1等)は画像形成手段として機能する。一方、2次転写を終えた後、中間転写ベルト13上に残留したトナーは、クリーニングユニット27によって清掃される。2次転写が終了した後の用紙Pは、加熱装置である定着装置50へと搬送され、トナー像の定着を受けて画像形成物(プリント、コピー)として排出トレー30へと排出される。定着装置50は、第1の回転体であるフィルム51、ニップ形成部材52、第2の回転体である加圧ローラ53、ヒータ251を有する。ヒータ251は、後述する複数の発熱体を有しており、複数の発熱体は、フィルム51の内面に接するように設けられている。また、加圧ローラ53はフィルム51とともにニップ部を形成しており、ニップ部は、フィルム51を介して複数の発熱体と加圧ローラ53とにより形成されている。
【0020】
[回路ブロック図]
図2は、異常検知装置を備える定着装置50の回路ブロック図である。定着装置50は、第1の閉回路100a、第2の閉回路100b、制御部108、検出回路109、検出回路110、判断部111を有している。第1の閉回路100aは、交流電源101、電流ヒューズ102、負荷106、双方向サイリスタ(以下、トライアックという)104、電磁リレー103により構成されている。第2の閉回路100bは、交流電源101、電流ヒューズ102、負荷107、トライアック105、電磁リレー103から構成されている。
【0021】
交流電源101から第1の負荷106(以下、負荷106という)への電力の供給又は電力の遮断は、制御手段である制御部108により、第1のスイッチ素子であるトライアック104の導通/非導通を制御することによってコントロールされる。また、交流電源101から第2の負荷107(以下、負荷107という)への電力の供給又は電力の遮断は、制御部108により、第2のスイッチ素子であるトライアック105の導通/非導通を制御することによってコントロールされる。実施例1の定着装置50においては、負荷106と負荷107に対して交流電源101から同時に電力供給を行わないよう、制御部108がトライアック104及びトライアック105を制御する。詳細については図3を用いて後述する。
【0022】
第1の検出手段である検出回路109は、トライアック104に並列に接続され、トライアック104が導通状態であるか非導通状態であるかを検出する。第2の検出手段である検出回路110も同様に、トライアック105に並列に接続され、トライアック105が導通状態であるか非導通状態であるかを検出する。検出回路109と検出回路110の出力は、判断部111に入力される。判断手段である判断部111は、検出回路109の検出結果と検出回路110の検出結果とに基づいてトライアック104とトライアック105の両方に電力が供給されている異常状態を判断する。具体的には、判断部111は、検出回路109及び検出回路110から入力された信号の相対的な関係に基づいて、トライアック104とトライアック105とが同時に導通状態にあるか否かを判断する。交流電源101とトライアック104及びトライアック105とを電気的に接続する電力供給路には、判断部111により接続状態(導通状態)又は非接続状態(非導通状態)となる接続手段である電磁リレー103が接続されている。判断部111は、トライアック104とトライアック105とが同時に導通状態にあると判断した場合には、電磁リレー103を非導通状態とし、交流電源101から負荷106及び負荷107への電力供給を遮断する。
【0023】
[検出回路の詳細]
図3を用いてより詳細に説明する。ヒータ251は実施例1の画像形成装置の定着装置50内に配置され、未定着のトナー像を用紙Pに定着する際の熱を供給する。ヒータ251は、セラミック基板252、第1の発熱体である発熱体253、第2の発熱体及び第3の発熱体(第3の負荷)である発熱体254、第2の発熱体及び第4の発熱体(第4の負荷)である発熱体255、接点256a~接点256dで構成される。発熱体253は図2で示す負荷106に相当する。発熱体253は、長手方向の長さが略等しい、並列に接続された2本の発熱体から成り、接点256aと接点256dとを介して交流電源101から電力を供給される。発熱体254及び発熱体255は図2で示す負荷107に相当する。なお、長手方向の長さは、発熱体253は発熱体254よりも長く、発熱体255は発熱体254よりも短い。発熱体254は接点256bと接点256dとを介して、発熱体255は接点256bと接点256cとを介して、それぞれ交流電源101から電力を供給される。
【0024】
セラミック基板252には、発熱体253、発熱体254、発熱体255が配置される。一方の発熱体253は、セラミック基板252の短手方向の一方の端部に配置され、他方の発熱体253は、セラミック基板252の短手方向の他方の端部に配置される。短手方向において、一方の発熱体253、発熱体254、発熱体255、他方の発熱体253の順に配置されている。第1の接点である接点256aには、一方の発熱体253及び他方の発熱体253の一方の端部が電気的に接続されている。第2の接点である接点256dには、一方の発熱体253、他方の発熱体253及び発熱体254の他方の端部が電気的に接続されている。第3の接点である接点256bには、発熱体254及び発熱体255の一方の端部が電気的に接続されている。第4の接点である接点256cには、発熱体255の他方の端部が電気的に接続されている。
【0025】
発熱体254及び発熱体255は、C接点リレー201によっていずれか一方が選択されて使用される。切替手段であるC接点リレー201は、交流電源101から発熱体254及び発熱体255への電力供給路を、いずれか一方に切り替える。C接点リレー201は接点201a、201b、201cを有している。C接点リレー201は、接点201aと接点201bとが接続されている場合、発熱体255がC接点リレー201によって短絡された状態となり、トライアック105の負荷としては発熱体254が選択された状態となる。一方、C接点リレー201は、接点201aと接点201cとが接続されている場合、発熱体254がC接点リレー201によって短絡された状態となり、トライアック105の負荷としては発熱体255が選択された状態となる。このように、図2に示す負荷107は、制御部108によってC接点リレー201を制御することにより、用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さに応じて発熱体254又は発熱体255が適宜選択されながら使用される。
