(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】電子デバイス、システム及び電子デバイスの制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/77 20230101AFI20240415BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240415BHJP
【FI】
H04N25/77
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2020040913
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】岩根 正晃
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-252951(JP,A)
【文献】特開2004-304688(JP,A)
【文献】特開2018-125840(JP,A)
【文献】特開2017-060071(JP,A)
【文献】特開2011-146775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/77
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルが複数の行及び複数の列をなすように配されたセルアレイ部と、
前記複数の行又は前記複数の列の各々に対応して配され、対応する複数の前記セルに接続された複数の信号線と、
前記複数の信号線が伝送する信号に応じた信号をそれぞれ保持する複数のメモリと、
前記複数のメモリを順次選択して信号の読み出しを行う走査回路と、
前記走査回路によって前記複数のメモリから順次読み出された出力信号が通る第1電極と、
前記複数の信号線のうちの一部の信号線を選択するための
クロック信号が入力される第2電極と、
前記複数の列の各々に対応して配された複数のスイッチと、
前記第2電極を介して前記クロック信号が入力され、前記複数のスイッチを制御するシフトレジスタと、
前記
クロック信号に基づいて選択された前記一部の信号線に接続されたセルと前記第1電極の間のノードへ電気的に接続される第3電極と、
を有し、
前記第3電極の電位と、前記
クロック信号に基づいて選択された前記一部の信号線の電位とが、相関する
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
前記クロック信号に含まれる1以上のパルスの数に応じた数の信号線が前記一部の信号線
として選択される
ことを特徴とする請求項
1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記ノードと前記第3電極との間に配されたバッファ回路を更に有する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記ノードと前記第3電極との間に配された増幅回路を更に有し、前記増幅回路は前記ノードの電位を増幅する
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記ノードと前記第1電極との間に配された変換回路を更に有し、
前記変換回路は、アナログ信号及びデジタル信号の一方をアナログ信号及びデジタル信号の他方に変換する
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記ノードと前記第1電極との間には第1回路が設けられており、前記ノードと前記第3電極との間には第2回路が設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項7】
互いに積層された第1部品及び第2部品を有し、
前記セルアレイ部は、前記第1部品に配されており、
前記第1回路は、前記第2部品に配されている
ことを特徴とする請求項
6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記第2回路は、前記第2部品に配されている
ことを特徴とする請求項
7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
セルが複数の行及び複数の列をなすように配されたセルアレイ部と、
前記複数の行又は前記複数の列の各々に対応して配され、対応する複数の前記セルに接続された複数の信号線と、
前記複数の信号線が伝送するアナログ信号に応じたデジタル信号をそれぞれ保持する複数のメモリと、
前記複数のメモリを順次選択してデジタル信号の読み出しを行う走査回路と、
前記走査回路によって前記複数のメモリから順次読み出されたデジタル信号
である出力信号が通る第1電極と、
前記複数の信号線のうちの一部の信号線を選択するための
クロック信号が入力される第2電極と、
前記複数の列の各々に対応して配された複数のスイッチと、
前記第2電極を介して前記クロック信号が入力され、前記複数のスイッチを制御するシフトレジスタと、
前記
クロック信号に基づいて選択された前記一部の信号線で伝送されるアナログ信号に応じたアナログ信号が通る第3電極と、
を有する
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
前記セルは光電変換素子又は表示素子を含む
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の電子デバイスと、
前記第1電極を通る前記
出力信号を処理する処理部と、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の電子デバイスと、
前記電子デバイスから取得された情報に基づいて機械装置を駆動する駆動部と、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の電子デバイスと、
前記第2電極及び前記第3電極に接続された制御部と、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記制御部は、前記第3電極の電位に基づいて前記電子デバイスの故障を検出する
ことを特徴とする請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御部は、前記故障を検出した場合に、前記故障による影響を補正する処理又は前記故障が生じている箇所を除外する処理を行う
ことを特徴とする請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
複数の信号線と、
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
前記複数の信号線が伝送するアナログ信号に応じたデジタル信号をそれぞれ保持する複数のメモリと、
前記複数のメモリを順次選択してデジタル信号の読み出しを行う走査回路と、
前記複数の信号線の各々に対応して配された複数のスイッチと、
前記第2電極を介してクロック信号が入力され、前記複数のスイッチを制御するシフトレジスタと、
を備える電子デバイスの制御方法であって、
前記走査回路によって前記複数のメモリから順次読み出されたデジタル信号を前記第1電極から出力し、
前記複数の信号線のうちの一部の信号線の電位に基づくアナログ信号を前記第3電極から取得し、
前記一部の信号線を、前記第2電極へ入力する
前記クロック信号に含まれる1以上のパルスの数によって選択する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項17】
前記アナログ信号に基づいて前記電子デバイスの故障を検出する
ことを特徴とする請求項
16に記載の制御方法。
【請求項18】