【0026】
トライアック104は、制御部108内のCPU219によって制御される。CPU219は、トライアック104のT1端子-T2端子間を導通状態に制御する場合、電流制限抵抗206を介してトランジスタ205にベース電流を供給し、トランジスタ205のコレクタ-エミッタ間を導通状態にする。トランジスタ205のコレクタ-エミッタ間が導通状態になると、電源Vcc1から電流制限抵抗204を介してソリッドステートリレー(以下、SSRとする)202の発光ダイオードに電流が流れ、SSR202の受光部が導通状態となる。SSR202の受光部が導通状態となると、交流電源101から電流制限抵抗203を介してトライアック104のG端子(ゲート端子)にゲート電流が供給され、トライアック104のT1端子-T2端子間が導通状態となる。ここで、電源Vcc1は、例えば3.3Vなどの2次側電位(交流電源101から絶縁された電位)の直流電源である。
【0027】
トライアック105も同様に、CPU219によって制御される。CPU219はトライアック105のT1端子-T2端子間を導通状態に制御する場合、電流制限抵抗216を介してトランジスタ215にベース電流を供給し、トランジスタ215のコレクタ-エミッタ間を導通状態にする。トランジスタ215のコレクタ-エミッタ間が導通状態になると、電源Vcc1から電流制限抵抗214を介してSSR212の発光ダイオードに電流が流れ、SSR212の受光部が導通状態となる。SSR212の受光部が導通状態となると、交流電源101から電流制限抵抗213を介してトライアック105のG端子にゲート電流が供給され、トライアック105のT1端子-T2端子間が導通状態となる。
【0028】
ここで、トライアック104及びトライアック105は同時に導通状態とならないようにCPU219によって制御される。ヒータ251の3種類の発熱体253、254、255は、ヒータ251の長手方向の熱分布を均等にする目的で、使用される用紙幅に応じて排他的に選択して使用されるためである。なお、用紙幅とは、用紙Pにおいて発熱体253、254、255の長手方向に平行な方向の長さをいい、用紙Pの搬送方向に直交する方向の長さである。例えば、B5用紙が定着装置50を通過するタイミングでは、制御部108は発熱体253と発熱体254とを交互に発熱させるように制御している。ヒータ251は、各発熱体253、254、255に対して電力供給が排他的に行われることを想定した設計がなされているため、複数の発熱体253、254、255が同時に発熱する状態が継続すると、過昇温して破損する可能性がある。そのため、CPU219は、各発熱体253、254、255に対して電力供給が排他的に行われるようにトライアック104とトライアック105とを制御する。
【0029】
電磁リレー103は、ヒータ251への電力供給を行う必要がないとき(例えば画像形成装置がスリープモードの場合など)に安全性向上や省電力を目的に、その接点が非導通状態に設定される。電磁リレー103もトライアック104、105と同様にCPU219によって制御される。CPU219は、電流制限抵抗228を介してトランジスタ229にベース電流を供給し、トランジスタ229のコレクタ-エミッタ間を導通状態にし、電磁リレー103のコイルに電源Vcc2から電流を流すことで電磁リレー103の接点を導通状態にする。
【0030】
(検出回路)
次に、トライアック104、105の導通状態を検出する検出回路109及び検出回路110に関して説明する。検出回路109は、トライアック104のT1端子-T2端子間に対して並列に接続される。まず、トライアック104のT1端子-T2端子間が非導通状態である場合について説明する。この場合、交流電源101の極性(正の半波か負の半波か)によらず交流に対応したフォトカプラ(以下、ACフォトカプラという)207の発光部207aには交流電源101から電流制限抵抗208を介して電流が流れる。これにより、ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bのコレクタ-エミッタ間が導通状態となる。一方、トライアック104のT1端子-T2端子間が導通状態である場合には、交流電源101の極性によらずACフォトカプラ207の発光部207aは発光しない。このため、ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。
【0031】
検出回路110は、トライアック105のT1端子-T2端子間に対して並列に接続される。まず、トライアック105のT1端子-T2端子間が非導通状態である場合について説明する。この場合、交流電源101の極性によらずACフォトカプラ217の発光部217aには交流電源101から電流制限抵抗218を介して電流が流れる。これにより、ACフォトカプラ217の受光トランジスタの217bのコレクタ-エミッタ間が導通状態となる。一方、トライアック105のT1端子-T2端子間が導通状態である場合には、交流電源101の極性によらずACフォトカプラ217の発光部217aは発光しない。このため、ACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。このように、検出回路109、110は、1次側に発光部207a、217a、2次側に受光トランジスタ207b、217bを有している。検出回路109、110は、交流電源101から絶縁されていない1次側の電圧の情報を絶縁して2次側の信号に変換し、変換した信号を2次側の判断部111に出力する。
【0032】
(判断部)