前記故障を検出した場合に、前記故障による影響を補正する処理又は前記故障が生じている箇所を除外する処理を行う
ことを特徴とする請求項
17に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、システム及び電子デバイスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画素アレイブロックとCDS(Correlated Double Sampling)回路との間の画素出力線がバッファの入力端子に接続されている固体撮像装置が開示されている。このバッファは、画素出力線の電位に応じた信号を出力することができる。出力された信号は、固体撮像装置の不具合の解析等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の固体撮像装置には、複数の画素出力線のうちの一部のみがバッファの入力端子に接続されている。特許文献1の固体撮像装置の構成では、バッファが接続されていない画素出力線の電位は出力されず、十分な検査を行うことができない場合がある。そのため、信号をより適切に入力又は出力する手法が求められている。
【0005】
本発明は、信号をより適切に入力又は出力することができる電子デバイス、システム及び電子デバイスの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、セルが複数の行及び複数の列をなすように配されたセルアレイ部と、前記複数の行又は前記複数の列の各々に対応して配され、対応する複数の前記セルに接続された複数の信号線と、前記複数の信号線が伝送する信号に応じた信号をそれぞれ保持する複数のメモリと、前記複数のメモリを順次選択して信号の読み出しを行う走査回路と、前記走査回路によって前記複数のメモリから順次読み出された出力信号が通る第1電極と、前記複数の信号線のうちの一部の信号線を選択するためのクロック信号が入力される第2電極と、前記複数の列の各々に対応して配された複数のスイッチと、前記第2電極を介して前記クロック信号が入力され、前記複数のスイッチを制御するシフトレジスタと、前記クロック信号に基づいて選択された前記一部の信号線に接続されたセルと前記第1電極の間のノードへ電気的に接続される第3電極と、を有し、前記第3電極の電位と、前記クロック信号に基づいて選択された前記一部の信号線の電位とが、相関することを特徴とする電子デバイスが提供される。
【0007】
本発明の他の一観点によれば、セルが複数の行及び複数の列をなすように配されたセルアレイ部と、前記複数の行又は前記複数の列の各々に対応して配され、対応する複数の前記セルに接続された複数の信号線と、前記複数の信号線が伝送するアナログ信号に応じたデジタル信号をそれぞれ保持する複数のメモリと、前記複数のメモリを順次選択してデジタル信号の読み出しを行う走査回路と、前記走査回路によって前記複数のメモリから順次読み出されたデジタル信号である出力信号が通る第1電極と、前記複数の信号線のうちの一部の信号線を選択するためのクロック信号が入力される第2電極と、前記複数の列の各々に対応して配された複数のスイッチと、前記第2電極を介して前記クロック信号が入力され、前記複数のスイッチを制御するシフトレジスタと、前記クロック信号に基づいて選択された前記一部の信号線で伝送されるアナログ信号に応じたアナログ信号が通る第3電極と、を有することを特徴とする電子デバイスが提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によれば、複数の信号線と、第1電極と、第2電極と、第3電極と、前記複数の信号線が伝送するアナログ信号に応じたデジタル信号をそれぞれ保持する複数のメモリと、前記複数のメモリを順次選択してデジタル信号の読み出しを行う走査回路と、前記複数の信号線の各々に対応して配された複数のスイッチと、前記第2電極を介してクロック信号が入力され、前記複数のスイッチを制御するシフトレジスタと、を備える電子デバイスの制御方法であって、前記走査回路によって前記複数のメモリから順次読み出されたデジタル信号を前記第1電極から出力し、前記複数の信号線のうちの一部の信号線の電位に基づくアナログ信号を前記第3電極から取得し、前記一部の信号線を、前記第2電極へ入力する前記クロック信号に含まれる1以上のパルスの数によって選択することを特徴とする制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号をより適切に入力又は出力することができる電子デバイス、システム及び電子デバイスの制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第2実施形態に係る光電変換装置の回路図である。
【
図3】第2実施形態に係る電位出力部の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】第3実施形態に係る光電変換装置の回路図である。
【
図5】第4実施形態に係る光電変換装置の回路図である。
【
図6】第5実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】第6実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図8】第7実施形態に係る光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】第7実施形態に係る電位出力部の動作を示すタイミングチャートである。
【
図10】第8実施形態に係る撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図11】第9実施形態に係る撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。複数の図面にわたって同一の要素又は対応する要素には共通の符号が付されており、その説明は省略又は簡略化されることがある。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る電子デバイスの一例としての光電変換装置100の概略構成を示すブロック図である。光電変換装置100は、例えば、撮像装置、焦点検出装置、測距装置等であり得るがこれらに限定されるものではない。本実施形態では、光電変換装置100は、静止画、動画等の画像を撮影する撮像装置であるものとする。光電変換装置100は、画素部110、垂直走査回路120、制御回路130、電位出力部140及び映像信号出力部150を有している。画素部110は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素を含む。複数の画素の各々は、入射光を光電変換することにより電荷を生成する光電変換素子を含む。
【0013】
制御回路130は、垂直走査回路120、電位出力部140及び映像信号出力部150の各部の駆動タイミングを制御する。垂直走査回路120は、画素部110内の画素に含まれる複数のトランジスタをオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)に制御するための制御信号を供給する。当該制御信号は、画素部110の各行に対応して配された制御線を介して各画素に供給される。垂直走査回路120は、シフトレジスタ、アドレスデコーダ等の論理回路により構成され得る。画素部110には信号線VLINE1、…VLINEk、…VLINEnが設けられている。「VLINE」に付された添字の「k」等は1からnまでの列番号を示しており、
図1では、1列目、k列目及びn列目の信号線VLINE1、VLINEk、VLINEnのみが図示されている。以下の説明では、信号線が設けられている列が何列目であるかを具体的に特定する必要がない場合には、単にVLINEkと表記することもある。画素からのアナログ信号は、対応する列の信号線VLINEkに読み出される。