次に判断部111について説明する。ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bとACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bとは並列に接続される。ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bのエミッタ端子とACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bのエミッタ端子とは、共に抵抗220の一端に接続される。コンデンサ221の両端電圧は抵抗220の他端からの充電電流と、コンデンサ221に並列に接続された抵抗222による放電電流によりコントロールされる。ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bとACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bのいずれか、又は両方が導通状態となると、電源Vcc1から抵抗220を介してコンデンサ221が充電される。コンデンサ221の両端電圧はコンパレータ223の反転入力端子(-端子)に入力され、コンパレータ223の非反転入力端子(+端子)に入力された基準電圧Vrefと比較される。
【0033】
コンパレータ223の出力端子は抵抗226を介してトランジスタ227のベース端子に接続されている。また、トランジスタ227は、抵抗225及び抵抗226を介して電源Vcc1にも接続されている。ラッチ回路(「ラッチ」と図示)224は、コンパレータ223の反転入力端子と、抵抗225と抵抗226との接続点と、の間に接続されている。
【0034】
判断部111の動作について、図3、表1、図4を用いて詳細に説明する。
【表1】
表1は、1列目に状態を示し、2列目に交流電源101から定着装置50への電力供給を示し、3列目にトライアック104のT1端子-T2端子間の導通状態を示す。また、4列目にトライアック105のT1端子-T2端子間の導通状態を示し、5列目に検出回路109の発光部207aの状態を示し、6列目に検出回路110の発光部217aの状態を示す。なお、1列目では状態を状態A~状態Eとし、2列目では交流電源101から定着装置50へ電力を供給している場合にはON、電力供給を停止している場合にはOFFとする。電力供給のON/OFFは、制御部108が電磁リレー103を導通状態/非導通状態とすることで制御している。3列目、4列目ではトライアック104、105の導通状態をON、非導通状態をOFFとしている。5列目、6列目では検出回路109、110の発光部207a、217aが発光している場合を「発光」、発光していない場合を「消灯」としている。
【0035】
ここで、交流電源101から電力が供給されている状態で、トライアック104とトライアック105とが共に非導通状態である状態A、トライアック104とトライアック105とのいずれか一方が非導通状態である状態B、状態Cは、正常な状態である。一方、交流電源101から電力が供給されている状態で、トライアック104もトライアック105も導通状態である状態Dは異常な状態である。
【0036】
[判断部の動作]
図4では、交流電源101の半波期間を判断部111の動作の1単位として、区間1から区間8に分けて説明を行う。図4(i)は交流電源101の電圧波形を示す。図4(ii)は上がトライアック104、下がトライアック105のそれぞれのT1端子-T2端子間の導通状態を示し、表1のようにON又はOFFで示す。図4(iii)は上がACフォトカプラ207の受光トランジスタ207b、下がACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bの導通状態(ON)、非導通状態(OFF)を示す。図4(iv)はコンパレータ223の反転入力端子の電圧(太線)と非反転入力端子の電圧(基準電圧Vref)(細線)を示す。図4(v)はコンパレータ223の出力端子の電圧、(vi)は電磁リレー103の接点の状態(接続(ON)、非接続(OFF))を示す。
【0037】
<区間1、区間2>
区間1及び区間2では、トライアック104、トライアック105共に、T1端子-T2端子間は非導通状態(OFF)である。このため、ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bのコレクタ-エミッタ間は共に導通状態(ON)となる(状態A)。これにより判断部111のコンデンサ221は、抵抗220を介して電源Vcc1から充電される。ここで、抵抗220の抵抗値は、抵抗222の抵抗値より小さく設定されている。したがって、電源Vcc1から抵抗220を介してコンデンサ221に充電電流が供給されている状態では、充電電流>放電電流となる。これにより、区間1及び区間2においてコンデンサ221の両端電圧、すなわちコンパレータ223の反転入力端子の電圧は上昇又は満充電状態となる。図4では、区間1及び区間2でコンデンサ221が満充電状態である様子を示している。
【0038】
区間1及び区間2では、コンパレータ223の反転入力端子の電圧が非反転入力端子の電圧(基準電圧Vref)より高い。したがって、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)がONしてコンパレータ223の出力端子の電圧はほぼグランド(以下、GNDと記す)電位(0V)となる。これにより、電源Vcc1から抵抗225を介して供給される電流はほぼ全てコンパレータ223の出力端子に引き込まれる(シンクされる)ため、トランジスタ227にベース電流が供給されず、トランジスタ227のコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。そのため区間1及び区間2では、電磁リレー103は、CPU219の制御に従って接点が導通状態又は非導通状態となる。図4では、CPU219は電磁リレー103を接続状態(導通状態)(ON)としている。
【0039】
<区間3、区間4>