【0014】
映像信号出力部150は、信号線VLINEkの信号の補正、アナログデジタル変換、シリアル化等の処理を行う回路である。映像信号出力部150は、信号線VLINEkの各々の電位に応じた映像信号を光電変換装置100の外部に出力する回路であり、映像信号が通るパッド電極156(第1電極)を有している。映像信号出力部150は、信号の増幅処理、画素のリセット時の信号及び光電変換時の信号に基づく相関二重サンプリング処理等の機能を有していてもよい。映像信号出力部150から出力される映像信号は典型的にはデジタル信号であるが、映像信号出力部150がアナログデジタル変換を行わない場合にはアナログ信号であってもよい。
【0015】
電位出力部140は、電位線141、パッド電極142(第3電極)、パッド電極146(第2電極)及び複数のスイッチSW1、…SWk、…SWnを有する回路である。「SW」に付された添字の「k」等は1からnまでの列番号を示しており、
図1では、1列目、k列目及びn列目のスイッチSW1、SWk、SWnのみが図示されている。以下の説明では、スイッチが設けられている列が何列目であるかを具体的に特定する必要がない場合には、単にSWkと表記することもある。スイッチSWkは、各列の信号線VLINEkに対応して設けられている。
【0016】
スイッチSWkの第1端子は、信号線VLINEkのうちの画素部110と映像信号出力部150の間のノードNLに接続されている。スイッチSWkの第2端子は、電位線141に接続されている。制御回路130が電位出力部140を制御するため、制御回路130は電位出力部140へ接続されている。制御回路130が電位出力部140へは後述する制御信号(例えば後述するφDATA_IN)が入力される。スイッチSWkは、例えば、制御回路130からの制御信号及びパッド電極146に入力された選択信号(例えば後述するφCK)に応じてオン又はオフに制御される。スイッチSWkがオンに制御されることにより、電位線141の電位は、スイッチSWkがオンになっている列の信号線VLINEkの電位になる。
【0017】
パッド電極142は、電位線141に接続されている。パッド電極142は、光電変換装置100の出力端子の1つである。パッド電極142にオシロスコープ等の電位計測装置のプローブを接触させることにより、電位線141の電位がパッド電極142を介して光電変換装置100の外部に出力される。このとき、パッド電極142の電位は、選択された列の信号線VLINEkの電位と相関している。
【0018】
このように、電位出力部140は、複数の列のうちの少なくとも1つを選択する選択回路である複数のスイッチSWkを備えている。これにより、電位出力部140は、選択された列の信号線VLINEkにおける画素部110と映像信号出力部150の間のノードNLの電位に応じた電位信号を光電変換装置100の外部に出力する。
【0019】
複数の信号線VLINEkのうちのいずれかが電位線141に直接接続されている回路構成においては、電位線141に接続されていない信号線VLINEkの電位に応じた信号は出力されない。これに対し、本実施形態の光電変換装置100は、複数の信号線VLINEkのうちの少なくとも1つを選択回路により選択する。そして、選択された信号線VLINEkの電位に応じた電位信号が光電変換装置100の外部に出力される。この構成では、選択回路により選択される信号線VLINEkを変えることにより、異なる列の電位信号を出力することができる。したがって、本実施形態によれば、検査用の信号をより適切に出力することができる光電変換装置100が提供される。
【0020】
光電変換装置100から出力された電位信号は、例えば、光電変換装置100の故障検査、故障要因解析等に用いられ得る。映像信号出力部150から出力される映像信号は、アナログデジタル変換、補正等の信号処理が行われた後の信号である。そのため、映像信号を用いて故障検査等を行うと、映像信号にこの信号処理の影響が重畳されていることにより、十分な精度が得られない場合がある。また、映像信号は、相関二重サンプリング処理等の信号処理を行うことにより信号レベルの基準が接地電位を基準としたものではないこともある。そのため、映像信号を用いて故障検査等を行うと、故障検査に必要な情報が得られにくい場合もある。
【0021】
これに対し、本実施形態では、映像信号出力部150の前段にあるノードNLから電位を取得するため、信号処理を行う前の信号を取得することができる。更に、本実施形態では、パッド電極142から接地電位を基準とした電位を取得することができる。そのため、本実施形態では、映像信号を用いる場合と比べてより高精度に故障検査等を行うことができる。
【0022】
また、本実施形態では、上述のように、より多くの信号線VLINEkから電位信号を取得することができるため、より高精度に故障検査等を行うことができる。また、複数の列の信号線VLINEkから取得された電位信号を参照してシェーディングの検出を行うことができ、シェーディング補正用のデータを取得することもできる。
【0023】
また、本実施形態では、映像信号の取得とは独立して信号線VLINEkから直接電位信号を取得することができるため、信号線VLINEkの電位の時間変化を測定することができる。電位の時間変化を解析することにより、故障箇所の推定、故障原因の推定等を行うことができる。したがって、故障の根本原因により近い情報を得ることができる。これにより、製造プロセスの不良原因を把握することができ、歩留まりの向上、すなわち、内部失敗コスト(Internal Failure Cost)の低減を実現することができる。
【0024】
また、光電変換装置100を市場に出荷した後に点キズ、線キズ等の不良が生じる場合もある。このような場合にも点キズ、線キズ等が生じている箇所に対応する信号線VLINEkの電位の時間変化を解析することにより、故障箇所の推定、故障原因の推定等を行うことができる。この結果を用いて市場出荷後の故障の予防を図ることにより、外部失敗コスト(External Failure Cost)の低減を実現することができる。
【0025】
なお、
図1においては、すべての信号線VLINEkに対してスイッチSWkが設けられているものとしているが、これは必須ではない。一部の信号線VLINEkに対してスイッチSWkが設けられる構成であってもよく、例えば、すべての信号線VLINEkのうちの半分程度の信号線VLINEkに対してスイッチSWkが設けられる構成であってもよい。信号線VLINEkの数とスイッチSWkの数の比率は、例えば、全体の回路規模等を考慮して適宜設定され得る。
【0026】
[第2実施形態]
本実施形態では、第1実施形態の光電変換装置100の各部の具体的な構成の一例を示す。本実施形態の説明において、第1実施形態と共通する部分については説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0027】
図2は、本実施形態に係る光電変換装置100の回路図である。
図2においては、第1実施形態で述べた画素部110、電位出力部140及び映像信号出力部150の具体的な構成例が図示されている。垂直走査回路120及び制御回路130については第1実施形態と同様であるため、
図2においては図示が省略されている。
【0028】
画素部110は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数の画素111を含む。
図2では単純化のため2行3列分の画素111のみが図示されているが、実際には画素部110は、数千行及び数千列の画素111のアレイを含み得る。1行1列目の画素111は、フォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2、転送トランジスタMa1、Mb1、Ma2、Mb2、リセットトランジスタM21、出力トランジスタM31及び選択トランジスタM41を有している。他の画素111は、付されている符号の違い等を除いて概ね同様の構成を有している。したがって、以下では、主として1行1列目の画素111について説明し、他の画素111については説明を省略する。
【0029】
フォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2は、入射光を光電変換することにより電荷を生成する光電変換素子である。フォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2のアノードは、接地ノードに接続されている。フォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2のカソードは、転送トランジスタMa1、Mb1、Ma2、Mb2のソースにそれぞれ接続されている。転送トランジスタMa1、Mb1、Ma2、Mb2のドレインは、リセットトランジスタM21のソース及び出力トランジスタM31のゲートに接続されている。転送トランジスタMa1、Mb1、Ma2、Mb2のドレイン、リセットトランジスタM21のソース及び出力トランジスタM31のゲートが接続されているノードNFは、いわゆるフローティングディフュージョンである。ノードNFは、容量成分を含み、電荷保持部として機能するとともに、この容量成分からなる電荷電圧変換部を構成する。
【0030】
リセットトランジスタM21のドレイン及び出力トランジスタM31のドレインは、電源ノードに接続されている。出力トランジスタM31のソースは、選択トランジスタM41のドレインに接続されている。選択トランジスタM41のソースは、信号線VLINE1に接続されている。なお、トランジスタのソースとドレインの呼称は、トランジスタの導電型又は着目する機能等に応じて異なることがあり、上述のソースとドレインとは逆の名称で呼ばれることもある。
【0031】
垂直走査回路120は、制御信号φSEL1を選択トランジスタM41のゲートに供給し、制御信号φRES1をリセットトランジスタM21のゲートに供給する。また、垂直走査回路120は、制御信号φTXa1、φTXb1、φTXa2、φTXb2を転送トランジスタMa1、Mb1、Ma2、Mb2のゲートにそれぞれ供給する。
【0032】
画素111の各トランジスタがNチャネルトランジスタで構成される場合、垂直走査回路120からハイレベルの制御信号が供給されると対応するトランジスタがオンとなる。また、垂直走査回路120からローレベルの制御信号が供給されると対応するトランジスタがオフとなる。なお、画素111の各トランジスタは、Pチャネルトランジスタで構成してもよい。画素111の各トランジスタをPチャネルトランジスタで構成する場合、各トランジスタを駆動する制御信号の信号レベルはNチャネルトランジスタの場合とは逆になる。
【0033】
被写体の光学像が画素部110に入射すると、各画素111のフォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2は、入射光をその光量に応じた量の電荷に変換(光電変換)するとともに、生じた電荷を蓄積する。転送トランジスタMa1、Mb1、Ma2、Mb2は、オンになることでフォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2に蓄積された電荷をノードNFに転送する。
【0034】
ノードNFは、フォトダイオードDa1、Db1、Da2、Db2から転送された電荷を保持するとともに、その容量成分による電荷電圧変換によって、転送された電荷の量に応じた電位となる。出力トランジスタM31は、ドレインに電源電位が印加され、ソースに選択トランジスタM41を介して映像信号出力部150内の電流源からバイアス電流が供給される構成となっており、ゲートを入力ノードとする増幅部(ソースフォロワ回路)を構成する。これにより出力トランジスタM31は、ノードNFの電位に基づく画素信号を、選択トランジスタM41を介して信号線VLINE1に出力する。リセットトランジスタM21は、オンになることでノードNFを電源電位に応じた電位にリセットする。
【0035】
電位出力部140は、第1実施形態と同様に電位線141、パッド電極142、パッド電極146及び複数のスイッチSW1、SW2、SW3を有している。また、本実施形態の電位出力部140は、複数のスイッチSW1、SW2、SW3に対応して配されたフリップフロップFF1、FF2、FF3を有している。スイッチSW1、SW2、SW3は、制御端子を有しており、制御端子に入力される電位がハイレベルの場合にオンになり、制御端子に入力される電位がローレベルの場合にオフになるものとする。
【0036】
フリップフロップFF1、FF2、FF3は、入力端子D、出力端子Q及びクロック端子CKを有している。フリップフロップFF1の入力端子Dには、制御回路130から制御信号φDATA_INが入力される。フリップフロップFF1の出力端子Qは、スイッチSW1の制御端子及びフリップフロップFF2の入力端子Dに接続されている。フリップフロップFF2の出力端子Qは、スイッチSW2の制御端子及びフリップフロップFF3の入力端子Dに接続されている。以後の列のフリップフロップにおいても同様に、ある列の出力端子Qは、同じ列のスイッチの制御端子と次の列の入力端子Dに接続されている。フリップフロップFF1、FF2、FF3のクロック端子CKには、パッド電極146を介して選択信号φCKが入力される。本例では、選択信号φCKの入力は、光電変換装置100の外部からの入力であるが、選択信号φCKの入力は、光電変換装置100の内部の回路、例えば制御回路130からの入力であってもよい。選択信号φCKが入力される電極は光電変換装置100の外部に露出したパッド電極146でなくて、光電変換装置100の外部に露出しない電極であってもよい。
【0037】
映像信号出力部150は、電流源Ib1、Ib2、Ib3、容量素子C1、C2、C3、コンパレータComp1、Comp2、Comp3を有している。電流源Ib1、容量素子C1及びコンパレータComp1は、信号線VLINE1に対応して配されている。電流源Ib2、容量素子C2及びコンパレータComp2は、信号線VLINE2に対応して配されている。電流源Ib3、容量素子C3及びコンパレータComp3は、信号線VLINE3に対応して配されている。映像信号出力部150は、更に、デジタルラインメモリ151、水平走査回路152、シリアライザ153及びパッド電極154、155を有している。パッド電極154、155(第1電極)は、第1実施形態におけるパッド電極156に相当する。
【0038】
電流源Ib1は、信号線VLINE1に接続されている。電流源Ib1は、信号線VLINE1及び選択トランジスタM41を介して出力トランジスタM31に電流を供給する。
【0039】
容量素子C1の第1端子は、信号線VLINE1に接続されており、容量素子C1の第2端子は、コンパレータComp1の反転入力端子に接続されている。コンパレータComp1の非反転入力端子には、制御回路130から参照信号RAMPが入力される。コンパレータComp1の出力端子は、デジタルラインメモリ151に接続されている。
【0040】