次に、区間3及び区間4では、トライアック104のT1端子-T2端子間は導通状態(ON)、トライアック105のT1端子-T2端子間は非導通状態(OFF)である。この状態では、ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態(OFF)、ACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bのコレクタ-エミッタ間は導通状態(ON)となる(状態B)。これにより、ACフォトカプラ217の受光トランジスタ217b及び抵抗220を介して電源Vcc1からコンデンサ221が充電され、コンデンサ221の両端電圧は上昇又は満充電状態となる。図4では、区間3及び区間4でコンデンサ221が満充電状態である様子を示している。区間3及び区間4では、コンパレータ223の反転入力端子の電圧が非反転入力端子の電圧より高い。したがって、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)はONを維持し、電磁リレー103の接点は導通状態(ON)を維持する。
【0040】
<区間5>
区間5ではトライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間は導通状態(ON)である。これは、装置が正常に制御されていない状況である。CPU219はトライアック104とトライアック105とが同時に電力を供給する状態にならないように制御している。このため、トライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間が導通状態(ON)という状態は、何らかの不具合が発生していることを示している。不具合としては例えば、外来サージなどが交流電源101を介して装置に入力され、外来サージによってトライアック104、105が誤動作(T1端子-T2端子間が誤導通)するケースなどが考えられる。
【0041】
区間5では、トライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間は導通状態(ON)である。ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bのコレクタ-エミッタ間は共に非導通状態(OFF)となる(状態D)。なお、トライアック104とトライアック105とが共に導通状態となっていることを、以下、同時導通状態という。この状態では、コンデンサ221の電荷は抵抗222を介して放電され、コンデンサ221の両端電圧(コンパレータ223の反転入力端子の電圧)は低下する。区間5において、コンパレータ223の反転入力端子の電圧は低下しているが、コンパレータ223の非反転入力端子の基準電圧Vrefを下回っていない。そのため、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)はONを維持し、電磁リレー103の接点は導通状態(ON)を維持する。
【0042】
トライアック104及びトライアック105の同時導通状態の継続が短時間の場合に、判断部111がトライアック104、105の同時導通状態をすぐに確定させない理由は以下のとおりである。すなわち、複数の発熱体253、254、255が同時に発熱してヒータ251が過昇温するリスクと、外来サージによる誤動作とのバランスを取るためである。言い換えると、複数の発熱体253、254、255が同時に発熱しても不具合が発生しないような短時間の同時導通状態で、外来サージなどによりトライアック104、105が一時的に誤動作(T1端子-T2端子間が誤導通)した場合を想定している。このような一時的な誤動作については、判断部111の判断に冗長性を持たせて装置を停止させない設定としている。ここで、上述した短時間とは、実施例1の場合は交流電源101の1半波期間をいう。
【0043】
<区間6>
区間6では、トライアック104のT1端子-T2端子間は非導通状態(OFF)、トライアック105のT1端子-T2端子間は導通状態(ON)である。この状態では、ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207bは導通状態(ON)、ACフォトカプラ217の受光トランジスタ217bは非導通状態(OFF)となる(状態C)。これにより、ACフォトカプラ207の受光トランジスタ207b及び抵抗220を介して電源Vcc1からコンデンサ221が充電される。区間5では一時的な誤動作によりコンパレータ223の反転入力端子の電圧が低下しているため、区間6ではコンパレータ223の反転入力端子の電圧は上昇している。コンパレータ223の反転入力端子の電圧がコンパレータ223の非反転入力端子の電圧(基準電圧Vref)を上回っているため、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)はONを維持し、電磁リレー103の接点は導通状態(ON)を維持する。
【0044】
<区間7、区間8>
区間7及び区間8では、トライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間が導通状態(ON)である期間(状態D)が交流電源101の2半波期間継続している。区間7でコンパレータ223の反転入力端子の電圧が下がり続け、区間8のタイミングαではコンパレータ223の反転入力端子の電圧がコンパレータ223の非反転入力端子の基準電圧Vrefを下回る。判断部111は、タイミングαにおいてトライアック104及びトライアック105の同時導通状態が確定したと判断する。
【0045】