参照信号RAMPは、例えば、時間に応じて電位が直線状、階段状等に変化する信号である。コンパレータComp1は、非反転入力端子に入力される参照信号RAMPの電位と、容量素子C1を介して反転入力端子に入力される信号線VLINE1の電位とを比較する。比較結果を示す信号は、コンパレータComp1の出力端子からデジタルラインメモリ151に出力される。コンパレータComp1の出力信号のレベルが反転すると、その時刻を示すカウント値が、信号線VLINE1の電位を示すデジタル値としてデジタルラインメモリ151に記憶される。このようにして、コンパレータComp1及びデジタルラインメモリ151は、信号線VLINE1の電位をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路として機能する。
【0041】
信号線VLINE2、VLINE3、電流源Ib2、Ib3、容量素子C2、C3及びコンパレータComp2、Comp3等の接続関係は、上述と同様であるため説明を省略する。デジタルラインメモリ151は、信号線の電位を示すデジタル信号を列ごとに記憶する。
【0042】
水平走査回路152は、制御回路130からのタイミング信号に基づいて、デジタルラインメモリ151に記憶されているデジタル信号をシリアライザ153に出力させるための制御信号をデジタルラインメモリ151に出力する。シリアライザ153は、デジタルラインメモリ151から入力される信号をシリアル化して、パッド電極154、155を介して光電変換装置100の外部に出力する。なお、パッド電極154、155から光電変換装置100の外部に出力される信号は、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等の差動伝送方式に基づくデジタル信号であり得る。
【0043】
図3(a)及び
図3(b)は、本実施形態に係る電位出力部140の動作を示すタイミングチャートである。
図3(a)及び
図3(b)を参照して、フリップフロップFF1、FF2、FF3の動作を説明する。
図3(a)は、信号線VLINE2の電位が出力される場合のタイミングチャートであり、
図3(b)は、信号線VLINE3の電位が出力される場合のタイミングチャートである。
【0044】
図3(a)を参照して、信号線VLINE2の電位が出力される場合の電位出力部140の動作を説明する。なお、初期状態においては、フリップフロップFF1、FF2、FF3に記憶されている電位はローレベルであるものとする。
【0045】
時刻t1において、制御信号φDATA_INがハイレベルになる。これにより、フリップフロップFF1の入力端子Dにハイレベルの電位が入力される。
【0046】
時刻t2において、選択信号φCKがハイレベルになり、時刻t3において選択信号φCKがローレベルになる。すなわち、時刻t2から時刻t3の期間において、フリップフロップFF1のクロック端子CKに1つのパルスが入力される。これにより、フリップフロップFF1の入力端子Dに入力されているハイレベルの電位がフリップフロップFF1に記憶される。そして、フリップフロップFF1の出力端子Qから出力される電位はハイレベルになる。
【0047】
時刻t4において、制御信号φDATA_INがローレベルになる。これにより、フリップフロップFF1の入力端子Dにローレベルの電位が入力される。
【0048】
時刻t5において、選択信号φCKがハイレベルになり、時刻t6において選択信号φCKがローレベルになる。すなわち、時刻t5から時刻t6の期間において、フリップフロップFF2のクロック端子CKに1つのパルスが入力される。これにより、フリップフロップFF2の入力端子Dに入力されているハイレベルの電位がフリップフロップFF2に記憶される。そして、フリップフロップFF2の出力端子Qから出力される電位はハイレベルになる。
【0049】
同時刻において、フリップフロップFF1のクロック端子CKにも1つのパルスが入力される。これにより、フリップフロップFF1の入力端子Dに入力されているローレベルの電位がフリップフロップFF1に記憶される。そして、フリップフロップFF1の出力端子Qから出力される電位はローレベルになる。
【0050】
すなわち、時刻t6の直後の時点において、フリップフロップFF1、FF3に記憶されている電位はローレベルであり、フリップフロップFF2に記憶されている電位はハイレベルである。これにより、スイッチSW2はオン状態になり、スイッチSW1、SW3はオフ状態になる。したがって、電位線141の電位は信号線VLINE2の電位になる。パッド電極142にオシロスコープ等の電位計測装置のプローブを接触させることにより、信号線VLINE2の電位に相当する電位が光電変換装置100の外部に出力される。
【0051】
この動作においては、縦続接続されているフリップフロップFF1、FF2、FF3はシフトレジスタとして動作する。すなわち、選択信号φCKのパルスが入力される度にハイレベルの電位が記憶されているフリップフロップがシフトする。したがって、選択信号φCKのパルスの個数をpとするとp番目のフリップフロップの出力がハイレベルになり、p列目の信号線VLINEpの電位が光電変換装置100の外部に出力される。このように、本実施形態の電位出力部140は、選択信号φCKに含まれるパルスの個数に応じて、電位を出力する信号線を変えることができる。
【0052】
図3(b)は、選択信号φCKのパルスの個数を3個に変更した例である。本例では、パルスの個数が3個であるため、信号線VLINE3の電位に相当する電位が光電変換装置100の外部に出力される。同様にして選択信号φCKのパルスの個数を変えることで、1列目を選択することも可能であり、4列目以降を選択することも可能である。
【0053】
なお、制御信号φDATA_INがハイレベルになっている期間内の選択信号φCKのパルスの個数を複数個にしてもよい。制御信号φDATA_INがハイレベルになっている期間内の選択信号φCKのパルスの個数がq個である場合、q列分の信号線が同時に選択される。
【0054】
本実施形態においては、第1実施形態の光電変換装置100の具体的な構成例を述べた。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態で述べたものと同様の効果が得られる光電変換装置100が提供される。また、本実施形態の電位出力部140は、フリップフロップFF1、FF2、FF3により構成されたシフトレジスタ及びスイッチSW1、SW2、SW3を含む選択回路が用いられている。これにより、本実施形態の光電変換装置100は、外部から供給される選択信号φCKのパルスの個数に応じて任意の信号線VLINEkを選択することができ、選択された信号線VLINEkの電位を出力することができる。
【0055】
本実施形態では、電位出力部140にフリップフロップFF1、FF2、FF3により構成された順序回路を用いている。これにより、小さい回路規模で選択回路を実現することができる。具体的には、この順序回路を用いた電位出力部140の占有面積は、映像信号出力部150の占有面積よりも小さくすることができる。そのため、電位出力部140を設けたことによる占有面積の増大はさほど問題とはならない。しかしながら、電位出力部140は、信号線VLINEkの本数が少ない場合等、回路規模の増大の影響が許容できる場合には、アドレスデコーダを用いる方式であってもよい。
【0056】
[第3実施形態]
本実施形態では、第1実施形態の光電変換装置100の各部の具体的な構成の別の例を示す。本実施形態の説明において、第1実施形態又は第2実施形態と共通する部分については説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0057】
図4は、本実施形態に係る光電変換装置100の回路図である。
図4においては、第1実施形態で述べた画素部110、電位出力部140及び映像信号出力部150の具体的な構成例が図示されている。垂直走査回路120及び制御回路130については第1実施形態と同様であるため、
図4においては図示が省略されている。画素部110及び映像信号出力部150の構成は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
本実施形態の電位出力部140は、差動増幅器143を更に有している。差動増幅器143の非反転入力端子には、電位線141が接続されている。差動増幅器143の反転入力端子及び出力端子は、パッド電極142に接続されている。差動増幅器143の反転入力端子と出力端子が接続されているため、差動増幅器143は、ボルテージフォロワとして動作する。すなわち、本実施形態の電位出力部140においては、電位線141と外部端子であるパッド電極142との間にバッファ回路が設けられている。
【0059】
本実施形態では、電位出力部140に差動増幅器143により構成されたボルテージフォロワが設けられており、電位線141の電位はボルテージフォロワを介してパッド電極142に伝達される。ボルテージフォロワは、電流増幅及び入出力間の分離を行うバッファ回路として機能し、電位計測装置の負荷の影響を低減することができるため、電位をより正確に測定することができる。
【0060】
[第4実施形態]
本実施形態では、第1実施形態の光電変換装置100の各部の具体的な構成の別の例を示す。本実施形態の説明において、第1実施形態乃至第3実施形態と共通する部分については説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0061】
図5は、本実施形態に係る光電変換装置100の回路図である。
図5においては、第1実施形態で述べた画素部110、電位出力部140及び映像信号出力部150の具体的な構成例が図示されている。垂直走査回路120及び制御回路130については第1実施形態と同様であるため、
図5においては図示が省略されている。画素部110及び映像信号出力部150の構成は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
本実施形態の電位出力部140は、差動増幅器143及び抵抗素子144、145を更に有している。差動増幅器143の非反転入力端子には、電位線141が接続されている。抵抗素子144の第1端子は差動増幅器143の反転入力端子に接続されており、抵抗素子144の第2端子は接地ノードに接続されている。抵抗素子145の第1端子は差動増幅器143の反転入力端子及び抵抗素子144の第1端子に接続されている。抵抗素子145の第2端子は差動増幅器143の出力端子及びパッド電極142に接続されている。この回路構成により、差動増幅器143及び抵抗素子144、145は、電位を増幅する増幅回路として動作する。
【0063】
本実施形態では、第3実施形態で述べたものと同様の機能に加え、電位を増幅する機能を更に有する。これにより、電位線141の電位のより微小な変化を計測することができる。
【0064】
[第5実施形態]
本実施形態では、光電変換装置100の変形例を示す。本実施形態の説明において、第1実施形態乃至第4実施形態と共通する部分については説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0065】
図6は、本実施形態に係る光電変換装置100の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の光電変換装置100は、互いに積層された第1基板101(第1部品)と、第2基板102(第2部品)とを有している。第1基板101には画素部110が配されている。第2基板102には、垂直走査回路120、制御回路130、電位出力部140及び映像信号出力部150が配されている。すなわち、ノードNLとパッド電極142の間の回路(第2回路)は第2基板に配されており、ノードNLとパッド電極156の間の回路(第1回路)も第2基板に配されている。画素部110が形成された第1基板101と、垂直走査回路120、制御回路130、電位出力部140及び映像信号出力部150が形成された第2基板102を貼り合わせることにより本実施形態の光電変換装置100が製造される。
【0066】
本実施形態によれば、画素部110が形成されている基板と、他の回路が形成されている基板とを分離することにより、受光領域の面積の割合を大きくすることができる。これにより、入射光の検出感度が向上する。
【0067】
[第6実施形態]
本実施形態では、光電変換装置100の変形例を示す。本実施形態の説明において、第1実施形態乃至第5実施形態と共通する部分については説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0068】
図7は、本実施形態に係る光電変換装置100の概略構成を示すブロック図である。本実施形態における第5実施形態に対する相違点は、電位出力部140が第2基板102ではなく第1基板101に形成されている点である。
【0069】
本実施形態では、第1基板101に画素部110及び電位出力部140の両方が配されている。これにより、第1基板101単体で画素部110から出力される電位を電位出力部140から出力させることもできるため、第1基板101と第2基板102を貼り合わせる前に第1基板101内の画素部110の不良を検査することができる。したがって、第5実施形態のように貼り合わせた後でないと画素部110の検査を行うことができない構成と比べて、早い段階の工程で検査を行って良否を判断できるため、内部失敗コストをより低減することができる。
【0070】
[第7実施形態]
本実施形態では、第7実施形態の光電変換装置100の各部の具体的な構成の別の例を示す。本実施形態の説明において、第1実施形態乃至第6実施形態と共通する部分については説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0071】
図8は、本実施形態に係る光電変換装置100の概略構成を示すブロック図である。本実施形態における第1実施形態に対する相違点は、電位出力部140が電位入力部160に置き換えられている点である。第1実施形態の電位出力部140のパッド電極142は、外部の電位計測装置に対して電位を出力する機能を有している。これに対し、本実施形態の電位入力部160のパッド電極142は、外部の電位供給装置から電位を受け取る機能を有している。この機能の違いはパッド電極142に接続される外部装置の種類の差によるものであるため、光電変換装置100の回路構成そのものは第1実施形態と同一である。
【0072】
本実施形態では、光電変換装置100の各部の具体的な回路構成は
図2と概ね同様であるものとし、説明を省略する。本実施形態における第2実施形態に対する相違点は、電位入力部160に対して入力される制御信号と、信号線VLINEkの本数(すなわち、画素部110の列数)である。本実施形態においては、画素部110の列数は12列であり、信号線VLINEkの本数は12本であるものとする。
【0073】
図9は、本実施形態に係る電位入力部160の動作を示すタイミングチャートである。
図9に示されている制御信号φDATA_IN及び選択信号φCKの意味は
図3と同様である。
図9に示されている入力信号Analog_DATAは、外部の電位供給装置からパッド電極142に入力される電位を示している。
【0074】
期間T1において、制御信号φDATA_INがハイレベルになる。この期間において、選択信号φCKのパルスが4個入力される。これにより、1列目から4列目のフリップフロップの出力がハイレベルになる。
【0075】