コンパレータ223の反転入力端子の電圧がコンパレータ223の非反転入力端子の基準電圧Vrefを下回ると、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)がOFFしてコンパレータ223の出力はハイインピーダンス(Hiz)状態となる。そうすると、電源Vcc1から抵抗225及び抵抗226を介してトランジスタ227に対してベース電流が供給される。ベース電流が供給されたトランジスタ227のコレクタ-エミッタ間は導通状態となり、トランジスタ227はCPU219からトランジスタ229に供給される電流を、抵抗228を介して引き込む。そのため、トランジスタ229のコレクタ-エミッタ間は非導通状態となり、電磁リレー103の接点が非導通状態となることで交流電源101からヒータ251への電力供給が遮断される。このように、コンパレータ223の出力端子がハイインピーダンスになると、言い換えれば判断部111が同時導通状態であることを判断すると、制御部108による制御にかかわらず電磁リレー103は非導通状態(OFF)となる。
【0046】
ここで、ラッチ回路224は、一度判断部111がトライアック104とトライアック105の同時導通状態を確定させると、その後その状態が解除されても電磁リレー103の接点を非接続状態に保持するように機能する。ラッチ回路224は、一度コンパレータ223の反転入力端子の電圧が非反転入力端子の基準電圧Vrefより低くなり、コンパレータ223の出力がハイインピーダンス(Hiz)となると、次のように動作する。すなわち、ラッチ回路224は、コンパレータ223の反転入力端子の電圧を非反転入力端子の基準電圧Vref未満に維持し続ける。なお、ラッチ回路224の機能は本発明の本質ではない。このため、ラッチ型にするのか、トライアック104とトライアック105の同時導通状態が解除されると電磁リレー103の接点が導通状態に戻る自動復帰型にするのか、などの設定は装置毎に決定されることが望ましい。
【0047】
また、実施例1では、トライアック104とトライアック105との同時導通状態が交流電源101の2半波期間継続した場合に判断部111がトライアック104及びトライアック105の同時導通状態を確定する例を示した。しかし、判断部111の判断を確定させるための時間(以下、判断確定時間という)は交流電源101の2半波期間に限定されるものではない。具体的には、外来サージなどの影響を受けた際の冗長性を持たせるという観点からは、判断部111の判断確定時間が長めに設定されることが望ましい。一方で、複数の発熱体が同時に発熱することによるヒータ251の過昇温を防ぐという観点からは、判断部111の判断確定時間は短いことが望ましい。そのため、これら両観点を考慮して、判断部111の判断確定時間を装置毎に適切に設定する必要がある。
【0048】
さらに、表1に示すように、実施例1の構成では状態D(トライアック104とトライアック105のT1-T2間が共に導通状態)と状態E(交流電源101から装置への電力供給がOFF)とを区別することができない。その結果、交流電源101の瞬時停電などの際に、判断部111が誤って複数トライアックの同時導通状態を確定しないようにしなければならない。そのため、判断部111の判断確定時間は、コンデンサ221と抵抗222による放電時定数を長くするなどして、装置が想定する瞬時停電時間より長く設定する必要がある。このように、判断部111が、複数のトライアックの同時導通状態を判断し確定する時間は、瞬時停電、外来サージ、負荷への過剰電力供給という複数の条件を満足する形で決定されることが望ましい。
【0049】
以上、実施例1によれば、複数の発熱体に排他的に電力を供給する加熱装置における故障判断の精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0050】
[回路ブロック図]
実施例2の構成について、図5図7を用いて説明を行う。画像形成装置の回路ブロック図を図5に示し、図6にその詳細な回路を示す。なお、図5図6において実施例1で説明した内容と重複する部分には同じ符号を付し説明は省略する。実施例2では、図5に示すように検出回路112及び検出回路113の配置が実施例1と異なる。実施例1では検出回路109はトライアック104のT1端子-T2端子間と並列に接続され、検出回路110はトライアック105のT1端子-T2端子間と並列に接続されていた。一方、実施例2においては、検出回路112はトライアック104と直列に接続され、検出回路113はトライアック105と直列に接続されている。検出回路112(113)をトライアック104(105)と直列に接続することにより、複数のトライアック104、105が同時導通状態である場合と交流電源101からの電力供給が遮断されている場合との区別がつくようになる。
【0051】
[検出回路の詳細]
(検出回路)
図6を用いてトライアック104、105の導通状態を検出する検出回路112及び検出回路113に関して説明する。検出回路112は、トライアック104のT1端子-T2端子間に対して直列に接続される。トライアック104のT1端子-T2端子間が非導通状態である場合、ACフォトカプラ507の発光部507aは発光せず、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。一方、トライアック104のT1端子-T2端子間が導通状態である場合には、交流電源101から電流制限抵抗508を介して電流が流れ、ACフォトカプラ507の発光部507aが発光する。このため、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間は導通状態となる。
【0052】
検出回路113は、トライアック105のT1端子-T2端子間に対して直列に接続される。トライアック105のT1端子-T2端子間が非導通状態である場合、ACフォトカプラ517の発光部517aは発光せず、ACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。一方、トライアック105のT1端子-T2端子間が導通状態である場合には、交流電源101から電流制限抵抗518を介して電流が流れ、ACフォトカプラ517の発光部517aが発光する。このため、ACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間は導通状態となる。
【0053】
(判断部)
図6に示す判断部114に関して説明する。判断部114において、電源Vcc1は、並列に接続されたコンデンサ521及び抵抗522と、抵抗520とに対して直列に接続されている。抵抗522はコンデンサ521の充電のための抵抗であり、抵抗520はコンデンサ521の放電のための抵抗である。判断部114において、更に、抵抗520とグランドとの間には、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bとACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bとが直列に接続されている。ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間とが共に導通状態であるときにのみ、コンデンサ521の電荷が抵抗520を介して放電される。
【0054】
一方、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間のどちらか一方が非導通状態であるとき、コンデンサ521は抵抗522を介して電源Vcc1から充電される。また、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間の両方が非導通状態であるときにも、コンデンサ521は抵抗522を介して電源Vcc1から充電される。ここで、抵抗520の抵抗値は抵抗522の抵抗値よりも小さく設定される。したがって、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間とが共に導通状態の場合には、コンデンサ521の電流は放電電流>充電電流となる。コンデンサ521と抵抗520とが接続されるノードの電圧はコンパレータ223の反転入力端子に入力され、非反転入力端子の基準電圧Vrefと比較される。以降の動作は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0055】
この様子を表2に示す。
【表2】
表2の1列目から6列目は表1の1列目と6列目と同様である。なお、5列目、6列目については検出回路112、検出回路113の状態を示している。表2において、複数のトライアック104、105が同時導通状態である状態Dでは、検出回路112の発光部507aと検出回路113の発光部517aとが共に発光状態となる。検出回路112の発光部507aと検出回路113の発光部517aとが共に発光状態であるという状態Dは他のいずれの状態A、B、C、Eとも異なっており、状態Dだけを正確に検出することが可能であるということがわかる。
【0056】
図6を用いて具体的に説明する。図6において、トライアック104が導通状態になると検出回路112のACフォトカプラ507の発光部507aは発光状態となる。また、トライアック105が導通状態のとき、検出回路113のACフォトカプラ517の発光部517aも発光状態となる。すなわち、トライアック104及びトライアック105が同時導通状態になると、ACフォトカプラ507の発光部507aとACフォトカプラ517の発光部517aは共に発光状態となる。一方、交流電源101から実施例2の定着装置50への電力供給が停止(遮断、OFF)された場合、ACフォトカプラ507の発光部507aとACフォトカプラ517の発光部517aとは共に発光しない状態となる(状態E)。このように、表2に示すようにACフォトカプラ507の発光部507aとACフォトカプラ517の発光部517aとが共に発光状態となるのはトライアック104とトライアック105とが共に導通状態である場合のみである。したがって、判断部114は、状態Dと状態Eとを区別することができ、トライアック104、105が同時導通状態であることを確実に判断することができる。なお、実施例1の表1では、状態Dでも状態EでもACフォトカプラ207の発光部207aもACフォトカプラ217の発光部217aも共に消灯であり、判断部111は状態Dと状態Eの区別をつけることはできない。この点で実施例2の判断部114は状態Dと状態Eとを区別することができる。
【0057】
[判断部の動作]
<区間1、区間2>
図7を用いて判断部114の動作を説明する。なお、図7(i)~(vi)は図4(i)~(vi)と同様のグラフである。区間1及び区間2では、トライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間が非導通状態(OFF)である。このため、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間は共に非導通状態(OFF)となる(状態A)。これにより判断部114のコンデンサ521は、抵抗522を介して電源Vcc1から充電され、コンパレータ223の反転入力端子の電圧は上昇又は満充電状態となる。区間1及び区間2では、コンデンサ521が満充電状態である様子を示している。区間1及び区間2では、コンパレータ223の反転入力端子の電圧が非反転入力端子の電圧より高い。したがって、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)がONしてコンパレータ223の出力はほぼGND電位となる。これにより、電源Vcc1から抵抗225を介して供給される電流はほぼ全てコンパレータ223の出力端子にシンクされるため、トランジスタ227にベース電流が供給されず、トランジスタ227のコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。そのため区間1及び区間2では、電磁リレー103は、CPU219の指示通りに接点が導通状態(ON)となる。
【0058】
<区間3、区間4>