期間T2において、制御信号φDATA_INがローレベルになる。この期間において、選択信号φCKのパルスが4個入力される。これにより、1列目から4列目のフリップフロップに記憶されている電位レベルが4列分だけシフトして、5列目から8列目のフリップフロップの出力がハイレベルになる。このようにして、期間T1、T2の動作によって5列目から8列目の信号線VLINEkが選択され、スイッチSWkを介して電位線141に接続される。すなわち、12本の信号線VLINEkのうちの中央の4本がスイッチSWk及び電位線141を介してパッド電極142に接続された状態となる。
【0076】
期間T3において、入力信号Analog_DATAの電位が時間に応じて徐々に低下する。このとき、パッド電極142に接続されている5列目から8列目の信号線VLINEkの電位も入力信号Analog_DATAの電位の変化に応じて徐々に低下する。この期間において、映像信号出力部150は、各列の信号線VLINEkの電位に応じた映像信号を光電変換装置100の外部に出力する。
【0077】
本処理の期間T3においては、5列目から8列目の信号線VLINEkに他の信号線VLINEkよりも低い電位が与えられた状態で映像信号が出力される。この映像信号を解析することにより、映像信号出力部150等で生じるクロストークを測定することができる。したがって、本実施形態によれば、映像信号出力部150等の故障検査用の映像信号を出力することができる。
【0078】
また、本実施形態により得られる映像信号と、画素部110の中央部に局所的に光を照射して得られる映像信号とを比較して故障原因の推定を行ってもよい。一般に、横スミア等の複数の列にわたる異常が生じた場合には、複数の故障原因が考えられる。映像信号出力部150に故障がある場合には、本実施形態により得られる映像信号と、画素部110の中央部に局所的に光を照射して得られる映像信号の両方に異常が生じる。これに対し、画素部110に故障がある場合には、本実施形態により得られる映像信号のみに異常が生じる。これを利用して、横スミア等の異常に対して故障箇所の推定を行うことができる。
【0079】
なお、本実施形態では説明の便宜のために仮に信号線VLINEkの本数を12本としているが、これに限定されるものではない。信号線VLINEkの本数が異なっていてもタイミングチャート内の選択信号φCKのパルスの個数を適宜変更することで同様の処理を行うことが可能である。
【0080】
[第8実施形態]
次に、上述の実施形態による光電変換装置100を適用した装置の例を説明する。
図10は、本実施形態による撮像システム500の構成を示すブロック図である。
図10に示す撮像装置10は、上述の第1乃至第7実施形態で述べた光電変換装置100のいずれかである。すなわち、本実施形態による撮像システム500は、上述の第1乃至第7実施形態で述べた光電変換装置100が適用され得る光電変換システムの一例である。撮像装置10が適用可能な撮像システム500としては、例えば、デジタルカメラ、デジタルカムコーダー、監視カメラなどが挙げられる。
図10に、上述の実施形態に記載の光電変換装置100の一例である撮像装置10を適用したデジタルカメラの構成例を示す。
【0081】
図10に例示した撮像システム500は、撮像装置10、被写体の光学像を撮像装置10に結像させるレンズ502、レンズ502を通過する光量を可変にするための絞り504、レンズ502の保護のためのバリア506を有する。レンズ502及び絞り504は、撮像装置10に光を集光する光学系である。
【0082】
撮像システム500は、また、撮像装置10から出力される出力信号の処理を行う信号処理部508を有する。信号処理部508は、必要に応じて入力信号に対して各種の補正、圧縮を行って出力する信号処理の動作を行う。
【0083】
撮像システム500は、更に、画像データを一時的に記憶するためのバッファメモリ部510、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)512を有する。更に撮像システム500は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体514、記録媒体514に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)516を有する。なお、記録媒体514は、撮像システム500に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0084】
更に撮像システム500は、各種演算を行うとともにデジタルカメラ全体を制御する全体制御・演算部518、撮像装置10と信号処理部508に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部520を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム500は、少なくとも撮像装置10と、撮像装置10から出力された出力信号を処理する信号処理部508とを有すればよい。全体制御・演算部518及びタイミング発生部520は、上述の実施形態における制御信号の生成、参照電圧の生成等の光電変換装置100の制御に関する機能の一部又は全部を実行するように構成してもよい。
【0085】
撮像装置10は、映像信号を信号処理部508に出力する。信号処理部508は、撮像装置10から出力される映像信号(パッド電極154、155又はパッド電極156の電位に基づく信号)に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。また、信号処理部508は、映像信号を用いて、画像を生成する。また、信号処理部508又は全体制御・演算部518は、撮像装置10から出力される電位信号(パッド電極142の電位)に基づいて撮像装置10の故障を検出する処理を行ってもよい。信号処理部508及び全体制御・演算部518はより一般的に制御部とも呼ばれ得る。
【0086】
以上のように、本実施形態の撮像システム500は、第1乃至第7実施形態による撮像装置10を含む。したがって、より適切に検査を行うことが可能な撮像システム500を実現することができる。
【0087】
なお、撮像システム500は、点キズ、線キズ等の故障箇所から出力された電位信号の測定結果に基づいて故障による影響の補正処理を行う機能、あるいは、故障箇所の除外処理を行う機能を有していてもよい。この場合、点キズ、線キズ等の故障の影響が低減される。この処理は、信号処理部508において行われてもよく、全体制御・演算部518において行われてもよい。
【0088】
[第9実施形態]
図11(a)及び
図11(b)は、本実施形態による撮像システム600及び移動体の構成を示す図である。
図11(a)は、車載カメラに関する撮像システム600の一例を示したものである。撮像システム600は、上述の第1乃至第7実施形態のいずれかに記載の光電変換装置100の一例である撮像装置10を有する。撮像システム600は、撮像装置10により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部612と、撮像システム600により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差算出部614を有する。また、撮像システム600は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離計測部616と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部618と、を有する。ここで、視差算出部614及び距離計測部616は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部618はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0089】
撮像システム600は、車両情報取得装置620と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム600には、衝突判定部618での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU630が接続されている。すなわち、制御ECU630は、距離情報に基づいて移動体を制御する移動体制御手段の一例である。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置640とも接続されている。例えば、衝突判定部618の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU630はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置640は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与える等によりユーザに警告を行う。
【0090】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム600で撮像する。
図11(b)に、車両前方(撮像範囲650)を撮像する場合の撮像システム600の構成を示す。車両情報取得装置620は、撮像システム600を動作させ撮像を実行させるように指示を送る。
【0091】
本実施形態の撮像装置10は、車載用であるため、高温、多湿等の過酷な環境で用いられる。そのため、市場出荷後に点キズ、線キズ等が発生する場合もある。このような点キズ、線キズ等が発生すると、物体認識の精度に影響を与える場合もある。本実施形態では、電位出力部140から出力される電位信号(パッド電極142の電位)に基づいてこれらの点キズ、線キズ等の測定を行うことができる。したがって、より適切に検査を行うことが可能な撮像システム及び移動体が実現される。なお、この検査処理は、例えば、画像処理部612において行われ得る。
【0092】
また、撮像システム600は、点キズ、線キズ等の故障箇所から出力された電位信号の測定結果に基づいて故障による影響の補正処理を行う機能、あるいは、故障箇所の除外処理を行う機能を有していてもよい。この場合、点キズ、線キズ等の故障の影響が低減される。この処理は、画像処理部612において行われてもよい。
【0093】
以上の説明では、他の車両と衝突しないように制御する例を述べたが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、産業用ロボット等の移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0094】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。
【0095】
上述の実施形態により開示されている技術の適用対象は光電変換装置に限定されるものではない。例えば、本技術は、セルが複数の行及び複数の列をなすように配されたセルアレイ部を有し、複数の列又は複数の列に対応して配された信号線を介して複数のセルの各々が信号の入力又は出力を行う電子デバイスにも適用可能である。そのような電子デバイスの例としては、光電変換装置の他に、液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ等の表示装置及びDRAM、SRAM、フラッシュメモリ等のメモリ装置が挙げられる。セルアレイ部は、複数の行及び複数の列をなすように配された複数のセルを有する。複数のセルの各々はトランジスタを含むセル回路を有しうる。上述した例のセルアレイ部における複数のセルの各々は光電変換部を有する画素回路(セル回路)を含む画素セルである。セルアレイ部のセルは画素セルに限らず、メモリセルであってもよい。複数の画素セルを有するセルアレイ部を画素アレイ部あるいは画素部と称することができる。セルアレイ部には、セル回路が複数の行及び複数の列に渡って2次元状に配列されている。セルアレイ部の各列には、対応する列に配されたセル回路に接続された信号線が少なくとも1線ずつ設けられている。光電変換部を有する画素回路は例えば、転送トランジスタのゲート、リセットトランジスタのゲート、選択トランジスタを有し、画素信号は選択トランジスタを介して信号線へ出力される。セル回路からの信号が信号線に出力されるため、信号線を出力線と称することができる。また、信号線が対応する列に配されていることから、信号線を列配線と称することもできる。セルアレイ部の各行には、対応する行に配されたセル回路に接続された不図示の信号線が少なくとも1線ずつ設けられている。対応する行に配されたセル回路に接続された不図示の信号線は、例えば転送トランジスタのゲート、リセットトランジスタのゲート、選択トランジスタのゲートにそれぞれ接続された4本の信号線である。セル回路への信号が信号線から入力されるため、信号線を入力線と称することができる。また、入力線が対応する行に配されていることから、入力線を行配線と称することもできる。なお、行配線や列配線には、入力線や出力線などの信号線の他に、接地電位あるいは駆動電位を供給するための電源線なども含まれる。
【0096】
上述の実施形態の画素部110はセルアレイ部の一例であり、画素111はセルの一例であり、信号線VLINEkは信号線の一例である。表示装置の場合、上述のセルは画素、副画素等の表示素子に相当し、上述の信号線はデータ線又はアドレス線に相当する。表示装置の場合、映像信号出力部150の代わりに映像信号入力部が用いられる。メモリ装置の場合、上述のセルはメモリセルに相当し、上述の信号線は、ビット線又はワード線に相当する。映像信号出力部150又は映像信号入力部は、アナログ信号及びデジタル信号の一方をアナログ信号及びデジタル信号の他方に変換する変換回路を有し得る。
【0097】
表示装置、メモリ装置等の例においても、上述の光電変換装置の実施形態と同様にして、選択信号に基づいて選択された一部の信号線に電気的に接続されるようなパッド電極を設けた構成が実現可能である。これにより、複数の信号線のうちの選択された一部の信号線に、このパッド電極を介して直接的に電位を入力又は出力することができる。したがって、この変形実施形態においても、上述の実施形態と同様に、信号をより適切に入力又は出力することができる電子デバイスが実現できる。なお、電位や信号がパッド電極を通ることは、パッド電極を介して電位や信号を入力又は出力することを意味する。
【0098】
また、上述の第9実施形態では、撮像装置10により取得された情報に基づいて移動体と移動体を制御する移動体制御手段が開示されているが、これに限定されるものではない。本技術は、上述の電子デバイスと、電子デバイスから取得された情報に基づいて移動体等の機械装置を駆動する駆動部とを設けたシステム全般に適用可能である。
【0099】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0100】
本発明は、上述の実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。なお、本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書及び本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBである」旨の記載があれば、本明細書において「AはBではない」旨の記載を省略しても、本明細書は「AはBでない」旨を開示しているものとする。なぜなら、発明者が「AはBである」旨を記載している場合には、「AはBでない」場合を考慮していることが前提だからである。
【符号の説明】
【0101】
100 光電変換装置
110 画素部
111 画素
140 電位出力部
150 映像信号出力部
NL ノード
VLINEk 信号線