区間3及び区間4では、トライアック104のT1端子-T2端子間は導通状態(ON)、トライアック105のT1端子-T2端子間は非導通状態(OFF)である。この状態では、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間は導通状態(ON)、ACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態(OFF)となる(状態B)。これにより、コンデンサ521は抵抗222を介して電源Vcc1から充電され、コンパレータ223の反転入力端子の電圧は上昇又は満充電状態となる。区間3及び区間4では、コンパレータ223の反転入力端子の電圧が非反転入力端子の電圧より高い。したがって、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)はONを維持し、電磁リレー103の接点は導通状態(ON)を維持する。
【0059】
<区間5>
区間5ではトライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間は導通状態(ON)である。これは、装置が正常に制御されておらず異常な状態である。このため、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bのコレクタ-エミッタ間とACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bのコレクタ-エミッタ間は共に導通状態(ON)となる(状態D)。この状態では、コンデンサ521の電荷は抵抗520を介して放電され、コンパレータ223の反転入力端子の電圧は低下する。区間5において、コンパレータ223の反転入力端子の電圧は低下しているが、コンパレータ223の非反転入力端子の基準電圧Vrefを下回っていない。そのため、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)はONを維持し、電磁リレー103の接点は導通状態(ON)を維持する。
【0060】
<区間6>
区間6では、トライアック104のT1端子-T2端子間は非導通状態(OFF)、トライアック105のT1端子-T2端子間は導通状態(ON)である。この状態では、ACフォトカプラ507の受光トランジスタ507bは非導通状態(OFF)、ACフォトカプラ517の受光トランジスタ517bは導通状態(ON)となる(状態C)。これにより、コンデンサ521は抵抗522を介して電源Vcc1から充電される。区間5でコンパレータ223の反転入力端子の電圧が低下しているため、区間6ではコンパレータ223の反転入力端子の電圧は上昇している。コンパレータ223の反転入力端子の電圧がコンパレータ223の非反転入力端子の基準電圧Vrefを上回っているため、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)はONを維持し、電磁リレー103の接点は導通状態(ON)を維持する。
【0061】
<区間7、区間8>
区間7及び区間8では、トライアック104、トライアック105共にT1端子-T2端子間が導通状態(ON)である期間(状態D)が交流電源101の2半波期間継続している。これにより、区間8のタイミングβでコンパレータ223の反転入力端子の電圧はコンパレータ223の反転入力端子の基準電圧Vrefを下回る。そして、コンパレータ223の出力トランジスタ(不図示)がOFFしてコンパレータ223の出力はハイインピーダンス(Hiz)状態となり、電源Vcc1から抵抗225及び抵抗226を介してトランジスタ227に対してベース電流が供給される。ベース電流が供給されたトランジスタ227のコレクタ-エミッタ間は導通状態なり、トランジスタ227はCPU219からトランジスタ229に供給される電流を、抵抗228を介してシンクする。そのため、トランジスタ229のコレクタ-エミッタ間は非導通状態となり、電磁リレー103の接点が非導通状態となる(OFF)ことで、交流電源101からヒータ251への電力供給が遮断される。
【0062】
判断部114は、タイミングβにおいてトライアック104及びトライアック105の同時導通状態が確定したと判断する。その結果として電磁リレー103の接点は非導通状態となり、電源Vcc1が出力されている間はラッチ回路224によりその状態が保持される。実施例2の判断部は、交流電源101のから装置への電力供給の停止と複数のトライアックの同時導通状態とを区別することができる。そのため、装置固有の制約がない限り、実施例2の構成を適用することが望ましい。
【0063】
以上、実施例2によれば、複数の発熱体に排他的に電力を供給する加熱装置における故障判断の精度を向上させることができる。
【実施例3】
【0064】
実施例3にて説明する定着装置50の詳細回路図を図8に示す。なお、回路ブロック図は実施例2と同じであり、図5に示すものである。また、これまで説明した構成と同じ構成には同じ符号を付し説明を省略する。実施例3の回路ブロック図及び回路接続は実施例2と同じであるが、検出回路115と検出回路116に用いる素子が実施例2と異なる。実施例2では検出回路112及び検出回路113にACフォトカプラ507とACフォトカプラ517を用いていた。一方、実施例3では、検出回路115と検出回路116に、直流対応のフォトカプラ(以下、DCフォトカプラという)707とDCフォトカプラ717を用いている。DCフォトカプラ707及びDCフォトカプラ717は、交流電源101の片方の極性(以下、片極性という)(実施例3では例えば正の半波の区間)でトライアック104及びトライアック105の同時導通状態を検出する。DCフォトカプラはACフォトカプラより一般的に安価で入手しやすい。トライアック104及びトライアック105の同時導通状態の検出が交流電源101の片極性のみであっても、複数の発熱体が同時に発熱することによるヒータ251の過昇温が課題とならない装置であれば、DCフォトカプラを採用することができる。なお、ダイオード708はDCフォトカプラ707の発光部707aの保護ダイオード、ダイオード718はDCフォトカプラ717の発光部717aの保護ダイオードである。抵抗508はDCフォトカプラ707の発光部707aの電流制限抵抗、抵抗518はDCフォトカプラ717の発光部717aの電流制限抵抗である。
【0065】
[検出回路]
トライアック104、105の導通状態を検出する検出回路115及び検出回路116に関して説明する。なお、以下では交流電源101の正の半波の区間として説明する。検出回路115は、トライアック104のT1端子-T2端子間に対して直列に接続される。トライアック104のT1端子-T2端子間が非導通状態である場合、DCフォトカプラ707の発光部707aは発光せず、DCフォトカプラ707の受光トランジスタ707bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。一方、トライアック104のT1端子-T2端子間が導通状態である場合には、交流電源101から電流制限抵抗508を介して電流が流れ、DCフォトカプラ707の発光部707aが発光する。このため、DCフォトカプラ707の受光トランジスタ707bのコレクタ-エミッタ間は導通状態となる。
【0066】
検出回路116は、トライアック105のT1端子-T2端子間に対して直列に接続される。トライアック105のT1端子-T2端子間が非導通状態である場合、DCフォトカプラ717の発光部717aは発光せず、DCフォトカプラ717の受光トランジスタ717bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態となる。一方、トライアック105のT1端子-T2端子間が導通状態である場合には、交流電源101から電流制限抵抗518を介して電流が流れ、DCフォトカプラ717の発光部717aが発光する。このため、DCフォトカプラ717の受光トランジスタ717bのコレクタ-エミッタ間は導通状態となる。
【0067】
この様子を表3に示す。
【表3】
表3の1列目から6列目は表2の1列目と6列目と同様である。なお、5列目、6列目については検出回路115、検出回路116の状態を示している。実施例3では、検出回路115の発光部707a及び検出回路116の発光部717aが発光するのは、交流電源101の正の半波期間のみである。
【0068】
[判断部の動作]
<区間4>
図9を用いて実施例3の判断部114の異常判断の動作を説明する。図9(i)~(vi)のグラフは図7(i)~(vi)と同様のグラフであり、図9図7とで異なる区間のみ説明を行う。図9の区間4では、トライアック104のT1端子-T2端子間は導通状態(ON)である。しかし、区間4(交流電源101の負の半波の期間)においてDCフォトカプラ707の発光部707aは発光せず、検出回路115はトライアック104のT1端子-T2端子間が導通状態(ON)であることを検出できない。したがって、検出回路115のDCフォトカプラ707の受光トランジスタ707bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態(OFF)となる。
【0069】
<区間6>
区間6も区間4と同様に、検出回路116がトライアック105のT1端子-T2端子間が導通状態(ON)であることを検出できない。このため、検出回路116のDCフォトカプラ717の受光トランジスタ717bのコレクタ-エミッタ間は非導通状態(OFF)となる。
【0070】
<区間7~区間9>
区間7~区間9では、トライアック104とトライアック105のT1端子-T2端子間は共に導通状態(ON)である。区間7と区間9は交流電源101の正の半波期間であるため、検出回路115及び検出回路116はトライアック104とトライアック105のT1端子-T2端子間が共に導通状態(ON)であることを検出する(状態D)。これにより、コンパレータ223の非反転入力端子の電圧が低下する。
【0071】
一方、区間8は交流電源101の負の半波期間であるため、検出回路115及び検出回路116はトライアック104とトライアック105のT1端子-T2端子間が共に導通状態(ON)であることを検出できない。これにより、コンパレータ223の非反転入力端子の電圧が上昇する。そのため、区間7~区間9では、図9に示すように、コンパレータ223の非反転入力端子の電圧は低下と上昇とを経て、区間9のタイミングγにおいて反転入力端子の基準電圧Vrefを下回る。これにより、電磁リレー103の接点が非導通状態(OFF)となり交流電源101からヒータ251への電力供給が遮断され、ラッチ回路224により電源Vcc1が出力されている間はその状態が保持される。
【0072】
このように、実施例3の構成では、DCフォトカプラ707、717を用いて交流電源101の極性に依存したトライアック104、105の同時導通状態の検出を行う。このため、ACフォトカプラを用いる場合に比べて判断部114が複数のトライアック104、105の同時導通状態を確定するまでに時間を要する。具体的に実施例2では、判断部114は交流電源101の2半波期間(区間8のタイミングβ)で複数のトライアック104、105の同時導通状態を確定する。これに対し、DCフォトカプラを用いた実施例3では、判断部114は複数のトライアック104、105の同時導通状態を確定するのに少なくとも3半波期間(区間9のタイミングγ)を要する。その代わりに、ACフォトカプラよりDCフォトカプラの方が一般的に安価に入手できるため、装置を安価に提供することができる。
【0073】
なお、実施例3では交流電源101の正の半波の期間でトライアックの同時導通状態が検出可能なようにDCフォトカプラを接続している。しかし、DCフォトカプラの発光部の極性を反対となるように接続して交流電源101の負の半波の期間でトライアック104、105の同時導通状態を検出可能な構成にしても構わない。更に、実施例1の検出回路109、110にDCフォトカプラを適用してもよい。
【0074】
以上、実施例3によれば、複数の発熱体に排他的に電力を供給する加熱装置における故障判断の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
253、254、255 発熱体
104、105 双方向サイリスタ
108 制御部
109、110 検出回路
111 判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9